(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013099869
(43)【国際公開日】20130704
【発行日】20150507
(54)【発明の名称】保護膜形成層付ダイシングシートおよびチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20150410BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20150410BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20150410BHJP
【FI】
   !H01L21/78 M
   !C09J7/02 Z
   !C09J201/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
【出願番号】2013551704
(21)【国際出願番号】JP2012083478
(22)【国際出願日】20121225
(11)【特許番号】5544052
(45)【特許公報発行日】20140709
(31)【優先権主張番号】2011283430
(32)【優先日】20111226
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
【住所又は居所】東京都板橋区本町23番23号
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】篠田 智則
【住所又は居所】東京都板橋区本町23−23 リンテック株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】高野 健
【住所又は居所】東京都板橋区本町23−23 リンテック株式会社内
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
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(57)【要約】
【課題】 均一性が高く、印字精度に優れる保護膜を有する半導体チップを簡便に製造可能であり、保護膜と基材フィルムの間の剥離を容易に行うことができ、かつダイシング時のチップの固定能力に優れた保護膜形成層付ダイシングシートを提供すること。
【解決手段】 本発明に係る保護膜形成層付ダイシングシートは、基材フィルムと粘着剤層とからなる粘着シートの粘着剤層上に、剥離力調整層を介して保護膜形成層を有し、
粘着シートの内周部に、剥離力調整層と保護膜形成層との積層体を有し、
粘着シートの外周部に粘着剤層が露出しており、剥離力調整層と、保護膜形成層を硬化した保護膜との間の剥離力が0.05〜5N/25mmであることを特徴としている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと粘着剤層とからなる粘着シートの粘着剤層上に、剥離力調整層を介して保護膜形成層を有し、
粘着シートの内周部に、剥離力調整層と保護膜形成層との積層体を有し、
粘着シートの外周部に粘着剤層が露出しており、剥離力調整層と、保護膜形成層を硬化した保護膜との間の剥離力が0.05〜5N/25mmである保護膜形成層付ダイシングシート。
【請求項2】
130℃で2時間加熱時における剥離力調整層の熱収縮率が−5〜+5%である請求項1記載の保護膜形成層付ダイシングシート。
【請求項3】
130℃で2時間加熱時における基材フィルムの熱収縮率が−5〜+5%である請求項1または2に記載の保護膜形成層付ダイシングシート。
【請求項4】
粘着シートと剥離力調整層との積層体の、波長532nmおよび1064nmにおける全光線透過率が70%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の保護膜形成層付ダイシングシート。
【請求項5】
保護膜形成層がバインダーポリマー成分および硬化性成分を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の保護膜形成層付ダイシングシート。
【請求項6】
保護膜形成層が着色剤を含有し、
波長300〜1200nmにおける保護膜形成層の最大透過率が20%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の保護膜形成層付ダイシングシート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の保護膜形成層付ダイシングシートの保護膜形成層を、ワークに貼付し、以下の工程(1)、(2)、(3)をこの順に行うチップの製造方法:
工程(1):保護膜形成層を硬化し保護膜を得る、
工程(2):ワークと、保護膜形成層または保護膜とをダイシング、
工程(3):保護膜形成層または保護膜と、剥離力調整層とを剥離。
【請求項8】
前記工程(1)の後に何れかの工程において、下記工程(4)を行う請求項7に記載のチップの製造方法:
工程(4):保護膜にレーザー印字。
【請求項9】
前記工程(2)において、剥離力調整層をフルカットする請求項7または8に記載のチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ裏面に保護膜を形成でき、かつチップの製造効率の向上が可能な保護膜形成層付ダイシングシートに関する。また、本発明は、保護膜形成層付ダイシングシートを用いたチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面上にバンプなどの電極を有する半導体チップ(以下、単に「チップ」ともいう。)が用いられ、該電極が基板と接合される。このため、チップの回路面とは反対側の面(チップ裏面)は剥き出しとなることがある。
【0003】
この剥き出しとなったチップ裏面は、有機膜により保護されることがある。従来、この有機膜からなる保護膜を有するチップは、液状の樹脂をスピンコート法によりウエハ裏面に塗布し、乾燥し、硬化してウエハとともに保護膜を切断して得られる。しかしながら、このようにして形成される保護膜の厚み精度は充分でないため、製品の歩留まりが低下することがあった。
【0004】
上記問題を解決するため、剥離シートと、該剥離シート上に形成された、エネルギー線硬化性成分とバインダーポリマー成分とからなる保護膜形成層を有するチップ保護用フィルムが開示されている(特許文献1)。
【0005】
半導体チップが薄型化・高密度化しつつある現在においては、厳しい温度条件下に曝された場合であっても、保護膜付チップを実装した半導体装置には、さらに高い信頼性を有することが要求されている。
【0006】
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載のチップ用保護フィルムは、保護膜形成層を硬化する際に収縮し、半導体ウエハが反るという問題が発生するおそれがあった。特に、極薄の半導体ウエハでは上記問題が顕著である。半導体ウエハが反ると、ウエハが破損したり、保護膜へのマーキング(印字)精度が低下するおそれがある。また、特許文献1に記載のチップ用保護フィルムでは、保護膜付チップを製造する際に、ダイシングシートに保護膜付ウエハを貼付し、ウエハをダイシングする必要があり、製造工程が複雑であった。
【0007】
そこで、予めウエハと同形状に切り抜いた保護膜形成層を、基材フィルムと粘着剤層からなるダイシングシートの粘着剤層上に設けた構成とすれば、シートの外周部をリングフレームに貼付し、固定することができるためにウエハの反りを防止することができる。また、このような固定された状態でダイシングを行うことが可能であるため、保護膜形成層の硬化の後、ダイシングシートを別途貼付してダイシングを行う必要がなく製造工程を簡略化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−138026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の構成の保護膜形成層付ダイシングシートでは、粘着剤層と保護膜形成層が保護膜形成層の加熱硬化工程において、融着してしまい、ダイシングによりウエハを個片化した後、保護膜と粘着剤層の界面を剥離できなくなるおそれがあった。また、粘着剤層を設けずに、基材フィルムに直接に保護膜形成層を設けた場合にも、基材フィルムが密着してしまい、保護膜の剥離が困難となったり、あるいは保護膜やチップが破壊したりするおそれがある。また、逆に保護膜と基材フィルムの間の密着性が低すぎた場合に、ダイシング工程において保護膜およびウエハの固定が十分でなく、ダイシングブレードからかかる力によって保護膜付チップが移動してしまうおそれがあった。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、均一性が高く、印字精度に優れる保護膜を有する半導体チップを簡便に製造可能であり、保護膜と基材フィルムの間の剥離を容易に行うことができ、かつダイシング時のチップの固定能力に優れた保護膜形成層付ダイシングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の要旨を含む。
