(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013102986
(43)【国際公開日】20130711
【発行日】20150511
(54)【発明の名称】高炭素熱延鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20150414BHJP
   C22C 38/06 20060101ALI20150414BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20150414BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20150414BHJP
【FI】
   !C22C38/00 301W
   !C22C38/06
   !C22C38/60
   !C21D9/46 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】2013552352
(21)【国際出願番号】JP2012008318
(22)【国際出願日】20121226
(11)【特許番号】5590254
(45)【特許公報発行日】20140917
(31)【優先権主張番号】2012000407
(32)【優先日】20120105
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号
(74)【代理人】
【識別番号】100126701
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 展之
【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号 JFEスチール株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇
【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号 JFEスチール株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】船川 義正
【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号 JFEスチール株式会社内
【テーマコード(参考)】
4K037
【Fターム(参考)】
4K037EA01
4K037EA02
4K037EA06
4K037EA11
4K037EA13
4K037EA15
4K037EA17
4K037EA18
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4K037EC01
4K037FA01
4K037FA02
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4K037FA05
4K037FC04
4K037FE03
4K037FE05
4K037FF02
4K037JA06
(57)【要約】
安定して優れた冷間加工性と焼入れ性の得られる高炭素熱延鋼板およびその製造方法を提供する。
質量%で、C:0.20〜0.48%、Si:0.1%以下、Mn:0.5%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.10%超え1.0%以下、N:0.005%以下、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライトとセメンタイトからなるミクロ組織を有し、上記フェライトの平均粒径が10〜20μmであり、上記セメンタイトの球状化率が90%以上である高炭素熱延鋼板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.20〜0.48%、Si:0.1%以下、Mn:0.5%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.10%超え1.0%以下、N:0.005%以下、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライトとセメンタイトからなるミクロ組織を有し、前記フェライトの平均粒径が10〜20μmであり、前記セメンタイトの球状化率が90%以上である高炭素熱延鋼板。
【請求項2】
さらに、質量%で、Cu、Niのうちの少なくとも1種を合計で2%以下含有する請求項1に記載の高炭素熱延鋼板。
【請求項3】
さらに、質量%で、Cr、Moのうちの少なくとも1種を合計で1.0%以下含有する請求項1または2に記載の高炭素熱延鋼板。
【請求項4】
さらに、質量%で、Sb、Snのうちの少なくとも1種を合計で0.1%以下含有する請求項1から3のいずれか1項に記載の高炭素熱延鋼板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の組成を有する鋼を、粗圧延後、850℃以上の仕上温度で仕上圧延し、600℃以上の巻取温度で巻取った後、680℃以上Ac1変態点以下の焼鈍温度で焼鈍する高炭素熱延鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間加工性(cold workability)と焼入れ性に優れる高炭素熱延鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ギア、トランスミッション、シートリクライナーなどの自動車用部品は、JIS G 4051に規定された機械構造用炭素鋼鋼材である熱延鋼板を冷間加工によって所望の形状に加工した後、所望の硬さを確保するために焼入れ処理を施して製造されている。