(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013103133
(43)【国際公開日】20130711
【発行日】20150511
(54)【発明の名称】建設機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/42 20100101AFI20150414BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20150414BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20150414BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20150414BHJP
   B60W 20/00 20060101ALI20150414BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20150414BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20150414BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20150414BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20150414BHJP
【FI】
   !F16H61/42
   !E02F9/22 R
   !B60K6/485
   !B60K6/20 320
   !B60K6/20 400
   !B60K6/20 310
   !F02D29/00 B
   !F02D29/04 H
   !F02D29/06 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】2013552426
(21)【国際出願番号】JP2012084030
(22)【国際出願日】20121228
(31)【優先権主張番号】2012000847
(32)【優先日】20120105
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
【住所又は居所】東京都文京区後楽二丁目5番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 新士
【住所又は居所】茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株式会社日立製作所 日立研究所内
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅俊
【住所又は居所】茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株式会社日立製作所 日立研究所内
(72)【発明者】
【氏名】園田 光夫
【住所又は居所】茨城県土浦市神立町650番地 日立建機株式会社土浦工場 知的財産部内
【テーマコード(参考)】
2D003
3D202
3G093
3J053
【Fターム(参考)】
2D003AB05
2D003AB06
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3J053DA01
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3J053DA24
(57)【要約】
エンジン(1)の要求動力を発生可能なエンジン回転数及びエンジントルクの組合せを複数算出し、当該各組合せにおけるシステム効率を油圧ポンプ(3)の吐出圧に応じて算出するシステム動作点演算部(28)と、システム動作点演算部で算出したエンジン回転数、エンジントルク及びシステム効率からなる複数の組合せの中で所望のシステム効率が含まれるものにおけるエンジン回転数をエンジンの目標回転数として算出する回転数演算部(33)と、回転数演算部で算出された目標回転数と油圧ポンプの要求流量に基づいて、油圧ポンプの目標容量を算出する容量演算部(29)とを備える。これにより、システム全体の効率が良好な動作点でエンジン及び油圧ポンプを制御できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、当該エンジンによって駆動される可変容量型油圧ポンプを備えた建設機械の制御装置において、
前記エンジンのエネルギ効率に前記油圧ポンプのエネルギ効率を乗じて得られるものをシステム効率としたとき、
前記エンジンの要求動力を発生可能なエンジン回転数及びエンジントルクの組合せを複数算出し、当該各組合せにおける前記システム効率を前記油圧ポンプの吐出圧に応じて算出する第1動作点演算部と、
前記第1動作点演算部で算出した前記エンジン回転数、前記エンジントルク及び前記システム効率からなる複数の組合せの中で所望のシステム効率が含まれるものにおけるエンジン回転数を前記エンジンの目標回転数として算出する回転数演算部と、
前記回転数演算部で算出された目標回転数と前記油圧ポンプの要求流量に基づいて、前記油圧ポンプの目標容量を算出する容量演算部とを備えることを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の制御装置において、
前記油圧ポンプの要求流量を発生可能なポンプ回転数及びポンプ容積の組合せを複数算出し、当該各組合せにおける前記油圧ポンプのエネルギ効率を前記油圧ポンプの吐出圧に応じて算出する第2動作点演算部をさらに備え、
前記第1動作点演算部は、前記第2動作点演算部で算出した前記油圧ポンプのエネルギ効率と、前記エンジンのエネルギ効率とに基づいて前記各組合せにおける前記システム効率を算出することを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械の制御装置において、
前記建設機械は、前記エンジンによる前記油圧ポンプの駆動をアシストし又は前記エンジンに駆動されて発電する電動・発電機をさらに備え、
前記第1動作点演算部は、前記エンジンの要求動力として、前記油圧ポンプの要求動力から前記電動・発電機の発生動力を減じた動力を利用して、前記エンジン回転数、前記エンジントルク及び前記システム効率からなる複数の組合せを算出することを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械の制御装置において、
前記建設機械は、前記電動・発電機を駆動するための電力を蓄えるための蓄電装置をさらに備え、
前記蓄電装置の蓄電残量に基づいて前記電動・発電機の発生動力を算出するアシスト動力演算部をさらに備えることを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の建設機械の制御装置において、
