(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013102999
(43)【国際公開日】20130711
【発行日】20150511
(54)【発明の名称】ヒートポンプ装置、空気調和機および冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20150414BHJP
【FI】
   !F25B1/00 321H
   !F25B1/00 361D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
【出願番号】2013552361
(21)【国際出願番号】JP2012050040
(22)【国際出願日】20120104
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目7番3号
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】神谷 庄太
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目7番3号 三菱電機株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】畠山 和徳
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目7番3号 三菱電機株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 健太
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目7番3号 三菱電機株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】松下 真也
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目7番3号 三菱電機株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】楠部 真作
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目7番3号 三菱電機株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】牧野 勉
【住所又は居所】愛知県名古屋市東区矢田南五丁目1番14号 三菱電機メカトロニクスソフトウエア株式会社内
(57)【要約】
モータのロータ停止位置によらず安定的に圧縮機を加熱するヒートポンプ装置を得ることを目的とする。本発明は、圧縮機構7およびモータ8を含んだ圧縮機1と、熱交換器3,5と、インバータ9と、インバータ9の駆動信号を生成する駆動信号生成部15およびモータが回転駆動不可能な高周波電圧をモータに印加して圧縮機を加熱する場合に駆動信号生成部15を制御する加熱運転モード制御部12を含んだインバータ制御部10と、を備えたヒートポンプ装置であって、加熱運転モード制御部12は、モータ8のロータ停止位置を示す磁極位置を推定する磁極位置推定部13と、磁極位置の推定結果および必要加熱量に基づいて、正弦波で表現される電圧指令の振幅および位相を決定し、決定した振幅および位相を駆動信号生成部15に通知して駆動信号を生成させる高周波通電部14と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機構および前記圧縮機構を駆動するモータを含んだ圧縮機と、熱交換器と、前記モータに所望の電圧を印加するインバータと、前記インバータの駆動信号を生成する駆動信号生成部および前記モータが回転駆動不可能な高周波電圧を前記モータに印加して前記圧縮機を加熱する場合に前記駆動信号生成部を制御する加熱運転モード制御部を含んだインバータ制御部と、を備えたヒートポンプ装置であって、
前記加熱運転モード制御部は、
前記モータの誘起電圧に基づいて前記モータのロータ停止位置を示す磁極位置を推定する磁極位置推定部と、
前記磁極位置の推定結果および予め指定されている必要加熱量に基づいて、正弦波で表現される電圧指令の振幅および位相を決定し、当該決定した振幅および位相を前記駆動信号生成部に通知して通知内容に従った駆動信号を生成させる振幅位相決定部と、
を備えることを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記振幅位相決定部は、使用者によって指定された発熱量が得られるように前記振幅および位相を決定することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記振幅位相決定部は、使用者が指定可能な発熱量と前記振幅と前記磁極位置との対応テーブルを保持しておき、使用者によって発熱量が指定された場合、その時点の磁極位置と指定された発熱量に対応する振幅を選択することを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
前記磁極位置推定部は、前記モータのロータが停止する直前に前記磁極位置を推定して記憶しておき、
前記振幅位相決定部は、前記磁極位置推定部が記憶している磁極位置を使用して振幅および位相を決定することを特徴とする請求項1、2または3に記載のヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記インバータが前記モータに印加する電圧の周波数を、人間の可聴周波数の上限よりも高い周波数とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項6】
前記振幅位相決定部は、前記駆動信号生成部が駆動信号を生成する際に使用するキャリア信号の頂もしくは底、または、頂および底に同期させて、前記位相を半周期分変化させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項7】
前記インバータを構成しているスイッチング素子のうち、少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体で形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項8】
前記インバータを構成しているスイッチング素子のダイオードがワイドバンドギャップ半導体で形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項9】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドであることを特徴とする請求項7または8に記載のヒートポンプ装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置を備えることを特徴とする冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機を用いたヒートポンプ装置に関し、特に、空気調和機や冷凍機、温水機などに適用されるヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒートポンプ装置として、空気調和機の暖房開始時の立ち上がりスピードを向上させるために、暖房時の運転停止中に高周波の低電圧を圧縮機に供給するものがある(例えば、特許文献1参照)。同様の技術として、空気調和機の周囲温度が低温状態を検知した際に、通常運転時より高周波数の単相交流電圧を圧縮機に供給するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、冷媒寝込み現象の発生を防止するために圧縮機を予備加熱する拘束通電において、圧縮機モータの駆動信号として、二相変調方式のPWM出力にて、所定の位相角で静止した出力を行う信号を生成するものがある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−68341号公報
