(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2013108543
(43)【国際公開日】20130725
【発行日】20150511
(54)【発明の名称】オレフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/24 20060101AFI20150414BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20150414BHJP
   C07C 1/207 20060101ALI20150414BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20150414BHJP
   B01J 23/04 20060101ALI20150414BHJP
   B01J 23/62 20060101ALI20150414BHJP
   B01J 23/58 20060101ALI20150414BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150414BHJP
【FI】
   !C07C1/24
   !C07C11/06
   !C07C1/207
   !B01J37/08
   !B01J23/04 Z
   !B01J23/62 Z
   !B01J23/58 Z
   !C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
【出願番号】2013554217
(21)【国際出願番号】JP2012083124
(22)【国際出願日】20121220
(31)【優先権主張番号】2012010148
(32)【優先日】20120120
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】2012010149
(32)【優先日】20120120
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
【住所又は居所】東京都港区東新橋一丁目5番2号
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正安
【住所又は居所】千葉県袖ケ浦市長浦580−32 三井化学株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】大久保 英主
【住所又は居所】千葉県袖ケ浦市長浦580−32 三井化学株式会社内
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA02A
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4H006BA09
4H006BA81
4H006BE20
4H039CA21
4H039CG10
(57)【要約】
本発明は、ケトンの共存下であっても、ケトンのアルドール縮合等の副反応を起こすことなくアルコールの脱水反応によってオレフィンを高効率で製造することが可能なオレフィンの製造方法を提供すること、単一反応工程でケトンと水素とを直接反応させることによって高活性かつ高選択率で対応するオレフィンを製造できるオレフィンの製造方法を提供することを目的とする。本発明のオレフィンの製造方法は、オルトケイ酸アルキルから調製されたシリカゲル(X)と水溶性アルミニウム化合物とを接触し次いで焼成することによって得られるか、またはケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)から得られ、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜350ppm含有するシリカゲル(A)を脱水触媒として用いるアルコールからオレフィンの製造方法、並びに前記シリカゲル(A)と銀含有無機物質(B)の存在下、ケトンおよび水素から単一反応工程でオレフィンを製造する方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜350ppm含有する、化学処理されたシリカゲル(A)を脱水触媒として用いることを特徴とする、下記一般式(I)で表されるアルコールから下記一般式(II)で表されるオレフィンの製造方法。
【化1】
(一般式(I)及び(II)において、R1は炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基であり、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる原子または基である。)
【請求項2】
前記シリカゲル(A)が、オルトケイ酸アルキルから調製されたシリカゲル(X)と水溶性アルミニウム化合物とを接触し、次いで焼成して得られ、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜20ppm含有するシリカゲル(A1)であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項3】
前記シリカゲル(A)が、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)から得られ、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、かつアルカリ金属とアルカリ土類金属とを合計して1〜350ppm含有するシリカゲル(A2)であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項4】
前記シリカゲル(A2)が、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)を、pHが0.5以上7未満の酸性水溶液で接触処理し、次いで焼成して得られるシリカゲル(A2‐1)であることを特徴とする請求項3に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項5】
前記シリカゲル(A2)が、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)と水溶性アルミニウム化合物とを接触し、次いで焼成して得られるシリカゲル(A2‐2)であることを特徴とする請求項3に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項6】
前記シリカゲル(A2)が、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)を、pHが0.5以上7未満の酸性水溶液で接触処理し、次いで水溶性アルミニウム化合物と接触し、次いで焼成して得られるシリカゲル(A2‐3)であることを特徴とする請求項3に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項7】
前記シリカゲル(A2)が、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)と水溶性アルミニウム化合物とを接触し、次いでpHが0.5以上7未満の酸性水溶液で接触処理し、次いで焼成して得られるシリカゲル(A2‐4)であることを特徴とする請求項3に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項8】
前記一般式(I)で表されるアルコールに対して0.01〜10倍重量の、下記一般式(III)で表されるケトンを共存させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のオレフィンの製造方法。
【化2】
(一般式(III)において、R3は炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基であり、R4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる原子または基である。)
【請求項9】
前記一般式(III)におけるR3と前記一般式(I)及び(II)におけるR1が同一の基であり、かつ前記一般式(III)におけるR4と前記一般式(I)及び(II)におけるR2が同一の原子または基であることを特徴とする請求項8に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項10】
アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜350ppm含有する、化学処理されたシリカゲル(A)と銀含有無機物質(B)の存在下、下記一般式(III)で表されるケトンおよび水素から単一反応工程で、下記一般式(II)で表されるオレフィンを製造することを特徴とするオレフィンの製造方法。
【化3】
(一般式(II)において、R1は炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基であり、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる原子または基であり、
一般式(III)において、R3は炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基であり、R4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる原子または基であり、
前記一般式(III)におけるR3と前記一般式(II)におけるR1が同一の基であり、かつ前記一般式(III)におけるR4と前記一般式(II)におけるR2が同一の原子または基である。)
