(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013027671
(43)【国際公開日】20130228
【発行日】20150430
(54)【発明の名称】シンチレーター
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/61 20060101AFI20150403BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20150403BHJP
   G01T 1/202 20060101ALI20150403BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20150403BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20150403BHJP
   G21K 4/00 20060101ALI20150403BHJP
【FI】
   !C09K11/61CPF
   !C09K11/00 E
   !G01T1/202
   !G01T1/20 G
   !G01T1/20 E
   !G01T1/20 B
   !G01T1/161 C
   !G21K4/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】2013529999
(21)【国際出願番号】JP2012070911
(22)【国際出願日】20120817
(11)【特許番号】5594799
(45)【特許公報発行日】20140924
(31)【優先権主張番号】2011179703
(32)【優先日】20110819
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り Applied Physics Express 5(2012)052601−1〜052601−3頁に発表(平成24年4月20日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り http://www.nss−mic.org/2012/Program/ListProgramDB.asp?session=N26に発表(平成24年8月6日)
(71)【出願人】
【識別番号】392028099
【氏名又は名称】日本結晶光学株式会社
【住所又は居所】群馬県館林市野辺町810番地の5
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 大輔
【住所又は居所】埼玉県上尾市上尾下上原1013−1 日本結晶光学株式会社 上尾工場内
(72)【発明者】
【氏名】松本 進
【住所又は居所】埼玉県上尾市上尾下上原1013−1 日本結晶光学株式会社 上尾工場内
(72)【発明者】
【氏名】吉川 彰
【住所又は居所】宮城県仙台市青葉区片平二丁目1番1号 国立大学法人東北大学内
(72)【発明者】
【氏名】柳田 健之
【住所又は居所】宮城県仙台市青葉区片平二丁目1番1号 国立大学法人東北大学内
【テーマコード(参考)】
2G083
2G188
4C188
4H001
【Fターム(参考)】
2G083AA04
2G083CC03
2G083DD02
2G083DD12
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4H001CA04
4H001CA08
4H001XA53
4H001XA55
4H001YA81
4H001YA83
(57)【要約】
CsIを母体とし、これにタリウムをドープしたヨウ化セシウム:タリウム(CsI:Tl)の残光特性を改善する。
CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料にビスマス(Bi)をドープすることで、シンチレーターの残光特性を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料にビスマス(Bi)をドープしてなるシンチレーター。
【請求項2】
CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対してタリウム(Tl)を0.05at.%〜1.00at.%、ビスマス(Bi)を0.001at.%〜0.100at.%の割合でドープしてなる請求項1記載のシンチレーター。
【請求項3】
CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対してタリウム(Tl)を0.015at.%〜0.700at.%、ビスマス(Bi)を7.0×10-6at.%〜6.0×10-3at.%の割合で含有してなる請求項1又は2に記載のシンチレーター。
【請求項4】
CsI原料、Tl原料及びBi原料を含む原料を混合して加熱溶融した後、結晶成長させて得られるシンチレーター。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のシンチレーターを用いてなる放射線検出器。
【請求項6】
CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料にビスマス(Bi)をドープすることにより、前記結晶材料の残光を低減することを特徴とするシンチレーターの残光低減方法。
