(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013099278
(43)【国際公開日】20130704
【発行日】20150430
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極およびそれを用いた非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20150403BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20150403BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20150403BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20150403BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20150403BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20150403BHJP
【FI】
   !H01M4/133
   !H01M4/131
   !H01M4/36 E
   !H01M4/48
   !H01M4/1391
   !H01M4/1393
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
【出願番号】2013551478
(21)【国際出願番号】JP2012008419
(22)【国際出願日】20121228
(31)【優先権主張番号】2011288465
(32)【優先日】20111228
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区城見2丁目1番61号
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】末弘 祐基
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 パナソニック株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰右
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 パナソニック株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】平岡 樹
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 パナソニック株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】柏木 克巨
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 パナソニック株式会社内
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB29
5H050GA16
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA19
(57)【要約】
非水電解質二次電池の初期充放電効率を下げることなく、エネルギー密度およびサイクル特性を向上できる、負極を提供する。非水電解質二次電池用負極は、負極活物質として、SiOx(0.5≦x<1.5)で表されるケイ素酸化物と、炭素材料と、を含有し、ケイ素酸化物と炭素材料との合計質量に対する、ケイ素酸化物の質量の比:yが、0.03≦y≦0.3を満たし、負極活物質の理論容量密度と、終止電圧がリチウム金属に対して5mVであるときの負極活物質の充電容量密度との差分を、ΔC(mAhg-1)とし、L=ΔC/100とするとき、式:6y≦L≦12y+0.2を満たす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質として、SiOx(0.5≦x<1.5)で表されるケイ素酸化物と、炭素材料と、を含有し、
前記ケイ素酸化物と前記炭素材料との合計質量に対する、前記ケイ素酸化物の質量の比:yが、0.03≦y≦0.3を満たし、
前記負極活物質の理論容量密度と、終止電圧がリチウム金属に対して5mVであるときの前記負極活物質の充電容量密度との差分を、ΔC(mAhg-1)とし、L=ΔC/100とするとき、
式:6y≦L≦12y+0.2
を満たす、非水電解質二次電池用負極。
【請求項2】
金属箔を含む負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された負極合剤層と、を含み、
前記負極合剤層が、前記負極活物質を含有し、
前記負極の表層部が、リチウム含有酸化物およびリチウム含有炭酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種のリチウム化合物を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項3】
前記リチウム化合物が、前記負極の表面から0.1〜3μmの厚み領域に存在する、請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項4】
ΔCが不可逆容量密度よりも小さい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
ΔCが不可逆容量密度よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
比:yが、0.03≦y≦0.15を満たす、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項7】
前記負極活物質に、リチウムがプレドープされている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の負極と、リチウムを電気化学的に吸蔵および放出可能な正極と、非水電解質と、を備えた非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関し、特に非水電解質二次電池用負極の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のポータブル化、コードレス化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として、小型かつ軽量で、高エネルギー密度を有する二次電池に対する要望が高まっている。また、小型民生用途のみならず、電力貯蔵装置や電気自動車といった、長期にわたる耐久性および安全性が要求される大型二次電池に対する技術展開が加速してきている。
【0003】
