(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050296
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】白金系酸化触媒、及びそれを用いた排気ガス浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/78 20060101AFI20160725BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20160725BHJP
【FI】
   !B01J29/78 AZAB
   !B01D53/36 104Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
【出願番号】2014538249
(21)【国際出願番号】JP2013070562
(22)【国際出願日】20130730
(31)【優先権主張番号】2012211913
(32)【優先日】20120926
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
【住所又は居所】東京都港区浜松町2丁目4番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】岡島 利典
【住所又は居所】静岡県沼津市一本松678 エヌ・イーケムキャット株式会社 沼津事業所内
(72)【発明者】
【氏名】永田 誠
【住所又は居所】静岡県沼津市一本松678 エヌ・イーケムキャット株式会社 沼津事業所内
【テーマコード(参考)】
4D048
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169ZA46A
4G169ZA46B
4G169ZF02B
(57)【要約】
希薄燃焼機関から排出される硫黄酸化物を含む排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、煤などの微粒子成分の内、特に炭化水素を酸化浄化する能力に長けた白金系酸化触媒の提供。
希薄燃焼機関から排出される炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、煤などの微粒子成分、および硫黄酸化物を含む排気ガス中から、炭化水素を酸化浄化する白金系酸化触媒において、一体構造型担体の表面に、少なくとも白金(Pt)及びタングステン酸化物が担持された金属酸化物(A)と、ゼオライト(B)とを含む触媒組成物が被覆され、前記白金(Pt)粒子の近傍に、凝集粒子径が300nm以下のタングステン酸化物粒子が存在することを特徴とする白金系酸化触媒などにより提供。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希薄燃焼機関から排出される炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、煤などの微粒子成分、および硫黄酸化物を含む排気ガス中から、炭化水素を酸化浄化する白金系酸化触媒において、
一体構造型担体の表面に、少なくとも白金(Pt)及びタングステン酸化物が担持された金属酸化物(A)と、ゼオライト(B)とを含む触媒組成物が被覆され、前記白金(Pt)粒子の近傍に、凝集粒子径が300nm以下のタングステン酸化物粒子が存在することを特徴とする白金系酸化触媒。
【請求項2】
金属酸化物(A)が、チタニア、またはアルミナから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の白金系酸化触媒。
【請求項3】
チタニアが、さらにシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、または酸化バリウムから選ばれる1種以上を含む耐熱チタニアであることを特徴とする請求項1又は2に記載の白金系酸化触媒。
【請求項4】
白金(Pt)及びタングステン酸化物の担持量が、タングステン酸化物を三酸化タングステン(WO)に換算したモル比率で、1:0.3〜5.0であることを特徴とする請求項1に記載の白金系酸化触媒。
【請求項5】
触媒組成物の被覆量が、一体構造型担体の容量当り、20〜170g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の白金系酸化触媒。
【請求項6】
白金(Pt)の含有量が、一体構造型担体の容量当り、0.5〜5g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の白金系酸化触媒。
【請求項7】
金属酸化物(A)の含有量が、一体構造型担体の容量当り、10〜160g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の白金系酸化触媒。
【請求項8】
ゼオライト(B)が、β型ゼオライト、又はMFI型のゼオライトから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の白金系酸化触媒。
【請求項9】
ゼオライト(B)の含有量が、一体構造型担体の容量当り、5〜60g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の白金系酸化触媒。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の白金系酸化触媒を希薄内燃機関の排気ガス流路に配置し、これに排気ガスを流通させることを特徴とする排気ガス浄化方法。
【請求項11】
