(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013099735
(43)【国際公開日】20130704
【発行日】20150507
(54)【発明の名称】非水電解液及びそれを用いた蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20150410BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20150410BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20150410BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20150410BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20150410BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20150410BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20150410BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20150410BHJP
【FI】
   !H01M10/0567
   !H01M10/0569
   !H01M10/0568
   !H01M6/16 A
   !H01M10/052
   !H01G11/64
   !H01G11/60
   !H01G11/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
【出願番号】2013551649
(21)【国際出願番号】JP2012082928
(22)【国際出願日】20121219
(31)【優先権主張番号】2011287215
(32)【優先日】20111228
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の96
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】安部 浩司
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の96 宇部興産株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正英
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の96 宇部興産株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】古藤 雄一
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の96 宇部興産株式会社内
【テーマコード(参考)】
5E078
5H024
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA09
5E078DA14
5E078DA19
5H024AA01
5H024AA02
5H024AA06
5H024AA07
5H024AA12
5H024CC03
5H024FF15
5H024FF18
5H024FF20
5H024FF38
5H024HH01
5H024HH02
5H024HH08
5H029AJ01
5H029AJ04
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ03
5H029BJ12
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ10
(57)【要約】
本発明は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物を含有する、広い温度範囲での電気化学特性を向上できる非水電解液、及びそれを用いた蓄電デバイスである。

(式中、R1は2価の連結基を示し、Xはホスホリル基、スルホニル基等を含む特定の置換基を示す。)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物を含有することを特徴とする非水電解液。
【化1】
(式中、R1は、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6の2価の連結基を示し、Xは下記一般式(II)〜(V)で表される置換基のいずれかを示す。)
【化2】
(式中、R2は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、又は−N(C=O)21で表される基を示す。ただし、R1は前記と同義であり、前記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【化3】
(式中、R3及びR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基を示し、R5及びR6はそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。ただし、前記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【化4】
(式中、R7及びR8はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基を示し、R9はそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。ただし、前記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物の含有量が非水電解液中に0.001〜10質量%である請求項1に記載の非水電解液。
【請求項3】
一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物が、ビス(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル) オギザレート(構造式A1)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート(構造式B1)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 2−(ジエトキシホスホリル)プロパノエート(構造式B10)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート(構造式B13)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 2−(ジプロポキシホスホリル)アセテート(構造式B14)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル (2−(メタンスルホニル)オキシ)プロパノエート(構造式C1)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル (2−(エタンスルホニル)オキシ)プロパノエート(構造式C13)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル (2−(4−メチルフェニルスルホニル)オキシ)アセテート(構造式C20)、及び2,5−ジオキソピロリジン−1−イル (2−(4−メチルフェニルスルホニル)オキシ)プロパノエート(構造式C25)から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の非水電解液。
【請求項4】
非水溶媒が少なくとも1種の環状カーボネートを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液。
【請求項5】
環状カーボネートが、エチレンカーボネートと、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、及びトランス又はシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンから選ばれる1種又は2種以上である、請求項4に記載の非水電解液。
【請求項6】
非水溶媒が、更に鎖状エステルを含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解液。
【請求項7】
鎖状エステルが、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネートから選ばれる非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、及びジブチルカーボネートから選ばれる対称鎖状カーボネート、及び鎖状カルボン酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である、請求項6に記載の非水電解液。
【請求項8】
非水電解液が、更に、リン酸エステル化合物、イソシアネート、S=O結合含有化合物、ニトリル、酸無水物、芳香族化合物、及び環状ホスファゼン化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の非水電解液。
