(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013100079
(43)【国際公開日】20130704
【発行日】20150511
(54)【発明の名称】レドックスフロー二次電池及びレドックスフロー二次電池用電解質膜
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20150414BHJP
   H01M 8/02 20060101ALI20150414BHJP
   C08F 214/18 20060101ALI20150414BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20150414BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20150414BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20150414BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20150414BHJP
   C08J 5/22 20060101ALI20150414BHJP
【FI】
   !H01M8/18
   !H01M8/02 P
   !C08F214/18
   !C08L27/18
   !C08L79/04 A
   !C08L71/12
   !C08L81/02
   !C08L79/04 B
   !C08L79/04 Z
   !C08J5/22 101
   !C08J5/22CEW
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
【出願番号】2013551826
(21)【国際出願番号】JP2012083944
(22)【国際出願日】20121227
(31)【優先権主張番号】2011290035
(32)【優先日】20111228
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】309002329
【氏名又は名称】旭化成イーマテリアルズ株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区神田神保町一丁目105番地
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜四丁目5番33号
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】三宅 直人
【住所又は居所】東京都千代田区神田神保町一丁目105番地
(72)【発明者】
【氏名】森内 清晃
【住所又は居所】大阪府大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電気工業株式会社 大阪製作所内
(72)【発明者】
【氏名】久畑 満
【住所又は居所】大阪府大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電気工業株式会社 大阪製作所内
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J100
5H026
【Fターム(参考)】
4F071AA26
4F071AF36
4F071AF37
4F071AH15
4F071FA02
4F071FA05
4F071FB01
4F071FC01
4F071FD01
4J002BD12W
4J002BD15W
4J002CH073
4J002CM02X
4J002CN013
4J002GQ00
4J100AC26P
4J100AE38Q
4J100BA57Q
4J100BB12Q
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA42
4J100DA55
4J100DA56
4J100HA08
4J100HB39
4J100HE12
4J100JA16
4J100JA43
5H026AA10
5H026CX05
5H026EE19
5H026HH00
5H026HH05
5H026RR01
(57)【要約】
本発明は、電気抵抗が低く、電流効率にも優れ、さらに耐久性をも有するレドックスフロー二次電池を提供することを目的とする。
本発明は、フッ素系高分子電解質ポリマーを含有するイオン交換樹脂組成物を含み、25℃水中における小角X線法により測定したイオンクラスター径が1.00〜2.95nmであるレドックスフロー二次電池用電解質膜及びそれを用いたレドックスフロー二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素電極からなる正極を含む正極セル室と、
炭素電極からなる負極を含む負極セル室と、
前記正極セル室と、前記負極セル室とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜と、
を含む電解槽を有し、
前記正極セル室は正極活物質を含む正極電解液を、前記負極セル室は負極活物質を含む負極電解液を含み、
前記電解液中の正極活物質及び前記負極活物質の価数変化に基づき充放電するレドックスフロー二次電池であって、
前記電解質膜が下記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含有するイオン交換樹脂組成物を含み、
前記電解質膜の、25℃水中における小角X線法により測定されるイオンクラスター径が1.00〜2.95nmであるレドックスフロー二次電池。
−[CF−CX−[CF−CF((−O−CF−CF(CF))−O−(CFR−(CFR−(CF−X)]− (1)
(式(1)中、X、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。Xは、COOZ、SOZ、PO又はPOHZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH、NH、NH、NHR、NR)を示す。R、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、XがPOである場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。d、e及びfは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示す(ただし、d、e及びfは同時に0ではない。)。)
【請求項2】
前記正極電解液及び負極電解液として、バナジウムを含む硫酸電解液を用いる、請求項1に記載のレドックスフロー二次電池。
【請求項3】
前記フッ素系高分子電解質ポリマーが、下記式(2)で表される構造を有するパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂である、請求項1又は2に記載のレドックスフロー二次電池。
−[CF−CF−[CF−CF(−O−(CF−SOH)]− (2)(式(2)中、a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示し、mは1〜6の整数を示す。)
【請求項4】
前記フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数)が300〜1300g/eqであり、前記電解質膜の平衡含水率が5〜80質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池。
【請求項5】
前記イオン交換樹脂組成物が、前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、0.1〜200質量部のポリアゾール系化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池。
【請求項6】
前記ポリアゾール系化合物が、環内に窒素原子を1個以上含む複素環化合物の重合体、及び環内に窒素原子を1個以上と酸素及び/又は硫黄を含む複素環化合物の重合体からなる群から選択される1種以上である、請求項5に記載のレドックスフロー二次電池。
【請求項7】
前記ポリアゾール系化合物が、ポリイミダゾール系化合物、ポリベンズイミダゾール系化合物、ポリベンゾビスイミダゾール系化合物、ポリベンゾオキサゾール系化合物、ポリオキサゾール系化合物、ポリチアゾール系化合物、及びポリベンゾチアゾール系化合物からなる群から選択される1種以上である、請求項6に記載のレドックスフロー二次電池。
【請求項8】
前記フッ素系高分子電解質ポリマーと前記ポリアゾール系化合物とが、少なくともその一部においてイオン結合を形成している、請求項5〜7のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池。
【請求項9】
前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して0.1〜20質量部のポリフェニレンエーテル樹脂及び/又はポリフェニレンスルフィド樹脂を更に含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池。
【請求項10】
前記フッ素系高分子電解質ポリマーを、前記イオン交換樹脂組成物100質量部に対して、50〜100質量部含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池。
【請求項11】
下記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含有するイオン交換樹脂組成物を含み、25℃水中における小角X線法により測定したイオンクラスター径が1.00〜2.95nmであるレドックスフロ−二次電池用電解質膜。
−[CF−CX−[CF−CF((−O−CF−CF(CF))−O−(CFR−(CFR−(CF−X)]− (1)
(式(1)中、X、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。Xは、COOZ、SOZ、PO又はPOHZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH、NH、NH、NHR、NR)を示す。R、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、XがPOである場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。d、e及びfは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示す(ただし、d、e及びfは同時に0ではない。)。)
【請求項12】
前記フッ素系高分子電解質ポリマーが、下記式(2)で表される構造を有するパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂である、請求項11に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
−[CF−CF−[CF−CF(−O−(CF−SOH)]− (2)(式(2)中、a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示し、mは1〜6の整数を示す。)
【請求項13】
前記フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数)が300〜1300であり、前記電解質膜の平衡含水率が5〜80質量%である、請求項11又は12に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
【請求項14】
