(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013098968
(43)【国際公開日】20130704
【発行日】20150430
(54)【発明の名称】電極の製造方法及び非水電解質電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20150403BHJP
【FI】
   !H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】2013551106
(21)【国際出願番号】JP2011080315
(22)【国際出願日】20111227
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】森島 秀明
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号 株式会社東芝内
(72)【発明者】
【氏名】植松 育生
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号 株式会社東芝内
(72)【発明者】
【氏名】中畑 政臣
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号 株式会社東芝内
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050DA02
5H050DA03
5H050GA02
5H050GA22
5H050GA30
5H050HA03
5H050HA05
(57)【要約】
実施形態によれば、集電体の供給、スラリーの塗布及びスラリーの乾燥を含む電極の製造方法が提供される。電極の製造方法では、外周面に形成された複数の環状突起部を有するバックアップロール上に集電体を供給する。集電体の表面に環状突起部上に配置された部分を除き、活物質を含むスラリーを塗布する。次いで、スラリーを乾燥する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に形成された複数の環状突起部を有するバックアップロール上に集電体を供給し、前記集電体の表面に前記環状突起部上に配置された部分を除き、活物質を含むスラリーを塗布する工程と、
前記スラリーを乾燥する工程と
を備える電極の製造方法。
【請求項2】
前記バックアップロールが下記(1)式を満たす請求項1記載の電極の製造方法。
0.1≦(r−R)≦10 (1)
但し、rは前記環状突起部の外径(mm)で、Rは前記環状突起部の内径(mm)である。
【請求項3】
前記バックアップロールが下記(2)式を満たす請求項2記載の電極の製造方法。
5≦h≦50 (2)
但し、hは前記環状突起部の幅(mm)である。
【請求項4】
前記集電体は、前記バックアップロールの前記環状突起部と下記(3)式を満たすように接する請求項1または2記載の電極の製造方法。
0.01≦θ≦0.5 (3)
但し、θは、前記バックアップロールの前記環状突起部に前記集電体が接している部分の円弧の長さに対応する円周角(ラジアン)である。
【請求項5】
正極、負極及び非水電解質を備える非水電解質電池の製造方法であって、
前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方の電極を、請求項1〜4いずれか1項記載の方法で製造する非水電解質電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電極の製造方法及び非水電解質電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド電気自動車用の電源、また太陽光や風力などの自然エネルギーを使った発電機用の蓄電装置として、非水電解質電池が注目されている。これらの用途では負荷や発電量の時間変化が激しいため、瞬時に大電流を蓄えたり放出したりする能力、すなわち大電流特性の高い二次電池が要求される。
【0003】
そのような大電流特性の高い二次電池は、大電流を流した時にも電圧の低下をできるだけ少なくするために、電池内部の電気抵抗をできるだけ小さくする必要がある。そのためには、集電体上に塗布し乾燥して形成される電極層の厚さを極力薄くすることが有効であることが知られている。
【0004】
一方、非水電解質電池用電極の製造方法は、以下に説明する方法が一般的である。まず、活物質を含む電極材料を有機溶媒または水に分散させてスラリー状にする。また、円柱状のバックアップロール表面に集電体を捲きつける。スラリーを例えばダイヘッドなどのスラリー吐出装置から吐出させて、バックアップロール表面の集電体上に塗布する。その後、スラリーを乾燥させることにより電極を得る。このとき、スラリー吐出装置であるダイヘッドの先端とバックアップロールに裏側から支持された集電体表面の間隔は、塗布する電極の厚さが薄くなればなるほど狭くなり、数十μmから100μm程度になることがある。この時、スラリー中に含まれる活物質粒子やその他材料の粒子、あるいは活物質粒子やその他材料が凝集した凝集塊の大きさが数十μmから100μmを超えるものが存在すると、このような粒子または凝集塊が塗出装置の先端と集電体の間を通過することができずにそこに挟まる。これをきっかけとして集電体が裂けて電極が不良品になったり、集電体が破断して塗工装置を停止せざるを得なくなることがある。特に集電体が破断して塗工装置の停止を余儀なくされると、破断した電極の除去と新しい集電体の供給に時間を要し、生産性が著しく低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−313327号公報
