(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013102946
(43)【国際公開日】20130711
【発行日】20150511
(54)【発明の名称】排気加熱方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/025 20060101AFI20150414BHJP
   F02D 41/14 20060101ALI20150414BHJP
   F02D 41/02 20060101ALI20150414BHJP
   F01N 3/36 20060101ALI20150414BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20150414BHJP
【FI】
   !F01N3/02 331H
   !F02D41/14 310C
   !F02D41/02 310
   !F02D41/02 310E
   !F01N3/36 C
   !F02D21/08 301C
   !F01N3/02 331L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
【出願番号】2012527558
(21)【国際出願番号】JP2012000006
(22)【国際出願日】20120104
(11)【特許番号】5338985
(45)【特許公報発行日】20131113
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 健一
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】井上 三樹男
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
【テーマコード(参考)】
3G090
3G091
3G092
3G301
【Fターム(参考)】
3G090AA01
3G090AA06
3G090BA02
3G090CB04
3G090DA12
3G090EA02
3G090EA06
3G091AA11
3G091AB02
3G091AB13
3G091BA02
3G091BA15
3G091CA02
3G091CA18
3G091CB02
3G091DA01
3G091DA02
3G091EA17
3G091EA34
3G091HB05
3G092AA17
3G092BB01
3G092DC01
3G092DC09
3G092EA01
3G092EA02
3G092HD07Z
3G301HA13
3G301LA01
3G301MA01
3G301PD11Z
(57)【要約】
排気浄化装置(26)よりも上流側の排気管(23)に配された燃料添加弁(27a)から排気通路(23a)に燃料を添加し、排気通路(23a)に添加された燃料を加熱して着火させることにより、内燃機関から排気浄化装置(26)に導かれる排気を加熱する本発明の方法は、排気通路(23a)への燃料の添加の必要性を判定するステップと、このステップにて燃料を排気通路(23a)に添加する必要があると判断した場合、燃料添加弁(27a)から排気通路(23a)に添加すべき燃料の添加量を設定するステップと、内燃機関の運転状態を把握するステップと、このステップにて把握された内燃機関の運転状態において、排気通路(23a)を流れる排気中の煤およびHCの発生量が共に少ない領域に収まるように、内燃機関の燃焼室から排気通路(23a)へと排出される排気の空燃比を制御するステップとを具える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気浄化装置よりも上流側の排気管に配された燃料添加弁から排気通路に燃料を添加し、排気通路に添加された燃料を加熱して着火させることにより、内燃機関から排気浄化装置に導かれる排気を加熱する方法であって、
排気通路への燃料の添加の必要性を判定する判定ステップと、
この判定ステップにて燃料を排気通路に添加する必要があると判断した場合、前記燃料添加弁から排気通路に添加すべき燃料の添加量を設定する添加量設定ステップと、
内燃機関の運転状態を把握する運転状態把握ステップと、
この運転状態把握ステップにて把握された内燃機関の運転状態において、排気通路を流れる排気中の煤およびHCの発生量が共に少ない領域に収まるように、内燃機関の燃焼室から排気通路へと排出される排気の空燃比を制御する空燃比制御ステップと
を具えたことを特徴とする排気加熱方法。
【請求項2】
前記空燃比制御ステップは、内燃機関の燃焼室から排気通路へと排出される酸素量を減少させるように燃料噴射弁から内燃機関の燃焼室に噴射される燃料の噴射量を設定する噴射量設定ステップと、スロットル弁の開度を設定するステップと、EGR制御弁の開度を設定するステップとの少なくとも1つのステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の排気加熱方法。
【請求項3】
前記添加量設定ステップは、この添加量設定ステップにて設定された燃料の添加量を前記噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量に応じて減量補正するステップを有することを特徴とする請求項2に記載の排気加熱方法。
【請求項4】
前記空燃比制御ステップが前記噴射量設定ステップを含み、
内燃機関の運転状態を把握する運転状態把握ステップが排気温を求めるステップを含み、
前記噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を、前記運転状態把握ステップにて求められた排気温に応じて補正する噴射量補正ステップをさらに有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の排気加熱方法。
【請求項5】
