(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050406
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20160725BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20160725BHJP
   B05C 13/00 20060101ALI20160725BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20160725BHJP
【FI】
   !B05C5/02
   !H01M4/88 K
   !B05C13/00
   !H01M8/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】2014538294
(21)【国際出願番号】JP2013072819
(22)【国際出願日】20130827
(11)【特許番号】5920479
(45)【特許公報発行日】20160525
(31)【優先権主張番号】2012217075
(32)【優先日】20120928
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】豊島 剣一
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小野 圭
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】山本 将也
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】堀部 哲史
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 貴行
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
5H018
5H026
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041CA02
4F041CA13
4F042AA22
4F042BA08
4F042BA25
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4F042DF19
5H018AA06
5H018AS01
5H018BB08
5H018BB12
5H018DD08
5H018EE03
5H018EE19
5H026AA06
(57)【要約】
【課題】シート部材における塗布領域の形状にゆがみが生じることを防止し得る塗布装置を提供する。
【解決手段】塗布装置50は、可撓性を備える薄膜状の電解質膜21(シート部材60)を載置するサクションローラー周壁114a(基板70)と、サクションローラー周壁に対して電解質膜を吸着させる吸引部80と、吸引部によってサクションローラー周壁に吸着させた電解質膜に触媒インク91(材料)を塗布する塗布機構90と、を有している。
電解質膜は、中央部分から外周縁部61よりも内側までの範囲に、触媒インクが塗布される塗布領域62を備えている。吸引部は、触媒インクを塗布する塗布領域において電解質膜をサクションローラー周壁に吸着させるととともに、塗布領域よりも外側に越えた範囲63において電解質膜をサクションローラー周壁114aに吸着させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を備える薄膜状のシート部材を載置する基板と、
前記基板に対して前記シート部材を吸着させる吸引部と、
前記吸引部によって前記基板に吸着させた前記シート部材に材料を塗布する塗布機構と、を有し、
前記シート部材は、中央部分から外周縁部よりも内側までの範囲に、材料が塗布される塗布領域を備え、
前記吸引部は、前記材料を塗布する前記塗布領域において前記シート部材を前記基板に吸着させるととともに、前記塗布領域よりも外側に越えた範囲において前記シート部材を前記基板に吸着させる、塗布装置。
【請求項2】
前記シート部材が多孔質材料、または溶媒含浸材料からなり、
前記基板が多孔質体から形成され、かつ、前記吸引部が気圧差によって前記シート部材を吸着させる機構を有する、または、
前記吸引部が静電気によって前記シート部材を吸着させる機構を有する、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記シート部材は、前記吸引部によって前記基板に対して吸着させる側の面が、前記材料を塗布する前の面、または前記材料をすでに塗布した後の面である、請求項1または請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記シート部材は、供給リールから繰り出され、巻き取りリールに順次巻き取られる長尺の形態を有し、
前記塗布機構は、前記シート部材を前記供給リールから前記巻き取りリールまで搬送する搬送経路の途中に配置されている、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記吸引部によって前記シート部材を前記基板に吸着させながら、塗布された前記材料を乾燥させる、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の塗布装置。
【請求項6】
前記シート部材は、電極触媒層が形成される電解質膜であり、
前記材料は、前記電極触媒層用の触媒インクである、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート部材に材料を塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への負荷が少ないクリーンな発電システムである。特に、固体高分子形燃料電池(PEFC)は、比較的低温で作動することから、電気自動車用電源として期待されている。
【0003】