希薄内燃機関は、硫黄の量が50ppm以上の燃料を使用することを特徴とする請求項10に記載の排気ガス浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金系酸化触媒、及びそれを用いた排気ガス浄化方法に関し、より詳しくは、希薄燃焼機関から排出される硫黄酸化物を含む排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、煤などの微粒子成分の内、特に炭化水素を酸化浄化する能力に長ける白金系酸化触媒、及びそれを用いた排気ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラー、ガスタービン、リーンバーン型ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の希薄燃焼機関から排出される排気ガスには、燃料や燃焼空気に由来した様々な有害物質が含まれる。このような有害物質としては炭化水素(HC)、可溶性有機成分(Soluble Organic Fraction:SOFともいう)、煤(Soot)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などがあり、これら有害成分の排出量に関する規制は年々強化されている。それら有害成分の浄化方法としては、加熱された排気ガスを触媒に接触させて浄化する方法が実用化されている。
【0003】
この様な人体や環境に悪影響を及ぼす排気ガス中の有害成分の排出量を削減する試みは主に欧米、日本などを中心に主導的に行われ、これらの有害物質の排出基準を満たすため、触媒の改良の他、使用される軽油等の燃料中の触媒被毒物質である硫黄(S)の量も削減されている。
その一方で、アフリカ、中南米、中東、ロシアを含む北アジア、中国、インドを含む南アジア、中央アジア、東南アジアなどにおいては低硫黄化が進んでいる国や地域もあるものの、規制自体が緩く、使用される軽油等の燃料中の硫黄についても精製度の低い物が使用されている。
触媒性能を阻害する要因としては、一般には高温下に長時間晒されることによる貴金属のシンタリング(粒子成長)が挙げられるが、硫黄やリン、炭化水素等の被毒成分による貴金属、貴金属担持母材及び助触媒成分への被毒なども活性低下の要因になっている。
欧米、日本などでは、燃料中の硫黄の量が削減されているため、主に貴金属のシンタリングが触媒性能を阻害する要因となっているが、燃料中の硫黄の量が多いその他の国々においては、硫黄などの被毒物質による貴金属成分への被毒が触媒性能低下の主因といえ、大きな問題となっている。
このため、燃料中の硫黄の量が多い条件下であっても有害物質を高効率で浄化できる触媒が求められている。
【0004】
硫黄酸化物が排気ガス中に共存する条件で、酸化触媒によるHC及びCOの酸化機能の低下を抑制する手段が、今までに幾つかの触媒で試みられた。
その一つとして、チタニアとゼオライトとを含有する担体と、該担体に担持された貴金属とを有してなる排ガス浄化用酸化物触媒であって、該ゼオライトの含有量が該触媒に対して35〜50重量%である酸化触媒が提案されている。具体的には、さらにチタニアの含有量が触媒全体に対して35〜60重量%となり、ゼオライトがZSM−5タイプのゼオライトおよび/またはβタイプのゼオライトであり、貴金属が白金で、0.3〜6.0重量%となるようにしている(特許文献1参照)。
【0005】
また、(A)白金および/またはパラジウムならびにタングステン、アンチモン、モリブデン、ニッケル、バナジウム、マンガン、鉄、ビスマス、コバルト、亜鉛およびアルカリ土類金属よりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の触媒活性酸化物を第1の耐火性無機酸化物粉末(a)に担持してなる白金および/またはパラジウム担持耐火性無機酸化物粉末および(B)第二の耐火性無機酸化物粉末(b)よりなる触媒組成物を三次元構造体に被覆してなり、該白金および/またはパラジウムが前記第1の耐火性無機酸化物粉末(a)に対して5〜50重量%の範囲にあることを特徴とするディーゼルエンジン用排ガス浄化用触媒が提案されており、ここで、耐硫黄特性を有する三酸化タングステンを粉末状で付与する触媒調製法が適用されている(特許文献2参照)。
しかし、これらの触媒でも十分な耐硫黄性は得られておらず、さらなる触媒の改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−81988号公報
【特許文献2】特開平7−24260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来の課題に鑑み、希薄燃焼機関から排出される硫黄酸化物を含む排気ガスに含まれる有害物質(HC、CO、NOx、煤など)の内、特に炭化水素を酸化浄化する能力に長けた白金系酸化触媒、及びそれを用いた排気ガス浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題を解決するために鋭意研究を重ね、ディーゼルエンジン等の希薄燃焼機関から排出される硫黄酸化物を含む排気ガス中の有害成分である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、煤などを酸化する白金系排気ガス浄化用触媒において、金属酸化物上に担持された白金(Pt)粒子の近傍に適切に担持されたタングステン酸化物の微粒子が白金への硫黄酸化物の被毒を抑制し、また温度上昇時の硫黄脱離を促進する役割を果たし、高濃度の硫黄酸化物を含む排気ガスに長時間晒されても硫黄酸化物の白金への被毒が抑制されるため、特にHCを酸化する能力の低下が抑制されることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の第1の発明によれば、希薄燃焼機関から排出される炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、煤などの微粒子成分、および硫黄酸化物を含む排気ガス中から、炭化水素を酸化浄化する白金系酸化触媒において、
