(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014049682
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160818
(54)【発明の名称】減速機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/46 20060101AFI20160722BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20160722BHJP
【FI】
   !F16H1/46
   !F16H57/04 D
   !F16H57/04 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】2014537864
(21)【国際出願番号】JP2012074517
(22)【国際出願日】20120925
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000154347
【氏名又は名称】株式会社ユニバンス
【住所又は居所】静岡県湖西市鷲津2418番地
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】久米 孝章
【住所又は居所】静岡県湖西市鷲津2418番地 株式会社ユニバンス内
(72)【発明者】
【氏名】加藤 忠彦
【住所又は居所】静岡県湖西市鷲津2418番地 株式会社ユニバンス内
【テーマコード(参考)】
3J027
3J063
【Fターム(参考)】
3J027FA10
3J027FA36
3J027FB04
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3J063AC01
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3J063XD47
3J063XD53
3J063XD62
3J063XE14
3J063XF13
(57)【要約】
軽量化とコンパクト化とを図った減速機構を提供する。
減速機構20は、第1サンギヤ22、及び第1サンギヤ22に噛み合う第1ピニオンギヤ24を構成する第1歯車機構21aと、第2サンギヤ23、及び第2サンギヤ23に噛み合う第2ピニオンギヤ25を構成する第2歯車機構21bと、第1及び第2ピニオンギヤ24,25のそれぞれを回転自在に支持するとともに、第1サンギヤ22及び第2サンギヤ23に回転動力を入出力可能なプラネタリキャリア26とを備えている。第1歯車機構21aと第2歯車機構21bとにより減速比が分担される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1サンギヤ、及び前記第1サンギヤに噛み合う第1ピニオンギヤを構成する第1歯車機構と、
第2サンギヤ、及び前記第2サンギヤに噛み合う第2ピニオンギヤを構成する第2歯車機構と、
前記第1及び第2ピニオンギヤのそれぞれを回転自在に支持するとともに、前記第1サンギヤ及び前記第2サンギヤに回転動力を入出力可能なプラネタリキャリアと、
を備え、
前記第1歯車機構と前記第2歯車機構とにより減速比を分担させる構成を有してなることを特徴とする減速機構。
【請求項2】
前記第1サンギヤは、前記プラネタリキャリアに対して離間した状態で、前記第1歯車機構及び前記第2歯車機構を収容するケーシングに固定され、
前記第2サンギヤは、前記プラネタリキャリアに相対回転可能に固定されてなることを特徴とする請求項1記載の減速機構。
【請求項3】
前記プラネタリキャリアは、ピニオンシャフトを介して前記第1ピニオンギヤ及び前記第2ピニオンギヤを回転自在に支持するピニオン支持部を有してなることを特徴とする請求項1又は2記載の減速機構。
【請求項4】
前記ピニオン支持部は、軸受を介して前記ピニオンシャフトを支持してなることを特徴とする請求項3記載の減速機構。
【請求項5】
前記第1ピニオンギヤ又は前記第2ピニオンギヤの一方は、前記ピニオンシャフトの一端に一体に形成され、前記第2ピニオンギヤ又は前記第1ピニオンギヤの他方は、前記ピニオンシャフトの他端にスプライン結合されてなることを特徴とする請求項3又は4記載の減速機構。
【請求項6】
高速段又は低速段に切替えを行う変速機構が、前記第2歯車機構に連結可能に設けられてなることを特徴とする請求項1記載の減速機構。
【請求項7】