所望のシステム効率が含まれる組合せが前記第1動作点演算部で算出されるように、前記電動・発電機の発生動力を補正するアシスト動力補正部をさらに備えることを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項6】
請求項4に記載の建設機械の制御装置において、
前記アシスト動力演算部は、前記蓄電残量のみに基づいて前記電動・発電機の発生動力を算出する処理、又は前記蓄電残量と目標蓄電残量との差分に基づいて前記電動・発電機の発生動力を算出する処理を実行することを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の建設機械の制御装置において、
前記油圧ポンプの吐出圧と要求流量に基づいて前記油圧ポンプの要求動力を算出するポンプ動力演算部をさらに備えることを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項8】
請求項2に記載の建設機械の制御装置において、
操作レバーの操作量、エンジン回転数指示装置による目標回転数、及び選択されている動作モードの種類に基づいて前記油圧ポンプの要求流量を算出するポンプ要求流量演算部をさらに備えることを特徴とする建設機械の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン及びこれに機械的に連結された油圧ポンプを備える建設機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧アクチュエータを駆動するための油圧システムを備える油圧ショベルやホイールローダ等の建設機械では、軽負荷から重負荷までの全ての作業に対応できるように、最大負荷時の作業を見込んで選定した大型のエンジンを備えていた。しかし、建設機械の作業全体において重負荷になる作業はあくまでも一部であるため軽負荷時や中負荷時にエンジンの能力を持て余すことになり、大型エンジンは燃費の観点からすると好ましくない。
【0003】
これに対して、燃費向上のためにエンジンを小型化すると同時に、当該エンジンの小型化に伴う出力低下を補填するための電動・発電機を備えるハイブリッドシステムを構成し、出力応答が速い電動・発電機による出力アシストをすることで、エンジンの回転数を可変制御して高効率点で運転することによって燃料消費量を抑える技術がある(特開平11−2144号公報)。
【0004】
また、油圧システムを備える建設機械では、投入された燃料に対して油圧アクチュエータがどれだけ作業ができるかの指標となる「作業量燃費」を改善することが重要になる。そして、作業量燃費を改善するためには、エンジンのみを高効率点で動かせばよいのではなく、油圧ポンプも併せて建設機械全体での効率が良くなる動作点で運転しなくてはならない。
【0005】
このような問題の解決を図った技術が特許文献2にて提案されている。特開2009−74405号公報では、油圧アクチュエータを操作するためのレバー操作に応じて油圧ポンプの目標流量を演算する目標流量演算部と、これに応じて演算されるエンジンの目標回転数(第1の目標回転数)と、油圧ポンプの負荷圧とレバー入力から演算される目標回転数(第4の目標回転数)とを比較し、いずれか低い方の回転数を最終的な目標回転数とすることによって高負荷時のポンプ効率及びエンジン効率を高めている。
【0006】
また、特開2004−84470号公報ではエンジンと油圧ポンプの間に無段変速機(Continuously Variable Transmission:CVT)を備えることで、エンジン及び油圧ポンプをそれぞれ効率の良い動作点で運転している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−2144号公報
【特許文献2】特開2009−74405号公報
【特許文献3】特開2004−84470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2004−84470号公報の技術では、エンジンと、電動・発電機及び油圧ポンプと間にそれぞれ無段変速機を備えるため、パワートレイン(動力駆動系)が複雑になることはもちろんのこと、パワートレイン全体の容積が増加することが避けられず、建設機械全体として大型なものにならざるを得ない。また、パワートレインの要素間に無段変速機を備えたことにより機械損失が増加するため、結果としてシステム全体の効率が低下する可能性が生じる。
【0009】
特開2009−74405号公報の技術では、可変容量型の油圧ポンプのポンプ容積を大きく取ることによってポンプの高効率化を行った上で、エンジン効率が向上する動作点を目標回転数としているが、ポンプ効率はポンプ容積によって一意に決定されるものではない。図19に、ポンプ容積を一定とした場合の回転数に対するポンプ効率の変化の様子を示した。図19からわかるように、ポンプの回転数が増加すると、摩擦などがこれに伴って増加するため機械効率が減少し、ポンプの全効率(機械効率と容積効率の積)が低下してしまう。特開2009−74405号公報の技術では、このような回転数の増加に伴う油圧ポンプの全効率の低下を考慮しておらず、油圧ポンプを最大容積で動作させた際にポンプ目標回転数と出流量が確保できるという制約のもとでエンジン単独での高効率点を定めていることに等しい。さらに、燃費低減のためにエンジンを大幅に小型化した場合、ある一定の出力を確保するためには、図19のような従来のエンジンよりも高い回転数でエンジンを制御しなくてはならない可能性が生じる。このことは、前述のポンプ効率の低減を招くことに繋がってしまう。
【0010】
本発明の目的は、簡易な構成で、効率の高い動作点でエンジン及び油圧ポンプを制御可能な建設機械の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、エンジンと、当該エンジンによって駆動される可変容量型油圧ポンプを備えた建設機械の制御装置において、前記エンジンのエネルギ効率に前記油圧ポンプのエネルギ効率を乗じて得られるものをシステム効率としたとき、前記エンジンの要求動力を発生可能なエンジン回転数及びエンジントルクの組合せを複数算出し、当該各組合せにおける前記システム効率を前記油圧ポンプの吐出圧に応じて算出する第1動作点演算部と、前記第1動作点演算部で算出した前記エンジン回転数、前記エンジントルク及び前記システム効率からなる複数の組合せの中で所望のシステム効率が含まれるものにおけるエンジン回転数を前記エンジンの目標回転数として算出する回転数演算部と、前記回転数演算部で算出された目標回転数と前記油圧ポンプの要求流量に基づいて、前記油圧ポンプの目標容量を算出する容量演算部とを備えるものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で、システム全体の効率が良好な動作点でエンジン及び油圧ポンプを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るハイブリッド式油圧ショベルにおける油圧駆動制御装置の概略構成図。
