(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013031993
(43)【国際公開日】20130307
【発行日】20150730
(54)【発明の名称】Si/C複合材料及びその製造方法並びに電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20150703BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20150703BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20150703BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20150703BHJP
【FI】
   !H01M4/38 Z
   !H01M4/36 A
   !H01M4/36 E
   !H01M4/587
   !H01M4/134
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】40
【出願番号】2013531444
(21)【国際出願番号】JP2012072273
(22)【国際出願日】20120831
(31)【優先権主張番号】2011190110
(32)【優先日】20110831
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 3rd German−Japaniese Joint Symposium Development and Technology of Carbon Materials
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【住所又は居所】宮城県仙台市青葉区片平二丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(72)【発明者】
【氏名】京谷 隆
【住所又は居所】宮城県仙台市青葉区片平二丁目1番1号 国立大学法人東北大学内
(72)【発明者】
【氏名】西原 洋知
【住所又は居所】宮城県仙台市青葉区片平二丁目1番1号 国立大学法人東北大学内
(72)【発明者】
【氏名】岩村 振一郎
【住所又は居所】宮城県仙台市青葉区片平二丁目1番1号 国立大学法人東北大学内
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA15
5H050CA08
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA09
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA12
5H050FA13
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA08
5H050GA22
5H050GA24
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA19
(57)【要約】
Siと炭素とを従来にない構造で複合させた複合材料及びその製造方法と、充放電容量が高くサイクル性能の高いLiイオンの負極材料とを提供する。ナノサイズのSi粒子の集合体を加熱して炭素を含む原料ガスによって各Si粒子に炭素層を形成する。この炭素層により、Si粒子11を内包した空間13aとSi粒子11を内包しない空間13bとを画成する壁12が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノサイズのSi粒子と、Si粒子を内包する空間とSi粒子を内包しない空間とを画成する炭素層の壁と、を含む、複合材料。
【請求項2】
前記Si粒子の表面が酸化されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記炭素層は0.34乃至30nmの平均厚さを有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記Si粒子は1×10乃至1.3×102nmの平均粒径を有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
前記Si粒子の表面には、層状のグラフェン構造からなる前記炭素層が形成されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
前記複合材料を負極材料として用いると、充放電容量が最大2000mAh/g以上である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記複合材料を負極材料として用いると、充放電容量が最大2500mAh/g以上である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の複合材料からなる、Liイオン電池の負極材料。
【請求項9】
請求項8に記載のLiイオン電池の負極材料を備えた電極。
【請求項10】
請求項9に記載の電極を負極としたときの充放電容量が1.0×103〜3.5×103mAh/gである、Liイオン電池の負極材料を備えた電極。
【請求項11】
ナノサイズのSi粒子の集合体を加熱して炭素を含む原料ガスによって各Si粒子に炭素層を形成することにより、Si粒子を内包した空間とSi粒子を内包しない空間とを画成する壁が上記炭素層で形成される、複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記集合体の各Si粒子表面に酸化層を形成しておくことにより、該酸化層を介在して上記各Si粒子を囲むように前記壁を形成し、
その後、上記酸化層を溶解することにより、前記炭素層と上記各Si粒子との間の一部に中空を設ける、請求項11に記載の複合材料の製造方法。
【請求項13】
前記炭素層を形成した後、炭素層を形成する際の温度よりも高い温度に維持して熱処理を行う、請求項11に記載の複合材料の製造方法。
【請求項14】
前記壁を形成する前に、前記集合体を圧縮してペレットに成型する、請求項11に記載の複合材料の製造方法。
【請求項15】
前記炭素層を形成する際にパルスCVD法を用いる、請求項11に記載の複合材料の製造方法。
【請求項16】
前記炭素層は0.34乃至30nmの平均厚さを有する、請求項11に記載の複合材料の製造方法。
【請求項17】
前記各Si粒子は、1×10乃至1.3×102nmの平均粒径を有する、請求項11に記載の複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Siと炭素の複合材料及びその製造方法並びにこの複合材料を用いた電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Liイオン二次電池は、正極にLiCoO2を、負極に黒鉛を用いたものが一般的であった。ところが、負極として黒鉛を用いた場合の理論容量は372mAh/g(840mAh/cm3)であるのに対し、Siを用いた場合の理論容量は4200mAh/g(9790mAh/cm3)であり、Siは黒鉛よりも10倍以上の理論容量を有している。このことから、Si材料は次世代の負極材料として注目されている。
【0003】
しかしながら、第1にSiは導電性が悪く、第2にLiとの反応速度が小さいためレート特性が悪く、第3に充電時に最大で4倍まで体積が膨張することから、電極そのものが破壊されてサイクル性能が悪いという問題がある。特にサイクル性能の悪化が負極材料としての実用化の障害となっている。これらの問題点を解決しSiの有する大きな充放電容量の利用に向けた研究が数多く行われている。
【0004】
その中でも、近年ではSiの周りに体積膨張を緩衝する役割を担う空間を確保することで高い充放電容量が得られたという報告がある(例えば非特許文献1、非特許文献2)。
【0005】
このような状況において、本発明者らは、Si周囲にナノ空間を有するSi/C複合体を研究開発するに至った(非特許文献3及び4)。このSi/C複合体は、概ね次の要領で作製される。Siナノ粒子を空気流の下で熱処理することにより表面のSiO2層を増加させ、ペレットに成型した後、ポリ塩化ビニル(PVC)をペレットに載せ、300℃程度で熱処理することでPVCを液化させてペレットに含浸し、900℃程度で熱処理してPVCを炭化する。ペレット外部の炭素を取り除き、HF処理によりSiナノ粒子表面の酸化層を除去してSi/C複合体を得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Cui, L. F.; Ruffo, R.; Chan, C. K.; Peng, H. L.; Cui, Y.,Nano Letters 2009,9,491
【非特許文献2】Magasinski, A.; Dixon, P.; Hertzberg, B.; Kvit, A.; Ayala, J.; Yushin, G. Nature Materials,2010,9, 353.
【非特許文献3】岩村振一郎、西原洋知、京谷隆、 「Siが体積変化できる空間を持つSi/炭素ナノ複合材料の合成」、第36回炭素材料学会年会予稿集、炭素材料学会、2009年11月30日、196頁〜197頁
【非特許文献4】岩村振一郎、西原洋知、京谷隆、「Si周囲にナノ空間を持つSi/C複合体のLi充放電特性」、第9回東北大学多元物質科学研究所研究発表会予稿集、東北大学多元物質科学研究所、2009年12月10日、40頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、このようにして得られたSi/C複合体をLiイオン電池の負極材料として用いた場合、充放電容量は小さく、またサイクル数を増加すると充放電容量が減少している。この現象は、充放電を繰り返すことによって、Si粒子が電極から剥がれてしまい、Siの有する容量が得られていないからと推察される。
【0008】
