(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050144
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】象牙細管封鎖剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20160725BHJP
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   A61P 1/02 20060101ALI20160725BHJP
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   A61K 9/20 20060101ALI20160725BHJP
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   A61K 9/46 20060101ALI20160725BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160725BHJP
【FI】
   !A61K8/73
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   !A61K9/46
   !A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】58
【出願番号】2014538205
(21)【国際出願番号】JP2013005784
(22)【国際出願日】20130927
(31)【優先権主張番号】2012218417
(32)【優先日】20120928
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市西淀川区歌島4丁目6番5号
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100169281
【弁理士】
【氏名又は名称】塚本 真由子
(72)【発明者】
【氏名】田中 智子
【住所又は居所】大阪府大阪市西淀川区歌島4丁目6番5号 江崎グリコ株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆嗣
【住所又は居所】大阪府大阪市西淀川区歌島4丁目6番5号 江崎グリコ株式会社内
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA36
4C076AA48
4C076AA49
4C076AA69
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4C076CC04
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB291
4C083AB471
4C083AD211
4C083AD241
4C083AD242
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD15
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4C083DD22
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4C086AA02
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4C086HA07
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4C086MA32
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA47
4C086MA57
4C086NA14
4C086ZA67
4C086ZC75
(57)【要約】
カルシウム含有成分を含む象牙細管封鎖剤であって、該カルシウム含有成分が、(i)リン酸化糖カルシウム塩;または(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせあるいは(iii)該(i)および該(ii)の混合物であり、該リン酸化糖が、糖部分とリン酸基とからなっており、該象牙細管封鎖剤は、ハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含んでもよく、あるいはハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満であるものであってもよい、象牙細管封鎖剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム含有成分を含む象牙細管封鎖剤であって
該カルシウム含有成分が、
(i)リン酸化糖カルシウム塩;または
(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは
(iii)該(i)および該(ii)の混合物
であり、該リン酸化糖が、糖部分とリン酸基とからなっている、象牙細管封鎖剤。
【請求項2】
ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、請求項1に記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項3】
さらにハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含む、請求項1に記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項4】
前記糖部分が、グルカン残基である、請求項1に記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項5】
前記糖部分の重合度が、3〜9であり、かつ前記リン酸基の数が、1〜2である、請求項4に記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項6】
前記カルシウム含有成分がリン酸化糖カルシウム塩である、請求項1に記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項7】
(ii)における前記カルシウム塩が水溶性カルシウム塩である、請求項1に記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項8】
口腔内において使用されたときの唾液中のフッ化物イオン濃度が100ppm以下となるようにフッ化物を含む、請求項1に記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項9】
口腔内において使用されたときの、口腔内の唾液中のリンイオンに対するカルシウムイオンのモル比(Ca/P比)が5.0以下となるようにカルシウム含有成分を含む、請求項1に記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項10】
口腔内組成物であって、請求項1に記載の象牙細管封鎖剤を含む、口腔内組成物。
【請求項11】
ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、請求項10に記載の口腔内組成物。
【請求項12】
さらにハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含む、請求項10に記載の口腔内組成物。
【請求項13】
歯磨剤、洗口剤、トローチ剤、ゲル剤、スプレー、塗布剤、軟膏、咀嚼錠剤、薬用チューインガム、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、ワックスマトリックス錠、多層錠または持続性錠である、請求項10に記載の口腔内組成物。
【請求項14】
薬用組成物であって、請求項1に記載の象牙細管封鎖剤を含む、薬用組成物。
【請求項15】
ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、請求項14に記載の薬用組成物。
【請求項16】
さらにハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含む、請求項14に記載の薬用組成物。
【請求項17】
チューインガム、咀嚼錠剤またはトローチ剤である、請求項14に記載の薬用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤ならびにこれらを含有する口腔内組成物、薬用組成物および食品に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Caともいう)が歯のエナメル質の初期齲蝕に役立つことが知られている。食品または医薬品に利用される多くのカルシウム塩は水不溶性または水難溶性であるが、POs−Caはカルシウム塩でありながら、中性で溶けるという特性を有する。POs−Caは、カルシウムイオンによる再石灰化および再結晶化効果を発揮する。
【0003】
POs−Caは、(1)馬鈴薯澱粉から調製された食品素材である;(2)高水溶性カルシウムである;(3)中性下のリン酸カルシウムの沈澱を抑制する;(4)ミュータンス連鎖球菌に資化されない;(5)in vitroでのプラーク形成抑制効果を有する;(6)pH緩衝作用を有し、唾液中のカルシウムイオン濃度を高め、再石灰化しやすい口内環境を作り出すことができる、という利点を有する。
【0004】
フッ化物イオンは、再石灰化および再結晶化を促進し、歯質強化(硬さおよび耐酸性の強化)に役立つことが公知である。従来、フッ化物イオンは通常のカルシウムイオンと反応して不溶化してしまうという欠点があった。不溶化してしまうと、歯に浸透しにくくなり、スムーズな再石灰化反応が望めない。しかし、POs−Caをフッ化物と共存させると、POs−Ca由来のカルシウムとフッ化物の両方が溶けるという利点が得られることが公知である。すなわち、フッ化物は、POs−Ca由来のカルシウムとイオン化した状態で共存することができ、両方のイオンをイオン化した状態で患部に届けることができる。カルシウムイオンおよびフッ化物イオンの両方のイオンが唾液に溶け、歯によい環境を作りだすことを可能にする。
【0005】
通常の健全な歯においては、象牙質の中に歯髄がとおっており、歯冠部の象牙質の上をエナメル質が覆っている。象牙質とエナメル質とは、組成、構造、臨界pH、硬度などが異なる。エナメル質は体の硬組織の中で最も硬い部分である。歯の構造中では、エナメル質の硬さ(一般にヌープ硬さ(KHN)約343)に対して象牙質の硬さは(一般にKHN約68)はるかに柔らかく、弾性率も、エナメル質がおおよそ84GPaであるのに対して象牙質が13〜17GPaである。このように、象牙質はエナメル質と比べてより柔軟な性質を有することから、象牙質では、容易に齲蝕が急激に進行したり、あるいは象牙質が容易に摩耗したり、あるいは酸蝕が引き起こされたりする。またエナメル質はハイドロキシアパタイト[Ca10(PO(OH)]の含有量が約96%と高く、その他は有機質、水などで構成されている。ハイドロキシアパタイトはカルシウムとリン酸との結晶構造物である。
【0006】
それに対して象牙質のハイドロキシアパタイト含有量は約70%と低く、多量の有機質を含むため、齲蝕に弱い。エナメル質はpH5.5程度までは耐えるのに対して、象牙質はpH6.7程度で溶解する。エナメル質は糖を食べたときにできる強い酸によって齲蝕するが、象牙質はご飯のような弱い澱粉質を食べたときにできる弱い酸によっても齲蝕してしまう。象牙質の中には、象牙細管と呼ばれる多数の穴が開いている。象牙細管の直径は通常、約0.5〜2.2μmである。象牙細管の直径は、細菌の直径よりも大きいため、象牙細管が露出すると、細菌は象牙細管中に入っていき、そこで繁殖することができる。それゆえ、象牙細管が露出すると細菌が入って容易に繁殖し、齲蝕の進行が早まる。
【0007】
通常、歯冠部の象牙質はエナメル質によって覆われ、歯根部の象牙質は歯肉によって覆われているので、口腔内に露出しておらず、齲蝕は容易には起こらない。しかし、齲蝕が進行して象牙質まで達したり、加齢によりコラーゲンマトリックス構造が崩壊して歯肉が退縮したり、歯周治療、咬合不良、歯磨きのしすぎなどにより歯茎が退縮したりすると、根面の象牙質が露出する場合がある。すなわち、象牙細管が露出する場合がある。象牙細管が露出すると、上記のように象牙細管に齲蝕菌が侵入し、齲蝕になる。さらに、知覚過敏においては、象牙細管の開口が確認されており、象牙細管の開口は、知覚過敏の原因の一因と考えられる。象牙細管から冷たいものまたは熱いものが浸み込んだり、または圧力がかかったりすると、歯髄神経に刺激が到達し、痛みを生じると考えられる。上記の理由から、象牙質の露出を防ぎ、象牙細管の開口部を埋めることが好ましいと考えられる。
【0008】
上記のように、エナメル質と象牙質とは組成および構造が全く違うので、エナメル質の治療に使える治療剤であっても、象牙質の治療には使えないというのが常識であった。
【0009】
象牙質の齲蝕および知覚過敏の一般的な対処方法としては、カルシウム剤、フッ素剤などの象牙細管封鎖剤をペースト状で根面に塗り込む方法およびフッ素イオン導入法がある。しかし、これらの方法では全ての開口部を完全に封鎖することは難しく、また完全に封鎖されたかを確認することはできない。象牙細管封鎖剤を塗り込む方法で可能な限り全ての開口部に均一に塗り込もうとすると時間がかかり、患者への負担が大きい。そのため、過剰な処理を行わざるを得ず、技術的にも困難であり、かつ使用するフッ素剤の量を過剰に要する。また、象牙細管に既に細菌が侵入していたとしても、そのまま塗りこんでしまい、齲蝕をより悪化させる場合もある。その場合には、細菌の侵入箇所のみの固形物を取り除くことは難しく、全体に削り取る必要がある。また、従来の歯科材料である接着性レジンを用いて象牙細管の開口部を埋めると、レジンに汚れがつきやすく、劣化したり、目減りしたり、削れたりしてメンテナンスが難しい。そのため、レジンではない方法で開口部を埋めることが好ましい。知覚過敏の他の治療方法としては、カリウムイオンなどで歯髄内神経をブロックする方法が挙げられる。しかし、この方法は、齲蝕を治療する効果も、象牙細管を封鎖する効果もないため、根本的な治療方法ではない。
【0010】
POs−Caに関する出願としては、例えば、特許文献1(特開2009−167135号公報)がある。特許文献1は、齲蝕治療用キットを記載している。この齲蝕治療用キットは、(1)ハイドロキシアパタイト粒子含有組成物および(2)リン酸化糖カルシウム含有組成物を含んでいる。特許文献1では、リン酸化オリゴ糖を象牙細管の封鎖に利用しているが、単独での使用を記載しているわけではなく、ハイドロキシアパタイトを必要な構成成分としている。特許文献1の0172段落および0173段落の記載からも明らかなように、特許文献1に記載の方法では、ハイドロキシアパタイト粒子を象牙細管に塗りこむことによって象牙細管を封鎖している。従って、この方法は、ペースト状の象牙細管封鎖剤を使用する従来の方法と同様に、完全な封鎖が難しいという欠点がある。
【0011】
POs−Caに関連する物質に関する従来の技術として、特許文献2(特許3466350号公報)、特許文献3(特許2964182号公報)および特許文献4(特開平05−117153号公報)がある。
【0012】
特許文献2は、象牙質知覚過敏症用歯科用組成物に関する。この組成物は、(A)(1)象牙質細管径よりも小さい粒子径を有し、カルシウム化合物と反応して象牙細管径よりも大きな凝集体を形成する重合体粒子をエマルジョン粒子として含有し、そして(2)加水限外濾過により精製されて分散媒中の金属イオン濃度が1000ppm以下とされた、水性エマルジョン成分、および(B)水溶性有機酸またはその水溶性塩成分を含有し、ここで該有機酸のカルシウム塩は、水不溶性または水難溶性である。
【0013】
この組成物は、(A)成分と(B)成分とを一緒に含む容器に混合して保存し、塗布によって被膜を形成して使用されてもよく、(A)成分と(B)成分とを別々の容器に保存し、それぞれの成分を任意の順で逐次的に塗布または使用直前に混合し、塗布によって被膜を形成してもよい。
【0014】
(A)成分と(B)成分とを混合して含む場合、保存中に水不溶性または水難溶性のカルシウム塩が形成され、象牙細管径よりも大きな沈澱ができてしまうという問題がある。また、(A)成分と(B)成分とを別々の容器に保存して使用する場合であっても、組成物はエマルジョンであるため、象牙質への塗布が不均一になり易いという問題がある。
【0015】
これに対して、本願発明では、エマルジョンではなく、清澄溶液を形成する組成物を使用する。そのため、象牙質への均一な塗布が可能であり、保存安定性に関しても凝集が起こりにくいという長所を有する。また、本願発明は、カルシウム化合物と反応することによって凝集体を形成させるものではなく、歯面との接触で被膜形成を行う点で異なる。
【0016】
特許文献3は、象牙質知覚過敏治療剤に関する。特許文献3の象牙質知覚過敏治療剤は、次の(A)成分及び/又は(B)成分:(A)(イ)水溶性亜鉛塩と(ロ)ポリオールリン酸エステル及び/又はその塩とを水性媒体中で混合することにより得られる水酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛のコロイド;(B)ポリオールリン酸エステルの亜鉛塩を含有する。
【0017】
特許文献3には、ポリオールリン酸エステル金属塩が象牙細管の封鎖に有効であることが示されている。ポリオールリン酸エステルの例としては、単糖、オリゴ糖、多糖及びポリオールのリン酸エステルが挙げられており、具体的にはグルコース−1−リン酸、グルコース−6−リン酸などが挙げられている。しかし、カルシウム塩については特許文献3には記載されていない。
【0018】
本願発明のようにリン酸化糖カルシウム塩(またはその他のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖とその他のカルシウム塩との組み合わせ)を使用することにより、好適な使用濃度の全般にわたって凝集しないことが可能である。特許文献3の実施例のグルコース−1−リン酸亜鉛塩(G−1−P−Zn)やそのカルシウム塩であるG−1−P−Caではだ液と接触した際にも不溶性の塩を形成して効果が低下するのに対し、本願発明のリン酸化糖カルシウム塩を含む象牙細管封鎖剤は、歯面においてのみ不溶化して被膜を形成することができるため、効率的に作用することができる。
【0019】
特許文献4は、象牙質知覚過敏予防・治療剤及びこれを含有する口腔内組成物に関する。特許文献4に開示される象牙質知覚過敏予防・治療剤は、ポリオールリン酸エステル金属塩を有効成分とする。この金属塩の金属は、Fe、Ti、Al、Sn、Cu、Ni、Si、Mg、Ba、Sr、V、Mn、Mo、Ag、Nb、Zr、Sb、In及びランタノイドから選ばれる1種又は2種以上であることが記載されている。
【0020】
特許文献4には、ポリオールリン酸金属塩が象牙細管封鎖に利用できること、ポリオールリン酸エステル金属塩は、一般に水溶性媒体に対する溶解度が高いため、この金属塩を、洗口剤や歯磨剤に用いると、透明なものが得られることが記載されている。そのため、特許文献4に記載されるポリオールリン酸エステル金属塩は、コロイドや粒子を形成しないものであると考えられる。しかし、特許文献4には、金属塩としてカルシウム塩は記載されていない。また、象牙細管の封鎖の状態は不明である。
【0021】