(1)基材フィルムと粘着剤層とからなる粘着シートの粘着剤層上に、剥離力調整層を介して保護膜形成層を有し、
粘着シートの内周部に、剥離力調整層と保護膜形成層との積層体を有し、
粘着シートの外周部に粘着剤層が露出しており、剥離力調整層と、保護膜形成層を硬化した保護膜との間の剥離力が0.05〜5N/25mmである保護膜形成層付ダイシングシート。
【0012】
(2)130℃で2時間加熱時における剥離力調整層の熱収縮率が−5〜+5%である(1)記載の保護膜形成層付ダイシングシート。
【0013】
(3)130℃で2時間加熱時における基材フィルムの熱収縮率が−5〜+5%である(1)または(2)に記載の保護膜形成層付ダイシングシート。
【0014】
(4)粘着シートと剥離力調整層との積層体の、波長532nmおよび1064nmにおける全光線透過率が70%以上である(1)〜(3)のいずれかに記載の保護膜形成層付ダイシングシート。
【0015】
(5)保護膜形成層がバインダーポリマー成分および硬化性成分を含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の保護膜形成層付ダイシングシート。
【0016】
(6)保護膜形成層が着色剤を含有し、
波長300〜1200nmにおける保護膜形成層の最大透過率が20%以下である(1)〜(5)のいずれかに記載の保護膜形成層付ダイシングシート。
【0017】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の保護膜形成層付ダイシングシートの保護膜形成層を、ワークに貼付し、以下の工程(1)、(2)、(3)をこの順に行うチップの製造方法:
工程(1):保護膜形成層を硬化し保護膜を得る、
工程(2):ワークと、保護膜形成層または保護膜とをダイシング、
工程(3):保護膜形成層または保護膜と、剥離力調整層とを剥離。
【0018】
(8)前記工程(1)の後に何れかの工程において、下記工程(4)を行う(7)に記載のチップの製造方法:
工程(4):保護膜にレーザー印字。
【0019】
(9)前記工程(2)において、剥離力調整層をフルカットする(8)または(9)に記載のチップの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
半導体チップ裏面に保護膜を形成する際に、本発明に係る保護膜形成層付ダイシングシートを用いることで、保護膜と基材フィルムの間の剥離を容易に行うことができ、かつダイシング時のチップの移動が抑制され、半導体チップ裏面に均一性が高く、印字精度に優れる保護膜を簡便に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る保護膜形成層付ダイシングシートの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について、その最良の形態も含めてさらに具体的に説明する。図1に示すように、本発明に係る保護膜形成層付ダイシングシート10は、基材フィルム1と粘着剤層2とからなる粘着シート3の粘着剤層2上に、剥離力調整層4を介して保護膜形成層5を有し、粘着シート3の内周部に、剥離力調整層4と保護膜形成層5との積層体を有し、粘着シート3の外周部に粘着剤層2が露出している。つまり、粘着シート3よりも小径の剥離力調整層4と保護膜形成層5との積層体が、円形の粘着シート3の粘着剤層2上に同心円状に積層されている。露出している外周部の粘着剤層は、図示したように、リングフレーム6の固定に用いられる。
【0023】
(基材フィルム1)
本発明における基材フィルム1は特に限定はされないが、具体的には、好ましくは融点が130℃を超え、もしくは融点を有さないことが好ましい。また、130℃で2時間加熱時における基材フィルムの熱収縮率は好ましくは−5〜+5%である。基材フィルムの融点が130℃以下であったり、熱収縮率が上記範囲外であると、保護膜形成層の硬化時に基材フィルムが溶融あるいは収縮し、基材フィルムの形状を保つことが困難になるおそれがある。また、基材フィルムが半導体チップ製造工程中の周辺の装置と融着してしまうことがある。さらにまた、基材フィルムの溶融、収縮に起因した保護膜形成層の変形により、保護膜への印字精度が低下することがある。また、基材フィルムの変形により、粘着シートの厚み精度が低下し、ダイシング適性が損なわれることがある。さらにダイシング後では、粘着シートの縦方向あるいは横方向に変形が発生すると、チップの整列性が低下し、ピックアップ適性が損なわれることがある。なお、融点を有さないとは、融点が樹脂の燃焼温度よりも高いことを指す。
【0024】
また、基材フィルムのMD方向(フィルムを長尺で製膜した場合の、フィルムを搬送する方向と並行する方向)、およびCD方向(フィルムの同一面上においてMD方向と直交する方向)のいずれにおいても、引っ張り測定での破断伸度が100%以上であり、かつ基材フィルムの25%応力は100MPa以下であることが好ましい。基材フィルムがこのような範囲にあることで、ダイシング時に剥離力調整層を完全に切断した場合、ダイシングシートは良好なエキスパンド適性を示す。
【0025】
基材フィルムの融点は、140℃以上もしくは融点を有さないことが好ましく、融点が200℃以上もしくは融点を有さないことがより好ましい。また、130℃で2時間加熱時における基材フィルムの熱収縮率は、−4〜+4%であることが好ましい。基材フィルムの融点や熱収縮率を上記範囲とすることで、基材フィルムは耐熱性に優れ、上述の保護膜形成層を硬化したときの基材フィルムの形状保持性が良好に保たれる。なお、130℃で2時間加熱時における基材フィルムの熱収縮率は、130℃の環境下に基材フィルムを投入する前後の基材フィルムの面積から下記式により求められる。
【0026】
熱収縮率(%)={(投入前の基材フィルムの面積)−(投入後の基材フィルムの面積)}/投入前の基材フィルムの面積×100
【0027】
また、基材フィルムの25%応力は、基材フィルムを25%伸長した際の力をフィルムの断面積で除することで得られる。
【0028】
また、基材フィルムのMD方向およびCD方向の破断伸度は120%以上が好ましく、250%以上であることがより好ましい。基材フィルムの25%応力は80MPa以下であることが好ましく、70Ma以下であることがより好ましい。基材フィルムの破断伸度と25%応力を上記範囲とすることで、ダイシングシートはさらに良好なエキスパンド性を示すと共に、ピックアップ時に隣接するチップ同士が接触することによるピックアップ不良やチップの破損を抑制できる。
【0029】
基材フィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、アクリル樹脂フィルム、耐熱ポリウレタンフィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルムや放射線・放電等による改質フィルムも用いることができる。基材フィルムは、上記物性を満たす限り、上記フィルムの積層体であってもよい。
【0030】
基材フィルムの厚さは特に限定されず、好ましくは30〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。基材フィルムの厚みを上記範囲とすることで、ダイシングによる切り込み後も十分なエキスパンド性を有する。また、保護膜形成層付ダイシングシートが十分な可とう性を有するため、ワーク(例えば半導体ウエハ等)に対して良好な貼付性を示す。
【0031】
(粘着剤層2)
本発明における粘着剤層は、従来より公知の種々の粘着剤により形成され得る。このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤が用いられる。また、エネルギー線硬化型や加熱発泡型、水膨潤型の粘着剤も用いることができる。エネルギー線硬化(紫外線硬化、電子線硬化)型粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。