【請求項7】
CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対してタリウム(Tl)を0.05at.%〜1.00at.%、ビスマス(Bi)を0.001at.%〜0.100at.%の割合でドープすることを特徴とする請求項6に記載のシンチレーターの残光低減方法。
【請求項8】
CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対してタリウム(Tl)を0.015at.%〜0.700at.%、ビスマス(Bi)を7.0×10-6at.%〜6.0×10-3at.%の割合で含有させることを特徴とする請求項6又は7に記載のシンチレーターの残光低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばX線検出器などに好適に用いることができるシンチレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
シンチレーターとは、γ線やX線などの放射線を吸収し、可視光線又は可視光線に近い波長の電磁波を放射する物質である。その用途としては、医療用のPET(陽電子放射断層撮影装置)やTOF−PET(タイム・オブ・フライト陽電子放射断層撮影装置)、X線CT(コンピュータ断層撮影装置)、さらには空港などで使用される所持品検査装置など、各種放射線検出器を挙げることができる。
【0003】
このような放射線検出器は、一般に放射線を受光して可視光に変換するシンチレーター部と、このシンチレーター部で変換され透過してくる可視光を検知して電気信号に変換するホトマルチプライヤチューブ(以下「ホトマル」という)やフォトダイオードなどの光検出部とから構成されている。そして、この種の用途に用いるシンチレーターは、ノイズを小さくして測定精度を上げるために、発光出力の高いシンチレーターであることが望まれている。
【0004】
従来、シンチレーターとして、CsIやNaIなどのアルカリハライド結晶が広く実用化されている。中でも、CsIを母体とするシンチレーターは、放射線吸収効率が比較的高い点、放射線損傷が比較的少ない点、真空蒸着法等により薄膜作製が比較的容易である点などから利用されている。
【0005】
しかし、従来のCsIシンチレーターは、発光効率がそれほど高くない上、速い蛍光成分の減衰時間が充分に短いものではなかったため、CsIを母体とする結晶に不純物をドープしてシンチレーション効率を高めたもの、TlI(ヨウ化タリウム)をドーピングしたCsI:Na、CsI:Tlなどが実用化されている。例えば特許文献1には、ヨウ化セシウム(CsI)にタリウム(Tl)をドープしたヨウ化セシウム:タリウム(CsI:Tl)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−215951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CsIを母体とし、これにタリウムをドープしたヨウ化セシウム:タリウム(CsI:Tl)をシンチレーターとして利用する場合、検出器としてPD(フォトダイオード)と組み合わせることにより、高出力を得ることができる一方、画像を不鮮明にする傾向がある残光をもたらすという課題を抱えていた。特に手荷物検査機など移動するものを撮像するときには、残光特性が重要になるため、このような課題を解決する必要があった。
【0008】
そこで本発明は、CsIを母体とし、これにタリウムをドープしたヨウ化セシウム:タリウム(CsI:Tl)の残光特性を改善してなる、新たなシンチレーターを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料に、ビスマス(Bi)をドープしてなるシンチレーターを提案する。
【0010】
このようなシンチレーターは、従来開示されていた材料とは異なる組成の新たな結晶材料であり、CsIを母体とし、これにタリウムをドープしたヨウ化セシウム:タリウム(CsI:Tl)の残光特性を大きく改善することができる。よって、本発明が提案するシンチレーターを用いれば、例えば高発光出力のX線検出器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例において、出力の測定に用いた装置の構成(概要)を示した図である。
【図2】実施例の製造において用いた結晶育成装置の構成(概要)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態について詳細に述べる。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(シンチレーター)
本実施形態に係るシンチレーター(以下「本シンチレーター」という)は、ホスト(母体)としてのCsI(ヨウ化セシウム)と、発光中心としてのタリウム(Tl)と、を含有する結晶材料であって、これにビスマス(Bi)をドープしてなる構成を有するシンチレーターである。
【0014】
このようにCsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料にビスマス(Bi)をドープすることにより、この種のシンチレーターの課題である残光を低減することができる。このような作用はおそらく、CsI結晶中に固有に存在する格子欠陥や、タリウム(Tl)がCsI結晶中に置換することに起因する結晶欠陥などが発光するエネルギーを、ビスマス(Bi)の遷移エネルギーで非発光状態で消費するため、シンチレーターの残光を低減することができるものと考えることができる。
【0015】
タリウム(Tl)のドープ量は、特に限定するものではない。目安としては、CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対するタリウム(Tl)の濃度が0.05at.%〜1.00at.%となるようにドープするのが好ましい。タリウム(Tl)のドープ量が0.05at.%以上であれば、育成された結晶のシンチレーション発光効率を十分に得ることができる。他方、1.00at.%以下であれば、濃度消光のために発光量が小さくなるのを回避することができる。
かかる観点から、タリウム(Tl)のドープ量は、CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対して0.05at.%〜1.00at.%であるのが好ましく、特に0.10at.%以上或いは0.75at.%以下であるのがさらに好ましく、中でも特に0.20at.%以上或いは0.50at.%以下であるのがさらに好ましい。
【0016】
ビスマス(Bi)のドープ量は、少なすぎると残光特性の改善を効果的に図ることができず、多すぎると残光特性は改善するが、出力特性を損なうことが判明した。かかる観点から、ビスマス(Bi)のドープ量は、CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対するビスマス(Bi)の濃度が0.001at.%〜0.100at.%となるようにドープするのが好ましく、中でも0.001at.%以上或いは0.020at.%以下、その中でも0.001at.%以上或いは0.010at.%以下となるようにドープするのが好ましい。
【0017】
なお、各元素のドープ量とは、結晶育成時のCsI中のCs元素に対する各種元素の添加割合の意味である。
後述する実施例で確認したように、タリウム(Tl)のドープ量と、実際に結晶中に取り込まれているタリウム(Tl)の含有量とを比較したところ、実際に結晶中に取り込まれるタリウム(Tl)の含有量はドープ量の20〜70%となることが確認された。よって、タリウム(Tl)のドープ量が0.05〜1.00at.%の場合、タリウム(Tl)の含有量は0.015〜0.700at.%となることが分かった。
他方、ビスマス(Bi)に関しても同様に、ビスマス(Bi)のドープ量と、実際に結晶中に取り込まれているビスマス(Bi)の含有量とを比較したところ、実際に結晶中に取り込まれるビスマス(Bi)の含有量はドープ量の0.7〜6%となることが確認された。よって、ビスマス(Bi)のドープ量が0.001〜0.100at.%の場合、ビスマス(Bi)の含有量は7.0×10-6at.%〜6.0×10-3at.%となることが分かった。
【0018】
本シンチレーターの形態は、バルク状、柱状及び薄膜状のいずれであってもよく、いずれの場合にも、残光を低減する効果を享受することができる。
また、本シンチレーターは、単結晶であっても多結晶であっても残光を低減することができるという効果を享受することができるため、単結晶であっても多結晶であってもよい。
この際、本発明におkる単結晶とは、実施例で確認しているように、結晶をXRDで測定した際にCsI単相の結晶体と認められるものをいう。
【0019】
(用途)
本シンチレーターと、ホトマルやフォトダイオードなどの光検出部とを組み合わせてX線検出器やγ線検出器などの放射線検出器を構成することができる。中でも、本シンチレーターは、医療用のPET(陽電子放射断層撮影装置)やTOF−PET(タイム・オブ・フライト陽電子放射断層撮影装置)、CT(コンピュータ断層撮影装置)などの各種X線検出器のシンチレーターとして好適に使用することができ、これを用いて各種X線検出器やγ線検出器などの放射線検出器を構成することができる。
【0020】
(製造方法)
次に、本シンチレーターを製造する方法について説明する。但し、本シンチレーターの製造方法が次に説明する方法に限定されるものではない。
【0021】
本シンチレーターは、CsI原料、Tl原料及びBi原料を含む原料を混合して加熱溶融させた後、結晶育成させて得ることができる。
この際、Tl原料及びBi原料としては、Tl又はBiのヨウ化物などのようなTl又はBiのハロゲン化物や、酸化物、金属或いは金属化合物などを挙げることができる。但し、これらに限るものではない。
この際の結晶育成方法は、特に限定するものではなく、例えばBridgman−Stockbarger法(「BS法」ともいう)、温度勾配固定化法(例えばVGF法など)、Czochralski(「CZ法」ともいう)、キロプロス法、マイクロ引き下げ法、ゾーンメルト法、これらの改良法、その他の融液成長法等、公知の結晶育成方法を適宜採用することができる。
以下、代表的なBS法とCZ法について説明する。
【0022】