そこで、本発明においては、Siと炭素とを従来にない構造で複合させた複合材料及びその製造方法と、充放電容量が高くサイクル性能の高いLiイオンの負極材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の複合材料は、ナノサイズのSi粒子と、Si粒子を内包する空間とSi粒子を内包しない空間とを画成する炭素層の壁と、を含むことを特徴とする。
上記構成において、Si粒子の表面は酸化されていてもよい。
上記構成において、炭素層は0.34乃至30nmの平均厚さを有するのが好ましい。
上記構成において、Si粒子の表面には、好ましくは、層状のグラフェン構造からなる炭素層が形成されている。
この複合材料を負極として用いると、充放電容量が最大2000mAh/g以上であるか、又は2500mAh/g以上である。
上記構成において、Si粒子は、好ましくは、1×10乃至1.3×102nmの平均粒径を有する。
本発明のLiイオン電池の負極材料は、本発明の複合材料からなる。
本発明の電極は、本発明のLiイオン電池の負極材料を用いて構成されている。この電極体を負極としたときの充放電容量は1.0×103〜3.5×103mAh/gである。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の複合材料の製造方法は、ナノサイズのSi粒子の集合体を加熱して炭素を含む原料ガスによって各Si粒子に炭素層を形成することにより、Si粒子を内包した空間とSi粒子を内包しない空間とを画成する壁が炭素層で形成されることを特徴とする。
上記構成において、集合体の各Si粒子表面に酸化層を形成しておくことにより、酸化層を介在して各Si粒子を取り囲むように壁を形成し、その後、酸化層を溶解することにより、炭素層と各Si粒子との間の一部に中空を設けてもよい。
上記構成において、炭素層を形成した後、炭素層を形成する際の温度よりも高い温度に維持して熱処理を行うことが好ましい。
上記構成において、壁を形成する前に、集合体を圧縮してペレットに成型してもよい。この場合、炭素層を形成する際にパルスCVD法を用いることが好ましい。
上記構成において、炭素層が0.34乃至30nmの平均厚さを有する条件で形成され得る。
上記構成において、各Si粒子は、1×10乃至1.3×102nmの平均粒径を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複合材料が、ナノサイズのSi粒子と、Si粒子を内包する空間とSi粒子を内包しない空間とを画成する炭素層の壁を含んでいる。これをLiイオン電池の負極材料として用いて電極を構成すると、充電の際、Si粒子が膨張しても炭素層の壁のうちSi粒子を内包していない空間が小さくなり、Si粒子を内包した空間が大きくなってSi粒子を内包したまま維持することができる。これにより、充放電容量が高く、しかも充放電を繰り返してもその充放電容量の値が低下しないという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の一実施形態に係る複合材料を模式的に示す図である。
【図1B】本発明の別の実施形態に係る複合材料を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る複合材料の第1の製造方法を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る複合材料の第2の製造方法を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る複合材料の第3の製造方法を模式的に示す図である。
【図5】実施例1において用いたSi粒子の粒径分布を示す図である。
【図6】実施例1で作製した複合体の透過電子顕微鏡像を示す図である。
【図7】実施例2で得られた複合体の透過電子顕微鏡像を示す図である。
【図8】実施例3で得られた複合体の透過電子顕微鏡像を示す図である。
【図9】比較例1で作製した複合体の透過電子顕微鏡像を示す図である。
【図10】実施例1と比較例1の充放電特性を示す図である。
【図11】実施例2及び実施例3の充放電特性を示す図である。
【図12】実施例1及び実施例3で得られた複合体のラマン測定結果を示す図である。
【図13】実施例3の複合体をLiイオン電池の負極材としたときの各複合体の透過型電子顕微鏡(TEM,Transmission Electron Microscope)像であり、(a),(b),(c)はそれぞれ充放電サイクル前、5サイクル後、20サイクル後の複合体のTEM像を示す図である。
【図14】(a)乃至(c)は図13の各像の模式図である。
【図15】Si/C(900)、Si/C(1000)、Si/C(1100)の各サンプルについての結晶構造のX線回折(XRD,X-ray Diffraction)パターンを示す図である。
【図16】実施例4の充放電特性を示す図である。
【図17】高容量でありかつサイクル特性が良好なSi/C(900)のTEM像を示す図である。
【図18】熱処理を900℃で行ったSi/C(900)のサンプルの充放電特性を示す図である。
【図19】実施例5のnano−Si/C複合体を用いたときの充放電特性を示す図である。
【図20】(a)は20サイクル後の電極中におけるSiナノ粒子のTEM像であり、(b)は100サイクル後の電極中におけるSiナノ粒子TEM像であり、(c)は20サイクル後の電極中におけるSi/C複合体のTEM像であり、(d)は100サイクル後の電極中におけるSi/C複合体のTEM像を示す図である。
【図21】上限が1500mAh/gの容量となるよう制限を加えたときの充放電容量のサイクル特性を示す図である。
【図22】100サイクル後のSi/C複合体のTEM像を示す図である。
【図23】Siナノ粒子の平均粒径が80nmのとき、上限が1500mAh/gの容量となるよう制限を加えた場合の充放電容量のサイクル特性を示す図である。
【図24】実施例6の充放電特性を示す図である。
【図25】比較例3の充放電特性を示す図である。
【図26】炭素の存在状態の違いによるSiナノ粒子の充放電への影響を調べた結果を示す図である。
【符号の説明】
【0013】
1,2:Si/C複合材料(複合体)
11:Si粒子
12:壁
13a:Si粒子を内包した空間
13b:Si粒子を内包しない空間
21,31,41:Si粒子
22:酸化層
23:シリコン酸化層
24,32,42:炭素層
43:微細化したSi
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係るSiと炭素の複合材料(以下、「複合材料」又は「複合体」という。)は、例えばLiイオン電池の負極材料として用いられる。
【0015】
〔複合材料〕
図1A及び図1Bは何れも本発明の実施形態に係る複合材料を模式的に示す図である。本発明の実施形態に係る複合材料1,2は、図1A及び図1Bに示すように、ナノサイズのSi粒子11と炭素層の壁12とで構成されている。炭素層の壁12はSi粒子11を内包する空間13aとSi粒子11を内包しない空間13bとを画成する。壁12がSi粒子11を保持している場合には、壁12は骨格と呼んでも差し支えない。
【0016】
図1Aに示す形態にあっては、Si粒子11を内包する空間13aにおいて、Si粒子11を内包した領域同士がつながっており、その領域を画する炭素層の壁12にSi粒子11が固着されている。炭素層の壁12に取り囲まれた空間には、Si粒子11を内包する空間13aの他に、Si粒子11を内包しない空間13bがある。Si粒子11を内包した各領域には、Si粒子11の占有領域とSi粒子11が存在しない非占有領域とがある。すなわち、本材料の空隙は、空間13aのうちSi粒子によって占有されていない領域(非占有領域)と空間13bの2種類の空間から成る。この空隙の体積はSi粒子11の占有領域の約3倍以上である。空隙体積がこの範囲にあることにより、この複合材料をLiイオン電池の負極材料として充電した際、Si粒子11がLiイオンによって体積が3〜4倍に膨張しても、空隙が緩衝領域としても機能し、炭素層12が破壊されない。もし空隙の体積がSi粒子11の占有領域の3倍以下である場合、充電によりSi粒子が元の体積の3倍以上に膨張すると導電パスである炭素層12は破壊され、Si粒子は電気的に絶縁されるため、負極として機能しなくなる。
【0017】
図1Bに示す形態に係る複合材料2は、Si粒子11同士が凝縮してつながった状態であって、そのつながった凝縮体の表面に伸縮可能な蛇腹状のグラフェン層でなる壁12が形成されてなる。ここで、Si粒子11の表面には極薄の酸化層が形成されており、酸化層同士でSi粒子11がつながっていてもよい。つまり、図1Bに示す複合材料2においては、Si粒子11を内包する空間13aにおいて、Si粒子11を内包した領域同士がつながっており、その領域を画する壁にSi粒子11が固着されている。この各領域はほとんどSi粒子11が占有している。ここで、Si粒子11の表面には酸化層が形成されていてもよく、また、Si粒子11と炭素層の壁12との間には酸化層が介在していてもよい。図1Bに示す形態においては、蛇腹状のグラフェン層そのものがSi粒子の膨張を緩衝できるため、空隙の体積は必ずしもSi粒子11の占有領域の約3倍以上である必要はない。
【0018】
何れの複合材料1,2の場合においても、Si粒子11は、等価断面直径10nm〜130nmの球に等しい寸法を有している。このことを、本明細書においては、10nm〜130nmの平均直径を有すると表現することにする。Si粒子11はSiのアモルファスでも結晶でもよい。またSi粒子11の表面の浅い領域が酸化されていても構わない。
【0019】
壁12は炭素層でなっており、その炭素層は一部又は全部が層状のグラファイトからなっているか、又はグラファイトを含まない乱雑な構造を有している。グラファイトの1層の原子面(「グラフェン」と呼ぶ。)は六方格子である。炭素層は0.34乃至30nmの平均厚さを有する。
【0020】
本発明の実施形態に係る複合材料1,2をLiイオン電池の負極材料として用いて電極を構成すると、1.0×103〜3.5×103mAh/gの充放電容量と極めて高い値を得ることができる。
【0021】
〔製造方法〕
本発明の実施形態に係る複合材料の製造方法は、ナノサイズのSi粒子の集合体を加熱して炭素を含む原料ガスによって各Si粒子11に炭素層を形成する。これにより、図1A、図1Bに示すように、Si粒子11を内包した空間13aとSi粒子11を内包しない空間13bとを画成する壁12を構築する。