前記イオン交換樹脂組成物が、前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、0.1〜200質量部のポリアゾール系化合物を含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
【請求項15】
ポリアゾール系化合物が、環内に窒素原子を1個以上含む複素環化合物の重合体、及び環内に窒素原子を1個以上と酸素及び/又は硫黄を含む複素環化合物の重合体からなる群から選択される1種以上である、請求項14に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
【請求項16】
前記ポリアゾール系化合物が、ポリイミダゾール系化合物、ポリベンズイミダゾール系化合物、ポリベンゾビスイミダゾール系化合物、ポリベンゾオキサゾール系化合物、ポリオキサゾール系化合物、ポリチアゾール系化合物、及びポリベンゾチアゾール系化合物からなる群から選択される1種以上である、請求項15に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
【請求項17】
前記フッ素系高分子電解質ポリマーと前記ポリアゾール系化合物とが、少なくともその一部においてイオン結合を形成している、請求項14〜16のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
【請求項18】
前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して0.1〜20質量部のポリフェニレンエーテル樹脂及び/又はポリフェニレンスルフィド樹脂を更に含む、請求項11〜17のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
【請求項19】
前記電解質膜が、130〜200℃にて1〜60分間加熱処理されたものである、請求項11〜18のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
【請求項20】
前記電解質膜が補強材を更に有する、請求項11〜19のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
【請求項21】
前記フッ素系高分子電解質ポリマーを、前記イオン交換樹脂組成物100質量部に対して、50〜100質量部含有する、請求項11〜20のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー二次電池及びレドックスフロー二次電池用電解質膜に関する。
【背景技術】
【0002】
レドックスフロー二次電池とは、電気を備蓄及び放電するものであり、電気使用量の平準化のために使用される大型の据え置き型電池に属する。レドックスフロー二次電池は、正極と正極活物質を含む電解液(正極セル)と、負極と負極活物質を含む負極電解液(負極セル)とを、隔膜で隔離して、両活物質の酸化還元反応を利用して充放電し、該両活物質を含む電解液を、備蓄タンクから電解槽に流通させて電流を取り出し利用される。
【0003】
電解液に含まれる活物質としては、例えば、鉄−クロム系、クロム−臭素系、亜鉛−臭素系や、電荷の違いを利用するバナジウム系などが用いられている。
【0004】
特に、バナジウム系二次電池は起電力が高く、バナジウムイオンの電極反応が速く、副反応である水素発生量が少なく、出力が高い等の利点を有するため、開発が本格的にすすめられている。
【0005】
また、隔膜については、両極の活物質を含む電解液が混ざらないように工夫されている。しかしながら、従来の隔膜は、酸化されやすく、電気抵抗を充分低くしなければいけない等の問題点がある。電池の電流効率を上げるために両極のセル電解液に含まれるそれぞれの活物質イオンの透過(両極電解液中の電解質のコンタミ)はできるだけ防ぐことが要求されるが、電荷を運ぶプロトン(H)は充分透過しやすいという、イオン選択透過性に優れたイオン交換膜が要求される。
【0006】
このバナジウム系の二次電池では、負極セルにおけるバナジウムの2価(V2+)/3価(V3+)と、正極セルにおけるバナジウムの4価(V4+)/5価(V5+)の酸化還元反応を利用している。従って、正極セルと負極セルの電解液が同種の金属イオン種であるため、隔膜を透して電解液が混合されても、充電により正常に再生されるので、他種の金属種に比べて大きな問題にはなり難い。とはいえ、無駄になる活物質が増え、電流効率が低下するので、できるだけ活物質イオンは自由に透過しないほうがよい。
【0007】
従来、様々なタイプの隔膜(以下、「電解質膜」又は単に「膜」ともいう。)を利用した電池があり、例えば、電解液のイオン差圧及び浸透圧をドライビングフォースとして自由に通過させる多孔膜を用いた電池が報告されている。例えば、特許文献1には、レドックス電池用隔膜として、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」ともいう。)多孔膜、ポリオレフィン(以下、「PO」ともいう。)系多孔膜、PO系不織布などが開示されている。
【0008】
特許文献2には、レドックスフロー二次電池の充放電エネルギー効率の改善と隔膜の機械的強度の改善を目的として、多孔膜と含水性ポリマーを組み合わせた複合膜が開示されている。
【0009】
特許文献3には、レドックスフロー二次電池の充放電エネルギー効率の改善を目的として、イオン透過性に優れた親水性の水酸基を有する無孔の親水性ポリマー膜として、セルロース又はエチレンービニルアルコール共重合体の膜を利用することが開示されている。
【0010】
特許文献4には、炭化水素系イオン交換樹脂としてポリスルホン系膜(陰イオン交換膜)を利用することにより、バナジウムレドックス二次電池の電流効率が80%〜88.5%となり、耐ラジカル酸化性にも優れることが記載されている。
【0011】
特許文献5には、レドックスフロー二次電池の電流効率を上げるために正極の多孔性炭素に高価な白金を担持させて反応効率を上げる方法が開示されており、実施例ではデュポン社製のナフィオン(登録商標)N117やポリスルホン系イオン交換膜が隔膜として記載されている。
【0012】
特許文献6には、ポリプロピレン(以下、「PP」ともいう。)などの多孔膜の孔に親水性樹脂を塗布した、鉄−クロム系レドックスフロー電池が開示されている。当該文献の実施例には100μmの厚さのPP製多孔膜の両表面に、数μmの厚さでフッ素系イオン交換樹脂(デュポン社製、登録商標ナフィオン)を被覆した膜の例がある。ここで、ナフィオンは、−(CF−CF)−で表される繰り返し単位と、−(CF−CF(−O−(CFCFXO)−(CF−SOH))−で表される繰り返し単位と、を含む共重合体において、X=CF、n=1、m=2の共重合体である。
【0013】
特許文献7には、特定の面格子を有する2層の液透過性多孔質炭素電極を用いるなど、電極の改良により、セル電気抵抗をできるだけ下げ、効率を上げたバナジウム系レドックスフロー二次電池の例が開示されている。
【0014】
特許文献8には、膜抵抗が低く、プロトン透過性等に優れ、ピリジニウム基(陽イオンのNを利用)を有する架橋重合体からなる陰イオン交換型の隔膜を用いたバナジウム系レドックスフロー電池の例が開示されている。前記架橋重合体としては、ピリジニウム基含有ビニル重合性単量体とスチレン系単量体等とジビニルベンゼン等の架橋剤とを共重合して得られる重合体が開示されている。
【0015】
特許文献9には、セル抵抗を低減し、電力効率等を向上することを目的として、隔膜として、カチオン交換膜(フッ素系高分子又は他の炭化水素系高分子)とアニオン交換膜(ポリスルホン系高分子など)とを交互に積層してなる膜を用い、かつ当該膜の正極電解液と接する側にカチオン交換膜を配したレドックスフロー二次電池が開示されている。
【0016】
特許文献10には、耐薬品性に優れ、低抵抗でイオン選択透過性に優れた膜として、多孔質PTFE系樹脂からなる多孔質基材に、2個以上の親水基を有するビニル複素環化合物(アミノ基を有するビニルピロリドン等)の繰り返し単位を有する架橋重合体を複合してなるアニオン交換膜を隔膜として使用する二次電池が開示されている。その原理については、電位差をかけられたときに、イオン径及び電荷量の多い金属カチオンは、隔膜表層部のカチオンにより電気的反発を受けて金属カチオンの膜透過が阻害されるが、イオン径も小さく、1価であるプロトン(H)は、陽イオンを有する隔膜を容易に拡散透過できるので電気抵抗が小さくなると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−158383号公報
【特許文献2】特公平6−105615号公報
【特許文献3】特開昭62−226580号公報
【特許文献4】特開平6−188005号公報
【特許文献5】特開平5−242905号公報
【特許文献6】特開平6−260183号公報
【特許文献7】特開平9−92321号公報
【特許文献8】特開平10−208767号公報
【特許文献9】特開平11−260390号公報
【特許文献10】特開2000−235849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献1に開示された電池は、隔膜の電気抵抗やイオン選択透過性が十分ではなく、電流効率や耐久性等が不十分である。
特許文献2に開示された複合膜は、電気抵抗が高く、また、各イオンは多孔膜ほどではないが、自由に拡散してしまうという問題があり、電池の電流効率は高くない。特許文献3に開示された膜についても、上記と同様の問題があり、耐酸化耐久性にも劣る。
特許文献4に開示された電池は、電流効率が未だ不十分であり、長期にわたる硫酸電解液中での耐酸化劣化性にも劣り、耐久性も不十分である。同文献には、比較例として、PTFE系イオン交換膜を使用する電池が開示されているが、その電流効率は64.8〜78.6%であり、不十分であることが記載されている。
特許文献5に開示された電池も、上記と同様の問題点を解決できておらず、また、大型設備では、価格的にも高価となってしまうという問題がある。
特許文献6に開示された膜は、塗布膜の厚みを極薄(数μm)にしないと、内部抵抗が増加すると記載されている。また、イオン選択透過性を向上させる工夫については一切記載されていない。
特許文献7に開示された電池は、ポリスルホン系隔膜を使用するため、隔膜のイオン選択透過性や耐酸化劣化性が十分ではなく、電池の電気抵抗、電流効率、耐久性が十分ではない。
特許文献8に開示された電池は、電流効率が不十分であり、また、酸化劣化するため長期使用に関しても問題点を有している。
特許文献9に開示された膜は、電気抵抗が高くなるという問題点を有している。
特許文献10の実施例に示された結果では、膜の内部抵抗(電気抵抗)が十分低いとは言えず、また、長期使用では耐酸化劣化が問題となる。
【0019】
従来のバナジウム系レドックスフロー電池用の電解質(隔)膜は、両電極の電解液の活物質であるバナジウムイオンの低電価グループのイオンを大多数とするセル(負極側)と、高電価のイオングループを大多数とするセル(正極側)それぞれにおいて、対極(セル)への、活物質イオンの拡散移動透過を抑えて、尚且つ、目的の充放電の操作に伴い、プロトン(H)を選択的に透過させることを目的として使用されている。しかしながら、現在、その性能は十分であると言えない。
炭化水素系樹脂を主とした膜基材としては、両セルの主役の電解質を含む電解液を単に隔離するだけの単なるイオン選択透過性のない多孔膜や、イオン選択性のない(無孔の)親水性膜基材、多孔膜に親水性膜基材を埋め込むか又は被覆したもの等が用いられている。また、膜自身が各種アニオン基を有する所謂カチオン交換膜、又は多孔質膜基材の孔に、カチオン交換性樹脂を被覆又は埋め込んだ複合膜、同様に膜自身がカチオン基を有するアニオン交換膜、同様に多孔膜基材に、アニオン交換性樹脂を被覆又は埋め込んだ複合膜、両者の積層型等が隔膜として用いられており、それぞれの特徴を生かした研究が行われている。