【特許文献2】特開平4−061959号公報
【特許文献3】特開2007−029789号公報
【特許文献4】特開2003−157835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、スラリーを集電体に塗布する際の集電体の裂け及び破断を防止することが可能な電極の製造方法及び非水電解質電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、集電体の供給、スラリーの塗布及びスラリーの乾燥を含む電極の製造方法が提供される。電極の製造方法では、外周面に形成された複数の環状突起部を有するバックアップロール上に集電体を供給する。集電体の表面に環状突起部上に配置された部分を除き、活物質を含むスラリーを塗布する。次いで、スラリーを乾燥する。
【0008】
また、実施形態によれば、正極、負極及び非水電解質を備える非水電解質電池の製造方法が提供される。正極及び前記負極のうち少なくとも一方の電極が、実施形態に係る方法で製造される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施形態で用いるバックアップロールの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のバックアップロールを端部側から見た平面図である。
【図3】図3は、図1のバックアップロールを用いた塗布工程を示す概略図である。
【図4】図4は、図1のバックアップロールにより搬送される集電体を示す斜視図である。
【図5】図5は、片面にスラリーが塗布された集電体を示す斜視図である。
【図6】図6は、両面にスラリーが塗布された集電体を示す斜視図である。
【図7】図7は、実施形態の方法で製造された電極を示す斜視図である。
【図8】図8は、実施形態の方法で製造される電池を示す展開斜視図。
【図9】図9は、図8に示す電池で用いられる電極群の部分展開斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1及び図2に示すように、バックアップロール21は、芯金22と、芯金22上に形成された表層23と、表層23の外周面に形成された複数の突起部24とを有する。突起部24は、それぞれ、表層23の外周面を円環状に被覆している。突起部24の間には間隔Wが設けられている。間隔Wは、集電体に塗布するスラリーの幅に応じて変更される。
【0012】
図3に示すように、バックアップロール21には、集電体供給装置(図示しない)から長尺状の集電体Cが供給される。集電体Cは、その長手方向(集電体Cの搬送方向)Xに張力が加わった状態でバックアップロール21の突起部24と接する。このため、突起部24が設けられていない箇所では、集電体Cは表層23から浮いた状態になっており、集電体Cと表層23との間に空間が存在する。すなわち、集電体Cは、複数の突起部24で支持されており、突起部24間に位置する表層23との間に隙間が存在する。集電体Cには、突起部24間に位置する表層23と対応する表面にスラリーが塗布される。
【0013】
図3に示すように、スラリー塗工装置は、ダイヘッド25を備える。ダイヘッド25は、スラリー供給装置(図示しない)からスラリー供給を受ける液溜め部26と、液溜め部26に連通したダイスリット27と、ダイスリット27の先端に設けられた複数のスラリー吐出口28とを有する。スラリー吐出口28は、バックアップロール21の突起部24間の表層23とそれぞれ対向する。スラリー吐出口28の数は、集電体Cに塗布するスラリーの列数に応じて変更することができる。スラリー吐出口28の数は、複数に限らず、1つでも良い。
【0014】
スラリーは、例えば、活物質を含む電極材料を有機溶媒または水に分散させてスラリー状にすることにより調製される。活物質は、特に限定されるものではないが、例えば、非水電解質電池の正極活物質あるいは負極活物質を挙げることができる。
【0015】
集電体Cには、例えば、金属または合金からなる箔状のシートを用いることができる。
【0016】