前記噴射量補正ステップは、排気温が高い運転状態にある場合、前記噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を増量補正するのに対し、排気温が低い運転状態にある場合、前記噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を減量補正することを特徴とする請求項4に記載の排気加熱方法。
【請求項6】
前記空燃比制御ステップが前記噴射量設定ステップを含み、
内燃機関の運転状態を把握する運転状態把握ステップが内燃機関の燃焼室から排気通路へと排出される排気の空燃比を求めるステップを含み、
前記噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を前記運転状態把握ステップにて求められた排気の空燃比に応じて補正する噴射量補正ステップをさらに有することを特徴とする請求項2から請求項5の何れかに記載の排気加熱方法。
【請求項7】
前記噴射量補正ステップは、排気の空燃比がリーン領域にある場合、前記噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を増量補正するのに対し、排気の空燃比がリッチ領域にある場合、前記噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を減量補正することを特徴とする請求項6に記載の排気加熱方法。
【請求項8】
排気浄化装置がDPFを含み、このDPFの再生処理中に前記判定ステップが燃料を排気通路に添加する必要があると判断した場合、前記噴射量設定ステップは、この噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を減量補正するステップを有することを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の排気加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置よりも上流側の排気管に配された燃料添加弁から排気通路に燃料を添加し、これを加熱して着火させることにより、排気浄化装置へと導かれる排気を加熱する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関に対する厳しい排気規制に対処するため、内燃機関の始動時に排気浄化装置の活性化を促進させたり、内燃機関の運転中にその活性状態を維持したりすることが必要となっている。このため、排気浄化装置よりも上流側の排気通路に排気加熱装置を組み込んだ内燃機関が特許文献1などで提案されている。この排気加熱装置は、排気中に加熱ガスを生成し、この生成された加熱ガスを下流側の排気浄化装置に供給することにより、排気浄化装置の活性化を促進させたり、活性状態を維持するものである。このため、排気加熱装置は、燃料を排気通路中に添加する燃料添加弁と、この燃料を加熱して着火させることにより、加熱ガスを生成させるグロープラグなどの着火装置とを一般的に有する。また、この特許文献1に開示された従来の排気加熱装置においては、着火装置が燃料添加弁に近接して配されているため、燃料添加弁から排気通路に添加される燃料と排気との混合が充分になされず、着火した燃料が不完全燃焼となる場合がある。このため、燃料添加弁から噴射された燃料を受けてこれを排気通路に飛散させる受け板を排気通路に組み込むことが特許文献1にて提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−084710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気通路への燃料添加は、エンジンの燃焼室への燃料噴射とは異なり、燃料の噴射圧が低く、しかも圧力や温度も絶対的に低い傾向にある。このため、燃料の気化が緩慢となって燃料の液滴が排気中に残存し、内燃機関の運転状態によっては排気通路に添加された燃料を良好に燃焼させることができず、大量の煤(スモーク)が発生する可能性がある。例えば、排気通路を流れる排気中の酸素濃度が高かったり、その排気温が高い場合、着火装置による燃料の着火時の燃焼速度が早まり、大量の煤が生成される傾向を持つ。この結果、未燃燃料がそのまま下流へと伝わることにより排気浄化装置の一部を構成する触媒コンバーターへの未燃燃料の付着や、燃料すり抜けによる白煙の発生をもたらす可能性がある。
【0005】
特許文献1に開示された従来の排気加熱装置においては、着火装置が燃料添加弁に近接して配されているため、燃料添加弁から排気通路に添加される燃料と排気との混合が充分になされず、着火した燃料が不完全燃焼となる場合がある。このため、大量の煤が発生して排気浄化装置の一部を構成する触媒コンバーターに目詰まりを生じさせてしまう不具合を招く。結果として、触媒コンバーターの再生処理を頻繁に行う必要が生じ、そのための燃料の消費に伴って燃費が悪化してしまう問題が生ずる。
【0006】
本発明の目的は、排気浄化装置よりも上流側の排気管に配された燃料添加弁から排気通路に燃料を添加し、これを加熱して着火させることによって排気浄化装置に導かれる排気を加熱する際、煤およびHCの発生量を常に少なくし得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
排気浄化装置よりも上流側の排気管に配された燃料添加弁から排気通路に燃料を添加し、排気通路に添加された燃料を加熱して着火させることにより、内燃機関から排気浄化装置に導かれる排気を加熱する本発明の方法は、排気通路への燃料の添加の必要性を判定する判定ステップと、この判定ステップにて燃料を排気通路に添加する必要があると判断した場合、前記燃料添加弁から排気通路に添加すべき燃料の添加量を設定する添加量設定ステップと、内燃機関の運転状態を把握する運転状態把握ステップと、この運転状態把握ステップにて把握された内燃機関の運転状態において、排気通路を流れる排気中の煤およびHCの発生量が共に少ない領域に収まるように、内燃機関の燃焼室から排気通路へと排出される排気の空燃比を制御する空燃比制御ステップとを具えたことを特徴とするものである。