上記のように、本願発明のようにリン酸化糖カルシウム塩を使用することにより、好適な使用濃度の全般にわたって凝集しないことが可能であり、歯面においてのみ不溶化して被膜を形成することができるため、特許文献4の実施例のグルコース−1−リン酸亜鉛塩(G−1−P−Zn)やそのカルシウム塩であるG−1−P−Caと比べて少ないカルシウム量で高い効果をもたらすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2009−167135号公報
【特許文献2】特許3466350号公報
【特許文献3】特許2964182号公報
【特許文献4】特開平05−117153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、新規な象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤ならびにこれらを含有する口腔内組成物、薬用組成物および食品を提供することを目的とする。
【0024】
知覚過敏は象牙質に本来存在する象牙細管が外部に開口することで起こるとされる。知覚過敏を押さえる目的で使用される多くの象牙細管封鎖剤が公知である。しかし、これらの象牙細管封鎖剤のほとんどがアルミニウム塩、ケイ酸塩、カルシウム塩、リン酸塩などを主体とする固形物である。これらの封鎖剤はペーストなどには利用できるものの、封鎖剤として機能する粒径の粒子を含んでおり、ざらつきがひどく、味も悪いため食用に適さなかった。また、薬用製剤として使用する場合にも使用感が悪いという問題があった。
【0025】
食品として用いることができる液状の象牙細管封鎖剤としては、特許文献4に記載のポリオールリン酸エステル金属塩を用いたものが知られている。しかし、従来の液状の象牙細管封鎖剤はコロイド溶液であるため安定性が悪いか、あるいは2液混合型であって取扱いが煩雑であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、カルシウムを含有する特定の材料(例えば、リン酸化糖カルシウム塩(好ましくはPOs−Ca))が象牙細管の封鎖および象牙質の再石灰化促進および象牙質健全部の脱灰抑制に有効であることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。
(項目1) カルシウム含有成分を含む象牙細管封鎖剤であって
該カルシウム含有成分が、
(i)リン酸化糖カルシウム塩;または
(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは
(iii)該(i)および該(ii)の混合物
であり、該リン酸化糖が、糖部分とリン酸基とからなっている、象牙細管封鎖剤。
(項目2)フッ化物をさらに含む、項目1に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目3) ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、項目1または2に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目4) さらにハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含む、項目1または2に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目5) 前記糖部分が、グルカン残基または還元グルカン残基である、項目1〜4のいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目6) 前記糖部分の重合度が、3〜9である、項目5に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目7) 前記リン酸基の数が、1〜2である、項目1〜6のいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目8) 前記カルシウム含有成分がリン酸化糖カルシウム塩である、項目1〜7のいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目9) (ii)における前記カルシウム塩が水溶性カルシウム塩である、項目1〜8のいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目10) カルシウム含有成分を含む象牙質歯質強化剤であって、
該カルシウム含有成分が、
(i)リン酸化糖カルシウム塩;または
(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは
(iii)該(i)および該(ii)混合物
であり、該リン酸化糖が、糖部分とリン酸基とからなっている、象牙質歯質強化剤。
(項目11) フッ化物をさらに含む、項目10に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目12) ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、項目10または11に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目13) さらにハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含む、項目10または11に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目14) 前記糖部分が、グルカン残基または還元グルカン残基である、項目10〜13のいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目15) 前記糖部分の重合度が、3〜9である、項目14に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目16) 前記リン酸基の数が、1〜2である、項目10〜15のいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目17) 前記カルシウム含有成分がリン酸化糖カルシウム塩である、項目10〜16のいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目18) (ii)における前記カルシウム塩が水溶性カルシウム塩である、項目10〜17のいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目19) 口腔内組成物であって、項目1〜9のいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤または項目10〜18のいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤を含む、口腔内組成物。
(項目20) ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、項目19に記載の口腔内組成物。
(項目21) さらにハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含む、項目19に記載の口腔内組成物。
(項目22) 歯磨剤、洗口剤、トローチ剤、ゲル剤、スプレー、塗布剤、軟膏、咀嚼錠剤、薬用チューインガム、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、ワックスマトリックス錠、多層錠または持続性錠である、項目19〜21のいずれか1項に記載の口腔内組成物。
(項目23) 薬用組成物であって、項目1〜9のいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤または項目10〜18のいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤を含む、薬用組成物。
(項目24) ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、項目23に記載の薬用組成物。
(項目25) さらにハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含む、項目23に記載の薬用組成物。
(項目26) チューインガム、咀嚼錠剤またはトローチ剤である、項目23〜25のいずれか1項に記載の薬用組成物。
【0027】
特定の実施形態ではまた、以下が提供される:
(項目1A) カルシウム含有成分を含む象牙細管封鎖剤であって
該カルシウム含有成分が、
(i)リン酸化糖カルシウム塩;または
(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは
(iii)該(i)および該(ii)の混合物
であり、該リン酸化糖が、糖部分とリン酸基とからなっている、象牙細管封鎖剤。
(項目2A) ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、項目1または2Aに記載の象牙細管封鎖剤。
(項目3A) さらにハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含む、項目1Aまたは2Aに記載の象牙細管封鎖剤。
(項目4A) 前記糖部分が、グルカン残基である、項目1A〜3Aのいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目5A) 前記糖部分の重合度が、3〜9であり、かつ前記リン酸基の数が、1〜2である、項目4Aに記載の象牙細管封鎖剤。
(項目6A) 前記カルシウム含有成分がリン酸化糖カルシウム塩である、項目1A〜5Aのいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目7A) (ii)における前記カルシウム塩が水溶性カルシウム塩である、項目1A〜6Aのいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目8A) 口腔内において使用されたときの唾液中のフッ化物イオン濃度が100ppm以下となるようにフッ化物を含む、項目1A〜7Aのいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目9A) 口腔内において使用されたときの、口腔内の唾液中のリンイオンに対するカルシウムイオンのモル濃度比が5.0以下となるようにカルシウム含有成分を含む、項目1A〜8Aのいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤。
(項目10A) カルシウム含有成分を含む象牙質歯質強化剤であって、
該カルシウム含有成分が、
(i)リン酸化糖カルシウム塩;または
(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは
(iii)該(i)および該(ii)混合物
であり、該リン酸化糖が、重合度3〜9のグルカン残基と1〜2個のリン酸基とからなっている、象牙質歯質強化剤。
(項目11A) ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、項目10Aに記載の象牙質歯質強化剤。
(項目12A) さらにハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含む、項目10Aまたは11Aに記載の象牙質歯質強化剤。
(項目13A) 前記カルシウム含有成分がリン酸化糖カルシウム塩である、項目10A〜12Aのいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目14A) (ii)における前記カルシウム塩が水溶性カルシウム塩である、項目10A〜13Aのいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目15A) 口腔内において使用されたときの唾液中のフッ化物イオン濃度が100ppm以下となるようにフッ化物を含む、項目10A〜14Aのいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目16A) 口腔内において使用されたときの、口腔内の唾液中のリンイオンに対するカルシウムイオンのモル濃度比が5.0以下となるようにカルシウム含有成分を含む、項目10A〜15Aのいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤。
(項目17A) 口腔内組成物であって、項目1A〜9Aのいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤または項目10A〜16Aのいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤を含む、口腔内組成物。
(項目18A) ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、項目17Aに記載の口腔内組成物。
(項目19A) さらにハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含む、項目17Aに記載の口腔内組成物。
(項目20A) 歯磨剤、洗口剤、トローチ剤、ゲル剤、スプレー、塗布剤、軟膏、咀嚼錠剤、薬用チューインガム、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、ワックスマトリックス錠、多層錠または持続性錠である、項目17A〜19Aのいずれか1項に記載の口腔内組成物。
(項目21A) 薬用組成物であって、項目1A〜9Aのいずれか1項に記載の象牙細管封鎖剤または項目10A〜16Aのいずれか1項に記載の象牙質歯質強化剤を含む、薬用組成物。
(項目22A) ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、項目21Aに記載の薬用組成物。
(項目23A) さらにハイドロキシアパタイトを0.1重量%以上含む、項目21Aに記載の薬用組成物。
(項目24A) チューインガム、咀嚼錠剤またはトローチ剤である、項目21A〜23Aのいずれか1項に記載の薬用組成物。
【発明の効果】
【0028】
本発明の象牙細管封鎖剤は、唾液と混合することにより作用を発揮し、象牙質露出面上に滑らかで耐酸性を有する被膜を形成し、象牙細管内に顆粒状封鎖剤を充填せず開口部をふさぐ。その結果、象牙細管の開口によって起こる知覚過敏(例えば、冷たいものが歯にしみる現象)を緩和することができる。
【0029】
唾液中のリン(または本発明の象牙細管封鎖剤に必要に応じて含まれるリン酸化糖カルシウム塩以外のリン含有成分から提供されるリン)とリン酸化糖カルシウム塩(好ましくはPOs−Ca)とが反応することにより、従来の他の象牙細管封鎖剤では得られなかった効果を発揮することができる。すなわち、本発明の象牙細管封鎖剤は、象牙細管を封鎖するという効果だけでなく、初期齲蝕の象牙質に対して本発明を使用することにより、象牙質を再石灰化し、象牙質の細管封鎖および被膜形成をし、かつ溶液で速やかな反応を起こすことができる。
【0030】
さらに、フッ化物とリン酸化糖カルシウム塩(好ましくはPOs−Ca)を併用することにより、象牙質表面を強化して耐酸性を上げることができる。さらに、ペースト状で使用される従来の象牙細管封鎖剤は、象牙質を再石灰化できないが、本発明の象牙細管封鎖剤は、象牙細管の欠損を再石灰化することができる。健全象牙質に対して本発明を使用することにより、耐酸性を強化すること、および耐圧性を強化することができる。
【0031】
なお、本発明の象牙細管封鎖剤は、食品の味に大きな影響を与えず、継続的な摂取でも安全性のある素材のみからなる。例えば、フッ素の濃度も従来用いられている1000ppm前後に比べて1/1000であっても耐酸性の効果を発揮する。
【0032】
本発明では、従来技術で主流の象牙細管をペーストで埋める形式ではなく、象牙質をコートする被膜を形成する。被膜はフッ素を添加した場合に、耐酸性が増し、酸によって崩壊しにくいものになる。
【0033】
本発明によって得られる被覆は滑らかで、象牙質表層を隙間なく覆うため、高い封鎖能力を持つ。
【0034】
本発明によれば、細管封鎖と同時に再石灰化または健全象牙質の耐酸性強化もしくは耐圧性強化を行うことができる。
【0035】
本発明による象牙細管封鎖剤は液体として用いることができ、封鎖に有効な成分の分子は大変小さいため、口腔内全体、歯の細かい溝にまですみずみに行き渡り、口内の露出する象牙細管を効率よく封鎖することができる。
【0036】
本発明の象牙細管封鎖剤を使用すると、これまでの公知技術ではなしえないほど滑らかな被膜が形成される。
【0037】
家庭での繰り返しの象牙細管封鎖を可能とし、茶渋などで着色した被膜の剥離ができることが望ましい。本発明の象牙細管封鎖剤を用いて得られる象牙質被膜は普段はしっかりと象牙質を覆うが、特別な処理で容易に剥離し、象牙細管内への薬剤注入を行うことができる。また、象牙質を着色から防護し、かつ機械的に除去が容易な被膜として作用する。
【0038】
本発明の象牙細管封鎖剤および象牙質歯質強化剤は、粒子懸濁液やコロイドではない液体のため、安定性に優れている。
【0039】
本発明の象牙細管封鎖剤および象牙質歯質強化剤は、知覚過敏を防ぐための歯磨剤、洗口剤などの家庭デンタルケア用品、ペースト、歯科充填剤、チュアブル錠などの歯科材料に利用できる。
【0040】
本発明の象牙細管封鎖剤および象牙質歯質強化剤は、味がよく、食品素材として利用できる素材のみから構成できるため、独自な用途として、食品への添加が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、実験1の結果を示す写真である。図1は、POs−Caの水溶性が優れていることを示す。
【図2】図2は、実験2Aの象牙質の強化を示すマイクロラジオグラフである。
【図3】図3は、実験2Dの象牙質の強化を示すマイクロラジオグラフである。
【図4】図4は、実験2Bの象牙質の強化を示すマイクロラジオグラフである。
【図5】図5は、実験2Aの象牙質の再石灰化効果を示すマイクロラジオグラフである。
【図6】図6は、実験2Dの象牙質の再石灰化効果を示すマイクロラジオグラフである。
【図7】図7は、実験2Bの象牙質の再石灰化効果を示すマイクロラジオグラフである。
【図8】図8は、実験2Aの結果を示す走査型電子顕微鏡写真である。上の列の写真は、象牙質断面を含むように象牙質表面に対して斜め上から撮影した写真であり、下の列の写真は象牙質表面の上側から撮影した写真である。左は脱灰部位の写真であり、真ん中は再石灰化部位の写真であり、右は歯質強化後に酸処理を行った部位の写真である。上の列の写真は1目盛が50μmであり、下の列の写真は1目盛が20μmである。
【図9】図9は、実験2Bの結果を示す走査型電子顕微鏡写真である。上の列の写真は、象牙質断面を含むように象牙質表面に対して斜め上から撮影した写真であり、下の列の写真は象牙質表面の上側から撮影した写真である。左は脱灰部位の写真であり、真ん中は再石灰化部位の写真であり、右は歯質強化後に酸処理を行った部位の写真である。上の列の写真は1目盛が50μmであり、下の列の写真は1目盛が20μmである。
【図10】図10は、実験2Cの結果を示す走査型電子顕微鏡写真である。上の列の写真は、象牙質断面を含むように象牙質表面に対して斜め上から撮影した写真であり、下の列の写真は象牙質表面の上側から撮影した写真である。左は脱灰部位の写真であり、真ん中は再石灰化部位の写真であり、右は歯質強化後に酸処理を行った部位の写真である。上の列の写真は1目盛が50μmであり、下の列の写真は1目盛が20μmである。