固体高分子形の燃料電池は、電解質膜、当該膜の両面に形成される触媒層、ガス拡散層(GDL)等を有する膜−電極接合体(Membrane Electrode Assembly 以下、MEAと称する)を含む。MEAがセパレーターを介して複数積層されて燃料電池が構成される。
【0004】
MEAの製造に際して、電解質膜の両面に電極触媒層を形成する技術として、電解質膜に触媒インクを塗布する方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1記載の方法では、電解質膜に、その外周部を挟み込むように外周枠シートを取り付けている。外周枠シートの開口部に多孔質シートを配置し、多孔質シートを介して電解質膜を真空吸引しながら触媒インクを塗布している。多孔質シートは、触媒インクが塗布される塗布領域を保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−129777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の方法では、多孔質シートを介して電解質膜を真空吸引するとき、多孔質シートの外周縁部よりも内側、つまり塗布領域の外周よりも内側の範囲において、電解質膜を吸着している。
【0007】
このため、電解質膜に塗布領域内の外周部分にシワが生じていたり、塗布領域よりも外側に越えた範囲にシワが生じていたりすると、触媒インクを塗布する機構と電解質膜との間の距離がシワの影響を受けて変わってしまう。その結果、電解質膜における電極反応部の形状にゆがみが生じ、塗布した触媒の寸法や厚みに寸法変動が生じる。電解質膜が変形を起こすことによって、この電解質膜を適用した燃料電池の電池性能を低下させてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、シート部材における塗布領域の形状にゆがみが生じることを防止し得る塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の塗布装置は、可撓性を備える薄膜状のシート部材を載置する基板と、前記基板に対して前記シート部材を吸着させる吸引部と、前記吸引部によって前記基板に吸着させた前記シート部材に材料を塗布する塗布機構と、を有している。前記シート部材は、中央部分から外周縁部よりも内側までの範囲に、材料が塗布される塗布領域を備えている。そして、前記吸引部は、前記材料を塗布する前記塗布領域において前記シート部材を前記基板に吸着させるととともに、前記塗布領域よりも外側に越えた範囲において前記シート部材を前記基板に吸着させている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】燃料電池のセル構造を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る塗布装置を示す概略構成図である。
【図3】図2の3−3線に沿う断面図である。
【図4】図3に符号4Aにて示される部分を拡大して示す図である。
【図5】図5(A)(B)(C)は、塗布領域から外側に越えない範囲において電解質膜を吸着させた対比例において生じ得る不具合例の説明に使用する説明図である。
【図6】第2の実施形態に係る塗布装置を示す概略構成図である。
【図7】図6の7−7線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、燃料電池のセル構造を示す断面図である。
【0013】
図1を参照して、単セル10は、水素を燃料とする固体高分子形燃料電池(PEFC)等に適用され、MEA20およびセパレーター31、32を有する。単セル10をスタックして使用する場合は、例えば、冷却板33をさらに有し、冷却板33に設けられた溝部33aによって、単セル10を冷却するための冷媒が流通する冷媒流路が構成される。
【0014】
MEA20は、高分子電解質膜21、触媒層22、23、およびガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)24、25を有する。
【0015】
触媒層22は、触媒成分、触媒成分を担持する導電性の触媒担体および高分子電解質を含んでおり、水素の酸化反応が進行するアノード触媒層であり、電解質膜21の一方の側に配置される。触媒層23は、触媒成分、触媒成分を担持する導電性の触媒担体および高分子電解質を含んでおり、酸素の還元反応が進行するカソード触媒層であり、電解質膜21の他方の側に配置される。
【0016】
電解質膜21は、触媒層22で生成したプロトンを触媒層23へ選択的に透過させる機能およびアノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能を有する。
【0017】
ガス拡散層24は、アノード側に供給される燃料ガスを分散させるためのアノードガス拡散層であり、セパレーター31と触媒層22との間に位置している。ガス拡散層25は、カソード側に供給される酸化剤ガスを分散させるためのカソードガス拡散層であり、セパレーター32と触媒層23との間に位置している。
【0018】
セパレーター31、32は、単セル10を電気的に直列接続する機能および燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷媒を互いに遮断する隔壁としての機能を有し、MEA20と略同一形状であり、例えば、ステンレス鋼鈑にプレス加工を施すことで形成される。ステンレス鋼鈑は、複雑な機械加工を施しやすくかつ導電性が良好である点で好ましく、必要に応じて、耐食性のコーティングを施すことも可能である。
【0019】
セパレーター31は、MEA20のアノード側に配置されるアノードセパレーターであり、触媒層22に相対し、MEA20とセパレーター31との間に位置するガス流路を構成する溝部31aを有する。溝部(ガス流路)31aは、燃料ガスを触媒層22に供給するために利用される。
【0020】
セパレーター32は、MEA20のカソード側に配置されるカソードセパレーターであり、触媒層23に相対し、MEA20とセパレーター32との間に位置するガス流路を構成する溝部32aを有する。溝部(ガス流路)32aは、酸化剤ガスを触媒層23に供給するために利用される。
