(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013105651
(43)【国際公開日】20130718
【発行日】20150511
(54)【発明の名称】化学品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/08 20060101AFI20150414BHJP
   C12P 7/56 20060101ALI20150414BHJP
   C12P 7/18 20060101ALI20150414BHJP
【FI】
   !C12P7/08
   !C12P7/56
   !C12P7/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
【出願番号】2013501473
(21)【国際出願番号】JP2013050435
(22)【国際出願日】20130111
(31)【優先権主張番号】2012005255
(32)【優先日】20120113
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏治
【住所又は居所】神奈川県鎌倉市手広6丁目10番1号 東レ株式会社基礎研究センター内
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 志緒美
【住所又は居所】神奈川県鎌倉市手広6丁目10番1号 東レ株式会社基礎研究センター内
(72)【発明者】
【氏名】磯部 匡平
【住所又は居所】神奈川県鎌倉市手広6丁目10番1号 東レ株式会社基礎研究センター内
(72)【発明者】
【氏名】澤井 健司
【住所又は居所】神奈川県鎌倉市手広6丁目10番1号 東レ株式会社基礎研究センター内
(72)【発明者】
【氏名】羅 景洙
【住所又は居所】神奈川県鎌倉市手広6丁目10番1号 東レ株式会社基礎研究センター内
(72)【発明者】
【氏名】平松 紳吾
【住所又は居所】神奈川県鎌倉市手広6丁目10番1号 東レ株式会社基礎研究センター内
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝成
【住所又は居所】神奈川県鎌倉市手広6丁目10番1号 東レ株式会社基礎研究センター内
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AC03
4B064AC05
4B064AD33
4B064CA01
4B064CA02
4B064CB01
4B064CC03
4B064CC15
4B064DA16
(57)【要約】
要約
[課題]六炭糖と五炭糖の混合糖を発酵原料とした高収率の化学品の製造方法を提供すること。
[解決手段]微生物の培養液を分離膜で濾過すること、未濾過液を培養液に保持または還流すること、発酵原料を培養液に追加すること、および濾過液中の生産物を回収することを含む、連続発酵による化学品の製造方法であって、前記微生物がカタボライト抑制を受ける微生物であり、前記発酵原料が六炭糖および五炭糖を含む、化学品の製造方法を提供した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の培養液を分離膜で濾過すること、未濾過液を培養液に保持または還流すること、発酵原料を培養液に追加すること、および濾過液中の生産物を回収することを含む、連続発酵による化学品の製造方法であって、前記微生物がカタボライト抑制を受ける微生物であり、前記発酵原料が六炭糖および五炭糖を含む、化学品の製造方法。
【請求項2】
前記濾過液総量の五炭糖の濃度が5g/L以下である、請求項1に記載の化学品の製造方法。
【請求項3】
前記発酵原料中に含まれる六炭糖と五炭糖の重量比率が1:9〜9:1である、請求項1または2に記載の化学品の製造方法。
【請求項4】
前記発酵原料がバイオマス由来の糖液を含む、請求項1または2に記載の化学品の製造方法。
【請求項5】
前記五炭糖がキシロースである、請求項1から4のいずれかに記載の化学品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六炭糖および五炭糖を含む発酵原料を使用した連続発酵による化学品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸などの生分解性ポリマー原料やエタノールなどのバイオ燃料に代表されるバイオマス由来の化学品は、大気中への二酸化炭素の排出問題やエネルギー問題の顕在化と共にサスティナビリティー(持続可能性)およびライフサイクルアセスメント(LCA)対応型製品として強い注目を浴びている。これら生分解性ポリマー原料やバイオ燃料の製造方法としては、とうもろこしなどの可食性バイオマスから精製した六炭糖であるグルコースを微生物の発酵原料に使用し、発酵産物として得るのが一般的であるが、可食性バイオマスを使用すると、食料と競合することから価格高騰が引き起こされ、安定した原料の調達ができなくなる恐れがある。そこで、稲わらなどの非可食性バイオマス由来の糖を微生物の発酵原料に使用する試みが行われている(特許文献1参照。)。
【0003】
非可食性バイオマス由来の糖を発酵原料に使用する際には、非可食バイオマスに含まれるセルロース、ヘミセルロースなどを糖化酵素によって糖に分解するが、この際にグルコースなどの六炭糖だけではなく、キシロースなどの五炭糖も同時に得られ、非可食性バイオマス由来の糖を微生物の発酵原料に使用する場合、六炭糖と五炭糖の混合糖を発酵原料として使用することになる(特許文献1参照。)。
【0004】
六炭糖と五炭糖の混合糖である非可食性バイオマス由来の糖を微生物の発酵原料とした発酵方法としては連続発酵が採用されうるが、実際に連続発酵した場合の発酵収率については確認されていない(特許文献1参照。)。一方で、六炭糖と五炭糖の混合糖を発酵原料として連続発酵する場合、培地が連続的に発酵に利用されるため、バッチ発酵の場合よりもカタボライト抑制を連続的に受けることによってバッチ発酵よりも発酵収率が著しく低下してしまうことも知られている(非特許文献1参照。)。したがって、六炭糖と五炭糖の混合糖を微生物の発酵原料とした連続発酵によって発酵収率を向上させようとする場合、カタボライト抑制を受けないような微生物を用いる必要があると考えるのがこれまでの技術常識であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2010/067785
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Do Yun Kim,Seong Chun Yim,Pyung Cheon Lee,Woo Gi Lee,Sang Yup Lee,Ho Nam Chang,Batch and continuous fermentation of succinic acid from wood hydrolysate by Mannheimia succiniciproducens MBEL55E,Enzyme and Microbial Technology,35,(2004),648−653.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生分解性ポリマー原料やバイオ燃料を発酵生産する微生物として、カタボライト抑制を受けるものが数多く知られている。一方、前述のとおり、六炭糖と五炭糖の混合糖を微生物の発酵原料として連続発酵をした場合には、カタボライト抑制により発酵収率が著しく低下してしまうことが知られている。そこで本発明は、六炭糖と五炭糖の混合糖をカタボライト抑制を受ける微生物の発酵原料として連続発酵する場合の発酵収率の向上を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を鋭意検討した結果、六炭糖と五炭糖の混合糖を微生物の発酵原料として連続発酵する化学品の製造方法において、カタボライト抑制を有する微生物を、分離膜を用いた連続発酵を行なうことで上記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(5)の通りである。
(1)微生物の培養液を分離膜で濾過すること、未濾過液を培養液に保持または還流すること、発酵原料を培養液に追加すること、および濾過液中の生産物を回収することを含む、連続発酵による化学品の製造方法であって、前記微生物がカタボライト抑制を受ける微生物であり、前記発酵原料が六炭糖および五炭糖を含む、化学品の製造方法。
(2)前記濾過液総量の五炭糖の濃度が5g/L以下である、(1)に記載の化学品の製造方法。
(3)前記発酵原料中に含まれる六炭糖と五炭糖の重量比率が1:9〜9:1である、(1)または(2)に記載の化学品の製造方法。
(4)前記発酵原料がバイオマス由来の糖液を含む、(1)または(2)に記載の化学品の製造方法。
(5)前記五炭糖がキシロースである、(1)から(4)のいずれかに記載の化学品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、六炭糖と五炭糖の混合糖をカタボライト抑制を受ける微生物の発酵原料とするにもかかわらず、化学品を高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、微生物を発酵原料で培養して化学品を発酵生産する化学品の製造方法において、培養液を分離膜で濾過し未濾過液を培養液に保持または還流し、かつ、発酵原料を培養液に追加して濾過液中の生産物を回収する連続発酵する化学品の製造方法であって、カタボライト抑制を受ける前記微生物を用い、かつ、前記発酵原料が六炭糖および五炭糖を含むことを特徴とする化学品の製造方法である。
【0012】
本発明の化学品の製造方法においては、発酵原料の炭素源には五炭糖と六炭糖を含む混合糖が含まれる。五炭糖とは、糖を構成する炭素の数が5つのものであり、ペントース(Pentose)とも呼ばれる。1位にアルデヒド基をもつアルドペントースと2位にケトン基をもつケトペントースがある。アルドペントースとしては、キシロース、アラビノース、リボース、リキソースが挙げられ、ケトペントースとしては、リブロース、キシルロースが挙げられる。本発明で用いる五炭糖としては、微生物が資化できるものであればいずれでも良いが、自然界での存在割合や入手のしやすさなどの観点から、好ましくはキシロース、アラビノースであり、より好ましくはキシロースである。
【0013】