【特許文献2】特開昭61−91445号公報
【特許文献3】特開2007−166766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1および2では、外気温度の低下に応じて圧縮機に高周波の交流電圧を印加することで圧縮機を加熱もしくは保温し、圧縮機内部の潤滑作用を円滑にする技術が示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1には高周波の低電圧についての詳細な記載がなく、ロータの停止位置に依存する出力変化を考慮していないため、所望する圧縮機の加熱量を得られないおそれがある、という問題があった。
【0007】
一方、上記特許文献2には、25kHzといった高周波の単相交流電源にて電圧を印加することが記載されているとともに、可聴域を外れることによる騒音抑制、共振周波数を外れることによる振動抑制、巻線のインダクタンス分による小電流化での入力低減と温度上昇防止、圧縮機の回転部の回転抑制といった効果が示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2の技術では、高周波の単相交流電源であるため、特許文献2の図3に示されるように全てのスイッチング素子がオフとなる全オフ区間が比較的長く発生することになる。このとき、高周波電流は還流ダイオードを介して電動機を還流せずに直流電源に回生され、オフ区間の電流の減衰が早く、電動機に効率的に高周波電流が流れずに圧縮機の加熱効率が悪くなる、という問題があった。また、小型で鉄損の小さなモータを用いた場合に、印加電圧に対する発熱量が小さくなり使用可能範囲内の電圧で、必要な加熱量を得られないという問題もある。
【0009】
また、特許文献3には、モータ巻線に直流電流を流す拘束通電を行うことにより、ロータが回転しないようにして予熱を行う技術が開示されている。
【0010】
しかしながら、近年のモータの高効率設計によりモータの巻線抵抗が小さくなる傾向にあり、特許文献3に示すモータ巻線に直流電流を流す予熱方法の場合、発熱量が巻線抵抗と電流の二乗で得られるため、巻線抵抗が減少した分、電流が増加することとなる。その結果、インバータの損失増大による発熱が問題となり、信頼性の低下や放熱構造へのコスト増加という別の問題が発生する。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、モータのロータ停止位置によらず安定的に圧縮機を加熱することが可能なヒートポンプ装置、空気調和機および冷凍機を得ることを目的とする。
【0012】
また、必要な加熱出力を効率的に実現することが可能なヒートポンプ装置、空気調和機および冷凍機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機構および前記圧縮機構を駆動するモータを含んだ圧縮機と、熱交換器と、前記モータに所望の電圧を印加するインバータと、前記インバータの駆動信号を生成する駆動信号生成部および前記モータが回転駆動不可能な高周波電圧を前記モータに印加して前記圧縮機を加熱する場合に前記駆動信号生成部を制御する加熱運転モード制御部を含んだインバータ制御部と、を備えたヒートポンプ装置であって、前記加熱運転モード制御部は、前記モータの誘起電圧に基づいて前記モータのロータ停止位置を示す磁極位置を推定する磁極位置推定部と、前記磁極位置の推定結果および予め指定されている必要加熱量に基づいて、正弦波で表現される電圧指令の振幅および位相を決定し、当該決定した振幅および位相を前記駆動信号生成部に通知して通知内容に従った駆動信号を生成させる振幅位相決定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるヒートポンプ装置によれば、モータのロータ停止位置によらず安定的に圧縮機を加熱して冷媒寝込み現象を回避することができるとともに、省エネルギーを実現できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明にかかるヒートポンプ装置の実施の形態1の構成例を示す図である。
【図2】図2は、ヒートポンプ装置の要部構成の一例を示す図である。
【図3】図3は、埋め込み磁石型同期電動機のロータの構造を示す図である。
【図4】図4は、図3に示したロータを備えたモータの固定子側から見たインダクタンス特性を示す図である。
【図5】図5は、図4に示したインダクタンス特性に対応する電流特性を示す図である。
【図6】図6は、PWM信号生成部の一相分の信号生成方法を示す図である。
【図7】図7は、過熱運転時におけるインバータの8通りのスイッチングパターンを示す図である。
【図8】図8は、PWM信号生成部によるPWM信号の生成動作を示す図である。
【図9】図9は、図8に示した動作に対応する電圧ベクトル変化の説明図である。
【図10】図10は、実施の形態1のインバータ制御部の動作例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、SiデバイスとSiCデバイスの耐圧とオン抵抗の関係を示す図である。
【図12】図12は、実施の形態3のヒートポンプ装置の構成例を示す図である。
【図13】図13は、ヒートポンプ装置の冷媒の状態についてのモリエル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかるヒートポンプ装置、空気調和機および冷凍機の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかるヒートポンプ装置の実施の形態1の構成例を示す図である。本実施の形態のヒートポンプ装置100は、例えば空気調和機を構成し、圧縮機1、四方弁2、熱交換器3、膨張機構4および熱交換器5が、冷媒配管6を介して、順次接続された冷凍サイクルを備える。圧縮機1の内部には冷媒を圧縮する圧縮機構7と、この圧縮機構7を動作させるモータ8とが設けられている。モータ8は、U相,V相,W相の三相の巻線を有する三相モータである。
【0018】
モータ8に電圧を与え駆動させるインバータ9は、モータ8と電気的に接続されている。インバータ9は、直流電圧(母線電圧)Vdcを電源とし、モータ8のU相、V相およびW相の巻線に電圧Vu、VvおよびVwをそれぞれ印加する。インバータ9には、インバータ制御部10が電気的に接続されている。インバータ制御部10は、通常運転モード制御部11と、磁極位置推定部13および高周波通電部14を含んだ加熱運転モード制御部12と、駆動信号生成部15とを備えており、インバータ9を駆動するための信号(たとえばPWM信号)をインバータ9へ出力する。
【0019】
インバータ制御部10において、通常運転モード制御部11は、ヒートポンプ装置100が通常の動作を行う場合に使用される。この通常運転モード制御部11は、駆動信号生成部15を制御することにより、モータ8を回転駆動させるためのPWM信号をインバータ駆動信号として出力させる。
【0020】
加熱運転モード制御部12は、圧縮機1を加熱する場合に使用される。この加熱運転モード制御部12は、駆動信号生成部15を制御することにより、モータ8が追従できない高周波電流を流してモータ8を回転駆動させることなく圧縮機1を加熱するためのPWM信号を、インバータ駆動信号として出力させる。その際、磁極位置推定部13がモータ8のロータの停止位置を示す磁極位置を推定した結果(推定情報)に基づいて高周波通電部14が駆動信号生成部15を制御し、駆動信号生成部15がPWM信号を出力してインバータ9を駆動することで、圧縮機1に滞留した液冷媒を短時間で温めて気化させ、圧縮機1外部へ排出させる。
【0021】
図2は、ヒートポンプ装置の要部構成の一例を示す図である。図示したように、インバータ9は、母線電圧Vdcを電源として、6つのスイッチング素子(21a,21b,21c,21d,21e,21f)の直列接続部が並列に3個接続された回路である。インバータ9は、インバータ制御部10から入力される駆動信号であるPWM信号(UP〜WN)に従い、それぞれに対応したスイッチング素子を駆動することで、三相の電圧Vu,Vv,Vwを発生させ、モータ8のU相,V相,W相の巻線それぞれに電圧を印加する。なお、インバータ9の入力側(母線電圧Vdcの供給側)にはVdcを検知するための電圧センサ31が設けられている。