【0032】
粘着剤層は、後述するチップを製造する際に、その外周部においてリングフレームに貼付される。粘着剤層の外周部をリングフレームに貼付して、保護膜形成層の硬化工程を行うと、リングフレームを粘着剤層から外す際に、リングフレームに糊残りが発生することがある。また、保護膜形成層の硬化工程において、粘着剤層は高温に曝されて軟化し、糊残りが発生しやすくなる。そのため、上記の粘着剤の中でも、リングフレームへの糊残りの防止及び粘着剤層への耐熱性の付与という観点から、アクリル系、シリコーン系の粘着剤が好ましい。
【0033】
また、リングフレームに貼付される部分(粘着シートの外周部)の粘着剤層の粘着力(貼付した後、130℃で2時間加熱を経た後におけるSUS板への粘着力)は、好ましくは15N/25mm以下、より好ましくは10N/25mm以下、特に好ましくは5N/25mm以下である。粘着シートの外周部における粘着剤層の粘着力を上記範囲とすることで、リングフレームへの貼付性に優れ、リングフレームへの糊残りを防止できる。
【0034】
粘着剤層の厚さは特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは2〜80μm、特に好ましくは3〜50μmである。
【0035】
基材フィルム表面に粘着剤層を設ける方法は、剥離シート上に所定の膜厚になるように塗布し形成した粘着剤層を基材フィルム表面に転写しても構わないし、基材フィルム表面に粘着剤層を構成する粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成しても構わない。剥離シートとしては、後述する保護膜形成層上に設けるものと同じものを用いることができる。このようにして、基材フィルム上に粘着剤層を設けることで、粘着シート3が得られる。
【0036】
(剥離力調整層4)
本発明における剥離力調整層4は、保護膜形成層付ダイシングシートからの保護膜付きチップの剥離を容易とするために、粘着剤層と保護膜形成層の間に介在させられる。剥離力調整層と保護膜の間の剥離力は、0.05〜5N/25mmである。剥離力調整層と保護膜の間の剥離力は、以下のように測定される。まず、保護膜形成層付ダイシングシートを25mmの幅に裁断し、保護膜形成層をシリコンミラーウエハに貼付した後、硬化させる。硬化は、保護膜形成層が熱硬化性であれば、加熱により硬化し、その条件は130℃で2時間程度である。また、保護膜形成層がエネルギー線硬化性であれば、含有するエネルギー線重合性基が実質的に存在しなくなるまでエネルギー線を適当な条件で照射して硬化させる。次いで、基材フィルム、粘着剤層、および剥離力調整層の積層体を、保護膜から23℃60%相対湿度環境下で300mm/分の速度で180°で剥離し、その剥離力をとる。剥離力が0.05N/25mm未満場合には、ダイシング時に保護膜付きチップを固定できず、チップが移動するおそれがある。剥離力が5N/25mmを越える場合には、保護膜付きチップのピックアップが困難となることがある。剥離力は0.05〜3N/25mmであることがより好ましい。
【0037】
剥離力調整層の保護膜からの剥離力を上記の範囲に調整するには、剥離力調整層の材料をポリオレフィン系フィルムから選択することが好ましい。ポリオレフィン系フィルムは極性が低いために、通常極性の高い材料の用いられる保護膜形成層の密着性が過度に高くなることなく、剥離力を上記の範囲に調整することが容易となる。ポリオレフィン系フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂等からなるフィルムが挙げられる。これらのうちでも、剥離力と耐熱性の両立という観点から、ポリプロピレンフィルムが特に好ましい。
【0038】
剥離力調整層は、剥離処理を行ったフィルムであってもよい。剥離処理を行ったフィルムとしては、後述の保護膜形成層付ダイシングシートの任意的構成要素としての剥離シートと同種のものを用いることができる。この場合、剥離性能の過度に高いものを選択した場合には、剥離力調整層と保護膜の間の剥離力が小さくなり、上記の好ましい範囲の下限未満となることがあるため、剥離性能の高すぎないものを選択する必要がある。
【0039】
本発明における剥離力調整層4の融点は130℃を超え、もしくは融点を有さないことが好ましい。また、130℃で2時間加熱時における剥離力調整層の熱収縮率は−5〜+5%であることが好ましい。剥離力調整層の融点が130℃以下であったり、熱収縮率が上記範囲外であると、保護膜形成層の硬化時に剥離力調整層が溶融あるいは収縮し、剥離力調整層の形状を保つことが困難になるおそれがある。また、剥離力調整層が半導体チップ製造工程中の周辺の装置と融着してしまうことがある。さらにまた、剥離力調整層の溶融、収縮に起因した保護膜形成層の変形により、保護膜への印字精度が低下することがある。
【0040】
剥離力調整層の融点は、140℃以上もしくは融点を持たないことが好ましく、融点が200℃以上もしくは融点を持たないことがより好ましい。また、130℃で2時間加熱時における剥離力調整層の熱収縮率は、−4〜+4%であることが好ましい。剥離力調整層の融点や熱収縮率を上記範囲とすることで、剥離力調整層は耐熱性に優れ、上述の保護膜形成層を硬化したときの剥離力調整層の形状保持性が良好に保たれる。なお、130℃で2時間加熱時における剥離力調整層の熱収縮率は、130℃の環境下に剥離力調整層を投入する前後の剥離力調整層の面積から下記式により求められる。
【0041】
熱収縮率(%)={(投入前の剥離力調整層の面積)−(投入後の剥離力調整層の面積)}/投入前の剥離力調整層の面積×100
【0042】
剥離力調整層の厚さは特に限定されず、好ましくは3〜300μm、より好ましくは5〜150μmである。また、剥離力調整層は、後述する保護膜形成層と略同一の形状であり、貼付されるワーク(半導体ウエハ等)と同じサイズもしくは一回り大きいサイズである。
【0043】
上記のような剥離力調整層4を、粘着剤層3と保護膜形成層5との間に設けると、副次的な効果として、保護膜形成層を硬化して保護膜とし、ワークと保護膜とを切断後であっても、剥離力調整層を切断しない場合には、得られるチップの位置がずれ難くなる。すなわち、保護膜形成層の硬化時に粘着シート3が熱変形を起こしても、粘着シート3の変形がチップの整列部にまでは及ばずに、チップの整列状態が維持される。
【0044】
さらに、上記粘着シート3が十分な耐熱性を有し、保護膜形成層の硬化条件においても粘着シートの変形が小さな場合には、ワークと保護膜とを切断する際に、剥離力調整層4を切断してもよい。剥離力調整層4を切断することで、ダイシング後に本発明のダイシングシートをエキスパンドがより容易となり、チップのピックアップが容易になる。
【0045】
(保護膜形成層5)
本発明における保護膜形成層5は特に限定されず、例えば熱硬化性、熱可塑性、放射線硬化性の保護膜形成層を用いることができる。これらの中でも、熱硬化性の保護膜形成層を用いた場合に、剥離力調整層が存在しない場合の粘着剤層または基材フィルムと保護膜との密着の問題が顕著となるので、本発明の効果は好ましく発揮される。
【0046】
保護膜形成層は、バインダーポリマー成分(A)及び硬化性成分(B)を含有することが好ましい。
【0047】
(A)バインダーポリマー成分
保護膜形成層に十分な接着性および造膜性(シート加工性)を付与するためにバインダーポリマー成分(A)が用いられる。バインダーポリマー成分(A)としては、従来公知のアクリルポリマー、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系ポリマー等を用いることができる。
【0048】
バインダーポリマー成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜120万であることがより好ましい。バインダーポリマー成分(A)の重量平均分子量が低過ぎると保護膜形成層と剥離力調整層との剥離力が高くなり、保護膜形成層の転写不良が起こることがあり、高過ぎると保護膜形成層の接着性が低下し、チップ等に転写できなくなったり、あるいは転写後にチップ等から保護膜が剥離することがある。
【0049】