【0022】
図2は第1の製造方法を模式的に示す図であり、製造工程の概略を順次説明する。
図2(a)に示すようにナノサイズのSi粒子21を集積する。Si粒子21の表面は酸化されており、酸化層22が形成されている。
次に、図2(b)に示す酸化層形成工程において、ナノサイズのSi粒子21を酸素雰囲気又は酸素を含む混合ガス雰囲気中で熱処理する。これによりSi粒子21における酸化層22の上にシリコン酸化層23を形成する。
図2(c)に示すペレット成型工程において、表面にシリコン酸化層23を有するSi粒子21を集積し、圧縮してペレットに成型する。
次に、図2(d)に示す炭素層形成工程において、反応容器中にペレットをおき、所定の温度に維持した状態において炭素を含有する原料ガスを流す。これにより、ペレット中のシリコン酸化層23の表面に炭素層24を形成する。
次に、図2(e)に示す熱処理工程において、炭素層形成工程よりも昇温しその温度に維持して熱処理を行う。これは炭素層形成工程で被膜した炭素層24の結晶性を高めるためである。
シリコン酸化層除去工程において、シリコン酸化層23を溶解して、Si粒子21と炭素層24との間にあるシリコン酸化層23を除去する。ここで、炭素層24には微小な孔が多数存在するため、シリコン酸化層23を溶解するための溶剤は炭素層24を浸透する。
その後、後処理工程として、炭素層24を安定化させるために熱処理を行って壁12を構築する。
以上の工程により、Si粒子11を内包する空間13aとSi粒子を内包しない空間13bとが炭素層24で仕切られた、Siと炭素との複合体1が得られる。
【0023】
上記各工程についてさらに具体的に説明する。例えば、ペレット成型工程においては、真空下において圧縮してペレットを成型する。
【0024】
炭素層形成工程における温度は500℃〜1200℃の範囲である。温度が500℃未満であると、表面に炭素が析出し難い。温度が1200℃を超えるとSiと炭素とが反応してSi−Cで結合が形成されてしまうので好ましくない。
【0025】
この製造方法では、ペレット成型を行っているため、真空パルスCVD法を用いることが好ましい。真空パルスCVD法は、反応容器内にペレットを配置して真空状態にしておき、ある特定の時間だけガスを流すことを一回又は繰り返し行うことにより、ペレット内部から外部へ圧力勾配を生じさせ、これを駆動力としてペレットの内部までガスを入り込ませる手法である。これにより、Si粒子を圧縮して成型したペレットの外表面のみならず、ペレット内部のSi粒子の表面に炭素を析出させることができる。
【0026】
炭素を含有する原料ガスは、反応温度においてガス化され、炭素を含有するものであればよく、例えばメタン、エタン、アセチレン、プロピレン、ブタン、ブテン、などの炭化水素、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、ピロメリット酸二無水物などの芳香族化合物、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトニトリル、アクリルニトリルなどのニトリル化合物から適宜選択される。
【0027】
熱処理工程及び後処理工程では、真空雰囲気中又は窒素などの不活性ガス雰囲気中において、炭素層形成工程と同じ温度又は炭素層形成工程より高い温度で維持する。これにより、網状に形成された炭素を安定化させる。
【0028】
次に、本発明の複合材料の第2の製造方法について説明する。図3は第2の製造方法を模式的に示す図である。第2の製造方法では、酸化層形成工程を行わず、ペレット成型工程、炭素層形成工程、熱処理工程を順に行う。この一連のプロセスでは、Si粒子の表面には自然酸化層が形成されていてもこの自然酸化層を積極的に除去する必要は必ずしもない。
【0029】
図3(a)に示すようにナノサイズのSi粒子31を集積する。Si粒子31の表面が酸化されて酸化層が形成されている状態であってもよい。
次に、図3(b)に示すペレット成型工程において、Si粒子31を集積して、圧縮してペレットに成型する。
図3(c)に示す炭素層形成工程では、反応容器中にペレットをおき、所定の温度に維持した状態で炭素を含有する原料ガスを流す。これにより、ペレット中のSi粒子31の表面に炭素層32を形成する。
図3(d)に示す熱処理工程においては、炭素層形成工程より高い温度に昇温しその温度に維持して熱処理を行う。炭素層形成工程で被膜した炭素層32の結晶性を高め、壁12を構築する。
以上の工程により、Siと炭素との複合体2が得られる。各工程の詳細については第1の製造方法と同様である。
【0030】
次に、第3の製造方法について説明する。図4は第3の製造方法を模式的に示す図である。
第3の製造方法では、前記第2の製造方法のようにペレット成型工程を行わず、図4(a)に示すように自然凝集したSi粒子41を用いる。炭素層形成工程において反応容器中に配置して、所定の温度に維持した状態で炭素を含有する原料ガスを流す。これにより、図4(b)に示すようにSi粒子41の表面又はSi粒子41表面のシリコン酸化層上に炭素層42を形成する。
次に、図4(c)に示す熱処理工程において、炭素層形成工程よりも昇温しその温度に維持して熱処理を行う。これは炭素層形成工程で被膜した炭素層42の結晶性を高めるためである。
以上の工程により、Si粒子11を内包する空間13aとSi粒子を内包しない空間13bとが炭素層42で仕切られた、Siと炭素との複合体3が得られる。
この一連のプロセスであっても、Siナノ粒子の表面に存在する自然酸化層が極めて薄い場合は、この自然酸化層を積極的に除去する必要はない。
【0031】
第3の製造方法により得られた複合体3は、ナノサイズのSi粒子41が自然凝縮しており、Si粒子同士が連結し、ネットワークを形成している。そのため、第1の製造方法、第2の製造方法のように圧縮成型のプロセスを経る必要はない。
【0032】
何れの製造方法においても、Si粒子は、直径が概ね数十から百数十nmの範囲であって、例えば20nm〜30nmの範囲で平均粒径が25nmであるもの、50nm〜70nmの範囲で平均粒径が70nmであるもの、又は、110〜130nmの範囲で平均粒径が125nmであるものなど、適宜に選択することができる。Si粒子は、このような範囲のサイズであることが好ましいが、直径が数百nmのSi粒子が混在していても構わない。
【実施例1】
【0033】
実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。実施例1は図2に示す工程に沿って行った。
平均粒径60nmのSiナノ粒子を、アルゴン80体積%と酸素20体積%との混合雰囲気中で、900℃で、200分熱処理を行うことにより、Siナノ粒子の表面に初めから存在していたSiO2層の厚みを更に増加させて、表面にSiO2が形成されたSi粒子(以下、「Si/SiO2粒子」と表記する。)を作製した。
【0034】
次に、Si/SiO2粒子をペレット成型機を用いて真空下で700MPaで圧縮して直径12nmの円盤状のペレットに成型した。
このペレットを750℃の一定温度に保ちながら、60秒真空引きを行い、その後アセチレン20体積%、窒素80体積%の混合ガスを1秒流して構成するサイクルを300回繰り返すことにより、Si/SiO2粒子の表面に炭素を析出させた。
続けて、温度を900℃まで昇温し、その温度を120分一定に保持して熱処理を施し、炭素の結晶性を高めた。そして、0.5質量%のフッ化水素酸水溶液中で90分撹拌し、SiO2層を溶解して酸化膜を除去した。最後に、再び温度を900℃まで昇温し、その温度を120分一定に保持して熱処理を施した。これにより、シリコンと炭素の複合材料を得た。
【0035】
図5は、実施例1で用いたSi粒子の粒径分布を示す図である。横軸が粒径nmであり、縦軸は数である。実施例1で用いたSi粒子のうちランダムに100個選択して各粒子の粒径をSEM像から計測して求めた。図5から、実施例1で用いたSi粒子の8割以上が40〜120nmの範囲であることが分かる。また、平均粒径は76nmであった。
【0036】
図6は実施例1で作製した複合体の透過電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。図6から、Si粒子が、炭素層とSi粒子との間に空隙が形成される状態で薄い炭素骨格の中に収まっていることが確認される。また、炭素の骨格は、Si粒子を内包してSi表面と炭素内周面との間で隙間を有するように形成されている空間と、Si粒子を内包せずに炭素の面でのみ隙間を有するように形成されている空間と、を画成する。炭素の骨格は複数の空間に区分けしている。図6から分かるようにSi粒子を内包した空間と、Si粒子を内包していない空間とがある。Si粒子を内包した空間はSi粒子を内包していない空間よりも大きくても小さくてもよいが、図6に示す試料においては、Siを内包した空間はSi未内包の空間よりも等価断面半径で1.2倍程度大きい。この値は、炭素層の厚さを3nmとしてペレットの充填率と粒子のSi/SiO2比から体積比を計算し、各空間が均一な球として求めたものである。
【0037】
ペレットに成型する前のSi/SiO2粒子中のSi/SiO2比を計算した結果、Siの2.7倍の体積のSiO2が存在していた。Si/SiO2比は、空気雰囲気下で1400℃で2時間熱処理を行い、完全に酸化した際の重量増加を測定して求めた値から算出した。
実施例1での作製方法では、Siの周囲に存在するSiO2層が鋳型となり、複合体中のSiの周りにSiが3.7倍まで体積膨張をすることができる空間が存在している。このため、SiO2が鋳型となって形成される空間の存在により、充電時に起こるSiの最大で4倍の体積膨張をほぼ完全に緩衝することができる。
【0038】
さらにTEM像から、炭素骨格間にもわずかに隙間が存在することも確認できる。このため、もし体積膨張の際、Si粒子の周りの空間が足りないような粒径の大きなSi粒子が存在しても、Siを内包していない炭素骨格の隙間でもSiの体積膨張を緩衝するため、複合体の構造破壊が起き難いと考えられる。
【0039】