【0022】
インバータ制御部10は、図1に示した加熱運転モード制御部12を構成している磁極位置推定部13および高周波通電部14と、駆動信号生成部15とを備える。磁極位置推定部13は位置検出部16および位置検出判定部17を含んでいる。高周波通電部14は加熱指令部18を含んでいる。駆動信号生成部15は電圧指令値生成部19およびPWM信号生成部20を含んでいる。なお、図2においては、本実施の形態のヒートポンプ装置において特徴的な動作を行う構成要素のみを記載するようにしており、図1に示した通常運転モード制御部11については記載を省略している。
【0023】
加熱運転モード制御部12(磁極位置推定部13および高周波通電部14)は、高周波電圧指令Vkおよび高周波位相指令θkを生成する。
【0024】
駆動信号生成部15において、電圧指令値生成部19は、加熱運転モード制御部12から入力される高周波電圧指令Vkおよび高周波位相指令θkに基づいて、三相(U相,V相,W相)それぞれの電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を生成する。PWM信号生成部20は、三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に基づいてPWM信号(UP,VP,WP,UN,VN,WN)を生成してインバータ9を駆動することにより、モータ8に電圧を印加させる。このとき、モータ8のロータが回転しないような高周波電圧を印加させ、モータ8を備えている圧縮機1(図1参照)を加熱する。なお、駆動信号生成部15は、ヒートポンプ装置が通常運転モードで動作する場合にもPWM信号を生成する。その場合のPWM信号生成方法は、加熱運転モード時で動作する場合と同様である。すなわち、通常運転モード制御部11から入力される情報(上記のVk,θkに相当する情報)が異なるだけである。
【0025】
以下、実施の形態1のヒートポンプ装置の特徴的な動作について詳しく説明する。
【0026】
磁極位置推定部13は、例えば、特開2011−61884号公報に記載された方法で磁極位置(ロータ位置)を推定する。すなわち、磁極位置推定部13において、位置検出部16はモータ8の誘起電圧と基準電圧を比較して位置検出信号を生成し、位置検出判定部17は位置検出部16から出力された位置検出信号に基づいてモータ8の磁極位置を推定する。磁極位置の推定結果は高周波通電部14の加熱指令部18へ出力する。磁極位置推定のタイミングは加熱運転モード前とし、例えばモータ運転中(ロータの回転中)に推定する。もしくは停止後に推定してもよい。ロータが完全に停止し誘起電圧が発生しない状態においては、インバータ9が高周波の電圧をモータ8に印加し、モータに流れる電流値の検出結果に基づいて位置推定を行うことが可能である。この位置推定方法は公知であるため、説明は省略する。また、ロータが停止する直前に位置を推定して記憶しておくようにしてもよい。なお、本実施の形態においては、磁極位置の推定方法については特に規定しない。公知の如何なる方法を用いて磁極位置を推定しても構わない。
【0027】
振幅位相決定部として動作する高周波通電部14において、加熱指令部18は位置検出判定部17からの信号(磁極位置推定結果)に基づいて加熱出力を決定する。図3は、埋め込み磁石型同期電動機(モータ8に相当)のロータの構造を示す図である。図3に示したように、磁石型同期電動機のロータは、鉄心121および磁石122を含んで構成されている。このような構造ではロータの位置によって空隙の長さ(磁石と固定子の距離)が変化するため、固定子側から見たインダクタンス値は図4に示すように変化する。図4に示すようにインダクタンス値が変化すると巻線を流れる電流量は図5に示すように変化し、装置全体の加熱出力に影響する。これは、所定周波数(固定値)で所定電圧(固定値)の高周波電圧を与えた場合、ロータ位置に応じたインダクタンス値の変動の影響を受けてしまい、液冷媒の安定した加熱が困難になることを示している。すなわち、安定した加熱を実現するためには、モータ8に印加する高周波電圧をロータ位置に応じて調整する必要がある。
【0028】
そこで、本実施の形態のヒートポンプ装置においては、ロータ位置を示す磁極位置を推定し、必要な発熱量が得られるように、磁極位置の推定結果に基づいて加熱指令部18が電圧位相θkを生成・出力して圧縮機1を安定的に加熱する。これにより、磁極位置に対応するインダクタンス値が高い(加熱出力が小さい)場合においても使用者の所望する加熱出力を得るための電圧位相θkが設定できる。また、インダクタンス値が低い(加熱出力が大きい)場合においては電流値が大きくなり、鉄損などの損失が高くなるため、効率を重視する場合においては電圧位相および電圧指令値を調整することにより、省エネルギーを実現しつつ使用者の所望する加熱性能を提供できる。
【0029】
加熱指令部18は、磁極位置推定部13(位置検出判定部17)からの推定信号(磁極位置の推定結果)を基にモータ8に通電するための位相θkを求める。たとえば、モータ8の0°の位置に対応する巻線に通電させる場合には、θk=0を出力する。ただし、固定値で連続通電を行った場合、モータ8の特定部分のみが発熱する恐れがあるため、時間の経過と共にθkを変化させるようにしてもよい。これにより、通電させる巻線が変更され、モータ8を均一に加熱できる。図4に示したように、インダクタンス値が同一となるロータ位置は2つ以上存在するので、例えば、インダクタンス値が最小となる位置に通電させる場合には、0°と180°の位置にある巻線それぞれに対し、交互に通電させればよい。
【0030】
前述の通り、磁極位置を推定することができれば、インダクタンス値の低い磁極位置に対応する巻線に通電を行うことで、同じ印加電圧においてもより高出力の電流を得ることが可能となる。必要加熱量が大きい場合には、推定された磁極位置から、インダクタンス値の低い位置を推定し、推定結果に応じた巻線に通電させることにより、圧縮機1内の液冷媒を確実に排出可能となり、装置の信頼性が向上する。また、必要加熱量が低い場合にはインダクタンス値の高い磁極位置で通電し、出力電流の低い加熱出力を行うことにより、回路に流れる電流量を減らすことができ、省エネルギーとなる。
【0031】
また、加熱指令部18は必要加熱量に基づいて、発熱に必要な電圧指令V*を出力する。たとえば必要加熱量と電圧指令V*の関係をテーブルデータとしてあらかじめ記憶しておくことにより、必要加熱量に応じた電圧指令V*を得ることができる。必要加熱量は使用者によって指定される情報である。
【0032】
高周波通電部14は、電圧センサ31で検出された母線電圧Vdcと加熱指令部18から入力された電圧指令V*に基づいて、高周波電圧指令Vkを生成する。高周波電圧指令Vkは、電圧指令V*と母線電圧Vdcを用いて次式で表される。
Vk = V*×√2/Vdc
【0033】
なお、高周波電圧指令Vkは、外気温度や圧縮機温度、圧縮機構造上などのデータを考慮し、これらのデータに基づいて補正することで、動作環境に応じたより正確な値を得ることができ、信頼性を向上させることが可能である。
【0034】
また、高周波電流の駆動周波数を高く設定することで、角周波数ωを高くすることができる。ωが高くなることにより鉄損が増加し発熱量が増加するため、省エネルギー化が可能となる。なお、人間の可聴域に含まれる周波数で高周波通電を行うと、モータ8の電磁音により騒音が発生するため、可聴域外(例えば20kHz以上)に設定する。
【0035】
続いて、駆動信号生成部15がインバータ9の駆動信号としてPWM信号を生成する動作について説明する。
【0036】
PWM信号を生成する駆動信号生成部15においては、まず、電圧指令値生成部19が、高周波電圧指令Vkおよび位相指令θkに基づいて電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を生成する。
