(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050440
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】透明導電積層体
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20160725BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20160725BHJP
【FI】
   !G06F3/041 350C
   !G06F3/041 330A
   !B32B27/18 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
【出願番号】2013541907
(21)【国際出願番号】JP2013073477
(22)【国際出願日】20130902
(31)【優先権主張番号】2012213699
(32)【優先日】20120927
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本石町3丁目3番16号
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 信康
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
(72)【発明者】
【氏名】大井 亮
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 修
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
【テーマコード(参考)】
4F100
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5B087
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
熱可塑性樹脂Aからなる基材の片面上に、少なくともカーボンナノチューブと熱可塑性樹脂Bを有する層が積層された透明導電積層体であって、成型倍率を2倍として成型するとき、透明導電積層体の表面抵抗値変化VRが8倍以下であり、かつ成型倍率を2倍として成型した後の表面抵抗値が1.0×10Ω/□以下である透明導電積層体。
成型後の表面抵抗値変化Rが抑制された透明導電積層体を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂Aからなる基材の片面上に、少なくともカーボンナノチューブと熱可塑性樹脂Bを有する層が積層された透明導電積層体であって、成型倍率を2倍として成型するとき、透明導電積層体の表面抵抗値変化VRが8倍以下であり、かつ成型倍率を2倍として成型した後の表面抵抗値Rが1.0×10Ω/□以下である透明導電積層体。
【請求項2】
成型倍率を2倍として成型後のヘイズ値が10%以下である請求項1に記載の透明導電積層体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂Bとカーボンナノチューブの合計質量に対する前記熱可塑性樹脂Bの質量割合が10〜99.5質量%である請求項1または2に記載の透明導電積層体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂Bが、ウレタン系樹脂、カーボネート系樹脂、エステル系樹脂、エーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂およびオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電積層体。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂Aが、ポリメチルメタクリレートまたは環状オレフィンである請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電積層体。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブの平均長さが、2〜7μmである請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電積層体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂Aからなる基材上に積層される層の厚みが1〜1,000nmである請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電積層体。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂Aからなる基材の厚みが75〜3,000μmである請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電積層体に関する。より詳細には、成型後の表面抵抗値変化Rが抑制された透明導電積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、抵抗膜式、静電容量式などのタッチパネル用途、電子ペーパー用途、デジタルサイネージ用途などの実に様々な製品に透明導電積層体が用いられてきた。導電性を発現させるための導電材料としては、インジウム錫酸化物(以下、ITO)や銀ナノワイヤー(以下、AgNW)、カーボンナノチューブ(以下、CNTということがある)、導電性高分子などが用いられている。上記用途では、平面か、もしくはフレキシブルな基板上に用いられることがほとんどであり、透明導電積層体を成型加工する必要性はあまり求められてこなかった。これまでは、柔軟性が求められるフレキシブル基板に適するCNTの検討が行われており、特許文献1では、耐屈曲性に優れたCNTを導電膜とする透明導電積層体の提案がなされている。
【0003】
