(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013099243
(43)【国際公開日】20130704
【発行日】20150430
(54)【発明の名称】接合構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20150403BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20150403BHJP
【FI】
   !H01L21/52 A
   !H01L21/60 311Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】48
【出願番号】2013551248
(21)【国際出願番号】JP2012008324
(22)【国際出願日】20121226
(11)【特許番号】5608824
(45)【特許公報発行日】20141015
(31)【優先権主張番号】2011284893
(32)【優先日】20111227
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 パナソニック株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】北浦 秀敏
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 パナソニック株式会社内
【テーマコード(参考)】
5F044
5F047
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044KK13
5F044LL01
5F044QQ06
5F047AA17
5F047BA14
5F047BA19
5F047BB01
5F047BB16
5F047BC06
5F047BC13
(57)【要約】
接合構造体は、基板の電極と、半導体素子の電極と、基板の電極と半導体素子の電極との間を接合する接合部と、を備え、接合部は、CuSn系の金属間化合物を含む、第1の金属間化合物層と、Bi層と、CuSn系の金属間化合物を含む、第2の金属間化合物層と、Cu層と、CuSn系の金属間化合物を含む、第3の金属間化合物層と、が基板の電極から半導体素子の電極に向かって順に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の電極と、
半導体素子の電極と、
前記基板の電極と前記半導体素子の電極との間を接合する接合部と、
を備え、
前記接合部は、
CuSn系の金属間化合物を含む、第1の金属間化合物層と、
Bi層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第2の金属間化合物層と、
Cu層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第3の金属間化合物層と、
が前記基板の電極から前記半導体素子の電極に向かって順に配置されている、接合構造体。
【請求項2】
前記接合部は、前記第3の金属間化合物層と前記半導体素子の電極との間に、さらに、
Bi層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第4の金属間化合物層と、
が順に配置されている、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項3】
前記CuSn系の金属間化合物は、CuSn、及び、CuSnの少なくとも一つの金属間化合物を含む、請求項1または2に記載の接合構造体。
【請求項4】
前記Cu層の厚さが6.2μm以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の接合構造体。
【請求項5】
前記接合部と前記半導体素子の電極との接合面の面積は、5mm以上であって100mm以下である、請求項4に記載の接合構造体。
【請求項6】
前記第1の金属間化合物層は、CuSn系の金属間化合物を有し、AgSn系金属間化合物を含む、請求項1または2に記載の接合構造体。
【請求項7】
前記第4の金属間化合物層は、CuSn系の金属間化合物を有し、AgSn系金属間化合物を含む、請求項2に記載の接合構造体。
【請求項8】
基板の電極と半導体素子の電極との間に挿入する接合材料であって、
前記接合材料は、
Sn層と、
Cu層と、
Sn−Bi層と、
が順に配置され、
前記Cu層の厚さは、隣接する前記Sn層及び前記Sn−Bi層の厚さ以上である、接合材料。
【請求項9】
基板の電極と半導体素子の電極との間に挿入する接合材料であって、
前記接合材料は、
第1のSn−Bi層と、
Cu層と、
第2のSn−Bi層と、
が順に配置され、
前記Cu層の厚さは、隣接する前記第1及び第2のSn−Bi層のそれぞれの厚さ以上である、接合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品の内部接合に関する。本発明は、特に、優れた機械特性と耐熱性が要求されるパワー半導体モジュールの半導体素子の電極と基板の電極とを接合する接合部を含む接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス実装分野においては、鉛の有害性の懸念や環境への関心の高まりから、鉛を用いない接合が望まれ、一般的なはんだ材であるSn−Pb共晶はんだについては代替材料が開発、実用化されている。
【0003】
一方、従来のSiに変わる次世代高出力デバイスであるGaN、SiCの技術進化を背景として、次世代高出力デバイスの接合材料としてデバイス発熱温度250℃に対する高耐熱Pbフリーはんだ材料が検討されている。
【0004】
高耐熱Pbフリーはんだ材料としては、Au系、Bi系、Zn系、Sn系のものが検討されている。Au系のはんだ材料に関しては、例えば融点が280℃のAu−20Snなどが一部実用化されているが、主成分がAuであるため、材料物性が硬く、材料コストが高く、小型部品への使用に限定されるなど汎用性を持たない。
【0005】
Bi系のはんだ材料は、融点が270℃付近であるため、溶融温度面では問題ないが、延性、熱伝導率に乏しい。また、Zn系はんだ材料は、弾性率が高すぎるため、半導体部品の内部接合においては機械特性と耐熱性が課題である。
【0006】
一方、Sn系のはんだ材料に関しては、電極材料として汎用されているAg及びCuとSnとの金属間化合物であるAgSn化合物、CuSn化合物を形成することにより、融点を上げた接合材料が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
図11は、特許文献1に記載された従来の接合構造体の断面図である。図11において、パワー半導体モジュールは、パワー半導体素子602と電極603との間に接合部604を有する。この接合部604には、AgSn化合物、CuSn化合物を接合材料として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−290007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のAgSn化合物、CuSn化合物による接合材料は、SnとAg、SnとCuの金属間化合物化により、パワー半導体素子の発熱に対する耐熱性は有するものの、接合プロセスにおける260℃から室温への冷却時に、パワー半導体素子のクラック発生、或いは、パワー半導体素子と接合部との界面の剥離が生じてしまう。
【0010】
これは、SnとAg、あるいはSnとCuの金属間化合物化により、接合部の延性が失われ、パワー半導体素子の接合プロセスにおいて、パワー半導体素子と電極の線膨張率差に基づく熱応力を緩和できていないことが理由として考えられる。
【0011】
従って、前記特許文献1の接合材料による接合構造体では、接合プロセスにおける熱応力に対してパワー半導体素子のクラック発生或いはパワー半導体素子と接合部との剥離を防ぐことと、耐熱性とを両立しなければならないという課題を有している。
【0012】
そこで、本発明の目的は、パワー半導体素子の発熱に対する耐熱性を有すると共に、パワー半導体素子と接合部との剥離を防ぐことができるパワー半導体モジュールの接合構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る接合構造体は、基板の電極と、
半導体素子の電極と、
前記基板の電極と前記半導体素子の電極との間を接合する接合部と、
を備え、
前記接合部は、
CuSn系の金属間化合物を含む、第1の金属間化合物層と、
Bi層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第2の金属間化合物層と、
Cu層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第3の金属間化合物層と、
が前記基板の電極から前記半導体素子の電極に向かって順に配置されている。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る接合構造体によれば、基板の電極と半導体素子の電極との間を接合する接合部は、CuSn系の金属間化合物を含む、第1の金属間化合物層と、Bi層と、CuSn系の金属間化合物を含む、第2の金属間化合物層と、Cu層と、CuSn系の金属間化合物を含む、第3の金属間化合物層と、が基板の電極から半導体素子の電極に向かって順に配置されている。この接合部を介して半導体素子と基板の電極とを接合することにより、接合プロセスにおける熱応力に対して接合部のCu層による延性と、低弾性(32×10、N/m)のBi層によって応力緩和し、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐことができる。
【0015】
また、接合部を構成する金属間化合物層と、Cu層と、Bi層はいずれも十分な耐熱性を有するので、パワー半導体モジュール動作時の半導体素子の発熱に対する耐熱性を確保することができる。これにより、本発明に係る接合構造体では、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐこと、及び、耐熱性とを両立させることができる。そこで、半導体素子と電極とを品質良く接合して接合信頼性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1に係る接合構造体で接合されたパワー半導体モジュールの断面図である。
【図2】(a)は、実施の形態1に係る接合構造体の詳細な断面構造を示す断面図であり、(b)は、(a)のCu層の拡大断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、実施の形態1に係る接合構造体の製造工程のフロー図である。
【図4】(a)〜(c)は、実施の形態1に係る接合構造体の製造工程における接合部の形成の詳細な断面構造を示す模式断面図である。
【図5】(a)は、実施の形態2に係る接合構造体の詳細な断面構造を示す断面図であり、(b)は、(a)のCu層の拡大断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、実施の形態2に係る接合構造体の製造工程のフロー図である。
【図7】(a)は、実施の形態3に係る接合構造体の詳細な断面構造を示す断面図であり、(b)は、(a)のCu層の拡大断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、実施の形態3に係る接合構造体の製造工程のフロー図である。
【図9】(a)〜(c)は、実施の形態3に係る接合構造体の製造工程における接合部の形成の詳細な断面構造を示す模式断面図である。
【図10】接合前の接合材料のSn層の厚み15μmに対して、接合前の接合材料のCu層の厚みを変化させた場合の接合後の接合部のCu層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図11】従来のパワー半導体モジュールの接合部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の態様に係る接合構造体は、基板の電極と、
半導体素子の電極と、
前記基板の電極と前記半導体素子の電極との間を接合する接合部と、
を備え、
前記接合部は、
CuSn系の金属間化合物を含む、第1の金属間化合物層と、
Bi層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第2の金属間化合物層と、
Cu層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第3の金属間化合物層と、
が前記基板の電極から前記半導体素子の電極に向かって順に配置されている。
【0018】
第2の態様に係る接合構造体は、上記第1の態様において、前記接合部は、前記第3の金属間化合物層と前記半導体素子の電極との間に、さらに、
Bi層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第4の金属間化合物層と、
が順に配置されていてもよい。
【0019】
第3の態様に係る接合構造体は、上記第1の態様又は第2の態様において、前記CuSn系の金属間化合物は、CuSn、及び、CuSnの少なくとも一つの金属間化合物を含んでもよい。
【0020】
第4の態様に係る接合構造体は、上記第1から第3の態様のうちのいずれか一つの態様において、前記Cu層の厚さが6.2μm以上であってもよい。
【0021】
第5の態様に係る接合構造体は、上記第4の態様において、前記接合部と前記半導体素子の電極との接合面の面積は、5mm以上であって100mm以下であってもよい。
【0022】
第6の態様に係る接合構造体は、上記第1の態様又は第2の態様において、前記第1の金属間化合物層は、CuSn系の金属間化合物を有し、AgSn系金属間化合物を含んでもよい。
【0023】
第7の態様に係る接合構造体は、上記第2の態様において、前記第4の金属間化合物層は、CuSn系の金属間化合物を有し、AgSn系金属間化合物を含んでもよい。
【0024】
第8の態様に係る接合材料は、基板の電極と半導体素子の電極との間に挿入する接合材料であって、
前記接合材料は、
Sn層と、
Cu層と、
Sn−Bi層と、
が順に配置され、
前記Cu層の厚さは、隣接する前記Sn層及び前記Sn−Bi層の厚さ以上である。
【0025】
第9の態様に係る接合材料は、基板の電極と半導体素子の電極との間に挿入する接合材料であって、
前記接合材料は、
第1のSn−Bi層と、
Cu層と、
第2のSn−Bi層と、
が順に配置され、
前記Cu層の厚さは、隣接する前記第1及び第2のSn−Bi層のそれぞれの厚さ以上である。
【0026】
以下、実施の形態に係る接合構造体及び接合材料について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る接合部104で接合されたパワー半導体モジュール100の断面図である。このパワー半導体モジュール100は、基板101と、基板101上の電極103に接合部104を介して接合された半導体素子102と、によって構成されている。また、半導体素子102の電極205と、接合部104と、電極103とによって、接合構造体106を構成する。
【0028】
次に、この形成された接合構造体106について、図2(a)及び(b)を用いて詳細に説明する。図2(a)は、接合構造体106の詳細な断面構造を示す断面図である。この接合構造体106では、電極103と、半導体素子102の電極205と、電極103と電極205とを接合する接合部104と、を備えている。接合部104は、電極103の側から半導体素子102の電極205の側に向かって、CuSn系の金属間化合物を含む第1の金属間化合物層207cと、Bi層209と、CuSn系の金属間化合物を含む第2の金属間化合物層207dと、Cu層200と、CuSn系の金属間化合物を含む第3の金属間化合物層208cと、が順に配置されている。さらに、図2(b)は、図2(a)の3つの層の拡大断面図である。この図2(b)に示されるように、第2の金属間化合物層207dとCu層200との境界面、及び、第3の金属間化合物層208cとCu層200との境界面は、平面ではなく凹凸面となる。そのため、第2の金属間化合物層207dと第3の金属間化合物層208cとの間に挟まれたCu層200は、その厚さとして、最小厚さtminから最大厚さtmaxまでの幅を持った厚さを有するものと考えられる。