BS法は、坩堝の中に原料を入れて融解させ、坩堝を引下げながら、坩堝底から結晶を育成させていく方法である。結晶育成装置が比較的安価であり、大口径の結晶を比較的に容易に育成可能であるという特徴を有している。その反面、結晶成長方位の制御が困難であり、また、結晶育成時や冷却時に無理な応力がかかるため、応力分布が結晶内に残って歪や転位が誘起され易いと言われている。
【0023】
他方、CZ法は、坩堝内に原料を入れて融解させ、シード(種結晶)を溶融液面に接触させて結晶を回転引き上げながら育成(結晶化)していく方法である。CZ法は、結晶方位を特定し結晶化させることが可能であるため、目的とする結晶方位の育成が容易であると言われている。
【0024】
結晶育成方法の一例に係るBS法の一例についてより具体的に説明する。
例えば、原料となるCsI粉体、TlI粉体及びBiI3粉体を所定量に秤量・混合し、この混合物を石英アンプルに充填し、このアンプルを真空封入する。必要によりアンプル底部に、種結晶を入れておくこともできる。この石英アンプルを結晶成長装置内に設置する。結晶成長装置内の雰囲気は、使用するヒーター材質に適切な雰囲気を選択する。加熱装置によって石英アンプルを加熱し、アンプルに充填した原料を溶融させる。
アンプル内の原料が融解した後、アンプルを0.1mm/時間〜3mm/時間程度の速度で鉛直下方に引き下げると、融液となった原料はアンプル底部から固化が始まり、結晶が成長する。アンプル内の融液がすべて固化した段階でアンプルの引き下げを終了し、加熱装置により徐冷しつつ、室温程度にまで冷却することで、インゴット状の結晶を育成することができる。
【0025】
以上のようにして育成したインゴット状の結晶体は、所定の大きさに切り出した後、所望のシンチレーター形状に加工すればよい。
なお、必要に応じて結晶を熱処理することも可能であるが、必ずしも熱処理する必要はない。
熱処理の方法としては、例えば、前記工程で育成された結晶体を容器に入れ、この容器を熱処理炉内に設置し、熱処理炉内温度を融点の約80〜90%の温度に均熱的に加熱して、結晶中に残留する歪を除去することができる。熱処理における雰囲気は、高純度アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス雰囲気とすればよい。但し、このような熱処理方法に限定するものではない。
【0026】
(用語の解説)
本発明において「X線シンチレーター」とは、X線を吸収し、可視光又は可視光に近い波長(光の波長域は近紫外〜近赤外にまで広がっていてもよい)の電磁波(シンチレーション光)を放射する物質、並びに、そのような機能を備えた放射線検出器の構成部材を意味する。
また、「シンチレーター」とは、X線やγ線などの放射線を吸収し、可視光又は可視光に近い波長(光の波長域は近紫外〜近赤外にまで広がっていてもよい)の電磁波(シンチレーション光)を放射する物質、並びに、そのような機能を備えた放射線検出器の構成部材を意味する。
【0027】
本発明において「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Yより小さいことが好ましい」旨の意図を包含する。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0029】
<出力>
図1に示す測定装置を使用して、出力(nA)及び残光(ppm)を測定した。
測定サンプル(シンチレーター円板)は、直径8mm×厚み2mmを使用した。
この際、前記出力とは、所定のX線を測定サンプルに照射したことにより測定サンプルに生じるシンチレーション光をPINフォトダイオードで受光した時のフォトダイオードの出力であり、前記残光とは、X線照射後所定時間後の残光という意味である。
【0030】
タングステン(W)からなるターゲットに、印加電圧120kV、印加電流20mAの電子線を照射しX線を発生させ、このX線を測定サンプルに照射し、シンチレーション光と透過X線の出力をPINフォトダイオード(HAMAMATSU社製「S1723−5」)で測定した。次に、鉛板の穴に遮光テープを張ってシンチレーション光を遮光し、透過X線だけの出力を測定した。そして、透過X線による出力を差し引き、シンチレーション光による出力を得た。
【0031】
また、上記同様に、120kV、20mAの電子線を照射しX線を発生させ、このX線を測定サンプルに1秒間照射し、PINフォトダイオード(HAMAMATSU社製「S1723−5」)に流れる電流値(I)を測定した。次に、X線を測定サンプルに1秒間照射した後、X線の照射をカットし、カット20ms後に前記PINフォトダイオードに流れる電流値(I20ms)を測定した。また、X線を測定サンプルに照射する前の状態において、PINフォトダイオードに流れる電流値をバックグラウンド値(Ibg)として測定し、次の式から残光(20@ms)を算出した。
残光(20@ms)=(I20ms−Ibg)/(I−Ibg
【0032】
<XRD測定>
X線回折(XRD)測定は、測定装置として株式会社リガク製「RINT−2000(40kV、40mA)」を使用し、線源にはCuターゲットを用いて、2θが10度から80度の範囲でXRDパターンを得た。
【0033】
<参照例1−2・実施例1−6・比較例1−6>
各元素の量が表1に示す値となるように、各種原料を所定量秤量し、乳鉢で混合し、図2に示す結晶育成装置にセットし、結晶を育成した。ここで、各添加元素のドープ量は、母材であるCsI中のCs元素に対する原子数パーセント(at.%)として示した。
