(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014049936
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】車両用操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20160725BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20160725BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20160725BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20160725BHJP
【FI】
   !B62D6/00
   !B62D5/04
   !B62D113:00
   !B62D119:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
【出願番号】2014538104
(21)【国際出願番号】JP2013004818
(22)【国際出願日】20130809
(11)【特許番号】5822027
(45)【特許公報発行日】20151124
(31)【優先権主張番号】2012216592
(32)【優先日】20120928
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 道雄
【住所又は居所】神奈川県厚木市森の里青山1−1 日産自動車株式会社 知的財産部内
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC30
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3D232DA15
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3D333CB02
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3D333CE11
3D333CE15
3D333CE28
3D333CE37
3D333CE49
(57)【要約】
操舵側クラッチ角算出部(62)が算出した操舵側クラッチ角と転舵側クラッチ角算出部(64)が算出した転舵側クラッチ角との位相差であるクラッチ位相角を算出するクラッチ位相角算出部(66)と、クラッチを開放状態へ切り替えた時に、クラッチ位相角算出部(66)が算出したクラッチ位相角と、操舵角センサが検出した操舵角が操舵輪と転舵輪との間のトルク伝達経路で操舵輪とクラッチとの間を機械的に連結するユニバーサルジョイント及び転舵輪とクラッチとの間を機械的に連結するユニバーサルジョイントのうち少なくとも一方により伝達されて変化した変化角に基づいて、転舵輪の転舵角を算出する転舵角算出部(70)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵輪と転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離する開放状態と、前記トルク伝達経路を機械的に連結する連結状態と、を切り替えるクラッチを備え、前記クラッチを開放状態に切り替えた状態で前記操舵輪の操舵角に応じた目標転舵角を算出し、当該算出した目標転舵角に応じて前記転舵輪を転舵制御する車両用操舵制御装置であって、
前記トルク伝達経路は、前記操舵輪と前記クラッチとの間を機械的に連結するユニバーサルジョイント及び前記転舵輪とクラッチとの間を機械的に連結するユニバーサルジョイントのうち少なくとも一方を備え、
車両のイグニッションスイッチがオン状態となると前記クラッチを前記開放状態に切り替え、前記イグニッションスイッチがオフ状態となると前記クラッチを前記連結状態に切り替えるクラッチ状態切り替え部と、
前記操舵輪の絶対角に基づく操舵角を検出する操舵角検出部と、
前記目標転舵角に応じて回転し、前記転舵輪を転舵制御する転舵モータと、
前記転舵モータの絶対角以外の角度に基づく回転角を検出する転舵モータ回転角検出部と、
前記クラッチを前記連結状態へ切り替えた時に、前記操舵角検出部が検出した操舵角に基づいて前記クラッチよりも前記操舵輪側の前記トルク伝達経路の回転角である操舵側クラッチ角を算出する操舵側クラッチ角算出部と、
前記クラッチを前記連結状態へ切り替えた時に、前記転舵モータ回転角検出部が検出した回転角に基づいて前記クラッチよりも前記転舵輪側の前記トルク伝達経路の回転角である転舵側クラッチ角を算出する転舵側クラッチ角算出部と、
前記操舵側クラッチ角算出部が算出した操舵側クラッチ角と前記転舵側クラッチ角算出部が算出した転舵側クラッチ角との位相差であるクラッチ位相角を算出するクラッチ位相角算出部と、
前記クラッチを前記開放状態へ切り替えた時に、前記クラッチ位相角算出部が算出したクラッチ位相角と、前記操舵角検出部が検出した操舵角が前記トルク伝達経路で前記ユニバーサルジョイントにより伝達されて変化した変化角と、に基づいて、前記転舵輪の転舵角を算出する転舵角算出部と、を備えることを特徴とする車両用操舵制御装置。
【請求項2】
前記トルク伝達経路は、前記操舵輪と前記クラッチとの間を機械的に連結する操舵側ユニバーサルジョイントと、前記転舵輪と前記クラッチとの間を機械的に連結する転舵側ユニバーサルジョイントと、を備え、
前記操舵側クラッチ角算出部は、前記操舵角検出部が検出した操舵角が前記操舵側ユニバーサルジョイントにより変化して前記クラッチへ伝達された変化角に応じて、前記操舵側クラッチ角を算出し、
前記転舵側クラッチ角算出部は、前記転舵モータ回転角検出部が検出した回転角が前記転舵側ユニバーサルジョイントにより変化して前記クラッチへ伝達された変化角に応じて、前記転舵側クラッチ角を算出することを特徴とする請求項1に記載した車両用操舵制御装置。
【請求項3】
前記トルク伝達経路は、前記操舵輪と前記クラッチとの間を機械的に連結する操舵側ユニバーサルジョイントと、前記転舵輪と前記クラッチとの間を機械的に連結する転舵側ユニバーサルジョイントと、を備え、
前記転舵角算出部は、前記操舵角検出部が検出した操舵角が前記操舵側ユニバーサルジョイントにより変化して前記クラッチへ伝達された変化角である操舵側ジョイント変化角に前記クラッチ位相角算出部が算出したクラッチ位相角を加算し、さらに、前記操舵側ジョイント変化角に前記クラッチ位相角を加算した角度が前記転舵側ユニバーサルジョイントにより変化して前記転舵輪へ伝達された変化角に基づいて、前記転舵輪の転舵角を算出することを特徴とする請求項1に記載した車両用操舵制御装置。
【請求項4】
前記トルク伝達経路は、前記操舵輪と前記クラッチとの間を機械的に連結する操舵側ユニバーサルジョイントと、前記転舵輪と前記クラッチとの間を機械的に連結する転舵側ユニバーサルジョイントと、を備え、
前記操舵側クラッチ角算出部は、前記操舵角検出部が検出した操舵角が前記操舵側ユニバーサルジョイントにより変化して前記クラッチへ伝達された変化角に応じて、前記操舵側クラッチ角を算出し、
前記転舵側クラッチ角算出部は、前記転舵モータ回転角検出部が検出した回転角が前記転舵側ユニバーサルジョイントにより変化して前記クラッチへ伝達された変化角に応じて、前記転舵側クラッチ角を算出し、
前記転舵角算出部は、前記操舵角検出部が検出した操舵角が前記操舵側ユニバーサルジョイントにより変化して前記クラッチへ伝達された変化角である操舵側ジョイント変化角に前記クラッチ位相角算出部が算出したクラッチ位相角を加算し、さらに、前記操舵側ジョイント変化角に前記クラッチ位相角を加算した角度が前記転舵側ユニバーサルジョイントにより変化して前記転舵輪へ伝達された変化角に基づいて、前記転舵輪の転舵角を算出することを特徴とする請求項1に記載した車両用操舵制御装置。
【請求項5】
前記イグニッションスイッチがオフ状態となった時点の前記転舵輪の転舵角を記憶する転舵角記憶部を備え、