【図2】本発明の各実施の形態に係るレギュレータのポンプ容積−ポンプ吐出圧力特性図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るコントローラ8の概略構成図。
【図4】ポンプ要求流量演算部21の構成の一例を示す図。
【図5】ポンプ要求流量演算部21の構成の一例を示す図。
【図6】制御時における蓄電残量と目標蓄電残量との差に基づいて電動・発電機の動作の判断を行う場合の説明図。
【図7】第2動作点演算部27で生成されたポンプ効率マップを示す図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る第1動作点演算部28で生成されたシステム効率マップを示す図。
【図9】本発明と先行技術におけるエンジンの目標回転数の差異を示した図。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る第1動作点演算部28で生成されたシステム効率マップを示す他の図。
【図11】目標蓄電量に対する蓄電残量の変化の一例を示す図。
【図12】エンジンの目標回転数を所定の領域で指定する場合の説明図。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るコントローラの概略構成図。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る第1動作点演算部28で生成されたシステム効率マップを示す図。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係るコントローラの概略構成図。
【図16】本発明の第3の実施の形態に係る第1動作点演算部28で生成されたシステム効率マップを示す図。
【図17】本発明の第4の実施の形態に係るコントローラの概略構成図。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係る第1動作点演算部28で生成されたシステム効率マップを示す図。
【図19】ポンプ容積を一定とした場合の回転数に対するポンプ効率の変化の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0015】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るハイブリッド式油圧ショベルにおける油圧駆動制御装置の概略構成図である。この図に示す油圧駆動制御装置は、エンジン1と、エンジン1の燃料噴射量を調整するガバナ7と、エンジン1の実回転数を検出する回転数センサ(実回転数検出手段)6と、エンジン1と機械的に連結されエンジン1により駆動される可変容量型油圧ポンプ3(以下、単に「油圧ポンプ3」と称することがある)と、油圧ポンプ3から吐出される圧油によって駆動される油圧アクチュエータ5と、エンジン1により駆動されるパイロットポンプ32と、パイロットポンプ32から吐出される圧油を減圧してバルブ装置4に出力することで油圧アクチュエータ5を制御するための操作レバー(操作装置)16と、エンジン1の駆動軸上に配置され、エンジン1による油圧ポンプ3の駆動のアシスト又はエンジン1に駆動されて発電する電動・発電機2と、電動・発電機2を駆動するための電力を蓄えるための蓄電装置(蓄電手段)10と、油圧ポンプ3の容量を調節するポンプ容量調節装置(ポンプ容量調節手段)に含まれるレギュレータ14と、電動・発電機2の制御とともに、電動・発電機2と蓄電装置10間での電力の授受を制御するインバータ(電力変換装置)9と、ガバナ7を制御し燃料噴射量を調整してエンジン回転数を制御するとともに、インバータ9を制御し電動・発電機2のトルクを制御するコントローラ(制御装置)8と、エンジン1の目標回転数を指示するためのエンジンコントロールダイヤル(エンジン回転数指示装置)17と、油圧ショベルの動作モード(例えば、燃費よりも作業性を優先させるパワーモードや、作業性よりも燃費を優先させる省エネモード)を切り換えるための動作モード切替スイッチ(動作モード切換装置)19とを備えている。
【0016】
図1に示す油圧駆動制御装置は、油圧ポンプ3で吐出した圧油をまず複数のコントロールバルブを備えるバルブ装置4に供給し、当該バルブ装置4で圧油の流量・方向・圧力を適宜変更した後に各油圧アクチュエータ5に供給することで各油圧アクチュエータ5の駆動を制御している。バルブ装置4におけるコントロールバルブは、パイロットポンプ32から吐出され、操作レバー16の操作量に応じて減圧された圧油によって制御される。操作レバー16の操作量は、パイロットポンプ32からバルブ装置4(コントロールバルブ)に出力される圧油の圧力を圧力センサ18a,18b(図1参照)等の圧力検出手段で検出することで検出できる。また、本実施の形態に係る油圧ショベルに設置される油圧アクチュエータ5としては、上部旋回体の前方に取り付けられた多関節型のフロント作業装置を駆動するための油圧シリンダ(ブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダ等)や、上部旋回体を旋回させるための油圧モータ(旋回モータ)や、上部旋回体の下部に取り付けられた下部走行体を走行させるための油圧モータ(走行モータ)等があるが、図1ではこれらをまとめて油圧アクチュエータ5と表記している。
【0017】
エンジン1は、ガバナ7によって燃料噴射量を制御することで調速される。油圧ポンプ3には、油圧ポンプ3の負荷を演算するために必要な情報を検出する手段(ポンプ情報検出手段21)として、油圧ポンプ3から吐出される圧油の圧力を計測する圧力センサ22(圧力検出手段)と、当該圧油の流量を計測する流量センサ(流量検出手段)と、油圧ポンプ3の傾転角を計測する角度センサ(角度検出手段)とが設置されており、これら圧力センサ19、流量センサ及び角度センサは、検出したセンサ値をコントローラ8に出力している。
【0018】
レギュレータ14と電磁比例弁15は、コントローラ8から出力される操作信号に基づいて油圧ポンプ3の容量を調節するポンプ容量調節装置である。レギュレータ14は油圧ポンプ3に備えられており、レギュレータ14によって油圧ポンプ3の斜板もしくは斜軸の傾転角を操作すると、油圧ポンプ3の容量(押しのけ容積)が変更されて油圧ポンプ3の吸収トルク(入力トルク)を制御することができる(ポンプ吸収トルク制御)。本実施の形態におけるレギュレータ14は、電磁比例弁15が発生する制御圧によって制御されている。電磁比例弁15は、コントローラ8から出力される指令値に基づいて作動する。