一体構造型担体の表面に、少なくとも白金(Pt)及びタングステン酸化物が担持された金属酸化物(A)と、ゼオライト(B)とを含む触媒組成物が被覆され、前記白金(Pt)粒子の近傍に、凝集粒子径が300nm以下のタングステン酸化物粒子が存在することを特徴とする白金系酸化触媒が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、金属酸化物(A)が、チタニア、またはアルミナから選ばれる1種以上であることを特徴とする白金系酸化触媒が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、チタニアがさらにシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、または酸化バリウムから選ばれる1種以上を含む耐熱チタニアであることを特徴とする白金系酸化触媒が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、白金(Pt)及びタングステン酸化物の担持量が、タングステン酸化物を三酸化タングステン(WO)換算したモル比率で、1:0.3〜5.0であることを特徴とする白金系酸化触媒が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、触媒組成物の被覆量が、一体構造型担体の容量当り、20〜170g/Lであることを特徴とする白金系酸化触媒が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、白金(Pt)の含有量が、一体構造型担体の容量当り、0.5〜5g/Lであることを特徴とする白金系酸化触媒が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、金属酸化物(A)の含有量が、一体構造型担体の容量当り、10〜160g/Lであることを特徴とする白金系酸化触媒が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1の発明において、ゼオライト(B)が、β型ゼオライト、又はMFI型のゼオライトから選ばれる1種以上であることを特徴とする白金系酸化触媒が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1の発明において、ゼオライト(B)の含有量が、一体構造型担体の容量当り、5〜60g/Lであることを特徴とする白金系酸化触媒が提供される。
【0011】
さらに、本発明の第10の発明によれば、第1〜第8のいずれかの発明の白金系酸化触媒を希薄内燃機関の排気ガス流路に配置し、これに排気ガスを流通させることを特徴とする排気ガス浄化方法が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、希薄内燃機関は、硫黄の量が50ppm以上の燃料を使用することを特徴とする排気ガス浄化方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の白金系酸化触媒は、特に炭化水素(HC)の酸化浄化活性に優れ、ディーゼルエンジンなどの希薄燃焼機関から排出される有害成分(HC、COなど)に対して高い酸化浄化性能を発揮する。
さらに、本発明の白金系酸化触媒は、耐硫黄性に優れるため、高価な白金の使用量が少なくて済むので低コストで触媒を製造する事ができ、排気ガス浄化装置を安価で安定的に生産し供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の白金系酸化触媒によるHCの酸化活性(650℃、20時間熱処理、及び250℃、2時間硫黄被毒処理後のHCの酸化活性)を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の白金系酸化触媒によるHCの酸化活性(650℃、20時間熱処理、及び350℃、2時間硫黄被毒処理後)を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の白金系酸化触媒によるCOの酸化活性(650℃、20時間熱処理、及び250℃、2時間硫黄被毒処理後)を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の白金系酸化触媒によるCOの酸化活性(650℃、20時間熱処理、及び350℃、2時間硫黄被毒処理後)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、白金粒子が酸化タングステン粒子とともに金属酸化物上に担持された白金系酸化触媒組成物を含む本発明の白金系酸化触媒、及びそれを用いた排気ガス浄化方法について詳細に説明する。なお、ディーゼル自動車用途における実施形態を中心に述べるが、本発明は自動車用途に限定されるものではなく、発電など様々な電力源に使用されるディーゼルエンジンンにも有効であることはいうまでもない。
【0015】
1.白金系酸化触媒組成物
本発明の白金系酸化触媒組成物(以下、触媒組成物ともいう)は、白金(Pt)とタングステン酸化物を金属酸化物上に担持し、白金粒子の近傍に凝集粒子径が300nm以下のタングステン酸化物粒子が存在し、ゼオライトを含有している。白金とタングステン酸化物の担持量の比率は、タングステン酸化物を三酸化タングステン(WO)に換算したモル比で、1:0.3〜5.0が好ましい。
【0016】
(1)金属酸化物
上記貴金属成分や助触媒成分は、金属酸化物(母材とも言う)に担持され、必要に応じ他の触媒成分と混合し、触媒組成物として構造型担体に被覆される。このように貴金属成分や助触媒成分を担持する母材の金属酸化物としては、排気ガス浄化用触媒の分野で公知の触媒材料が使用できる。このような無機材料は、耐熱性が高く、その比表面積値が大きいことで貴金属成分を安定に高分散できる多孔質の物が好ましい。