前記転舵角算出部は、前記イグニッションスイッチがオフ状態である間に前記操舵角検出部が検出した操舵角が変化しない場合、前記転舵角記憶部が記憶した転舵角を前記転舵輪の転舵角として算出することを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵輪と転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離した状態で、転舵輪を、操舵輪の操作に応じた目標転舵角に転舵モータを介して転舵させる、車両用操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、操舵輪(ステアリングホイール)と転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離した状態で、転舵輪を、操舵輪の操作に応じた目標転舵角に転舵モータを介して転舵させる操舵制御装置がある。このような操舵制御装置は、一般的に、ステア・バイ・ワイヤ(SBW:Steer By Wire、以降の説明では、「SBW」と記載する場合がある)と呼称するシステム(SBWシステム)を形成する装置であり、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のSBWシステムでは、転舵輪の実際の転舵角を検出するセンサ(レゾルバ等)を備えない構成を実現するとともに、転舵輪の転舵角を算出することを目的としている。このため、操舵輪の操舵角度範囲内の絶対角度と、転舵輪の転舵角度範囲内の角度を複数の周期に亘って検出した転舵絶対角度との偏差との和と、転舵角度範囲内の角度を複数の周期で検出した初期値との差をオフセット量として求める。そして、転舵輪の転舵角度範囲内の角度を複数の周期に亘って検出した転舵絶対角度とオフセット量の和を、転舵絶対角度として算出し、転舵輪の転舵角を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011‐005933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されている技術も含め、従来のSBWシステムでは、操舵輪と転舵輪との間のトルク伝達経路を、ユニバーサルジョイントを備えた構成とする場合がある。
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、操舵輪により入力された操舵角の、トルク伝達経路でユニバーサルジョイントにより伝達される変化を考慮することなく、転舵輪の転舵角を算出する。
【0006】
したがって、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点で記憶した転舵輪の転舵角と、イグニッションスイッチがオン状態となった時点における、実際の転舵輪の転舵角が異なる状態が発生し、SBWシステムの適切な制御が困難となるという問題がある。なお、上記の状態は、例えば、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、操舵輪の操舵や、転舵輪の交換(タイヤ交換)等が行なわた場合に発生する。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、転舵輪の実際の転舵角を検出する構成を備えていない構成であっても、SBWシステムを適切に制御することが可能な車両用操舵制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、クラッチを開放状態へ切り替えた時に、クラッチ位相角と、操舵輪と転舵輪との間のトルク伝達経路が備えるユニバーサルジョイントにより操舵角が伝達されて変化した変化角に基づいて、転舵輪の転舵角を算出する。
ここで、クラッチ位相角は、クラッチよりも操舵輪側のトルク伝達経路の回転角である操舵側クラッチ角と、クラッチよりも転舵輪側のトルク伝達経路の回転角である転舵側クラッチ角と、の位相差である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、操舵側クラッチ角と転舵側クラッチ角との位相差であるクラッチ位相角と、操舵輪の操舵角がユニバーサルジョイントにより伝達されて変化した変化角に基づいて、転舵輪の転舵角を算出する。
このため、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点で記憶した転舵角と実際の転舵角が異なる状態であっても、実際の転舵角を算出する精度を向上させることが可能となり、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施形態の車両用操舵制御装置を備えた車両の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第一実施形態の操舵制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】SBWシステムのステアリング構造を示す図である。
【図4】指令演算部の構成を示すブロック図である。
【図5】クラッチ位相角算出部がクラッチ位相角を算出する処理を示すブロック図である。
【図6】トルク伝達経路において各ユニバーサルジョイントによる角度の変動を示す図である。
【図7】指令演算部が行なう全般的な処理を示すフローチャートである。
【図8】変化角ΔθPを算出する処理を示すブロック図である。
【図9】トルク伝達経路において各ユニバーサルジョイントによる角度の変動を示す図である。
【図10】本実施形態の操舵制御装置を用いた車両の動作を示すタイムチャートである。
【図11】操舵角とピニオン絶対角との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の車両用操舵制御装置1(以下、「操舵制御装置」と記載する)を備えた車両の概略構成を示す図である。また、図2は、本実施形態の操舵制御装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0011】
本実施形態の操舵制御装置1を備えた車両は、SBWシステムを適用した車両である。
ここで、SBWシステムでは、車両の運転者が操舵操作する操舵輪(ステアリングホイール)の操作に応じて転舵モータを駆動制御して、転舵輪を転舵する制御を行うことにより、車両の進行方向を変化させる。転舵モータの駆動制御は、操舵輪と転舵輪との間に介装するクラッチを、通常状態である開放状態に切り替えて、操舵輪と転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離した状態で行う。
そして、例えば、断線等、SBWシステムの一部に異常が発生した場合には、開放状態のクラッチを締結状態に切り替えて、トルク伝達経路を機械的に接続することにより、運転者が操舵輪に加える力を用いて、転舵輪の転舵を継続する。
【0012】
図1及び図2中に示すように、本実施形態の操舵制御装置1は、転舵モータ2と、転舵モータ制御部4と、クラッチ6と、反力モータ8と、反力モータ制御部10を備える。
転舵モータ2は、転舵モータ制御部4が出力する転舵モータ駆動電流に応じて駆動するモータであり、回転可能な転舵モータ出力軸12を有する。また、転舵モータ2は、転舵モータ駆動電流に応じて駆動することにより、転舵輪を転舵させるための転舵トルクを出力する。
転舵モータ出力軸12の先端側には、ピニオンギヤを用いて形成した転舵出力歯車12aを設けてある。
転舵出力歯車12aは、ステアリングラック14に挿通させたラック軸18の両端部間に設けたラックギヤ18aと噛合する。
【0013】
また、転舵モータ2には、転舵モータ角度センサ16を設ける。
転舵モータ角度センサ16は、転舵モータ2の絶対角以外の角度、例えば、転舵モータ2の相対角に基づいて、転舵モータ2の回転角(転舵角)を検出する。そして、検出した回転角(以降の説明では、「転舵モータ回転角」と記載する場合がある)を含む情報信号を、転舵モータ制御部4を介して、反力モータ制御部10へ出力する。
ステアリングラック14は、円筒形状に形成してあり、転舵モータ出力軸12の回転、すなわち、転舵出力歯車12aの回転に応じて車幅方向へ変位するラック軸18を挿通させる。
【0014】
また、ステアリングラック14の内部には、ラック軸18の外径面を全周から覆うストッパ部14aを二つ設ける。二つのストッパ部14aは、それぞれ、ステアリングラック14の内部において、転舵出力歯車12aよりも車幅方向右側及び左側に設ける。なお、図1中では、二つのストッパ部14aのうち、転舵出力歯車12aよりも車幅方向右側に設けたストッパ部14aの図示を省略する。
