(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050056
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】非水電解液電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/08 20060101AFI20160725BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20160725BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20160725BHJP
【FI】
   !H01M2/08 W
   !H01M10/052
   !H01M10/0566
   !H01M2/08 X
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】2014538163
(21)【国際出願番号】JP2013005580
(22)【国際出願日】20130920
(31)【優先権主張番号】2012215895
(32)【優先日】20120928
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区城見2丁目1番61号
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 忠義
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 パナソニック株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】川上 幹児
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 パナソニック株式会社内
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA10
5H011FF03
5H011GG02
5H011HH02
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5H011JJ25
5H011KK02
5H011KK04
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5H029AJ07
5H029AJ14
5H029AK02
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5H029AM03
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5H029AM07
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5H029CJ02
5H029CJ28
5H029DJ03
5H029EJ12
5H029EJ14
5H029HJ01
5H029HJ10
5H029HJ14
(57)【要約】
発電要素と、前記発電要素を収納する電池容器と、を具備し、前記発電要素は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、非水電解液と、を含み、前記電池容器は、開口を有する電池ケースと、前記開口を封口する封口板と、前記電池ケースと前記封口板との間に介在するガスケットと、を含み、前記ガスケットは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体:PFA樹脂を含み、前記PFA樹脂の少なくとも一部は、2〜20回の溶融処理を経た第一成分であり、前記溶融処理は、前記PFA樹脂を310〜450℃の溶融温度に加熱して溶融させた後、冷却して固体に戻す工程を含む、非水電解液電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素と、前記発電要素を収納する電池容器と、を具備し、
前記発電要素は、
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、非水電解液と、を含み、
前記電池容器は、
開口を有する電池ケースと、前記開口を封口する封口板と、前記電池ケースと前記封口板との間に介在するガスケットと、を含み、
前記ガスケットは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体:PFA樹脂を含み、
前記PFA樹脂の少なくとも一部は、2〜20回の溶融処理を経た第一成分であり、
前記溶融処理は、前記PFA樹脂を310〜450℃の溶融温度に加熱して溶融させた後、冷却して固体に戻す工程を含む、非水電解液電池。
【請求項2】
前記PFA樹脂は、更に、前記第一成分以外の第二成分を含み、
前記第一成分と前記第二成分との合計に占める、第二成分の量が、90質量%以下である、請求項1に記載の非水電解液電池。
【請求項3】
前記溶融処理を施す前のバージン材料である前記PFA樹脂のメルトフローレート(MFR)が、20g/10分以上、かつ40g/10分以下である、請求項1または2に記載の非水電解液電池。
【請求項4】
前記電池ケースと前記ガスケットとの第一接合面および前記封口板と前記ガスケットとの第二接合面に、封止剤が介在しており、