【請求項9】
電解質塩が、LiPF6、LiPO22、Li2PO3F、LiBF4、FSO3Li、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2F)2、ジフルオロビス[オキサレート−O,O']リン酸リチウム、及びテトラフルオロ[オキサレート−O,O']リン酸リチウムから選ばれる少なくとも1種のリチウム塩を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の非水電解液。
【請求項10】
リチウム塩が、LiPF6を含み、更にLiPO22、LiBF4、FSO3Li、LiN(SO2CF32、LiN(SO2F)2、ジフルオロビス[オキサレート−O,O’]リン酸リチウム、及びテトラフルオロ[オキサレート−O,O’]リン酸リチウムから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項9に記載の非水電解液。
【請求項11】
リチウム塩の濃度が、非水溶媒に対して、0.3〜2.5Mである、請求項1〜10のいずれかに記載の非水電解液。
【請求項12】
正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を有する蓄電デバイスであって、該非水電解液中に前記一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項13】
前記一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物の含有量が非水電解液中に0.001〜10質量%である請求項12に記載の非水電解液。
【請求項14】
正極活物質が、コバルト、マンガン、及びニッケルから選ばれる少なくとも1種を含有するリチウムとの複合金属酸化物、又は鉄、コバルト、ニッケル、及びマンガンから選ばれる少なくとも1種を含有するリチウム含有オリビン型リン酸塩である、請求項12又は13に記載の蓄電デバイス。
【請求項15】
負極活物質が、リチウム金属、リチウム合金、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料、スズ、スズ化合物、ケイ素、ケイ素化合物、及びチタン酸リチウム化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項12〜14のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い温度範囲での電気化学特性を向上できる非水電解液、及びそれを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電デバイス、特にリチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の小型電子機器、電気自動車や電力貯蔵用として広く使用されている。これらの電子機器や自動車は、真夏の高温下や極寒の低温下等広い温度範囲で使用される可能性があるため、広い温度範囲でバランス良く電気化学特性を向上させることが求められている。
特に地球温暖化防止のため、CO2排出量を削減することが急務となっており、リチウム二次電池やキャパシタ等の蓄電デバイスからなる蓄電装置を搭載した環境対応車の中でも、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)の早期普及が求められている。自動車は移動距離が長いため、熱帯の非常に暑い地域から極寒の地域まで幅広い温度範囲の地域で使用される可能性がある。従って、特にこれらの車載用の蓄電デバイスは、高温から低温まで幅広い温度範囲で使用しても電気化学特性が劣化しないことが要求されている。
なお、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
【0003】
リチウム二次電池は、主にリチウムを吸蔵及び放出可能な材料を含む正極及び負極、リチウム塩と非水溶媒からなる非水電解液から構成され、非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネートが使用されている。
また、負極としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金等)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵及び放出することが可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素材料を用いたリチウム二次電池が広く実用化されている。
【0004】
例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の高結晶化した炭素材料を負極材料として用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の溶媒が充電時に負極表面で還元分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、サイクル特性の低下を生じることが分かっている。また、非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすくなる。
更に、リチウム金属やその合金、スズ又はケイ素等の金属単体や酸化物を負極材料として用いたリチウム二次電池は、初期の容量は高いもののサイクル中に微粉化が進むため、炭素材料の負極に比べて非水溶媒の還元分解が加速的に起こり、電池容量やサイクル特性のような電池性能が大きく低下することが知られている。また、これらの負極材料の微粉化が進んだり、非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすくなる。
一方、正極として、例えばLiCoO2、LiMn24、LiNiO2、LiFePO4等を用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の非水溶媒が充電状態で正極材料と非水電解液との界面において、局部的に一部酸化分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、やはり広い温度範囲での電気化学特性の低下を生じることが分かっている。
【0005】
以上のように、正極上や負極上で非水電解液が分解するときの分解物やガスにより、リチウムイオンの移動が阻害されたり、電池が膨れたりすることで電池性能が低下していた。そのような状況にも関わらず、リチウム二次電池が搭載されている電子機器の多機能化はますます進み、電力消費量が増大する流れにある。そのため、リチウム二次電池の高容量化はますます進んでおり、電極の密度を高めたり、電池内の無駄な空間容積を減らす等、電池内の非水電解液の占める体積が小さくなっている。従って、少しの非水電解液の分解で、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすい状況にある。
【0006】
特許文献1には、アクリル酸スクシンイミジルを非水電解液に添加すると、サイクル特性や難燃性が向上することが示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2011−228103号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、広い温度範囲での電気化学特性を向上できる非水電解液及びそれを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術の非水電解液の性能について詳細に検討した。その結果、前記特許文献1の非水電解液では、高温充電保存後の低温放電特性等の広い温度範囲での電気化学特性を向上させるという課題に対しては、十分に満足できるとは言えないのが実情であった。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の電子吸引性基を有するイミジルオキシ基含有化合物を非水電解液に添加することにより、広い温度範囲での電気化学特性、特にリチウム電池の電気化学特性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の(1)及び(2)を提供するものである。
(1)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物を含有することを特徴とする非水電解液。
【0011】
【化1】
(式中、R1は、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6の2価の連結基を示し、Xは下記一般式(II)〜(V)で表される置換基のいずれかを示す。)
【0012】
【化2】
(式中、R2は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、又は−N(C=O)21で表される基を示す。ただし、R1は前記と同義であり、前記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0013】
【化3】
(式中、R3及びR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基を示し、R5及びR6はそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。ただし、前記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0014】