スラリー塗工工程について説明する。長尺状の集電体Cを集電体供給装置によってバックアップロール21上に供給する。集電体Cには、その長手方向(集電体Cの搬送方向)Xに張力が加わっているため、集電体Cは表層23との間に隙間が存在する状態で突起部24と接する。スラリー供給装置から液溜め部26に供給されたスラリーは、ダイスリット27を通過した後、スラリー吐出口28を通して集電体Cの表面に供給される。スラリーは、突起部24間の表層23に対応する部分の集電体C表面に供給される。スラリー吐出口28と集電体Cの表面との間には隙間が存在する。隙間の大きさは、集電体Cに塗布されるスラリーの厚さに応じて調整され、数十μmから100μm程度になることがある。スラリーの厚さを薄くすると、スラリー吐出口28と集電体Cとの隙間を通過することが出来ない粒子や凝集塊の割合が多くなるが、集電体Cと表層23との間に隙間が存在するため、粒子または凝集塊に追従して集電体Cが表層23に向かって湾曲することが可能であり、スラリー吐出口28と集電体Cとの隙間を拡大することができる。その結果、粒子または凝集塊がスラリー吐出口28と集電体Cとの隙間を通過し、粒子及び凝集塊が一箇所に留まるのを回避することができるため、集電体が裂けたり、破断したりするのを防止することができる。これにより、集電体が裂けて電極が不良品になったり、集電体が破断して塗工装置を停止せざるを得なくなることを改善することができる。従って、図4に示すように、集電体Cの表面のうち、突起部24と対応する部分を除き、スラリーSを均一に塗布することができる。スラリーSが塗布されていない部分は、集電タブとして機能する。
【0017】
バックアップロール21は、下記(1)式を満たすことが望ましい。
【0018】
0.1≦(r−R)≦10 (1)
但し、図2に示すように、rは突起部24の外径(mm)で、Rは突起部24の内径(mm)である。Rはバックアップロール21の表層23までの半径と等しい。
【0019】
(r−R)を0.1mm以上にすることによって、バックアップロール21上の集電体Cが変形する余地を十分に取ることができるため、集電体Cの裂け及び破断をより少なくすることができる。(r−R)が大きくなる程、バックアップロール本体の直径が相対的に細くなり、強度が不足する恐れがある。(r−R)を10mm以下にすることによって、バックアップロール本体の強度を十分なものとすることができる。(r−R)のより好ましい範囲は、0.2≦(r−R)≦5である。
【0020】
バックアップロール21は、下記(2)式を満たすことが望ましい。
【0021】
5≦h≦50 (2)
但し、図1に示すように、hは、バックアップロール21の回転軸Yと平行な突起部24の幅(mm)である。Hは、バックアップロール21の回転軸Yと平行な方向の長さ(mm)である。
【0022】
hを5mm以上にすることによって、突起部24の集電体を支持する面積を十分に確保することができるため、集電体Cが突起部24に押し付けられる圧力によって突起部24の縁付近の集電体Cにシワや折り目が付くのを抑えることができる。よって、hを5mm以上にすることによって、製造不良を少なくすることができる。但し、hが大きすぎると、塗布できる電極の幅が狭くなってしまい、塗工装置の有効幅が狭くなって生産効率が低下する恐れがあるため、hは50mm以下であることが好ましい。hのより好ましい範囲は、10≦h≦40である。
【0023】
集電体Cは、バックアップロール21の突起部24と下記(3)式を満たすように接することが望ましい。
【0024】
0.01≦θ≦0.5 (3)
但し、θは、図3に示すように、バックアップロール21の回転軸Yから見た端面における、バックアップロール21の突起部24に集電体Cが接している部分の円弧(回転軸Yを中心とする)の長さに対応する円周角(ラジアン)である。
【0025】
θを0.01ラジアン以上にすることによって、集電体Cを突起部24に押し付ける圧力を十分なものにすることができるため、集電体Cにスラリーを塗布する際に集電体Cが突起部24から浮き上がるのを抑えることができる。その結果、塗布量のムラを少なくすることができる。また、θを0.5ラジアン以下にすることによって、集電体Cが突起部24に押し付けられる圧力によって突起部24の縁付近の集電体Cにシワや折り目が付くのを抑えることができるため、製造不良を少なくすることができる。θのより好ましい範囲は、0.02≦θ≦0.3である。
【0026】
以上説明した塗工工程の後に、スラリーを乾燥させる工程を行うことにより、図5に示すように、片面に活物質含有層29が複数列形成された集電体Cを得ることができる。ひきつづき、集電体Cの残りの片面に、バックアップロール21を用いた塗工工程を施した後、スラリーを乾燥させる工程を行うことにより、図6に示すように、両面に活物質含有層29が複数列形成された集電体Cを得ることができる。
【0027】
その後、活物質含有層29を圧縮するためにプレス成形を施した後、集電体Cと活物質含有層29との境界Zに沿って裁断することにより、図7に示す電極30を得る。得られた電極30では、集電体Cの一方の長辺を除き、活物質含有層29が形成されている。活物質含有層29が非形成の長辺は、集電タブ31として機能する。なお、プレス成形を行う前に裁断を行うことも可能である。
【0028】
なお、スラリー塗工装置は、ダイヘッドを備えるものに限らず、例えば、アプリケーターロールを用いることができる。
【0029】
