(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050542
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】電池用包装材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20160725BHJP
【FI】
   !H01M2/02 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
【出願番号】2014538355
(21)【国際出願番号】JP2013074410
(22)【国際出願日】20130910
(31)【優先権主張番号】2012217967
(32)【優先日】20120928
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100112896
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏記
(72)【発明者】
【氏名】橋本 洋平
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】山下 力也
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】横田 一彦
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小尻 哲也
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD01
5H011DD14
5H011KK04
5H011KK07
(57)【要約】
【課題】本発明は、成形時にクラックやピンホール等が生じ難く、優れた成形性を備える電池用包装材料を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなる電池用包装材料において、前記接着層が、下記(1)〜(3)の物性の内、少なくとも2つを満たすことによって、成形時にクラックやピンホール等が生じ難く、格段に優れた成形性を備えさせ得る。
(1)ナノインデンターを用いて、積層体断面から接着層に対して圧子を5μm押し込んだ際の硬度が20〜115MPaである。
(2)接着層に対して1Hzの振動数での動的粘弾性測定を行った時に得られる損失弾性率のピーク温度が10〜60℃である。
(3)赤外吸収スペクトル法により測定される2800〜3000cm-1に存在するピーク面積の積分値をIM、3100〜3500cm-1に存在するピーク面積の積分値をIHとした場合に、IH/IMが0.15〜1.5である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなり、前記接着層が、下記(1)〜(3)の物性の少なくとも2つ満たすことを特徴とする、電池用包装材料:
(1)ナノインデンターを用いて、積層体断面から接着層に対して圧子を5μm押し込んだ際の硬度が20〜115MPaである。
(2)接着層に対して1Hzの振動数での動的粘弾性測定を行った時に得られる損失弾性率のピーク温度が10〜60℃である。
(3)赤外吸収スペクトル法により測定される2800〜3000cm-1に存在するピーク面積の積分値をIM、3100〜3500cm-1に存在するピーク面積の積分値をIHとした場合に、IH/IMが0.15〜1.5である。
【請求項2】
前記接着層が、前記(1)〜(3)の物性の全てを満たす、請求項1に記載の電池用包装材料。
【請求項3】
前記接着層が、前記硬度が22〜102MPa、前記損失弾性率のピーク温度が13〜56℃、且つ前記IH/IMが0.16〜1.42を満たす、請求項1又は2に記載の電池用包装材料。
【請求項4】
前記接着層が、ポリオール化合物とイソシアネート系化合物を含むウレタン型接着剤により形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項5】
前記金属層が、アルミニウム箔により形成されてなる、請求項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項6】
前記シーラント層は、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、及びカルボン酸変性環状ポリオレフィンからなる群から選択された少なくとも1種により形成されてなる、請求項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項7】
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料内に収容されている、電池。
【請求項8】
電池の製造方法であって、
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を電池用包装材料で収容する工程を含み、
前記電池用包装材料は、少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなり、
前記接着層が、下記(1)〜(3)の物性の少なくとも2つ満たす、電池の製造方法:
(1)ナノインデンターを用いて、積層体断面から接着層に対して圧子を5μm押し込んだ際の硬度が20〜115MPaである。
(2)接着層に対して1Hzの振動数での動的粘弾性測定を行った時に得られる損失弾性率のピーク温度が10〜60℃である。
(3)赤外吸収スペクトル法により測定される2800〜3000cm-1に存在するピーク面積の積分値をIM、3100〜3500cm-1に存在するピーク面積の積分値をIHとした場合に、IH/IMが0.15〜1.5である。
【請求項9】
少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有し、前記接着層が、下記(1)〜(3)の物性の少なくとも2つ満たす積層体の、電池用包装材料としての使用:
(1)ナノインデンターを用いて、積層体断面から接着層に対して圧子を5μm押し込んだ際の硬度が20〜115MPaである。
(2)接着層に対して1Hzの振動数での動的粘弾性測定を行った時に得られる損失弾性率のピーク温度が10〜60℃である。
(3)赤外吸収スペクトル法により測定される2800〜3000cm-1に存在するピーク面積の積分値をIM、3100〜3500cm-1に存在するピーク面積の積分値をIHとした場合に、IH/IMが0.15〜1.5である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形時にクラックやピンホール等が生じ難く、優れた成形性を備える電池用包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの電池が開発されているが、あらゆる電池において、電極や電解質等の電池素子を封止するために包装材料が不可欠な部材になっている。従来、電池用包装として金属製の包装材料が多用されていた。
【0003】
一方、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、電池には、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の電池用包装材料では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