【請求項11】
前記銀含有無機物質(B)が、少なくとも1種の周期律表第13族(IIIA族)の元素を含むことを特徴とする請求項10に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項12】
前記一般式(III)で表されるケトンがアセトンであり、前記一般式(II)で表されるオレフィンがプロピレンであることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項13】
前記シリカゲル(A)と銀含有無機物質(B)とが、混合された状態で反応を行う請求項10〜12のいずれか一項に記載のオレフィンの製造方法。
【請求項14】
反応温度が、50〜500℃であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のオレフィンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィンの製造方法、詳しくはシリカゲルを脱水触媒として用いるオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼンとプロピレンを反応させてクメンを製造する方法、クメンを酸化してクメンヒドロペルオキシドを製造する方法、クメンヒドロペルオキシドを酸分解させてフェノールとアセトンを製造する方法は、既にそれぞれ公知である。これらの反応を組み合わせた方法は一般にクメン法と呼ばれるフェノール製造方法であり、現在フェノール製造法の主流である。
【0003】
このクメン法ではアセトンが併産されるという特徴があり、アセトンが同時にほしい場合は長所となるが、併産アセトン量がその需要量を超える場合には原料であるプロピレンとの価格差が不利な方向へ働き、経済性を悪化させる場合がある。そこで、様々な方法を用いて併産するアセトンをプロピレンに転換してクメン法の原料として再利用する方法が提案されている。
【0004】
アセトンは、水添することにより容易にイソプロピルアルコールへ変換でき、このイソプロピルアルコールをさらに分子内脱水を起こさせることによってプロピレンとした後に、更にベンゼンと反応させクメンを得るプロセス、すなわちアセトンを二段階の反応により、プロピレンへと変換することにより、クメン法の原料として再利用するプロセスが提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、アセトンと水素から一段階、すなわち単一反応工程でプロピレンを製造するための方法も提案されている(特許文献2、3)。このような一段階反応によってアセトン再利用を工業レベルで実施するためには、アセトンから高活性かつ高選択的にプロピレンを製造できる実用的プロセスであることはもちろんのこと、用いる触媒についても入手が容易、または経済的に容易に調製可能であることが必要である。例えば、特許文献3に記載され、イソプロピルアルコールの脱水反応に効果的であるとされているヘテロポリ酸塩としてのリンタングステン酸塩は、調製に多段階の工程を要するという問題点がある。さらに、アセトンからプロピレンへの転換のみならず、一般的なケトンから高選択的に対応するオレフィンを製造する実用的な方法が確立することが出来ればフェノール産業以外の他分野においても有用である。
【0006】
例えば、Cu(25%)−ZnO(35%)−Al23(40%)触媒の存在下、400℃でアセトンの水素化反応を行い、一段階でプロピレンを得る方法が知られている。しかし、この方法では、反応温度が400℃と高温であるにも関わらずアセトン転化率が89%と低い。また該方法では生成したプロピレンが水添されてプロパンが副生するため、プロピレン選択率も89%と不充分である(特許文献4)。本発明者らの知見によれば、水添触媒と汎用の脱水触媒を混合した触媒の存在下で、アセトンと水素からプロピレンを得ようとすると、該脱水触媒によりアセトンがアルドール縮合を起こし、生成したアルドール反応物が更に脱水反応や分解反応および水添反応を受ける場合があることを確認している。すなわち、原料のアセトン由来の副生物が生成しやすくなる。また、汎用の脱水触媒を用いると、生成プロピレンのオリゴメリ化反応等が併発する場合もある。従って、アセトンと水素からプロピレンを得ようとする場合は、特に脱水触媒の設計・選定が技術上の鍵になると考えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−174737号公報
【特許文献2】国際公開第2010/064500号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2010/106966号パンフレット
【特許文献4】東ドイツ特許DD84378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はケトンの共存下であっても、ケトンのアルドール縮合等の副反応を起こすことなくアルコールの脱水反応が高効率で進行する脱水触媒を提供することを第一の目的とする。
【0009】
さらに本発明は、単一反応工程でケトンと水素とを直接反応させることによって高活性かつ高選択率で対応するオレフィンを製造できる新規な方法を提供することを第二の目的とする。特に、アセトンと水素とを直接反応させて、高活性かつ高選択率でプロピレンを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜350ppm含有する、化学処理されたシリカゲル(A)を脱水触媒として用いることによって、下記一般式(I)で表されるアルコールから下記一般式(II)で表されるオレフィンを高活性かつ高選択的に製造できることを見出した(この発明を、以下の説明では「第一の発明」とよぶ場合がある)。
【0011】
なお、本発明においてppmは一貫して重量ppm(wtppm)の意味で用いられる。
【0012】
さらに、当該脱水反応は、一般式(III)で表されるケトンが共存していてもケトンに起因する副反応を併発することなく、高効率かつ高選択的に進行することも見出した。
【0013】
【化1】
【0014】
(一般式(I)及び(II)において、R1は炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基であり、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる原子または基である。)
【0015】
【化2】
【0016】
(一般式(III)において、R3は炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基であり、R4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる原子または基である。)
この結果、前記一般式(III)で表されるケトンと水素とを出発原料とし、水添触媒として既に本出願人によって公開(前記特許文献3)されている銀含有無機物質(B)と、脱水触媒としての前記シリカゲル(A)の共存下で、水添反応と脱水反応とを、単一反応工程で実施することによって、一般式(II)で表されるオレフィンを高活性かつ高選択的に一段階で製造することができることを見出した(この発明を、以下の説明では「第二の発明」とよぶ場合がある)。なお、第二の発明では前記一般式(III)におけるR3と前記一般式(II)におけるR1が同一の基であり、かつ前記一般式(III)におけるR4と前記一般式(II)におけるR2が同一の原子または基である。
本発明においては、前記シリカゲル(A)が、オルトケイ酸アルキルから調製されたシリカゲル(X)と水溶性アルミニウム化合物とを接触し、次いで焼成して得られ、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜20ppm含有するシリカゲル(A1)であることが好ましい。
【0017】
本発明においては、シリカゲル(A)が、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)を化学処理することにより得られ、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、かつアルカリ金属とアルカリ土類金属とを合計して1〜350ppm含有するシリカゲル(A2)であることも好ましい。シリカゲル(A2)としては、具体的には次のシリカゲル(A2‐1)〜(A2‐4)のいずれかであることが好ましい。
【0018】
(1)ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)を、pHが0.5以上7未満の酸性水溶液で接触処理し、次いで焼成して得られるシリカゲル(A2‐1)。
【0019】
(2)ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)と水溶性アルミニウム化合物とを接触し、次いで焼成して得られるシリカゲル(A2‐2)。
【0020】
(3)ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)を、pHが0.5以上7未満の酸性水溶液で接触処理し、次いで水溶性アルミニウム化合物と接触し、次いで焼成して得られるシリカゲル(A2‐3)。
【0021】
(4)ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)と水溶性アルミニウム化合物とを接触し、次いでpHが0.5以上7未満の酸性水溶液で接触処理し、次いで焼成して得られるシリカゲル(A2‐4)。
【0022】
第二の発明においては、ケトンのうち特にアセトン、および水素を出発物質として用いて、単一反応工程で高収率でプロピレンを製造することができることも見出した。