隔膜としての、電気抵抗(プロトン透過性に主に依存)と、主役の活物質である、金属イオン(多価カチオン)透過性阻止という、相反する2つの性能を十分に満足するイオン交換樹脂隔膜、更には前記2つの性能に加えて長期にわたる耐酸化劣化性(耐ヒドロキシラジカル性)を満足するイオン交換樹脂隔膜は、これまで開発されていない。フッ素系イオン交換樹脂に関しても、プロトン(H)透過性に優れ、且つ、活物質イオンの透過を抑制するという相矛盾する性質に対する工夫が十分に検討されておらず、低電気抵抗、高電流効率、及び長期にわたる耐酸化劣化性(耐ヒドロキシラジカル性)などを充分に満足するレドックスフロー電池やそのための電解質膜は開発されていない。
【0020】
上記事情に鑑み、本発明は、電気抵抗が低く、電流効率にも優れ、さらに耐久性をも有するレドックスフロー二次電池を提供すること、及びプロトン(H)透過性を悪化させることなく活物質イオン透過性を抑制することのできる優れたイオン選択透過性を有し、さらに耐酸化劣化性(ヒドロキシラジカル耐性)をも有するレドックスフロー二次電池用電解質膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者らは、特定の構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含み、さらに、膜のイオンクラスター径を特定の範囲に調整することにより、優れたイオン選択透過性を有し、さらに耐酸化劣化性(耐ヒドロキシラジカル性)にも優れる電解質膜を提供できることを見出し、前記電解質膜を隔膜として使用することにより、電気抵抗も低く、電流効率にも優れ、さらに耐久性に優れるレドックスフロー二次電池を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0022】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
炭素電極からなる正極を含む正極セル室と、
炭素電極からなる負極を含む負極セル室と、
前記正極セル室と、前記負極セル室とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜と、
を含む電解槽を有し、
前記正極セル室は正極活物質を含む正極電解液を、前記負極セル室は負極活物質を含む負極電解液を含み、
前記電解液中の正極活物質及び前記負極活物質の価数変化に基づき充放電するレドックスフロー二次電池であって、
前記電解質膜が下記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含有するイオン交換樹脂組成物を含み、
前記電解質膜の、25℃水中における小角X線法により測定されるイオンクラスター径が1.00〜2.95nmであるレドックスフロー二次電池。
−[CF−CX−[CF−CF((−O−CF−CF(CF))−O−(CFR−(CFR−(CF−X)]− (1)
(式(1)中、X、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。Xは、COOZ、SOZ、PO又はPOHZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH、NH、NH、NHR、NR)を示す。R、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、XがPOである場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。d、e及びfは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示す(ただし、d、e及びfは同時に0ではない。)。)
[2]
前記正極電解液及び負極電解液として、バナジウムを含む硫酸電解液を用いる、前記[1]に記載のレドックスフロー二次電池。
[3]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーが、下記式(2)で表される構造を有するパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(PFSA)である、前記[1]又は[2]に記載のレドックスフロー二次電池。
−[CF−CF−[CF−CF(−O−(CF−SOH)]− (2)(式(2)中、a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示し、mは1〜6の整数を示す。)
[4]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数)が300〜1300g/eqであり、前記電解質膜の平衡含水率が5〜80質量%である、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池。
[5]
前記イオン交換樹脂組成物が、前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、0.1〜200質量部のポリアゾール系化合物を含む、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池。
[6]
前記ポリアゾール系化合物が、環内に窒素原子を1個以上含む複素環化合物の重合体、及び環内に窒素原子を1個以上と酸素及び/又は硫黄を含む複素環化合物の重合体からなる群から選択される1種以上である、前記[5]に記載のレドックスフロー二次電池。
[7]
前記ポリアゾール系化合物が、ポリイミダゾール系化合物、ポリベンズイミダゾール系化合物、ポリベンゾビスイミダゾール系化合物、ポリベンゾオキサゾール系化合物、ポリオキサゾール系化合物、ポリチアゾール系化合物、及びポリベンゾチアゾール系化合物からなる群から選択される1種以上である、前記[6]に記載のレドックスフロー二次電池。
[8]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーと前記ポリアゾール系化合物とが、少なくともその一部においてイオン結合を形成している、前記[5]〜[7]のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池。
[9]
前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して0.1〜20質量部のポリフェニレンエーテル樹脂及び/又はポリフェニレンスルフィド樹脂を更に含む、前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池。
[10]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーを、前記イオン交換樹脂組成物100質量部に対して、50〜100質量部含有する、前記[1]〜[9]のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池。
[11]
下記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含有するイオン交換樹脂組成物を含み、25℃水中における小角X線法により測定したイオンクラスター径が1.00〜2.95nmであるレドックスフロ−二次電池用電解質膜。
−[CF−CX−[CF−CF((−O−CF−CF(CF))−O−(CFR−(CFR−(CF−X)]− (1)
(式(1)中、X、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。Xは、COOZ、SOZ、PO又はPOHZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH、NH、NH、NHR、NR)を示す。R、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、XがPOである場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。d、e及びfは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示す(ただし、d、e及びfは同時に0ではない。)。)
[12]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーが、下記式(2)で表される構造を有するパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂である、前記[11]に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
−[CF−CF−[CF−CF(−O−(CF−SOH)]− (2)(式(2)中、a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示し、mは1〜6の整数を示す。)
[13]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数)が300〜1300であり、前記電解質膜の平衡含水率が5〜80質量%である、前記[11]又は[12]に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[14]
前記イオン交換樹脂組成物が、前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、0.1〜200質量部のポリアゾール系化合物を含む、前記[11]〜[13]のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[15]
ポリアゾール系化合物が、環内に窒素原子を1個以上含む複素環化合物の重合体、及び環内に窒素原子を1個以上と酸素及び/又は硫黄を含む複素環化合物の重合体からなる群から選択される1種以上である、前記[14]に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[16]
前記ポリアゾール系化合物が、ポリイミダゾール系化合物、ポリベンズイミダゾール系化合物、ポリベンゾビスイミダゾール系化合物、ポリベンゾオキサゾール系化合物、ポリオキサゾール系化合物、ポリチアゾール系化合物、及びポリベンゾチアゾール系化合物からなる群から選択される1種以上である、前記[15]に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[17]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーと前記ポリアゾール系化合物とが、少なくともその一部においてイオン結合を形成している、前記[14]〜[16]のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[18]
前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して0.1〜20質量部のポリフェニレンエーテル樹脂及び/又はポリフェニレンスルフィド樹脂を更に含む、前記[11]〜[17]のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[19]
前記電解質膜が、130〜200℃にて1〜60分間加熱処理されたものである、前記[11]〜[18]のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[20]
前記電解質膜が補強材を更に有する、前記[11]〜[19]のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