【図11】図11は、実験2Dの結果を示す走査型電子顕微鏡写真である。上の列の写真は、象牙質断面を含むように象牙質表面に対して斜め上から撮影した写真であり、下の列の写真は象牙質表面の上側から撮影した写真である。左は脱灰部位の写真であり、真ん中は再石灰化部位の写真であり、右は歯質強化後に酸処理を行った部位の写真である。上の列の写真は1目盛が50μmであり、下の列の写真は1目盛が20μmである。
【図12】図12は、実験4A〜4Dの結果を示すマイクロラジオグラフである。図12は、カルシウム源としてPOs−Caを使用した場合の結果を示す。太い線はエリア2(再石灰化部)の結果を示し、そして細い線はエリア3(脱灰部)の結果を示す。
【図13】図13は、実験4A〜4Dの結果を示すマイクロラジオグラフである。図13では、カルシウム源としてCaClを使用した場合の結果を示す。太い線はエリア2(再石灰化部)の結果を示し、そして細い線はエリア3(脱灰部)の結果を示す。
【図14】図14は、実験4A〜4Cの結果を示す走査型電子顕微鏡写真である。これらの写真は、象牙質表面の上側から撮影した写真である。上の列はPOs−Ca処理をした場合の写真であり、下の列はCaCl処理をした場合の写真である。
【図15】図15は、実験5A〜5Dの結果を示すマイクロラジオグラフである。図15は、カルシウム源としてのPOs−Caを種々の濃度のフッ化物と併用して使用した場合の結果を示す。太い線はエリア2(再石灰化部)の結果を示し、そして細い線はエリア3(脱灰部)の結果を示す。
【図16】図16は、実験5A、5Cおよび5Dの結果を示すマイクロラジオグラフである。図16では、カルシウム源としてCaClを種々の濃度のフッ化物と併用して使用した場合の結果を示す。なお、フッ化物濃度1ppmの場合については、サンプルが壊れてデータを得ることができなかった。太い線はエリア2(再石灰化部)の結果を示し、そして細い線はエリア3(脱灰部)の結果を示す。
【図17】図17は、実験5Cおよび5Dの結果を示す走査型電子顕微鏡写真である。これらの写真は、象牙質表面の上側から撮影した写真である。上の列はPOs−Ca処理をした場合の写真であり、下の列はCaCl処理をした場合の写真である。左の写真はフッ化物濃度が10ppmの場合の写真であり、右の写真はフッ化物濃度が100ppmの場合の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0043】
(1.定義)
本明細書において「象牙質」とは、歯の象牙質をいう。
【0044】
本明細書において、「象牙細管封鎖剤」とは、象牙質の細管の一部または全ての封鎖に寄与する物質またはその組み合わせをいう。象牙細管封鎖剤は、象牙細管封鎖に寄与する物質から主になることが好ましい。
【0045】
本明細書において、「象牙質再石灰化」とは、口腔内に露出している象牙質表面の一部または全てが再石灰化することをいう。本発明においては、口腔内に露出している象牙質表面積の約10%以上を再石灰化できることが好ましい。再石灰化される露出象牙質表面積の割合は、好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、さらに好ましくは約40%以上、特に好ましくは約50%以上、さらにより好ましくは約60%以上、さらにより好ましくは約70%以上、なおさらに好ましくは約80%以上、最も好ましくは約90%以上である。
【0046】
用語「医薬品」とは、人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用することが目的とされている物であって、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品でないもの;または人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品でないものをいう。医薬品の定義には、医薬部外品および化粧品は含まれない。
【0047】
用語「医薬部外品」とは、(1)吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止;あせも、ただれ等の防止;脱毛の防止、育毛又は除毛;或いは人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみ等の駆除又は防止が目的とされており、かつ、人体に対する作用が緩和な物であって機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品でないもの、もしくは(2)人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用することが目的とされている物、または人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物、のうち、厚生労働大臣が指定するものをいう。なお、日本国以外の国では「医薬品」および「医薬部外品」の定義は、その国の法律が優先する。
【0048】
(2.本発明で使用される材料)
本発明においては、カルシウム含有成分、すなわち、(i)リン酸化糖カルシウム塩;または(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物が使用される。必要に応じて他の材料(例えば、フッ化物)もまた使用され得る。(ii)のリン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩とは、水溶液中でリン酸化糖カルシウム塩を形成することができ、リン酸化糖カルシウム塩と同様に作用し得る。そのため、本明細書中での言及するリン酸化糖カルシウム塩についての効果は、(ii)の組み合わせについても同様に得られると考えられる。
【0049】
(2a.リン酸化糖およびリン酸化糖の塩)
本発明において使用されるリン酸化糖は、糖部分とリン酸基とからなっている。本明細書で用いる場合、用語「リン酸化糖」とは、分子内に少なくとも1個のリン酸基を有する糖をいう。本明細書で用いる場合、用語「リン酸化糖の塩」とは、リン酸化糖の塩をいう。本明細書で用いる場合、用語「リン酸化糖無機塩」とは、リン酸化糖の無機塩をいう。本明細書で用いる場合、用語「リン酸化糖のカルシウム塩」とは、リン酸化糖のカルシウム塩をいう。
【0050】
リン酸化糖中のリン酸基の数は特に限定されないが、リン酸化糖1分子あたり10個以下が好ましく、5個以下がより好ましい。さらに好ましくは、リン酸化糖中のリン酸基の数は、リン酸化糖1分子あたり1個、2個または3個であり、特に好ましくは1個または2個である。
【0051】
リン酸化糖中の糖部分の重合度は、好ましくは、2以上であり、より好ましくは3以上である。リン酸化糖中の糖の重合度は、好ましくは約100以下であり、より好ましくは約90以下であり、より好ましくは約80以下であり、より好ましくは約70以下であり、より好ましくは約60以下であり、より好ましくは約50以下であり、より好ましくは約40以下であり、より好ましくは約30以下であり、より好ましくは約20以下であり、より好ましくは約10以下であり、より好ましくは約9以下であり、より好ましくは約8以下であり、さらに好ましくは約7以下であり、より好ましくは約6以下であり、特に好ましくは約5以下である。なお、本明細書中では、リン酸化糖中の糖部分の重合度が10以下のものを、リン酸化オリゴ糖ともいう。本明細書中では、「重合度」とは、構造単位の数、すなわち、単糖残基の数をいう。例えば、3つのグルコース単位からなる糖の重合度は3である。場合によっては平均的な重合体分子の構造単位の数を指す。
【0052】
リン酸化糖の分子量は、好ましくは約400以上であり、より好ましくは約500以上であり、さらに好ましくは約600以上であり、特に好ましくは約700以上である。リン酸化糖の分子量は、好ましくは約100万以下であり、より好ましくは約10万以下であり、さらに好ましくは約1万以下であり、例えば、約9000以下、約8000以下、約7000以下、約6000以下、約5000以下、約4000以下、約3000以下であり、特に好ましくは2000以下であり、1つの実施形態では1000以下である。
【0053】
リン酸化糖は、酸の形態(すなわち、リン酸基に水素が結合している)である。本発明においては、リン酸化糖の電離形態(すなわち、リン酸基の水素が解離して離れてリン酸イオンになっている)を用いてもよく、塩の形態(すなわち、リン酸イオンと塩基の陽イオンが結合している)を用いてもよい。特定の実施形態では、好ましくは、リン酸化糖の無機塩が使用される。リン酸化糖の無機塩は、好ましくはカルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、鉄塩またはナトリウム塩である。カルシウム塩の形態のリン酸化糖をリン酸化糖カルシウムともいう。リン酸化糖のマグネシウム塩をリン酸化糖マグネシウムともいう。リン酸化糖のカリウム塩をリン酸化糖カリウムともいう。リン酸化糖の亜鉛塩をリン酸化糖亜鉛ともいう。リン酸化糖の鉄塩をリン酸化糖鉄ともいう。ナトリウム塩の形態のリン酸化糖をリン酸化糖ナトリウムともいう。他の無機塩についても同様である。好ましくは、本発明で用いられるリン酸化糖およびその塩は、特開平8−104696号公報に記載されるリン酸化糖およびその塩である。
【0054】
リン酸化糖の糖部分は、任意の糖残基であり得る。糖部分は、好ましくは、グルカン、還元グルカン、マンナン、デキストラン、寒天、シクロデキストリン、フコイダン、ジェランガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、およびキサンタンガムからなる群より選択される糖の残基である。グルカン残基または還元グルカン残基が好ましい。ここで、還元グルカンとは、グルカンの還元末端のアルデヒドがアルコールに還元されたものをいう。還元グルカンは、例えば、グルカンに水素添加してアルデヒドをアルコールに還元することによって得られる。
【0055】
グルカン残基または還元グルカン残基中の重合度、すなわち、グルコース残基の数は、好ましくは、2以上であり、より好ましくは3以上である。グルコース残基の数は、好ましくは約100以下であり、より好ましくは約90以下であり、より好ましくは約80以下であり、より好ましくは約70以下であり、より好ましくは約60以下であり、より好ましくは約50以下であり、より好ましくは約40以下であり、より好ましくは約30以下であり、より好ましくは約20以下であり、より好ましくは約10以下であり、より好ましくは約9以下であり、より好ましくは約8以下であり、さらに好ましくは約7以下であり、より好ましくは約6以下であり、特に好ましくは約5以下である。
【0056】
リン酸化糖無機塩中の無機イオンの数は特に限定されず、リン酸化糖中に存在するリン酸基のすべてに無機イオンが結合してもよいし、一部のみに無機イオンが結合してもよい。リン酸化糖無機塩1分子中に1個のみの無機イオンが存在してもよいし、2個存在してもよく、または3個以上存在してもよい。リン酸化糖無機塩1分子中の無機イオンの数は、好ましくは約20個以下であり、より好ましくは約10個以下であり、さらに好ましくは約5個以下である。
【0057】
リン酸化糖カルシウム中のカルシウムイオンの数は特に限定されず、リン酸化糖中に存在するリン酸基のすべてにカルシウムイオンが結合してもよいし、一部のみにカルシウムイオンが結合してもよい。リン酸化糖1分子に対して1個のみのカルシウムイオンが結合してもよいし、2個結合してもよく、または3個以上結合してもよい。リン酸化糖1分子当たりのカルシウムイオン結合数は、好ましくは約20個以下であり、より好ましくは約10個以下であり、さらに好ましくは約5個以下である。
【0058】
リン酸化糖カルシウムには歯の再石灰化効果、カルシウム吸収促進効果、さらに味質改善効果があることが知られている。
【0059】
好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基に少なくとも1個のリン酸基が結合しているリン酸化糖またはその無機塩が使用される。さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基に1個〜2個のリン酸基が結合しており、これらのリン酸基のそれぞれに無機イオンが結合しているリン酸化糖無機塩が使用される。
【0060】
さらに好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基に少なくとも1個のリン酸基が結合しており、これらのリン酸基の少なくとも1個にカルシウムが結合しているリン酸化糖カルシウムが使用される。さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基に1個〜2個のリン酸基が結合しており、これらのリン酸基のそれぞれにカルシウムが結合しているリン酸化糖カルシウムが使用される。
【0061】
さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基が、α−1,4結合した3〜5個のグルコース残基からなり、そしてこのグルカン残基または還元グルカン残基に1個のリン酸基が結合しており、このリン酸基に無機イオンが結合しているリン酸化糖無機塩が使用される。
【0062】
さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基が、α−1,4結合した3〜5個のグルコース残基からなり、そしてこのグルカン残基または還元グルカン残基に1個のリン酸基が結合しており、このリン酸基にカルシウムが結合しているリン酸化糖カルシウムが使用される。
【0063】
さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基は、α−1,4結合した2〜8個のグルコース残基からなり、そしてこのグルカン残基または還元グルカン残基に1個〜2個のリン酸基が結合しており、これらのリン酸基のうちの少なくとも1個、好ましくは全てに無機イオンが結合しているリン酸化糖の無機塩が使用される。
【0064】
さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基は、α−1,4結合した2〜8個のグルコースからなり、そしてこのグルカン残基または還元グルカン残基に1個〜2個のリン酸基が結合しており、これらのリン酸基のうちの少なくとも1個、好ましくは全てにカルシウムが結合しているリン酸化糖カルシウムが使用される。
【0065】
さらに別の好ましい実施態様では、糖部分がグルカン残基または還元グルカン残基であり、ここで、このグルカン残基または還元グルカン残基は、α−1,4結合したグルコースを主鎖とし、α−1,6結合またはα−1,4結合したグルコースを側鎖とするリン酸化糖が使用される。
【0066】
本発明で用いられ得るリン酸化糖およびその塩は、純粋な1種類の化合物として用いられてもよく、複数種の混合物として用いられてもよい。本発明で用いられるリン酸化糖およびその塩は、好ましくは、特開平8−104696号公報に記載されるリン酸化糖およびその塩である。特開平8−104696号公報に記載される方法に従って製造すると複数種類のリン酸化糖またはその塩の混合物が得られる。その混合物をそのまま用いてもよく、純粋な化合物に分離した後に、1種類の化合物のみを選択して用いてもよい。リン酸化糖およびその塩は、1種類で用いた場合も、混合物として用いた場合も、優れた性能を発揮する。
【0067】
リン酸化糖は、例えば、公知の糖類をリン酸化することにより製造され得る。リン酸化糖無機塩は、例えば、公知の糖類をリン酸化して酸の形態のリン酸化糖を得て、その後、酸の形態のリン酸化糖を無機塩とすることにより製造され得る。リン酸化糖カルシウムは、例えば、公知の糖類をリン酸化して酸の形態のリン酸化糖を得て、その後、酸の形態のリン酸化糖をカルシウム塩とすることにより製造され得る。リン酸化糖およびその塩の製造方法は、特開平8−104696号公報に記載される。リン酸化糖カルシウムはまた、江崎グリコ株式会社からリン酸化オリゴ糖カルシウムとして販売されている。
【0068】
リン酸化糖およびその塩の製造原料である糖としては、グルカン、マンナン、デキストラン、寒天、シクロデキストリン、フコイダン、ジェランガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、およびキサンタンガムが挙げられる。以下、グルカンの場合について説明する。一般の粗製植物澱粉、好ましくは馬鈴薯の粗製澱粉などのリン酸基が多く結合した澱粉が適しているが、精製品でもよい。化工澱粉もまた、好適に用いられ得る。さらに、リン酸基を化学的に結合させた各種糖質を用いることもまた可能である。馬鈴薯澱粉中では、これを構成するグルコースの3位および6位にリン酸基が比較的多くエステル結合している。リン酸基は主にアミロペクチンに存在する。
【0069】
好ましい実施態様では、糖がグルカンの場合には、リン酸基を有する澱粉または化工澱粉を分解して得られ得る。
【0070】
好適な実施態様では、リン酸基を有する澱粉または化工澱粉に、澱粉分解酵素、糖転移酵素、またはα−グルコシダーゼ、あるいはそれらの1種以上の組み合わせ(但し、α−グルコシダーゼ1種のみを除く)を作用させる。
【0071】
好ましい実施態様では、上記澱粉分解酵素は、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、またはネオプルラナーゼの1種以上の組み合わせからなるものである。好ましい実施態様では、上記糖転移酵素は、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼである。
【0072】
好ましい実施態様では、上記製造方法は、リン酸基を有する糖に糖転移酵素を作用させる。上記糖転移酵素がシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼである。
【0073】
リン酸化糖無機塩は、例えば、酸の形態のリン酸化糖にアルカリ土類金属の塩または鉄の塩を作用させて製造される。リン酸化糖カルシウムは、例えば、酸の形態のリン酸化糖にカルシウム塩を作用させて製造される。
【0074】
リン酸化糖およびその塩としては、高純度のものを用いてもよく、低純度のものを用いてもよい。例えば、リン酸化糖およびその塩は、他の糖との混合物として用いられてもよい。なお、本明細書中でリン酸化糖およびその塩の濃度および含有量について言及する場合、この濃度および含有量は、純粋なリン酸化糖およびその塩の量に基づいて計算される。それゆえ、リン酸化糖およびその塩以外の物を含む混合物を用いた場合、濃度および含有量は、混合物全体の量ではなく、混合物中のリン酸化糖およびその塩の量に基づいて計算される。
【0075】
(2b.カルシウム塩)
