(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013099797
(43)【国際公開日】20130704
【発行日】20150507
(54)【発明の名称】感光性印刷原版の現像方法及び現像装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/38 20060101AFI20150410BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20150410BHJP
   G03F 7/095 20060101ALI20150410BHJP
   G03F 7/30 20060101ALI20150410BHJP
【FI】
   !G03F7/38 511
   !G03F7/26 511
   !G03F7/095
   !G03F7/30 501
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
【出願番号】2012557320
(21)【国際出願番号】JP2012083241
(22)【国際出願日】20121221
(11)【特許番号】5305187
(45)【特許公報発行日】20131002
(31)【優先権主張番号】2011285909
(32)【優先日】20111227
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区堂島浜二丁目2番8号
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】本井 慶一
【住所又は居所】岡山県岡山市東区金岡東町三丁目3番1号 東洋紡株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】河野 通篤
【住所又は居所】岡山県岡山市東区金岡東町三丁目3番1号 東洋紡株式会社内
【テーマコード(参考)】
2H096
2H125
2H196
【Fターム(参考)】
2H096AA02
2H096BA01
2H096BA09
2H096EA02
2H096EA04
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2H125AM22P
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2H196AA02
2H196BA01
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2H196JA04
2H196KA04
2H196KA06
2H196KA23
2H196LA25
(57)【要約】
CTP方式の感光性印刷原版を多量に現像した場合であっても未露光部による汚れがブラシに付着又は蓄積しにくい現像方法及び現像装置を提供する。
少なくとも支持体、感光性樹脂層、感熱マスク層が順次積層されてなる露光済みの感光性印刷原版に水系現像液を供給して未露光部をブラシによって除去する工程を含む感光性印刷原版の現像方法において、前記工程の前に、感光性印刷原版の感熱マスク層の表面全体に流水を行き渡らせて感熱マスク層を皮膜状に除去する工程を含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体、感光性樹脂層、感熱マスク層が順次積層されてなる露光済みの感光性印刷原版に水系現像液を供給して未露光部をブラシによって除去する工程を含む感光性印刷原版の現像方法において、前記工程の前に、感光性印刷原版の感熱マスク層の表面全体に流水を行き渡らせて感熱マスク層を皮膜状に除去する工程を含むことを特徴とする感光性印刷原版の現像方法。
【請求項2】
感光性印刷原版の感熱マスク層を傾斜した状態で流水を行き渡らせることを特徴とする請求項1に記載の感光性印刷原版の現像方法。
【請求項3】
皮膜状に除去された感熱マスク層を含む流水をタンクに回収し、タンク内の水中で感熱マスク層を捕捉することを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性印刷原版の現像方法。
【請求項4】
濾過された流水を感光性印刷原版の感熱マスク層の除去に再び使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性印刷原版の現像方法。
【請求項5】
感熱マスク層の表面全体に流れる水量が7〜30l/分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性印刷原版の製造方法。
【請求項6】
