(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013099944
(43)【国際公開日】20130704
【発行日】20150511
(54)【発明の名称】多層セラミック基板およびそれを用いた電子部品
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20150414BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20150414BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20150414BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20150414BHJP
【FI】
   !H05K3/46 H
   !H05K3/46 T
   !H05K1/03 630J
   !H01L23/12 C
   !H01L23/12 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
【出願番号】2013551739
(21)【国際出願番号】JP2012083651
(22)【国際出願日】20121226
(31)【優先権主張番号】2011285294
(32)【優先日】20111227
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
【住所又は居所】京都府長岡京市東神足1丁目10番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】飯田 裕一
【住所又は居所】京都府長岡京市東神足1丁目10番1号 株式会社村田製作所内
(72)【発明者】
【氏名】足立 聡
【住所又は居所】京都府長岡京市東神足1丁目10番1号 株式会社村田製作所内
(72)【発明者】
【氏名】岸田 和雄
【住所又は居所】京都府長岡京市東神足1丁目10番1号 株式会社村田製作所内
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA38
5E316CC18
5E316CC39
5E316DD34
5E316EE23
5E316EE29
5E316FF18
5E316HH11
5E316JJ01
(57)【要約】
抗折強度に優れ、多層セラミック基板の表層部への表面電極の接合強度が大きく、しかも、表層部の絶縁抵抗が高くて信頼性の高い多層セラミック基板およびそれを用いた電子部品を提供する。
内層部(10)と、その両主面側に積層された表層部(11,12)と、表層部の少なくとも一方の表面に配設された表面電極(13a,13b)とを備えた多層セラミック基板において、表層部は、SiO−MO(MOは、CaO,MgO,SrO,BaOからなる群より選ばれる少なくとも1種)−B−Al系ガラスと、Alフィラーとを含み、表層部の熱膨張係数は、内層部の熱膨張係数よりも小さく、かつ、表層部の、XRD分析によるMAlSi(MはCa,Mg,Sr,Baからなる群より選ばれる少なくとも1種)と、Alのピーク強度比が、0.05≦(MAlSi/Al)≦5の範囲にあるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層部と、前記内層部の表裏両主面側に積層された表層部と、前記表層部の少なくとも一方の表面に配設された表面電極とを備えた多層セラミック基板であって、
前記表層部は、SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種)−B23−Al23系ガラスと、Al23フィラーとを含むガラスセラミック系材料を焼成することにより形成されており、
前記表層部の熱膨張係数は、前記内層部の熱膨張係数よりも小さく、かつ、
前記表層部の析出結晶であるMAl2Si28(MはCa,Mg,Sr,Baからなる群より選ばれる少なくとも1種)と、前記表層部中のAl23の、XRD分析によるピーク強度比が、下記の式(1):
0.05≦(MAl2Si28/Al23)≦5 ……(1)
の範囲にあること
を特徴とする多層セラミック基板。
【請求項2】
前記表層部に含まれる前記ガラスの結晶化温度が、910℃〜950℃の範囲にあることを特徴とする、請求項1記載の多層セラミック基板。
【請求項3】
請求項1または2記載の多層セラミック基板の前記表面電極上に、表面実装型チップ部品が搭載されていることを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層セラミック基板およびそれを用いた電子部品に関し、詳しくは、多層セラミック基板の機械的強度、表層部の絶縁抵抗、および多層セラミック基板の表層部への表面電極の接合強度などの向上を図るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスなどの電子部品を複数配設したモジュールなどの用途に、配線導体を3次元的に配置した多層セラミック基板が広く用いられている。
【0003】
このような多層セラミック基板として、抗折強度を向上させるために、ガラスと、残部の結晶質とからなる低温焼成多層セラミック基板において、最外層の熱膨張率を内層の熱膨張率より小さくした多層セラミック基板が提案されている(特許文献1参照)。
そして、この多層セラミック基板によれば、熱膨張率の差により、焼成後の冷却で最外層に圧縮応力が生じ、抗折強度が著しく改善されるとされている。
【0004】
また、内層部と、その両主面側に位置する表層部とからなる積層構造を有し、内層部と表層部との各々は、少なくとも1つのセラミック層をもって構成された多層セラミック基板において、表層部の熱膨張係数をα1[ppmK-1]とし、内層部の熱膨張係数をα2[ppmK-1]としたとき、0.3≦α2−α1≦1.5の関係を満たし、かつ、内層部には、針状結晶が析出していることを特徴とする多層セラミック基板が提案されている(特許文献2)。
【0005】
なお、特許文献2においては、内層部が、例えばホウケイ酸ガラスを含むものであることが好ましいとされている。また、内層部に析出する針状結晶として、例えば、ウォラストナイト、シリマナイト、ルチルおよびムライトの少なくとも1種が示されている。
【0006】
また、さらに他の多層セラミック基板として、表層部と内層部からなる積層構造を有する多層セラミック基板であって、表層部の熱膨張係数α1と内層部の熱膨張係数α2の関係が1.0≦α2−α1≦4.3の関係を満たし、表層部を構成する材料と内層部を構成する材料との間で共通する成分の重量比率が75重量%以上である多層セラミック基板が提案されている(特許文献3)。
この特許文献3の多層セラミック基板によれば、抗折強度を向上させることが可能になるとともに、層間剥離(デラミネーション)を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6‐29664号公報
【特許文献2】特開2007−73728号公報
【特許文献3】国際公開第2007/142112号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、多層セラミック基板においては、上述のように、抗折強度を高めること、層間剥離を抑制することも重要であるが、多層セラミック基板の表面に形成される表面電極(外部との導通のための電極や表面配線導体など)と、多層セラミック基板の表層部との接合強度を高くすること、表面電極が形成される、多層セラミック基板の表層部(セラミック層)の絶縁性を高く保って、表面電極と、該表層部を介して表面電極と対向する内部電極との絶縁性を確保することも非常に重要である。
【0009】
しかし、上記特許文献1〜3に示されているような、ガラスの結晶化を利用する材料系において、抗折強度などの基板の機械的強度、表面電極と表層部(セラミック層)の接合強度、および表層部(セラミック層)の絶縁性、の3つの特性を同時に向上させることは容易ではない。すなわち、表面電極と多層セラミック基板の表層部(セラミック層)の密着性を向上させるには、表層部のガラスの結晶化を抑制し、残留ガラス量を多くする必要があるが、残留ガラス量を多くすると、多層セラミック基板の表層部(セラミック層)への表面電極を構成する電極材料の拡散量が多くなり、多層セラミック基板の表層部(セラミック層)の絶縁性が低下してしまうことになる。