前記封止剤が、ゴム成分を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解液電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットとしてテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA樹脂)を用いた非水電解液電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの有機溶媒を含む非水電解液電池は、アルカリ電池やニッケル水素二次電池などの水溶液を含む電池と比較してエネルギー密度が高く、使用温度範囲が広いという特徴がある。近年では、エレクトロニクス分野における技術の急速な発展により、電子機器の小型化が進んでいる。これに伴い、電子機器の電源として、小型かつ軽量で高エネルギー密度を有する非水電解液電池への需要がますます高まっている。具体的には、携帯電話やノートパソコンには、円筒形や角形のリチウムイオン二次電池が用いられている。また、電卓や腕時計には、コイン形のリチウム電池が主電源として用いられている。更に、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)の電源にも、リチウムイオン電池が採用され始めている。これらの需要の高まりにより、非水電解液電池に対して、長期に渡る高い信頼性が求められるようになってきている。
【0003】
コイン形や円筒形の非水電解液電池の封止部には、ポリプロピレンやポリエチレンなどの汎用樹脂で形成されたガスケットが使用されている。しかし、非水電解液電池は、水溶液を含む電池とは異なり、水分に対して非常に敏感であり、外部から水分が浸入すると、電池特性が早期に劣化してしまう。
【0004】
例えば、リチウムイオン二次電池は、金属リチウムに対して4V以上の高電位を有する正極活物質を使用しており、電解液の支持塩には、高電位での耐性を考慮してLiPF6やLiBF4が用いられている。これらの支持塩は、水分との反応性が高い上、反応により生成する強酸は電池性能を劣化させる。また、金属リチウムを含む電池の場合、リチウムと水分とが反応すると、リチウムの活性が失われ、電池性能が低下する。
【0005】
そこで、透湿性の低いテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA樹脂)をガスケットに用いることで、外部から電池内への水分進入を防ぐことが検討されている(特許文献1参照)。また、PFA樹脂のフッ素含有量およびメルトフローレートの範囲を特定することにより、多湿環境下での電池特性を向上させるとともに、漏液性能を向上させることが検討されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−147159号公報
【特許文献2】特開2010−56079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、例えば、EVやHEVの用途に非水電解液電池を用いる場合、従来は想定されなかった過酷な温度や湿度環境下での信頼性が要求される。また、電子機器の高機能化の進展に伴い、非水電解液電池の長寿命化への要望も次第に高くなってきている。
【0008】
非水電解液電池の高度の信頼性を確保するには、電池内部への水分の浸入を高レベルで抑制する必要がある。これに対し、透湿性の低いPFA樹脂をガスケットに用いるだけでは不十分であり、更なる改善が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面は、発電要素と、前記発電要素を収納する電池容器と、を具備し、前記発電要素は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、非水電解液と、を含み、前記電池容器は、開口を有する電池ケースと、前記開口を封口する封口板と、前記電池ケースと前記封口板との間に介在するガスケットと、を含み、前記ガスケットは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA樹脂)を含み、前記PFA樹脂の少なくとも一部は、2〜20回の溶融処理を経た第一成分であり、前記溶融処理は、PFA樹脂を310〜450℃の溶融温度に加熱して溶融させた後、冷却して固体に戻す工程を含む、非水電解液電池に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記局面によれば、非水電解液電池において、ガスケットによる封止部からの水分の浸入を大幅に低減することができる。よって、優れた信頼性を有する非水電解液電池を提供することができる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るコイン形の非水電解液電池の縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る円筒形の非水電解液電池の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の非水電解液電池は、発電要素と、発電要素を収納する電池容器と、を具備する。発電要素は、正極と、負極と、正極と負極との間に介在するセパレータと、非水電解液とを含む。電池容器は、開口を有する電池ケースと、開口を封口する封口板と、電池ケースと封口板との間に介在するガスケットとを含む。
【0013】
ガスケットは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体、すなわちPFA樹脂を含む。PFA樹脂は、テトラフルオロエチレン単位およびパーフルオロアルキルビニルエーテル単位以外の第三成分を含んでもよい。ただし、第三成分の割合は、テトラフルオロエチレン単位とパーフルオロアルキルビニルエーテル単位の合計に対し、例えば30モル%以下であることが好ましい。パーフルオロアルキルビニルエーテルにおけるパーフルオロアルキル基の種類は、特に限定されないが、例えばトリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基などが好ましい。
【0014】
PFA樹脂の少なくとも一部は、2〜20回の溶融処理を経た第一成分である。これにより、長期間にわたり多湿環境下で電池を使用する場合でも、電池内部への水分浸入が顕著に抑制される。
【0015】
なお、長期の信頼性を確保する観点からは、ガスケットを構成する材料(以下、ガスケット材料)のうち、PFA樹脂の占める割合が高いほど好ましい。ガスケット材料に占めるPFA樹脂の割合は、例えば、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0016】