本発明では、金属酸化物として、チタニア、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、セリア、セリア−ジルコニアなどを例示できる。一般にチタニア系母材は、固体酸性が強いが故に硫黄が付着しにくい母材として知られ、一方、アルミナ系母材は、チタニアと比較して固体酸性が弱いが故に硫黄が吸着しやすい母材としてよく知られている。そのため、排気ガス中に硫黄酸化物が含まれている場合、母材としてはチタニアをはじめ硫黄が付着しにくい固体酸性の強い金属酸化物が一般に使用され、アルミナの様な硫黄が付着しやすい固体酸性の弱い金属酸化物はあまり使用されていない。
しかし、本発明では、白金(Pt)とタングステン酸化物が金属酸化物上に担持され、白金粒子の近傍に凝集粒子径が300nm以下のタングステン酸化物粒子が存在していれば、硫黄酸化物を含む排気ガスに曝される触媒の母材として、一般的なチタニア系母材だけでなく、当該条件では使用に不向きとされるアルミナ系母材も使用することができる。
【0017】
(1−1)チタニア(TiO
本発明において、触媒材料の一つとして使用しうるチタニアは、多孔質無機酸化物の一種であり、貴金属であるPtを高分散に担持する母材として機能する。また、固体酸性が強いため、硫黄がほとんど吸着しないことがよく知られている。結晶構造としては、アナタース型の他、ルチル型、ブルカイト型が挙げられ、Ptの活性点を増やすため、BET比表面積の大きいアナタース型が特に好ましい。さらに、チタニアは、単独で使用してもよいが、雰囲気温度の上昇とともにBET比表面積が低下するため、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、酸化バリウム等を少量加えて、耐熱性を向上させたチタニア系複合酸化物を使用することが望ましい。
【0018】
本発明において、チタニア又はチタニア系複合酸化物のBET比表面積値(BET法による、以下同様)は、30〜300m/gが好ましく、50〜200m/gがより好ましい。BET比表面積が30m/g以下の場合、貴金属や助触媒などの分散性が悪化するので好ましくない。一方、300m/g以上になると、粒子内の細孔径が小さくなり過ぎて、細孔内でのガスの拡散が遅くなるので好ましくない。
【0019】
また、チタニア又はチタニア系複合酸化物の粒子内の細孔径は、30〜300nmが好ましく、100〜250nmがより好ましい。細孔径が30nm未満では硫黄などの被毒成分による細孔の閉塞等の恐れもあり、300nmを超えるとBET比表面積が低下するため、貴金属や助触媒などの分散性が悪化するので好ましくない。
【0020】
チタニア又はチタニア系複合酸化物の平均粒径は、0.3〜50μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがより好ましい。0.3μm未満では粒子−粒子間の空隙が小さくなり過ぎて、空隙間のガスの拡散が遅くなるので好ましくなく、50μmを超えると粒子の中心部までのガスの拡散が遅くなり、粒子の中心部が有効に活用されないので好ましくない。
【0021】
(1−2)アルミナ(Al
本発明において、触媒材料の一つとして使用しうるアルミナは、排気ガス浄化用触媒の金属酸化物として一般に使用されている。アルミナの結晶構造としては、γ−アルミナ、β−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、θ−アルミナが挙げられ、Ptの活性点を増やすため、BET比表面積の大きいγ−アルミナが特に好ましい。また、γ−アルミナにランタン、ジルコニア、セリアなどを添加することが好ましい。特に、ランタンが添加されたγ−アルミナは、耐熱性に優れ、白金成分やパラジウム成分等の貴金属成分を担持させた場合、高温時にも高い触媒活性を維持することが可能である(特開2004−290827号公報)。
【0022】
本発明において、アルミナのBET比表面積は、80〜250m/gであることが好ましく、更に、100〜200m/gがより好ましい。アルミナのBET比表面積値が250m/gより大きいと相対的に細孔径が小さくなるので、ガスの拡散の悪化や細孔の閉塞が懸念される。一方、BET比表面積が80m/gより小さいと貴金属や助触媒の分散性の悪化が懸念される。
【0023】
また、アルミナは細孔径(モード径、以下同じ)が8〜50nmであることが好ましく、更に、10〜40nmであることがより好ましく、12〜30nmがさらに好ましい。アルミナの細孔径が8nmより小さいと細孔内でのガスの拡散が遅くなる上、煤などにより細孔が閉塞される恐れがある。一方、細孔径が50nmより大きいと相対的にBET比表面積が小さくなり、貴金属や助触媒などの分散性が悪化するので好ましくない。アルミナの平均粒径は、0.3〜50μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがより好ましい。0.3μm未満では粒子−粒子間の空隙が小さくなり過ぎて、空隙間のガスの拡散が遅くなるので好ましくなく、50μmを超えると粒子の中心部までのガスの拡散が遅くなり、粒子の中心部が有効に活用されないので好ましくない。
【0024】
アルミナの耐久性を向上させるため、さらにバリウム、マグネシウムなどのアルカリ土類、セリウム、ランタン、ネオジム、プラセオジムなどの希土類元素などを付与してもよい。添加量はアルミナの高BET比表面積の大幅な低減を避けるためにも30重量%以下が好ましい。
なお、前記シリカ、ジルコニアなどの物性についても、チタニアやアルミナに準じて選定することができる。
【0025】
(2)白金(Pt)
本発明においては、触媒成分の一つとして使用する貴金属元素の白金は、活性金属として機能する。