しかしながら、今後は操作性およびデザイン性の観点から、平面ではなく立体的なタッチパネルが求められるようになる。これまで検討されてきたITOやAgNWは柔軟性がなく、成型加工後にはITO層のクラックの発生やAgNW自体の断裂などにより表面抵抗値が大幅に上昇する結果導通が取れなくなり、透明導電積層体としての機能を保持できないことが予想される。そこで、成型後の表面抵抗値変化Rを抑制するために、従来より柔軟性が高く、成型加工に有利なCNTと導電性高分子による検討が行われている。特許文献2では、成型された合成樹脂成型品に発生する静電気を逃して塵埃の付着を防止するための帯電防止処理用途として、CNTの分散性を向上させた成型可能な成型用導電フィルムの提案がなされている。また特許文献3では、導電性高分子を用いた成型可能な成型用導電フィルムの提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−66580号公報
【特許文献2】特開2006−35772号公報
【特許文献3】特開2011−213843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、耐屈曲性は優れているが、成型加工を行うと、CNTの断裂や、透明保護膜にクラックが発生することにより、成型後は導電性が発現されない。特許文献2では、CNTを用いた成型用導電性フィルムが提案されており、成型後もある一定以下の表面抵抗値が維持されるが、その表面抵抗値の変化率は大きく、タッチパネル用途として使用するには困難である。また、特許文献3では、導電性高分子を用いた提案がなされているが、成型後の表面抵抗値変化Rに関しては提案されておらず、破断伸度から成型倍率2〜3倍で導電性が失われていると判断できる。
【0006】
従って、本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、成型後の表面抵抗値変化Rが抑制された透明導電積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明の透明導電積層体は次の構成を有する。すなわち、
熱可塑性樹脂Aからなる基材の片面上に、少なくともカーボンナノチューブと熱可塑性樹脂Bを有する層が積層された透明導電積層体であって、成型倍率を2倍として成型するとき、透明導電積層体の表面抵抗値変化VRが8倍以下であり、かつ成型倍率を2倍として成型した後の表面抵抗値Rが1.0×10Ω/□以下である透明導電積層体、である。
本発明の透明導電積層体は、成型倍率を2倍として成型した後のヘイズ値が10%以下であることが好ましい。
本発明の透明導電積層体は、前記熱可塑性樹脂Bとカーボンナノチューブの合計質量に対する前記熱可塑性樹脂Bの質量割合が10〜99.5質量%であることが好ましい。
本発明の透明導電積層体は、前記熱可塑性樹脂Bが、ウレタン系樹脂、カーボネート系樹脂、エステル系樹脂、エーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂およびオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
本発明の透明導電積層体は、前記熱可塑性樹脂Aが、ポリメチルメタクリレートまたは環状オレフィンであることが好ましい。
本発明の透明導電積層体は、前記カーボンナノチューブの平均長さが、2〜7μmであることが好ましい。
本発明の透明導電積層体は、前記熱可塑性樹脂Aからなる基材上に積層される層の厚みが1〜1,000nmであることが好ましい。
本発明の透明導電積層体は、前記熱可塑性樹脂Aからなる基材の厚みが75〜3,000μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成型後の表面抵抗値変化Rが抑制された透明導電積層体を提供することができる。成型後の表面抵抗値変化Rを抑制することで、曲面のあるタッチパネルディスプレイにおいて表面抵抗値のばらつきが少ないため良好な作動性を得ることができる。例えば、表面抵抗値のばらつきが大きいとタッチパネルに触れた位置の正確な位置情報が認識されないが、表面抵抗値のばらつきが小さいとタッチパネルに触れた位置の正確な位置情報が認識され、作動性が良好なタッチパネルとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の透明導電積層体の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の透明導電積層体の一例を示す断面模式図である。本発明の透明導電積層体は、熱可塑性樹脂Aからなる基材(1)の片面上に、CNT(2)と熱可塑性樹脂B(3)を有する層(4)が積層された構成を有する。
【0011】
本発明の透明導電積層体は、熱可塑性樹脂Aからなる基材の片面上に、少なくともCNTと熱可塑性樹脂Bを有する層が積層された透明導電積層体であって、成型倍率を2倍として成型するとき、透明導電積層体の表面抵抗値変化VRが8倍以下であり、かつ成型倍率を2倍として成型した後の表面抵抗値Rが1.0×10Ω/□以下である透明導電積層体である。
【0012】
ここで、成型倍率を2倍として成型するときの透明導電積層体の表面抵抗値変化VRとは、透明導電積層体の初期(成型前)の表面抵抗値Rに対する、成型倍率を2倍として成型した後の表面抵抗値Rの変化率(R/R)を意味する。
【0013】
以下の説明において、成型倍率を2倍として成型するときの透明導電積層体の表面抵抗値変化VRを「2倍成型後の表面抵抗値変化VR」、成型倍率を2倍として成型した後の表面抵抗値Rを「2倍成型後の表面抵抗値R」、透明導電積層体の初期(成型前)の表面抵抗値Rを「初期表面抵抗値R」、成型倍率を2倍として成型した後のヘイズ値を「2倍成型後のヘイズ値HZ」と言うことがある。
【0014】
透明導電積層体を例えば曲面(例えば半球状)のあるタッチパネル等に適用するために半球状に成型加工する場合、通常、成型倍率(伸び)の大きい部分と小さい部分とが生じる。つまり、半球状の中央部分は比較的成型倍率は小さく、中央部分から周辺に遠ざかるに従って成型倍率は大きくなる傾向にある。このように、透明導電積層体を半球状のタッチパネル用に成型加工した場合、タッチパネル内で成型倍率が異なる部分が存在することになる。
【0015】
CNTを含有する透明導電積層体において、透明導電積層体の初期表面抵抗値Rが比較的小さい場合(例えば、1.0×10Ω/□以下の場合)は、通常、成型倍率が大きくなるに従って表面抵抗値も大きくなる。上記したように、半球状のタッチパネルにおいて成型倍率の大きい部分と小さい部分とが存在するということは、タッチパネル内で表面抵抗値の大きい部分と小さい部分とが存在することを意味する。このようにタッチパネル内で表面抵抗値の大きい部分と小さい部分が存在すると、タッチパネル内で作動性(作動感度)にばらつきが起こり、作動性が不安定となる。その結果タッチパネルとしての機能が損なわれることがある。