なお、CsI原料にはCsI粉(99.999%)、Tl原料にはTlI粉(99.999%)、Bi原料にはBiI3粉原料(99.999%)、Ag原料にはAgI粉(99.999%)、Sm原料にはSmI2粉(99.9%)、Yb原料にはYBI3粉(99.9%)、Tm原料にはTmI2粉(99.9%)、Eu原料にはEuI2粉(99.9%)、Pb原料にはPbI2粉(99.9%)を使用した。
【0034】
結晶育成は、次のような垂直ブリッジマン法により行った。すなわち、寸胴部直径8mm、先端部直径2mmの石英アンプルに10%HFの水を入れ、4時間洗浄した。このようにして石英アンプルを水でよく洗った後、ロータリーポンプを用いアンプル内圧力を10torrとなるよう真空引きしながら250℃に加熱して乾燥させた。
このように前処理した石英アンプルに、上記の如く乳鉢で混合した原料を入れ、ロータリーポンプを用い10torrで真空引きしながら250℃に加熱し、原料に含まれている水分を飛ばした後、真空状態を維持したまま石英をバーナーで加熱して溶融させて原料を封入した。
次に、石英アンプルをArガス雰囲気とした炉にセットし、原料が溶けるまでヒーターで加熱し、原料溶融後1時間その温度を保持した。その後、0.06mm/分の速度で石英アンプルを引き下げ、8時間引き下げた後、引き下げを停止し、10時間かけて徐々にヒーターの加熱を停止させた。
このようにして得られた結晶体を、所定の大きさ・所定の方向に切り出して、それぞれの上記の測定サンプルとした。
【0035】
【表1】
【0036】
(結果及び考察)
実施例1−6で得られた結晶体の一部を粉砕し、粉末XRD測定を行ったところ、実施例1−6で得られた結晶体はいずれも、CsI単相の結晶体であり、他の相は確認されなかった。
【0037】
上記の如く、CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料に、更に各種元素をドープしてみた結果、ビスマス(Bi)をドープすることにより残光を低減することができ、この結果は、他の元素では認められない効果であった。
また、上記の試験並びにこれまでの試験結果から、残光を低減することができる観点から、タリウム(Tl)は、CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対するタリウム(Tl)の量が0.05at.%〜1.00at.%、特に0.10at.%以上或いは0.75at.%以下、中でも特に0.20at.%以上或いは0.50at.%以下となるようにドープするのが好ましく、その際、ビスマス(Bi)は、CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対するビスマス(Bi)の量が0.001at.%〜0.100at.%、中でも0.001at.%以上或いは0.020at.%以下、その中でも0.001at.%以上或いは0.010at.%以下となるようにドープするのが好ましいことが分かった。
【0038】
上記の実施例は、バルク状体のシンチレーターを使用して試験したが、柱状及び薄膜状のシンチレーターを作製する場合の方がCsI結晶中の格子欠陥が大きくなるため、バルク以上の効果を期待することができる。すなわち、シンチレーターの形態がバルク状、柱状及び薄膜状にかかわらず、少なくともバルク状体のシンチレーターを使用した場合の効果と同等以上の効果を期待することができる。
【0039】
<ドープ量と含有量との関係>
ここで、タリウム(Tl)及びビスマス(Bi)のドープ量と、実際に結晶中に取り込まれるタリウム(Tl)及びビスマス(Bi)の含有量との関係を、検討した。
【0040】
上記実施例1―6で得られた結晶の一部を採取し、これを濃度分析用サンプルとして、結晶中に含まれる添加元素の濃度を分析した。
TlおよびBiの元素分析には、ICP−MS(型式:SPS3000)を用い、試料中の質量%(wt.%)を求めた。得られた質量%で表される含有量から、TlおよびBi元素のCsI中のCsに対する原子数パーセント(at.%)および原子数パーセント(at.%)をそれぞれ算出した。結果を表2に示した。
【0041】
【表2】
【0042】
この結果、タリウム(Tl)のドープ量と、実際に結晶中に取り込まれているタリウム(Tl)の含有量とを比較したところ、実際に結晶中に取り込まれるタリウム(Tl)の含有量はドープ量の20〜70%となることが確認された。よって、タリウム(Tl)のドープ量がCsI(ヨウ化セシウム)のCsに対して0.05〜1.00at.%の場合、タリウム(Tl)の含有量はCsI(ヨウ化セシウム)のCsに対して0.015〜0.700at.%となることが分かった。
他方、ビスマス(Bi)に関しても同様に、ビスマス(Bi)のドープ量と、実際に結晶中に取り込まれているビスマス(Bi)の含有量とを比較したところ、実際に結晶中に取り込まれるビスマス(Bi)の含有量はドープ量の0.7〜6%となることが確認された。よって、ビスマス(Bi)のドープ量がCsI(ヨウ化セシウム)のCsに対して0.001〜の0.100at.%の場合、ビスマス(Bi)の含有量はCsI(ヨウ化セシウム)のCsに対して7.0×10-6at.%〜6.0×10-3at.%となることが分かった。
【0043】
<実施例7>