白金は、上記金属酸化物に担持されるが、その際に使用する出発塩としては、水酸化白金(IV)酸のエタノールアミン溶液、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、テトラアンミン白金(II)炭酸塩、テトラアンミン白金(II)硝酸塩、水酸化白金(IV)酸の硝酸溶液、硝酸白金、ジニトロジアンミン白金硝酸、塩化白金(IV)酸などが好ましい。特に、焼成後に塩素、硫化物などの残渣が残らない水酸化白金(IV)酸のエタノールアミン溶液、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、テトラアンミン白金(II)炭酸塩、テトラアンミン白金(II)硝酸塩、水酸化白金(IV)酸の硝酸溶液、硝酸白金、ジニトロジアンミン白金硝酸の使用が好ましい。
金属酸化物上への白金の担持量は、特に制限はないが、0.5〜5g/Lが好ましく、0.5〜3g/Lがより好ましい。白金の量が0.5g/Lより少ないと酸化活性が乏しく、5g/Lより多いと、酸化活性に対して価格が高くなり好ましくない。
【0026】
(3)タングステン酸化物
本発明において、触媒材料の一つとして使用するタングステン酸化物は、三酸化タングステン(WO)、または三酸化タングステン(WO)および二酸化タングステン(WO)から成る。混合物である場合、WOとWOの混合比率は特に制限されない。
タングステン酸化物は、固体酸性が強く、硫黄がほとんど吸着しないことから助触媒として機能する。
【0027】
硫黄の吸着性という面においてタングステン酸化物は、チタニアと同様の性質を有する一方、タングステン酸化物は、酸化チタンに比べ密度が2〜3倍ほど高い(WOで7.16g/cm、WOで12.1g/cm、TiOはアナタース型で3.90g/cm、ルチル型が4.27g/cmである)。そのため、タングステン酸化物はチタニアに比べBET比表面積は低くなり、貴金属の担体としては、分散性に問題があるものの熱によるシンタリングの影響を受けにくい。
【0028】
金属酸化物上にタングステン酸化物を微粒子として担持しかつ高分散させるため、出発塩としては、液状、ゾル状のものが好ましい。液状のものとしては、メタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸、メタタングステン酸ナトリウム等が好ましい。特に、焼成後に塩素、硫化物等の残渣が残らないメタタングテン酸アンモニウムの使用が好ましい。また、ゾル状のものとしては二酸化タングステンゾル、三酸化タングステンゾルが好ましい。
【0029】
タングステン酸化物の粒子径は、凝集粒子の状態で300nm以下でなければならない。粒子径は、200nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましく、50nm以下が特に好ましい。なお、凝集粒子とは一次粒子が1個以上数個から数十個固まった状態を指し、二次粒子径とも呼称する。タングステン酸化物の凝集粒子径が300nmを越えると1個当りの粒子径が大きくなり過ぎて、タングステン酸化物の分散性が悪化し、白金の近傍にタングステン酸化物が存在する割合が減少するため、白金粒子への硫黄の被毒を抑制する効果が低下するので好ましくない。なお、一次粒子が1個の大きさ、すなわちタングステン酸化物結晶子の大きさは、後述するSTEM/EDXでは確認できないほど小さく、1nm以下(0.5nm程度)である。
【0030】
金属酸化物上へのタングステン酸化物の担持量は、特に制限されないが、三酸化タングステン(WO)換算で0.15〜15g/Lが好ましく、0.2〜10g/Lがより好ましい。タングステン酸化物の量が三酸化タングステン(WO)換算で0.15g/Lより少ないと硫黄による被毒を抑制する効果が乏しく、15g/Lより多いと白金粒子自体を被覆する恐れがある上、価格の面でも好ましくない。
また、白金粒子と近接させて担持する必要があるため、白金とタングステン酸化物の担持量の比率は、タングステン酸化物を三酸化タングステン(WO)にモル換算して、1:0.3〜5.0であることが好ましく、1:0.3〜3.0がより好ましく、1:0.5〜2.0が特に好ましい。白金とタングステン酸化物の担持量の比率が0.3未満であると、タングステン酸化物の絶対量が不足して硫黄による白金の被毒を抑え難くなるので好ましくない。一方、5.0を超えるとタングステン酸化物が白金の表面を被覆したり母材の細孔を閉塞させたりし、触媒活性を抑制するので好ましくない。
【0031】
(4)ゼオライト
本発明において、触媒材料として使用するゼオライトは、チタニアと同等かそれ以上に固体酸性が強く、硫黄がほとんど吸着しないものである。
ゼオライトとしては、例えば三次元の細孔構造を有するβ型、MFI型のゼオライトをはじめ、A、X、Y、MOR、CHA、SAPOなどのゼオライトまたはゼオライト様物質が使用できるが、ディーゼル排ガス中の炭化水素を捕捉するという機能を考慮するとβ型ゼオライト、又はMFI型のゼオライトがより好ましい。
ゼオライトとしては高表面積でかつ耐熱性のあるものが好ましい。より優れた耐熱性を得るには、ゼオライトのSiO/Alのモル比は、10〜300が好ましく、15〜100がより好ましい。また、ゼオライトのBET比表面積は300〜1000m/gが好ましく、400〜900m/gがより好ましい。
【0032】
2.白金系酸化触媒
本発明の上記触媒組成物は、そのままで用いることができるが、本発明では、一体構造型触媒などの各種担体表面に被覆された構造型触媒として用いることが望ましい。
【0033】
(一体構造型触媒)