流水による感熱マスク層の除去工程がブラシによる未露光部の除去工程と連続的にインライン式で行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光性印刷原版の製造方法。
【請求項7】
流水による感熱マスク層の除去工程がバッチ式で行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感光性印刷原版の製造方法。
【請求項8】
少なくとも支持体、感光性樹脂層、感熱マスク層が順次積層されてなる感光性印刷原版のための現像装置であって、感光性印刷原版に水系現像液を吹き付けて未露光部をブラシによって除去する現像ゾーンの前に、露光済みの感光性印刷原版の感熱マスク層の表面全体に流水を行き渡らせて感熱マスク層を除去するためのシャワーノズル、除去された感熱マスク層を含む流水を回収するためのタンク、タンク内の水中に設けられた回収液の濾過機構、及びタンク内の濾過された液をシャワーノズルに送出するためのポンプを含むプレ除去ゾーンを設けていることを特徴とする現像装置。
【請求項9】
感光性印刷原版がプレ除去ゾーンと現像ゾーンを連続的に移動するように作られていることを特徴とする請求項8に記載の現像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱マスク層を含むCTP方式の感光性印刷原版を多量に現像した場合であっても未露光部による汚れが現像ブラシに付着又は蓄積しにくい現像方法及び現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂を用いた印刷原版は、従来の印刷原版に比較して取扱性、生産コスト、及び印刷性に優れるため、近年、各種印刷分野で急速に普及している。感光性印刷原版を現像する方法としては、露光済みの版に現像液を供給して未露光部をブラシによって除去する方法が多く用いられている。
【0003】
この方法では、同一の現像液を用いて現像を繰り返すと、現像液中に分散した版構成成分がブラシに付着又は蓄積して現像性を低下させたり、版の表面に再付着して版面の品位を悪化させるなどの問題があった。
【0004】
かかる問題を解決するために、版またはブラシに複雑な動きを与えて感光性樹脂版をムラなく現像する方法(特許文献1参照)や、現像液の供給手段として定量ポンプまたは定流量弁を用いて現像液の使用量を削減する方法(特許文献2参照)などが提案されているが、これらの方法はブラシに付着又は蓄積される版構成成分の問題を根本的に解決できるものではなかった。特に、カーボンブラックを含む感熱マスク層を含むCTP方式の感光性印刷原版を多量に現像した場合には、この問題が顕著であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−133625号公報
【特許文献2】特開2003−241398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、CTP方式の感光性印刷原版を多量に現像した場合であっても未露光部による汚れがブラシに付着又は蓄積しにくい現像方法及び現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、版の未露光部をブラシで除去する工程の前に流水によって版の感熱マスク層を皮膜状に除去する工程を設けることによってブラシに汚れが蓄積しにくい現像方法が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の(1)〜(9)の構成を有するものである。
(1)少なくとも支持体、感光性樹脂層、感熱マスク層が順次積層されてなる露光済みの感光性印刷原版に水系現像液を供給して未露光部をブラシによって除去する工程を含む感光性印刷原版の現像方法において、前記工程の前に、感光性印刷原版の感熱マスク層の表面全体に流水を行き渡らせて感熱マスク層を皮膜状に除去する工程を含むことを特徴とする感光性印刷原版の現像方法。
(2)感光性印刷原版の感熱マスク層を傾斜した状態で流水を行き渡らせることを特徴とする(1)に記載の感光性印刷原版の現像方法。
(3)皮膜状に除去された感熱マスク層を含む流水をタンクに回収し、タンク内の水中で感熱マスク層を捕捉することを含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の感光性印刷原版の現像方法。
(4)濾過された流水を感光性印刷原版の感熱マスク層の除去に再び使用することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の感光性印刷原版の現像方法。