【0015】
ラック軸18の、ステアリングラック14に挿通させて内部に配置した部分のうち、ストッパ部14aよりも車幅方向右側及び左側の部分には、それぞれ、ストッパ部14aとラック軸18の軸方向で対向する端当て部材18bを設ける。なお、図1中では、二つの端当て部材18bのうち、ストッパ部14aよりも車幅方向右側に設けた端当て部材18bの図示を省略する。
ラック軸18の両端は、それぞれ、タイロッド20及びナックルアーム22を介して、転舵輪24に連結する。また、ラック軸18とタイロッド20との間には、タイヤ軸力センサ26を設ける。
【0016】
タイヤ軸力センサ26は、ラック軸18の軸方向(車幅方向)に作用する軸力を検出し、この検出した軸力(以降の説明では、「タイヤ軸力」と記載する場合がある)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
転舵輪24は、車両の前輪(左右前輪)であり、転舵モータ出力軸12の回転に応じてラック軸18が車幅方向へ変位すると、タイロッド20及びナックルアーム22を介して転舵し、車両の進行方向を変化させる。なお、本実施形態では、転舵輪24を、左右前輪で形成した場合を説明する。これに伴い、図1中では、左前輪で形成した転舵輪24を、転舵輪24Lと示し、右前輪で形成した転舵輪24を、転舵輪24Rと示す。
【0017】
転舵モータ制御部4は、反力モータ制御部10と、CAN(Controller Area Network)等の通信ライン28を介して、情報信号の入出力を行う。
また、転舵モータ制御部4は、転舵位置サーボ制御部30と、転舵側前回処理内容記憶部MAを有する。
転舵位置サーボ制御部30は、転舵モータ2を駆動させるための転舵モータ駆動電流を演算し、この演算した転舵モータ駆動電流を、転舵モータ2へ出力する。
ここで、転舵モータ駆動電流は、上述した転舵トルクを制御して、操舵輪の操作に応じた目標転舵角を算出し、この算出した目標転舵角に応じて転舵モータ2を駆動制御するための電流である。
【0018】
転舵モータ駆動電流の演算は、反力モータ制御部10が出力する転舵モータ電流指令と、実際に転舵モータ2へ通電している電流(転舵モータ実電流)の指令値(以降の説明では、「転舵モータ電流指令It」と記載する場合がある)に基づいて行う。具体的には、転舵モータ電流指令Itを用いて転舵モータ電流指令を補正し、転舵モータ駆動電流を演算する。
また、転舵位置サーボ制御部30は、転舵モータ電流指令Itを計測し、この計測した転舵モータ電流指令Itに基づいて、転舵モータ2の温度Ttを推定する。そして、推定した転舵モータ2の温度Ttを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。これは、電流の通電による抵抗発熱に起因するモータ類(転舵モータ2、反力モータ8)の過熱を推定するためである。
【0019】
なお、転舵モータ電流指令Itは、例えば、転舵モータ2に基板温度センサ(図示せず)を内蔵し、この内蔵した基板温度センサを用いて計測する。
ここで、転舵モータ電流指令Itに基づいて転舵モータ2の温度Ttを推定する方法としては、例えば、大電流域では、計測した実際の電流値を用いて転舵モータ電流指令Itを求める。具体的には、計測した実際の電流値と予め記憶している電流閾値とを比較し、計測した実際の電流値が電流閾値よりも大きい場合は、計測した実際の電流値を、転舵モータ電流指令Itとして採用する。
【0020】
一方、小電流域では、転舵モータ2の回転数とトルクとの関係を定めたモータNT特性を用い、転舵モータ2の回転数に基づいて、転舵モータ電流指令Itを推定する。具体的には、計測した実際の電流値を転舵モータ電流指令Itとして採用せず、モータNT特性を用い、転舵モータ2の回転数に基づいて推定した電流値を、転舵モータ電流指令Itとして採用する。
そして、上記のように採用した転舵モータ電流指令Itを用いて、転舵モータ2の温度Ttを推定する。
なお、転舵側前回処理内容記憶部MAに関する説明は、後述する。
【0021】
クラッチ6は、運転者が操作する操舵輪32と転舵輪24との間に介装し、反力モータ制御部10が出力するクラッチ駆動電流に応じて、開放状態または締結状態を切り替える。なお、クラッチ6は、通常状態では、開放状態である。
ここで、クラッチ6の状態を開放状態に切り替えると、操舵輪32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に分離させて、操舵輪32の操舵操作が転舵輪24へ伝達されない状態とする。一方、クラッチ6の状態を締結状態に切り替えると、操舵輪32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に連結させて、操舵輪32の操舵操作が転舵輪24へ伝達される状態とする。
【0022】
また、操舵輪32とクラッチ6との間には、操舵角センサ34と、操舵トルクセンサ36と、反力モータ8と、反力モータ角度センサ38を配置する。
操舵角センサ34は、例えば、操舵輪32を回転可能に支持するステアリングコラムに設ける。
また、操舵角センサ34は、操舵輪32の絶対角に基づいて、操舵輪32の現在の回転角(操舵角)である現在操舵角を検出する。そして、操舵角センサ34は、検出した操舵輪32の現在操舵角を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、現在操舵角を、「現在操舵角θH」と記載する場合がある。
【0023】
ここで、近年の車両は、操舵輪32の操舵角を検出可能なセンサを、標準的に備えている場合が多い。このため、本実施形態では、操舵角センサ34として、車両に既存のセンサである、操舵輪32の操舵角を検出可能なセンサを用いた場合について説明する。
操舵トルクセンサ36は、操舵角センサ34と同様、例えば、操舵輪32を回転可能に支持するステアリングコラムに設ける。
【0024】
また、操舵トルクセンサ36は、運転者が操舵輪32に加えているトルクである操舵トルクを検出する。そして、操舵トルクセンサ36は、検出した操舵トルクを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、操舵トルクを、「トルクセンサ値Vts」と記載する場合がある。
なお、反力モータ8及び反力モータ角度センサ38に関する説明は、後述する。
【0025】
また、クラッチ6は、開放状態で互いに離間し、締結状態で互いに噛合する一対のクラッチ板40を有する。なお、図1中及び以降の説明では、一対のクラッチ板40のうち、操舵輪32側に配置するクラッチ板40を、「操舵輪側クラッチ板40a」とし、転舵輪24側に配置するクラッチ板40を、「転舵輪側クラッチ板40b」とする。
操舵輪側クラッチ板40aは、操舵輪32と共に回転するステアリングシャフト42に取り付けてあり、ステアリングシャフト42と共に回転する。
転舵輪側クラッチ板40bは、ピニオン軸44の一端に取り付けてあり、ピニオン軸44と共に回転する。
【0026】
ピニオン軸44の他端は、ピニオン46内に配置してある。ピニオン46には、ラックギヤ18aと噛合するステアリングギヤ(図示せず)を内蔵する。
ステアリングギヤは、ピニオン軸44と共に回転する。すなわち、ステアリングギヤは、ピニオン軸44を介して、転舵輪側クラッチ板40bと共に回転する。
【0027】
反力モータ8は、反力モータ制御部10が出力する反力モータ駆動電流に応じて駆動するモータであり、操舵輪32と共に回転するステアリングシャフト42を回転させて、操舵輪32へ操舵反力を出力可能である。ここで、反力モータ8が操舵輪32へ出力する操舵反力は、クラッチ6を開放状態に切り替えて、操舵輪32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に分離させている状態で、転舵輪24に作用しているタイヤ軸力や操舵輪32の操舵状態に応じて演算する。これにより、操舵輪32を操舵する運転者へ、適切な操舵反力を伝達する。すなわち、反力モータ8が操舵輪32へ出力する操舵反力は、運転者が操舵輪32を操舵する操作方向とは反対方向へ作用する反力である。