【0023】
第二の発明においては、前記銀含有無機物質(B)が、少なくとも1種の周期律表第13族(IIIA族)の元素を含むことが好ましい。
【0024】
また、第二の発明においては、前記シリカゲル(A)と銀含有無機物質(B)が混合された状態で反応を行うことが好ましい。
【0025】
第一の発明および第二の発明においては、反応温度は50〜500℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の方法によれば、ケトンの共存下であっても、ケトンのアルドール縮合等の副反応を起こすことなくアルコールの脱水反応を選択的に生起させることによってオレフィンを高効率で製造できる。
【0027】
また、本発明の方法によれば、ケトンと水素とを出発物質とする単一反応工程でのオレフィン製造方法が提供される。特に、アセトンと水素とを直接反応させて高選択率でプロピレンを得るために有用であり、クメン法におけるアセトンの循環再利用プロセスに効果的に適用できる。単一反応工程からなる方法であるから、複数の反応工程からなる方法による場合に必要な、中間生成物の分離、精製などの操作が不要であり、また純度の高いプロピレンが得られるという特徴をもつ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のオレフィンの製造方法は、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm、好ましくは10〜800ppm、より好ましくは20〜800ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜350ppm、好ましくは1〜300ppm、より好ましくは2〜280ppm含有する、化学処理されたシリカゲル(A)を脱水触媒として用いることを特徴とする。
【0029】
なお本発明における「脱水」とは、同一分子における互いに隣接する炭素原子上の水素原子と水酸基が水分子として取り除かれる反応として定義され、この用語を接頭または接尾にもつ全ての用語についても同様な意味を持つものとして定義される。なお、本発明では「脱水」を「分子内脱水」と呼称する場合もある。
【0030】
また、本発明において、「化学処理」とは、原料シリカゲルと、酸性水溶液および/または水溶性アルミニウム化合物とを接触させることとして定義される。なお、前記水溶性アルミニウム化合物は、通常はアルミニウム化合物含有水溶液として用いられる。また、前記接触は通常固液接触により行われる。具体的には本発明に係わるシリカゲル(A)は、原料シリカゲル(後述するように、好ましくはシリカゲル(X)またはシリカゲル(Y))を、前記水溶液と固液接触処理することによって調製される。
【0031】
なお、化学処理の対象となる前記の原料シリカゲルとは、実験化学講座9,無機化合物の合成と精製(昭和33年12月20日発行,丸善株式会社)513ページに記載された6つの方法で製造された全てのシリカゲルを示し、好ましくは後述するシリカゲル(X)、シリカゲル(Y)が挙げられる。
【0032】
なお、本発明では、アルミニウム化合物の含有量をアルミニウム元素に換算して表している。具体的には、アルミニウム化合物の含有量は、シリカゲル(A)中のアルミニウム化合物の量ではなく、アルミニウム化合物中に含有されるアルミニウム元素の含有量で表す。
【0033】
前記シリカゲル(A)の好ましい態様は、オルトケイ酸アルキルから調製されたシリカゲル(X)と水溶性アルミニウム化合物とを接触し、次いで焼成して得られ、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜20ppm含有するシリカゲル(A1)であるか、または、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)を化学処理することによって得られ、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、かつアルカリ金属とアルカリ土類金属とを合計して1〜350ppm含有するシリカゲル(A2)である。
【0034】
第一の発明は、当該シリカゲル(A)を必須の触媒として用いる、アルコールの分子内脱水反応による対応オレフィンの製造方法に関する発明であり、第二の発明は前記シリカゲル(A)と、公知の銀含有無機物質(B)とを併用して、ケトンと水素から単一反応工程で一気に対応オレフィンを製造する方法に関する発明である。以下、第一の発明、次いで第二の発明について詳細に述べる。
【0035】
〔第一の発明〕
第一の発明は、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm、好ましくは10〜800ppm、より好ましくは20〜800ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜350ppm、好ましくは1〜300ppm、より好ましくは2〜280ppm含有する、化学処理されたシリカゲル(A)を脱水触媒として用いることによって、下記一般式(I)で表されるアルコールから下記一般式(II)で表されるオレフィンを高活性かつ高選択的に製造する方法である。
【0036】
【化3】
【0037】
上記一般式(I)及び(II)において、R1は炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基であり、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる原子または基である。
【0038】
1およびR2における炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基を例示することができる。R1およびR2における炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、o‐トリル基、m‐トリル基、p‐トリル基、キシリル基、ナフチル基を例示することができる。
【0039】
反応成績や生成物の分離のし易さの点から、R1の好ましい態様は、炭素数1〜5のアルキル基であり、R2の好ましい態様は、水素原子、および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる原子または基である。
【0040】
後述するように、クメン法において併産されるアセトンの水添反応によって得られるイソプロピルアルコールの分子内脱水によってクメン法原料であるプロピレンを再生産できるプロセスに直ちに適用できるという視点からは、上記R1がメチル基でありR2が水素原子である場合が第一の発明のより好ましい態様である。
【0041】
第一の発明では、一般式(I)で表されるアルコールに対して0.01〜10倍重量の、下記一般式(III)で表されるケトンが共存した系であっても、ケトンのアルドール縮合などの副反応の併発量を最小限に抑えて、一般式(I)で表されるアルコールの脱水反応を効率良く進めることが可能である。
【0042】
【化4】
【0043】
一般式(III)において、R3は炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる基であり、R4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選ばれる原子または基である。
【0044】
3およびR4における炭素数1〜5のアルキル基としては、R1およびR2における炭素数1〜5のアルキル基と同様の基を例示することができる。R3およびR4における炭素数6〜12のアリール基としては、R1およびR2における炭素数6〜12のアリール基と同様の基を例示することができる。
【0045】
なお、クメン法において、併産されるアセトンからイソプロピルアルコールへの水添反応が完結しない状態、すなわちアセトンが共存した状態のイソプロピルアルコールの脱水反応をもアセトンのアルドール縮合など副反応を併発することなく効率的に進められる点や、アセトンと水素から単一反応工程でプロピレンを製造できるという点からも、一般式(III)における、R3およびR4は各々、一般式(I)のR1およびR2と同一であることが好ましい。具体的にはR3とR1が共にメチル基であり、R4とR2が共に水素原子であることが好ましい。
【0046】
本発明で使用する脱水触媒に望まれる性能は、前記のようにアセトンの如きケトンのアルドール縮合や目的生成物であるプロピレンの如きオレフィンのオリゴメリ化反応等には関与せず、イソプロピルアルコールの如き二級アルコールの脱水反応のみを選択的に起こすものである。
【0047】
このような要求を満たす脱水触媒として用いられる、本願発明に係わるシリカゲル(A)の好ましい態様は、オルトケイ酸アルキルから調製されたシリカゲル(X)と水溶性アルミニウム化合物とを接触し、次いで焼成して得られ、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜20ppm含有するシリカゲル(A1)であるか、または、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)を化学処理することによって得られ、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、かつアルカリ金属とアルカリ土類金属とを合計して1〜350ppm含有するシリカゲル(A2)である。以下、シリカゲル(A1)およびシリカゲル(A2)について詳説する。
【0048】
〔シリカゲル(A1)〕
シリカゲル(A1)中のアルミニウム化合物の含有量は、アルミニウム元素として10〜1000ppm、好ましくは10〜800ppm、より好ましくは20〜500ppmであると脱水反応効率の視点から好ましい。