二次電池の中でも、非水電解質二次電池、特にリチウム二次電池は、高電圧かつ高エネルギー密度を有するため、小型民生用途、電力貯蔵装置および電気自動車の電源として期待されている。
【0004】
リチウム二次電池の更なる高エネルギー密度化が求められる中、理論容量密度の高い負極活物質として、Si、SnおよびGeのようにリチウムと合金化する元素を含む材料(例えば、これらの元素の酸化物や合金)の利用が期待されている。中でもSiおよびその酸化物は、安価であるため、幅広く検討されている。
【0005】
しかし、リチウムと合金化する元素を含む材料は、リチウムを吸蔵するときに、結晶構造が変化し、その体積が増加する。充電時の負極活物質の体積膨張が大きいと、負極活物質と負極集電体との接触不良が生じるため、充放電サイクル寿命が短くなる。また、リチウムと合金化する元素を含む材料は、不可逆容量が大きいため、初期の充放電効率(初回充電容量に対する初回放電容量の比)が低いという問題がある。
【0006】
そこで、以下のような提案がなされている。
特許文献1および特許文献2は、負極の初期の充放電効率を改善する観点から、ケイ素酸化物を主成分とする負極を構成するとともに、負極にリチウムをプレドープすることを提案している。これらの文献には、このプレドープにより、負極の不可逆容量に相当するリチウムを、電池内で負極活物質に導入することができ、初期の充放電効率が改善し、平均放電電圧が向上すると記載されている。
【0007】
特許文献3は、放電末期における負極の電位上昇を抑制する目的で、黒鉛を主成分とする負極にケイ素酸化物を添加するとともに、不可逆容量の大きなニッケル酸リチウムを含む正極を用いることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−076372号公報
【特許文献2】特開2007−242590号公報
【特許文献3】特開2011−113863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や特許文献2の負極は、主成分がケイ素酸化物であるため、負極にリチウムをプレドープしても、初期の充放電効率の改善には限界がある。また、負極合剤層におけるケイ素酸化物の含有量が多い場合、ケイ素酸化物とリチウムとの急激な反応を抑えるために、負極合剤層の表面にバッファ層を設ける必要が生じる。しかし、バッファ層を設けると、電池の内部抵抗が増大し、エネルギー密度が低下する。
【0010】
特許文献3の場合、負極合剤層における黒鉛の含有量が多いため、ケイ素酸化物の膨張収縮をある程度緩和できると考えられる。しかし、負極の不可逆容量に合わせて、正極の不可逆容量を大きくしているため、電池のエネルギー密度を確保することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は、負極活物質としてケイ素酸化物と炭素材料とを含有する非水電解質二次電池用負極を用いる場合に、初期の充放電効率が低くなるのを抑えるとともに、エネルギー密度およびサイクル特性にも優れた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の一局面は、負極活物質として、SiOx(0.5≦x<1.5)で表されるケイ素酸化物と、炭素材料と、を含有し、ケイ素酸化物と炭素材料との合計質量に対する、ケイ素酸化物の質量の比:yが、0.03≦y≦0.3を満たし、負極活物質の理論容量密度(Ct)と、終止電圧がリチウム金属に対して5mVであるときの負極活物質の充電容量密度との差分を、ΔC(mAhg-1)とし、L=ΔC/100とするとき、式:6y≦L≦12y+0.2を満たす、非水電解質二次電池用負極に関する。
【0013】
本発明の他の一局面は、上記の負極と、リチウムを電気化学的に吸蔵および放出可能な正極と、非水電解質と、を備えた非水電解質二次電池に関する。
【0014】
なお、上記の負極活物質の理論容量密度Ctとは、黒鉛の理論充電容量密度を372mAh/gとし、充電反応によりSiOx中のSi1原子に対して4原子のリチウムが挿入され、SiOx表面の10%がリチウムの充放電反応に寄与しない炭素等の材料で被覆されていると仮定したとき、以下の式(1)で算出される容量密度(mAh/g)を想定している。
t = y×4×F/(28.1+16x)×0.9+(1−y)×372 ・・・(1)
(式(1)中、Fは、ファラデー定数(=28600mAh)であり、xおよびyは前記に同じ。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、初期充放電効率を下げることなく、高いエネルギー密度と良好なサイクル特性とを合わせ持つ非水電解質二次電池を得るのに有用な非水電解質二次電池用負極を提供することができる。
【0016】
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池用負極の電池構成前の状態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の一部を切欠いた概略斜視図である。
【図3】図2における電極群を模式的に示す斜視図である。
【図4】ケイ素酸化物の質量の比yを変化させて差分ΔCを測定したときの、ΔC/100(=L)とyとの関係を示すグラフである。
【図5】実施例1で作製した負極合剤層の表面のX線光電子分光法によるLi−1sスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の負極は、負極活物質として、SiOx(0.5≦x<1.5)で表されるケイ素酸化物と、炭素材料と、を含有する。そして、ケイ素酸化物と炭素材料との合計質量に対する、ケイ素酸化物の質量の比:yが、0.03≦y≦0.3を満たし、負極活物質の理論容量密度と、終止電圧がリチウム金属に対して5mVであるときの負極活物質の充電容量密度との差分を、ΔC(mAhg-1)とし、L=ΔC/100とするとき、
式:6y≦L≦12y+0.2
を満たす。
【0019】
このような負極は、負極活物質としてケイ素酸化物と炭素材料とを併用することによる高い容量特性(または高いエネルギー密度)を有効に活用できるとともに、初期効率の低下を抑制できる。ケイ素酸化物を用いた負極では、初期効率が低下しやすいが、本発明では、負極の初期効率を95%以上に高めることができる。本発明の負極は、高容量で、初期効率に優れているので、非水電解質二次電池用の負極として使用するのに有用である。初期効率とは、初回の充放電において、充電容量に対する放電容量の比(初回充放電効率)を百分率で表したものを意味する。なお、初回の充放電の前に、1回〜数回慣らし充放電を行ってもよい。
本発明において、高い容量と優れた初期効率が得られるのは、次のような理由によるものと考えられる。
【0020】