【0028】
反力モータ角度センサ38は、反力モータ8に設けるセンサである。
また、反力モータ角度センサ38は、反力モータ8の回転角を検出し、この検出した回転角(以降の説明では、「反力モータ回転角」と記載する場合がある)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
反力モータ制御部10は、転舵モータ制御部4と、通信ライン28を介して、情報信号の入出力を行う。これに加え、反力モータ制御部10は、通信ライン28を介して、車速センサ50及びエンジンコントローラ52が出力する情報信号の入力を受ける。
【0029】
また、反力モータ制御部10は、通信ライン28を介して入力を受けた情報信号や、各種センサから入力を受けた情報信号に基づき、反力モータ8を駆動制御する。
車速センサ50は、例えば、公知の車速センサであり、車両の車速を検出し、この検出した車速を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
エンジンコントローラ52(エンジンECU)は、エンジン(図示せず)の状態(エンジン駆動、または、エンジン停止)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
【0030】
また、反力モータ制御部10は、指令演算部54と、反力サーボ制御部56と、クラッチ制御部58と、反力側前回処理内容記憶部MBを有する。
指令演算部54は、車速センサ50、操舵角センサ34、エンジンコントローラ52、操舵トルクセンサ36、反力モータ角度センサ38、タイヤ軸力センサ26及び転舵モータ角度センサ16が出力した情報信号の入力を受ける。
なお、指令演算部54の詳細な構成についての説明は、後述する。
【0031】
反力サーボ制御部56は、反力モータ8を駆動させるための反力モータ駆動電流を反力モータ8へ出力する。
また、反力サーボ制御部56は、実際に反力モータ8へ通電している電流(反力モータ実電流)の値(以降の説明では、「反力モータ電流値Ih」と記載する場合がある)を計測する。
ここで、反力モータ駆動電流の演算は、指令演算部54が出力する反力モータ電流指令(後述)と、反力モータ電流値Ihに基づいて行う。具体的には、反力モータ電流値Ihを用いて反力モータ電流指令を補正し、反力モータ駆動電流を演算する。
【0032】
また、反力サーボ制御部56は、計測した反力モータ電流値Ihに基づいて、反力モータ8の温度Thを推定する。なお、反力モータ8の温度Thの推定は、例えば、転舵位置サーボ制御部30が行う転舵モータ2の温度Ttの推定と、同様の手順で行う。
クラッチ制御部58は、指令演算部54が出力するクラッチ電流指令(後述)に基づいて、開放状態のクラッチ6を締結状態へ切り替えるために必要な電流を、クラッチ駆動電流として演算する。そして、演算したクラッチ駆動電流を、クラッチ6へ出力する。
なお、反力側前回処理内容記憶部MBに関する説明は、後述する。
【0033】
次に、図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、詳細なステアリング構造について説明する。
図3は、SBWシステムのステアリング構造を示す図である。
操舵輪32は、ステアリングシャフト42の一端に連結してある。
ステアリングシャフト42は、ステアリングコラム5によって回転自在に保持されている。
また、ステアリングシャフト42の他端は、ユニバーサルジョイント7を介して中間シャフト9の一端に連結している。
ステアリングコラム5には、ステアリングシャフト42に連結した反力モータ8を設けている。
【0034】
反力モータ8は、転舵角に応じて転舵輪側からステアリングホイール方向へ伝達される路面反力に応じた反力トルクをステアリングシャフト42へ付与する。これにより、クラッチ6が解放されているときであっても、運転者は、転舵状態に応じた路面反力を把握できる。
中間シャフト9の他端は、ユニバーサルジョイント11を介してクラッチ入力軸13の一端に連結してある。
クラッチ入力軸13の他端は、クラッチ6を介してクラッチ出力軸17の一端に同軸で対向しており、クラッチ6は、クラッチ入力軸13とクラッチ出力軸17との断続(締結及び遮断)を行う。
クラッチ出力軸17の他端は、ユニバーサルジョイント19を介して中間シャフト21の一端に連結してある。
【0035】
中間シャフト21の他端は、ユニバーサルジョイント23を介してピニオンシャフト25の一端に連結してあり、ピニオンシャフト25の他端は、ラック&ピニオン式のステアリングギヤ27に連結してある。なお、図示は省略するが、ステアリングギヤ27の出力側となるラックの両端は、夫々、左右のタイロッドの一端に連結してあり、タイロッドの他端は、車輪に連結してある。
【0036】
したがって、クラッチ6を締結した状態では、操舵操作子1を回転させると、ステアリングシャフト42、中間シャフト9、クラッチ入力軸13、クラッチ出力軸17、及び中間シャフト21を介して、ピニオン46及びピニオンシャフト25が回転する。ピニオンシャフト25の回転運動は、ステアリングギヤ27によってラックの進退運動となり、ラックの進退に応じてタイロッドを押したり引いたりすることで、車輪が転舵される。
【0037】
ステアリングシャフト42には、反力モータ8を連結してあり、クラッチ6を遮断した状態で、反力モータ8を駆動すると、ステアリングシャフト42に反力トルクが付与される。したがって、車輪を転舵したときに路面から受ける反力を検出又は推定し、検出又は推定した反力に応じて反力モータ8を駆動制御することで、運転者のステアリング操作に対して操作反力が付与される。
【0038】
通常は、クラッチ6を遮断した状態で、転舵モータ31を駆動制御すると共に、反力モータ8を駆動制御することで、ステア・バイ・ワイヤを実行し、所望のステアリング特性や旋回挙動特性を実現し、且つ良好な操作フィーリングを実現する。一方、システムに異常が生じた場合には、ステア・バイ・ワイヤを中止し、フェールセーフとしてクラッチ6を締結状態に戻すことで、機械的なバックアップを確保する。
【0039】
ステアリングコラム5は、チルトピボット41を介して揺動可能な状態で車体に支持してある。車体横方向から見て、ステアリングシャフト42及び中間シャフト9間のユニバーサルジョイント7の中心位置と、チルトピボット41の中心位置とは相違させたレイアウトとしている。
中間シャフト9、及び中間シャフト21は、夫々、軸方向に伸縮可能に構成してある。
クラッチ6は、ブラケット43を介してダッシュパネル45に固定してある。
【0040】
以上により、ユニバーサルジョイント7及びユニバーサルジョイント11は、操舵輪32とクラッチ6との間を機械的に連結する操舵側ユニバーサルジョイントを形成する。また、ユニバーサルジョイント19及びユニバーサルジョイント23は、転舵輪24とクラッチ6との間を機械的に連結する転舵側ユニバーサルジョイントを形成する。すなわち、トルク伝達経路は、操舵輪32とクラッチ6との間を機械的に連結する操舵側ユニバーサルジョイントと、転舵輪24とクラッチ6との間を機械的に連結する転舵側ユニバーサルジョイントを備える。
【0041】
(指令演算部54の詳細な構成)
次に、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、指令演算部54の詳細な構成について説明する。
図4は、指令演算部54の構成を示すブロック図である。
図4中に示すように、指令演算部54は、クラッチ状態切り替え部60と、操舵側クラッチ角算出部62と、転舵側クラッチ角算出部64と、クラッチ位相角算出部66と、転舵角記憶部68と、転舵角算出部70を備える。
クラッチ状態切り替え部60は、エンジンコントローラ52からエンジンの状態を含む情報信号の入力を受ける。
【0042】
そして、クラッチ状態切り替え部60は、エンジンの状態を含む情報信号が、エンジン駆動の状態を含む場合、車両のイグニッションスイッチがオン状態であると判定し、クラッチ6を開放状態に切り替えるためのクラッチ電流指令を生成する。そして、生成したクラッチ電流指令を含む情報信号を、クラッチ位相角算出部66及びクラッチ制御部58へ出力する。
【0043】