複合体を空気雰囲気下で、1400℃にて2時間熱処理を行い、完全に酸化させた際の重量変化を測定して複合体中のSi/C比を算出した。複合体中のSi/C比は、65重量%のSiが含まれていることが分かった。この複合体の重量あたりの理論容量を炭素とSiの理論容量から計算すると2850mAh/gとなる。
後述する比較例1で示すように、PVCを炭素源としてSiの周りに空間を有する複合体では、Si粒子間に炭素が完全に充填してしまうために、複合体中のSi含有率は約21質量%であった。
実施例1では、炭素層をSi粒子の周りに薄く析出させているため、複合体のSi含有率を大きく増加させることができた。
【実施例2】
【0040】
実施例2は図3に示す工程に沿って行った。
自然酸化膜を除去しないで平均粒径25nmのSiナノ粒子をペレット成型機を用いて真空下で700MPaで圧縮して直径12nmの円盤状のペレットに成型した。
このペレットを750℃の一定温度に保ちながら60秒真空引きを行い、その後アセチレン20体積%、窒素80体積%の混合ガスを1秒流して構成するサイクルを300回繰り返すことにより、Siナノ粒子の表面に炭素を析出させた。続いて、温度を900℃まで昇温し、その温度を120分一定に保持して熱処理を施し、炭素の結晶性を高めた。これにより、シリコンと炭素の複合体を得た。
【0041】
図7は、実施例2で得られた複合体の透過電子顕微鏡像の結果を示す図である。(a)が低倍率で観察した像であり、(b)が高倍率で観察した像である。図7(a)に示す低倍率の像から、炭素がSi粒子の表面に隙間なく析出していることが分かる。図7(b)に示す高倍率の像から、Si粒子の表面に析出した炭素の網面はSi粒子表面に対して平行に積層しておらず、波打ったように積層していることが確認される。つまり、図3(d)に模式的に示すように、Si粒子の表面には蛇腹状のグラフェン層が形成されていることが分かる。
複合体の炭素含有量を実施例1と同様に熱処理後の測定結果から求めたところ、炭素が29質量%であった。
【実施例3】
【0042】
実施例3は図4に示す工程に沿って行った。
自然酸化膜を除去しないで、平均粒径25nmのSiナノ粒子の集合体をペレット成型せず、750℃の一定温度に保ちながら、アセチレン10体積%、窒素90体積%の混合ガスを30分流して、Siナノ粒子の表面に炭素を析出させた。続けて、温度を900℃まで昇温し、その温度を120分一定に保持して熱処理を施し、炭素の結晶性を高めた。これにより、シリコンと炭素の複合体を得た。
【0043】
図8は、実施例3で得られた複合体の透過電子顕微鏡像を示す図である。(a)が低倍率で観察した像であり、(b)が高倍率で観察した像である。図8(a)に示す低倍率の像から、炭素がSi粒子の表面に析出していることが分かる。図8(b)に示す高倍率の像から、Si粒子の表面に析出した炭素の網面はSi粒子表面に対して平行に積層しておらず、波打ったように積層していることが確認される。つまり、図4(c)に模式的に示すように、Si粒子の表面には蛇腹状のグラフェン層が形成されていることが分かる。複合体の炭素含有量を実施例1と同様に熱処理後の測定結果から求めたところ、炭素が20質量%であった。
【0044】
〔比較例1〕
平均粒径60nmのSiナノ粒子を空気雰囲気下で900℃、200分熱処理を行うことにより、Siナノ粒子の表面に初めから存在していたSiO2層の厚みを更に増加させて、表面にSiO2が形成されたSi粒子(以下、「Si/SiO2粒子」と表記する。)を作製した。
次に、実施例1と同様、Si/SiO2粒子をペレット成型機を用いて真空下で700MPaで圧縮して直径12nmの円盤状のペレットに成型した。成型したペレットに過剰量のPVC(ポリ塩化ビニル)を載せて300℃で1時間熱処理を行い、液化したPVCをSi/SiO2粒子の粒子間に含浸した。続けて、900℃で60分熱処理を行うことで、ピッチを完全に炭素化した。その後、0.5質量%のフッ化水素酸水溶液中で90分撹拌することにより、Si/SiO2粒子表面のSiO2層を溶解した。再び、900℃で120分熱処理を行って、複合体を得た。
【0045】
図9は、比較例1で作製した複合体の透過電子顕微鏡像を示す図である。(a)はその像を示し、(b)は模式的に示す図である。この像から、Si粒子61の周囲には、充電の際の体積膨張を緩衝させる空間62が炭素でなる収容体63によって形成されていることが分かる。
比較例1の作製方法において、Si/SiO2粒子のSi/SiO2比を実施例1と同様にして求めた。Siの占有空間の約3.2倍の体積を有するSiO2が存在していた。よって、比較例1で得られた複合体では、Siの周りにはSiが4.2倍まで体積膨張ができる空間が存在しているといえる。こうして、比較例1の複合体は、SiO2層が鋳型となって形成された空間により充電の際生じる体積膨張を緩衝することができる。つまり、その空間の形成により、Si占有率の最大約4倍の体積膨張を緩衝することができる。しかしながら、実施例1乃至3とは異なり、図9に示す像から、SiO2が鋳型となった空間以外に空間は存在せず、Si/SiO2粒子の粒子間の隙間には炭素が充填したと考えられる。よって、Siナノ粒子の周りの緩衝空間が、充電の際におけるSiの体積膨張よりも大きくなると、複合体の構造が破壊されてしまうと予測される。
【0046】
実施例1乃至3及び比較例1でそれぞれ作製した複合体を用いて、Liイオン電池の負極を作製して充電特性を調べた。
実施例1乃至3で作製した複合体を用いて次の要領で電極を作製した。複合体、カーボンブラック(電気化学工業製、商品名:デンカブラック)、2質量%カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose(CMC)、CMCダイセル社製DN−10L)及び48.5質量%スチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber(SBR)、JSR社製のTRD2001)を用いて、乾燥後の混合割合が重量比で複合体:カーボンブラック:CMC:SBRが67:11:13:9となるように混合した。この混合溶液を9m・inch(ミリインチ)のアプリケーターを用いて銅箔に塗布し、80℃で1時間乾燥させた後に、直径15.95mmの円形に打ち抜き、電極を作製した。
このようにして作製した電極を、グローボックスに備え付いているパスボックス内で120℃で6時間真空乾燥した後、アルゴン雰囲気のグローボックス内でコインセル(宝泉、2032型コインセル)に組み込んだ。この際、対極には金属リチウム、電解液には1M−LiPF6溶液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)の1:1混合溶媒)、セパレーターにはポリプロピレンシート(セルガード ♯2400)を用いた。作製したコインセルを0.01〜1.5V(v.s. Li/Li+)の電位範囲で定電流充放電を行うことで試料の電気化学測定を行った。
【0047】
比較例1で作製した複合体を用いて、次の要領で電極を作製した。比較例1の複合体とポリフッ化ビニリデン(PVDF)のn−メチル−2−ピロリドン溶液(クレハ製、KFポリマー(♯1120)とを混合してスラリーを銅箔へ塗布して乾燥を行い、直径16mmの円形に切り出して電極とした。その際、複合体とPVDとが重量比で4:1となるようにした。この電極を対極に金属Li、電解液には1M−LiPF6溶液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)の1:1混合溶媒)を用い、セパレーターにはポリプロピレンシート(セルガード ♯2400)を用いた。作製したコインセルを0.01〜1.5V(v.s. Li/Li+)の電位範囲で定電流充放電を行うことで試料の電気化学測定を行った。
【0048】
図10は、実施例1と比較例1の充放電特性を示す図である。横軸はサイクル数であり、縦軸は容量(mAh/g)である。△、▲、○、●の各プロットは何れも実施例1の複合体を用いて作製した電極の場合で、◇、◆の各プロットは何れも比較例1の複合体を用いて作製した電極の場合を示す。▲、●、◆のように塗潰しの各プロットはリチウム挿入時(以降、充電と表現する)の値、△、○、◇のように中抜きの各プロットはリチウム放出時(以降、放電と表現する)の値を示す。○、●の各プロットは5サイクル目までの電流密度が50mA/g、6サイクル目以後の電流密度が200mA/gの場合であり、△、▲、◇、◆の各プロットは全てのサイクルにおいて電流密度が200mA/gの場合である。
【0049】
図10から、実施例1では、電流密度50mA/gで充放電測定を行った場合、1サイクル目で容量が1900mAh/gであり、電流密度200mA/gで充放電測定を行った場合、1サイクル目で容量が1650mAh/gであった。
また、充放電を繰り返し行っても容量の低下が少なく、特に電流密度50mA/gで充放電した2サイクル目から5サイクル目までの間は容量の低下は見られなかった。また、1サイクル目から電流密度200mA/gで充放電を繰り返しても、20サイクル目でも容量が1400mAh/gであり、1サイクル目の容量と比べて85%の容量を保持している。
【0050】
一方、比較例1では、電流密度200mA/gで充放電測定を行った場合、1回目の放電量でも691mAh/gしか得られていない。また、充放電のサイクルを繰り返すと、容量が大きく低下し、20サイクル目では341mAh/gで、1回目の放電量の49%以下であった。
【0051】
実施例1と比較例1とを対比すると、実施例1の方が、遥かに大きな充放電容量を得ることができる。
【0052】
図11は、実施例2及び実施例3の充放電特性を示す図である。横軸はサイクル数であり、縦軸は容量(mAh/g)である。○、●の各プロットは実施例2の複合体を用いて作製した電極の場合で、□、■の各プロットは実施例3の複合体を用いて作製した電極の場合を示す。塗潰したプロットは充電時の値、中抜きのプロットは放電時の値を示す。何れも電流密度が200mA/gの場合である。
図から、実施例2及び実施例3では、実施例1の場合と比較して大きな充放電容量を有していることが分かる。また、充放電サイクルを重ねても容量の低下が小さいことが分かる。
