(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014049842
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】超電導コイル及び超電導磁石装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/04 20060101AFI20160725BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20160725BHJP
   H01F 6/00 20060101ALI20160725BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20160725BHJP
   G01R 33/3815 20060101ALI20160725BHJP
【FI】
   !H01F5/08 GZAA
   !H01F5/08 C
   !H01F7/22 G
   !H01F7/22 C
   !A61B5/05 331
   !A61B5/05 360
   !G01N24/06 510C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】2014538040
(21)【国際出願番号】JP2012075126
(22)【国際出願日】20120928
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 和英
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号 株式会社日立製作所内
(72)【発明者】
【氏名】一木 洋太
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号 株式会社日立製作所内
(72)【発明者】
【氏名】安藤 竜弥
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号 株式会社日立製作所内
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB45
4C096CA02
(57)【要約】
巻ボビン(8)に超電導線(6)が層状に巻回された巻線部(5)と、超電導線(6)のなす層同士の間に設けられる金属板(9)とを有し、金属板(9)には、同一の層内で互いに隣り合う超電導線(6)の間に、超電導線(6)に沿うような凸部(9b)が設けられる。巻ボビン(8)は、円筒部(8a)と、円筒部(8a)の軸方向の両端に設けられ円筒部(8a)と熱的に接続する一対のフランジ(8b、8c)とを備え、金属板(9)は、超電導線(6)に接触する接触領域(9a)と、接触領域(9a)からフランジ(8b)へ伸び、円筒部(8a)の周方向の幅が接触領域(9a)の周方向の幅より狭い引出領域(9c)とを備える。引出領域(9c)は、フランジ(8b)を貫通し、冷凍機(3)とフランジ(8b)とに熱的に接続する冷却ヘッド(10)に達する。これにより、巻線部(5)内に生じる温度勾配の増大を抑制できる超電導コイル(2)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻ボビンに超電導線が層状に巻回された巻線部と、
前記超電導線のなす層同士の間、及び、前記超電導線のなす層と前記巻ボビンとの間の内の、少なくともどちらか一方に設けられる金属板とを有し、
前記金属板には、同一の前記層内で互いに隣り合う前記超電導線の間に、前記超電導線に沿うような凸部が設けられていることを特徴とする超電導コイル。
【請求項2】
前記巻ボビンは、
円筒部と、
前記円筒部の軸方向の両端に設けられ、前記円筒部と熱的に接続する一対のフランジとを備え、
前記金属板は、
前記超電導線に接触する接触領域と、
前記接触領域から前記フランジへ伸び、前記円筒部の周方向の幅が前記接触領域の周方向の幅より狭い引出領域とを備えることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項3】
冷凍機と前記フランジとに熱的に接続する冷却ヘッドを有し、
前記引出領域は、前記フランジを貫通して前記冷却ヘッドに達していることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の超電導コイル。
【請求項4】
前記接触領域は、前記フランジから離れていることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の超電導コイル。
【請求項5】
前記金属板は、
前記層に沿って湾曲した湾曲板と、
前記超電導線に沿って前記湾曲板上に固定され、前記層に沿って湾曲し、前記凸部となる湾曲棒とを備えることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項6】
前記湾曲棒は、前記湾曲板の両面に設けられていることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の超電導コイル。
【請求項7】