また、クラッチ状態切り替え部60は、エンジンの状態を含む情報信号が、エンジン停止の状態を含む場合、車両のイグニッションスイッチがオフ状態であると判定し、クラッチ6を連結状態に切り替えるためのクラッチ電流指令を生成する。そして、生成したクラッチ電流指令を含む情報信号を、操舵側クラッチ角算出部62と、転舵側クラッチ角算出部64と、クラッチ位相角算出部66及びクラッチ制御部58へ出力する。
【0044】
操舵側クラッチ角算出部62は、クラッチ状態切り替え部60から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、操舵側クラッチ角算出部62は、操舵角センサ34から、操舵輪32の現在操舵角を含む情報信号の入力を受ける。
そして、操舵側クラッチ角算出部62は、クラッチ6を連結状態へ切り替えた時に、操舵角センサ34が検出した現在操舵角θHに基づいて、クラッチ6よりも操舵輪32側のトルク伝達経路の回転角である操舵側クラッチ角を算出する。さらに、算出した操舵側クラッチ角を含む情報信号を、クラッチ位相角算出部66へ出力する。
【0045】
ここで、本実施形態の操舵側クラッチ角算出部62は、操舵角センサ34が検出した現在操舵角が、上述した操舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角に応じて、操舵側クラッチ角を算出する。
転舵側クラッチ角算出部64は、クラッチ状態切り替え部60から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵側クラッチ角算出部64は、転舵モータ角度センサ16から、転舵モータ回転角を含む情報信号の入力を受ける。
【0046】
そして、転舵側クラッチ角算出部64は、クラッチ6を連結状態へ切り替えた時に、転舵モータ角度センサ16が検出した転舵モータ回転角に基づいて、クラッチ6よりも転舵輪24側のトルク伝達経路の回転角である転舵側クラッチ角を算出する。さらに、算出した転舵側クラッチ角を含む情報信号を、クラッチ位相角算出部66へ出力する。
ここで、本実施形態の転舵側クラッチ角算出部64は、転舵モータ角度センサ16が検出した転舵モータ回転角が、上述した転舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角に応じて、転舵側クラッチ角を算出する。
【0047】
クラッチ位相角算出部66は、クラッチ状態切り替え部60から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、クラッチ位相角算出部66は、操舵側クラッチ角算出部62から、操舵側クラッチ角を含む情報信号の入力を受ける。さらに、クラッチ位相角算出部66は、転舵側クラッチ角算出部64から、転舵側クラッチ角を含む情報信号の入力を受ける。
【0048】
そして、クラッチ位相角算出部66は、クラッチ6を連結状態へ切り替えた時に、操舵側クラッチ角と転舵側クラッチ角との位相差であるクラッチ位相角を算出する。さらに、算出したクラッチ位相角を含む情報信号を、転舵角算出部70へ出力する。なお、クラッチ位相角算出部66がクラッチ位相角を算出する具体的な処理については、後述する。
転舵角記憶部68は、クラッチ状態切り替え部60から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵角記憶部68は、転舵モータ角度センサ16から、転舵モータ回転角を含む情報信号の入力を受ける。
【0049】
そして、転舵角記憶部68は、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点の、転舵輪24の転舵角を記憶する。
転舵角算出部70は、クラッチ状態切り替え部60から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵角算出部70は、クラッチ位相角算出部66から、クラッチ位相角を含む情報信号の入力を受ける。また、転舵角算出部70は、転舵モータ角度センサ16から、転舵モータ回転角を含む情報信号の入力を受ける。
【0050】
そして、転舵角算出部70は、クラッチ6を開放状態へ切り替えた時に、クラッチ位相角算出部66が算出したクラッチ位相角とユニバーサルジョイント変化角に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。さらに、算出した転舵輪24の転舵角を含む情報信号を、転舵位置サーボ制御部30へ出力する。
ここで、上記のユニバーサルジョイント変化角とは、操舵角センサ34が検出した現在操舵角が、トルク伝達経路で各ユニバーサルジョイント(操舵側ユニバーサルジョイント、転舵側ユニバーサルジョイント)により伝達されて変化した角度である。
【0051】
なお、本実施形態の転舵角算出部70は、操舵側ジョイント変化角にクラッチ位相角を加算する。さらに、操舵側ジョイント変化角にクラッチ位相角を加算した角度が、上述した転舵側ユニバーサルジョイントにより変化して転舵輪24へ伝達された変化角に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
ここで、上記の操舵側ジョイント変化角とは、操舵角センサ34が検出した現在操舵角が、上述した操舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角である。
【0052】
また、本実施形態では、一例として、転舵角算出部70の構成を、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、操舵角センサ34が検出した現在操舵角が変化しない場合、転舵角記憶部68が記憶した転舵角を、転舵輪24の転舵角として算出する構成とする。なお、転舵角記憶部68が記憶した転舵角は、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、操舵角センサ34が検出した現在操舵角が変化しない場合に、転舵角記憶部68から取得する。
【0053】
(クラッチ位相角算出部66がクラッチ位相角を算出する処理)
以下、図1から図4を参照しつつ、図5及び図6を用いて、クラッチ位相角算出部66がクラッチ位相角を算出する具体的な処理について説明する。
図5は、クラッチ位相角算出部66がクラッチ位相角を算出する処理を示すブロック図である。また、図6は、トルク伝達経路において各ユニバーサルジョイントによる角度の変動を示す図である。
図5及び図6中に示すように、クラッチ位相角を算出する処理では、まず、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における操舵角θH(図中に示す「シャットダウン時の操舵角」)を検出する。
【0054】
そして、操舵角θHを、ユニバーサルジョイント7(図中に示す「JOINT1」)の入力側の操舵角θ1inとして、ユニバーサルジョイント7用のマップであるマップMJ1に操舵角θ1inを適合させる。これにより、ユニバーサルジョイント7の出力側の操舵角θ1outを算出する。
操舵角θ1outを算出した後、ユニバーサルジョイント11(図中に示す「JOINT2)用のマップであるマップMJ2に、操舵角θ1outを、ユニバーサルジョイント11の入力側の操舵角θ2inとして適合させる。これにより、ユニバーサルジョイント11の出力側の操舵角θ2outを算出する。
また、操舵角θHに基づいて、目標転舵角を算出(図中に示す「操舵角→目標転舵角」)する。
【0055】
そして、操舵角θHに基づいて算出した目標転舵角TPを、ユニバーサルジョイント23(図中に示す「JOINT4)用のマップであるマップMJ4に、ユニバーサルジョイント23の入力側の操舵角θ4inとして適合させる。これにより、ユニバーサルジョイント23の出力側の操舵角θ4outを算出する。
操舵角θ4outを算出した後、ユニバーサルジョイント19(図中に示す「JOINT3)用のマップであるマップMJ3に、操舵角θ4outを、ユニバーサルジョイント19の入力側の操舵角θ3inとして適合させる。これにより、ユニバーサルジョイント19の出力側の操舵角θ3outを算出する。
【0056】