【0049】
本発明に係るシリカゲル(A1)はアルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜20ppm、好ましくは2〜15ppm、より好ましくは2ppmを超え10ppm未満含有するという特徴を持つ。この範囲にあると、ケトンの副反応を誘発することなくアルコールの脱水反応を効果的に進めることができる。
【0050】
シリカゲル(A1)を調製する方法としては、オルトケイ酸アルキルの加水分解、熟成、乾燥・焼成する工程を順次実施することによって得られるシリカゲル(X)に、水溶性アルミニウム化合物を接触、次いで乾燥・焼成することによって得られる。
【0051】
オルトケイ酸アルキルからシリカゲル(X)を調製する方法の基本は公知である。本発明の実施例においては、オルトケイ酸アルキルとしてオルトケイ酸エチル(以下の説明では。TEOSと略称する場合がある)を用い、アルコールと水を、酸の存在下で攪拌混合してシリカゾルを得、該シリカゾルを所定時間静置・熟成させることによってゲルを生成させ、次いで乾燥・焼成することによってシリカゲル(X)を調製している。なお該調製過程においては、乾燥前に、TEOSの0.1〜5倍重量の水を添加して膨潤させるステップを入れることが、粒径の整ったシリカゲル(X)を得るために重要である。
【0052】
前記の方法で得られたシリカゲル(X)と水溶性アルミニウム化合物の水溶液とを接触させ、次いで水の留去、乾燥、焼成を実施する方法によって、容易に本発明に係るシリカゲル(A1)が調製される。水溶性アルミニウム化合物としては、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の実施例においては、水溶性アルミニウム化合物として硝酸アルミニウムを用い、0.1重量%または1.0重量%の低濃度水溶液の形態で、水の共存下で前記シリカゲル(X)と接触混合し、次いで減圧下の水除去、120℃下の乾燥、500℃の焼成によって、アルカリ金属とアルカリ土類金属とを特定量含み、アルミニウム化合物を特定濃度含むシリカゲル(A1)を調製している。上記のように、高温での処理工程は表面状態を変化させ副反応の抑制につながる場合が多いので好ましい。
【0053】
〔シリカゲル(A2)〕
シリカゲル(A2)は、ケイ酸アルカリ塩を原料として調製された湿式法シリカゲル(Y)を化学処理することにより得られ、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、かつアルカリ金属とアルカリ土類金属とを合計して1〜350ppm含有するシリカゲルである。
【0054】
シリカゲル(A2)中のアルミニウム化合物の含有量は、アルミニウム元素として、通常10〜1000ppm、好ましくは10〜500ppm、より好ましくは10〜400ppmであると脱水反応効率の視点から好ましい。また、シリカゲル(A2)中のアルカリ金属とアルカリ土類金属は合計して1〜350ppm、好ましくは2〜300ppm、より好ましくは2〜280ppmである。この範囲にあると本発明に係る脱水反応において、高いアルコール転化率と高いオレフィン選択率を示すと同時に、反応系にケトンが共存したとしてもケトンの副反応が抑制されるので好ましい。なお、シリカゲル(A2)中には、原料であるケイ酸アルカリ塩に由来する金属、例えば鉄、チタンおよびジルコニウムが約20ppm〜200ppmの範囲で含有する場合もあるが、本発明においてはこれらの金属量の多寡は、本発明が対象とする反応成績に実質的な影響を与えるものではないことを既に確認している。
【0055】
シリカゲル(A2)が、ケイ酸アルカリ塩を原料とする湿式法シリカゲルの化学処理によって得られる限りは、当該シリカゲル(A2)の調製方法が特に制限されるわけではないが、好ましくは、シリカゲル(A2)は次に示すシリカゲル(A2‐1)〜(A2‐4)のいずれかである。
【0056】
シリカゲル(A2‐1);
シリカゲル(A2‐1)は、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)を、pHが0.5以上7未満の酸性水溶液で接触処理し、次いで焼成して得られるシリカゲルである。
【0057】
湿式法シリカゲル(Y)としては、ケイ酸ソーダ等のケイ酸アルカリ塩を鉱酸で加水分解し、得られるシリカヒドロゾルをゲル化して乾燥する公知の方法により調製してもよいし、市販品をそのまま用いてもよい。このような該湿式法シリカゲル(Y)にpHが0.5以上7未満の酸性水溶液で接触処理し、必要に応じて水洗し、次いで焼成処理して得られるシリカゲルである。なお、市販の湿式法シリカゲル(Y)としては、富士シリシア化学社製のキャリアクト(CARiACT)、AGCエスアイテック(株)製のサンスフェア、東ソー・シリカ(株)製のNipgel、DSLジャパン(株)製のCarplex等を例示できる。pHが0.5以上7未満の酸性水溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸などの鉱酸の水溶液、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸などの有機酸の水溶液を例示することができるが、中でも酢酸水溶液が経済性の点で好ましい。湿式法シリカゲル(Y)と酸性水溶液の接触処理温度は通常、室温〜150℃、好ましくは50〜100℃の範囲で、10分〜5時間接触処理する。接触処理終了後、酸性水溶液を濾過により分離した後、必要に応じ水で洗浄し、次いで乾燥・焼成することによって得られる。乾燥温度は70〜150℃、好ましくは80〜130℃である。また、焼成温度は200〜800℃、好ましくは200〜700℃である。酸性水溶液との接触処理から焼成に至る一連の工程を複数回実施することも本発明では任意である。
【0058】
シリカゲル(A2‐2);
シリカゲル(A2‐2)は、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)と水溶性アルミニウム化合物とを接触し、次いで焼成して得られるシリカゲルであり、通常はケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)と水溶性アルミニウム化合物の水溶液と接触させ、次いで水の留去、乾燥、焼成を実施する方法によって、容易に調製される。本発明の実施例においては、水溶性アルミニウム化合物として硝酸アルミニウムを用い、0.05〜2.0重量%程度の低濃度水溶液の形態で、水の共存下で前記シリカゲル(Y)と接触混合し、次いで減圧下の水除去、120℃下の乾燥、500℃の焼成によって、アルカリ金属とアルカリ土類金属とを実質的に含まず、アルミニウム化合物を特定濃度含むシリカゲル(A2‐2)を調製している。上記のように、500℃の高温での焼成処理工程を行うと、表面状態を変化させ副反応の抑制につながる場合が多いので好ましい。
【0059】
シリカゲル(A2‐3);
シリカゲル(A2‐3)は、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)を、pHが0.5以上7未満の酸性水溶液で接触処理し、次いで水溶性アルミニウム化合物と接触し、次いで焼成して得られるシリカゲルである。酸性水溶液との接触処理後、水溶性アルミニウム化合物との接触前に焼成処理工程を任意に行ってもよい。pHが0.5以上7未満の酸性水溶液との接触方法および焼成方法は、上記シリカゲル(A2‐1)の調製方法に準じる。また、水溶性アルミニウム化合物との接触方法は、上記シリカゲル(A2‐2)の調製方法に準じる。
【0060】
シリカゲル(A2‐4);
シリカゲル(A2‐4)は、ケイ酸アルカリ塩から調製された湿式法シリカゲル(Y)と水溶性アルミニウム化合物とを接触し、次いでpHが0.5以上7未満の酸性水溶液で接触処理し、次いで焼成して得られるシリカゲルである。水溶性アルミニウム化合物との接触処理後、酸性水溶液との接触前に焼成処理工程を任意に行ってもよい。pHが0.5以上7未満の酸性水溶液で接触処理する方法および焼成方法は上記シリカゲル(A2‐1)の調製方法に準じる。また、水溶性アルミニウム化合物との接触方法は、上記シリカゲル(A2‐2)の調製方法に準じる。
【0061】
前記脱水触媒としてのシリカゲル(A1)とシリカゲル(A2)の形状は特に制限は無く、球状・円柱状・押し出し状・破砕状いずれでもよく、またその粒子の大きさも、0.01mm〜100mmの範囲のもので反応器の大きさに応じ選定すればよい。
【0062】
第一の発明における反応温度についても特に限定されることはないが、好ましくは50〜500℃、更に好ましくは60〜400℃の範囲である。また、通常好ましい実施圧力範囲は、0.1〜500気圧であり、更に好ましくは0.5〜100気圧である。
【0063】
〔第二の発明〕
第二の発明は、前記アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜350ppm含有する、化学処理されたシリカゲル(A)と銀含有無機物質(B)の存在下、下記一般式(III)で表されるケトンおよび水素から単一反応工程で、下記一般式(II)で表されるオレフィンを製造することを特徴とするオレフィンの製造方法である。
【0064】
【化5】
【0065】
前記一般式(II)における、R1、R2は、前述の第一の発明において記載した一般式(I)及び(II)における、R1、R2と同義であり、一般式(III)におけるR3、R4は、前述の第一の発明において記載した一般式(III)におけるR3、R4と同義である。
【0066】