本発明の特定の実施形態では、カルシウム塩が用いられる。カルシウム塩は、水溶性、水不溶性、水難溶性のいずれであってもよい。水溶性カルシウム塩が好ましい。本明細書中では、「水不溶性カルシウム塩」とは、20℃の水中での溶解度が1g/100ml HO未満であるカルシウム塩をいう。水不溶性カルシウム塩の例としては、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、リン酸一水素カルシウム、リンゴ酸カルシウム、酸化カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウムおよびリン酸カルシウムが挙げられる。本明細書中では、「水難溶性カルシウム塩」とは、20℃の水中での溶解度が1g/100ml HO以上5g/100ml HO以下であるカルシウム塩をいう。水難溶性カルシウム塩の例としては、グルコン酸カルシウム、リン酸二水素カルシウムおよび安息香酸カルシウムが挙げられる。本明細書中では、「水溶性カルシウム塩」とは、20℃の水中での溶解度が5g/100ml HOより高いカルシウム塩をいう。本発明で用いられる水溶性カルシウム塩の20℃の水中での溶解度は、好ましくは約2重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、さらに好ましくは約4重量%以上であり、特に好ましくは約5重量%以上である。水溶性カルシウム塩の定義には、リン酸化糖カルシウム塩も含む。このような水溶性カルシウム塩の他の例としては、塩化カルシウム、水溶性有機酸カルシウム塩(例えば、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、ギ酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムなど)、ポリオールリン酸カルシウム、硝酸カルシウム、カゼインホスホペプチドカルシウムなどが挙げられる。水溶性カルシウム塩は、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、ポリオールリン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、カゼインホスホペプチドカルシウム、塩化カルシウムおよび硝酸カルシウムからなる群より選択されることが好ましい。
【0076】
(2c.フッ化物)
本発明の特定の実施形態においては、フッ化物を使用する。フッ化物イオンはカルシウムイオンと反応して沈澱しやすいが、リン酸化糖が存在することにより、カルシウムイオンおよびフッ化物イオンの状態が保持されることが知られている。よって、フッ化物もカルシウムイオンおよびリン酸イオンと同時に供給することで、再石灰化を促すことができる。さらに、フッ化物イオンが再石灰化部位に取り込まれることで耐酸性の獲得または強化が期待できる。
【0077】
従来、フッ化物は1000ppm以上の高濃度で使用される場合が多い。本発明においては、リン酸化糖またはその塩をフッ化物と同時に使用することにより、従来よりも低濃度のフッ化物を用いても充分なフッ化物イオン量を確保できるため、低濃度のフッ化物の使用で、従来の高濃度と同等以上の効果が得られる。本発明によれば、例えば、100ppm以下のフッ化物の添加、好ましくは10ppm以下の使用でも十分な効果が得られ得る。
【0078】
フッ化物は好ましくは、水に溶けてフッ化物イオンを放出する化合物である。フッ化物は好ましくは、食品、医薬品または医薬部外品への配合が認められているフッ化物である。このようなフッ化物の例としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸およびその塩(例えば、モノフルオロリン酸ナトリウム)、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、氷晶石、モノフルオロ酢酸などが挙げられる。特定の実施形態では、本発明の食品または組成物において、フッ化物として、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ストロンチウムまたはお茶由来のフッ素を使用することが好ましい。食品の発明においては、フッ化物として、食品として使用可能なフッ素(例えば、お茶、井戸水、海水、食塩、魚介類、海草等由来のフッ素)を用いることが好ましい。本発明の口腔内組成物が医薬品である場合、フッ化物は、医薬品への配合が認められているフッ化物である。本発明の口腔内組成物が医薬部外品である場合、フッ化物は、医薬部外品への配合が認められているフッ化物である。
【0079】
(2d.リン酸源化合物)
歯の象牙質の主成分であるハイドロキシアパタイト(これは、Ca10(PO(OH)で表される)のCa/P比は約1.67であり、歯の象牙質を構成する組成物においては、Ca/P比は約1.0〜約1.67(P/Ca比=0.6〜1.0)である。従って、Ca/P比を約1.0〜約1.67(P/Ca比=0.6〜1.0)、好ましくは約1.67(P/Ca比=0.6)に近づけるように、リン酸イオンおよびカルシウムイオンを供給することにより、象牙質の再石灰化を促進できる。
【0080】
本発明においてリン酸化糖カルシウム塩のみを用いると、またはカルシウム塩以外のリン酸化糖の塩またはリン酸化糖とカルシウム塩との組合せのみを用いると、カルシウムイオンのみが供給され、そのままでは、より効率の高い歯質強化のためには、リン酸イオンが不足する。
【0081】
唾液中には多量のリン酸が存在することが公知である。正常な人体の場合、唾液におけるカルシウム:リン酸のモル比(以下、「Ca/P比」と称する)は、一般的に約0.25〜約0.67(P/Ca=約1.45〜約3.9)であり、リン酸が過多に存在する(すなわち、ほぼリン酸3モル対カルシウム2モル〜リン3.9モル対カルシウム1モル)。そのため、チューインガム類のような口腔内でよく咀嚼される食品の場合にはリン酸を添加しなくとも、リン酸が不足することはほとんどない。
【0082】
しかし、飲料のように唾液を希釈してしまう食品、歯の象牙質表面に直接塗布されるカルシウム含有組成物などを使用する際は、より効率の高い歯質強化のためには、カルシウムイオンに対してリン酸イオンが相対的に不足する場合があり得る。そのため、本発明の組成物および食品においては、象牙質表面との接触時の想定されるカルシウムイオン濃度に応じて、リン酸イオンの供給源を同時に用いることが好ましい。本明細書では、リン酸イオンの供給源をリン酸源化合物という。リン酸源化合物とは、リン酸化合物を意味する。
【0083】
本発明において用いられ得るリン酸源化合物は、水に溶けることによってリン酸イオンを放出する化合物であれば任意の化合物であり得る。リン酸源化合物は好ましくは水溶性のリン酸塩または無機リン酸である。このようなリン酸源化合物の例としては、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ポリリン酸およびその塩、環状リン酸およびその塩などが挙げられる。リン酸ナトリウムの例としては、メタリン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸水素ナトリウムなどが挙げられる。リン酸カリウムの例としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウムなどが挙げられる。ポリリン酸は、2以上のリン酸が縮合して形成される化合物である。ポリリン酸中の重合度は2以上であれば任意であり、例えば、2以上であり、10以下である。ポリリン酸の例としては、ピロリン酸、トリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、シクロポリリン酸などが挙げられる。これらのポリリン酸の塩もまた使用され得、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩またはマグネシウム塩である。環状リン酸の例としては、ヘキサメタリン酸などが挙げられる。これらの環状リン酸の塩もまた使用され得、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩またはマグネシウム塩である。
【0084】
このリン酸源化合物は、(好ましくは口腔内で使用した場合の)Ca/P比を約1.0〜約2.0(P/Ca比=約0.5〜約1.0)、好ましくは約1.67(P/Ca比=約0.6)に近づけるように、単独で、または組み合わせて、本発明の、象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品中に添加され得る。
【0085】
(2f.他の材料)
本発明の口腔内組成物、薬用組成物および食品においては、象牙細管封鎖作用、再石灰化作用および耐酸性もしくは耐圧性の強化作用を妨害しない限り、目的とする組成物および食品において通常用いられる任意の材料が用いられ得る。
【0086】
本発明の口腔内組成物、薬用組成物または食品が例えば、チューインガム類である場合、ガムベース、甘味料、ゼラチン、香料、光沢剤、着色料、増粘剤、酸味料、pH調整剤などを含み得る。ガムベースの例としては、チクル、酢酸ビニール、エステルガム、ポリイソブチレンおよびスチレンブタジエンラバーが挙げられる。甘味料は、糖、糖アルコールまたは高甘味度甘味料などであり得る。甘味料は、齲蝕を防ぐために、非齲蝕性であることが好ましい。甘味料は、より好ましくは、マルチトール、還元パラチノース、パラチノース、ラクチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテームL−フェニルアラニン化合物、トレハロースおよびマンニトールから選択される。チューインガム類の配合は当該分野で公知の配合に従い得る。
【0087】
本発明の口腔内組成物、薬用組成物または食品が例えば、キャンディー類である場合、ショ糖、水飴などの糖類、小麦粉、練乳、食塩、寒天、ゼラチン、ナッツ類(ピーナッツなど)、ショートニング、バター、酸味料、香料、pH調整剤、着色料などを含み得る。糖類は、糖、糖アルコールまたは高甘味度甘味料などであり得る。糖類は、齲蝕を防ぐために、非齲蝕性の糖類であることが好ましい。糖類は、より好ましくは、マルチトール、還元パラチノース、パラチノース、ラクチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテームL−フェニルアラニン化合物、トレハロースおよびマンニトールから選択される。キャンディー類の配合は当該分野で公知の配合に従い得る。
【0088】
錠菓(タブレットともいう)とは、粉末または顆粒を圧縮成形することによって形成され、口中で徐々に溶解または崩壊させて、口腔に長時間持続して作用するように設計された食品をいう。錠菓が口腔内で溶け始めてから溶け終わるまでにかかる時間は、錠菓の大きさおよび原料に依存する。当業者は、錠菓が溶け始めてから溶け終わるまでの所望の時間を達成するに適切な錠菓を任意に設計し、製造し得る。錠菓に使用される原料の例としては、以下が挙げられる:糖類、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、粉末セルロース、乳化剤、酸味料、香料、pH調整剤および着色料。糖類は、齲蝕を防ぐために、非齲蝕性の糖類であることが好ましい。糖類は、糖(ショ糖、水飴、乳糖、ブドウ糖、デンプンなど)、糖アルコールまたは高甘味度甘味料などであり得る。糖類は、より好ましくは、マルチトール、還元パラチノース、パラチノース、ラクチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテームL−フェニルアラニン化合物、トレハロースおよびマンニトールから選択される。錠菓の配合は当該分野で公知の配合に従い得る。
【0089】
一方、齲蝕は細菌が引き起こす疾患である。よって、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品においては、抗菌剤またはプラーク形成阻害剤との併用も効果的である。ハイドロキシアパタイトが齲蝕原性細菌を吸着することも知られている。殺菌剤および抗菌剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジウム、パラペン、安息香酸、エタノールなどのアルコール類などが挙げられる。比較的安全性の高い物質として、キチン、キトサン、キトサンオリゴ糖、ラクトフェリン、ポリフェノールなどとの組み合わせが挙げられる。また、細菌によって発症した炎症を抑える薬剤も併用できる。主な抗炎症剤としては、ゲニステイン、ナリンゲニンなどのフラボノイド類、ポリアミン、β−グルカン、アルカロイド、ヘスペリジン、ヘスペレチン、糖転移ヘスペリジンなどが挙げられる。これらの種々の薬剤は、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品中に必要に応じて含まれ得る。象牙細管内に細菌が入った状態で封鎖されると、象牙細管内で細菌が増殖して二次齲蝕を引き起こす可能性がある。そのため、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、および薬用組成物は、象牙細管内の細菌を死滅させるための殺菌剤または抗菌剤を含むことが好ましい。
【0090】
(3.本発明の象牙細管封鎖剤)
本発明の象牙細管封鎖剤は、カルシウムを含有する特定の成分(以下、本明細書中において「成分(A)」と記載する)を含む象牙細管封鎖剤であって、成分(A)が、(i)リン酸化糖カルシウム塩;または(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物である。本発明の象牙細管封鎖剤は、ハイドロキシアパタイトを含んでもよく、ハイドロキシアパタイトを実質的に含まなくてもよい。本発明の象牙細管封鎖剤は、1つの実施形態においては、ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である。本発明の象牙細管封鎖剤は、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行う患者が使用してもよく、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者が使用してもよい。1つの特定の実施形態では、本発明の象牙細管封鎖剤は、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行う患者のためのものであり、別の特定の実施形態では、本発明の象牙細管封鎖剤は、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者のためのものである。例えば、本発明の象牙細管封鎖剤がハイドロキシアパタイトを含まない場合に、その象牙細管封鎖剤を、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者が使用してもよい。すなわち、本発明によれば、ハイドロキシアパタイトを用いない象牙細管封鎖も可能である。また例えば、本発明の象牙細管封鎖剤がハイドロキシアパタイトを含まない場合に、その象牙細管封鎖剤を、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行う患者が使用してもよい。すなわち、本発明の象牙細管封鎖剤がハイドロキシアパタイトを含まない場合に、その象牙細管封鎖剤による処置と、ハイドロキシアパタイトを用いた処置とを組み合わせて行ってもよい。
【0091】
本発明の象牙細管封鎖剤は、口腔内組成物、薬用組成物、食品または象牙細管封鎖用組成物を調製するための原料として使用され得る。本明細書中では、象牙細管封鎖のための有効成分から主になる組成物を「象牙細管封鎖剤」といい、象牙細管封鎖のための組成物であって、象牙細管封鎖剤以外に賦形剤などを含む口腔内組成物を、象牙細管封鎖のための口腔内組成物という。「有効成分から主になる」とは、組成物中の有効成分の合計が、組成物全体の重量の約90重量%以上であることをいう。口腔内組成物とは、口腔内で使用するための組成物をいう。
【0092】
本発明の象牙細管封鎖剤中の成分(A)の量は、任意に設定され得るが、下限は好ましくは約50重量%以上であり、より好ましくは約60重量%以上であり、さらに好ましくは約70重量%以上であり、特に好ましくは約80重量%以上であり、最も好ましくは約90重量%以上である。成分(A)の量の上限は他の有効成分との組み合わせで適切に設定され得る。
【0093】
本発明の象牙細管封鎖剤中の成分(A)の量は、唾液中に予め存在するリン酸の量を考慮して設定される。この量は、象牙細管封鎖剤を摂取した際に唾液中でイオンとして存在するリンに対するカルシウムイオンのモル比が約5.0以下(より好ましくは約3以下、さらに好ましくは約0.1〜約2.0、最も好ましくは約1.67〜約2.0)となるような量であることが好ましい。
【0094】
本発明の象牙細管封鎖剤はさらにフッ化物を含み得る。象牙細管封鎖剤中のフッ化物の濃度の下限は、好ましくは約0.00001重量%以上であり、より好ましくは約0.00005重量%以上であり、さらに好ましくは約0.00008重量%以上であり、最も好ましくは約0.0001重量%以上である。場合によっては、象牙細管封鎖剤中のフッ化物の濃度の下限は、約5重量%以上であってもよい。象牙細管封鎖剤中のフッ化物の濃度の上限は、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、特に好ましくは約20重量%以下であり、最も好ましくは約10重量%以下である。
【0095】
(4.本発明の象牙質歯質強化剤)
本発明の象牙質歯質強化剤は、成分(A)を含む象牙質歯質強化剤であり、成分(A)は、(i)リン酸化糖カルシウム塩;または(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物である。本発明の象牙質歯質強化剤は、ハイドロキシアパタイトを含んでもよく、ハイドロキシアパタイトを実質的に含まなくてもよい。本発明の象牙質歯質強化剤は、1つの実施形態においては、ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である。本発明の象牙質歯質強化剤は、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行う患者が使用してもよく、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者が使用してもよい。1つの特定の実施形態では、本発明の象牙質歯質強化剤は、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行う患者のためのものであり、別の特定の実施形態では、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者のためのものである。例えば、本発明の象牙質歯質強化剤がハイドロキシアパタイトを含まない場合に、その象牙質歯質強化剤を、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者が使用してもよい。すなわち、本発明によれば、ハイドロキシアパタイトを用いない象牙質歯質強化も可能である。また例えば、本発明の象牙質歯質強化剤がハイドロキシアパタイトを含まない場合に、その象牙質歯質強化剤を、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行う患者が使用してもよい。すなわち、本発明の象牙質歯質強化剤がハイドロキシアパタイトを含まない場合に、その象牙質歯質強化剤による処置と、ハイドロキシアパタイトを用いた処置とを組み合わせて行ってもよい。本発明の象牙質歯質強化剤は、口腔内組成物、薬用組成物、食品または象牙質歯質強化のための組成物を調製するための原料として使用され得る。本明細書中では、象牙質歯質強化のための有効成分から主になる組成物を「象牙質歯質強化剤」といい、象牙質の歯質を強化するための組成物であって、象牙質歯質強化剤以外に賦形剤などを含む口腔内組成物を、象牙質歯質強化のための口腔内組成物という。
【0096】
本明細書中では、用語「象牙質歯質強化」とは、歯の象牙質部分の歯としての性能を向上させること、具体的には、象牙質の硬さおよび/または耐酸性を強化することをいう。好ましくは、本発明の象牙質歯質強化剤は、象牙質の硬さおよび耐酸性の両方を強化する。本発明の象牙質歯質強化剤は、象牙質の脱灰部分においては再石灰化を促進するとともに象牙質の健全部分においてはその脱灰を抑制する作用を有する。そのため、この観点では、本発明の象牙質歯質強化剤は、象牙質再石灰化剤または象牙質脱灰抑制剤であるとも言える。また、象牙質の脱灰を抑制することにより耐酸性が向上するため、本発明の象牙質歯質強化剤は、象牙質耐酸性向上剤であるとも言える。