前記金属板は単独でも、前記湾曲板の湾曲の形状を維持できることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の超電導コイル。
【請求項8】
前記金属板は、前記層に沿って湾曲し、
前記凸部は、前記金属板の曲げによって形成され、前記金属板単独でも前記曲げの形状を維持できることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項9】
前記金属板は、前記層に沿って湾曲し、
前記金属板の前記巻ボビンの軸を含む平面で切断した断面形状は、波形状になり、
前記波形状の高低をなす内の高所部が、前記凸部となり、
前記金属板単独でも前記波形状を維持できることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項10】
前記超電導線は、複数本の超電導素線が撚られた超電導撚線であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項11】
前記金属板には、4.2Kにおける熱伝導率が50W/m・K以上である金属が用いられることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項12】
前記金属板は、アルミニウム若しくはその合金、又は、銅若しくはその合金であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項13】
1枚の前記金属板が前記巻ボビンの軸から見込まれる周方向の見込角は、90度を超え、180度以下であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項14】
前記超電導線のなす層と層の間、又は、前記超電導線のなす層と前記巻ボビンの間において、同一の前記間では、前記巻ボビンの周方向に2つ又は3つの前記金属板が設けられていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項15】
請求の範囲第1項に記載の超電導コイルと、
前記超電導コイルを冷却する冷凍機とを有することを特徴とする超電導磁石装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導コイルと、それを備える超電導磁石装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導コイルの冷却技術としては、液体ヘリウムや液体窒素などの冷媒の中に超電導コイルを浸漬して冷却するものと、冷凍機の冷却用伝導体を超電導コイルに接触させ、固体熱伝導で冷却するものとがある。このうち後者は、いわゆる、伝導冷却型超電導コイルであり、巻ボビンと、この巻ボビンに超電導線を巻回してなる巻線部と、巻ボビンを冷却するための冷却ヘッドと、この冷却ヘッドを伝熱バーを介して冷却する冷凍機とを有している(例えば、特許文献1参照)。超電導線には、ニオブチタン超電導線が用いられることが多いが、最近になって臨界温度が39Kの二ホウ化マグネシウム超電導線や、臨界温度が90〜115Kの酸化物超電導線を用いた伝導冷却型超電導コイルが試作されている。いずれの超電導線が用いられようとも、伝導冷却型超電導コイルでは、巻線部を冷凍機と熱的に強固に接続し冷却する必要がある。このために、巻ボビンに冷却ヘッドを直接設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−142241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、超電導コイルが大型化すると、その熱容量が大きくなり、所望の運転温度までの冷却に多大な時間を要する場合があった。具体的には、超電導コイル(巻線部)内に温度勾配が生じ、温度の高い箇所でも所望の運転温度まで冷却するには、温度の低い箇所を所望の運転温度より低い温度まで冷却しなければならず、冷却に多大な時間を要した。巻ボビンに近接している超電導線では温度が低下し易く、巻ボビンから離れるほど超電導線の温度は高くなり、その温度差は数ケルビン(K)に達する場合があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、巻線部内に生じる温度勾配の増大を抑制できる超電導コイル、及び超電導磁石装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、
巻ボビンに超電導線が層状に巻回された巻線部と、
前記超電導線のなす層同士の間、及び、前記超電導線のなす層と前記巻ボビンとの間の内の、少なくともどちらか一方に設けられる金属板とを有し、
前記金属板には、同一の前記層内で互いに隣り合う前記超電導線の間に、前記超電導線に沿うような凸部が設けられていることを特徴とする超電導コイルである。
【0007】
また、本発明は、この超電導コイルと、この前記超電導コイルを冷却する冷凍機とを有することを特徴とする超電導磁石装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、巻線部内に生じる温度勾配の増大を抑制できる超電導コイル、及び超電導磁石装置を提供できる。なお、前記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明の第1の実施形態に係る超電導磁石装置の平面図である。