但し、第二の発明では、前記一般式(III)におけるR3と前記一般式(II)におけるR1が同一の基であり、かつ前記一般式(III)におけるR4と前記一般式(II)におけるR2が同一の原子または基である。
【0067】
第二の発明においては、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜350ppm含有するシリカゲル(A)と、銀含有無機物質(B)との2成分が触媒として用いられる。その使用態様については特に制限はないが、シリカゲル(A)と、銀含有無機物質(B)とをセンチメートルサイズの触媒粒子レベルで物理混合されたものでもよいし、両者を微細化し混合した後改めてセンチメートルサイズの触媒粒子へ成型されたものでもよいし、さらには前記シリカゲル(A)を担体としてその上に銀が担持されたものでもよいし、逆に前記銀含有無機物質(B)を担体としその上にアルミニウム化合物が担持されたものでもよい。
【0068】
本発明のオレフィンの製造方法(第二の発明)では、銀含有無機物質(B)が水添触媒として作用することにより、ケトンが水素化されてアルコールが生成した後、脱水触媒であるシリカゲル(A)の作用により、該アルコールが脱水反応を受けてオレフィンが生成すると考えられる。例えば、オレフィンがプロピレンである場合は、銀含有無機物質(B)の触媒作用により、アセトンが水素化されてイソプロピルアルコールが生成した後、シリカゲル(A)の脱水触媒の作用により、該イソプロピルアルコールが脱水反応を受けてプロピレンおよび水が生成すると考えられる。
【0069】
すなわち、本発明のオレフィンの製造方法(第二の発明)では、水素化および脱水反応が段階的に起こっていると考えられる。従って、区別可能な触媒層を形成し、反応の各段階に応じた適当な触媒種を順番に充填することもできるし、銀含有無機物質(B)とシリカゲル(A)との混合比に傾斜をつけてもよい。
【0070】
本発明において使用するケトンは、所望のオレフィンに応じて選択すればよく、例えば、オレフィンとしてプロピレンを得るためには、ケトンとしてアセトンが用いられ、オレフィンとして1−ブテンを得るためには、ケトンとしてメチルエチルケトンが用いられる。
【0071】
第二の発明であるオレフィンの製造方法は、ケトンとしてアセトンを用い、オレフィンとしてプロピレンを得るプロセスに好適に用いられる。
【0072】
原料ケトンとしては特に限定されず、クメン法フェノール製造時の副産物として得られるアセトン、2−ブタノールの脱水素により得られるメチルエチルケトン等を用いることができる。その他、オレフィンのオゾノリシスやアルキンの水和反応やフィリーデルクラフトアルカノイル化によって得られる各種ケトンを用いることも可能である。
【0073】
第二の発明においてケトンと反応させる水素は、分子状の水素ガスでも良く、また特定反応条件で水素を発生するシクロヘキサンなどの炭化水素でもよい。水素は、化学量論的にはケトンと等モル以上あればよく、分離回収の点からは、好適な範囲はケトン1モルに対して、1〜30モル、好ましくは、1〜15モルである。ケトンの転化率を100%未満に抑えたい場合は、用いる水素の量を1倍モルから低減させることで対応できる。また、本発明の反応において供給する水素は、ケトンが持つカルボニル酸素原子と反応し、最終的には水となり反応器出口から取り出すことが可能である。また、ケトンの当量以上の水素は好ましからざる副反応が進行しない限り、本質的に消費されることはない。
【0074】
反応系に水素ガスを添加する場合には、通常連続的に供給するが、この方法に特に限定されるものではなく、反応開始時に水素ガスを添加した後反応中供給を停止し、ある一定時間後に再度供給する間欠的な供給でもよいし、液相反応の場合溶媒に水素ガスを溶解させて供給してもかまわない。また、リサイクルプロセスの場合は軽沸留分とともに塔頂から回収される水素ガスを反応系に循環供給してもよい。添加する水素の圧力は、一般的には反応器の圧力と同等であるが、水素の供給方法に応じ適宜変更してもよい。
【0075】
反応原料であるケトンと水素ガスとの接触は、気液向流、気液併流どちらでも良く、また液、ガスの方向として、液下降−ガス上昇、液上昇−ガス下降、液ガス上昇、液ガス下降のいずれでもよい。
【0076】
以下、第二の発明において用いられる脱水触媒と水添触媒について説明する。
【0077】
<脱水触媒>
第二の発明で用いる脱水触媒としては、前記した第一の発明で用いられる、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として10〜1000ppm含有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜350ppm含有する、化学処理されたシリカゲル(A)をそのまま使用することができる。
【0078】
<水添触媒>
第二の発明に用いる水添触媒としては、銀含有無機物質(B)が用いられる。なお、本発明において銀含有無機物質(B)とは、該物質中に銀元素を含む無機物質(B)であり、水添触媒として作用するものであれば特に制限なく用いることができる。
【0079】
なお銀含有無機物質(B)としては、一種単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0080】
本発明に用いる水添触媒としての銀含有無機物質(B)は、ケトンの水素化触媒として作用するが、オレフィンの水素化触媒としての機能はほとんどない。このため、水添触媒として、例えば銅元素を含む触媒を用いた場合と比べて、オレフィンが水添されることにより副生するパラフィンを低減することができる。例えば、ケトンがアセトンである場合に、銀含有無機物質を水添触媒として用いると、副生物であるプロパンの生成が抑制される。
【0081】
銀含有無機物質(B)を水添触媒として用いる場合は、少なくとも1種の周期律表第13族(IIIA族)の元素をさらに含むことが好ましい。第13族(IIIA族)元素の代表例はインジウムである。銀含有無機物質(B)がインジウムを含むと、目的物であるオレフィンが水添されてパラフィンが副生する反応をより強く抑制することが可能であり、特に好ましい。
【0082】
銀含有無機物質(B)としては、例えば、Ag2O(金属酸化物)や、AgCl(金属塩化物)、Cu−Agなどのクラスター金属の形で銀化合物を含有するシリカゲルが挙げられる。
【0083】
銀含有無機物質(B)は、通常銀が担体に担持された形態であり、その場合の担体としては、例えばシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシア、シリカマグネシア、ジルコニア、酸化亜鉛、カーボン、酸性白土、けいそう土、ゼオライトを用いることができる。中でも、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシア、シリカマグネシア、ジルコニア、酸化亜鉛、カーボンのうちの少なくとも1つを選択することが好ましい。後述する本発明の実施例で検証されているようにシリカとして、本願発明に係る脱水触媒としてのシリカゲル(A)を用いることもできる。
【0084】
担体に担持された銀含有無機物質(B)の調製方法としては、例えば、銀の硝酸塩等の水溶液に担体を含浸、焼成する方法や、銀を有機溶媒に可溶にするため配位子とよばれる有機分子を結合させた錯体として有機溶媒中に添加し溶液を調製し、該溶液に上記の担体を含浸、焼成する方法や、さらに錯体のうちあるものは真空下で気化するため蒸着などの方法で担体に担持することも可能である。また、担体を対応する金属塩から得る際に、水添触媒となる銀の元素を共存させて、担体合成と銀の担持とを同時に行う共沈法を採用することもできる。また、市場で入手できる銀元素含有シリカゲルなどを用いてもよい。なお、銀含有無機物質(B)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0085】
銀含有無機物質(B)が、さらに少なくとも1種の周期律表第13族(IIIA族)の元素を含む場合には、該触媒の調製方法としては例えば、銀元素を含む触媒に、第13族(IIIA)の元素を担持する方法等が挙げられる。
【0086】
また銀含有無機物質(B)に、PbSO4、FeCl2やSnCl2などの金属塩、BaSO4などを添加するとケトンの水添活性や選択性が向上する場合があるので、必要に応じて添加することもできる。
【0087】
前記銀含有無機物質(B)の形状は特に制限は無く、球状・円柱状・押し出し状・破砕状いずれでもよく、またその粒子の大きさも、0.01mm〜100mmの範囲のもので反応器の大きさに応じ選定すればよい。
【0088】
また、前述のように銀含有無機物質(B)は、脱水触媒としてのシリカゲル(A)に担持されていてもよく、このような担持された銀含有無機物質(B)の調製方法としては例えば、銀の硝酸塩等の水溶液をシリカゲル(A)に含浸、焼成する方法や、銀を有機溶媒に可溶にするため配位子とよばれる有機分子を結合させた錯体として、有機溶媒中に添加し、溶液を調製し、該溶液にシリカゲル(A)を含浸、焼成する方法や、さらに錯体のうちあるものは真空下で気化するため蒸着などの方法でシリカゲル(A)に担持することも可能である。また、シリカゲル(A)を対応する金属塩から得る際に、銀元素を含む触媒となる銀の元素を共存させて、担体合成と銀元素を含む触媒の担持とを同時に行う共沈法を採用することもできる。
【0089】
第二の発明における反応温度についても本発明では特に限定されることはないが、好ましくは50〜500℃、更に好ましくは60〜400℃の範囲である。また、通常好ましい実施圧力範囲は、0.1〜500気圧であり、更に好ましくは0.5〜100気圧である。
【0090】