【0037】
モータ8は三相モータであるが、三相モータの場合、一般的にU,V,Wの三相の位相は互いに120°(=2π/3)異なる。そのため、電圧指令値生成部19は、Vu*,Vv*,Vw*として、以下の式(1)〜(3)に示したような、位相が2π/3ずつ異なる余弦波(正弦波)のV*およびθに高周波電圧指令Vkおよび電圧位相θkをそれぞれ代入して各相の電圧指令値を生成する。
Vu*=V*×cosθ …(1)
Vv*=V*×cos(θ−(2π/3)) …(2)
Vw*=V*×cos(θ+(2π/3)) …(3)
【0038】
電圧指令値生成部19により電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*が生成されると、次に、PWM信号生成部20が、電圧指令値生成部19から入力された電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*と、所定の周波数で振幅Vdc/2のキャリア信号(基準信号)とを比較し、相互の大小関係に基づきPWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNを生成する。
【0039】
なお、上記の式(1)〜(3)では、単純な三角関数で電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を求めるようにしたが、その外に二相変調や、三次高調波重畳変調、空間ベクトル変調といった手法によって電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を求めるようにしても構わない。
【0040】
PWM信号生成部20によるPWM信号の生成方法について詳しく説明する。U相,V相,W相の各相に対応するPWM信号の生成方法は同一であるため、ここでは、一例として、U相のPWM信号UPおよびUNの生成方法を説明する。
【0041】
図6は、PWM信号生成部20の一相分の信号生成方法を示す図であり、U相のPWM信号を生成する方法を示している。図6に示した三角波がキャリア信号、正弦波が電圧指令信号Vu*である。図6に示した信号生成方法は一般に非同期PWMと称される手法に相当する。PWM信号生成部20は、電圧指令信号Vu*と所定の周波数で振幅Vdc/2(Vdcは直流母線電圧を示す)のキャリア信号を比較し、相互の大小関係に基づきPWM信号UPおよびUNを生成する。すなわち、キャリア信号が電圧指令値Vu*よりも大きいときは、UPをON,UNをOFFとし、それ以外はUPをOFF,UNをONにする。なお、キャリア信号の振幅,位相は固定とする。
【0042】
図7は、実施の形態1における8通りのスイッチングパターンを示す図である。なお、図7では、各スイッチングパターンで発生する電圧ベクトルをV0〜V7としている。また、各電圧ベクトルの電圧の方向を±U、±V、±W(電圧が発生しない場合には0)で表している。ここで、+Uとは、U相を介してモータ8へ流入し、V相及びW相を介してモータ8から流出するU相方向の電流を発生させる電圧であり、−Uとは、V相及びW相を介してモータ8へ流入し、U相を介してモータ8から流出する−U相方向の電流を発生させる電圧である。±V、±Wについても同様である。
【0043】
図7に示すスイッチングパターンを組み合わせて電圧ベクトルを出力することでインバータ9に所望の電圧を出力させることができる。圧縮機1内の冷媒をモータ8にて圧縮する動作(通常運転モードの動作)の場合には数10〜数kHz以下で動作することが一般的である。このときにθkを高速で変化させることにより、数kHzを超える高調波電圧を出力し、圧縮機1に通電し加熱(加熱運転モード)することが可能となる。
【0044】
ただし、一般的なインバータの場合、キャリア信号の周波数であるキャリア周波数はインバータのスイッチング素子のスイッチングスピードにより上限が決まっているため、搬送波であるキャリア周波数以上の高周波電圧を出力することは困難である。なお、一般的なIGBT(Insulate Gate Bipolar Transistor)の場合、スイッチングスピードの上限が20kHz程度である。また、高周波電圧の周波数がキャリア周波数の1/10程度になると、高周波電圧の波形出力精度が悪化し、直流成分が重畳するなどの悪影響を及ぼす恐れがある。すなわち、キャリア周波数を20kHzとした場合に高周波電圧の周波数をキャリア周波数の1/10の2kHz以下とすると、高周波電圧の周波数は可聴周波数領域となり、騒音悪化が懸念される。そのため、PWM信号生成部20は、以下に示す方法でキャリア信号に同期したPWM信号を生成するようにして、騒音悪化を回避する。
【0045】
図8は任意のV*、加熱指令部18の出力θkを0°とした場合のPWM信号生成部20の動作を表す図である。PWM信号生成部20は、高周波位相指令θkがキャリア信号(三角波)の頂もしくは底(または、頂および底)のタイミングで0°と180°の間で切り替えることで、キャリア信号に同期したPWM信号を生成できる。このとき、電圧ベクトルはV0(UP=VP=WP=0)、V4(UP=1、VP=WP=0)、V7(UP=VP=WP=1)、V3(UP=0、VP=WP=1)、V0(UP=VP=WP=0)、…、の順で変化する。
【0046】
図9は、図8に示した動作に対応する電圧ベクトル変化の説明図である。なお、図9では破線で囲まれたスイッチング素子がオン、破線で囲まれていないスイッチング素子がオフの状態であることを表している。図9に示すようにV0ベクトル,V7ベクトル印加時はモータ8の線間は短絡状態となり、電圧が出力されない。この場合、モータ8のインダクタンスに蓄えられたエネルギーが電流となって短絡回路中を流れる。また、V4ベクトル印加時には、U相を介してモータ8へ流入し、V相およびW相を介してモータ8から流出するU相方向の電流(+Iuの電流)が流れ、V3ベクトル印加時には、V相およびW相を介してモータ8へ流入し、U相を介してモータ8から流出する−U相方向の電流(−Iuの電流)がモータ8の巻線に流れる。つまり、V4ベクトル印加時と、V3ベクトル印加時とでは逆方向の電流がモータ8の巻線に流れる。そして、電圧ベクトルがV0、V4、V7、V3、V0、…の順で変化するため、+Iuの電流と−Iuの電流とが交互にモータ8の巻線に流れることになる。特に、図8に示すように、V4ベクトルとV3ベクトルとが1キャリア周期(1/fc)の間に現れるため、キャリア周波数fcに同期した交流電圧をモータ8の巻線に印加することが可能となる、また、V4ベクトル(+Iuの電流)とV3ベクトル(−Iuの電流)とが交互に出力されるため、正逆のトルクが瞬時に切り替わる。そのため、トルクが相殺されることによりロータの振動を抑えた制御が可能となる。
【0047】
次に、インバータ制御部10の動作について説明する。ここでは、圧縮機1を加熱する加熱運転モードで動作する場合におけるインバータ9の制御動作について説明する。なお、ヒートポンプ装置100が通常運転モードで動作する場合におけるインバータ9の制御動作は従来と同様であるため説明を省略する。
【0048】
図10は、実施の形態1のヒートポンプ装置100が備えているインバータ制御部10の動作例を示すフローチャートであり、加熱運転モード時の制御手順を示している。すなわち、加熱運転モード制御部12および駆動信号生成部15がインバータ9の駆動信号としてPWM信号を生成する場合の制御手順を示している。
【0049】