以上説明した第1の実施形態によれば、外周面に形成された複数の環状突起部を有するバックアップロール上に集電体を供給するため、環状突起部間に位置する外周面と集電体との間に隙間を設けることができる。次いで、環状突起部上に配置された部分を除く集電体の表面に、活物質を含むスラリーを塗布することによって、スラリーに混入した大きな粒子や凝集塊の形状に追従して集電体が変形する余地があるため、粒子及び凝集塊が一箇所に留まるのを避けることができる。よって、集電体上に塗布されるスラリー厚さに拘らず、集電体が裂けたり破断したりすることなく電極を製造することができる。
【0030】
なお、スラリー塗工装置にバックアップロールを対向させず、スラリー塗工装置よりも前段にバックアップロールを配置すると、バックアップロールによる支持のない集電体にスラリーを塗布することとなるため、塗布の際に集電体に弛みや歪みが生じやすく、塗布量のばらつきが大きくなる。
【0031】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によれば、正極と、負極と、非水電解質とを備える電池の製造方法が提供される。正極及び負極のうち少なくとも一方の電極は、第1の実施形態に係る方法で製造される。正極及び負極の製造に用いられるスラリー及び集電体を説明する。
【0032】
正極用スラリーは、正極活物質、導電剤及び結着剤を含む電極材料を適当な溶媒に懸濁させることにより調製される。溶媒としては例えばNメチルエチルピロリドンが挙げられる。正極活物質、導電剤、結着剤の総量と溶媒の重量比は50:50から80:20が望ましい。
【0033】
正極活物質には、一般的なリチウム遷移金属複合酸化物を使用することができる。例えば、LiCoO2、Li1+a(Mn,Ni,Co)1-aO2(0.0<a<0.2)、Li1+bNi1-cMcO2(0.0<b<0.2, 0.0<c<0.4, MはCo, Al, Feから選ばれる1つ以上)、Li1+dMn2-d-eM’eO4(M’はMg, Al, Fe, Co, Niから選ばれる1つ以上)、LiMPO4(MはFe,Co,Ni)などである。
【0034】
導電剤は、集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑えることができる。導電剤には、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の炭素質物を挙げることができる。
【0035】
結着剤は、正極活物質と導電剤を結着させることができる。結着剤には、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム等が挙げられる。
【0036】
正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比については、正極活物質は80重量%以上95重量%以下、正極導電剤は3重量%以上18重量%以下、結着剤は2重量%以上17重量%以下の範囲にすることが好ましい。正極導電剤については、3重量%以上であることにより上述した効果を発揮することができ、18重量%以下であることにより、高温保存下での正極導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤については、2重量%以上であることにより十分な電極強度が得られ、17重量%以下であることにより、電極の絶縁体の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
【0037】
正極集電体は、アルミニウム箔若しくはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金箔が好ましい。
【0038】
負極用スラリーは、例えば、負極活物質、導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁させることにより調製される。溶媒としては例えばNメチルエチルピロリドンが挙げられる。負極活物質、導電剤、結着剤の総量と溶媒の重量比は50:50から80:20が望ましい。
【0039】
負極活物質としては、例えばチタン含有金属複合酸化物を使うことができ、リチウムチタン酸化物、酸化物合成時はリチウムを含まないチタン系酸化物などを挙げることができる。
【0040】
リチウムチタン酸化物としては、例えばスピネル構造を有するLi4+xTi512(0≦x≦3)や、ラムステライド構造を有するLi2+yTi37(0≦y≦3)が挙げられる。
【0041】
チタン系酸化物としては、TiO2、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物などが挙げられる。TiO2はアナターゼ型で熱処理温度が300〜500℃の低結晶性のものが好ましい。TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO2−P25、TiO2−V25、TiO2−P25−SnO2、TiO2−P25−MeO(MeはCu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)などを挙げることができる。この金属複合酸化物は、結晶相とアモルファス相が共存もしくは、アモルファス相単独で存在したミクロ構造であることが好ましい。このようなミクロ構造であることによりサイクル性能が大幅に向上することができる。中でも、リチウムチタン酸化物、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物が好ましい。
