(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013099161
(43)【国際公開日】20130704
【発行日】20150430
(54)【発明の名称】酸化チタン積層膜、酸化チタン膜とその製造方法、酸化チタン前駆体液、及び色素増感剤型光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/04 20060101AFI20150403BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20150403BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20150403BHJP
【FI】
   !C01G23/04 C
   !H01G9/20 111A
   !H01G9/20 113A
   !H01G9/20 113B
   !H01G9/20 111B
   !H01G9/20 111C
   !B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】50
【出願番号】2013551218
(21)【国際出願番号】JP2012008128
(22)【国際出願日】20121219
(31)【優先権主張番号】2011282584
(32)【優先日】20111226
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
【住所又は居所】東京都目黒区大岡山2丁目12番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】米谷 真人
【住所又は居所】東京都目黒区大岡山2−12−1 国立大学法人東京工業大学内
(72)【発明者】
【氏名】田中 恵多
【住所又は居所】東京都目黒区大岡山2−12−1 国立大学法人東京工業大学内
(72)【発明者】
【氏名】和田 雄二
【住所又は居所】東京都目黒区大岡山2−12−1 国立大学法人東京工業大学内
【テーマコード(参考)】
4F100
4G047
【Fターム(参考)】
4F100AA21B
4F100AA21C
4F100AG00
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
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4F100GB41
4F100JA11B
4F100YY00B
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4G047CA02
4G047CB05
4G047CC03
4G047CD02
4G047CD07
(57)【要約】
本発明は、化学的活性が高い(001)面が通常より多く成長し、かつ、(001)面が基材の成膜面に対して垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型の板状結晶からなる酸化チタン膜を含み、この酸化チタン膜単独より比表面積を大きくすることが可能な酸化チタン積層膜を提供する。酸化チタン積層膜(1)は、基材(11)上に、基材(11)の成膜面(11a)に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる第1の酸化チタン膜(12)と、第1の酸化チタン膜(12)の比表面積よりも大きい比表面積を有し、複数の酸化チタン微粒子からなる第2の酸化チタン膜(13)とが順次積層されたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、
前記基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる第1の酸化チタン膜と、
前記第1の酸化チタン膜の比表面積よりも大きい比表面積を有し、複数の酸化チタン微粒子からなる第2の酸化チタン膜とが順次積層された酸化チタン積層膜。
【請求項2】
前記第1の酸化チタン膜は、前記成膜面に対する(001)面の傾斜角が10°以上である請求項1に記載の酸化チタン積層膜。
【請求項3】
前記第1の酸化チタン膜は、前記成膜面に対する(001)面の傾斜角が30°以上である請求項2に記載の酸化チタン積層膜。
【請求項4】
前記第1の酸化チタン膜は、アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が10%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の酸化チタン積層膜。
【請求項5】
前記第1の酸化チタン膜は、アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が50%以上である請求項4に記載の酸化チタン積層膜。
【請求項6】
前記第1の酸化チタン膜は、アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が80%以上である請求項5に記載の酸化チタン積層膜。
【請求項7】
前記第1の酸化チタン膜は、実表面積/基板投影面積が20以上である請求項1〜6のいずれかに記載の酸化チタン積層膜。
【請求項8】
基材上に成膜され、前記基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜であって、
前記成膜面に対する(001)面の傾斜角が10°以上であり、
アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が10%以上であり、
実表面積/基板投影面積が20以上である酸化チタン膜。
【請求項9】
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の成膜に用いられる酸化チタン前駆体液であって、
酸化チタン前駆体と、[BF]の塩及び/又は[PF]の塩からなる非酸性の添加剤とを含む酸化チタン前駆体液。
【請求項10】
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の成膜に用いられる酸化チタン前駆体液であって、
酸化チタン前駆体と、アルコール類及び/又はアミン類からなる非酸性の添加剤とを含む酸化チタン前駆体液。
【請求項11】
前記酸化チタン前駆体が、TiF及び/又は[TiF]2−の塩を含む請求項9又は10に記載の酸化チタン前駆体液。
【請求項12】
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の製造方法であって、
請求項9〜11のいずれかに記載の酸化チタン前駆体液を用いた液相法により、前記酸化チタン膜を成膜する酸化チタン膜の製造方法。
【請求項13】
マイクロ波を照射しながら結晶成長を行う請求項12に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【請求項14】
基材と、色素増感剤を担持する半導体膜とを備え、
前記半導体膜が、請求項1〜7のいずれかに記載の酸化チタン積層膜を含む色素増感剤型光電変換素子。
【請求項15】
基材と、色素増感剤を担持する半導体膜とを備え、
前記半導体膜が、請求項8に記載の酸化チタン膜を含む色素増感剤型光電変換素子。
【請求項16】
前記色素増感剤として、700〜900nmの波長域に吸収を示す色素増感剤が用いられ、700〜900nmの波長域において光電変換応答を示す請求項14又は15に記載の色素増感剤型光電変換素子。
【請求項17】
基材と色素増感剤を担持する半導体膜とを備え、
前記半導体膜が、前記基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜を含み、
前記色素増感剤として、700〜900nmの波長域に吸収を示す色素増感剤が用いられ、700〜900nmの波長域において光電変換応答を示す色素増感剤型光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン積層膜、酸化チタン膜とその製造方法、酸化チタン膜の製造に用いて好適な酸化チタン前駆体液、及び、色素増感剤を担持する半導体膜として酸化チタン膜を用いた色素増感剤型光電変換素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、色素増感型光電変換素子の負極基板は、ガラス基板等からなる透光性基板上に、負極として、FTO(フッ素ドープ酸化錫)あるいはITO(インジウム錫酸化物)等からなる透光性導電膜と、色素増感剤を坦持した酸化チタンからなる半導体膜とが順次形成された構造を有している。
【0003】
色素増感型光電変換素子において、酸化チタン膜は、光を吸収する色素増感剤を担持し、その励起電子を収集する役割を担っている。そのため、色素増感剤を担持する酸化チタン膜は、色素増感剤を担持するに必要な比表面積と、良好な導電性とを有する必要がある。
従来、色素増感剤を担持する酸化チタン膜には、ナノオーダーの酸化チタン微粒子からなる多孔質膜(以降、「酸化チタン微粒子膜」という。)が広く用いられている。
【0004】
酸化チタンにはいくつかの結晶型がある。電子物性及び光物性が良好なことから、ルチル型よりもアナターゼ型が好ましいとされている。
【0005】
従来の色素増感型光電変換素子に用いられる酸化チタン微粒子膜は、比表面積が大きく、色素増感剤の担持に優れている。しかしながら、酸化チタン微粒子膜は多結晶構造であり、粒子間の界面抵抗により導電性があまり良くなく、電子注入効率及び電子移動特性があまり良くない。
【0006】
色素増感剤を担持する酸化チタン膜は、界面抵抗のない単結晶からなり、かつ、色素増感剤を担持する隙間を有して結晶配向していることが好ましい。
【0007】
従来、気相成膜において、酸化チタン膜の結晶配向を制御する試みがなれている。しかしながら、真空雰囲気を要する気相法は高コストである。
従来、水熱合成法あるいは電解酸化析出法等の液相法により、表面に酸化錫膜等の透光性導電膜を有する基材上に、直接アナターゼ型結晶の酸化チタン膜を成長させる方法が知られている。
アナターゼ型の酸化チタン結晶にはいくつかの結晶面がある。一般に、アナターゼ型の酸化チタン結晶において、(001)面は化学的活性が高いために不安定で成長させることが難しく、他の結晶面は化学的活性が低いために安定で成長しやすい面である。
従来の液相法による酸化チタン膜の成膜では、最安定面である(101)面が優先的に成長しやすい。(101)面は(001)面あるいは(100)面に対して傾斜した面である。そのため、(101)面が優先的に成長した酸化チタン膜は、膜の均一性が低く、結晶界面あるいは結晶欠陥が多く存在した構造となりやすい。不活性な(101)面が優先的に成長し、かつ、結晶界面あるいは結晶欠陥が多く存在する酸化チタン膜は、色素増感型光電変換素子等の用途において良好な電子注入効率及び電子移動特性を得ることが難しい。
【0008】
近年、非特許文献1において、基材の成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型の酸化チタン膜の水熱合成法による成膜が報告されている。
非特許文献1に記載の方法は以下のとおりである。
成膜基材として、ガラス基板上にFTO(フッ素ドープ酸化錫)膜が形成されたFTO基板を用意する。
36.5〜38質量%の塩酸水溶液と脱イオン水とを混合し、総量を60mlとしたものを5分間撹拌する。
得られた溶液に、0.5gの(NHTiFと1mlのTi(OBu)(チタンテトラブトキシド)とを添加し、5分間撹拌して、前駆体液を調製する。
密封耐熱容器に上記前駆体液を入れ、この中に成膜基材(FTO基板)を浸漬させる。
例えば150℃で12時間反応させた後、室温まで空冷する。
水熱合成後の基材を取り出し、純水にて超音波洗浄する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Shuanglong Feng et.al., J.Ceram.Soc., 2011, 94 [2], 310-315.
【非特許文献2】Michele Lazzeri et. al., Phys. Rev. B, 2001, 63, 155409.