【0019】
本実施の形態に係るレギュレータ14は、例えば、図2に示した制御特性図に従って油圧ポンプ3の容量を制御している。図2は本発明の実施の形態に係るレギュレータ14によるポンプ吸収トルクの制御特性図である。この図に示す折れ線31Aは、油圧ポンプ3の吐出圧に対して設定される油圧ポンプ3の容量の特性を示しており、エンジン1と電動・発電機2の合計出力の最大値(図2中の破線で示した双曲線(一定トルク線図))を超えない範囲で油圧ポンプ3のトルク(ポンプ容量とポンプ吐出圧力の積)がほぼ一定になるように設定されている。すなわち、その時々のポンプ吐出圧力に応じて折れ線31Aを利用して油圧ポンプ3の容量を設定すれば、エンジン1と電動・発電機2による最大出力を超えないように油圧ポンプ3のトルクを制御できる。ポンプ吐出圧力がP1以下である時にはポンプ吸収トルク制御は実施されず、ポンプ容量はバルブ装置4の各コントロールバルブを操作するための操作レバーの操作量によって決定される(例えば、いずれかの操作レバーの操作量が最大の時にq1になる)。一方、ポンプ吐出圧力がP1〜P2になると、レギュレータ14によるポンプ吸収トルク制御が実施され、ポンプ吐出圧の増加に伴って折れ線31Aに沿ってポンプ容量が減少するようにレギュレータ14によってポンプ傾転角が操作される。これにより、ポンプ吸収トルクは、折れ線31Aで規定したトルク以下になるように制御される。なお、P2はポンプ吐出圧力の最大値であり、バルブ装置4において油圧ポンプ3側の回路に接続されるリリーフ弁の設定圧力に等しく、ポンプ吐出圧力はこの値以上に上昇しない。なお、ここでは、油圧ポンプの吸収トルクの制御特性図として、2つの直線を組み合わせた折れ線31Aを使用したが、図2中の一定トルク線図(双曲線)を超えない範囲で設定すれば他の制御特性図を利用しても良い。
【0020】
コントローラ8は、油圧ポンプ3の吸収トルクに基づいて生成した操作信号(電気信号)を電磁比例弁15に出力し、電磁比例弁15は当該操作信号に応じた制御圧力を生成することでレギュレータ14を駆動する。これによりレギュレータ14によって油圧ポンプ3の容量が変更され、油圧ポンプ3の吸収トルクはエンジンストールが発生しない範囲に調整される。
【0021】
バッテリ又はキャパシタ等で構成される蓄電装置10には、蓄電装置10の蓄電量を演算するために必要な情報を検出する手段(蓄電情報検出手段)として、電流センサ11、電圧センサ12及び温度センサ13が取り付けられている。コントローラ8は、これらセンサ11,12,13によって検出された電流、電圧及び温度等の情報に基づいて蓄電残量演算部25(後述)において蓄電装置10の蓄電残量を演算し、蓄電装置10の蓄電量を管理している。
【0022】
図3は本発明の第1の実施の形態に係るコントローラ8の概略構成図である。なお、先の図に示した部分と同じ部分には同じ符号を付して説明は適宜省略することがある(後の図についても同じ)。
【0023】
この図に示すコントローラ8は、エンジン1、電動・発電機2及び油圧ポンプ3に対する指令値の演算を行うもので、ポンプ要求流量演算部21と、ポンプ動力演算部23と、アシスト動力演算部24と、蓄電残量演算部25と、エンジン要求動力演算部26と、システム動作点演算部(第1動作点演算部)28と、ポンプ動作点演算部(第2動作点演算部)27と、容量演算部29と、回転数演算部33と、アシスト動力補正部34を備えている。また、コントローラ8は、ハードウェア構成として、本発明に係る各種処理プログラムを実行するための演算処理装置(例えば、CPU)、当該制御プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶装置(例えば、ROM、RAM)等を備えている(いずれも図示せず)。
【0024】
本実施の形態では、エンジン1と油圧ポンプ3を制御して、その回転数を適切な動作点で運転することによって、エンジン1で消費される燃料量に対して、アクチュエータ5が行う作業量までのシステム効率の向上を狙っている。
【0025】
エンジン1で消費される燃料量(エンジン効率)は、動作時の回転数とトルクによって変化し、一方、油圧ポンプ3の効率(ポンプ効率)は、動作時の回転数、ポンプ容積、ポンプ吐出圧によって変化する。エンジン効率が良い回転数と油圧ポンプ3の効率が良い回転数が一致するとは限らないため、エンジン1と油圧ポンプ3のどちらか一方の効率が最良となる回転数を目標動作点(目標回転数)としても、システム効率が最良となるとは限らない。また、油圧ショベルなどの建設機械では短時間のうちに大きくポンプ吐出圧が変化するが、油圧ポンプ3の効率は吐出圧に応じて大きく変化するため、最良な動作点は逐次変化することになる。
【0026】
そのため、本実施の形態におけるコントローラ8では、システム効率に影響を与えるトルク(動力)、ポンプ容積、ポンプ吐出圧に応じて適切な回転数の目標値を逐次演算し、これに基づいてエンジン1と油圧ポンプ3の制御を実施している。
【0027】
ポンプ要求流量演算部21は、オペレータが所望する油圧アクチュエータの動作を確保するために必要な油圧ポンプの流量(要求流量)を算出する処理を実行する部分である。
【0028】
図4,5はポンプ要求流量演算部21の構成の一例を示す図である。これらの図に示すポンプ要求流量演算部21は、ポンプ要求動力演算部23Aで算出される油圧ポンプ3の要求動力と、圧力センサ22で検出される油圧ポンプ3の吐出圧とに基づいて油圧ポンプ3の要求流量を算出している。図4はポンプ要求動力演算部23Aで算出されたポンプ要求動力45bが制限値45a(図2における折れ線31Aに相当する)以下の場合を示し、図5はポンプ要求動力45cが制限値45aを超える場合を示している。なお、図中のレギュレータ特性は図2で示したようにトルクを制限するものであるが、流量(=容積×回転数)の次元で制御を行うため、次元を揃えるために図4ではポンプ動力(=トルク×回転数)で示している。
【0029】
ポンプ要求動力演算部23Aには、エンジンコントロールダイヤル17を介して指定されるエンジン1の目標回転数と、動作モード切替スイッチ19を介して指定される動作モードの種類と、操作レバー16の操作量(レバー操作量)が入力されている。本実施の形態では、圧力センサ18a,18bの検出値からレバー操作量を求めている。ポンプ要求動力演算部23Aは、オペレータが設定したエンジン回転数及び動作モードからどの程度の負荷の作業をオペレータが想定しているのかを判断し、これとレバー操作量からこれから必要となるだろうポンプ動力(ポンプ要求動力)を事前に設定する。この時、エンジンコントロールダイヤル17の目盛が相対的に大きく設定され、かつ、動作モードがパワーモードであり、さらにレバー操作量が相対的に大きいほどポンプ要求動力は大きく演算される。一方、エンジンコントロールダイヤル17の目盛が相対的に小さく設定され、かつ、動作モードが省エネモードであり、さらにレバー操作量が相対的に小さいほどポンプ要求動力は小さく演算される。