溶融処理は、PFA樹脂を加熱して溶融させた後、冷却して固体に戻す工程を含む。PFA樹脂を溶融させるとき、PFA樹脂の温度は、310℃〜450℃、好ましくは340〜420℃、更に好ましくは340〜400℃の溶融温度に設定される。なお、溶融温度には、PFA樹脂が完全に溶融する温度だけでなく、PFA樹脂がゲル状になり、射出成型のような成形プロセスにより、成型が可能となるような温度も含まれる。
【0017】
溶融処理により、PFA樹脂の親水性を低減することができ、ガスケットの疎水化が進行する。また、PFA樹脂の溶融温度を310℃〜450℃に設定することで、PFA樹脂の機械的強度が維持される。溶融処理を行う毎に、PFA樹脂には、310℃〜450℃での熱履歴が付与される。
【0018】
初回の溶融処理は、バージン材料であるPFA樹脂を加熱して溶融させた後、冷却して固体に戻す工程を含む。バージン材料は、樹脂の製造業者から入手された状態のままのPFA樹脂である。バージン材料は、通常、ビーズもしくはペレットのような粒子で構成されている。
【0019】
樹脂の製造業者から入手されるバージン材料の具体例としては、例えば、ダイキン工業株式会社製の「ネオフロン(登録商標)PFA(NEOFLONTMPFA)」、旭硝子株式会社製の「Fluon(登録商標)PFA(Fluon PFA)」、三井・デュポン・フロロケミカル社製の「テフロン(登録商標)PFA(TEFLON PFA)」などが挙げられる。
【0020】
溶融処理1回あたり、PFA樹脂の溶融温度での加熱時間は、5分間以下が好ましく、3分間以下が更に好ましい。溶融処理1回あたりの加熱時間を上記範囲に設定することで、溶融処理を2〜20回繰り返す場合でも、PFA樹脂の機械的強度を、より好ましい範囲に維持しやすくなる。また、PFA樹脂の親水性は、トータルの加熱時間よりも、溶融処理の回数により支配的な影響を受ける。なお、特に限定されないが、加熱時間は、例えば60秒以上であればよい。
【0021】
PFA樹脂は、更に、第一成分以外の第二成分を含むことができる。このとき、第一成分と第二成分との合計に占める、第二成分の量は、90質量%以下であることが好ましい。第二成分の量が90質量%以下であれば、第一成分によるガスケットの疎水化の効果が大きく損なわれることがない。ただし、第一成分による疎水化の効果を高める観点から、第二成分の量は80質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましく、40質量%以下が特に好ましい。第一成分と第二成分との合計に占める、第二成分の量は、例えば1質量%以上とすることができる。
【0022】
溶融処理を施す前のバージン材料であるPFA樹脂のメルトフローレート(MFR)は、20g/10分以上、かつ40g/10分以下であることが好ましい。MFRを20g/10分以上とすることで、作製後のガスケットのひずみを小さくすることができる。よって、高温多湿環境下で良好な電池特性を得やすくなる。また、MFRを40g/10分以下とすることで、第一成分について溶融処理を繰り返す場合でも、PFA樹脂の機械的物性の低下が抑制される。よって、ガスケットの引っ張り強度や反発力などが維持されるため、高温多湿環境下でも良好な電池特性を得やすくなる。より好ましくは、MFRは23g/10分〜37g/10分の範囲である。なお、例えば380℃の溶融温度の場合、PFA樹脂のMFRは、少なくとも30分間程度は安定である。
【0023】
MFRの測定は、ASTM試験法D3307に準拠して行われる。具体的には、樹脂温度を372℃に設定し、5kg荷重下で、内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するPFA樹脂の質量(g/10分)をMFRとして求める。
【0024】
電池ケースとガスケットとの第一接合面および封口板とガスケットとの第二接合面には、封止剤が介在していることが好ましい。また、封止剤は、ゴム成分を含むことが好ましい。これにより、第一接合面および第二接合面の密閉性が大きく向上する。
【0025】
以下、本発明の実施形態の詳細について説明する。
[PFA樹脂]
PFA樹脂は、フッ素樹脂の中でもフッ素含有量が多く、低い透湿性を有する優れた材料である。また、PFA樹脂は、射出成型可能なフッ素樹脂の中では、最もフッ素含有量が多いと考えられる。射出成型は、量産性に優れ、大幅なコストダウンと大量生産を可能にする成型方法である。よって、ガスケットの材料選定においては、射出成型が可能であることが重要な判断要素となる。
【0026】
以上より、PFA樹脂は長期の信頼性を要求される非水電解液電池のガスケットの材料として好適である。しかし、PFA樹脂は、その末端基として、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH2)などの親水基を有するため、ガスケット表面に水分が吸着しやすい。ガスケット表面に吸着した水分は、ガスケット表面に沿った電池内部への水分の浸入を促進する。よって、PFA樹脂を用いるだけでは、外部から電池内への水分の進入を高レベルで抑制することは困難である。特に、長期間にわたり多湿環境下で電池を使用する場合には、ガスケット表面を伝った水分浸入の影響が大きくなり、信頼性の確保が困難であった。
【0027】
ここで、PFA樹脂をガスケット材料として使用する場合、ビーズまたはペレット状のバージン材料に310℃〜450℃での溶融処理を1回だけ施したPFA樹脂(第二成分)を100%用いることが一般的である。一方、第二成分の少なくとも一部を、310℃〜450℃での溶融処理を2〜20回施した第一成分に置き換えることにより、長期間にわたり多湿環境下で電池を使用する場合でも、電池内部への水分浸入を大きく抑制できることが判明した。
【0028】
溶融処理では、PFA樹脂を310℃〜450℃、好ましくは340〜420℃、更に好ましくは340〜400℃の溶融温度まで加熱して溶融させた後、冷却して固体に戻す工程が行われる。例えば、PFA樹脂のバージン材料を上記温度で溶融させて射出成型によりガスケットを作製する場合、得られたガスケットおよび同時に発生するPFA樹脂の廃材は、溶融処理を1回経た第二成分で形成されていることになる。