【0097】
上述したとおり、本発明の象牙質歯質強化剤は、象牙質の脱灰部分および象牙質の健全部分の両方に作用するので、本発明の象牙質歯質強化剤は、象牙質に脱灰部分を有する患者に対しても有用であり、また、象牙質に脱灰部分を有さない、健全部分のみを有する健康な者に対しても有用である。
【0098】
本発明の象牙質歯質強化剤中の成分(A)の量は、任意に設定され得るが、下限は好ましくは約50重量%以上であり、より好ましくは約60重量%以上であり、さらに好ましくは約70重量%以上であり、特に好ましくは約80重量%以上であり、最も好ましくは約90重量%以上である。成分(A)の量の上限は他の有効成分との組み合わせで適切に設定され得る。
【0099】
本発明の象牙質歯質強化剤中の成分(A)の量は、唾液中に予め存在するリン酸の量を考慮して設定される。この量は、象牙質歯質強化剤を摂取した際に唾液中でイオンとして存在するリンに対するカルシウムイオンのモル比が約5.0以下(より好ましくは約3以下、さらに好ましくは約0.1〜約2.0、最も好ましくは約1.67〜約2.0)となるような量であることが好ましい。
【0100】
本発明の象牙質歯質強化剤はさらにフッ化物を含み得る。象牙質歯質強化剤中のフッ化物の濃度の下限は、好ましくは約0.00001重量%以上であり、より好ましくは約0.00005重量%以上であり、さらに好ましくは約0.00008重量%以上であり、最も好ましくは約0.0001重量%以上である。場合によっては、象牙質歯質強化剤中のフッ化物の濃度の下限は、約5重量%以上であってもよい。象牙質歯質強化剤中のフッ化物の濃度の上限は、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、特に好ましくは約20重量%以下であり、最も好ましくは約10重量%以下である。
【0101】
(5.口腔内組成物)
本発明の口腔内組成物は、本発明の象牙細管封鎖剤または本発明の象牙質歯質強化剤を含む。本発明の口腔内組成物は、象牙細管封鎖用または象牙質歯質強化用であり得る。また、本発明の口腔内組成物は、象牙細管封鎖および象牙質歯質強化の両方を同時に行う目的で使用することも可能である。
【0102】
本発明の口腔内組成物は、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行う患者が使用してもよく、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者が使用してもよい。1つの特定の実施形態では、本発明の口腔内組成物は、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行う患者のためのものであり、別の特定の実施形態では、本発明の口腔内組成物は、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者のためのものである。
【0103】
本発明の口腔内組成物は、ハイドロキシアパタイトを含んでもよく、ハイドロキシアパタイトを実質的に含まなくてもよい。例えば、本発明の口腔内組成物がハイドロキシアパタイトを含まない場合に、その口腔内組成物を、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者が使用してもよい。すなわち、本発明によれば、ハイドロキシアパタイトを用いない処置も可能である。また例えば、本発明の口腔内組成物がハイドロキシアパタイトを含まない場合に、その口腔内組成物を、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行う患者が使用してもよい。すなわち、本発明の口腔内組成物がハイドロキシアパタイトを含まない場合に、その口腔内組成物による処置と、ハイドロキシアパタイトを用いた処置とを組み合わせて行ってもよい。
【0104】
本発明の口腔内組成物中の象牙細管封鎖剤または象牙質歯質強化剤の含量は、当該分野で公知の方法に従って適切に設定され得る。例えば、口腔内で使用した場合に、リン酸イオンの量が2〜4mMとなる様な量であり得る。
【0105】
本発明の口腔内組成物は、賦形剤を含む。本発明の口腔内組成物は、賦形剤以外の他の材料を含んでもよい。本発明の口腔内組成物中に含まれ得る賦形剤および他の材料の例としては、賦形剤(例えば、粉末セルロース、デンプン、水など)、抗菌剤、殺菌剤、ゲル化剤、増粘剤、結合剤、および滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムなど)が挙げられる。本発明の口腔内組成物には、ショ糖のような、齲蝕の原因となり得る成分を含まないかまたはその含量が齲蝕の原因とならない程度に極めて少ないことが好ましい。例えば、齲蝕の原因となり得る糖類の含量は、口腔内組成物の重量のうちの10重量%以下であることが好ましい。
【0106】
本発明の口腔内組成物は、好ましくは医薬品または医薬部外品である。医薬品および医薬部外品の組成、製造法および使用法は、当業者に公知である。
【0107】
本発明の口腔内組成物が粉末の場合、この組成物は、成分(A):(i)リン酸化糖カルシウム塩;または(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物を、従来公知の方法によって必要に応じて従来公知の他の材料と混合することによって製造され得る。
【0108】
本発明の口腔内組成物が液体の場合、この組成物は、成分(A):(i)リン酸化糖カルシウム塩;または(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物を従来公知の溶媒に添加し、従来公知の方法によって混合することによって製造され得る。
【0109】
1つの実施形態では、本発明の口腔内組成物中のリン酸化糖またはその塩の含有量の合計は、口腔内組成物の形態、使用の際の希釈率などを考慮して、任意に設定され得る。例えば、本発明の口腔内組成物中のリン酸化糖またはその塩(リン酸化糖カルシウムを除く)の含有量の合計は、口腔内で該組成物を使用する際の該口腔内の該組成物と唾液との混合物中のリン酸化糖の濃度が好ましくは約1.0mM以上、より好ましくは約1.5mM以上、さらに好ましくは約2.0mM以上、特に好ましくは約3.0mM以上、最も好ましくは約4.0mM以上となるのに適切な量である。例えば、本発明の組成物中のリン酸化糖およびその塩の含有量(合計)は、口腔内で該組成物を使用する際の該口腔内の該組成物と唾液との混合物中のリン酸化糖の濃度が好ましくは約20mM以下、より好ましくは約15mM以下、さらに好ましくは約12mM以下、特に好ましくは約10mM以下、最も好ましくは約9.0mM以下となるのに適切な量である。
【0110】
口腔内組成物に関して本明細書中で使用する場合、「含有量が、口腔内で該組成物を使用する際の該口腔内の該組成物と唾液との混合物中のその濃度が1.0mM以上の濃度となるに適切な量である」とは、本発明の口腔内組成物を使用し始めてから20分間の間に口腔内に生成する液体を採取し、その液体中のその成分の濃度を測定した場合の濃度が1.0mMになるに適切な量をいう。他の濃度の場合についても同様に解釈される。口腔内にたまる液体は、純粋な唾液と、口腔内組成物由来の液体部分と、口腔内組成物由来の各種溶質との混合物である。
【0111】
口腔内組成物が歯磨剤および洗口剤などのように口腔内でほとんど薄められることなくそのままの濃度で作用するような形態で使用される場合には、本発明の口腔内組成物中のリン酸化糖またはその塩の含有量の合計は、リン酸化糖濃度に換算して、好ましくは約1.0mM以上であり、より好ましくは約1.5mM以上であり、さらに好ましくは約2.0mM以上であり、特に好ましくは約3.0mM以上であり、最も好ましくは約4.5mM以上である。またこの場合、例えば、本発明の口腔内組成物中のリン酸化糖またはその塩の含有量の合計は、カルシウム含量に換算して、好ましくは約20mM以下であり、より好ましくは約15mM以下であり、さらに好ましくは約12mM以下であり、特に好ましくは約10mM以下であり、最も好ましくは約9.0mM以下である。口腔内組成物が口腔内で薄められて使用されることが意図される組成物である場合、その希釈倍率を考慮して、成分が配合される。例えば、約20倍に希釈されることが意図される口腔内組成物の場合、20倍の濃度で配合される。
【0112】
1つの実施形態では、本発明の口腔内組成物中のカルシウム塩(リン酸化糖カルシウムを含む)の含有量は、口腔内組成物の形態、使用の際の希釈率などを考慮して、任意に設定され得る。例えば、本発明の口腔内組成物中のカルシウム塩の含有量は、口腔内で該組成物を使用する際の該口腔内の該組成物と唾液との混合物中のカルシウムの濃度が好ましくは約1.0mM以上、より好ましくは約1.5mM以上、さらに好ましくは約2.0mM以上、特に好ましくは約3.0mM以上、最も好ましくは約4.5mM以上となるのに適切な量である。例えば、本発明の組成物中のカルシウム塩の含有量は、口腔内で該組成物を使用する際の該口腔内の該組成物と唾液との混合物中のカルシウムの濃度が、好ましくは約20mM以下、より好ましくは約15mM以下、さらに好ましくは約12mM以下、特に好ましくは10mM以下、最も好ましくは約9.0mM以下となるのに適切な量である。
【0113】
口腔内組成物が歯磨剤および洗口剤などのように口腔内でほとんど薄められることなくそのままの濃度で作用するような形態で使用される場合には、本発明の口腔内組成物中のカルシウム塩の含有量の合計は、カルシウム含量に換算して、好ましくは約1.0mM以上であり、より好ましくは約1.5mM以上であり、さらに好ましくは約2.0mM以上であり、特に好ましくは約3.0mM以上であり、最も好ましくは約4.5mM以上である。またこの場合、例えば、本発明の口腔内組成物中のカルシウム塩の含有量の合計は、カルシウム含量に換算して、好ましくは約20mM以下であり、より好ましくは約15mM以下であり、さらに好ましくは約12mM以下であり、特に好ましくは約10mM以下であり、最も好ましくは約9.0mM以下である。口腔内組成物が口腔内で薄められて使用されることが意図される組成物である場合、その希釈倍率を考慮して、成分が配合される。例えば、約20倍に希釈されることが意図される口腔内組成物の場合、20倍の濃度で配合される。
【0114】
本発明の口腔内組成物中の成分(A)の量は、唾液中に予め存在するリン酸の量を考慮して設定される。この量は、口腔内組成物を摂取した際に唾液中でイオンとして存在するリンに対するカルシウムイオンのモル比が約5.0以下(より好ましくは約3以下、さらに好ましくは約0.1〜約2.0、最も好ましくは約1.67〜約2.0)となるような量であることが好ましい。
【0115】
本発明の口腔内組成物中のフッ化物の含有量は、口腔内組成物の形態、使用の際の希釈率などを考慮して、任意に設定され得る。例えば、本発明の口腔内組成物中のフッ化物の含有量は、口腔内で該組成物を使用する際の該口腔内の該組成物と唾液との混合物中のフッ素濃度(「フッ化物イオン濃度」ともいう)が好ましくは約0.01ppm以上、より好ましくは約0.1ppm以上、さらに好ましくは約0.2ppm以上、なおさらに好ましくは約0.3ppm以上、特に好ましくは約0.4ppm以上、最も好ましくは約0.5ppm以上となるのに適切な量である。フッ化物の含有量は、口腔内で該組成物を使用する際の該口腔内の該組成物と唾液との混合物中のフッ素濃度が好ましくは、例えば、約100ppm以下、約10ppm以下、約8ppm以下、約6ppm以下、約4ppm以下、または約2ppm以下となるのに適切な量である。これらのことは、本発明の全ての口腔内組成物について適用される。
【0116】
口腔内組成物が歯磨剤および洗口剤などのように口腔内でほとんど薄められることなくそのままの濃度で作用するような形態で使用される場合には、本発明の口腔内組成物中のフッ化物の含有量は、フッ素含量に換算して、好ましくは約0.01ppm以上であり、より好ましくは約0.1ppm以上であり、さらに好ましくは約0.2ppm以上であり、さらにより好ましくは約0.3ppm以上であり、特に好ましくは約0.4ppm以上であり、最も好ましくは約0.5ppm以上である。またこの場合、例えば、本発明の口腔内組成物中のフッ化物の含有量の合計は、フッ素含量に換算して、好ましくは、例えば、約100ppm以下、約10ppm以下、約8ppm以下、約6ppm以下、約4ppm以下、または約2ppm以下であり得る。口腔内組成物が口腔内で薄められて使用されることが意図される組成物である場合、その希釈倍率を考慮して、成分が配合される。例えば、約20倍に希釈されることが意図される口腔内組成物の場合、20倍の濃度で配合される。
【0117】
フッ素の濃度が高過ぎる場合には、リン酸化糖とカルシウムの作用効果が阻害される場合があり、その結果として充分な歯質強化効果が得られにくい。フッ素の濃度が低すぎる場合には、フッ素による歯質の改善効果が得られにくい。
【0118】
特定の実施形態では、成分(A)(すなわち、(i)リン酸化糖カルシウム塩;または(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物)の濃度が、カルシウム濃度として1mM〜12mMである。この場合、フッ化物の濃度は、フッ素濃度として、成分(A)由来のカルシウム濃度の約0.001倍以上であることが好ましく、約0.0015倍以上であることがより好ましく、約0.002倍以上であることがさらに好ましく、約0.003倍以上であることが特に好ましく、約0.004倍以上であることが最も好ましい。この特定の実施形態の場合、フッ化物の濃度は、フッ素濃度として、成分(A)由来のカルシウム濃度の約15倍以下であることが好ましく、約10倍以下であることがより好ましく、約5.0倍以下であることがさらに好ましく、約1.0倍以下であることが特に好ましく、約0.5倍以下であることが最も好ましい。
【0119】
1つの実施形態では、本発明の口腔内組成物がリン酸源化合物を含む場合、この組成物中のリン酸源化合物の濃度は、口腔内組成物の形態、使用の際の希釈率などを考慮して、任意に設定され得る。本発明の組成物中のリン酸源化合物の濃度は、口腔内で使用された場合に、口腔内でのCa/P比が上記の好適な範囲内になるように調整されることが好ましい。特定の実施形態では、本発明組成物中でのリン酸源化合物の含有量は、口腔内で該組成物を使用する際の該口腔内の該組成物と唾液との混合物中のリン酸濃度が好ましくは約1.0mM以上、より好ましくは約2.0mM以上、さらに好ましくは約3.0mM以上、なおさらに好ましくは約3.0mM以上、特に好ましくは約3.6mM以上、最も好ましくは約4.0mM以上となるのに適切な量である。本発明の組成物中のリン酸源化合物の含有量は、口腔内で該組成物を使用する際の該口腔内の該組成物と唾液との混合物中のリン酸濃度が好ましくは約15mM以下、より好ましくは約10mM以下、さらに好ましくは約9mM以下、特に好ましくは約7mM以下、最も好ましくは約5mM以下となるのに適切な量である。
【0120】
口腔内組成物が歯磨剤および洗口剤などのように口腔内でほとんど薄められることなくそのままの濃度で作用するような形態で使用される場合には、本発明の口腔内組成物中のリン酸源化合物の含有量は、リン酸含量に換算して、好ましくは約1.0mM以上、より好ましくは約2.0mM以上、さらに好ましくは約3.0mM以上、なおさらに好ましくは約3.0mM以上、特に好ましくは約3.6mM以上、最も好ましくは約4.0mM以上である。この場合、本発明の口腔内組成物中のリン酸源化合物の含有量は、リン酸含量に換算して、好ましくは約15mM以下であり、より好ましくは約10mM以下であり、さらに好ましくは約9mM以下であり、特に好ましくは約7mM以下であり、最も好ましくは約5mM以下である。
【0121】
本発明の口腔内組成物は、口腔内に投与する際、ある程度の時間にわたって口腔内に滞留させることが好ましい。本発明の口腔内組成物を口腔内に滞留させる時間は、好ましくは約10秒以上、より好ましくは、約30秒以上である。さらに好ましくは約1分間以上であり、特に好ましくは約5分間以上である。1つの好ましい実施形態では約10分間以上であり、さらに好ましい実施形態では約15分間以上である。本発明の口腔内組成物を口腔内に滞留させる時間に特に上限はなく、例えば約1時間以下、約50分以下、約40分以下、約30分間以下、約20分間以下などであり得る。滞留時間が短すぎる場合には、象牙細管封鎖効果および歯質強化効果が得られにくい場合がある。
【0122】
食品以外の口腔内組成物の例としては、例えば、歯磨剤、洗口剤(マウスウオッシュともいう)、または薬用チューインガムが挙げられる。口腔内組成物の形態の例としては、例えば、トローチ剤、ゲル剤、スプレー、塗布剤、軟膏、咀嚼錠剤、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、ワックスマトリックス錠、多層錠、および持続性錠が挙げられる。本発明の口腔内組成物の液剤を不織布などに含浸させた拭取り布のような形態のものや綿棒のような形態を用いることも可能である。
【0123】
本発明の口腔内組成物は、通常、容器に入れて、または包装されて販売される。この容器は、プラスチックなどの通常使用される容器であり得る。この包装は、紙、プラスチック、セロハンなどの通常使用される包装であり得る。この容器または包装には、本発明の口腔内組成物の摂取量、摂取タイミング、摂取方法(例えば、ガムの場合、「2粒を約20分間以上かみ続けることが好ましい」)などについての指示が記載されていることが好ましい。あるいは、このような指示が記載された指示書が挿入されていてもよい。
【0124】
(6.薬用組成物)
本発明の薬用組成物は、本発明の象牙細管封鎖剤または本発明の象牙質歯質強化剤を含む。本発明の薬用組成物は、医薬品、医薬部外品または健康食品であり得る。本発明の薬用組成物は、医薬品または医薬部外品であることが好ましい。特定の実施形態では、本発明の薬用組成物は、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者のためのものである。
【0125】
本発明の薬用組成物中の象牙細管封鎖剤または象牙質歯質強化剤の含量は、当該分野で公知の方法に従って適切に設定され得る。例えば、口腔内で使用した場合に、リン酸イオンの量が2〜4mMとなる様な量であり得る。本発明の薬用組成物中のリン酸化糖またはその塩、カルシウム塩、フッ化物、リン酸源化合物の含有量は、上記の口腔内組成物について記載した量と同様の範囲であることが好ましい。
【0126】
本発明の薬用組成物は、好ましくは、医師の監督下で使用されるものであるか、または処方箋に従って購入し、医師の指示に従って使用されるものである。本発明の薬用組成物は、一般の食品とは異なる。
【0127】
本発明の薬用組成物は、口腔内に投与する際、ある程度の時間にわたって口腔内に滞留させることが好ましい。本発明の薬用組成物を口腔内に滞留させる時間は、好ましくは約10秒以上、より好ましくは、約30秒以上である。さらに好ましくは約1分間以上であり、特に好ましくは約5分間以上である。1つの好ましい実施形態では約10分間以上であり、さらに好ましい実施形態では約15分間以上である。本発明の薬用組成物を口腔内に滞留させる時間に特に上限はなく、例えば約1時間以下、約50分以下、約40分以下、約30分間以下、約20分間以下などであり得る。滞留時間が短すぎる場合には、象牙細管封鎖効果および歯質強化効果が得られにくい場合がある。
【0128】