【0030】
ポンプ要求流量演算部21は、ポンプ要求動力演算部23Aで演算された要求動力と、油圧ポンプ3のレギュレータ特性に基づいて定められる動力制限値45aとの大小を比較し、要求動力が制限値45a以下の場合には当該要求動力を圧力センサ22で検出される吐出圧で除することで要求流量を算出する。一方、要求動力が制限値45aを超える場合には制限値45aを吐出圧で除することで要求流量を算出する。つまり、図4の場合には、等動力線45bで示されているポンプ要求動力と、圧力センサ22で計測されたポンプ吐出圧Pd1との交点が要求流量Q1となる。一方、図5の場合には、等動力線45cで示されるポンプ要求動力が制限値45aを上回るので、制限値45aとポンプ吐出圧Pd2との交点が要求流量Q2となる。図5の場合には、油圧アクチュエータ5に十分な動力が供給されないため、油圧アクチュエータ5の動作が緩慢になるが、エンジン負荷が過剰になることが防げるため、ラグダウンやエンジンストールを防止できる。なお、図4,5に示したポンプ要求流量の演算手段はあくまで一例であり、ポンプ要求流量を計算する方法はこれに限られるものではない。
【0031】
図3に戻り、ポンプ動力演算部23は、油圧ポンプ3が出力している実際のポンプ動力を演算する処理を実行する部分である。実際のポンプ動力を算出する方法としては、例えば、圧力センサ22を介して検出されるポンプ吐出圧と、流量センサを介して検出されるポンプ吐出流量とを乗じるものがある。なお、実際のポンプ動力の代わりに、図4,5に示したポンプ要求動力演算部23Aの算出値(要求ポンプ動力)を利用しても良い。このように要求ポンプ動力を利用した場合には、制御がフィードフォワードで行われることになり、所望の動作を素早く実現できる可能性が増すので、操作性を向上できる。
【0032】
アシスト動力演算部24は、電動・発電機2が実際に出力する動力の演算する処理を実行する部分である。この演算方法としては、電動・発電機2の回転数とその時点のトルクの積からアシスト動力を演算するものがある。また、ポンプ動力演算部23と同様に、電動・発電機2の目標回転数とトルクの目標値の積からアシスト要求動力を求め、これを代わりに利用してもよい。なお、後続の処理のため、電動・発電機2が電動機として動作する場合のアシスト動力の符号は正とし、電動・発電機2が発電機として動作する場合のアシスト動力の符号は負とする。
【0033】
また、電動・発電機2を電動機又は発電機として動作させるかの判断及びこれによる発生動力の大きさは、蓄電残量演算部25において算出される蓄電装置10の蓄電残量に基づいて行われる。当該判断は、制御時における蓄電残量の多少に基づいて行っても良いし、制御時における蓄電残量と目標蓄電残量との差分に基づいて行っても良い。
【0034】
図6は制御時における蓄電残量と目標蓄電残量との差に基づいて電動・発電機2の動作(電動動作/発電動作)の判断を行う場合の説明図である。図6では1日の作業時間を事前に設定し、これを想定作業時間とする。この想定作業時間において蓄電装置10の電圧が終止電圧になるまで電力を使い切ることを前提としている。ある時刻の目標蓄電残量に対して、その時刻の実際の蓄電残量が低ければ優先的に発電を行い、逆に、実際の蓄電残量が高ければ優先的に電動アシストを行うものとする。なお、このように作業時間を想定した目標蓄電残量に従う蓄電残量の管理は、蓄電装置10にバッテリを備えており、かつ、プラグインハイブリッド方式のように作業開始前に蓄電量を最大まで蓄えておける構成を備える建設機械において特に有効である。
【0035】
蓄電残量演算部25は、蓄電装置10の蓄電残量を演算する処理を実行する部分である。蓄電残量を演算する方法としては、センサ11,12,13によって検出された電流、電圧及び温度等の情報に基づいて蓄電残量を算出するものがある。
【0036】
システム動作点演算部(第1動作点演算部)28は、エンジン1の要求動力を発生可能なエンジン回転数及びエンジントルクの組合せ(動作点)を複数算出し、さらに、当該各組合せにおけるシステム効率を油圧ポンプ3の吐出圧に基づいて算出する処理を実行する部分である。なお、ここにおける「システム効率」とは、エンジン1のエネルギ効率に油圧ポンプ3のエネルギ効率を乗じて得られるシステム全体のエネルギ効率のことを示す。また、エンジン1の要求動力は、エンジン1から見た負荷動力であり、後述するように油圧ポンプ3の要求動力等に基づいて決定される。
【0037】
本実施の形態では、まず、油圧ポンプ3の要求流量及び吐出圧に応じた油圧ポンプ3の効率をポンプ動作点演算部(第2動作点演算部)27で算出し、その後、当該算出した油圧ポンプ3の効率とエンジン1の効率に基づいてエンジン回転数とエンジントルクの各組合せにおけるシステム効率をシステム動作点演算部28で算出している。このように所定の吐出圧におけるポンプ効率を算出してからシステム効率を算出すると、コントローラ8の演算負荷を軽減することができ、コントローラ8のハードウェア構成に要求される性能を抑制できる。なお、コントローラ8のハードウェア構成の性能に制限が無い場合には、ポンプ動作点演算部27による演算を省略し、エンジン要求動力からエンジン回転数、エンジントルク及びシステム効率の組合せをシステム動作点演算部28のみで算出しても良い。
【0038】
次に本実施の形態におけるポンプ動作点演算部27とシステム動作点演算部28における演算の流れを説明する。まず、ポンプ動作点演算部27では、油圧ポンプ3の要求流量を発生可能なポンプ回転数及びポンプ容積の組合せ(動作点)を複数算出し、さらに、当該各組合せにおける油圧ポンプ3のエネルギ効率を油圧ポンプ3の吐出圧に基づいて算出する処理を行う。
【0039】
図7はポンプ動作点演算部27で生成されたポンプ効率マップを示す図である。この図に示すポンプ効率マップは、ポンプ回転数とポンプ容積を軸に持ち、各回転数と容積の組合せに係るポンプ効率を等高線51で示している。このポンプ効率マップはポンプ吐出圧に基づいて生成されるものであり、ポンプ効率の等高線の形はポンプ吐出圧に応じて変化する。これは、油圧ポンプ3の効率はポンプ吐出圧に応じて変化するためである。
【0040】
ポンプ要求流量演算部21で算出されたポンプ要求流量は、ポンプ効率マップ上に等流量線として表される。すなわち、ポンプ流量は回転数とポンプ容積の積であるため、図7に示したようにポンプ要求流量はポンプ効率マップ上に反比例の曲線52で示される。そのため、油圧ポンプ3の要求流量に対応する等流量線をポンプ効率マップ上に示せば、当該曲線上の点の座標が、油圧ポンプ3の要求流量を発生可能なポンプ回転数及びポンプ容積の組合せを示すことになる。例えば、ポンプ要求流量が200L/minであり、目標回転数を250rpm刻みで探索する場合において、最小回転数を1000rpmとし、最大回転数を2000とすると、回転数とポンプ容積の組合せは、(1000rpm,200cc/rev)、(1250rpm,160cc/rev),…,(2000rpm,111cc/rev)の5組であり、それぞれの動作点におけるポンプ効率は効率マップからηp1〜ηp5と算出できる。
