(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013105248
(43)【国際公開日】20130718
【発行日】20150511
(54)【発明の名称】電気車制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/14 20060101AFI20150414BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20150414BHJP
【FI】
   !B60L7/14
   !B60L15/20 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】2013553147
(21)【国際出願番号】JP2012050507
(22)【国際出願日】20120112
(11)【特許番号】5523639
(45)【特許公報発行日】20140618
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目7番3号
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】山下 良範
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目7番3号 三菱電機株式会社内
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125AC02
5H125BA00
5H125CA01
5H125CB02
(57)【要約】
架線から供給される電力を蓄積するフィルタコンデンサの電圧を所望の交流電圧に変換するインバータによって駆動されるモータが発生する回生電力を架線に戻すための制御演算を行う軽負荷回生制御演算部18を備えた電気車制御装置において、軽負荷回生制御演算部18には、フィルタコンデンサ電圧EFCに基づいてモータの回生トルクを抑制するVCEESLを算出する比例制御系31、架線電圧ESと架線電流ISとを用いて算出される回線電力および、トルク指令としてのトルクパターンPTRNに基づいてモータの回生トルクを抑制するWEFCLMPを算出する回生電力制御系32と、が設けられ、比例制御系31の出力であるVCEESLと、回生電力制御系32の出力であるWEFCLMPとの加算出力をトルク制御量(トルク絞り込み量)としてモータの回生トルクを制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線から供給される電力を蓄積するフィルタコンデンサの直流電圧を所望の交流電圧に変換し負荷であるモータを駆動する電力変換器と、この電力変換器を制御する制御部と、前記モータが発生する回生電力を前記架線に戻すための制御演算を行う回生制御演算部と、を備えた電気車制御装置において、
前記回生制御演算部には、前記架線もしくは前記フィルタコンデンサの電圧に基づいて前記モータの回生トルクを抑制する第1のトルク抑制量を算出する第1の制御系と、
前記架線もしくは前記フィルタコンデンサのうちの何れかの電圧と前記架線に流れる電流とを用いて算出される回線電力と、トルク指令とに基づいて前記モータの回生トルクを抑制する第2のトルク抑制量を算出する第2の制御系と、が設けられ、
前記第1のトルク抑制量と、前記第2のトルク抑制量とに基づいて前記モータの回生トルクを制御することを特徴とする電気車制御装置。
【請求項2】
前記第2の制御系は、前記第2のトルク抑制量の元となる制御量として前記トルク指令と前記回生電力との差分値を用いることを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項3】
前記第2の制御系は、前記トルク指令の立ち上がり時において、前記トルク指令の入力を無効とする制御要素を有することを特徴とする請求項2に記載の電気車制御装置。
【請求項4】
前記第2の制御系は、前記第2のトルク抑制量の元となる制御量を前記架線もしくは前記フィルタコンデンサの電圧に応じて調整する制御要素を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電気車制御装置。
【請求項5】
前記回生電力は、前記電力変換器の損失分を考慮して算出されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電気車制御装置。
【請求項6】
電気車が複数台のモータを複数台の電力変換器で駆動する構成であるとき、