前記ケーシングの前記第1サンギヤと対向する壁面には、前記第1サンギヤに供給されるオイルを溜めるオイル溜部が設けられてなることを特徴とする請求項2記載の減速機構。
【請求項8】
前記ピニオン支持部には、前記ピニオンシャフトにオイルを導く油孔が形成されてなることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の減速機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機構に係り、特に、動力駆動伝達経路上に好適に用いられる減速機構に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の自動車事情から、環境対応の対策として、高効率化(低燃費性)を進めている一方で、乗車時の商品性(搭乗スペースの拡大による居住性及び快適性)を図る傾向がある。よって、車両の駆動力であるパワートレインの軽量化及びコンパクト化が必須条件となっている。
【0003】
ところで、四輪駆動用の駆動力配分装置に減速機構を用いる場合は、遊星歯車機構が採用されている。この一例としては、例えば遊星歯車機構を有するトランスファ装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2604891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のトランスファ装置の遊星歯車機構は、二対の大小歯車に内歯車(インターナルギヤ)を噛み合せることで減速を行う。この遊星歯車機構は、減速機構として、軸方向スペースに有利な構造であるが、径方向はスペース的に不利となる。つまり、減速比を増すほど、インターナルギヤの歯数が増加することになり、インターナルギヤの径寸法が増大する。その結果、重量化するばかりでなく、大型化する傾向が顕著となる。
【0006】
このことは、車両のセンターフロアに突出する室内突起が大きくなり、搭乗スペースを減少させるので、車両の商品性を落とすということに繋がる。
【0007】
従って、本発明の目的は、軽量化とコンパクト化とを図った減速機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、第1サンギヤ、及び前記第1サンギヤに噛み合う第1ピニオンギヤを構成する第1歯車機構と、第2サンギヤ、及び前記第2サンギヤに噛み合う第2ピニオンギヤを構成する第2歯車機構と、前記第1及び第2ピニオンギヤのそれぞれを回転自在に支持するとともに、前記第1サンギヤ及び前記第2サンギヤに回転動力を入出力可能なプラネタリキャリアと、を備え、前記第1歯車機構と前記第2歯車機構とにより減速比を分担させる構成を有してなることを特徴とする減速機構にある。
【0009】
[2]上記[1]記載の発明にあって、前記第1サンギヤは、前記プラネタリキャリアに対して離間した状態で、前記第1歯車機構及び前記第2歯車機構を収容するケーシングに固定され、前記第2サンギヤは、前記プラネタリキャリアに相対回転可能に固定されてなることを特徴とする。
【0010】
[3]上記[1]又は[2]記載の発明にあって、前記プラネタリキャリアは、ピニオンシャフトを介して前記第1ピニオンギヤ及び前記第2ピニオンギヤを回転自在に支持するピニオン支持部を有してなることを特徴とする。
【0011】
[4]上記[3]記載の発明にあって、前記ピニオン支持部は、軸受を介して前記ピニオンシャフトを支持してなることを特徴とする。
【0012】
[5]上記[3]又は[4]記載の発明にあって、前記第1ピニオンギヤ又は前記第2ピニオンギヤの一方は、前記ピニオンシャフトの一端に一体に形成され、前記第2ピニオンギヤ又は前記第1ピニオンギヤの他方は、前記ピニオンシャフトの他端にスプライン結合されてなることを特徴とする。
【0013】
[6]上記[1]記載の発明にあって、高速段又は低速段に切替えを行う変速機構が、前記第2歯車機構に連結可能に設けられてなることを特徴とする。
【0014】
[7]上記[2]記載の発明にあって、前記ケーシングの前記第1サンギヤと対向する壁面には、前記第1サンギヤに供給されるオイルを溜めるオイル溜部が設けられてなることを特徴とする。
【0015】