負極活物質として使用されるケイ素酸化物SiOxは、黒鉛に比べて5倍以上の理論容量密度を有する。そのため、既存の炭素材料(つまり、炭素質負極活物質)に、ケイ素酸化物を混合すると、負極の容量が向上し、電池のエネルギー密度を高めることができる。一方、ケイ素酸化物は、リチウムの充放電反応に伴って体積が大きく膨張収縮するため、負極活物質に占める比率が増加すると、充放電サイクルに伴って、負極活物質と負極集電体との接触不良が生じ、充放電サイクル寿命が短くなり易い。
【0021】
そのため、ケイ素酸化物と炭素材料との合計質量に対するケイ素酸化物の質量の比yを、0.03≦y≦0.3とすることで、ケイ素酸化物の高い容量特性を負極に付与しながらも、負極の充放電サイクル寿命の低下を抑制できる。比yが0.03未満であると、例えば、リチウムのプレドープなどによって負極の初期効率を高めた場合でも、負極の充電容量密度は、黒鉛の理論容量密度とほとんど同等となり、ケイ素酸化物の使用による容量向上効果が得られない。比yが0.3を超えると、充放電に伴うケイ素酸化物の膨張収縮による体積変化の影響が大きくなるため、容量が大きく低下する。また、プレドープにより初期効率を高める場合には、補填すべきリチウム量が多くなり、生産性が低下し易い。
【0022】
なお、負極の充電容量密度は、例えば、終止電圧がリチウム金属に対して5mVであるときの負極活物質の充電容量密度を用いて評価することができる。特に、初回の充放電における負極の充電容量密度(初回充電容量密度:Ci(mAhg-1))を用いて評価すると、より精度よく評価することができる。ここで、負極の初回充電容量密度Ci(mAhg-1)とは、リチウム金属を対極として充放電を行った場合の初回の充放電において、終止電圧がリチウム金属に対して5mVであるときの充電時の負極の容量(mAh)を、負極に含まれる負極活物質の重量(g)で除したものを意味する。
【0023】
本発明者らは、ケイ素酸化物と炭素材料とを含む負極活物質において、ケイ素酸化物の質量の比yが上記の範囲である場合に、負極活物質の理論容量密度Ctと負極の充電容量密度Ccとの差分ΔC(=Ct−Cc)と、比yとが所定の関係を充足する場合に、高い初期効率および容量維持率が得られることを見出した。以下により詳細に説明する。なお、差分ΔCとして、負極活物質の理論容量密度Ctと、負極の初回充電容量密度Ciとの差分(=Ct−Ci)を用いることが好ましい。負極活物質の理論容量密度Ctは前記式(1)から求められる。
【0024】
図4は、ケイ素酸化物の質量の比yを変化させて差分ΔCを測定したときの、ΔC/100(=L)とyとの関係を示すグラフである。
プロットAは、負極活物質の可逆容量密度が、黒鉛の理論放電容量密度と同等になるように、理論容量密度Ct、およびリチウムのプレドープ量を調節し、比yを0.03≦y≦0.3の範囲で変化させたときのL値を示す。プロットBは、比yを0.03≦y≦0.3の範囲で変化させたとき、初期効率が95%となるようなL値を示す。いずれのプロットも、比yの増加に伴って、L値は直線的に増加することが分かる。
プロットAの近似直線は、L=14.7y+0.1で表すことができ、プロットBの近似直線は、L=5.4yで表すことができる。
【0025】
黒鉛を用いた負極は、初期効率が高いが、それほど高い放電容量は得られない。一方、ケイ素酸化物を用いた負極は、高い放電容量が得られるものの、初期効率が低い。そのため、ケイ素酸化物の質量の比yが、0.03≦y≦0.3の範囲において、L値がプロットAとプロットBとの間の領域にあれば、黒鉛を用いた負極よりも高い放電容量が得られるとともに、95%以上の負極の初期効率が得られると考えられる。
【0026】
実際に、比yを0.03≦y≦0.3の範囲で変化させたとき、初期効率が100%となるようなL値は、プロットCで表され、プロットCの各L値は、プロットAとプロットBとの間の領域に存在する。つまり、初期効率が100%となるようなL値を有する負極は、その放電容量が黒鉛を用いた場合よりも高くなり、初期効率は、当然にプロットB(初期効率95%)よりも高くなる。プロットCの近似直線は、L=10.7y+0.2で表すことができる。
【0027】
L値がプロットAを超えると、負極の初回充電容量密度が黒鉛のそれを下回ってしまい、ケイ素酸化物を用いる優位性が失われてしまう。また、L値がプロットBを下回ると、負極の初期効率が95%未満となる。そのため、プロットAの近似直線と、プロットBの近似直線との間の領域であれば、充放電容量と初期効率とをある程度のレベルで両立できると考えられる。
【0028】
しかし、より確実に、高い充放電容量を確保する観点から、L値の上限値を、12y+0.2とし、95%以上の負極の初期効率を確実に得るためには、L値の下限値を6yとする必要がある。このようにして、本発明者らは、6y≦L≦12y+0.2の範囲であると、負極の初期効率が95%以上であり、かつ初回充放電容量が既存の黒鉛負極の可逆容量を超える活物質となることを見出した。
【0029】
L≧6yとすることにより、95%以上の初期効率がより確実に得られるので、良好なサイクル特性を得るのに、正極の初期効率を抑える必要がなくなる。よって、電池の初期効率の低下を抑制できるとともに、電池のエネルギー密度を向上できる。L≦12y+0.2とすることにより、負極活物質の充放電容量が既存の黒鉛負極の可逆容量よりも大きくすることができるため、ケイ素酸化物を併用することによる高容量化の効果を十分に発揮することができる。
【0030】
ΔCは、不可逆容量密度よりも小さいか、もしくは大きいことが好ましい。ΔCが不可逆容量密度よりも小さい場合(つまり、Cのプロットよりも下の領域(L<10.7y+0.2)である場合)、ケイ素化合物を用いた場合に得られる高い充電容量密度を、プレドープ分の容量で大きく損なうことなく、初期効率を高めることができるため、好ましい。ΔCが不可逆容量密度よりも大きい場合(つまり、Cのプロットよりも上の領域(L>10.7y+0.2)である場合)、黒鉛よりも大きな容量を維持しつつ、初期効率を高めることが可能であり、かつケイ素化合物の不可逆容量密度を全てプレドープで補うことで、充放電に伴うケイ素化合物の膨張収縮を抑制することが可能であるため、好ましい。
【0031】
ケイ素酸化物SiOxにおいて、xは、0.5以上であり、好ましくは0.5より大きく、さらに好ましくは0.7以上である。また、xは、1.5より小さく、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下または1以下である。xがこのような範囲である場合、負極の高い容量を確保しながらも、負極の膨張率が高くなりすぎるのを抑制できる。上記の下限値と上限値とは適宜選択して組み合わせることができる。xは、例えば、0.5≦x≦1.2、または0.5≦x≦1であってもよい。
【0032】