前記制御部および前記フィルタコンデンサの電圧を検出する電圧検出器は、前記各電力変換器に対応して個々に設けられ、
前記回生制御演算部、前記架線の電圧を検出する電圧検出器および前記架線に流れる電流を検出する電流検出器は、前記各電力変換器には個々に対応せずに共通的に設けられ、
前記回生制御演算部は、前記電気車全体のトルク抑制量を演算する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記モータの各相に流れる電流を検出してDQ変換し、変換されたD軸電流およびQ軸電流がそれぞれ、各軸の電流指令であるD軸電流指令およびQ軸電流指令に一致するように制御するベクトル制御系を有して構成され、
前記D軸電流、前記Q軸電流、前記D軸電流指令および前記Q軸電流指令ならびに、前記架線もしくはフィルタコンデンサの電圧を用いて前記架線に流れる電流を算出することを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気車制御装置として、例えば下記特許文献1に開示された電気車制御装置では、フィルタコンデンサ電圧のみを軽負荷回生制御演算部に取り込み、電圧目標値との比較において、制御量を決定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−215105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示される従来の構成では、回生を有効に働かせるような制御定数の取り方によっては、制御系が不安定になり易くなるが、制御系が不安定になると、トルク振動が発生する場合があり、乗り心地が悪化するという問題点があった。
【0005】
また、変電所の電圧設定や同一給電区間に存在する他編成の運転状況によっては、架線電圧自体が高くなり、フィルタコンデンサ電圧も高くなる。したがって、フィルタコンデンサ電圧のみを使用する従来の制御系では、回生負荷が存在するにも関わらず、電圧条件により回生トルクを絞り込んでしまい、回生率を低下させてしまうことがあるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、乗り心地の悪化を抑制しつつ、回生率の更なる向上を可能とする電気車制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る電気車制御装置は、架線から供給される電力を蓄積するフィルタコンデンサの直流電圧を所望の交流電圧に変換し負荷であるモータを駆動する電力変換器と、この電力変換器を制御する制御部と、前記モータが発生する回生電力を前記架線に戻すための制御演算を行う回生制御演算部と、を備えた電気車制御装置において、前記回生制御演算部には、前記架線もしくは前記フィルタコンデンサの電圧に基づいて前記モータの回生トルクを抑制する第1のトルク抑制量を算出する第1の制御系と、前記架線もしくは前記フィルタコンデンサのうちの何れかの電圧と前記架線に流れる電流とを用いて算出される回線電力と、トルク指令とに基づいて前記モータの回生トルクを抑制する第2のトルク抑制量を算出する第2の制御系と、が設けられ、前記第1のトルク抑制量と、前記第2のトルク抑制量とに基づいて前記モータの回生トルクを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電気車制御装置によれば、乗り心地を悪化させることなく、回生率の更なる向上が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施の形態1に係る電気車制御装置を具備する電気車の構成を示す図である。
【図2】図2は、軽負荷回生制御演算部の細部構成例を示す図である。
【図3】図3は、過剰絞り込み防止ブロックの細部構成例を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2に係る電気車の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係る電気車制御装置について説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気車制御装置を具備する電気車の構成を示す図である。図1において、電気車100は、電気車制御装置に係る主要な構成部(主回路部)として、直流電源を供給する架線10と摺動することにより直流電力の授受を行う集電装置としてのパンタグラフ11と、パンタグラフ11から主回路部側に向かう直流母線20に挿入される直流リアクトル12と、パンタグラフ11および直流リアクトル12を介して供給される直流電力(電荷)を平滑して蓄積するフィルタコンデンサ13と、フィルタコンデンサ13の直流電圧を所望の交流電圧に変換し負荷であるモータ15を駆動する電力変換器としてのインバータ14と、を備えている。