【0010】
また、多層セラミック基板を構成する表層部(セラミック層)中のガラスの結晶化度によっては、十分な基板の機械的強度が得られない場合がある。
そのため、さらに信頼性の高い多層セラミック基板が求められているのが実情である。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、抗折強度などの基板の機械的強度に優れ、かつ、表面電極の多層セラミック基板の表層部への接合強度が大きく、しかも、多層セラミック基板を構成する表層部(セラミック層)の絶縁抵抗が高く、表面電極と、該表層部を介して表面電極と対向する内部電極との絶縁性(層間絶縁性)を十分に確保することが可能な、信頼性の高い多層セラミック基板およびそれを用いた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の多層セラミック基板は、
内層部と、前記内層部の表裏両主面側に積層された表層部と、前記表層部の少なくとも一方の表面に配設された表面電極とを備えた多層セラミック基板であって、
前記表層部は、SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種)−B23−Al23系ガラスと、Al23フィラーとを含むガラスセラミック系材料を焼成することにより形成されており、
前記表層部の熱膨張係数は、前記内層部の熱膨張係数よりも小さく、かつ、
前記表層部への析出結晶であるMAl2Si28(MはCa,Mg,Sr,Baからなる群より選ばれる少なくとも1種)と、前記表層部中のAl23の、XRD分析によるピーク強度比が、下記の式(1):
0.05≦(MAl2Si28/Al23)≦5 ……(1)
の範囲にあること
を特徴としている。
【0013】
なお、本発明において、表層部に用いられるガラス、すなわち、SiO2と、MO(Ca,Mg,Sr,Baからなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化物)と、Al23とを含有するガラスとしては、例えば、SiO2と、MO(ただし、MOは、CaO、MgO、SrOおよびBaOから選ばれた少なくとも1種)を含み、SiO2とMOの割合がSiO2:MO=23:7〜17:13(モル比)の範囲にあるものなどを用いることができる。
ただし、表層部に用いられるガラスは、MAl2Si28の結晶が析出しやすいガラスであることが好ましいため、この析出結晶組成に近くなるように、SiO2とMOとの比率が調整されたガラスを用いることが望ましい。すなわち、表層部に用いられるガラスとしては、SiO2とMO(例えば、CaO)の比率を、モル比で2(SiO2/MO=2)に近付けたガラスを用いることが望ましい。
【0014】
また、本発明の多層セラミック基板においては、内層部も、SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種)−B23−Al23系ガラスと、Al23フィラーとを含むガラスセラミック系材料を焼成することにより形成されたものであることが望ましい。なお、内層部に用いられるガラスとしては、SiO2とMOの割合がモル比で、SiO2:MO=19:11〜11:19の範囲にあるものなどが例示される。内層部に用いられるガラスは、製造時の焼成工程でガラスから適量の結晶が析出するほうが機械強度特性の点で有利となるため、MSiO3が析出しやすいものであることが望ましいため、この析出結晶組成に近くなるように、SiO2とMOとの比率を、モル比で1(SiO2/MO=1)に近付けたガラスを用いることが望ましい。
【0015】
また、表層部を構成するガラスに含まれるSiO2は、通常34〜73重量%の範囲にあることが好ましく、内層部を構成する材料に含まれるガラスに含まれるSiO2は、通常22〜60重量%の範囲にあることが好ましい。
【0016】
すなわち、表層部を構成する材料に含まれるガラスは、34〜73重量%のSiO2と、SiO2/MO(モル比)が2付近となるような量のMOと、30重量%までのB23と、30重量%までのAl23とを含むものであることが好ましく、また、内層部を構成する材料に含まれるガラスは、22〜60重量%のSiO2と、SiO2/MO(モル比)が1付近となるような量のMOと、20重量%までのB23と、30重量%までのAl23とを含むものであることが好ましい。
【0017】
なお、本発明においては、表層部を構成する材料は、フィラーとしてのAl23を30〜60重量%の範囲で含むことが望ましい。
また、内層部を構成する材料は、フィラーとしてのAl23を40〜70重量%の範囲で含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明の多層セラミック基板においては、前記表層部に含まれる前記ガラスの結晶化温度が、910℃〜950℃の範囲にあることが好ましい。
【0019】
なお、ガラスの結晶化温度を調整する方法としては、
(a)ガラスに、予め結晶化を促す種結晶を添加する方法、
(b)SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種)−B23−Al23系ガラスを用いる場合に、ガラスとAl23フィラーの粒径を変化させる方法、
(c)上記(a)と(b)を組み合わせる方法
などがあり、本発明においては、いずれの方法を適用することも可能である。
具体的には、SiO2−MO−B23−Al23系ガラスを用いる場合に種結晶の添加量を増やすとガラスの結晶化温度が低下し、MAl2Si28が析出しやすくなる。
【0020】
また、ガラスや、Al23フィラーの粒径を小さくすると、両者の反応が促進されるためMAl2Si28が析出しやすくなる。
【0021】
また、本発明の電子部品は、上記本発明の多層セラミック基板の前記表面電極上に、表面実装型チップ部品が搭載されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の多層セラミック基板は、内層部と、内層部の両主面側に位置する表層部とが積層された積層構造を有し、表層部が上述のようなガラスとAl23フィラーとを含むガラスセラミック系材料を焼成することにより形成されており、表層部の熱膨張係数が、内層部の熱膨張係数よりも小さく、かつ、表層部への析出結晶であるMAl2Si28と、表層部中のAl23の、XRD分析によるピーク強度比が0.05≦(MAl2Si28/Al23)≦5の範囲となるように構成されていることから、抗折強度などの機械的強度に優れ、表面電極の表層部への接合強度が大きく、表層部(セラミック層)の耐電圧が高く、表面電極と、該表層を介して表面電極と対向する内部電極との絶縁性(層間絶縁性)を十分に確保することが可能な信頼性の高い多層セラミック基板を得ることが可能になる。
【0023】
このような効果が得られるのは、以下のようなメカニズムによるものと考えられる。
多層セラミック基板を構成する表層部中のガラスが結晶化しすぎると、表層部に存在する結晶化していないガラスの量が減少するため表面電極との密着性が十分に確保できず、表面電極の多層セラミック基板の表層への接合強度が低下する。
一方で、表層部のガラスの結晶化の程度が低すぎると、多層セラミック基板の抗折強度が低下する。これは、表層部に圧縮応力がかかったときの応力の逃げやすさに、ガラスの結晶化の程度が影響するからである。すなわち、表層部のガラスの結晶化の程度が低いと、結晶化していない軟質のガラスが多く残るため、表層部に生じる圧縮応力が緩和されやすくなるのに対し、表層部のガラスの結晶化が進むと、硬質の結晶の存在によって圧縮応力が緩和されにくくなり、表層部と内層部の熱膨張係数差による多層セラミック基板全体の強度向上の効果が得られやすくなる。
さらに、表層部のガラスの結晶化の程度が低すぎると、表層部に存在する結晶化していないガラスの割合が多くなって、表面電極を構成する金属がガラス中に拡散しやすくなり、表層部の耐電圧が低下して、絶縁不良を引き起こす。
【0024】
すなわち、XRD分析によるMAl2Si28と、Al23のピーク強度比が、表層部のガラスの結晶化の程度を把握する指標としての機能を果たすため、該ピーク強度比を、0.05≦(MAl2Si28/Al23)≦5の範囲に保つことにより、望ましい結晶化度を実現して、上述のような本発明の作用効果を得ることが可能になる。