また第二の発明を実施するに際し、使用する触媒量は特に限定されないが、例えば、反応を固定床流通装置を用いて行う場合、原料(ケトン)の時間あたりの供給量(重量)を触媒の重量(銀元素を含む触媒と、脱水触媒との合計重量)で割った値、即ちWHSVで示すと、0.01〜200/hrの範囲であることが望ましく、より好ましくは0.02〜100/hrの範囲が好適である。
【0091】
なお、上記脱水触媒としてのシリカゲル(A)と、水添触媒としての銀含有無機物質(B)との使用量比としては特に限定は無いが、通常はシリカゲル(A):銀含有無機物質(B)(重量比)が1:0.01〜1:100であり、好ましくは1:0.05〜1:50である。あまりにも脱水触媒の重量比が小さいと脱水反応が充分に行われず、オレフィン収率が低下するため、経済的ではない。またあまりにも脱水触媒の重量比が大きいとケトンの転化率が低下し、これもまた経済的ではない。
【0092】
第二の発明においては前記脱水触媒と前記水添触媒は、混合して用いられる。しかし、反応形式を固定床反応とする場合は、触媒の充填方法は反応成績に大きな影響を与える場合もある。上述のように第二の発明では、水素化と脱水とが段階的に起こっていると考えられる。従って、反応の各段階に応じた適当な触媒種を順番に充填することは、触媒を効率よく使用するという意味で、また目的としない副反応を抑制するという意味で好ましい充填方法である。
【0093】
特に反応速度を上げるために水素圧や温度を増大する場合、低い水素圧や低い温度での反応では見られなかった好ましくない副反応が起こることは一般的な化学反応においてよく見られる挙動であり、このような場合においては特に触媒の充填方法が反応成績に大きな影響を与える可能性があるので、後述する充填方法(2)等を採用することが好ましい。
【0094】
触媒種を充填する方法としては、例えば(1)シリカゲル(A)および銀含有無機物質(B)を混合し、充填する方法、(2)前記銀含有無機物質(B)からなる層(上流側)と、前記シリカゲル(A)からなる層(下流側)とを形成するように充填する方法、(3)前記銀含有無機物質(B)を担持したシリカゲル(A)を充填する方法、(4)前記銀含有無機物質(B)からなる層(上流側)と、前記シリカゲル(A)および前記銀含有無機物質(B)からなる層(下流側)とを形成するように充填する方法、(5)前記銀含有無機物質(B)からなる層(上流側)と、前記銀含有無機物質(B)を担持したシリカゲル(A)からなる層(下流側)を形成するように充填する方法、(6)前記シリカゲル(A)および前記銀含有無機物質(B)からなる層(上流側)と、前記シリカゲル(A)からなる層(下流側)とを形成するように充填する方法、(7)前記銀含有無機物質(B)を担持したシリカゲル(A)からなる層(上流側)と、前記シリカゲル(A)からなる層(下流側)とを形成するように充填する方法等が挙げられる。なお、上流側とは、反応器の入り口側、すなわち原料が反応の前半に通過する層を示し、下流側とは、反応器の出口側、すなわち原料が反応の後半に通過する層を示す。また、ケトンと水素とを気液向流で接触させることにより反応させる場合には、前記反応器の入り口側とは、ケトンを導入するための入り口を示す。
【0095】
第一の発明および第二の発明を実施するにあたり、反応系内に触媒および反応試剤に対して不活性な溶媒もしくは気体を添加して、希釈した状態で行うことも可能である。
【0096】
第一の発明および第二の発明を実施するに際して、その方法はバッチ式、セミバッチ式、または連続流通式のいずれの方法においても実施することが可能である。液相、気相、気−液混合相の、いずれの形態においても実施することが可能である。触媒の充填方式としては、固定床、流動床、懸濁床、棚段固定床等種々の方式が採用され、いずれの方式で実施しても差し支えない。
【0097】
第二の発明を実施する際には、脱水触媒であるシリカゲル(A)および水添触媒である銀含有無機物質(B)を公知の方法で乾燥して水分除去してもよい。固定床反応方式の場合には、前記シリカゲル(A)および銀含有無機物質(B)を充填した反応器へ窒素、ヘリウムなどの不活性ガスを流通させながら、300℃以上の温度に、10分以上保持すればよい。さらに銀元素を含む触媒の活性を発現させるために、水分除去のための乾燥処理後、水素気流下での処理を行うこともできる。
【0098】
ある経過時間において触媒活性が低下する場合に、公知の方法で再生を行い前記脱水触媒および前記銀元素を含む触媒の活性を回復することができる。
【0099】
オレフィンの生産量を維持するために、反応器を2つまたは3つ並列に並べ、一つの反応器が再生している間に、残った1つまたは2つの反応器で反応を実施するメリーゴーランド方式をとっても構わない。さらに反応器が3つある場合、他の反応器2つを直列につなぎ、生産量の変動を少なくする方法をとってもよい。また流動床流通反応方式や移動床反応方式で実施する場合には、反応器から連続的または断続的に、一部またはすべての触媒を抜き出し、相当する分を補充することにより一定の活性を維持することが可能である。
【0100】
第二の発明を実施する際に、ベンゼンの如き芳香族化合物を共存させた場合には、ベンゼンのアルキル化物を得ることが可能となる。具体的には、単一反応工程で、アセトン等のケトン、ベンゼン等の芳香族化合物、および水素を出発原料として、クメン等のアルキル化芳香族化合物を効果的に得ることもできる。
【実施例】
【0101】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0102】
〔脱水触媒の評価方法1〕
脱水触媒によるイソプロピルアルコール(以下、IPAと略称する場合がある。)の脱水活性とアセトンの副反応性を評価するため、フィードポンプ、窒素通気ライン、電気炉、反応液回収部、触媒充填部分を有する反応器を設置した固定床反応装置を用い、ダウンフローによる常圧流通反応を以下の方法で行った。
【0103】
内径1cmのSUS316製反応器に、250〜500μに分級した脱水触媒1gを充填し反応器上部から窒素を10ml/minで通気しながら触媒層の温度を300℃に加熱した。反応原料のアセトンとIPAの等モル溶液を2ml/hrで通液し反応を行った。通液を始めてから5時間経過後にサンプリングした反応ガスと反応液のGC(ガスクロマトグラフィー)分析を行うことによって反応成績を算出した。
【0104】
〔脱水触媒の評価方法2〕
脱水触媒によるIPAの脱水活性とアセトンの副反応性を評価するため、高圧用フィードポンプ、高圧用水素マスフロー、高圧用窒素マスフロー、電気炉、触媒充填部分を有する反応器、背圧弁を設置した固定床反応装置を用い、ダウンフローによる加圧液相流通反応を以下の方法で行った。
【0105】
内径1cmのSUS316製反応器に、250〜500μに分級した脱水触媒1gを充填し、水素で3.0MPaまで加圧した後、反応器入口側より10ml/分の水素気流下、300℃でアセトンとIPAの等モル溶液を1.6g/hrで流通させた。反応器出口と背圧弁の中間に高圧窒素マスフローにより50ml/分の窒素を導入しながら反応を行った。通液を始めてから5時間経過後に、背圧弁の出側からサンプリングした反応ガスと反応液のGC分析を行い、反応成績を算出した。
【0106】
〔実施例1〕
300mlのナスフラスコに、pH3.1に調整した硝酸水溶液30gとエチルアルコール150mlおよびオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)69.5gを仕込み80℃で撹拌する。ゲル化後、水100mlを加える。水を含んで膨潤したゲルを120℃乾燥、500℃で焼成しシリカゲル20gを得た。本シリカゲルのICPによる金属分析から、アルミニウム元素2ppm、ナトリウム5ppm、カルシウム2ppm、鉄1ppmおよび亜鉛1ppmが検出された。従って、アルカリ金属(IA族)およびアルカリ土類金属(IIA族)の合計量は7ppmであることが分った。なお、ICPとは誘導結合プラズマ分析のことであり、該分析法による金属の定量下限値は1ppmである。以降の説明では定量下限値未満である場合は「不検出(ND)」表記している。
【0107】
次に、100mlのナスフラスコに、上で得られたシリカゲル3g、水10gおよび0.1wt%硝酸アルミニウム水溶液1.25gを仕込み室温で1時間撹拌した後、減圧下余分な水を除去し120℃で3時間乾燥、500℃で6時間焼成を行い本発明に係る脱水触媒としてのシリカゲル(A1)を得た。本触媒をICPによって金属分析した結果、アルミニウム元素30ppmが含まれていた。また、本触媒の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った結果を表1に示す。
【0108】
〔実施例2〕
実施例1の方法において、TEOSから調製したシリカゲル3g、水10gおよび0.1wt%硝酸アルミニウム水溶液4.17gを仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行うことによってアルミニウム元素として100ppmのアルミニウム化合物が担持されたシリカゲル(A1)を得た。
【0109】
なお、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計量は、実施例1のシリカゲルと同様に7ppmであった。本触媒の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った結果を表1に示す。
【0110】
〔実施例3〕
実施例1の方法において、TEOSから調製したシリカゲル3g、水10gおよび1.0wt%硝酸アルミニウム水溶液2.08gを仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行うことによってアルミニウム元素として500ppmのアルミニウム化合物が担持されたシリカゲル(A1)を得た。