[8]上記[3]〜[5]のいずれかに記載の発明にあって、前記ピニオン支持部には、前記ピニオンシャフトにオイルを導く油孔が形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、減速機構の軽量化とコンパクト化とを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の代表的な実施の形態に係る減速機構を有するトランスファを説明するための要部断面模式図である。
【図2】二輪高速駆動状態における減速機構の動作をスケルトンで示す説明図である。
【図3】四輪高速駆動状態における減速機構の動作を説明するためのスケルトン図である。
【図4】四輪低速駆動状態における減速機構の動作を説明するためのスケルトン図である。
【図5】実施の形態に係る減速機構のオイル潤滑経路を説明するための要部断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0019】
(トランスファの全体構成)
図1において、全体を示す符号1は、この実施の形態に係る典型的な四輪駆動車用トランスファの要部を概略的に示している。図示例によるトランスファ1は、例えばFR(フロントエンジン、リヤドライブ)方式をベースにした四輪駆動車に適用されるものである。
【0020】
このトランスファ1は、図1に示すように、構成部品を収容するケーシング2を有する。このケーシング2の前側部位には、図示しないエンジンからの回転動力を入力する入力軸3がシール付きボールベアリング4を介して回転自在に支持されている。このシール付きボールベアリング4と、入力軸3の外周面と、ケーシング2とにより形成される環状の空間には、オイルシール5が配置されている。
【0021】
この入力軸3には、図1及び図2に示すように、ケーシング2内に同軸的に配置された主出力軸である後輪出力軸6が直結されている。この後輪出力軸6は、ベアリング7,8を介して入力軸3の内部に相対回転自在に支持されている。この後輪出力軸6と平行な部位には、後輪出力軸6に対する副出力軸となる図示しない前輪出力軸が設けられている。
【0022】
この後輪出力軸6には、図2に示すように、ベアリング13を介して駆動スプロケット9が同軸的に設けられている。一方の前輪出力軸の同軸上には、駆動スプロケット9に対する図示しない従動スプロケットが設けられている。この駆動スプロケット9と従動スプロケットとには、図示を省略した環状の前輪駆動用チェーンが掛け回されている。
【0023】
この入力軸3には、図1及び図2に示すように、入力軸3から入力された回転動力を減速して後輪出力軸6に出力する減速機構20が同軸的に配置されている。入力軸3にスプライン結合されたロックギヤ10と、後輪出力軸6に一体に形成されたハブ11とには、減速機構20において高速段H又は低速段Lの走行変速切替えを行うH−L切替え用のスリーブ12が変速機構としてスライド移動可能に配置されている。なお、図1において、スリーブ12は、四輪高速駆動状態を示しており、図2においては、スリーブ12は、二輪高速駆動状態を示している。
【0024】
この後輪出力軸6のハブ11と駆動スプロケット9のハブ9aとには、図2に示すように、減速機構20から入力する駆動力を2輪駆動(以下、「2WD」という。)又は4輪駆動(以下、「4WD」という。)に切替える2WD−4WD切替え用のスリーブ14がスライド移動可能に設けられている。なお、図2において、スリーブ14は、二輪高速駆動状態を示している。
【0025】
(減速機構の構成)
この実施の形態において最も基本的な構成は、減速機構20にある。この減速機構20は、図1及び図2に示すように、ピニオンギヤに噛み合うリングギヤを有しないダブルサンギヤ構造である遊星歯車機構21により構成されている。この遊星歯車機構21は、第1歯車機構21aと第2歯車機構21bとを同一軸線上に備えており、この第1歯車機構21aと第2歯車機構21bとにより減速比を分担することで、減速機構20の減速比が確保されるようになっている。
【0026】
この第1歯車機構21aは、図1及び図2に示すように、第1サンギヤ22と、第1サンギヤ22に噛み合う第1ピニオンギヤ24との二つの回転要素を構成する。一方の第2歯車機構21bは、第2サンギヤ23と、第2サンギヤ23に噛み合う第2ピニオンギヤ25との二つの回転要素を構成する。第1歯車機構21aと第2歯車機構21bとには、第1サンギヤ22及び第2サンギヤ23に回転動力を入出力可能な共通のプラネタリキャリア26が入力軸3と同軸的に一体に形成されている。
【0027】