【0029】
図2(a)及び(b)に示すように、この接合構造体106は、電極103と半導体素子102の電極205とを接合する接合部104において、第2及び第3の金属間化合物層207d、208cに挟まれた層状のCu層200を有することと、第1及び第2の金属間化合物層207c、207dに挟まれた層状のBi層209と、を有することを特徴とする。このような積層構造を有するので、接合部104に含まれる各層207c、209、207d、200、208cが十分な耐熱性を有すると共に、第2及び第3の金属間化合物層207d、208cに挟まれた層状のCu層200によって接合部104における延性を保つことができる。加えて、第1及び第2の金属間化合物207c、207dに挟まれた層状のBi層209によって低弾性金属層による応力緩和を図れる。理由については、追って説明する。以上により、この接合構造体106は、接合プロセスにおける耐熱性と、熱応力に対してCuの延性とBiの低弾性による応力緩和とを両立させることができる。特に、この接合構造体106では、熱応力に対して延性を示すことによって、半導体素子102のクラック発生及び半導体素子102と接合部104との剥離を防ぐことができる。
【0030】
<接合構造体の製造方法>
図3(a)〜(c)は、実施の形態1における接合構造体の製造工程のフロー図である。図3(a)は、接合材料203を準備する工程、及び、電極103上に接合材料203を供給する工程を示す断面図である。図3(b)は、接合材料203のSn層202の上に半導体素子102を載置する工程を示す断面図である。図3(c)は、図3(b)の後、自然冷却させて接合部212を得る工程を示す断面図である。
【0031】
(1)まず、図3(a)に示すように、Sn−Bi層201、Cu層200、Sn層202が順に配置された接合材料203を用意する。この接合材料203は、例えば、厚み50μmのCu層200の厚み方向の下面に厚み10μmのSn−58wt%Bi(以下、Sn−Biと略記)を形成したSn−Bi層201と、Cu層200の上面に厚み10μmのSn層202と、を有する。なお、上記厚さは一例であって、これに限られるものではない。また、Sn−Biの組成は溶融時の濡れ性と接合後に単層で残存させる為には、共晶組成に対して±5wt%以内のバラつき範囲であることが望ましい。Sn−Bi層201は、例えば、Cu層200の下面について電解めっき法又は無電解めっきによって設けることができる。好ましくは電解めっき法によってSn−Bi層201を設けることができる。また、Sn層202も電解めっき法又は無電解めっきによって設けることができる。好ましくは電解めっき法によってSn層202を設けることができる。なお、Cu層200の裏面にSn−Bi層201を有し、表面にSn層202を有する接合材料を得る方法は、上記方法に限られず、Cu箔の裏面にSn−Bi箔を圧着し、表面にSn箔を圧着することによって、接合材料203を構成してもよい。あるいは、Cu箔の裏面のSn−Biと、表面のSnと、を真空蒸着法やディップで成膜して接合材料203を構成してもよい。また、電極103上に、Sn−Bi層201、Cu層200、Sn層202を真空蒸着法で順に配置して接合材料203を構成して、電極103上に接合材料203を供給する工程を同時に行ってもよい。
また、接合材料203のCu層200は、両面を挟むSn−Bi層201及びSn層202のそれぞれの厚さ以上であることが好ましい。さらに、Cu層200は、その厚さとして15μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0032】
(2)次に、電極103上に接合材料203を供給する(図3(a))。電極103上に接合材料203を供給するに際しては、あらかじめ電極103を加熱しておく。具体的には、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、280℃に加熱した状態のCu合金で構成された電極103を用いる。これによって、電極103上に接合材料203を供給した際に、接合材料203のSn−Bi層201、Sn層202の濡れ性を確保できる。
なお、Sn−Bi溶融時のSnとCuとの拡散速度を速める観点からはBiの融点である270℃以上でSnとBiが溶融していることが望ましい。この場合において、加熱温度270℃〜290℃の範囲で良好な濡れ性を有することを実際に確認した。そこで、後述の実施例においては設備の温度バラつきを鑑み、加熱温度を中央値の280℃に設定した。
【0033】
(3)次に、接合材料203のSn層202の上に半導体素子102を載置する(図3(b))。接合材料203の上に半導体素子102を載置するに際しては、前述の接合材料203の供給工程と同様に、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、図3(a)の工程から連続で280℃に加熱した状態の電極103を用いる。
半導体素子102としては、例えば、GaNで構成されているものを用いることができる。また半導体素子102は、例えば、厚み0.3mm、4mm×5mmの大きさを有するものを用いることができる。また、半導体素子102には、電極205として、例えば、厚み1μmのAg層205を成膜させている。このAg層205が接合材料203のSn層202に接するように、半導体素子102を50gf〜150gf程度の荷重で、電極103に供給された接合材料203のSn層202の上に載置する。
【0034】
(4)次に、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、図3(b)から連続で280℃に加熱した状態の電極103のままで、半導体素子102を接合材料203の上に載置してから約30分間放置させた後に加熱を停止させ、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で自然冷却に切り替える(図3(c))。これにより、電極103と半導体素子102の電極205とを接合させる接合部212を形成させ、接合構造体を製造することができる。
【0035】
<接合部の形成について>
さらに、図4(a)〜(c)を用いて、接合構造体106の電極103と半導体素子102とを接合する接合部212の形成について説明する。
図4(a)と(b)は、図3(b)と(c)の工程間における接合構造体106の状態変化を示した図である。図4(c)は、図3(c)に相当する接合構造体106を示した図であり、接合部212を詳細に示している。
【0036】
a)金属間化合物層207a、207b、及びBi層209a、209b、及び、金属間化合物層208a、208bの形成
図4(a)は、電極103上に供給された図3で説明した接合材料203の上に、半導体素子102を載置した直後の模式断面図である。電極103を加熱することによって、Ag層205とSn層202との界面では、拡散反応によりAgSn系の金属間化合物を含む金属間化合物層208bが形成される。また、接合材料203のSn層とCu層との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層208aが形成される。
【0037】
また、接合材料203のSn−Bi層201と電極103との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層207aが形成される。また、接合材料203のSn−Bi層201とCu層200との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層207bが形成される。更に、金属間化合物層207a、207bとSn−Bi層201との間に、Cuとは拡散反応しないBiが析出してBi層209a、209bがそれぞれ形成し始める。
以上の反応の結果、金属間化合物層207a、Bi層209a、Sn−Bi層201、Bi層209b、金属間化合物層207b、Cu層200、金属間化合物層208a、Sn層202、金属間化合物層207bは、接合部212aを構成する。
【0038】
b)Sn−Bi層201、及び、Sn層202の消失
図4(b)は、図4(a)から15分間放置した状態、つまり電極103上に半導体素子102が接合材料203を介して載置されてから15分間後の模式断面図である。280℃で加熱した状態で15分間放置することで、図4(a)で形成した金属間化合物層208a、208bと金属間化合物層207aと207bとがそれぞれ成長し、図4(a)に記載のSn層202及びSn−Bi層201が完全に消失する。
具体的には、Sn層202を挟む金属間化合物層208a、208bが成長して、Sn層202を消失させる。その結果、層状のバルクのCuSn系の金属間化合物の中にAgSn化合物が微細に均一分散した状態で混在した第3の金属間化合物層208cが形成される。特に、第3の金属間化合物208cにおいて主相となるCuSn系の金属間化合物は、例えば、CuSn、CuSnである。また、第2相として含まれるAgSn系の金属間化合物は、例えば、AgSnである。なお、上記金属間化合物の組成は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)に搭載されたEDX(Energy dispersion X−ray analysis)等によって確認できる。
【0039】
また、Sn−Bi層201を挟む金属間化合物層207a、207bが成長して、Sn−Bi層201が消失して、CuSn系の金属間化合物による第1及び第2の金属間化合物層207c、207dと、Bi層209と、が形成される。この場合、CuSn系の金属間化合物は、例えば、CuSn、CuSnである。
さらに、この場合において、元の接合材料203のCu層200は、拡散反応によってその一部が第2及び第3の金属間化合物層207d、208cに変化するが、層状のCu層200が残存する(図2(a)及び(b)参照。)。
【0040】
以上の反応の結果、第1の金属間化合物層207c、Bi層209、第2の金属間化合物層207d、Cu層200、第3の金属間化合物層208cは、接合部212bを構成する。この接合部212bは、上記接合部212aとは、明らかにその構成が異なる。
【0041】
なお、ここでは加熱時間を15分間としたが、これに限られず、加熱時間を45分以内としてもよい。後述のように、加熱時間が45分以内であれば、電極103のCuが酸化して変色することを抑制できる。
【0042】
c)接合構造体106の形成
図4(c)は、図4(b)の加熱状態から室温まで自然冷却させ、接合構造体106を完成させた模式断面図である。加熱状態から室温まで自然冷却することによって、図4(b)の積層状態を維持したまま、図4(c)の接合構造体106を得ることができる。なお、接合部212は、上記接合部212bとほぼ同様の構成を有するが、各金属間化合物において温度に応じて高温相/低温相等が存在する場合には、その組成が一部変化する場合がある。
例えば、図4(c)に示すように、電極103と、半導体素子102の電極205との間を、接合部212により接合される。接合部212には、AgSn金属間化合物とCuSn金属間化合物とが混在した第3の金属間化合物層208cと、Cu層200と、CuSn金属間化合物による第2の金属間化合物層207dと、Bi層209と、CuSn金属間化合物による第1の金属間化合物層207cと、を含む。また、Cu層200は、平均厚み4.8μm(断面観察でN=10点(一断面あたり5点を計測、2断面について計測)測定の平均)を有する。
【0043】
<本実施の形態1の特徴であるSn−Bi層及びSn層の消失、並びに、層状のCu層、Bi層の残存について>
図4(c)に示されるように、この実施の形態1に係る接合構造体106では、図3で説明した接合材料203のSn−Bi層201、Cu層200、Sn層202のうち、Sn−Bi層201、及び、Sn層202を消失させている。一方、第2及び第3の金属間化合物層207d、208cに挟まれた層状のCu層200を残存させて、接合部212にCu層200による延性を得ることができる。また、第1及び第2の金属間化合物層207c、207dに挟まれたBi層209を残存させ、Bi層209による低弾性を得ることができる。
【0044】
一方、仮想的に、接合材料のうち、逆に、Sn−Bi層を残存させて接合部の延性を保とうとした場合には、Sn−Biの融点が139℃と低いため、パワー半導体モジュールの動作時の半導体素子の発熱温度250℃における耐熱性が失われる。これは、Sn−Bi層を残すことにより、例えば、Sn−Biが層状に残存した場合、半導体素子の発熱温度250℃において、半導体素子と電極との位置がずれる等の不具合が生じる可能性がある為である。
【0045】
そのため、本発明者は、Sn−BiではなくCu層とBi層とを残存させることを考えた。この場合、電極としてAgやCuが汎用されているため、電極側のAg及びCuを残せばよいと考えることもできる。しかし、半導体素子の電極と基板の電極との間の接合部内が全て金属間化合物層となった場合には、たとえ電極側にCu層が残っていても接合部自体に十分な延性を保つことができず、熱応力に対して半導体素子へのクラック発生及び半導体素子と接合部との剥離防止を達成できない。そこで、本発明者は、図4(c)に示すように、第2及び第3の金属間化合物層207d、208cに挟まれた層状のCu層200を残存させることで接合部212に延性を持たせること、更にはBi層209を残存させることで低弾性化することを考えて、実施の形態1の構成に至ったものである。
【0046】
この接合構造体の接合部のクラック発生、及び、剥離が起こらない理由としては、以下のことが推察される。
図4(c)に示すように、接合部212の第3の金属間化合物層208cを構成するAgSn化合物、CuSn化合物の融点は、それぞれ480℃以上、及び、415℃以上である。また、第1及び第2の金属間化合物層207c、207dを構成するCuSn化合物の融点は、415℃以上である。さらに、Cu層200の融点は1000℃以上であり、Bi層209の融点は270℃である。以上のことから、パワー半導体モジュールとして使用する際の半導体素子102の動作時の発熱に対する耐熱性250℃に対して接合部212の全ての構成が上記耐熱性の基準250℃より高融点側にあることより、耐熱性を確保したと考えられる。
【0047】
また、かかる構成によれば、接合部212は、AgSn化合物とCuSn化合物が混在した第3の金属間化合物層208cと、層状のCu層200と、第2の金属間化合物層207dと、Bi層209と、第1の金属間化合物層207cとを有する。この接合部212によって半導体素子102と電極103とを接合することにより、従来技術で得られなかった接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐことと、パワー半導体モジュールの動作時の半導体素子の発熱250℃に対する耐熱性の確保と、を両立することができる。これにより、半導体素子と基板の電極とを品質良く接合して接合信頼性を上げることができる。そこで、本実施の形態1における接合構造体は、従来の課題を解決したものと言える。
【0048】
(実施の形態2)
図5(a)は、実施の形態2に係る接合構造体106の詳細な断面構造を示す断面図である。図5(b)は、図5(a)のCu層200の拡大断面図である。図6(a)〜(c)は、実施の形態2に係る接合構造体の製造工程のフロー図である。
図5(a)に示すように、この実施の形態2に係る接合構造体106は、電極103と、半導体素子102の電極205と、両者の間の接合部104と、を備えている。図6(a)の断面図に示すように、実施の形態1に係る接合材料と比較すると、実施の形態2で用いる接合材料213は、電極103側と半導体素子102の電極205との間で、Cu層200に対してSn−Bi層204とSn層206の配置が上下逆の配置である点で相違する。その結果、形成される接合部104としては、図5(a)に示すように、電極103の側から半導体素子102の電極205の側に向かって、CuSn系の金属間化合物を含む第1の金属間化合物層217cと、Cu層200と、CuSn系の金属間化合物を含む第2の金属間化合物層218cと、Bi層220と、CuSn系の金属間化合物を含む第3の金属間化合物層218dと、が順に配置されている。
【0049】