【0041】
エンジン要求動力演算部26は、エンジン1の要求動力を演算する処理を実行する部分であり、本実施の形態におけるエンジン要求動力は、ポンプ動力演算部23の出力(ポンプ動力)からアシスト動力演算部24の出力(アシスト動力)を減じることで求められる(すなわち、「エンジン要求動力=ポンプ動力−アシスト動力」)。なお、電動・発電機2が電動アシストしているときにはアシスト動力演算部24の出力を正値で表し、逆に発電を行っているときにはアシスト動力演算部24の出力を負値で表すものとする。
【0042】
システム動作点演算部28は、ポンプ動作点演算部27で求めた「ポンプ回転数、ポンプ容積、ポンプ効率」から成る複数の組合せと、エンジン要求動力演算部26で求めたエンジン要求動力と、蓄電残量演算部25で求めた蓄電残量に基づいて、ポンプ要求流量演算部21で演算されたポンプ要求流量が実現可能な「エンジン回転数、エンジントルク、システム効率」の組合せを複数算出する。
【0043】
図8はシステム動作点演算部28で生成されたシステム効率マップを示す図である。この図に示すシステム効率マップは、エンジン回転数とエンジントルクを軸に持ち、各回転数とトルクの組合せに係るシステム効率を等高線71で示している。この図に示したシステム効率は、ポンプ動作点演算部27で算出された各回転数におけるポンプ効率に対して、コントローラ8の記憶装置等に予め記憶されたエンジン1の効率マップ(又は等燃費マップ)から得られるエンジン効率を乗じることで算出される。先述のようにポンプ吐出圧が変化すればポンプ効率が変化するので、図8におけるシステム効率もポンプ吐出圧に応じて変化する(すなわち、吐出圧に応じてマップ中の目玉の位置(最も効率の良い等高線が示す領域)が移動する)。
【0044】
ところで、動力は回転数とトルクの積であるため、ポンプ動力演算部23で算出されたポンプ動力と、アシスト動力演算部24で算出されたアシスト動力と、エンジン要求動力演算部26で算出されたエンジン要求動力は、それぞれ等動力線としてシステム効率マップ上に表すことができる。そこで、図8において、ポンプ動作点演算部27と同様に目標回転数を250rpm刻みで探索し、電動・発電機2がアシスト動力を発生している状況を前提とし、ポンプ動力を80kW、アシスト動力を20kW、エンジン要求動力を前者2つの差(80kW−20kW)である60kWとすると、ポンプ動力(80kW)は点線の曲線72で示すことができ、エンジン要求動力(60kW)は実線の曲線73aで示すことができる。したがって、エンジン要求動力を示した曲線73a上の各点の座標(エンジン回転数、エンジントルク)と、当該各点に係るシステム効率との組合せの中に、最終的に求める組合せが存在することになる。
【0045】
回転数演算部33は、システム動作点演算部28で算出したエンジン回転数、エンジントルク及びシステム効率からなる複数の組合せの中から、所望のシステム効率が含まれる組合せにおけるエンジン回転数をエンジン1の目標回転数として算出する処理を実行する部分である。すなわち、回転数演算部33は、図8の曲線73a上の点から所望のシステム効率が含まれるものを1つ選択する処理を実行する。したがって、図8の例において、最もシステム効率が良い点を選択する場合には、効率マップ中の目玉に最も近い点が示す「1500rpm」が目標回転数となる。これによりコントローラ8は、1500rpmを目標回転数としてエンジン1を制御する。
【0046】
容量演算部29は、回転数演算部33で算出された目標回転数と、ポンプ要求流量演算部21で算出された油圧ポンプ1の要求流量とに基づいて、油圧ポンプ1の目標容量を算出する処理を実行する部分である。図7に戻り、目標回転数が1500rpmのとき、ポンプ容量は133cc/revを示すので、目標容量は「133cc/rev」となる。これによりコントローラ8は、ポンプ容量が133cc/revになるようにレギュレータ14(電磁比例弁15)を制御する。
【0047】
上記のように構成された本実施の形態に係る建設機械の制御装置によれば、所定の吐出圧におけるポンプ効率とエンジン効率から算出されるシステム効率特性図(図7の効率マップ)に基づいてエンジン目標回転数を決定することができるので、システム全体の効率が良好な動作点でエンジン及び油圧ポンプを制御することができる。したがって、特開2009−74405号公報に記載された技術のように、エンジン効率のみを考慮して目標回転数を演算していた場合よりもシステム全体としての効率を向上させることができる。つまり、エンジンの動作特性のみに従って目標動作点を定めている先行技術では実現できなかった、油圧アクチュエータによって行われる作業量(仕事量)に対してエンジンが消費する燃料量(作業量燃費)を最小化することができる。これは、燃料消費削減のためにエンジンの小型化を進め、エンジンを従来よりも高回転で運転し、その結果としてエンジンが高効率となる動作点とポンプが高効率となる動作点が大きくずれる場合に効果的である。また、特開2004−84470号公報に記載された技術のように、パワートレインが複雑になったり、パワートレイン全体の容積が増加したりすることも無い。さらに、本実施の形態では、必要なポンプ流量(要求ポンプ流量)を保持したままシステム効率が最良となる動作点を求めているので、本発明に係る制御装置を搭載していない建設機械と操作感が変わらず、オペレータに違和感を与えない効率の良い運転を行うことができる。また、先行技術同様にエンジンでの燃焼動作点を最適化することで排気ガス中に含まれる窒素酸化物や粒子状物質を減少させることも可能である。
【0048】
また、本実施の形態では、電動・発電機2のアシスト動力と油圧ポンプ3の動力に基づいてエンジン1の要求動力を演算し、これに基づいて動作点を算出しているので、合計出力が過剰になることで生じるオーバレブ(エンジンが過回転になる現象)や、合計出力が不足することで生じるエンジンストールを回避することができる。また、電動・発電機2を利用することでエンジン出力が急激に増加させる際に生じ得る過渡燃焼を抑制することができるため、排ガスの状態が悪化することを防ぐことが可能である。
【0049】
さて、本発明と先行技術におけるエンジンの目標回転数の差異を図9に示した。図中の曲線81はある一定動力におけるポンプの全効率(ポンプ容積は最大とする)を示し、曲線82はその一定動力時におけるエンジン1の最良燃費点を基準としたエンジン効率を示し、それぞれの最大値を1として正規化して図示している。また、曲線83はこれらの積であるシステム効率を示している。