【0021】
次に、各構成部材の材質およびサイズ等について詳述する。
【0022】
電解質膜21は、パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系電解質膜、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂膜、リン酸やイオン性液体等の電解質成分を含浸した多孔質状の膜を、適用することが可能である。パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーは、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン株式会社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)である。多孔質状の膜は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から形成される。
【0023】
電解質膜21の厚みは、特に限定されないが、強度、耐久性および出力特性の観点から5〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μmである。
【0024】
触媒層(カソード触媒層)23に用いられる触媒成分は、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば、特に限定されない。触媒層(アノード触媒層)22に用いられる触媒成分は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば、特に限定されない。
【0025】
具体的な触媒成分は、例えば、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、及びそれらの合金等などから選択される。触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましい。カソード触媒層およびアノード触媒層に適用される触媒成分は、同一である必要はなく、適宜変更することが可能である。
【0026】
触媒層22、23に用いられる触媒の導電性担体は、触媒成分を所望の分散状態で担持するための比表面積、および、集電体として十分な電子導電性を有しておれば、特に限定されないが、主成分がカーボン粒子であるのが好ましい。カーボン粒子は、例えば、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛から構成される。
【0027】
触媒層22、23に用いられる高分子電解質は、少なくとも高いプロトン伝導性を有する部材であれば、特に限定されず、例えば、ポリマー骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質や、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質が適用可能である。触媒層22、23に用いられる高分子電解質は、電解質膜21に用いられる高分子電解質と同一であっても異なっていてもよいが、電解質膜21に対する触媒層22、23の密着性を向上させる観点から、同一であることが好ましい。
【0028】
触媒層の厚みは、水素の酸化反応(アノード側)および酸素の還元反応(カソード側)の触媒作用が十分発揮できる厚みであれば特に制限されず、従来と同様の厚みが使用できる。具体的には、各触媒層の厚みは、1〜10μmが好ましい。
【0029】
ガス拡散層24、25は、例えば、グラッシーカーボン等の炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を、基材として構成される。基材の厚さは、特に限定されないが、機械的強度およびガスや水などの透過性の観点から、30〜500μmが好ましい。ガス拡散層24、25は、撥水性およびフラッディング現象の抑制の観点から、基材に撥水剤を含ませることが好ましい。撥水剤は、例えば、PTFE、PVDF、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンである。
【0030】
セパレーター31、32は、ステンレス鋼鈑から構成する形態に限定されず、その他の金属材料(例えば、アルミニウム板やクラッド材)、緻密カーボングラファイトや炭素板などのカーボンを適用することも可能である。カーボンを適用する場合、溝部31a、32aは、切削加工やスクリーン印刷によって形成することが可能である。
【0031】
次に、図2〜図4を参照して、塗布装置50を説明する。図2は、本発明の実施形態に係る塗布装置50を示す概略構成図、図3は、図2の3−3線に沿う断面図、図4は、図3に符号4Aにて示される部分を拡大して示す図である。
【0032】
塗布装置50は、概説すると、可撓性を備える薄膜状のシート部材60を載置する基板70と、基板70に対してシート部材60を吸着させる吸引部80と、吸引部80によって基板70に吸着させたシート部材60に材料91を塗布する塗布機構90と、を有している。シート部材60は、中央部分から外周縁部61よりも内側までの範囲に、材料91が塗布される塗布領域62を備えている。そして、吸引部80は、材料91を塗布する塗布領域62においてシート部材60を基板70に吸着させるととともに、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63においてシート部材60を基板70に吸着させている(図3および図4を参照)。シート部材60は、材料91を一方の面にのみ塗布する片面塗工用のシート部材、または材料91を両方の面に塗布する両面塗工用のシート部材のいずれにも適用できる。つまり、シート部材60は、吸引部80によって基板70に対して吸着させる側の面が、材料91を塗布する前の面でもよいし、または材料91をすでに塗布した後の面でもよい。
【0033】