図5(a)に示すように、この実施の形態2に係る接合構造体106は、実施の形態1に係る接合構造体と同様に、電極103と半導体素子102の電極205とを接合する接合部104において、第1及び第2の金属間化合物層217c、218cに挟まれた層状のCu層200を有することと、第2及び第3の金属間化合物層218c、218dに挟まれた層状のBi層220と、を有することを特徴とする。このような積層構造を有するので、接合部104に含まれる各層217c、200、218c、220、218dが十分な耐熱性を有すると共に、第1及び第3の金属間化合物層217c、218cに挟まれた層状のCu層200によって接合部104における延性を保つことができる。加えて、第2及び第3の金属間化合物218c、218dに挟まれた層状のBi層220によって低弾性金属層による応力緩和を図れる。以上により、この接合構造体は、接合プロセスにおける耐熱性と、熱応力に対してCuの延性とBiの低弾性による応力緩和とを両立させることができる。特に、この接合構造体106では、熱応力に対して延性を示すことによって半導体素子102のクラック発生及び半導体素子102と接合部104との剥離を防ぐことができる。
【0050】
<接合構造体の製造方法>
図6(a)〜(c)は、実施の形態2に係る接合構造体の製造工程のフロー図である。
実施の形態2の接合構造体の製造工程では、実施の形態1の接合構造体の製造工程と比較して、Cu層200の表面にSn−Bi層204を有し、裏面にSn層206を有する接合材料213を用いる点で相違する。なお、Sn−Bi層204、Sn層206の組成、作成方法等については、実施の形態1と実質的に同一であってもよい。
【0051】
(実施の形態3)
図7(a)は、実施の形態3に係る接合構造体106の詳細な断面構造を示す断面図である。この接合構造体106では、電極103と、半導体素子102の電極205と、電極103と電極205とを接合する接合部104と、を備えている。接合部104は、電極103の側から半導体素子102の電極205の側に向かって、CuSn系の金属間化合物を含む第1の金属間化合物層227と、Bi層229と、CuSn系の金属間化合物を含む第2の金属間化合物層227dと、Cu層200と、CuSn系の金属間化合物を含む第3の金属間化合物層228cと、Bi層230と、CuSn系の金属間化合物を含む第4の金属間化合物層228dと、が順に配置されている。さらに、図7(b)は、図7(a)の3つの層の拡大断面図である。この図7(b)に示されるように、第2の金属間化合物層227dとCu層200との境界面、及び、第3の金属間化合物層228cとCu層200との境界面は、平面ではなく凹凸面となる。そのため、第2の金属間化合物層227dと第3の金属間化合物層228cとの間に挟まれたCu層200は、その厚さとして、最小厚さtminから最大厚さtmaxまでの幅を持った厚さを有するものと考えられる。
【0052】
図7(a)及び(b)に示すように、この接合構造体106は、電極103と半導体素子102の電極205とを接合する接合部104において、第2及び第3の金属間化合物層227d、228cに挟まれた層状のCu層200を有することと、第1及び第2の金属間化合物層227c、227dに挟まれた層状のBi層229と、第3及び第4の金属間化合物層228c、228dに挟まれた層状のBi層230と、を有することを特徴とする。このような積層構造を有するので、接合部104に含まれる各層227c、229、227d、200、228c、230、228dが十分な耐熱性を有すると共に、第2及び第3の金属間化合物層227d、228cに挟まれた層状のCu層200によって接合部104における延性を保つことができる。加えて、第1及び第2の金属間化合物227c、227dに挟まれた層状のBi層229と、第3及び第4の金属間化合物228c、228dに挟まれた層状のBi層230と、によって低弾性金属層による応力緩和を図れる。理由については、追って説明する。以上により、この接合構造体106は、接合プロセスにおける耐熱性と、熱応力に対してCuの延性とBiの低弾性による応力緩和とを両立させることができる。特に、この接合構造体106では、熱応力に対して延性を示すことによって半導体素子102のクラック発生及び半導体素子102と接合部104との剥離を防ぐことができる。
【0053】
<接合構造体の製造方法>
図8(a)〜(c)は、実施の形態3における接合構造体の製造工程のフロー図である。
(1)まず、第1のSn−Bi層201、Cu層200、第2のSn−Bi層204が順に配置された接合材料223を用意する。この接合材料223は、例えば、厚み50μmのCu層200の厚み方向の上下各々の表面に厚み10μmのSn−58wt%Bi(以下、Sn−Biと略記)を形成した第1のSn−Bi層201、第2のSn−Bi層204を有する。なお、上記厚さは一例であって、これに限られるものではない。また、Sn−Biの組成は溶融時の濡れ性と接合後に単層で残存させる為には、共晶組成に対して±5wt%以内のバラつき範囲であることが望ましい。第1及び第2のSn−Bi層201,204は、例えば、Cu層200の両面について電解めっき法又は無電解めっきによって設けることができる。好ましくは電解めっき法によって第1及び第2のSn−Bi層201、204を設けることができる。なお、Cu層200の表裏面に第1及び第2のSn−Bi層201、204を有する接合材料を得る方法は、上記方法に限られず、Cu箔の表裏面のそれぞれにSn−Bi箔を圧着することによって、接合材料223を構成してもよい。あるいは、Cu箔の表裏面のそれぞれにSn−Biを真空蒸着法やディップで成膜して接合材料223を構成してもよい。また、電極103上に、第1のSn−Bi層201、Cu層200、第2のSn−Bi層204を真空蒸着法で順に配置して接合材料223を構成して、電極103上に接合材料223を供給する工程を同時に行ってもよい。
また、接合材料223のCu層200は、両面を挟む第1のSn−Bi層201及び第2のSn−Bi層204のそれぞれの厚さ以上であることが好ましい。さらに、Cu層200は、その厚さとして15μm以上、100μmであることが好ましい。
【0054】
(2)次に、電極103上に接合材料223を供給する(図8(a))。電極103上に接合材料223を供給するに際しては、あらかじめ電極103を加熱しておく。具体的には、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、280℃に加熱した状態のCu合金で構成された電極103を用いる。これによって、電極103上に接合材料223を供給した際に、接合材料223の第1のSn−Bi層201、第2のSn−Bi層204の濡れ性を確保できる。
なお、Sn−Bi溶融時のSnとCuとの拡散速度を速める観点からはBiの融点である270℃以上でSnとBiが溶融していることが望ましい。この場合において、加熱温度270℃〜290℃の範囲で良好な濡れ性を確認した。そこで、後述の実施例においては設備の温度バラつきを鑑み、加熱温度を中央値の280℃に設定した。
【0055】
(3)次に、接合材料223の第2のSn−Bi層204の上に半導体素子102を載置する(図8(b))。接合材料223の上に半導体素子102を載置するに際しては、前述の接合材料223の供給工程と同様に、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、図8(a)から連続で280℃に加熱した状態の電極103を用いる。
半導体素子102としては、例えば、GaNで構成されているものを用いることができる。また半導体素子102は、例えば、厚み0.3mm、4mm×5mmの大きさを有するものを用いることができる。また、半導体素子102には、電極205として、例えば、厚み1μmのAg層205を成膜させている。このAg層205が接合材料223の第2のSn−Bi層204に接するように、半導体素子102を50gf〜150gf程度の荷重で、電極103に供給された接合材料223の上に載置する。
【0056】
(4)次に、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、図8(b)から連続で280℃に加熱した状態の電極103のままで、半導体素子102を接合材料223の上に載置してから約30分間放置させた後に加熱を停止させ、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で自然冷却に切り替える(図8(c))。これにより、電極103と半導体素子102の電極205とを接合させる接合部232を形成させ、接合構造体を製造することができる。
【0057】
<接合部の形成について>
さらに、図9(a)〜(c)を用いて、接合構造体106の電極103と半導体素子102とを接合する接合部232の形成について説明する。
図9(a)と(b)は、図8(b)と(c)の工程間における接合構造体106の状態変化を示した図であり、図9(c)は、図8(c)に相当する接合構造体106を示し、接合部232を詳細に示している。
【0058】
a)金属間化合物層227a、227b、及びBi層229a、229b、及び、金属間化合物層228a、228b、及びBi層230a、230bの形成
図9(a)は、電極103上に供給された図8で説明した接合材料223の上に、半導体素子102を載置した直後の模式断面図である。電極103を加熱することによって、図8の接合材料223のAg層205と第2のSn−Bi層204との界面では、拡散反応によりAgSn系の金属間化合物を含む金属間化合物層228bが形成される。また、接合材料223の第2のSn−Bi層204とCu層200との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層228aが形成される。更に、金属間化合物層228a、228bと第2のSn−Bi層204との間に、Cuとは拡散反応しないBiが析出してBi層230a、230bがそれぞれ形成し始める。
【0059】
また、接合材料223の第1のSn−Bi層201と電極103との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層227aが形成される。また、接合材料223の第1のSn−Bi層201とCu層200との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層227bが形成される。更に、金属間化合物層227a、227bと第1のSn−Bi層201との間に、Cuとは拡散反応しないBiが析出してBi層229a、229bがそれぞれ形成し始める。
以上の反応の結果、金属間化合物層227a、Bi層229a、第1のSn−Bi層201、Bi層229b、金属間化合物層227b、Cu層200、金属間化合物層228a、Bi層230a、第2のSn−Bi層204、Bi層230b、金属間化合物層227bは接合部232aを構成する。
【0060】
b)第1及び第2のSn−Bi層201、204の消失
図9(b)は、図9(a)から15分間放置した状態、つまり電極103上に半導体素子102が接合材料223を介して載置されてから15分間後の模式断面図である。280℃で加熱した状態で15分間放置することで、図9(a)で形成した金属間化合物層228a、228bと金属間化合物層227aと227bとがそれぞれ成長し、図9(a)に記載の第2のSn−Bi層204及び第1のSn−Bi層201が完全に消失する。
具体的には、第2のSn−Bi層204を挟む金属間化合物層228a、228bが成長して、第2のSn−Bi層204を消失させる。その結果、層状のバルクのCuSn系の金属間化合物の中にAgSn化合物が微細に均一分散した状態で混在した第4の金属間化合物層228dと、層状のバルクのCuSn系の金属間化合物である第3の金属間化合物層228cと、Bi層230と、が形成される。特に、第4の金属間化合物228dにおいて主相となるCuSn系の金属間化合物は、例えば、CuSn、CuSnである。また、第2相として含まれるAgSn系の金属間化合物は、例えば、AgSnである。なお、上記金属間化合物の組成は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)に搭載されたEDX(Energy dispersion X−ray analysis)等によって確認できる。
【0061】
また、第1のSn−Bi層201を挟む金属間化合物層227a、227bが成長して、第1のSn−Bi層201が消失して、CuSn系の金属間化合物による第1及び第2の金属間化合物層227c、227dと、Bi層229と、が形成される。この場合、CuSn系の金属間化合物は、例えば、CuSn、CuSnである。
さらに、この場合において、元の接合材料223のCu層200は、拡散反応によってその一部が第2及び第3の金属間化合物層227d、228cに変化するが、層状のCu層200が残存する(図9(b))。
【0062】
以上の反応の結果、第1の金属間化合物層227c、Bi層229、第2の金属間化合物層227d、Cu層200、第3の金属間化合物層228c、Bi層230、第4の金属間化合物層228dは、接合部232bを構成する。この接合部232bは、上記接合部232aとは、明らかにその構成が異なる。
【0063】
なお、ここでは加熱時間を15分間としたが、これに限られず、加熱時間を45分以内としてもよい。後述のように、加熱時間が45分以内であれば、電極103のCuが酸化して変色することを抑制できる。
【0064】
c)接合構造体106の形成
図9(c)は、図9(b)の加熱状態から室温まで自然冷却させ、接合構造体106を完成させた模式断面図である。加熱状態から室温まで自然冷却することによって、図9(b)の積層状態を維持したまま、図9(c)の接合構造体106を得ることができる。なお、接合部232は、上記接合部232bとほぼ同様の構成を有するが、金属間化合物において温度に応じて高温相/低温相等が存在する場合には、その組成が一部変化する場合がある。
例えば、図9(c)に示すように、電極103と、半導体素子102の電極205との間を、接合部232により接合される。接合部232には、AgSn金属間化合物とCuSn金属間化合物とが混在した第4の金属間化合物層228dと、Bi層230と、CuSn金属間化合物による第3の金属間化合物層228cと、Cu層200と、CuSn金属間化合物による第2の金属間化合物層227dと、Bi層229と、CuSn金属間化合物による第1の金属間化合物層227cと、を含む。また、Cu層200は、平均厚み4.8μm(断面観察でN=10点(一断面あたり5点を計測、2断面について計測)測定の平均)を有する。
【0065】
<本実施の形態3の特徴である第1及び第2のSn−Bi層の消失及び層状のCu層、Bi層の残存について>
図9(c)に示すように、この実施の形態3に係る接合構造体106では、図8で説明した接合材料223の第1のSn−Bi層201、Cu層200、第2のSn−Bi層204のうち、第1及び第2のSn−Bi層201、204を消失させている。一方、第2及び第3の金属間化合物層227d、228cに挟まれた層状のCu層200を残存させて、接合部232にCu層200による延性を得ることができる。また、第1及び第2の金属間化合物層227c、227dに挟まれたBi層229と、第3及び第4の金属間化合物層228c、228dに挟まれたBi層230と、を残存させ、Bi層229、230による低弾性を得ることができる。
【0066】
一方、仮想的に、接合材料のうち、逆に、Sn−Bi層を残存させて接合部の延性を保とうとした場合には、Sn−Biの融点が139℃と低いため、パワー半導体モジュールの動作時の半導体素子の発熱温度250℃における耐熱性が失われる。これは、Sn−Bi層を残すことにより、例えば、Sn−Biが層状に残存した場合、半導体素子の発熱温度250℃において、半導体素子と電極との位置がずれる等の不具合が生じる可能性がある為である。
【0067】
そのため、本発明者は、Sn−BiではなくCu層とBi層とを残存させることを考えた。この場合、電極としてAgやCuが汎用されているため、電極側のAg及びCuを残せばよいと考えることもできる。しかし、半導体素子の電極と基板の電極との間の接合部内が全て金属間化合物層となった場合には、たとえ電極側にCu層が残っていても接合部自体に十分な延性を保つことができず、熱応力に対して半導体素子へのクラック発生及び半導体素子と接合部との剥離防止を達成できない。そこで、本発明者は、図9(c)に示すように、第2及び第3の金属間化合物層227d、228cに挟まれた層状のCu層200を残存させることで接合部232に延性を持たせること、更にはBi層230、229を残存させることで低弾性化することを考えて、実施の形態3の構成に至ったものである。