【非特許文献3】Masato M. Maitani et. al., J. Phys. Chem. Lett. 2011, 2, 2655-2659.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献1に記載の方法では、基材上に直接、化学的活性が高い(001)面が通常より多く成長したアナターゼ型の酸化チタン膜を成膜することができる。しかしながら、得られる酸化チタン膜は板状結晶からなり(非特許文献1のFig.1等)、従来の酸化チタン微粒子膜に比して比表面積を大きくすることが難しい。そのため、色素増感剤型光電変換素子において、色素増感剤を担持する半導体膜として用いた場合、色素増感剤の担持量を大きくすることが難しい。
【0011】
活性の高い(001)面が通常より多く成長したアナターゼ型の酸化チタン膜においては、全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合(以降、(001)面比率ともいう。)は高い方が好ましい。
また、酸化チタン膜を用いた色素増感型光電変換素子においては、実表面積/基板投影面積が大きい方が、基板投影面積あたりより多くの色素を担持できるため、入射光の吸収効率が高くなり、効率が向上することが知られている。したがって、酸化チタン膜の実表面積/基板投影面積は高い方が好ましい。
非特許文献1には(001)面比率及び実表面積/基板投影面積について記載がなく、これらを向上する方法について検討がなされていない。
【0012】
従来の色素増感型光電変換素子では一般に、可視域(400〜700nmの波長域)の光電変換は容易であるが、赤外域(700〜900nmの波長域)については、この波長域に吸収を持つ色素増感剤を用いても、光電変換は難しいとされている。
可視光に合わせて赤外光を光電変換できれば、可視光のみを光電変換するよりも、光電変換効率を向上することができる。
しかしながら、可視光よりも長波長の赤外光を吸収する色素増感剤はHOMO−LUMOギャップが狭く、色素増感剤のLUMO−酸化チタン伝導帯間のポテンシャルギャップが狭くなるため、酸化チタンへの電子注入効率の低下により光電変換は難しいとされている(本明細書の図4を参照)。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、化学的活性が高い(001)面が通常より多く成長し、かつ、(001)面が基材の成膜面に対して垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型の板状結晶からなる酸化チタン膜を含み、この酸化チタン膜単独より比表面積を大きくすることが可能な酸化チタン積層膜を提供することを目的とするものである。
【0014】
本発明はまた、化学的活性が高い(001)面が通常より多く成長し、かつ、(001)面が基材の成膜面に対して垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型の板状結晶からなる酸化チタン膜を含み、色素増感型光電変換素子に用いた場合に色素増感剤を担持でき、化学的活性が高く、電子注入効率及び電子移動特性が良く、光電変換を実現することができ、低コストに製造することが可能な酸化チタン積層膜、及びこれを備えた色素増感剤型光電変換素子を提供することを目的とするものである。
【0015】
本発明はまた、化学的活性が高い(001)面が通常より多く成長し、かつ、(001)面が基材の成膜面に対して垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型の板状結晶からなり、(001)面比率及び実表面積/基板投影面積が向上された酸化チタン膜、この酸化チタン膜を製造することが可能な酸化チタン前駆体液、及びこれを用いた酸化チタン膜の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0016】
本発明はまた、赤外域(700〜900nmの波長域)の光電変換を実現することが可能な色素増感剤型光電変換素子を提供することを目的とするものである。
【0017】
本明細書において、アナターゼ型の酸化チタンが「(001)面が通常より多く成長した」とは、アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が、通常報告されている割合である5%程度(例えば非特許文献2に記載)に比して大きいこと、具体的には全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が10%以上と定義するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の酸化チタン積層膜は、
基材上に、
前記基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる第1の酸化チタン膜と、
前記第1の酸化チタン膜の比表面積よりも大きい比表面積を有し、複数の酸化チタン微粒子からなる第2の酸化チタン膜とが順次積層されたものである。
【0019】
前記第1の酸化チタン膜は、前記基材の成膜面に対する(001)面の傾斜角が10°以上であることが好ましい。
前記第1の酸化チタン膜は、アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合((001)面比率)が30%以上であることが好ましい。
前記第1の酸化チタン膜は、実表面積/基板投影面積が20以上であることが好ましい。
【0020】
本明細書において、アナターゼ型板状結晶における(001)面の傾斜角と(001)面比率は、SEM(走査型電子顕微鏡)観察を実施し、ランダムに100個以上の結晶を選出し、各結晶について求めるものとする。
実表面積/基板投影面積の測定方法については、[実施例]の項に記載する。
【0021】
本発明の酸化チタン膜は、
基材上に成膜され、前記基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜であって、
前記成膜面に対する(001)面の傾斜角が10°以上であり、
アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が10%以上であり、
実表面積/基板投影面積が20以上の酸化チタン膜である。
【0022】
本発明の第1の酸化チタン前駆体液は、
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の成膜に用いられる酸化チタン前駆体液であって、
酸化チタン前駆体と、[BF]の塩及び/又は[PF]の塩からなる非酸性の添加剤とを含むものである。
【0023】
本発明の第2の酸化チタン前駆体液は、
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の成膜に用いられる酸化チタン前駆体液であって、
酸化チタン前駆体と、アルコール類及び/又はアミン類からなる非酸性の添加剤とを含むものである。
【0024】
本発明の酸化チタン膜の製造方法は、
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の製造方法であって、
上記の本発明の第1又は第2の酸化チタン前駆体液を用いた液相法により、前記酸化チタン膜を成膜するものである。
【0025】
本発明の第1の色素増感剤型光電変換素子は、
基材と、色素増感剤を担持する半導体膜とを備え、
前記半導体膜が、上記の本発明の酸化チタン積層膜を含むものである。
【0026】
本発明の第2の色素増感剤型光電変換素子は、
基材と、色素増感剤を担持する半導体膜とを備え、
前記半導体膜が、上記の本発明のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜を含むものである。
【0027】
本発明の第1、第2の色素増感剤型光電変換素子においては、前記色素増感剤として、700〜900nmの波長域に吸収を示す色素増感剤が用いることができる。この場合、700〜900nmの波長域において光電変換応答を示す色素増感剤型光電変換素子を提供することができる。
【0028】
本発明の第3の色素増感剤型光電変換素子は、
基材と色素増感剤を担持する半導体膜とを備え、
前記半導体膜が、前記基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜を含み、
前記色素増感剤として、700〜900nmの波長域に吸収を示す色素増感剤が用いられ、700〜900nmの波長域において光電変換応答を示すものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、化学的活性が高い(001)面が通常より多く成長し、かつ、(001)面が基材の成膜面に対して垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型の板状結晶からなる酸化チタン膜を含み、この酸化チタン膜単独より比表面積を大きくすることが可能な酸化チタン積層膜を提供することができる。
【0030】
本発明によれば、化学的活性が高い(001)面が通常より多く成長し、かつ、(001)面が基材の成膜面に対して垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型の板状結晶からなる酸化チタン膜を含み、色素増感型光電変換素子に用いた場合に色素増感剤を担持でき、化学的活性が高く、電子注入効率及び電子移動特性が良く、光電変換を実現することができ、低コストに製造することが可能な酸化チタン積層膜、及びこれを備えた色素増感剤型光電変換素子を提供することができる。
【0031】
本発明によれば、化学的活性が高い(001)面が通常より多く成長し、かつ、(001)面が基材の成膜面に対して垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型の板状結晶からなり、(001)面比率及び実表面積/基板投影面積が向上された酸化チタン膜、この酸化チタン膜を製造することが可能な酸化チタン前駆体液、及びこれを用いた酸化チタン膜の製造方法を提供することができる。
【0032】
本発明によれば、赤外域(700〜900nmの波長域)の光電変換を実現することが可能な色素増感剤型光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】アナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜のイメージ斜視図である。
【図2】本発明の酸化チタン積層膜のイメージ斜視図である。
【図3】本発明に係る色素増感型光電変換素子の一実施形態の概略断面図である。
【図4】図3の色素増感型光電変換素子におけるエネルギーダイアグラムを模式的に示すものである。
【図5】FTO基板、及び試験例2−1において得られたTiO/FTO基板のXRDパターンである。
【図6A】試験例2−1において得られたTiO/FTO基板のSEM表面写真である。
【図6B】試験例2−1において得られたTiO/FTO基板のSEM断面写真である。
【図7】試験例2−1において得られた酸化チタン結晶のTEM写真と電子線回折写真である。
【図8】色素増感剤SMP−109の吸光スペクトル、及び、色素増感剤SMP−109を用いた試験例1−1及び試験例2−1の光電変換素子のIPCEスペクトルである。
【図9】試験例1−1及び試験例2−1の光電変換素子の光電流の測定結果を示すグラフである。
【図10】試験例1−1及び試験例2−1の光電変換素子において、用いた色素増感剤のLUMOのエネルギー準位とIPCEとの関係を示すグラフである。
【図11A】試験例2−2において得られたアナターゼ型TiO/ルチル型TiO基板のSEM表面写真である。
【図11B】試験例2−2において得られたアナターゼ型TiO/ルチル型TiO基板のSEM表面写真である。
【図11C】試験例2−2において得られたアナターゼ型TiO/ルチル型TiO基板のSEM表面写真である。