【0016】
本発明は、上記課題を解決すべく検討した結果、2倍成型後の表面抵抗値変化VRが8倍以下である透明導電積層体が上記課題を解決することを見出した。
【0017】
すなわち、透明導電積層体の2倍成型後の表面抵抗値変化VRが8倍以下である場合、作動性が安定で良好なタッチパネルとして使用することができる。2倍成型後の表面抵抗値変化VRが8倍より大きくなる場合、作動性が不安定となりタッチパネルとして使用することが困難となる。
【0018】
更に作動性が良好で安定なタッチパネルを得るには、透明導電積層体の2倍成型後の表面抵抗値変化VRは7倍以下が好ましく、6倍以下がより好ましく、5倍以下がさらに好ましい。
【0019】
一方、透明導電積層体をタッチパネル、電子ペーパー、デジタルサイネージなどの用途に適用する場合、2倍成型後の表面抵抗値Rが1.0×10Ω/□以下であることが重要である。表面抵抗値Rが1.0×10Ω/□を超えるとタッチパネルの作動性が著しく低下する。
【0020】
また、作動性がより良好で安定なタッチパネルを得るには、2倍成型後の表面抵抗値Rは1.0×10Ω/□以下であることが好ましく、5.0×10Ω/□以下であることがより好ましい。
本発明において、2倍成型後の表面抵抗値Rが1.0×10Ω/□以下である透明導電積層体を得るには、透明導電積層体の初期表面抵抗値Rは2.0×10Ω/□以下が好ましく、1.0×10Ω/□以下がより好ましく、8.0×10Ω/□以下がさらに好ましい。
【0021】
本発明の透明導電積層体をタッチパネル、電子ペーパー、デジタルサイネージなどの用途に適用する場合、高い透明性を確保するという観点から、2倍成型後のヘイズ値HZは10%以下が好ましく、9%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましく、7%以下が特に好ましい。下限のヘイズ値は小さいほど好ましいが、現実的な下限は0.5%程度である。
【0022】
CNTを含有する透明導電積層体において、透明導電積層体の初期表面抵抗値Rが比較的小さい場合(例えば、1.0×10Ω/□以下の場合)は、通常、成型倍率が大きくなるに従ってヘイズ値も大きくなる。これは、成型することにより透明導電積層体にクラックが発生することが起因していると推測される。つまり、成型倍率が大きくなるに従ってクラックの大きさや発生個数が増大し、ヘイズ値が大きくなると推測される。
【0023】
また、透明導電積層体にクラックが発生すると、クラック部分のCNTは露出することがあり、これによって表面抵抗値が低下することがある。
上述したように、透明導電積層体を例えば曲面(例えば半球状)のあるタッチパネル等に適用するために半球状に成型加工する場合、半球状のタッチパネルにおいて成型倍率の大きい部分と小さい部分とが存在する。タッチパネルにおいて成型倍率の大きい部分と小さい部分とが存在するということは、タッチパネル内でヘイズ値の大きい部分と小さい部分とが存在することを意味する。このようにタッチパネル内でヘイズ値の大きい部分と小さい部分が存在すると、タッチパネル内で視認性(透明感や輝度)にばらつきが起こり、視認性が不安定となることがある。
【0024】
上記観点(視認性が良好で安定なタッチパネルを得るという観点)からも、上述したように2倍成型後のヘイズ値HZは10%以下が好ましく、更に9%以下がより好ましく、特に8%以下が好ましい。
【0025】
また、上記観点(視認性が良好で安定なタッチパネルを得るという観点)から、透明導電積層体の初期(成型前)のヘイズ値(HZ)に対する、2倍成型後のヘイズ値(HZ)の変化率(HZ/HZ)は、10倍以下が好ましく、9倍以下がより好ましく、8倍以下がさらに好ましい。
【0026】
本発明の透明導電積層体の初期ヘイズ値(HZ)は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。
【0027】
透明導電積層体をタッチパネル、電子ペーパー、デジタルサイネージなどの用途に適用する場合の成型倍率は、最大でも2倍程度が一般的である。従って、透明導電積層体の2倍成型後の表面抵抗値変化VRと2倍成型後の表面抵抗値Rとを制御することにより、上記の用途に広く適用することが可能となる。
【0028】
また、成型倍率が2倍を超える成型、あるいは成型倍率が2倍を超える部分を部分的に含む成型であっても本発明の透明導電積層体を適用することができる。この場合、2倍を超える最大成型倍率での表面抵抗値変化VRが8倍以下であることが好ましい。
【0029】
一方、本発明の透明導電積層体は成型倍率を2倍以下とする成型に好ましく適用されるが、この場合において、透明導電積層体の成型倍率を1.5倍としたときの表面抵抗値変化VRは5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることがさらに好ましい。また、成型倍率を1.5倍としたときの表面抵抗値Rは、5.0×10Ω/□以下であることが好ましく、4.0×10Ω/□以下であることがより好ましく、3.0×10Ω/□以下であることがさらに好ましい。更に、成型倍率を1.5倍としたときの透明導電積層体のヘイズ値(HZ)は、9%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、7%以下がさらに好ましい。
【0030】
上述したような特性を有する透明導電積層体は、熱可塑性樹脂Aからなる基材の片面上に、少なくともCNTと熱可塑性樹脂Bを有する層が積層された透明導電積層体によって実現することができる。詳細は後述する。
[熱可塑性樹脂B]
本発明に用いられる熱可塑性樹脂Bとしては、成型時のCNTの断裂、CNTの分散剤のクラック発生を抑制するには、成型倍率に合わせた伸度を有することが好ましく、成型倍率を2倍としたとき、少なくとも1〜2,000%の伸度を有する熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。より好ましくは100〜2,000%であり、さらに好ましくは、300〜2,000%である。この場合の伸度とは、次式(1)にて求められる数値である。
伸度(%)=[(破断時の長さ−元の長さ)/元の長さ]×100 (1)