【0068】
<接合構造体の歩留まりの算出>
ここで、上記のように完成させた接合構造体を使用して、半導体素子中のクラック発生、半導体素子と接合部との界面剥離の確認のため、接合構造体の歩留まりを確認した。接合構造体の歩留まりの確認方法は、接合構造体を超音波映像で観察し、半導体素子中のクラック発生、半導体素子と接合部の界面剥離を判定し、半導体素子、接合部の表面積に対してクラック発生、剥離が20%未満の歩留まり(N数=20)を算出した。
【0069】
接合構造体の歩留まりの良否判定は、80%以上を○(良)、80%未満を×(否)と区別するようにし、80%以上(○)を良品としている。上記により完成させた接合構造体の歩留まりは100%であったことから、○とし、良品と判定できる。
【0070】
この接合構造体の半導体素子中のクラック発生、半導体素子と接合部の界面剥離が起こらない理由としては、以下のことが推察される。
この接合構造体の接合部において、上下の第2及び第3の金属間化合物層と比較して、塑性変形能を有するCu層と、弾性率の低いBi層と、が存在している。このことにより、Cu層がひずむことと、Bi層が応力を緩和することと、により接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐことができると考えられる。
【0071】
<製品歩留まりの算出>
次に、上記のように完成させた接合構造体を使用して、ワイヤボンディング、封止を実施し、パワー半導体モジュールを形成させ、パワー半導体モジュールとして使用するための耐熱性を確認するため、製品歩留まりを算出した。
製品の歩留まりの確認方法は、250℃の高温保存試験後1000時間後に製品を超音波映像で観察し、接合構造体の接合部のクラック発生、剥離を判定し、接合部の表面積に対してクラック発生、剥離が20%未満の製品歩留まり(N数=20)を算出した。
【0072】
製品の歩留まりの判定は、80%以上を○(良)、80%未満を×(否)と区別するようにし、80%以上(○)を良品としている。
上記のように完成させた接合構造体の製品歩留まりは100%であったことから、○とし、良品と判定できる。
【0073】
この接合構造体の接合部のクラック発生、剥離が起こらない理由としては、以下のことが推察される。
図9(c)に示すように、接合部232の第3及び第4の金属間化合物層228c、228dを構成するAgSn化合物、CuSn化合物の融点は、それぞれ480℃以上、415℃以上である。また、第1及び第2の金属間化合物層227c、227dを構成するCuSn化合物の融点は415℃以上である。さらに、Cu層200の融点は1000℃以上、Bi層229、230の融点は270℃である。以上のことから、パワー半導体モジュールとして使用する際の半導体素子102の動作時の発熱に対する耐熱性250℃に対して接合部232の全ての構成が上記耐熱性の基準250℃より高融点側にあることより、耐熱性を確保したと考えられる。
【0074】
また、かかる構成によれば、図9(c)に示すように、接合部232は、AgSn化合物とCuSn化合物が混在した第4の金属間化合物層228dと、Bi層230と、CuSn系の金属間化合物による第3の金属間化合物層228cと、層状のCu層200と、第2の金属間化合物層227dと、Bi層229と、第1の金属間化合物層227cとを有する。この接合部232によって半導体素子102と電極103とを接合することにより、従来技術で得られなかった接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐことと、パワー半導体モジュールの動作時の半導体素子の発熱温度250℃に対する耐熱性の確保と、を両立することができる。これにより、半導体素子と基板の電極とを品質良く接合して接合信頼性を上げることができる。そこで、本実施の形態3における接合構造体106は、従来の課題を解決したものと言える。
【0075】
<接合材料のCu層の厚さとSn−Bi層の厚さとの関係>
次に、接合材料のCu層のCu層の厚み、第1のSn−Bi層、第2のSn−Bi層のSn−Biの厚みを等しくし、その厚さを変化させて接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐこと(剥離防止性)、耐熱性を確認した。ここでCu層の厚み0μmの水準は従来例に相当する。
【0076】
但し、接合時の280℃で加熱した状態で保持する時間は45分と限定した。これは、280℃で45分以上加熱した状態で保持すると基板の電極のCu合金の酸化による変色が激しく、後工程のワイヤボンディング、封止が実施できなくなる為である。
【0077】
Cu層のCu層の厚さ、第1のSn−Bi層、第2のSn−Bi層のSn−Bi層の厚さを変化させて、上記図7の説明で示した接合プロセスにて接合させた接合構造体について算出した接合構造体の歩留まりを表1に示す。また、製品歩留まりを表2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
この接合構造体の歩留まりの確認方法は、上述の方法と同様に、接合構造体を超音波映像で観察し、半導体素子中のクラック発生、半導体素子と接合部の界面剥離を判定し、半導体素子、接合部の表面積に対してクラック発生、剥離が20%未満の歩留まり(N数=20)を算出した。接合構造体の歩留まりの判定は、80%以上を○、80%未満を×と区別するようにし、80%以上(○)を良品としている。但し、歩留まりの判定が○であっても、接合構造体の断面解析で上記接合プロセスにてSn−Biが全て消失していない水準は接合不良と判定している。
【0081】
ここで、接合構造体の歩留まりの判定が×であった水準に関しては、製品歩留まりは確認する必要が無いため、実施していない(従来例に相当する水準を除く)。これは、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐことと耐熱性の両方を満たす水準を確認することが目的であるからである。
【0082】
製品の歩留まりの確認方法は、上述の方法と同様に、250℃の高温保存試験後1000時間後に製品を超音波映像で観察し、接合構造体の接合部のクラック発生、剥離を判定し、接合部の表面積に対してクラック発生、剥離の面積が20%未満の製品歩留まり(N数=20)を算出した。製品の歩留まりの判定は、80%以上を○(良)、80%未満を×(否)と区別するようにし、80%以上(○)を良品としている。
【0083】
表1の(1)接合構造体の歩留まりで良品、及び、表2の(2)製品の歩留まりで良品、つまり、両方で良品となっている水準は、接合材料223において、接合材料223におけるSn−Bi層の厚さが5μm〜15μmの範囲、且つ、接合材料におけるCu層の厚さが15μm〜100μmの範囲であることがわかる。このことから、接合部の応力緩和性を確保する為には接合材料におけるCu層の厚さが15μm以上必要であり、耐熱性を確保する為には接合材料におけるSn−Bi層の厚さは15μm以下であることが必要であることがわかる。
【0084】
一方、従来例に相当する水準であるCu層の厚さ0μmは、(2)製品の歩留まりでは○、(1)の接合構造体の歩留まり×である。つまり、接合材料にCu層が含まれないため、当然に接合構造体の接合部にもCu層が存在しない。このように接合構造体の接合部にCu層が含まれない場合には、耐熱性は有するものの応力緩和性に欠け、耐熱性と応力緩和性が両立できていない。このことから、従来例に対する本実施の形態3の構成の優位性を確認することができる。
【0085】
<接合前後のCu層の厚みの関係>
次に、接合前の接合材料におけるCu層の厚みと接合後の接合部におけるCu層の厚みとの関係を検討した。これは、接合プロセスにおいて、接合材料において、SnとCuが拡散反応により金属間化合物化すると、残存するCu層が減少する為、実際に接合後に応力緩和に必要なCu層の厚みを明らかにするためである。
【0086】
上述のように、図7(b)は、接合構造体のCu層の拡大断面図である。この図7(b)を用いて、接合構造体の断面図から接合部のCu層の厚さを測定する方法を説明する。まず、第2の金属間化合物層227dと第3の金属間化合物層228cとで挟まれるCu層200の厚みにおいて、最も薄い部分を最小厚さtmin、最も厚い部分を最大厚さtmaxとして計測する。次に、断面図で任意の点N=10点(一断面当たり5点を計測、2断面について計測)の平均厚さを計測する。
【0087】
図10は、接合前の接合材料におけるSn−Bi層の厚み15μmに対して、接合前の接合材料のCu層の厚みを変化させた場合の接合後の接合部のCu層の厚さとの関係を示すグラフである。
図10から、接合前の接合材料におけるCu層の厚み15μm、Sn−Bi層の厚み15μmの場合、接合後の接合部において残存するCu層の平均厚みは7.2μmであり、最小厚さtmin3.7μmである。このことから、少なくとも接合後に接合部のCu層の最小厚さtminが3.7μm以上あれば、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐことと、耐熱性とを両立させることができると考えられる。
【0088】
<接合面の面積との関係>
次に、半導体素子の電極との接合面の面積を変化させ、接合プロセスにおける異なる熱応力に対して、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離の有無を検討した。接合前の接合材料のCu層の厚さ及び接合後の接合部のCu層の厚さと、半導体素子の電極との接合面の面積とに対する半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離の有無の結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
判定方法は、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離無しが○、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離有りが×である。
【0091】
表3より、半導体素子の電極との接合面の面積が1mm以下であれば、接合後の接合部のCu層の最小厚さが0μmでも半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離無しである。一方、半導体素子の電極との接合面の面積が5mm以上であれば接合後の接合部のCu層の最小厚さtminが0μmであれば、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離が発生している。
【0092】
表3から、接合前の接合材料のCu層の厚さが15μm以上の場合には、接合構造体の接合部において、塑性変形能を有するCu層が連続した層状で存在する。よって、半導体素子の電極との接合面の面積5mm以上100mm以下の半導体素子に対して、接合前の接合材料のCu層の厚さが15μm以上の場合には、接合構造体の接合部において、塑性変形能を有するCu層が連続した層状で存在することにより、半導体素子と電極の線膨張率差に対する熱応力が加わる接合部のCu層がひずむ。これにより、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐことが可能になると考えられる。
【0093】
(変形例)
実施の形態3では、図8(a)に示すように、半導体素子102の電極205としてAg層205を設け、基板101の電極103としてCu層103を設けた場合に、第1のSn−Bi層201、Cu層200、第2のSn−Bi層204が順に配置された接合材料223を用いて接合している。この場合、接合後には、図9(c)に示すように、半導体素子102の電極205と、電極103との間を接合する接合部232は、CuSn系の金属間化合物を含む第1の金属間化合物層227cと、Bi層229と、CuSn系の第2の金属間化合物層227dと、Cu層200と、CuSn系の第3の金属間化合物層228cと、Bi層230と、CuSn系の金属間化合物を主相とし、AgSn系の金属間化合物が第2相として含まれる第4の金属間化合物層228dと、を備える。
【0094】
一方、本発明は、上記の実施の形態1から3の構成に限られるものではない。
まず、半導体素子の電極は、Ag層に限られず、例えば、Cu層、Sn層、Ni層、Au層、あるいは、これらの中から選択された複数の層を配置したものであってもよい。
また、基板の電極は、Cu層に限られず、例えば、Ag層、Sn層、Ni層、Au層、あるいは、これらの中から選択された複数の層を配置したものであってもよい。
【0095】
さらに、接合材料を構成する層として、上記の第1のSn−Bi層、Cu層、第2のSn−Bi層、との3層の積層膜に限られるものではない。接合材料としては、少なくとも一層のCu層と一層のBi層とを含んでいればよい。なお、基板の電極がSn−Bi層でない場合には、接合材料は、基板の電極と接する面とCu層との間にSn−Bi層をさらに含む必要がある。これは、接合材料と電極との界面での濡れ性を確保するため、接合材料223と電極とのうち、少なくとも一方の界面にSn−Bi層を存在させる必要があるからである。また、半導体素子の電極がSn−Bi層でない場合には、接合材料は、半導体素子の電極と接する面とCu層との間にSn−Bi層をさらに含むことが必要となる。これは、接合材料と電極との界面での濡れ性を確保するため、接合材料と電極とのうち、少なくとも一方の界面にSn−Bi層を存在させるためである。
さらに、Cu層の厚さは、隣接するSn−Bi層の厚さ以上であることが必要となる。これは、接合後の接合部において、層状のCu層とBi層を残存させるために必要な条件である。
【0096】
以上の条件に対応するいくつかの変形例の場合について、表4に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
表4に示すように、変形例1〜10では、半導体素子の電極と接合材料との界面、及び、基板の電極と接合材料との界面、のそれぞれにおいてSn−Bi層が存在すると共に、2つのSn−Bi層に挟まれるCu層を含むように接合材料を選択することができる。
【0099】
なお、上記変形例1〜10では、実施の形態3と同様に、接合材料と半導体素子の電極との界面と、接合材料と基板の電極との界面と、の両方において、Biを含むように構成している。これについて、実施の形態1又は2のように、いずれか一方の界面にのみBiを含むように構成してもよい。
【0100】
なお、上記変形例7〜10に示すように、基板の電極及び半導体素子の電極にNi、Auを用いた場合には、第4の金属間化合物層、第1の金属間化合物層は、CuSn系の金属間化合物を主相とし、NiSn系金属間化合物、及び/又は、AuSn系金属間化合物を第2相として含むこととなる。NiSn系金属間化合物は、例えば、NiSnである。また、AuSn系の金属間化合物は、例えば、AuSnである。
また、接合材料を構成する各層の厚みの割合に関しては、上記実施例の検討と同様、接合後の半導体素子との接合面の面積に応じて、接合構造体の歩留まり、製品の歩留まりに応じて決定すればよい。
【0101】
上記変形例1〜10の場合にも、実施の形態3と同様に、接合後の接合部は、第1の金属間化合物層と、第4の金属間化合物層と、第2及び第3の金属間化合物層に挟まれた層状のCu層と、Bi層と、を備える。これによって、実施の形態3と同様に、パワー半導体モジュール動作時の半導体素子の発熱に対する耐熱性を確保することができる。また、接合プロセスにおける熱応力に対して接合部の層状のCu層による延性とBi層による低弾性化によって、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐことができる。これにより、変形例1〜10に係る接合構造体においても、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐこと、及び、耐熱性とを両立させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る接合構造体によれば、接合構造体の接合部において、CuSn系の金属間化合物層と、上記金属間化合物層と比較して優れた塑性変形能を有するCu層と、低弾性のBi層と、が存在する。そのため、耐熱性と、Cu層が歪むことと、Bi層が応力を緩和することにより、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合部との剥離を防ぐこと、の両立が可能になる。これにより、パワー半導体モジュール、小電力トランジスタ等の半導体パッケージの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0103】