バインダーポリマー成分(A)として、アクリルポリマーが好ましく用いられる。アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−60〜50℃、さらに好ましくは−50〜40℃、特に好ましくは−40〜30℃の範囲にある。アクリルポリマーのガラス転移温度が低過ぎると保護膜形成層と剥離力調整層との剥離力が大きくなって保護膜形成層の転写不良が起こることがあり、高過ぎると保護膜形成層の接着性が低下し、チップ等に転写できなくなったり、あるいは転写後にチップ等から保護膜が剥離することがある。
【0050】
上記アクリルポリマーを構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体が挙げられる。例えば、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、環状骨格を有する(メタ)アクリレート、具体的にはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに官能基を有するモノマーとして、水酸基を有するヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;その他、エポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アクリルポリマーは、水酸基を有しているモノマーを含有しているアクリルポリマーが、後述する硬化性成分(B)との相溶性が良いため好ましい。また、上記アクリルポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどが共重合されていてもよい。
【0051】
さらに、バインダーポリマー成分(A)として、硬化後の保護膜の可とう性を保持するための熱可塑性樹脂を配合してもよい。そのような熱可塑性樹脂としては、重量平均分子量が1000〜10万のものが好ましく、3000〜8万のものがさらに好ましい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−30〜120℃、さらに好ましくは−20〜120℃のものが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレンなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。上記の熱可塑性樹脂を含有することにより、保護膜形成層の転写面に保護膜形成層が追従しボイドなどの発生を抑えることができる。
【0052】
(B)硬化性成分
硬化性成分(B)は、熱硬化性成分および/またはエネルギー線硬化性成分が用いられる。
【0053】
熱硬化性成分としては、熱硬化樹脂および熱硬化剤が用いられる。熱硬化樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂が好ましい。
【0054】
エポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、具体的には、多官能系エポキシ樹脂や、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂など、分子中に2官能以上有するエポキシ化合物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
保護膜形成層には、バインダーポリマー成分(A)100質量部に対して、熱硬化樹脂が、好ましくは1〜1000質量部、より好ましくは10〜500質量部、特に好ましくは20〜200質量部含まれる。熱硬化樹脂の含有量が1質量部未満であると十分な接着性が得られないことがあり、1000質量部を超えると保護膜形成層と剥離力調整層との剥離力が高くなり、保護膜形成層の転写不良が起こることがある。
【0056】
熱硬化剤は、熱硬化樹脂、特にエポキシ樹脂に対する硬化剤として機能する。好ましい熱硬化剤としては、1分子中にエポキシ基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。その官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基および酸無水物などが挙げられる。これらのうち好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基、酸無水物などが挙げられ、さらに好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基が挙げられる。
【0057】
フェノール系硬化剤の具体的な例としては、多官能系フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂が挙げられる。アミン系硬化剤の具体的な例としては、DICY(ジシアンジアミド)が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0058】
熱硬化剤の含有量は、熱硬化樹脂100質量部に対して、0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましい。熱硬化剤の含有量が少ないと硬化不足で接着性が得られないことがあり、過剰であると保護膜形成層の吸湿率が高まり半導体装置の信頼性を低下させることがある。
【0059】
エネルギー線硬化性成分としては、エネルギー線重合性基を含み、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する化合物(エネルギー線重合性化合物)を用いることができる。このようなエネルギー線硬化性成分として具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレートおよびイタコン酸オリゴマーなどのアクリレート系化合物が挙げられる。このような化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有し、通常は、重量平均分子量が100〜30000、好ましくは300〜10000程度である。エネルギー線重合性化合物の配合量は、バインダーポリマー成分(A)100質量部に対して、好ましくは1〜1500質量部、より好ましくは10〜500質量部、特に好ましくは20〜200質量部含まれる。
【0060】
また、エネルギー線硬化性成分として、バインダーポリマー成分(A)の主鎖または側鎖に、エネルギー線重合性基が結合されてなるエネルギー線硬化型重合体を用いてもよい。このようなエネルギー線硬化型重合体は、バインダーポリマー成分(A)としての機能と、硬化性成分(B)としての機能を兼ね備える。
【0061】
エネルギー線硬化型重合体の主骨格は特に限定はされず、バインダーポリマー成分(A)として汎用されているアクリルポリマーであってもよく、またポリエステル、ポリエーテル等であっても良いが、合成および物性の制御が容易であることから、アクリルポリマーを主骨格とすることが特に好ましい。
【0062】
エネルギー線硬化型重合体の主鎖または側鎖に結合するエネルギー線重合性基は、たとえばエネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合を含む基であり、具体的には(メタ)アクリロイル基等を例示することができる。エネルギー線重合性基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基を介してエネルギー線硬化型重合体に結合していてもよい。
【0063】
エネルギー線重合性基が結合されたエネルギー線硬化型重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。また、エネルギー線硬化型重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−60〜50℃、さらに好ましくは−50〜40℃、特に好ましくは−40〜30℃の範囲にある。
【0064】
エネルギー線硬化型重合体は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有するアクリル系重合体と、該官能基と反応する置換基とエネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を1分子毎に1〜5個を有する重合性基含有化合物とを反応させて得られる。該官能基と反応する置換基としては、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0065】
重合性基含有化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0066】