なかでも、ウレタン系樹脂、カーボネート系樹脂、エステル系樹脂、エーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂およびオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。例えば、ウレタン系樹脂の場合、通常ポリウレタン系樹脂はポリオール成分とイソシアネート成分の共重合からなるポリマーであるが、ポリオール成分が高伸度性、屈曲性などを付与し、ポリオール成分とイソシアネート成分との共重合によって形成されるウレタン結合が強靱性、耐溶剤性を付与している。従って、本発明においては、成型倍率に合わせてポリオール成分とイソシアネート成分を配合させた樹脂を用いればよい。
【0031】
ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられ、具体的にポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールが挙げられ、ポリエステルポリオールとしては、カルボン酸としてアジピン酸、フタル酸、多価アルコールとしてエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールの重縮合によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0032】
また、イソシアネート成分としては、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネートが挙げられ、具体的にはテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
上記熱可塑性樹脂BをCNT間に存在させることで、成型時のCNTの断裂、CNTの分散剤のクラック発生を抑制することができ、成型後の表面抵抗値変化Rを抑制することができる。なお、熱可塑性樹脂Bは熱可塑性樹脂Aと同一のものでも、異種のものでも用いることができる。
[CNT]
本発明において用いられるCNTは、実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであれば特に限定されず、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層CNT、多層に巻いた多層CNTいずれも適用できるが、中でもグラファイトの1枚面を2層に巻いた2層CNTが100本中に50本以上含まれているCNTであると、導電性ならびに塗布用分散液中でのCNTの分散性が極めて高くなることから好ましい。より好ましくは100本中75本以上が2層CNT、さらに好ましくは100本中80本以上が2層CNTである。なお、2層CNTが100本中に50本含まれていることを、2層CNTの割合が50%と表示することもある。また、2層CNTは酸処理などによって表面が官能基化されても導電性などの本来の機能が損なわれない点からも好ましい。
【0034】
CNTは、例えば次のように製造される。マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒を、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させ、該反応器内にメタンを鉛直方向に供給し、メタンと前記触媒を500〜1,200℃で接触させCNTを製造した後、CNTを酸化処理することにより、単層〜5層のCNTを含有するCNT集合体を得ることができる。CNT集合体は、製造した後、酸化処理を施すことにより単層〜5層の割合を、特に2層〜5層の割合を増加させることができる。酸化処理は例えば、硝酸処理する方法により行われる。硝酸はCNTに対するドーパントとして作用するため、好ましい。ドーパントとは、CNTに余剰の電子を与える、または電子を奪ってホールを形成するものであり、自由に動くことのできるキャリアを生じさせることにより、CNTの導電性を向上させるものである。硝酸処理法は本発明に好適なCNTが得られる限り、特に限定されないが、通常、140℃のオイルバス中で行われる。硝酸処理時間は特に限定されないが、5時間〜50時間の範囲であることが好ましい。
【0035】
CNTの平均直径は、特に限定はないが,1〜10nmの範囲が好ましく、1〜5nmの範囲がより好ましい。CNTの平均長さは、2〜7μmの範囲が好ましく、3〜6μmの範囲がより好ましい。
【0036】
2倍成型後の表面抵抗値変化VRが8倍以下である透明導電積層体を得るためには、平均長さが2〜7μmのCNTを用いることが好ましく、平均長さが3〜6μmのCNTを用いることがより好ましい。上記好ましい平均長さのCNTを用いることによって、成型倍率を2倍としてもCNT同士の接点数が十分に確保されるため、表面抵抗値変化Rを小さく抑えることができ、また、CNTの分散性が良好であるため塗液の安定性を高めることができる。
【0037】
分散液中のCNTの平均長さは、分散液を平滑基板上にスピンコートしたサンプル(スピンコート膜)を作製し、このスピンコート膜中のCNTをSEM等で観察することによって測定することができる。任意に選択した30個のCNTの長さを計測し、平均することによってCNTの平均長さを求めることができる。
[分散剤]
CNTの分散剤としては、界面活性剤、各種高分子材料(水溶性高分子材料)等を用いることができるが、なかでも分散性が高いイオン性高分子材料が好ましい。イオン性高分子材料としてはアニオン性高分子材料やカチオン性高分子材料、両性高分子材料等がある。CNT分散能が高く、分散性を保持できるものであればどの種類も用いることができるが、分散性、および分散保持性に優れることから、アニオン性高分子材料が好ましい。なかでも、カルボキシメチルセルロースおよびその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸の塩がCNT分散液においてCNTを効率的に分散することができるため好ましい。
【0038】
CNTに対する分散剤の質量比(分散剤の質量/CNTの質量)は、CNTの分散性を高めるという観点から、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。一方、高い導電性を得るという観点から、上限の質量比は10以下が好ましく、9以下がより好ましく、6以下がさらに好ましく、3以下が特に好ましい。