次に、上記のように算出した操舵角θ2outを、操舵側クラッチ角θcl_upperとして算出する。これに加え、上記のように算出した操舵角θ3outを、転舵側クラッチ角θcl_lowerとして算出する。そして、操舵側クラッチ角θcl_upperと転舵側クラッチ角θcl_lowerとの位相差を、クラッチ位相角θCLとして算出(θCL=θ3out−θ2out)し、クラッチ位相角を算出する処理を終了する。
なお、上記の説明では、各操舵角θを各マップMJに適合させて処理を行ったが、これに限定するものではなく、各操舵角θを図6中に示す数式に適合させて処理を行ってもよい。
また、各マップMJと図6中に示す数式は、車両の組み立て時において一意に規定されるパラメータである。
【0057】
(転舵側前回処理内容記憶部MA、反力側前回処理内容記憶部MB)
以下、図1から図6を参照して、転舵側前回処理内容記憶部MAの構成と、反力側前回処理内容記憶部MBの構成について説明する。
転舵側前回処理内容記憶部MAは、例えば、EEPROM(Electrically
Erasable Programmable Read‐Only Memory)を用いて形成する。
また、転舵側前回処理内容記憶部MAは、エンジンコントローラ52から、エンジンの状態を含む情報信号の入力を受け、さらに、操舵角センサ34から、操舵輪32の現在操舵角を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵側前回処理内容記憶部MAは、クラッチ位相角算出部66から、クラッチ位相角を含む情報信号の入力を受け、さらに、転舵角算出部70から、転舵輪24の転舵角を含む情報信号の入力を受ける。
【0058】
そして、転舵側前回処理内容記憶部MAは、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における、現在操舵角と、クラッチ位相角と、転舵輪24の転舵角を記憶する。
反力側前回処理内容記憶部MBは、転舵側前回処理内容記憶部MAと同様、例えば、EEPROMを用いて形成する。
また、反力側前回処理内容記憶部MBは、転舵側前回処理内容記憶部MAと同様、エンジンコントローラ52、操舵角センサ34、クラッチ位相角算出部66、転舵角算出部70から、それぞれ、情報信号の入力を受ける。
そして、反力側前回処理内容記憶部MBは、転舵側前回処理内容記憶部MAと同様、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における、現在操舵角と、クラッチ位相角と、転舵輪24の転舵角を記憶する。
【0059】
(指令演算部54が行なう処理)
次に、図1から図6を参照しつつ、図7から図9を用いて、指令演算部54が行なう処理について説明する。
図7は、指令演算部54が行なう全般的な処理を示すフローチャートである。なお、指令演算部54は、予め設定した周期(例えば、5[ms])で、以下に説明する処理を行う。
図7中に示すフローチャートでは、例えば、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替わると、指令演算部54が処理を開始(START)し、ステップS10の処理を行う。
ステップS10では、イグニッションスイッチがオン状態であるか否かを判定する処理(図中に示す「IGN−ON?」)を行う。
ステップS10において、イグニッションスイッチがオン状態である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、指令演算部54が行なう処理は、ステップS20へ移行する。
【0060】
一方、ステップS10において、イグニッションスイッチがオン状態ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、指令演算部54が行なう処理は、ステップS10の処理を繰り返す。
ステップS20では、操舵角センサ34が現在操舵角θHを検出しているか否かを判定する処理(図中に示す「操舵角(θH)検出?」)を行う。
ステップS20において、操舵角センサ34が現在操舵角θHを検出している(図中に示す「Yes」)と判定した場合、指令演算部54が行なう処理は、ステップS30へ移行する。
【0061】
一方、ステップS20において、操舵角センサ34が現在操舵角θHを検出していない(図中に示す「No」)と判定した場合、指令演算部54が行なう処理は、ステップS80へ移行する。
ステップS30では、転舵側前回処理内容記憶部MAが、現在の処理を行なう前(前回)の処理を終了した時点の操舵角θH_Zと、前回の処理を終了した時点のピニオン角θP_Zを記憶しているか否かを判定する処理を行う。これに加え、ステップS30では、転舵側前回処理内容記憶部MAが、前回の処理を終了した時点のクラッチ位相角θCLを記憶しているか否かを判定する処理を行う。
ステップS30において、転舵側前回処理内容記憶部MAが、操舵角θH_Z、ピニオン角θP_Z及びクラッチ位相角θCLを記憶していない(図中に示す「No」)と判定した場合、指令演算部54が行なう処理は、ステップS40へ移行する。
【0062】
一方、ステップS30において、転舵側前回処理内容記憶部MAが、操舵角θH_Z、ピニオン角θP_Z及びクラッチ位相角θCLを記憶している(図中に示す「Yes」)と判定した場合、指令演算部54が行なう処理は、ステップS50へ移行する。
ステップS40では、反力側前回処理内容記憶部MBが、前回の処理を終了した時点の操舵角θH_Zと、前回の処理を終了した時点のピニオン角θP_Zを記憶しているか否かを判定する処理を行う。これに加え、ステップS40では、反力側前回処理内容記憶部MBが、前回の処理を終了した時点のクラッチ位相角θCLを記憶しているか否かを判定する処理を行う。
ステップS40において、反力側前回処理内容記憶部MBが、操舵角θH_Z、ピニオン角θP_Z及びクラッチ位相角θCLを記憶していない(図中に示す「No」)と判定した場合、指令演算部54が行なう処理は、ステップS80へ移行する。
【0063】
一方、ステップS40において、反力側前回処理内容記憶部MBが、操舵角θH_Z、ピニオン角θP_Z及びクラッチ位相角θCLを記憶している(図中に示す「Yes」)と判定した場合、指令演算部54が行なう処理は、ステップS50へ移行する。
ステップS50では、以下に示す式(1)を用いて、イグニッションスイッチがオフ状態である間に変化した操舵角を算出(図中に示す「IGN OFF中の操舵角(ΔθH)算出」)する処理を行う。ステップS50でイグニッションスイッチがオフ状態である間に変化した操舵角ΔθHを算出すると、指令演算部54が行なう処理は、ステップS60へ移行する。
ΔθH=θH−θH_Z … (1)
【0064】
ステップS60では、イグニッションスイッチがオフ状態である間に変化したピニオン46の角度(ピニオン角)を算出(図中に示す「変化角(ΔθP)算出」)する処理を行う。ステップS60で変化角ΔθPを算出する処理を行なうと、指令演算部54が行なう処理は、ステップS70へ移行する。
なお、ステップS60で行なう処理では、ステップS20で検出した現在操舵角θHと、ステップS30またはステップS40で記憶していると判定したクラッチ位相角θCLを用いる。また、ステップS60で行なう具体的な処理については、後述する。
【0065】
ステップS70では、以下に示す式(2)を用いて、ピニオン46の絶対角を算出(図中に示す「ピニオン絶対角(θP)算出」)する処理を行う。ステップS70でピニオン絶対角θPを算出すると、指令演算部54が行なう処理は終了(END)する。
θP=θP_Z+ΔθP … (2)
ステップS80では、ピニオン46の絶対角(ピニオン絶対角θP)を算出する処理が不可能であると判定(図中に示す「ピニオン絶対角算出不可」)する処理を行う。ステップS80でピニオン46の絶対角を算出する処理が不可能であると判定すると、指令演算部54が行なう処理は終了(END)する。
【0066】
(ステップS60で行なう処理)
以下、図1から図7を参照しつつ、図8及び図9を用いて、上述したステップS60で行なう処理について説明する。
図8は、ステップS60で行なう処理、すなわち、変化角ΔθPを算出する処理を示すブロック図である。また、図9は、トルク伝達経路において各ユニバーサルジョイントによる角度の変動を示す図である。