【図1B】図1AのA−A方向の矢視断面図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態に係る超電導コイルに用いられる金属板の展開図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態に係る超電導コイルに用いられる金属板の斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る超電導磁石装置の縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る超電導コイルに用いられる金属板の斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る超電導磁石装置の縦断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る超電導コイルに用いられる金属板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1Aに、本発明の第1の実施形態に係る超電導磁石装置1の平面図を示し、図1Bに、図1AのA−A方向の矢視断面図を示す。超電導磁石装置1では、超電導コイル2の冷却技術として、冷凍機3の冷却用伝導体を、伝熱バー4を介して、超電導コイル2に接触させ、固体熱伝導で冷却している。超電導コイル2は、巻ボビン8と、巻ボビン8に超電導線6(6a、6b、6c、6d)が層状に巻回された巻線部5と、超電導線6(6a、6b、6c、6d)のなす層間と、超電導線6のなす層6aと巻ボビン8の間との内の、少なくともにどちらか一方に設けられる金属板9と、冷凍機3と巻ボビン8とに熱的に接続する冷却ヘッド10とを有している。巻ボビン8は、円筒部8aと、円筒部8aの軸方向の両端に設けられ、円筒部8aと熱的に接続する円環形状で一対のフランジ8bとを備えている。
【0012】
図1Bに示すように、超電導線6には、複数本(図1Bの例では7本)の超電導素線7が撚られた超電導撚線が用いられている。超電導素線7には、ニオブチタン超電導線を用いることができる。また、超電導素線7には、臨界温度が39Kに達しうる二ホウ化マグネシウム超電導線や、臨界温度が90〜115Kに達しうる酸化物超電導線を用いることができる。超電導素線7は、絶縁材で被覆されており、対地絶縁を取ることができる。金属板9には、超電導線6のなす同一の層6a、6b、6c、6d内で互いに隣り合う超電導線6の中間位置に、超電導線6に沿って、凸部9bが設けられている。金属板9は、超電導線6に接触し凸部9bが設けられている接触領域(9a、9b)と、この接触領域(9a、9b)からフランジ8bへ伸びる引出領域9cとを備えている。
【0013】
接触領域(9a、9b)には、超電導線6の層6a、6b、6c、6dに沿って湾曲した湾曲板9aと、超電導線6に沿って湾曲板9a上に固定され、層6a、6b、6c、6dに沿って湾曲し、凸部(9b)となる湾曲棒9bとを備えている。湾曲棒9bは、湾曲板9aの両面に設けられている。
【0014】
超電導線6のなす層6a、6b、6c、6dとそれに隣り合う層6a、6b、6c、6dとの層間、又は、超電導線6のなす層6aと巻ボビン8の円筒部8aの間(層間)において、同一の層間毎では、巻ボビン8の周方向に2つ又は3つ(図1Aの例では2つ)の金属板9(湾曲板(接触領域)9a)が設けられている。そして、1枚の金属板9の湾曲板(接触領域)9aが、巻ボビン8の中心軸から見込まれる周方向の見込角θは、90度を超え、180度以下になっている(図1Aの例では略180度になっている。)。図1Bに示すように、湾曲板9aは、フランジ8c(8b、8)から離れている。
【0015】
金属板9と、巻ボビン8と、冷却ヘッド10と、伝熱バー4には、4.2Kにおける熱伝導率が50W/m・K以上である金属材が用いられている。具体的にその金属材には、アルミニウム若しくはその合金、又は、銅若しくはその合金を用いることができる。なお、第1の実施形態では、金属板9の金属材として、純度が99.9%のアルミニウムを用いた。また、湾曲板9aの厚さは、0.2mmであった。
【0016】
図1Aに示すように、引出領域9cの円筒部8aの周方向の幅は、接触領域9aの周方向の幅より狭くなっている。引出領域9cは、フランジ8bに設けられた貫通孔8dを貫通し、フランジ8bに熱的に接続する冷却ヘッド10に達し熱的に接続している。
【0017】
次に、冷凍機3による巻線部5の冷却について説明する。まず、冷凍機3が、伝熱バー4を介した熱伝導により、冷却ヘッド10を冷却する。冷却ヘッド10は、熱伝導により、巻ボビン8と金属板9を冷却する。巻ボビン8と金属板9は、熱伝導により、内部に温度勾配が生じないように巻線部5を冷却する。具体的に、巻ボビン8に近接する超電導線6は、巻ボビン8によって迅速に冷却することができる。巻ボビン8から離れた領域Rに位置する超電導線6は、金属板9に接しており、これによって迅速に冷却することができる。そして、金属板9には、凸部(9b)となる湾曲棒9bが設けられているので、超電導線6は金属板9に熱的に良好に接(近接)することができ、その冷却を迅速化することができる。これらにより、巻線部5の全体が迅速に冷却でき、巻線部5内部に生じる温度勾配を抑制することができる。