実施例2の複合体では、図7に示すように、波打った形状の炭素の壁はある程度柔軟性を有しており、充放電に伴ってSiの体積変化が生じた場合であっても、Si粒子が炭素壁から剥離しておらず、充放電サイクルを繰り返すことができたためと推察される。
【0053】
図12は、実施例1及び3で作製した複合体のラマン測定の結果を示す。(a)は実測データそのものであり、(b)は約500cm-1をピークとするSi強度で両スペクトルを比較できるように調整した結果である。図12に示すスペクトルのうち、図12において上側に示す第1のスペクトルは、実施例1で作製した複合体のラマンスペクトルである。図12において下側に示す第2のスペクトルは、実施例3で作製した複合体のラマンスペクトルである。
何れのスペクトルにおいても約1300cm-1、約1600cm-1付近にピークが表れており、約1600cm-1付近にピークがあることから、炭素層の炭素はグラフェンシート構造をもつことを示す。
【0054】
また、実施例1について透過電子顕微鏡(TEM)像を観察したところ、部分的に層状のグラファイト構造をもつことを確認した。
実施例2及び3については、数十サイクル充放電を繰り返し行った後、複合体をTEM、SEMを用いて観察したところ、構造劣化がなかった。
【0055】
以上、実施例1乃至3及び比較例1を示したが、これらの実施例は本発明を限定するものではなく、図4に示す製造方法において、種々の条件、例えばSiの平均粒径を約60nm,120nmと大きくしても同様の結果が得られることが予想される。また、平均粒径25nmのSi粒子においても実施例3で示した以外の条件、例えば炭素層をプロピレン、ベンゼンなどの各種原料ガスを用いても同様の結果が得られることが予想される。
【0056】
実施例3で得た複合体で作製したLi電池を充放電した際、複合体にどのような構造変化が起きたか、TEM像により詳細に調べた。図13は、実施例3の複合体をLiイオン電池の負極材としたときの各複合体のTEM像であり、(a),(b),(c)はそれぞれ充放電サイクル前、5サイクル後、20サイクル後の複合体のTEM像であり、図14の各図は図13の各像の模式図である。
【0057】
図13(a)及び図14(a)に示すように、充放電を行う前では、Siナノ粒子41が連続しており、その表面に厚さ約10nmのカーボンナノ層42が形成されている。充放電を5サイクル繰り返した後は、図13(b)及び図14(b)に示すように、Siナノ粒子41が微細化している。充放電を20サイクル繰り返すと、図13(c)及び図14(c)から、符号43で示すようにSiがさらに微細化し、炭素骨格44と一体化している。すなわち、微細化したSi43が、符号44で示すカーボンのフレームネットワークの内側に沿って三次元ネットワークを形成していることが分かる。そのため、カーボン被覆により導電パスが形成されていると考えられる。
【0058】
ここで、カーボンフレームは電子輸送の場として機能し、カーボンフレームの内側のSiで囲まれた領域は、Liを貯蔵する場として機能し、カーボンフレームで囲まれ、Siで囲まれていない領域がLiを輸送する場として機能すると推察される。
なお、充放電サイクルが、20回以内では、容量は、黒鉛の理論値372mAh/gの約7倍、2500mAh/gという高い値である。
【実施例4】
【0059】
実施例4として、図4に示す作製方法により実施例3での合成条件と異なる条件で複合体を合成した。自然酸化膜を除去しないで、平均粒径25nmのSiナノ粒子の集合体をペレット成型せず、真空中で750℃まで昇温し、750℃一定温度に保ちながら60秒真空引きを行い、その後アセチレン20体積%、窒素80体積%の混合ガスを1秒流して構成するサイクルを300回繰り返すことにより、Siナノ粒子の表面に炭素を析出させた。この時得られた複合体を「Si/C」と表記する。Si/C中の炭素量は21wt%であった。
【0060】
続けて、真空中で、温度を900℃まで昇温し、真空中でその温度を120分一定に保持して熱処理を施し、炭素の結晶性を高めた。これにより、シリコンと炭素の複合体を得た。この状態での複合体を「Si/C(900)」と表記する。Si/C(900)では、炭素層の厚みは約10nmであり、炭素層の配向は乱雑であることをTEM像により確認した。なお、Si/C中の炭素量は900℃での熱処理により19wt%まで微減している。
【0061】
その後、Arガスを流しながらさらに1000℃と1100℃の二つの温度条件で熱処理をした。熱処理を1000℃で行ったサンプルを「Si/C(1000)」と表記し、熱処理を1100℃で行ったサンプルを「Si/C(1100)」と表記する。
【0062】
図15は、Si/C(900)、Si/C(1000)、Si/C(1100)の各サンプルについての結晶構造のXRDパターンを示す図である。横軸は回折角2θ(degree)であり、縦軸はX線回折強度である。図15から、炭素原子に起因するスペクトルは観測されず、炭素の結晶性が低いことが分かった。Si/C(1100)のサンプルでは、結晶性SiCが形成されていることが分かった。
【0063】
実施例4で得られた各複合体を用いて、実施例1乃至3と同様に、Liイオン電池の負極を作製して充電特性を調べた。
【0064】
図16は、実施例4の充放電特性を示す図である。比較のために、未被覆のSiナノ粒子でのデータも併せて示してある。丸(●)プロットはSi/C、四角(■)プロットはSi/C(900)、三角(▲)プロットはSi/C(1000)、菱形(◆)プロットはSi/C(1100)の各データである。
【0065】
何れのSi/C複合体も約19%の炭素を含むため、複合体の理論容量は純粋なSiよりも小さいはずである。しかし、何れのサンプルもSiナノ粒子と同程度もしくはそれ以上の充放電容量を示すことが分かった。これは、炭素被覆により導電パスにつながるSiの量が増加したためと考えられる。
【0066】
図16に、Si/Cのサンプルが最も大きい初期Li放出容量2750mAh/gを示した。炭素の容量を372mAh/gと仮定すると、SiはLi3.5Siの組成までLiと合金化している計算となる。これはSiの理論容量の組成(Li15Si4)に近い状態である。しかしSi/Cのサンプルでは、サイクルを重ねると徐々に容量が低下し、20サイクル後の容量はSi/C(900)とほぼ同じになる。一方、Si/Cを900℃で熱処理して炭素の結晶性を向上させたSi/C(900)のサンプルでは、初期容量はSi/Cと比べて低いが、容量の保持率は向上している。炭素構造が強固になったことでSiの膨張が若干抑制され容量は低下したものの、高温熱処理により炭素がわずかに収縮し、Siとの密着性が高まったため容量保持率が向上したと考えられる。
【0067】
さらに高温で熱処理したSi/C(1100)のサンプルの場合、容量保持率はSi/C(900)と同程度に高いが、カーボンの被覆をしていないサンプルより容量が低下している。これは、熱処理によりSiCが生成したためと考えられる。図17は、高容量でありかつサイクル特性が良かったSi/C(900)のTEM像である。Siナノ粒子表面に厚さ約10nmのカーボン層が隙間なく析出しており、カーボン層内部の炭素六角網面は乱雑に配向していることが分かった。
【0068】
以上のことからSiナノ粒子の表面が炭素に覆われていること、好ましくは、完全に覆われていることで、Siが膨張してもSiの電気的な接触が失われることなく充電できたものと考えられる。
【0069】
次に、熱処理を900℃で行ったSi/C(900)のサンプルについて充放電の電流密度を変化させてサイクル特性及びレート特性を求めた。図18は、熱処理を900℃で行ったSi/C(900)のサンプルの充放電特性を示す。横軸はサイクル数、左縦軸は容量(mAh/g)であり、右縦軸はクーロン効率(%)である。
【0070】
4サイクルまでは電流密度を200mA/g(0.04C)とし、その後、20サイクルまでは電流密度を1000mA/g(0.2C)とし、21サイクルから80サイクルまでは電流密度を2500mA/g(1C)とし、81サイクルから94サイクルまでは電流密度を100mA/g(0.2C)とし、その後200mA/g(0.04C)とした。
【0071】
1回目の放電容量は2730mAh/gと極めて高容量であり、理論容量2900mAh/gの94%にも達した。4回目の放電容量は、初期容量よりも9%しか減少せず、20サイクルまでは初期容量よりも15%しか減少せずレート特性もよい。さらに、21回目のサイクルを1C、即ち1時間でフル充電できる電流密度で充放電を行っても約2000mAh/gとなり、その後減少する。100サイクル後も1500mAh/gの容量を保持しており、容量の減少が少ない。
【0072】
充放電による構造変化をTEM像により観察したところ、充放電によりSi粒子が微粒子化して、ナノレベルで炭素と複合化して枝状構造を形成していることを確認した。
【0073】
以上のことから、Siが体積変化を繰り返しても、Siの導電パスが保てたため、従来困難であった高容量と長寿命を両立させることができることが分かった。
【実施例5】
【0074】
平均粒径60nmのSiナノ粒子の集合体を真空中で750℃に昇温し、一定の温度に保ちながら、60秒真空引きを行い、その後アセチレン20体積%、窒素80体積%の混合ガスを1秒流して構成するサイクルを300回繰り返した。その結果、炭素がSiナノ粒子の表面に析出した。続けて、真空のまま、900℃まで昇温し、その温度を120分一定に保持して熱処理を施し、炭素の結晶性を高めた。
【0075】
以上により、複合体として炭素で被覆したSiナノ粒子を得た。複合体を空気雰囲気中で1400℃に加熱して完全に酸化させ、重量変化の測定から、複合体中のSi/C比を算出した。ナノSi/C中の炭素は19wt%であった。Si/C比からnano−Si/Cの理論的容量は、2970mAh/gと計算できる。ただし、Siの理論的容量を3580mAh/gとし、Cの理論的容量を372mAh/gとした。
【0076】
作製した複合体を用いて、実施例1乃至3と同様に、Liイオン電池の負極を作製した。ただし、負極の厚さが15μmとなるように電極体を作製した。実施例1乃至3と同様にして電気化学測定を行った。
【0077】