100 パワー半導体モジュール
101 基板
102 半導体素子
103 電極
104 接合部
106 接合構造体
200 Cu層
201 Sn−Bi層
202 Sn層
203、213、223 接合材料
204 第2のSn−Bi層
205 電極、Ag層
206 Sn層
207a、207b 金属間化合物層
207c 第1の金属間化合物層
207d 第2の金属間化合物層
208a、208b 金属間化合物層
208c 第3の金属間化合物層
209、209a、209b Bi層
212、212a、212b 接合部
217a、217b 金属間化合物層
217c 第1の金属間化合物層
218a、218b 金属間化合物層
218c 第2の金属間化合物層
218d 第3の金属間化合物層
220a、220b、220 Bi層
222 接合部
227a、227b 金属間化合物層
227c 第1の金属間化合物層
227d 第2の金属間化合物層
228a、228b 金属間化合物層
228c 第3の金属間化合物層
228d 第4の金属間化合物層
229a、229b、230a、230b、229、230 Bi層
232、232a、232b 接合部
602 パワー半導体素子
603 電極
604 接合部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】

【手続補正書】
【提出日】20131001
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品の内部接合に関する。本発明は、特に、優れた機械特性と耐熱性が要求されるパワー半導体モジュールの半導体素子の電極と基板の電極とを接合する接合を含む接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス実装分野においては、鉛の有害性の懸念や環境への関心の高まりから、鉛を用いない接合が望まれ、一般的なはんだ材であるSn−Pb共晶はんだについては代替材料が開発、実用化されている。
【0003】
一方、従来のSiに変わる次世代高出力デバイスであるGaN、SiCの技術進化を背景として、次世代高出力デバイスの接合材料としてデバイス発熱温度250℃に対する高耐熱Pbフリーはんだ材料が検討されている。
【0004】
高耐熱Pbフリーはんだ材料としては、Au系、Bi系、Zn系、Sn系のものが検討されている。Au系のはんだ材料に関しては、例えば融点が280℃のAu−20Snなどが一部実用化されているが、主成分がAuであるため、材料物性が硬く、材料コストが高く、小型部品への使用に限定されるなど汎用性を持たない。
【0005】
Bi系のはんだ材料は、融点が270℃付近であるため、溶融温度面では問題ないが、延性、熱伝導率に乏しい。また、Zn系はんだ材料は、弾性率が高すぎるため、半導体部品の内部接合においては機械特性と耐熱性が課題である。
【0006】
一方、Sn系のはんだ材料に関しては、電極材料として汎用されているAg及びCuとSnとの金属間化合物であるAgSn化合物、CuSn化合物を形成することにより、融点を上げた接合材料が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
図11は、特許文献1に記載された従来の接合構造体の断面図である。図11において、パワー半導体モジュールは、パワー半導体素子602と電極603との間に接合部604を有する。この接合部604には、AgSn化合物、CuSn化合物を接合材料として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−290007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のAgSn化合物、CuSn化合物による接合材料は、SnとAg、SnとCuの金属間化合物化により、パワー半導体素子の発熱に対する耐熱性は有するものの、接合プロセスにおける260℃から室温への冷却時に、パワー半導体素子のクラック発生、或いは、パワー半導体素子と接合部との界面の剥離が生じてしまう。
【0010】
これは、SnとAg、あるいはSnとCuの金属間化合物化により、接合部の延性が失われ、パワー半導体素子の接合プロセスにおいて、パワー半導体素子と電極の線膨張率差に基づく熱応力を緩和できていないことが理由として考えられる。
【0011】
従って、前記特許文献1の接合材料による接合構造体では、接合プロセスにおける熱応力に対してパワー半導体素子のクラック発生或いはパワー半導体素子と接合部との剥離を防ぐことと、耐熱性とを両立しなければならないという課題を有している。
【0012】
そこで、本発明の目的は、パワー半導体素子の発熱に対する耐熱性を有すると共に、パワー半導体素子と接合部との剥離を防ぐことができるパワー半導体モジュールの接合構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る接合構造体は、基板の電極と、
半導体素子の電極と、
前記基板の電極と前記半導体素子の電極との間を接合する接合と、
を備え、
前記接合は、
CuSn系の金属間化合物を含む、第1の金属間化合物層と、
Bi層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第2の金属間化合物層と、
Cu層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第3の金属間化合物層と、
が前記基板の電極から前記半導体素子の電極に向かって順に配置されている。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る接合構造体によれば、基板の電極と半導体素子の電極との間を接合する接合は、CuSn系の金属間化合物を含む、第1の金属間化合物層と、Bi層と、CuSn系の金属間化合物を含む、第2の金属間化合物層と、Cu層と、CuSn系の金属間化合物を含む、第3の金属間化合物層と、が基板の電極から半導体素子の電極に向かって順に配置されている。この接合を介して半導体素子と基板の電極とを接合することにより、接合プロセスにおける熱応力に対して接合のCu層による延性と、低弾性(32×10、N/m)のBi層によって応力緩和し、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐことができる。
【0015】
また、接合を構成する金属間化合物層と、Cu層と、Bi層はいずれも十分な耐熱性を有するので、パワー半導体モジュール動作時の半導体素子の発熱に対する耐熱性を確保することができる。これにより、本発明に係る接合構造体では、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐこと、及び、耐熱性とを両立させることができる。そこで、半導体素子と電極とを品質良く接合して接合信頼性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1に係る接合構造体で接合されたパワー半導体モジュールの断面図である。
【図2】(a)は、実施の形態1に係る接合構造体の詳細な断面構造を示す断面図であり、(b)は、(a)のCu層の拡大断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、実施の形態1に係る接合構造体の製造工程のフロー図である。
【図4】(a)〜(c)は、実施の形態1に係る接合構造体の製造工程における接合の形成の詳細な断面構造を示す模式断面図である。
【図5】(a)は、実施の形態2に係る接合構造体の詳細な断面構造を示す断面図であり、(b)は、(a)のCu層の拡大断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、実施の形態2に係る接合構造体の製造工程のフロー図である。
【図7】(a)は、実施の形態3に係る接合構造体の詳細な断面構造を示す断面図であり、(b)は、(a)のCu層の拡大断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、実施の形態3に係る接合構造体の製造工程のフロー図である。
【図9】(a)〜(c)は、実施の形態3に係る接合構造体の製造工程における接合の形成の詳細な断面構造を示す模式断面図である。
【図10】接合前の接合材料のSn−Bi層の厚み15μmに対して、接合前の接合材料のCu層の厚みを変化させた場合の接合後の接合のCu層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図11】従来のパワー半導体モジュールの接合部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の態様に係る接合構造体は、基板の電極と、
半導体素子の電極と、
前記基板の電極と前記半導体素子の電極との間を接合する接合と、
を備え、
前記接合は、
CuSn系の金属間化合物を含む、第1の金属間化合物層と、
Bi層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第2の金属間化合物層と、
Cu層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第3の金属間化合物層と、
が前記基板の電極から前記半導体素子の電極に向かって順に配置されている。
【0018】
第2の態様に係る接合構造体は、上記第1の態様において、前記接合は、前記第3の金属間化合物層と前記半導体素子の電極との間に、さらに、
Bi層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第4の金属間化合物層と、
が順に配置されていてもよい。
【0019】
第3の態様に係る接合構造体は、上記第1の態様又は第2の態様において、前記CuSn系の金属間化合物は、CuSn、及び、CuSnの少なくとも一つの金属間化合物を含んでもよい。
【0020】
第4の態様に係る接合構造体は、上記第1から第3の態様のうちのいずれか一つの態様において、前記Cu層の厚さが6.2μm以上であってもよい。
【0021】
第5の態様に係る接合構造体は、上記第4の態様において、前記接合と前記半導体素子の電極との接合面の面積は、5mm以上であって100mm以下であってもよい。
【0022】
第6の態様に係る接合構造体は、上記第1の態様又は第2の態様において、前記第1の金属間化合物層は、CuSn系の金属間化合物を有し、AgSn系金属間化合物を含んでもよい。
【0023】
第7の態様に係る接合構造体は、上記第2の態様において、前記第4の金属間化合物層は、CuSn系の金属間化合物を有し、AgSn系金属間化合物を含んでもよい。
【0024】
第8の態様に係る接合材料は、基板の電極と半導体素子の電極との間に挿入する接合材料であって、
前記接合材料は、
Sn層と、
Cu層と、
Sn−Bi層と、
が順に配置され、
前記Cu層の厚さは、隣接する前記Sn層及び前記Sn−Bi層の厚さ以上である。
【0025】
第9の態様に係る接合材料は、基板の電極と半導体素子の電極との間に挿入する接合材料であって、
前記接合材料は、
第1のSn−Bi層と、
Cu層と、
第2のSn−Bi層と、
が順に配置され、
前記Cu層の厚さは、隣接する前記第1及び第2のSn−Bi層のそれぞれの厚さ以上である。
【0026】
以下、実施の形態に係る接合構造体及び接合材料について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る接合104で接合されたパワー半導体モジュール100の断面図である。このパワー半導体モジュール100は、基板101と、基板101上の電極103に接合104を介して接合された半導体素子102と、によって構成されている。また、半導体素子102の電極205と、接合104と、電極103とによって、接合構造体106を構成する。
【0028】
次に、この形成された接合構造体106について、図2(a)及び(b)を用いて詳細に説明する。図2(a)は、接合構造体106の詳細な断面構造を示す断面図である。この接合構造体106では、電極103と、半導体素子102の電極205と、電極103と電極205とを接合する接合104と、を備えている。接合104は、電極103の側から半導体素子102の電極205の側に向かって、CuSn系の金属間化合物を含む第1の金属間化合物層207cと、Bi層209と、CuSn系の金属間化合物を含む第2の金属間化合物層207dと、Cu層200と、CuSn系の金属間化合物を含む第3の金属間化合物層208cと、が順に配置されている。さらに、図2(b)は、図2(a)の3つの層の拡大断面図である。この図2(b)に示されるように、第2の金属間化合物層207dとCu層200との境界面、及び、第3の金属間化合物層208cとCu層200との境界面は、平面ではなく凹凸面となる。そのため、第2の金属間化合物層207dと第3の金属間化合物層208cとの間に挟まれたCu層200は、その厚さとして、最小厚さtminから最大厚さtmaxまでの幅を持った厚さを有するものと考えられる。
【0029】
図2(a)及び(b)に示すように、この接合構造体106は、電極103と半導体素子102の電極205とを接合する接合104において、第2及び第3の金属間化合物層207d、208cに挟まれた層状のCu層200を有することと、第1及び第2の金属間化合物層207c、207dに挟まれた層状のBi層209と、を有することを特徴とする。このような積層構造を有するので、接合104に含まれる各層207c、209、207d、200、208cが十分な耐熱性を有すると共に、第2及び第3の金属間化合物層207d、208cに挟まれた層状のCu層200によって接合104における延性を保つことができる。加えて、第1及び第2の金属間化合物207c、207dに挟まれた層状のBi層209によって低弾性金属層による応力緩和を図れる。理由については、追って説明する。以上により、この接合構造体106は、接合プロセスにおける耐熱性と、熱応力に対してCuの延性とBiの低弾性による応力緩和とを両立させることができる。特に、この接合構造体106では、熱応力に対して延性を示すことによって、半導体素子102のクラック発生及び半導体素子102と接合104との剥離を防ぐことができる。
【0030】
<接合構造体の製造方法>
図3(a)〜(c)は、実施の形態1における接合構造体の製造工程のフロー図である。図3(a)は、接合材料203を準備する工程、及び、電極103上に接合材料203を供給する工程を示す断面図である。図3(b)は、接合材料203のSn層202の上に半導体素子102を載置する工程を示す断面図である。図3(c)は、図3(b)の後、自然冷却させて接合212を得る工程を示す断面図である。
【0031】
(1)まず、図3(a)に示すように、Sn−Bi層201、Cu層200、Sn層202が順に配置された接合材料203を用意する。この接合材料203は、例えば、厚み50μmのCu層200の厚み方向の下面に厚み10μmのSn−58wt%Bi(以下、Sn−Biと略記)を形成したSn−Bi層201と、Cu層200の上面に厚み10μmのSn層202と、を有する。なお、上記厚さは一例であって、これに限られるものではない。また、Sn−Biの組成は溶融時の濡れ性と接合後に単層で残存させる為には、共晶組成に対して±5wt%以内のバラつき範囲であることが望ましい。Sn−Bi層201は、例えば、Cu層200の下面について電解めっき法又は無電解めっきによって設けることができる。好ましくは電解めっき法によってSn−Bi層201を設けることができる。また、Sn層202も電解めっき法又は無電解めっきによって設けることができる。好ましくは電解めっき法によってSn層202を設けることができる。なお、Cu層200の裏面にSn−Bi層201を有し、表面にSn層202を有する接合材料を得る方法は、上記方法に限られず、Cu箔の裏面にSn−Bi箔を圧着し、表面にSn箔を圧着することによって、接合材料203を構成してもよい。あるいは、Cu箔の裏面のSn−Biと、表面のSnと、を真空蒸着法やディップで成膜して接合材料203を構成してもよい。また、電極103上に、Sn−Bi層201、Cu層200、Sn層202を真空蒸着法で順に配置して接合材料203を構成して、電極103上に接合材料203を供給する工程を同時に行ってもよい。