【0039】
分散剤としては、上記したようにアニオン性高分子材料(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸の塩等)が好ましく用いられるが、これらの分散剤は、透明導電積層体の成型加工時に、透明導電積層体にクラックを発生させることがある。従って、分散剤としてアニオン性高分子材料(特にカルボキシメチルセルロースおよびその塩)を用いる場合は、CNTに対する分散剤の質量比は上記範囲内で小さくすることが好ましく、具体的には6以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。
[分散媒]
本発明において用いられる分散媒は、前記分散剤を安全に溶解できる点、廃液の処理が容易である等の観点から、水が好ましい。
[CNT分散液]
本発明において用いるCNT分散液の調製方法は、特に限定されないが、例えば次のような手順で行うことができる。分散時の処理時間が短縮できることから、一旦、分散媒中にCNTを0.003〜0.15質量%の濃度範囲で含まれる分散液を調製した後、希釈することで、所定の濃度とすることが好ましい。
【0040】
調製時の分散手段としては、CNTと分散剤を分散媒中で塗装製造に慣用の混合分散機(例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)を用いて混合することが挙げられる。また、これら複数の混合分散機を組み合わせて段階的に分散を行ってもよい。中でも、振動ボールミルで予備的に分散を行った後、超音波装置を用いて分散する方法が、得られる塗布用分散液中のCNTの分散性が良好であることから好ましい。
[基材上に積層される層]
基材上に積層される層は、少なくともCNTと熱可塑性樹脂Bを含有する。成型時のCNTの断裂を有効に防ぎ、成型時のクラック発生を有効に抑制することで表面抵抗値変化VRを小さくする観点から、熱可塑性樹脂BとCNTの合計質量に対する熱可塑性樹脂Bの質量割合が10〜99.5質量%であることが好ましい。より好ましくは、20〜99.5質量%である。
【0041】
また、成型不良の発生を有効に防ぎ、容易に所望の表面抵抗値とでき、CNTの過剰積層による透過光の吸収増大を有効に防ぐ観点から、基材上に積層される層の厚みは、好ましくは1〜1,000nmであり、より好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜300nmである。
【0042】
なお、基材上に積層される層には、必要に応じて、紫外線吸収剤、表面改質剤、酸化防止剤などを含有してもよい。
【0043】
熱可塑性樹脂Aからなる基材上にCNTと熱可塑性樹脂Bを積層させる方法としては、例えば、(1)CNTと熱可塑性樹脂Bを含有する塗工液を基材上に塗布する方法(1回塗工)、(2)基材上にCNTを含有する塗工液を塗布・乾燥後、熱可塑性樹脂Bを含有する塗工液を塗布・乾燥する方法(2回塗工)などが挙げられる。
【0044】
上記(1)の方法は、あらかじめCNT分散液と熱可塑性樹脂Bを混合し、その混合液(塗工液)を基材上に積層させる方法である。上記(2)の方法は、あらかじめCNTを積層させた後に熱可塑性樹脂Bを積層させる方法である。積層方法の選択は、用いるCNT分散液と熱可塑性樹脂Bとの相溶性などを考慮した上で好ましい積層方法を選択すればよい。例えば、CNT分散溶媒が水であるのに対して、熱可塑性樹脂Bの溶媒が有機溶媒である場合は、混合するとCNTの凝集化、保管時のゲル化などを誘発することになるため、CNTと熱可塑性樹脂Bを別々に積層させるのが好ましい。逆に、用いる溶媒が同種であり、混合に問題ないのであれば、混合して一度にCNTと熱可塑性樹脂Bを積層させるのがコスト面から好ましい。
【0045】
また、一度に積層させる場合、別々に積層させる場合のいずれにおいても、積層後にCNTが脱離する可能性がある場合はさらにその上に樹脂層を設けてもよい。この場合、成型時にクラックが発生しないものであれば特に樹脂の種類は限定されない。
【0046】
また、積層方法としては公知の方法で積層させればよく、例えば、グラビアコーティング、スリットダイコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できるが、これらに限定されることはなく、CNT、熱可塑性樹脂Bの特性、使用する溶媒、基材、好ましい条件に合わせて積層方法を選択すればよい。
[基材]
本発明に用いられる基材は、熱可塑性樹脂Aからなることが好ましい。熱可塑性樹脂Aとしては、熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、透明な導電積層体を得るためには、透過率が高い熱可塑性樹脂が好ましく使用される。具体的には波長380〜780nmにおける全光線透過率が80%以上のものが好ましく、同全光線透過率が90%以上のものがより好ましい。このように透過率が高い熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、環状オレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸などを挙げることができる。これらの中でも、良好な成型加工性を有する樹脂、例えばポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、環状オレフィンが好ましく、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィンがより好ましく、環状オレフィンがさらに好ましい。
【0047】
また、取り扱い性、成型性の観点から上記基材の厚みは75〜3,000μmであることが好ましく、100〜1,000μmであることがより好ましい。
【0048】
さらに、上記基材は、必要に応じ、表面処理を施してあってもよい。表面処理は、コロナ放電、プラズマ処理、グロー放電、火炎処理等の物理的処理、あるいは樹脂層を設けてあってもよい。CNTを上記基材上に積層させるためには、純水の接触角が60°以下であることが好ましい。
【0049】
また、易接着層を形成したものであってもよく、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してあってもよい。基材の種類は上述に限定されることはなく、用途に応じて透明性や耐久性や可撓性やコスト等から最適なものを選ぶことができる。