【0025】
また、本発明においては、表層部が、SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種)−B23−Al23系ガラスと、Al23フィラーとを含むものである場合に、上述の本発明の要件、すなわち、MAl2Si28(MはCa,Mg,Sr,Baからなる群より選ばれる少なくとも1種)と、Al23のピーク強度比が、0.05≦(MAl2Si28/Al23)≦5の範囲にあるという要件を満たすことにより、上述のような本発明の作用効果を奏する多層セラミック基板をさらに確実に得ることが可能になる。
【0026】
また、表層部に含まれるガラスの結晶化温度が、910℃〜950℃の範囲にある場合、上述の本発明の作用効果をより確実に得ることが可能になり、好ましい。
【0027】
また、本発明の電子部品においては、多層セラミック基板の表層部への接合強度に優れた表面電極上に、表面実装型チップ部品が搭載されていることから、実装信頼性に優れた電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態にかかる多層セラミック基板の表面にチップ部品が搭載された、本発明の一実施形態にかかる電子部品の構成を示す正面断面図である。
【図2】内層部形成用グリーンシートの両主面側に、表層部形成用グリーンシートが積層され、さらにその外側に拘束層用グリーンシートが積層された複合積層体の構成を示す正面断面図である。
【図3】焼成後に拘束層を除去することにより得られる多層セラミック基板(半導体デバイスやチップコンデンサなどのチップ部品を搭載する前の多層セラミック基板)の構成を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0030】
[多層セラミック基板の構成]
図1は、本発明の一実施形態にかかる電子部品であって、本発明の一実施形態にかかる多層セラミック基板の、表面電極上にチップ部品を搭載した電子部品を示す正面断面図である。
【0031】
この電子部品Aを構成する多層セラミック基板1は、内層部10と、内層部10の両主面側に内層部10を積層方向に挟むように積層、配設された第1および第2の表層部11,12とを備えた積層構造を有している。
【0032】
なお、内層部10は、少なくとも1層の内層部セラミック層10aを備えた構成とされており、第1および第2の表層部11,12も、それぞれ、少なくとも1層の表層部セラミック層11a,12aを備えた構成とされている。
【0033】
また、この多層セラミック基板1は、その表面や内部に配設された導体13を備えている。
この導体13には、多層セラミック基板1の一方側主面(上面)に形成され、例えば、半導体デバイス2aや、チップコンデンサ2bなどのチップ部品が搭載される表面電極13a、他方側主面に配設され、多層セラミック基板1を図示しないマザーボード上に実装する際の電気的接続手段として機能する表面電極13b、多層セラミック基板1の内部に配設され、コンデンサやインダクタのような受動素子を構成したり、素子間を電気的に接続する接続配線として機能したりする内部導体13c、層間接続のためのビアホール導体13dなどが含まれている。
【0034】
そして、本発明の多層セラミック基板1においては、内層部10および第1および第2の表層部11,12を構成する材料として、SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、この実施形態ではCaO)−B23−Al23系ガラスと、Al23フィラーとを含む、低温焼成が可能なガラスセラミックが用いられている。
【0035】
また、第1および第2の表層部11,12は、その熱膨張係数が、内層部10の熱膨張係数よりも小さく、かつ、第1および第2の表層部11,12の、XRD分析によるCaAl2Si28(アノーサイト)と、Al23のピーク強度比(CaAl2Si28/Al23)が、0.05〜5の範囲となるように構成されている。
【0036】
上述のように、この実施形態では、MがCaであり、MOがCaOである場合を例にとって説明しているが、MはCa,Mg,Sr,Baからなる群より選ばれる少なくとも1種であればよく、また、MOは、それらの酸化物であればよい。
【0037】
なお、本発明の多層セラミック基板においては、製造時の焼成工程でガラスから適量の結晶が析出するほうが機械強度特性の点で有利となるため、ガラス組成は析出結晶組成に近いほうが好ましい。
【0038】
例えば、SiO2−MO−Al23−B23系のガラスの場合、MAl2Si28やMSiO3の結晶が析出しやすいため、この析出結晶組成に近くなるように、SiO2とMOとの比率を調整することが望ましい。
【0039】
具体的には、表層部11,12のガラス組成は、熱膨張係数を下げるためにMAl2Si28の結晶を多く析出させる見地から、SiO2とMO(例えば、CaO)の比率を、モル比で2(SiO2/MO=2)に近付けることが望ましい。
【0040】
また、内層部10のガラス組成は、MSiO3の結晶を多く析出させることが好ましく、その見地からはSiO2とMOとの比率を、モル比で1(SiO2/MO=1)に近付けることが望ましい。
【0041】
なお、内層部10のガラス組成は、表層部11,12に比べて、MO比率が高くなり、焼成後のめっき処理で浸食を受けやすいが、表面部に露出していないため、致命的なダメージは受けにくい。
【0042】
熱膨張係数の差をより大きくするため、表層部11,12において、ガラス中のSiO2を多くしすぎると、焼成時のガラス粘度が十分に低下しなくなるため焼結不良が生じ、MOを多くしすぎると、熱膨張係数の差を十分に取れなくなる傾向がある。
また、熱膨張係数の差をより大きくするため、内層部10においてガラス中のMOを多くしすぎると、耐湿性が低下して絶縁不良が生じるため好ましくない。また、SiO2を多くしすぎると、熱膨張係数の差を十分に取れなくなる傾向がある。
【0043】
以上のことから、ガラス中のSiO2とMOとの比率を、表層部11,12と内層部10とにおいてそれぞれ前述したような範囲とすることが好ましい。
【0044】
また、表層部11,12を構成する材料に含まれるガラスは、34〜73重量%のSiO2と、SiO2/MO(モル比)が2付近となるような量のMOと、30重量%までのB23と、30重量%までのAl23とを含むことが望ましい。
また、内層部10を構成する材料に含まれるガラスは、22〜60重量%のSiO2と、SiO2/MO(モル比)が1付近となるような量のMOと、20重量%までのB23と、30重量%までのAl23とを含むことが望ましい。
【0045】
その理由は次のとおりである。
(a)B23は、焼成時に焼結が円滑に進行するよう、ガラスに適度な粘度を与える機能を果たすが、B23が多すぎると、粘度が下がりすぎるため、過焼成となり、表面に気孔が生じて絶縁不良を引き起こしやすい。他方、B23が少なすぎると、粘度が高く、焼結不良が生じやすくなる。
(b)Al23は、表層部11,12の場合、析出結晶を構成する成分となるが、このAl23が多すぎても、少なすぎても、結晶析出が起こりにくくなる。
(c)また、Al23により、ガラスの化学的安定性が向上するため、MOが相対的に多い内層部10ではAl23の割合が多くなると、めっき耐性および耐湿性が向上する。一方、熱膨張係数に対して、Al23はSiO2とMOとの中間的な寄与をするので、Al23の量が多くなりすぎると、表層部と内層部の熱膨張係数の差を確保することが困難になる。
【0046】
また、表層部11,12を構成する材料は、フィラーとしてのAl23を30〜60重量%含み、内層部10を構成する材料は、フィラーとしてのAl23を40〜70重量%含むことがより好ましい。
【0047】
その理由は以下の通りである。
Al23フィラーは、機械的強度を向上させるのに寄与する。そのため、Al23フィラーが少なすぎると、十分な強度が得られなくなる。特に、引っ張り応力が働く内層部10では、機械的強度が十分でないと、内層部10から破壊するため、圧縮応力により表層部11,12を強化した効果が十分に得られなくなる。したがって、内層部10では、表層部11,12より多くAl23フィラーを含有させて強度を向上させることで、より大きな熱膨張係数の差にも耐えるようになり、表層部11,12の強化の効果をより確実に得ことができる。