【0008】
排気加熱装置での燃料の燃焼状態は、内燃機関の運転状態に応じて燃焼が良好な状態と煤が出やすい状態と未燃燃料が残留しやすい状態とに変化する。本発明における排気加熱装置を用いて排気の加熱を行う際には、内燃機関の燃焼室から排気通路へと排出される酸素量を減少させるように、例えば排気温や排気流量や排気中の酸素濃度などの状態に応じて燃料噴射弁から内燃機関の燃焼室に噴射される燃料の噴射量を制御する。これにより、排気加熱装置よりも下流側の排気通路を流れる排気中に煤や未燃燃料が含まれにくい運転状態にしておき、排気通路に添加される燃料の燃焼状態を良好に保つ。
【0009】
本発明による排気加熱方法において、空燃比制御ステップは、内燃機関の燃焼室から排気通路へと排出される酸素量を減少させるように燃料噴射弁から内燃機関の燃焼室に噴射される燃料の噴射量を設定する噴射量設定ステップと、スロットル弁の開度を設定するステップと、EGR制御弁の開度を設定するステップとの少なくとも1つのステップを含むことができる。この場合、添加量設定ステップは、この添加量設定ステップにて設定された燃料の添加量を噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量に応じて減量補正するステップを有することが有効である。
【0010】
空燃比制御ステップが噴射量設定ステップを含み、内燃機関の運転状態を把握する運転状態把握ステップが排気温を求めるステップを含み、噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を運転状態把握ステップにて求められた排気温に応じて補正する噴射量補正ステップをさらに有するものであってよい。ここで、噴射量補正ステップは、排気温が高い運転状態にある場合、噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を増量補正するのに対し、排気温が低い運転状態にある場合、噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を減量補正することが有効である。
【0011】
空燃比制御ステップが前記噴射量設定ステップを含み、内燃機関の運転状態を把握する運転状態把握ステップが内燃機関の燃焼室から排気通路へと排出される排気の空燃比を求めるステップを含み、噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を運転状態把握ステップにて求められた排気の空燃比に応じて補正する噴射量補正ステップをさらに有するものであってよい。ここで、噴射量補正ステップは、排気の空燃比がリーン領域にある場合、噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を増量補正するのに対し、排気の空燃比がリッチ領域にある場合、噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を減量補正することが有効である。
【0012】
排気浄化装置がDPF(Diesel Particulate Filter)を含み、このDPFの再生処理中に判定ステップが燃料を排気通路に添加する必要があると判断した場合、噴射量設定ステップは、この噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を減量補正するステップを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
排気通路を流れる排気の流量は、内燃機関の運転状態によってその変動幅が非常に大きく、このような排気の流量変化に拘らず、燃料添加弁から排気通路に添加される燃料の燃焼制御を正確に行うことは極めて困難を伴う。しかしながら、本発明によると、排気通路に燃料を添加する際に内燃機関の燃焼室から排気通路へと排出される排気の空燃比を制御することにより、排気通路を流れる排気中の煤およびHCの発生量が共に少ない領域に収めることができる。例えば、車両の減速時などで内燃機関の燃焼室への燃料の噴射を停止した状態にて排気加熱装置により排気を加熱する際、内燃機関の燃焼室に燃料を供給してこれを燃焼させずに排気に含ませるようにする。これにより排気中の酸素濃度を低下させて煤の発生を抑制することができる。
【0014】
空燃比制御ステップが噴射量設定ステップと、スロットル弁開度設定ステップと、EGR制御弁開度設定ステップとの少なくとも1つのステップを含む場合、内燃機関の燃焼室から排気通路へと排出される排気の空燃比を迅速かつ正確に制御することができる。
【0015】
この添加量設定ステップにて設定された燃料の添加量を噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量に応じて減量補正する場合、未燃燃料の排出をさらに抑制することができる。
【0016】
噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を運転状態把握ステップにて求められた排気温に応じて補正する場合も同様に、未燃燃料の排出をさらに抑制することができる。特に、排気温の高い運転状態の場合に燃料噴射量を増量補正するのに対し、排気温の低い運転状態の場合に燃料噴射量を減量補正することにより、未燃燃料の抑制と共に煤の生成をも併せて抑制することができる。
【0017】
噴射量設定ステップにて設定された燃料噴射量を運転状態把握ステップにて求められた排気の空燃比に応じて補正する噴射量補正ステップをさらに有する場合、未燃燃料の増加をさらに抑制することができる。特に、排気の空燃比のリーン領域において燃料噴射量を増量補正するのに対し、排気の空燃比のリッチ領域において燃料噴射量を減量補正することにより、未燃燃料の抑制と共に煤の生成をも併せて抑制することができる。