作製したnano−Si/Cの複合体のTEM像を観察した結果、Siナノ粒子が3次元ネットワーク構造を形成するようにつながっており、Siナノ粒子の表面は平均10nmのナノサイズの炭素層で被覆されていた。炭素層は、通常の積層構造ではなく、そのグラフェンシートの配向がかなり整っていない状態であった。
【0078】
〔比較例2〕
比較例2として、平均直径1μmのマイクロサイズのSiマイクロ粒子を用いて同様に、Si/C複合体を作製し、それを用いて電極を作製した。
【0079】
図19は、実施例5のnano−Si/C複合体を用いたときの充放電特性を示す図である。横軸はサイクル数であり、左縦軸は容量(mAh/g)、右縦軸はクーロン効率(%)である。Siナノ粒子と実施例5のSi/C複合体とでは、電流密度を0.2〜5A/gの範囲で変化させた。Siマイクロ粒子では、20サイクルまでで急激に容量が減少したのに対し、Siナノ粒子とSi/C複合体では、100サイクル後でも大きな容量、具体的には1300mAh/gよりも高い値を維持している。Siがより小さな粒子サイズを有していることが、よりよいサイクル特性のために重要な意義を示している。
【0080】
第1回目のLiの放出容量は、Siナノ粒子では3290mAh/gであり理論値の91%であった。Si/C複合体では2250mAh/gであり理論値の88%であった。電流密度の小さい最初の充放電サイクルでは、炭素の存在がSi/C複合体の放電特性に何ら影響を与えていない。しかしながら、その後35サイクルまでは、Si/C複合体での容量は、Siナノ粒子の場合よりも安定している。その後65サイクルまで5A/gという高い電流密度で充放電を行うと、Si/C複合体では、Siナノ粒子よりも高い容量であった。
【0081】
Si/C複合体のよりよいサイクル特性とレート特性を達成するためには、初期の段階では、Siナノ粒子に電流を供給するために連続したカーボンネットワークが必要である。そのようなカーボンネットワークは、サイクルの際、Si/C複合体の構造がダイナミックに変化して形成される。ところが、66サイクル以降は、そのような効果も見られなくなった。これはカーボンネットワークが消滅したためと考えられる。
【0082】
図20(a)は20サイクル後の電極中におけるSiナノ粒子のTEM像である。充放電前には球形であったSiナノ粒子は、20回の充放電を繰り返すことでデンドリット、すなわち枝状結晶のような構造に大きく変化していることがわかる。(c)は100サイクル後の電極中のSiナノ粒子のTEM像である。樹枝状結晶のような構造は消失し、完全に無秩序な凝集体となることがわかる。(b)は20サイクル後の電極中のSi/C複合体のTEM像である。Siナノ粒子が炭素で被覆されている場合にも、(a)の炭素がない場合と同様に樹枝状結晶のような構造が形成されることがわかる。したがって、充放電前にSiナノ粒子を被覆していた炭素層はSiナノ粒子と共に大きく構造変化し、樹枝状結晶のような構造の中に取り込まれたはずである。(d)は100サイクル後の電極中のSi/C複合体のTEM像である。なお、複合体作成後のSi/C複合体のTEM像は図13(a)と同様の像であった。
【0083】
Si/C複合体は、初期の状態と充放電を繰り返し後では大きく変化し、充放電を繰り返すことで、デンドリット、すなわち枝状結晶のような構造に変化し、100サイクル後では完全に無秩序となっている。
【0084】
図20(b)から、Siと炭素がデンドリットでフレームネットワーク中に、均一に混在していることが分かった。デンドリットのインピーダンスを測定したところ、低い電荷輸送抵抗を有していた。
【0085】
以上のことから、カーボンナノ層をSiナノ粒子上に形成した後に、デンドリットのような構造でフレームネットワークに変化していることが分かった。
【0086】
そこで、デンドリットのフレームネットワークが壊れないように充放電できないか検討した。図19の初期Li挿入における容量から、Si/C複合体中のSiは初期の約3.7倍まで体積が膨張していると推算される。このような大きな体積膨張は激しい構造変化を引き起こす原因の1つと考えられる。そこで、Li挿入の際、上限1500mAh/gの容量となるように制限を加えて、Si/C複合体を用いて充放電を繰り返した。この1500mAh/gは、Li1.9Siに対応した値である。この条件では、SiのLi挿入に伴う体積膨張は初期の約2.0倍に抑えられる。
【0087】
図21は、上限が1500mAh/gの容量となるよう制限を加えたときの充放電容量のサイクル特性である。電流密度をサイクル数に応じて、図21のグラフ中に示すように0.2A/g、1A/g、2.5A/g、5A/g、2.5A/g、1A/g、0.2A/gと変化させた。横軸はサイクル数であり、左縦軸は容量(mAh/g)、右縦軸はクーロン効率(%)である。
【0088】
電流密度を5A/gとしても、非常に高い1500mAh/gの容量を維持している。5A/gにおける充放電時間はそれぞれ僅か18分であり、即ち3.3Cの高レート条件である。また、1500mAh/gの容量は従来の黒鉛負極の理論容量(372mAh/g)の約4倍もの値である。図21から、Si/C複合体は高容量かつ高レート特性を実現していることが分かる。図22は、100サイクル後のSi/C複合体のTEM像である。図22から、デンドリットの構造が残っていることが分かった。
【0089】
以上のことから、電流密度を調整することにより、1500mAh/gという高い充放電の容量を維持することができることが分かった。
【0090】
平均粒径が60nmのSiナノ粒子ではなく、平均粒径が80nmのSiナノ粒子を用いて同様に複合体を作製して、充放電特性を調べ、TEM像を観察したところ同様の結果を得た。また、電流密度を前述のように調整した。図23は、Siナノ粒子の平均粒径が80nmのとき、上限が1500mAh/gの容量となるよう制限を加えた場合の充放電容量のサイクル特性である。充放電回数が100回となっても、容量が1500mAh/gの値を維持した。比較のために、平均粒径が80nmのSiナノ粒子を用いて複合体を作製しなかった場合には、電流密度を2.5A/gから5A/gに変化させた範囲では、Siナノ粒子の方が、容量が一旦1200強まで下がって幾分増加したものの、複合体よりも小さい値となった。
【実施例6】
【0091】
実施例6は図4に示す工程に沿って行った。
自然酸化膜を除去しないで、粒径20−30nm、純度98%以上のSiナノ粒子(nanostructured & amorphous materials inc)を真空下、5℃/minで750℃まで昇温し、750℃の一定温度に保ちながら、60秒真空引きを行いその後アセチレン20体積%、窒素80体積%の混合ガスを1秒流して構成するサイクルを300回繰り返すことにより、Siナノ粒子の表面に炭素を析出させた。続けて、温度を900℃まで昇温し、その温度を120分一定に保持して熱処理を施し、炭素の結晶性を高めた。これにより、シリコンと炭素の複合体を得た。
【0092】
実施例6で作製した複合体を用いて、バインダーの種類を変えてLiイオン電池の負極を作製し、充電特性を調べた。バインダーとしては、CMC+SBRバインダー、Algバインダーを用いて、実施例1乃至3と同様にして電極体を作製した。
CMC+SBRバインダーの場合は、前述の実施例1乃至3と同様にした。
【0093】
アルギン酸ナトリウム(Alg)バインダーの場合は、1wt%Alg水溶液を用い、複合体、カーボンブラック(電気化学工業製、商品名:デンカブラック)及びアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業製、商品名:アルギン酸ナトリウム500〜600)を用いて、乾燥後の混合割合が重量比で複合体:カーボンブラック:Algが63.75:21.25:15となるように混合して混合液(スラリー)を作製した。それ以降、実施例1乃至3と同様にして電極を作製した。電極は、実施例1乃至4では厚さ約10〜20μmのシート状であったが、実施例6では40乃至70μmと厚かった。
【0094】
このようにして作製した電極を、グローボックスに備え付けられたパスボックス内で120℃で6時間真空乾燥した後、アルゴン雰囲気のグローボックス内でコインセル(宝泉、2032型コインセル)に組み込んだ。対極には金属リチウム、電解液には1M−LiPF6溶液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)の1:1混合溶媒)、セパレーターにはポリプロピレンシート(セルガード ♯2400)を用いた。電解液は上記の場合のほか、ビニレンカーボネート(VC)を2wt%添加したものも作製した。
【0095】
図24は、実施例6の充放電特性を示す図である。横軸はサイクル数であり、左縦軸は容量(mAh/g)、右縦軸はクーロン効率(%)である。四角(■、□)プロット、丸(●、○)プロット、三角(▲、△)プロット、菱形(◆、◇)プロットはそれぞれ、CMC+SBRバインダーでVC添加あり、CMC+SBRバインダーでVC添加なし、AlgバインダーでVC添加あり、AlgバインダーでVC添加なしのデータであり、中塗り、白抜きプロットはそれぞれLi挿入容量、Li放出容量を示す。クーロン効率の変化は折れ線で示す。なお、充放電の電位幅は0.01〜1.5Vであり、電流密度は200mA/gであった。
【0096】
電解液にVCを含まず、CMC+SBRのバインダーを用いた場合、約30サイクル以下では約2000mAh/g以上であり、Algのバインダーを用いた場合、約40サイクル以下では、2000mAh/g以上である。サイクル数を増加すると何れのバインダーを用いた場合でも、容量は減少するが、充放電を100サイクル繰り返しても1400mAh/gを維持している。Algバインダーを用いることで充放電特性を改善できることが分かった。
【0097】
電解液にVCを添加することにより、CMC+SBRのバインダーを用いた場合、充放電特性が低下していることが分かった。また、クーロン効率は、電解液へのVC添加の有無、バインダーの種類に依存せず、充放電回数を増加すると、100%に近づくことが分かった。
【0098】
〔比較例3〕
比較例3として、Siナノ粒子を用いて電極を作製して充放電特性を調べた。
【0099】