六炭糖とは、糖を構成する炭素の数が6つのものであり、ヘキソース(Hexose)とも呼ばれる。1位にアルデヒド基をもつアルドースと2位にケトン基をもつケトースがある。アルドースとしては、グルコース、マンノース、ガラクトース、アロース、グロース、タロースなどが挙げられ、ケトースとしては、フルクトース、プシコース、ソルボースなどが挙げられる。本発明で用いる六炭糖としては、微生物が資化できるものであればいずれでも良いが、自然界での存在割合や入手のしやすさなどの観点から、好ましくはグルコース、マンノース、ガラクトースであり、より好ましくはグルコースである。
【0014】
本発明で使用される混合糖に関しては特に限定されないが、六炭糖と五炭糖を両方含むことが知られているセルロース含有バイオマス由来糖液が好ましく使用される。セルロース含有バイオマスには、バガス、スイッチグラス、コーンストーバー、稲わら、麦わらなど草木系バイオマスと、樹木、廃建材などの木質系バイオマスなどを例として挙げることができる。セルロース含有バイオマスは、糖が脱水縮合した多糖であるセルロースあるいはヘミセルロースを含有しており、こうした多糖を加水分解することで発酵原料として利用可能な糖液が製造される。セルロース含有バイオマス由来糖液の調製方法は、どのような方法であってもよく、こうした糖の製造方法としては、濃硫酸を使用してバイオマスを酸加水分解して糖液を製造する方法(特表平11−506934号公報、特開2005−229821号公報)、バイオマスを希硫酸で加水分解処理した後に、さらにセルラーゼなどの酵素処理することより糖液を製造する方法が開示されている(A.Adenら、“LignocellulosicBiomass to Ethanol Process Design and Economics Utilizing Co−Current Dilute Acid Prehydrolysis and Enzymatic Hydrolysis for Corn Stover”NREL Technical Report(2002))。また酸を使用しない方法として、250〜500℃程度の亜臨界水を使用しバイオマスを加水分解して糖液を製造する方法(特開2003−212888号公報)、またバイオマスを亜臨界水処理した後に、さらに酵素処理することにより糖液を製造する方法(特開2001−95597号公報)、バイオマスを240〜280℃の加圧熱水で加水分解処理した後に、さらに酵素処理することにより糖液を製造する方法(特許3041380号公報)が開示されている。以上のような処理の後、得られた糖液を精製してもよい。その方法は、例えばWO2010/067785に開示されている。
【0015】
混合糖に含まれる五炭糖と六炭糖の重量比率は特に制限はないが、混合糖中の五炭糖と六炭糖の重量比率として(五炭糖):(六炭糖)と表すと、1:9〜9:1が好ましい。これは、混合糖としてセルロース含有バイオマス由来糖液を想定した場合の糖比率である。
【0016】
本発明に使用する発酵原料に含まれる総糖濃度は特に制限されず、微生物の化学品の生産を阻害しない範囲であれば可能な限り高い濃度であることが好ましい。具体的には、培地中の炭素源の濃度は、15〜500g/Lが好ましく、20〜300g/Lがより好ましい。総濃度が15g/L以下であると、五炭糖からの収率向上の効果が低下してしまうことがある。また、総糖濃度が低いと化学品の生産効率も低下してしまう。
【0017】
本発明に使用する発酵原料に含まれる六炭糖濃度は、上記の総糖濃度、五炭糖と六炭糖の割合の範囲において特に限定されないが、本発明の化学品の製造方法を用いれば、六炭糖を濃度5g/L以上含む混合糖液においても良好な収率を得ることができる。
【0018】
本発明で使用する発酵原料は、炭素源、窒素源、無機塩類、および必要に応じてアミノ酸、およびビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する通常の液体培地が良い。
【0019】
本発明で使用する窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば、油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩およびマンガン塩等を適宜添加使用することができる。
【0020】
本発明で使用される微生物が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物を標品もしくはそれを含有する天然物として添加する。また、消泡剤も必要に応じて使用する。本発明において、培養液とは、発酵原料に微生物が増殖した結果得られる液のことを言う。追加する発酵原料の組成は、目的とする化学品の生産性が高くなるように、培養開始時の発酵原料組成から適宜変更しても良い。
【0021】
次に、本発明において分離膜として用いられる多孔性膜について説明する。
【0022】
本発明に用いる多孔質膜については特に制限はなく、微生物の撹拌型培養器あるいは撹拌型バイオリアクターによる培養で得られた培養液を微生物から分離濾過する機能を有するものであればよく、例えば多孔質セラミック膜、多孔質ガラス膜、多孔質有機高分子膜、金属繊維編織体、不織布などを用いることができる。これらの中で特に多孔質有機高分子膜もしくはセラミック膜が好適である。
【0023】
本発明で分離膜として用いられる多孔性膜の構成について説明する。本発明で用いられる多孔性膜は、好ましくは、被処理水の水質や用途に応じた分離性能と透水性能を有するものである。
【0024】
多孔性膜は、阻止性能および透水性能や分離性能、例えば、耐汚れ性の点から、多孔質樹脂層を含む多孔性膜であることが好ましい。
【0025】
多孔質樹脂層を含む多孔性膜は、好ましくは、多孔質基材の表面に、分離機能層として作用とする多孔質樹脂層を有している。多孔質基材は、多孔質樹脂層を支持して分離膜に強度を与える。
【0026】
本発明で用いられる多孔性膜が、多孔質基材の表面に多孔質樹脂層を有している場合、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していても、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していなくてもどちらでも良く、用途に応じて選択される。
【0027】
多孔質基材の平均厚みは、好ましくは50μm以上3000μm以下である。
【0028】
多孔質基材の材質は、有機材料および/または無機材料等からなり、有機繊維が望ましく用いられる。好ましい多孔質基材は、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維およびポリエチレン繊維などの有機繊維なる織布や不織布であり、より好ましくは、密度の制御が比較的容易であり製造も容易で安価な不織布が用いられる。
【0029】
多孔質樹脂層は、有機高分子膜を好適に使用することができる。有機高分子膜の材質としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられる。有機高分子膜は、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。ここで主成分とは、その成分が50重量%以上、好ましくは60重量%以上含有することをいう。有機高分子膜の材質は、溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびポリアクリロニトリル系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とする樹脂が最も好ましく用いられる。
【0030】
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられる。さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体も好ましく用いられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
【0031】
本発明で分離膜として使用される多孔性膜は、特に制限はなく、発酵に使用される微生物が通過できなければよいが、発酵に使用される微生物の分泌物や発酵原料中の微粒子による目詰まりを起こりにくく、かつ、濾過性能が長期間安定に継続する範囲であることが望ましい。よって、多孔性分離膜の平均細孔径が、0.01μm以上5μm未満であることが好ましい。また、さらに好ましくは、多孔性膜の平均細孔径が、0.01μm以上1μm未満であると、微生物がリークすることのない高い排除率と、高い透水性を両立させることができ、透水性を長時間保持することが、より高い精度と再現性を持って実施することができる。
【0032】
微生物の大きさに近いと、これらが直接孔を塞いでしまう場合があるので、多孔性膜の平均細孔径は1μm未満であることが好ましい。多孔性膜の平均細孔径は、微生物の漏出、すなわち排除率が低下する不具合の発生を防止するため、微生物の大きさと比較して大きすぎないことが好ましい。微生物のうち、細胞の小さい細菌などを用いる場合には、平均細孔径として0.4μm以下が好ましく、0.2μm未満であればより好適に実施することができる。
【0033】
また、微生物が所望の生産物である化学品以外の物質、例えば、タンパク質や多糖類など凝集しやすい物質を生産する場合があり、更に、発酵培養液中の微生物の一部が死滅することにより細胞の破砕物が生成する場合があり、これらの物質による多孔性膜の閉塞を回避するために、平均細孔径は0.1μm以下であることがさらに好適である。
【0034】
平均細孔径が小さすぎると多孔性膜の透水性能が低下し、膜が汚れていなくても効率的な運転ができなくなるため、本発明における多孔性膜の平均細孔径は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは0.04μm以上である。
【0035】
ここで、平均細孔径は、倍率10,000倍の走査型電子顕微鏡観察における、9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔すべての直径を測定し、平均することにより求めることができる。平均細孔径は、あるいは、膜表面を走査型電子顕微鏡を用いて倍率10,000倍で写真撮影し、10個以上、好ましくは20個以上の細孔を無作為に選び、それら細孔の直径を測定し、数平均して求めることもできる。細孔が円状でない場合、画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円(等価円)を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求めることができる。