【0029】
また、射出成型により製造されたガスケットや廃材を、粉砕もしくはリペレット化して得られる材料から、再度、ガスケットを作製すると、溶融処理を2回または3回経た第一成分で構成されたガスケットが得られる。
【0030】
更に、溶融処理が1回以上施されたPFA樹脂と、溶融処理が1回も施されていないPFA樹脂との混合物を用いて、射出成型により製造されたガスケットは、第一成分と第二成分との複合物で構成されることになる。
【0031】
なお、溶融処理は、必ずしも射出成型などのガスケット製造工程でPFA樹脂に施す必要はなく、別工程で施してもよい。すなわち、予め準備した第一成分を用いて、任意の方法でガスケットを作製してもよい。
【0032】
溶融処理が1回以上施されたPFA樹脂と、溶融処理が未だ施されていないPFA樹脂との混合は、ガスケット製造工程中(例えば射出成型装置が備える射出装置内部)または別工程で行うことができる。第一成分は、溶融処理の回数が異なるPFA樹脂の混合物であってもよい。
【0033】
通常、高分子樹脂に熱履歴を加えると、熱エネルギーにより、主鎖の分断が支配的に起こり、曲げ強度の低下や引張強度の低下など、機械的強度の低下を招くと考えられている。そのため、熱履歴を加えた高分子樹脂をガスケット材料に使用すると、ガスケットに割れが発生したり、封口耐圧が低下したりして、長期信頼性の低下に繋がると考えられている。
【0034】
しかし、PFA樹脂の場合、溶融処理を施すことで、主鎖の分断が起こるのと同時に、末端基同士の結合が起こる。これにより、見かけ上、分子量は大きく変化せず、機械的強度が維持される。また、末端基同士が分解を伴って結合することで、水分を吸着する親水性基(例えばH原子含有基)の少なくとも一部が除去され、親水性が減少する。例えば、カルボキシル基(−COOH)同士が分解して結合した場合、末端基は(−COOOH−)となって主鎖の一部となり、同時にH2Oが離脱する。一方、分断した主鎖の末端は、疎水性を有する−CF=CF2基となることから、分子全体の親水性が低下する。これにより、ガスケット表面への水分の吸着が抑制される。
【0035】
末端基同士の結合が生じる度合いは、PFA樹脂に施す溶融処理の温度および回数に依存する。PFA樹脂を高温に昇温する程、末端基同士の結合が多く形成される。310℃で溶融処理を施す場合、PFA樹脂を充分に疎水化するには、2回以上の溶融処理が必要と考えられる。
【0036】
全ての末端基の結合が終了した後、さらに溶融処理を施すと、主鎖の分断が支配的に起こり、機械的強度の低下を招くことに繋がる。また、450℃を超える温度で溶融処理を施す場合、充分な封口耐圧を得ることが困難になる。
【0037】
溶融処理を2回以上施したPFA樹脂(第一成分)を含むガスケットを用いることで、長期間にわたる多湿環境下での使用時でも高い信頼性を有する電池が得られる。これは、PFA樹脂の親水性の末端基が減少しているため、ガスケット表面に吸着する水分が減少し、ガスケット表面を伝う水分の電池内部への浸入が抑制されるためである。
【0038】
ガスケットが第二成分を含む場合、詳細は不明であるが、親水性の末端基を有するPFA樹脂(例えば第二成分)は、ガスケット内部に存在し、疎水性のPFA樹脂(第一成分)は、ガスケットの表面側に偏在するものと考えられる。これにより、第一成分の割合が比較的少なくても、多湿環境下で良好な電池特性が得られると考えられる。
【0039】
上記のように、ガスケット材料の少なくとも一部として、溶融処理を2回以上施したPFA樹脂を用いることにより、高温多湿環境下での電池特性を改善することができる。ただし、電池ケースとガスケットとの第一接合面および封口板とガスケットとの第二接合面では、密閉性が低くなりやすい。そこで、第一接合面および第二接合面には、封止剤が介在していることが好ましい。これにより、第一接合面および第二接合面の密閉性が大きく向上する。
【0040】
封止剤は、ゴム成分を含むことが好ましい。例えば、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴムなどのゴム成分を含む封止剤を用いることが好ましい。このような封止剤は、より一般的に使用されているブロンアスファルトを含むピッチ材料に比べ、PFA樹脂との接着性が良好である。よって、ゴム成分を含む封止剤を用いることにより、ピッチ材料を用いる場合に比べ、高温多湿環境下での電池特性の向上の効果が大きくなる。
【0041】
以下、本発明の実施形態について更に具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0042】
図1は、本発明の一実施形態に係るコイン形(偏平形)非水電解液電池の縦断面図である。コイン形電池20は、発電要素と、発電要素を収納する電池容器とを具備する。発電要素は、コイン形の正極1と、コイン形の負極2と、正極1と負極2との間に介在するセパレータ3と、非水電解液(図示せず)とで構成されている。電池容器は、正極端子を兼ねる電池ケース4と、負極端子を兼ねる封口板5と、電池ケース4と封口板5との間に介在して両者を絶縁するガスケット6とを含む。電池ケース4および封口板5の内面には、導電性材料により集電層(図示せず)を形成してもよい。
【0043】
一方、図2は、本発明の一実施形態に係る円筒形の非水電解液電池の縦断面図である。円筒形電池30は、発電要素と、発電要素を収納する電池容器とを具備する。発電要素は、電極群と、電極群に含浸された非水電解液(図示せず)とで構成されている。電極群は、帯状の正極11と、帯状の負極12とを、これらの間に介在するセパレータ13とともに捲回することにより形成される。電池容器は、負極端子を兼ねる電池ケース14と、正極端子を兼ねる封口板15と、電池ケース14と封口板15との間に介在して両者を絶縁するガスケット16とを含む。負極12と電池ケース14とは、負極リード17を介して接続されている。電池ケース14の上部には、正極端子を兼ねる封口板15が装着されている。正極11と封口板15とは、正極リード18を介して接続されている。また、電極群の上部および下部には、内部短絡防止のために、それぞれ上部絶縁板19aおよび下部絶縁板19bが配備されている。