【0018】
巻ボビン8に超電導線6を巻く巻線工程では、まず、円筒部8aの外周面に金属板9を敷く。このとき、金属板9の引出領域9cは、フランジ8bの貫通孔8dを貫通させ、冷却ヘッド10に接続しておく。次に、超電導線6を、金属板9上の凸部(9b)となる湾曲棒9bに沿って、1層分(1層目の層6a)を巻く。この巻回により、超電導線6は、金属板9の湾曲板9aに圧接するだけでなく、湾曲棒(凸部)9bに圧接する。特に、超電導線6が、超電導撚線であると、超電導線6が湾曲板9aに圧接すると、超電導素線7の束である超電導線6は圧接の方向に薄く潰れようとし、逆に、束をなす複数本の超電導素線7が、その圧接方向の直角方向に広がろうとすることで、湾曲棒(凸部)9bに圧接する。
【0019】
次に、超電導線6の層6aの上に金属板9を敷く。このときも、引出領域9cを貫通孔8dに貫通させ冷却ヘッド10に接続する。次に、超電導線6を、金属板9上の凸部(9b)となる湾曲棒9bに沿って、1層分(2層目の層6b)を巻く。以下同様に、金属板9を敷いては、超電導線6を1層分巻くことを繰り返す。そして、最後に、超電導線6の最外層6dの上に金属板9を巻きつけている。これらによれば、超電導線6は、金属板9の湾曲板9aと湾曲棒(凸部)9bに圧接し、熱抵抗を小さくできるので、各層6a〜6dの超電導線6を迅速に冷却することができる。そして、巻線部5を全域にわたって迅速に冷却でき、そこでの温度勾配の発生を抑制することができる。なお、湾曲板9aは、フランジ8c(8b、8)から離れているので、湾曲板9aが、その外側の層(例えば層6b)の超電導線6から圧接されると、その湾曲板9aは、その内側の層(例えば層6a)の超電導線6に圧接する。そして、その湾曲板9aの内側に設けられた湾曲棒(凸部)9bも、その内側の層(例えば層6a)の超電導線6に圧接する。これによっても、熱抵抗を小さくでき、超電導線6を迅速に冷却できる。また、金属板9の引出領域9cは、フランジ8bに設けられた貫通孔8dを貫通して直接冷却ヘッド10に接続しているので、これによって、フランジ8bとの接触(熱)抵抗をキャンセルでき、巻線部5の全域にわたる冷却を迅速化でき、巻線部5における温度勾配の発生を抑制できる。
【0020】
そして、本第1の実施形態の超電導磁石装置1と、これから金属板9を省いた比較例の超電導磁石装置とで、巻線部5内の全領域が定常運転温度に到達するまでの時間を比較した。これより、前者の方が後者の約1/2の時間で、定常運転温度に到達できることがわかった。この比較の結果は、超電導コイル2のサイズに関わらず同様であった。また、巻線部5内の全領域が定常運転温度に到達した際の巻線部5内の温度勾配を、本第1の実施形態の超電導磁石装置1と、前記比較例の超電導磁石装置とで比較した。本第1の実施形態の巻線部5における最高温度と最低温度の差は0.2K以下であった。一方、比較例のそれは1.2Kであった。このように、本第1の実施形態の超電導磁石装置1によれば、巻線部5内に生じる温度勾配の増大を抑制できる。
【0021】
また、図1Aに示すように、超電導線6の層6a、6b、6c、6dがなす層間毎に、金属板9(湾曲板9a)が、周方向に2つ又は3つ(図1Aの例では2つ)に分割され、分割された1枚の金属板9(湾曲板9a)の巻ボビン8の中心軸から見込まれる周方向の見込角θは、90度を超え、180度以下になっている(図1Aの例では略180度になっている。)ので、交流損失、特に、渦電流損失を低減することができる。また、見込角θは、90度を超え、180度以下の金属板9(湾曲板9a)は、いわゆる、アーチ構造をなしているので、金属板9(湾曲板9a)の外側から局所的に超電導線6が圧接しても、金属板9(湾曲板9a)が変形することはない。そして、金属板9(湾曲板9a)は、外側からの局所的な圧接力を、分散させて均一化して金属板9(湾曲板9a)の内側の超電導線6の層6a等の広範囲に作用させることができる。そして、湾曲棒(凸部)9bは、金属板9(湾曲板9a)のアーチ構造を補強し、金属板9(湾曲板9a)の薄板化・軽量化を可能にしている。また、金属板9は、冷却性能の向上だけでなく、蓄冷性能も向上させている。金属板9が超電導線6に近接して配置されることで、超電導線6の局所で一時的に発熱した熱を、瞬時に超電導線6から予め冷えている(蓄冷されている)金属板9に伝導させ、除去することができる。逆に、金属板9(湾曲板9a)が、周方向に分割されておらず1つでは、外側の超電導線6からの圧接力を、内側の超電導線6に作用させることができない。また、金属板9(湾曲板9a)が、周方向に4つ以上に分割されていると、アーチ構造による効果が小さくなってしまう。同様に、見込角θが、90度以下では、アーチ構造による効果が小さくなってしまい、180度を超え360度未満だと、金属板9(湾曲板9a)を周方向に対称に配置できず、圧接力の周方向の分布が不均一になる。見込角θが360度では、金属板9(湾曲板9a)が、周方向に分割されておらず、前記したように、外側の超電導線6からの圧接力を、内側の超電導線6に作用させることができない。
【0022】