【0036】
本発明で用いられる多孔性膜の平均細孔径の標準偏差σは、0.1μm以下であることが好ましい。平均細孔径の標準偏差σは小さければ小さい方が望ましい。平均細孔径の標準偏差σは、上述の9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔数をNとして、測定した各々の直径をXとし、細孔直径の平均をX(ave)とした下記の(式1)により算出される。
【0037】
【数1】
【0038】
本発明で用いられる多孔性膜においては、発酵培養液の透過性が重要な性能の一つである。多孔性膜の透過性の指標として、使用前の多孔性膜の純水透過係数を用いることができる。本発明において、多孔性膜の純水透過係数は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで透水量を測定し算出したとき、5.6×10−10/m/s/pa以上であることが好ましく、純水透過係数が、5.6×10−10/m/s/pa以上6×10−7/m/s/pa以下であれば、実用的に十分な透過水量が得られる。
【0039】
本発明で用いられる多孔性膜において、表面粗さとは、表面に対して垂直方向の高さの平均値である。膜表面粗さは、分離膜表面に付着した微生物が、撹拌や循環ポンプによる液流による膜面洗浄効果で剥離しやすくするための因子の一つである。多孔性膜の表面粗さは、特に制限はなく、膜に付着した微生物、ならびにその他の固形物が剥がれる範囲であればよいが、0.1μm以下であることが好ましい。表面粗さが0.1μm以下であると、膜に付着した微生物、ならびにその他の固形物が剥がれやすくなる。
【0040】
さらに好ましくは、多孔性膜の膜表面粗さが0.1μm以下であり、平均細孔径が0.01μm以上1μm未満であり、多孔性膜の純水透過係数が2×10−9/m/s/pa以上の多孔性膜を使用することにより、膜面洗浄に必要な動力を過度に必要としない運転が、より容易に可能であることがわかった。多孔性膜の表面粗さを、0.1μm以下とすることにより、微生物の濾過において、膜表面で発生する剪断力を低下させることができ、微生物の破壊が抑制され、多孔性膜の目詰まりも抑制されることにより、長期間安定な濾過が、より容易に可能になる。また、多孔性膜の表面粗さを、0.1μm以下とすることにより、より低い膜間差圧で連続発酵が実施可能であり、多孔性膜が目詰まりした場合でも高い膜間差圧で運転した場合に比べて、洗浄回復性が良好である。多孔性膜の目詰まりを抑えることにより、安定した連続発酵が可能になることから、多孔性膜の表面粗さは小さければ小さいほど好ましい。
【0041】
ここで、多孔性膜の膜表面粗さは、下記の原子間力顕微鏡装置(AFM)を使用して、下記の条件で測定したものである。
・装置 原子間力顕微鏡装置(Digital Instruments(株)製“Nanoscope IIIa”)
・条件 探針 SiNカンチレバー(Digital Instruments(株)製)
走査モード コンタクトモード(気中測定)
水中タッピングモード(水中測定)
走査範囲 10μm、25μm四方(気中測定)
5μm、10μm四方(水中測定)
走査解像度 512×512
・試料調製 測定に際し膜サンプルは、常温でエタノールに15分浸漬後、RO水中に24時間浸漬し洗浄した後、風乾し用いた。RO水とは、濾過膜の一種である逆浸透膜(RO膜)を用いて濾過し、イオンや塩類などの不純物を排除した水を指す。RO膜の孔の大きさは、概ね2nm以下である。
【0042】
膜表面粗さdroughは、上記の原子間力顕微鏡装置(AFM)により各ポイントのZ軸方向の高さから、下記の(式2)により算出する。
【0043】
【数2】
【0044】
本発明で用いられる多孔性膜の形状は、好ましくは平膜である。多孔性膜の形状が平膜の場合、その平均厚みは用途に応じて選択される。多孔性膜の形状が平膜の場合の平均厚みは、好ましくは20μm以上5000μm以下であり、より好ましくは50μm以上2000μm以下である。また、本発明で用いられる多孔性膜の形状は、好ましくは中空糸膜である。多孔性膜が中空糸膜の場合、中空糸の内径は、好ましくは200μm以上5000μm以下であり、膜厚は、好ましくは20μm以上2000μm以下である。また、有機繊維または無機繊維を筒状にした織物や編物を中空糸の内部に含んでいても良い。
【0045】
なお、前述の多孔性膜は、例えばWO2007/097260に記載される製造方法により製造することができる。
【0046】
また、別の好ましい形態として、本発明における分離膜は、少なくともセラミックスを含む膜であり得る。本発明におけるセラミックスとは金属酸化物を含有し、高温での熱処理により焼き固められたものをさす。金属酸化物としては、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニアなどが例示できる。分離膜は金属酸化物のみから形成されてもよく、シリカや炭化珪素、シリカと金属酸化物の化合物であるムライトやコージェライトなどを含んでもよい。
【0047】
分離膜を形成するセラミックス以外の成分は、分離膜としての多孔質体をなすことができるものであれば特に限定されない。
【0048】
分離膜がセラミックスを含む場合もその形状には特に制限はなく、モノリス膜、平膜、管状膜などいずれも用いることができる。容器内への充填効率の観点から柱状構造であり、長手方向に貫通孔を有する構造のものが好ましい。充填効率が上げられる点から、好ましくはモノリス膜である。
【0049】
長手方向に貫通孔を有することが好ましい理由は以下のとおりである。柱状構造を有する分離膜をモジュール容器に収めて分離膜モジュールとして用いる場合は、分離膜は外圧式および内圧式のうちから好適な態様を選択してモジュール化、濾過することが可能となる。本発明においては、これ以降、分離膜が発酵培養液と接する側を1次側、濾過により化学品を含む濾液が得られる側を2次側とそれぞれ呼ぶこととする。
【0050】
内圧式モジュールを用いると、1次側の流路が狭いため、クロスフロー濾過を行う場合に循環ポンプの出力が節約できる。さらに、分離膜表面に堆積した濁質をモジュール外に排出する作用が強くなり、分離膜表面が清浄に保たれやすいため好ましい。ただし、この効果を得るためには、内圧式の分離膜が発酵培養液の入り口および出口を有していることが前提となる。このときの入り口および出口は一直線に配された貫通孔の状態であると、通液抵抗が小さくなるため好ましい。さらに分離膜が柱状構造で、貫通孔が長手方向に空いていることによって、分離膜を収める容器を細くすることが可能となる。分離膜モジュールが細いと、製造や取り扱いの観点から好ましく用いることが出来る。
【0051】
分離膜の気孔率は特に限定されないが、低すぎると濾過効率が悪くなり、高すぎると強度が低下してしまう。濾過効率と分離膜の強度を両立させ、繰り返し蒸気滅菌への耐性も持たせるためには、20%以上60%以下であることが好ましい。
【0052】
なお気孔率は、以下の式より決定される。
気孔率[%]=100×(湿潤膜重量[g]−乾燥膜重量[g])/水比重[g/cm]/(膜体積[cm])。
【0053】
分離膜の平均気孔径は0.01μm以上1μm以下であれば好ましく、この範囲の平均気孔径を有する膜であれば分離膜が閉塞しにくく、かつ濾過効率にも優れる。また、平均気孔径が0.02μm以上0.2μm以下の範囲であれば、タンパク質、多糖類などに例示される微生物や培養細胞による発酵の副生成物や、培養液中の微生物/培養細胞が死滅して生じる細胞破砕物といった、分離膜を閉塞させやすい物質の閉塞が起きにくくなるため特に好ましい。
【0054】
貫通孔を有する柱状構造の分離膜は、外表面が2次側となるため、濾過液を集めるためにモジュール容器を設け、モジュール容器内に分離膜を充填したモジュールとして用いることが好ましい。1本のモジュールに充填される分離膜は1本以上である。
【0055】
モジュール容器は、繰り返しの蒸気滅菌処理に耐えうる原料からなることが好ましい。蒸気滅菌処理に耐えうる原料としては、たとえばステンレス鋼や、平均気孔率の低いセラミックスなどが例示される。
【0056】
このようなセラミック膜モジュールは、例えばWO2012/086763に記載される製造方法により製造することができるが、市販のものを利用することもできる。市販のものとして具体的に例示すると、MEMBRALOX精密ろ過膜(Pall)、セラミック膜フィルターセフィルトMF膜(日本ガイシ)などが挙げられる。
【0057】
次に、連続発酵について説明する。
【0058】
本発明の化学品の製造方法においては、濾過時の膜間差圧は特に制限されることはなく、発酵培養液を濾過できればよい。しかし、培養液を濾過するために、有機高分子膜において150kPaより高い膜間差圧で濾過処理すると、有機高分子膜の構造が破壊される可能性が高くなり、化学品を生産する能力が低下することがある。また、0.1kPaより低い膜間差圧では、発酵培養液の透過水量が十分得られない場合があり、化学品を製造するときの生産性が低下する傾向がある。したがって、本発明の化学品の製造方法では、有機高分子膜においては、濾過圧力である膜間差圧を好ましくは0.1kPaから150kPaの範囲とすることにより、発酵培養液の透過水量が多く、膜の構造の破壊による化学品製造能力の低下もないことから、化学品を生産する能力を高く維持することが可能である。膜間差圧は、有機高分子膜においては、好ましくは0.1kPa以上50kPa以下の範囲であり、さらに好ましくは0.1kPa以上20kPa以下の範囲である。
【0059】
セラミック膜を用いる場合においても、濾過時の膜間差圧は特に制限されることはなく、発酵培養液を濾過できればよいが、500kPa以下が好ましい。500kPa以上で運転すると、膜の目詰まりが発生し、連続発酵運転に不具合を生じることがある。
【0060】
濾過の駆動力としては、発酵液と多孔性膜処理水の液位差(水頭差)を利用したサイホン、またはクロスフロー循環ポンプにより分離膜に膜間差圧を発生させることができる。また、濾過の駆動力として分離膜2次側に吸引ポンプを設置してもよい。また、クロスフロー循環ポンプを使用する場合には、吸引圧力により膜間差圧を制御することができる。更に、発酵液側の圧力を導入する気体または液体の圧力によっても膜間差圧を制御することができる。これら圧力制御を行う場合には、発酵液側の圧力と多孔性膜処理水側の圧力差をもって膜間差圧とし、膜間差圧の制御に用いることができる。
【0061】