[21]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーを、前記イオン交換樹脂組成物100質量部に対して、50〜100質量部含有する、前記[11]〜[20]のいずれか1項に記載のレドックスフロー二次電池用電解質膜。
【発明の効果】
【0023】
本発明のレドックスフロー二次電池は、電気抵抗が低く、電流効率が高く、さらには、炭化水素系電解質を隔膜として用いるレドックスフロー二次電池に比べて、イオン基の脱離や、高分子電解質の崩壊現象などを抑えることができ、耐久性に優れる。
本発明のレドックスフロー二次電池用電解質膜は、優れたイオン選択透過性を有しており、高いプロトン(H)透過性と電解液中の活物質イオンの透過阻止性とに優れ、更には、長期にわたる耐酸化劣化性(耐ヒドロキシラジカル性)に優れるため、レドックスフロー二次電池の隔膜として使用することにより、セル電気抵抗が低く、電流効率が高いレドックスフロー二次電池を提供でき、また、系内の電解液セル内で発生するヒドロキシラジカルに対して長期に渡り、高い酸化劣化防止効果を発揮するため、通常の炭化水素系電解質を用いる場合に生じるイオン基の脱離や、高分子電解質の崩壊現象などを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態におけるレドックスフロー二次電池の概要図の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。
【0026】
[レドックスフロー二次電池]
本実施形態におけるレドックスフロー二次電池は、
炭素電極からなる正極を含む正極セル室と、
炭素電極からなる負極を含む負極セル室と、
前記正極セル室と、前記負極セル室とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜と、
を含む電解槽を有し、
前記正極セル室は正極活物質を含む正極電解液を、前記負極セル室は負極活物質を含む負極電解液を含み、
前記電解液中の正極活物質及び前記負極活物質の価数変化に基づき充放電するレドックスフロー二次電池であって、
前記電解質膜が下記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含有するイオン交換樹脂組成物を含み、
前記電解質膜の、25℃水中における小角X線法により測定したイオンクラスター径が1.00〜2.95nmであるレドックスフロー二次電池である。
−[CF−CX−[CF−CF((−O−CF−CF(CF))−O−(CFR−(CFR−(CF−X)]− (1)
(式(1)中、X、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。Xは、COOZ、SOZ、PO又はPOHZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH、NH、NH、NHR、NR)を示す。R、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、XがPOである場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。d、e及びfは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示す(ただし、d、e及びfは同時に0ではない。)。)
【0027】
図1は、本実施形態におけるレドックスフロー二次電池の概要図の一例を示す。本実施形態におけるレドックスフロー二次電池10は、炭素電極からなる正極1を含む正極セル室2と、炭素電極からなる負極3を含む負極セル室4と、前記正極セル室2と、前記負極セル室4とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜5と、を含む電解槽6を有し、前記正極セル室2は正極活物質を含む正極電解液を、前記負極セル室4は負極活物質を含む負極電解液を含む。活物質を含む正極電解液及び負極電解液は、例えば、正極電解液タンク7及び負極電解液タンク8によって貯蔵され、ポンプ等によって各セル室に供給される(矢印A、B)。また、レッドクスフロー二次電池によって生じた電流は、交直変換装置9を介して、直流から交流に変換されてもよい。
【0028】
本実施形態におけるレドックスフロー二次電池は、液透過性で多孔質の集電体電極(負極用、正極用)を隔膜の両側にそれぞれ配置し、押圧でそれらを挟み、隔膜で仕切られた一方を正極セル室、他方を負極セル室とし、スペーサーで両セル室の厚みを確保した構造を有する。
バナジウム系レドックスフロー二次電池の場合、正極セル室には、バナジウム4価(V4+)及びバナジウム5価(V5+)を含む硫酸電解液からなる正極電解液を、負極セル室には、バナジウム3価(V3+)及びバナジウム2価(V2+)を含む負極電解液を流通させることにより、電池の充電及び放電が行われる。このとき、充電時には、正極セル室においては、バナジウムイオンが電子を放出するためV4+がV5+に酸化され、負極セル室では外路を通じて戻って来た電子によりV3+がV2+に還元される。この酸化還元反応では、正極セル室ではプロトン(H)が過剰になり、一方負極セル室では、プロトン(H)が不足する。隔膜は正極セル室の過剰なプロトンを選択的に負極室に移動させ電気的中性が保たれる。放電時には、この逆の反応が進む。この時の電池効率(%)は、放電電力量を充電電力量で除した比率(%)で表され、両電力量は、電池セルの内部抵抗と隔膜のイオン選択性及びその他電流損失に依存する。内部抵抗の減少は電圧効率を向上させ、イオン選択透過性の向上及びその他電流損失の低減は、電流効率を向上させるので、レドックスフロー二次電池においては、重要な指標となる。
【0029】
[レドックスフロー二次電池用電解質膜]
本実施形態のレドックスフロー二次電池用電解質膜は、特定の構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含有するイオン交換樹脂組成物を含み、且つ、特定のイオンクラスター径を有する。これによって、イオン選択透過性に優れる。
【0030】
<イオン交換樹脂組成物>
本実施形態において、イオン交換樹脂組成物は、上記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含有する。
【0031】
(フッ素系高分子電解質ポリマー)
本実施形態において、フッ素系高分子電解質ポリマーは、下記式(1)で表される構造を有する。
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーは、下記式(1)で表される構造を有するものであれば、特に限定されず、他の構造を含むものであってもよい。
−[CF−CX−[CF−CF((−O−CF−CF(CF))−O−(CFR−(CFR−(CF−X)]− (1)
(式(1)中、X、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。Xは、COOZ、SOZ、PO又はPOHZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH、NH、NH、NHR、NR)を示す。R、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、XがPOである場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。d、e及びfは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示す(ただし、d、e及びfは同時に0ではない。)。)
【0032】
、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。X、X及びXとしては、ポリマーの耐酸化劣化性等の化学的安定性の観点から、フッ素原子、又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0033】
は、COOZ、SOZ、PO又はPOHZを示す。以下、Xを「イオン交換基」ともいう。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH、NH、NH、NHR、NR)を示す。ここで、アルカリ金属原子としては、特に限定されず、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。また、アルカリ土類金属原子としては、特に限定されず、カルシウム原子、マグネシウム原子等が挙げられる。また、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、XがPOである場合、Zは同じでも異なっていてもよい。Xとしては、ポリマーの耐酸化劣化性等の化学的安定性の観点から、SOZが好ましい。
【0034】
及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0035】
a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。d、e及びfは、それぞれ独立して、0〜6の整数を示す。ただし、d、e及びfは同時に0にはならない。
【0036】
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーとしては、本発明の効果がより顕著となる傾向にあるため、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(以下、「PFSA樹脂」ともいう。)であることが好ましい。本実施形態におけるPFSA樹脂は、PTFE骨格連鎖からなる主鎖に、側鎖としてパーフルオロカーボンと、それぞれの側鎖に1個ないし2個以上のスルホン酸基(場合により一部が塩の形になっていてもよい)が結合した樹脂である。
【0037】
前記PFSA樹脂は、
−(CF−CF)−で表される繰り返し単位と、下記式(3)又は(4)で表される化合物から誘導される繰り返し単位を含有することが好ましく、さらに、−(CF−CF)−で表される繰り返し単位と、前記式(3)又は前記式(4)で表される化合物から誘導される繰り返し単位とからなることが好ましい。
式(3):CF=CF(−O−(CFCFXO)−[A])(式中、Xは、F又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示し、nは0〜5の整数を示す。[A]は(CF−SOH(mは0〜6の整数を示す。ただし、nとmは同時に0にならない。)、
又は式(4):CF=CF−O−(CF−CFX(−O−(CF−SOH)若しくはCF=CF−O−(CF−CFX(−(CF−O−(CF−SOH)(式中、Xは、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示し、Pは0〜12の整数を示し、Kは1〜5の整数を示し、Lは1〜5の整数を示し、mは0〜6の整数を示す。ただし、KとLは同じでも、異なっていてもよく、P、K、Lは同時に0とはならない。)。
【0038】
また、前記PFSA樹脂は、−(CF−CF)−で表される繰り返し単位と、−(CF−CF(−O−(CFCFXO)−(CF−SOH))−で表される繰り返し単位(式中、Xは、F又はCFを示し、nは0〜5の整数を示し、mは0〜12の整数を示す。ただし・BR>Anとmは同時に0にならない。)と、を含む共重合体であって、−(CF−CF(−O−(CFCFXO)−(CF−SOH))−で表される繰り返し単位(式中、Xは、CFを示し、nは0又は1を示し、mは0〜12の整数を示す。ただし、nとmは同時に0にならない。)を必ず含む共重合体であることがより好ましい。PFSA樹脂が上記構造を有する共重合体であり、且つ所定の当量質量EWを有する場合、得られる電解質膜は十分な親水性を有し、且つ酸化劣化で生成するラジカル種への耐性が強くなる傾向にある。