【0044】
ガスケット6(16)は、バージン材料であるPFA樹脂に310〜450℃での溶融処理を2〜20回施すことにより生成した第一成分を含む。ガスケット6(16)は、その100%が第一成分により構成されてもよいが、例えば1%以上の第二成分を含んでもよい。
【0045】
正極1(11)は、例えば、正極活物質、導電剤および結着剤を含有する正極合剤の加圧成型体である。正極活物質は、所望の一次電池または二次電池の種類に応じて選択される。例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiNixCo1-x2、LiNixMnyCo1-x-y2、MnO2、V25などの金属酸化物、TiS2、FeS2などの金属硫化物、フッ化黒鉛、硫黄または特定の高分子を正極活物質として用いることができる。また、導電剤としては、グラファイト、カーボンブラックなどのカーボン材料を用いることができる。更に、結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸などを用いることができる。
【0046】
コイン形の電池を構成する場合、正極合剤はコイン形のペレット状に成型される。一方、円筒形や角形の電池を構成する場合、正極合剤を支持体に充填し、圧延することにより、帯状の正極が作製される。支持体としては、例えば金属箔やエキスパンドメタルが使用される。また、支持体の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼などが使用される。
【0047】
負極2(12)は、例えば、負極活物質、導電剤および結着剤を含有する負極合剤の加圧成型体や、シート化された負極活物質自体(金属)である。負極活物質は、所望の一次電池または二次電池の種類に応じて選択される。例えば、金属リチウム、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−スズ合金、リチウム−ケイ素合金などのリチウム合金、SnO、SnO2、SiO、SiO2、Li4Ti512等の酸化物、天然黒鉛や人造黒鉛などの炭素材料を負極活物質として用いることができる。また、導電剤としては、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン材料を用いることができる。更に、結着剤としては、PTFE、PVDF、SBR、ポリアクリル酸、ポリイミドなどを用いることができる。
【0048】
コイン形の電池を構成する場合、負極合剤はコイン形のペレット状に成型される。また、金属リチウムやリチウム合金は、コイン形に打ち抜かれる。一方、円筒形や角形の電池を構成する場合、負極合剤を支持体に充填し、圧延することにより、帯状の負極が作製される。支持体としては、例えば金属箔やエキスパンドメタルが使用される。また、支持体の材料としては、銅、ニッケルなどが使用される。金属リチウムやリチウム合金は、帯状に成形される。
【0049】
セパレータ3(13)には、従来から用いられている微多孔膜、不織布などを用いることができる。セパレータの材料としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、セルロース系材料、ポリフェニレンサルファイドのようなエンジニアリングプラスチックなどを用いることができる。
【0050】
非水電解液は、非水溶質と、これに溶解する支持電解質とを含む。
支持電解質としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3、LiAsF6、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0051】
非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、スルホラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、γ−ブチロラクトンなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0052】
電池の形状や種類は、特に限定されないが、コイン形(偏平形)、円筒形、ピン型のように、封口部にガスケットを用いる電池、特に加締め封口構造を有する電池に本発明を適用することができる。ここで、加締め封口構造とは、開口を有する電池ケースと、開口を封口する封口板と、電池ケースと封口板との間に介在するガスケットとを含む封口構造であって、電池ケースの開口の端部を、ガスケットを介して、封口板の周縁に押し付けることにより、密閉性を確保しようとする構造である。
【実施例1】
【0053】
(電池1)
正極活物質としてLiCoO2、導電剤としてカーボンブラック、結着剤としてフッ素樹脂粉末を、質量比90:5:5の割合で混合した正極合剤を、直径10mm、厚み0.5mmのコイン形に成型し、成型体を200℃中で24時間乾燥した後、正極1として用いた。
【0054】
負極活物質としてLi4Ti512、導電剤としてグラファイト、結着剤としてポリアクリル酸を、質量比80:15:5の割合で混合した負極合剤を、直径11mm、厚み0.5mmのコイン形に成型し、成型体を150℃で24時間乾燥した後、負極2として用いた。
【0055】
上記正極1と負極2とを用いて、図1に示すようなコイン形電池(電池1)を作製した。電池の寸法は、外径16mm、高さ1.6mmである。その際、セパレータ3には、ポリプロピレン製の不織布を用い、電池ケース4および封口板5には、ステンレス鋼を用いた。電池ケース4および封口板5の内面には、集電層(図示せず)として導電性カーボンの塗膜を形成した。塗膜から水分を除去するため、電池ケース4および封口板5は、150℃で6時間乾燥させてから使用した。
【0056】