本発明では、分離膜を透過した濾過液総量の五炭糖の濃度が5g/l以下に保持されることが好ましい。六炭糖と五炭糖の混合糖を含む発酵原料を使用して、カタボライト抑制を受ける微生物を用いて連続発酵を行うと、培地が連続的に発酵に利用されるため、バッチ発酵の場合よりもカタボライト抑制を連続的に受け、その結果、五炭糖のみが培養液中に大量に残り、生産収率が低下してしまうが、本発明では、連続発酵に分離膜を使用することでカタボライト抑制を受ける微生物を用いても濾過液総量の五炭糖濃度を5g/l以下に保持することができ、その結果、分離膜を使用しない連続発酵に比べて化学品の生産収率を向上することができる。分離膜で得られた濾過液総量に五炭糖が5g/l以上残ってしまうと、五炭糖からの収率向上の効果が低下してしまうことがあり、その結果、生産収率も低下してしまうことがある。なお、ここで言う生産収率とは、連続培養における生産収率であり、次の(式3)で計算され、ある一定期間内で原料炭素源を消費し生成された化学品量(g)を、その期間の投入炭素源量(g)で除して求められる。この際に、生産物を生産するのに利用されなかった糖も、投入炭素源量の中に計算される。
生産収率(g/g)=生産物量(g)÷投入炭素源量(g)・・・(式3)。
【0062】
濾過液総量の五炭糖の濃度は培養条件によって調節することができる。例えば、発酵原料中に含まれる糖の濃度、糖の供給速度や希釈率を変化させることで、濾過液総量の五炭糖の濃度を減らすことも可能である。あるいは、発酵原料中に含まれる栄養源を増加させることで、微生物の糖の消費を向上させ、濾過液総量の五炭糖の濃度を減らすことも可能である。
【0063】
本発明において、微生物の発酵培養において、pH、温度は微生物が生育する範囲であれば特に限定されないが、pHが4〜8で温度が20〜75℃の範囲で行われるのが好ましい。培養液のpHは、無機あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウム、アンモニアガスなどによって、通常、pH4〜8範囲内のあらかじめ定められた値に調節する。酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、あるいは培養液を加圧する、攪拌速度を上げる、通気量を上げるなどの手段を用いることができる。
【0064】
また、本発明の化学品の製造方法では、培養初期にバッチ培養またはフェドバッチ培養を行って微生物濃度を高くした後に、連続発酵(培養液の濾過)を開始しても良い。また、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続発酵を行っても良い。本発明の化学品の製造方法では、適当な時期から、培地供給および培養液の濾過を行うことが可能である。培地供給と培養液の濾過の開始時期は、必ずしも同じである必要はない。また、培地供給と培養液の濾過は連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。
【0065】
原料培養液には、菌体増殖に必要な栄養素を添加し、菌体増殖が連続的に行われるようにすればよい。培養液中の微生物の濃度は、化学品の生産性を高い状態で維持することが効率よい生産性を得るのに好ましい。培養液中の微生物の濃度は、一例として、乾燥重量として、5g/L以上に維持することで良好な生産効率が得られる。
【0066】
本発明の化学品の製造方法では、連続発酵の途中において必要に応じて、発酵槽内から微生物を含んだ培養液の一部を取り除いた上、培地で希釈することによって、培養槽内の微生物濃度を調整してもよい。例えば、発酵槽内の微生物濃度が高くなりすぎると、分離膜の閉塞が発生しやすくなることから、微生物を含んだ培養液の一部を取り除き、培地で希釈することで、閉塞から回避することができることがある。また、発酵槽内の微生物濃度によって化学品の生産性能が変化することがあり、生産性能を指標として、微生物を含んだ培養液の一部を取り除いて培地で希釈することで生産性能を維持させることも可能である。
【0067】
本発明の化学品の製造方法では、菌体を増殖しつつ生産物を生成する連続発酵培養法であれば、発酵槽の数は問わない。
【0068】
本発明では、従来のバッチ培養と比較して、高い体積生産速度が得られ、極めて効率のよい連続発酵生産が可能となる。ここで、連続発酵培養における生産速度は、次の式(4)で計算される。
発酵生産速度(g/L/hr)=濾液中の生産物濃度(g/L)×発酵培養液抜き取り速度(L/hr)÷装置の運転液量(L)・・・(式4)。
【0069】
また、バッチ培養での発酵生産速度は、原料炭素源をすべて消費した時点の生産物量(g)を、炭素源の消費に要した時間(hr)とその時点の発酵培養液量(L)で除して求められる。
【0070】
また、連続培養における収率は、次の式(5)で計算され、ある一定期間内で原料炭素源を消費し生成された化学品量(g)を、その期間の投入炭素源量(g)から微生物が利用できなかった未利用炭素源量(g)を引いた値で除して求められる。本明細書で言う収率とは、特に断らない限りこのことを指す。
収率(g/g)=生産物量(g)÷{投入炭素源量(g)−未利用炭素源量(g)}・・・・(式5)。
【0071】
本発明で用いられる連続発酵装置は、微生物の発酵培養液を分離膜で濾過し、濾液から生産物を回収するとともに未濾過液を前記の発酵培養液に保持または還流し、かつ、発酵原料を前記の発酵培養液に追加して濾過液中の生産物を回収する連続発酵による化学品の製造装置であれば特に制限はないが、具体例を挙げると、有機高分子膜を使用する際は、WO2007/097260に記載される装置が使用できる。また、セラミック膜を使用する際は、WO2012/086763に記載される装置が使用できる。
【0072】
次に、本発明の化学品の製造方法に用いることができる微生物について説明する。
【0073】
本発明で用いられるカタボライト抑制を受ける微生物とは、一般に五炭糖を資化する微生物を発酵する際に、六炭糖と五炭糖を含む混合糖を含む発酵原料を使用すると、五炭糖の消費が抑えられてしまう微生物のことを言うが、本発明においてはより具体的に、グルコースとキシロースの資化能を有する微生物を使用したバッチ培養において、キシロース単独の培地でのキシロースの消費速度よりも、グルコースとキシロースを含む混合糖の培地でのキシロースの消費速度が遅い微生物について「カタボライト抑制を受ける微生物である」と言う。
【0074】
ここで、キシロース単独の培地でのキシロースの消費速度とは、下記の(式6)により算出される。
キシロースの消費速度(g/L/hr)=培養開始時の発酵原料に含まれる総キシロース量(g)÷培養開始から発酵原料に含まれるキシロースを完全に消費し尽くすまでに費やした時間(hr)÷発酵液量(L)・・・(式6)。
【0075】
また、グルコースとキシロースを含む混合糖の培地でのキシロースの消費速度とは、グルコースとキシロースを含む混合糖の培地でのグルコース存在下でのキシロースの消費速度のことであり、下記の(式7)により算出される。
キシロースの消費速度(g/L/hr)=培養開始時から時間Tまでに消費されたキシロース量(g)÷培養開始から時間Tまでの時間(hr)÷発酵液量(L)・・・(式7)。
【0076】
(式6)および(式7)において、キシロースの消費速度を算出する際、混合糖でのグルコースとキシロースの重量比率は1:1で行なう。また、キシロースの消費速度を比較する際、糖濃度は微生物が残存糖なく完全に消費できる濃度であれば特に限定されない。また、キシロース単独の培地でのキシロースの糖濃度と、グルコースとキシロースを含む混合糖の培地での総糖濃度は同じにする。
【0077】
また(式7)において、時間Tはグルコースが完全に消費された時間である。時間Tは、サンプリングした培養液をHPLCまたはキット、センサーによりグルコース濃度を測定し、求めることができる。ただし、グルコースが完全に消費された時間が、キシロースが完全に消費された時間よりも遅い場合は、時間Tはキシロースが完全に消費された時間とする。この場合においても時間Tはグルコース濃度の測定方法と同様に、キシロース濃度を測定することで求めることができる。また、培養中に中和剤添加やサンプリングなどで発酵液量が変化した場合は、培養液に追加した液量または減らした液量を考慮して計算を行うものとする。
【0078】
カタボライト抑制を受ける微生物は、発酵工業においてよく使用されるパン酵母などの酵母、大腸菌、コリネ型細菌などのバクテリア、糸状菌、放線菌などから選択され、具体例として、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属、パチソレン(Pachysolen)属、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、ハンセヌラ属(Hansenula)トルロプシス属(Torulopsis)、デバリオミセス属(Debaryomyces)、イッサチェンキア属(Issachenkia)、ブレタノミセス属(Brettanomyces)、リンドネラ属(Lindnera)、ウィッカーハモミセス属(Wickerhamomyces)などの酵母、クロストリジウム(Clostridium)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エシェリシア(Escherichia)属、クレブシエラ(Klebsiella)属などの腸内細菌類や、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属などの乳酸菌類、またアクチノプラネス(Actinoplanes)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属などの放線菌類やバチルス(Bacillus)属、パエニバチルス(Paenibacillus)属、アエロバクター(Aerobacter)属、アンプラリエラ(Ampullariella)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属、サーマス(Thermus)属に属する微生物から選択されうる。
【0079】
また、カタボライト抑制を受ける微生物は、自然環境から単離されたものであっても、本来五炭糖を資化しないが突然変異や遺伝子組換えによって五炭糖を資化するように改変された微生物からも選択されうる。遺伝子組換えによって五炭糖を資化するように改変された微生物の具体例としては、遺伝子組換えにより五炭糖の代謝遺伝子を導入あるいは強化された微生物が挙げられる。特に、五炭糖のなかでもキシロースの代謝遺伝子については、キシロースイソメラーゼ、キシロースレダクターゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ、キシルロースキナーゼなどの酵素が例示され、こうした遺伝子組換え手法によりキシロースの資化性を付与された微生物としては、特表2006−525029号公報、特開2009−112289号公報、特表2010−504756号公報などに記載された微生物を例示できる。