【化4】
(式中、R7及びR8はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基を示し、R9はそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。ただし、前記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0015】
(2)正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスにおいて、該非水電解液中に前記一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、広い温度範囲での電気化学特性、特に高温充電保存後の低温放電特性を向上できる非水電解液及びそれを用いたリチウム電池等の蓄電デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔非水電解液〕
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)で表されるスクシンイミジルオキシ基含有化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0018】
本発明の非水電解液が広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できる理由は明らかではないが、以下のように考えられる。
本発明の一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物は複数の電子吸引性基を有している。このため、主溶媒よりも一段と高い電位で還元分解を受ける。従って、初回充電時に負極上での還元分解が主溶媒よりも一段と高い電位で進行し、負極表面にイミジルオキシ基含有化合物の分解物を含む被膜が形成される。この被膜中には、イミジルオキシ基と置換基Xの両方の分解物が含まれるため、低温から高温までの広い温度範囲で電気化学特性が向上する特異的な効果がもたらされることが判明した。中でも、置換基Xとしては、一般式(III)及び(IV)のようなリン酸やスルホン酸等のエステル構造を有する置換基であると広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できるので好ましい。
【0019】
本発明の非水電解液に含まれるイミジルオキシ基含有化合物は、下記一般式(I)で表される。
【0020】
【化5】
(式中、R1は、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6の2価の連結基を示し、Xは下記一般式(II)〜(V)で表される置換基のいずれかを示す。)
【0021】
【化6】
(式中、R2は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、又は−N(C=O)21で表される基を示す。ただし、R1は前記と同義であり、前記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0022】
【化7】
(式中、R3及びR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基を示し、R5及びR6はそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。ただし、前記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0023】
【化8】
(式中、R7及びR8はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基を示し、R9はそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。ただし、前記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0024】
前記一般式(I)において、R1は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい炭素数2〜6の2価の連結基を示し、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数2〜4のアルカンジイル基が好ましい。
前記R1の具体例としては、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,2−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル、シクロヘキサン−1,2−ジイル基等のアルカンジイル基、1−フルオロエタン−1,2−ジイル基等のハロゲン化アルカンジイル基が好適に挙げられ、中でもエタン−1,2−ジイル基(エチレン基)、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基(トリメチレン基)、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基(テトラメチレン基)、シクロヘキサン−1,2−ジイル基等のアルカンジイル基が好ましく、エタン−1,2−ジイル基(エチレン基)が更に好ましい。R1がエタン−1,2−ジイル基(エチレン基)の場合、一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物は、スクシンイミジルオキシ基含有化合物である。
上記の置換基の範囲の場合に、広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できるので好ましい。
【0025】
前記一般式(II)において、好ましいR2としては、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数5〜6のシクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜4のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜4のアルキニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、又はスクシンイミジルオキシ基が挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜4のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜4のアルキニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜8のアリール基、又はスクシンイミジルオキシ基がより好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜4のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜4のアルキニル基、又はスクシンイミジルオキシ基が更に好ましい。
【0026】
前記R2の具体例としては、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖のアルキル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基等の分枝鎖のアルキル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基等の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基;
ビニル基、2−プロペン−1−イル基、2−ブテンー1−イル基、3−ブテン−1−イル基、4−ペンテン−1−イル基、5−ヘキセン−1−イル基等の直鎖のアルケニル基、3−ブテン−2−イル基、2−メチル−1−プロペン−1−イル基、2−メチル−2−プロペン−1−イル基、3−ペンテン−2−イル基、2−メチル−3−ブテン−2−イル基、3−メチル−2−ブテン−1−イル基等の分枝鎖のアルケニル基;
2−プロピン−1−イル基、2−ブチン−1−イル基、3−ブチン−1−イル基、4−ペンチン−1−イル基、5−ヘキシン−1−イル基等の直鎖のアルキニル基、3−ブチン−2−イル基、3−ペンチン−2−イル基、2−メチル−3−ブチン−2−イル基等の分枝鎖のアルキニル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−tert-ブチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基等のアリール基が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−プロペン−1−イル基、2−プロピン−1−イル基、2−ブチン−1−イル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、又はスクシンイミジルオキシ基がより好ましく、2−プロペン−1−イル基、2−プロピン−1−イル基、2−ブチン−1−イル基、又はスクシンイミジルオキシ基が更に好ましい。