本発明の薬用組成物の摂取量は、好ましくは1回あたり、約0.1g以上であり、より好ましくは約0.2g以上であり、さらに好ましくは約0.5g以上であり、さらにより好ましくは約1g以上である。本発明の薬用組成物の摂取量に特に上限はないが、例えば、1回あたり、約1000g以下、約750g以下、約500g以下、約250g以下、約100g以下、約50g以下、約40g以下、約30g以下、約20g以下、約10g以下、約7.5g以下、約5g以下、約4g以下、約3g以下、約2g以下、約1g以下などである。
【0129】
本発明の薬用組成物の摂取頻度は、医師によって適切に設定され得る。例えば、1週間に1回以上、1週間に2回以上、1週間に3回以上、1週間に4回以上、1週間に5回以上、1週間に6回以上、1週間に7回以上、1日1回以上、1日2回以上、1日3回以上などであり得る。本発明の薬用組成物の摂取頻度に上限はなく、例えば、1日3回以下、1日2回以下、1日1回以下、1週間に7回以下、1週間に6回以下、1週間に5回以下、1週間に4回以下、1週間に3回以下、1週間に2回以下、1週間に1回以下などであり得る。
【0130】
本発明の薬用組成物の摂取のタイミングは、食前であっても食後であっても食間であってもよいが、食後が好ましい。
【0131】
本発明の薬用組成物の摂取期間は、医師によって適切に決定され得る。本発明の薬用組成物は、好ましくは約1日以上、より好ましくは約3日間以上、最も好ましくは約5日間以上摂取され得る。本発明の薬用組成物の摂取期間は、約1ヶ月以下、約2週間以下、約10日間以下であってもよい。口腔内での脱灰は日常的に起こり得るので、本発明の薬用組成物は、ほぼ永続的に摂取されることが好ましい。
【0132】
本発明の薬用組成物がチューインガム、咀嚼錠剤、トローチ剤などの形態の場合は、1回に1粒ずつ摂取されてもよく、1回に複数個(例えば、2個〜10個)摂取されてもよい。1回に複数個を摂取する場合、いっぺんに複数個を口に入れて摂取してもよく、1個ずつ順々に複数個を摂取してもよい。本発明の薬用組成物がチューインガムの形態である場合、長時間噛み続けることが好ましく、本発明の薬用組成物が咀嚼錠剤の場合、長時間咀嚼することが好ましく、本発明の薬用組成物がトローチ剤である場合、噛まずに最後まで舐められることが好ましい。
【0133】
本発明の薬用組成物の剤型の例としては、例えば錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等が挙げられる。本発明の薬用組成物はまた、チューインガム、咀嚼錠剤またはトローチ剤の形態であり得る。本発明の薬用組成物は、チューインガム、咀嚼錠剤またはトローチ剤の形態であることが好ましい。
【0134】
本発明の薬用組成物がチューインガムの形態である場合、一度に服用される重量は、好ましくは約0.5g以上であり、より好ましくは約1g以上であり、さらに好ましくは約1.5g以上である。チューインガムの重量は、好ましくは約5g以下であり、より好ましくは約4g以下であり、さらに好ましくは約3g以下である。
【0135】
本発明の薬用組成物が咀嚼錠剤の形態である場合、一度に服用される重量は、好ましくは約0.05g以上であり、より好ましくは約0.1g以上であり、さらに好ましくは約0.5g以上である。咀嚼錠剤の重量は、好ましくは約5g以下であり、より好ましくは約4g以下であり、さらに好ましくは約3g以下である。
【0136】
本発明の薬用組成物がトローチ剤の形態である場合、一度に服用される重量は、好ましくは約0.5g以上であり、より好ましくは約1g以上であり、さらに好ましくは約1.5g以上である。トローチ剤の重量は、好ましくは約5g以下であり、より好ましくは約4g以下であり、さらに好ましくは約3g以下である。
【0137】
各成分の配合量は、下記の食品中の各成分の配合量と同様にして設計され得る。
【0138】
本発明の薬用組成物は、通常、容器に入れて、または包装されて販売される。この容器は、プラスチックなどの通常使用される容器であり得る。この包装は、紙、プラスチック、セロハンなどの通常使用される包装であり得る。この容器または包装には、本発明の薬用組成物の摂取量、摂取タイミング、摂取方法(例えば、ガムの場合、「2粒を約20分間以上かみ続けることが好ましい」)などについての指示が記載されていることが好ましい。あるいは、このような指示が記載された指示書が挿入されていてもよい。
【0139】
(7.本発明の食品)
1つの実施形態では、本発明の食品は、象牙細管封鎖用食品であって、本願発明の象牙細管封鎖剤を含む。特定の実施形態では、本発明の食品は、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者のための象牙細管封鎖用食品であって、本願発明の象牙細管封鎖剤を含む。
【0140】
1つの実施形態では、本発明の食品は、象牙質歯質強化用食品であって、本願発明の象牙質歯質強化剤を含む。特定の実施形態では、本発明の食品は、ハイドロキシアパタイトを用いた処置を行わない患者のための象牙質歯質強化用食品であって、本願発明の象牙質歯質強化剤を含む。
【0141】
本発明の食品中の象牙細管封鎖剤または象牙質歯質強化剤の含量は、当該分野で公知の方法に従って適切に設定され得る。例えば、口腔内で摂取した場合に、リン酸イオンの量が2〜4mMとなる様な量であり得る。
【0142】
本発明の食品は、WO2010/061932号に記載の食品のような複雑な構造を有する食品であってもよい。本発明の食品は、例えば、チューインガム類、単層または複数層のキャンディー、キャンディーによってガムが包まれた菓子、単層または複数層の錠菓、アイスクリーム、固体食品を含む冷菓などであってもよい。これらの食品は、WO2010/061932号に記載の方法によって製造され得る。
【0143】
(7a.本発明の食品の製造方法)
本発明の食品は、成分(A):(i)リン酸化糖カルシウム塩;または(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物を含むように、当該分野で公知の任意の方法によって製造され得る。
【0144】
上記(ii)の場合、リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせを本発明の食品中に実質的に均一に含むことが好ましい。これらを均一に含む食品は、製造が容易であるという利点がある。
【0145】
上記(ii)の場合、リン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖を含む部分と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩を含む部分とを分けてもよい。この場合には、本発明の食品においては、リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖が放出されるのと同時またはそれよりも後にリン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩が食品から放出されるように設計されるべきである。リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩の方がリン酸化糖またはその塩よりも早く放出されると、カルシウムイオンが歯面に無秩序に沈着してしまい、好ましくないからである。
【0146】
本発明の食品においては、フッ化物もまた使用される。フッ化物は、リン酸化糖の塩またはリン酸化糖と同時に、またはリン酸化糖の塩またはリン酸化糖よりも後に放出されるように設計されるべきである。
【0147】
本発明の食品においては、リン酸源化合物もまた使用され得、その場合には、リン酸源化合物がリン酸化糖の塩またはリン酸化糖と同時に、またはリン酸化糖の塩またはリン酸化糖よりも後に放出されるように設計されることが好ましい。
【0148】
これらのことは、本発明の全ての食品および組成物について適用される。
【0149】
(7b.本発明の食品)
本発明の食品は、成分(A):(i)リン酸化糖カルシウム塩;または(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物を含む、任意の食品であり得る。本発明の食品がリン酸化糖カルシウム塩を含む場合は、本発明の食品は他にリン酸化糖またはその塩を含む必要はないが、含んでもよい。
【0150】
本発明の食品の例としては、例えば、チューインガム類;キャンディー類;錠菓;複合飲料;ヨーグルトなどの半流動性食品;ビスケット、せんべいなどの焼き菓子;アイスクリームなどの冷菓;ゼリーなどのゲル状の食品;および麺が挙げられる。チューインガム類、キャンディー類および錠菓は、有効成分を口腔内に長時間にわたって滞留させることが可能であることから、本発明の食品として好適である。刺激唾液には予めカルシウムイオンが約1〜1.5mM濃度含まれていることが知られており、商品設計時に考慮することが望ましい。
【0151】
本発明の食品の重量は、任意の重量であり得る。一度に喫食される本発明の食品の重量は、好ましくは約0.05g以上であり、より好ましくは約0.1g以上であり、さらに好ましくは約0.5g以上である。一度に喫食される本発明の食品の重量は、好ましくは約5g以下であり、より好ましくは約4g以下であり、さらに好ましくは約3g以下である。
【0152】
本発明の食品がチューインガム類である場合、一度に喫食されるチューインガム類の重量は、好ましくは約0.05g以上であり、より好ましくは約0.1g以上であり、さらに好ましくは約0.5g以上である。一度に喫食されるチューインガム類の重量は、好ましくは約5g以下であり、より好ましくは約4g以下であり、さらに好ましくは約3g以下である。
【0153】
本発明の食品がキャンディー類の場合、一度に喫食されるキャンディー類の重量は、好ましくは約0.5g以上であり、より好ましくは約1g以上であり、さらに好ましくは約1.5g以上である。一度に喫食されるキャンディー類の重量は、好ましくは約5g以下であり、より好ましくは約4g以下であり、さらに好ましくは約3g以下である。
【0154】
本発明の食品が錠菓である場合、一度に喫食される錠菓の重量は、好ましくは約0.05g〜約10g、より好ましくは約0.1g〜約5gであり、さらに好ましくは約0.2g〜約3gである。
【0155】
本発明の食品は、任意の形状であり得る。例えば、本発明の食品がチューインガム類、キャンディー類および錠菓の場合、円盤状、球状、ラグビーボール状、ハート型などであり得る。例えば、本発明の食品が複合飲料、ヨーグルトなどの場合はもちろん、特に決まった形状はない。
【0156】
1つの実施形態では、本発明の食品がリン酸化糖またはその塩(ただし、カルシウム塩を除く)を含む場合、本発明の食品中のリン酸化糖およびその塩の含有量は、食品の形態、摂食の際の希釈率などを考慮して、任意に設定され得る。例えば、本発明の食品中のリン酸化糖およびその塩の含有量(合計)は、該食品が口腔内に存在する際の該口腔内の唾液中のリン酸化糖が好ましくは約1.0mM以上、より好ましくは約1.5mM以上、さらに好ましくは約2.0mM以上、特に好ましくは約2.5mM以上、最も好ましくは約3.0mM以上となるのに適切な量である。例えば、本発明の食品中のリン酸化糖およびその塩の含有量(合計)は、該食品が口腔内に存在する際の該口腔内の唾液中のリン酸化糖が好ましくは約12mM以下、より好ましくは約6mM以下、さらに好ましくは約5mM以下、特に好ましくは約4.5mM以下、最も好ましくは約4mM以下となるのに適切な量である。
【0157】
食品に関して本明細書中で使用する場合、「含有量が、該食品が口腔内に存在する際に、該口腔内の唾液中のその濃度が1.0mM以上の濃度となるに適切な量である」とは、本発明の食品を喫食し始めてから20分間の間に口腔内に生成する液体を採取し、その液体中のその成分の濃度を測定した場合の濃度が1.0mMになるに適切な量をいう。例えば、1分ごとに20回採取を行う方法が可能であり、その場合、20回採取された液体を合わせたものを測定サンプルとすることができる。当該20分間の間、その食品は飲み込まないで口腔内で保持しておくことが好ましい。あるいは、20分間の間に食品を少しずつ口の中に入れて咀嚼してもよい。そして、喫食者が、唾液が口腔内に溜まって来たと感じるごとにその唾液を吐き出してもらい、その吐き出された液体を収集する方法などが可能である。ただし、唾液を吐き出す際には食品を吐き出さないように注意させる。他の濃度の場合についても同様に解釈される。本明細書中では、用語「唾液」とは、口腔腺から分泌される純粋な唾液ではなく、口腔内で食物を咀嚼した場合に口腔内にたまる液体を唾液と呼ぶ。この場合、口腔内にたまる液体は、純粋な唾液と、食品由来の液体部分と、食品由来の各種溶質との混合物である。食品への各成分の配合量は、食品の重量、大きさなどによって変化する。食品の1回摂取量が大きい場合、摂取量が小さい場合よりも低い含有量になるように配合される。例えば、同じ使用量を達成するためには、2gの食品中の配合量(%)は、1gの食品中の配合量(%)の約0.5倍になる。人間の唾液は、20分間で平均約20mL分泌される。そのため、食品への配合量は、20mLの唾液に対してどれだけ溶出するかを考慮して設定される。このような配合量の設定は、当業者によって容易に実施され得る。
【0158】
食品がリン酸化糖またはその塩を含有するチューインガムである場合、このガムを口腔内で約20分間咀嚼すると、20分間のうちに、このガムに含まれるほぼ全てのリン酸化糖およびその塩が唾液中に溶出する。
【0159】
食品がリン酸化糖またはその塩とともにフッ化物を含有するチューインガムである場合、このガムを口腔内で約20分間咀嚼すると、20分間のうちに、このガムに含まれるフッ化物のうちの約50%〜約60%のフッ化物が唾液中に溶出する。
【0160】
食品がリン酸源化合物を含有するチューインガムである場合、このガムを口腔内で約20分間咀嚼すると、20分間のうちに、このガムに含まれるほぼ全てのリン酸源化合物が唾液中に溶出する。
【0161】
1つの実施形態では、本発明の食品中のカルシウム塩(リン酸化糖カルシウムを含む)の含有量は、食品の形態、摂食の際の希釈率などを考慮して、任意に設定され得る。例えば、本発明の食品中のカルシウム塩の含有量は、該食品が口腔内に存在する際の該口腔内の唾液中のカルシウムの濃度が好ましくは約1.0mM以上であり、より好ましくは約1.5mM以上であり、さらに好ましくは約2.0mM以上であり、特に好ましくは約3.0mM以上であり、最も好ましくは約4.5mM以上となるのに適切な量である。例えば、本発明の食品中のカルシウム塩の含有量は、該食品が口腔内に存在する際の該口腔内の唾液中のカルシウムの濃度が好ましくは約15mM以下、より好ましくは約10mM以下、さらに好ましくは約9mM以下、特に好ましくは約7mM以下、最も好ましくは約5mM以下となるのに適切な量である。
【0162】
例えば、カルシウム塩(リン酸化糖カルシウムを含む)がチューインガムに配合される場合、20分間の咀嚼中に出る唾液の量が20mLでカルシウムの分子量が約40であるので、該食品が口腔内に存在する際の該口腔内の唾液中のカルシウム濃度を1mM〜15mM高めるには、1回摂取量として0.8mg〜12mgのカルシウムを含めばよい(40×1(mM)×0.02(L)=0.8mg、40×15(mM)×0.02(L)=12mg)。それゆえ、ガムの重量をXg、配合量(カルシウムとして換算)をY%とすると、Y(%)={(0.8〜12(mg))/(X(g)×1000)}×100によって配合量が決定される。例えば、ガムの重量が2gの場合、カルシウムとしての配合量は、0.04〜0.6重量%である。例えば、ガムの重量が1gであれば、カルシウムとしての配合量は、0.08〜1.2重量%であり、ガムの重量が10gであれば、カルシウムとしての配合量は0.008〜0.12重量%である。ガムの重量が他の重量である場合についても同様に計算される。ガム以外の食品についても同様に設計され得る。
【0163】
本発明の食品中の成分(A)の量は、唾液中に予め存在するリン酸の量を考慮して設定される。この量は、食品を摂取した際に唾液中でイオンとして存在するリンに対するカルシウムイオンのモル比が約5.0以下(より好ましくは約3以下、さらに好ましくは約0.1〜約2.0、最も好ましくは約1.67〜約2.0)となるような量であることが好ましい。
【0164】
本発明の食品中のフッ化物の濃度は、口腔内で使用された場合に、口腔内でのフッ化物イオンの濃度が約0.2ppm〜約100ppm、より好ましくは約0.2ppm〜約1ppmになるように調整されることが好ましい。
【0165】
1つの実施形態では、本発明の食品中のフッ化物の濃度は、食品の形態、摂食の際の希釈率などを考慮して、任意に設定され得る。例えば、本発明の食品中のフッ化物の濃度は、該食品が口腔内に存在する際の該口腔内の唾液中のフッ素濃度が好ましくは約0.01ppm以上、より好ましくは約0.1ppm以上、さらに好ましくは約0.2ppm以上、なおさらに好ましくは約0.3ppm以上、特に好ましくは約0.4ppm以上、最も好ましくは約0.5ppm以上となるのに適切な量である。フッ化物の濃度は、該食品が口腔内に存在する際の該口腔内の唾液中のフッ素濃度が好ましくは約100ppm以下、より好ましくは約50ppm以下、さらに好ましくは約10ppm以下、特に好ましくは約5ppm以下、最も好ましくは約1ppm以下となるのに適切な量である。
【0166】
フッ素の濃度が多過ぎる場合には、リン酸化オリゴ糖の作用効果が阻害される場合があり、その結果として充分な歯質強化効果が得られにくい。フッ素の濃度が少な過ぎる場合には、フッ素による歯質の改善効果が得られにくい。
【0167】
例えば、フッ化物がリン酸化糖またはその塩を含むチューインガムに配合される場合、20分間の咀嚼中に出る唾液の量が20mLであり、配合量の約50%〜約60%が放出されるので、該食品が口腔内に存在する際の該口腔内の唾液中のフッ素濃度を0.2〜100ppmとするのには、1回摂取量として0.004〜2mgのフッ素を含めばよい(20(g)×(0.2〜100)×10−6=0.004〜2(mg))。それゆえ、ガムの重量をXg、フッ化物の配合量(フッ素として換算)をY%とすると、Y(%)={0.004〜2(mg)/(X(g)×1000)}×100によって配合量が決定される。例えば、ガムの重量が2gの場合、フッ素としての配合量は、0.0002〜0.1重量%である。例えば、ガムの重量が1gであれば、フッ素としての配合量は、0.0004〜0.2重量%であり、ガムの重量が10gであれば、フッ素としての配合量は0.00004〜0.02重量%である。ガムの重量が他の重量である場合についても同様に計算される。ガム以外の食品についても同様に設計され得る。
【0168】
特定の実施形態では、成分(A)(すなわち、(i)リン酸化糖カルシウム塩;または(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは(iii)上記(i)および(ii)の混合物)の濃度が、カルシウム濃度として1mM〜12mMである。この場合、フッ化物の濃度は、フッ素濃度として、成分(A)由来のカルシウム濃度の約0.001倍以上であることが好ましく、約0.0015倍以上であることがより好ましく、約0.002倍以上であることがさらに好ましく、約0.003倍以上であることが特に好ましく、約0.004倍以上であることが最も好ましい。この特定の実施形態の場合、フッ化物の濃度は、フッ素濃度として、成分(A)由来のカルシウム濃度の約15倍以下であることが好ましく、約10倍以下であることがより好ましく、約5.0倍以下であることがさらに好ましく、約1.0倍以下であることが特に好ましく、約0.5倍以下であることが最も好ましい。