【0080】
本発明により製造される化学品としては、上記微生物が発酵培養液中に生産する物質であれば制限はなく、アルコール、有機酸、アミノ酸、核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。例えば、アルコールとしては、エタノール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロール、ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、イソプロパノールなど、有機酸としては、酢酸、乳酸、アジピン酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、核酸であれば、イノシン、グアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチド、また、カタベリンなどのジアミン化合物を挙げることができる。また、本発明は、酵素、抗生物質、組み換えタンパク質のような物質の生産に適用することも可能である。これら化学品は周知の方法(膜分離、濃縮、蒸留、晶析、抽出等)により濾過液より回収することができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
(参考例1)グルコース、キシロース、エタノール、2,3−ブタンジオールの分析方法
発酵液中のグルコース、キシロース、エタノールおよび2,3−ブタンジオールの濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Shodex SH1011(昭和電工株式会社製)
移動相:5mM 硫酸(流速0.6mL/分)
反応液:なし
検出方法:RI(示差屈折率)
温度:65℃。
【0083】
(参考例2)乳酸の分析方法
発酵液中の乳酸を下記に示すHPLC条件で標品との比較により定量した。
カラム:Shim−Pack SPR−H(株式会社島津製作所製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
【0084】
(参考例3)バチルス・コアギュランスでのキシロース消費速度算出
乳酸発酵微生物であるバチルス・コアギュランスNBRC12714株の乳酸発酵時のキシロース消費速度を算出した。培地として表1に示す組成の乳酸発酵キシロース培地と表2に示す乳酸発酵混合糖培地1を用いた。適宜、サンプリングを行い、培養液中のグルコースおよびキシロースの濃度は参考例1の方法により、生産物である乳酸の濃度は参考例2の方法により測定した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
バチルス・コアギュランスNBRC12714株を炭酸カルシウムと共にフラスコで50mLの前培養培地(ポリペプトン10g/L、酵母エキス2g/L、硫酸マグネシウム7水和物1g/L)で24時間振とう培養した(前培養)。前培養液を窒素ガスでパージした1Lの乳酸発酵キシロース培地、乳酸発酵混合糖培地1にそれぞれ植菌し、以下の条件でバッチ発酵を行った。
発酵反応槽容量:2(L)
温度調整:50(℃)
反応槽通気量(窒素ガス):100(mL/分)
反応槽攪拌速度:200(rpm)
pH調整:5N Ca(OH)によりpH7に調整
滅菌:培養槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0088】
乳酸発酵キシロース培地と乳酸発酵混合糖培地1でのキシロース消費速度を前述の(式6)および(式7)に従い算出し、表7に示した。この結果から、バチルス・コアギュランスNBRC12714株はカタボライト抑制を受ける微生物であると判断した。
【0089】
(参考例4)キャンディダ・トロピカリスでのキシロース消費速度算出
エタノール発酵微生物であるキャンディダ・トロピカリスNBRC0199株のエタノール発酵時のキシロース消費速度を算出した。培地として表3に示す組成のエタノール発酵キシロース培地と表4に示すエタノール発酵混合糖培地1を用いた。適宜、サンプリングを行い、培養液中のグルコースおよびキシロースの濃度と、生産物であるエタノールの濃度は参考例1の方法により測定した。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
キャンディダ・トロピカリスNBRC0199株を試験管で2mLのYPD培地にて30℃で一晩振とう培養した(前々培養)。得られた培養液を新鮮なYPD培地50mLに植菌し、500mL容量のひだ付三角フラスコで一晩振とう培養した(前培養)。前培養液を、2Lのエタノール発酵キシロース培地およびエタノール発酵混合糖培地に植菌し、以下の条件でバッチ培養を行った。
発酵反応槽容量:2(L)
温度調整:30(℃)
反応槽通気量:100(mL/分)
反応槽攪拌速度:800(rpm)
pH調整:なし
滅菌:培養槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0093】
エタノール発酵キシロース培地とエタノール発酵混合糖培地1でのキシロース消費速度を前述の(式6)および(式7)に従い算出し、表7に示した。この結果、キャンディダ・トロピカリスNBRC0199株はカタボライト抑制を受ける微生物であると判断した。
【0094】
(参考例5)パエニバチラス・ポリミキサでのキシロース消費速度算出
2,3−ブタンジオール発酵微生物であるパエニバチラス・ポリミキサATCC12321株の2,3−ブタンジオール発酵時のキシロース消費速度を算出した。培地として表5に示す組成の2,3−ブタンジオール発酵キシロース培地と表6に示す2,3−ブタンジオール発酵混合糖培地1を用いた。適宜、サンプリングを行い、培養液中のグルコースおよびキシロースの濃度と、生産物である2,3−ブタンジオールの濃度は参考例1の方法により測定した。
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
【0097】
パエニバチラス・ポリミキサATCC12321株を試験管で50mLの前培養培地(グルコース5g/L、ペプトン5g/L、酵母エキス3g/L、麦芽エキス3g/L)で24時間振とう培養した(前培養)。前培養液を1Lの2,3−ブタンジオール発酵キシロース培地と2,3−ブタンジオール発酵混合糖培地にそれぞれ植菌し、以下の条件でバッチ培養を行った。
発酵反応槽容量:2(L)
温度調整:30(℃)
反応槽通気量:100(mL/分)
反応槽攪拌速度:800(rpm)
pH調整:5N NaOHによりpH6.5に調整
滅菌:培養槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0098】
2,3−ブタンジオール発酵キシロース培地と2,3−ブタンジオール発酵混合糖培地1でのキシロース消費速度を前述の(式6)および(式7)に従い算出し、表7に示した。この結果、パエニバチラス・ポリミキサATCC12321株はカタボライト抑制を受ける微生物であると判断した。
【0099】
【表7】
【0100】
(比較例1)六炭糖(グルコース)を発酵原料にしたバチルス・コアギュランスのバッチ培養によるL−乳酸の製造
L−乳酸発酵微生物としてバチルス・コアギュランスNBRC12714株を用い、培地として表8に示す組成の乳酸発酵培地を用いた。バチルス・コアギュランスNBRC12714株を炭酸カルシウムと共にフラスコで50mLの前培養培地(ポリペプトン10g/L、酵母エキス2g/L、硫酸マグネシウム7水和物1g/L)で24時間振とう培養した(前培養)。前培養液を窒素ガスでパージした1Lの乳酸発酵培地に植菌し、参考例3の条件で96時間のバッチ培養を行った(表11)。
【0101】
【表8】
【0102】
(比較例2)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたバチルス・コアギュランスのバッチ培養によるL−乳酸の製造
バチルス・コアギュランスNBRC12714株を表2に示す乳酸発酵混合糖培地を用いて比較例1と同様の条件で128時間のバッチ培養を行った(表11)。
【0103】
(比較例3)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたバチルス・コアギュランスの連続培養によるL−乳酸の製造
混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にした表2に示す組成の乳酸発酵混合糖培地1を用いた分離膜を利用しない連続培養を行なった。バチルス・コアギュランスNBRC12714株を上記比較例1の前培養と同じ条件で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、前培養液を窒素ガスでパージした1.5Lの乳酸発酵混合糖培地に植菌し、発酵反応槽を付属の撹拌機によって200rpmで撹拌し、発酵反応槽を窒素で満たし、温度調整を行い、培養液中の糖が完全に消費されるまでバッチ培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、前培養完了後、直ちに発酵液抜きポンプを稼動させ、さらに培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵液量を1.5Lとなるよう微生物を含む培養液の引き抜き量の制御を行いながら以下の条件で300時間の連続培養を行い、乳酸を製造した(表11)。
発酵反応槽容量::2(L)
温度調整:50(℃)
反応槽通気量(窒素ガス):100(mL/分)
反応槽攪拌速度:200(rpm)
pH調整:5N Ca(OH)によりpH7に調整
発酵液の抜き量:3(L/Day)
滅菌:培養槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0104】
(実施例1)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたバチルス・コアギュランスの分離膜利用連続培養によるL−乳酸の製造1