ケイ素酸化物と炭素材料との合計質量に対する、ケイ素酸化物の質量の比yは、0.03以上であり、好ましくは0.04以上、さらに好ましくは0.08以上である。また、比yは、0.3以下であり、好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.2以下または0.15以下である。比yがこのような範囲である場合、高い負極容量が得られるとともに、負極の初期効率を高めることが容易となる。よって、電池の容量と、サイクル特性とをバランスよく向上することができる。上記の下限値と上限値とは適宜選択して組み合わせることができる。比yは、例えば、0.03≦y≦0.25、または0.03≦y≦0.15であってもよい。
【0033】
ケイ素酸化物は粒子状であり、その平均粒径(体積基準のメディアン径)は、0.1μm〜10μmであることが好ましい。サイクルに伴う容量維持の観点からは、平均粒径が0.5〜5μmであることがさらに好ましい。
【0034】
負極活物質として使用する炭素材料としては、リチウムを可逆的に吸蔵脱離しうる材料が使用でき、その種類は特に限定されない。炭素材料としては、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)などが例示できる。黒鉛とは、黒鉛型結晶構造を有する材料を意味し、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン粒子などが含まれる。炭素材料は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。高い容量が得られるため、炭素材料として黒鉛を用いることが好ましい。
【0035】
ケイ素酸化物粒子の導電性および分散性を確保するために、炭素材料で粒子表面が被覆されたケイ素酸化物粒子を用いることが好ましい。負極の形成に先立って、ケイ素酸化物と炭素材料とを混合することにより、ケイ素酸化物粒子の表面を炭素材料で被覆することができる。
【0036】
好ましい態様では、負極は、負極集電体と、負極集電体の表面に付着し(または形成され)、かつ負極活物質を含む負極合剤層とを含むことができる。
負極合剤層は、負極活物質の他に、任意成分として、結着剤、導電剤、および/または増粘剤などを含むことができる。負極合剤層は、例えば、負極活物質と、結着剤、導電剤、および/または増粘剤と、分散媒とを含む負極合剤スラリーを、負極集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより形成できる。乾燥後の塗膜を、必要により圧延してもよい。負極合剤層は、負極集電体の一方の表面に形成してもよく、両方の表面に形成してもよい。
【0037】
結着剤としては、樹脂材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;アラミド樹脂などのポリアミド樹脂;ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、エチレン−アクリル酸共重合体などのアクリル樹脂;ポリアクリルニトリル、ポリ酢酸ビニルなどのビニル樹脂;ポリビニルピロリドン;ポリエーテルサルフォン;スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)などのゴム状材料などが例示できる。これらの結着剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
結着剤の量は、活物質100質量部に対して、例えば、0.5〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。
【0039】
導電剤としては、例えば、アセチレンブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;アルミニウムなどの金属粉末類;酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;フェニレン誘導体などの有機導電性材料などが例示できる。これらの導電剤は、一種を単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0040】
導電剤の量は、活物質100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは1〜5質量部以下である。
【0041】
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその変性体(Na塩などの塩も含む)、メチルセルロースなどのセルロース誘導体(セルロースエーテルなど);ポリビニルアルコールなどの酢酸ビニルユニットを有するポリマーのケン化物;ポリエーテル(ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキサイドなど)などが挙げられる。これらの増粘剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
増粘剤の量は、活物質100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。
【0043】
分散媒としては、特に制限されないが、例えば、水、エタノールなどのアルコール、テトラヒドロフランなどのエーテル、ジメチルホルムアミドなどのアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、またはこれらの混合溶媒などが例示できる。
【0044】
負極集電体としては、無孔の導電性基板(金属箔など)、多孔性の導電性基板(メッシュ体、ネット体、パンチングシートなど)が使用される。負極集電体の材質としては、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金などが例示できる。
負極集電体の厚さは、特に限定されないが、負極の強度と軽量化とのバランスの観点から、1〜50μmが好ましく、5〜20μmがより望ましい。
【0045】
負極活物質は、ケイ素酸化物を含むため、炭素材料のみの場合に比べて不可逆容量が大きくなり易い。そのため、負極活物質にリチウムをプレドープすることが好ましい。
リチウムのプレドープは、例えば、負極合剤層の表面に、リチウムを真空蒸着したり、リチウム箔を貼り付けたりして、金属リチウム層を形成することにより行うことができる。金属リチウム層を形成した後、負極内で局部電池を形成することにより、リチウムイオンを負極活物質中に予め導入させることが可能になる。金属リチウム層を形成した後、電池の構成前に、必要に応じて、所定のリチウム量が負極に吸蔵されるまで予め負極に充電反応を施してもよい。
【0046】