(5)感熱マスク層の表面全体に流れる水量が7〜30l/分であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の感光性印刷原版の製造方法。
(6)流水による感熱マスク層の除去工程がブラシによる未露光部の除去工程と連続的にインライン式で行われることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の感光性印刷原版の製造方法。
(7)流水による感熱マスク層の除去工程がバッチ式で行われることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の感光性印刷原版の製造方法。
(8)少なくとも支持体、感光性樹脂層、感熱マスク層が順次積層されてなる感光性印刷原版のための現像装置であって、感光性印刷原版に水系現像液を吹き付けて未露光部をブラシによって除去する現像ゾーンの前に、露光済みの感光性印刷原版の感熱マスク層の表面全体に流水を行き渡らせて感熱マスク層を除去するためのシャワーノズル、除去された感熱マスク層を含む流水を回収するためのタンク、タンク内の水中に設けられた回収液の濾過機構、及びタンク内の濾過された液をシャワーノズルに送出するためのポンプを含むプレ除去ゾーンを設けていることを特徴とする現像装置。
(9)感光性印刷原版がプレ除去ゾーンと現像ゾーンを連続的に移動するように作られていることを特徴とする(8)に記載の現像装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感光性印刷原版の現像方法及び現像装置は、露光済の版に現像液を供給して未露光部をブラシによって除去する前に流水によって感熱マスク層を除去する工程又はゾーンを設けているので、多量の版を現像してもブラシに未露光部の除去カスが蓄積しない効果を有する。特に、本発明の現像方法及び現像装置は、感熱マスク層にカーボンブラックを含むCTP方式の感光性印刷原版の現像時にその効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の現像方法及び現像装置に使用される感光性印刷原版の一例を概略的に示す。
【図2】図2は、本発明の現像方法及び現像装置の一例の説明図であり、(a)はインライン式除去、(b)はバッチ式除去を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず本発明で使用される感光性印刷原版について説明する。
【0012】
本発明の現像方法及び現像装置に使用される感光性印刷原版は、少なくとも支持体、感光性樹脂層、感熱マスク層が順次積層された構成を有し、具体的にはCTP方式で一般に用いられる図1に示されるものが挙げられる。
【0013】
支持体としては、可撓性であるが、寸法安定性に優れた材料が好ましく、例えばスチール、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属製支持体、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、またはポリカーボネートフィルムなどの熱可塑性樹脂製支持体を挙げることができる。これらの中でも、寸法安定性に優れ、充分に高い粘弾性を有するポリエチレンテレフタレートフイルムが特に好ましい。支持体の厚みは、機械的特性、形状安定化あるいは印刷版製版時の取り扱い性等から50〜350μm、好ましくは100〜250μmが望ましい。また、図1のように、支持体と感光性樹脂層との接着性を向上させるために、それらの間に接着層を設けることが好ましい。
【0014】
感光性樹脂層は、合成高分子化合物、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤の必須成分と、可塑剤、熱重合防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、香料、又は酸化防止剤などの任意の添加剤とから構成される。感光性樹脂層は水性現像液で現像可能であることが好ましい。水現像可能な合成高分子化合物としては、従来公知の可溶性合成高分子化合物を使用でき、例えばポリエーテルアミド(例えば特開昭55−79437号公報等)、ポリエーテルエステルアミド(例えば特開昭58−113537号公報等)、三級窒素含有ポリアミド(例えば特開昭50−76055公報等)、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド(例えば特開昭53−36555公報等)、アミド結合を1つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(例えば特開昭58−140737号公報等)、アミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物の付加重合体(例えば特開平4−97154号公報等)などが挙げられる。そのなかでも三級窒素原子含有ポリアミドおよびアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミドが好ましい。