混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にした表2に示す組成の乳酸発酵混合糖培地を用いた分離膜を利用した連続培養を行なった。分離膜エレメントとしては中空糸の形態を採用した。バチルス・コアギュランスNBRC12714株を上記比較例1の前培養と同じ条件で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、前培養液を窒素ガスでパージした1.5Lの乳酸発酵混合糖培地に植菌し、発酵反応槽を付属の撹拌機によって200rpmで撹拌し、発酵反応槽を窒素で満たし、温度調整を行い、培養液中の糖が完全に消費されるまでバッチ培養を行った(前培養)。前培養完了後、直ちに発酵液循環ポンプを稼動させ、さらに培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵液量を1.5Lとなるよう培養液の濾過量の制御を行いながら以下の条件で290時間の連続培養を行い、乳酸を製造した(表11)。
発酵反応槽容量:2(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜
膜分離エレメント有効濾過面積:473(cm
温度調整:50(℃)
発酵反応槽通気量(窒素ガス):100(mL/分)
発酵反応槽攪拌速度:200(rpm)
発酵液の抜き量:3(L/Day)
滅菌:分離膜エレメントを含む培養槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0105】
また、使用した膜は以下の性質を持つ膜であり、濾過時の膜間差圧は0.1〜20kPaの間を推移させた。
平均細孔径:0.1μm
平均細孔径の標準偏差:0.035μm
膜表面粗さ:0.06μm
純水透過係数:50×10−9/m/s/pa。
【0106】
(実施例2)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたバチルス・コアギュランスの分離膜利用連続培養2
表9に示す乳酸発酵混合糖培地2を用い、実施例1と同様の条件で305時間の分離膜利用連続培養を行い、L−乳酸を製造した(表11)。
【0107】
【表9】
【0108】
(実施例3)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたバチルス・コアギュランスの分離膜利用連続培養3
表10に示す乳酸発酵混合糖培地3を用い、実施例1と同様の条件で300時間の分離膜利用連続培養を行い、L−乳酸を製造した(表11)。
【0109】
【表10】
【0110】
【表11】
【0111】
(比較例4)六炭糖(グルコース)を発酵原料にしたキャンディダ・トロピカリスのバッチ培養によるエタノールの製造
エタノール発酵微生物としてキャンディダ・トロピカリスNBRC0199株を用い、培地として表12に示す組成のエタノール発酵培地を用いた。キャンディダ・トロピカリスNBRC0199株を試験管で2mLのYPD培地にて30℃で一晩振とう培養した(前々培養)。得られた培養液を新鮮なYPD培地50mLに植菌し、500mL容量のひだ付三角フラスコで一晩振とう培養した(前培養)。前培養液を、1.5Lのエタノール発酵培地に植菌し、以下の条件で16時間のバッチ培養を行い、エタノールを製造した(表14)。
発酵反応槽容量:2(L)
温度調整:30(℃)
反応槽通気量:100(mL/分)
反応槽攪拌速度:800(rpm)
pH調整:なし
滅菌:培養槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0112】
【表12】
【0113】
(比較例5)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたキャンディダ・トロピカリスのバッチ培養によるエタノールの製造
表13に示すエタノール発酵混合糖培地2を用い、比較例4と同様の条件で23時間のバッチ培養を行い、エタノールを製造した(表14)。
【0114】
【表13】
【0115】
(比較例6)混合糖を発酵原料にしたキャンディダ・トロピカリスの連続培養によるエタノールの製造
培地として表13に示すエタノール発酵混合糖培地2を用いた分離膜を利用しない連続発酵を行った。キャンディダ・トロピカリスNBRC0199株を試験管で2mLのYPD培地にて30℃で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮なYPD培地50mLに植菌し、500mL容量のひだ付三角フラスコで一晩振とう培養した(前々培養)。1.5Lのエタノール発酵混合糖培地2の入った連続発酵装置に前々培養液を植菌し、発酵反応槽を付属の撹拌機によって800rpmで撹拌して、発酵反応槽の通気量の調整、温度調整を行い、16時間培養を行った(前培養)。前培養完了後、直ちに発酵液抜きポンプを稼動させ、さらに培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵液量を1.5Lとなるよう微生物を含む培養液の引き抜き量の制御を行いながら以下の条件で295時間の連続培養を行い、エタノールを製造した(表14)。
発酵反応槽容量:2(L)
温度調整:30(℃)
発酵反応槽通気量:100(mL/分)
発酵反応槽撹拌速度:800(rpm)
pH調整:なし
発酵液の抜き量:1(L/Day)
滅菌:培養槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0116】
(実施例4)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたキャンディダ・トロピカリスの分離膜を利用した連続培養によるエタノールの製造
培地として表13に示す組成のエタノール発酵混合糖培地2を用いた分離膜を利用した連続発酵を行った。分離膜エレメントとしては平膜の形態を採用した。キャンディダ・トロピカリスNBRC0199株を試験管で2mLのYPD培地にて30℃で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮なYPD培地50mLに植菌し、500mL容量のひだ付三角フラスコで一晩振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、連続発酵装置の1.5Lのエタノール発酵混合糖培地2に植菌し、発酵反応槽を付属の撹拌機によって800rpmで撹拌し、発酵反応槽の通気量の調整、温度調整を行い、36時間培養を行った(前培養)。前培養完了後、直ちに発酵液循環ポンプを稼動させ、さらに培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵液量を1.5Lとなるよう培養液の濾過量の制御を行いながら以下の条件で300時間の連続培養を行い、エタノールを製造した(表14)。
発酵反応槽容量:2(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜
膜分離エレメント有効濾過面積:120(cm
温度調整:30(℃)
発酵反応槽通気量:100(mL/分)
発酵反応槽撹拌速度:800(rpm)
pH調整:なし
発酵液の抜き量:1(L/Day)
滅菌:分離膜エレメントを含む培養槽、および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0117】
また、使用した膜は実施例1と同様の性質の膜を使用し、濾過時の膜間差圧は0.1〜19.8kPaの間を推移させた。
【0118】
【表14】
【0119】
(比較例7)六炭糖(グルコース)を発酵原料にしたパエニバチラス・ポリミキサのバッチ培養による2,3−ブタンジオールの製造
2,3−ブタンジオール微生物であるパエニバチラス・ポリミキサATCC12321株を用い、培地として表15に示す組成の2,3−ブタンジオール発酵培地を用いた。
【0120】
【表15】
【0121】
パエニバチラス・ポリミキサATCC12321株を試験管で50mLの前培養培地(グルコース5g/L、ペプトン5g/L、酵母エキス3g/L、麦芽エキス3g/L)で24時間振とう培養した(前培養)。前培養液を1Lの2,3−ブタンジオール発酵培地に植菌し、以下の条件で27時間のバッチ培養を行い、2,3−ブタンジオールを製造した(表17)。
発酵反応槽容量:2(L)
温度調整:30(℃)
反応槽通気量:100(mL/分)
反応槽攪拌速度:800(rpm)
pH調整:5N NaOHによりpH6.5に調整
滅菌:培養槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0122】
(比較例8)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたパエニバチラス・ポリミキサのバッチ培養による2,3−ブタンジオールの製造
表16に示す混合糖2,3−ブタンジオール発酵培地2を用い、比較例7と同様の条件で50時間のバッチ培養を行い、2,3−ブタンジオールを製造した(表17)。
【0123】
【表16】
【0124】
(比較例9)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたパエニバチラス・ポリミキサの連続培養による2,3−ブタンジオールの製造
混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にした分離膜を利用しない連続培養を行なった。パエニバチラス・ポリミキサATCC12321株を上記比較例7の前培養と同じ条件で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、1.2Lの表17に示す混合糖2,3−ブタンジオール発酵培地2に植菌し、発酵反応槽を付属の撹拌機によって200rpmで撹拌し、温度調整を行い、培養液中の糖が完全に消費されるまでバッチ培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、前培養完了後、直ちに発酵液抜きポンプを稼動させ、さらに培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵液量を1.2Lとなるよう微生物を含む培養液の引き抜き量の制御を行いながら以下の条件で280時間の連続培養を行い、2,3−ブタンジオールを製造した(表17)。
発酵反応槽容量:2(L)
温度調整:30(℃)
反応槽通気量:100(mL/分)
反応槽攪拌速度:800(rpm)
pH調整:5N NaOHによりpH6.5に調整
発酵液の抜き量:0.6(L/Day)