吸引部80がシート部材60を基板70に吸着させる「塗布領域62よりも外側に越えた範囲63において」には、具体的には、次の3つの範囲が含まれる。第1に、塗布領域62よりも大きいがシート部材60の面積よりも小さい範囲、第2に、シート部材60と同じ大きさの範囲、第3に、シート部材60よりも大きい範囲である。本実施形態では、第1番目の、塗布領域62よりも大きいがシート部材60の面積よりも小さい範囲においてシート部材60を吸着させる形態を例に挙げて説明する。
【0034】
図示する実施形態にあっては、シート部材60は溶媒含浸材料からなる。溶媒含浸材料は、溶媒を吸って体積変化する材料と定義される。溶媒は、例えば、水や有機溶媒などであるが、これらに限定されない。
【0035】
より具体的には、シート部材60は、溶媒含浸材料からなり、電極触媒層22、23が形成される電解質膜21である。また、シート部材60に塗布される材料91は、電極触媒層22、23用の触媒インクである。電解質膜21は、触媒インクを塗布したときには、触媒インク中の溶媒を含浸して膨潤する。電解質膜21の膨潤は、塗布領域62よりも外側に越えた範囲においても生じている。電解質膜21は、両面塗工用のシート部材の一つである。
【0036】
電解質膜21は、長尺の形態で供給リール101に巻回している。図2〜図4には、一方の触媒層(例えば、アノード触媒層22)がすでに形成された電解質膜21に、他方の触媒層(例えば、カソード触媒層23)を構成する触媒インク91を塗布する形態を示している。電解質膜21は、ロール・ツー・ロール方式によって搬送される。電解質膜21は、供給リール101から繰り出され、巻き取りリール102に順次巻き取られる。塗布機構90は、電解質膜21を供給リール101から巻き取りリール102まで搬送する搬送経路の途中に配置されている。供給リール101と巻き取りリール102との間には、回転軸103を中心に回転自在なサクションローラー104を配置している。サクションローラー104は、周壁104aの上に電解質膜21を吸着しつつ搬送する。サクションローラー104の周壁104aがシート部材60を載置する基板70に相当する。周壁104aは、例えば、小孔105を多数形成したパンチングプレートなどの多孔質体から構成している。
【0037】
吸引部80は、気圧差によって電解質膜21を吸着させる吸引機構81を有している。この場合の吸引機構81は、周壁104aに形成した小孔105、吸引部80と吸引室107をつなぐ流路108があるサクションローラー104、サクションローラー104内に形成した吸引室107の空気を吸引する真空ポンプ106などから構成する。吸引機構81は、吸引室107の空気を吸引し、負圧となったサクションローラー104内部と、大気圧状態のサクションローラー104外部との間に気圧差を生じさせる。この気圧差によって、電解質膜21を、周壁104aの上に吸着する。
【0038】
吸引部80によって電解質膜21をサクションローラー104の周壁104aに吸着させながら、塗布された触媒インク91を乾燥させることが好ましい。乾燥に伴う電解質膜21の変形を抑えることができるからである。触媒インク91を乾燥させる機構は特に限定されないが、昇温させた雰囲気ガスを電解質膜21に吹き付ける等の公知の機構を適用することができる。
【0039】
触媒インク91の乾燥は、電解質膜21を巻き取りリール102に巻き取るまでの搬送経路においても行うことができる。この場合、サクションローラー104から巻き取りリール102までの間においても、吸引部によって電解質膜21を基板に吸着させながら、触媒インク91を乾燥させることが好ましい。この搬送経路に配置する基板は、上述した周壁104aと同様に、小孔を多数形成したパンチングプレートなどの多孔質体から構成することができる。また、この搬送経路に配置する吸引部は、上述した吸引部80と同様に、気圧差によって電解質膜21を吸着させる吸引機構を有する構成とすることができる。
【0040】
サクションローラー104内の吸引室107は、例えば、複数個に区画され、個々の区画ごとに真空吸引および大気開放を切り替えることを可能にしている。吸引室107は、電解質膜21が周壁104aから離れるまで電解質膜21を吸着し続ける。サクションローラー104に電解質膜21を吸着した状態をできるだけ長く維持することによって、乾燥時における電解質膜21の変形を抑えることができるからである。
【0041】
なお、塗布された触媒インク91の乾燥を促進させるために、周壁104aの温度を昇温させるヒータをサクションローラー104の内部に配置したり、塗布した触媒インク91の温度を昇温させるヒータをサクションローラー104に向かい合わせて配置したりしてもよい。搬送経路に配置する基板に関しても、基板の温度を昇温させるヒータを内部に配置したり、塗布した触媒インク91の温度を昇温させるヒータを基板に向かい合わせて配置したりしてもよい。
【0042】
塗布機構90は、サクションローラー104に向かい合わせて配置したコーターヘッド92を有している。コーターヘッド92には、図示しない材料供給源から、触媒インク91が供給される。
【0043】
図3および図4を参照して、触媒インク91を塗布する塗布領域62、電解質膜21をサクションローラー104に吸着させる範囲について説明する。説明の便宜上、サクションローラー104の回転軸103の方向を、電解質膜21の幅方向、塗布領域62の幅方向、サクションローラー104の幅方向、小孔105が存在する範囲の幅方向という。
【0044】
電解質膜21は、中央部分から外周縁部61よりも内側までの範囲に、触媒インク91が塗布される塗布領域62を備えている。つまり、塗布領域62の幅寸法は、電解質膜21の幅寸法よりも小さい。コーターヘッド92のインク吐出口は、塗布領域62の幅寸法に合致した長さの幅寸法を有している。コーターヘッド92の幅方向の中心と、サクションローラー104の幅方向の中心とを合わせている。電解質膜21は、その幅方向の中心をサクションローラー104の幅方向の中心に合わせて、サクションローラー104によって吸着搬送される。
【0045】