アクリルポリマーは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーまたはその誘導体と、これと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とからなる共重合体であることが好ましい。
【0067】
ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーまたはその誘導体としては、たとえば、ヒドロキシル基を有する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸;エポキシ基を有するグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどが挙げられる。
【0068】
上記モノマーと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;環状骨格を有する(メタ)アクリレート、具体的にはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イミドアクリレートなどが挙げられる。また、上記アクリルポリマーには、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどが共重合されていてもよい。
【0069】
エネルギー線硬化型重合体を使用する場合であっても、前記したエネルギー線重合性化合物を併用してもよく、またバインダーポリマー成分(A)を併用してもよい。本発明の保護膜形成層中のこれら三者の配合量の関係は、エネルギー線硬化型重合体およびバインダーポリマー成分(A)の質量の和100質量部に対して、エネルギー線重合性化合物が好ましくは1〜1500質量部、より好ましくは10〜500質量部、特に好ましくは20〜200質量部含まれる。
【0070】
保護膜形成層にエネルギー線硬化性を付与することで、保護膜形成層を簡便かつ短時間で硬化でき、保護膜付チップの生産効率が向上する。従来、チップ用の保護膜は、一般にエポキシ樹脂などの熱硬化樹脂により形成されていたが、熱硬化樹脂の硬化温度は200℃を超え、また硬化時間は2時間程度を要しているため、生産効率向上の障害となっていた。しかし、エネルギー線硬化性の保護膜形成層は、エネルギー線照射により短時間で硬化するため、簡便に保護膜を形成でき、生産効率の向上に寄与しうる。
【0071】
その他の成分
保護膜形成層は、上記バインダーポリマー成分(A)及び硬化性成分(B)に加えて下記成分を含むことができる。
【0072】
(C)着色剤
保護膜形成層は、着色剤(C)を含有することが好ましい。保護膜形成層に着色剤を配合することで、半導体装置を機器に組み込んだ際に、周囲の装置から発生する赤外線等を遮蔽し、それらによる半導体装置の誤作動を防止することができ、また保護膜形成層を硬化して得た保護膜に、製品番号等を印字した際の文字の視認性が向上する。すなわち、保護膜を形成された半導体装置や半導体チップでは、保護膜の表面に品番等が通常レーザーマーキング法(レーザー光により保護膜表面を削り取り印字を行う方法)により印字されるが、保護膜が着色剤(C)を含有することで、保護膜のレーザー光により削り取られた部分とそうでない部分のコントラスト差が充分に得られ、視認性が向上する。着色剤(C)としては、有機または無機の顔料および染料が用いられる。これらの中でも電磁波や赤外線遮蔽性の点から黒色顔料が好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が用いられるが、これらに限定されることはない。半導体装置の信頼性を高める観点からは、カーボンブラックが特に好ましい。着色剤(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明における保護膜形成層の高い硬化性は、可視光および/または赤外線と紫外線との両方の透過性を低下させる着色剤を用い、紫外線の透過性が低下した場合に、特に好ましく発揮される。可視光および/または赤外線と紫外線との両方の透過性を低下させる着色剤としては、上記の黒色顔料のほか、可視光および/または赤外線と紫外線との両方の波長領域で吸収性または反射性を有するものであれば特に限定されない。
【0073】
着色剤(C)の配合量は、保護膜形成層を構成する全固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜35質量部、さらに好ましくは0.5〜25質量部、特に好ましくは1〜15質量部である。
【0074】
(D)硬化促進剤
硬化促進剤(D)は、保護膜形成層の硬化速度を調整するために用いられる。硬化促進剤(D)は、特に、硬化性成分(B)において、エポキシ樹脂と熱硬化剤とを併用する場合に好ましく用いられる。
【0075】
好ましい硬化促進剤としては、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0076】
硬化促進剤(D)は、硬化性成分(B)100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部の量で含まれる。硬化促進剤(D)を上記範囲の量で含有することにより、高温度高湿度下に曝されても優れた接着特性を有し、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても高い信頼性を達成することができる。硬化促進剤(D)の含有量が少ないと硬化不足で十分な接着特性が得られず、過剰であると高い極性をもつ硬化促進剤は高温度高湿度下で保護膜形成層中を接着界面側に移動し、偏析することにより半導体装置の信頼性を低下させる。
【0077】
(E)カップリング剤
カップリング剤(E)は、保護膜形成層のチップに対する接着性、密着性および/または保護膜の凝集性を向上させるために用いてもよい。また、カップリング剤(E)を使用することで、保護膜形成層を硬化して得られる保護膜の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上することができる。
【0078】
カップリング剤(E)としては、バインダーポリマー成分(A)、硬化性成分(B)などが有する官能基と反応する基を有する化合物が好ましく使用される。カップリング剤(E)としては、シランカップリング剤が望ましい。このようなカップリング剤としてはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0079】
カップリング剤(E)は、バインダーポリマー成分(A)および硬化性成分(B)の合計100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部の割合で含まれる。カップリング剤(E)の含有量が0.1質量部未満だと上記の効果が得られない可能性があり、20質量部を超えるとアウトガスの原因となる可能性がある。
【0080】
(F)無機充填材
無機充填材(F)を保護膜形成層に配合することにより、硬化後の保護膜における熱膨張係数を調整することが可能となり、半導体チップに対して硬化後の保護膜の熱膨張係数を最適化することで半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、硬化後の保護膜の吸湿率を低減させることも可能となる。
【0081】
好ましい無機充填材としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられる。これらのなかでも、シリカフィラーおよびアルミナフィラーが好ましい。上記無機充填材(F)は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。無機充填材(F)の含有量は、保護膜形成層を構成する全固形分100質量部に対して、通常1〜80質量部の範囲で調整が可能である。
【0082】
(G)光重合開始剤
保護膜形成層が、前述した硬化性成分(B)としてエネルギー線硬化性成分を含有する場合には、その使用に際して、紫外線等のエネルギー線を照射して、エネルギー線硬化性成分を硬化させる。この際、該組成物中に光重合開始剤(G)を含有させることで、重合硬化時間ならびに光線照射量を少なくすることができる。
【0083】