【0039】
さらに、PFSA樹脂の前記−(CF−CF(−O−(CFCFXO)−(CF−SOH))−で表される繰り返し単位中のnが0であり、mが1〜6の整数であるもの、又は式(4)で表される−CF−CFX(−O−(CF−CFX(−O−(CF−SOH)−及び−CF−CFX(−O−(CF−CFX(−(CF−O−(CF−SOH)−の両方の繰り返し単位を含む場合、当量質量EWが低くなり、得られる電解質膜の親水性が高くなる傾向にある。
【0040】
従来技術で使用されているフッ素系樹脂であるナフィオン(Nafion:デュポン社の登録商標)は、−(CF−CF)−で表される繰り返し単位と、−(CF−CF(−O−(CFCFXO)−(CF−SOH))−で表される繰り返し単位と、を含む共重合体において、X=CF、n=1、m=2であり、後述するEWが893〜1030であることが知られている。
本発明者らが検討したところ、レドックスフロー二次電池用電解質膜として使用する場合には、前記ナフィオンに比べて、前記−(CF−CF(−O−(CFCFXO)−(CF−SOH))−で表される繰り返し単位中のnが0であり、mが1〜6の整数であるもの、又は式(4)で表される−CF−CF(−O−(CF−CFX(−O−(CF−SOH)−及び−CF−CF(−O−(CF−CFX(−(CF−O−(CF−SOH)−の両方の繰り返し単位を含むPFSA樹脂の方が、親水性やイオン選択透過性が優れており、得られるレドックスフロー二次電池の電気抵抗が低く、電流効率も向上する傾向にあることがわかった。
【0041】
本実施形態における式(1)で表されるフッ素系高分子電解質ポリマーは、本発明の効果がより顕著となる傾向にあるため、下記式(2)で表される構造を有するPFSA樹脂であることが好ましい。
−[CFCF−[CF−CF(−O−(CF−SOH)]− (2)(式(2)中、a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示し、mは1〜6の整数を示す。)
【0042】
本実施形態における上記式(1)で表されるフッ素系高分子電解質ポリマー及び上記式(2)で表される構造を有するPFSA樹脂は、各々、前記式(1)及び上記式(2)で表される構造を有するものであれば、特に限定されず、他の構造を含むものであってもよい。
【0043】
本実施形態における上記式(1)で表されるフッ素系高分子電解質ポリマーや上記式(2)で表される構造を有するPFSA樹脂は、イオン交換基の一部の分子間を直接的に又は間接的に部分架橋反応させたものであってもよい。前記部分架橋は、溶解性や過剰膨潤性を制御できる観点から好ましい。
例えば、フッ素系高分子電解質ポリマーのEWが280程度であっても、前記部分架橋を行うことにより、フッ素系高分子電解質ポリマーの水溶解性を低下(耐水性が向上)させることができる。
また、フッ素系高分子電解質ポリマーが低メルトフロー領域(高分子領域)である場合にも、前記部分架橋により、分子間絡みを増加し、溶解性や過剰膨潤性を低下できる。
【0044】
前記部分架橋反応としては、例えば、イオン交換基と他分子の官能基又は主鎖との反応、又はイオン交換基同士の反応、耐酸化性の低分子化合物、オリゴマー又は高分子物質等を介しての架橋反応(共有結合)等が挙げられ、場合により、塩(SOH基とのイオン結合を含む)形成物質との反応であってもよい。耐酸化性の低分子化合物、オリゴマー又は高分子物質としては、例えば、多価アルコール類や有機ジアミン類等が挙げられる。
【0045】
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーの分子量は、特に限定されないが、ASTM:D1238に準拠して(測定条件:温度270℃、荷重2160g)測定されるメルトフローインデックス(MFI)の値で0.05〜50(g/10分)であることが好ましく、0.1〜30(g/10分)であることがより好ましく、0.5〜20(g/10分)であることが更に好ましい。
【0046】
(フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW)
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりのフッ素系高分子電解質ポリマーの乾燥質量グラム数)は、300〜1300(g/eq)であることが好ましく、より好ましくは350〜1000(g/eq)、更に好ましくは400〜900(g/eq)、特に好ましくは450〜750(g/eq)である。
【0047】
上記式(1)の構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーにおいて、その当量質量EWを上記範囲に調整することによって、その化学構造と相俟って、それを含むイオン交換樹脂組成物に優れた親水性を付与することができ、その樹脂組成物を用いて得られた電解質膜はより低い電気抵抗、より高い親水性を有し、より小さなクラスター(イオン交換基が水分子を配位及び/又は吸着した微小部分)を数多く有するようになり、耐酸化性(耐ヒドロキシラジカル)やイオン選択透過性が一層向上する傾向にある。
【0048】
フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EWは、親水性、膜の耐水性の観点から300以上であることが好ましく、親水性、膜の電気抵抗の観点から1300以下であることが好ましい。
【0049】
フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EWは、フッ素系高分子電解質ポリマーを塩置換し、その溶液をアルカリ溶液で逆滴定することにより測定することができる。
【0050】
前記当量質量EWは、フッ素系高分子電解質ポリマーの原料であるフッ素系モノマーの共重合比、モノマー種の選定等により調整することができる。
【0051】
(フッ素系高分子電解質ポリマーの製造方法)
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーは、例えば、高分子電解質ポリマーの前駆体(以下、「樹脂前駆体」ともいう。)を製造した後、それを加水分解処理することにより得ることができる。
PFSA樹脂の場合、例えば、下記一般式(5)又は(6)で表されるフッ化ビニルエーテル化合物と、下記一般式(7)で表されるフッ化オレフィンモノマーとの共重合体からなるPFSA樹脂前駆体を加水分解することにより得られる。
【0052】
式(5): CF=CF−O−(CFCFXO)−A
(式(5)中、Xは、F又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示し、nは0〜5の整数を示し、Aは(CF−Wを示し、mは0〜6の整数を示し、nとmは同時に0にならず、Wは加水分解によりSOHに転換し得る官能基を示す。)、
式(6): CF=CF−O−(CF−CFX(−O−(CF−W)又はCF=CF−O−(CF−CFX(−(CF−O−(CF−W)
(式(6)中、Xは、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示し、Pは0〜12の整数を示し、Kは1〜5の整数を示し、Lは1〜5の整数を示し(ただし、L、K、mは同時に0とならない。)、mは0〜6の整数を示し、Wは加水分解によりSOHに転換し得る官能基を示す。)
式(7): CF=CFZ
(式(7)中、Zは、H、Cl、F、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、又は酸素を含んでいてもよい環状パーフルオロアルキル基を示す。)
【0053】
上記式(5)中の加水分解によりSOHに転換しうる官能基を示すWとしては、特に限定されないが、SOF、SOCl、SOBrが好ましい。また、上記式において、X=CF、W=SOF、Z=Fであることがより好ましい。中でも、n=0、m=1〜6の整数であり、X=CF、W=SOF、Z=Fであることが、高い親水性及び高い樹脂濃度の溶液が得られる傾向にあるため、特に好ましい。
【0054】
本実施形態における前記樹脂前駆体は、公知の手段により合成することができる。例えば、過酸化物等のラジカル発生剤等の存在下、加水分解等によりイオン交換基(式(1)におけるX)に転換し得る基(イオン交換基前駆体基)を有するフッ化ビニル化合物とテトラフルオロエチレン(TFE)などのフッ化オレフィンを重合することにより製造できる。前記重合方法は、特に限定されず、前記フッ化ビニル化合物等とフッ化オレフィンのガスを含フッ素炭化水素等の重合溶剤に充填溶解して反応させることにより重合する方法(溶液重合)、含フッ素炭化水素等の溶媒を使用せずフッ化ビニル化合物そのものを重合溶剤として重合する方法(塊状重合)、界面活性剤の水溶液を媒体として、フッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスとを充填して反応させることにより重合する方法(乳化重合)、界面活性剤及びアルコール等の助乳化剤の水溶液に、フッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスを充填、乳化して反応させることにより重合する方法(エマルジョン重合)、及び懸濁安定剤の水溶液にフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスを充填懸濁して反応させることにより重合する方法(懸濁重合)等を用いることができる。
【0055】
本実施形態においては上述したいずれの重合方法で作製されたものでも使用することができる。また、TFEガスの供給量等の重合条件を調整することにより得られる、ブロック状やテーパー状の重合体を前記樹脂前駆体としてもよい。
【0056】
前記樹脂前駆体は、重合反応中に樹脂分子構造中に生成した不純末端や、構造上酸化されやすい部分(CO基、H結合部分等)を、公知の方法によりフッ素ガス下で処理し、該部分をフッ化したものでもよい。
【0057】
前記樹脂前駆体は、イオン交換基前駆体基(例えば、SOF基)の一部が、部分的(分子間を含む)にイミド化(アルキルイミド化など)されていてよい。
【0058】
前記樹脂前駆体の分子量は、特に限定されないが、該前駆体を、ASTM:D1238に準拠して(測定条件:温度270℃、荷重2160g)測定されたメルトフローインデックス(MFI)の値で0.05〜50(g/10分)であることが好ましく、0.1〜30(g/10分)であることがより好ましく、0.5〜20(g/10分)であることが更に好ましい。
【0059】
前記樹脂前駆体の形状は特に限定されるものではないが、後述の加水分解処理及び酸処理における処理速度を速める観点から、0.5cm以下のペレット状であるか、分散液状、粉末粒子状であることが好ましく、中でも、重合後の粉末状体のものを用いることが好ましい。コストの観点からは、押し出し成型したフイルム状の樹脂前駆体を用いてもよい。
前記樹脂前駆体から本実施形態のフッ素系高分子電解質ポリマーを製造する方法は、特に限定されず、例えば、前記樹脂前駆体を押し出し機を用いてノズル又はダイ等で押し出し成型した後、加水分解処理を行うか、重合した時の産出物のまま、即ち分散液状、又は沈殿、ろ過させた粉末状の物とした後、加水分解処理を行う方法がある。
【0060】
前記樹脂前駆体から本実施形態のフッ素系高分子電解質ポリマーを製造する方法は、特に限定されず、例えば、前記樹脂前駆体を押し出し機を用いてノズル又はダイ等で押し出し成型した後、加水分解処理を行うか、重合した時の産出物のまま、即ち分散液状、又は沈殿、ろ過させた粉末状の物とした後、加水分解処理を行う方法がある。