【0042】
導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
【0043】
結着剤は、負極活物質と導電剤を結着させることができる。結着剤には、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム等が挙げられる。
【0044】
負極活物質、負極導電剤及び結着剤の配合比については、負極活物質は70重量%以上96重量%以下、負極導電剤は2重量%以上28重量%以下、結着剤は2重量%以上28重量%以下の範囲にすることが好ましい。負極導電剤量が2重量%未満であると、負極層の集電性能が低下し、非水電解質二次電池の大電流特性が低下する。また、結着剤量が2重量%未満であると、負極層と負極集電体の結着性が低下し、サイクル特性が低下する。一方、高容量化の観点から、負極導電剤及び結着剤は各々28重量%以下であることが好ましい。
【0045】
負極集電体には、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔等を挙げることができる。好ましい負極集電体は、1.0Vよりも貴である電位範囲において電気化学的に安定であるアルミニウム箔、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金箔である。
【0046】
第2の実施形態の方法で製造される非水電解質電池の一例を図8、図9に示す。図8に示す電池は、密閉型の角型非水電解質電池である。非水電解質電池は、外装缶1と、蓋2と、正極出力端子3と、負極出力端子4と、電極群5とを備える。図8に示すように、外装缶1は、有底角筒形状をなし、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄あるいはステンレスなどの金属から形成される。
【0047】
図9に示すように、偏平型の電極群5は、正極6と負極7がその間にセパレータ8を介して偏平形状に捲回されたものである。正極6は、例えば金属箔からなる帯状の正極集電体と、正極集電体の集電体露出部からなる正極集電タブ6aと、少なくとも正極集電タブ6aの部分を除いて正極集電体に形成された正極活物質層6bとを含む。一方、負極7は、例えば金属箔からなる帯状の負極集電体と、負極集電体の集電体露出部からなる負極集電タブ7aと、少なくとも負極集電タブ7aの部分を除いて負極集電体に形成された負極活物質層7bとを含む。
【0048】
このような正極6、セパレータ8及び負極7は、正極集電タブ6aが電極群の捲回軸方向にセパレータ8から突出し、かつ負極集電タブ7aがこれとは反対方向にセパレータ8から突出するよう、正極6及び負極7の位置をずらして捲回されている。このような捲回により、電極群5は、図9に示すように、一方の端面から渦巻状に捲回された正極集電タブ6aが突出し、かつ他方の端面から渦巻状に捲回された負極集電タブ7aが突出している。
【0049】
電解液(図示しない)は、電極群5に含浸されている。矩形板状の蓋2は、外装缶1の開口部に例えばレーザでシーム溶接される。蓋2は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄あるいはステンレスなどの金属から形成される。蓋2と外装缶1は、同じ種類の金属から形成されることが望ましい。
【0050】
図8に示すように、蓋2の外面の中央付近に安全弁9が設けられている。安全弁9は、蓋2の外面に設けられた矩形状の凹部9aと、凹部9a内に設けられたX字状の溝部9bとを有する。溝部9bは、例えば、蓋2を板厚方向にプレス成型することにより形成される。注液口10は、蓋2に開口され、電解液の注液後に封止される。
【0051】
蓋2の外面には、安全弁9を間に挟んだ両側に正負極出力端子3,4が絶縁ガスケット(図示しない)を介してかしめ固定されている。負極活物質に炭素系材料を使用するリチウムイオン二次電池の場合、正極出力端子3には、例えば、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が使用され、負極出力端子4には、例えば、銅、ニッケル、ニッケルメッキされた鉄などの金属が使用される。また、負極活物質にチタン酸リチウムを使用する場合は、上記に加え、負極出力端子4にアルミニウムあるいはアルミニウム合金を使用してもかまわない。
【0052】