【0048】
また、Al23フィラーも、熱膨張係数に対して、表層部11,12中のガラスと内層部10中のガラスとの中間的な寄与をするので、Al23フィラーが多くなりすぎると、熱膨張係数の差を確保することができなくなる。
【0049】
[多層セラミック基板の作製]
次に、上述の多層セラミック基板1の製造方法について説明する。
【0050】
<表層部形成用グリーンシートの作製>
SiO2−CaO−B23−Al23系ガラスAと、フィラーとしてのAl23粉末の混合粉末に、溶剤、分散剤、バインダ、可塑剤を配合して作製したスラリーをPETフィルム上に塗布して表層部形成用グリーンシートを作製した。
なお、ガラスAとしては、表1に示すような組成を有するSiO2−CaO−B23−Al23系ガラスを用いた。なお、ガラスAにおいては、SiO2/MO(モル比)が約2となるように組成の調整が行われている。
【0051】
【表1】
【0052】
なお、ガラスAとAl23フィラーとの配合割合は、重量比で6:4となるようにした。
この実施形態では、表層部形成用グリーンシートとして、含まれるガラスの結晶化温度が、900℃≦結晶化温度≦970℃の範囲のものを作製した。
【0053】
ガラスの結晶化温度を、900℃≦結晶化温度≦970℃の範囲で変化させるにあたっては、結晶化を促す種結晶の添加量を調整することにより、ガラスの結晶化温度を上記の範囲で変化させるようにした。
具体的には、上記種結晶を表3に示すような割合(ガラスとAl23フィラーの総量に対する割合)で添加することにより、結晶化温度を900〜970℃の範囲で変化させた。
【0054】
ただし、ガラスの結晶化温度を変化させる方法は、種結晶を添加する方法に限らず、ガラスやAl23フィラーの粒径を変化させる方法や、種結晶を添加する方法と、粒径を変化させる方法の両者を組み合わせる方法などを適用することも可能である。
【0055】
<内層部形成用グリーンシートの作製>
SiO2−CaO−B23−Al23系ガラスBと、フィラーとしてのAl23粉末の混合粉末に、溶剤、分散剤、バインダ、可塑剤を配合して作製したスラリーをPETフィルム上に塗布して内層部形成用グリーンシートを作製した。
なお、ガラスBとしては、表2に示すような組成を有するSiO2−CaO−B23−Al23系ガラスを用いた。なお、ガラスBにおいては、SiO2/MO(モル比)が約1となるように組成の調整が行われている。
【0056】
【表2】
【0057】
なお、ガラスBとAl23フィラーとの配合割合は、重量比で5:5となるようにした。
【0058】
<拘束層用のグリーンシートの作製>
Al23粉末に、溶剤、分散剤、バインダ、および可塑剤を配合したスラリーをPETフィルム上に塗布して拘束層用グリーンシートを作製した。
【0059】
<表面電極および内部導体形成用の導電性ペーストの作製>
導電成分であるAg粉末に、有機ビヒクルと溶剤を配合して混練することにより、表面電極および内部導体形成用の導電性ペースト(Agペースト)を作製した。
【0060】
<グリーンシートへの導電性ペーストの印刷>
それから、上述のようにして作製した表層部形成用グリーンシートおよび内層部形成用グリーンシートに、表面電極および内部導体形成用のAgペースト116(図2参照)を印刷した。
【0061】
<積層・焼成>
それから、Agペースト116が印刷された各グリーンシートと拘束層用グリーンシートとを積層、圧着することにより、図2に模式的に示すように、内層部形成用グリーンシート110の両主面側に、表層部形成用グリーンシート111,112が積層され、さらにその外側に拘束層用グリーンシート113,114が積層された構造を有する複合積層体100を形成した。
【0062】
それから、この複合積層体100を、拘束層用グリーンシート113,114は焼結しないが、その他の基板材料(内層部形成用グリーンシート110、表層部形成用グリーンシート111,112)と、Agペースト116は十分に焼結する温度で焼成する。焼成後に、表面電極13a,13B、内部導体13c、ビアホール導体13dなどの導体13(図1,図3参照)となる。
【0063】
焼成後に、複合積層体から拘束層を除去することにより、図3に示すような、多層セラミック基板(半導体デバイス2a(図1)や、チップコンデンサ2b(図1)などのチップ部品を搭載する前の多層セラミック基板)1を得た。
【0064】
上述のように、この実施形態では、焼成工程で、拘束層用グリーンシートを最外層として配置した複合積層体を焼成するようにしているので、表層部形成用グリーンシートおよび内層部形成用グリーンシートが焼成工程で、主面方向に収縮することを抑制することができる。そのため、多層セラミック基板の不所望な変形を抑制し、寸法精度を高めることができるとともに、焼成時における表層部と内層部との層間剥離を生じにくくすることができる。
【0065】
なお、この実施形態では、表3に示すように、XRD分析によるCaAl2Si28/Al23のピーク強度比が、0.05〜5の範囲内にある本発明の要件を満たす多層セラミック基板(表3の実施例1〜5の試料)を作製するとともに、CaAl2Si28/Al23のピーク強度比が、0.05〜5の範囲を外れた試料(比較例1〜3の試料)も併せて作製し、各試料の特性を評価することにより、本発明の効果を確認した。
【0066】
[特性の評価]
作製した各多層セラミック基板について、
(1)表層部の結晶化温度、
(2)表層部のCaAl2Si28/Al23ピーク強度比(XRD分析によるピーク強度比)、
(3)表層部熱膨張係数
(4)内層部熱膨張係数
(5)電極接合強度
(6)抗折強度
(7)表層部絶縁抵抗不良率
を調べた。その結果を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
なお、表3の表層部の結晶化温度は、セラミックグリーンシートを焼成した際のガラスの結晶析出に伴う発熱反応のピーク温度であり、示差走査熱量測定(DSC)により測定される値である。
【0069】
また、表層部のCaAl2Si28/Al23ピーク強度比は、XRD分析により、X線の線源としてCuKαを用い、CaAl2Si28(アノーサイト)は28°付近、Al23は25.6°付近の角度でピークを調べ、その比(CaAl2Si28/Al23)を求めたものである。
【0070】
また、表層部および内層部の熱膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)を用いて求めたものである。
【0071】
電極接合強度は、2mm□の電極に対して、引張速度20mm/minの条件で引張試験を行って求めたものである。
【0072】
また、抗折強度は、多層セラミック基板について、3点曲げ試験を実施して測定したものである。
【0073】
さらに、表層部絶縁抵抗不良率は、絶縁抵抗測定機で50V印加時の絶縁抵抗を調べたものであり、抵抗が1010Ω未満のものを不良として不良率を求めたものである。評価個数は100個とした。
【0074】
表3に示すように、種結晶の添加量を少なくして表層部の結晶化温度を高くした比較例1,2の試料、すなわち、表層部のCaAl2Si28/Al23ピーク強度比が0.01の比較例1の試料および、表層部のCaAl2Si28/Al23ピーク強度比が0.03の比較例2の試料の場合、電極接合強度は高くなるものの、抗折強度は低くなることが確認された。これは、焼成後の表層部のCaAl2Si28の析出量が少なく、残留ガラス量が増えることによるものである。
しかし、比較例1,2の試料の場合、結晶化度が低くなるため、ガラスへのAgの拡散量が増えて表層部の抵抗が低下し、絶縁抵抗不良率が高くなるため好ましくないことが確認された。
【0075】
また、種結晶の添加量を多くして表層部の結晶化温度を低くした比較例3の試料、すなわち、表層部のCaAl2Si28/Al23ピーク強度比が7の試料の場合、表層部のCaAl2Si28の析出度が高いため、抗折強度が高くなることが確認された。また、残留ガラス量が少なくなるため、ガラスへのAgの拡散量が減少して、表層部の抵抗が高くなり、絶縁不良の発生が防止されることが確認された。
しかし、比較例3の試料の場合、表層部のCaAl2Si28の析出度が高くなり過ぎて残留ガラス量が少なくなるため、電極接合強度が不十分になることが確認された。