寸胴部直径1インチの寸胴型の石英アンプルを用いて、原料中の添加元素のドープ量を、Tl 0.50at.%、Bi 0.01at.%となるように原料粉を秤量・混合したものを石英アンプル内に封入したこと以外は、実施例1〜6で示した手順に準じて、結晶を成長させた。そして、得られた結晶の異なる固化率の部位からサンプルを切り出し、上記同様に分析すると共に、出力特性及び残光特性を評価した。
【0044】
<実施例8>
寸胴部直径2インチの寸胴型の石英アンプルを用いて、原料中の添加元素のドープ量を、Tl 0.50at.%、Bi 0.001at.%となるように原料粉を秤量・混合したものを石英アンプル内に封入したこと以外は、実施例1〜6で示した手順に準じて、結晶を成長させた。そして、得られた結晶の異なる固化率の部位から測定サンプルを切り出し、上記同様に分析すると共に、出力特性及び残光特性を評価した。
【0045】
【表3】
【0046】
実施例7,8で得られた結晶体の一部を粉砕し、粉末XRD測定を行ったところ、いずれもCsI単相の結晶体であり、他の相は確認されなかった。
実施例7,8についても、CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料に、ビスマス(Bi)をドープすることにより残光を低減することができることが分かった。
【0047】
この結果からも、CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対するタリウム(Tl)の濃度が0.05at.%〜1.00at.%、特に0.10at.%以上或いは0.75at.%以下、中でも特に0.20at.%以上或いは0.50at.%以下となるようにタリウム(Tl)をドープするのが好ましく、タリウム(Tl)の含有量としてはCsI(ヨウ化セシウム)のCsに対して0.015〜0.700at.%の割合で含有するのが好ましいことが確認された。
他方、ビスマス(Bi)のドープ量は、CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対して0.001at.%〜0.100at.%、中でも0.001at.%以上或いは0.020at.%以下、その中でも0.001at.%以上或いは0.010at.%以下となるようにドープするのが好ましく、ビスマス(Bi)の含有量としては、CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対して7.0×10-6at.%〜6.0×10-3at.%の割合で含有するのが好ましいことが確認された。
【符号の説明】
【0048】
1 チャンバー
2 誘導加熱コイル
3 アルミナ断熱材
4 石英ステージ
5 石英管
6 石英アンプル坩堝
7 石英シャフト
8 引き下げ機構
9 支持棒
【図1】
【図2】

【手続補正書】
【提出日】20140617
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料にビスマス(Bi)をドープしてなるシンチレーターであって、
CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対してタリウム(Tl)を0.05at%〜1.00at%、ビスマス(Bi)を0.001at%〜0.100at%の割合でドープしてなるシンチレーター。
【請求項2】
CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料にビスマス(Bi)をドープしてなるシンチレーターであって、
CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対してタリウム(Tl)を0.015at%〜0.700at%、ビスマス(Bi)を7.0×10-6at%〜6.0×10-3at%の割合で含有してなるシンチレーター。
【請求項3】
CsI原料、Tl原料及びBi原料を含む原料を混合して加熱溶融した後、結晶成長させて得られる請求項1又は2に記載のシンチレーター。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のシンチレーターを用いてなる放射線検出器。
【請求項5】
CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料にビスマス(Bi)をドープすることにより、前記結晶材料の残光を低減することを特徴とするシンチレーターの残光低減方法であって、
CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対してタリウム(Tl)を0.05at%〜1.00at%、ビスマス(Bi)を0.001at%〜0.100at%の割合でドープすることを特徴とするシンチレーターの残光低減方法。
【請求項6】
CsI(ヨウ化セシウム)を母体とし、発光中心としてタリウム(Tl)を含有する結晶材料にビスマス(Bi)をドープすることにより、前記結晶材料の残光を低減することを特徴とするシンチレーターの残光低減方法であって、
CsI(ヨウ化セシウム)のCsに対してタリウム(Tl)を0.015at%〜0.700at%、ビスマス(Bi)を7.0×10-6at%〜6.0×10-3at%の割合で含有させることを特徴とするシンチレーターの残光低減方法。
【国際調査報告】