【図11D】試験例2−2において得られたTiO/FTO基板のSEM斜視写真である。
【図12A】試験例2−3において得られたTiO/FTO基板のSEM表面写真である。
【図12B】試験例2−3において得られたTiO/FTO基板のSEM表面写真である。
【図13】試験例2−4において得られたTiO/FTO基板のSEM表面写真である。
【図14】試験例2−5において得られたTiO/FTO基板のSEM表面写真である。
【図15】試験例2−6において得られたTiO/FTO基板のSEM表面写真である。
【図16】試験例2−7において得られたTiO/FTO基板のSEM表面写真である。
【図17】試験例2−8において得られたTiO/FTO基板のSEM表面写真である。
【図18】試験例3−4において得られたTiO/FTO基板のSEM表面写真である。
【図19A】試験例2−1、3−1A〜3−1D、3−2A、3−2B、3−3において、F/Tiモル比と(001)面比率との関係を示すグラフである。
【図19B】試験例2−1、3−1A〜3−1D、3−2A、3−2B、3−3、3−4において、F/Tiモル比と(001)面比率との関係を示すグラフである。
【図20】試験例2−1、3−1A〜3−1D、3−2A、3−2B、3−3において、F/Tiモル比と板状結晶の上面の長軸方向の平均直径との関係を示すグラフである。
【図21】試験例2−1、3−1A〜3−1D、3−2A、3−2B、3−3において、F/Tiモル比と実表面積/基板投影面積との関係を示すグラフである。
【図22】試験例4−2において得られたTiO積層膜/FTO基板のSEM断面写真である。
【図23】試験例4−1及び試験例4−2の光電変換素子の光電流の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0035】
[酸化チタン積層膜]
本発明の酸化チタン積層膜は、
基材上に、
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる第1の酸化チタン膜と、
第1の酸化チタン膜の比表面積よりも大きい比表面積を有し、複数の酸化チタン微粒子からなる第2の酸化チタン膜とが順次積層されたものである。
【0036】
図1に、本発明の酸化チタン積層膜における第1の酸化チタン膜のイメージ斜視図を示す。図1は、後記試験例2−1のSEM像(図6A及び図6B)を基に作成したものである。
図2に、本発明の酸化チタン積層膜のイメージ斜視図を示す。
図2は、図1に示した第1の酸化チタン膜12上に酸化チタン微粒子膜からなる第2の酸化チタン膜13が積層された様子を示している。
【0037】
図中、符号1は酸化チタン積層膜、符号11は基材、符号11aは基材の成膜面、符号12はアナターゼ型板状結晶からなる第1の酸化チタン膜、符号12aはアナターゼ型結晶の(001)面、符号13は酸化チタン微粒子膜からなる第2の酸化チタン膜、符号13aは酸化チタン微粒子をそれぞれ示している。
例えば、図2に示すように、酸化チタン微粒子13aは、基材11の成膜面11aに対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数の板状結晶からなる第1の酸化チタン膜12の隙間を埋めつつ、その上に堆積する。
【0038】
アナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜、及び、アナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜と酸化チタン微粒子膜とを含む酸化チタン積層膜は、色素増感型光電変換素子において色素増感剤を担持する半導体膜として好ましく用いることができる。
【0039】
基材としては特に制限されず、任意の基材上に第1の酸化チタン膜を成長させ、その上に第2の酸化チタン膜を積層することができる。
例えば、酸化チタン積層膜を、色素増感剤型光電変換素子において色素増感剤を担持する半導体膜として用いる場合、基材としては例えば、ガラスあるいはPET(ポリエチレンテレフタレート)等からなる透光性基板上に、FTO(フッ素ドープ酸化錫)あるいはITO(インジウム錫酸化物)等からなる透光性導電膜が形成されたものが好ましく用いられる。
【0040】
従来一般に用いられているナノオーダーの酸化チタン微粒子膜単独では、粒子間の界面抵抗のために高導電性が得られず、電子注入効率及び電子移動特性があまり良くない。
アナターゼ型板状結晶からなる第1の酸化チタン膜は単結晶膜であるので、従来一般に用いられているナノオーダーの酸化チタン微粒子膜に比較して、導電性が良く、電子注入効率及び電子移動特性に優れている。
【0041】
アナターゼ型の酸化チタンにはいくつかの結晶面がある。
アナターゼ型の酸化チタン結晶において、(001)面は化学的活性が高いために不安定で成長させることが難しいが、化学的活性が高いために、これを優先的に成長させることで、化学的活性が高く、電子注入効率及び電子移動特性の高い半導体膜が得られる。
また、基材上にアナターゼ型の酸化チタン結晶の(001)面が優先的に成長することにより、(101)面が優先的に成長するよりも、表面平滑性に優れ、結晶界面あるいは結晶欠陥が低減され、電子注入効率及び電子移動特性の高い高品位な単結晶膜が得られる。
第1の酸化チタン膜は、(001)面が優先的に成長したものであるので、他の結晶面を優先的に成長させるよりも、色素増感型光電変換素子において色素増感剤を担持する半導体膜として用いた場合に、高光電変換特性が期待できる。
【0042】
第1の酸化チタン膜は、色素増感型光電変換素子において色素増感剤を担持する半導体膜として用いた場合に、従来光電変換が難しいとされている赤外域(700〜900nmの波長域)の光電変換を実現することも可能である。赤外域の光電変換の詳細については後述する。
【0043】
第1の酸化チタン膜は、基材の成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長したものであるので、色素増感剤を担持することができる。仮に、(001)面が基材の成膜面に対して平行方向に成長してしまうと、膜の表面に色素増感剤を担持できる隙間がなくなってしまう。
ただし、第1の酸化チタン膜は複数の板状結晶からなるため、従来一般に用いられているナノオーダーの酸化チタン微粒子膜よりも、比表面積が例えば一桁程度小さくなる。
本発明では、第1の酸化チタン膜と第2の酸化チタン膜とを併用することで、第1の酸化チタン膜単独よりも全体的な比表面積を大きくすることができる。そのため、色素増感剤型光電変換素子において、色素増感剤を担持する半導体膜として用いた場合、色素増感剤の担持量を大きくすることができ、光電変換特性に優れた色素増感剤型光電変換素子を提供することができる。
【0044】
比表面積を考慮すれば、基材の成膜面に対する(001)面の角度θは大きい方が好ましく、具体的には10°以上が好ましく、30°以上がより好ましく、60°以上が特に好ましい。
本発明者は例えば、基材の成膜面に対する(001)面の傾斜角θを30〜90°にし、色素増感剤を担持させることに成功している(後記[実施例]の項を参照)。
【0045】
第1の酸化チタン膜の化学的活性を考慮すれば、アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合((001)面比率)は大きい方が好ましい。
成膜条件を工夫することで、(001)面比率を、通常報告されている割合である5%程度よりも大きく、例えば10%以上とすることができる。(001)面比率は、30%以上がより好ましく、50%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。本発明者は例えば、(001)面比率を30〜92%にすることに成功している(後記[実施例]の項を参照)。
【0046】
第2の酸化チタン膜を構成する酸化チタン微粒子の粒子径は特に制限されず、色素増感型光電変換素子等の用途では、例えば5〜20nm程度が好ましい。
第2の酸化チタン膜の結晶型は特に制限されず、例えば、色素増感型光電変換素子等の用途ではアナターゼ型が好ましい。
【0047】
(第1の酸化チタン膜の製造方法)
アナターゼ型板状結晶からなる第1の酸化チタン膜は、必須成分として酸化チタン前駆体を含み、任意成分として添加剤を含んでもよい酸化チタン前駆体液を用いた液相法によって製造することができる。
【0048】
酸化チタン前駆体液としては、
アナターゼ型の酸化チタン結晶の(001)面の化学的活性を低下させる元素を含む酸化チタン前駆体、
アナターゼ型の酸化チタン結晶の(001)面の化学的活性を低下させる元素を含む非酸性の添加剤、
及び、
アナターゼ型の酸化チタン結晶の(001)面の化学的活性を低下させる化合物からなる非酸性の添加剤のうち少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0049】
上記の本発明の酸化チタン前駆体液を用いた場合、成膜中に、化学的活性が高く不安定な(001)面の化学的活性が低下して安定化し、その結果、(001)面を優先的に成長させることができる。
(001)面の化学的活性が低下するメカニズムは必ずしも明確ではないが、特定の元素あるいは化合物が(001)面に吸着する、あるいは特定の元素あるいは化合物が(001)面に作用して、その表面エネルギーを低下させるなどが考えられる。
【0050】
アナターゼ型の酸化チタン結晶の(001)面の化学的活性を低下させる元素としては、フッ素元素(F)、あるいは塩素元素(Cl)等のハロゲン元素が挙げられ、フッ素元素(F)等が特に好ましい。これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0051】
フッ素含有酸化チタン前駆体としては、TiF、及び[TiF]2−の塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0052】
ハロゲン含有酸化チタン前駆体とハロゲン非含有酸化チタン前駆体とを併用することができる。
ハロゲン非含有酸化チタン前駆体としては、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、四塩化チタン、及び硫酸チタンが挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0053】
ハロゲン含有酸化チタン前駆体の代わりに、又はこれと併用して、ハロゲン元素を含む非酸性の添加剤を用いることができ、フッ素元素を含む非酸性の添加剤が好ましく用いられる。
【0054】
ハロゲン含有酸化チタン前駆体を用いない場合には、上記で例示したようなハロゲン非含有酸化チタン前駆体が必須となる。
フッ素元素を含む非酸性の添加剤としては、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、[BF]の塩、及び[PF]の塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
本発明者は、 [BF]の塩及び/又は[PF]の塩からなる非酸性の添加剤を用いることで、(001)面比率を向上できることを見出している(後記[実施例]の項を参照)。(001)面比率の向上効果が得られる理由は定かではないが、 [BF]の塩及び/又は[PF]の塩が成膜面に吸着することで、(001)面が成長しやすくなると推測される。
本発明者はまた、[BF]の塩及び/又は[PF]の塩からなる非酸性の添加剤を用いることで、実表面積/基板投影面積を向上できることを見出している(後記[実施例]の項を参照)。
[BF]の塩及び/又は[PF]の塩の添加量は0.2M以上が好ましく、例えば0.2〜0.4Mが好ましい。
「背景技術」の項に挙げた非特許文献1には、[BF]の塩及び/又は[PF]の塩の添加、及びこれらの添加による(001)面比率あるいは実表面積/基板投影面積の向上効果について記載がない。
【0055】