【0076】
一方、表層部の結晶化温度を適切な範囲に設定して、表層部のCaAl2Si28/Al23のピーク強度比が、本発明の要件(0.05≦CaAl2Si28/Al23≦5の要件)を満たすようにした表3の実施例1〜5の試料の場合、抗折強度と電極接合強度を向上させることが可能になるとともに、表層部の絶縁抵抗不良を防止できることが確認された。
【0077】
なお、上記実施形態では、MOがCaOである場合を例にとって説明したが、MOがMgO,SrO,およびBaOのいずれかである場合にも、同様の効果が得られることが確認されている。
【0078】
本発明はさらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、表面電極の構成材料、表面電極や内部導体の具体的な配設態様、表層部および内層部の厚みや配設態様などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
A 電子部品
1 多層セラミック基板
2a 半導体デバイス
2b チップコンデンサ
10 内層部
10a 内層部セラミック層
11 第1の表層部
12 第2の表層部
11a,12a 表層部セラミック層
13 導体
13a,13b 表面電極
13c 内部導体
13d ビアホール導体
100 複合積層体
110 内層部形成用グリーンシート
111,112 表層部形成用グリーンシート
113,114 拘束層用グリーンシート
116 Agペースト
【図1】
【図2】
【図3】

【手続補正書】
【提出日】20141218
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層セラミック基板およびそれを用いた電子部品に関し、詳しくは、多層セラミック基板の機械的強度、表層部の絶縁抵抗、および多層セラミック基板の表層部への表面電極の接合強度などの向上を図るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスなどの電子部品を複数配設したモジュールなどの用途に、配線導体を3次元的に配置した多層セラミック基板が広く用いられている。
【0003】
このような多層セラミック基板として、抗折強度を向上させるために、ガラスと、残部の結晶質とからなる低温焼成多層セラミック基板において、最外層の熱膨張率を内層の熱膨張率より小さくした多層セラミック基板が提案されている(特許文献1参照)。
そして、この多層セラミック基板によれば、熱膨張率の差により、焼成後の冷却で最外層に圧縮応力が生じ、抗折強度が著しく改善されるとされている。
【0004】
また、内層部と、その両主面側に位置する表層部とからなる積層構造を有し、内層部と表層部との各々は、少なくとも1つのセラミック層をもって構成された多層セラミック基板において、表層部の熱膨張係数をα1[ppmK-1]とし、内層部の熱膨張係数をα2[ppmK-1]としたとき、0.3≦α2−α1≦1.5の関係を満たし、かつ、内層部には、針状結晶が析出していることを特徴とする多層セラミック基板が提案されている(特許文献2)。
【0005】
なお、特許文献2においては、内層部が、例えばホウケイ酸ガラスを含むものであることが好ましいとされている。また、内層部に析出する針状結晶として、例えば、ウォラストナイト、シリマナイト、ルチルおよびムライトの少なくとも1種が示されている。
【0006】
また、さらに他の多層セラミック基板として、表層部と内層部からなる積層構造を有する多層セラミック基板であって、表層部の熱膨張係数α1と内層部の熱膨張係数α2の関係が1.0≦α2−α1≦4.3の関係を満たし、表層部を構成する材料と内層部を構成する材料との間で共通する成分の重量比率が75重量%以上である多層セラミック基板が提案されている(特許文献3)。
この特許文献3の多層セラミック基板によれば、抗折強度を向上させることが可能になるとともに、層間剥離(デラミネーション)を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6‐29664号公報
【特許文献2】特開2007−73728号公報
【特許文献3】国際公開第2007/142112号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、多層セラミック基板においては、上述のように、抗折強度を高めること、層間剥離を抑制することも重要であるが、多層セラミック基板の表面に形成される表面電極(外部との導通のための電極や表面配線導体など)と、多層セラミック基板の表層部との接合強度を高くすること、表面電極が形成される、多層セラミック基板の表層部(セラミック層)の絶縁性を高く保って、表面電極と、該表層部を介して表面電極と対向する内部電極との絶縁性を確保することも非常に重要である。
【0009】
しかし、上記特許文献1〜3に示されているような、ガラスの結晶化を利用する材料系において、抗折強度などの基板の機械的強度、表面電極と表層部(セラミック層)の接合強度、および表層部(セラミック層)の絶縁性、の3つの特性を同時に向上させることは容易ではない。すなわち、表面電極と多層セラミック基板の表層部(セラミック層)の密着性を向上させるには、表層部のガラスの結晶化を抑制し、残留ガラス量を多くする必要があるが、残留ガラス量を多くすると、多層セラミック基板の表層部(セラミック層)への表面電極を構成する電極材料の拡散量が多くなり、多層セラミック基板の表層部(セラミック層)の絶縁性が低下してしまうことになる。
【0010】
また、多層セラミック基板を構成する表層部(セラミック層)中のガラスの結晶化度によっては、十分な基板の機械的強度が得られない場合がある。
そのため、さらに信頼性の高い多層セラミック基板が求められているのが実情である。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、抗折強度などの基板の機械的強度に優れ、かつ、表面電極の多層セラミック基板の表層部への接合強度が大きく、しかも、多層セラミック基板を構成する表層部(セラミック層)の絶縁抵抗が高く、表面電極と、該表層部を介して表面電極と対向する内部電極との絶縁性(層間絶縁性)を十分に確保することが可能な、信頼性の高い多層セラミック基板およびそれを用いた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の多層セラミック基板は、
内層部と、前記内層部の表裏両主面側に積層された表層部と、前記表層部の少なくとも一方の表面に配設された表面電極とを備えた多層セラミック基板であって、
前記表層部は、SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種)−B23−Al23系ガラスと、Al23フィラーとを含むガラスセラミック系材料を焼成することにより形成されており、
前記表層部の熱膨張係数は、前記内層部の熱膨張係数よりも小さく、かつ、
前記表層部への析出結晶であるMAl2Si28(MはCa,Mg,Sr,Baからなる群より選ばれる少なくとも1種)と、前記表層部中のAl23の、XRD分析によるピーク強度比が、下記の式(1):
0.05≦(MAl2Si28/Al23)≦ ……(1)
の範囲にあること
を特徴としている。
【0013】
なお、本発明において、表層部に用いられるガラス、すなわち、SiO2と、MO(Ca,Mg,Sr,Baからなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化物)と、Al23とを含有するガラスとしては、例えば、SiO2と、MO(ただし、MOは、CaO、MgO、SrOおよびBaOから選ばれた少なくとも1種)を含み、SiO2とMOの割合がSiO2:MO=23:7〜17:13(モル比)の範囲にあるものなどを用いることができる。
ただし、表層部に用いられるガラスは、MAl2Si28の結晶が析出しやすいガラスであることが好ましいため、この析出結晶組成に近くなるように、SiO2とMOとの比率が調整されたガラスを用いることが望ましい。すなわち、表層部に用いられるガラスとしては、SiO2とMO(例えば、CaO)の比率を、モル比で2(SiO2/MO=2)に近付けたガラスを用いることが望ましい。
【0014】