上記の置換基の範囲の場合に、広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できるので好ましい。
【0027】
前記一般式(III)において、好ましいR3及びR4としては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
前記R3及びR4の具体例としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
これらの中でも、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましい。
上記の置換基の範囲の場合に、広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できるので好ましい。
【0028】
前記一般式(III)において、好ましいR5及びR6としては、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数5〜6のシクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数2〜4のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜4のアルキニル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜8のアリール基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましい。
【0029】
前記R5及びR6の具体例としては、前記R2の具体例として挙げた、分枝鎖のアルキル基、水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基、直鎖のアルケニル基、分枝鎖のアルケニル基、直鎖のアルキニル基、分枝鎖のアルキニル基、シクロアルキル基、各種フェニル基、各種フッ素置換フェニル基等のアリール基が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−プロペン−1−イル基、2−プロピン−1−イル基、2−ブチン−1−イル基、フェニル基、4−フルオロフェニル基、又は2−トリフルオロメチルフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基が更に好ましい。
上記の置換基の範囲の場合に、広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できるので好ましい。
【0030】
前記一般式(IV)において、好ましいR7及びR8としては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
前記R7及びR8の具体例としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
これらの中でも、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、水素原子、又はメチル基が更に好ましい。
上記の置換基の範囲の場合に、広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できるので好ましい。
【0031】
前記一般式(IV)において、好ましいR9としては、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数5〜6のシクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜4のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜4のアルキニル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基が好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜4のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数3〜4のアルキニル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜8のアリール基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜8のアリール基が更に好ましい。
【0032】
前記R9の具体例としては、前記R2の具体例として挙げた、分枝鎖のアルキル基、水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基、直鎖のアルケニル基、分枝鎖のアルケニル基、直鎖のアルキニル基、分枝鎖のアルキニル基、シクロアルキル基、各種フェニル基、各種フッ素置換フェニル基等のアリール基が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ビニル基、2−プロペン−1−イル基、2−プロピン−1−イル基、2−ブチン−1−イル基、フェニル基、又は4−メチルフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、又は4−メチルフェニル基が更に好ましい。
上記の置換基の範囲の場合に、広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できるので好ましい。
【0033】
一般式(I)で表される化合物の具体例としては以下のものが好適に挙げられる。
Xが一般式(II)の場合としては、下記の化合物A1〜A27が好適に挙げられる。
【0034】
【化9】
【0035】
Xが一般式(III)の場合としては、下記の化合物B1〜B20が好適に挙げられる。
【0036】
【化10】
【0037】
Xが一般式(IV)の場合としては、下記の化合物C1〜C25が好適に挙げられる。
【0038】
【化11】
【0039】
一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物の中でも、Xは、一般式(III)又は(IV)で表される化合物が好ましく、一般式(III)で表される化合物がより好ましい。
これらの具体例としては、上記A1、A17〜A19、B1、B10、B13、B14、C1、C10、C13、C14、C19、C20、C24、及びC25の構造を有する化合物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、ビス(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル) オギザレート(化合物A1)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート(化合物B1)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 2−(ジエトキシホスホリル)プロパノエート(化合物B10)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 2−(ジメトキシホスホリル)アセテート(化合物B13)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 2−(ジプロポキシホスホリル)アセテート(化合物B14)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル (2−(メタンスルホニル)オキシ)プロパノエート(化合物C1)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル (2−(エタンスルホニル)オキシ)プロパノエート(化合物C13)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル (2−(4−メチルフェニルスルホニル)オキシ)アセテート(化合物C20)、及び2,5−ジオキソピロリジン−1−イル (2−(4−メチルフェニルスルホニル)オキシ)プロパノエート(化合物C25)から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
上記の化合物の範囲の場合に、広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できるので好ましい。
【0041】
本発明の非水電解液において、非水電解液中に含有される一般式(I)で表されるイミジルオキシ基含有化合物の含有量は、非水電解液中に0.001〜10質量%が好ましい。該含有量が10質量%以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され低温特性が低下するおそれが少なく、また0.001質量%以上であれば被膜の形成が十分であり、高温充電保存特性の改善効果が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、その上限は、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0042】
本発明の非水電解液において、前記一般式(I)で表される化合物を以下に述べる非水溶媒、電解質塩、更にその他の添加剤を組み合わせることにより、広い温度範囲での電気化学特性が相乗的に向上するという特異な効果を発現する。