また、接合材料203のCu層200は、両面を挟むSn−Bi層201及びSn層202のそれぞれの厚さ以上であることが好ましい。さらに、Cu層200は、その厚さとして15μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0032】
(2)次に、電極103上に接合材料203を供給する(図3(a))。電極103上に接合材料203を供給するに際しては、あらかじめ電極103を加熱しておく。具体的には、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、280℃に加熱した状態のCu合金で構成された電極103を用いる。これによって、電極103上に接合材料203を供給した際に、接合材料203のSn−Bi層201、Sn層202の濡れ性を確保できる。
なお、Sn−Bi溶融時のSnとCuとの拡散速度を速める観点からはBiの融点である270℃以上でSnとBiが溶融していることが望ましい。この場合において、加熱温度270℃〜290℃の範囲で良好な濡れ性を有することを実際に確認した。そこで、後述の実施例においては設備の温度バラつきを鑑み、加熱温度を中央値の280℃に設定した。
【0033】
(3)次に、接合材料203のSn層202の上に半導体素子102を載置する(図3(b))。接合材料203の上に半導体素子102を載置するに際しては、前述の接合材料203の供給工程と同様に、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、図3(a)の工程から連続で280℃に加熱した状態の電極103を用いる。
半導体素子102としては、例えば、GaNで構成されているものを用いることができる。また半導体素子102は、例えば、厚み0.3mm、4mm×5mmの大きさを有するものを用いることができる。また、半導体素子102には、電極205として、例えば、厚み1μmのAg層205を成膜させている。このAg層205が接合材料203のSn層202に接するように、半導体素子102を50gf〜150gf程度の荷重で、電極103に供給された接合材料203のSn層202の上に載置する。
【0034】
(4)次に、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、図3(b)から連続で280℃に加熱した状態の電極103のままで、半導体素子102を接合材料203の上に載置してから約30分間放置させた後に加熱を停止させ、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で自然冷却に切り替える(図3(c))。これにより、電極103と半導体素子102の電極205とを接合させる接合212を形成させ、接合構造体を製造することができる。
【0035】
<接合の形成について>
さらに、図4(a)〜(c)を用いて、接合構造体106の電極103と半導体素子102とを接合する接合212の形成について説明する。
図4(a)と(b)は、図3(b)と(c)の工程間における接合構造体106の状態変化を示した図である。図4(c)は、図3(c)に相当する接合構造体106を示した図であり、接合212を詳細に示している。
【0036】
a)金属間化合物層207a、207b、及びBi層209a、209b、及び、金属間化合物層208a、208bの形成
図4(a)は、電極103上に供給された図3で説明した接合材料203の上に、半導体素子102を載置した直後の模式断面図である。電極103を加熱することによって、Ag層205とSn層202との界面では、拡散反応によりAgSn系の金属間化合物を含む金属間化合物層208bが形成される。また、接合材料203のSn層とCu層との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層208aが形成される。
【0037】
また、接合材料203のSn−Bi層201と電極103との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層207aが形成される。また、接合材料203のSn−Bi層201とCu層200との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層207bが形成される。更に、金属間化合物層207a、207bとSn−Bi層201との間に、Cuとは拡散反応しないBiが析出してBi層209a、209bがそれぞれ形成し始める。
以上の反応の結果、金属間化合物層207a、Bi層209a、Sn−Bi層201、Bi層209b、金属間化合物層207b、Cu層200、金属間化合物層208a、Sn層202、金属間化合物層207bは、接合212aを構成する。
【0038】
b)Sn−Bi層201、及び、Sn層202の消失
図4(b)は、図4(a)から15分間放置した状態、つまり電極103上に半導体素子102が接合材料203を介して載置されてから15分間後の模式断面図である。280℃で加熱した状態で15分間放置することで、図4(a)で形成した金属間化合物層208a、208bと金属間化合物層207aと207bとがそれぞれ成長し、図4(a)に記載のSn層202及びSn−Bi層201が完全に消失する。
具体的には、Sn層202を挟む金属間化合物層208a、208bが成長して、Sn層202を消失させる。その結果、層状のバルクのCuSn系の金属間化合物の中にAgSn化合物が微細に均一分散した状態で混在した第3の金属間化合物層208cが形成される。特に、第3の金属間化合物208cにおいて主相となるCuSn系の金属間化合物は、例えば、CuSn、CuSnである。また、第2相として含まれるAgSn系の金属間化合物は、例えば、AgSnである。なお、上記金属間化合物の組成は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)に搭載されたEDX(Energy dispersion X−ray analysis)等によって確認できる。
【0039】
また、Sn−Bi層201を挟む金属間化合物層207a、207bが成長して、Sn−Bi層201が消失して、CuSn系の金属間化合物による第1及び第2の金属間化合物層207c、207dと、Bi層209と、が形成される。この場合、CuSn系の金属間化合物は、例えば、CuSn、CuSnである。
さらに、この場合において、元の接合材料203のCu層200は、拡散反応によってその一部が第2及び第3の金属間化合物層207d、208cに変化するが、層状のCu層200が残存する(図2(a)及び(b)参照。)。
【0040】
以上の反応の結果、第1の金属間化合物層207c、Bi層209、第2の金属間化合物層207d、Cu層200、第3の金属間化合物層208cは、接合212bを構成する。この接合212bは、上記接合212aとは、明らかにその構成が異なる。
【0041】
なお、ここでは加熱時間を15分間としたが、これに限られず、加熱時間を45分以内としてもよい。後述のように、加熱時間が45分以内であれば、電極103のCuが酸化して変色することを抑制できる。
【0042】
c)接合構造体106の形成
図4(c)は、図4(b)の加熱状態から室温まで自然冷却させ、接合構造体106を完成させた模式断面図である。加熱状態から室温まで自然冷却することによって、図4(b)の積層状態を維持したまま、図4(c)の接合構造体106を得ることができる。なお、接合212は、上記接合212bとほぼ同様の構成を有するが、各金属間化合物において温度に応じて高温相/低温相等が存在する場合には、その組成が一部変化する場合がある。
例えば、図4(c)に示すように、電極103と、半導体素子102の電極205との間を、接合212により接合される。接合212には、AgSn金属間化合物とCuSn金属間化合物とが混在した第3の金属間化合物層208cと、Cu層200と、CuSn金属間化合物による第2の金属間化合物層207dと、Bi層209と、CuSn金属間化合物による第1の金属間化合物層207cと、を含む。また、Cu層200は、平均厚み4.8μm(断面観察でN=10点(一断面あたり5点を計測、2断面について計測)測定の平均)を有する。
【0043】
<本実施の形態1の特徴であるSn−Bi層及びSn層の消失、並びに、層状のCu層、Bi層の残存について>
図4(c)に示されるように、この実施の形態1に係る接合構造体106では、図3で説明した接合材料203のSn−Bi層201、Cu層200、Sn層202のうち、Sn−Bi層201、及び、Sn層202を消失させている。一方、第2及び第3の金属間化合物層207d、208cに挟まれた層状のCu層200を残存させて、接合212にCu層200による延性を得ることができる。また、第1及び第2の金属間化合物層207c、207dに挟まれたBi層209を残存させ、Bi層209による低弾性を得ることができる。
【0044】
一方、仮想的に、接合材料のうち、逆に、Sn−Bi層を残存させて接合の延性を保とうとした場合には、Sn−Biの融点が139℃と低いため、パワー半導体モジュールの動作時の半導体素子の発熱温度250℃における耐熱性が失われる。これは、Sn−Bi層を残すことにより、例えば、Sn−Biが層状に残存した場合、半導体素子の発熱温度250℃において、半導体素子と電極との位置がずれる等の不具合が生じる可能性がある為である。
【0045】
そのため、本発明者は、Sn−BiではなくCu層とBi層とを残存させることを考えた。この場合、電極としてAgやCuが汎用されているため、電極側のAg及びCuを残せばよいと考えることもできる。しかし、半導体素子の電極と基板の電極との間の接合内が全て金属間化合物層となった場合には、たとえ電極側にCu層が残っていても接合自体に十分な延性を保つことができず、熱応力に対して半導体素子へのクラック発生及び半導体素子と接合との剥離防止を達成できない。そこで、本発明者は、図4(c)に示すように、第2及び第3の金属間化合物層207d、208cに挟まれた層状のCu層200を残存させることで接合212に延性を持たせること、更にはBi層209を残存させることで低弾性化することを考えて、実施の形態1の構成に至ったものである。
【0046】
この接合構造体の接合のクラック発生、及び、剥離が起こらない理由としては、以下のことが推察される。
図4(c)に示すように、接合212の第3の金属間化合物層208cを構成するAgSn化合物、CuSn化合物の融点は、それぞれ480℃以上、及び、415℃以上である。また、第1及び第2の金属間化合物層207c、207dを構成するCuSn化合物の融点は、415℃以上である。さらに、Cu層200の融点は1000℃以上であり、Bi層209の融点は270℃である。以上のことから、パワー半導体モジュールとして使用する際の半導体素子102の動作時の発熱に対する耐熱性250℃に対して接合212の全ての構成が上記耐熱性の基準250℃より高融点側にあることより、耐熱性を確保したと考えられる。
【0047】
また、かかる構成によれば、接合212は、AgSn化合物とCuSn化合物が混在した第3の金属間化合物層208cと、層状のCu層200と、第2の金属間化合物層207dと、Bi層209と、第1の金属間化合物層207cとを有する。この接合212によって半導体素子102と電極103とを接合することにより、従来技術で得られなかった接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐことと、パワー半導体モジュールの動作時の半導体素子の発熱250℃に対する耐熱性の確保と、を両立することができる。これにより、半導体素子と基板の電極とを品質良く接合して接合信頼性を上げることができる。そこで、本実施の形態1における接合構造体は、従来の課題を解決したものと言える。
【0048】
(実施の形態2)
図5(a)は、実施の形態2に係る接合構造体106の詳細な断面構造を示す断面図である。図5(b)は、図5(a)のCu層200の拡大断面図である。図6(a)〜(c)は、実施の形態2に係る接合構造体の製造工程のフロー図である。
図5(a)に示すように、この実施の形態2に係る接合構造体106は、電極103と、半導体素子102の電極205と、両者の間の接合104と、を備えている。図6(a)の断面図に示すように、実施の形態1に係る接合材料と比較すると、実施の形態2で用いる接合材料213は、電極103側と半導体素子102の電極205との間で、Cu層200に対してSn−Bi層204とSn層206の配置が上下逆の配置である点で相違する。その結果、形成される接合104としては、図5(a)に示すように、電極103の側から半導体素子102の電極205の側に向かって、CuSn系の金属間化合物を含む第1の金属間化合物層217cと、Cu層200と、CuSn系の金属間化合物を含む第2の金属間化合物層218cと、Bi層220と、CuSn系の金属間化合物を含む第3の金属間化合物層218dと、が順に配置されている。
【0049】
図5(a)に示すように、この実施の形態2に係る接合構造体106は、実施の形態1に係る接合構造体と同様に、電極103と半導体素子102の電極205とを接合する接合104において、第1及び第2の金属間化合物層217c、218cに挟まれた層状のCu層200を有することと、第2及び第3の金属間化合物層218c、218dに挟まれた層状のBi層220と、を有することを特徴とする。このような積層構造を有するので、接合104に含まれる各層217c、200、218c、220、218dが十分な耐熱性を有すると共に、第1及び第の金属間化合物層217c、218cに挟まれた層状のCu層200によって接合104における延性を保つことができる。加えて、第2及び第3の金属間化合物218c、218dに挟まれた層状のBi層220によって低弾性金属層による応力緩和を図れる。以上により、この接合構造体は、接合プロセスにおける耐熱性と、熱応力に対してCuの延性とBiの低弾性による応力緩和とを両立させることができる。特に、この接合構造体106では、熱応力に対して延性を示すことによって半導体素子102のクラック発生及び半導体素子102と接合104との剥離を防ぐことができる。
【0050】
<接合構造体の製造方法>
図6(a)〜(c)は、実施の形態2に係る接合構造体の製造工程のフロー図である。
実施の形態2の接合構造体の製造工程では、実施の形態1の接合構造体の製造工程と比較して、Cu層200の表面にSn−Bi層204を有し、裏面にSn層206を有する接合材料213を用いる点で相違する。なお、Sn−Bi層204、Sn層206の組成、作成方法等については、実施の形態1と実質的に同一であってもよい。
【0051】
(実施の形態3)
図7(a)は、実施の形態3に係る接合構造体106の詳細な断面構造を示す断面図である。この接合構造体106では、電極103と、半導体素子102の電極205と、電極103と電極205とを接合する接合104と、を備えている。接合104は、電極103の側から半導体素子102の電極205の側に向かって、CuSn系の金属間化合物を含む第1の金属間化合物層227と、Bi層229と、CuSn系の金属間化合物を含む第2の金属間化合物層227dと、Cu層200と、CuSn系の金属間化合物を含む第3の金属間化合物層228cと、Bi層230と、CuSn系の金属間化合物を含む第4の金属間化合物層228dと、が順に配置されている。さらに、図7(b)は、図7(a)の3つの層の拡大断面図である。この図7(b)に示されるように、第2の金属間化合物層227dとCu層200との境界面、及び、第3の金属間化合物層228cとCu層200との境界面は、平面ではなく凹凸面となる。そのため、第2の金属間化合物層227dと第3の金属間化合物層228cとの間に挟まれたCu層200は、その厚さとして、最小厚さtminから最大厚さtmaxまでの幅を持った厚さを有するものと考えられる。
【0052】