滅菌:培養槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0125】
(実施例5)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたパエニバチラス・ポリミキサの分離膜を利用した連続培養による2,3−ブタンジオールの製造
混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にした分離膜を利用した連続培養を行なった。分離膜エレメントとしては平膜の形態を採用した。パエニバチラス・ポリミキサ ATCC12321株を上記比較例7の前培養と同じ条件で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、前培養液を1.2Lの混合糖2,3−ブタンジオール発酵培地2に植菌し、発酵反応槽を付属の撹拌機によって200rpmで撹拌し、温度調整を行い、培養液中の糖が完全に消費されるまでバッチ培養を行った(前培養)。前培養完了後、直ちに発酵液循環ポンプを稼動させ、さらに培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵液量を1.2Lとなるよう培養液の濾過量の制御を行いながら以下の条件で310時間の連続培養を行い、2,3−ブタンジオールを製造した(表17)。
発酵反応槽容量:2(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデン濾過膜
膜分離エレメント有効濾過面積:120(cm
温度調整:30(℃)
発酵反応槽通気量:100(mL/分)
発酵反応槽攪拌速度:800(rpm)
発酵液の抜き量:0.6L/Day
滅菌:分離膜エレメントを含む培養槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0126】
また、使用した膜は実施例1と同様の性質の膜を使用し、濾過時の膜間差圧は0.1〜20kPaの間を推移させた。
【0127】
【表17】
【0128】
(参考例6)ピキア・スティピティスでのキシロース消費速度算出
参考例4と同様の条件でバッチ培養を行い、培地として表3に示す組成のエタノール発酵キシロース培地と表4に示すエタノール発酵混合糖培地1を用い、エタノール発酵微生物であるピキア・スティピティスNBRC1687株のエタノール発酵時のキシロース消費速度を算出した。
【0129】
エタノール発酵キシロース培地とエタノール発酵混合糖培地1でのキシロース消費速度を前述の(式6)および(式7)に従い算出し、表22に示した。この結果、ピキア・スティピティスNBRC1687株はカタボライト抑制を受ける微生物であると判断した。
【0130】
(参考例7)キャンディダ・ユーティリスでのキシロース消費速度算出
微生物として、WO2010/140602に開示された方法によって作製したキャンディダ・ユーティリスCuLpLDH株を用いた。培地として表18に示す組成のD−乳酸発酵キシロース培地と表19に示すD−乳酸発酵混合糖培地1を用いた。pHを1N 水酸化カルシウムでpH6.0に調整する以外は、比較例1と同様の条件で40時間バッチ培養を行い、D-乳酸発酵時のキシロース消費速度を算出した。
【0131】
D−乳酸発酵キシロース培地とD−乳酸発酵混合糖培地1でのキシロース消費速度を前述の(式6)および(式7)に従い算出し、表22に示した。この結果、キャンディダ・ユーティリスCuLpLDH株はカタボライト抑制を受ける微生物であると判断した。
【0132】
【表18】
【0133】
【表19】
【0134】
(参考例8)エシェリシア・コリKO11株でのキシロース消費速度算出
エタノール発酵微生物であるエシェリシア・コリKO11株のエタノール発酵時のキシロース消費速度を算出した。培地として表20に示す組成のエタノール発酵キシロース培地2と表21に示すエタノール発酵混合糖培地3を用いた。適宜、サンプリングを行い、培養液中のグルコースおよびキシロースの濃度と、生産物であるエタノールの濃度は参考例1の方法により測定した。
【0135】
【表20】
【0136】
【表21】
【0137】
エシェリシア・コリKO11株を試験管で2mLの前培養培地(グルコース20g/L 酵母エキス10g/L、トリプトン 5g/L、NaCl 5g/L)にて30℃で一晩培養した(前々培養)。得られた培養液を500mL容量のひだ付三角フラスコに入った50mLの前培養培地に植菌し、一晩培養した(前培養)。前培養液を1.5Lのエタノール発酵キシロース培地2とエタノール発酵混合糖培地3にそれぞれ植菌し、温度調整およびpH調整を行いながら以下に示す運転条件にて16時間バッチ発酵を行なった。
培養槽容量:2(L)
温度調整:30(℃)
発酵反応槽通気量:100(mL/分)
発酵反応槽攪拌速度:800(rpm)
pH調整:5N Ca(OH)によりpH6に調整
滅菌:発酵槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0138】
エタノール発酵キシロース培地2とエタノール発酵混合糖培地3でのキシロース消費速度を前述の(式6)および(式7)に従い算出し、表22に示した。この結果、エシェリシア・コリKO11株はカタボライト抑制を受ける微生物であると判断した。
【0139】
【表22】
【0140】
(比較例10)六炭糖を発酵原料にしたピキア・スティピティスのバッチ培養によるエタノールの製造
微生物として、ピキア・スティピティスNBRC1687株を用い、比較例4と同様の条件で23時間バッチ培養を行い、エタノールを製造した。(表23)
【0141】
(比較例11)混合糖を発酵原料にしたピキア・スティピティスのバッチ培養によるエタノールの製造
微生物として、ピキア・スティピティスNBRC1687株を用い、比較例5と同様の条件で40時間バッチ培養を行い、エタノールを製造した(表23)。
【0142】
(比較例12)混合糖を発酵原料にしたピキア・スティピティスの連続発酵によるエタノールの製造
微生物として、ピキア・スティピティスNBRC1687株を用い、混合糖原料にて分離膜を利用しない連続発酵を行った。前培養時間を40時間とする以外は比較例6と同様の条件で行い、298時間の連続発酵によりエタノールを製造した(表23)。
【0143】
(実施例6)混合糖を発酵原料にしたピキア・スティピティスの分離膜を利用した連続発酵によるエタノールの製造1
微生物として、ピキア・スティピティスNBRC1687株を用い、分離膜を利用した連続発酵を行った。前培養を48時間とし、膜間差圧を0.1〜19.8kPaとした以外は実施例4と同様の条件で行い、305時間の連続発酵によりエタノールを製造した。
【0144】
【表23】
【0145】
(比較例13)六炭糖を発酵原料にしたキャンディダ・ユーティリスのバッチ培養によるD−乳酸の製造
微生物として、WO2010/140602に開示された方法によって作製したキャンディダ・ユーティリスCuLpLDH株を用いた。pHを1N 水酸化カルシウムでpH6.0に調整し、培地は表24に示すD−乳酸発酵混合糖培地2を使用する以外は、比較例4と同様の条件で23時間バッチ培養を行い、D−乳酸を製造した(表25)。
【0146】
【表24】
【0147】
(比較例14)混合糖を発酵原料にしたキャンディダ・ユーティリスのバッチ培養によるD−乳酸の製造
微生物としてキャンディダ・ユーティリスCuLpLDH株を用い、pHを1N 水酸化カルシウムでpH6.0に調整し、培地は表24に示すD−乳酸発酵混合糖培地2を使用する以外は、比較例5と同様の条件で40時間バッチ培養を行い、D−乳酸を製造した(表25)。
【0148】
(比較例15)混合糖を発酵原料にしたキャンディダ・ユーティリスの連続発酵によるD−乳酸の製造
微生物としてキャンディダ・ユーティリスCuLpLDH株を用い、分離膜を利用しない連続発酵を行った。前培養を40時間とし、pHを1N 水酸化カルシウムでpH6.0に調整し、培地は表24に示すD−乳酸発酵混合糖培地2を使用する以外は比較例6と同様の条件で行い、290時間の連続発酵によりD−乳酸を製造した(表25)。
【0149】
(実施例7)混合糖を発酵原料にしたキャンディダ・ユーティリスの分離膜を利用した連続発酵によるD−乳酸の製造1
微生物としてキャンディダ・ユーティリスCuLpLDH株を用い、分離膜を利用した連続発酵を行った。前培養を50時間とし、pHを1N 水酸化カルシウムでpH6.0に調整し、培地は表24に示すD−乳酸発酵混合糖培地2を使用する以外は実施例4と同様の条件で行い、310時間の連続発酵によりD−乳酸を製造した。
【0150】
【表25】
【0151】
(比較例16)六炭糖を発酵原料にしたエシェリシア・コリのバッチ発酵によるエタノールの製造
エシェリシア・コリKO11株を試験管で2mLの前培養培地(グルコース20g/L酵母エキス10g/L、トリプトン5g/L、NaCl5g/L)にて30℃で一晩培養した(前々培養)。得られた培養液を500mL容量のひだ付三角フラスコに入った50mLの前培養培地に植菌し、一晩培養した(前培養)。前培養液を表26に示す組成の1Lのエタノール発酵培地2に植菌し、温度調整およびpH調整を行いながら以下に示す運転条件にて16時間バッチ発酵を行い、エタノールを製造した(表28)。
培養槽容量:2(L)
温度調整:30(℃)
Kla:30(h−1
pH調整:5N Ca(OH)によりpH6に調整
滅菌:発酵槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0152】
【表26】
【0153】
(比較例17)混合糖を発酵原料にしたエシェリシア・コリのバッチ発酵によるエタノールの製造
発酵培地として表27に示す組成のエタノール発酵混合糖培地4を用いて、比較例16と同様の条件で24時間バッチ発酵を行い、エタノールを製造した(表28)。
【0154】
【表27】
【0155】
(比較例3)混合糖を発酵原料にしたエシェリシア・コリの連続発酵によるエタノールの製造