正極リード11は、一端が、正極出力端子3にかしめ固定あるいは溶接によって電気的に接続され、かつ他端が正極集電タブ6aに電気的に接続されている。負極リード12は、一端が、負極出力端子4にかしめ固定あるいは溶接によって電気的に接続され、かつ他端が負極集電タブ7aに電気的に接続されている。正負極リード11,12を正負極集電タブ6a,7aに電気的に接続する方法は、特に限定されるものではないが、例えば超音波溶接やレーザ溶接等の溶接が挙げられる。
【0053】
このように、正極出力端子3と正極集電タブ6aとが正極リード11を介して電気的に接続され、負極出力端子4と負極集電タブ7aとが負極リード12を介して電気的に接続されることにより、正負極出力端子3,4から電流を取り出せるようになる。
【0054】
正負極リード11,12の材質は、特に指定しないが、正負極出力端子3,4と同じ材質にすることが望ましい。例えば、出力端子の材質がアルミニウム又はアルミニウム合金の場合は、リードの材質をアルミニウム、アルミニウム合金にすることが好ましい。また、出力端子が銅の場合は、リードの材質を銅などにすることが望ましい。
【0055】
ここで、セパレータ及び非水電解質について説明する。
【0056】
(セパレータ)
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンからなる多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であり、安全性向上の観点から好ましい。また中でも、セルロースからなる多孔質フィルムは空隙率が同じ厚さの他の材質のセパレータに比べてより多くの電解質を含むことができるために電解質中のLiイオン伝導度が相対的に高くでき、大電流を流す必要のある高出力型の非水電解質電池には最もこのましい。
【0057】
(非水電解質)
非水電解質としては、電解質を有機溶媒に溶解することにより調整される液状非水電解質、液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質等が挙げられる。
【0058】
液状非水電解質は、電解質を0.5mol/l以上2.5mol/l以下の濃度で有機溶媒に溶解することにより、調製される。
【0059】
電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミトリチウム[LiN(CF3SO22]等のリチウム塩、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0060】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等の鎖状カーボネートや、テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)等の環状エーテルや、ジメトキシエタン(DME)、ジエトエタン(DEE)等の鎖状エーテルや、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)等の単独若しくは混合溶媒を挙げることができる。
【0061】
高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0062】
なお、非水電解質として、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、無機固体電解質等を用いてもよい。
【0063】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃〜25℃)で液体として存在しうる化合物を指す。常温溶融塩としては、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩等が挙げられる。なお、一般に、非水電解質電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に、4級アンモニウム骨格を有する。
【0064】
高分子固体電解質は、電解質を高分子材料に溶解し固体化し調製する。
【0065】
無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する固体物質である。
【0066】
図8及び図9では、電池の外装部材に外装缶を用いた例を説明したが、外装部材として用いることが可能なものは外装缶に限らず、例えば、ラミネートフィルム製容器を使用することができる。ラミネートフィルムは、金属層と金属層を被覆する樹脂層とからなる多層フィルムである。軽量化のために、金属層はアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、金属層を補強するためのものであり、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより成形する。
【0067】
電池の形状は、図8及び図9に示す角型電池に限らず、例えば、扁平型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型等が挙げられる。なお、無論、携帯用電子機器等に積載される小型電池の他、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池にも実施形態の電池は適用可能である。