図7(a)及び(b)に示すように、この接合構造体106は、電極103と半導体素子102の電極205とを接合する接合104において、第2及び第3の金属間化合物層227d、228cに挟まれた層状のCu層200を有することと、第1及び第2の金属間化合物層227c、227dに挟まれた層状のBi層229と、第3及び第4の金属間化合物層228c、228dに挟まれた層状のBi層230と、を有することを特徴とする。このような積層構造を有するので、接合104に含まれる各層227c、229、227d、200、228c、230、228dが十分な耐熱性を有すると共に、第2及び第3の金属間化合物層227d、228cに挟まれた層状のCu層200によって接合104における延性を保つことができる。加えて、第1及び第2の金属間化合物227c、227dに挟まれた層状のBi層229と、第3及び第4の金属間化合物228c、228dに挟まれた層状のBi層230と、によって低弾性金属層による応力緩和を図れる。理由については、追って説明する。以上により、この接合構造体106は、接合プロセスにおける耐熱性と、熱応力に対してCuの延性とBiの低弾性による応力緩和とを両立させることができる。特に、この接合構造体106では、熱応力に対して延性を示すことによって半導体素子102のクラック発生及び半導体素子102と接合104との剥離を防ぐことができる。
【0053】
<接合構造体の製造方法>
図8(a)〜(c)は、実施の形態3における接合構造体の製造工程のフロー図である。
(1)まず、第1のSn−Bi層201、Cu層200、第2のSn−Bi層204が順に配置された接合材料223を用意する。この接合材料223は、例えば、厚み50μmのCu層200の厚み方向の上下各々の表面に厚み10μmのSn−58wt%Bi(以下、Sn−Biと略記)を形成した第1のSn−Bi層201、第2のSn−Bi層204を有する。なお、上記厚さは一例であって、これに限られるものではない。また、Sn−Biの組成は溶融時の濡れ性と接合後に単層で残存させる為には、共晶組成に対して±5wt%以内のバラつき範囲であることが望ましい。第1及び第2のSn−Bi層201,204は、例えば、Cu層200の両面について電解めっき法又は無電解めっきによって設けることができる。好ましくは電解めっき法によって第1及び第2のSn−Bi層201、204を設けることができる。なお、Cu層200の表裏面に第1及び第2のSn−Bi層201、204を有する接合材料を得る方法は、上記方法に限られず、Cu箔の表裏面のそれぞれにSn−Bi箔を圧着することによって、接合材料223を構成してもよい。あるいは、Cu箔の表裏面のそれぞれにSn−Biを真空蒸着法やディップで成膜して接合材料223を構成してもよい。また、電極103上に、第1のSn−Bi層201、Cu層200、第2のSn−Bi層204を真空蒸着法で順に配置して接合材料223を構成して、電極103上に接合材料223を供給する工程を同時に行ってもよい。
また、接合材料223のCu層200は、両面を挟む第1のSn−Bi層201及び第2のSn−Bi層204のそれぞれの厚さ以上であることが好ましい。さらに、Cu層200は、その厚さとして15μm以上、100μmであることが好ましい。
【0054】
(2)次に、電極103上に接合材料223を供給する(図8(a))。電極103上に接合材料223を供給するに際しては、あらかじめ電極103を加熱しておく。具体的には、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、280℃に加熱した状態のCu合金で構成された電極103を用いる。これによって、電極103上に接合材料223を供給した際に、接合材料223の第1のSn−Bi層201、第2のSn−Bi層204の濡れ性を確保できる。
なお、Sn−Bi溶融時のSnとCuとの拡散速度を速める観点からはBiの融点である270℃以上でSnとBiが溶融していることが望ましい。この場合において、加熱温度270℃〜290℃の範囲で良好な濡れ性を確認した。そこで、後述の実施例においては設備の温度バラつきを鑑み、加熱温度を中央値の280℃に設定した。
【0055】
(3)次に、接合材料223の第2のSn−Bi層204の上に半導体素子102を載置する(図8(b))。接合材料223の上に半導体素子102を載置するに際しては、前述の接合材料223の供給工程と同様に、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、図8(a)から連続で280℃に加熱した状態の電極103を用いる。
半導体素子102としては、例えば、GaNで構成されているものを用いることができる。また半導体素子102は、例えば、厚み0.3mm、4mm×5mmの大きさを有するものを用いることができる。また、半導体素子102には、電極205として、例えば、厚み1μmのAg層205を成膜させている。このAg層205が接合材料223の第2のSn−Bi層204に接するように、半導体素子102を50gf〜150gf程度の荷重で、電極103に供給された接合材料223の上に載置する。
【0056】
(4)次に、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で、図8(b)から連続で280℃に加熱した状態の電極103のままで、半導体素子102を接合材料223の上に載置してから約30分間放置させた後に加熱を停止させ、水素5%を含んだ窒素雰囲気中で自然冷却に切り替える(図8(c))。これにより、電極103と半導体素子102の電極205とを接合させる接合232を形成させ、接合構造体を製造することができる。
【0057】
<接合の形成について>
さらに、図9(a)〜(c)を用いて、接合構造体106の電極103と半導体素子102とを接合する接合232の形成について説明する。
図9(a)と(b)は、図8(b)と(c)の工程間における接合構造体106の状態変化を示した図であり、図9(c)は、図8(c)に相当する接合構造体106を示し、接合232を詳細に示している。
【0058】
a)金属間化合物層227a、227b、及びBi層229a、229b、及び、金属間化合物層228a、228b、及びBi層230a、230bの形成
図9(a)は、電極103上に供給された図8で説明した接合材料223の上に、半導体素子102を載置した直後の模式断面図である。電極103を加熱することによって、図8の接合材料223のAg層205と第2のSn−Bi層204との界面では、拡散反応によりAgSn系の金属間化合物を含む金属間化合物層228bが形成される。また、接合材料223の第2のSn−Bi層204とCu層200との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層228aが形成される。更に、金属間化合物層228a、228bと第2のSn−Bi層204との間に、Cuとは拡散反応しないBiが析出してBi層230a、230bがそれぞれ形成し始める。
【0059】
また、接合材料223の第1のSn−Bi層201と電極103との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層227aが形成される。また、接合材料223の第1のSn−Bi層201とCu層200との界面では、拡散反応によりCuSn系の金属間化合物からなる金属間化合物層227bが形成される。更に、金属間化合物層227a、227bと第1のSn−Bi層201との間に、Cuとは拡散反応しないBiが析出してBi層229a、229bがそれぞれ形成し始める。
以上の反応の結果、金属間化合物層227a、Bi層229a、第1のSn−Bi層201、Bi層229b、金属間化合物層227b、Cu層200、金属間化合物層228a、Bi層230a、第2のSn−Bi層204、Bi層230b、金属間化合物層227bは接合232aを構成する。
【0060】
b)第1及び第2のSn−Bi層201、204の消失
図9(b)は、図9(a)から15分間放置した状態、つまり電極103上に半導体素子102が接合材料223を介して載置されてから15分間後の模式断面図である。280℃で加熱した状態で15分間放置することで、図9(a)で形成した金属間化合物層228a、228bと金属間化合物層227aと227bとがそれぞれ成長し、図9(a)に記載の第2のSn−Bi層204及び第1のSn−Bi層201が完全に消失する。
具体的には、第2のSn−Bi層204を挟む金属間化合物層228a、228bが成長して、第2のSn−Bi層204を消失させる。その結果、層状のバルクのCuSn系の金属間化合物の中にAgSn化合物が微細に均一分散した状態で混在した第4の金属間化合物層228dと、層状のバルクのCuSn系の金属間化合物である第3の金属間化合物層228cと、Bi層230と、が形成される。特に、第4の金属間化合物228dにおいて主相となるCuSn系の金属間化合物は、例えば、CuSn、CuSnである。また、第2相として含まれるAgSn系の金属間化合物は、例えば、AgSnである。なお、上記金属間化合物の組成は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)に搭載されたEDX(Energy dispersion X−ray analysis)等によって確認できる。
【0061】
また、第1のSn−Bi層201を挟む金属間化合物層227a、227bが成長して、第1のSn−Bi層201が消失して、CuSn系の金属間化合物による第1及び第2の金属間化合物層227c、227dと、Bi層229と、が形成される。この場合、CuSn系の金属間化合物は、例えば、CuSn、CuSnである。
さらに、この場合において、元の接合材料223のCu層200は、拡散反応によってその一部が第2及び第3の金属間化合物層227d、228cに変化するが、層状のCu層200が残存する(図9(b))。
【0062】
以上の反応の結果、第1の金属間化合物層227c、Bi層229、第2の金属間化合物層227d、Cu層200、第3の金属間化合物層228c、Bi層230、第4の金属間化合物層228dは、接合232bを構成する。この接合232bは、上記接合232aとは、明らかにその構成が異なる。
【0063】
なお、ここでは加熱時間を15分間としたが、これに限られず、加熱時間を45分以内としてもよい。後述のように、加熱時間が45分以内であれば、電極103のCuが酸化して変色することを抑制できる。
【0064】
c)接合構造体106の形成
図9(c)は、図9(b)の加熱状態から室温まで自然冷却させ、接合構造体106を完成させた模式断面図である。加熱状態から室温まで自然冷却することによって、図9(b)の積層状態を維持したまま、図9(c)の接合構造体106を得ることができる。なお、接合232は、上記接合232bとほぼ同様の構成を有するが、金属間化合物において温度に応じて高温相/低温相等が存在する場合には、その組成が一部変化する場合がある。
例えば、図9(c)に示すように、電極103と、半導体素子102の電極205との間を、接合232により接合される。接合232には、AgSn金属間化合物とCuSn金属間化合物とが混在した第4の金属間化合物層228dと、Bi層230と、CuSn金属間化合物による第3の金属間化合物層228cと、Cu層200と、CuSn金属間化合物による第2の金属間化合物層227dと、Bi層229と、CuSn金属間化合物による第1の金属間化合物層227cと、を含む。また、Cu層200は、平均厚み4.8μm(断面観察でN=10点(一断面あたり5点を計測、2断面について計測)測定の平均)を有する。
【0065】
<本実施の形態3の特徴である第1及び第2のSn−Bi層の消失及び層状のCu層、Bi層の残存について>
図9(c)に示すように、この実施の形態3に係る接合構造体106では、図8で説明した接合材料223の第1のSn−Bi層201、Cu層200、第2のSn−Bi層204のうち、第1及び第2のSn−Bi層201、204を消失させている。一方、第2及び第3の金属間化合物層227d、228cに挟まれた層状のCu層200を残存させて、接合232にCu層200による延性を得ることができる。また、第1及び第2の金属間化合物層227c、227dに挟まれたBi層229と、第3及び第4の金属間化合物層228c、228dに挟まれたBi層230と、を残存させ、Bi層229、230による低弾性を得ることができる。
【0066】
一方、仮想的に、接合材料のうち、逆に、Sn−Bi層を残存させて接合の延性を保とうとした場合には、Sn−Biの融点が139℃と低いため、パワー半導体モジュールの動作時の半導体素子の発熱温度250℃における耐熱性が失われる。これは、Sn−Bi層を残すことにより、例えば、Sn−Biが層状に残存した場合、半導体素子の発熱温度250℃において、半導体素子と電極との位置がずれる等の不具合が生じる可能性がある為である。
【0067】
そのため、本発明者は、Sn−BiではなくCu層とBi層とを残存させることを考えた。この場合、電極としてAgやCuが汎用されているため、電極側のAg及びCuを残せばよいと考えることもできる。しかし、半導体素子の電極と基板の電極との間の接合内が全て金属間化合物層となった場合には、たとえ電極側にCu層が残っていても接合自体に十分な延性を保つことができず、熱応力に対して半導体素子へのクラック発生及び半導体素子と接合との剥離防止を達成できない。そこで、本発明者は、図9(c)に示すように、第2及び第3の金属間化合物層227d、228cに挟まれた層状のCu層200を残存させることで接合232に延性を持たせること、更にはBi層230、229を残存させることで低弾性化することを考えて、実施の形態3の構成に至ったものである。
【0068】
<接合構造体の歩留まりの算出>
ここで、上記のように完成させた接合構造体を使用して、半導体素子中のクラック発生、半導体素子と接合との界面剥離の確認のため、接合構造体の歩留まりを確認した。接合構造体の歩留まりの確認方法は、接合構造体を超音波映像で観察し、半導体素子中のクラック発生、半導体素子と接合の界面剥離を判定し、半導体素子、接合の表面積に対してクラック発生、剥離が20%未満の歩留まり(N数=20)を算出した。
【0069】
接合構造体の歩留まりの良否判定は、80%以上を○(良)、80%未満を×(否)と区別するようにし、80%以上(○)を良品としている。上記により完成させた接合構造体の歩留まりは100%であったことから、○とし、良品と判定できる。
【0070】
この接合構造体の半導体素子中のクラック発生、半導体素子と接合の界面剥離が起こらない理由としては、以下のことが推察される。
この接合構造体の接合において、上下の第2及び第3の金属間化合物層と比較して、塑性変形能を有するCu層と、弾性率の低いBi層と、が存在している。このことにより、Cu層がひずむことと、Bi層が応力を緩和することと、により接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐことができると考えられる。
【0071】
<製品歩留まりの算出>
次に、上記のように完成させた接合構造体を使用して、ワイヤボンディング、封止を実施し、パワー半導体モジュールを形成させ、パワー半導体モジュールとして使用するための耐熱性を確認するため、製品歩留まりを算出した。
製品の歩留まりの確認方法は、250℃の高温保存試験後1000時間後に製品を超音波映像で観察し、接合構造体の接合のクラック発生、剥離を判定し、接合の表面積に対してクラック発生、剥離が20%未満の製品歩留まり(N数=20)を算出した。
【0072】
製品の歩留まりの判定は、80%以上を○(良)、80%未満を×(否)と区別するようにし、80%以上(○)を良品としている。
上記のように完成させた接合構造体の製品歩留まりは100%であったことから、○とし、良品と判定できる。
【0073】
この接合構造体の接合のクラック発生、剥離が起こらない理由としては、以下のことが推察される。
図9(c)に示すように、接合232の第3及び第4の金属間化合物層228c、228dを構成するAgSn化合物、CuSn化合物の融点は、それぞれ480℃以上、415℃以上である。また、第1及び第2の金属間化合物層227c、227dを構成するCuSn化合物の融点は415℃以上である。さらに、Cu層200の融点は1000℃以上、Bi層229、230の融点は270℃である。以上のことから、パワー半導体モジュールとして使用する際の半導体素子102の動作時の発熱に対する耐熱性250℃に対して接合232の全ての構成が上記耐熱性の基準250℃より高融点側にあることより、耐熱性を確保したと考えられる。
【0074】