サクションローラー104表面において小孔105が存在する範囲の幅方向の中心を、サクションローラー104の幅方向の中心に合わせている。さらに、小孔105が存在する範囲の幅寸法は、塗布領域62の幅寸法よりも大きい。したがって、吸引部80は、塗布領域62において電解質膜21を周壁104aに吸着させるととともに、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63において電解質膜21を周壁104aに吸着させている。
【0046】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0047】
電解質膜21は、供給リール101から繰り出し、周壁104aの上に気圧差によって吸着させつつ搬送し、巻き取りリール102に巻き取る。電解質膜21を搬送しながら、コーターヘッド92によって、電解質膜21に触媒インク91を塗布する。
【0048】
小孔105が存在する範囲の幅寸法は、塗布領域62の幅寸法よりも大きい。吸引部80は、触媒インク91を塗布した塗布領域62において電解質膜21を周壁104aに吸着させるととともに、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63において電解質膜21を周壁104aに吸着させている。
【0049】
電解質膜21は薄膜であるので、触媒インク91をいずれの面にも塗布していない状態においても、電解質膜21自体は、塗布領域62内の外周部分にシワが生じていたり、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63にシワが生じていたりする。また、溶媒含浸材料である電解質膜21は、触媒インク91中の溶媒を含んで膨潤する。塗布領域62よりも外側に越えた範囲63にまで溶媒が含浸するので、電解質膜21の膨潤は、塗布領域62よりも外側の部分においても生じる。塗布した触媒インク91が乾燥するときには、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63も収縮する。この結果、触媒インク91が片面に塗布された電解質膜21は、塗布領域62内の外周部分や塗布領域62よりも外側に越えた範囲63にシワが現れる。
【0050】
ここで、図5に示される対比例のように、塗布領域202から外側に越えない範囲において電解質膜201をサクションローラー203の周壁203aに吸着させる場合には、次のような問題が生じる。塗布した触媒インク204が乾燥するときに、塗布領域202よりも外側の部分205も収縮し、電解質膜201には塗布領域202よりも外側の部分205にシワが顕著に現れる。このシワの影響を受けて、コーターヘッド206と電解質膜201との間の距離が変わってしまう。その結果、電解質膜201における電極反応部の形状にゆがみが生じ、触媒層の幅寸法w1、w2や幅方向の端部における厚みt1、t2に寸法変動が発生する。電解質膜201が変形を起こすことによって、燃料電池の電池性能を低下させてしまう。
【0051】
一方、第1の実施形態にあっては、触媒インク91を塗布するときには、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63において電解質膜21を周壁104aに吸着させている。このため、塗布領域62よりも外側の部分にシワが生じることを抑制でき、コーターヘッド92と電解質膜21との距離も変わらない。触媒インク91を電解質膜21の第1の面に塗布するとき、あるいは触媒インク91が第1の面にすでに塗布された電解質膜21の第2の面に触媒インク91をさらに塗布するときのいずれにおいても、シワが生じることを抑制できる。その結果、電解質膜21における塗布領域62の形状にゆがみが生じることを防止することができ、触媒層の幅寸法や幅方向の端部における厚みに寸法変動が生じない。よって、この電解質膜21を適用した燃料電池によれば、電解質膜の変形に起因した電池性能の低下を防止することが可能となる。
【0052】
電解質膜21の塗布面とは反対側にバックアップフィルムを貼り合わせることなく、電解質膜21の変形を抑制している。バックアップフィルムを貼り合わせたり剥がしたりする工程が不要であり、製造コストの増加を招かない。また、バックアップフィルムを剥がすときに生じ得る電解質膜の破壊という問題も根本的に生じない。
【0053】
ところで、開口部を有するマスクフィルムによって電解質膜を挟み込んで電解質膜の変形を抑制し、その後に触媒インクを塗布することも考えられる。しかしながら、使用後に廃棄する副資材としてのマスクフィルムが必要であり、マスクフィルムに開口部を設ける工程、マスクフィルムを電解質膜に貼り合わせる工程、マスクフィルムを電解質膜から除去する工程などが必要となる。この結果、製造コストが比較的高くなってしまう。
【0054】
これに対して、本実施形態にあっては、電解質膜21の外周縁部61を周壁104aに対して固定したり固定解除したりする動作を、吸引部80によってのみ行っている。したがって、マスクフィルムのような副資材が不要であり、マスクフィルムを貼り合わせたり、マスクフィルムを除去したりする工程が不要となることから、コストの増加を抑えることができる。
【0055】
この場合、図4に符号64の破線矢印で示すように、電解質膜21の幅方向端部と、周壁104aとの間の微小隙間から空気が吸引され、エア漏れが多少生じる場合がある。この部位におけるエア漏れの対策を施してもよい。例えば、電解質膜21の幅方向端部の上に重なるカバーを、サクションローラー104の外周に取り付ける。カバーが吸引されて電解質膜21の幅方向端部の上に重なることによって、エア漏れを低減することができる。カバーには、軸方向の切り込みが、周方向に所定の間隔で形成してある。切り込みを形成することによって、搬送される電解質膜21は、周壁104aから支障なく離れる。
【0056】