そのため、素材の熱延鋼板には、優れた冷間加工性や焼入れ性が要求されており、これまでに種々の鋼板が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、鋼成分として、質量%で、C:0.10〜0.37%、Si:1%以下、Mn:1.4%以下、P:0.1%以下、S:0.03%以下、sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.0005〜0.0050%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.0050%を含有し、B-(10.8/14)N*≧0.0005%、N*=N-(14/48)Ti、但し、右辺≦0の場合、N*=0を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、鋼中析出物であるTiNの平均粒径が0.06〜0.30μmであり、かつ焼入れ後の旧オーステナイト粒径が2〜25μmである焼入れ後の靭性に優れる熱延鋼板が開示されている。
【0004】
特許文献2には、質量%で、C:0.15〜0.40%、Si:0.35%以下、Mn:0.6〜1.50%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、sol.Al:0.01〜0.20%、N:0.0020〜0.012%、Ti:0.005〜0.1%、B:0.0003〜0.0030%を含み、かつ、B≦0.0032-0.014×sol.Al-0.029×Tiを満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる冷間加工性、焼入れ性、熱処理後の靭性に優れた焼戻し省略型Ti-B系高炭素鋼板の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、質量%で、C:0.20〜0.48%、Si:0.1%以下、Mn:0.20〜0.60%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.1%以下、N:0.005%以下、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0005〜0.003%、Cr:0.05〜0.3%、Ti-(48/14)N≧0.005、残部Feおよび不可避的不純物である組成とフェライト平均粒径が6μm以下、炭化物平均粒径が0.1μm以上1.20μm未満、炭化物を実質的に含まないフェライト粒の体積率が5%以下である組織を有する冷間加工性に優れた高炭素熱延鋼板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4265582号公報
【特許文献2】特開平5-98356号公報
【特許文献3】特開2005-97740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1から3に記載の高炭素鋼板では、安定して冷間加工性と焼入れ性がともに優れたものが得られないという問題がある。
【0008】
本発明は、安定して優れた冷間加工性と焼入れ性の得られる高炭素熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、Bを添加した高炭素熱延鋼板の冷間加工性と焼入れ性について検討した結果、以下のことを見出した。
【0010】
i) フェライトとセメンタイトからなるミクロ組織とし、かつフェライトの平均粒径を10〜20μm、セメンタイトの球状化率を90%以上にすることにより安定して優れた冷間加工性が得られる。
【0011】
ii) sol.Al量を0.10%超えにすることにより焼入れ性を向上させる固溶B(solute B)の効果を有効に発現でき、安定して優れた焼入れ性が得られる。
【0012】
iii) 焼入れ性向上効果を有効に発現できることから、固溶強化元素であるSi、Mn量の低減が可能となり、熱延ままでも安定した冷間加工性が得られる。
【0013】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、質量%で、C:0.20〜0.48%、Si:0.1%以下、Mn:0.5%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.10%超え1.0%以下、N:0.005%以下、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライトとセメンタイトからなるミクロ組織を有し、前記フェライトの平均粒径が10〜20μmであり、前記セメンタイトの球状化率が90%以上である高炭素熱延鋼板を提供する。
【0014】
本発明の高炭素熱延鋼板では、上記の組成に加え、さらに、質量%で、Cu、Niのうちの少なくとも1種を合計で2%以下、Cr、Moのうちの少なくとも1種を合計で1.0%以下、Sb、Snのうちの少なくとも1種を合計で0.1%以下を、一緒に、あるいは個別に含有させることが好ましい。
【0015】
本発明の高炭素熱延鋼板は、上記の組成を有する鋼を、粗圧延後、850℃以上の仕上温度で仕上圧延し、600℃以上の巻取温度で巻取った後、680℃以上Ac1変態点以下の焼鈍温度で焼鈍することにより製造可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、安定して優れた冷間加工性と焼入れ性の得られる高炭素熱延鋼板を製造できるようになった。本発明の高炭素熱延鋼板は、自動車のギア、トランスミッション、シートリクライナーなどに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】

【図1】図1は、セメンタイトの最大径aおよび最小径bを、a/b≦3であるa/b=1.5の場合について示した図である
【図2】図2は、セメンタイトの最大径aおよび最小径bを、a/b>3であるa/b=6の場合について示した図である