ガスケット材料には、バージン材料であるPFA樹脂(MFR:30g/10分)に対し、350℃で2分間加熱して溶融させ、その後、冷却して固化させる溶融処理を10回施した第一成分を100%用いた。10回目の溶融処理は、射出成型装置が備える射出装置内で行い、その後、成型装置でガスケットを形成した。
【0057】
なお、溶融温度での加熱時間は、以下の実施例および比較例においても、電池1とほぼ同じとなるように制御した。
【0058】
電解液は、プロピレンカーボネート:エチレンカーボネート:ジメトキシエタン=1:1:1の質量割合で混合した非水溶媒に、支持電解質としてLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解することにより調製した。
【0059】
(電池2)
ガスケット材料として、310℃で溶融処理を2回施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、電池2を作製した。
【0060】
(電池3)
ガスケット材料として、450℃で溶融処理を2回施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、電池3を作製した。
【0061】
(電池4)
ガスケット材料として、310℃で溶融処理を20回施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、電池4を作製した。
【0062】
(電池5)
ガスケット材料として、450℃で溶融処理を20回施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、電池5を作製した。
【0063】
(電池6)
ガスケット材料として、310℃で溶融処理を2回施したPFA樹脂(第一成分)30質量%と、310℃で溶融処理を1回だけ施したPFA樹脂(第二成分)70質量%との混合物を用いたこと以外、電池1と同様にして、電池6を作製した。
【0064】
具体的には、310℃で溶融処理を1回だけ施したPFA樹脂30質量%と、溶融処理を1回も施していないPFA樹脂のバージン材料70質量%との混合物を調製し、混合物に更に1回、射出装置内で、310℃で溶融処理した後、成型装置でガスケットを作製した。得られたガスケットを用いたこと以外、電池1と同様にして、電池6を作製した。
【0065】
(電池7)
ガスケット材料として、450℃で溶融処理を20回施したPFA樹脂(第一成分)30質量%と、450℃で溶融処理を1回だけ施したPFA樹脂(第二成分)70質量%との混合物を用いたこと以外、電池1と同様にして、電池7を作製した。
【0066】
具体的には、450℃で溶融処理を19回施したPFA樹脂30質量%と、溶融処理を1回も施していないPFA樹脂のバージン材料70質量%との混合物を調製し、混合物に更に1回、射出装置内で、450℃で溶融処理を施した後、成型装置でガスケットを作製した。得られたガスケットを用いたこと以外、電池1と同様にして、電池7を作製した。
【0067】
(比較電池A)
ガスケット材料として、305℃で溶融処理を2回施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、比較電池Aを作製した。
【0068】
(比較電池B)
ガスケット材料として、310℃で溶融処理を1だけ回施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、比較電池Bを作製した。
【0069】
(比較電池C)
ガスケット材料として、460℃で溶融処理を20回施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、比較電池Cを作製した。
【0070】
(比較電池D)
ガスケット材料として、450℃で溶融処理を21回施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、比較電池Dを作製した。
【0071】
(比較電池E)
ガスケット材料として、450℃で溶融処理を1回だけ施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、比較電池Eを作製した。
【0072】
(比較電池F)
ガスケット材料として、460℃で溶融処理を2回施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、比較電池Fを作製した。
【0073】
(比較電池G)
ガスケット材料として、305℃で溶融処理を20回施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、比較電池Gを作製した。
【0074】
(比較電池H)
ガスケット材料として、310℃で溶融処理を21回施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、比較電池Hを作製した。
【0075】
電池1〜7は実施例、比較電池A〜Hは比較例の電池である。
実施例および比較例の電池を各々20個ずつ作製し、2.6Vの定電圧で24時間充電(保護抵抗51Ω)を行った。そして、10個の電池については、充電直後の放電容量を測定し、平均値を求めた。
一方、残り10個の電池については、温度85℃、湿度90%の高温多湿環境下で70日間保存した後、初期状態と同様の条件で充電して、放電容量を測定し、平均値を求めた。
なお、放電容量は、20kΩの定抵抗放電を1.5Vに至るまで行ったときの容量である。
更に、充電直後の電池の放電容量(平均値)に対する、高温多湿環境下での保存後の電池の放電容量(平均値)の割合(%)を、残存容量率(%)として算出した。また、保存後の電池を、それぞれ10個ずつ分解し、ガスケットの割れの発生数を観測した。これらの結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1より、ガスケット材料の少なくとも一部が、310℃〜450℃で溶融処理を2〜20回施したPFA樹脂である電池1〜7は、ガスケット材料に溶融処理を305℃で2回施した比較電池A、310℃で1回だけ施した比較電池B、450℃で1回だけ施した比較電池E、460℃で2回施した比較電池Fに比べ、高温多湿保存後の放電容量の劣化を大きく抑制できていることが分かる。これは、PFA樹脂の末端基の結合により、ガスケット表面の親水性が低下し、ガスケット表面での水分吸着による外部からの水分進入を抑制できたためであると考えられる。