上記とは逆に、電解質膜21の外周縁部61におけるエア漏れ対策をあえて施さないとすることもできる。この場合の利点はつぎのとおりである。真空吸着を停止すると、電解質膜21の外周縁部61においてエア漏れが生じるので、真空吸着状態からの解放(バキュームリリース)が容易であり、電解質膜21を通してバキュームリリースされることがない。バキュームリリースに要する時間が短くなる結果、次の工程に迅速に移行することができ、量産性を高めることができる。バキュームリリース用のバルブを別途設けたりする必要がなく、設備費の増加を招くこともない。電解質膜21の中央部分においてはサクションローラー104の小孔105を通してバキュームリリースされ、電解質膜21の外周縁部61においてもバキュームリリースされる。このように電解質膜21の中央部分および外周縁部61の両方においてバキュームリリースがほぼ同時に生じるので、電解質膜21に応力集中が生じることがなく、マッドクラックと称される亀裂の発生を防止することができる。また、所定の大きさに切断した電解質膜21を基板70に吸着させる形態にあっては、外周縁部61においてエア漏れが生じるので、次工程で電解質膜21をピックアップし易くなるという利点もある。
【0057】
以上説明したように、第1の実施形態の塗布装置50は、シート部材60としての電解質膜21を載置する周壁104aと、吸引部80と、塗布機構90と、を有し、吸引部80は、触媒インク91を塗布する塗布領域62において電解質膜21を周壁104aに吸着させるととともに、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63において電解質膜21を周壁104aに吸着させている。このため、電解質膜21に塗布領域62内の外周部分にシワが生じたり、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63にシワが生じたりすることを抑制でき、塗布機構90のコーターヘッド92と電解質膜21との距離がシワの影響を受けて変わることがない。その結果、電解質膜21における塗布領域62の形状にゆがみが生じることを防止することができ、触媒層22、23の幅寸法や幅方向の端部における厚みの寸法変動を抑えることが可能となる。
【0058】
シート部材60の材料としては例えば溶媒含浸材料である。周壁104aが多孔質体から形成され、かつ、吸引部80が気圧差によって電解質膜21を吸着させる機構を有している。この場合、気圧差によって電解質膜21を吸着することによって、塗布領域62よりも外側の膨潤した部分にシワが生じることを抑制できる。
【0059】
電解質膜21は、吸引部80によって周壁104aに対して吸着させる側の面が、触媒インク91を塗布する前の面、または触媒インク91をすでに塗布した後の面である。このような構成によれば、触媒インク91を電解質膜21の第1の面に塗布するとき、あるいは触媒インク91が第1の面にすでに塗布された電解質膜21の第2の面に触媒インク91をさらに塗布するときのいずれにおいても、シワが生じることを抑制できる。その結果、片面塗工または両面塗工のいずれの場合においても、塗布領域62の形状にゆがみが生じることを防止し、触媒層22、23の寸法変動を抑えることが可能となる。
【0060】
電解質膜21は、供給リール101から繰り出され、巻き取りリール102に順次巻き取られる長尺の形態を有し、塗布機構90は、電解質膜21を供給リール101から巻き取りリール102まで搬送する搬送経路の途中に配置されている。このような構成によれば、電解質膜21をロール・ツー・ロール方式によって搬送するので、電解質膜21への触媒層22、23の形成を効率よく行うことができる。
【0061】
吸引部80によって電解質膜21を周壁104aに吸着させながら、塗布された触媒インク91を乾燥させている。乾燥に伴う電解質膜21の変形を抑えることができ、その結果、触媒層22、23の寸法変動を一層抑えることが可能となる。
【0062】
シート部材60は電極触媒層22、23が形成される電解質膜21であり、材料91は電極触媒層用の触媒インク91である。触媒層22、23を形成した電解質膜21の変形を抑えることができることから、この電解質膜21を適用した燃料電池によれば、電解質膜の変形に起因した電池性能の低下を防止することが可能となる。
【0063】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る塗布装置51を示す概略構成図、図7は、図6の7−7線に沿う断面図である。なお、第1の実施形態と共通する部材には同一の符号を付し、その説明は一部省略する。
【0064】
第2の実施形態は、静電気によって電解質膜21を基板70に吸着させている点で、気圧差によって電解質膜21を基板70に吸着させた第1の実施形態と相違している。
【0065】
第2の実施形態の塗布装置51は、第1の実施形態の塗布装置50と同様に、電解質膜21を載置する基板70と、基板70に対して電解質膜21を吸着させる吸引部80と、電解質膜21に電極触媒層22、23用の触媒インク91を塗布する塗布機構90と、を有している。吸引部80は、触媒インク91を塗布する塗布領域62において電解質膜21を基板70に吸着させるととともに、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63において電解質膜21を基板70に吸着させている。
【0066】
電解質膜21は、供給リール111から繰り出され、巻き取りリール112に順次巻き取られる。供給リール111と巻き取りリール112との間には、回転軸113を中心に回転自在な静電吸着ローラー114を配置している。静電吸着ローラー114は、周壁114aの上に電解質膜21を吸着しつつ搬送する。静電吸着ローラー114の周壁114aがシート部材60を載置する基板70に相当する。周壁114aは、例えば、静電吸着力を発生する電極を組み込んだ吸着板115から構成している。
【0067】
吸引部80は、静電気によって電解質膜21を吸着させる吸引機構81を有している。この場合の吸引機構81は、周壁114aを構成する吸着板115、吸着板115に組み込まれた電極に電力を供給する電源116などから構成する。吸引機構81は、吸着板115内の電極に電力を供給し、吸着板115に静電気を生じさせる。この静電気によって、電解質膜21を、周壁114aの上に吸着する。