【0018】
排気浄化装置がDPFを含み、このDPFの再生処理中に燃料を排気通路に添加する場合、設定された燃料の添加量を減量補正することにより、燃料の消費を抑えることができる。また、DPFが再生処理なので煤が生成したとしてもこれを酸化除去することができ、しかもDPFに流入する排気中の酸素濃度の上昇に伴ってPM(Particulate Matter)の燃焼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明による排気加熱方法を実施し得るエンジンシステムの一実施形態における概念図である。
【図2】図2は、図1に示した実施形態における主要部の制御ブロック図である。
【図3】図3は、筒内燃料噴射量と煤およびHCの発生量との関係を模式的に表すグラフである。
【図4】図4は、排気温と目標空燃比の選択領域との関係を模式的に表すグラフである。
【図5】図5は、排気温と酸素濃度と煤の大量発生領域およびHCの大量発生領域ならびに好適燃焼領域との関係を模式的に表すグラフである。
【図6】図6は、排気温と空燃比と煤の大量発生領域および好適燃焼領域との関係を模式的に表すグラフである。
【図7】図7は、吸気流量と空燃比と煤の大量発生領域および好適燃焼領域との関係を模式的に表すグラフである。
【図8】図8は、本実施形態における燃料の添加制御に関わる手順を表すフローチャートである。
【図9】図9は、図8中の燃料噴射量設定ステップの詳細手順を表すフローチャートである。
【図10】図10は、図8中の燃料添加量設定ステップの詳細手順を表すフローチャートである。
【図11】図11は、図8中の噴射量空燃比補正ステップの詳細手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による排気加熱方法を実現し得る圧縮点火方式の内燃機関の一実施形態について、図1〜図11を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限らず、要求される仕様や特性などに応じてその構成を自由に変更することが可能である。
【0021】
本実施形態におけるエンジンシステムの主要部を模式的に図1に示し、その制御ブロックを図2に示すが、簡略化のために図1にはエンジン10の吸排気のための動弁機構などを便宜的に省略していることに注意されたい。
【0022】
本実施形態におけるエンジン10は、燃料である軽油を燃料噴射弁11から圧縮状態にある燃焼室10a内に直接噴射することにより、自然着火させる圧縮点火方式の内燃機関である。
【0023】
燃料噴射弁11から燃焼室10a内に供給される燃料の量(以下、これを燃料噴射量と呼称する)および噴射タイミングは、運転者によるアクセルペダル12の踏み込み量を含む車両の運転状態に基づいてECU(Electronic Control Unit)13により制御される。アクセルペダル12の踏み込み量(以下、これをアクセル開度と記述する)θは、アクセル開度センサー14により検出され、その検出情報がECU13に出力される。
【0024】
燃料噴射弁11から燃焼室10a内に燃料を噴射する場合、本実施形態では2つの噴射モードが設定されている。すなわち、一方は燃料を燃焼室10a内で圧縮点火させてこれを燃焼させ、エンジン10の出力を得るエンジン駆動モードであり、他方は噴射された燃料を燃焼室10a内で着火させず、そのまま後述する排気通路23aへと流す排気加熱モードである。この排気加熱モードにおける燃料噴射量と排気中の煤および未燃状態のHCの量との関係を模式的に図3に示す。この図3から明らかなように、燃料噴射量が少ないほど煤が発生しやすく、逆に燃料噴射量が多いほど未燃状態のHCの量が多くなる傾向を持つので、燃料噴射量を図3の適当な煤/HC低減範囲に収めることで、煤およびHC量を共に少なくすることができる。
【0025】
本実施形態では、排気加熱モードにて燃料噴射処理が必要な場合、燃料噴射量を煤/HC低減範囲のほぼ中間位置となるFに設定する。しかしながら、後述する排気浄化装置26のDPF26bの再生処理中におけるDPF26bへのPMの堆積速度VよりもPMの燃焼速度Vが高い場合には、煤の発生が多めになってもDPF26bにてこれが処理されることとなる。従って、この場合には燃料噴射量をΔFだけ減量補正して燃料の無駄な消費を抑制し、未燃HCの生成も抑制することができる。
【0026】
また、排気温Tが低すぎたり高すぎたりした場合、煤や未燃HCの生成量が変化するので、排気温Tに応じて燃料噴射量をさらに補正するようにしている。より具体的には、排気温Tが予め設定した第1の閾温度T未満の場合、煤の生成量が減少する可能性が高いので、燃料噴射量をΔFだけ減量補正し、未燃HCの生成量の増大を抑制する。逆に、排気温Tが予め設定した第2の閾温度Tよりも高い場合、煤の生成量が増大する可能性が高いので、燃料噴射量をΔFだけ増量補正して煤の生成量の増大を抑制する。
【0027】
同様に、本実施形態では実際の空燃比Rが目標空燃比Rに対して例えば±ΔRよりも大きく外れている場合にも、煤や未燃HCの生成量が変化するので、空燃比Rに応じて燃料噴射量をさらに補正するようにしている。より具体的には、空燃比Rが目標空燃比Rに対してΔRよりもリーン領域にある場合、煤が生成しやすくなるので、燃料噴射量をΔFだけ増量補正する。逆に、空燃比Rが目標空燃比Rに対してΔRよりもリッチ領域にある場合、未燃HCが生成しやすくなるので、燃料噴射量をΔFだけ減量補正する。
【0028】
なお、上述したような燃料噴射量の補正処理に代え、あるいはこのような燃料噴射量の補正処理に加え、吸入空気量およびEGR量の少なくとも一方を制御することでも同様な効果を得ることができる。
【0029】