図25は、比較例3の充放電特性を示す図である。横軸はサイクル数であり、左縦軸は容量(mAh/g)、右縦軸はクーロン効率(%)である。四角(■、□)プロット、丸(●、○)プロット、三角(▲、△)プロット、菱形(◆、◇)プロットはそれぞれ、CMC+SBRバインダーでVC添加あり、CMC+SBRバインダーでVC添加なし、AlgバインダーでVC添加あり、AlgバインダーでVC添加なしのデータであり、中塗り、白抜きプロットはそれぞれLi挿入容量、Li放出容量を示す。クーロン効率の変化は折れ線で示す。なお、充放電の電位幅は0.01〜1.5Vであり、電流密度は基本的に200mA/gであり、CMC+SBRバインダーでVC添加ありの場合であって、21サイクル目以降のみ1000mA/gであった。
【0100】
CMC+SBRのバインダーを用いた場合、Algのバインダーを用いた場合の何れも、100回充放電を繰り返すと、容量が約1000mAh/gまで低下した。実施例6のように炭素で被覆することにより、充放電回数を増加させても、約1500mAh/gの高容量を保つことが分かった。
電解液にVCを添加することにより、CMC+SBRのバインダーの場合では、特性改善が見られたが、Algのバインダーの場合には特性の改善が見られなかった。
【0101】
〔炭素の存在状態の違いによるSiナノ粒子の充放電への影響〕
上述した各実施例及び比較例から、Siナノ粒子を炭素で被覆することにより、充放電特性が改善することが分かった。しかしながら、炭素被覆により改善したのか、それとも電極シート中の総炭素量が増加したため改善したのか、不明である。そこで、炭素被覆Siの被覆炭素量と、同量のCBを加えたSiナノ粒子の充放電特性を調べた。
【0102】
炭素被覆Si粒子の充放電特性を調べるため、実施例6で作製した炭素被覆Siを用いて、Si/C:CB:CMC:SBRを67:11:13:9の割合で混合してスラリーを作製し、約2倍に希釈して薄い塗布電極を作製して作用極とした。塗布電極の厚さは10〜20μmであった。
【0103】
炭素被覆なしのナノSi粒子の充放電特性を調べるため、実施例6で用いたナノSiを用いて、nanoSi:CB:CMC:SBRを67:11:13:9の割合で混合してスラリーを作製し、約2倍に希釈して薄い塗布電極を作用極とした。塗布電極の厚さは約10〜20μmであった。
【0104】
炭素被覆Siにおける被覆炭素量と同量のCBを加えたSiナノ粒子の充放電特性を調べた。上述のSi/Cの炭素含有量が19wt%であるので、その炭素分のCBを追加して、実施例6のナノSiを用いて、nanoSi:CB:CMC:SBRを54:24:13:9の割合で混合してスラリーを作製し、約2倍に希釈して薄い塗布電極を作用極とした。塗布電極の厚さは約10〜20μmであった。
【0105】
図26は、炭素の存在状態の違いによるSiナノ粒子の充放電への影響を調べた結果を示す。縦軸は一定電流で充放電を行った際の電極重量当たりの容量、横軸はサイクル数である。中塗り、白抜きプロットはそれぞれLi挿入容量、Li放出容量を示す。クーロン効率の変化は折れ線で示す。なお、充放電の電位幅は0.01〜1.5Vであり、電流密度は基本的に200mA/gであり、CMC+SBRバインダーでVC添加ありの場合では21サイクル目以降のみ電流密度は1000mA/gであった。
【0106】
Si/Cを用いた場合は、炭素被覆なしのナノSiと比べ高容量であることが分かる。一方、Si/Cに含まれる炭素と同量のCBを混合した場合、CBを混合しない場合と比較し、性能が低下していることが分かる。
【0107】
よって、単に、電極中の炭素含有量を増加させても、ナノSi特性は改善せず、均一に炭素被覆することが重要であることが分かった。
【0108】
本発明は上記の実施形態に限定されるものでなく、発明の範囲を逸脱しない範囲内で種々設計変更した形態が含まれる。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】

【手続補正書】
【提出日】20130213
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノサイズのSi粒子と、Si粒子を内包する空間とSi粒子を内包しない空間とを画成する炭素層の壁と、を含み、
上記Si粒子を内包する空間は、Si粒子が占有する領域とSi粒子が占有しない領域を有し、
上記Si粒子を内包する各空間において該Si粒子が壁面に設けられる、複合材料。
【請求項2】
ナノサイズの複数のSi粒子が凝縮された凝縮体と、
上記凝縮体の面上に均一に形成された伸縮可能な蛇腹状で炭素層からなる壁と、
を含み、
上記炭素壁が、上記各Si粒子を内包する領域と上記各Si粒子を内包しない領域とを画成する、複合材料。
【請求項3】
前記Si粒子の表面が酸化されている、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記炭素層は0.34乃至30nmの平均厚さを有する、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項5】
前記Si粒子は1×10乃至1.3×10nmの平均粒径を有する、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項6】
前記Si粒子の表面には、層状のグラフェン構造からなる前記炭素層が形成されている、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項7】
前記複合材料を負極材料として用いると、充放電容量が最大2000mAh/g以上である、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項8】
前記複合材料を負極材料として用いると、充放電容量が最大2500mAh/g以上である、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の複合材料からなる、Liイオン電池の負極材料。
【請求項10】
請求項9に記載のLiイオン電池の負極材料を備えた電極。
【請求項11】
請求項10に記載の電極を負極としたときの充放電容量が1.0×10〜3.5×10mAh/gである、Liイオン電池の負極材料を備えた電極。
【請求項12】
ナノサイズのSi粒子の集合体を加熱して炭素を含む原料ガスによって各Si粒子に炭素層を形成することにより、Si粒子を内包した空間とSi粒子を内包しない空間とを画成する壁が上記炭素層で形成され、
その後、上記炭素層を形成する際の温度よりも高い温度に維持して熱処理を行う、複合材料の製造方法。
【請求項13】
ナノサイズのSi粒子の集合体を加熱し、パルスCVD法にて炭素を含む原料ガスによって各Si粒子に炭素層を形成することにより、Si粒子を内包した空間とSi粒子を内包しない空間とを画成する壁が上記炭素層で形成される、複合材料の製造方法。
【請求項14】
前記集合体の各Si粒子表面に酸化層を形成しておくことにより、該酸化層を介在して上記各Si粒子を囲むように前記壁を形成し、
その後、上記酸化層を溶解することにより、前記炭素層と上記各Si粒子との間の一部に中空を設ける、請求項12又は13に記載の複合材料の製造方法。
【請求項15】
前記炭素層を形成した後、炭素層を形成する際の温度よりも高い温度に維持して熱処理を行う、請求項13に記載の複合材料の製造方法。
【請求項16】
前記壁を形成する前に、前記集合体を圧縮してペレットに成型する、請求項12又は13に記載の複合材料の製造方法。
【請求項17】
前記炭素層は0.34乃至30nmの平均厚さを有する、請求項12又は13に記載の複合材料の製造方法。
【請求項18】
前記各Si粒子は、1×10乃至1.3×10nmの平均粒径を有する、請求項12又は13に記載の複合材料の製造方法。

【手続補正書】
【提出日】20140331
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノサイズの複数のSi粒子が凝縮された凝縮体と、
上記凝縮体の面上に均一に形成された伸縮可能な蛇腹状で炭素層からなる壁と、
を含む、複合材料。
【請求項2】
前記壁が、前記各Si粒子を内包する領域と前記各Si粒子を内包しない領域とを画成する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記Si粒子の表面が酸化されている、請求項に記載の複合材料。
【請求項4】
前記炭素層は0.34乃至30nmの平均厚さを有する、請求項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記Si粒子は1×10乃至1.3×102nmの平均粒径を有する、請求項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記Si粒子の表面には、層状のグラフェン構造からなる前記炭素層が形成されている、請求項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記複合材料を負極材料として用いると、充放電容量が最大2000mAh/g以上である、請求項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記複合材料を負極材料として用いると、充放電容量が最大2500mAh/g以上である、請求項に記載の複合材料。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の複合材料からなる、Liイオン電池の負極材料。
【請求項10】
請求項9に記載のLiイオン電池の負極材料を備えた電極。
【請求項11】
請求項10に記載の電極を負極としたときの充放電容量が1.0×103〜3.5×103mAh/gである、Liイオン電池の負極材料を備えた電極。
【請求項12】
ナノサイズのSi粒子の集合体を加熱して炭素を含む原料ガスによって各Si粒子に炭素層を形成することにより、Si粒子を内包した空間とSi粒子を内包しない空間とを画成する壁が上記炭素層で形成され、
その後、上記炭素層を形成する際の温度よりも高い温度に維持して熱処理を行う、複合材料の製造方法。
【請求項13】