本発明の白金系酸化触媒(排気ガス浄化用触媒、あるいは単に酸化触媒ともいう)において、担体の形状は、特に限定されるものではなく、角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状などの構造型担体から選択可能である。構造型担体のサイズは、特に制限されないが、角柱状、円筒状、球状のいずれかであれば、例えば数ミリから数センチの直径(長さ)のものが使用できる。中でも、ハニカム状のハニカム構造担体の使用が好ましい。
【0034】
(ハニカム構造担体)
ハニカム構造担体とは、コージェライト、シリコンカーバイド、窒化珪素等のセラミックや、ステンレス等の金属からなるもので、その構造は構造型担体中の全体に渡って伸びている平行な多数の微細な気体流路を有するもので一体構造型担体ともいわれる。このうち材質としてはコージェライトが耐久性、コストの理由で好ましい。
また、このようなハニカム構造担体としては、さらに開口部の孔数についても処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失あるいは除去効率などを考慮して適正な孔数が決められるが、そのセル密度は100〜900セル/inch(155k〜1400k/m)であることが好ましく、200〜600セル/inch(310k〜930k/m)である事がより好ましい。セル密度が900セル/inch(1400k/m)を超えると、付着したPMで目詰まりが発生しやすく、100セル/inch(310k/m)未満では幾何学的表面積が小さくなるため、触媒の有効使用率が低下してしまう。なお、セル密度とは、ハニカム構造担体を気体流路に対して直角に切断した際の断面における単位面積あたりのセル数のことである。
また、ハニカム構造担体には、気体流路が連通しているフロースルー型構造体と、気体流路の一部端面が目封じされ、かつ気体流路の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型構造体とが広く知られている。フロースルー型構造体であれば空気抵抗が少なく、排気ガスの圧力損失が少ない。また、ウォールフロー型構造体であれば、排気ガス中に含まれる粒子状成分を濾し取ることが可能である。本発明の白金系酸化触媒は、そのどちらの構造体にも用いる事ができる。
【0035】
(層構成)
本発明の白金系酸化触媒は、前記触媒組成物をハニカム構造担体に一層以上被覆したものである。層構成は、一層でもよいが、排気ガス規制の強化を受け、二層以上とすることが好ましい。
【0036】
(触媒調製法)
(1)触媒組成物の調製方法
本発明で用いる白金系酸化触媒組成物を調製するため、例えば、以下のような方法により、白金及びタングステン酸化物を金属酸化物に担持することができる。
【0037】
(プロセス1:同時担持)
出発原料として、おのおの先に述べた水溶性の白金塩と水溶性のタングステンを含有する原料を、特定量用意し、混合・攪拌して、水溶液とする。その際、白金塩水溶液とタングステン含有水溶液の性質(酸性・アルカリ性)が異なると、両方が凝集して沈殿物を生じる恐れがある為、白金及びタングステンを含有する水溶液の性質は酸性同士又はアルカリ性同士で統一する必要がある。
【0038】
(プロセス2:逐次担持)
出発原料である白金塩、タングステン含有原料を特定量用意し、混合せずに逐次担持する。出発原料は白金塩、タングステン含有原料とも水溶性であれば、水溶液の性質は酸性、中性、アルカリ性のいずれであっても問題ない。担持の順番については白金、タングステンの順であっても、その逆の、タングステン、白金の順でも可能であるが、タングステン、白金の順の場合、後から担持する白金が剥き出しになって硫黄酸化物により被毒されてしまう恐れがある。そこで高価な白金をできるだけ有効に活用するためには、白金、タングステンの順が好ましい。
なお、プロセス1、2については、触媒に使用可能な白金量、原材料代を含む製造コスト、要求される浄化性能などにより適宜使い分けることができるが、白金粒子のより近傍に酸化タングステン粒子を存在させるには、プロセス1の同時担持の方が好ましい。
【0039】
(2)一体構造型触媒の調製方法
本発明の白金系酸化触媒を調製するには、前記触媒組成物と、必要に応じてバインダーなどを水系媒体と共に混合してスラリー状混合物にしてから、一体構造型担体へ塗工して、乾燥、焼成する。
すなわち、まず、触媒組成物と水系媒体、及び必要に応じてバインダーを所定の比率で混合してスラリー状混合物を得る。本発明においては、水系媒体は、スラリー中で触媒組成物が均一に分散できる量を用いれば良い。
この際、必要に応じてpH調整のための酸、塩基を配合したり、粘性の調整やスラリー分散性向上のための界面活性剤、分散用樹脂等を配合する事ができる。スラリーの混合方法としては、ボールミルなどによる粉砕混合が適用可能であるが、他の粉砕、もしくは混合方法を適用しても良い。
【0040】
次に、一体構造型担体へスラリー状混合物を塗工する。塗工方法は、特に限定されないが、ウォッシュコート法が好ましい。
塗工した後、乾燥、焼成を行う事により触媒組成物が担持された一体構造型触媒が得られる。なお、乾燥温度は、70〜200℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。また、焼成温度は、300〜700℃が好ましく、400〜600℃がより好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にするが、本発明は、これら実施例の態様に限定されるものではない。
【0042】
(1)粒子径分布測定
SHIMADZU社製ナノ粒子径分布測定装置SALD−7100を用いて、レーザー散乱法により各種粉末原料の粒度分布を測定した。平均細孔径としては、メディアン径(D50)を採用した。
【0043】
(2)粒子径測定(タングステン酸化物)