このプラネタリキャリア26の外周面には、図1及び図2に示すように、円盤状のピニオン支持部26aが突出して形成されている。このピニオン支持部26aには、複数の軸孔26b,…,26bが同一の位相差をもって貫通して形成されている。この軸孔26bのそれぞれには、ベアリング27を介してピニオンシャフト25aが回転自在に支持されている。
【0028】
このピニオンシャフト25aの一端には、図1及び図2に示すように、第1ピニオンギヤ24がスプライン結合されている。このピニオンシャフト25aの他端には、第2ピニオンギヤ25が一体に形成されている。この第1ピニオンギヤ24及び第2ピニオンギヤ25のそれぞれは、プラネタリキャリア26に自転自在及び公転自在に支持されている。
【0029】
この第1サンギヤ22には、図1及び図2に示すように、ケーシング2に向けて延びる固定部材である腕部22aが設けられている。この腕部22aは、ケーシング2の壁面にボルト15により締付固定されている。この腕部22aにより、第1サンギヤ22とプラネタリキャリア26とは、互いに離間した状態で配置されている。一方の第2サンギヤ23は、プラネタリキャリア26にニードルベアリング28を介して相対回転自在に支持されている。
【0030】
このプラネタリキャリア26の回転動力は、図1における実線の矢印で示すように、第1ピニオンギヤ24を介して第1サンギヤ22に入力される。この第1サンギヤ22は、ケーシング2に固定されているので、第1サンギヤ22から入力された回転動力は、第2ピニオンギヤ25を介して第2サンギヤ23から後輪出力軸6に出力されるようになっている。
【0031】
(2WDH状態における減速機構の動作)
二輪高速駆動(以下、「2WDH」という。)状態で車両走行する際には、図2に示すように、2WD−4WD切替え用のスリーブ14は、駆動スプロケット9のハブ9aと後輪出力軸6のハブ11とを連結しない。一方、H−L切替え用のスリーブ12は、入力軸3のロックギヤ10及び後輪出力軸6のハブ11に噛み合っており、この後輪出力軸6と、入力軸3に一体に形成されたプラネタリキャリア26とを連結する。
【0032】
このスリーブ12は、図2に示すように、第2サンギヤ23から脱しているため、プラネタリキャリア26の回転動力は、ニードルベアリング28を介して遊星歯車機構21を空転させる。この遊星歯車機構21の出力回転は、後輪出力軸6に伝達されない。
【0033】
よって、2WDH状態では、入力軸3からプラネタリキャリア26に入力した回転動力は、図2に示すように、ロックギヤ10、スリーブ12、及びハブ11を介して後輪出力軸6に出力する。
【0034】
(4WDH状態における減速機構の動作)
四輪高速駆動(以下、「4WDH」という。)状態で車両走行する際には、図3に示すように、2WD−4WD切替え用のスリーブ14は、駆動スプロケット9のハブ9aと後輪出力軸6のハブ11とに噛み合っており、駆動スプロケット9と後輪出力軸6とを連結する。
【0035】
一方、H−L切替え用のスリーブ12は、図3に示すように、上記2WDH状態と同様に、入力軸3のロックギヤ10と後輪出力軸6のハブ11とに噛み合ったままの状態にあり、後輪出力軸6には、遊星歯車機構21からの回転動力が伝達されない。
【0036】
よって、4WDH状態では、入力軸3からプラネタリキャリア26に入力した回転動力は、図3に示すように、ロックギヤ10、スリーブ12、及びハブ11を介して後輪出力軸6に出力するとともに、ハブ11、スリーブ14、ハブ9a、駆動スプロケット9、前輪駆動用チェーン、及び従動スプロケットを介して前輪出力軸に出力する。
【0037】
(4WDL状態における減速機構の動作)
四輪低速駆動(以下、「4WDL」という。)状態で車両走行する際には、図4に示すように、2WD−4WD切替え用のスリーブ14は、上記4WDH状態と同様に、駆動スプロケット9と後輪出力軸6とを連結したままの状態にある。一方、H−L切替え用のスリーブ12は、入力軸3のロックギヤ10から脱することで、第2サンギヤ23と後輪出力軸6のハブ11とを連結する。
【0038】
そのため、入力軸3からプラネタリキャリア26に入力した回転動力は、図1の実線の矢印で示すように、ピニオンシャフト25a及び第1ピニオンギヤ24を介して第1サンギヤ22に伝達される。この第1サンギヤ22は、ケーシング2に固定されているので、第1サンギヤ22からの回転動力は、ピニオンシャフト25a及び第2ピニオンギヤ25を介して第2サンギヤ23に伝達される。
【0039】