また、超電導コイル2に過電流を通電したときにおいても、本第1の実施形態の超電導磁石装置1は有効である。例えば、超電導素線7に二ホウ化マグネシウム超電導線を用いた超電導撚線(超電導線6)の超電導コイル2を用いて比較実験を行った。超電導コイル2は、温度14K、磁場強度1T中で、臨界電流が30Aであった。この超電導コイル2に、臨界電流の30Aから1A刻みで電流値を上げ、その上げた際にはその電流値を1分間保持するように通電を行った。つまり、30Aから31Aに電流値を上げて1分間保持し、31Aから32Aに電流値を上げて1分間保持し、この1Aの上昇と1分間の保持を繰り返した。この繰り返しにより、最終的に、超電導コイル2の電圧が急激に上昇し、いわゆる、熱暴走が生じる。この比較実験では、この熱暴走の生じた際の電流値を計測し比較した。その結果、本第1の実施形態の超電導コイル2では、臨界電流の1.8倍である54Aで熱暴走が起きた。一方、比較例の金属板9を省いた超電導コイルでは、臨界電流の1.3倍である39Aで熱暴走した。これより、第1の実施形態によれば、熱暴走の発生を抑制でき、過電流が流れるような状況でも使用でき、有用である。
【0023】
また、本第1の実施形態の超電導コイル2によれば、高精度に所定の位置に超電導線6を巻回することができる。すなわち、金属板9(湾曲板9a)のアーチ構造により、同一層6a、6b、6c、6d内の複数本の超電導線6の、巻ボビン8の中心軸からの距離を、均一に保持することができる。また、湾曲棒(凸部)9bにより、超電導線(超電導撚線)6、特に、超電導素線7は、巻ボビン8の中心軸の方向の移動は抑制される。これにより、超電導線6(超電導素線7)のその中心軸方向の位置を、再現性よく決定することができる。特に、湾曲棒(凸部)9bは、互いに隣接する超電導線6の間に位置して、それらの超電導線6の位置を決定するので、同一層6a、6b、6c、6d内の複数本の超電導線6の互いの位置関係を一意に決定することができる。前記により、超電導線6を、巻ボビン8の径方向と中心軸方向に対して位置決めでき、高精度に配置することができる。これにより、層6a、6b、6c、6dの超電導線6の巻数を、容易に一致させることができる。そして、本第1の実施形態の超電導コイル2によれば、設計された所定の位置に超電導線6を巻回することができるので、MRI(magnetic resonance imaging)やNMR(nuclear magnetic resonance)に要求されるような高い磁場均一度を有する磁場を再現性よく発生させることができる。
【0024】
図2Aに、本発明の第1の実施形態に係る超電導コイルに用いられる金属板9の展開図を示し、図2Bに、その金属板9の斜視図を示す。図2Aに示すように、展開した湾曲板9aの形状は、矩形としたが、平行四辺形でもよい。また、引出領域9cは、図2Aの例では、湾曲板9aの矩形の辺の中央に設けたが、これに限らず、周辺部の設けてもよい。そして、図1Aに示すように、湾曲板9aの矩形の辺に対して引出領域9cを設ける位置を、湾曲板9a毎に互いに違えてもよい。これによれば、湾曲板9aが周方向に分割されていても、超電導線6の層6a、6b、6c、6dの周方向のどこであっても、内側・外側のどちらか一方は必ず湾曲板9aに接することができる。また、図2Bに示すように、金属板9は単独でも、湾曲板9aの湾曲の形状を維持できるようになっている。金属板9(湾曲板9a)は、箔材やシート材のように自重や外力によって容易に変形せず、湾曲の形状(アーチ構造)を自身で維持できるだけの強度を有している。そのために、例えば、金属板9(湾曲板9a)は、箔材やシート材より厚く形成されている。
【0025】
(第2の実施形態)
図3に、本発明の第2の実施形態に係る超電導磁石装置1の縦断面図を示し、図4に、それの超電導コイルに用いられる金属板9の斜視図を示す。第2の実施形態の超電導磁石装置1が、第1の実施形態の超電導磁石装置1と異なっている点は、前記凸部が、金属板9(湾曲板9a)の曲げ9dによって形成されている点である。曲げ(凸部)9dは、金属板9(湾曲板9a)の外側(凸側)に突出するように設けられている。逆に、金属板9(湾曲板9a)の内側(凹側)には、溝が生じている。この金属板9はプレス加工により形成することができる。
【0026】
(第3の実施形態)
図5に、本発明の第3の実施形態に係る超電導磁石装置1の縦断面図を示し、図6に、それの超電導コイルに用いられる金属板9の斜視図を示す。第3の実施形態の超電導磁石装置1が、第1の実施形態の超電導磁石装置1と異なっている点は、金属板9(湾曲板9a)の巻ボビン8の軸を含む平面で切断した断面形状が波形状になっている点である。その波形状の高低をなす内の高所部9eが、その外側に位置する超電導線6に対して前記凸部として機能している。また、その波形状の高低をなす内の低所部9fが、その内側に位置する超電導線6に対して前記凸部として機能している。これに伴い、金属板9を挟んで隣り合う層、例えば層6aと6b内の超電導線6は、俵積みのように互い違いに配置されている。なお、超電導線6には、断面形状が円形の超電導多芯線等を用いている。ただ、断面形状が円形の超電導線6に限ったわけでなく、図1Bに示した超電導線(超電導撚線)6でもよい。逆に、第1と第2の実施形態の超電導線6に、断面形状が円形の超電導多芯線等を用いてもよい。