【0068】
静電気を利用する吸引部80によって電解質膜21を静電吸着ローラー114に吸着させながら、塗布された触媒インク91を乾燥させている。乾燥に伴う電解質膜21の変形を抑えることができるからである。触媒インク91を乾燥させる機構は特に限定されないが、昇温させた雰囲気ガスを電解質膜21に吹き付ける等の公知の機構を適用することができる。
【0069】
触媒インク91の乾燥は、第1の実施形態と同様に、電解質膜21を巻き取りリール112に巻き取るまでの搬送経路においても行うことができる。この場合、静電吸着ローラー114から巻き取りリール112までの間においても、静電気を利用する吸引部によって電解質膜21を基板に吸着させながら、触媒インク91を乾燥させることが好ましい。
【0070】
塗布された触媒インク91を乾燥させるために、静電吸着ローラー114の吸着板115の温度を昇温させるヒータを静電吸着ローラー114の内部に配置したり、塗布した触媒インク91の温度を昇温させるヒータを静電吸着ローラー114に向かい合わせて配置したりする。搬送経路に配置する基板に関しても、基板の温度を昇温させるヒータを内部に配置したり、塗布した触媒インク91の温度を昇温させるヒータを基板に向かい合わせて配置したりしてもよい。
【0071】
図7に示すように、静電吸着ローラー114の吸着板115の幅寸法は、塗布領域62の幅寸法よりも大きい。したがって、第2の実施形態においても、吸引部80は、塗布領域62において電解質膜21を吸着板115に吸着させるととともに、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63において電解質膜21を吸着板115に吸着させている。
【0072】
第2の実施形態にあっても、触媒インク91を塗布するときには、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63において電解質膜21を吸着板115に吸着させている。このため、塗布領域62よりも外側の部分にシワが生じることを抑制でき、コーターヘッド92と電解質膜21との距離も変わらない。触媒インク91を電解質膜21の第1の面に塗布するとき、あるいは触媒インク91が第1の面にすでに塗布された電解質膜21の第2の面に触媒インク91をさらに塗布するときのいずれにおいても、シワが生じることを抑制できる。その結果、電解質膜21における塗布領域62の形状にゆがみが生じることを防止することができ、触媒層の幅寸法や幅方向の端部における厚みに寸法変動が生じない。よって、この電解質膜21を適用した燃料電池によれば、電解質膜21の変形に起因した電池性能の低下を防止することが可能となる。
【0073】
以上説明したように、第2の実施形態の塗布装置51は、シート部材60としての電解質膜21を載置する周壁114aと、吸引部80と、塗布機構90と、を有し、吸引部80は、触媒インク91を塗布する塗布領域62において電解質膜21を周壁114aに吸着させるととともに、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63において電解質膜21を周壁114aに吸着させている。このため、電解質膜21に塗布領域62内の外周部分にシワが生じたり、塗布領域62よりも外側に越えた範囲63にシワが生じたりすることを抑制でき、塗布機構90のコーターヘッド92と電解質膜21との距離がシワの影響を受けて変わることがない。その結果、電解質膜21における塗布領域62の形状にゆがみが生じることを防止することができ、触媒層22、23の幅寸法や幅方向の端部における厚みの寸法変動を抑えることが可能となる。
【0074】
シート部材60の材料としては例えば溶媒含浸材料からなる電解質膜21である。吸引部80が静電気によって電解質膜21を吸着させる機構を有している。この場合、静電気によって電解質膜21を吸着することによって、塗布領域62よりも外側の膨潤した部分にシワが生じることを抑制できる。
【0075】
(その他の改変例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜改変することができる。
【0076】
例えば、シート部材60として電極触媒層22、23が形成される電解質膜21を例に挙げ、材料91として電極触媒層用の触媒インク91を例に挙げて説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。また、シート部材60が溶媒含浸材料からなる電解質膜21を例に挙げて説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。シート部材60は、可撓性を備える薄膜状である限りにおいて種々適用でき、多孔質材料から形成されていてもよい。塗布される材料91も、シート部材60の種類に応じて種々適用できる。
【0077】
吸引部80が、触媒インク91を塗布した塗布領域62のほぼ全域を基板70に吸着させる形態を説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。シート部材60を基板70に吸着させる範囲は、材料91が塗布された塗布領域62の一部でもよい。また、吸着するシート部材60にシワを発生させない範囲で、吸着する力を部分的に異ならせてもよい。
【0078】
基板70を挟んだ両空間のうちシート部材60を載置した側とは反対側の空間を負圧にした第1の実施形態を示したが、気圧差を利用する吸引部80の構成はこの場合に限定されるものではない。基板70を挟んだ両空間の間で差圧があれば、シート部材60を基板70に吸着させることができる。したがって、シート部材60を載置した側の空間を大気圧を超える圧力に昇圧し、反対側の空間を大気圧に開放する形態でも、気圧差によってシート部材60を基板70に吸着させることができる。
【0079】