ECU13は、運転状態判定部13aと、燃料噴射設定部13bと、燃料噴射弁駆動部13cと、PM堆積速度算出部13dと、PM燃焼速度算出部13eとを有する。運転状態判定部13aは、アクセル開度センサー14や後述する各種センサー類などからの情報に基づいて車両の運転状態を把握する。燃料噴射設定部13bは、運転状態判定部13aでの判定結果に基づいて燃料噴射弁11からの燃料の噴射量や噴射時期を設定する。なお、排気加熱モードが選択された場合、燃料噴射設定部13bは燃料噴射量を基本的にFに設定する。燃料噴射弁駆動部13cは、燃料噴射設定部13bにて設定された量の燃料が設定された時期に燃料噴射弁11から噴射されるように、燃料噴射弁11の作動を制御する。PM堆積速度算出部13dは、DPF再生処理中のPMの堆積速度Vを算出し、PM燃焼速度算出部13eは、DPF再生処理中のPMの燃焼速度Vを算出するが、これらの算出は周知の方法で行われる。
【0030】
燃焼室10aにそれぞれ臨む吸気ポート15aおよび排気ポート15bが形成されたシリンダーヘッド15には、吸気ポート15aを開閉する吸気弁16aおよび排気ポート15bを開閉する排気弁16bを含む図示しない動弁機構が組み込まれている。先の燃料噴射弁11もこのシリンダーヘッド15に組み込まれている。
【0031】
吸気ポート15aに連通するようにシリンダーヘッド15に連結されて吸気ポート15aと共に吸気通路17aを画成する吸気管17には、スロットルアクチュエーター18を介して吸気通路17aの開度を調整するためのスロットル弁19が組み込まれている。
【0032】
先のECU13は、スロットル開度設定部13fと、アクチュエーター駆動部13gとをさらに有する。スロットル開度設定部13fは、先の運転状態判定部13aでの把握結果に基づいてスロットル弁19の開度を設定する。アクチュエーター駆動部13gは、スロットル弁19がスロットル開度設定部13fにて設定された開度となるように、スロットルアクチュエーター18の作動を制御する。
【0033】
ピストン20aが往復動するシリンダーブロック21には、連接棒20bを介してピストン20aが連結されるクランク軸20cの回転位相、つまりクランク角を検出してこれをECU13に出力するクランク角センサー22が取り付けられている。
【0034】
ECU13の運転状態判定部13aは、このクランク角センサー22からの情報に基づき、クランク軸20cの回転位相やエンジン回転数の他に車両の走行速度などを実時間で把握する。
【0035】
エンジン10には、排気通路23a内を流れる排気の一部を吸気通路17aに導くEGR装置24と、ターボ過給機25と、排気浄化装置26と、排気加熱装置27とが組み込まれている。
【0036】
主として排気中の窒素酸化物を低減するためのEGR装置24は、EGR通路28aを画成するEGR管28と、このEGR管28に設けられてEGR通路28aを流れる排気の流量を制御するEGR制御弁29とを具えている。EGR管28は、排気ポート15bと共に排気通路23aを画成する排気管23に一端が連通すると共に他端が上述したスロットル弁19とこのスロットル弁19よりも下流側に配されたサージタンク17bとの間の吸気通路17aに連通している。
【0037】
本実施形態では、エンジン10を搭載した車両が予め設定されたEGR運転領域にあることをECU13の運転状態判定部13aが判定した場合、この時の車両の運転状態に応じてEGR制御弁29の開度がECU13のEGR量設定部13hにて設定される。ECU13のEGR弁駆動部13iは、EGR制御弁29をEGR量設定部13hにて設定された開度に制御し、それ以外の場合は基本的にEGR通路28aを塞ぐように閉じた状態にEGR制御弁29を駆動する。
【0038】
ターボ過給機(以下、単に過給機と記述する)25は、排気通路23aを流れる排気の運動エネルギーを利用して燃焼室10aへの過給を行い、吸気の充填効率を高めるためのものである。本実施形態における過給機25は、吸気タービン25aとこの吸気タービン25aと一体に回転する排気タービン25bとで主要部が構成されている。吸気タービン25aは、スロットル弁19よりも上流側に位置する吸気管17の途中に組み込まれている。排気タービン25bは、排気ポート15bに連通するようにシリンダーヘッド15に連結された排気管23の途中に組み込まれている。本実施形態では、排気タービン25b側からの伝熱により吸気タービン25aを介して加熱される吸気温を低下させるため、インタークーラー25cが吸気タービン25aとサージタンク17bとの間の吸気通路17aの途中に組み込まれている。
【0039】
過給器25の吸気タービン25aよりも上流側の吸気管17には、ここの吸気通路17aを流れる吸気の流量を検出してこれをECU13に出力するエアーフローメーター30が設けられている。なお、上述したEGR管28の一端は、排気タービン25bよりも上流の排気管23に接続している。
【0040】
燃焼室10a内での混合気の燃焼により生成する有害物質を無害化するための排気浄化装置26は、過給機25の排気タービン25bよりも下流側の排気通路23aを画成する排気管23に組み込まれている。本実施形態における排気浄化装置26は、周知の酸化触媒コンバーター26aおよびDPF(Diesel Particulate Filter)26bを含む。しかしながら、NOX(Nitrogen Oxides:窒素酸化物)触媒コンバーターなどをさらに含むものであってもよい。
【0041】
この排気浄化装置26には、その温度(以下、これを触媒温度と記述する)Tを検出してECU13に出力するための触媒温度センサー31が組み込まれている。また、排気浄化装置26よりも上流かつ排気加熱装置27よりも下流に位置する排気管23の部分には、排気温センサー32が取り付けられている。この排気温センサー32は、排気浄化装置26に流入する直前の排気通路23aを流れる排気温Tを検出し、その検出情報をECU13に出力する。