メタタングステン酸アンモニウム又はリンタングステン酸を出発原料とする酸化タングステンの粒子径は、走査透過型電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope:MD−2000 株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)、およびエネルギー分散型X線分光装置(EDX:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:VENTAGE 1.4 Thermo NORAN社製)で測定した。
【0044】
(3)細孔分布測定
各種粉末原料0.3gを乾燥後、Thermo社製PASCAL140−440を用いて、Hg圧入法により、各原料の細孔分布を測定した。細孔径としては、モード径を採用した。
【0045】
(4)S被毒処理
実施例及び比較例で用いる触媒コア(直径24mm×長さ66mm、容積30mL)は、まず電気炉内に入れ、空気雰囲気下、650℃、20時間の熱処理を行った。その熱処理後の各触媒コアをサンプルホルダーに入れ、管状炉内で、触媒床温度を250℃又は350℃に設定し、表1に示す2,000ppmのSOを含むガスに2時間曝すことでS被毒処理を行った。
【0046】
(5)モデルガス評価
S被毒処理後の各触媒コアをサンプルホルダーに入れ、モデルガス評価装置にセットした後、表2に示す反応ガスを流して触媒性能試験を行った。HC(具体的にはC:C=80:20)の酸化反応の結果を図1〜2に、COの酸化反応の結果を図3〜4に示す。
なお、各有害成分の酸化性能の定義は以下の通りである。
HCのT50(℃):HCが酸化されてHC濃度が50%まで減少した時の触媒床温度。
COのT50(℃):COが酸化されてCO濃度が50%まで減少した時の触媒床温度。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
(実施例1)
白金(Pt)換算で1.765gの水酸化白金(IV)酸のエタノールアミン溶液と三酸化タングステン(WO)換算で2.1gのメタタングステン酸アンモニウムを秤量後、純水20mLに均一に溶解して白金とメタタングステン酸アンモニウムの両方を含む水溶液を調製し、BET比表面積92m/g、平均細孔径(メディアン径)175nm、平均粒径(D50)2.5μmのアナタース型耐熱チタニア(TiO:90%、SiO:6%、Al:4%)80gに含浸担持した。この含水物を空気中500℃で1時間焼成を行うことで、2.1重量%白金−2.5重量%三酸化タングステン担持チタニア系複合酸化物を得た。白金と酸化タングステンの担持量は、WO換算でモル比率が1/1であった。
次に、当該白金−タングステン酸化物担持チタニア系複合酸化物83.865gと、β型ゼオライト{SAR=24、BET比表面積=700m/g、平均粒径(D50)7.2μm}30g、シリカゾル(シリカ換算で3g)と水を加えて、ボールミルポット内で所定の粒度まで混合・粉砕することにより、スラリーを得た。
このスラリーを400cell/inch(620k/m)、6mil(0.15mm)のコーディエライト製ハニカムコア(24mmφ×66mmL、30mL)にコーティングし、余分のスラリーをエアーガンで飛ばして乾燥した後、500℃で1時間焼成することにより、実施例1の排気ガス浄化用触媒[Pt=1.765g/L、WO(換算)=2.1g/L、WO(換算)/Pt=1/1(モル比)、チタニア系母材、触媒重量=116.865g/L]を得た。
前記のとおり、白金とタングステンの出発原料を均一溶液にした後、母材に担持させたので、タングステン酸化物粒子がPtの近傍に存在するといえる。タングステン酸化物の粒子径は、凝集粒子の状態で5nm以下であった(この数値は、STEM及びEDXの測定でのタングステン酸化物粒子の検出限界値以下である)。
その後、得られた酸化触媒を空気雰囲気下、650℃、20時間電気炉内で焼成後、250℃又は350℃で2時間、2,000ppmのSOを含むガスに2時間曝すことでS被毒処理を行った。そして、モデルガスによるHCおよびCOの各酸化活性を測定し、その結果を図1〜4に示した。
【0050】
(実施例2)
メタタングステン酸アンモニウムの代わりに、リンタングステン酸を三酸化タングステン(WO)換算で2.1gを用いた他は実施例1と同様にして、実施例2の排気ガス浄化用触媒[Pt=1.765g/L、WO(換算)=2.1g/L、WO(換算)/Pt=1/1(モル比率)、チタニア系母材、触媒重量=116.865g/L]を得た。タングステン酸化物の粒子径は、凝集粒子の状態で5nm以下であった。
前記のとおり、白金とタングステンの出発原料を均一溶液にした後、母材に担持させたので、タングステン酸化物粒子がPtの近傍に存在するといえる。タングステン酸化物の粒子径は、凝集粒子の状態で5nm以下であった(この数値は、STEM及びEDXの測定でのタングステン酸化物粒子の検出限界値以下である)。
その後、得られた酸化触媒を実施例1に記載の条件でS被毒処理を行い、引き続き、モデルガスによるHCおよびCOの各酸化活性を測定し、その結果を図1〜4に示した。
【0051】
(比較例1)
メタタングステン酸アンモニウムを加えなかった他は実施例1の触媒調製法と同様にして、比較例1の排気ガス浄化用触媒[Pt=1.765g/L、チタニア系母材、触媒重量=114.765g/L]を得た。
その後、得られた酸化触媒を実施例1に記載の条件でS被毒処理を行い、引き続き、モデルガスによるHCおよびCOの各酸化活性を測定し、その結果を図1〜4に示した。
【0052】
(比較例2)
BET比表面積92m/g、平均細孔径175nm、平均粒径(D50)2.5μmのアナタース型耐熱チタニア(TiO:90%、SiO:6%、Al:4%)80gと平均粒径(D50)3.5μmの無水タングステン酸(WO)2.1gを撹拌機でよく混合した。次に、白金(Pt)換算で1.76gの水酸化白金(IV)酸のエタノールアミン溶液を秤量後、純水10mLに溶解して白金(IV)酸のエタノールアミン水溶液を調製し、その混合物に含浸担持したこの含水物を空気中500℃、1時間の焼成を行うことで、2.1重量%白金−2.5重量%三酸化タングステン担持チタニア系複合酸化物を得た。WO/Ptのモル比は1/1であった。