【0015】
感光性樹脂層と感熱マスク層の間には、図1のように、感光性樹脂層の酸素による重合阻害を防止する保護層を設けることが好ましい。保護層は水性現像液で除去可能であれば特に制限されず、水に可溶性または不溶性のいずれのポリマーを使用して構成することができる。水に不溶性のポリマーでも物理的にブラシでこすることにより除去され現像可能であるが、現像時間短縮のためには水に可溶性のポリマーが好ましい。保護層を構成するこのようなポリマーとしては、例えば可溶性ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、アルキルセルロース、セルロース系ポリマー(特にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース)、セルロースアセテートブチレート、ポリブチラール、ブチルゴム、NBRゴム、アクリルゴム、スチレン―ブタジエンゴム、ラテックス、可溶性ポリエステルが挙げられる。これらのポリマーは、一種類の使用に限定されず、二種類以上のポリマーを組み合わせて使用することもできる。保護層としては、感熱マスク層よりも熱分解温度の高いものが好ましい。保護層の熱分解温度が感熱マスク層よりも低ければ、感熱マスク層のアブレーションの際に、保護層も熱分解されてしまうことがあるからである。
【0016】
感熱マスク層は、バインダー、赤外線レーザーを吸収し熱に変換する機能と紫外光を遮断する機能を有する材料から構成される。また、これら以外の任意成分として、顔料分散剤、フィラー、界面活性剤又は塗布助剤などを本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0017】
感熱マスク層は、化学線に関して2.0以上の光学濃度であることが好ましく、さらに好ましくは2.0〜3.0の光学濃度である。また、感熱マスク層の層厚は、0.5〜5.0μmが好ましく、1.0〜2.0μmがより好ましい。上記下限以上であれば、高い塗工技術を必要とせず、一定以上の光学濃度を得ることができる。また、上記上限以下であれば、感熱マスク層の蒸発に高いエネルギーを必要とせず、コスト的に有利である。
【0018】
上記バインダーとしては、水系であれば特に限定されないが、極性を持つ共重合ポリアミドが好ましく用いられる。使用されるポリアミドは、従来公知のカチオン性ポリアミド、ノニオン性ポリアミド、アニオン性ポリアミドから適宜選択すればよく、例えば、第三アミン基含有ポリアミド、第四アンモニウム塩基含有ポリアミド、エーテル基含有ポリアミド、スルホン酸基含有ポリアミドなどが挙げられる。
【0019】
上記赤外線吸収機能と紫外光遮断機能を有する材料としては、フタロシアニン、置換フタロシアニン誘導体、シアニン、メロシアニン染料、およびポリメチン染料などの染料や、カーボンブラック、グラファイト、酸化クロム、酸化鉄などの顔料が挙げられる。これらの中でも、光熱変換率および、経済性、取り扱い性の面からカーボンブラックが特に好ましい。
【0020】
上記赤外線吸収機能と紫外光遮断機能を有する材料は、前記光学濃度と層厚を達成できる濃度で適宜用いられるが、一般的には感熱マスク層の総重量に対して1〜60重量%、好ましくは10〜50重量%である。上記下限未満では光学濃度が2.0未満となり、赤外線吸収機能と紫外光遮断機能を示さなくなるおそれがある。また、上記上限を越えるとバインダーなどの他成分が不足して、皮膜形成性が低下するおそれがある。
【0021】
感熱マスク層上には、図1のように、剥離可能な可撓性の保護カバーフィルムを設けて印刷原版を保護することが好ましい。保護カバーフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムを挙げることができる。
【0022】
本発明で使用される感光性印刷原版を製造する方法としては、従来公知の方法を採用することができるが、例えば以下のようにして製造される。