コーターヘッド92によって触媒インク91を塗布する形態について説明したが、電解質膜21への触媒インク91の塗布方法ないし構造は、特に制限されない。例えば、スクリーン印刷法、あるいはスプレー法などの公知の方法が同様にして適用できる。触媒インク91の塗布方法に合わせて、電解質膜21を載置する基板70の形状や構造、あるいは吸引部80における吸着方式を選択することができる。
【0080】
本出願は、2012年9月28日に出願された日本特許出願番号2012−217075号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【符号の説明】
【0081】
10 単セル、
20 膜−電極接合体(MEA)、
21 電解質膜、
22、23 触媒層、
24、25 ガス拡散層、
31、32 セパレーター、
50、51 塗布装置、
60 シート部材、
61 外周縁部、
62 塗布領域、
63 塗布領域よりも外側に越えた範囲、
70 基板、
80 吸引部、
81 吸引機構、
90 塗布機構、
91 触媒インク(材料)、
92 コーターヘッド、
101 供給リール、
102 巻き取りリール、
103 回転軸、
104 サクションローラー、
104a サクションローラーの周壁(基板)、
105 小孔、
106 真空ポンプ、
107 吸引室、
108 流路、
111 供給リール、
112 巻き取りリール、
113 回転軸、
114 静電吸着ローラー、
114a 静電吸着ローラーの周壁(基板)、
115 吸着板、
116 電源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】

【手続補正書】
【提出日】20140122
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を備える薄膜状のシート部材を載置する基板と、
前記基板に対して前記シート部材を吸着させる吸引部と、
前記吸引部によって前記基板に吸着させた前記シート部材に材料を塗布する塗布機構と、を有し、
前記シート部材は、中央部分から外周縁部よりも内側までの範囲に、材料が塗布される塗布領域を備え、
前記吸引部は、静電気によって前記シート部材を吸着させる機構を有し、前記材料を塗布する前記塗布領域において前記シート部材を前記基板に吸着させるととともに、前記塗布領域よりも外側に越えた範囲において前記シート部材を前記基板に吸着させてなり、
前記塗布領域よりも外側に越えた範囲は、前記塗布領域よりも大きく、かつ、前記シート部材よりも小さい範囲である、塗布装置。
【請求項2】
前記シート部材が多孔質材料、または溶媒含浸材料からなる、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記シート部材は、前記吸引部によって前記基板に対して吸着させる側の面が、前記材料を塗布する前の面、または前記材料をすでに塗布した後の面である、請求項1または請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記シート部材は、供給リールから繰り出され、巻き取りリールに順次巻き取られる長尺の形態を有し、
前記塗布機構は、前記シート部材を前記供給リールから前記巻き取りリールまで搬送する搬送経路の途中に配置されている、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記吸引部によって前記シート部材を前記基板に吸着させながら、塗布された前記材料を乾燥させる、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の塗布装置。
【請求項6】
前記シート部材は、電極触媒層が形成される電解質膜であり、
前記材料は、前記電極触媒層用の触媒インクである、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の塗布装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
[0006]
特許文献1記載の方法では、多孔質シートを介して電解質膜を真空吸引するとき、多孔質シートの外周縁部よりも内側、つまり塗布領域の外周よりも内側の範囲において、電解質膜を吸着している。
[0007]
このため、電解質膜に塗布領域内の外周部分にシワが生じていたり、塗布領域よりも外側に越えた範囲にシワが生じていたりすると、触媒インクを塗布する機構と電解質膜との間の距離がシワの影響を受けて変わってしまう。その結果、電解質膜における電極反応部の形状にゆがみが生じ、塗布した触媒の寸法や厚みに寸法変動が生じる。電解質膜が変形を起こすことによって、この電解質膜を適用した燃料電池の電池性能を低下させてしまうという問題がある。
[0008]
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、シート部材における塗布領域の形状にゆがみが生じることを防止し得る塗布装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0009]
上記目的を達成する本発明の塗布装置は、可撓性を備える薄膜状のシート部材を載置する基板と、前記基板に対して前記シート部材を吸着させる吸引部と、前記吸引部によって前記基板に吸着させた前記シート部材に材料を塗布する塗布機構と、を有している。前記シート部材は、中央部分から外周縁部よりも内側までの範囲に、材料が塗布される塗布領域を備えている。そして、前記吸引部は、静電気によって前記シート部材を吸着させる機構を有し、前記材料を塗布する前記塗布領域において前記シート部材を前記基板に吸着させるととともに、前記塗布領域よりも外側に越えた範囲において前記シート部材を前記基板に吸着させている。前記塗布領域よりも外側に越えた範囲は、前記塗布領域よりも大きく、かつ、前記シート部材よりも小さい範囲である。
図面の簡単な説明
[0010]
[図1]燃料電池のセル構造を示す断面図である。
[図2]第1の実施形態に係る塗布装置を示す概略構成図である。
[図3]図2の3−3線に沿う断面図である。
[図4]図3に符号4Aにて示される部分を拡大して示す図である。
[図5]図5(A)(B)(C)は、塗布領域から外側に越えない範囲において
【国際調査報告】