【0043】
〔非水溶媒〕
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状エステル、ラクトン、エーテル、アミド、スルホン等が挙げられるが、環状カーボネートのみ、又は環状カーボネートと鎖状エステルの両方が含まれることが好ましい。
なお、鎖状エステルなる用語は、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルを含む概念として用いる。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、トランス又はシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、及び4−エチニル−1,3−ジオキソラン−2−オン(EEC)から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
これらの中でも、エチレンカーボネートの他に、エチレンカーボネートの4位にメチル基を有する環状カーボネート、即ちプロピレンカーボネート(PC)、炭素−炭素二重結合又はフッ素原子を有する環状カーボネートのうち少なくとも1種を使用すると高温充電保存後の低温放電特性が一段と向上するので好ましく、炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートとフッ素原子を有する環状カーボネートを両方含むことがより好ましい。炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートとしては、VC及びVECから選ばれる1種又は2種が好ましく、フッ素原子を有する環状カーボネートとしては、FEC及びDFECから選ばれる1種又は2種が好ましい。
【0044】
炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対して、好ましくは0.07体積%以上、より好ましくは0.2体積%以上、更に好ましくは0.7体積%以上であり、その上限としては、好ましくは7体積%以下、より好ましくは4体積%以下、更に好ましくは2.5体積%以下である。上記範囲内であると、低温でのLiイオン透過性を損なうことなく一段と高温充電保存時の被膜の安定性を増すことができるので好ましい。
フッ素原子を有する環状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対して好ましくは0.07体積%以上、より好ましくは4体積%以上、更に好ましくは7体積%以上であり、その上限としては、好ましくは35体積%以下、より好ましくは25体積%以下、更に好ましくは15体積%以下含むと、低温でのLiイオン透過性を損なうことなく一段と高温充電保存時の被膜の安定性を増すことができるので好ましい。
また、非水溶媒が、EC、PC、又はECとPCの両者を含むと電極上に形成される被膜の抵抗が小さくなるので好ましく、EC、PC、又はECとPCの両者の含有量は、非水溶媒の総体積に対し、好ましくは3体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは7体積%以上であり、その上限としては、好ましくは45体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは25体積%以下である。
【0045】
これらの環状カーボネートは1種単独で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用すると、広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましく、3種以上を組み合わせて使用することがより好ましい。
これらの環状カーボネートの好適な組合せとしては、ECとVC、ECとPC、PCとVC、VCとFEC、ECとFEC、PCとFEC、FECとDFEC、ECとDFEC、PCとDFEC、VCとDFEC、VCとEEC、ECとEEC、VECとDFEC、ECとPCとVC、ECとPCとFEC、ECとVCとFEC、ECとVCとVEC、ECとVCとEEC、ECとPCとEEC、ECとEECとFEC、PCとVCとFEC、ECとVCとDFEC、PCとVCとDFEC、ECとPCとVCとFEC、ECとPCとVCとDFEC等が好ましい。前記の組合せのうち、ECとVC、ECとPC、ECとFEC、PCとFEC、ECとPCとVC、ECとPCとFEC、ECとVCとFEC、PCとVCとFEC、ECとPCとVCとFEC等の組合せがより好ましく、ECとVC、ECとPC、ECとPCとVC、ECとVCとFEC、PCとVCとFEC、ECとVCとEEC、ECとPCとEEC、ECとEECとFEC、ECとPCとVCとFECの組み合わせが更に好ましく、ECとVC、ECとPC、ECとPCとVCの組み合わせが特に好ましい。
【0046】
鎖状エステルとしては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソプロピルカーボネート(MIPC)、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等の対称鎖状カーボネート、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、ピバリン酸プロピル等のピバリン酸エステル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。
鎖状エステルの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総体積に対して、60〜90体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60体積%以上であれば非水電解液の粘度を下げる効果が十分に得られ、90体積%以下であれば非水電解液の電気伝導度が十分に高まり、広い温度範囲での電気化学特性が向上するので上記範囲であることが好ましい。
【0047】
前記鎖状エステルの中でも、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、プロピオン酸メチル、酢酸メチル及び酢酸エチルから選ばれるメチル基を有する鎖状エステルが好ましく、特にメチル基を有する鎖状カーボネートが好ましい。
また、鎖状カーボネートを用いる場合には、2種以上を用いることが好ましい。さらに対称鎖状カーボネートと非対称鎖状カーボネートの両方が含まれるとより好ましく、対称鎖状カーボネートの含有量が非対称鎖状カーボネートより多く含まれると更に好ましい。
鎖状カーボネート中に対称鎖状カーボネートが占める体積の割合は、51体積%以上が好ましく、55体積%以上がより好ましい。上限としては、95体積%以下がより好ましく、85体積%以下であると更に好ましい。対称鎖状カーボネートにジメチルカーボネートが含まれると特に好ましい。また、非対称鎖状カーボネートはメチル基を有するとより好ましく、メチルエチルカーボネートが特に好ましい。
上記の場合に一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましい。
【0048】
環状カーボネートと鎖状エステルの割合は、広い温度範囲での電気化学特性向上の観点から、環状カーボネート:鎖状エステル(体積比)が10:90〜45:55が好ましく、15:85〜40:60がより好ましく、20:80〜35:65が更に好ましい。
【0049】
その他の非水溶媒であるラクトンとしては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アンゲリカラクトン等が挙げられ、エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等の鎖状エーテル等が挙げられ、アミドとしては、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、スルホンとしては、スルホラン等が好適に挙げられる。
【0050】
上記の非水溶媒は通常、適切な物性を達成するために、混合して使用される。その組合せは、例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとラクトンとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとエーテルとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルとの組み合わせ等が好適に挙げられる。
【0051】
一段と広い温度範囲での電気化学特性を向上させる目的で、非水電解液中にさらにその他の添加剤を加えることが好ましい。
その他の添加剤の具体例としては、リン酸エステル化合物、イソシアネート、S=O結合含有化合物、ニトリル、酸無水物、芳香族化合物、及び環状ホスファゼン化合物から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
リン酸エステル化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチルが挙げられ、中でも、リン酸トリメチルが好ましい。
イソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネー等のジイソシアネートが好適に挙げられ、中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
S=O結合含有化合物としては、1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン等のスルトン化合物、エチレンサルファイト、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオラン−2−オキシド(1,2−シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイトともいう)、5−ビニル−ヘキサヒドロ1,3,2−ベンゾジオキサチオール−2−オキシド等の環状サルファイト化合物、メタンスルホン酸2−プロピニル、メチレンメタンジスルホネート等のスルホン酸エステル化合物、ジビニルスルホン、1,2−ビス(ビニルスルホニル)エタン、ビス(2−ビニルスルホニルエチル)エーテル等のビニルスルホン化合物等が挙げられ、中でも、1,3−プロパンスルトン、エチレンサルファイト、2,4−ブタンスルトンが好ましい。
ニトリルとしては、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル等が挙げられ、中でも、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル等のジニトリルが好ましく、スクシノニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリルがより好ましく、アジポニトリル、ピメロニトリルが更に好ましい。
酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸等の鎖状のカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、3−スルホ−プロピオン酸無水物等の環状酸無水物が挙げられ、中でも、無水コハク酸等の環状酸無水物が好ましい。
芳香族化合物としては、シクロヘキシルベンゼン、フルオロシクロヘキシルベンゼン化合物(1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン、1−フルオロ−4−tert−ブチルベンゼン等の分枝アルキル基を有する芳香族化合物や、ビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ジフェニルエーテル、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、アニソール、2,4−ジフルオロアニソール、ターフェニルの部分水素化物(1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)等が挙げられる。
環状ホスファゼン化合物としては、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシヘプタフルオロシクロテトラホスファゼン等が挙げられる。
【0052】
上記その他の添加剤の含有量は、特に制限されないが、非水電解液中に0.001〜10質量%が好ましい。該含有量が10質量%以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され低温特性が低下するおそれが少なく、また0.001質量%以上であれば被膜の形成が十分であり、高温充電保存特性の改善効果が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、その上限は、9量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
【0053】
〔電解質塩〕
本発明に使用される電解質塩としては、下記のリチウム塩、オニウム塩が好適に挙げられる。
【0054】
(リチウム塩)
リチウム塩としては、LiPF6、LiPO22、Li2PO3F、LiBF4、LiClO4、FSO3Li等の無機リチウム塩、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiCF3SO3、LiC(SO2CF33、LiPF4(CF32、LiPF3(C253、LiPF3(CF33、LiPF3(iso−C373、LiPF5(iso−C37)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF22(SO22NLi、(CF23(SO22NLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を有するリチウム塩、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム、ジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム、ジフルオロビス[オキサレート−O,O’]リン酸リチウム、及びテトラフルオロ[オキサレート−O,O’]リン酸リチウム等のオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が好適に挙げられ、これらの一種又は二種以上を混合して使用することができる。
これらの中でも、LiPF6、LiPO22、Li2PO3F、LiBF4、FSO3Li、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2F)2、ジフルオロビス[オキサレート−O,O’]リン酸リチウム、及びテトラフルオロ[オキサレート−O,O’]リン酸リチウムから選ばれる少なくとも1種が好ましく、LiPF6、LiPO22、LiBF4及びLiN(SO2CF32、LiN(SO2F)2、及びジフルオロビス[オキサレート−O,O’]リン酸リチウム、テトラフルオロ[オキサレート−O,O’]リン酸リチウムから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
リチウム塩の濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.7M以上がより好ましく、1.1M以上が更に好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.6M以下が更に好ましい。
また、これらのリチウム塩の好適な組み合わせとしては、LiPF6を含み、更にLiPO22、LiBF4、LiN(SO2CF32、LiN(SO2F)2、ジフルオロビス[オキサレート−O,O’]リン酸リチウム、及びテトラフルオロ[オキサレート−O,O’]リン酸リチウムから選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が非水電解液中に含まれている場合が好ましい。
LiPF6以外のリチウム塩が非水溶媒中に占める割合は、0.001M以上であると、高温での電気化学特性の向上効果発揮されやすく、0.005M以下であると高温での電気化学特性の向上効果が低下する懸念が少ないので好ましい。好ましくは0.01M以上、特に好ましくは0.03M以上、最も好ましくは0.04M以上である。その上限は、好ましくは0.4M以下、特に好ましくは0.2M以下である。
【0055】
(オニウム塩)
また、オニウム塩としては、下記に示すオニウムカチオンとアニオンを組み合わせた各種塩が好適に挙げられる。
オニウムカチオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、ジエチルジメチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N,N−ジエチルピロリジニウムカチオン、スピロ−(N,N')−ビピロリジニウムカチオン、N,N'−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、N−エチル−N'−メチルイミダゾリニウムカチオン、N,N'−ジエチルイミダゾリニウムカチオン、N,N'−ジメチルイミダゾリウムカチオン、N−エチル−N'−メチルイミダゾリウムカチオン、N,N'−ジエチルイミダゾリウムカチオン等が好適に挙げられる。
アニオンの具体例としては、PF6アニオン、BF4アニオン、ClO4アニオン、AsF6アニオン、CF3SO3アニオン、N(CF3SO22アニオン、N(C25SO22アニオン、等が好適に挙げられる。
これらの電解質塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
〔非水電解液の製造〕
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩を添加し、さらに得られた非水電解液に対して、前記一般式(I)で表される化合物を添加することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒及び非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0057】
本発明の非水電解液は、下記の第1〜第4の蓄電デバイスに使用することができ、非水電解質として、液体状のものだけでなくゲル化されているものも使用し得る。更に本発明の非水電解液は固体高分子電解質用としても使用できる。中でも電解質塩にリチウム塩を使用する第1の蓄電デバイス用(即ち、リチウム電池用)又は第4の蓄電デバイス用(即ち、リチウムイオンキャパシタ用)として用いることが好ましく、リチウム電池用として用いることが更に好ましく、リチウム二次電池用として用いることが最も適している。