また、本発明の多層セラミック基板においては、内層部も、SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種)−B23−Al23系ガラスと、Al23フィラーとを含むガラスセラミック系材料を焼成することにより形成されたものであることが望ましい。なお、内層部に用いられるガラスとしては、SiO2とMOの割合がモル比で、SiO2:MO=19:11〜11:19の範囲にあるものなどが例示される。内層部に用いられるガラスは、製造時の焼成工程でガラスから適量の結晶が析出するほうが機械強度特性の点で有利となるため、MSiO3が析出しやすいものであることが望ましいため、この析出結晶組成に近くなるように、SiO2とMOとの比率を、モル比で1(SiO2/MO=1)に近付けたガラスを用いることが望ましい。
【0015】
また、表層部を構成するガラスに含まれるSiO2は、通常34〜73重量%の範囲にあることが好ましく、内層部を構成する材料に含まれるガラスに含まれるSiO2は、通常22〜60重量%の範囲にあることが好ましい。
【0016】
すなわち、表層部を構成する材料に含まれるガラスは、34〜73重量%のSiO2と、SiO2/MO(モル比)が2付近となるような量のMOと、30重量%までのB23と、30重量%までのAl23とを含むものであることが好ましく、また、内層部を構成する材料に含まれるガラスは、22〜60重量%のSiO2と、SiO2/MO(モル比)が1付近となるような量のMOと、20重量%までのB23と、30重量%までのAl23とを含むものであることが好ましい。
【0017】
なお、本発明においては、表層部を構成する材料は、フィラーとしてのAl23を30〜60重量%の範囲で含むことが望ましい。
また、内層部を構成する材料は、フィラーとしてのAl23を40〜70重量%の範囲で含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明の多層セラミック基板においては、前記表層部に含まれる前記ガラスの結晶化温度が、910℃〜950℃の範囲にあることが好ましい。
【0019】
なお、ガラスの結晶化温度を調整する方法としては、
(a)ガラスに、予め結晶化を促す種結晶を添加する方法、
(b)SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種)−B23−Al23系ガラスを用いる場合に、ガラスとAl23フィラーの粒径を変化させる方法、
(c)上記(a)と(b)を組み合わせる方法
などがあり、本発明においては、いずれの方法を適用することも可能である。
具体的には、SiO2−MO−B23−Al23系ガラスを用いる場合に種結晶の添加量を増やすとガラスの結晶化温度が低下し、MAl2Si28が析出しやすくなる。
【0020】
また、ガラスや、Al23フィラーの粒径を小さくすると、両者の反応が促進されるためMAl2Si28が析出しやすくなる。
【0021】
また、本発明の電子部品は、上記本発明の多層セラミック基板の前記表面電極上に、表面実装型チップ部品が搭載されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の多層セラミック基板は、内層部と、内層部の両主面側に位置する表層部とが積層された積層構造を有し、表層部が上述のようなガラスとAl23フィラーとを含むガラスセラミック系材料を焼成することにより形成されており、表層部の熱膨張係数が、内層部の熱膨張係数よりも小さく、かつ、表層部への析出結晶であるMAl2Si28と、表層部中のAl23の、XRD分析によるピーク強度比が0.05≦(MAl2Si28/Al23)≦の範囲となるように構成されていることから、抗折強度などの機械的強度に優れ、表面電極の表層部への接合強度が大きく、表層部(セラミック層)の耐電圧が高く、表面電極と、該表層を介して表面電極と対向する内部電極との絶縁性(層間絶縁性)を十分に確保することが可能な信頼性の高い多層セラミック基板を得ることが可能になる。
【0023】
このような効果が得られるのは、以下のようなメカニズムによるものと考えられる。
多層セラミック基板を構成する表層部中のガラスが結晶化しすぎると、表層部に存在する結晶化していないガラスの量が減少するため表面電極との密着性が十分に確保できず、表面電極の多層セラミック基板の表層への接合強度が低下する。
一方で、表層部のガラスの結晶化の程度が低すぎると、多層セラミック基板の抗折強度が低下する。これは、表層部に圧縮応力がかかったときの応力の逃げやすさに、ガラスの結晶化の程度が影響するからである。すなわち、表層部のガラスの結晶化の程度が低いと、結晶化していない軟質のガラスが多く残るため、表層部に生じる圧縮応力が緩和されやすくなるのに対し、表層部のガラスの結晶化が進むと、硬質の結晶の存在によって圧縮応力が緩和されにくくなり、表層部と内層部の熱膨張係数差による多層セラミック基板全体の強度向上の効果が得られやすくなる。
さらに、表層部のガラスの結晶化の程度が低すぎると、表層部に存在する結晶化していないガラスの割合が多くなって、表面電極を構成する金属がガラス中に拡散しやすくなり、表層部の耐電圧が低下して、絶縁不良を引き起こす。
【0024】
すなわち、XRD分析によるMAl2Si28と、Al23のピーク強度比が、表層部のガラスの結晶化の程度を把握する指標としての機能を果たすため、該ピーク強度比を、0.05≦(MAl2Si28/Al23)≦の範囲に保つことにより、望ましい結晶化度を実現して、上述のような本発明の作用効果を得ることが可能になる。
【0025】
また、本発明においては、表層部が、SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種)−B23−Al23系ガラスと、Al23フィラーとを含むものである場合に、上述の本発明の要件、すなわち、MAl2Si28(MはCa,Mg,Sr,Baからなる群より選ばれる少なくとも1種)と、Al23のピーク強度比が、0.05≦(MAl2Si28/Al23)≦の範囲にあるという要件を満たすことにより、上述のような本発明の作用効果を奏する多層セラミック基板をさらに確実に得ることが可能になる。
【0026】
また、表層部に含まれるガラスの結晶化温度が、910℃〜950℃の範囲にある場合、上述の本発明の作用効果をより確実に得ることが可能になり、好ましい。
【0027】
また、本発明の電子部品においては、多層セラミック基板の表層部への接合強度に優れた表面電極上に、表面実装型チップ部品が搭載されていることから、実装信頼性に優れた電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態にかかる多層セラミック基板の表面にチップ部品が搭載された、本発明の一実施形態にかかる電子部品の構成を示す正面断面図である。
【図2】内層部形成用グリーンシートの両主面側に、表層部形成用グリーンシートが積層され、さらにその外側に拘束層用グリーンシートが積層された複合積層体の構成を示す正面断面図である。
【図3】焼成後に拘束層を除去することにより得られる多層セラミック基板(半導体デバイスやチップコンデンサなどのチップ部品を搭載する前の多層セラミック基板)の構成を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0030】
[多層セラミック基板の構成]
図1は、本発明の一実施形態にかかる電子部品であって、本発明の一実施形態にかかる多層セラミック基板の、表面電極上にチップ部品を搭載した電子部品を示す正面断面図である。
【0031】
この電子部品Aを構成する多層セラミック基板1は、内層部10と、内層部10の両主面側に内層部10を積層方向に挟むように積層、配設された第1および第2の表層部11,12とを備えた積層構造を有している。
【0032】
なお、内層部10は、少なくとも1層の内層部セラミック層10aを備えた構成とされており、第1および第2の表層部11,12も、それぞれ、少なくとも1層の表層部セラミック層11a,12aを備えた構成とされている。
【0033】
また、この多層セラミック基板1は、その表面や内部に配設された導体13を備えている。