この第2サンギヤ23から出力された回転動力は、図4に示すように、スリーブ12により第2サンギヤ23と後輪出力軸6のハブ11とが連結されるため、スリーブ12及びハブ11を介して後輪出力軸6には、遊星歯車機構21からの低速回転駆動力が伝達されるとともに、ハブ11、スリーブ14、ハブ9a、駆動スプロケット9、前輪駆動用チェーン、及び従動スプロケットを介して前輪出力軸に伝達される。
【0040】
上記のように構成された減速機構20によると、第1ピニオンギヤ24の歯数をZCとし、第1サンギヤ22の歯数をZDとし、第2サンギヤ23の歯数をZAとし、第2ピニオンギヤ25の歯数をZBとしたとき、減速機構20のギヤ比iOは、次式(1)で示される。後輪出力軸6の回転数を減速機構20の出力回転数ωAとし、入力軸3の回転数を減速機構20の入力回転数ωSとしたとき、出力回転数ωAは、入力回転数ωSに対して次式(2)の関係で減速される。
【0041】
iO=(ZB/ZA)×(ZD/ZC)…(1)
ωA=(1−iO)×ωS …(2)
【0042】
よって、減速機構20のLowギヤ比iLは、次式(3)に基づいて算出される。
iL=1/(1−iO) …(3)
【0043】
上記式(1)〜(3)から明らかなように、第1ピニオンギヤ24の歯数ZC、第1サンギヤ22の歯数ZD、第2サンギヤ23の歯数ZA、及び第2ピニオンギヤ25の歯数ZBを適宜に選択することで、減速機構20のLowギヤ比iLを所要の値に設定することができる。
【0044】
このLowギヤ比iLは、特に限定するものではないが、例えば約2.717程度に設定される。これにより、4WDL状態で車両走行する際に、後輪出力軸6の回転動力は、約2.717程度のLowギヤ比iLに相応する値に減速される。この減速された回転動力が後輪出力軸6の駆動力となる。
【0045】
(オイル潤滑経路の構成)
このケーシング2の壁面と第1サンギヤ22の腕部22aとの間には、図5に示すように、オイルを貯留するオイル溜部16を形成することができる。この腕部22a、ケーシング2の壁面、シール付きボールベアリング4、及び入力軸3により形成される環状の空間17は、誘導路16aを介してオイル溜部16に連通する第1のオイル潤滑経路として形成されている。
【0046】
このオイル溜部16は、図5に示すように、ケーシング2の内面上部に設けられたオイルガータ2aの下流側に配置されており、例えば減速機構20の回転により発生する遠心力で、オイルガータ2aへ掻き上げられたオイルがオイル溜部16内に貯留されるように構成されている。
【0047】
このオイル溜部16に貯留されたオイルは、図5における破線の矢印で示すように、誘導路16aから空間17を経て、第1サンギヤ22、第1ピニオンギヤ24、及びプラネタリキャリア26の間に形成された油溝17aに供給される。ケーシング2の壁面に固定された第1サンギヤ22をオイル潤滑経路として構成することができるため、遠心力の影響を受けることなく、格別な部品を設ける必要はない。
【0048】
なお、シール付きボールベアリング4に代えて、オープン構造のボールベアリングを用いることで、オイル潤滑経路を形成することも可能であり、オイル溜部16に貯留されたオイルをオイルシール5に供給することができる。
【0049】
このプラネタリキャリア26のピニオン支持部26aには、図示しない油圧ポンプから供給されるオイルをベアリング27に導くことが可能な油孔26cを第2のオイル潤滑経路として形成することができる。この油孔26cは、後輪出力軸6に形成された油路6a及び油孔6bを介して、後輪出力軸6の外周面とプラネタリキャリア26との間に形成された油溝6cに連通している。
【0050】
この油路6a、油孔6b、及び油溝6cを通って油孔26cに供給されたオイルは、図5の一点鎖線の矢印で示すように、ベアリング27に供給される。このベアリング27に供給されたオイルは、第2ピニオンギヤ25と、第2サンギヤ23と、プラネタリキャリア26とにより形成された油溝6dに供給される。
【0051】
(実施の形態の効果)
以上のように構成された減速機構20によれば、上記効果に加えて、次の効果が得られる。
【0052】
(1)遊星歯車機構21のインターナルギヤ(リングギヤ)を廃止した構成となっているので、減速機構20全体の外径の縮小化が可能となる。それに相まって、減速機構20の重量を軽量化することができる。
(2)減速機構20全体の外径を小さくすることが可能であることから、シフトチェンジの際にドライバーに操作されるシフトレバーと連動するストライキングロッドなどの他の部品との干渉を防止することができる。