色素増感型光電変換素子等の用途では、フッ酸は、酸化チタン膜の下地として一般的なFTOあるいはITO等の金属酸化物を溶解させる恐れがある。
本発明では酸性の添加剤を必須としないので、FTOあるいはITO等の金属酸化物等の酸に弱い下地上に酸化チタン膜を成膜する用途に好適である。
【0056】
酸化チタン前駆体液において、Tiに対するF等のハロゲン元素の量は特に制限されず、例えば、Ti元素に対するF元素のモル比(F/Ti)で0.1〜20倍が好ましい。
【0057】
アナターゼ型の酸化チタン結晶の(001)面の化学的活性を低下させる化合物からなる非酸性の添加剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)等のアルコール類、及びジエチレントリアミン等のアミン類等を用いることもできる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
「背景技術」の項に挙げた非特許文献1には、これらの添加について記載がない。
【0058】
(001)面の優先成長がより高レベルで進行することから、フッ素含有酸化チタン前駆体、及び/又はフッ素を含む非酸性の添加剤を用いることがより好ましい。
(001)面の優先成長が高レベルで進行し、かつ、(001)面の化学的活性を低下させる添加剤を別途添加する必要がないことから、フッ素含有酸化チタン前駆体を用いることが特に好ましい。
フッ素含有酸化チタン前駆体の中でも、(001)面の優先成長がより高レベルで進行することから、[TiF]2−の塩を用いることが特に好ましい。
フッ素含有酸化チタン前駆体である[TiF]2−の塩と、非酸性の添加剤である[BF]の塩及び/又は[PF]の塩とを併用することが最も好ましい。かかる組成の酸化チタン前駆体液を用いることで、(001)面比率と実表面積/基板投影面積の高い第1の酸化チタン膜を製造できる。
【0059】
本発明の酸化チタン前駆体液は、水等の無機溶媒及び/又は有機溶媒を含む。また、必要に応じて、1種又は2種以上の他の任意の添加剤を含むことができる。
【0060】
酸化チタン前駆体液のpHは特に制限されず、用いる基材に応じて選定される。本発明の酸化チタン前駆体液のpHは、少なくとも酸化チタン膜を成膜する下地に対する溶解性が低いpH領域内であることが好ましい。
基材の成膜面と反対側の裏面については、必要に応じて、保護フィルム等で保護することができる。
【0061】
繰り返しとなるが、例えば、色素増感型光電変換素子の用途では、酸性の酸化チタン前駆体液は、酸化チタン膜の下地として一般的なFTOあるいはITO等の金属酸化物を溶解させる恐れがある。したがって、下地がFTOあるいはITO等の金属酸化物である場合などには、酸化チタン前駆体液のpHは非酸性であることがより好ましい。
後記[実施例]の項においては、酸化チタン前駆体液として塩酸を含む酸性液を用いているが、塩酸は必須成分ではない。
本発明では、アナターゼ型の酸化チタン結晶の(001)面の化学的活性を低下させる添加剤としてフッ酸等の酸性の添加剤を用いないので、前駆体液を非酸性とすることが可能である。
また、後記[実施例]の項における酸化チタン前駆体液は、下地の導電膜の導電性の低下を招かない処方となっている。
【0062】
酸化チタン前駆体液を用いた液相法としては、溶媒として水を用いる水熱合成法等が挙げられる。有機溶媒を用いた液相法でもよい。
【0063】
水熱合成法における反応温度は特に制限されず、例えば250℃以下で充分である。例えば、150〜250℃が好ましい。
後述するように、必要に応じて合成後に焼成を行うことができるが、後工程の焼成は必須なものではない。
したがって、使用できる基材の選択の幅が広く、好ましい。基板あるいは成膜の下地として、耐熱性の高い無機材料だけでなく、樹脂等の有機材料を使用することも可能である。
【0064】
水熱合成法において、反応時間短縮と結晶の均一成長のために、マイクロ波照射を行うことが好ましい。
マイクロ波照射なしでは、通常10時間以上の反応時間が必要である。マイクロ波照射を行うことで、例えば反応時間を45〜90分間程度で済むようになる。
なお、「背景技術」の項に挙げた非特許文献1には、マイクロ波照射について記載がない。
マイクロ波の周波数は特に制限なく、酸化チタン前駆体液が良好に加熱されることから、例えば0.1〜50GHzが好ましい。
【0065】
液相合成後に、基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型板状結晶からなる第1の酸化チタン膜が得られる。
液相合成後、必要に応じて、得られた第1の酸化チタン膜を焼成することができる。焼成により、水あるいは有機溶媒等の溶媒、及び不純物を除去することができる。
【0066】
本発明の酸化チタン積層膜を色素増感剤型光電変換素子において色素増感剤を担持する半導体膜として用いる場合、第1の酸化チタン膜の表面にフッ素元素があると、色素増感剤が良好に担持できなくなる恐れがある。したがって、かかる用途において、前駆体液に、フッ素含有酸化チタン前駆体、及び/又はフッ素元素を含む添加剤を用いた場合、焼成によりフッ素元素を除去させることが好ましい。通常、500℃以上で焼成することで、フッ素元素を除去することができる。
【0067】
本発明者の検討では、液相合成後によって得られた、基材の成膜面に対してアナターゼ型結晶の(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した第1の酸化チタン膜に対して、その後焼成を行っても、膜構造の変化は見られていない。
【0068】
用途によっては、溶媒あるいはフッ素元素等が残留しても差し支えない場合がある。また、基材が500℃以上の耐熱性を有しない場合がある。このような場合は、500℃未満の低温焼成でもよいし、焼成を実施しなくてもよい。
【0069】
液相法は、気相法に比して低コストである。また、上記の製造方法では、基材上に直接、アナターゼ型結晶の(001)面を優先成長させることができ、所望の膜構造の第1の酸化チタン膜を成膜できるので、工程数が少なく低コストであり、結晶配向の制御が容易である。
【0070】
(第2の酸化チタン膜の製造方法)
本発明の酸化チタン積層膜における第2の酸化チタン膜の製造方法は特に制限されず、従来より用いられている色素増感剤を担持する酸化チタン微粒子膜の製造方法を適用できる。
例えば、酸化チタン前駆体を含むゾル等を塗布し、焼成するゾルゲル法等が挙げられる。
具体的な方法については、後記[実施例]の項を参照されたい。
【0071】
「酸化チタン膜、酸化チタン前駆体液、酸化チタン膜の製造方法」
酸化チタン積層膜とその製造に用いられる第1の酸化チタン膜と酸化チタン前駆体液の一部は、それ自体が新規であり、本発明に含まれる。
上記酸化チタン前駆体液を用いた酸化チタン膜の製造方法も新規であり、本発明に含まれる。
【0072】
本発明の酸化チタン膜は、
基材上に成膜され、前記基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜であって、
成膜面に対する(001)面の傾斜角が10°以上であり、
アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が10%以上であり、
実表面積/基板投影面積が20以上の酸化チタン膜である。
【0073】
本発明の第1の酸化チタン前駆体液は、
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の成膜に用いられる酸化チタン前駆体液であって、
酸化チタン前駆体と、[BF]の塩及び/又は[PF]の塩からなる非酸性の添加剤とを含むものである。
【0074】
本発明の第2の酸化チタン前駆体液は、
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の成膜に用いられる酸化チタン前駆体液であって、
酸化チタン前駆体と、アルコール類及び/又はアミン類からなる非酸性の添加剤とを含むものである。
【0075】
本発明の酸化チタン膜の製造方法は、
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の製造方法であって、
上記の本発明の第1又は第2の酸化チタン前駆体液を用いた液相法により、前記酸化チタン膜を成膜するものである。
【0076】
[色素増感剤型光電変換素子]
本発明の第1の色素増感剤型光電変換素子は、
基材と、色素増感剤を担持する半導体膜とを備え、
上記半導体膜が、上記の本発明の酸化チタン積層膜を含むものである。
【0077】
本発明の第1の色素増感剤型光電変換素子は、色素増感剤を担持する半導体膜として、単結晶膜からなり、(001)面が優先成長したものであり、化学的活性が高く、電子注入効率及び電子移動特性が良いアナターゼ型の第1の酸化チタン膜と、第1の酸化チタン膜よりも大きい比表面積を持つ酸化チタン微粒子膜からなる第2の酸化チタン膜とを備えたものである。したがって、本発明によれば、光電変換特性に優れた色素増感剤型光電変換素子を提供することができる。
【0078】
本発明の第2の色素増感剤型光電変換素子は、
基材と、色素増感剤を担持する半導体膜とを備え、
上記半導体膜が、上記の本発明のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜を含むものである。
【0079】
上記の本発明のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜は、(001)面比率と実表面積/基板投影面積が高いため、これを用いることにより、光電変換特性に優れた色素増感剤型光電変換素子を提供することができる。
【0080】
図面を参照して、色素増感型光電変換素子の一実施形態について説明する。図3は、模式断面図である。
【0081】
本実施形態の色素増感型光電変換素子100は、
ガラス基板等からなる第1基板111の表面に、負極として、FTO(フッ素ドープ酸化錫)あるいはITO(インジウム錫酸化物)等からなる第1導電膜112と、色素増感剤を坦持した半導体膜113とが順次形成された負極基板110と、
ガラス基板等からなる第2基板121の表面に、正極として、FTOあるいはITO等からなる第2導電膜122と、白金等の触媒層123とが順次形成された正極基板120と、
負極基板110及び正極基板120との間に充填され、酸化還元対を含む電界質層130とから概略構成されている。
【0082】
負極側の第1導電膜112と正極側の第2導電膜122とは、外部回路を通じて電気的に接続されている。
電界質層130としては、ヨウ素を含むレドックス溶液等が用いられる。
色素増感型光電変換素子100の周縁部はシール材140により封止されている。
【0083】
色素増感型光電変換素子100において、半導体膜113が上記の本発明の酸化チタン積層膜(成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型板状結晶からなる第1の酸化チタン膜と酸化チタン微粒子膜からなる第2の酸化チタン膜との積層膜)、又は、成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜により構成される。
【0084】
色素増感剤としては特に制限されず、公知の色素増感剤を1種又は2種以上用いることができる。
【0085】
色素増感型光電変換素子100において、負極側の第1基板111と第1導電膜112とは、透光性を有する必要がある。正極側の第2基板121と第2導電膜122とは、透光性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0086】
色素増感型光電変換素子100においては、負極側の第1基板111側から入射した光によって色素増感剤の電子が励起され、この励起電子が色素増感剤を担持する酸化チタンに伝導し、さらに第1導電膜112へ伝導する。第1導電膜112へ伝導した電子は、外部回路を通じて正極側の第2導電膜122へ伝導する。正極側の第2導電膜122に伝導した電子は、電解質中の酸化還元対を介して色素増感剤の基底準位に戻る。これらの一連の作用により、光電変換が起こる。