このような光重合開始剤(G)として具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、1,2−ジフェニルメタン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドおよびβ−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。光重合開始剤(G)は1種類単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
光重合開始剤(G)の配合割合は、エネルギー線硬化性成分100質量部に対して0.1〜10質量部含まれることが好ましく、1〜5質量部含まれることがより好ましい。0.1質量部未満であると光重合の不足で満足な転写性が得られないことがあり、10質量部を超えると光重合に寄与しない残留物が生成し、保護膜形成層の硬化性が不十分となることがある。
【0085】
(H)架橋剤
保護膜形成層の初期接着力および凝集力を調節するために、架橋剤を添加することもできる。架橋剤(H)としては有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物などが挙げられる。
【0086】
上記有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0087】
有機多価イソシアネート化合物としては、たとえば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネートおよびリジンイソシアネートが挙げられる。
【0088】
上記有機多価イミン化合物としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
【0089】
架橋剤(H)はバインダーポリマー成分(A)およびエネルギー線硬化型重合体の合計量100質量部に対して通常0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部の比率で用いられる。
【0090】
(I)汎用添加剤
保護膜形成層には、上記の他に、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。各種添加剤としては、レベリング剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、ゲッタリング剤、連鎖移動剤などが挙げられる。
【0091】
上記のような各成分からなる保護膜形成層は、接着性と硬化性とを有し、未硬化状態ではワーク(半導体ウエハやチップ等)に押圧することで容易に接着する。そして硬化を経て最終的には耐衝撃性の高い保護膜を与えることができ、接着強度にも優れ、厳しい高温度高湿度条件下においても十分な保護機能を保持し得る。なお、保護膜形成層は単層構造であってもよく、また上記成分を含む層を1層以上含む限りにおいて多層構造であってもよい。
【0092】
保護膜形成層の厚さは特に限定されないが、好ましくは3〜300μm、さらに好ましくは5〜250μm、特に好ましくは7〜200μmである。
【0093】
保護膜形成層における可視光線および/または赤外線と紫外線の透過性を示す尺度である、波長300〜1200nmにおける最大透過率は20%以下であることが好ましく、0〜15%であることがより好ましく、0%を超え10%以下であることがさらに好ましく、0.001〜8%であることが特に好ましい。波長300〜1200nmにおける保護膜形成層の最大透過率を上記範囲とすることで、保護膜形成層がエネルギー線硬化性成分(特に紫外線硬化性成分)を含有する場合には、保護膜形成層が着色されている場合であっても硬化性に優れる。また、可視光波長領域および/または赤外波長領域の透過性が低いため、半導体装置の赤外線起因の誤作動の防止や、印字の視認性向上といった効果が得られる。波長300〜1200nmにおける保護膜形成層の最大透過率は、上記着色剤(C)により調整できる。なお、保護膜形成層の最大透過率は、UV−visスペクトル検査装置((株)島津製作所製)を用いて、硬化後の保護膜形成層(厚み25μm)の300〜1200nmでの全光線透過率を測定し、透過率の最も高い値(最大透過率)とした。
【0094】
(剥離シート)
保護膜形成層付きダイシングシートには、使用に供するまでの間、表面の外部との接触を避けるための剥離シートを設けてもよい。剥離シートとしては、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどの透明フィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。また、これらを着色したフィルム、不透明フィルムなどを用いることができる。剥離剤としては、剥離剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤が挙げられる。
【0095】
剥離シートの厚さは、通常は10〜500μm、好ましくは15〜300μm、特に好ましくは20〜250μm程度である。また、保護膜形成層付ダイシングシートの厚みは、通常は1〜500μm、好ましくは5〜300μm、特に好ましくは10〜150μm程度である。
【0096】
(保護膜形成層付ダイシングシート)
保護膜形成層付ダイシングシートの製造方法としては、次のような方法が挙げられる。まず、剥離力調整層4上に保護膜形成層5を形成する。保護膜形成層は、上記各成分を適宜の割合で、適当な溶媒中で混合してなる保護膜形成層用組成物を、剥離力調整層上に塗布乾燥して得られる。また、剥離シート上に保護膜形成層用組成物を塗布、乾燥して成膜し、これを剥離力調整層と貼り合わせて、保護膜形成層が2枚のシートに挟持された状態(剥離力調整層/保護膜形成層/剥離シート)としてもよい。保護膜形成層と剥離力調整層の貼り合わせは、加熱を伴って行ってもよい。この際、保護膜形成層が熱硬化性である場合には保護膜形成層の熱硬化温度未満で加熱を行うことが好ましい。
【0097】
次に、2枚のシートに挟持された状態の場合には剥離シートを剥離する。そして、保護膜形成層と剥離力調整層の積層体を、貼付されるべきワーク(例えば半導体ウエハ等)と同じサイズもしくは一回り大きい円形に型抜きし、円形に型抜きされた積層体の周囲を除去する。次いで、円形の積層体の剥離力調整層側を、別途用意した粘着シート3の粘着剤層2に貼付し、リングフレームに対する糊しろの外径に合わせて粘着シートを同心円状に型抜きし、型抜きされた粘着シートの周囲を除去することで、本発明の保護膜形成層付ダイシングシートを得る。この場合には、積層体を粘着シート3の粘着剤層2に貼付した後、露出した保護膜形成層と粘着剤層に剥離シートを貼り合わせてもよい。
【0098】
また、別の方法としては、まず保護膜形成層が剥離力調整層と剥離シートに挟持された状態で、剥離シートを残したまま、剥離力調整層側からハーフカットし、剥離力調整層/保護膜形成層の積層体を、貼付されるべきワーク(例えば半導体ウエハ等)と同じサイズもしくは一回り大きい円形に型抜きし、円形に型抜きされた積層体の周囲をカス取りする。この状態では、円形の積層体が剥離シート上に保持されている。次いで、円形の積層体の剥離力調整層側を、別途用意した粘着シート3の粘着剤層2に貼付する。その後、剥離シートを残して、基材フィルム側から、粘着シートを、リングフレームに対する糊しろの外径に合わせて同心円状に型抜きし、型抜きされた粘着シートの周囲を除去することで、本発明の保護膜形成層付ダイシングシートを得る。この場合、剥離シート上に本発明の保護膜形成層付ダイシングシートがプリカットされた状態で得られ、使用に際しては、剥離シートから剥離され、保護膜形成層側が所望のワークに貼付される。
【0099】
また、粘着剤層をエネルギー線硬化型粘着剤で形成する場合、エネルギー線を照射する範囲を選択することにより、所望の位置、大きさ及び形状で粘着力の低下した粘着剤層の部分と、粘着力の低下していない粘着剤層の部分とを形成できる。従って、粘着剤層のリングフレームを貼付する部分にエネルギー線を照射して粘着力を低下させ、所望の範囲の粘着力に調整できる。その結果、リングフレームへの貼付性に優れ、リングフレームへの糊残りを防止できる。また、本発明では、剥離力調整層4と保護膜形成層5との間で剥離し、保護膜形成層5をワーク(チップ)側に転写する。したがって、剥離力調整層4と粘着シート3との間の剥離力は、剥離力調整層4と保護膜形成層5との間の剥離力よりも大きくなるように設定される。このため、剥離力調整層4が貼付されている部分では、粘着シートの接着力を低下しないことが好ましい。したがって、粘着剤層の保護膜形成層が貼付されている部分にはエネルギーを照射せずに、粘着力を維持することが好ましい。このような粘着剤層の部分硬化は、基材フィルム1上に、部分的にエネルギー線を遮蔽する保護マスクを形成し、基材フィルム側からエネルギー線を照射する方法等により達成できる。