これ以外は実施例1の触媒調製法と同様にして、比較例2の排気ガス浄化用触媒[Pt=1.765g/L、WO=2.1g/L、WO/Pt=1/1(モル比)、触媒重量=116.865g/L]を得た。三酸化タングステンの粒子径は、粉砕後の微粒子の状態で1.1μmであった。三酸化タングステンの粒子径が、白金(Pt)粒子の粒径5〜10nmに対して100倍以上も大きいので、ほとんどのPt粒子は三酸化タングステン粒子の近傍に存在しないことになる。
その後、得られた酸化触媒を実施例1に記載の条件でS被毒処理を行い、引き続き、モデルガスによるHCおよびCOの各酸化活性を測定し、その結果を図1〜4に示した。
【0053】
(実施例3)
アナタース型チタニア(TiO:90%、SiO:6%、Al:4%)の代わりに、BET比表面積150m/g、平均細孔径15nm、平均粒径(D50)30μmのγ−アルミナを同量用いた他は実施例1と同様にして、実施例3の排気ガス浄化用触媒[Pt=1.76g/L、WO(換算)=2.1g/L、WO(換算)/Pt=1/1(モル比)、アルミナ系母材、触媒重量=116.865g/L]を得た。
タングステン酸化物の粒子径は、凝集粒子の状態で5nm以下であった。前記のとおり、白金とタングステンの出発原料を均一溶液にした後、母材に担持させたので、タングステン酸化物粒子がPtの近傍に存在するといえる。タングステン酸化物の粒子径は、凝集粒子の状態で5nm以下であった(この数値は、STEM及びEDXの測定でのタングステン酸化物粒子の検出限界値以下である)。
その後、得られた酸化触媒を実施例1に記載の条件でS被毒処理を行い、引き続き、モデルガスによるHCおよびCOの各酸化活性を測定し、その結果を図1〜4に示した。
【0054】
(比較例3)
メタタングステン酸アンモニウムを加えなかった他は実施例3の触媒調製法と同様にして、比較例3の排気ガス浄化用触媒[Pt=1.765g/L、アルミナ系母材、触媒重量=114.765g/L]を得た。
その後、得られた酸化触媒を実施例1に記載の条件でS被毒処理を行い、引き続き、モデルガスによるHCおよびCOの各酸化活性を測定し、その結果を図1〜4に示した。
【0055】
「評価」
図1〜4に示した結果から、次のことが分かる。すなわち、メタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸といった水溶性のタングステンを原料とし、白金とタングステン酸化物の母材としてチタニア系複合酸化物である耐熱チタニアを使用して調製された実施例1及び2の白金系酸化触媒は、水溶性のタングステンを添加しなかった比較例1に比べ、S被毒処理後のHC酸化活性が向上し、S被毒処理温度が250℃、350℃の両方の領域とも、HC酸化の着火性能向上が顕著である。一方、不溶性のタングステンを原料として調製された比較例2の触媒では、三酸化タングステン(WO)の粒子径は1.1μmであり、タングステン無添加の比較例1に比べ、S被毒処理温度が250℃、350℃の両方の領域において、いずれもHC酸化の着火性能が悪化した。これらの結果は、本発明によれば、水溶性のタングステンを原料とすることで白金の近傍に凝集粒子径が300nm以下のタングステン酸化物の微粒子が形成されることで白金のS被毒が抑制され、それによりHC酸化の着火性能が向上することを示唆している。
同様の現象は白金とタングステン酸化物の母材を耐熱チタニアからγ−アルミナに置き換えても認められ、実施例3と比較例3の比較から、白金の近傍に凝集粒子径が300nm以下のタングステン酸化物の微粒子が形成されることで白金のS被毒が抑制され、それによりS被毒温度によらず、HC酸化の着火性能が向上している。
【0056】
これに対し、CO酸化の着火性能においては、水溶性のタングステンを原料として使用した実施例1及び2はタングステン無添加の比較例1に比べ、着火性能が向上する場合もある一方で、逆に性能が悪化する場合も見られ、HC酸化の場合と異なり、微小なタングステン酸化物による性能向上は明確には得られていない。同様な現象は不溶性のタングステンを原料とする比較例2でも見られ、タングステン無添加の比較例1に比べ、S被毒処理の温度により着火性能が向上する場合だけでなく、逆に悪化する場合が見られ、効果が安定しなかった。
一方、白金とタングステン酸化物を担持する母材を耐熱チタニアからγ−アルミナに置き換えると、実施例3と比較例3の比較により、S被毒後のCOの着火性能はHCの時に比べ促進効果自体は小さいものの、微小なタングステン酸化物による性能向上が明らかに確認できた。
すなわち、本発明の様に、白金の近傍に凝集粒子径が300nm以下のタングステン酸化物が存在することにより、それらを担持する母材として、耐硫黄性の高いチタニア系金属酸化物だけでなく、耐硫黄性に乏しいアルミナ系金属酸化物を用いた場合でも優れた耐硫黄性が発揮されることが明らかである。
以上により、本発明では、白金粒子を耐硫黄性に乏しいアルミナ系金属酸化物に担持しても触媒性能上の効果はあるが、耐硫黄性の高いチタニア系金属酸化物に担持して用いると、さらに顕著な作用効果が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の白金系酸化触媒は、希薄燃焼により発生する炭化水素及び一酸化炭素の酸化除去技術、例えばディーゼル自動車用途をはじめ、ガソリン自動車、船舶等の移動体用途や、発電機等の定置用途などに使用可能である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【国際調査報告】