本実施の形態のヒートポンプ装置100において、インバータ制御部10は、まず、加熱運転モードを示す入力(加熱運転モードでの動作を指示する入力)があるかどうか、判定する(ステップS1)。なお、このステップS1では、外気温度や圧縮機温度、運転指令が外部から入力されたか否かなどに基づき、加熱運転モードでの動作の必要性について判定するようにしてもよい。例えば、所定の運転指令(ヒートポンプ装置100の動作開始指令)が外部から入力され、かつその時点で冷媒寝込み現象の発生が予測される場合(例えば、外気温度が所定のしきい値以下の場合)に加熱運転モードでの動作が必要と判断する。加熱運転モードを示す入力が無い(加熱運転モードでの動作が必要ない)場合(ステップS1:No)、所定のタイミングでステップS1を再度実行する。加熱運転モードを示す入力が有る場合(ステップS1:Yes)、モータ8の入出力電流および電圧を検知し、検知信号に基づいて磁極位置を推定する(ステップS2,S3)。なお、入出力電流および電圧とは、インバータ9とモータ8の接続点で検出される電流および電圧(三相分)である。磁極位置の推定は、例えば電圧(誘起電圧)の検知結果などに基づいて磁極位置推定部13が行う。誘起電圧が発生しない状態においては、インバータ9を制御して磁極位置を推定するための高周波電圧をモータ8に印加させ、そのときモータ8に流れる電流値に基づいて磁極位置を推定してもよい。また、モータ8が停止する直前に誘起電圧に基づいて磁極位置の推定を行って推定結果を記憶しておき、これをステップS3での推定結果に代えて使用するようにしてもよい。
【0050】
次に、高効率運転モードの入力があるかどうか(高効率運転モードでの動作指定がされているかどうか)を確認し(ステップS4)、高効率運転モードの入力がある場合(ステップS4:Yes)、インダクタンス値の高い位置に電圧位相を制御して出力電流を抑制するモードでの運転(高効率な運転)を行うことに決定する。そして、ステップS3で得られた磁極位置推定結果に基づいて電圧指令の位相を決定し、高効率運転モードに対応するPWM信号(UP,UN,VP,VN,WP,WN)の生成・出力を開始してインバータ9を制御する(ステップS5)。これにより、消費電力を低く抑えつつ圧縮機1に滞留している液冷媒を加熱し気化させ、圧縮機1の外部へ漏出させることができる。
【0051】
高効率運転モードの入力がない場合(ステップS4:No)、加熱運転のためのPWM信号の生成・出力を開始する(ステップS6)。このとき、磁極位置推定結果を考慮して電圧位相(θk)を決定することはしない(通常の加熱運転制御)。
【0052】
次に、加熱出力が必要加熱量以上かどうか、すなわち、圧縮機1に滞留している液冷媒を気化させるのに十分な加熱出力が得られるかどうかを確認する(ステップS7)。例えば、モータ8の入出力電流および電圧に基づいて加熱出力を算出し、算出した加熱出力が所定のしきい値以上かどうか確認する。加熱出力がしきい値未満の場合、加熱出力が不十分と判断し(ステップS7:No)、インダクタンス値の低い位置に電圧位相を制御して加熱出力が最大となるモードでの運転(高出力運転)を行うことに決定する。そして、ステップS3で得られた磁極位置推定結果に基づいて電圧指令の位相を決定し、高出力運転に対応するPWM信号(UP,UN,VP,VN,WP,WN)の生成・出力を開始する(ステップS8)。この結果、モータ8には大量の高周波電流が流入し、銅損および鉄損により発熱することから短時間でモータ8を加熱することができる。
【0053】
加熱出力がしきい値以上の場合、加熱出力が十分と判断し(ステップS7:Yes)、ステップS8を実行しない。
【0054】
ステップS8を実行後、またはステップS7で加熱出力が十分と判断した後、所定のタイミングでステップS1を再度実行する(上述したステップS1〜S8の動作を繰り返し実行する)。なお、加熱運転モードではモータ8は回転駆動しないため、一度磁極位置を推定した後は、磁極位置を推定するステップS3を省略してもよい。
【0055】
このように、本実施の形態のヒートポンプ装置において、インバータ制御部10は、圧縮機1が備えているモータ8の磁極位置を推定し、推定結果および必要な発熱量に基づいて電圧位相を決定し、PWM信号を生成してインバータ9を制御することとした。これにより、モータ8の磁極位置によらず安定的に圧縮機1を加熱でき、その結果、圧縮機1内に滞留した液冷媒が外部へ漏出する。また、磁極位置に応じてモータ8に流す電流を調整するので、圧縮機1を効率的に過熱することができ、省エネルギーとなる。
【0056】
加えて、可聴周波数(20〜20kHz)外の高周波電圧がモータ8に印加されるようにインバータ9を制御するので、モータ8を加熱する際の騒音を抑えることができる。
【0057】
一般に、圧縮機動作時の運転周波数は高々1kHz程度である。そのため、1kHz以上の高周波電圧をモータに印加すればよい。このとき、14kHz以上の電圧をモータ8に印加すれば、モータ8の鉄心の振動音がほぼ可聴周波数上限に近づくため、騒音の低減も可能となる。たとえば、可聴周波数外の20kHz程度の高周波電圧となるようにすればよい。
【0058】
ただし、高周波電圧の周波数はスイッチング素子21a〜21fの最大定格周波数を超えると素子破壊を起こし、負荷、もしくは電源短絡を起こし、発煙や発火に至る可能性があるため、高周波電圧の周波数は最大定格周波数以下に設定し信頼性を確保する。
【0059】
実施の形態2.
実施の形態2のヒートポンプ装置について説明する。なお、装置構成は実施の形態1と同様である(図2参照)。
【0060】
図11を用いて実施の形態2のヒートポンプ装置を説明する。本実施の形態のヒートポンプ装置は、図2に示したスイッチング素子21a〜21fをシリコンカーバイドデバイス(以下、SiCデバイス)のスイッチング素子としたものである。現在、一般的には珪素(Si)を材料とする半導体を用いるのが主流である。図11は、シリコンデバイス(以下、Siデバイス)とSiCデバイスの耐圧とオン抵抗の関係を示す図である。Siデバイスと比較してSiCデバイスではバンドギャップが大きく、大幅に耐圧とオン抵抗のトレードオフを改善できることが知られている。例えば、現在のSiデバイスを使った誘導加熱調理器では冷却装置や放熱ファンが必須とされているが、ワイドバンドギャップ半導体デバイスであるSiCデバイスを用いることにより大幅に素子損失が低減可能であり、従来の冷却装置や放熱フィンの小型化または削除が可能となる。SiC以外のワイドバンドギャップ半導体としては、例えば、窒化ガリウム系材料やダイヤモンドがある。
【0061】
上記のようにスイッチング素子を従来のSiデバイスからSiCデバイスに変更することで大幅な低損失化が可能となり、冷却装置や放熱フィンの小型化、または削除が可能となり、装置自体の大幅な低コスト化ができる。また、高周波でのスイッチングが可能となることで、モータ8に更に高周波の電流を流すことが可能となり、モータ8の巻線インピーダンス増加による巻線電流低減によりインバータ9に流入する電流を低減し、より高効率なヒートポンプ装置を得ることが可能となる。高周波化することにより人間の可聴域である16kHz以上の高周波に駆動周波数を設定することが可能となり、騒音対策がしやすいといった利点もある。また、SiCを使用した場合、従来のSiに比べ低損失で電流を格段に多く流すことができるため、冷却フィンを小型化するなどの効果を得ることができる。本実施の形態ではSiCデバイスを例に説明したが、SiCに代えてダイヤモンドやガリウムナイトライド(GaN)などのワイドバンドギャップ半導体デバイスを用いても同様であることは、当業者にとっては明らかである。なお、インバータが備えている各スイッチング素子のダイオードのみをワイドバンドギャップ半導体としてもよい。また、複数存在しているスイッチング素子のうちの一部(少なくとも1つ)をワイドバンドギャップ半導体で形成するようにしてもよい。一部の素子にワイドバンドギャップ半導体を適用した場合にも上述した効果を得ることができる。
【0062】
また、実施の形態1および2では、スイッチング素子として主にIGBTを用いた場合を想定しているが、スイッチング素子はIGBTに限定されるものではなく、スーパージャンクション構造のパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やその他の絶縁ゲート半導体装置、バイポーラトランジスタでも同様であることは当業者にとっては明らかである。
【0063】
実施の形態3.