【0100】
また、リングフレームに対する糊しろ(粘着シートの外周部における露出した粘着剤層)上に、環状の両面テープ若しくは粘着剤層を別途設けてもよい。両面テープは粘着剤層/芯材/粘着剤層の構成を有し、両面テープにおける粘着剤層は特に限定されず、上記粘着シートにおける粘着剤を用い、同様に形成できる。また、芯材は耐熱性を有することが好ましく、芯材として、融点が120℃以上のフィルムを用いることが好ましい。融点が120℃未満のフィルムを芯材として用いると、保護膜形成層を加熱硬化の際に、芯材が溶融し形状を保てなくなったり、周辺の装置と融着してしまうことがある。芯材としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等が好ましく用いられる。
【0101】
上記のような保護膜形成層付ダイシングシートにおいて、粘着シートと剥離力調整層との積層体部分における波長532nmおよび波長1064nmの全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。粘着シートと剥離力調整層との積層体部分における波長532nmおよび波長1064nmの全光線透過率を上記範囲とすることで、半導体ウエハに保護膜形成層付ダイシングシートを貼付した後に、保護膜に対するレーザーマーキングを粘着シート越しに行うことが可能になる。したがって、ウエハをダイシングシートに固定した状態でレーザーマーキングを行えるため、ウエハの反りが抑制され、印字精度が向上する。
【0102】
上記のような保護膜形成層付ダイシングシートにおいて、粘着シートおよび剥離力調整層には粘着シートおよび剥離力調整層を貫通する貫通孔が設けられていてもよい。貫通孔を設けることで、保護膜へのレーザーマーキングを行った際に発生するガスにより生じる異物の発生を抑制できる。
【0103】
(チップの製造方法)
次に本発明に係る保護膜形成層付ダイシングシートの利用方法について、該シートをチップ(例えば半導体チップ等)の製造に適用した場合を例にとって説明する。
【0104】
本発明に係る保護膜形成層付ダイシングシートを用いた半導体チップの製造方法は、表面に回路が形成された半導体ウエハ(ワーク)の裏面に、上記シートの保護膜形成層を貼付し、以下の工程(1)、(2)、(3)をこの順で行い、裏面に保護膜を有する半導体チップを得ることを特徴としている。
工程(1):保護膜形成層を硬化し保護膜を得る、
工程(2):ワークと保護膜形成層または保護膜とをダイシング、
工程(3):保護膜形成層または保護膜と剥離力調整層とを剥離。
【0105】
また、本発明に係る半導体チップの製造方法は、上記工程(1)〜(3)の他に、下記の工程(4)をさらに含み、上記工程(1)の後のいずれかの工程において、工程(4)を行うこともできる。
工程(4):保護膜にレーザー印字。
工程(4)は、工程(1)および工程(2)の間に行うことが好ましい。硬化後の保護膜形成層にレーザー印字を行うことで、印字精度が優れたものとなる。一方、工程(2)の後、工程(3)の前に行った場合には、ダイシング時のチップの微小な位置ずれによって印字精度が低下することがある。また、工程(3)の後に行った場合は、個々のチップに個別にレーザー印字を行っていく必要があり、プロセスが煩雑となる。
【0106】
半導体ウエハはシリコンウエハであってもよく、またガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。ウエハ表面への回路の形成はエッチング法、リフトオフ法などの従来より汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。次いで、半導体ウエハの回路面の反対面(裏面)を研削する。研削法は特に限定はされず、グラインダーなどを用いた公知の手段で研削してもよい。裏面研削時には、表面の回路を保護するために回路面に、表面保護シートと呼ばれる粘着シートを貼付する。裏面研削は、ウエハの回路面側(すなわち表面保護シート側)をチャックテーブル等により固定し、回路が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。ウエハの研削後の厚みは特に限定はされないが、通常は20〜500μm程度である。その後、必要に応じ、裏面研削時に生じた破砕層を除去する。破砕層の除去は、ケミカルエッチングや、プラズマエッチングなどにより行われる。
【0107】
次いで、半導体ウエハの裏面に、上記保護膜形成層付ダイシングシートの保護膜形成層を貼付する。その後、工程(1)、(2)、(3)をこの順に行う。このプロセスの概要については、特開2002−280329号公報に類似の工程が詳述されているが、以下さらに説明する。
【0108】
まず、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、上記保護膜形成層付ダイシングシートの保護膜形成層を貼付する。次いで、保護膜形成層を硬化し、ウエハの全面に保護膜を形成する。硬化前の保護膜形成層を半導体ウエハに貼付することにより、保護膜形成層がウエハの貼付面によくなじみ、保護膜と半導体チップの接着性が向上する。また、保護膜形成層の硬化時に、保護膜形成層付ダイシングシートの収縮変形が抑制される。保護膜形成層には、硬化性成分(B)が含まれているため、一般的には熱硬化またはエネルギー線照射により保護膜形成層を硬化する。なお、保護膜形成層に熱硬化性成分およびエネルギー線硬化性成分が配合されている場合には、保護膜形成層の硬化を、加熱とエネルギー線照射の両者で行うことができ、加熱およびエネルギー線照射による硬化を同時に行ってもよく、逐次的に行ってもよい。この結果、ウエハ裏面に硬化樹脂からなる保護膜が形成され、ウエハ単独の場合と比べて強度が向上するので、取扱い時の薄くなったウエハの破損を低減できる。また、ウエハやチップの裏面に直接保護膜用の塗布液を塗布・被膜化するコーティング法と比較して、保護膜の厚さの均一性に優れる。
【0109】
次いで、硬化した保護膜形成層(保護膜)にレーザー印字することが好ましい。レーザー印字はレーザーマーキング法により行われ、レーザー光の照射により粘着シート越しに保護膜の表面を削り取ることで保護膜に品番等をマーキングする。本発明の保護膜形成層付ダイシングシートによれば、極薄のウエハであってもウエハの反りを抑制できるため、レーザー光の焦点が正確に定まり、精度よくマーキングを行える。
【0110】
次いで、半導体ウエハを、ウエハ表面に形成された回路毎にダイシングする。ダイシングは、ウエハと保護膜をともに切断するように行われる。ダイシング法は特に限定はされず、一例として、ウエハのダイシング時には保護膜形成層付ダイシングシートの周辺部(粘着シートの外周部)をリングフレームにより固定した後、ダイシングブレードなどの回転丸刃を用いるなどの公知の手法によりウエハのチップ化を行う方法などが挙げられる。本発明の保護膜形成層付ダイシングシートは、剥離力調整層を有し、保護膜と剥離力調整層が適度な密着性を有するため、ダイシングブレードからかかる力によりチップが移動する現象が起こりにくい。ダイシングによる切り込み深さは、ウエハおよび保護膜を完全に切断する程度であれば十分であり、剥離力調整層を切断してもよく、また切断しなくてもよい。剥離力調整層を切断しない場合には、得られるチップの位置がずれ難くなる。すなわち、保護膜形成層の硬化時に粘着シート3が熱変形を起こしても、粘着シート3の変形がチップの整列部にまでは及ばずに、チップの整列状態が維持され、ピックアップ不良が低減される。
【0111】
さらに、上記粘着シート3が十分な耐熱性を有し、保護膜形成層の硬化条件においても粘着シートの変形が小さな場合には、ウエハと保護膜とを切断する際に、剥離力調整層4を完全に切断してもよい。剥離力調整層4を切断することで、ダイシング後に本発明のダイシングシートをエキスパンドでき、チップ間隔が離間し、チップのピックアップが容易になる。
【0112】
その後、剥離力調整層4を切断した場合には、上記粘着シートをエキスパンドする。本発明における粘着シートは伸張性に優れるため、本発明の保護膜形成層付ダイシングシートは、優れたエキスパンド性を有し、チップのピックアップ性が向上する。なお、上記したように剥離力調整層を切断しない場合であっても、剥離力調整層によってチップの整列性が維持されるため、エキスパンドをしなくてもチップをピックアップできる。
【0113】