【0111】
なお、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計量は、実施例1のシリカゲルと同様に7ppmであった。本触媒の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った結果を表1に示す。
【0112】
〔実施例4〕
実施例1の方法において、TEOSから調製したシリカゲル3g、水10gおよび1.0wt%硝酸アルミニウム水溶液4.17gを仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行うことによってアルミニウム元素として1000ppmのアルミニウム化合物が担持されたシリカゲル(A1)を得た。
【0113】
なお、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計量は、実施例1のシリカゲルと同様に7ppmであった。本触媒の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った結果を表1に示す。
【0114】
〔比較例1〕
実施例1において、TEOSから調製したシリカゲルそのものの脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表1に示す。
【0115】
〔比較例2〕
0.1wt%硝酸アルミニウム水溶液に換えて、1.0wt%硝酸アルミニウム水溶液6.25gを仕込んだ以外は、実施例2と同様の操作を行うことによって、アルミニウム元素として1500ppmのアルミニウム化合物が担持されたシリカゲルを得た。
【0116】
なお、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計量は、実施例1のシリカゲルと同様に7ppmであった。本触媒の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った結果を表1に示す。
【0117】
〔実施例5〕
実施例1で用いたシリカゲル(A1)を用い、前記評価方法1においてアセトンとIPAとの等モル溶液の代わりに、メチルエチルケトン(MEK)とイソプロピルアルコールとの等モル溶液を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。その結果を表1に示した。
【0118】
【表1】
【0119】
表1の実施例1〜4、比較例1、2の結果から明らかなように、アルミニウム元素、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を特定量含むシリカゲル(A1)を脱水触媒として用いた場合ではIPA転化率、プロピレン選択率、アセトンのアルドール反応など副反応による消失の目安となるアセトン回収率の点において優れることが分る。また実施例5に示されるように、IPAに対応しないケトン共存下であってもケトンは全く傷つけられることなくIPAの脱水反応のみが選択的に進行することが確認された。
【0120】
〔実施例6〕
富士シリシア社製CARiACT(Q−10)20gと5%酢酸水溶液100gを300mlナスフラスコに仕込み80℃で30分撹拌した後、酢酸水をろ過で分離する。残ったシリカゲルに5%酢酸水溶液100gを加えて同様に処理する操作を3回繰り返した。酢酸水を分離したシリカゲルは水で洗浄し、120℃で3時間乾燥し、500℃で6時間焼成することによってシリカゲル(A2)を調製した。本触媒の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表2に示す。
【0121】
なお本触媒のICPによる金属分析から、アルミニウム73ppm、ナトリウム14ppm、マグネシウム34ppm、カルシウム74ppmの他に、鉄37ppm、チタン130ppm、ジルコニウム17ppmが検出された。なお、ICPとは誘導結合プラズマ分析のことであり、該分析法による金属の定量下限値は1ppmである。以降の実施例では定量下限値未満である場合は「不検出(ND)」表記している。
【0122】
〔実施例7〕
富士シリシア社製CARiACT(Q−10)を富士シリシア社製CARiACT(Q−3)に換えた以外は、実施例6の方法に従い酢酸洗浄後、乾燥・焼成を行い得られたシリカゲル(A2)の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表2に示す。
【0123】
なお本触媒のICPによる金属分析から、アルミニウム 29ppm、ナトリウム 3ppm、マグネシウム不検出、カルシウム不検出の他に、鉄25ppm、チタン96ppm、ジルコニウム16ppmが検出された。
【0124】
〔実施例8〕
実施例7において、5%酢酸水溶液の代わりに0.1N塩酸水溶液を用いる以外同様に行った。得られたシリカゲル(A2)の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表2に示す。
【0125】
〔実施例9〕
実施例7において、5%酢酸水溶液の代わりに0.1N硝酸水溶液を用いる以外同様に行った。得られたシリカゲル(A2)の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表2に示す。
【0126】
〔実施例10〕
実施例6で得られたシリカゲル(A2)20gを、水10gおよび0.1wt%硝酸アルミニウム水溶液13.9gが加えられた100mlのナスフラスコに仕込み、室温で1時間撹拌した後、減圧下余分な水を除去し120℃で3時間乾燥、500℃で6時間焼成を行い、50ppmのアルミニウムを担持したシリカゲル(A2)を調製した。本触媒の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表2に示す。
【0127】
〔実施例11〕
実施例6で得られたシリカゲル(A2)に、実施例10に示したアルミニウム担持方法で、250ppmのアルミニウムを担持したシリカゲル(A2)を調製した。本触媒の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表2に示す。
【0128】
〔実施例12〕
300mlのナスフラスコに装入された0.1wt%硝酸アルミニウム水溶液34.7gの液中に、富士シリシア社製CARiACT(Q−10) 10gを仕込み室温で1時間撹拌した後、減圧下余分な水を除去し120℃で3時間乾燥、500℃で6時間焼成を行い、250ppmのアルミニウムを担持したシリカゲル(A2)を調製した。本触媒の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表2に示す。
【0129】
〔実施例13〕
300mlのナスフラスコに装入された水10gおよび0.1wt%硝酸アルミニウム水溶液13.9gの液中に、富士シリシア社製CARiACT(Q−3) 10gを仕込み室温で1時間撹拌した後、減圧下余分な水を除去し120℃で3時間乾燥、500℃で6時間焼成を行い、100ppmのアルミニウムを担持したシリカゲル(A2)を調製した。本触媒の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表2に示す。
【0130】
〔比較例3〕
富士シリシア社製CARiACT(Q−10)の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表2に示す。
【0131】
なお本触媒のICPによる金属分析から、ナトリウム42ppm、マグネシウム77ppm、カルシウム150ppmでありアルミニウム、鉄、チタンおよびジルコニウムは実施例6に示した濃度と同じであった。
【0132】
〔比較例4〕
富士シリシア社製CARiACT(Q−3)の脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表2に示す。
【0133】
なお本触媒のICPによる金属分析から、ナトリウム250ppm、マグネシウム1ppm、カルシウム5ppmでありアルミニウム、鉄、チタンおよびジルコニウムは実施例7に示した濃度と同じであった。
【0134】
【表2】
【0135】
表2に示すように、市販の湿式法シリカゲルにアルミニウムを付与する、および/または酸性水溶液との接触処理によってアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計量が特定範囲にあるシリカゲル(A2)を用いることによってIPA転化率、プロピレン選択率ともに改善されていることが分かる。なお、市販のシリカゲルの酸洗浄処理によって、アルカリ金属やアルカリ土類金属の含有量が低減する理由は、酸によるアルカリ金属やアルカリ土類金属の中和除去機能が働いているためと考えている。
【0136】
〔比較例5〕
βゼオライトの脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表3に示す。
【0137】
〔比較例6〕
γ―アルミナの脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表3に示す。
【0138】
〔比較例7〕
ジルコニアの脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表3に示す。
【0139】
〔比較例8〕
ハイドロタルサイトの脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表3に示す。
【0140】
〔比較例9〕
チタニアの脱水触媒性能を評価方法1に順じて行った反応結果を表3に示す。
【0141】
【表3】
【0142】