(3)共通のプラネタリキャリア26に対して、互いに同一軸線上に配置された第1歯車機構21aと第2歯車機構21bとによって減速比を分担させることが可能であり、減速機構20全体の外径を増大させることなく、所要の減速比を確保することができる。
【0053】
[変形例]
以上より、本発明における減速機構20の代表的な構成例を実施の形態、及び図示例を挙げて説明したが、上記実施の形態、及び図示例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。本発明の技術思想の範囲内において種々の構成が可能であり、次に示すような変形例も可能である。
【0054】
上記実施の形態及び図示例にあっては、減速機構20の回転により発生する遠心力で掻き上げられたオイルを収集するオイルガータ2aを設けた構成を例示したが、本発明は、これに限定されるものではなく、オイルガータ2aに代えて、第1サンギヤ22の腕部22a自体にオイルを収集する構成を形成することを可能としている。
【0055】
その構成例としては、例えば第1サンギヤ22の腕部22aを蓋形状に形成するとともに、その腕部22aの外面にオイル供給孔と、そのオイル供給孔の開口周縁部から外側に向けて突出した凹状のオイル導入リブとを形成することができる。かかる構成により、減速機構20の回転により跳ね上げられたオイルをオイル導入リブ内に収集し、収集されたオイルをオイル供給孔からオイル溜部16へ導くことが可能となる。
【0056】
上記実施の形態及び図示例では、ピニオンシャフト25aの一端に第1ピニオンギヤ24をスプライン結合し、ピニオンシャフト25aの他端に第2ピニオンギヤ25を一体に形成した構成例を説明したが、これとは逆に、ピニオンシャフト25aの一端に第1ピニオンギヤ24を一体に形成し、ピニオンシャフト25aの他端に第2ピニオンギヤ25をスプライン結合した構成であってもよく、ピニオンシャフト25aの両端に第1ピニオンギヤ24及び第2ピニオンギヤ25のそれぞれをスプライン結合した構成であっても構わない。
【0057】
上記実施の形態及び図示例では、FRタイプの四輪駆動車用トランスファについて説明したが、本発明は、これに限定されるものではないことは勿論であり、例えばセンターデフを備えたFRタイプの四輪駆動車用トランスファやFFタイプの四輪駆動車用トランスファなどに効果的に使用することができる。
【0058】
上記実施の形態及び図示例では、トランスファに本発明の減速機構を適用した場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではないことは勿論であり、例えばデファレンシャルなどの各種の動力駆動伝達経路上に本発明の減速機構20を効果的に使用することができる。
【0059】
なお、例えば入力側と出力側との間でトルクを伝達する各種の装置に使用することができることは勿論であり、例えば農業機械、建設土木機械、運搬機械等の作業用車両、不整地用四輪走行車(ATV)、鉄道等の各種の車両、各種の産業機械や工作機械等にも適用可能であり、本発明の初期の目的を十分に達成することができる。
【0060】
以上の説明からも明らかなように、上記実施の形態、変形例及び図示例の中で説明した特徴の組合せの全てが本発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきであり、本発明の技術思想の範囲内において種々の構成が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1…トランスファ、2…ケーシング、2a…オイルガータ、3…入力軸、4…シール付きボールベアリング、5…オイルシール、6…後輪出力軸、6a…油路、6b,26c…油孔、6c,6d,17a…油溝、7,8,13,27…ベアリング、9…駆動スプロケット、9a,11…ハブ、10…ロックギヤ、12,14…スリーブ、15…ボルト、16…オイル溜部、16a…誘導路、17…空間、20…減速機構、21…遊星歯車機構、21a…第1歯車機構、21b…第2歯車機構、22…第1サンギヤ、22a…腕部、23…第2サンギヤ、24…第1ピニオンギヤ、25…第2ピニオンギヤ、25a…ピニオンシャフト、26…プラネタリキャリア、26a…ピニオン支持部、26b…軸孔、28…ニードルベアリング
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【国際調査報告】