この導体13には、多層セラミック基板1の一方側主面(上面)に形成され、例えば、半導体デバイス2aや、チップコンデンサ2bなどのチップ部品が搭載される表面電極13a、他方側主面に配設され、多層セラミック基板1を図示しないマザーボード上に実装する際の電気的接続手段として機能する表面電極13b、多層セラミック基板1の内部に配設され、コンデンサやインダクタのような受動素子を構成したり、素子間を電気的に接続する接続配線として機能したりする内部導体13c、層間接続のためのビアホール導体13dなどが含まれている。
【0034】
そして、本発明の多層セラミック基板1においては、内層部10および第1および第2の表層部11,12を構成する材料として、SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、この実施形態ではCaO)−B23−Al23系ガラスと、Al23フィラーとを含む、低温焼成が可能なガラスセラミックが用いられている。
【0035】
また、第1および第2の表層部11,12は、その熱膨張係数が、内層部10の熱膨張係数よりも小さく、かつ、第1および第2の表層部11,12の、XRD分析によるCaAl2Si28(アノーサイト)と、Al23のピーク強度比(CaAl2Si28/Al23)が、0.05〜5の範囲となるように構成されている。
【0036】
上述のように、この実施形態では、MがCaであり、MOがCaOである場合を例にとって説明しているが、MはCa,Mg,Sr,Baからなる群より選ばれる少なくとも1種であればよく、また、MOは、それらの酸化物であればよい。
【0037】
なお、本発明の多層セラミック基板においては、製造時の焼成工程でガラスから適量の結晶が析出するほうが機械強度特性の点で有利となるため、ガラス組成は析出結晶組成に近いほうが好ましい。
【0038】
例えば、SiO2−MO−Al23−B23系のガラスの場合、MAl2Si28やMSiO3の結晶が析出しやすいため、この析出結晶組成に近くなるように、SiO2とMOとの比率を調整することが望ましい。
【0039】
具体的には、表層部11,12のガラス組成は、熱膨張係数を下げるためにMAl2Si28の結晶を多く析出させる見地から、SiO2とMO(例えば、CaO)の比率を、モル比で2(SiO2/MO=2)に近付けることが望ましい。
【0040】
また、内層部10のガラス組成は、MSiO3の結晶を多く析出させることが好ましく、その見地からはSiO2とMOとの比率を、モル比で1(SiO2/MO=1)に近付けることが望ましい。
【0041】
なお、内層部10のガラス組成は、表層部11,12に比べて、MO比率が高くなり、焼成後のめっき処理で浸食を受けやすいが、表面部に露出していないため、致命的なダメージは受けにくい。
【0042】
熱膨張係数の差をより大きくするため、表層部11,12において、ガラス中のSiO2を多くしすぎると、焼成時のガラス粘度が十分に低下しなくなるため焼結不良が生じ、MOを多くしすぎると、熱膨張係数の差を十分に取れなくなる傾向がある。
また、熱膨張係数の差をより大きくするため、内層部10においてガラス中のMOを多くしすぎると、耐湿性が低下して絶縁不良が生じるため好ましくない。また、SiO2を多くしすぎると、熱膨張係数の差を十分に取れなくなる傾向がある。
【0043】
以上のことから、ガラス中のSiO2とMOとの比率を、表層部11,12と内層部10とにおいてそれぞれ前述したような範囲とすることが好ましい。
【0044】
また、表層部11,12を構成する材料に含まれるガラスは、34〜73重量%のSiO2と、SiO2/MO(モル比)が2付近となるような量のMOと、30重量%までのB23と、30重量%までのAl23とを含むことが望ましい。
また、内層部10を構成する材料に含まれるガラスは、22〜60重量%のSiO2と、SiO2/MO(モル比)が1付近となるような量のMOと、20重量%までのB23と、30重量%までのAl23とを含むことが望ましい。
【0045】
その理由は次のとおりである。
(a)B23は、焼成時に焼結が円滑に進行するよう、ガラスに適度な粘度を与える機能を果たすが、B23が多すぎると、粘度が下がりすぎるため、過焼成となり、表面に気孔が生じて絶縁不良を引き起こしやすい。他方、B23が少なすぎると、粘度が高く、焼結不良が生じやすくなる。
(b)Al23は、表層部11,12の場合、析出結晶を構成する成分となるが、このAl23が多すぎても、少なすぎても、結晶析出が起こりにくくなる。
(c)また、Al23により、ガラスの化学的安定性が向上するため、MOが相対的に多い内層部10ではAl23の割合が多くなると、めっき耐性および耐湿性が向上する。一方、熱膨張係数に対して、Al23はSiO2とMOとの中間的な寄与をするので、Al23の量が多くなりすぎると、表層部と内層部の熱膨張係数の差を確保することが困難になる。
【0046】
また、表層部11,12を構成する材料は、フィラーとしてのAl23を30〜60重量%含み、内層部10を構成する材料は、フィラーとしてのAl23を40〜70重量%含むことがより好ましい。
【0047】
その理由は以下の通りである。
Al23フィラーは、機械的強度を向上させるのに寄与する。そのため、Al23フィラーが少なすぎると、十分な強度が得られなくなる。特に、引っ張り応力が働く内層部10では、機械的強度が十分でないと、内層部10から破壊するため、圧縮応力により表層部11,12を強化した効果が十分に得られなくなる。したがって、内層部10では、表層部11,12より多くAl23フィラーを含有させて強度を向上させることで、より大きな熱膨張係数の差にも耐えるようになり、表層部11,12の強化の効果をより確実に得ことができる。
【0048】
また、Al23フィラーも、熱膨張係数に対して、表層部11,12中のガラスと内層部10中のガラスとの中間的な寄与をするので、Al23フィラーが多くなりすぎると、熱膨張係数の差を確保することができなくなる。
【0049】
[多層セラミック基板の作製]
次に、上述の多層セラミック基板1の製造方法について説明する。
【0050】
<表層部形成用グリーンシートの作製>
SiO2−CaO−B23−Al23系ガラスAと、フィラーとしてのAl23粉末の混合粉末に、溶剤、分散剤、バインダ、可塑剤を配合して作製したスラリーをPETフィルム上に塗布して表層部形成用グリーンシートを作製した。
なお、ガラスAとしては、表1に示すような組成を有するSiO2−CaO−B23−Al23系ガラスを用いた。なお、ガラスAにおいては、SiO2/MO(モル比)が約2となるように組成の調整が行われている。
【0051】
【表1】
【0052】
なお、ガラスAとAl23フィラーとの配合割合は、重量比で6:4となるようにした。
この実施形態では、表層部形成用グリーンシートとして、含まれるガラスの結晶化温度が、900℃≦結晶化温度≦970℃の範囲のものを作製した。
【0053】
ガラスの結晶化温度を、900℃≦結晶化温度≦970℃の範囲で変化させるにあたっては、結晶化を促す種結晶の添加量を調整することにより、ガラスの結晶化温度を上記の範囲で変化させるようにした。
具体的には、上記種結晶を表3に示すような割合(ガラスとAl23フィラーの総量に対する割合)で添加することにより、結晶化温度を900〜970℃の範囲で変化させた。
【0054】
ただし、ガラスの結晶化温度を変化させる方法は、種結晶を添加する方法に限らず、ガラスやAl23フィラーの粒径を変化させる方法や、種結晶を添加する方法と、粒径を変化させる方法の両者を組み合わせる方法などを適用することも可能である。
【0055】
<内層部形成用グリーンシートの作製>
SiO2−CaO−B23−Al23系ガラスBと、フィラーとしてのAl23粉末の混合粉末に、溶剤、分散剤、バインダ、可塑剤を配合して作製したスラリーをPETフィルム上に塗布して内層部形成用グリーンシートを作製した。
なお、ガラスBとしては、表2に示すような組成を有するSiO2−CaO−B23−Al23系ガラスを用いた。なお、ガラスBにおいては、SiO2/MO(モル比)が約1となるように組成の調整が行われている。
【0056】
【表2】
【0057】
なお、ガラスBとAl23フィラーとの配合割合は、重量比で5:5となるようにした。
【0058】
<拘束層用のグリーンシートの作製>
Al23粉末に、溶剤、分散剤、バインダ、および可塑剤を配合したスラリーをPETフィルム上に塗布して拘束層用グリーンシートを作製した。
【0059】
<表面電極および内部導体形成用の導電性ペーストの作製>