本発明では、ケイ素酸化物の質量の比yが0.03≦y≦0.3の範囲であり、比較的小さい。比yがこのような範囲では、負極活物質としてSi合金やケイ素酸化物のみを使用する場合と比較して、不可逆容量がそれほど大きくない。そのため、プレドープすべきリチウムの量が少ないため、その量を制御することが難しくなる。真空蒸着によりリチウムをプレドープすると、リチウムの量を制御し易くなり、少量のリチウムであっても高い精度でプレドープさせることができるので、L値を、前記範囲に制御し易くなる。
【0047】
リチウムのプレドープにより、ケイ素酸化物の不可逆容量を補填することができるが、プレドープにより形成される金属リチウム層は、非常に活性が高いため、大気中の酸素などと反応し易く、負極活物質にリチウムが吸蔵される前に劣化し易い。負極活物質が、Si合金やケイ素酸化物のみである場合には、リチウムの吸蔵速度が速いため、金属リチウム層の劣化はそれほど顕著ではない。ところが、本発明で使用するケイ素酸化物は、その質量の比yが、0.03≦y≦0.3と小さいため、リチウムの吸蔵速度が遅く、金属リチウム層の劣化が顕著になり易い。
【0048】
このような金属リチウム層の劣化を抑制するため、負極の表層部に、リチウム含有酸化物、リチウム含有炭酸塩などのリチウム化合物を含有させることが好ましい。負極の表層部は、このようなリチウム化合物を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。負極の表層部が、このようなリチウム化合物を含む場合、負極の表面に存在するリチウム(例えば、プレドープ後の負極表面に存在する金属リチウム層のリチウム)の劣化が抑制され、負極活物質にリチウムをより確実に吸蔵させることが可能となる。
【0049】
リチウム含有酸化物には、酸化リチウムなどが含まれる。リチウム含有炭酸塩には炭酸リチウムなどが含まれる。負極の表層部には、酸化物、炭酸塩以外のリチウム化合物、具体的には、窒化リチウムなどのリチウム窒化物、水酸化リチウムなどのリチウム水酸化物などがさらに含まれていてもよい。
【0050】
リチウム化合物は、負極に対して噴霧することなどにより負極の表層部に含有させてもよい。しかし、負極合剤層の表面に金属リチウム層を形成した後の負極の表層部がリチウム化合物を含むことが好ましいため、金属リチウム層を形成した後に、負極の表層部で上記のリチウム化合物を生成させることにより、含有させることが好ましい。リチウム化合物は、負極合剤層の表面に金属リチウム層を形成した後の負極の表面に炭酸ガスを吹きつけることにより、負極の表層部に含有させることができる。金属リチウム層のリチウムの劣化を抑制する観点からは、金属リチウム層を形成した直後に、負極の表面(つまり、金属リチウム層の表面)に炭酸ガスを吹き付けることが好ましい。
【0051】
図1は、電池の構成前における本発明の一実施形態に係る負極を模式的に示す断面図である。図1の負極は、リチウム化合物を表層に含む。
負極は、負極集電体15と、負極集電体15の表面に形成された負極合剤層16とを含む。負極合剤層16の表面には、金属リチウム層17が形成されている。負極の表層部、つまり、金属リチウム層17の表層部は、リチウム化合物18を含む。リチウム化合物18は、金属リチウム層17に含まれるリチウムと、炭酸ガスや大気との反応により形成される。そのため、リチウム化合物18は、分散した状態で、金属リチウム層の表層部に偏在している。
【0052】
負極の表層部において、リチウム化合物が存在する領域は、負極の表面(または金属リチウム層の表面)から0.1〜3μmの厚みを有する領域であることが好ましく、0.1〜1μmの範囲であることがさらに好ましい。このような厚みの領域にリチウム化合物が存在する場合、金属リチウム層の劣化反応を効果的に抑制できるとともに、負極抵抗を低く抑えることができるので、エネルギー密度の低下を抑制できる。
【0053】
なお、本発明の負極を用いて非水電解質二次電池を構成する場合、電池の容量を、正極の容量で規制する(つまり、負極の容量に対して、正極の容量を小さくする)ことが好ましい。電池の容量を正極の容量で規制する場合、放電末期におけるケイ素酸化物の膨張収縮が抑制され、容量維持率の低下をより効果的に抑制できる。
【0054】
本発明の負極は、負極活物質としてケイ素酸化物と炭素材料とを含み、高い容量および初期効率を有する。そのため、電池の容量(またはエネルギー密度)を向上できるとともに、正極の初期効率を小さくしなくても、サイクル特性を向上することができる。よって、非水電解質二次電池の負極として用いることにより、高いエネルギー密度とサイクル特性に優れる非水電解質二次電池を提供できる。
【0055】
本発明の非水電解質二次電池は、上記の負極と、リチウムを電気化学的に吸蔵および放出可能な正極と、非水電解質とを備える。非水電解質二次電池は、さらに負極と正極との間に介在するセパレータを含むことができる。
【0056】
図2は、本発明の一実施形態に係る角形の非水電解質二次電池の一部を切欠いた概略斜視図であり、図3は、図2における電極群を模式的に示す斜視図である。
電池は、有底角形の電池ケース6と、電池ケース6内に収容された電極群9および非水電解質(図示せず)とを備えている。電極群9は、長尺帯状の負極1と、長尺帯状の正極2と、これらの間に介在し、かつ直接接触を防ぐセパレータ3とを有する。電極群9は、負極1、正極2、およびセパレータ3は、平板状の巻芯を中心にして捲回され、巻芯を抜き取ることにより形成される。
【0057】
負極1は、負極集電体と、負極集電体の両方の表面に付着した負極活物質を含む負極活物質層(負極合剤層)とを含み、負極集電体には、負極リード11の一端が溶接などにより取り付けられている。正極2は、正極集電体と、正極集電体の両方の表面に付着した正極活物質を含む正極活物質層(正極合剤層)とを含む。正極集電体には、正極リード14の一端が溶接などにより取り付けられている。
【0058】
負極リード11の他端は、封口板5に設けられた負極端子13に電気的に接続される。正極リード14の他端は、正極端子を兼ねる電池ケース6に電気的に接続される。電極群9の上部には、電極群9と封口板5とを隔離するとともに負極リード11と電池ケース6とを隔離する樹脂製の枠体4が配置されている。そして、電池ケース6の開口部は、封口板5で封口される。
【0059】
以下、本発明の非水電解質二次電池における負極以外の構成要素についてより具体的に説明するが、本発明は負極に特徴を有するものであり、他の構成要素を特に制限するものではない。
【0060】
正極は、正極集電体と、正極集電体の表面に形成または担持された正極合剤層とを含む。正極合剤層は、正極活物質の他に、任意成分としての結着剤および/または導電剤などを含むことができる。正極は、例えば、負極と同様に、正極活物質と、結着剤および/または導電剤と、分散媒とを含む正極合剤スラリーを用いて形成できる。
【0061】