【0087】
図4は、色素増感型光電変換素子100におけるエネルギーダイアグラムを模式的に示すものである。
この図では、酸化チタン膜の下地がFTO電極である場合を例として図示してある。
【0088】
色素増感剤に入射した光によって、色素増感剤のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital、最高被占軌道)にあった電子が、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)に励起される。そして、色素増感剤のLUMOから酸化チタンの伝導帯に電子注入が起こる。
酸化チタンの伝導帯に注入された電子は拡散して、FTO等の第1導電膜に伝導する。外部回路を通じて対極側に電子が伝導し、電解質中の酸化還元対を介して色素増感剤の基底準位に戻る。
【0089】
色素増感剤のLUMOにある電子を酸化チタンに注入するには、色素増感剤のLUMOのエネルギー準位より酸化チタンの伝導帯のエネルギー準位が低いことが必要である。色素増感剤のLUMOのエネルギー準位と酸化チタンの伝導帯のエネルギー準位との差(LUMO-伝導帯ギャップ)ΔE1が大きい方が電子移動が起こりやすい。
【0090】
酸化チタンの伝導帯のエネルギー準位は、−0.5eV(vs NHE)程度である。
色素増感剤におけるHOMOとLUMOのエネルギー準位の差(HOMO-LUMOギャップ)は、吸収する光の波長に対応している。吸収する光の波長が長くなる程、HOMO-LUMOギャップは小さくなる傾向がある。
波長400〜700nmの可視光を吸収する色素増感剤については、HOMO-LUMOギャップを充分に大きくすることができ、LUMO-伝導帯ギャップΔE1を充分に大きくすることができる。
これに対して、波長700〜900nmの赤外光を吸収する色素増感剤については、HOMO-LUMOギャップが小さく、LUMO-伝導帯ギャップΔE1を充分に大きくすることができない。赤外光を吸収する色素増感剤を用いた場合、通常LUMO-伝導帯ギャップΔE1は0.2eV(vs NHE)以下である。
【0091】
従来、ΔE1≦0.2eV(vs NHE)では、色素増感剤の励起電子の酸化チタンへの注入効率が著しく低下するため、光電変換が難しいとされている。
そのため、従来の色素増感型光電変換素子では、一般に可視域の光電変換は比較的容易であるが、赤外域に吸収を示す色素増感剤を用いても、赤外域の光電変換は難しいとされている。
【0092】
本発明の色素増感剤型光電変換素子は、単結晶膜からなり、(001)面が優先成長したものであり、化学的活性が高く、電子注入効率及び電子移動特性が良いアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜を備えたものである。
そのため、本発明によれば、色素増感剤として、赤外域に吸収を示す色素増感剤を用いた場合、ΔE1≦0.2以下の条件でも、赤外域において光電変換応答を示す色素増感型光電変換素子を提供することができる(後記[実施例]の図8及び図9を参照)。このことは、アナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の結晶は活性の高い(001)面が通常より多く成長しており、この面に吸着した色素増感剤の励起電子の酸化チタンへの電子注入特性が向上するためと考えられる。
【0093】
上記したように、400〜700nmの可視域に吸収を示す色素増感剤が用いた場合には、ΔE1を充分に大きくできる。したがって、本発明においても、色素増感剤として、可視域に吸収を示す色素増感剤を用いた場合、可視域において光電変換応答を示す色素増感型光電変換素子を提供することができる。
【0094】
すなわち、本発明によれば、可視域と赤外域に光電変換応答を示す色素増感型光電変換素子を提供することが可能である。利用できる光の波長域が広がることにより、光電変換効率の向上が期待される。
この際、可視域と赤外域の両方に吸収を持つ1種又は複数種の色素増感剤を用いてもよいし、可視域に吸収を持つ1種又は複数種の色素増感剤と赤外域に吸収を持つ1種又は複数種の色素増感剤とを併用しても構わない。
【0095】
例えば、アナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜に、吸光波長の異なる色素増感剤を混在させて担持させることができる。
アナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の異なる結晶面に、それぞれ吸光波長の異なる色素増感剤を担持させることができる。
アナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜と酸化チタン微粒子膜とを併用する場合、アナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜には赤外域に吸収を持つ1種又は複数種の色素増感剤を担持させ、酸化チタン微粒子膜には可視域に吸収を持つ1種又は複数種の色素増感剤を担持させることができる。
【0096】
色素増感剤を担持する半導体膜としてアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜を単独で備え、色素増感剤として、700〜900nmの波長域に吸収を示す色素増感剤が用いられ、700〜900nmの波長域において光電変換応答を示す色素増感剤型光電変換素子自体も新規であり、本発明に含まれる。
【0097】
以上説明したように、本発明によれば、化学的活性が高い(001)面が通常より多く成長し、かつ、(001)面が基材の成膜面に対して垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型の板状結晶からなる酸化チタン膜を含み、この酸化チタン膜単独より比表面積を大きくすることが可能な酸化チタン積層膜を提供することができる。
【0098】
本発明によれば、化学的活性が高い(001)面が通常より多く成長し、かつ、(001)面が基材の成膜面に対して垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型の板状結晶からなる酸化チタン膜を含み、色素増感型光電変換素子に用いた場合に色素増感剤を担持でき、化学的活性が高く、電子注入効率及び電子移動特性が良く、光電変換を実現することができ、低コストに製造することが可能な酸化チタン積層膜、及びこれを備えた色素増感剤型光電変換素子を提供することができる。
【0099】
本発明によれば、化学的活性が高い(001)面が通常より多く成長し、かつ、(001)面が基材の成膜面に対して垂直方向又は傾斜方向に成長したアナターゼ型の板状結晶からなり、(001)面比率及び実表面積/基板投影面積が向上された酸化チタン膜、この酸化チタン膜を製造することが可能な酸化チタン前駆体液、及びこれを用いた酸化チタン膜の製造方法を提供することができる。
【0100】
本発明によれば、赤外域(700〜900nmの波長域)の光電変換を実現することが可能な色素増感剤型光電変換素子を提供することができる。
【実施例】
【0101】
本発明に係る試験例について説明する。
【0102】
[試験例1−1]
(成膜基材)
ガラス基板上に、CVD(ケミカルベーパーデポジション)法により、膜厚2μm、シート抵抗10Ω/cm□のFTO(フッ素ドープ酸化錫)膜が形成されたFTO基板を用意した。このFTO基板を、水、アセトン、及びエタノールで洗浄し、乾燥した後、紫外オゾンランプ照射により有機物除去して、成膜基材として使用した。
(酸化チタン微粒子膜の成膜)
上記成膜基材(FTO基板)上に、酸化チタン前駆体を含むゾル(Solaronix社製Tiゾル)を塗布し、450℃で30分間焼結して、平均粒径10nm、10〜15μm厚の酸化チタン微粒子膜を形成した。これを負極基板とした以外は、後記試験例2−1と同様にして、色素増感型光電変換素子を得た。
【0103】
[試験例2−1]
(成膜基材)
試験例1−1と同じFTO基板を成膜基材として使用した。
【0104】
(酸化チタン膜の成膜)
37質量%の塩酸水溶液15mlと脱イオン水15mlとを混合し、5分間撹拌した。この溶液に酸化チタン前駆体として、0.32gの(NHTiFと0.6mlのTi(OBu)とを添加し、5分間撹拌して、前駆体液を調製した。
【0105】
密封耐熱容器に上記前駆体液を入れ、この中に成膜基材(FTO基板)を浸漬させた。マイクロ波(2.45GHz)を照射しながら、210℃で75分間加熱して、水熱合成法により3〜4μm厚の酸化チタン膜を成膜した。その後、室温(20〜25℃)まで空冷した。
水熱合成後の基材を取り出し、純水にて30分間超音波洗浄した。
【0106】
得られたTiO/FTO基板を電気炉を用い空気雰囲気下で焼成して、溶媒である水、不純物、及びフッ素元素を除去した。焼成プロファイルは、325℃5分間→375℃5分間→450℃15分間→500℃15分間とした。
【0107】
本試験例では、酸化チタン前駆体として、(NHTiFとTi(OBu)の2種を用いている。これら前駆体のうち、前者はアナターゼ型結晶の(001)面の化学的活性を低下させるフッ素元素を含んでいる。
本試験例においては、前駆体液として塩酸を含む酸性液を用いているが、塩酸は必須成分ではなく、前駆体液を非酸性とすることも可能である。
【0108】
(色素増感型光電変換素子の製造)
得られたTiO/FTO基板を(株)林原生物化学研究所社製の色素増感剤SMP−109のエタノール/t−ブタノール(容量比1/2)混合溶液に12時間浸漬して、負極基板を得た。用いた色素増感剤の化学式を[化1]に示す。この色素増感剤は、700〜900nmの赤外域に吸収を持つ。
【0109】
【化1】
【0110】
酸化チタン膜の成膜基材として用いたのと同じFTO基板上に、Pt前駆体を含むゾル(Solaronix社製プラティゾル)を塗布し、酸素雰囲気下450℃で焼成することにより、触媒として、粒径1〜5nmの白金ナノ粒子を基板表面に析出して、正極基板を得た。
【0111】
色素担持酸化チタン膜とPt触媒層とが互いに対向するように、上記の負極基板と正極基板とを対向配置し、これら基板の周縁部間をシール材として熱可塑性樹脂(Solaronix社製Surlyn)を用いて熱圧着した。次いで、電極間にヨウ素系電解質溶液を注入して、色素増感型光電変換素子を得た。
【0112】
<XRD分析>
FTO基板、及び試験例2−1において得られたTiO/FTO基板(焼成後)について、XRD(X線回折)分析を実施した。
【0113】
得られたXRDパターンを図5に示す。
試験例2−1において得られた酸化チタン膜は、アナターゼ型結晶であることが確認された。
後記するように、試験例2−1の酸化チタン膜は、(001)面が優先的に成長したものである。(001)配向は、XRDパターンでは、(002)/(004)ピークとなって現れる。本試験例では、FTO基板の(002)/(004)ピークと酸化チタン膜の(002)/(004)ピークとが重なっているため、配向度を求めることはできなかった。
【0114】
<SEM観察、TEM電子線回折分析>
試験例2−1において得られたTiO/FTO基板(水洗浄後・焼成前)のSEM(走査型電子顕微鏡)観察を実施した。
【0115】
SEM表面写真及びSEM断面写真をそれぞれ図6A、図6Bに示す。
得られた酸化チタン膜は板状結晶からなり、基材の成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した膜構造であった。
基材の成膜面に対する(001)面の角度は、30〜90°であった。
また、アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合((001)面比率)は、83%であった。
【0116】
なお、焼成後の酸化チタン膜についても同様にSEM観察を実施したが、焼成前後の膜構造の変化は見られなかった。このことは、水熱合成反応によって、基材上に直接図6A及び図6Bに示す膜構造の酸化チタン膜が成膜され、その後焼成を実施しても膜構造は変化しないこと示している。