【0050】
また、基材自体の硬度が低い場合、導電体を積層させる反対面に傷が発生する可能性がある。例えば、導電体を積層させるときの搬送中での搬送ロールとの接触、巻き取り時の巻き締まり、成型加工時の金型との接触において傷が発生する場合がある。このような傷の発生を防止する目的で、導電体を積層させる反対面に保護層として樹脂層を設けてもよい。この場合の樹脂層とは、傷の発生を抑制できる程度の硬度があればよく、特に限定されるものではない。
[成型加工]
本発明の透明導電積層体は、真空成型、圧空成型、真空成型と圧空成型を組み合わせた圧空真空成型、プレス成型、プラグ成型、ラミネート成型、インモールド成型、インサート成型などの成型方法で成型することが可能である。本発明において、成型倍率を2倍にするには、透明導電積層体の基材に用いられる熱可塑性樹脂Aの性質や、基材上に積層される層に用いられる熱可塑性樹脂Bの性質、さらにはそれぞれの厚み、成型させる形状に合わせた成型方法を選択することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。本実施例で用いた測定法を以下に示す。
[評価方法]
(1)成型
<2倍成型>
透明導電積層体上に2本の線を油性インクペン等で平行に引き、さらにこの2本の線に対して垂直な2本の線を同様にして引き、(株)キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX200で2本の平行な線の距離Lを測定した。次に、真空成型機(成光産業(株)製フォーミング300型)に透明導電積層体を設置し、セラミックヒーターで透明導電積層体に用いられている基材の熱可塑性樹脂Aのガラス転移温度付近まで透明導電積層体を加熱した。その後、成型倍率が2倍となる金型を用い、金型を透明導電積層体に押しつけ、金型側から真空で吸引することで成型を行った。成型後に(株)キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX200で2本の平行な線の距離Lを測定し、次式(2)にて成型倍率Lを算出した。
L=L/L (2)
<1.5倍成型>
成型倍率が1.5倍となる金型を用いる以外は、上記と同様にして成型した。
(2)表面抵抗値の測定
成型倍率を測定するために引いた2本の平行な線とこの2本の線に対して垂直な2本の線で囲まれる長方形の中心に4探針プローブを密着させて、4端子法により室温下で成型前の初期表面抵抗値Rを測定した。また、2倍成型後の表面抵抗値Rおよび1.5倍成型後の表面抵抗値Rは、上記(1)の方法による成型後の上記長方形の中心に4探針プローブを密着させて、4端子法により室温下でそれぞれ測定した。測定に使用した装置は、ダイアインスツルメンツ(株)製の抵抗率計MCP−T360型、使用したプローブはダイアインスツルメンツ(株)製の4探針プローブMCP−TFPである。
(3)表面抵抗値変化VR、VRの算出
上記(2)の測定で得られた初期表面抵抗値Rと、2倍成型後の表面抵抗値Rおよび1.5倍成型後の表面抵抗値Rから、次式(3)および(4)にて2倍成型後の表面抵抗値変化VRおよび1.5倍成型後の表面抵抗値変化VRを算出した。
2倍成型後の表面抵抗値変化VR=R/R (3)
1.5倍成型後の表面抵抗値変化VR=R/R (4)。
(4)ヘイズ値の測定
JIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製の濁度計「NDH−2000」を用いて、成型前の透明導電積層体の初期ヘイズ値(HZ)、2倍成型後の透明導電積層体のヘイズ値(HZ)、および1.5倍成型後の透明導電積層体のヘイズ値(HZ)をそれぞれ測定した。なお、測定に際し透明導電積層体のCNT含有層の面に光が入射するように配置した。
【0052】
2倍成型後の透明導電積層体および1.5倍成型後の透明導電積層体は、上記(1)の方法で成型したものを用いた。
(5)積層膜厚みの測定
1回塗工(実施例1〜3および比較例1〜3)における積層膜厚みは、塗工液の固形分濃度とコーター(ワイヤーバー)の公称wet塗布量から塗工液の比重を1.0g/cmとして計算により求めた。
2回塗工(実施例4、5、比較例4)における積層膜厚みは、作製した透明導電積層体の積層膜の断面観察により求めた。すなわち、電界放射型走査電子顕微鏡(日本電子(株)製 JSM−6700−F)を用いて加速電圧3.0kVにて観察した。試料断面調整はミクロトームを用いて行った。得られた断面写真から任意の5箇所を測定(拡大倍率から計算)、平均化して求めた。
[触媒調製例:マグネシアへの触媒金属塩の担持]
クエン酸アンモニウム鉄(和光純薬工業(株)製)をメタノール(関東化学(株)製)に溶解させ、酸化マグネシウム(岩谷化学工業(株)製 MJ−30)を加え、撹拌機で撹拌処理し、懸濁液を減圧下、40℃で濃縮乾固した。得られた粉末を120℃で加熱乾燥してメタノールを除去し、酸化マグネシウム粉末に金属塩が担持された触媒体を得た。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、20〜32メッシュ(0.5〜0.85mm)の範囲の粒径を回収した。上記の操作を繰り返し、以下の実験に供した。
[CNT集合体製造例:CNT集合体の合成]
反応器は内径75mm、長さは1,100mmの円筒形石英管であり、中央部に石英焼結板を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管、上部には廃ガス管を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器として3台の電気炉を具備する。また反応管内の温度を検知するために熱電対を具備する。
【0053】