正極活物質としては、リチウム複合金属酸化物を用いることができる。例えば、LiaCoO2、LiaNiO2、LiaMnO2、LiaCobNi1-b2、LiaCob1-bc、LiaNi1-bbc、LiaMn24、LiaMn2-bb4、LiMePO4、Li2MePO4F(Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも一種である。)が挙げられる。ここで、a=0〜1.2、b=0〜0.9、c=2.0〜2.3である。なお、リチウムのモル比を示すa値は、活物質作製直後の値であり、充放電により増減する。さらにこれら含リチウム化合物の一部を異種元素で置換してもよい。正極活物質は、金属酸化物、リチウム酸化物、導電剤などで表面処理してもよく、表面を疎水化処理してもよい。
【0062】
結着剤および導電剤としては、負極について例示したものと同様のものが使用できる。導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛を用いてもよい。
結着剤の量は、正極活物質100質量部に対して、例えば、0.5〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。導電剤の量は、正極活物質100質量部に対して、例えば、0.5〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。
【0063】
正極集電体の形状および厚みは、負極集電体と同じ形状および範囲からそれぞれ選択できる。正極集電体の材質としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタンなどが例示できる。
【0064】
セパレータとしては、イオン透過度が高く、適度な機械的強度および絶縁性を備えていれば特に制限されず、微多孔薄膜、織布、不織布などが使用できる。セパレータの材質としては、公知のものが使用でき、耐久性およびシャットダウン機能が高く電池の安全性を確保し易い観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンが好ましい。微多孔膜は、1種の材料からなる単層膜であってもよく、1種または2種以上の材料からなる複合膜または多層膜であってもよい。
【0065】
セパレータの厚さは、例えば、10〜300μm、好ましくは10〜40μm、さらに好ましくは15〜30μmまたは10〜25μmである。
【0066】
セパレータの空孔率は、30〜70%の範囲であることが好ましい。ここで空孔率とは、セパレータの体積に占める空孔部の体積比率を示す。セパレータの空孔率は、35〜60%であることがさらに好ましい。
【0067】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解したリチウム塩(電解質)を含む。
非水溶媒としては、非水電解質二次電池の非水電解質に使用される公知の非水溶媒、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステルなどが用いられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などが挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)などが挙げられる。非水溶媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
リチウム塩としては、例えば、塩素含有酸のリチウム塩(LiClO4、LiAlCl4、LiB10Cl10など)、フッ素含有酸のリチウム塩(LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2など)、フッ素含有酸イミドのリチウム塩(LiN(CF3SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiN(C25SO22など)、リチウムハライド(LiCl、LiBr、LiIなど)などが使用できる。これらのリチウム塩は、一種を単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0069】
非水電解質におけるリチウム塩の濃度は、例えば、0.5〜2mol/Lである。
【0070】
非水電解質は、公知の添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、負極上で分解してリチウムイオン伝導性の高い皮膜を形成し、電池の充放電効率を高める添加剤(添加剤A)、過充電時に分解して電極上に皮膜を形成し、電池を不活性化させる添加剤(添加剤B)などが例示できる。
添加剤の含有量は、非水電解質中、例えば、10質量%以下、好ましくは7質量%以下である。
【0071】
添加剤Aとしては、重合性不飽和結合(ビニレン基、ビニル基など)を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート(フルオロエチレンカーボネート(FEC)、フルオロプロピレンカーボネートなど)が例示できる。
【0072】
ビニレン基を有する環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート(VC);4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネートなどのC1-4アルキル基および/またはC6-10アリール基などを置換基として有するVCが例示できる。
【0073】
ビニル基を有する環状カーボネートとしては、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネートなどのビニル基を置換基として有するECが挙げられる。また、これらの化合物において、置換基または環状カーボネートを構成する水素原子の一部が、一部がフッ素原子で置換されたものも、上記の添加剤として使用できる。
添加剤Aは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0074】
添加剤Bとしては、脂肪族環を有する芳香族化合物、複数の芳香環を有する芳香族化合物などが例示できる。
脂肪族環としては、シクロヘキサン環などのシクロアルカン環の他、環状エーテル、環状エステルなどが例示できる。芳香族化合物は、これらの脂肪族環を置換基として有するものが好ましい。このような芳香族化合物の具体例としては、シクロヘキシルベンゼンなどのベンゼン化合物などが挙げられる。
複数の芳香環を有する芳香族化合物としては、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどが例示できる。
これらの添加剤Bは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0075】
非水電解質は、液状であってもよく、ゲル状または固体状であってもよい。
液状の非水電解質は、非水溶媒と、これに溶解したリチウム塩とを含む。