【0117】
試験例2−1において得られた酸化チタン膜について、TEM電子線回折分析を実施した。TEM(透過型電子顕微鏡)観察を行いながら、結晶サンプルを取り出し、その主面の電子線回折分析を実施した。この分析によって、酸化チタン膜の結晶成長方向が[110]方向であり、主面(大きく露出した正方形状の側面)が(001)面であることが確認された。
【0118】
<酸化チタン膜の比表面積の測定>
試験例2−1で得られた酸化チタン膜のSEM像より、酸化チタン結晶100個以上について形状測定を行い、酸化チタン結晶のサイズおよび基板面に対する(001)面の傾斜角度をこれらのSEM像から実測により求めた(図6A及び図6Bに例示)。各酸化チタン結晶は略正方形状に形成されるため、例えば図6Aに示すようにSEM像から実測されたa軸およびc軸方向の粒子直径より、(001)面および(101)面の面積を求めた。この評価方法は「背景技術」の項に挙げた非特許文献3に記載の方法である。この結果を基に実表面積/基板投影面積を求めたところ、試験例2−1の酸化チタン膜の実表面積/基板投影面積は17(cm/cm)であった。通常、試験例1−1の酸化チタン微粒子膜では比表面積は500〜1000(cm/cm)であることから、試験例2−1の酸化チタン膜の比表面積は、試験例1−1の酸化チタン微粒子膜に比べて、一桁程度小さい値であった。
【0119】
<SMP−109色素担持量の測定>
試験例2−1の酸化チタン膜と試験例1−1の酸化チタン微粒子膜についてそれぞれ、色素担持量を求めた。色素担持量は、SMP−109色素溶液の吸光度の変化を色素担持前後で比較することにより求めた。結果は以下の通りであった。下記のデータは基板投影面積あたりの色素担持量である。
試験例2−1の酸化チタン膜:1.7×10−8mol/cm
試験例1−1の酸化チタン微粒子膜:2.48×10−7mol/cm
試験例2−1の酸化チタン膜の色素担持量は、試験例1−1の酸化チタン微粒子膜の色素担持量に対して、一桁小さい値であった。この結果は、上記で算出された酸化チタンの比表面積の結果と対応している。
【0120】
<光電変換特性の評価>
分光感度測定装置(分光計器社製CEP?2000)を用い、色素増感剤SMP−109を用いた試験例2−1及び試験例1−1の光電変換素子のIPCEスペクトル(波長に対する光電変換効率を示すスペクトル)を測定した。
【0121】
結果を図8に示す。図8には、色素増感剤SMP−109の吸光スペクトルについても合わせて示してある。
試験例1−1で得られた光電変換素子では、赤外域(700〜900nmの波長域)に吸収を持つ色素増感剤SMP−109を用いても、この波長域の光電変換応答が見られなかった。
これに対して、試験例2−1で得られた光電変換素子は、用いた色素増感剤SMP−109の吸光スペクトルに対応して、赤外域での光電変換応答が見られた。
【0122】
色素増感剤SMP−109を用いた試験例2−1及び試験例1−1の光電変換素子について、擬似太陽光(AM1.5、結晶系シリコン規格、山下電装社製)を用い、室温下での光電流−電圧特性の測定を実施した。
結果を図9に示す。
試験例1−1では光電流が0μA/cm以下であり、赤外域の光電変換応答が見られなかった。これに対して、試験例2−1では光電流が流れ、赤外域での光電変換応答が確認された。
【0123】
試験例2−1と試験例1−1において、用いる色素増感剤を変更して色素増感型光電変換素子を得、各光電変換素子についてIPCE分析を実施した。
色素増感剤のLUMOのエネルギー準位とピークトップ波長(例えばSMP−109では790nm)におけるIPCEとの関係を図10に示す。
上記したように、試験例2−1の酸化チタン膜と試験例1−1の酸化チタン微粒子膜とは比表面積が異なり、試験例1−1の酸化チタン微粒子膜は試験例2−1の酸化チタン膜よりも比表面積が一桁大きい。
そこで、試験例2−1については、試験例2−1の中で最もIPCEの高かったサンプルのIPCEの値を「1」としてデータを基準化し、試験例1−1についても、試験例1−1の中で最もIPCEの高かったサンプルのIPCEの値を「1」としてデータを基準化した。
【0124】
図10中の試験例2−1及び試験例1−1のデータにおいて、LUMOのエネルギー準位が0.7eV(vs NHE)以下の赤外域に吸収を持つ色素増感剤を用いたサンプルのデータは、先に図8及び図9にデータを示したサンプルと同一サンプルのデータである。
【0125】
色素増感剤のLUMOにある電子を酸化チタンに注入させるには、色素増感剤のLUMOのエネルギー準位より酸化チタンの伝導帯のエネルギー準位が低いことが必要である。色素増感剤のLUMOのエネルギー準位と酸化チタンの伝導帯のエネルギー準位との差(LUMO-伝導帯ギャップ)ΔE1が大きい方が電子移動が起こりやすい。
従来、ΔE1≦0.2eV(vs NHE)において、光電変換は難しいとされている。
酸化チタンの伝導帯は−0.5eV(vs NHE)程度であるので、従来は、色素増感剤のLUMOのエネルギー準位が0.7eV(vs NHE)以下になると、光電変換が難しいとされている。
【0126】
試験例1−1では、LUMOのエネルギー準位が0.9eV(vs NHE)以上の可視域に吸収を持つ色素増感剤を用いたときには光電変換応答が見られたが、LUMOのエネルギー準位が0.7eV(vs NHE)以下の赤外域に吸収を持つ色素増感剤を用いたときには光電変換応答が見られなかった。
【0127】
これに対して、試験例2−1では、LUMOのエネルギー準位が0.9eV(vs NHE)以上の可視域に吸収を持つ色素増感剤と、LUMOのエネルギー準位が0.7eV(vs NHE)以下の近赤外域に吸収を持つ色素増感剤のいずれを用いても、光電変換応答が見られた。
【0128】
[試験例2−2]
試験例2−2は、試験例2−1において成膜基材を変更した例である。
【0129】
(成膜基材)
ルチル型の(110)単結晶酸化チタン基板を、水、アセトン、及びエタノールで洗浄し、乾燥した後、紫外オゾンランプ照射により有機物除去して、成膜基材として使用した。
【0130】
(酸化チタン膜の成膜)
試験例2−1と同じ前駆体液を調製し、試験例2−1と同じ条件で水熱合成を実施して、アナターゼ型の酸化チタン膜を成膜した。水熱合成後、試験例2−1と同様に、得られたアナターゼ型TiO/ルチル型TiO基板を純水にて超音波洗浄した。
【0131】
<SEM観察>
試験例2−2において得られたアナターゼ型TiO/ルチル型TiO基板のSEM観察を実施した。
SEM表面写真及びSEM斜視写真を図11A〜図11Dに示す。
試験例2−1と同様、得られた酸化チタン膜は板状結晶からなり、(001)面が優先的に成長した膜であった。得られた酸化チタン膜は、各結晶において主面である(001)面の基材の成膜面に対する角度のばらつきがなく、(001)面が基材の成膜面に対してほぼ垂直に立った膜構造であった。
【0132】
本試験例では、成膜基材として単結晶基板を用いており、下地の結晶方位が揃っていたため、本試験例の酸化チタン前駆体溶液中で最も安定な(001)面が優先的に成長する[110]軸方位にアナターゼ型酸化チタン結晶が均一に成長したと考えられる。
(001)面比率は、90%であった。
【0133】
以下の試験例2−3〜2−7は、酸化チタン前駆体を変更した例である。
【0134】
[試験例2−3]
(成膜基材)
試験例2−1と同じFTO基板を成膜基材として使用した。
【0135】
(酸化チタン膜の成膜)
37質量%の塩酸水溶液0.025mlと脱イオン水30mlとを混合し、5分間撹拌した。この溶液に0.075gのTiF(酸化チタン前駆体)と1.0mlの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートとを添加し、5分間撹拌して、前駆体液を調製した。
【0136】
密封耐熱容器に上記前駆体液を入れ、この中に成膜基材(FTO基板)を浸漬させた。マイクロ波(2.45GHz)を照射しながら、210℃で90分間加熱して、水熱合成法により3〜4μm厚の酸化チタン膜を成膜した。その後、室温(20〜25℃)まで空冷した。
水熱合成後の基材を取り出し、純水にて30分間超音波洗浄した。
【0137】
本試験例では、酸化チタン前駆体としてTiFを用い、添加剤として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを用いている。これらは、アナターゼ型結晶の(001)面の化学的活性を低下させるフッ素元素を含んでいる。
本試験例においては、前駆体液として塩酸を含む酸性液を用いているが、塩酸は必須成分ではなく、前駆体液を非酸性とすることも可能である。
【0138】
<SEM観察>
試験例3において得られたTiO/FTO基板のSEM観察を実施した。
SEM表面写真を図12A及び図12Bに示す。
試験例2−1と同様、得られた酸化チタン膜は、(001)面が優先的に成長し、基材の成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した膜であった。ただし、得られた酸化チタン膜は、試験例2−1、2−2に比較すると、(001)面の優先的な成長のレベルが小さく、他の結晶面の成長のレベルが大きいものであった。
得られた酸化チタン膜は、基材の成膜面に対して(001)面が30〜90°傾斜した膜構造であった。(001)面比率は、37%であった。
【0139】
[試験例2−4]
(成膜基材)
試験例2−1と同じFTO基板を成膜基材として使用した。
【0140】
(酸化チタン膜の成膜)
37質量%の塩酸水溶液0.025mlと脱イオン水30mlとを混合し、5分間撹拌した。この溶液に、0.075gのTiF(酸化チタン前駆体)と6.0mlのジエチレングリコールとを添加し、5分間撹拌して、前駆体液を調製した。
【0141】
密封耐熱容器に上記前駆体液を入れ、この中に成膜基材(FTO基板)を浸漬させた。マイクロ波(2.45GHz)を照射しながら、210℃で45分間加熱して、水熱合成法により3〜4μm厚の酸化チタン膜を成膜した。その後、室温(20〜25℃)まで空冷した。
水熱合成後の基材を取り出し、純水にて30分間超音波洗浄した。
【0142】
本試験例では、酸化チタン前駆体としてTiFを用いている。これは、アナターゼ型結晶の(001)面の化学的活性を低下させるフッ素元素を含んでいる。
【0143】
<SEM観察>
試験例2−4において得られたTiO/FTO基板のSEM観察を実施した。
SEM表面写真を図13に示す。
試験例2−1と同様、得られた酸化チタン膜は、(001)面が優先的に成長し、基材の成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した膜であった。ただし、得られた酸化チタン膜は、試験例2−1、2−2に比較すると、(001)面の優先的な成長のレベルが小さく、他の結晶面の成長のレベルが大きいものであった。
得られた酸化チタン膜は、基材の成膜面に対して(001)面が30〜90°傾斜した膜構造であった。(001)面比率は、31%であった。
【0144】
[試験例2−5]
(成膜基材)
試験例2−1と同じFTO基板を成膜基材として使用した。
【0145】
(酸化チタン膜の成膜)
37質量%の塩酸水溶液15mlと脱イオン水15mlとを混合し、5分間撹拌した。この溶液に酸化チタン前駆体として、0.25gのKTiFと0.5mlのTi(OBu)とを添加し、5分間撹拌して、前駆体液を調製した。
【0146】
密封耐熱容器に上記前駆体液を入れ、この中に成膜基材(FTO基板)を浸漬させた。マイクロ波(2.45GHz)を照射しながら、210℃で60分間加熱して、水熱合成法により3〜4μm厚の酸化チタン膜を成膜した。その後、室温(20〜25℃)まで空冷した。
水熱合成後の基材を取り出し、純水にて30分間超音波洗浄した。
【0147】
本試験例では、酸化チタン前駆体としてKTiFを用いている。これはアナターゼ型結晶の(001)面の化学的活性を低下させるフッ素元素を含んでいる。