【0042】
本実施形態におけるECU13は、これら触媒温度センサー31および排気温センサー32からの情報に基づいて排気加熱装置27の作動の必要性、つまり燃料添加要求の有無を判定する。通常は、酸化触媒26aが活性状態を維持し得る最低温度を基準とし、これよりも触媒温度Tが低いか、あるいはこれよりも低くなることが予測される場合、燃料添加要求があると判定する。しかしながら、これ以外の従来から周知の判定方法を適宜採用することも可能である。
【0043】
車両の運転状態および排気浄化装置26の状態に基づいてその作動が制御される排気加熱装置27は、エンジン10から排気浄化装置26に導かれる排気を加熱し、排気浄化装置26の迅速な活性化および活性状態の保持を行うためのものである。本実施形態における排気加熱装置27は、燃料添加弁27aと、グロープラグ27bとを具えている。
【0044】
排気浄化装置26の活性化またはその活性状態を維持するための燃料を添加する燃料添加弁27aは、過給機25の排気タービン25bよりも下流かつ排気浄化装置26よりも上流に位置する排気通路23aに臨むように排気管23に取り付けられている。この燃料添加弁27aは、排気浄化装置26の暖機、すなわち活性化が必要になった場合、基本的に低負荷運転状態において排気加熱装置27を作動させ、排気通路23aに向けて燃料を添加するようになっている。燃料添加弁27aから排気通路23aに添加された燃料を着火させるためのグロープラグ27bは、その先端側の発熱部分が燃料添加弁27aよりも排気通路23aの下流側に配され、燃料添加弁27aからの燃料は、この発熱部分に向けて添加される。グロープラグ27bは、ECU13によりオン/オフを制御される図示しないスイッチを介して図示しない車載電源に接続している。グロープラグ27bは、燃料添加弁駆動部13lからの燃料添加弁27aの駆動情報に基づき、ECU13のグロープラグ駆動部13mによってその作動のオン/オフが切り替えられる。
【0045】
ECU13は、目標空燃比設定部13jと、燃料添加設定部13kと、燃料添加弁駆動部13lとをさらに有する。
【0046】
目標空燃比設定部13jは、排気加熱処理によって排気を加熱する際に排気浄化装置26に流入する排気の目標空燃比Rを設定する。本実施形態では、排気温センサー32によって検出される排気温Tと、燃焼室10aから排気加熱装置27に流入する排気中の酸素濃度とに基づき、排気加熱処理を行った場合に燃料が効率よく燃焼するような空燃比、すなわち目標空燃比Rが設定される。このような排気温Tと空燃比との関係を模式的に図4に示し、吸気流量,空燃比,酸素濃度,排気温Tと、排気加熱処理を行った場合に燃料が効率よく燃焼する領域(以下、これを便宜的に燃焼好適領域と記述する)との関係を模式的に図5〜図7に示す。なお、酸素濃度はECUの運転状態判定部13aにて算出されるが、周知のOセンサーを排気加熱装置27よりも上流側の排気通路23aに組み込むようにしてもよい。この燃焼好適領域は図5〜図7の破線で囲まれた領域であり、これらの破線で囲まれた領域に収まるように、単一の目標空燃比Rが目標空燃比設定部13jにて設定される。
【0047】
燃料添加設定部13kは、燃料添加弁27aから排気通路23aへの燃料の添加量を設定する。より具体的には、目標とすべき触媒温度Tと触媒温度センサー31によって検出される触媒温度Tとの差に基づき、排気加熱処理によって排気を加熱する際に排気通路23aに添加すべき燃料の量、すなわち目標燃料添加量Fを算出する。目標とすべき触媒温度Tは、酸化触媒26aが活性状態となる最低温度が一般的に選択される。また、この燃料添加設定部13kは、燃料添加弁27aに対する1回あたりの通電によって排気通路23aに添加される燃料の添加量(以下、これを単位添加量と記述する)Fと、その通電周期(以下、これを添加周期と記述する)tとを併せて設定する。単位添加量Fは、エアーフローメーター30からの情報に基づく排気流量に基づいて設定され、基本的には排気流量が多いほど単位添加量Fが多く設定される。添加周期tは、設定された単位添加量Fにて排気通路23aに燃料を添加した場合、これが先の目標空燃比Rとなるように設定される。
【0048】
なお、燃料添加弁27aからの燃料添加と燃料噴射弁11からの燃料噴射とが同時に実施される場合、燃料噴射弁11からの燃料の噴射量に応じて先の目標燃料添加量Fおよび単位添加量Fの少なくとも一方が減量補正される。また、目標空燃比Rに対して実際の空燃比Rが異なった場合、実際の空燃比Rが目標空燃比Rに合致するように空燃比制御を行い、燃料噴射量および吸入空気量およびEGR量の少なくとも1つを必要に応じて補正する。
【0049】
燃料添加弁駆動部13lは、燃料添加設定部13kにて設定された単位添加量が設定された添加周期にて排気通路23aに添加されるように、燃料添加弁27aの作動を制御する。
【0050】
本実施形態では、エアーフローメーター30によって検出される吸入空気量と、燃料噴射弁11からの燃料噴射量および燃料添加弁27aからの燃料添加量とに基づき、排気浄化装置26に流入する直前の排気の空燃比Rが運転状態判定部13aにて算出される。しかしながら、空燃比センサーを排気加熱装置27よりも下流および排気浄化装置26よりも上流側の排気通路23aに配設し、空燃比センサーからの検出信号によってこの空燃比Rを検出することも可能である。
【0051】
このように、未燃燃料が含まれた排気を排気加熱装置27に導くことにより、エンジン10の燃焼室10aから排気加熱装置27に送出される排気に含まれる酸素濃度を必要最小限に抑えることができ、煤の発生量を抑えることが可能となる。
【0052】