図8及び図9中に示すように、変化角ΔθPを算出する処理では、まず、ステップS50で算出した操舵角ΔθHを、操舵角θ1inとしてマップMJ1に適合させ、ユニバーサルジョイント7の出力側の操舵角θ1outを算出する。
【0067】
操舵角θ1outを算出した後、マップMJ2に、操舵角θ1outを、ユニバーサルジョイント11の入力側の操舵角θ2inとして適合させて、ユニバーサルジョイント11の出力側の操舵角θ2outを算出する。
操舵角θ2outを算出した後、操舵角θ2outにクラッチ位相角θCLを加算した値を、ユニバーサルジョイント19の入力側の操舵角θ3inとして、マップMJ3に適合させる。これにより、ユニバーサルジョイント19の出力側の操舵角θ3outを算出する。
【0068】
操舵角θ3outを算出した後、マップMJ4に、操舵角θ3outを、ユニバーサルジョイント23の入力側の操舵角θ4inとして適合させる。これにより、ユニバーサルジョイント23の出力側の操舵角θ4outを算出し、この算出した操舵角θ4outを、変化角ΔθPとして算出(ΔθP=θ4out)して、変化角ΔθPを算出する処理を完了する。
【0069】
なお、上述した操舵角ΔθHが0[°]である場合、すなわち、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵角が変化していない場合は、ステップS20で検出した現在操舵角θHを、図9中に示す操舵角ΔθHに置き換えて、上記の処理を行う。これにより、ピニオン絶対角θPを算出する処理を行う。
なお、上記の説明では、各操舵角θを各マップMJに適合させて処理を行ったが、これに限定するものではなく、各操舵角θを図9中に示す数式に適合させて処理を行ってもよい。
また、各マップMJと図9中に示す数式は、車両の組み立て時において一意に規定されるパラメータである。
【0070】
(動作)
次に、図1から図9を参照しつつ、図10を用いて、本実施形態の操舵制御装置1を用いて行なう動作の一例を説明する。なお、図10は、本実施形態の操舵制御装置1を用いた車両の動作を示すタイムチャートである。
図10中に示すタイムチャートは、イグニッションスイッチがオン状態であり、トルク伝達経路が機械的に分離して、SBWシステムの制御を実施している状態(図中に示す「SBWシステム制御中」)からスタートする。なお、SBWシステムの制御とは、例えば、高速走行時には低速走行時よりも操舵角に対する転舵角の変化度合いを減少させる制御(可変ギヤ制御)等、車速に応じた転舵角の制御である。また、SBWシステムの制御は、上記のように算出したピニオン絶対角θPを用いて行なう(ステップS70参照)。
【0071】
そして、イグニッションスイッチをオン状態からオフ状態に切り替えた(図中に示す「IGN OFF」)時点t1で、クラッチ6が連結状態(図中に示す「Clutch締結」)に切り替わり、トルク伝達経路が機械的に連結される。トルク伝達経路が機械的に連結されると、操舵輪32の操作が、転舵輪24へ機械的に伝達される(図中に示す「シャットダウン中=ManualSteer」)状態となる。なお、クラッチ6を連結状態に切り替える状況としては、イグニッションスイッチをオン状態からオフ状態に切り替える状況以外に、転舵モータ2が過熱している状況も含む。
トルク伝達経路が機械的に連結している状態から、イグニッションスイッチをオン状態(図中に示す「IGN ON」)に切り替えると、この時点t2で、連結状態のクラッチ6を開放状態(図中に示す「Clutch開放」)に切り替える。
【0072】
また、時点t2では、イグニッションスイッチをオン状態に切り替えた後、連結状態のクラッチ6を開放状態に切り替える前に、上述した処理を行ってピニオン絶対角θPを算出する。そして、算出したピニオン絶対角θPを用いて、SBWシステムの制御を開始する。
なお、時点t2では、イグニッションスイッチをオン状態に切り替えて、SBWシステムの制御を開始しているが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、車両のドア(フロントドア)を開錠する動作により、各制御部を起動(図中に示す「CAN WakeUp」)させて、SBWシステムの制御を開始してもよい。
【0073】
以上により、本実施形態の操舵制御装置1では、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、操舵輪32の操舵角が変化している場合であっても、以下に説明するように、上述した車速に応じた転舵角の制御を、適切に実施することが可能となる。
すなわち、上述した車速に応じた転舵角の制御を行なう際には、操舵角に対する転舵角の変化度合いが、車速に応じて異なる(操舵角:転舵角=1:X 低速時には1<X、高速時にはX<1)。これに対し、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、操舵輪32の操舵角が変化している場合、クラッチ6が連結状態であるため、操舵角の変化度合いと転舵角の変化度合いは等しい(操舵角:転舵角=1:1)。
【0074】
したがって、例えば、車両の駐車時等の低速走行時においては、操舵角に対する転舵角の変化度合いを増加させて、転舵角の変化量が少なくても転舵角の変化量を増加させる。この場合、転舵角を中立位置から転舵した状態で、イグニッションスイッチがオフ状態となってクラッチ6を連結状態としている間に、操舵輪32の操舵角が変化すると、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵角と操舵角との関係が変化する。そして、転舵角と操舵角との関係が変化した状態を基準として、上述した車速に応じた転舵角の制御を行なうと、転舵角と操舵角との関係が変化したままでSBWシステムを制御することとなり、SBWシステムの制御が不適切となる。
【0075】
これに対し、本実施形態の操舵制御装置1では、クラッチ6を開放状態へ切り替えた時に、クラッチ位相角θCL及び操舵輪32の操舵角に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出するため、転舵角と操舵角との関係を適切に算出することが可能となる。これにより、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、操舵輪32の操舵角が変化している場合であっても、上述した車速に応じた転舵角の制御を、適切に実施することが可能となる。
なお、上述した操舵角センサ34は、操舵角検出部に対応する。
また、上述した転舵モータ角度センサ16は、転舵モータ回転角検出部に対応する。
【0076】
(第一実施形態の効果)
本実施形態では、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)クラッチ位相角算出部66が、クラッチ6を連結状態へ切り替えた時に、操舵側クラッチ角θcl_upperと転舵側クラッチ角θcl_lowerとの位相差であるクラッチ位相角θCLを算出する。これに加え、転舵角算出部70が、クラッチ6を開放状態へ切り替えた時に、クラッチ位相角θCLと変化角ΔθPに基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
このため、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵輪32により入力された操舵角ΔθHの、トルク伝達経路で各ユニバーサルジョイント7、11、19、23により伝達される変化に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。
【0077】
その結果、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵輪32が操作されて、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点で記憶した転舵角と実際の転舵角が異なる状態であっても、ピニオン絶対角θPの算出精度を向上させることが可能となる。
これにより、実際の転舵角を算出する精度を向上させることが可能となり、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵輪32が操舵された場合であっても、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