実施の形態3のヒートポンプ装置について説明する。本実施の形態では、実施の形態1,2で説明したヒートポンプ装置を備えた機器(空気調和機など)の動作について説明する。
【0064】
図12は、実施の形態3のヒートポンプ装置の構成例を示す図である。図13は、図12に示したヒートポンプ装置の冷媒の状態についてのモリエル線図である。図13において、横軸は比エンタルピ、縦軸は冷媒圧力を示す。
【0065】
本実施の形態のヒートポンプ装置において、圧縮機51、熱交換器52、膨張機構53、レシーバ54、内部熱交換器55、膨張機構56および熱交換器57は、配管により順次接続され、冷媒が循環する主冷媒回路58を構成している。なお、主冷媒回路58において、圧縮機51の吐出側には、四方弁59が設けられ、冷媒の循環方向が切り替え可能となっている。また、熱交換器57の近傍には、ファン60が設けられる。また、圧縮機51は、上記実施の形態1,2で説明した圧縮機1であり、インバータ9によって駆動されるモータ8と圧縮機構7とを有する圧縮機である(図1参照)。さらに、ヒートポンプ装置は、レシーバ54と内部熱交換器55との間から、圧縮機51のインジェクションパイプまでを配管により繋ぐインジェクション回路62を備える。インジェクション回路62には、膨張機構61、内部熱交換器55が順次接続されている。熱交換器52には、水が循環する水回路63が接続される。なお、水回路63には、給湯器、ラジエータや床暖房等の放熱器等の水を利用する装置が接続される。
【0066】
上記構成のヒートポンプ装置の動作について説明する。まず、暖房運転時の動作について説明する。暖房運転時には、四方弁59は実線方向に設定される。なお、この暖房運転には、空調で使われる暖房だけでなく、水に熱を与えて温水を作る給湯も含む。
【0067】
圧縮機51で高温高圧となった気相冷媒(図13の点A)は、圧縮機51から吐出され、凝縮器であり放熱器となる熱交換器52で熱交換されて液化する(図13の点B)。このとき、冷媒から放熱された熱により、水回路63を循環する水が温められ、暖房や給湯に利用される。熱交換器52で液化された液相冷媒は、膨張機構53で減圧され、気液二相状態になる(図13の点C)。膨張機構53で気液二相状態になった冷媒は、レシーバ54で圧縮機51へ吸入される冷媒と熱交換され、冷却されて液化される(図13の点D)。レシーバ54で液化された液相冷媒は、主冷媒回路58と、インジェクション回路62とに分岐して流れる。
【0068】
主冷媒回路58を流れる液相冷媒は、インジェクション回路62を流れる冷媒(膨張機構61で減圧され気液二相状態となった冷媒)と内部熱交換器55で熱交換されて、さらに冷却される(図13の点E)。内部熱交換器55で冷却された液相冷媒は、膨張機構56で減圧されて気液二相状態になる(図13の点F)。膨張機構56で気液二相状態になった冷媒は、蒸発器となる熱交換器57で外気と熱交換され、加熱される(図13の点G)。そして、熱交換器57で加熱された冷媒は、レシーバ54でさらに加熱され(図13の点H)、圧縮機51に吸入される。
【0069】
一方、インジェクション回路62を流れる冷媒は、上述したように、膨張機構61で減圧されて(図13の点I)、内部熱交換器55で熱交換される(図13の点J)。内部熱交換器55で熱交換された気液二相状態の冷媒(インジェクション冷媒)は、気液二相状態のまま圧縮機51のインジェクションパイプから圧縮機51内へ流入する。
【0070】
圧縮機51では、主冷媒回路58から吸入された冷媒(図13の点H)が、中間圧まで圧縮、加熱される(図13の点K)。中間圧まで圧縮、加熱された冷媒(図13の点K)に、インジェクション冷媒(図13の点J)が合流して、温度が低下する(図13の点L)。そして、温度が低下した冷媒(図13の点L)が、さらに圧縮、加熱され高温高圧となり、吐出される(図13の点A)。
【0071】
なお、インジェクション運転を行わない場合には、膨張機構61の開度を全閉にする。つまり、インジェクション運転を行う場合には、膨張機構61の開度が所定の開度よりも大きくなっているが、インジェクション運転を行わない際には、膨張機構61の開度を所定の開度より小さくする。これにより、圧縮機51のインジェクションパイプへ冷媒が流入しない。なお、膨張機構61の開度は、マイクロコンピュータ等を利用した電子制御により制御される。
【0072】
次に、ヒートポンプ装置100の冷房運転時の動作について説明する。冷房運転時には、四方弁59は破線方向に設定される。なお、この冷房運転には、空調で使われる冷房だけでなく、水から熱を奪って冷水を作ることや、冷凍等も含む。
【0073】
圧縮機51で高温高圧となった気相冷媒(図13の点A)は、圧縮機51から吐出されると四方弁59を経由して熱交換器57側に流れていき、凝縮器であり放熱器となる熱交換器57で熱交換されて液化する(図13の点B)。熱交換器57で液化された液相冷媒は、膨張機構56で減圧され、気液二相状態になる(図13の点C)。膨張機構56で気液二相状態になった冷媒は、内部熱交換器55において、インジェクション回路62を流れる冷媒と熱交換され、冷却されて液化される(図13の点D)。内部熱交換器55では、膨張機構56で気液二相状態になった冷媒と、内部熱交換器55で液化された液相冷媒を膨張機構61で減圧させて気液二相状態になった冷媒(図13の点I)とを熱交換させている。内部熱交換器55で熱交換された液相冷媒(図13の点D)は、主冷媒回路58と、インジェクション回路62とに分岐して流れる。
【0074】
主冷媒回路58を流れる液相冷媒は、レシーバ54で圧縮機51に吸入される冷媒と熱交換されて、さらに冷却される(図13の点E)。レシーバ54で冷却された液相冷媒は、膨張機構53で減圧されて気液二相状態になる(図13の点F)。膨張機構53で気液二相状態になった冷媒は、蒸発器となる熱交換器52で熱交換され、加熱される(図13の点G)。このとき、冷媒が吸熱することにより、水回路63を循環する水が冷やされ、冷房や冷凍に利用される。そして、熱交換器52で加熱された冷媒は、四方弁59を経由してレシーバ54へ流入し、そこでさらに加熱され(図13の点H)、圧縮機51に吸入される。
【0075】
一方、インジェクション回路62を流れる冷媒は、上述したように、膨張機構61で減圧され(図13の点I)、内部熱交換器55で熱交換される(図13の点J)。内部熱交換器55で熱交換された気液二相状態の冷媒(インジェクション冷媒)は、気液二相状態のまま圧縮機51のインジェクションパイプから圧縮機51内へ流入する。圧縮機51内での圧縮動作については、上述した暖房運転時と同様である。
【0076】
なお、インジェクション運転を行わない際には、上述した暖房運転時と同様に、膨張機構61の開度を全閉にして、圧縮機51のインジェクションパイプへ冷媒が流入しないようにする。
【0077】
また、上記説明では、熱交換器52は、冷媒と、水回路63を循環する水とを熱交換させるプレート式熱交換器のような熱交換器であるとして説明した。しかし、熱交換器52は、これに限らず、冷媒と空気を熱交換させるものであってもよい。また、水回路63は、水が循環する回路ではなく、他の流体が循環する回路であってもよい。
【0078】
以上のように、実施の形態1,2で説明したヒートポンプ装置は、空気調和機、ヒートポンプ給湯機、冷蔵庫、冷凍機等のインバータ圧縮機を用いたヒートポンプ装置に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明にかかるヒートポンプ装置は、冷媒寝込み現象を効率的に解消させることが可能なヒートポンプ装置として有用である。
【符号の説明】
【0080】
1,51 圧縮機
2,59 四方弁
3,5,52,57 熱交換器
4,53,56,61 膨張機構
6 冷媒配管
7 圧縮機構
8 モータ
9 インバータ
10 インバータ制御部
11 通常運転モード制御部