【0078】
また、電池1〜7は、ガスケット材料に溶融処理を460℃で20回施した比較電池C、450℃で21回施した比較電池D、305℃で20回施した比較電池G、310℃で21回施した比較電池Hと比較し、高温多湿保存後の放電容量劣化を抑制できていることが分かる。更に、電池C、Dでは、ガスケットの割れが発生しているのに対し、電池1〜7では、ガスケットの割れも観測されていない。このことから、電池1〜7では、分子量の低下によるガスケットの機械的強度の脆弱化を招くことなく、耐湿度特性の向上を実現できていることが分かる。これは、ガスケット材料に310℃〜450℃での溶融処理を2〜20回施すことで、末端基の結合と主鎖の分断とを同時に進行させることができるからである。これにより、ガスケットの疎水性が高められるとともに、見かけ上、分子量の低減が抑制され、ガスケットの機械的強度を保持できたものと考えられる。
【0079】
なお、ガスケット材料として310℃〜450℃で溶融処理を2〜20回施したPFA樹脂を100%用いることが好ましいが、一部に用いるだけでも、その効果が得られることが分かる。
【実施例2】
【0080】
(電池8)
ガスケット材料として、350℃で溶融処理を10回施したPFA樹脂(第一成分)80質量%と、350℃で溶融処理を1回だけ施したPFA樹脂(第二成分)20質量%との混合物を用いたこと以外、電池1と同様にして、電池8を作製した。
【0081】
具体的には、350℃で溶融処理を9回施したPFA樹脂80質量%と、溶融処理を1回も施していないPFA樹脂のバージン材料20質量%との混合物を調製し、混合物に、電池6、7と同様に、更に1回350℃での溶融処理を施すことによりガスケットを作製した。得られたガスケットを用いたこと以外、電池1と同様にして、電池8を作製した。
【0082】
(電池9〜15)
350℃で溶融処理を9回施したPFA樹脂(第一成分)と、PFA樹脂のバージン材料との混合割合を、表2に示すように変更したこと以外、電池8と同様にして、電池9〜15を作製した。
【0083】
(比較電池I)
ガスケット材料として、350℃で溶融処理を1回だけ施したPFA樹脂(第二成分)を100%用いたこと以外、電池1と同様にして、比較電池Iを作製した。
【0084】
電池8〜15は実施例、比較電池Iは比較例の電池である。
電池8〜15と比較電池Iについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2より、溶融処理が10回以上のPFA樹脂(第一成分)の混合割合が10%以上の電池1、8〜12において、特に高温多湿環境下での保存後の残量容量率が高く、80%を超えていることが分かる。
【実施例3】
【0087】
(電池16〜23)
MFRの値が18g/10分〜42g/10分の範囲内のPFA樹脂のバージン材料を用いたこと以外、電池1と同様にして、電池16〜23を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
表3より、バージン材料のMFRが20〜40g/10分の範囲である電池1、17〜22では、高温多湿環境下での保存後の残量容量率が高く、80%を超えていることが分かる。
【実施例4】
【0090】
(電池24)
電池ケース4とガスケット6との間、および封口板5とガスケット6との間に、予めブチルゴムをトルエンで希釈した溶液を塗布し、トルエンを蒸発させることにより、ブチルゴムを封止剤(シーラント)として各接合面に介在させたこと以外、電池1と同様にして電池24を作製した。
【0091】
(電池25)
ブチルゴムに代えて、スチレンブタジエンゴム(SBR)を使用したこと以外、電池24と同様にして、電池25を作製した。
【0092】
(電池26)
ブチルゴムに代えて、フッ素ゴムを使用したこと以外、電池24と同様にして、電池26を作製した。
【0093】
(電池27)
ブチルゴムに代えて、ブロンアスファルト(ピッチ)を使用したこと以外、電池1と同様にして、電池27を作製した。
【0094】
実施例24〜27について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0095】
【表4】
【0096】
表4より、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴムを用いた電池24、25、26では、封止剤を塗布していない電池1よりも高い残存容量率が得られることが分かる。
【実施例5】
【0097】
(電池28)
正極活物質として400℃で8時間熱処理された電解二酸化マンガン、導電剤としてカーボンブラック、結着剤としてフッ素樹脂粉末を、重量比90:5:5の割合で混合した正極合剤を、直径16mm、厚み1.9mmのペレット状に成型し、成型体を250℃中で24時間乾燥した後、正極1として用いた。
【0098】
負極2には、厚み0.58mmの金属リチウム板を、直径16mmの円形に打ち抜いたものを用いた。
【0099】
上記正極1と負極2とを用いて、図1に示すようなコイン形電池(電池28)を作製した。電池の寸法は、外径20mm、高さ3.2mmである。その際、セパレータ3には、ポリプロピレン製の不織布を用い、電池ケース4および封口板5には、ステンレス鋼を用いた。電池ケース4および封口板5の内面には、集電層(図示せず)として導電性カーボンの塗膜を形成した。塗膜から水分を除去するため、電池ケース4および封口板5は、150℃で6時間乾燥させてから使用した。
【0100】
ガスケット材料には、350℃で溶融処理を10回施したPFA樹脂を100%用いた。バージン材料のMFRは30g/10分であった。
【0101】
電池ケース4とガスケット6との間、および封口板5とガスケット6との間には、電池24と同様に、ブチルゴムを封止剤(シーラント)として介在させた。