本実施形態におけるECU13は、周知のワンチップマイクロプロセッサであり、図示しないデータバスにより相互接続されたCPU,ROM,RAM,不揮発性メモリおよび入出力インターフェースなどを含む。このECU13は、円滑なエンジン10の運転がなされるように、上述したセンサー14,22,31,32およびエアーフローメーター30などからの検出信号に基づいて所定の演算処理を行う。そして、予め設定されたプログラムに従って燃料噴射弁11,スロットル弁19,EGR制御弁29,燃料添加弁27a,グロープラグ27bなどの作動を制御する。
【0053】
従って、吸気通路17aから燃焼室10a内に供給される吸気は、燃料噴射弁11から燃焼室10a内に噴射される燃料と混合気を形成する。そして、通常はピストン20aの圧縮上死点直前にて自然着火して燃焼し、これによって生成する排気が排気浄化装置26を通って無害化された状態で排気管23から大気中に排出される。
【0054】
一方、本発明における排気加熱処理は、排気浄化装置26の状態に応じてエンジン10の運転中に実行される。このような本実施形態における排気加熱装置27の作動手順を図8〜図11のフローチャートを用いて説明すると、まずS11のステップにて燃料添加要求があるか否かを判定する。ここで燃料添加要求がある、すなわち排気浄化装置26を活性化させる必要があると判断した場合には、S12のステップに移行し、現在の運転状態が煤の多量に生成する領域にあるか否かを判断する。ここで煤が大量に生成する領域に現在の運転状態がある、すなわち燃料噴射弁11から燃料を燃焼室10aに噴射することが望ましいと判断した場合には、S13のステップに移行して燃料噴射量設定処理を行う。
【0055】
すなわち、図9のS131のステップにて燃料噴射量をFに設定した後、S132のステップにてDPF26bが再生処理中であるか否かを判定する。ここでDPF26bが再生処理中であると判断した場合には、S133のステップに移行してPMの燃焼速度VがPMの堆積速度V以上であるか否かを判定する。ここでPMの燃焼速度VがPMの堆積速度V以上である、すなわちDPF26bの再生処理によってPMが減少傾向にあると判断した場合には、S134のステップに移行する。そして、S131のステップにて設定された燃料噴射量FをΔFだけ減量補正し、未燃HCの生成量の増大を抑制する。
【0056】
しかる後、S135のステップにて排気温Tが第1閾温度T以上かつ第2閾温度T以下にあるか否かを判定する。ここで排気温Tが第1閾温度T以上かつ第2閾温度T以下である、すなわち排気温Tが低過ぎもせず高過ぎでもないと判断した場合には、この燃料噴射量設定のサブルーチンを終了して図8に示すメインのフローチャートのS14のステップに移行する。また、S135のステップにて排気温Tが第1閾温度T以上でもなく、第2閾温度T以下でもないと判断した場合には、S136のステップに移行して今度は排気温Tが第2閾温度Tよりも高いか否かを判定する。ここで、排気温Tが第2閾温度Tよりも高い、すなわち煤の生成量が初期予測よりも増大すると判断した場合には、S131のステップにて設定された燃料噴射量FをS137のステップにてΔFだけ増量補正する。また、S136のステップにて排気温Tが第2閾温度Tよりも高くない、すなわち排気温Tは第1閾温度Tよりも低いので、煤の生成量が初期予測よりも減少すると判断した場合には、S138のステップに移行する。そして、S131のステップにて設定された燃料噴射量FをΔFだけ減量補正し、未燃HCの生成量の増大を抑制する。
【0057】
このように、排気温Tが第1閾温度T以上でなかったり、あるいは第2閾温度T以下ではない場合、S131のステップにて設定された燃料噴射量Fの補正をS137,S138のステップにて行い、図9の燃料噴射量設定処理を終える。しかる後、図8のS14のステップに移行する。
【0058】
S14のステップでは、アクセル開度θが0であるか否かを判定する。ここでアクセル開度θが0である、すなわち車両が減速中かまたはアイドリング状態であって燃料噴射弁11から燃焼室10a内への燃料の噴射が行われていないと判断した場合には、S15のステップに移行する。ここで燃料噴射弁11から燃焼室10a内への燃料の噴射を開始し、燃料を燃焼室10a内で燃焼させることなく、排気通路23aへと排出させ、排気中の酸素濃度を低下させる。このように、本実施形態では車両が減速中かまたはアイドリング状態の場合にのみ、燃料噴射弁11から燃焼室10aに燃料を噴射するようにしているため、エンジン10のトルク変動による乗員の違和感を最小限に抑えることができる。このS15のステップに続いてS16のステップにてフラグがセットされているか否かを判定する。最初はフラグがセットされていないので、S17のステップに移行してタイマーのカウントアップを行い、タイマーのカウント値Cが目標カウント値C以上であるか否かをS18のステップにて判定する。これ以降、タイマーのカウント値Cが目標カウント値Cに達するまではS18からS11のステップまで戻り、上述した処理が基本的に繰り返される。
【0059】
このようにして、S18のステップにてタイマーのカウント値Cが目標カウント値C以上である、すなわち燃料噴射弁11から噴射された燃料を含む排気が排気加熱装置27に達したと判断した場合には、S19のステップに移行してフラグをセットする。そしてS20のステップに移行して燃料添加量設定処理を行う。
【0060】
一方、先のS12のステップにて現在の運転状態が煤の多量に生成する領域にはない、すなわち燃料を燃焼室10aに噴射する必要がないと判断した場合には、S21のステップに移行する。そして、未燃HCが多量に生成する運転領域に現在の運転状態があるか否かを判定する。ここで未燃HCが多量に生成する運転領域にあると判断した場合には、図9のS134のステップに移行してS131のステップにて設定された燃料噴射量FをΔFだけ減量補正し、HCの生成が抑制されるようにする。また、S21のステップにて未燃HCが多量に生成する運転領域には現在の運転状態がない、すなわち燃料噴射弁11から燃料を燃焼室10aに噴射する必要がないと判断した場合には、直ちにS20のステップに移行する。なお、S16のステップにてフラグがセットされている、すなわち燃料噴射弁11から噴射された燃料を含む排気が排気加熱装置27に達していると判断した場合も、S20のステップに移行する。