また、かかる構成によれば、図9(c)に示すように、接合232は、AgSn化合物とCuSn化合物が混在した第4の金属間化合物層228dと、Bi層230と、CuSn系の金属間化合物による第3の金属間化合物層228cと、層状のCu層200と、第2の金属間化合物層227dと、Bi層229と、第1の金属間化合物層227cとを有する。この接合232によって半導体素子102と電極103とを接合することにより、従来技術で得られなかった接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐことと、パワー半導体モジュールの動作時の半導体素子の発熱温度250℃に対する耐熱性の確保と、を両立することができる。これにより、半導体素子と基板の電極とを品質良く接合して接合信頼性を上げることができる。そこで、本実施の形態3における接合構造体106は、従来の課題を解決したものと言える。
【0075】
<接合材料のCu層の厚さとSn−Bi層の厚さとの関係>
次に、接合材料のCu層のCu層の厚み、第1のSn−Bi層、第2のSn−Bi層のSn−Biの厚みを等しくし、その厚さを変化させて接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐこと(剥離防止性)、耐熱性を確認した。ここでCu層の厚み0μmの水準は従来例に相当する。
【0076】
但し、接合時の280℃で加熱した状態で保持する時間は45分と限定した。これは、280℃で45分以上加熱した状態で保持すると基板の電極のCu合金の酸化による変色が激しく、後工程のワイヤボンディング、封止が実施できなくなる為である。
【0077】
Cu層のCu層の厚さ、第1のSn−Bi層、第2のSn−Bi層のSn−Bi層の厚さを変化させて、上記図7の説明で示した接合プロセスにて接合させた接合構造体について算出した接合構造体の歩留まりを表1に示す。また、製品歩留まりを表2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
この接合構造体の歩留まりの確認方法は、上述の方法と同様に、接合構造体を超音波映像で観察し、半導体素子中のクラック発生、半導体素子と接合の界面剥離を判定し、半導体素子、接合の表面積に対してクラック発生、剥離が20%未満の歩留まり(N数=20)を算出した。接合構造体の歩留まりの判定は、80%以上を○、80%未満を×と区別するようにし、80%以上(○)を良品としている。但し、歩留まりの判定が○であっても、接合構造体の断面解析で上記接合プロセスにてSn−Biが全て消失していない水準は接合不良と判定している。
【0081】
ここで、接合構造体の歩留まりの判定が×であった水準に関しては、製品歩留まりは確認する必要が無いため、実施していない(従来例に相当する水準を除く)。これは、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐことと耐熱性の両方を満たす水準を確認することが目的であるからである。
【0082】
製品の歩留まりの確認方法は、上述の方法と同様に、250℃の高温保存試験後1000時間後に製品を超音波映像で観察し、接合構造体の接合のクラック発生、剥離を判定し、接合の表面積に対してクラック発生、剥離の面積が20%未満の製品歩留まり(N数=20)を算出した。製品の歩留まりの判定は、80%以上を○(良)、80%未満を×(否)と区別するようにし、80%以上(○)を良品としている。
【0083】
表1の(1)接合構造体の歩留まりで良品、及び、表2の(2)製品の歩留まりで良品、つまり、両方で良品となっている水準は、接合材料223において、接合材料223におけるSn−Bi層の厚さが5μm〜15μmの範囲、且つ、接合材料におけるCu層の厚さが15μm〜100μmの範囲であることがわかる。このことから、接合の応力緩和性を確保する為には接合材料におけるCu層の厚さが15μm以上必要であり、耐熱性を確保する為には接合材料におけるSn−Bi層の厚さは15μm以下であることが必要であることがわかる。
【0084】
一方、従来例に相当する水準であるCu層の厚さ0μmは、(2)製品の歩留まりでは○、(1)の接合構造体の歩留まり×である。つまり、接合材料にCu層が含まれないため、当然に接合構造体の接合にもCu層が存在しない。このように接合構造体の接合にCu層が含まれない場合には、耐熱性は有するものの応力緩和性に欠け、耐熱性と応力緩和性が両立できていない。このことから、従来例に対する本実施の形態3の構成の優位性を確認することができる。
【0085】
<接合前後のCu層の厚みの関係>
次に、接合前の接合材料におけるCu層の厚みと接合後の接合におけるCu層の厚みとの関係を検討した。これは、接合プロセスにおいて、接合材料において、SnとCuが拡散反応により金属間化合物化すると、残存するCu層が減少する為、実際に接合後に応力緩和に必要なCu層の厚みを明らかにするためである。
【0086】
上述のように、図7(b)は、接合構造体のCu層の拡大断面図である。この図7(b)を用いて、接合構造体の断面図から接合のCu層の厚さを測定する方法を説明する。まず、第2の金属間化合物層227dと第3の金属間化合物層228cとで挟まれるCu層200の厚みにおいて、最も薄い部分を最小厚さtmin、最も厚い部分を最大厚さtmaxとして計測する。次に、断面図で任意の点N=10点(一断面当たり5点を計測、2断面について計測)の平均厚さを計測する。
【0087】
図10は、接合前の接合材料におけるSn−Bi層の厚み15μmに対して、接合前の接合材料のCu層の厚みを変化させた場合の接合後の接合のCu層の厚さとの関係を示すグラフである。
図10から、接合前の接合材料におけるCu層の厚み15μm、Sn−Bi層の厚み15μmの場合、接合後の接合において残存するCu層の平均厚みは7.2μmであり、最小厚さtmin3.7μmである。このことから、少なくとも接合後に接合のCu層の最小厚さtminが3.7μm以上あれば、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐことと、耐熱性とを両立させることができると考えられる。
【0088】
<接合面の面積との関係>
次に、半導体素子の電極との接合面の面積を変化させ、接合プロセスにおける異なる熱応力に対して、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離の有無を検討した。接合前の接合材料のCu層の厚さ及び接合後の接合のCu層の厚さと、半導体素子の電極との接合面の面積とに対する半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離の有無の結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
判定方法は、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離無しが○、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離有りが×である。
【0091】
表3より、半導体素子の電極との接合面の面積が1mm以下であれば、接合後の接合のCu層の最小厚さが0μmでも半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離無しである。一方、半導体素子の電極との接合面の面積が5mm以上であれば接合後の接合のCu層の最小厚さtminが0μmであれば、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離が発生している。
【0092】
表3から、接合前の接合材料のCu層の厚さが15μm以上の場合には、接合構造体の接合において、塑性変形能を有するCu層が連続した層状で存在する。よって、半導体素子の電極との接合面の面積5mm以上100mm以下の半導体素子に対して、接合前の接合材料のCu層の厚さが15μm以上の場合には、接合構造体の接合において、塑性変形能を有するCu層が連続した層状で存在することにより、半導体素子と電極の線膨張率差に対する熱応力が加わる接合のCu層がひずむ。これにより、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐことが可能になると考えられる。
【0093】
(変形例)
実施の形態3では、図8(a)に示すように、半導体素子102の電極205としてAg層205を設け、基板101の電極103としてCu層103を設けた場合に、第1のSn−Bi層201、Cu層200、第2のSn−Bi層204が順に配置された接合材料223を用いて接合している。この場合、接合後には、図9(c)に示すように、半導体素子102の電極205と、電極103との間を接合する接合232は、CuSn系の金属間化合物を含む第1の金属間化合物層227cと、Bi層229と、CuSn系の第2の金属間化合物層227dと、Cu層200と、CuSn系の第3の金属間化合物層228cと、Bi層230と、CuSn系の金属間化合物を主相とし、AgSn系の金属間化合物が第2相として含まれる第4の金属間化合物層228dと、を備える。
【0094】
一方、本発明は、上記の実施の形態1から3の構成に限られるものではない。
まず、半導体素子の電極は、Ag層に限られず、例えば、Cu層、Sn層、Ni層、Au層、あるいは、これらの中から選択された複数の層を配置したものであってもよい。
また、基板の電極は、Cu層に限られず、例えば、Ag層、Sn層、Ni層、Au層、あるいは、これらの中から選択された複数の層を配置したものであってもよい。
【0095】
さらに、接合材料を構成する層として、上記の第1のSn−Bi層、Cu層、第2のSn−Bi層、との3層の積層膜に限られるものではない。接合材料としては、少なくとも一層のCu層と一層のBi層とを含んでいればよい。なお、基板の電極がSn−Bi層でない場合には、接合材料は、基板の電極と接する面とCu層との間にSn−Bi層をさらに含む必要がある。これは、接合材料と電極との界面での濡れ性を確保するため、接合材料223と電極とのうち、少なくとも一方の界面にSn−Bi層を存在させる必要があるからである。また、半導体素子の電極がSn−Bi層でない場合には、接合材料は、半導体素子の電極と接する面とCu層との間にSn−Bi層をさらに含むことが必要となる。これは、接合材料と電極との界面での濡れ性を確保するため、接合材料と電極とのうち、少なくとも一方の界面にSn−Bi層を存在させるためである。
さらに、Cu層の厚さは、隣接するSn−Bi層の厚さ以上であることが必要となる。これは、接合後の接合において、層状のCu層とBi層を残存させるために必要な条件である。
【0096】
以上の条件に対応するいくつかの変形例の場合について、表4に示す。
【表4】
【0097】
表4に示すように、変形例1〜10では、半導体素子の電極と接合材料との界面、及び、基板の電極と接合材料との界面、のそれぞれにおいてSn−Bi層が存在すると共に、2つのSn−Bi層に挟まれるCu層を含むように接合材料を選択することができる。
【0098】
なお、上記変形例1〜10では、実施の形態3と同様に、接合材料と半導体素子の電極との界面と、接合材料と基板の電極との界面と、の両方において、Biを含むように構成している。これについて、実施の形態1又は2のように、いずれか一方の界面にのみBiを含むように構成してもよい。
【0099】
なお、上記変形例7〜10に示すように、基板の電極及び半導体素子の電極にNi、Auを用いた場合には、第4の金属間化合物層、第1の金属間化合物層は、CuSn系の金属間化合物を主相とし、NiSn系金属間化合物、及び/又は、AuSn系金属間化合物を第2相として含むこととなる。NiSn系金属間化合物は、例えば、NiSnである。また、AuSn系の金属間化合物は、例えば、AuSnである。
また、接合材料を構成する各層の厚みの割合に関しては、上記実施例の検討と同様、接合後の半導体素子との接合面の面積に応じて、接合構造体の歩留まり、製品の歩留まりに応じて決定すればよい。
【0100】
上記変形例1〜10の場合にも、実施の形態3と同様に、接合後の接合は、第1の金属間化合物層と、第4の金属間化合物層と、第2及び第3の金属間化合物層に挟まれた層状のCu層と、Bi層と、を備える。これによって、実施の形態3と同様に、パワー半導体モジュール動作時の半導体素子の発熱に対する耐熱性を確保することができる。また、接合プロセスにおける熱応力に対して接合の層状のCu層による延性とBi層による低弾性化によって、半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐことができる。これにより、変形例1〜10に係る接合構造体においても、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐこと、及び、耐熱性とを両立させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る接合構造体によれば、接合構造体の接合において、CuSn系の金属間化合物層と、上記金属間化合物層と比較して優れた塑性変形能を有するCu層と、低弾性のBi層と、が存在する。そのため、耐熱性と、Cu層が歪むことと、Bi層が応力を緩和することにより、接合プロセスにおける熱応力に対して半導体素子のクラック発生或いは半導体素子と接合との剥離を防ぐこと、の両立が可能になる。これにより、パワー半導体モジュール、小電力トランジスタ等の半導体パッケージの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0102】
100 パワー半導体モジュール
101 基板
102 半導体素子
103 電極
104 接合
106 接合構造体
200 Cu層
201 Sn−Bi層
202 Sn層
203、213、223 接合材料
204 第2のSn−Bi層
205 電極、Ag層
206 Sn層
207a、207b 金属間化合物層
207c 第1の金属間化合物層
207d 第2の金属間化合物層
208a、208b 金属間化合物層
208c 第3の金属間化合物層
209、209a、209b Bi層
212、212a、212b 接合
217a、217b 金属間化合物層
217c 第1の金属間化合物層
218a、218b 金属間化合物層
218c 第2の金属間化合物層
218d 第3の金属間化合物層
220a、220b、220 Bi層
222 接合
227a、227b 金属間化合物層
227c 第1の金属間化合物層
227d 第2の金属間化合物層
228a、228b 金属間化合物層
228c 第3の金属間化合物層
228d 第4の金属間化合物層
229a、229b、230a、230b、229、230 Bi層
232、232a、232b 接合
602 パワー半導体素子
603 電極
604 接合部
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の電極と、
半導体素子の電極と、
前記基板の電極と前記半導体素子の電極との間を接合する接合と、
を備え、
前記接合層は、前記基板から前記半導体素子に向かう方向に沿って、
CuSn系の金属間化合物を含む、第1の金属間化合物層と、
Bi層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第2の金属間化合物層と、
Cu層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第3の金属間化合物層と、
を含む、接合構造体。
【請求項2】
前記接合は、前記第3の金属間化合物層と前記半導体素子の電極との間に、さらに、
Bi層と、
CuSn系の金属間化合物を含む、第4の金属間化合物層と、
が順に配置されている、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項3】
前記CuSn系の金属間化合物は、CuSn、及び、CuSnの少なくとも一つの金属間化合物を含む、請求項1または2に記載の接合構造体。
【請求項4】
前記Cu層の厚さが6.2μm以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の接合構造体。
【請求項5】
前記接合と前記半導体素子の電極との接合面の面積は、5mm以上であって100mm以下である、請求項4に記載の接合構造体。
【請求項6】
前記第1の金属間化合物層は、CuSn系の金属間化合物を有し、AgSn系金属間化合物を含む、請求項1または2に記載の接合構造体。
【請求項7】
前記第4の金属間化合物層は、CuSn系の金属間化合物を有し、AgSn系金属間化合物を含む、請求項2に記載の接合構造体。
【国際調査報告】