まず、感熱マスク層の全成分を適当な溶媒に溶解させて溶液を作製するか、或いはカーボンブラック等の顔料を用いるときは、顔料以外の全成分を適当な溶媒に溶解させ、そこに顔料を分散させて分散液を作製する。次に、このような溶液又は分散液を感熱マスク層用支持体(例えばPETフィルム)上に塗布して、溶剤を蒸発させる。その後、保護層成分を上塗りし、一方の積層体を作成する。さらに、これとは別に支持体上に塗工により感光性樹脂層を形成し、他方の積層体を作成する。このようにして得られた二つの積層体を、圧力及び/又は加熱下に、感光性樹脂層が保護層に隣接するように積層する。なお、感熱マスク層用支持体は、印刷原版の完成後はその表面の保護カバーフィルムとして機能する。
【0023】
この印刷原版から印刷版を製造する方法としては、まず保護フィルムを感光性印刷版から除去する。その後、感熱マスク層をIRレーザにより画像様に照射して、感光性樹脂層上に画像マスクを形成する。好適なIRレーザの例としては、ND/YAGレーザ(1064nm)又はダイオードレーザ(例、830nm)を挙げることができる。コンピュータ製版技術に適当なレーザシステムは、市販されており、例えばダイオードレーザシステムCDI Spark(バルコグラフィックス社)を使用することができる。このレーザシステムは、印刷原版を保持する回転円筒ドラム、IRレーザの照射装置、及びレイアウトコンピュータを含み、画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザ装置に直接移される。
【0024】
画像情報を感熱マスク層に書き込んだ後、感光性印刷原版に画像マスクを介して活性光線を全面照射する。これは版をレーザシリンダに取り付けた状態で行うことも可能であるが、版をレーザ装置から除去し、慣用の平板な照射ユニットで照射する方が規格外の版サイズに対応可能な点で有利であり一般的である。活性光線としては、150〜500nm、特に300〜400nmの波長を有する紫外線を使用することができる。その光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、カーボンアーク灯、紫外線用蛍光灯等を使用することができる。その後、露光済みの版は、本発明の現像方法及び現像装置で現像され、印刷版が得られる。
【0025】
次に、本発明の感光性印刷原版の現像方法を現像装置とともに説明する。本発明の現像方法は、図2に示すように、従来の現像が行われる現像ゾーンの前に流水によって版の感熱マスク層を皮膜状に除去するプレ除去ゾーンを設けたことを特徴とする。
【0026】
現像ゾーンでは、露光済みの版はセッターと呼ばれる平面版に固定して移動され、従来公知の現像方法が適宜採用される。具体的には、例えば図2(a)に示すように、版に現像液を吹き付けるか又は現像槽内の現像液中に版を浸漬するなどして版に現像液を供給した後、未露光部を現像ブラシ7でこすって除去してレリーフ画像を得、一方除去された未硬化の感光性樹脂等を含む溶液は濾過されて現像タンク8中に行き、現像ポンプ9により再利用される。そして、硬化部が凸状となったレリーフは、乾燥され、必要に応じて後露光、紫外線照射されて印刷用刷版となる。
【0027】
現像液としては、本発明では水単独か水を主成分とする水系現像液が用いられる。水系現像液は、界面活性剤水溶液、無機や有機の酸や塩の水溶液、その他水に可溶な化合物の水溶液などであり、界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などを幅広く用いることができる。また、界面活性剤の水溶液に酸や塩、水に可溶な化合物、分散安定剤、消泡剤など各種の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0028】
現像時の温度は10〜50℃が好ましい。ブラシは、従来公知のものを採用することができ、例えば繊維が平板上に植え込まれたブラシや起毛状に織り込まれた織物を平板上に張り付けたものが挙げられる。ブラシの場合、材質はシュロ等の天然繊維、金属、ポリアミド、ポリエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル等、繊維状にできるものならいずれも好適に用いられる。ブラシの繊維径は10μmから1mm程度が好ましく、束状に植え込まれても、数本以内に独立して植え込まれていても良い。植え込み間隔は1〜20mm程度が好ましく、束状で植え込まれている場合、その束の直径は1〜10mm程度が好ましい。また、ブラシの毛の長さは2〜50mm程度が好ましい。
【0029】