【0012】
また、電気車100には、各種センサとして、架線10から電気車100に向けて流れ込む電流もしくは、電気車100から架線10に向けて流れ出す電流(以下「架線電流」と称する)ISを検出する電流検出器21と、直流電源の電圧としてのパンタグラフ11の電圧(以下「架線電圧」と称する)ESを検出する電圧検出器22と、フィルタコンデンサ13の電圧(フィルタコンデンサ電圧)EFCを検出する電圧検出器23と、速度情報としてモータ15の角速度ωを検出もしくは演算する速度検出器16と、を有している。
【0013】
また、インバータ14の動作を制御するインバータ制御部17と、モータ15が発生する回生電力を架線10側に効果的または効率的に戻すための制御演算(所謂、軽負荷回生制御演算)を行う軽負荷回生制御演算部18と、を備えている。詳細は後述するが、軽負荷回生制御演算部18は、架線電圧ES、架線電流IS、フィルタコンデンサ電圧EFCおよび、モータ15の角速度ωならびに、インバータ制御部17から出力されるトルクパターン(トルク指令)PTRNに基づいて、回生トルクの絞り込み量であるトルク抑制量VDTELMを生成してインバータ制御部17に出力する。
【0014】
インバータ制御部17は、軽負荷回生制御演算部18が生成したトルク抑制量VDTELMに基づき、インバータ14の内部に設けられるスイッチング素子(図示省略)をオン/オフ制御するための制御信号GCを生成してインバータ14に出力する。なお、トルクパターンPTRNは、ブレーキ指令の大きさ、電気車100の速度Vなどに応じたトルク指令量(トルク指令の大きさ)をパターン化したものであり、テーブル形式にして処理部内に保持してもよいし、関数計算で求めても構わない。
【0015】
つぎに、軽負荷回生制御演算部18の細部について説明する。図2は、軽負荷回生制御演算部18の細部構成例を示す図である。
【0016】
軽負荷回生制御演算部18は、図2に示すように比例制御による軽負荷回生制御系(同図(a)、以下単に「比例制御系」もしくは、必要に応じ「第1の制御系」と称する)31と、回生電力による軽負荷回生制御系(同図(b)、以下単に「回生電力制御系」もしくは、必要に応じ「第2の制御系」と称する)32とを有し、これら比例制御系31の出力と回生電力制御系32の出力とを加算器68にて加算し、その加算値をトルク抑制量VDTELM(第1のトルク抑制量)として出力する構成である。
【0017】
図2(a)に示すように、比例制御系31は、減算器41、ゲインテーブル42、乗算器43および、1次遅れ制御ブロック44を備えて構成される。減算器41では、フィルタコンデンサ電圧EFCから開始電圧(基準電圧)ECMAXを減算した電圧偏差DEFCが算出され、ゲインテーブル42では、モータ周波数FMを用いて乗算器43に付与する乗算係数VECEGが算出される。電圧偏差DEFCは、乗算器43にて乗算係数VECEGが乗算された後に1次遅れ制御ブロック44を通過し、比例制御による軽負荷回生リミッタ出力VECESLとして加算器68に出力される。
【0018】
なお、この比例制御系31は、減算器41の出力である電圧偏差DEFCに乗算係数VECEGを乗算したものが制御量、即ちトルク抑制量の一成分となる。このため、比例制御系31は、応答の比較的速い制御系として動作する。
【0019】
一方、図2(b)に示すように、回生電力制御系32は、絶対値演算部51,58、過剰絞り込み防止ブロック52、乗算器53,56,60、除算器54,59,61、減算器55、インバータ損失考慮テーブル57、絞り込みゲインテーブル62および、1次遅れ制御ブロック63を備えて構成される。
【0020】
乗算器53では、架線電圧ESと、除算器59の出力IS1と、インバータ損失考慮テーブル57の出力αとが乗算される。除算器59の出力IS1は、架線電流ISの絶対値をモータ個数で除したものであり、モータ1個あたりに流れる電流値となる。インバータ損失考慮テーブル57は、インバータ14の効率95〜98%を考慮してその損失分を上乗せできるように、インバータ14の損失分を考慮した損失考慮ゲインα(例えば、約1.02〜1.05)を定めたテーブルである。インバータ14の効率は、モータ15の回転に依存して変動するので、この実施の形態では、損失考慮ゲインαをモータ周波数FMに応じて決定するようにしている。
【0021】