混合糖を発酵原料にした、分離膜を利用しない連続発酵を行った。エシェリシア・コリKO11株を試験管で2mLの前培養培地(グルコース 20g/L、酵母エキス 10g/L、トリプトン 5g/L、NaCl 5g/L)にて30℃で一晩培養した(前々々培養)。得られた培養液を500mL容量のひだ付三角フラスコに入った50mLの前培養培地に植菌し、一晩培養した(前々培養)。前々培養液を表27に示す組成のエタノール発酵混合糖培地4の入った連続培養装置(WO2007/097260の図2に示す装置より分離膜エレメントを除いたもの)に植菌し、温度調整およびpH調整を行いながら以下に示す運転条件にて24時間バッチ発酵を行った(前培養)。前培養完了後、直ちに連続培養を開始し、エタノールの製造を行った。表27に示す組成のエタノール発酵混合糖培地3の供給と微生物を含む培養液の引き抜きにはペリスタ・バイオミニポンプAC−2120型(ATTO社)を用いて、培養槽内に直接培地供給を行い、培養槽内から直接微生物を含む培養液の引き抜きを行った。微生物を含む培養液の引き抜き速度を一定にして、培養槽内の培養液量を1.5Lとなるように培地供給速度を制御しながら290時間エタノール製造を行った(表28)。
培養槽容量:2(L)
温度調整:30(℃)
Kla:30(h−1
pH調整:5N Ca(OH)によりpH6に調整
発酵液の抜き速度:2L/day
滅菌:発酵槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0156】
(実施例8)混合糖を発酵原料にしたエシェリシア・コリの分離膜利用連続発酵によるエタノールの製造
混合糖を発酵原料にした、分離膜を利用した連続発酵を行った。エシェリシア・コリKO11株を試験管で2mLの前培養培地(グルコース 20g/L、酵母エキス 10g/L、トリプトン 5g/L、NaCl 5g/L)にて30℃で一晩培養した(前々々培養)。得られた培養液を500mL容量のひだ付三角フラスコに入った50mLの前培養培地に植菌し、一晩培養した(前々培養)。前々培養液を、表27に示す組成のエタノール発酵混合糖培地4の入った膜一体型の以下の条件を具備した連続発酵装置(WO2007/097260の図2に示す装置)に植菌し、温度調整およびpH調整を行いながら以下に示す運転条件にて24時間バッチ発酵を行った(前培養)。前培養完了後、直ちに連続培養を開始し、エタノールの製造を行った。表27に示す組成のエタノール発酵混合糖培地3の供給と培養液の濾過にはペリスタ・バイオミニポンプAC−2120型(ATTO社)を用いた。培地供給は培養槽内に直接行い、培養液の濾過は分離膜を固定したエレメントを通して行った。培養液の濾過速度を一定にして、培養槽内の培養液量を1.5Lとなるように培地供給速度を制御しつつ、濾過時の膜間差圧は0.1〜19.8kPaの範囲を推移させることで、310時間の連続発酵によりエタノールを製造した(表28)。
発酵槽容量:2(L)
使用分離膜:ポリフッ化ビニリデンろ過膜
膜分離エレメント有効濾過面積:473cm
分離膜の純水透過係数:50×10−9/m/s/Pa
分離膜の平均細孔径:0.1μm
平均細孔径の標準偏差:±0.035μm
分離膜の表面粗さ:0.06μm
温度調整:30(℃)
pH調整:5N Ca(OH)によりpH6に調整
発酵液の抜き速度:2L/day
滅菌:分離膜エレメントを含む発酵槽および使用培地は全て121℃、20minのオートクレーブにより高圧蒸気滅菌。
【0157】
【表28】
【0158】
(比較例19)バイオマス由来の糖液(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたバチルス・コアギュランスのバッチ培養によるL−乳酸の製造
発酵原料として、バイオマス由来の糖液を使用した。乳酸発酵糖液培地は、WO2010/067785の実施例2に記載のナノ濾過膜による調製方法にて調製したセルロース糖化液を使用し、適宜試薬により表29に示すとおり調製した。使用した培地と、中和剤を4N KOHにする以外は、比較例2と同様の条件で70時間バッチ培養を行い、L−乳酸を製造した(表30)。
【0159】
【表29】
【0160】
(比較例20)バイオマス由来の糖液(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたバチルス・コアギュランスの連続培養によるL−乳酸の製造
発酵原料として、バイオマス由来の糖液を使用した。乳酸発酵糖液培地は、比較例19と同様に表29記載の培地を用いた。使用した培地と、中和剤を4N KOHにする以外は、比較例3と同様の条件で250時間の連続培養を行い、乳酸を製造した(表30)。
【0161】
(実施例9)バイオマス由来の糖液(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたバチルス・コアギュランスの分離膜利用連続培養によるL−乳酸の製造
発酵原料として、バイオマス由来の糖液を使用した。乳酸発酵糖液培地は、比較例19と同様に表29記載の培地を用いた。使用した培地と、中和剤を4N KOHにする以外は、実施例1と同様の条件で260時間の分離膜利用連続培養を行い、乳酸を製造した。
【0162】
【表30】
【0163】
(比較例21)バイオマス由来の糖液(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたエシェリシア・コリのバッチ培養によるエタノールの製造
発酵原料として、バイオマス由来の糖液を使用した。エタノール発酵糖液培地は、WO2010/067785の実施例2に記載のナノ濾過膜による調製方法にて調製したセルロース糖化液を使用し、適宜試薬により表31に示すとおり調製した。使用した培地以外は、比較例17と同様の条件で23時間バッチ培養を行い、エタノールを製造した(表32)。
【0164】
【表31】
【0165】
(比較例22)バイオマス由来の糖液(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたエシェリシア・コリの連続培養によるエタノールの製造
エタノール発酵糖液培地は、比較例21と同様に表31記載の培地を用い、比較例18と同様の条件で285時間の連続培養を行い、エタノールを製造した(表32)。
【0166】
(実施例10)バイオマス由来の糖液(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたエシェリシア・コリの分離膜利用連続培養によるエタノールの製造
表27に示すエタノール発酵糖液培地を用い、実施例8と同様の条件で295時間の分離膜利用連続培養を行い、エタノールを製造した。
【0167】
【表32】
【0168】
(比較例23)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたキャンディダ・トロピカリスのバッチ培養によるエタノールの製造2
表33に示すエタノール発酵混合糖培地5を用い、比較例4と同様の条件で45時間のバッチ培養を行い、エタノールを製造した(表34)。
【0169】
【表33】
【0170】
(比較例24)混合糖を発酵原料にしたキャンディダ・トロピカリスの連続培養によるエタノールの製造
表33に示すエタノール発酵混合糖培地5を用い、比較例6と同様の条件で350時間の連続培養を行い、エタノールを製造した(表34)。
【0171】
(実施例11)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたキャンディダ・トロピカリスの分離膜を利用した連続培養によるエタノールの製造2
表33に示すエタノール発酵混合糖培地5を用い、実施例4と同様の条件で360時間の連続培養を行い、エタノールを製造した(表34)。
【0172】
(実施例12)混合糖を発酵原料にしたキャンディダ・トロピカリスのセラミック製分離膜を利用した連続発酵によるエタノールの製造3
キャンディダ・トロピカリスNBRC0199株を用い、セラミック製分離膜を利用した連続発酵を行った。発酵培地は表33に示す培地を使用した。キャンディダ・トロピカリスNBRC0199株を試験管で2mLのYPD培地にて30℃で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液をYPD培地50mLの入った500mL容量のひだ付三角フラスコに植菌し、一晩振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、1.5LのYPDX培地の入った膜分離型の連続発酵装置(WO2012/086763の図12に示す装置)に植菌し、培養槽を付属の撹拌機によって800rpmで撹拌し、培養槽の通気速度の調整、温度調整を行い、36時間培養を行った(前培養)。前培養完了後、直ちに連続発酵を開始した。濾過時の膜間差圧は500kPa以下となるよう調整しながら、400時間の連続発酵によりエタノールを製造した(表34)。
培養槽容量:2L
使用分離膜:Celfit精密ろ過膜 モノリス φ4−19(日本ガイシ)
膜分離エレメント長さ:500mm
分離膜の平均細孔径:0.1μm
温度調整:30℃
発酵反応槽通気量:100(mL/分)
発酵反応槽撹拌速度:800(rpm)
pH調整:なし。
【0173】
【表34】
【0174】
(実施例13)混合糖(グルコース、キシロース)を発酵原料にしたパエニバチラス・ポリミキサセラミック製分離膜を利用した連続培養による2,3−ブタンジオールの製造2
パエニバチラス・ポリミキサATCC12321株を用い、セラミック製分離膜を利用した連続発酵を行った。パエニバチラス・ポリミキサATCC12321株を試験管で2mLの前培養培地(グルコース5g/L、ペプトン5g/L、酵母エキス3g/L、麦芽エキス3g/L)にて30℃で一晩培養した(前々々培養)。得られた培養液を500mL容量のひだ付三角フラスコに入った50mLの前培養培地に植菌し、一晩培養した(前々培養)。前々培養液を表16に示す組成の2,3−ブタンジオール発酵混合糖培地の入った連続培養装置(WO2007/097260の図2に示す装置)に植菌し、温度調整およびpH調整を行いながら以下に示す運転条件にて30時間バッチ発酵を行った(前培養)。前培養完了後、表16に示す組成の2,3−ブタンジオール発酵混合糖培地を用いて直ちに連続培養を開始し、2,3−ブタンジオールの製造を行った。濾過時の膜間差圧は500kPa以下となるよう調整しながら、300時間の連続発酵により2,3−ブタンジオールを製造した(表35)。
発酵槽容量:2(L)
使用分離膜:Celfit精密ろ過膜 モノリス φ4−19(日本ガイシ)
膜分離エレメント長さ:500mm
分離膜の平均細孔径:0.1μm
温度調整:30(℃)
発酵反応槽通気量:100(mL/分)
発酵反応槽攪拌速度:800(rpm)
pH調整:5N Ca(OH)によりpH6.5に調整
【0175】
【表35】
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明によって、五炭糖および六炭糖を含む発酵原料を用いた種々の化学品の発酵生産の効率を大幅に向上させることができる。
【国際調査報告】