12 加熱運転モード制御部
13 磁極位置推定部
14 高周波通電部
15 駆動信号生成部
16 位置検出部
17 位置検出判定部
18 加熱指令部
19 電圧指令値生成部
20 PWM信号生成部
21a〜21f スイッチング素子
54 レシーバ
55 内部熱交換器
58 主冷媒回路
60 ファン
62 インジェクション回路
63 水回路
100 ヒートポンプ装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】

【手続補正書】
【提出日】20140221
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機構を駆動するモータに所望の電圧を印加するインバータと、前記インバータを制御するインバータ制御部と、を備えたヒートポンプ装置であって、
前記圧縮機を加熱する場合、
前記インバータ制御部は、
前記モータが回転駆動不可能な高周波電圧を前記モータに印加することとし、
前記モータの誘起電圧に基づいて前記モータのロータ停止位置を示す磁極位置を推定
前記磁極位置の推定結果に基づいて、電圧指令の振幅および位相を決定し、当該決定した振幅および位相に従って前記インバータの駆動信号を生成する、
とを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記圧縮機を加熱する場合、
前記インバータ制御部は、前記推定結果に基づいて前記位相を決定し、必要加熱量に基づいて前記振幅を決定することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記インバータ制御部は、前記推定結果に基づいて前記位相を決定後、決定した位相に従った制御を行ったときに前記必要加熱量が得られるかどうかを確認し、必要加熱量が得られない場合には、必要加熱量が得られるように前記位相を再決定し、前記必要加熱量に基づいて前記振幅を決定することを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
前記インバータ制御部は、使用者によって指定された発熱量が得られるように前記振幅および位相を決定することを特徴とする請求項1、2または3に記載のヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記インバータ制御部は、使用者が指定可能な発熱量と前記振幅と前記磁極位置との対応テーブルを保持しておき、使用者によって発熱量が指定された場合、その時点の磁極位置と指定された発熱量に対応する振幅を選択することを特徴とする請求項に記載のヒートポンプ装置。
【請求項6】
前記インバータ制御部は、前記モータのロータが停止する直前に前記磁極位置を推定して記憶しておき、
前記圧縮機を加熱する場合、
憶している磁極位置を使用して振幅および位相を決定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項7】
前記圧縮機を加熱する場合に前記インバータが前記モータに印加する電圧の周波数を、人間の可聴周波数の上限よりも高い周波数とすることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項8】
前記圧縮機を加熱する場合、
前記インバータ制御部は、前記駆動信号を生成する際に使用するキャリア信号の頂もしくは底、または、頂および底に同期させて、前記位相を半周期分変化させることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項9】
前記インバータを構成しているスイッチング素子のうち、少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体で形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項10】
前記インバータを構成しているスイッチング素子のダイオードがワイドバンドギャップ半導体で形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項11】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドであることを特徴とする請求項または10に記載のヒートポンプ装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置を備えることを特徴とする冷凍機。

【手続補正書】
【提出日】20141030
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機構を駆動するモータに所望の電圧を印加するインバータと、前記インバータを制御するインバータ制御部と、を備えたヒートポンプ装置であって、
前記圧縮機構を備えた圧縮機を加熱する場合、
前記インバータ制御部は、
前記モータが回転駆動不可能な高周波電圧を前記モータに印加することとし、
前記モータの誘起電圧に基づいて前記モータのロータ停止位置を示す磁極位置を推定し、
前記磁極位置の推定結果に基づいて、前記モータからの発熱量が前記圧縮機に滞留している冷媒を気化させるために必要な発熱量となるように電圧指令の振幅および位相を決定し、当該決定した振幅および位相に従って前記インバータの駆動信号を生成する
ートポンプ装置。
【請求項2】
前記圧縮機を加熱する場合、
前記インバータ制御部は、前記推定結果に基づいて前記位相を決定し、前記必要な発熱量に基づいて前記振幅を決定する請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記インバータ制御部は、前記推定結果に基づいて前記位相を決定後、決定した位相に従った制御を行ったときに前記必要な発熱量が得られるかどうかを確認し、前記必要な発熱量が得られない場合には、前記必要な発熱量が得られるように前記位相を再決定し、前記必要な発熱量に基づいて前記振幅を決定する請求項2に記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
前記必要な発熱量を、使用者によって指定された発熱量する請求項1、2または3に記載のヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記インバータ制御部は、使用者が指定可能な発熱量と前記振幅と前記磁極位置との対応テーブルを保持しておき、使用者によって発熱量が指定された場合、その時点の磁極位置と指定された発熱量に対応する振幅を選択する請求項4に記載のヒートポンプ装置。
【請求項6】
前記インバータ制御部は、前記モータのロータが停止する直前に前記磁極位置を推定して記憶しておき、
前記圧縮機を加熱する場合、
記憶している磁極位置を使用して振幅および位相を決定する請求項1から5のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項7】
前記圧縮機を加熱する場合に前記インバータが前記モータに印加する電圧の周波数を、人間の可聴周波数の上限よりも高い周波数とする請求項1から6のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項8】
前記圧縮機を加熱する場合、
前記インバータ制御部は、前記駆動信号を生成する際に使用するキャリア信号の頂もしくは底、または、頂および底に同期させて、前記位相を半周期分変化させる請求項1から7のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項9】
前記インバータを構成しているスイッチング素子のうち、少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体で形成されている請求項1から8のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項10】