除算器54では、乗算器53の出力Prが除算器61の出力ωmにて除算される。除算器61の出力ωmは、乗算器60の出力であるモータ15の角速度ω(=2π×FM:電気角速度)をモータ極対数Pで除したものであり、モータ15の機械角速度ωmとなる。したがって、除算器54の出力PTRN1は、モータ1個あたりの回生トルクとなる。減算器55では、過剰絞り込み防止ブロック52の出力PTRNEから除算器54の出力PTRN1が減算される。なお、過剰絞り込み防止ブロック52の出力PTRNEは、絶対値演算部51が演算したトルクパターンPTRNの絶対値PTRNABSに基づいて生成される。
【0022】
除算器55の出力PTRN2は、乗算器56に入力され、乗算器56にて絞り込みゲインテーブル62の出力である絞り込みゲインPTRNLMTが乗算された後に1次遅れ制御ブロック63を通過し、回生電力による軽負荷回生リミッタ出力WEFCLMP(第2のトルク抑制量)として加算器68に出力される。
【0023】
なお、この回生電力制御系32は、上述したような乗算および除算を数回繰り返す処理を行うと共に、ゲインテーブル42、インバータ損失考慮テーブル57および絞り込みゲインテーブル62による処理を行うため、比例制御系31に比べて制御系の応答速度は速くない。しかしながら、本実施の形態の軽負荷回生制御演算部18では、フィルタコンデンサ電圧EFCと基準電圧との偏差を制御量として回生トルク制御を行う応答速度の速い比例制御系31の出力と、応答速度は遅いが回線電力を制御量として回生トルク制御を行う回生電力制御系32の出力とを加算器68にて加算し、その加算値をトルク抑制量VDTELMとして出力する構成である。このため、本実施の形態の電気車制御装置を用いれば、回生トルクの絞り込みを精度よく、かつ、タイムリーに行うことが可能となる。
【0024】
つぎに、絞り込みゲインテーブル62について説明する。絞り込みゲインテーブル62は、定格架線電圧以下の領域において、不要な絞り込みを抑止するための絞り込みゲインPTRNLMTを出力する。例えば、架線10の定格電圧(定格架線電圧)が1500Vの場合、図2にも示すように、架線電圧ESが1500V以下ではPTRNLMT=0を出力し、架線電圧ESが1600V以上ではPTRNLMT=1を出力し、架線電圧ESが1500V〜1600Vの範囲内にある場合、0→1でランプ変化をする実数値を出力する。このような絞り込みゲインテーブル62を用いれば、架線電圧ESが所定値よりも高い場合には、絞り込みゲインをフルに働かせて動作することができ、架線電圧ESが所定値よりも低い場合には、絞り込みゲインを架線電圧ESの低下に応じて徐々に低下させ、さらに架線電圧ESが定格電圧よりも低い場合には絞り込みゲインをゼロに設定することにより、回生トルクの絞り込み量であるトルク抑制量を架線電圧ESの低下に応じて徐々に低減することが可能となる。なお、本構成において、架線電圧ESに代えてフィルタコンデンサ電圧EFCを入力する構成であっても構わない。
【0025】
つぎに、過剰絞り込み防止ブロック52について説明する。図3は、過剰絞り込み防止ブロック52の細部構成例を示す図である。過剰絞り込み防止ブロック52は、図3に示すように、2回路1接点の入力切替器71と、比較器72とを備えて構成される。比較器72では、トルクパターンの絶対値PTRNABS(以下単に「トルクパターンPTRNABS」と称する)が、第1の所定値(図3の例では、10Nm)と比較される。トルクパターンPTRNABSが第1の所定値よりも小さい場合には、切替接点は“OFF”側に制御され、トルクパターンPTRNABSが第1の所定値よりも大きい場合には、切替接点は“ON”側に制御される。即ち、過剰絞り込み防止ブロック52の全体の動作として見ると、トルクパターンPTRNABSの立ち上がり時において、トルクパターンPTRNABSが第1の所定値(10Nm)に達するまでは、トルクパターンPTRNABSの値に関わらずトルクパターンPTRNEが第1の所定値よりも小さな第2の所定値(図3の例では、0Nm)に固定される。一方、トルクパターンPTRNABSが第1の所定値(10Nm)を超えると、トルクパターンPTRNABSの値がトルクパターンPTRNEとして出力される。なお、図3に示す第1、第2の所定値は一例であり、他の値を用いてもよいことは無論である。
【0026】