脱水機能を持つとされている公知の固体酸触媒(表3)では、プロピレンの多量化反応やアセトン同士の反応による副反応物が増加しプロピレン選択率が低下する。
【0143】
〔実施例14〕
実施例6で使用したものと同じ触媒を用いて脱水触媒の評価方法2に順じ高圧条件での評価を行った反応結果を表4に示す。
【0144】
〔実施例15〕
実施例10で使用したものと同じ触媒を用いて脱水触媒の評価方法2に順じ高圧条件での評価を行った反応結果を表4に示す。
【0145】
〔実施例16〕
実施例11で使用したものと同じ触媒を用いて脱水触媒の評価方法2に順じ高圧条件での評価を行った反応結果を表4に示す。
【0146】
【表4】
【0147】
表4に示すように、高圧条件下、水素ガス通気中でも本発明に係わるシリカゲル(A2)を用いると高い選択率でプロピレンが得られ、アセトン同士の副反応が抑制されていることが分かる。
【0148】
〔実施例17〕
300mlのナスフラスコにシリカゲル(和光純薬製ワコーゲルC−100)50.0g、乳酸銀(0.5水和物)4.77g、イオン交換水100mlを加えロータリーエバポレータを用い、室温で1時間混合した。20mmHgの減圧下40〜50℃で水を留去し、銀をシリカゲルに担持した。得られた、銀が担持されたシリカゲルに、水素気流下で、100℃から5時間をかけて段階的に300℃まで温度を上げる還元処理を行った。その結果、黒色の5%Ag/シリカ触媒52.5gを得た。
【0149】
300mlのナスフラスコに前記した5%Ag/シリカ触媒29.1g、硝酸インジウム3水和物0.86g、イオン交換水100mlを加えロータリーエバポレータを用い、室温で1時間混合した。20mmHgの減圧下40〜50℃で水を留去し、硝酸インジウムを5%Ag/シリカ触媒に担持した。得られた、インジウムが担持された5%Ag/シリカ触媒に、水素気流下で、100℃から3時間をかけて段階的に300℃まで温度を上げる還元処理を行った。その結果、黒色の5%Ag−1%In/シリカ触媒29.2gを得た。5%Ag−1%In/シリカ触媒を、ふるいを用いて250〜500μに分級した。
【0150】
内径1cmのSUS316製反応器に、上記方法によって調製した5%Ag−1%In/シリカ触媒6.0gと実施例2に記載した方法によって調製した、アルミニウム元素として100ppmのアルミニウム化合物が担持された、脱水触媒としてのシリカゲル1.0gをよく混合し触媒層として充填した。なお、当該シリカゲル中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計量は、実施例2で調製したシリカゲルと同様に7ppmであった。
【0151】
水素で3.0Mpaまで加圧した後、反応器入口側より22ml/分の水素気流下、300℃でアセトンを0.30g/Hrで流通させた。
【0152】
反応器出口と背圧弁の中間に高圧窒素マスフローにより50ml/分の窒素を導入した。背圧弁以降のラインからサンプリングを行いGC分析により生成物を定量した。反応結果を表5に示す。
【0153】
〔比較例10〕
実施例17において、脱水触媒として比較例1で用いたシリカゲルを用いた以外は実施例17と全く同様に反応を行った。反応結果を表5に示す。
【0154】
〔実施例18〕
実施例17において、脱水触媒として実施例4で用いた、アルミニウム化合物をアルミニウム元素として1000ppm担持したシリカゲルを用いた以外は実施例17と全く同様に反応を行った。反応結果を表5に示す。
【0155】
〔実施例19〕
300mlのナスフラスコに実施例1に示す方法でTEOSから調製したシリカゲル10.0g、10wt%硝酸銀水溶液7.87g、イオン交換水20mlを加えロータリーエバポレータを用い、室温で1時間混合した。20mmHgの減圧下40〜50℃で水を留去し、銀をシリカゲルに担持した。得られた銀が担持されたシリカゲルに、水素気流下で、100℃から5時間をかけて段階的に300℃まで温度を上げる還元処理を行った。その結果、黒色の5%Ag/シリカ触媒10.5gを得た。
【0156】
上記方法によって調製した5%Ag/シリカ触媒1.5gと実施例2に記載した方法によって調製した、アルミニウム元素として100ppmが担持された脱水触媒としてのシリカゲル1.5gをよく混合し触媒層として充填し実施例17と同様に反応を行った。なお、当該シリカゲル中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計量は、実施例2で調製したシリカゲルと同様に7ppmであった。反応結果を表5に示す。
〔実施例20〕
実施例19において、Ag/シリカ触媒のAg担持濃度を10%、アセトンフィード量を1.70g/Hrにした以外同様に反応を行った。反応結果を表5に示す。
〔実施例21〕
実施例1において硝酸アルミニウム水溶液の仕込み量を変更する以外は、実施例1に記載した方法に準じて調製した、アルミニウム元素として200ppmが担持された脱水触媒としてのシリカゲル10.0gに10wt%硝酸銀水溶液7.87g、イオン交換水20mlを加えロータリーエバポレータを用い、室温で1時間混合した。20mmHgの減圧下40〜50℃で水を留去し、銀をシリカゲルに担持した。得られた銀が担持されたアルミニウム担持シリカゲルに、水素気流下で、100℃から5時間をかけて段階的に300℃まで温度を上げる還元処理を行った。その結果、黒色の5%Ag・200ppmAl/シリカ触媒10.5gを得た。なお、当該Al含有シリカ触媒中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計量は、7ppmであった。上記方法によって調製した5%Ag・200ppmAl/シリカ触媒3.0gを触媒層として充填し、実施例19において反応温度を300℃から260℃に変えた以外同様に反応を行った。反応結果を表5に示す。
【0157】
【表5】
【0158】
表5の実施例17〜21、および比較例10から明らかなように、脱水触媒としてアルカリ金属およびアルカリ土類金属を合計して0〜20 ppm、アルミニウム元素として10〜1000ppmのアルミニウム化合物を含むシリカゲル(A1)を、水添触媒として銀含有無機物質を用いるとアセトン転化率とアセトン基準のプロピレン選択率に優れる。
【0159】
〔実施例22〕
実施例17と同様な方法によって、250〜500μに分級された5%Ag−1%In/シリカ触媒を得た。内径1cmのSUS316製反応器に、該方法で調製された5%Ag−1%In/シリカ触媒6.0gと実施例10で使用したのと同じアルミニウムを50ppm担持したシリカゲル(A2)(脱水触媒)1.0gをよく混合し触媒層として充填した。
【0160】
水素で3.0Mpaまで加圧した後、反応器入口側より22ml/分の水素気流下、300℃でアセトンを0.30g/Hrで流通させた。
【0161】
反応器出口と背圧弁の中間に高圧窒素マスフローにより50ml/分の窒素を導入した。背圧弁以降のラインからサンプリングを行いGC分析により生成物を定量した。反応結果を表6に示す。
【0162】
〔比較例11〕
実施例17と同様な方法によって調製・分級された5%Ag−1%In/シリカ触媒5.0gと、ヘテロポリ酸塩であるH0.52.5PW1240(リンタングステン酸のHを部分的にKに交換したリンタングステン酸カリウム塩)がシリカに重量比1:1で担持された触媒1gをよく混合し触媒層として充填した。なお、上記のH0.52.5PW1240がシリカに重量比1:1で担持された触媒は特許文献3(WO2010/106966)の実施例7に記載された方法を忠実に再現することによって得た。その後、実施例22と全く同じ方法で反応を行った。反応結果を表6に示す。
【0163】
〔実施例23〕
実施例6に示した方法でCARiACT(Q−10)を酢酸洗浄処理したシリカゲル10.0gに10wt%硝酸銀水溶液7.87g、イオン交換水20mlを加えロータリーエバポレータを用い、室温で1時間混合した。20mmHgの減圧下40〜50℃で水を留去し、銀をシリカゲルに担持した。得られた銀が担持された酢酸洗浄シリカゲルに、水素気流下で、100℃から5時間をかけて段階的に300℃まで温度を上げる還元処理を行った。その結果、黒色の5%Ag/酢酸洗浄シリカゲル触媒10.5gを得た。上記方法によって調製した触媒3.0gを触媒層として充填した。水素ガス量を21.8ml/分、アセトンフィード量を0.85g/Hrで流通させる以外は実施例22と同様に反応を行った。反応結果を表6に示す。
【0164】
〔比較例12〕
脱水触媒をγアルミナに変えて、実施例22と同様に反応を行った。反応結果を表6に示す。
【0165】
【表6】
【0166】
なお、前記表5、6において、反応時間とは、反応結果(アセトン転化率、選択率)を与えた、反応開始からの時間を示す。
【0167】
表6から、銀担持シリカゲル触媒と脱水触媒としてのシリカゲル(A2)を混合する方法でも、またシリカゲル(A2)に銀を担持した触媒からも高い選択率でプロピレンを得ることができることがわかる。比較例11と比較例12は、銀担持シリカゲル触媒と、脱水触媒としての公知のヘテロポリ酸塩やγ―アルミナの混合触媒を用いる方法であるが、転化率と選択率が本発明に比較して劣る。
【産業上の利用の可能性】
【0168】
本発明によって、ケトンの共存下であっても、ケトンのアルドール縮合等の副反応を起こすことなくアルコールの分子内脱水反応によってオレフィンを高効率で得ることが可能なオレフィンの製造方法が提供される。また、本発明は、ケトンと水素を直接反応させて、単一反応工程で高選択的にオレフィンを得るための工業上、実用的な方法を提供するものである。この方法を用いれば、クメン法によるフェノール製造時に併産されるアセトンから、直接プロピレンを得ることができる。
【国際調査報告】