【0058】
〔第1の蓄電デバイス(リチウム電池)〕
本発明のリチウム電池は、リチウム一次電池及びリチウム二次電池を総称する。また、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。本発明のリチウム電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、及びニッケルから選ばれる少なくとも1種を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiMn24、LiNiO2、LiCo1-xNix2(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/32、LiNi1/2Mn3/24、LiCo0.98Mg0.022等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。また、LiCoO2とLiMn24、LiCoO2とLiNiO2、LiMn24とLiNiO2のように併用してもよい。
【0059】
また、過充電時の安全性やサイクル特性を向上したり、4.3V以上の充電電位での使用を可能にするために、リチウム複合金属酸化物の一部は他元素で置換してもよい。例えば、コバルト、マンガン、ニッケルの一部をSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cu、Bi、Mo、La等から選ばれる少なくとも1種の元素で置換したり、Oの一部をSやFで置換したり、又はこれらの他元素を含有する化合物を被覆することもできる。
これらの中では、LiCoO2、LiMn24、LiNiO2から選ばれる少なくとも1種のような満充電状態における正極の充電電位がLi基準で4.3V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物が好ましく、LiCo1-xx2(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/32、LiNi1/2Mn3/24、Li2MnO3とLiMO2(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体から選ばれる少なくとも1種のような4.4V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物がより好ましい。高充電電圧で動作するリチウム複合金属酸化物を使用すると、充電時における電解液との反応により特に広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができる。
特にMnを含む正極の場合に正極からのMnイオンの溶出に伴い電池の抵抗が増加しやすい傾向にあるため、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすい傾向にあるが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができるので好ましい。
【0060】
更に、正極活物質として、リチウム含有オリビン型リン酸塩を用いることもできる。特に鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンから選ばれる少なくとも1種を含むリチウム含有オリビン型リン酸塩が好ましい。その具体例としては、LiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、及びLiMnPO4等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W及びZr等から選ばれる1種以上の元素で置換したり、又はこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePO4又はLiMnPO4が好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
【0061】
また、リチウム一次電池用正極としては、CuO、Cu2O、Ag2O、Ag2CrO4、CuS、CuSO4、TiO2、TiS2、SiO2、SnO、V25、V612、VOx、Nb25、Bi23、Bi2Pb25,Sb23、CrO3、Cr23、MoO3、WO3、SeO2、MnO2、Mn23、Fe23、FeO、Fe34、Ni23、NiO、CoO3、CoO等の、一種又は二種以上の金属元素の酸化物又はカルコゲン化合物、SO2、SOCl2等の硫黄化合物、一般式(CFxnで表されるフッ化炭素(フッ化黒鉛)等が挙げられる。中でも、MnO2、V25、及びフッ化黒鉛から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0062】
正極の導電剤は、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。また、グラファイトとカーボンブラックを適宜混合して用いてもよい。導電剤の正極合剤への添加量は、1〜10質量%が好ましく、特に2〜5質量%が好ましい。
【0063】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電剤、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤と混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製のラス板等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm3以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは2g/cm3以上であり、より好ましくは、3g/cm3以上であり、更に好ましくは、3.6g/cm3以上である。なお、上限としては、4g/cm3以下が好ましい。
【0064】
リチウム二次電池用負極活物質としては、リチウム金属やリチウム合金、及びリチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料〔易黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛等〕、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物、Li4Ti512等のチタン酸リチウム化合物等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することが更に好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。
複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合或いは結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、例えば鱗片状天然黒鉛粒子に圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、球形化処理を施した黒鉛粒子を用いることにより、負極の集電体を除く部分の密度を1.5g/cm3以上の密度に加圧成形したときの負極シートのX線回折測定から得られる黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比I(110)/I(004)が0.01以上となると一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましく、0.05以上となることがより好ましく、0.1以上となることが更に好ましい。また、過度に処理し過ぎて結晶性が低下し電池の放電容量が低下する場合があるので、上限は0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
また、高結晶性の炭素材料(コア材)はコア材よりも低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、広い温度範囲での電気化学特性が一段と良好となるので好ましい。被覆の炭素材料の結晶性は、TEMにより確認することができる。
高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応し、界面抵抗の増加によって低温もしくは高温における電気化学特性を低下させる傾向があるが、本発明に係るリチウム二次電池では広い温度範囲での電気化学特性が良好となる。
【0065】
また、負極活物質としてのリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物としては、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、Ba等の金属元素を少なくとも1種含有する化合物が挙げられる。これらの金属化合物は単体、合金、酸化物、窒化物、硫化物、硼化物、リチウムとの合金等、何れの形態で用いてもよいが、単体、合金、酸化物、リチウムとの合金の何れかが高容量化できるので好ましい。中でも、Si、Ge及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものが好ましく、Si及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含むものが電池を高容量化できるので特に好ましい。