回生電力制御系32は、回生電力を検出して動作する制御系であるため、架線電流ISが流れていないと回生電力を検出することができない。一方、上述のように、過剰絞り込み防止ブロック52は、トルクパターンPTRNABSの立ち上がり時(即ち、回生開始時)において、減算器55に出力されるトルクパターンPTRNEの値が“0”に抑えられるので、回生開始時における過剰な絞り込みが抑えられる。このように、過剰絞り込み防止ブロック52は、回生負荷となる他の電気車が存在する場合に、回生開始時における回生電力(電流)の検出を確実且つ円滑に行うことができる。また、過剰絞り込み防止ブロック52は、回生負荷となる他の電気車が存在する場合に、この電気車が必要とする回生電力をタイムリーに把握することが可能となる。
【0027】
なお、本実施の形態では、比例制御系31に対する入力として、フィルタコンデンサ電圧EFCを用いる構成を開示したが、フィルタコンデンサ電圧EFCに代えて架線電圧ESを用いる構成であっても構わない。また、本実施の形態では、回生電力制御系32に対する入力として、架線電圧ESを用いる構成を開示したが、架線電圧ESに代えてフィルタコンデンサ電圧EFCを用いる構成であっても構わない。
【0028】
以上説明したように、実施の形態1に係る電気車制御装置によれば、架線電圧ESもしくはフィルタコンデンサ電圧EFCに基づいてモータ15の回生トルクを抑制する第1のトルク抑制量としての軽負荷回生リミッタ出力VECESLと、架線電圧ESもしくはフィルタコンデンサ電圧EFCのうちの何れかの電圧および架線電流ISを用いて算出される回線電力Prと、トルク指令としてのトルクパターンPTRNとに基づいてモータ15の回生トルクを抑制する第2のトルク抑制量としての軽負荷回生リミッタ出力WEFCLMPと、に基づいてモータ15の回生トルクを制御することとしたので、回生率の更なる向上が可能になるという効果が得られる。
【0029】
また、実施の形態1に係る電気車制御装置によれば、第1のトルク抑制量としての軽負荷回生リミッタ出力VECESLを生成する比例制御系31の出力と、第2のトルク抑制量としての軽負荷回生リミッタ出力WEFCLMPを生成する回生電力制御系32の出力とに基づいて制御系全体のトルク抑制量(トルク絞り込み量)を生成する構成としているので、安定した制御系を構成することができ、トルク振動の発生を抑えて、乗り心地が悪化するのを抑制することができるという効果が得られる。
【0030】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2に係る電気車の構成を示す図である。実施の形態1に係る電気車制御装置は、1台のインバータ毎に軽負荷回生制御演算部を有する構成であったが、実施の形態2に係る電気車制御装置は、複数台のインバータ(図4では、2台のインバータを例示)を一つの軽負荷回生制御演算部が制御する構成である。具体的に図4に示す構成では、同一の直流母線20に対し、直流リアクトル12a、フィルタコンデンサ13a、インバータ14aおよびモータ15a、ならびにフィルタコンデンサ13aの電圧(フィルタコンデンサ電圧)EFC1を検出する電圧検出器23aを有する第1の駆動群と、直流リアクトル12b、フィルタコンデンサ13b、インバータ14bおよびモータ15b、ならびにフィルタコンデンサ13bの電圧(フィルタコンデンサ電圧)EFC2を検出する電圧検出器23bを有する第2の駆動群と、が構成されている。なお、その他の構成については、図1に示す実施の形態1と同一であり、同一の構成部には同一の符号を付して共通する説明は省略する。また、図4では、インバータ制御部17および軽負荷回生制御演算部18の図示を省略しているが、センサ信号の入力形態や、制御信号の入出力形態についても、実施の形態1と同一もしくは同等である。
【0031】
図4の構成において、モータ15aに流れる電流と、モータ15bに流れる電流との総和が架線電流ISになるため、電流検出器21が1台しか存在しなくても実施の形態1と同様な軽負荷回生制御演算を行うことが可能となる。
【0032】
以上説明したように、実施の形態2に係る電気車制御装置では、電気車が複数台のモータを複数台の電力変換器で駆動する構成であるとき、各電力変換器には個々に対応せず共通的に設けられる回生制御演算部は、各電力変換器に対応するフィルタコンデンサ電圧と、電気車共通の架線電圧および架線電流とに基づいて電気車全体のトルク抑制量(第1、第2のトルク抑制量)を演算することとしたので、モータや電力変換器の台数が増えても電流検出器の数を増やす必要がなく、コスト削減に繋がるという効果が得られる。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態1,2では、電流検出器21を用いて架線電流ISを求める構成であった。一方、実施の形態3では、電流検出器21を用いることなく計算により架線電流ISを求める構成について説明する。