触媒調製例で調製した固体触媒体を、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層を形成した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラーを用いて窒素ガスを16.5L/分で供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラーを用いてメタンガスを0.78L/分で60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際の固体触媒体の質量をメタンの流量で割った接触時間(W/F)は、169分・g/L、メタンを含むガスの線速が6.55cm/秒であった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/分通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。加熱を停止させ、室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とCNTを含有するCNT含有組成物を取り出した。
[CNT集合体の精製および酸化処理]
CNT集合体製造例で得られた触媒体とCNTを含有するCNT含有組成物を用いて4.8Nの塩酸水溶液2,000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液を濾過した後、濾取物を再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままCNT含有組成物を保存した。
【0054】
得られたウェット状態のCNT含有組成物の乾燥質量分に対して、約300倍の質量の濃硝酸(和光純薬工業(株)製、1級、Assay60〜61質量%)を添加した。その後、約140℃のオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、CNT含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のCNT集合体を得た。
[CNT分散液の調製]
[CNT分散液(1)]
得られたウェット状態のCNT集合体、6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、“セロゲン”(登録商標)5A(質量平均分子量:8万))水溶液(分散剤/CNT質量比=2.5)、イオン交換水、ジルコニアビーズ(東レ(株)製、“トレセラム”(登録商標)、ビーズサイズ:0.8mm)を容器に加え、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)製)を用いてpH10に調整した。この容器を振動ボールミル((株)入江商会社製、VS−1、振動数:1,800cpm(60Hz))を用いて2時間振盪させ、CNTペーストを調製した。
【0055】
次にこのCNTペーストをCNTの濃度が0.15質量%となるようにイオン交換水で希釈し、その希釈液10gに対して再度28質量%アンモニア水溶液でpH10に調整した。その水溶液を超音波ホモジナイザー(家田貿易(株)製、VCX−130)の出力を20Wとし、1.5分間(0.6kW・分/g)、氷冷下分散処理した。その際、分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機((株)トミー精工、MX−300)にて10,000G、15分間遠心処理し、CNT分散液を得た。その後、水を添加して終濃度でCNT集合体の濃度が0.06質量%となるように調製してCNT分散液とした。CNTの平均長さは4.0μmであった。
[CNT分散液(2)]
得られたウェット状態のCNT集合体、6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、“セロゲン”(登録商標)5A(質量平均分子量:8万))水溶液(分散剤/CNT質量比=1.2)、イオン交換水、ジルコニアビーズ(東レ(株)製、“トレセラム”(登録商標)、ビーズサイズ:0.8mm)を容器に加え、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)製)を用いてpH10に調整した。この容器を振動ボールミル((株)入江商会社製、VS−1、振動数:1,800cpm(60Hz))を用いて2時間振盪させ、CNTペーストを調製した。
【0056】
次にこのCNTペーストをCNTの濃度が0.15質量%となるようにイオン交換水で希釈し、その希釈液10gに対して再度28質量%アンモニア水溶液でpH10に調整した。その水溶液を超音波ホモジナイザー(家田貿易(株)製、VCX−130)の出力を20Wとし、1.5分間(0.6kW・分/g)、氷冷下分散処理した。その際、分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機((株)トミー精工、MX−300)にて10,000G、15分間遠心処理し、CNT分散液を得た。その後、水を添加して終濃度でCNT集合体の濃度が0.06質量%となるように調製してCNT分散液とした。CNTの平均長さは4.0μmであった。
[コロナ処理]
春日電機(株)製コロナ表面改質評価装置TEC−4AXを用いて、基材をアース板に設置し、コロナ処理出力100W、セラミック電極との放電ギャップ1mm、電極移動速度6m/分、処理回数5回の条件にてコロナ処理を行った。
(実施例1)
上記CNT分散液(1)とウレタン樹脂A(第一工業製薬(株)製、“エラストロン”(登録商標)E−37)を、ウレタン樹脂AとCNTの合計に対するウレタン樹脂Aの割合が30質量%になるように混合し、塗工液を調製した。この塗液を、表面を上記の方法でコロナ処理した環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン(株)製、“ゼオノアフィルム”(登録商標)ZF14−100)の表面にワイヤーバーを用いて乾燥厚みが10nmとなるように塗布し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥し、本発明の透明導電積層体を得た。
【0057】
次に得られた透明導電積層体について、上記成型方法にて成型加工を行い、成型体を得た。
(実施例2)
上記CNT分散液(1)とウレタン樹脂B(三洋化成工業(株)製、“パーマリン”(登録商標)UA−310)を、ウレタン樹脂BとCNTの合計に対するウレタン樹脂Bの割合が50質量%になるように混合し、塗工液を調製した。この塗液を、表面を上記の方法でコロナ処理したポリメチルメタクリレート樹脂フィルム(住友化学(株)製、“テクノロイ”(登録商標)S001G)の表面にワイヤーバーを用いて乾燥厚みが15nmとなるように塗布し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥し、本発明の透明導電積層体を得た。