より具体的には、上記のようにして得られ、必要に応じて成型された樹脂前駆体は、引き続き塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解処理される。加水分解処理に使用する塩基性反応液としては、特に限定されるものではないが、ジメチルアミン、ジエチルアミン、モノメチルアミン及びモノエチルアミン等のアミン化合物の水溶液や、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液が好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの水溶液が特に好ましい。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を用いる場合、その含有量は特に限定されないが、反応液全体に対して10〜30質量%であることが好ましい。上記反応液は、さらにメチルアルコール、エチルアルコール、アセトン及びジメチルスルホキシド(DMSO)等の膨潤性有機化合物を含有することがより好ましい。膨潤性の有機化合物の含有量は、反応液全体に対して1〜30質量%であることが好ましい。
【0061】
前記樹脂前駆体は、前記塩基性反応液体中で加水分解処理された後、温水等で十分に水洗し、その後、酸処理が行なわれる。酸処理に使用する酸としては、特に限定されないが、塩酸、硫酸及び硝酸等の鉱酸類や、シュウ酸、酢酸、ギ酸及びトリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましく、これらの酸と水との混合物がより好ましい。また、上記酸類は単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、加水分解処理で用いた塩基性反応液は、カチオン交換樹脂で処理すること等により、酸処理の前に予め除去してもよい。
【0062】
酸処理によって樹脂前駆体のイオン交換基前駆体基がプロトン化されてイオン交換基が生成する。例えば、前記式(5)を用いて製造されるPFSA樹脂前駆体の場合、式(5)のWは酸処理によってプロトン化され、SOHとなる。加水分解及び酸処理することによって得られたフッ素系高分子電解質ポリマーは、プロトン性有機溶媒、水、又は両者の混合溶媒に分散又は溶解することが可能となる。
【0063】
(イオン交換樹脂組成物)
本実施形態における電解質膜を形成するイオン交換樹脂組成物中に含まれる前記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーの含有量は、特に限定されないが、イオン選択透過性及び耐酸化劣化性の観点から、イオン交換樹脂組成物が前記特定の構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを主体とすることが好ましい。ここで、「主体とする」とは、樹脂組成物中の含有量の下限値が約33.3質量%、好ましくは40質量%、より好ましくは50質量%、更に好ましくは50質量%、より更に好ましくは80質量%、特に好ましくは90質量%含まれることをいう。上限値は特に制限はないが、99.5質量%以下であることが好ましい。
【0064】
前記フッ素系高分子電解質ポリマーは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、その他、ラジカル分解性の遷移金属(Ce化合物、Mn化合物等)との、部分塩(全イオン交換基当量の0.01〜5当量%程度)の形で、単独で又は後述する塩基性重合体と併用する形で、含有してもよい。
【0065】
(ポリアゾール系化合物)
本実施形態におけるイオン交換樹脂組成物は、上述したフッ素系高分子電解質ポリマーの他に、ポリアゾール系化合物を含有するか、それに代えて/加えて、塩基性重合体(オリゴマーなどの低分子量物質を含む)を含有すると、樹脂組成物としての化学的安定性(主に耐酸化性等)が増加する傾向にあり、好ましい。これらの化合物は、樹脂組成物中で微細粒子状又は分子分散に近い形でイオンコンプレックスを部分的に作り、イオン架橋構造を形成する。特に、フッ素系高分子電解質ポリマーのEWが低い場合(例えば300〜500の場合)には、耐水性と電気抵抗、又は含水クラスター径が小さくなる傾向にあるため、イオン交換樹脂組成物がポリアゾール系化合物を含有するか、それに代えて/加えて、塩基性重合体(オリゴマーなどの低分子量物質を含む)を含有することが、イオン選択透過性等のバランス面の観点から好ましい。
【0066】
ポリアゾール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、環内に窒素原子を1個以上含む複素環化合物の重合体、環内に窒素原子を1個以上と酸素及び/又は硫黄を含む複素環化合物の重合体からなる群から選択される1種以上が挙げられる。複素環の構造としては、特に限定されないが、五員環であることが好ましい。
【0067】
ポリアゾール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミダゾール系化合物、ポリベンズイミダゾール系化合物、ポリベンゾビスイミダゾール系化合物、ポリベンゾオキサゾール系化合物、ポリオキサゾール系化合物、ポリチアゾール系化合物及びポリベンゾチアゾール系化合物からなる群から選択される1種以上が挙げられる。イオン結合の形成しやすさ及び膜強度の観点からは、これらのうちポリベンズイミダゾール系化合物が好ましい。
【0068】
前記ポリアゾール系化合物は、燐酸系化合物(単体又はポリ燐酸等)を含ませ又は反応させ、その一部をポリアゾール系化合物に結合させることにより賦活化させたものを用いてもよい。
【0069】
イオン交換樹脂組成物がポリアゾール系化合物を含有する場合、ポリアゾール系化合物は、電解質膜の強度を低下しないような分散状態であることが好ましく、海島状にモザイク状態で分散していることがより好ましい。
膜の一部表面がイオン結合を形成し、膜の内部がイオン(カチオン)状態となるように、ポリアゾール系化合物は、各種酸で電離させた状態で存在してもよい。
フッ素系高分子電解質ポリマーとポリアゾール系化合物とが、少なくともその一部においてイオン結合を形成していることは、電解質膜の強度、耐久性の観点から好ましい。特に、フッ素系高分子電解質ポリマーのイオン交換基の少なくとも一部とポリアゾール系化合物の少なくとも一部が、分子分散に近い形で反応している状態(例えば、イオン結合して、酸塩基のイオンコンプレックスを形成している状態等の化学結合している状態)がより好ましい。
なお、上記イオン結合が存在するか否かについては、フーリエ変換赤外分光計(Fourier−Transform Infrared Spectrometer)(以下、FT−IRとする)を用いて確認することができる。例えば、高分子電解質としてパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、ポリアゾール化合物としてポリ[2,2'(m−フェニレン)−5,5'−ベンゾイミダゾール](以下、「PBI」という。)を用いた場合、FT−IRによる測定を行うと、上記高分子電解質中のスルホン酸基とPBI中のイミダゾール基との化学結合に由来するシフトした吸収ピークが、1458cm-1付近、1567cm-1付近、1634cm-1付近に認められる。
【0070】
フッ素系高分子電解質ポリマーがPFSA樹脂である場合、イオン結合の例としては、特に限定されないが、例えば、PFSA樹脂のスルホン酸基が、ポリアゾール系化合物中のイミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基等の各反応基中の窒素原子にイオン結合している状態等が挙げられる。この状態を制御すると、水分子を中心として、PFSA樹脂のスルホン酸基と形成するイオンチャンネルであるクラスター径を制御できる。その結果、膜の電気抵抗を上げることなく、イオン選択透過性、及び耐水性、耐酸化性について、相矛盾するどれかの性能を大幅に犠牲にしなくても、優れたバランスを有する電解質膜を得ることができ、従来のものに比べて大幅に性能を向上させることができる。
【0071】
ポリアゾール系化合物の含有量は、前記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜200質量部であり、より好ましくは0.5〜150質量部、さらに好ましくは1〜100質量部、特に好ましくは1〜50質量部である。ポリアゾール系化合物の含有量を上記範囲に調整することにより、より良好な電気抵抗を維持しながら、より優れた耐水性、強度、高耐酸化性、イオン選択透過性を有するレドックスフロー用二次電池用の電解質膜を得ることができる傾向にある。
【0072】
(ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂)
本実施形態におけるイオン交換樹脂組成物は、電解質膜の耐酸化性やクラスター径の観点から、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂を更に含有することが好ましい。
PPS樹脂は、押し出し法によりフッ素系高分子電解質ポリマーを含有する樹脂組成物に混合する方法やPPS樹脂の水性溶媒分散体をフッ素系高分子電解質ポリマーを含有する樹脂組成物の原液分散体に混合する方法により、添加できる。
PPS樹脂の含有添加量は、前記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。PPS樹脂の含有量が0.1質量部以上である場合、電解質膜の耐酸化性やイオン選択透過性が一層向上する傾向にあり、20質量部以下である場合、十分な膜強度が得られる傾向にある。
【0073】
(ポリフェニレンエーテル樹脂)
本実施形態におけるイオン交換樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂を更に含有することが好ましい。ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量は、前記式(1)で表される構造を有するフッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.1〜10質量部である。ポリフェニレンエーテル樹脂を上記範囲で含有する場合、耐酸化性等の化学的耐久性が一層向上する傾向にある。
【0074】
本実施形態におけるイオン交換樹脂組成物は、式(1)で表されるフッ素系高分子電解質ポリマー以外のフッ素系樹脂(カルボン酸、リン酸等を含む樹脂やその他公知のフッ素系樹脂)を含有してもよい。上記フッ素系樹脂としては、本実施形態で用いる式(1)で表されるフッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して30〜50質量部含むことが好ましく、10〜30質量部含むことがより好ましく、0〜10質量部含むことがさらに好ましい。
これらの樹脂を2種以上用いる場合、混合方法は特に限定されず、溶媒に溶解又は媒体に分散させて混合してもよく、樹脂前駆体同士を押し出し混合してもよい。
【0075】
<電解質膜>
(イオンクラスター)
本実施形態における電解質膜にはイオンクラスターが存在する。
本実施形態における電解質膜に存在するイオンクラスターは、高分子電解質ポリマー分子の主鎖をなすフッ素化炭化水素部分を形成する疎水部分と、該主鎖に結合している側鎖である適度な分子構造及び該長さ部分を形成していて先端に位置するイオン交換基である親水基が(分子を介して)複数集まった部分と、その周辺に配位している水分子及び水素結合その他の親和力で近辺に集められている自由水(遊離水とも言う)とからなる。
本実施形態における電解質膜では、複数個の、大きいサイズのチャンネル(所謂イオンクラスター)と、その間を繋ぐ小さなサイズのイオンチャンネルが形成され、結果として、膜の厚み方向に連続してイオンチャンネルが通じ、これがイオン(特にプロトンHの)伝導通路(チャンネル)として機能する。
【0076】