【0061】
図10に示すS20のステップの燃料添加量設定のサブルーチンにおいては、まず触媒温度Tとその目標触媒温度Tとの差に応じて目標となる燃料添加量FをS201のステップにて設定し、次いでS202のステップにて目標空燃比Rを設定する。そして、S203のステップにて単位添加量Fを算出した後、S204のステップにて単位添加量Fと目標空燃比Rとに応じた添加周期tを設定して燃料添加量設定処理を終え、図8に示すメインのフローチャートのS22のステップに移行する。
【0062】
このS22のステップにおいては、燃料添加弁27aから排気通路23aに燃料の添加を行い、着火手段により燃料を着火して燃焼させ、高温となった排気を排気浄化装置26へと導く。この場合、煤およびHCの生成が共に少なくなるように、必要に応じて燃料噴射弁11からも燃料が燃焼室10aに噴射されており、煤およびHCによる排気浄化装置26への悪影響を最小限に抑えることができる。次いで、S23のステップにてフラグがセットされているか否かを判定し、ここでフラグがセットされている、すなわち燃焼室10aに燃料噴射弁11からも燃料が噴射されていると判断した場合には、S24のステップに移行して噴射量空燃比補正処理を行う。
【0063】
図11に示す噴射量空燃比補正のサブルーチンにおいては、まずS241のステップにて現在の空燃比Rが目標空燃比Rに対して所定範囲にあるか否かを判定する。ここで現在の空燃比Rが目標空燃比Rに対して所定範囲内にある、すなわち現在の空燃比を補正する必要がないと判断した場合には、図11の噴射量空燃比補正処理を終えて図8のS25のステップに移行する。しかしながら、S241のステップにて現在の空燃比Rが目標空燃比Rに対して所定範囲から外れていると判断した場合には、S242のステップに移行して現在の空燃比Rが目標空燃比Rに対してΔRよりも大きいか否かが判定される。ここで現在の空燃比Rが目標空燃比Rに対してΔRよりも大きい、すなわちリーン過ぎて煤が生成しやすいと判断した場合には、S13のステップにて設定された燃料噴射量をS243のステップにてΔFだけ増量補正する。S242のステップにて現在の空燃比Rが目標空燃比Rに対してΔRよりも大きくない、すなわち空燃比がリッチ過ぎてHCが生成しやすいと判断した場合、S13のステップにて設定された燃料噴射量Fを、S244のステップにてΔFだけ減量補正する。
【0064】
このようにして、現在の空燃比Rと目標空燃比Rとの差に応じて燃料噴射弁11からの燃料噴射量を補正して現在の空燃比Rが目標空燃比Rに対して所定範囲に収まるように制御した後、S25のステップに移行する。
【0065】
一方、先のS23のステップにてフラグがセットされていない、すなわち燃料噴射弁11から燃料が噴射されていないと判断した場合にもS25のステップに移行し、触媒温度Tが目標触媒温度T以上になったか否かを判定する。ここで触媒温度Tが目標触媒温度Tよりも低い、すなわち排気の加熱を継続する必要があると判断した場合には、S11のステップに戻って上述した処理が繰り返される。また、触媒温度Tが目標触媒温度T以上である、すなわち排気浄化装置26が活性状態となってこれ以上加熱する必要がないと判断した場合には、S26のステップに移行する。そして排気加熱処理を終了し、タイマーのカウント値Cを0にリセットした後、最初のステップS11に戻る。また、S14のステップにてアクセル開度θが0ではない、すなわち運転者によりアクセルペダル12が踏み込まれている場合も、S26のステップに移行する。その理由は、運転者によってアクセルペダル12が踏み込まれると、燃焼室10aでの燃料の燃焼が始まって排気温Tが上昇するため、排気加熱処理を行う必要がないからである。同様に、先のS11のステップにて燃料添加要求がないと判断した場合にも、S29のステップに移行して排気加熱処理を終了し、タイマーのカウント値Cを0にリセットする。
【0066】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0067】
10 エンジン
10a 燃焼室
11 燃料噴射弁
12 アクセルペダル
13 ECU
13a 運転状態判定部
13b 燃料噴射設定部
13c 燃料噴射弁駆動部
13d PM堆積速度算出部
13e PM燃焼速度算出部
13f スロットル開度設定部
13g アクチュエーター駆動部
13h EGR量設定部
13i EGR弁駆動部
13j 目標空燃比設定部
13k 燃料添加設定部
13l 燃料添加弁駆動部
13m グロープラグ駆動部
14 アクセル開度センサー
15 シリンダーヘッド
15a 吸気ポート
15b 排気ポート
16a 吸気弁
16b 排気弁
17 吸気管
17a 吸気通路
17b サージタンク
18 スロットルアクチュエーター
19 スロットル弁
20a ピストン
20b 連接棒
20c クランク軸
21 シリンダーブロック
22 クランク角センサー
23 排気管
23a 排気通路
24 EGR装置
25 ターボ過給機
25a 吸気タービン
25b 排気タービン
25c インタークーラー
26 排気浄化装置
26a 酸化触媒コンバーター
26b DPF
27 排気加熱装置
27a 燃料添加弁
27b グロープラグ
28 EGR管
28a EGR通路
29 EGR制御弁
30 エアーフローメーター
31 触媒温度センサー
32 排気温センサー
θ アクセル開度
タイマーのカウント値
目標カウント値
燃料噴射量
目標燃料添加量
単位添加量
ΔF 燃料噴射補正量
触媒温度
排気温
第2閾温度
第1閾温度
目標触媒温度
実際の空燃比
目標空燃比
PM燃焼速度
PM堆積速度
添加周期
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際調査報告】