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明である高炭素熱延鋼板およびその製造方法について詳細に説明する。なお、成分の含有量の単位である「%」は特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
【0019】
1) 組成
C:0.20〜0.48%
Cは、焼入れ後の強度を得るために重要な元素である。部品に冷間加工した後、熱処理によって所望の硬さを得るため、C量は少なくとも0.20%以上にする必要がある。しかし、C量が0.48%を超えると硬質化し、冷間加工性が劣化する。したがって、C量は0.20〜0.48%とする。十分な熱処理後の硬さを得るには、C量は0.26%以上にすることが好ましい。
【0020】
Si:0.1%以下
Siは、固溶強化により強度を上昇させる元素である。しかし、Si量が0.1%を超えると、硬質化し、冷間加工性が劣化する。したがって、Si量は0.1%以下とする。Si量はゼロであっても問題ない。
【0021】
Mn:0.5%以下
Mnは、固溶強化により強度を上昇させる元素である。しかし、Mn量が0.5%を超えると、硬質化したり、偏析に起因するバンド組織(band structure)が形成されるため、冷間加工性が劣化する。したがって、Mn量は0.5%以下、好ましくは0.4%以下とする。Mn量はゼロであっても問題ないが、Mnを低減するとグラファイト析出しやすくなるため、Mn量を0.2%以上にすることが好ましい。
【0022】
P:0.03%以下
Pは、固溶強化により強度を上昇させる元素である。しかし、P量が0.03%を超えると粒界脆化を招き、焼入れ後の靭性が劣化する。したがって、P量は0.03%以下とする。優れた焼入れ後の靭性を得るには、P量は0.02%以下にすることが好ましい。P量はゼロであっても問題ないが、過剰な低減は製造コストを高めるためコスト面を考慮するとP量を0.005%%以上にすることが好ましい。
【0023】
S:0.01%以下
Sは、硫化物を形成し、冷間加工性および焼入れ後の靭性を劣化させるため、低減しなければならない元素である。S量が0.01%を超えると、冷間加工性および焼入れ後の靭性が著しく劣化する。したがって、S量は0.01%以下とする。優れた冷間加工性および焼入れ後の靭性を得るには、S量は0.005%以下が好ましい。S量はゼロであっても問題ない。
【0024】
sol.Al:0.10%超え1.0%以下
sol.Alは、セメンタイトの球状化を促進し、冷間加工性を向上させる。しかし、Bを含有した鋼の場合、sol.Al量が0.10%以下だと、浸炭焼入れや光輝焼入れにおいてCポテンシャルを制御するために混合されたNガスを含むような雰囲気ガス中で加熱する時にBNが形成されやすく、焼入れ性を向上させる固溶Bが減少して鋼板表層部の焼入れ性が著しく低下する場合がある。sol.Al量を0.10%超えにすれば、AlNが優先的に形成されてBNの形成を抑制するので、AlN形成によりオーステナイト粒は微細化するが、固溶B量が確保されているため、焼入れ性を安定して発現できることになる。一方、sol.Al量が1.0%を超えると、固溶強化により過度に硬質化し、冷間加工性が劣化する。
【0025】
N:0.005%以下
N量が0.005%を超えると、焼入れ処理の加熱時に、BNの形成により固溶B量が低下し、また、多量のBNやAlNの形成によりオーステナイト粒が微細化し過ぎ、冷却時にフェライトの生成が促進され、焼入れ後の靭性が劣化する。したがって、N量は0.005%以下とする。N量はゼロであっても問題ない。
【0026】
B:0.0005〜0.0050%
Bは、焼入れ性を高める重要な元素である。しかし、B量が0.0005%未満では、十分な焼入れ性を高める効果が認められない。一方、B量が0.0050%を超えると、熱間圧延の負荷が高くなり操業性が低下するととともに、冷間加工性の劣化も招く。したがって、B量は0.0005〜0.0050%とする。
【0027】
残部はFeおよび不可避的不純物とするが、セメンタイトの球状化を促進し、冷間加工性や焼入れ性のさらなる向上のために、Cu、Niのうちの少なくとも1種を合計で2%以下、Cr、Moのうちの少なくとも1種を合計で1.0%以下、Sb、Snのうちの少なくとも1種を合計で0.1%以下を、一緒に、あるいは個別に含有させることが好ましい。なお、Sb及びSnについては、前述のsol.Alと同様に、Bの窒化を抑制することにより焼入れ性を改善する効果が新たに確認された。したがって、焼入れ性のより確実な向上を目的としてこれらの元素を添加することが特に好ましい。
【0028】
2) ミクロ組織
安定して優れた冷間加工性を得るには、フェライトとセメンタイトからなるミクロ組織とし、かつフェライトの平均粒径を10〜20μm、セメンタイトの球状化率を90%以上にする必要がある。これは、フェライトの平均粒径が10μm未満では硬質化する、また、フェライトの平均粒径が20μmを超えたり、セメンタイトの球状化率が90%未満では軟質化しても延性が低下するので、冷間加工性が劣化するためである。
【0029】
ここで、フェライトの平均粒径は、鋼板の圧延方向の板厚断面を研磨後、ナイタール(nital)腐食し、走査電子顕微鏡を用いて板厚中央部近辺10箇所を1000倍で観察し、JIS G0552:1998に準拠した切断法により各箇所のフェライトの平均粒径を求め、さらに10箇所の平均粒径を平均して求めた。なお、このとき、同時にミクロ組織の相構成も確認できる。
【0030】
また、セメンタイトの球状化率は、上記の組織観察で各セメンタイトの最大径aと最小径bの比a/bを計算し、この比が3以下のセメンタイトの個数の全セメンタイト個数に対する割合(%)で求めた。例えば、図1、2に示すように最大径aと最小径bを決めることができる。