ゲル状非水電解質は、液状の非水電解質と、この非水電解質を保持する高分子材料とを含む。
【0076】
この高分子材料としては、例えばPVDF、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニルなどのビニル樹脂;ポリエチレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド;ポリアクリレートなどのアクリル樹脂などが挙げられる。
【0077】
固体状の非水電解質は、高分子固体電解質を含む。高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン共重合体(H+型)、スルホン化ポリエーテルスルホン(H+型)、アミノ化ポリエーテルスルホン(OH-型)などが挙げられる。
【0078】
(他の構成要素)
電極群は、図3に示されるような捲回したものに限らず、つづら折りにされたものなどを含む積層したものであってもよい。電極群の形状は、電池または電池ケースの形状に応じて、円筒形、捲回軸に垂直な端面が長円形である扁平形であってもよい。
【0079】
電池ケースは、金属製であってもよく、ラミネートフィルム製であってもよい。電池ケースを形成する金属材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金(マンガン、銅等などの金属を微量含有する合金など)、鉄、ステンレス鋼などの鋼鈑などが使用できる。電池ケースは、必要により、ニッケルメッキなどによりメッキ処理されていてもよい。
電池ケースの形状は、電極群の形状に応じて、角型の他、円筒型などであってもよい。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
実施例1
図2の非水電解質二次電池を下記の手順で作製した。
(1)負極の作製
(a)人造黒鉛粉末90質量部と酸化ケイ素(SiO)粉末10質量部とを混合することにより、粉末状の負極活物質(y=0.1)を準備した。この負極活物質98質量部に、結着剤のSBR分散液(SBRの質量:1質量部)、および増粘剤のCMCナトリウム塩1質量部を混合し、得られた混合物を純水に分散させてスラリー状の負極合剤を調製した。この負極合剤を、負極集電体としての銅箔(厚さ8μm)の両面に塗布し、乾燥後、120μmの厚みに圧延した。圧延物を、窒素雰囲気中、190℃で10時間乾燥させた。
【0082】
(b)負極活物質にリチウムをプレドープするため、(a)で得られた極板を真空チャンバー内に装填し、真空蒸着法により、極板の表面にリチウム層(厚さ3μm)を形成した。真空蒸着後は、炭酸ガスによって真空チャンバー内を大気圧まで開放した。このようにして、負極板を作製した。
得られた負極板を、所定のサイズにカットすることにより、負極1を得た。
【0083】
(2)正極の作製
正極活物質としてのコバルト酸リチウム粉末98質量部に、導電剤のアセチレンブラック1質量部と、結着剤のPVDF1質量部とを混合し、得られた混合物を、脱水NMP中に分散させることにより、スラリー状の正極合剤を調製した。この正極合剤を、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚さ15μm)の両面に塗布し、乾燥後、120μmの厚みに圧延することにより、正極板を作製した。
得られた正極板を、所定のサイズにカットすることにより、正極2を得た。
【0084】
(3)非水電解質の調製
ECとEMCとDECとを体積比2:3:5で含む非水溶媒に、FECを添加し、LiPF6を溶解させることにより、非水電解質を調製した。非水電解質中のFECの濃度は6質量%であり、LiPF6の濃度は1.4mol/Lとした。
【0085】
(4)電池の作製
上記(1)で得られた負極1に、ニッケル製の負極リード11の一端を取り付け、上記(2)で得られた正極2に、アルミニウム製の正極リード14の一端を取り付けた。正極2と負極1とを、セパレータ3を介して対向させ、平板状の巻芯を中心にして捲回することにより電極群9を構成し、巻芯を引き抜いた。負極リード11の他端を、封口板5に設けられた端子13に電気的に接続し、正極リード14の他端を、正極端子を兼ねる電池ケース6に電気的に接続した。電極群9を電池ケース6内に挿入し、電池ケース6の開口部を封口板5で封口した。注液孔から上記(3)で調製した非水電解質(図示せず)を注入した後、注液孔を密封することにより、非水電解質二次電池を完成させた。なお、セパレータ3としては、ポリプロピレン製の微多孔膜(厚さ20μm)を用いた。
【0086】
(5)負極および電池の評価
下記の手順で、負極および電池の評価を行った。
(a)負極の初回充電容量密度、初期効率、およびL値
上記(1)で得られた負極を用い、リチウム金属(厚さ300μm)を対極として、5mAの電流で終止電圧5mVまで定電流充電し、5mAの電流で、終止電圧1.5Vまで定電流放電を行った。充電時の負極の容量(mAh)を測定し、この値の負極に含まれる負極活物質の重量(g)で除することにより、初回充電容量密度Ci(mAhg-1)を算出した。また、放電容量(mAh)を測定し、この値を、充電時の負極の容量(充電容量)で除することにより、初期効率(初回充電容量に対する初回放電容量の比)を算出した。
【0087】
前記式(1)から、使用した負極活物質の理論容量密度Ctを算出した。この理論容量密度Ctと初回充電容量密度Ciから、容量密度の差分ΔC(mAhg-1)=Ct−Ciを算出し、ΔCから、L値(L=ΔC/100)を算出した。
【0088】
(b)電池の初期効率および容量維持率
上記(4)で得られた電池を、最大電流200mAで上限電圧4.3Vまで定電流充電し、さらに4.3Vの定電圧で50mAまで定電圧充電した。次いで、充電した電池を、200mAの電流で、終止電圧3.0Vまで定電流放電した。これらの充電と放電とを繰り返し、1サイクル目、6サイクル目の充電容量および放電容量を測定し、100サイクル目の放電容量を測定した。
1サイクル目の充電容量および放電容量を、それぞれ、初回充電容量および初回放電容量として、初回充電容量に対する初回放電容量の比率(%)を電池の初期効率として算出した。
また、6サイクル目の放電容量を100%とし、この値に対する100サイクル目の放電容量の比率を、容量維持率(%)として算出した。
電池の初回充電容量を負極活物質の総重量(g)で除することにより、電池の負極の初回充電容量密度(mAhg-1)を算出した。
【0089】
実施例2〜5および比較例1〜6
人造黒鉛粉末およびSiO粉末の合計質量に対するSiO粉末の比率yを表1に示す値に変更するとともに、形成するリチウム層の厚みを表1の示す値に変更する以外は、実施例1と同様にして負極および電池を作製した。得られた負極および電池を用いる以外は、実施例1と同様にして、負極および電池の評価を行った。ただし、比較例6については、負極の作製工程において、リチウムの真空蒸着後、炭酸ガスに代えて、乾燥空気によって真空チャンバー内を大気圧まで開放した。