ダイシングされた保護膜付半導体チップをコレット等の汎用手段によりピックアップすることで、保護膜と剥離力調整層との界面で剥離する。この結果、裏面に保護膜を有する半導体チップ(保護膜付半導体チップ)が得られる。本発明の保護膜形成層付ダイシングシートは、剥離力調整層を有するために、保護膜が粘着剤層または基材フィルムと強固に密着することなく、ピックアップを容易に行うことができる。このような本発明によれば、均一性の高い保護膜を、チップ裏面に簡便に形成でき、ダイシング工程やパッケージングの後のクラックが発生しにくくなる。また、本発明によれば、保護膜が形成されたウエハをダイシングテープに貼り替えてダイシングしていた従来の工程と比較して、ダイシングテープへの貼り替えを行うことなく保護膜付チップを得ることができ、製造工程の簡略化が図れる。そして、半導体チップをフェースダウン方式で所定の基台上に実装することで半導体装置を製造することができる。また、裏面に保護膜を有する半導体チップを、ダイパッド部または別の半導体チップなどの他の部材上(チップ搭載部上)に接着することで、半導体装置を製造することもできる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、<剥離力調整層と保護膜の間の剥離力><基材フィルムおよび剥離力調整層の熱収縮率>、<熱硬化適性>、<ダイシング適性>、および<ピックアップ適性>は次のように測定・評価した。また、下記の<保護膜形成層用組成物>、<粘着剤組成物>、<剥離力調整層>を用いた。
【0115】
<剥離力調整層と保護膜の間の剥離力>
保護膜形成層付ダイシングシートについて、上述した方法により剥離力調整層と保護膜の間の剥離力を測定した。保護膜形成層の硬化は保護膜形成層付ダイシングシートを貼付したウエハを130℃の加熱オーブンに2時間投入することにより行った。
【0116】
<加熱硬化工程適性>
厚み350μm、直径6インチ、♯2000研磨を行ったシリコンウエハの研磨面に保護膜形成層付ダイシングシートの保護膜形成層を貼付した。次いで、保護膜形成層付ダイシングシートを貼付したウエハを130℃の加熱オーブンに2時間投入して、保護膜形成層を硬化させた。保護膜形成層と剥離力調整層(比較例2にあっては、粘着剤層)との間に、基材フィルムまたは剥離力調整層の変形に起因した剥離が生じなかった場合をA、剥離が生じた場合をBとして評価を行った。
【0117】
<ダイシング適性>
加熱硬化工程適性の評価と同様にして保護膜形成層の硬化を行った。次いで、ダイサー(ディスコ株式会社製、DFD651)を用いて、ブレード速度40mm/秒で、基材フィルムに15μmの深さに切り込みが入るようにして3mm×3mmのサイズのチップにウエハをダイスした。ダイシングにおいて、チップが所定位置から動かなかった場合をA、ブレードの動きによりチップが跳ね飛ばされた場合をBとした。
【0118】
<ピックアップ適性>
ダイシング適性の評価を行った後、ダイボンダー(キャノンマシナリー社製、Bestem−D02)によりピックアップを行い、ピックアップ可能であった場合をA、ピックアップができなかった場合をBとした。
【0119】
<基材フィルムおよび剥離力調整層の熱収縮率>
基材フィルムおよび剥離力調整層をそれぞれ10cm×10cmに裁断し、熱風オーブンに投入した(130℃、2時間)。その後、基材フィルムおよび剥離力調整層を取り出し、フィルムの寸法を測定し、下記式により熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(投入前のフィルムの面積)−(投入後のフィルムの面積)/投入前のフィルムの面積}×100
【0120】
<保護膜形成層>
保護膜形成層(1):2枚の剥離シートに挟持された保護膜形成層であるリンテック株式会社製のLC2850(25)を用いた。
保護膜形成層(2):2枚の剥離シートに挟持された保護膜形成層であるリンテック株式会社製のLC2822Hを用いた。
【0121】
<粘着剤組成物>
2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートを、84重量%、8重量%、8重量%の割合で構成単位に含む重量平均分子量60万のアクリル系重合体100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(トーヨーケム株式会社製、BHS−8515)を4質量部加えた粘着剤組成物を用いた。
【0122】
<基材フィルム>
厚み140μmの平滑面および凹凸面を有するポリプロピレンフィルム、CT265(三菱樹脂株式会社製)
【0123】
<剥離力調整層用フィルム>
厚み140μmの平滑面および凹凸面を有するポリプロピレンフィルム、CT265(三菱樹脂株式会社製)
【0124】
(実施例1)
保護膜形成層(1)から一方の剥離シートを剥離し、保護膜形成層上に剥離力調整層用フィルムを、平滑面を対向させ、70℃に加熱しながら積層した。剥離シートを残して、保護膜形成層および剥離力調整層を、シリコンウエハと同サイズ(直径6インチ)に型抜きし、円形に型抜きされた保護膜形成層/剥離力調整層の積層体を得た。
【0125】
粘着シート用剥離シート(SP−PET381031、リンテック株式会社製)上に上記の粘着剤組成物の溶液を、乾燥後10μmの厚みになるように塗布、乾燥(乾燥条件:オーブンにて120℃、3分間)し、基材フィルムと粘着剤層を貼り合わせることで基材フィルム上に粘着剤層を形成し、剥離シートが設けられた粘着シートを得た。
【0126】
上記粘着シートから剥離シートを除去し、粘着剤層上に上記の保護膜形成層/剥離力調整層の積層体の剥離力調整層側を貼付し、剥離シートを残した状態で、粘着シートをリングフレームに対する糊しろの外径(直径205mm)に合わせて同心円状に型抜きした。その後、保護膜形成層上の剥離シートを剥離し、保護膜形成層付ダイシングシートを得た。各評価結果を表1に示す。
【0127】
(実施例2)
保護膜形成層として、保護膜形成層(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして保護膜形成層付ダイシングシートを得た。各評価結果を表1に示す。
【0128】
(実施例3)
保護膜形成層として、保護膜形成層(2)を用い、保護膜形成層上に剥離力調整層用フィルムを、凹凸面を対向させて積層した以外は、実施例1と同様にして保護膜形成層付ダイシングシートを得た。各評価結果を表1に示す。
【0129】
(実施例4)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、T100)を用い、剥離力調整層用フィルムとして、厚み50μmの平滑面および凹凸面を有するポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製、FOP−K)を用い、保護膜形成層上に剥離力調整層用フィルムを、平滑面を対向させて積層した以外は、実施例1と同様にして保護膜形成層付ダイシングシートを得た。各評価結果を表1に示す。
【0130】
(比較例1)
保護膜形成層として、保護膜形成層(2)を用い、剥離力調整層用フィルムとして、厚み100μmの平滑面および凹凸面を有するポリブチレンテレフタレートフィルム(オー・ジーフィルム社製、XOFL)を用い、保護膜形成層上に剥離力調整層用フィルムを、凹凸面を対向させて積層した以外は、実施例1と同様にして保護膜形成層付ダイシングシートを得た。各評価結果を表1に示す。
【0131】
(比較例2)
剥離力調整層を設けなかった以外は実施例1と同様にして保護膜形成層付ダイシングシートを得た。各評価結果を表1に示す。
【0132】
(比較例3)
剥離力調整層用フィルムとして、厚み38μmの片方の面が剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック株式会社製、SP−381031)を用い、保護膜形成層上に剥離力調整層用フィルムを、剥離処理面を対向させて積層した以外は、実施例1と同様にして保護膜形成層付ダイシングシートを得た。この保護膜形成層付ダイシングシートでは、ダイシング適性の評価において、ブレードの動きによりチップが跳ね飛ばされため、ピックアップ適性の評価を行うことができなかった。各評価結果を表1に示す。
【0133】
【表1】
【符号の説明】
【0134】
1 … 基材フィルム
2 … 粘着剤層
3 … 粘着シート
4 … 剥離力調整層
5 … 保護膜形成層
5 … リングフレーム
10… 保護膜形成層付ダイシングシート
【図1】
【国際調査報告】