本試験例においては、前駆体液として塩酸を含む酸性液を用いているが、塩酸は必須成分ではなく、前駆体液を非酸性とすることも可能である。
【0148】
<SEM観察>
試験例2−5において得られたTiO/FTO基板のSEM観察を実施した。
SEM表面写真を図14に示す。
試験例2−1と同様、得られた酸化チタン膜は(001)面が優先的に成長した板状結晶からなり、基材の成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した膜であった。
得られた酸化チタン膜は、基材の成膜面に対して(001)面が30〜90°傾斜した膜構造であった。(001)面比率は、81%であった。
【0149】
[試験例2−6]
(成膜基材)
試験例2−1と同じFTO基板を成膜基材として使用した。
【0150】
(酸化チタン膜の成膜)
0.25gのKTiFと0.5mlの代わりに、0.48mlの50質量%HTiF水溶液を用いた以外は試験例2−5と同様にして、酸化チタン膜を得た。
本試験例では、酸化チタン前駆体としてHTiFを用いている。これは、アナターゼ型結晶の(001)面の化学的活性を低下させるフッ素元素を含んでいる。
【0151】
<SEM観察>
試験例2−6において得られたTiO/FTO基板のSEM観察を実施した。
SEM表面写真を図15に示す。
試験例2−1と同様、得られた酸化チタン膜は(001)面が優先的に成長した板状結晶からなり、基材の成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した膜であった。
得られた酸化チタン膜は、基材の成膜面に対して(001)面が30〜90°傾斜した膜構造であった。(001)面比率は、86%であった。
【0152】
[試験例2−7]
試験例2−7は、加熱方法として通常のヒータ加熱を用いた例である。酸化チタン前駆体としては、試験例2−5と同じものを用いた。
【0153】
(成膜基材)
試験例2−1と同じFTO基板を成膜基材として使用した。
【0154】
(酸化チタン膜の成膜)
37質量%の塩酸水溶液15mlと脱イオン水15mlとを混合し、5分間撹拌した。この溶液に酸化チタン前駆体として、0.25gのKTiFと0.5mlのTi(OBu)とを添加し、5分間撹拌して、前駆体液を調製した。
【0155】
密封耐熱容器に上記前駆体液を入れ、この中に成膜基材(FTO基板)を浸漬させた。通常のヒータ加熱により、150℃で15時間加熱して、水熱合成法により3〜4μm厚の酸化チタン膜を成膜した。その後、室温(20〜25℃)まで空冷した。
水熱合成後の基材を取り出し、純水にて30分間超音波洗浄した。
【0156】
<SEM観察>
試験例2−7において得られたTiO/FTO基板のSEM観察を実施した。
SEM表面写真を図16に示す。
試験例2−5と同様、得られた酸化チタン膜は(001)面が優先的に成長した板状結晶からなり、基材の成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した膜であった。
得られた酸化チタン膜は、基材の成膜面に対して(001)面が30〜90°傾斜した膜構造であった。(001)面比率は、92%であった。
ただし、通常のヒータ加熱を用いた本試験例は、マイクロ波加熱を実施した試験例2−5の10倍以上の反応時間を要した。
【0157】
[試験例2−8]
試験例2−8では、フッ素非含有酸化チタン前駆体とフッ素含有添加物とを用いて、前駆体液を調製した。
【0158】
(成膜基材)
試験例2−1と同じFTO基板を成膜基材として使用した。
【0159】
(酸化チタン膜の成膜)
37質量%の塩酸水溶液15mlと脱イオン水15mlとを混合し、5分間撹拌した。この溶液に、1.0mlのTi(OBu)(酸化チタン前駆体)と、1.0mlの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートとを添加し、5分間撹拌して、前駆体液を調製した。
【0160】
密封耐熱容器に上記前駆体液を入れ、この中に成膜基材(FTO基板)を浸漬させた。マイクロ波(2.45GHz)を照射しながら、210℃で70分間加熱して、水熱合成法により3〜4μm厚の酸化チタン膜を成膜した。その後、室温(20〜25℃)まで空冷した。
水熱合成後の基材を取り出し、純水にて30分間超音波洗浄した。
【0161】
本試験例では、添加剤として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを用いている。この添加剤はアナターゼ型結晶の(001)面の化学的活性を低下させるフッ素元素を含んでいる。
本試験例においては、前駆体液として塩酸を含む酸性液を用いているが、塩酸は必須成分ではなく、前駆体液を非酸性とすることも可能である。
【0162】
<SEM観察>
試験例2−8において得られたTiO/FTO基板のSEM観察を実施した。
SEM表面写真を図17に示す。
試験例2−1と同様、得られた酸化チタン膜は(001)面が優先的に成長した板状結晶からなり、基材の成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した膜であった。
得られた酸化チタン膜は、基材の成膜面に対して(001)面が30〜90°傾斜した膜構造であった。(001)面比率は、86%であった。
【0163】
試験例2−1〜2−8における前駆体液組成、反応条件、及び評価結果を表1、表2にまとめておく。表中、BF4塩は、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートである(以下、同様)。
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
[試験例3−1A〜3−1D、3−2A、3−2B、3−3、3−4]
(成膜基材)
試験例2−1と同じFTO基板を成膜基材として使用した。
【0167】
(酸化チタン膜の成膜)
37質量%の塩酸水溶液10mlと脱イオン水10mlとを混合し、5分間撹拌した。この溶液に酸化チタン前駆体として、(NHTiFとTi(OBu)とを添加し、5分間撹拌した。試験例3−1A以外の例においては、さらに、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを添加し、5分間撹拌した。以上のようにして、前駆体液を調製した。
各例の前駆体液の組成を表3、表4に示す。表には、F/Tiモル比についても合わせて示してある。
【0168】
いずれの例においても、密封耐熱容器に得られた前駆体液を入れ、この中に成膜基材(FTO基板)を浸漬させた。マイクロ波(2.45GHz)を照射しながら加熱して、水熱合成法により3〜4μm厚の酸化チタン膜を成膜した。その後、室温(20〜25℃)まで空冷した。各例の反応条件を表3、表4に示す。
水熱合成後の基材を取り出し、純水にて30分間超音波洗浄した。
【0169】
これらの試験例では、酸化チタン前駆体として(NHTiF、添加剤として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを用いている。これらは、アナターゼ型結晶の(001)面の化学的活性を低下させるフッ素元素を含んでいる。
これらの試験例においては、前駆体液として塩酸を含む酸性液を用いているが、塩酸は必須成分ではなく、前駆体液を非酸性とすることも可能である。
【0170】
<SEM観察>
各例において得られたTiO/FTO基板のSEM観察を実施した。
いずれの例においても、試験例2−1と同様、得られた酸化チタン膜は、(001)面が優先的に成長し、基材の成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した膜であった。
いずれの例においても、得られた酸化チタン膜は、基材の成膜面に対して(001)面が30〜90°傾斜した膜構造であった。
代表として、試験例3−4のSEM表面写真を図18に示す。
【0171】
各例において得られた酸化チタン膜の(001)面比率を表3、表4に示す。
F/Tiモル比と(001)面比率との関係を図19A、図19Bに示す。グラフ縦軸の「(001) Fraction 」が(001)面比率である。
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを添加しなかった試験例3−1Aに比較すると、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを添加した他の試験例では(001)面の優先的な成長のレベルが大きかった。1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートの添加量の増加に伴って、(001)面比率が向上することが明らかとなった。
【0172】
各例において得られた酸化チタン膜について、SEM表面写真において撮像された板状結晶の上面の長軸方向の平均直径を求めた。結果を表3、表4に示す。F/Tiモル比と板状結晶の上面の長軸方向の平均直径との関係を図20に示す。グラフ縦軸の「Diameter in a-axis」が板状結晶の上面の長軸方向の平均直径である。
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートの添加量の増加に伴い、板状結晶が大きく成長することが確認された。
【0173】
各例において得られた酸化チタン膜について、SEM表面写真から実表面積/基板投影面積を求めた。結果を表3、表4に示す。F/Tiモル比と実表面積/基板投影面積との関係を図21に示す。グラフ縦軸の「Roughness Factor」が実表面積/基板投影面積である。
一般に色素増感型光電変換素子においては、実表面積/基板投影面積が大きい方が、投影面積あたりより多くの色素を担持できるため、入射光の吸収効率が高くなり、効率が向上することが知られている。
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートの添加量の増加に伴い、実表面積/基板投影面積が増加することが確認された。1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートの添加量を0.2M以上とした試験例において20〜40の実表面積/基板投影面積が実現された。このことから、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートの添加量は、0.2M以上が好ましく、例えば0.2〜0.4Mが好ましいことが明らかとなった。
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】
【0176】
[試験例4−1]
(成膜基材)
試験例1−1と同じFTO基板を成膜基材として使用した。
【0177】
(酸化チタン微粒子膜の成膜)
上記成膜基材(FTO基板)上に、酸化チタン前駆体を含むゾル(Solaronix社製Tiゾル)を塗布し、130℃のホットプレート上で6分乾燥する操作を2回繰り返した。さらに、散乱粒子として酸化チタンを含むゾル(Solaronix社製Ti−nanoxide300)を塗布し、450℃で30分間焼結して、平均粒径10nm、10〜15μm厚の酸化チタン微粒子膜を形成した。これを負極基板とした以外は、試験例2−1と同様にして、色素増感型光電変換素子を得た。
【0178】
[試験例4−2]
(成膜基材)
試験例4−1と同じFTO基板を成膜基材として使用した。
【0179】
(酸化チタン積層膜の成膜)
37質量%の塩酸水溶液15mlと脱イオン水15mlとを混合し、5分間撹拌した。この溶液に酸化チタン前駆体として、0.32gの(NHTiFと0.6mlのTi(OBu)とを添加し、5分間撹拌して、前駆体液を調製した。
密封耐熱容器に上記前駆体液を入れ、この中に成膜基材(FTO基板)を浸漬させた。マイクロ波(2.45GHz)を照射しながら、210℃で75分間加熱して、水熱合成法により3〜4μm厚のアナターゼ型の板状結晶からなる第1の酸化チタン膜を成膜した。その後、室温(20〜25℃)まで空冷した。