本実施形態の電解質膜の、25℃水中における小角X線法により測定されるイオンクラスター径は1.00〜2.95nmであり、好ましくは1.50〜2.95nm、更に好ましくは1.70〜2.95nm、特に好ましくは2.00〜2.75nmである。本実施形態の電解質膜は、イオンクラスター径が2.95nm以下であることにより、大きなイオンを透過し難く、イオン選択透過性が向上し、また、膜の強度が向上する傾向にあるため、当該膜を隔膜とするレドックスフロー二次電池は電流効率が向上する。一方、イオンクラスター径が1.00nm以上であることにより、水分子を配位したプロトン(H)が通り易くなり、電気抵抗が低下する。
【0077】
電解質膜の単位体積あたりのイオンクラスター数(個/nm)は、好ましくは0.06〜0.25であり、より好ましくは0.09〜0.22、更に好ましくは0.12〜0.20である。単位体積あたりのイオンクラスター数が0.25以下である場合、膜強度が向上する傾向にあり、0.06以上であることにより、電気伝導度が一層良好になる(膜電気抵抗がより低下する)傾向にある。
【0078】
イオンクラスター径及びクラスター数の具体的な算出方法は、以下の通りである。
電解質膜を25℃の水に含浸した状態で小角X線散乱測定を実施し、得られた散乱プロフィールに対して空セル散乱補正、絶対強度補正を行う。2次元検出器を用いて測定を行った場合は円環平均等合理的な手法によりデータを1次元化し、散乱強度の散乱角依存性を求める。こうして得られた散乱強度の散乱角依存性(散乱プロフィール)を用いて、橋本康博、坂本直紀、飯嶋秀樹 高分子論文集 vol.63 No.3 pp.166 2006に記載された手法に準じてクラスター径を求めることができる。すなわち、クラスター構造が粒径分布を持つコアーシェル型の剛体球で表されると仮定し、このモデルに基づく理論散乱式をもちいて実測の散乱プロフィールのクラスター由来の散乱が支配的な領域をフィッティングすることで平均クラスター直径(クラスター径)、クラスター個数密度を得ることができる。このモデルにおいて、コアの部分がクラスターに相当し、コアの直径がクラスター径となる。なお、シェル層は仮想的なものでシェル層の電子密度はマトリックス部分と同じとする。またシェル層厚みは0.25nmとする。フィッティングに用いるモデルの理論散乱式を式1に示す。ただし、Cは装置定数、Nはクラスター個数密度、ηはコア、つまりクラスター部分とその周りの仮想的なシェルを剛体球と仮定した場合のその体積分率、θはブッラグ角、λは用いるX線波長、tはシェル層厚み、aは平均クラスター半径(クラスター径の半分)、σはコア径(クラスター径)の標準偏差を示している。I(q)は熱散漫散乱を含むバックグラウンド散乱を表しており,ここでは定数と仮定する。フィッティングの際には上記パラメータのうち、N、η、a、σ、I(q)を可変パラメータとする。
【数1】
【0079】
本実施の形態の電解質膜において、電解質膜のイオンクラスター径及びイオンクラスター数は、ポリマー構造やポリマー組成、製膜条件等により調整することができる。例えば、ポリマーのEWを低くしたり、電解質膜の熱処理条件を調整することにより、イオンクラスター径は向上する傾向にある。
【0080】
(平衡含水率)
本実施形態における電解質膜の平衡含水率は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、本実施形態における電解質膜の平衡含水率は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。電解質膜の平衡含水率が5質量%以上であると、膜の電気抵抗や電流効率、耐酸化性、イオン選択透過性が良好となる傾向にある。一方、平衡含水率が50質量%以下であると、膜の寸法安定性や強度が良好となり、また水溶解性成分の増加を抑制できる傾向にある。電解質膜の平衡含水率は、樹脂組成物を水とアルコール系溶媒での分散液から成膜し、160℃以下で乾燥した膜を基準とし、23℃、50%関係湿度(RH)での平衡(24Hr放置)飽和吸水率(Wc)で表す。
本実施形態における電解質膜の膜最大含水率は、特に限定されないが、膜の電気抵抗や電流効率、耐酸化性、イオン選択透過性の点から、10質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、膜の寸法安定性や強度の点から、80質量%以下が好ましく、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。ここで、膜最大含水率は、前記平衡含水率測定の際に測定される含水率のうち最大値をいう。
【0081】
電解質膜の平衡含水率は、上述したEWと同様の方法により調整することができる。
【0082】
(補強材)
本実施形態における電解質膜は、膜強度の観点から、補強材を有することが好ましい。補強材としては、特に限定されず、一般的な不織布や織布、各種素材からなる多孔膜が挙げられる。
前記多孔膜としては、特に限定されないが、フッ素系高分子電解質ポリマーとの親和性が良好なものが好ましく、中でも、延伸されて多孔化したPTFE系膜を利用して、これに本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーを含有するイオン交換樹脂組成物を実質的に隙間無く埋め込んだ補強膜が、薄膜の強度の観点、及び面(縦横)方向の寸法変化を抑える観点から、より好ましい。
前記補強膜は、前述のイオン交換樹脂組成物を含む有機溶媒又はアルコール-水を溶媒とした、適度な該成分を有する溶質の適度な濃度の分散液を、適量多孔膜に含浸漬させて、乾燥させることにより得ることができる。
【0083】
前記補強膜を作製する際に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、沸点が250℃以下の溶媒が好ましく、より好ましくは沸点が200℃以下の溶媒であり、さらに好ましくは沸点が120℃以下の溶媒である。中でも、水と脂肪族アルコール類が好ましく、具体的には、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール及びtert−ブチルアルコール等が挙げられる。上記溶媒は、単独の溶媒で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0084】
(電解質膜の製造方法)
本実施形態における電解質膜の製造方法(成膜法)としては、特に限定されず、公知の、押し出し方法、キャスト成膜を用いることができる。電解質膜は単層でも多層(2〜5層)でもよく、多層の場合は性質の異なる膜(例えば、EWや官能基の異なる樹脂)を積層することにより、電解質膜の性能を改善することができる。多層の場合は、押し出し製膜時、キャスト時に積層させるか、又は得られたそれぞれの膜を積層させればよい。
【0085】
また、上記方法で成膜された電解質膜は、充分水洗浄し(又は必要に応じて、水洗前に、希薄な、塩酸、硝酸、硫酸等の水性酸性液で処理し)不純物を除去して、膜を空気中や不活性ガス中(好ましくは不活性ガス中)で、好ましくは130〜200℃、より好ましくは140〜180℃、更に好ましくは150〜170℃で、1〜30分間熱処理することが好ましい。熱処理の時間は、より好ましくは2〜20分であり、更に好ましくは3〜15分、特に好ましくは5〜10分程度である。
【0086】
上記熱処理は、成膜時のままの状態では、原料由来の粒子間(一次粒子及び二次粒子間)及び分子間が充分に絡み合っていないため、その粒子間及び分子間を絡み合わす目的で、特に耐水性(特に熱水溶解成分比率を下げ)、水の飽和吸水率を安定させ、安定なクラスターを生成させるために有用である。また、膜強度向上の観点からも有用である。特にキャスト成膜法を用いた場合には有用である。
【0087】
上記熱処理は、フッ素系高分子電解質ポリマーの分子間同士で、微小な分子間架橋を生成させることにより、耐水性及び安定なクラスター生成に寄与し、さらに、クラスター径を均一に且つ小さくする効果もあると推測される。
【0088】
さらには、上記熱処理によって、イオン交換樹脂組成物中のフッ素系高分子電解質ポリマーのイオン交換基が、その他の添加物(樹脂を含む)成分の活性反応部位(芳香環など)と、少なくともその一部分が反応し、それを介して、(特に分散している添加物であるその他樹脂成分の近くに存在するイオン交換基の反応により)微小な架橋が生成して安定化するものと推測される。この架橋の程度は、EW(熱処理前後のEW低下の程度)に換算して、0.001〜5%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3%、更に好ましくは0.2〜2%程度である。
【0089】
上記熱処理を上記好適な条件(時間、温度)で行うことは、上記熱処理の効果を発揮する観点や、脱フッ素、脱フッ酸、脱スルホン酸、熱酸化部位などの発生、増加により、かえって分子構造に欠陥が生じ、そこを起点に、実際に電解膜として使用している間に、耐酸化劣化性が悪化することを抑制する観点から好ましい。
【0090】
本実施形態における電解質膜は、イオン選択透過性に優れ、電気抵抗も低く、耐久性(主に、ヒドロキシラジカル耐酸化性)にも優れており、レドックスフロー二次電池用の隔膜として優れた性能を発揮する。なお、本明細書中の各物性は、特に明記しない限り、以下の実施例に記載された方法に準じて測定することができる。
【実施例】
【0091】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
[測定方法]
(1)PFSA樹脂前駆体のメルトフローインデックス
ASTM:D1238に準拠して、測定条件:温度270℃、荷重2160gで測定を行った。
【0093】
(2)PFSA樹脂の当量質量EWの測定
PFSA樹脂0.3gを、25℃、飽和NaCl水溶液30mLに浸漬し、攪拌しながら30分間放置した。次いで、飽和NaCl水溶液中の遊離プロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定した。中和滴定の終点をpH7とし、中和滴定後に得られた、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっているPFSA樹脂分を純水ですすぎ、さらに上皿乾燥機により160℃で乾燥し、秤量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっているPFSA樹脂の質量をW(mg)とし、下記式より当量質量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)−22
以上の操作を5回繰り返した後、算出された5つのEW値の最大値および最小値を除き、3つの値を相加平均して測定結果とした。
【0094】
(3)平衡含水率の測定
PFSA樹脂の分散液を清澄なガラス板上に塗布し、150℃で約10分間乾燥し、剥離して約30μmの膜を形成させ、これを23℃の水中に約3時間放置し、その後23℃、関係湿度(RH)50%の部屋に24時間放置した時の平衡含水率を測定した。基準の乾燥膜としては、80℃真空乾燥膜を用いた。平衡含水率は、膜の質量変化から算出した。
【0095】
(4)膜最大含水率の測定方法
最大含水率は、平衡含水率測定時に観測される最大値を示す。
【0096】
(5)クラスター径及びクラスター数の測定方法
電解質膜を25℃水中で24hr浸漬し、水に浸漬した状態で膜法線方向からポイントフォーカスのX線を入射して透過散乱光を検出した。測定には株式会社リガク社製小角X線散乱測定装置Nano Viewerを使用し、入射X線波長は0.154nm、カメラ長は850mm、測定時間は15分とした。検出器にはPILATUS100Kを用いた。透過散乱光から得られる散乱プロファイルからクラスター径及びクラスター数を算出した。
【0097】
(6)充放電試験