【0066】
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
負極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.1g/cm3以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは1.5g/cm3以上、より好ましくは1.7g/cm3以上である。なお、上限としては、2g/cm3以下が好ましい。
【0067】
また、リチウム一次電池用の負極活物質としては、リチウム金属又はリチウム合金が挙げられる。
【0068】
リチウム電池の構造には特に限定はなく、単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、円筒型電池、角型電池、ラミネート電池等を適用できる。
電池用セパレータとしては、特に制限はされないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層又は積層の微多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
【0069】
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上、特に4.3V以上の場合にも広い温度範囲での電気化学特性に優れ、更に、4.4V以上においても特性は良好である。放電終止電圧は、通常2.8V以上、更には2.5V以上とすることができるが、本願発明におけるリチウム二次電池は、2.0V以上とすることができる。電流値については特に限定されないが、通常0.1〜30Cの範囲で使用される。また、本発明におけるリチウム電池は、−40〜100℃、好ましくは−10〜80℃で充放電することができる。
【0070】
本発明においては、リチウム電池の内圧上昇の対策として、電池蓋に安全弁を設けたり、電池缶やガスケット等の部材に切り込みを入れる方法も採用することができる。また、過充電防止の安全対策として、電池の内圧を感知して電流を遮断する電流遮断機構を電池蓋に設けることができる。
【0071】
〔第2の蓄電デバイス(電気二重層キャパシタ)〕
電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。本発明の一例は、電気二重層キャパシタである。この蓄電デバイスに用いられる最も典型的な電極活物質は、活性炭である。二重層容量は概ね表面積に比例して増加する。
【0072】
〔第3の蓄電デバイス〕
電極のドープ/脱ドープ反応を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。この蓄電デバイスに用いられる電極活物質として、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化銅等の金属酸化物や、ポリアセン、ポリチオフェン誘導体等のπ共役高分子が挙げられる。これらの電極活物質を用いたキャパシタは、電極のドープ/脱ドープ反応にともなうエネルギー貯蔵が可能である。
【0073】
〔第4の蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ)〕
負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気二重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF6等のリチウム塩が含まれる。
【実施例】
【0074】
実施例1〜11、比較例1〜2
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
LiCoO294質量%、アセチレンブラック(導電剤)3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cm3であった。また、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質)95質量%を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.5g/cm3であった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表1に記載の組成(実施例1〜5、8〜11の化合物は2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート;化合物B1、実施例6の化合物はビス(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル) オギザレート;化合物A1、実施例7の化合物は2,5−ジオキソピロリジン−1−イル (2−(メタンスルホニル)オキシ)プロパノエート;化合物C1)の非水電解液を加えて、2032型コイン電池を作製した。
【0075】
〔高温充電保存後の低温特性の評価〕
(i)初期の放電容量
上記の方法で作製したコイン電池を用いて、25℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.2Vまで3時間充電し、0℃に恒温槽の温度を下げ、1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電して、初期の0℃の放電容量を求めた。
(ii)高温充電保存試験
次に、このコイン電池を25℃の恒温槽中、0.2Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.2Vまで7時間充電し、85℃の高温槽に入れ、1日間保存した。その後、25℃の恒温槽に入れ、一旦1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電した。
(iii)高温充電保存後の放電容量
更にその後、初期の放電容量の測定と同様にして、高温充電保存後(前記(ii)のとおり、満充電後、85℃の高温で保存した後)の0℃の放電容量を求めた。
(iv)高温充電保存後の低温特性
高温充電保存後の低温特性を下記の0℃放電容量の維持率より求めた。
高温充電保存後の0℃放電容量維持率(%)=(高温充電保存後の0℃の放電容量/初期の0℃の放電容量)×100
また、電池の作製条件及び電池特性を表1及び表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
実施例12、及び比較例3
実施例3、及び比較例1で用いた負極活物質に変えて、ケイ素(単体)(負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。ケイ素(単体)80質量%、アセチレンブラック(導電剤)15質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、負極シートを作製したことの他は、実施例3、及び比較例1と同様にコイン電池を作製し、電池評価を行った。結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
実施例13、及び比較例4
実施例3、及び比較例1で用いた正極活物質に変えて、非晶質炭素で被覆されたLiFePO4(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。非晶質炭素で被覆されたLiFePO490質量%、アセチレンブラック(導電剤)5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、正極シートを作製したこと、電池評価の際の充電終止電圧を3.6V、放電終止電圧を2.0Vとしたことの他は、実施例3、及び比較例1と同様にコイン電池を作製し、電池評価を行った。結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
上記実施例1〜11のリチウム二次電池は何れも、本願発明の非水電解液において化合物を添加しない場合の比較例1、特許文献1に記載されているアクリル酸スクシンイミジルを添加した非水電解液である比較例2のリチウム二次電池に比べ、広い温度範囲での電気化学特性が顕著に向上している。以上より、本発明の効果は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、本願発明の特定の化合物を含有させた場合に特有の効果であることが判明した。
また、実施例12と比較例3の対比、実施例13と比較例4の対比から、負極にケイ素(単体)Siを用いた場合や、正極にリチウム含有オリビン型リン酸鉄塩(LiFePO4)を用いた場合にも同様な効果がみられる。従って、本発明の効果は、特定の正極や負極に依存した効果でないことは明らかである。
【0083】
更に、本発明の非水電解液は、リチウム一次電池の広い温度範囲での放電特性を改善する効果も有する。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の非水電解液を用いた蓄電デバイスは、広い温度範囲での電気化学特性に優れたリチウム二次電池等の蓄電デバイスとして有用である。
【国際調査報告】