【0050】
これは、例えば、ポンプ動力が80kWで最大効率が90%のポンプであれば、90%は1と表され、80%は0.89と表される。一方、エンジンの効率線では80kWで最良の燃費点での燃料消費率が毎時15リットルであったとすると、燃料消費率が毎時15リットルの動作点は効率1と表され、毎時20リットルの動作点は0.75(最良値との割り算で定義)と表すことができる。
【0051】
上記の実施の形態では、コントローラ8の働きによって、動作点におけるポンプ効率を判断した上でエンジン効率マップ(エンジン燃費マップ)に従って目標回転数を決定するので、図9におけるN3を目標回転数とすることができる。この時のシステム効率は、ポンプ効率とエンジン効率の積からη1と求まり、エンジンとポンプを同一回転数で運転するという条件の下でシステム効率が最良となる。
【0052】
一方、特開2004−84470号公報(特許文献3)に記載の技術では、無段変速機を用いて、ポンプとエンジンをそれぞれの最大効率点であるN1、N2で動作させることができるので、システム効率は変速機の効率η3(図示せず)と等しくなる。ここで、変速機の効率η3が低い場合には、本実施の形態で得られるシステム効率η1の方が高くなることもあり得る。
【0053】
また、特開2009−74405号公報(特許文献2)に記載の技術では、ポンプ容積が最大である時はエンジンの最適燃費点であるN2が目標回転数となる。この時のシステム効率η2はポンプの効率を考慮していないので、本実施の形態のシステム効率η1よりも常に低い値になる。なお、ポンプ効率とエンジン効率のピークが一致する時のみ特許文献2の技術のシステム効率η2は本発明のシステム効率η1と等しい値(η1=η2=1)になる。さらに、この時には特許文献3で得られるシステム効率η3が最低となる。
【0054】
なお、図9の例ではポンプの最高効率点とエンジンの最高効率点が比較的近い場合を図示しているが、これらの最高効率点が大きく異なる場合には、エンジン1と油圧ポンプ3間にギア比が固定の変速機を設けて両者の最高効率点を近づけることが好ましい。ただし、変速機を用いない場合の本実施の形態の効率η1と、変速機を用いた場合の本発明の効率η1’と変速機ηgの積との間に「η1<η1’× ηg」が成立していないならば、最高効率が低下してしまうため、変速機を用いない方が良い。
【0055】
ところで、次に示すアシスト動力補正部34において、蓄電装置10の蓄電残量に応じてアシスト動力を補正してエンジン要求動力を変更すれば、システム効率をさらに向上させることができる。すなわち、能動的にシステム効率の最適化が実現できる。
【0056】
アシスト動力補正部34は、システム動作点演算部28で算出されるエンジン回転数、エンジントルク及びシステム効率から成る複数の組合せの中に、所望のシステム効率(例えば、効率マップ上における最良のシステム効率)が含まれるように、電動・発電機2が発生する動力(アシスト動力)を補正する処理を実行する部分である。ここでは、所望のシステム効率として、効率が最良になる点Pb(図10参照)が含まれるようにする場合について図9を用いて説明する。
【0057】
図10はシステム動作点演算部28で生成されたシステム効率マップを示す他の図である。この図において、システム効率の最適点Pb(目玉の中心部)に最も近いのは回転数が1500rpmの動作点であると判断される。そこで、アシスト動力補正部34は、エンジン要求動力の等動力線が点Pbを通過する曲線73bになるようにアシスト動力を補正する。このとき、アシスト動力補正部34による補正後のアシスト動力は、当初のアシスト動力(アシスト動力演算部24の出力(20kW))に図10中の矢印分(5kW)を加えたものになる。アシスト動力補正部34は、補正後のアシスト動力をアシストトルク指令としてインバータ9に出力する。これにより、コントローラ8は、補正後のアシスト動力でもって電動・発電機2を制御する。なお、この例では、アシスト動力補正部34は、アシストトルク指令として160Nm(1500rpmで25kW相当)を出力する。なお、アシストトルク指令は現時点での回転数から求めてもよい。つまり、「25kW÷当該時刻における回転数rad/s」で演算してもよい。
【0058】
このようにアシスト動力補正部34で電動・発電機2のアシスト動力を補正すると、動力源がエンジン単独であるときと比較して、システム効率がより高い動作点で運転することができる。
【0059】
なお、上記の説明では、ポンプ要求動力の等動力線72の下方に所望のシステム効率が存在する場合であって、電動・発電機2を電動機として動作させてエンジン要求動力を低下させるときについて説明したが、所望のシステム効率が当該等動力線72の上方に位置する場合には、電動・発電機2を発電機として動作させエンジン要求動力を上昇させることで所望のシステム効率に達するようにアシスト動力を補正すれば良いことは言うまでもない。
【0060】
また、上記のようにアシスト動力補正部34でアシスト動力を補正する場合には、蓄電残量演算部25で算出される蓄電装置10の蓄電残量を考慮して、蓄電装置10の過充電・過放電の防止が可能な範囲でアシスト出力を補正することが好ましい。建設機械の動作状況の情報である電動・発電機2の動力と蓄電装置10の残量に即して動作点を演算できるので、所望のシステム効率を達成するための動作点により近い点でパワートレインを駆動することができるからである。図10においてハッチングを付した領域は、蓄電残量演算部25によって判断される電動・発電機2の動作可能領域を示し、制御時(図11における時刻t1)における蓄電装置10の蓄電残量によって決定されている。
【0061】
図11は目標蓄電量に対する蓄電残量の変化の一例を示す図である。この図における時刻t1では、目標蓄電量に対して蓄電残量が高いため、電動・発電機2でアシストを行うことで蓄電装置10から電力を放電する必要があると判断される。このとき、十分な時間をかけて蓄電残量を徐々に目標蓄電量に近づける場合には、時間当たりに出力されるアシスト動力が相対的に小さくなるため、例えば曲線71aのように電力が消費される。これは、図10中の曲線71bに相当する放電計画である。一方、急速な放電を行って目標蓄電量に近づける場合には、時間当たりに出力されるアシスト動力が相対的に大きくなるため、例えば曲線72aのように電力が消費される。これは、図10中の曲線72bに相当する放電計画となる。
【0062】
このように電動・発電機2のアシスト動力を算出/補正すると、電動・発電機2のアシストトルク指令の上下限を蓄電装置10の蓄電残量に応じて与えることができるので、蓄電装置10を適切な使用範囲で利用することができ、過充電・過放電を防止できる。
【0063】