ナノサイズのSi粒子の集合体を加熱し、パルスCVD法にて炭素を含む原料ガスによって各Si粒子に炭素層を形成することにより、Si粒子を内包した空間とSi粒子を内包しない空間とを画成する壁が上記炭素層で形成される、複合材料の製造方法。
【請求項14】
前記集合体の各Si粒子表面に酸化層を形成しておくことにより、該酸化層を介在して上記各Si粒子を囲むように前記壁を形成し、
その後、上記酸化層を溶解することにより、前記炭素層と上記各Si粒子との間の一部に中空を設ける、請求項12又は13に記載の複合材料の製造方法。
【請求項15】
前記炭素層を形成した後、炭素層を形成する際の温度よりも高い温度に維持して熱処理を行う、請求項13に記載の複合材料の製造方法。
【請求項16】
前記壁を形成する前に、前記集合体を圧縮してペレットに成型する、請求項12又は13に記載の複合材料の製造方法。
【請求項17】
前記炭素層は0.34乃至30nmの平均厚さを有する、請求項12又は13に記載の複合材料の製造方法。
【請求項18】
前記各Si粒子は、1×10乃至1.3×102nmの平均粒径を有する、請求項12又は13に記載の複合材料の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
[図1A]本発明の一実施形態に係る複合材料を模式的に示す図である。
[図1B]本発明の別の実施形態に係る複合材料を模式的に示す図である。
[図2]本発明の実施形態に係る複合材料の第1の製造方法を模式的に示す図である

[図3]本発明の実施形態に係る複合材料の第2の製造方法を模式的に示す図である

[図4]本発明の実施形態に係る複合材料の第3の製造方法を模式的に示す図である

[図5]実施例1において用いたSi粒子の粒径分布を示す図である。
[図6]実施例1で作製した複合体の透過電子顕微鏡像を示す図である。
[図7]実施例2で得られた複合体の透過電子顕微鏡像を示す図である。
[図8]実施例3で得られた複合体の透過電子顕微鏡像を示す図である。
[図9]比較例1で作製した複合体の透過電子顕微鏡像を示す図である。
[図10]実施例1と比較例1の充放電特性を示す図である。
[図11]実施例2及び実施例3の充放電特性を示す図である。
[図12]実施例1及び実施例3で得られた複合体のラマン測定結果を示す図である

[図13]実施例3の複合体をLiイオン電池の負極材としたときの各複合体の透過
型電子顕微鏡(TEM,Transmission Electron Microscope)像であり、(a),(b),(c)はそれぞれ充放電サイクル前、5サイクル後、20サイクル後の複合体のTEM像を示す図である。
[図14](a)乃至(c)は図13の各像の模式図である。
[図15]Si/C(900)、Si/C(1000)、Si/C(1100)の各
サンプルについての結晶構造のX線回折(XRD,X-ray Diffraction)パターンを示す図である。
[図16]実施例4の充放電特性を示す図である。
[図17]高容量でありかつサイクル特性が良好なSi/C(900)のTEM像を
示す図である。
[図18]熱処理を900℃で行ったSi/C(900)のサンプルの充放電特性を
示す図である。
[図19]実施例5のnano−Si/C複合体を用いたときの充放電特性を示す図
である。
[図20](a)は20サイクル後の電極中におけるSiナノ粒子のTEM像であり
、(b)は20サイクル後の電極中におけるSi/C複合体のTEM像であり、(c)は100サイクル後の電極中におけるSiナノ粒子のTEM像であり、(d)は100サイクル後の電極中におけるSi/C複合体のTEM像を示す図である。
[図21]上限が1500mAh/gの容量となるよう制限を加えたときの充放電容
量のサイクル特性を示す図である。
[図22]100サイクル後のSi/C複合体のTEM像を示す図である。
[図23]Siナノ粒子の平均粒径が80nmのとき、上限が1500mAh/gの
容量となるよう制限を加えた場合の充放電容量のサイクル特性を示す図である。
[図24]実施例6の充放電特性を示す図である。
[図25]比較例3の充放電特性を示す図である。
[図26]炭素の存在状態の違いによるSiナノ粒子の充放電への影響を調べた結果
を示す図である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
図1Aに示す形態にあっては、Si粒子11を内包する空間13aにおいて、Si粒子11を内包した領域同士がつながっており、その領域を画する炭素層の壁12にSi粒子11が固着されている。炭素層の壁12に取り囲まれた空間には、Si粒子11を内包する空間13aの他に、Si粒子11を内包しない空間13bがある。Si粒子11を内包した各領域には、Si粒子11の占有領域とSi粒子11が存在しない非占有領域とがある。すなわち、本材料の空隙は、空間13aのうちSi粒子によって占有されていない領域(非占有領域)と空間13bの2種類の空間から成る。この空隙の体積はSi粒子11の占有領域の約3倍以上である。空隙体積がこの範囲にあることにより、この複合材料をLiイオン電池の負極材料として用いて電極を作製して充電した際、Si粒子11がLiイオンによって体積が3〜4倍に膨張しても、空隙が緩衝領域としても機能し、炭素層12が破壊されない。もし空隙の体積がSi粒子11の占有領域の3倍以下である場合、充電によりSi粒子が元の体積の3倍以上に膨張すると導電パスである炭素層12は破壊され、Si粒子は電気的に絶縁されるため、負極として機能しなくなる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
図9は、比較例1で作製した複合体の透過電子顕微鏡像を示す図である。(a)はその像を示し、(b)は模式的に示す図である。この像から、Si粒子61の周囲には、充電の際の体積膨張を緩衝させる空間62が炭素でなる収容体63によって形成されていることが分かる。
比較例1の作製方法において、Si/SiO2粒子のSi/SiO2比を実施例1と同様にして求めた。Siの占有空間の約3.2倍の体積を有するSiO2が存在していた。よって、比較例1で得られた複合体では、Siの周りにはSiが4.2倍まで体積膨張ができる空間が存在しているといえる。こうして、比較例1の複合体は、SiO2層が鋳型となって形成された空間により充電の際生じる体積膨張を緩衝することができる。つまり、その空間の形成により、Si占有率の最大約4倍の体積膨張を緩衝することができる。しかしながら、実施例1乃至3とは異なり、図9に示す像から、SiO2が鋳型となった空間以外に空間は存在せず、Si/SiO2粒子の粒子間の隙間には炭素が充填したと考えられる。よって、Siナノ粒子の周りの緩衝空間が、充電の際におけるSiの体積膨張よりも小さくなると、複合体の構造が破壊されてしまうと予測される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
実施例1乃至3及び比較例1でそれぞれ作製した複合体を用いて、Liイオン電池の負極を作製して充電特性を調べた。
実施例1乃至3で作製した複合体を用いて次の要領で電極を作製した。複合体、カーボンブラック(電気化学工業製、商品名:デンカブラック)、2質量%カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose(CMC)、CMCダイセル社製DN−10L)及び48.5質量%スチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber(SBR)、JSR社製のTRD2001)を用いて、乾燥後の混合割合が重量比で複合体:カーボンブラック:CMC:SBRが67:11:13:9となるように混合した。この混合溶液を9m・inch(ミリインチ)のアプリケーターを用いて銅箔に塗布し、80℃で1時間乾燥させた後に、直径15.95mmの円形に打ち抜き、電極を作製した。
このようにして作製した電極を、グローブボックスに備え付いているパスボックス内で120℃で6時間真空乾燥した後、アルゴン雰囲気のグローブボックス内でコインセル(宝泉、2032型コインセル)に組み込んだ。この際、対極には金属リチウム、電解液には1M−LiPF6溶液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)の1:1混合溶媒)、セパレーターにはポリプロピレンシート(セルガード ♯2400)を用いた。作製したコインセルを0.01〜1.5V(v.s. Li/Li+)の電位範囲で定電流充放電を行うことで試料の電気化学測定を行った。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
比較例1で作製した複合体を用いて、次の要領で電極を作製した。比較例1の複合体とポリフッ化ビニリデン(PVDF)のn−メチル−2−ピロリドン溶液(クレハ製、KFポリマー(♯1120)とを混合してスラリーを銅箔へ塗布して乾燥を行い、直径16mmの円形に切り出して電極とした。その際、複合体とPVDとが重量比で4:1となるようにした。この際、対極に金属Li、電解液には1M−LiPF6溶液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)の1:1混合溶媒)を用い、セパレーターにはポリプロピレンシート(セルガード ♯2400)を用いた。作製したコインセルを0.01〜1.5V(v.s. Li/Li)の電位範囲で定電流充放電を行うことで試料の電気化学測定を行った。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
このようにして作製した電極を、グローブボックスに備え付けられたパスボックス内で120℃で6時間真空乾燥した後、アルゴン雰囲気のグローブボックス内でコインセル(宝泉、2032型コインセル)に組み込んだ。対極には金属リチウム、電解液には1M−LiPF6溶液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)の1:1混合溶媒)、セパレーターにはポリプロピレンシート(セルガード ♯2400)を用いた。電解液は上記の場合のほか、ビニレンカーボネート(VC)を2wt%添加したものも作製した。
【国際調査報告】