【0068】
以上説明した第2の実施形態によれば、正極または負極を、第1の実施形態の方法で製造するため、集電体上に塗布されるスラリー厚さに拘らず、集電体が裂けたり破断したりすることなく正極または負極を製造することができる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を説明するが、実施形態の主旨を超えない限り、実施形態は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
【0070】
(実施例1)
正極活物質LiCoO2、正極導電剤としてアセチレンブラックと黒鉛、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)をNメチルエチルピロリドンに分散させて正極スラリーを作った。このスラリーを100μmと150μmの目開きのふるいにかけたところ、100〜150μmの粒子または凝集体を含んでいた。
【0071】
スラリーを塗布する支持体ともなる正極集電体には厚さ12μm、幅600mmのアルミニウム箔を使った。
【0072】
バックアップロールには、芯金と、芯金を被覆する金属製表層と、表層の外周面に形成された環状突起部とを有するものを使用した。表層までの直径が200mm(Rが100mm)で、長さHが800mmであった。突起部は4つ設けた。各突起部の幅hは20mm、各突起部の外径rは100.25mmであった。突起部の同士の間隔は総て150mmの等間隔とした。よって、(r−R)の値は0.25mmであった。
【0073】
集電体を円周角θが0.2ラジアンとなるようにバックアップロール上に供給した。また、集電体は、バックアップロールの4つ総ての突起部と接するようにバックアップロール上を走行させた。
【0074】
スラリーはダイヘッドを用いて塗布した。ダイヘッドと集電体との間隔をスラリーを塗布する前に計測したところ、90μmであった。集電体の表面のうち、突起部と重ならない部分、すなわち突起部間に位置する3箇所の表層と重なる部分にそれぞれ幅145mmでスラリーをダイヘッドを用いて塗工した。塗布したスラリーの乾燥前の厚さは60μmであった。
【0075】
2000mの塗工を行ったが、スラリーに含まれる100〜150μmの粒子または凝集体がダイヘッドのスラリー吐出口と集電体との間に挟まって集電体を破ったり破断させたりしたことは発生しなかった。
【0076】
(実施例2〜7)
(r−R)、h及びθの値を下記表1に示すように変更すること以外は、実施例と同じようにして2000mの塗工を行った。集電体の破れまたは破断の不良が発生した回数を下記表1に示す。
【0077】
(比較例)
突起部の無い直径200mm(Rが100mm)の円柱状のバックアップロールを用いたことを除けば、実施例と同じようにして2000mの塗工を行った。
【0078】
この時、スラリーに含まれる100〜150μmの粒子または凝集体がダイヘッドのスラリー吐出口と集電体の間に挟まって集電体を破断させたりしたことが3回発生した。そのたびごとに塗工を停止し、復旧作業を実施した。復旧作業は先ず破断によって乾燥前のスラリーが付着したバックアップロールや乾燥炉内部のサポートロールの拭き取り清掃、破断した集電体の除去を行った。その後、集電体をつなぎ合わせた。この作業の間、作業員による乾燥炉内部の清掃や集電体の再供給のために炉の温度を作業に安全な温度まで下げる必要があった。このような炉の冷却と再加熱にも相当の時間を要した。
【表1】
【0079】
表1から明らかなように、実施例1〜7の方法によると、塗工中の集電体の破れ及び破断を少なくすることができる。これに対し、突起部のないバックアップロールを用いた比較例によると、塗工中の集電体の破れ及び破断が実施例1〜7に比して多かった。
【0080】
以上説明した少なくとも一つの実施形態の電極の製造方法によれば、外周面に形成された複数の環状突起部を有するバックアップロール上に集電体を供給し、環状突起部上に配置された部分を除く集電体の表面に、活物質を含むスラリーを塗布するため、集電体上に塗布されるスラリー厚さに拘らず、集電体が裂けたり破断したりすることなく電極を製造することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1…外装缶、2…蓋、3…正極出力端子、4…負極出力端子、5…電極群、6…正極、6a…正極集電タブ、6b…正極活物質含有層、7…負極、7a…負極集電タブ、7b…負極活物質含有層、8…セパレータ、9…安全弁、9a…凹部、9b…溝部、10…注液口、11…正極リード、12…負極リード、21…バックアップロール、22…芯金、23…表層、24…突起部、C…集電体、25…ダイヘッド、26…液溜め部、27…ダイスリット、28…スラリー吐出口、29…活物質含有層、30…電極、31…集電タブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【国際調査報告】