前記インバータを構成しているスイッチング素子のダイオードがワイドバンドギャップ半導体で形成されている請求項1から8のいずれか一つに記載のヒートポンプ装置。
【請求項11】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドである請求項9または10に記載のヒートポンプ装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置を備える空気調和機。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1つに記載のヒートポンプ装置を備える冷凍機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
【図1】図1は、本発明にかかるヒートポンプ装置の実施の形態1の構成例を示す図である。
【図2】図2は、ヒートポンプ装置の要部構成の一例を示す図である。
【図3】図3は、埋め込み磁石型同期電動機のロータの構造を示す図である。
【図4】図4は、図3に示したロータを備えたモータの固定子側から見たインダクタンス特性を示す図である。
【図5】図5は、図4に示したインダクタンス特性に対応する電流特性を示す図である。
【図6】図6は、PWM信号生成部の一相分の信号生成方法を示す図である。
【図7】図7は、熱運転時におけるインバータの8通りのスイッチングパターンを示す図である。
【図8】図8は、PWM信号生成部によるPWM信号の生成動作を示す図である。
【図9】図9は、図8に示した動作に対応する電圧ベクトル変化の説明図である。
【図10】図10は、実施の形態1のインバータ制御部の動作例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、SiデバイスとSiCデバイスの耐圧とオン抵抗の関係を示す図である。
【図12】図12は、実施の形態3のヒートポンプ装置の構成例を示す図である。
【図13】図13は、ヒートポンプ装置の冷媒の状態についてのモリエル線図である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
駆動信号生成部15において、電圧指令値生成部19は、加熱運転モード制御部12から入力される高周波電圧指令Vkおよび高周波位相指令θkに基づいて、三相(U相,V相,W相)それぞれの電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を生成する。PWM信号生成部20は、三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に基づいてPWM信号(UP,VP,WP,UN,VN,WN)を生成してインバータ9を駆動することにより、モータ8に電圧を印加させる。このとき、モータ8のロータが回転しないような高周波電圧を印加させ、モータ8を備えている圧縮機1(図1参照)を加熱する。なお、駆動信号生成部15は、ヒートポンプ装置が通常運転モードで動作する場合にもPWM信号を生成する。その場合のPWM信号生成方法は、加熱運転モード時で動作する場合と同様である。すなわち、通常運転モード制御部11から入力される情報(上記のVk,θkに相当する情報)が異なるだけである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
振幅位相決定部として動作する高周波通電部14において、加熱指令部18は位置検出判定部17からの信号(磁極位置推定結果)に基づいて加熱出力を決定する。図3は、埋め込み磁石型同期電動機(モータ8に相当)のロータの構造を示す図である。図3に示したように、埋め込み磁石型同期電動機のロータは、鉄心121および磁石122を含んで構成されている。このような構造ではロータの位置によって空隙の長さ(磁石と固定子の距離)が変化するため、固定子側から見たインダクタンス値は図4に示すように変化する。図4に示すようにインダクタンス値が変化すると巻線を流れる電流量は図5に示すように変化し、装置全体の加熱出力に影響する。これは、所定周波数(固定値)で所定電圧(固定値)の高周波電圧を与えた場合、ロータ位置に応じたインダクタンス値の変動の影響を受けてしまい、液冷媒の安定した加熱が困難になることを示している。すなわち、安定した加熱を実現するためには、モータ8に印加する高周波電圧をロータ位置に応じて調整する必要がある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
図6は、PWM信号生成部20の一相分の信号生成方法を示す図であり、U相のPWM信号を生成する方法を示している。図6に示した三角波がキャリア信号、正弦波が電圧指令Vu*である。図6に示した信号生成方法は一般に非同期PWMと称される手法に相当する。PWM信号生成部20は、電圧指令Vu*と所定の周波数で振幅Vdc/2(Vdcは直流母線電圧を示す)のキャリア信号を比較し、相互の大小関係に基づきPWM信号UPおよびUNを生成する。すなわち、キャリア信号が電圧指令値Vu*よりも大きいときは、UPをON,UNをOFFとし、それ以外はUPをOFF,UNをONにする。なお、キャリア信号の振幅,位相は固定とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
図7に示すスイッチングパターンを組み合わせて電圧ベクトルを出力することでインバータ9に所望の電圧を出力させることができる。圧縮機1内の冷媒をモータ8にて圧縮する動作(通常運転モードの動作)の場合には数10Hz〜数kHz以下で動作することが一般的である。このときにθkを高速で変化させることにより、数kHzを超える高波電圧を出力し、圧縮機1に通電し加熱(加熱運転モード)することが可能となる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
ただし、一般的なインバータの場合、キャリア信号の周波数であるキャリア周波数はインバータのスイッチング素子のスイッチングスピードにより上限が決まっているため、キャリア周波数以上の高周波電圧を出力することは困難である。なお、一般的なIGBT(Insulate Gate Bipolar Transistor)の場合、スイッチングスピードの上限が20kHz程度である。また、高周波電圧の周波数がキャリア周波数の1/10程度になると、高周波電圧の波形出力精度が悪化し、直流成分が重畳するなどの悪影響を及ぼす恐れがある。すなわち、キャリア周波数を20kHzとした場合に高周波電圧の周波数をキャリア周波数の1/10の2kHz以下とすると、高周波電圧の周波数は可聴周波数領域となり、騒音悪化が懸念される。そのため、PWM信号生成部20は、以下に示す方法でキャリア信号に同期したPWM信号を生成するようにして、騒音悪化を回避する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
このように、本実施の形態のヒートポンプ装置において、インバータ制御部10は、圧縮機1が備えているモータ8の磁極位置を推定し、推定結果および必要な発熱量に基づいて電圧位相を決定し、PWM信号を生成してインバータ9を制御することとした。これにより、モータ8の磁極位置によらず安定的に圧縮機1を加熱でき、その結果、圧縮機1内に滞留した液冷媒が外部へ漏出する。また、磁極位置に応じてモータ8に流す電流を調整するので、圧縮機1を効率的に熱することができ、省エネルギーとなる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
加えて、可聴周波数(20Hz〜20kHz)外の高周波電圧がモータ8に印加されるようにインバータ9を制御するので、モータ8を加熱する際の騒音を抑えることができる。
【国際調査報告】