【0034】
図1の構成において、インバータ14の動作を制御するインバータ制御部17としては、モータ15の各相に流れる電流を検出してDQ変換し、変換された電流(D軸電流、Q軸電流)が、各電流指令(D軸電流指令、Q軸電流指令)に一致するように制御するベクトル制御が一般的である。インバータ制御部17が、このようなベクトル制御系で構成されるとき、架線電流ISは、架線電流検出器を設けることなく、次式を用いて算出することができる。
【0035】
IS=(I1QF×E1QR+I1DF×E1DR)/ES …(1)
【0036】
上式において、ESは架線電圧、I1QFはQ軸電流フィードバック、I1DFはD軸電流フィードバック、E1QRはQ軸電圧指令、E1DRはD軸電圧指令である。なお、架線電圧に代えてフィルタコンデンサ電圧を用いてもよい。
【0037】
軽負荷回生制御演算部18は、インバータ制御部17が算出した架線電流ISを受領する。その後の処理については、上記実施の形態1で説明した通りである。なお、実施の形態2のように複数の駆動群を有する構成の場合、各駆動群毎に電流値を求め、それら各電流値の総和を架線電流として算出することが可能である。
【0038】
以上説明したように、実施の形態3に係る電気車制御装置では、インバータ制御部には、モータの各相に流れる電流を検出してDQ変換し、変換されたD軸電流およびQ軸電流がそれぞれ、各軸の電流指令であるD軸電流指令およびQ軸電流指令に一致するように制御するベクトル制御系を有する構成であるとき、D軸電流、Q軸電流、D軸電流指令およびQ軸電流指令ならびに、架線電圧もしくはフィルタコンデンサ電圧を用いて架線電流を算出することとしたので、架線電流を検出する電流検出器を設ける必要がなく、コスト削減に繋がるという効果が得られる。
【0039】
なお、以上の実施の形態1〜3に示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明に係る電気車制御装置は、乗り心地を悪化させることなく、回生率の更なる向上を可能とする発明として有用である。
【符号の説明】
【0041】
10 架線
11 パンタグラフ
12,12a,12b 直流リアクトル
13,13a,13b フィルタコンデンサ
14,14a,14b インバータ
15,15a,15b モータ
16 速度検出器
17 インバータ制御部
18 軽負荷回生制御演算部
20 直流母線
21 電流検出器
22,23,23a,23b 電圧検出器
31 比例制御系(比例制御による軽負荷回生制御系)
32 回生電力制御系(回生電力による軽負荷回生制御系)
41,55 減算器
42 ゲインテーブル
43,53,56,60 乗算器
44,63 1次遅れ制御ブロック
51,58 絶対値演算部
52 過剰絞り込み防止ブロック
54,59,61 除算器
57 インバータ損失考慮テーブル
62 絞り込みゲインテーブル
68 加算器
71 入力切替器
72 比較器
VDTELM トルク抑制量
VECESL 比例制御による軽負荷回生リミッタ出力
WEFCLMP 回生電力による軽負荷回生リミッタ出力
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】

【手続補正書】
【提出日】20140123
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線から供給される電力を蓄積するフィルタコンデンサの直流電圧を所望の交流電圧に変換し負荷であるモータを駆動する電力変換器と、この電力変換器を制御する制御部と、前記モータが発生する回生電力を前記架線に戻すための制御演算を行う回生制御演算部と、を備えた電気車制御装置において、
前記回生制御演算部には、前記架線もしくは前記フィルタコンデンサの電圧に基づいて前記モータの回生トルクを抑制する第1のトルク抑制量を算出する第1の制御系と、
前記架線もしくは前記フィルタコンデンサのうちの何れかの電圧と前記架線に流れる電流とを用いて算出される回生電力と、トルク指令とに基づいて前記モータの回生トルクを抑制する第2のトルク抑制量を算出する第2の制御系と、が設けられ、
前記第1のトルク抑制量と、前記第2のトルク抑制量とに基づいて前記モータの回生トルクを制御することを特徴とする電気車制御装置。
【請求項2】
前記第2の制御系は、前記第2のトルク抑制量の元となる制御量として前記トルク指令と前記回生電力との差分値を用いることを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項3】