ところで、上記では、回転数演算部33による目標回転数の算出は、図8に示したように1点で与えることと説明したが、所定の幅を持たせた領域(目標回転数領域)で目標回転数を指定しても良い。
【0064】
図12はエンジンの目標回転数を所定の領域で指定する場合の説明図である。この図に示した場合には、システム効率が所定の値以上である領域(等高線の高さがある一定値以上である領域)、つまり、エンジン回転数がN12aからN12bの間にあれば良いという回転数制御を行うことになる。このような目標回転数領域を採用した場合には、容量演算部29における容積指令の演算は、前述のアシストトルク指令の演算と同様に、その時の回転数を利用して「目標ポンプ流量÷現時点での回転数」で演算することになる。例えば、目標回転数領域が1450rpmから1600rpmで設定されている場合において、実際の回転数が1550rpmであったとすると、ポンプ要求流量が200L/minのとき、これを実現するための容積指令は「200L/min=200×1000cc/min÷1550rpm」より129cc/revと決定すれば良い。
【0065】
また、等高線の傾斜が緩やかな、つまり、システム効率が回転数に対して大きく変化しない領域であるのならば、最適回転数に対してある一定の余裕を与える方法を取っても良く、例えば、図12における最適回転数1500rpmに対して、実回転数が±100rpm内、つまり、1400〜1600rpmの間でエンジン回転数を制御すれば良いことになる。
【0066】
ところで、上記の実施の形態では、コントローラ8に多くの機能を盛り込む構成としたが、コントローラ8のハードウェア構成による制約(例えば、記憶装置の容量(メモリ容量等)やCPUの処理速度等)、各種センサの有無や建設機械の構成に応じて、他の構成を採用しても本発明は実現することができる。以下において、その構成例を示す。なお、以下の各実施の形態では、図8に示した例と同様に目標回転数を1点で与えているが、図12に示した例と同様に目標回転数を領域の形式で与える構成としても良い。
【0067】
図13は本発明の第2の実施の形態に係るコントローラの概略構成図である。この図に示すコントローラは、電動・発電機2及び蓄電装置10を備えない通常の油圧ショベルに係るものである。したがって、図3に示した構成から、アシスト動力演算部24、蓄電残量演算部25、エンジン要求動力演算部26及びアシスト動力補正部34は省略されている。本実施の形態では、システム動作点演算部28で算出したシステム効率マップ上に、ポンプ動力演算部23から出力されるポンプ動力の等動力線72(図14参照)を描くことで所望のシステム効率となる動作点を算出することになる。図14はシステム動作点演算部28で生成されたシステム効率マップを示す図である。この図の場合、最もシステム効率の良い動作点は点92であり、エンジン1の目標回転数は1750rpmであると算出することができる。
【0068】
図15は本発明の第3の実施の形態に係るコントローラの概略構成図である。この図に示すコントローラは、電動・発電機2を備えたハイブリッド式油圧ショベルに係るものであり、図3に示した構成から蓄電残量演算部25及びアシスト動力補正部34を省略したものに相当する。本実施の形態では、エンジン要求動力演算部26において、ポンプ動力からアシスト動力を減ずることでエンジン要求動力を算出し、当該エンジン要求動力の等動力線73をシステム効率マップ上に描くことで動作点を算出することができる。図16はシステム動作点演算部28で生成されたシステム効率マップを示す図である。この図の場合、最もシステム効率の良い動作点は点93であり、エンジン1の目標回転数は1500rpmであると算出することができる。
【0069】
なお、本実施の形態に係る構成は、例えば、油圧ショベルにおける上部旋回体を旋回するための旋回モータを電動化する等して、油圧アクチュエータと電動アクチュエータをともに備える建設機械において有効である。つまり、例えば、電動モータの回生動力をエンジン軸上の電動・発電機2のアシスト動力として利用する場合に適している。また、動力不足によるエンジンストールを避けるために、電動・発電機2のアシスト動力を別系統の制御で優先的に求める構成を備える建設機械への適用も好ましい。
【0070】
図17は本発明の第4の実施の形態に係るコントローラの概略構成図である。この図に示すコントローラは、電動・発電機2及び蓄電装置10を備えたハイブリッド式油圧ショベルに係るものであり、図3に示した構成からアシスト動力演算部24及びエンジン要求動力演算部26を省略したものに相当する。本実施の形態では、ポンプ動力演算部23で算出されたポンプ動力の等動力線72をシステム効率マップ上に描き、当該等動力線72と蓄電残量演算部25で算出される蓄電残量とに基づいて電動・発電機2の動作可能領域(ハッチング領域)98を規定し、当該ハッチング領域98内の動作点の中から所望のシステム効率の動作点を選択するものとする。図18はシステム動作点演算部28で生成されたシステム効率マップを示す図である。この図の場合、ハッチング領域98内において最もシステム効率の良い動作点は点94であり、エンジン1の目標回転数は1500rpmであると算出することができる。さらに、その場合に電動・発電機2で発生すべきアシスト動力の大きさ(アシストトルク指令)は、動作点94を通過する等動力線99とポンプ動力の等動力線72との差分から求めることができる。なお、本実施の形態は、アシスト動力演算部24を備えないので、フィードフォワード制御によって電動・発電機2のトルク制御が行われることになる。
【0071】
ところで、上記の各実施の形態では、エンジン回転数、エンジントルク及びシステム効率等の組合せをテーブルの形式で算出する場合について説明したが、上記の処理を関数化して当該関数に基づいてこれらの組合せを算出しても良い。また、上記の各実施の形態に係る演算処理については、主に動力(すなわち、回転数とトルクの積)を利用したものを説明したが、これらの演算処理はトルクを利用した演算に基づいて行っても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 エンジン
2 電動・発電機
3 油圧ポンプ
5 油圧アクチュエータ
9 インバータ
10 蓄電装置
14 レギュレータ
15 電磁比例弁
16 操作レバー
17 エンジンコントロールダイヤル
18a,18b 圧力センサ
21 ポンプ要求流量演算部
22 圧力センサ
23 ポンプ動力演算部
23A ポンプ要求動力演算部
24 アシスト動力演算部
25 蓄電残量演算部
26 エンジン要求動力演算部
27 ポンプ動作点演算部(第2動作点演算部)
28 システム動作点演算部(第1動作点演算部)
29 容量演算部
32 パイロットポンプ
33 回転数演算部
34 アシスト動力補正部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【国際調査報告】