【0102】
電解液は、プロピレンカーボネート:ジメトキシエタン=1:1の質量割合で混合した非水溶媒に、支持電解質としてLiClO4を0.5mol/Lの濃度で溶解することにより調製した。
【0103】
(比較電池J)
ガスケット材料として、350℃で溶融処理を1回だけ施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池28と同様にして、比較電池Jを作製した。
【0104】
電池28は実施例、比較電池Jは比較例の電池である。
実施例および比較例の電池を各々20個ずつ作製した。初期電圧は約3.2Vであった。そして、10個の電池については、作製直後の放電容量を測定し、平均値を求めた。一方、残り10個の電池については、温度85℃、湿度90%の高温多湿環境下で70日間保存した後、放電容量を測定し、平均値を求めた。
なお、放電容量は、15kΩの定抵抗放電を2.0Vに至るまで行ったときの容量である。
更に、作製直後の電池の放電容量(平均値)に対する、高温多湿環境下での保存後の電池の放電容量(平均値)の割合(%)を、残存容量率(%)として算出した。
また、保存後の電池10個を分解し、ガスケットの割れの発生数を観測した。これらの結果を表5に示す。
【0105】
【表5】
【0106】
表5より、電池28では、比較電池Jに比べて高温多湿環境下での保存後に、高い残存容量率を示すことが分かる。
【実施例6】
【0107】
(電池29)
正極活物質として400℃で8時間熱処理された電解二酸化マンガン、導電材としてカーボン粉末、結着剤としてフッ素樹脂粉末を、質量比100:5:5の割合で混合して正極合剤を調製した。次に、ステンレス鋼からなるエキスパンドメタルに正極合剤を充填し、それを厚さ0.38mm、幅20mm、長さ220mmに圧延し、正極11とした。正極11は250℃で24時間乾燥して水分を除去して用いた。
【0108】
負極12には、厚み0.15mm、幅18mm、長さ240mmの帯状の金属リチウム箔を使用した。
【0109】
上記正極11と負極12とを用いて、図2に示すような円筒形電池(電池29)を作製した。電池の寸法は、外径17mm、高さ34mmである。セパレータ13には、ポリプロピレン製の微多孔膜を用い、電池ケース14には鉄、封口板15には、ステンレス鋼を用いた。
【0110】
電極群は、帯状の正極11と、帯状の負極12とを、これらの間にセパレータ13を介在させて捲回することにより作製した。負極12と電池ケース14とを負極リード17を介して接続し、電池ケース14の上部に、正極端子を兼ねる封口板15を装着した。正極11と封口板15とは、正極リード18を介して接続した。電極群の上部と下部には、上部絶縁板19aおよび下部絶縁板19bを配備した。
【0111】
ガスケット材料には、350℃で溶融処理を10回施したPFA樹脂を100%用いた。バージン材料のMFRは30g/10分であった。
【0112】
電池ケース14とガスケット16との間、および封口板15とガスケット16との間には、電池24と同様に、ブチルゴムを封止剤(シーラント)として介在させた。
【0113】
電解液は、プロピレンカーボネート:1,2−ジメトキシエタン=1:1の質量割合で混合した非水溶媒に、支持電解質としてトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを1モル/Lの濃度で溶解することにより調製した。
【0114】
電極群を挿入した電池ケース14に電解液2gを注入した。その後、封口板15の周縁部に、ガスケット16を介して電池ケース14の端部を加締めることにより、電池を封止した。
【0115】
(比較電池K)
ガスケット材料として、350℃で溶融処理を1回だけ施したPFA樹脂を100%用いたこと以外、電池29と同様にして、比較電池Kを作製した。
【0116】
電池29は実施例、比較電池Kは比較例の電池である。
実施例および比較例の電池を各々20個ずつ作製した。初期電圧は約3.2Vであった。
そして、10個の電池については、作製直後の放電容量を測定し、平均値を求めた。一方、残り10個の電池については、温度85℃、湿度90%の高温多湿環境下で70日間保存した後、放電容量を測定し、平均値を求めた。
なお、放電容量は、0.5Aの定抵抗放電を2.0Vに至るまで行ったときの容量である。
更に、作製直後の電池の放電容量(平均値)に対する、高温多湿環境下での保存後の電池の放電容量(平均値)の割合(%)を、残存容量率(%)として算出した。
また、保存後の電池10個を分解し、ガスケットの割れの発生数を観測した。これらの結果を表6に示す。
【0117】
【表6】
【0118】
表6より、電池29では、比較電池Kに比べて、高温多湿環境下での保存後でも、高い残存容量率を示すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の非水電解液電池は、電子機器等の主電源用電源として有用である。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0120】
1,11:正極、2,12:負極、3,13:セパレータ、4,14:電池ケース、 5,15:封口板、6,16:ガスケット、17:負極リード、18:正極リード、19a:上部絶縁板、19b:下部絶縁板
【図1】
【図2】

【手続補正書】
【提出日】20150127
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
非水電解液は、非水溶媒と、これに溶解する支持電解質とを含む。
支持電解質としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3、LiAsF6、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
電池24〜27について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【国際調査報告】