【0169】
1つの実施形態では、本発明の食品がリン酸源化合物を含む場合、この食品中のリン酸源化合物の含有量は、食品の形態、摂食の際の希釈率などを考慮して、任意に設定され得る。例えば、本発明の食品中のリン酸源化合物の含有量は、該食品が口腔内に存在する際の該口腔内の唾液中のリン酸濃度が、リン酸濃度が好ましくは約1.0mM以上、より好ましくは約2.0mM以上、さらに好ましくは約3.0mM以上、なおさらに好ましくは約3.0mM以上、特に好ましくは約3.6mM以上、最も好ましくは約4.0mM以上となるのに適切な量である。本発明の食品中のリン酸源化合物の含有量は、該食品が口腔内に存在する際の該口腔内の唾液中のリン酸濃度が、好ましくは約15mM以下、より好ましくは約10mM以下、さらに好ましくは約9mM以下、特に好ましくは約7mM以下、最も好ましくは約5mM以下となるのに適切な量である。
【0170】
1つの実施形態では、本発明の食品中のリン酸源化合物の含有量は、食品の形態、摂食の際の希釈率などを考慮して、任意に設定され得る。例えば、リン酸源化合物がチューインガムに配合される場合、20分間の咀嚼中に出る唾液の量が20mLでリン酸の分子量が約98であるので、該食品が口腔内に存在する際の該口腔内の唾液中のリン酸濃度を0.1mM〜10mMだけ高めるには、1回摂取量として0.196mg〜19.6mgのリン酸を含めばよい(98×0.1(mM)×0.02(L)=0.196mg、98×10(mM)×0.02(L)=19.6mg)。それゆえ、ガムの重量をXg、配合量(リン酸として換算)をY%とすると、Y(%)={(0.196〜19.6(mg))/(X(g)×1000)}×100によって配合量が決定される。例えば、ガムの重量が2gの場合、リン酸としての配合量は、0.0098〜0.98重量%である。例えば、ガムの重量が1gであれば、リン酸としての配合量は、0.0196〜1.96重量%であり、ガムの重量が10gであれば、リン酸としての配合量は0.00196〜0.196重量%である。ガムの重量が他の重量である場合についても同様に計算される。ガム以外の食品についても同様に設計され得る。
【0171】
特定の実施形態でのガムへの配合量の最も好適な範囲を以下にまとめる:
Ca/P比=約1〜2(望ましくは約1.67)、これは、唾液中のリン酸約3.6mMを考慮した値であり、添加カルシウム/唾液中平均値=約3.6mM+添加リン酸量である;
添加濃度の好適な量:
カルシウム濃度=約1〜12mM、カルシウムはPOs−Ca由来のものであることが好ましい;
リン酸濃度=約0〜9mM(望ましくは約0.002〜0.02%);
フッ素濃度=約0.5ppm〜100ppm(望ましくは約0.5〜10ppm)。
【0172】
(7c.本発明の食品の喫食方法)
本発明の食品は、任意の用途に用いられ得る。本発明の食品は、健常人にも、知覚過敏の治療を必要とする人にも、用いられ得る。
【0173】
本発明の食品の摂取量、摂取頻度および摂取期間に特に制限はなく、任意に摂取され得る。
【0174】
本発明の食品の摂取量は、好ましくは1回あたり、約0.1g以上であり、より好ましくは約0.2g以上であり、さらに好ましくは約0.5g以上であり、さらにより好ましくは約1g以上である。本発明の食品の摂取量に特に上限はないが、例えば、1回あたり、約1000g以下、約750g以下、約500g以下、約250g以下、約100g以下、約50g以下、約40g以下、約30g以下、約20g以下、約10g以下、約7.5g以下、約5g以下、約4g以下、約3g以下、約2g以下、約1g以下などである。
【0175】
本発明の食品の摂取頻度は、任意に設定され得る。例えば、1週間に1回以上、1週間に2回以上、1週間に3回以上、1週間に4回以上、1週間に5回以上、1週間に6回以上、1週間に7回以上、1日1回以上、1日2回以上、1日3回以上などであり得る。本発明の食品の摂取頻度に上限はなく、例えば、1日3回以下、1日2回以下、1日1回以下、1週間に7回以下、1週間に6回以下、1週間に5回以下、1週間に4回以下、1週間に3回以下、1週間に2回以下、1週間に1回以下などであり得る。
【0176】
本発明の食品の摂取のタイミングは、食前であっても食後であっても食間であってもよいが、食後が好ましい。食前とは、食事の直前から食事を取る約30分前までをいい、食後とは、食事の直後から食事を取った約30分後までをいい、食間とは、食事を取ってから約2時間以上経過した後から次の食事まで約2時間以上前の時間をいう。
【0177】
本発明の食品の摂取期間は、任意に決定され得る。本発明の食品は、好ましくは約1日以上、より好ましくは約3日間以上、最も好ましくは約5日間以上摂取され得る。本発明の食品の摂取期間は、約1ヶ月以下、約2週間以下、約10日間以下であってもよい。口腔内での脱灰は日常的に起こり得るので、本発明の食品は、ほぼ永続的に摂取されることが好ましい。
【0178】
本発明の食品は、摂取の際、すなわち、喫食時にすぐには嚥下せずにある程度の時間にわたって口腔内に滞留させることが好ましい。本発明の食品を口腔内に滞留させる時間は、好ましくは約1分間以上、より好ましくは、約2分間以上である。さらに好ましくは約3分間以上であり、特に好ましくは約5分間以上である。1つの好ましい実施形態では約10分間以上であり、さらに好ましい実施形態では約15分間以上である。本発明の食品を口腔内に滞留させる時間に特に上限はなく、例えば約1時間以下、約50分以下、約40分以下、約30分間以下、約20分間以下などであり得る。滞留時間が短すぎる場合には、歯質強化効果が得られにくい。
【0179】
本発明の食品がチューインガム類、キャンディー類、錠菓などの場合は、1回に1粒ずつ摂取されてもよく、1回に複数個(例えば、2個〜10個)摂取されてもよい。1回に複数個を摂取する場合、いっぺんに複数個を口に入れて摂取してもよく、1個ずつ順々に複数個を摂取してもよい。本発明の食品がチューインガム類である場合、長時間噛み続けることが好ましく、本発明の食品がキャンディー類または錠菓である場合、噛まずに最後まで舐められることが好ましい。
【0180】
本発明の食品は、通常、包装されて販売される。この包装は、紙、プラスチック、セロハンなどの通常使用される包装であり得る。この包装には、本発明の食品の摂取量、摂取タイミング、摂取方法(例えば、ガムの場合、「2粒を約20分間以上かみ続けることが好ましい」)などについての指示が記載されていることが好ましい。あるいは、このような指示が記載された指示書が挿入されていてもよい。
【0181】
(8.好適な実施形態についてのまとめ)
本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品は、口腔内において使用される。口腔内において使用されると、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品から唾液中に可溶性のカルシウムイオン(および場合によってはフッ化物イオン)が溶け出す。口腔内の唾液には、通常、多量のリン酸が存在する。そのため、予め存在しているリン酸と本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品から溶出したカルシウムイオン(および場合によってはフッ化物イオン)とが相互作用して象牙細管の封鎖、象牙質の歯質強化などに作用する。
【0182】
唾液は、個々人によってその組成は変動し得るが、一般に唾液を模倣したサンプル(人工唾液)によって模倣することができる。人工唾液の組成の例としては、20mM Hepes−K(pH6.5)および100mM KClを含む水溶液が挙げられる。本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品の効果については、実際の人体を使用せずに人工唾液とウシなどの歯のサンプルを使用して確認することができる。
【0183】
本発明の特定の実施形態は人体の唾液中でのCa/P比およびフッ化物イオン濃度に関するが、人工唾液中でのCa/P比およびフッ化物イオン濃度の効果は、唾液中でのCa/P比およびフッ化物イオン濃度の効果と同様の効果とみなすことができる。
特定の実施形態では、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品は、口腔内において使用されたときの、口腔内の唾液中のリンイオンに対するカルシウムイオンのモル比(Ca/P比)が約5.0以下(好ましくは約3以下、さらに好ましくは約0.1〜約2.0、最も好ましくは約1.67〜約2.0)となるようにカルシウム含有成分を含むことを特徴とする。
【0184】
この実施形態は、唾液を模倣したサンプルに関しての実施形態と実質的に同等であると理解することができる。すなわち、この実施形態は口腔内と人工唾液とで同等である。そのため、上記実施形態と実質的に同一の実施形態では、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品は、口腔内の唾液を模倣したサンプルにおいて使用されたときの、サンプル中のリンイオンに対するカルシウムイオンのモル比(Ca/P比)が約5.0以下(好ましくは約3以下、さらに好ましくは約0.1〜約2.0、最も好ましくは約1.67〜約2.0)となるようにカルシウム含有成分を含むことを特徴とする。
【0185】
特定の実施形態では、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品は、口腔内の唾液中のリンイオンに対するカルシウムイオンのモル比(Ca/P比)が約5.0以下(好ましくは約3以下、さらに好ましくは約0.1〜約2.0、最も好ましくは約1.67〜約2.0)となるように使用されることを特徴とする。
【0186】
この実施形態は、唾液を模倣したサンプルに関しての実施形態と実質的に同等であると理解することができる。すなわち、この実施形態は口腔内と人工唾液とで同等である。そのため、上記実施形態と実質的に同一の実施形態では、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品は、唾液を模倣したサンプル中のリンイオンに対するカルシウムイオンのモル比(Ca/P比)が約5.0以下(好ましくは約3以下、さらに好ましくは約0.1〜約2.0、最も好ましくは約1.67〜約2.0)となるように使用されることを特徴とする。
【0187】
特定の実施形態では、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品は、口腔内において使用されたときの唾液中のフッ化物イオン濃度が約100ppm以下(好ましくは約0.2ppm〜約100ppm、より好ましくは約0.2ppm〜約10ppm、さらに好ましくは約1.0ppm〜約10ppm)となるようにフッ化物を含むことを特徴とする。
【0188】
この実施形態は、唾液を模倣したサンプルに関しての実施形態と実質的に同等であると理解することができる。すなわち、この実施形態は口腔内と人工唾液とで同等である。そのため、上記実施形態と実質的に同一の実施形態では、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品は、口腔内の唾液を模倣したサンプルにおいて使用されたときのサンプル中のフッ化物イオン濃度が約100ppm以下(好ましくは約0.2ppm〜約100ppm、より好ましくは約0.2ppm〜約10ppm、さらに好ましくは約1.0ppm〜約10ppm)となるようにフッ化物を含むことを特徴とする。
【0189】
特定の実施形態では、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品は、唾液中のフッ化物イオン濃度が約100ppm以下(好ましくは約0.2ppm〜約100ppm、より好ましくは約0.2ppm〜約10ppm、さらに好ましくは約1.0ppm〜約10ppm)となるように口腔内で使用されることを特徴とする。
【0190】
この実施形態は、唾液を模倣したサンプルに関しての実施形態と実質的に同等であると理解することができる。すなわち、この実施形態は口腔内と人工唾液とで同等である。そのため、上記実施形態と実質的に同一の実施形態では、本発明の象牙細管封鎖剤、象牙質歯質強化剤、口腔内組成物、薬用組成物および食品は、唾液を模倣したサンプル中のフッ化物イオン濃度が約100ppm以下(好ましくは約0.2ppm〜約100ppm、より好ましくは約0.2ppm〜約10ppm、さらに好ましくは約1.0ppm〜約10ppm)となるように使用されることを特徴とする。
【実施例】
【0191】
(1.使用したリン酸化糖カルシウム塩)
以下の実験に用いたリン酸化糖カルシウム(POs−Ca)は、特開平8−104696号の実施例1の手順で、塩化ナトリウムの代わりに塩化カルシウムを用いて、馬鈴薯澱粉より調製したリン酸化糖カルシウムを指す。つまり、α−1,4結合した2から8個のグルコースからなるオリゴ糖に分子内に1個から2個のリン酸基が結合し、これらのリン酸化糖にそれぞれカルシウムが結合したリン酸化糖カルシウムの混合物である。このリン酸化糖カルシウムは、3、4または5個のグルコースからなるオリゴ糖に分子内で1個のリン酸基が結合し、このリン酸基にカルシウムが結合しているものと5、6、7または8個のグルコースからなるオリゴ糖に分子内で2個のリン酸基が結合し、このリン酸基にカルシウムが結合しているものとの混合物である。ここで、1個のリン酸基が結合しているものと2個のリン酸基が結合しているものとのモル比は約8:2である。以下の実験では、このようにして調製した塩を用いた。イオン交換樹脂を用いる本方法以外にも、一般的な電気透析によって、脱塩後、各金属塩を添加することで容易に各種金属塩のリン酸化糖が調製できる。なお、リン酸化糖のカルシウム塩については、江崎グリコ株式会社からリン酸化オリゴ糖カルシウムとして販売されているものも好適に用いることができる。
【0192】
(2.フッ素含有茶抽出物)
以下の実験に用いたフッ素含有茶抽出物は、三井農林株式会社から入手した。このフッ素含有茶抽出物は、通常の日本茶(煎茶)を30℃〜100℃、好ましくは40℃〜70℃で熱水抽出した後、タンニンを除去し、活性炭およびクロマトグラフィーカラムによってさらにカテキンを除去したものであり、食品として使用することができる材料である。ポリフェノール含量は、比色法によって測定した値であり、フッ素含量は、電極法によって測定した値である。
【0193】
実験1などで使用したフッ素含有緑茶抽出物1のフッ素含量は1000ppmであり、ポリフェノール含量は3重量%以下であった。
【0194】
これらのフッ素含有茶抽出物に含まれるポリフェノールは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレートおよびエピガロカテキンガレートの混合物を主成分とする。これらのポリフェノールの合計量は、ポリフェノールの重量の合計の約70%以上であった。
【0195】
これらのフッ素含有茶抽出物と同等の品質の材料は、日本茶(煎茶)を30℃〜100℃、好ましくは40℃〜70℃でのお湯で熱水抽出し、タンニンを除去し、活性炭およびクロマトグラフィーカラムによってさらにカテキンなどのポリフェノールを除去することによって製造することができる。
【0196】
(3.TMRの方法)
以下の実験においては、以下の方法によってトランスバーサルマイクロラジオグラフィー(Transversal Microradiography;TMR)解析を行った。最終処理後、水冷式ダイアモンド鋸を用いて、象牙質のブロックから薄い平行切片を切り出した。この薄い切片を平行な水平面になるように研磨して300μmの厚さにした。この象牙質の薄い切片を、高分解能プレートを用い、25kVおよび15mAによって生成されたCu−Kα X線によって20分間にわたってX線撮影し、現像し、顕微鏡解析をした(PW−3830,Philips,The Netherlands)。X線撮影の際には標準物質として種々の既知量のアルミニウムを使用して、同時に撮影し、カルシウム量の検量線を作成するために使用した。顕微鏡で観察されたデジタル画像からミネラルプロファイルを描写し、そしてInspektor Research Systems BV(The Netherlands)のソフトフェアによってミネラルパラメーター(脱灰深度(Ld)およびミネラル密度(ML))を計算した。平均値を標本あたりで計算し、そして統計的に解析した。
【0197】
(実験1:水溶性実験)
口腔内での使用可能性が考えられる他のカルシウム剤とリン酸化オリゴ糖カルシウム塩の水溶性を比較した。炭酸カルシウム(炭酸Ca)、リン酸一水素カルシウム(リン酸1水素Ca)、グルコン酸カルシウム(グルコン酸Ca)およびリン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs−Ca)のそれぞれについて、濃度700mg/100mLになるように水に加えて混合液を作製した。得られた混合液の写真を図1に示す。図1から分かるように、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩は透明な溶液を形成したが、他のカルシウム剤は水に溶解せず、白濁した懸濁液を形成した。このように、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩は水に溶解し、唾液中のカルシウムイオン濃度を高め、再石灰化しやすい口内環境を作り出すことができることが確認された。
【0198】
(実験2:象牙細管封鎖および再石灰化の実験)
以下の実験において、POs−Caが根面および象牙質に与える効果、およびPOs−Caの根面齲蝕への応用を検討した。手短に述べると、POs−Caおよびフッ化物(あり/なし)を、人工唾液に添加し、ウシ象牙質を浸漬して、象牙質の強化、象牙細管封鎖、再石灰化などについて調べた。
【0199】
I−1.手順の概要
本実験においては、サンプルによる結果のばらつきを低減するために、同じサンプルを使用して象牙細管封鎖評価と再石灰化評価を行った。各実験ではそれぞれ5個のウシ象牙質サンプルを使用した。この手順では、以下の順で処理を行った。
(Step 0)象牙質サンプル調製;
(Step 1)象牙質健全部位の歯質強化処理(24時間,37℃);
(Step 2)酸処理(8日間,37℃);
(Step 3)再石灰化処理;および
(Step 4)細管封鎖評価および再石灰化評価。
【0200】
I−2.各手順での処理方法の詳細
Step 0:象牙質サンプル調製
ウシの歯の象牙質ブロック(7mm×15mm)をウシ切歯から切り出し、次いでこのブロックを樹脂に取り付けた。このブロックを、湿らせた研磨紙(#1000および#2000、スリーエム製)で研磨して新たで平らな象牙質表面を露出させた。
【0201】
象牙質サンプルの表面を4エリアに分画し、各エリアについて下記の溶液で処理した。「−」は、そのエリアにネイルバーニッシュを塗布することにより溶液での処理を防いだことを示す。「○」は、そのエリアにネイルバーニッシュなしで溶液での処理を行ったことを示す。
【0202】
すなわち、Step 1「象牙質健全部位の歯質強化処理」では、象牙質表面のエリア1、2および4にはネイルバーニッシュを塗布して象牙質表面を被覆した状態でサンプルを試験溶液に37℃で24時間浸漬した。
【0203】
Step 2の前にこの象牙質サンプルを十分に洗浄し、象牙質表面のエリア2および4のネイルバーニッシュを剥がした。その後、象牙質表面のエリア1をネイルバーニッシュで被覆した状態で、酸を含む溶液にサンプルを37℃で8日間浸漬した(Step 2:酸処理)。
【0204】