レドックスフロー二次電池は、隔膜の両側にて、液透過性で多孔質の集電体電極(負極用、正極用)を隔膜の両側にそれぞれ配置し、押圧でそれらを挟み、隔膜で仕切られた一方を正極セル室、他方を負極セル室とし、スペーサーで両セル室の厚みを確保した。正極セル室には、バナジウム4価(V4+)及び同5価(V5+)を含む硫酸電解液からなる正極電解液を、負極セル室にはバナジウム3価(V3+)及び同2価(V2+)を含む負極電解液を流通させ、電池の充電及び放電を行った。このとき、充電時には、正極セル室においては、バナジウムイオンが電子を放出するためV4+がV5+に酸化され、負極セル室では外路を通じて戻って来た電子によりV3+がV2+に還元された。この酸化還元反応では、正極セル室ではプロトン(H)が過剰になり、一方負極セル室では、プロトン(H)が不足する。隔膜は正極セル室の過剰なプロトンを選択的に負極室に移動させ電気的中性が保たれた。放電時には、この逆の反応が進んだ。この時の電池効率(エネルギー効率)(%)は、放電電力量を充電電力量で除した比率(%)で表され、両電力量は、電池セルの内部抵抗と隔膜のイオン選択透過性及びその他電流損失に依存する。
また、電流効率(%)は、放電電気量を充電電気量で除した比率(%)で表され、両電気量は、隔膜のイオン選択透過性及びその他電流損失に依存する。電池効率は、電流効率と電圧効率の積で表される。内部抵抗すなわちセル電気抵抗率の減少は電圧効率(電池効率(エネルギー効率))を向上させ、イオン選択透過性の向上及びその他電流損失の低減は、電流効率を向上させるので、レドックスフロー二次電池において、重要な指標となる。
充放電実験は、上述のようにして得られた電池を用いて行った。全バナジウム濃度が2M/Lで、全硫酸根濃度が4M/Lでの水系電解液を使用し、また、設置した正極及び負極セル室の厚みがそれぞれ5mmで、両多孔質電極と隔膜の間には炭素繊維からなる厚み5mmで嵩密度が約0.1g/cmの多孔質状のフエルトを挟んで用いた。充放電実験は電流密度80mA/cmで実施した。
セル電気抵抗率(Ω・cm)は、ACインピーダンス法を用いて、放電開始時においてAC電圧10mV,周波数20kHzでの直流抵抗値を測定し、それに電極面積を掛けることによって求めた。
セル内部抵抗は、定電流充放電時の充電の中間電圧と放電の中間電圧の差を2で割り、さらに電流値で割った値(抵抗)に電極面積を掛けることによって求めた。
【0098】
(7)耐久性
耐久性は、前記(6)の充放電を200サイクル実施した後の電流効率(%)及びセル電気抵抗率(Ω・cm)により評価した。
【0099】
(実施例1〜8)
(1)PFSA樹脂前駆体の作製
ステンレス製攪拌式オートクレーブに、C15COONHの10%水溶液と純水とを仕込み、十分に真空、窒素置換を行った後、テトラフルオロエチレン(CF=CF、TFE)ガスを導入してケージ圧力で0.7MPaまで昇圧した。引き続いて、過硫酸アンモニウム水溶液を注入して重合を開始した。重合により消費されたTFEを補給するため、連続的にTFEガスを供給してオートクレーブの圧力を0.7MPaに保つようにして、供給したTFEに対して、質量比で0.70倍に相当する量のCF=CFO(CF−SOFを連続的に供給して重合を行い、それぞれ重合条件を最適な範囲に調整して、各種のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体粉末を得た。得られたPFSA樹脂前駆体粉末のMFIは、それぞれ、A1が0.5(g/10分)、A2が1.5(g/10分)、A3が0.8(g/10分)、A4が2.0(g/10分)であった。
【0100】
(2)PFSA樹脂、及びその分散溶液の作製
得られたPFSA樹脂前駆体粉末を、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)を溶解した水溶液中に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、60℃水中に5時間浸漬した。次に、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回塩酸水溶液を更新して5回繰り返した後、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、スルホン酸基(SOH)を有し、式(2)(m=2)で表される構造を有するPFSA樹脂を得た。得られたPFSA樹脂のEWは、それぞれ、A1が450(g/eq)、A2が650(g/eq)、A3が750(g/eq)、A4が850(g/eq)であった。
【0101】
得られたPFSA樹脂を、エタノール水溶液(水:エタノール=50:50(質量比))と共に5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、翼で攪拌しながら160℃まで昇温して5時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、5質量%の均一なPFSA樹脂分散液を作製した。次に、これらの100gのPFSA樹脂分散液に純水100gを添加、攪拌した後、この液を80℃に加熱、攪拌しながら、固形分濃度が20質量%になるまで濃縮した。
得られたPFSA樹脂分散液を、上記同様の順に、分散液(ASF1)、分散液(ASF2)、分散液(ASF3)、分散液(ASF4)とした。
【0102】
次に、ポリベンズイミダゾール(PBI)粉末を、アルカリ水溶液(KOH10%水溶液)に溶解し、上記各PFSA樹脂分散液に、均一に混合分散しながら、攪拌し、最終的(固形成分で)に、該PFSA樹脂成分100質量部に対して、上記分散液に、それぞれ順に(ASF1からASF4の順に)6質量部、4質量部、3質量部、1質量部となるように均一に混合した。次にこれらを、粒子状カチオン交換樹脂粒子を充填したカラムを通して、アルカリイオン成分をほぼ完全に除去し、少なくとも一部の該官能基同士(スルホン酸基とアルカリ性の窒素原子と)のイオン結合を生成せしめた混合分散液(ASBF)とし、それぞれ順に、ASBF1、ASBF2、ASBF3、ASBF4とした。
【0103】
(3)電解質膜の作製
得られた分散液(ASF1〜ASF4)及び混合分散液(ASBF1〜ASBF4)を、公知の通常の方法にて、担体シートであるポリイミド製フィルム上にキャストし、120℃(20分)の熱風を当てて、溶媒をほぼ完全に飛ばし、乾燥させることにより膜を得た。これを更に、160℃10分の条件下における熱風空気雰囲気下で、熱処理することにより膜厚50μmの電解質膜を得た。得られた電解質膜の上記熱処理前後のEWは、その変化率が0.2〜0.3%程度であつた。
得られた電解質膜の平衡含水率は、それぞれ上記の順に、PBIを含まない群(I)<ASF>は;ASF1(19質量%)、ASF2(12質量%)、ASF3(9質量%)、ASF4(6質量%)であった。
25℃水中3時間におけるそれぞれの電解質膜の最大含水率は、それぞれ、ASF1(27質量%)、ASF2(23質量%)、ASF3(18質量%)、ASF4(15質量%)であつた。ここで、最大含水率は、平衡含水率測定時に観測される最大値を示す。
PBIを含む群(II)<ASBF>の電解質膜の平衡含水率については;ASBF1(18質量%)、ASBF2(11質量%)、ASBF3(8質量%)、ASBF4(6質量%)であった。
25℃水中3時間におけるそれぞれの電解質膜の最大含水率は、それぞれ、ASBF1(21質量%)、ASBF2(21質量%)、ASBF3(17質量%)、ASBF4(14質量%)であった。
上記結果から、PBIを含む群の方が、より良好な耐水性が見られる傾向にあった。
【0104】
所定のコンデショニング処理後の電解質膜の、クラスター径(nm)/クラスター数(個/nm)は、PBIを含まない群(I)<ASF>は、それぞれ、ASF1(2.00/0.25)、ASF2(2.50/0.15)、ASF3(2.92/0.10)、ASF4(3.00/0.08)であった。また、PBIを含む群(II)<ASBF>については、それぞれ、ASBF1(1.70/0.35)、ASBF2(2.25/0.25)、ASBF3(2.75/0.13)、ASBF4(2.95/0.10)であった。
上記結果から、PBIを含む群の方が、クラスター径の減少や単位体積あたりのクラスター数の個数が増加している傾向が見られ、好ましい傾向があった。これらの効果は、添加したPBIとPFSA樹脂とのイオン結合によるものと推測される。
【0105】
次に各電解質膜を、バナジウムレドックスフロー二次電池の隔膜として用いて充放電試験を行った。PBIを含まない群(I)<ASF>を、電解液中で充分平衡にしてから充放電実験を行い、その後安定な状態にしてから、セル電気抵抗率及び電流効率を測定した、各膜のセル電気抵抗率/電流効率は、それぞれ、ASF1(98.0/0.70)、ASF2(97.5/0.90)、ASF3(97.0/1.00)、ASF4(96.5/1.05)であり、優れた傾向が見られた。
次に、同様の方法によりPBIを含む群(II)<ASBF>についてセル電気抵抗率/電流効率を測定したところ、ASBF1(98.9/0.80)、ASBF2(98.3/0.95)、ASBF3(97.8/1.05)、ASBF4(97.2/1.10)であり、より優れた傾向が見られた。
【0106】
次に、上記のASF3とASBF3から得られた膜を用いて、充放電を200サイクル実施してその変化を調べることにより耐久試験を行った。その結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm)は、ASF3は(96.5/0.98)、ASBF3は(97.7/1.02)と変化が極めて小さく、耐酸化性に優れていた。
【0107】
(比較例1)
実施例1で用いた20%PFSA樹脂分散液(AS1〜AS4)の代わりにナフィオンDE2021(登録商標、デュポン社製、20%溶液、EW1050)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は4質量%であった。
得られた電解質膜を用いて、実施例と同様の方法によりクラスター径(nm)/クラスター数(個/nm)を測定したところ3.20/0.04であり、クラスター径が大きく、また単位体積あたりのクラスター個数も少なく、実施例の膜よりも劣っていた。また、実施例と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm)は94.5/1.20であり、電流効率についても、実施例よりもかなり低いレベルであった。これは、比較例1の電解質膜は、イオン選択透過性が低いためと推測される。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果においても、電流効率が86%、電気抵抗が1.30であり、耐久性にも劣っていた。
【0108】
表1に、上記実施例1〜8及び比較例1の結果を示す。
【0109】
【表1】
【0110】
本出願は、2011年12月28日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2011−290035)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のレドックスフロー二次電池は、電気抵抗が低く、電流効率が高く、耐久性にも優れる。
本発明のレドックスフロー二次電池用電解質膜は、イオンの選択透過性に優れ、電気抵抗も低く、耐久性(主に、ヒドロキシラジカル耐酸化性)にも優れており、レドックスフロー二次電池用の隔膜としての産業上利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0112】
1 正極
2 正極セル室
3 負極
4 負極セル室
5 電解質膜
6 電解槽
7 正極電解液タンク
8 負極電解液タンク
9 交直変換装置
10 レドックスフロー二次電池
【図1】
【国際調査報告】