【0027】
そして、本発明は、前記した第1〜第3の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した第1〜第3の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 超電導磁石装置
2 超電導コイル
3 冷凍機
4 伝熱バー
5 巻線部
6 超電導線(超電導撚線)
6a、6b、6c、6d 層
7 超電導素線
8 巻ボビン
8a 円筒部
8b、8c フランジ
8d 貫通孔
9 金属板
9a 湾曲板(接触領域)
9b 湾曲棒(凸部、接触領域)
9c 引出領域
9d 金属板の曲げ(凸部、接触領域)
9e 金属板の波形状の高所部(凸部、接触領域)
9f 金属板の波形状の低所部(凸部、接触領域)
10 冷却ヘッド
θ 金属板の軸から見込まれる周方向の見込角
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】

【手続補正書】
【提出日】20130702
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻ボビンに超電導線が層状に巻回された巻線部と、
前記超電導線のなす層同士の間、及び、前記超電導線のなす層と前記巻ボビンとの間の内の、少なくともどちらか一方に設けられる金属板とを有し、
前記金属板には、同一の前記層内で互いに隣り合う前記超電導線の間に、前記超電導線に沿うような凸部が設けられており、
前記超電導線は、複数本の超電導素線が撚られた超電導撚線であることを特徴とする超電導コイル。
【請求項2】
前記巻ボビンは、
円筒部と、
前記円筒部の軸方向の両端に設けられ、前記円筒部と熱的に接続する一対のフランジとを備え、
前記金属板は、
前記超電導線に接触する接触領域と、
前記接触領域から前記フランジへ伸び、前記円筒部の周方向の幅が前記接触領域の周方向の幅より狭い引出領域とを備えることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項3】
冷凍機と前記フランジとに熱的に接続する冷却ヘッドを有し、
前記引出領域は、前記フランジを貫通して前記冷却ヘッドに達していることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の超電導コイル。
【請求項4】
前記接触領域は、前記フランジから離れていることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の超電導コイル。
【請求項5】
前記金属板は、
前記層に沿って湾曲した湾曲板と、
前記超電導線に沿って前記湾曲板上に固定され、前記層に沿って湾曲し、前記凸部となる湾曲棒とを備えることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項6】
前記湾曲棒は、前記湾曲板の両面に設けられていることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の超電導コイル。
【請求項7】
前記金属板は単独でも、前記湾曲板の湾曲の形状を維持できることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の超電導コイル。
【請求項8】
前記金属板は、前記層に沿って湾曲し、
前記凸部は、前記金属板の曲げによって形成され、前記金属板単独でも前記曲げの形状を維持できることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項9】
前記金属板は、前記層に沿って湾曲し、
前記金属板の前記巻ボビンの軸を含む平面で切断した断面形状は、波形状になり、
前記波形状の高低をなす内の高所部が、前記凸部となり、
前記金属板単独でも前記波形状を維持できることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
前記金属板には、4.2Kにおける熱伝導率が50W/m・K以上である金属が用いられることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項12】
前記金属板は、アルミニウム若しくはその合金、又は、銅若しくはその合金であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項13】
1枚の前記金属板が前記巻ボビンの軸から見込まれる周方向の見込角は、90度を超え、180度以下であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項14】
前記超電導線のなす層と層の間、又は、前記超電導線のなす層と前記巻ボビンの間において、同一の前記間では、前記巻ボビンの周方向に2つ又は3つの前記金属板が設けられていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の超電導コイル。
【請求項15】
請求の範囲第1項に記載の超電導コイルと、
前記超電導コイルを冷却する冷凍機とを有することを特徴とする超電導磁石装置。
【国際調査報告】