Step 3の前にこの象牙質サンプルを十分に洗浄した。その後、象牙質表面のエリア2および3にネイルバーニッシュを塗布して被覆した状態でサンプルを試験溶液に37℃で24時間浸漬した(Step 3:再石灰化処理)。
【0205】
この象牙質サンプルの各エリア処理方法を以下の表1にまとめる。
【0206】
【表1】
【0207】
Step 2の酸処理では、全ての実験区で共通した組成の溶液を使用した。該溶液の組成を以下の表2に示す。
【0208】
【表2】
【0209】
それぞれの実験で、Step 1の歯質強化処理とStep 3の再石灰化処理とでは、同じ組成の溶液を使用した。それぞれの実験で使用した溶液の組成を以下の表3に示す。
【0210】
【表3】
【0211】
I−3.評価方法
(A)歯質評価 =マイクロラジオグラフィー法
(B)再石灰化部 =マイクロラジオグラフィー法
(C)象牙細管封鎖・被膜形成 = 走査型電子顕微鏡
Step 1〜Step 3の溶液での処理の後、ウシ歯片を回収し、ネイルバーニッシュをはがした後、Step 4の細管封鎖評価・再石灰化評価を行った。歯質評価および再石灰化部の評価については、4つのエリアを、上記「4.TMRの方法」に従ってトランスバーサルマイクロラジオグラフィー(Transversal Microradiography;TMR)解析を行うことにより、X線撮影の顕微鏡写真を得て、ミネラルプロファイルを描写し、脱灰深度(Ld)およびミネラル密度(ML)を計算した。象牙細管封鎖および被膜形成については、4つのエリアの表面及び断面について走査型電子顕微鏡法によって評価した。
【0212】
I−4.結果
(A)マイクロラジオグラフィー法による歯質評価の結果を図2〜4に示す。図2は、実験2Aのマイクロラジオグラフを示し、図3は実験2Dのマイクロラジオグラフを示し、図4は実験2Bのマイクロラジオグラフを示す。図2〜4において、灰色の線はエリア1(健全部)の結果を示し、細い黒線はエリア2(脱灰部)の結果を示し、そして太い黒線はエリア3(歯質強化部)の結果を示す。
【0213】
この結果、歯質強化処理をしないで脱灰処理をすると(エリア2)、0〜50μmの深さの部分でミネラル密度が顕著に低下した。これに対して、POs−Caを使用して歯質強化処理をすると、酸処理をしても、象牙質の脱灰がほとんど起こらず、酸処理も歯質強化処理もしていない健全部とほぼ同等またはそれより多くのミネラルが観察された。図3では、エリア3では0〜50μmの部分でミネラル密度が顕著に低下していることから、塩化カルシウムは象牙質の歯質強化作用が弱いことがわかった。図2と図3とを比較することにより、POs−Caは、CaClよりも優れた象牙質の歯質強化作用を有することがわかる。
【0214】
(B)マイクロラジオグラフィー法による再石灰化部の結果を図5〜7に示す。図5は、実験2Aのマイクロラジオグラフを示し、図6は実験2Dのマイクロラジオグラフを示し、図7は実験2Bのマイクロラジオグラフを示す。図5〜7において、灰色の線はエリア1(健全部)の結果を示し、細い黒線はエリア2(脱灰部)の結果を示し、そして太い黒線はエリア4(再石灰化部)の結果を示す。なお、上記でも説明したとおり、エリア1とエリア2のデータは、上記(a)の歯質評価で使用したデータと同じデータである。
【0215】
この結果、脱灰処理後にPOs−Caで処理することにより、健全部と同程度以上に再石灰化されることがわかった。一方、CaClで処理すると、再石灰化効果はPOs−Caよりも弱く、健全部と同じ状態まで再石灰化できないことがわかった。また、POs−CaとFを含む溶液を使用した場合、図7に示すように、POs−Caの場合よりも最表層部位で優れた再石灰化効果を有することがわかる。
【0216】
一般に、露出した象牙質には初期齲蝕が起こり得る。一般的なカルシウム剤よりもPOs−Caの方が高い再石灰化効果を有することが確認された。
【0217】
(C) 走査型電子顕微鏡での象牙細管封鎖・被膜形成の確認
走査型電子顕微鏡での観察結果を図8〜11に示す。
【0218】
図8は、実験2Aの結果を示す。図8では、Ca/P=1.73であり、POs−Ca由来のCaを6.25mM含む。実験2Aでは、細管封鎖と被膜形成が見られた。
【0219】
図9は、実験2Bの結果を示す。図9では、Ca/P=1.73であり、POs−Ca由来のCaを6.25mM含み、Fを1ppm含む。実験2Bでは、細管封鎖と被膜形成
と脱灰抑制が見られた。
【0220】
図10は、実験2Cの結果を示す。図10では、Ca/P=1.67であり、CaCl由来のCaを6mM含み、Fを10ppm含む。実験2Cでは、再石灰化処理によって細管封鎖と被膜形成が見られたが、酸処理によって被膜が除去され、象牙細管が露出した。
【0221】
図11は、実験2Dの結果を示す。図11では、Ca/P=0.41であり、CaCl由来のCaを1.5mM含む。実験2Dでは、細管封鎖も被膜形成も見られなかった。
【0222】
なお、図11の上段の図中の穴の大きさは、図8〜10の上段の図の穴の大きさと異なるが、これはそれぞれの写真を撮影したウシ歯片にもともと存在していた象牙細管の大きさが異なっていたためである。実験2A〜2Dのいずれの場合も、再石灰化によって象牙細管の内部が充填されることなく、象牙質表面に被膜が形成されたが、実験2Cおよび2Dでは、酸処理によって被膜が除去されて象牙細管が露出した。
【0223】
従来、細管封鎖は細管部位に栓をする手法がある。POs−Caは、可溶化した状態で患部まで到達するため、根面全体にPOs−Ca由来のカルシウムと唾液由来のリン酸を含んだ堆積層を形成することができる。一般的な封鎖は穴のなかに顆粒を詰めるが、POs−Caを使う場合は象牙細管の中を充填することなく、象牙質の表面全体的に被膜を形成することで象牙細管の封鎖を行う。従って、POs−Caの場合は、部分的に顆粒で細管を封鎖するよりも効率的であると考えられる。
【0224】
(A)〜(C)の結果から、POs−Ca単独およびPOs−CaとFとの組み合わせの機能として以下が確認された:
健全象牙質に対しては、(1)耐酸性が強化される、および(2)耐圧性が強化される。
【0225】
初期齲蝕の象牙質に対しては、(1)象牙質が再石灰化される、(2)象牙質の細管封鎖および被膜形成が得られる、ならびに(3)溶液で速やかな反応を起こせるため、露出した象牙質全体にわたって均一な効果が得られる。
【0226】
(実験3および比較実験3:POs−CaとG−1−P・Ca(グルコース−1−リン酸カルシウム塩)との比較)
実験3ではPOs−Ca水溶液を使用し、比較実験3ではPOs−Ca水溶液の代わりにG−1−P・Ca水溶液を使用したこと以外は同じ組成の表4に示す再石灰化溶液で、実験2のStep 0からStep3までと同じ手順でウシ象牙質を処理した。G−1−P・Caを使用して調製した溶液は、調製時ですでに、沈殿形成が見られ、溶液中でのカルシウム濃度が6.0mM以下となり、再石灰化の好適条件を維持できていなかった。
【0227】
【表4】
【0228】
(実験4)
種々のカルシウム/リンモル比(Ca/P)でカルシウム源としてPOs−Ca又は塩化カルシウムを使用したときの象牙質の強化、象牙細管封鎖、再石灰化などについて調べた。
【0229】
【表5】
【0230】
I−1.手順の概要
本実験においては、サンプルによる結果のばらつきを低減するために、同じサンプルを使用して象牙細管封鎖評価と再石灰化評価を行った。各実験ではそれぞれ5個のウシ象牙質サンプルを使用した。この手順では、以下の順で処理を行った。
(Step 0)象牙質サンプル調製;
(Step 1)象牙質脱灰処理(24時間、37℃);
(Step 2)脱灰部位の再石灰化処理 (37℃、72時間);および
(Step 3)細管封鎖評価および再石灰化評価。
【0231】
I−2.各手順での処理方法の詳細
Step 0:象牙質サンプル調製
ウシの歯の象牙質ブロック(7mm×15mm)をウシ切歯から切り出し、次いでこのブロックを樹脂に取り付けた。このブロックを、湿らせた研磨紙(#1000および#2000、スリーエム)で研磨して新たで平らな象牙質表面を露出させた。
【0232】
象牙質サンプルの表面を3エリアに分画し、各エリアについて下記の溶液で処理した。「−」は、そのエリアにネイルバーニッシュを塗布することにより溶液での処理を防いだことを示す。「○」は、そのエリアにネイルバーニッシュなしで溶液での処理を行ったことを示す。
【0233】
すなわち、Step 1「象牙質脱灰処理(24時間、37℃)」では、象牙質表面のエリア1にのみネイルバーニッシュを塗布し、象牙質表面を被覆した状態で脱灰処理液に37℃で24時間浸漬した。
【0234】
Step 2の前にこの象牙質サンプルを十分に洗浄した。その後、象牙質表面のエリア3をネイルバーニッシュで被覆した。象牙質表面のエリア1およびエリア3をネイルバーニッシュで被覆した状態で、サンプルを表7の組成の再石灰化溶液に37℃で72時間浸漬した(Step 2:脱灰部位の再石灰化処理)。この再石灰化溶液では、カルシウム源としてPOs−Caまたは塩化カルシウムを使用し、リン酸源としてリン酸二水素カリウムを使用しており、その比は表7に示すとおりであった。
【0235】
この象牙質サンプルの各エリア処理方法を以下の表6にまとめる。
【0236】
【表6】
【0237】
Step 1の象牙質脱灰処理では、全ての実験区で共通した組成の溶液を使用した。該溶液の組成を表7に示す。
【0238】
【表7】
【0239】
I−3.評価方法
(A)再石灰化部 =マイクロラジオグラフィー法
(B)象牙細管封鎖・被膜形成 = 走査型電子顕微鏡
【0240】
Step 1およびStep 2の溶液での処理の後、ウシ歯片を回収し、ネイルバーニッシュをはがした後、細管封鎖評価および再石灰化評価を行った。歯質評価および再石灰化部の評価については、3つのエリアを、上記「TMRの方法」に従ってトランスバーサルマイクロラジオグラフィー(Transversal Microradiography;TMR)解析を行うことにより、X線撮影の顕微鏡写真を得て、ミネラルプロファイルを描写し、脱灰深度(Ld)およびミネラル密度(ML)を計算した。象牙細管封鎖および被膜形成については、再石灰化部のエリアの表面について走査型電子顕微鏡法によって評価した。
【0241】
結果を図12(POs−Ca処理による再石灰化)、図13(塩化カルシウム処理による再石灰化)、図14(走査型電子顕微鏡による再石灰化部(エリア2)表面の観察結果)に示す。
【0242】
結果1−1:
図12にカルシウム源がPOs−Caの場合、図13にカルシウム源が塩化カルシウムの場合の、表層部分のTMRによる再石灰化前後のミネラル分布の結果を示す。POs−Caの場合は、Ca/P=0.1およびCa/P=2.0では深度の浅い部分に再石灰化による回復が見られるのに対し、塩化カルシウムではいずれのCa/P比でも再石灰化によるミネラル分布の変化は観察されなかった。よって、POs−Caは通常のカルシウムである塩化カルシウムに比べて、Ca/P=2.0までの範囲で顕著に再石灰化を有利に進めることが示された。
【0243】
結果1−2:
走査型電子顕微鏡で各エリアの表面を観察したところ、カルシウム源がPOs−Caの場合Ca/P=0.1および2.0で象牙細管の封鎖が見られたのに対し、カルシウム源を塩化カルシウムにした場合、Ca/P=0.1では封鎖しきれない象牙細管が点状に残っていた。さらにCa/P=2.0では象牙細管が全く封鎖されなかった。よって、POs−CaはCa/P=2.0までの範囲で塩化カルシウムよりも有利に象牙細管を封鎖する効果があることが示された。
【0244】
結果1−1および結果1−2を表にまとめたものが表8である。
【0245】
【表8】
【0246】
(実験5)
Ca/P=1.67の条件において種々のフッ化物濃度でカルシウム源としてPOs−Ca又は塩化カルシウムを使用したときの象牙質の強化、象牙細管封鎖、再石灰化などについて調べた。
【0247】
【表9】
【0248】
II−1.手順の概要
本実験においては、サンプルによる結果のばらつきを低減するために、同じサンプルを使用して象牙細管封鎖評価と再石灰化評価を行った。各実験ではそれぞれ5個のウシ象牙質サンプルを使用した。この手順では、以下の順で処理を行った。
【0249】
(Step 0)象牙質サンプル調製;
(Step 1)象牙質脱灰処理(24時間,37℃);
(Step 2)脱灰部位の再石灰化処理 (37℃、24時間);および
(Step 3)細管封鎖評価および再石灰化評価。
【0250】
II−2.各手順での処理方法の詳細
Step 0からStep 1までは上記実験4のI−2と同様に処理をした。
Step 2の前にこの象牙質サンプルを十分に洗浄した。その後、象牙質表面のエリア3をネイルバーニッシュで被覆した状態で、サンプルを表9の組成の再石灰化溶液に37℃で72時間浸漬した。
【0251】
II−3.評価方法
実験4のI−3と同様に評価を行った。
【0252】
結果2−1
図15にカルシウム源がPOs−Caの場合、図16にカルシウム源が塩化カルシウムの場合の、表層部分のTMRによる再石灰化前後のミネラル分布の結果を示す。POs−Caの場合は、0ppm、10ppmおよび100ppmのフッ化物の存在下で再石灰化を促進した(図15)。その中でも10ppmのフッ化物存在下で最も顕著な再石灰化促進が見られた。一方、塩化カルシウムの場合は、10ppmのフッ化物存在下では再石灰化が起こっているのに対し、フッ化物非存在下(0ppm)では再石灰化を促進する効果はなく、100ppmのフッ化物存在下でも再石灰化が全く促進されなかった(図16)。よって、POs−Caは塩化カルシウムに比べ顕著に、10ppmを超える濃度のフッ化物でも再石灰化を促進する性質が示された。なお、POs−Ca、塩化カルシウムともに、1000ppmを超えるフッ化物濃度では沈殿が生じた。
【0253】
結果2−2
走査型電子顕微鏡による表面の観察結果を図17に示す。走査型電子顕微鏡で各エリアの表面を観察したところ、カルシウム源をPOs−Caにしたときはフッ化物非存在下(0ppm)で若干のくぼみが残ったが、完全に象牙細管が封鎖されていた。1ppmでは表面の凹凸が目立つが象牙細管のくぼみが見えない状態まで完全に封鎖された。10ppmのフッ化物存在下で表面が滑らかになった完全な象牙細管の封鎖が見られ、最も良好な結果を示した。100ppmのフッ化物存在下では若干未封鎖の象牙細管が見られたが、封鎖がされている様子が観察された。
【0254】
一方、カルシウム源を塩化カルシウムにした場合、フッ化物非存在下および1ppmフッ化物存在下では象牙細管の封鎖が確認できなかった。10ppmのフッ化物存在下では完全に封鎖されておらず、一部が開口していた。100ppmまでフッ化物濃度を上げると、ほとんど象牙細管を封鎖する効果は見られなかった。よって、POs−Caは100ppmまでのフッ化物存在下で塩化カルシウムよりも優れた象牙細管の封鎖効果があることが示された。
【0255】
結果2−1および結果2−2を表にまとめたものが表10である。
【0256】
【表10】
【0257】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0258】
本発明により、象牙質の強化のためのセルフケアを可能にする食品および口腔内組成物が提供される。さらに、本発明によれば、象牙細管封鎖のための食品およびセルフケアを可能にする口腔内組成物が提供される。
【0259】
本発明の象牙質歯質強化剤、象牙質歯質強化用組成物および食品によれば、齲蝕された象牙質に対して、リン酸およびカルシウムを安定的に提供することができる。リン酸およびカルシウムが提供された象牙質は歯質強化されるので、齲蝕により失われた象牙質の少なくとも一部を修復することができ、象牙質健全部においては耐酸性または耐圧性を強化することができる。
【0260】
特に本発明によれば、口腔内に緩衝剤が添加されるので、口腔内においてpH緩衝作用を得ることができると期待される。口腔内のpH緩衝作用により、口腔内の唾液などに存在するリン酸およびカルシウムが安定的に象牙質の歯質強化に使用される。従って、従来は困難もしくは不可能であると考えられていた象牙質の修復が可能になる。
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図17】

【手続補正書】
【提出日】20160304
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム含有成分を含む象牙細管封鎖剤であって
該カルシウム含有成分が、
(i)リン酸化糖カルシウム塩;または
(ii)リン酸化糖カルシウム塩以外のリン酸化糖の塩もしくはリン酸化糖と、リン酸化糖カルシウム塩以外のカルシウム塩との組み合わせ;あるいは
(iii)該(i)および該(ii)の混合物
であり、該リン酸化糖が、重合度2〜10のオリゴ糖部分とリン酸基とからなっており、
ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、象牙細管封鎖剤。
【請求項2】
前記糖部分が、グルカン残基である、請求項1に記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項3】
前記糖部分の重合度が、3〜9であり、かつ前記リン酸基の数が、1〜2である、請求項に記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項4】
前記カルシウム含有成分がリン酸化糖カルシウム塩である、請求項1〜3のいずれかに記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項5】
(ii)における前記カルシウム塩が水溶性カルシウム塩である、請求項1〜4のいずれかに記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項6】
口腔内において使用されたときの唾液中のフッ化物イオン濃度が100ppm以下となるようにフッ化物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項7】
口腔内において使用されたときの、口腔内の唾液中のリンイオンに対するカルシウムイオンのモル比(Ca/P比)が5.0以下となるようにカルシウム含有成分を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項8】
象牙細管の開口によって起こる知覚過敏の緩和に使用される、請求項1〜7のいずれかに記載の象牙細管封鎖剤。
【請求項9】
象牙細管封鎖用の口腔内組成物であって、請求項1〜8のいずれかに記載の象牙細管封鎖剤を含み、ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、象牙細管封鎖用の口腔内組成物。
【請求項10】
歯磨剤、洗口剤、トローチ剤、ゲル剤、スプレー、塗布剤、軟膏、咀嚼錠剤、薬用チューインガム、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、ワックスマトリックス錠、多層錠または持続性錠である、請求項に記載の象牙細管封鎖用の口腔内組成物。
【請求項11】
象牙細管の開口によって起こる知覚過敏の緩和に使用される、請求項9又は10に記載の象牙細管封鎖用の口腔内組成物。
【請求項12】
象牙細管封鎖用の薬用組成物であって、請求項1〜8のいずれかに記載の象牙細管封鎖剤を含み、ハイドロキシアパタイトを含まないかまたはハイドロキシアパタイト含量が0.1重量%未満である、象牙細管封鎖用の薬用組成物。
【請求項13】
チューインガム、咀嚼錠剤またはトローチ剤である、請求項12に記載の象牙細管封鎖用の薬用組成物。
【請求項14】
象牙細管の開口によって起こる知覚過敏の緩和に使用される、請求項12又は13に記載の象牙細管封鎖用の薬用組成物。
【国際調査報告】