プレ除去ゾーンは、現像ゾーンで版の未露光部をブラシによって除去する際にブラシに付着又は蓄積する感熱マスク層を現像ゾーンの前に予め除去するために設けられる。プレ除去ゾーンでは、版からの感熱マスク層の除去は、例えば図2(a)に示すようにシャワーノズル6から版の感熱マスク層の表面全体に流水を行き渡らせるシャワー方式で行なうことができる。シャワー方式は、水圧によって小さなノズル口より流水を流す方法であり、例えば(1)等間隔又は連続的にノズル口を設けた管のノズル口より流水を流す方法や(2)浴室に用いるような円形状ヘッドにノズル口を設けて流水を流す方法を採用することができる。それ以外に、霧状にして噴霧するスプレー方式で流水を流す方法や連続又は等間隔のスリット状ノズル口より流水を流す方法や細管を多数並べて流水を流す方法など様々な方式を採用することができる。これらの方法では、感熱マスク層は版から皮膜状に除去されることが必要である。噴射力の強い水で感熱マスク層を細かく分断して除去すると、処理した流水からの感熱マスク層の回収が困難になる可能性がある。
【0030】
感熱マスク層の表面に流水を行き渡らせるとき、感光性印刷原版の感熱マスク層を傾斜した状態で行なうことが好ましい。特に版の長手方向または進行方向の先端側を下方に傾斜させて高い側から水を流すと感熱マスク層の皮膜状の除去が容易である。感熱マスク層の表面全体に流れる水の量は7〜30l/分、さらには12〜20l/分であることが好ましい。水量が7l/分未満では、水の勢いが弱すぎて感熱マスク層が完全に除去できない可能性があり、30l/分を越えると、水の勢いが強すぎて感熱マスク層が細かく分断される可能性がある。流水時間は3秒以上であることが好ましい。
【0031】
皮膜状に除去された感熱マスク層を含む流水は、図2(a)に示すように、タンク4に回収され、タンク4内の水中で感熱マスク層を捕捉することによって濾過され、再びポンプ5でシャワーノズル6から出される流水として利用される。感熱マスク層の捕捉はフィルター、不織布、織物等の従来公知の手段で行なうことができるが、例えば図2(a)に示すように、不織布2とその形態を保持するバスケット3を組み合わせて捕捉することができる。この場合、除去された感熱マスク層は不織布2で捕捉されて適宜廃棄され、一方濾過された水はバスケットの隙間を通ってタンク4の下方に移動され、再利用される。除去された感熱マスク層は皮膜状であるので、不織布や織物などでも捕捉が十分に可能である。また、感熱マスク層の除去はタンク内の水中で行なうことが好ましい。感熱マスク層の分断を回避するためである。
【0032】
流水による感熱マスク層の除去工程は、図2(a)のように、ブラシによる未露光部の除去工程と連続的にインライン式で行なわれることができる。この場合、プレ除去ゾーンと現像ゾーンを設けた現像装置において感光性印刷原版が両ゾーンを連続的に移動できるように作られる。あるいは、流水による感熱マスク層の除去工程は、図2(b)のように、バッチ式で行なわれることもできる。
【実施例】
【0033】
本発明の現像方法及び現像装置の優れた効果を以下の実施例によって示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例で測定した評価項目は以下の方法で評価した。
【0034】
(1)感熱マスク層の除去率
流水処理後に版表面に残る感熱マスク層の皮膜を目視で確認し、感熱マスク層の流水前の表面積に対する流水後の除去された面積の割合(%)を表した。除去率が100%である場合、感熱マスク層の皮膜が完全に除去されたことを表す。
【0035】
(2)濾過性
感熱マスク層の除去液40lで版を5m除去し、この液を不織布で濾過した。その濾液を30分間静置した後に、濾液に沈降する感熱マスク層成分の有無を目視で評価し、以下の基準で示した。
○:沈降物なし
×:沈降物あり
【0036】
(3)汚染度
現像液40lで版を5m現像した後に、現像ブラシに堆積する樹脂量を評価し、以下の基準で示した。
○:200g未満
△:200g以上〜400g未満
×:400g以上
【0037】
実施例1
CTP方式の感光性印刷原版(銘柄QM95ET、表1参照)の感熱マスク層への画像描画、UV光硬化を終えた版A−2サイズ(420mm×594mm、0.25m)を、長辺が進行方向になるように、セッター版に貼り付けて自動現像機TAP430(東洋紡製)にメモリ24の搬送速度で処理した。プレ除去ゾーンのシャワータンクは40lを使用した。ポンプはマグネットポンプSL−7SN型(エレポン化工機)を用いて、送液ライン途中の水流コックの開閉度で水量を調整した。なお、シャワー設備は、塩ビ製の水道管(VP13=内径13mm、外径18mm)に横一列に20mm間隔で40個のφ2.5mmの丸穴ノズル口を設けて作成し、自動現像機に設置した。この塩ビ製の管のノズルを版の最上端から5cmの距離に設置し、原版に水束をぶつけ、水束が版面にぶつかったところですぐに水束が版面に拡がり重なり合うように(版に濡れない部分が筋状に出来てしまわないように)、シャワーを当てる向きを調整した。具体的には、図2(a)に記載のインライン式で行なった。実施例1の詳細な実験条件及び評価結果を表2に示す。実施例1では、流水によって感熱マスク層が皮膜状に完全に流され、タンク水中に設けられた不織布に良好に回収された。