前記第2の制御系は、前記トルク指令の立ち上がり時において、前記トルク指令の入力を無効とする制御要素を有することを特徴とする請求項2に記載の電気車制御装置。
【請求項4】
前記第2の制御系は、前記第2のトルク抑制量の元となる制御量を前記架線もしくは前記フィルタコンデンサの電圧に応じて調整する制御要素を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電気車制御装置。
【請求項5】
前記回生電力は、前記電力変換器の損失分を考慮して算出されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電気車制御装置。
【請求項6】
電気車が複数台のモータを複数台の電力変換器で駆動する構成であるとき、
前記制御部および前記フィルタコンデンサの電圧を検出する電圧検出器は、前記各電力変換器に対応して個々に設けられ、
前記回生制御演算部、前記架線の電圧を検出する電圧検出器および前記架線に流れる電流を検出する電流検出器は、前記各電力変換器には個々に対応せずに共通的に設けられ、
前記回生制御演算部は、前記電気車全体のトルク抑制量を演算する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記モータの各相に流れる電流を検出してDQ変換し、変換されたD軸電流およびQ軸電流がそれぞれ、各軸の電流指令であるD軸電流指令およびQ軸電流指令に一致するように制御するベクトル制御系を有して構成され、
前記D軸電流、前記Q軸電流、前記D軸電流指令および前記Q軸電流指令ならびに、前記架線もしくはフィルタコンデンサの電圧を用いて前記架線に流れる電流を算出することを特徴とする請求項1に記載の電気車制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る電気車制御装置は、架線から供給される電力を蓄積するフィルタコンデンサの直流電圧を所望の交流電圧に変換し負荷であるモータを駆動する電力変換器と、この電力変換器を制御する制御部と、前記モータが発生する回生電力を前記架線に戻すための制御演算を行う回生制御演算部と、を備えた電気車制御装置において、前記回生制御演算部には、前記架線もしくは前記フィルタコンデンサの電圧に基づいて前記モータの回生トルクを抑制する第1のトルク抑制量を算出する第1の制御系と、前記架線もしくは前記フィルタコンデンサのうちの何れかの電圧と前記架線に流れる電流とを用いて算出される回生電力と、トルク指令とに基づいて前記モータの回生トルクを抑制する第2のトルク抑制量を算出する第2の制御系と、が設けられ、前記第1のトルク抑制量と、前記第2のトルク抑制量とに基づいて前記モータの回生トルクを制御することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
なお、この回生電力制御系32は、上述したような乗算および除算を数回繰り返す処理を行うと共に、ゲインテーブル42、インバータ損失考慮テーブル57および絞り込みゲインテーブル62による処理を行うため、比例制御系31に比べて制御系の応答速度は速くない。しかしながら、本実施の形態の軽負荷回生制御演算部18では、フィルタコンデンサ電圧EFCと基準電圧との偏差を制御量として回生トルク制御を行う応答速度の速い比例制御系31の出力と、応答速度は遅いが回生電力を制御量として回生トルク制御を行う回生電力制御系32の出力とを加算器68にて加算し、その加算値をトルク抑制量VDTELMとして出力する構成である。このため、本実施の形態の電気車制御装置を用いれば、回生トルクの絞り込みを精度よく、かつ、タイムリーに行うことが可能となる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
以上説明したように、実施の形態1に係る電気車制御装置によれば、架線電圧ESもしくはフィルタコンデンサ電圧EFCに基づいてモータ15の回生トルクを抑制する第1のトルク抑制量としての軽負荷回生リミッタ出力VECESLと、架線電圧ESもしくはフィルタコンデンサ電圧EFCのうちの何れかの電圧および架線電流ISを用いて算出される回生電力Prと、トルク指令としてのトルクパターンPTRNとに基づいてモータ15の回生トルクを抑制する第2のトルク抑制量としての軽負荷回生リミッタ出力WEFCLMPと、に基づいてモータ15の回生トルクを制御することとしたので、回生率の更なる向上が可能になるという効果が得られる。
【国際調査報告】