水熱合成後の基材を取り出し、純水にて30分間超音波洗浄した。
【0180】
得られたTiO/FTO基板を電気炉を用い空気雰囲気下で焼成して、溶媒である水、不純物、及びフッ素元素を除去した。焼成プロファイルは、325℃5分間→375℃5分間→450℃15分間→500℃15分間とした。
【0181】
本試験例では、酸化チタン前駆体として、(NHTiFとTi(OBu)の2種を用いている。これら前駆体のうち、前者はアナターゼ型結晶の(001)面の化学的活性を低下させるフッ素元素を含んでいる。
本試験例においては、前駆体液として塩酸を含む酸性液を用いているが、塩酸は必須成分ではなく、前駆体液を非酸性とすることも可能である。
【0182】
上記第1の酸化チタン膜上に、酸化チタン前駆体を含むゾル(Solaronix社製Tiゾル)を塗布し、ホットプレートを用い、80℃で20分乾燥した後、130℃で6分乾燥した。これらの工程を2回繰り返し、さらに散乱粒子として酸化チタン粒子を含むゾル(Solaronix社製Ti−nanoxide300)を塗布し、450℃で30分間焼結して、平均粒径10nmの酸化チタン微粒子膜である第2の酸化チタン膜を成膜した。
以上のようにして、酸化チタン積層膜を得た。
得られた積層膜は、複数の酸化チタン微粒子が第1の酸化チタン膜の隙間に入り込み、さらに第1の酸化チタン膜上に、複数の酸化チタン微粒子が10〜15μm厚堆積した膜構造であった。
【0183】
(色素増感型光電変換素子の製造)
得られたTiO積層膜/FTO基板をSolaronix社製の色素増感剤N719のエタノール/t−ブタノール(容量比1/1)混合溶液に12時間浸漬して、負極基板を得た。用いた色素増感剤の化学式を[化2]に示す。この色素増感剤は、300〜750nmの可視領域に幅広い吸収を持つ。この色素増感剤は、これまで最高効率を記録してきており、最も効率の高い色素の1つとして知られている。
【0184】
色素増感剤を担持させた上記の負極基板を用いた以外は、試験例2−1と同様にして、色素増感型光電変換素子を得た。
【0185】
【化2】
【0186】
<SEM観察>
試験例4−2において得られた第1の酸化チタン膜/FTO基板、及び第2の酸化チタン膜/第1の酸化チタン膜/FTO基板について、SEM観察を実施した。
第2の酸化チタン膜の成膜前において、第1の酸化チタン膜は、試験例2−1の酸化チタン膜と同様、基材の成膜面に対して(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した膜構造であり、基材の成膜面に対する(001)面の角度は30〜90°、(001)面比率は80%程度であった。
第2の酸化チタン膜/第1の酸化チタン膜/FTO基板のSEM断面写真を図22に示す。
第2の酸化チタン膜を積層しても、第1の酸化チタン膜の膜構造に変化は見られなかった。
【0187】
<N719色素担持量の測定>
試験例1−1、2−1と同様に、試験例4−1の酸化チタン微粒子膜と試験例4−2の酸化チタン積層膜についてそれぞれ、色素担持量を求めた。試験例4−2において、第2の酸化チタン膜の膜厚は第1の酸化チタン膜の膜厚に比べ10倍以上である。このため、試験例4−1の酸化チタン微粒子膜と試験例4−2の酸化チタン積層膜の色素担持量はほぼ同等レベルであった。
【0188】
<光電変換特性の評価>
色素増感剤N719を用いた試験例4−1、4−2の光電変換素子について、擬似太陽光(AM1.5、結晶系シリコン規格、山下電装社製)を用い、室温下での光電流−電圧特性の測定を実施した。結果を図23に示す。
最大光電流Jsc、光最大電圧Voc、曲線因子(フィルファクター)FF、及び最高変換効率Effは表5に示す通りであった。
【0189】
試験例4−2では、試験例4−1よりも光電流と光電圧の双方において高い光電変換応答が確認された。
曲線因子(フィルファクター)FFと最高変換効率Effについては、試験例4−2は試験例4−1に及ばなかった。曲線因子FFは電解質の組成が大きく影響することが知られている。従来技術である試験例4−1に対して最適化されている電解質組成が試験例4−2に対して最適な組成になっていないと考えられる。
しかしながら、試験例4−2では、低電圧印加条件において高い光電流が得られ、低電流条件において高い光電圧が得られており、低い負荷条件および高い負荷条件の双方において、試験例4−1を凌駕する結果が得られた。このことは、実デバイス使用条件において充分に従来技術を超える特性が得られる可能性を示している。
【0190】
試験例4−2においては、高い電子移動特性を有するアナターゼ型板状単結晶が多孔質構造に挿入されたことにより、微粒子中での電子拡散と膜抵抗が改善され、電子収集効率が向上し、高い光電流が得られたと考えられる。また、(001)面を多く有するアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン電極では、酸化チタン電導帯がより負側に位置し、その高い電導帯ポテンシャルにより開放電圧が向上したと考えられる。
【0191】
【表5】
【0192】
この出願は、2011年12月26日に出願された日本出願特願2011−282584号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明の酸化チタン積層膜及び酸化チタン膜は、色素増感型光電変換素子において色素増感剤を担持する半導体膜等に好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0194】
1 酸化チタン積層膜
11 基材
11a 基材の成膜面
12 第1の酸化チタン膜
12a アナターゼ型結晶の(001)面
13 第2の酸化チタン膜
13a 酸化チタン微粒子
100 色素増感型光電変換素子
110 負極基板
111 基板
112 第1導電膜
113 半導体膜
120 正極基板
121 基板
122 第2導電膜
123 触媒層
130 電界質層
140 シール材
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】

【手続補正書】
【提出日】20140620
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、
前記基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる第1の酸化チタン膜と、
前記第1の酸化チタン膜の比表面積よりも大きい比表面積を有し、複数の酸化チタン微粒子からなる第2の酸化チタン膜とが順次積層された酸化チタン積層膜。
【請求項2】
前記第1の酸化チタン膜は、前記成膜面に対するアナターゼ(001)面の傾斜角が10°以上である請求項1に記載の酸化チタン積層膜。
【請求項3】
前記第1の酸化チタン膜は、前記成膜面に対するアナターゼ(001)面の傾斜角が30°以上である請求項2に記載の酸化チタン積層膜。
【請求項4】
前記第1の酸化チタン膜は、アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が10%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の酸化チタン積層膜。
【請求項5】
前記第1の酸化チタン膜は、アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が50%以上である請求項4に記載の酸化チタン積層膜。
【請求項6】
前記第1の酸化チタン膜は、アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が80%以上である請求項5に記載の酸化チタン積層膜。
【請求項7】
前記第1の酸化チタン膜は、実表面積/基板投影面積が20以上である請求項1〜6のいずれかに記載の酸化チタン積層膜。
【請求項8】
基材上に成膜され、前記基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜であって、
前記成膜面に対するアナターゼ(001)面の傾斜角が10°以上であり、
アナターゼ型結晶の全結晶面の合計面積に対する(001)面の面積の割合が10%以上であり、
実表面積/基板投影面積が20以上である酸化チタン膜。
【請求項9】
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の成膜に用いられる酸化チタン前駆体液であって、
酸化チタン前駆体と、[BF]の塩及び/又は[PF]の塩からなる非酸性の添加剤とを含む酸化チタン前駆体液。
【請求項10】
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の成膜に用いられる酸化チタン前駆体液であって、
酸化チタン前駆体と、アルコール類及び/又はアミン類からなる非酸性の添加剤とを含む酸化チタン前駆体液。
【請求項11】
前記酸化チタン前駆体が、TiF及び/又は[TiF]2−の塩を含む請求項9又は10に記載の酸化チタン前駆体液。
【請求項12】
基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜の製造方法であって、
請求項9〜11のいずれかに記載の酸化チタン前駆体液を用いた液相法により、前記酸化チタン膜を成膜する酸化チタン膜の製造方法。
【請求項13】
マイクロ波を照射しながら結晶成長を行う請求項12に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【請求項14】
基材と、色素増感剤を担持する半導体膜とを備え、
前記半導体膜が、請求項1〜7のいずれかに記載の酸化チタン積層膜を含む色素増感剤型光電変換素子。
【請求項15】
基材と、色素増感剤を担持する半導体膜とを備え、
前記半導体膜が、請求項8に記載の酸化チタン膜を含む色素増感剤型光電変換素子。
【請求項16】
前記色素増感剤として、700〜900nmの波長域に吸収を示す色素増感剤が用いられ、700〜900nmの波長域において光電変換応答を示す請求項14又は15に記載の色素増感剤型光電変換素子。
【請求項17】
基材と色素増感剤を担持する半導体膜とを備え、
前記半導体膜が、前記基材の成膜面に対して、(001)面が垂直方向又は傾斜方向に成長した複数のアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン膜を含み、
前記色素増感剤として、700〜900nmの波長域に吸収を示す色素増感剤が用いられ、700〜900nmの波長域において光電変換応答を示す色素増感剤型光電変換素子。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0150
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0150】
(酸化チタン膜の成膜)
0.25gのKTiFと0.5mlのTi(OBu)の代わりに、0.48mlの50質量%HTiF水溶液を用いた以外は試験例2−5と同様にして、酸化チタン膜を得た。
本試験例では、酸化チタン前駆体としてHTiFを用いている。これは、アナターゼ型結晶の(001)面の化学的活性を低下させるフッ素元素を含んでいる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0190
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0190】
試験例4−2においては、高い電子移動特性を有するアナターゼ型板状単結晶が多孔質構造に挿入されたことにより、微粒子中での電子拡散と膜抵抗が改善され、電子収集効率が向上し、高い光電流が得られたと考えられる。また、(001)面を多く有するアナターゼ型板状結晶からなる酸化チタン電極では、酸化チタン伝導帯がより負側に位置し、その高い伝導帯ポテンシャルにより開放電圧が向上したと考えられる。

【国際調査報告】