【0038】
実施例2
表2に示す条件に変化させて実施例1と同様に実験した。その評価結果を表2に示す。実施例2では、実施例1より流水量を少なくしたが、感熱マスク層への流水が弱く、若干除去のこりが生じたものの、感熱マスク層は皮膜状に除去された。汚染度は160gであり、満足のいくレベルであった。
【0039】
実施例3
表2に示す条件に変化させて実施例1と同様に実験した。その評価結果を表2に示す。実施例3では、実施例1より流水量を増加させたが、短時間で感熱マスク層が皮膜状に完全に除去可能であった。汚染度は150gであり、満足のいくものであった。
【0040】
実施例4
表2に示す条件に変化させて実施例1と同様に実験した。その評価結果を表2に示す。実施例4では、印刷原版は銘柄QF95JC(表1参照)に変更した。若干除去のこりが生じたが、感熱マスク層は皮膜状に除去された。汚染度は160gであり、満足のいくレベルであった。
【0041】
実施例5
表2に示す条件に変化させて実施例1と同様に実験した。その評価結果を表2に示す。実施例5では、実施例4をバッチ式に変更した。若干除去のこりが生じたが、感熱マスク層は皮膜状に除去された。汚染度は160gであり、満足のいくレベルであった。
【0042】
実施例6
表2に示す条件に変化させて実施例1と同様に実験した。その評価結果を表2に示す。実施例6では、実施例5の銘柄をQM95KR(表1参照)に変更した。若干除去のこりが生じたが、感熱マスク層は皮膜状に除去された。汚染度は140gであり、満足のいく結果であった。
【0043】
実施例7
表2に示す条件に変化させて実施例1と同様に実験した。その評価結果を表2に示す。実施例7では、実施例5の銘柄をQM95ET(表1参照)に変更した。若干除去のこりが生じたが、感熱マスク層は皮膜状に除去された。汚染度は160gであり、満足のいく結果であった。
【0044】
比較例1
表2に示す条件に変化させて実施例1と同様に実験した。その評価結果を表2に示す。比較例1では、実施例1より流水量を多くしたが、水圧で水跳ねが生じて流水が弱く、さらには感熱マスク層皮膜が水圧で細かく分散し、皮膜状に除去できなかった。その結果、濾過で分散物を捕捉できなかった。汚染度は250gであり、満足のいくものではなかった。
【0045】
比較例2
表2に示す条件に変化させて実施例1と同様に実験した。その評価結果を表2に示す。比較例2では、実施例1より流水量を少なくしたが、感熱マスク層に水が行き渡らず、感熱マスク層の除去が十分でなかった。汚染度450gであり、満足のいくものではなかった。
【0046】
比較例3
表2に示す条件に変化させて実施例1と同様に実験した。その評価結果を表2に示す。比較例3では、実施例4より流水量を少なくしたが、シャワー時間を長くしても感熱マスク層の除去が十分でなく、皮膜状に除去できなかった。汚染度は500gであり、満足のいくものではなかった。
【0047】
比較例4
表2に示す条件に変化させて実施例1と同様に実験した。その評価結果を表2に示す。比較例4では、実施例4で感熱マスク層が非水溶性である銘柄DWF95DTN(表1参照)に変更したが、感熱マスク層の除去ができず、汚染度は450gであった。
【0048】
参考例1
表2に示す条件に変化させて実施例1と同様に実験した。その評価結果を表2に示す。参考例1では、実施例1のフィルター位置を水上に変更したが、上から落ちてくる流水の水圧により、不織布上に捕捉された感熱マスク層皮膜が、細かくつぶされ、濾過液中に混入した。その結果、濾過で分散物を捕捉できなかった。汚染度は300gであり、満足のいくものではなかった。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の現像方法及び現像装置は、CTP方式の感光性印刷原版を多量に現像した場合であっても未露光部による汚れがブラシに付着又は蓄積しにくいので極めて有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 印刷原版
2 不織布
3 バスケット
4 タンク
5 ポンプ
6 シャワーノズル
7 現像ブラシ
8 現像タンク
9 現像ポンプ
【図1】
【図2】
【国際調査報告】