【0058】
次に得られた透明導電積層体について、上記成型方法にて成型加工を行い、成型体を得た。
(実施例3)
上記CNT分散剤(2)を用いた以外は実施例1と同様にして得られた透明導電積層体について、上記成型方法にて成型加工を行い、成型体を得た。
(実施例4)
上記CNT分散液(1)を、表面を上記の方法でコロナ処理した環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン(株)製、“ゼオノアフィルム”(登録商標)ZF14−100)の表面にワイヤーバーを用いて塗布し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥した。さらにその上に、ウレタン樹脂C(第一工業製薬(株)製、“スーパーフレックス”(登録商標)150)を固形分濃度が5質量%になるようにメチルエチルケトンで希釈した塗工液を、ワイヤーバーを用いて塗布し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥し、本発明の透明導電積層体を得た。それぞれの塗布層の厚みは、CNTとウレタン樹脂Cとの合計質量に対するウレタン樹脂Cの割合が90質量%になるように設定した。
【0059】
次に得られた透明導電積層体について、上記成型方法にて成型加工を行い、成型体を得た。
(実施例5)
上記CNT分散剤(2)を用いた以外は実施例4と同様にして得られた透明導電積層体について、上記成型方法にて成型加工を行い、成型体を得た。
(比較例1)
上記CNT分散液(1)を、表面を上記の方法でコロナ処理した環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン(株)製、“ゼオノアフィルム”(登録商標)ZF14−100)の表面にワイヤーバーを用いて乾燥厚みが5nmとなるように塗布し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥し、透明導電積層体を得た。
【0060】
次に得られた透明導電積層体について、上記成型方法にて成型加工を行い、成型体を得た。
(比較例2)
上記CNT分散液(1)とウレタン樹脂A(第一工業製薬(株)製、“エラストロン”(登録商標)E−37)を、ウレタン樹脂AとCNTの合計に対するウレタン樹脂Aの割合が5質量%になるように混合し、塗工液を調製した。この塗液を、表面を上記の方法でコロナ処理したポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製、“ルミラー”(登録商標)U46)の表面にワイヤーバーを用いて乾燥厚みが15nmとなるように塗布し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥し、透明導電積層体を得た。
【0061】
次に得られた透明導電積層体について、上記成型方法にて上記成型方法にて成型加工を行い、成型体を得た。
(比較例3)
上記CNT分散液(1)とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下DPHA)(共栄社化学(株)製、ライトアクリレートDPE−6A)を、DPHAとCNTの合計に対するDPHAの割合が90質量%になるように混合し、塗工液を調製した。この塗液を、表面を上記の方法でコロナ処理した環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン(株)製、“ゼオノアフィルム”(登録商標)ZF14−100)の表面にワイヤーバーを用いて乾燥厚みが100nmとなるように塗布し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥し、UV照射機にて硬化処理を行い、透明導電積層体を得た。
【0062】
次に得られた透明導電積層体について、上記成型方法にて成型加工を行い、成型体を得た。
(比較例4)
上記CNT分散液(2)を、表面を上記の方法でコロナ処理した環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン(株)製、“ゼオノアフィルム”(登録商標)ZF14−188)の表面にワイヤーバーを用いて塗布し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥した。さらにその上に、DPHAを固形分濃度が2質量%になるようにメチルエチルケトンで希釈した塗工液をワイヤーバーを用いて塗布し、含有される溶媒が揮発するまで乾燥し、透明導電積層体を得た。それぞれの塗布層の厚みは、CNTとDPHAとの合計質量に対するDPHAの割合が90質量%になるように設定した。
【0063】
次に得られた透明導電積層体について、上記成型方法にて成型加工を行い、成型体を得た。
[評価]
上記の実施例および比較例で作製した透明導電積層体および成型体について、成型前の初期表面抵抗値R、成型前の初期ヘイズ値HZ、2倍成型後の表面抵抗値R、1.5倍成型後の表面抵抗値R、2倍成型後の表面抵抗値変化VR、1.5倍成型後の表面抵抗値VR、2倍成型後のヘイズ値HZ、1.5倍成型後のヘイズ値HZをそれぞれ測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
ここで、表1中、塗工方法の項において、「1回」は1回塗工を、「2回」は2回塗工を意味する。
【0067】
表1および表2から、本発明の実施例1〜5はいずれも、基材が熱可塑性樹脂であり、基材上に積層された層に熱可塑性樹脂Bを含んでいるため、成型後の表面抵抗値変化Rが低く抑えられていた。
【0068】
一方、比較例1は、基材上に積層された層が熱可塑性樹脂Bを含まずCNTと分散剤のみで形成されているため、成型後にCNTの断裂、クラックの発生により成型後の表面抵抗値変化VRが大きくなっていた。また、比較例2では、基材上に積層された層に熱可塑性樹脂Bを含むが含有量が比較的少量であるため、成型後の表面抵抗値変化VRが大きくなっていた。さらに比較例3と比較例4では、熱可塑性樹脂Bに代えて伸度の低いDPHAを使用しているため、成型性が悪く、2倍成型後の表面抵抗値Rが上記測定方法では測定できなくなっていた。
【符号の説明】
【0069】
1:基材
2:カーボンナノチューブ
3:熱可塑性樹脂B
4:基材上に積層される層
【図1】
【国際調査報告】