導電成分であるAg粉末に、有機ビヒクルと溶剤を配合して混練することにより、表面電極および内部導体形成用の導電性ペースト(Agペースト)を作製した。
【0060】
<グリーンシートへの導電性ペーストの印刷>
それから、上述のようにして作製した表層部形成用グリーンシートおよび内層部形成用グリーンシートに、表面電極および内部導体形成用のAgペースト116(図2参照)を印刷した。
【0061】
<積層・焼成>
それから、Agペースト116が印刷された各グリーンシートと拘束層用グリーンシートとを積層、圧着することにより、図2に模式的に示すように、内層部形成用グリーンシート110の両主面側に、表層部形成用グリーンシート111,112が積層され、さらにその外側に拘束層用グリーンシート113,114が積層された構造を有する複合積層体100を形成した。
【0062】
それから、この複合積層体100を、拘束層用グリーンシート113,114は焼結しないが、その他の基板材料(内層部形成用グリーンシート110、表層部形成用グリーンシート111,112)と、Agペースト116は十分に焼結する温度で焼成する。焼成後に、表面電極13a,13B、内部導体13c、ビアホール導体13dなどの導体13(図1,図3参照)となる。
【0063】
焼成後に、複合積層体から拘束層を除去することにより、図3に示すような、多層セラミック基板(半導体デバイス2a(図1)や、チップコンデンサ2b(図1)などのチップ部品を搭載する前の多層セラミック基板)1を得た。
【0064】
上述のように、この実施形態では、焼成工程で、拘束層用グリーンシートを最外層として配置した複合積層体を焼成するようにしているので、表層部形成用グリーンシートおよび内層部形成用グリーンシートが焼成工程で、主面方向に収縮することを抑制することができる。そのため、多層セラミック基板の不所望な変形を抑制し、寸法精度を高めることができるとともに、焼成時における表層部と内層部との層間剥離を生じにくくすることができる。
【0065】
なお、この実施形態では、表3に示すように、XRD分析によるCaAl2Si28/Al23のピーク強度比が、0.05〜5の範囲内にある多層セラミック基板(表3の実施例1〜3の試料および参考例1,2の試料)を作製するとともに、CaAl2Si28/Al23のピーク強度比が、0.05〜5の範囲を外れた試料(比較例1〜3の試料)も併せて作製し、各試料の特性を評価することにより、本発明の効果を確認した。
【0066】
[特性の評価]
作製した各多層セラミック基板について、
(1)表層部の結晶化温度、
(2)表層部のCaAl2Si28/Al23ピーク強度比(XRD分析によるピーク強度比)、
(3)表層部熱膨張係数
(4)内層部熱膨張係数
(5)電極接合強度
(6)抗折強度
(7)表層部絶縁抵抗不良率
を調べた。その結果を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
なお、表3の表層部の結晶化温度は、セラミックグリーンシートを焼成した際のガラスの結晶析出に伴う発熱反応のピーク温度であり、示差走査熱量測定(DSC)により測定される値である。
【0069】
また、表層部のCaAl2Si28/Al23ピーク強度比は、XRD分析により、X線の線源としてCuKαを用い、CaAl2Si28(アノーサイト)は28°付近、Al23は25.6°付近の角度でピークを調べ、その比(CaAl2Si28/Al23)を求めたものである。
【0070】
また、表層部および内層部の熱膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)を用いて求めたものである。
【0071】
電極接合強度は、2mm□の電極に対して、引張速度20mm/minの条件で引張試験を行って求めたものである。
【0072】
また、抗折強度は、多層セラミック基板について、3点曲げ試験を実施して測定したものである。
【0073】
さらに、表層部絶縁抵抗不良率は、絶縁抵抗測定機で50V印加時の絶縁抵抗を調べたものであり、抵抗が1010Ω未満のものを不良として不良率を求めたものである。評価個数は100個とした。
【0074】
表3に示すように、種結晶の添加量を少なくして表層部の結晶化温度を高くした比較例1,2の試料、すなわち、表層部のCaAl2Si28/Al23ピーク強度比が0.01の比較例1の試料および、表層部のCaAl2Si28/Al23ピーク強度比が0.03の比較例2の試料の場合、電極接合強度は高くなるものの、抗折強度は低くなることが確認された。これは、焼成後の表層部のCaAl2Si28の析出量が少なく、残留ガラス量が増えることによるものである。
しかし、比較例1,2の試料の場合、結晶化度が低くなるため、ガラスへのAgの拡散量が増えて表層部の抵抗が低下し、絶縁抵抗不良率が高くなるため好ましくないことが確認された。
【0075】
また、種結晶の添加量を多くして表層部の結晶化温度を低くした比較例3の試料、すなわち、表層部のCaAl2Si28/Al23ピーク強度比が7の試料の場合、表層部のCaAl2Si28の析出度が高いため、抗折強度が高くなることが確認された。また、残留ガラス量が少なくなるため、ガラスへのAgの拡散量が減少して、表層部の抵抗が高くなり、絶縁不良の発生が防止されることが確認された。
しかし、比較例3の試料の場合、表層部のCaAl2Si28の析出度が高くなり過ぎて残留ガラス量が少なくなるため、電極接合強度が不十分になることが確認された。
【0076】
一方、表層部の結晶化温度を適切な範囲に設定して、表層部のCaAl2Si28/Al23のピーク強度比が、本発明の要件(0.05≦CaAl2Si28/Al23の要件)を満たす表3の実施例1〜3の試料、およびピーク強度比が3または5である参考例1および2の試料の場合、抗折強度と電極接合強度を向上させることが可能になるとともに、表層部の絶縁抵抗不良を防止できることが確認された。
【0077】
なお、上記実施形態では、MOがCaOである場合を例にとって説明したが、MOがMgO,SrO,およびBaOのいずれかである場合にも、同様の効果が得られることが確認されている。
【0078】
本発明はさらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、表面電極の構成材料、表面電極や内部導体の具体的な配設態様、表層部および内層部の厚みや配設態様などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
A 電子部品
1 多層セラミック基板
2a 半導体デバイス
2b チップコンデンサ
10 内層部
10a 内層部セラミック層
11 第1の表層部
12 第2の表層部
11a,12a 表層部セラミック層
13 導体
13a,13b 表面電極
13c 内部導体
13d ビアホール導体
100 複合積層体
110 内層部形成用グリーンシート
111,112 表層部形成用グリーンシート
113,114 拘束層用グリーンシート
116 Agペースト
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層部と、前記内層部の表裏両主面側に積層された表層部と、前記表層部の少なくとも一方の表面に配設された表面電極とを備えた多層セラミック基板であって、
前記表層部は、SiO2−MO(ただしMOは、CaO,MgO,SrO,およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種)−B23−Al23系ガラスと、Al23フィラーとを含むガラスセラミック系材料を焼成することにより形成されており、
前記表層部の熱膨張係数は、前記内層部の熱膨張係数よりも小さく、かつ、
前記表層部の析出結晶であるMAl2Si28(MはCa,Mg,Sr,Baからなる群より選ばれる少なくとも1種)と、前記表層部中のAl23の、XRD分析によるピーク強度比が、下記の式(1):
0.05≦(MAl2Si28/Al23)≦ ……(1)
の範囲にあること
を特徴とする多層セラミック基板。
【請求項2】
前記表層部に含まれる前記ガラスの結晶化温度が、910℃〜950℃の範囲にあることを特徴とする、請求項1記載の多層セラミック基板。
【請求項3】
請求項1または2記載の多層セラミック基板の前記表面電極上に、表面実装型チップ部品が搭載されていることを特徴とする電子部品。
【国際調査報告】