【0078】
(2)操舵側クラッチ角算出部62が、操舵角センサ34が検出した操舵角が操舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角に応じて、操舵側クラッチ角θcl_upperを算出する。これに加え、転舵側クラッチ角算出部64が、転舵モータ角度センサ16が検出した回転角が転舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角に応じて、転舵側クラッチ角θcl_lowerを算出する。
【0079】
このため、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵輪32により入力された操舵角ΔθHの、操舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角に応じて、操舵側クラッチ角θcl_upperを算出することが可能となる。これに加え、イグニッションスイッチがオフ状態である間に変化した転舵モータ2の回転角の、転舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角に応じて、転舵側クラッチ角θcl_lowerを算出することが可能となる。
その結果、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵輪32が操作された場合における、クラッチ位相角θCLの算出精度を向上させることが可能となる。
【0080】
(3)転舵角算出部70が、操舵側ジョイント変化角にクラッチ位相角θCLを加算した角度が転舵側ユニバーサルジョイントにより変化して転舵輪24へ伝達された変化角に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
このため、イグニッションスイッチがオフ状態である間における、操舵角ΔθHが操舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角と、クラッチ位相角θCLに基づいて、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。
その結果、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵輪32が操作された場合における、転舵輪24の転舵角の算出精度を向上させることが可能となる。
【0081】
(4)操舵側クラッチ角算出部62が、操舵角センサ34が検出した操舵角が操舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角に応じて、操舵側クラッチ角θcl_upperを算出する。また、転舵側クラッチ角算出部64が、転舵モータ角度センサ16が検出した回転角が転舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角に応じて、転舵側クラッチ角θcl_lowerを算出する。
これに加え、転舵角算出部70が、操舵側ジョイント変化角にクラッチ位相角θCLを加算した角度が転舵側ユニバーサルジョイントにより変化して転舵輪24へ伝達された変化角に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
【0082】
このため、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵輪32により入力された操舵角ΔθHの、操舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角に応じて、操舵側クラッチ角θcl_upperを算出することが可能となる。これに加え、イグニッションスイッチがオフ状態である間に変化した転舵モータ2の回転角の、転舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角に応じて、転舵側クラッチ角θcl_lowerを算出することが可能となる。
【0083】
さらに、イグニッションスイッチがオフ状態である間における、操舵角ΔθHが操舵側ユニバーサルジョイントにより変化してクラッチ6へ伝達された変化角と、クラッチ位相角θCLに基づいて、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。
その結果、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵輪32が操作された場合における、クラッチ位相角θCLの算出精度と、転舵輪24の転舵角の算出精度を向上させることが可能となる。
【0084】
(5)転舵角記憶部68が、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点の転舵輪24の転舵角を記憶する。これに加え、転舵角算出部70が、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵輪32の操舵角が変化しない場合、転舵角記憶部68が記憶した転舵角を、転舵輪24の転舵角として算出する。
その結果、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵輪32の操舵角が変化しない場合は、転舵輪24の転舵角を算出する処理工程を減少させることが可能となる。
【0085】
(変形例)
(1)本実施形態では、トルク伝達経路が四つのユニバーサルジョイント(7,11,19,23)を備える構成としたが、これに限定するものではなく、ユニバーサルジョイントの数は、例えば、車両のレイアウト等に応じた数であればよい。
【0086】
(実施例)
以下、図1から図10を参照しつつ、図11を用いて、上述した第一実施形態の操舵制御装置1を備えた車両を用いて、ピニオン絶対角θPを算出した結果について説明する。
図11は、操舵角とピニオン絶対角θPとの関係を示す図である。また、図11中では、横軸に操舵角を示し、縦軸にピニオン絶対角θP(図中では「ピニオン絶対角」と記載する)を示す。
さらに、図11中には、第一実施形態の操舵制御装置1を備えた車両を用いて、台上試験により、操舵角に対するピニオン絶対角θPを算出した結果を実線(図中に示す「real」)で示す。また、図11中には、コンピュータによるシミュレーションにより、操舵角に対するピニオン絶対角θPを算出した結果を破線(図中に示す「sim」)で示す。
【0087】
図11中に示すように、第一実施形態の操舵制御装置1を備えた車両を用いてピニオン絶対角θPを算出した結果と、シミュレーションによりピニオン絶対角θPを算出した結果は相似している。
したがって、第一実施形態の操舵制御装置1を備えた車両を用いて算出したピニオン絶対角θPは、シミュレーションにより算出したピニオン絶対角θPに近い精度を算出されている。すなわち、第一実施形態の操舵制御装置1は、ピニオン絶対角θPの算出精度が高いことが確認された。
以上、本願が優先権を主張する日本国特許出願2012−216592(2012年9月28日出願)の全内容は、参照により本開示の一部をなす。
ここでは、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく各実施形態の改変は当業者にとって自明なことである。
【符号の説明】
【0088】
1 操舵制御装置
2 転舵モータ
4 転舵モータ制御部
6 クラッチ
7,11,19,23 ユニバーサルジョイント
8 反力モータ
10 反力モータ制御部
16 転舵モータ角度センサ
24 転舵輪
32 操舵輪
34 操舵角センサ
40 クラッチ板
42 ステアリングシャフト
44 ピニオン軸
46 ピニオン
50 車速センサ
52 エンジンコントローラ
54 指令演算部
56 反力サーボ制御部
58 クラッチ制御部
60 クラッチ状態切り替え部
62 操舵側クラッチ角算出部
64 転舵側クラッチ角算出部
66 クラッチ位相角算出部
68 転舵角記憶部
70 転舵角算出部
MA 転舵側前回処理内容記憶部
MB 反力側前回処理内容記憶部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際調査報告】