【0031】
3) 製造条件
仕上温度:850℃以上
本発明の高炭素熱延鋼板は、上記のような組成の鋼を粗圧延と仕上圧延からなる熱間圧延して所望の板厚の鋼板とされる。このとき、仕上温度が850℃未満では、オーステナイト粒が微細になるため、その後の冷却過程で形成されるフェライトの平均粒径が10μm未満になる。したがって、仕上温度は850℃以上とする。なお、仕上温度の上限は、特に規定しないが、過度に高いと、ミクロ組織が混粒化して焼入れ性にムラが生じやすくなる場合があるので、1000℃にすることが好ましい。
【0032】
巻取温度:600℃以上
巻取温度が600℃未満では、フェライトの平均粒径が10μm未満になる。したがって、巻取温度は600℃以上とする。なお、巻取温度の上限は、特に規定しないが、スケールによる表面性状の劣化を避けるために、750℃にすることが好ましい。
【0033】
焼鈍温度:680℃以上Ac1変態点以下
巻取り後の鋼板には、酸洗後、パーライトを生成させず、フェライトとセメンタイトからなるミクロ組織とし、かつセメンタイトの球状化率を90%以上にするため、680℃以上Ac1変態点以下の焼鈍温度で焼鈍を行う必要がある。焼鈍温度が680℃未満ではセメンタイトの球状化率を90%以上にできず、Ac1変態点を超えると加熱中にオーステナイトが生じて、冷却中にパーライトが生成し、冷間加工性が劣化する。また、上記の温度に維持される焼鈍時間は20時間以上40時間以下であることが好ましい。焼鈍時間が20時間以上であればセメンタイトの球状化率を所望の範囲に調整しやすいという理由で好ましく、40時間以下であれば焼鈍の効果が充分に得られるとともに、焼鈍を長時間行うことによる製造コストの上昇も抑えられるという理由で好ましい。
【0034】
なお、Ac1変態点は、例えば、加熱速度100℃/hrのフォーマスタ(formastor)実験で熱膨張曲線を求め、その変化点により求めることができる。
【0035】
本発明の高炭素鋼を溶製するには、転炉、電気炉どちらも使用可能である。また、こうして溶製された高炭素鋼は、造塊−分塊圧延または連続鋳造によりスラブとされる。スラブは、通常、加熱された後、熱間圧延される。なお、連続鋳造で製造されたスラブの場合は、そのままあるいは温度低下を抑制する目的で保熱して、圧延する直送圧延を適用してもよい。また、スラブを加熱して熱間圧延する場合は、スケールによる表面状態の劣化を避けるためにスラブ加熱温度を1280℃以下とすることが好ましい。熱間圧延では、仕上圧延温度を確保するため、熱間圧延中にシートバーヒータ等の加熱手段により被圧延材の加熱を行ってもよい。
【実施例】
【0036】
表1に示す鋼番AからOの組成を有する高炭素鋼を溶製し、次いで表2に示す熱延条件に従って熱間圧延後、酸洗し、表2に示す焼鈍温度で焼鈍を行い、板厚4.0mmの熱延焼鈍板(鋼板No.1〜18)を製造した。
【0037】
このようにして製造した鋼板について、上記の方法によりミクロ組織の相構成、フェライトの平均粒径、セメンタイトの球状化率を求めた。また、圧延方向に平行にJIS 5号試験片を採取し、JIS Z 2201に準拠して引張強度および伸びを求めた。さらに、次の方法により焼入れ性を評価した。
【0038】
焼入れ性:鋼板から平板試験片(幅50mm×長さ50mm)を採取し、RXガス(RX gas)に空気を混合してカーボンポテンシャルを鋼中のC量と等しくなるように制御した雰囲気ガス中で、900℃で1時間加熱保持後、直ちに50℃の油中へ投入し油を攪拌させる雰囲気焼入れ法(controlled atmosphere hardening)で焼入れ試験を行い、ロックウエル硬さ(HRC)を測定した。そして、鋼中のC量に応じて、C:0.20%でHRC≧42、C:0.35%でHRC≧54、C:0.48%でHRC≧58であれば焼入れ性が優れるとした。
【0039】
結果を表2に示す。
【0040】
本発明例の鋼板は、フェライトとセメンタイトからなるミクロ組織を有し、フェライトの平均粒径が10〜20μmで、セメンタイトの球状化率が90%以上であり、伸びが高く冷間加工性に優れ、また、焼入れ後にはC量に応じて十分な硬さが得られており、焼入れ性にも優れていることがわかる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【図1】
【図2】

【手続補正書】
【提出日】20140423
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.20〜0.48%、Si:0.1%以下、Mn:0.5%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.10%超え1.0%以下、N:0.005%以下、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライトとセメンタイトからなるミクロ組織を有し、前記フェライトの平均粒径が10〜20μmであり、前記セメンタイトの球状化率が90%以上である高炭素熱延鋼板。
【請求項2】
さらに、質量%で、Cu、Niのうちの少なくとも1種を合計で2%以下含有する請求項1に記載の高炭素熱延鋼板。
【請求項3】
さらに、質量%で、Cr、Moのうちの少なくとも1種を合計で1.0%以下含有する請求項1または2に記載の高炭素熱延鋼板。
【請求項4】
さらに、質量%で、Sb、Snのうちの少なくとも1種を合計で0.1%以下含有する請求項1から3のいずれか1項に記載の高炭素熱延鋼板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の高炭素熱延鋼板を製造する方法であって、
を、粗圧延後、850℃以上の仕上温度で仕上圧延し、600℃以上の巻取温度で巻取った後、680℃以上Ac1変態点以下の焼鈍温度で焼鈍する高炭素熱延鋼板の製造方法。
【国際調査報告】