実施例および比較例の負極の評価結果を表1に示し、電池の評価結果を表2に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
表1に示されるように、実施例1〜5で作製した負極は、L値が、6y≦L≦12y+0.2の範囲にあり、その初回充電容量密度Ciはいずれも、黒鉛の理論容量密度(372mAhg-1)を超える値であった。また、負極の初期効率は、いずれも95%以上であった。
【0093】
一方、比較例1で作製した負極は、負極活物質に占めるSiOの質量比yが小さいために、初期効率には優れるものの、初回充電容量密度Ciは黒鉛の理論容量密度と同等であった。また、比較例2で作製した負極は比yが大きいために、初回充電容量密度Ciは黒鉛の理論容量密度を大きく凌駕するものの、初期効率は14%と大きく低下した。この初期効率の低下は、SiOの膨張収縮による応力が緩和されずに、負極活物質層のはがれが顕著になったためと考えられる。
【0094】
比較例3および4で作製した負極は、初回充電容量密度Ciは実施例1より大きいものの、リチウムプレドープ量が少なく、L<6yであるために初期効率が95%を下回っている。さらに比較例5で作製した負極は、初期効率は実施例1より大きいものの、L≧12y+0.2であるため、初回充電容量密度Ciは黒鉛の理論容量密度を下回っている。比較例6で作製した負極は、L<6yであるために、実施例1と比較して初期効率が低下した。
【0095】
表2に示されるように、実施例1〜5の電池は、負極の初期効率が95%以上(表1参照)であるために、電池について算出した負極の初期効率は正極の初期効率に近い90%以上となり、初期効率の高い電池が作製できた。また、電池の初回充電容量から算出した負極の初回充電容量密度はそれぞれ既存の黒鉛負極の理論容量密度372mAhg-1を超える値であった。さらに、電池の容量が正極の放電容量で規制されており、放電終了時におけるSiOの膨張収縮が抑制され、容量維持率も良好であった。比較例1および5の電池に関しては、初期効率、容量維持率は良好なものの、12y+0.2<Lであるため負極の初回充電容量密度が黒鉛の理論容量密度372mAh/gを下回っており、電池の容量自体は小さいものとなった。一方、比較例2〜4、および比較例6の電池は、負極の初期効率が小さいために電池の初期効率も低くなった。また、電池の容量が負極の放電容量で規制されるために、放電終了時においてSiOが膨張収縮し、容量維持率が低下した。
【0096】
また、X線光電子分光を用いて実施例1で用いた負極表面の元素分析を行ったところ、図5で示されるようにリチウム含有炭酸塩およびリチウム含有酸化物が0.3μmの厚みにわたって存在していることが分かった。この層が存在することでリチウム層の劣化反応が進行することなく、蒸着したリチウムが確実に負極にプレドープされたと考えられる。
【0097】
なお、上記実施例では角型電池を用いたが、円筒型、扁平型、ラミネート型などの形状の電池を用いても同様の効果が得られる。
【0098】
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の負極によれば、高容量材料を負極活物質に用いた場合の課題である初期効率の低下を解決できるとともに、高エネルギー密度と良好なサイクル特性とを合わせ持つ非水電解質二次電池を提供することができる。本発明の非水電解質二次電池は、移動体通信機器、携帯電子機器などの主電源に有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 負極、2 正極、3 セパレータ、4 枠体、5 封口板、6 電池ケース、9 電極群、11 負極リード、13 負極端子、14 正極リード、15 負極集電体、16 負極合剤層、17 金属リチウム層、18 リチウム化合物
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】

【手続補正書】
【提出日】20140522
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
ΔCは、不可逆容量密度よりも小さいか、もしくは大きいことが好ましい。ΔCが不可逆容量密度よりも小さい場合(つまり、Cのプロットよりも下の領域(L<10.7y+0.2)である場合)、ケイ素酸化物を用いた場合に得られる高い充電容量密度を、プレドープ分の容量で大きく損なうことなく、初期効率を高めることができるため、好ましい。ΔCが不可逆容量密度よりも大きい場合(つまり、Cのプロットよりも上の領域(L>10.7y+0.2)である場合)、黒鉛よりも大きな容量を維持しつつ、初期効率を高めることが可能であり、かつケイ素酸化物の不可逆容量密度を全てプレドープで補うことで、充放電に伴うケイ素酸化物の膨張収縮を抑制することが可能であるため、好ましい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
導電剤の量は、活物質100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは1〜5質量部である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
なお、本発明の負極を用いて非水電解質二次電池を構成する場合、電池の容量を、正極の容量で規制する(つまり、負極の容量に対して、正極の容量を小さくする)ことが好ましい。電池の容量を正極の容量で規制する場合、放電末期におけるケイ素酸化物の収縮が抑制され、容量維持率の低下をより効果的に抑制できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
表2に示されるように、実施例1〜5の電池は、負極の初期効率が95%以上(表1参照)であるために、電池について算出した負極の初期効率は正極の初期効率に近い90%以上となり、初期効率の高い電池が作製できた。また、電池の初回充電容量から算出した負極の初回充電容量密度はそれぞれ既存の黒鉛負極の理論容量密度372mAhg-1を超える値であった。さらに、電池の容量が正極の放電容量で規制されており、放電終了時におけるSiOの収縮が抑制され、容量維持率も良好であった。比較例1および5の電池に関しては、初期効率、容量維持率は良好なものの、12y+0.2<Lであるため負極の初回充電容量密度が黒鉛の理論容量密度372mAh/gを下回っており、電池の容量自体は小さいものとなった。一方、比較例2〜4、および比較例6の電池は、負極の初期効率が小さいために電池の初期効率も低くなった。また、電池の容量が負極の放電容量で規制されるために、放電終了時においてSiOが収縮し、容量維持率が低下した。
【国際調査報告】