【0004】
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材/金属層/シーラント層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている。しかしながら、このようなフィルム状の包装材料は、金属製の包装材料に比べて薄く、成形時にクラックやピンホール等が生じ易いという欠点がある。電池用包装材料にクラックやピンホール等が生じた場合には、電解液が金属層にまで浸透して金属析出物を形成し、その結果、短絡を生じさせることになりかねないため、フィルム状の電池用包装材料には、成形時にクラックやピンホール等が生じ難い特性、即ち優れた成形性を備えさ
せることは不可欠となっている。
【0005】
従来、フィルム状の電池用包装材料の成形性を高めるために、金属層を接着させるための接着層に着目した検討が種々行われている。例えば、特許文献1には、耐熱性樹脂フィルムからなる外層、アルミニウム箔、及び熱可塑性樹脂フィルムからなる内層を備えた電池ケース用包装材料において、アルミニウム箔と内層とをポリオレフィンポリオールと多官能イソシアネート硬化剤を含む接着剤組成物を用いて接着させることにより、当該電池ケース用包装材料に優れた成形性を備え得ることが開示されている。また、特許文献2には、樹脂フィルムからなる内層、第1接着剤層、金属層、第2接着剤層、及び樹脂フィルムからなる外層を備えた積層型包装材料において、前記第1接着剤層及び第2接着剤層の少なくとも一方を、側鎖に活性水素基を有する樹脂、多官能イソシアネート類、及び多官能アミン化合物を含む接着剤組成物で形成することにより、より深い成形に対して信頼性が高い包装材料が得られることが開示されている。
しかしながら、どのような物性を満たす接着層を設けると、電池用包装材料に優れた成形性を備えさせ得るかについては明らかにされておらず、特許文献1及び2に示す技術では、近年益々高まっている成形性の向上に対する要望を十分に満足できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−63685号公報
【特許文献2】特開2008−287971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池用包装材料の成形性を考慮した場合、金属層を接着させる接着層は、硬くなり過ぎると、成形時に変形する際にクラックが入りやすくなり、また柔らかくなり過ぎると、簡単に変形して局所的な力が加わり破れやすくなる。そのため、電池用包装材料に優れた成形性を備えさせるには、金属層を接着させる接着層に対して、柔軟性と硬直性という相反する特性をバランスよく備えさせることが重要と考えられるが、それを実現する具体的物性については明らかにされていない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、成形時にクラックやピンホール等が生じ難く、優れた成形性を備える電池用包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体からなる電池用包装材料において、前記接着層が、下記(1)〜(3)の物性の内、少なくとも2つを満たすことによって、成形時にクラックやピンホール等が生じ難く、格段に優れた成形性を備えさせ得ることを見出した。
(1)ナノインデンターを用いて、積層体断面から接着層に対して圧子を5μm押し込んだ際の硬度が20〜115MPaである。
(2)接着層に対して1Hzの振動数での動的粘弾性測定を行った時に得られる損失弾性率のピーク温度が10〜60℃である。
(3)赤外吸収スペクトル法により測定される2800〜3000cm-1に存在するピーク面積の積分値をIM、3100〜3500cm-1に存在するピーク面積の積分値をIHとした場合に、IH/IMが0.15〜1.5である。
【0010】
本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本発明は、下記に掲げる態様の電池用包装材料及び電池を提供する。
項1. 少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなり、前記接着層が、下記(1)〜(3)の物性の少なくとも2つ満たすことを特徴とする、電池用包装材料:
(1)ナノインデンターを用いて、積層体断面から接着層に対して圧子を5μm押し込んだ際の硬度が20〜115MPaである。
(2)接着層に対して1Hzの振動数での動的粘弾性測定を行った時に得られる損失弾性率のピーク温度が10〜60℃である。
(3)赤外吸収スペクトル法により測定される2800〜3000cm-1に存在するピーク面積の積分値をIM、3100〜3500cm-1に存在するピーク面積の積分値をIHとした場合に、IH/IMが0.15〜1.5である。
項2. 前記接着層が、前記(1)〜(3)の物性の全てを満たす、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記接着層が、前記硬度が22〜102MPa、前記損失弾性率のピーク温度が13〜56℃、且つ前記IH/IMが0.16〜1.42を満たす、項1又は2に記載の電池用包装材料。
項4. 前記接着層が、ポリオール化合物(主剤)とイソシアネート系化合物(硬化剤)を含むウレタン型接着剤により形成されている、項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
項5. 前記金属層が、アルミニウム箔により形成されてなる、項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
項6. 前記シーラント層は、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、及びカルボン酸変性環状ポリオレフィンからなる群から選択された少なくとも1種により形成されてなる、項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
項7. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料内に収容されている、電池。
項8. 電池の製造方法であって、
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を電池用包装材料で収容する工程を含み、
前記電池用包装材料は、少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなり、
前記接着層が、下記(1)〜(3)の物性の少なくとも2つ満たす、電池の製造方法:
(1)ナノインデンターを用いて、積層体断面から接着層に対して圧子を5μm押し込んだ際の硬度が20〜115MPaである。
(2)接着層に対して1Hzの振動数での動的粘弾性測定を行った時に得られる損失弾性率のピーク温度が10〜60℃である。
(3)赤外吸収スペクトル法により測定される2800〜3000cm-1に存在するピーク面積の積分値をIM、3100〜3500cm-1に存在するピーク面積の積分値をIHとした場合に、IH/IMが0.15〜1.5である。
項9. 少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有し、前記接着層が、下記(1)〜(3)の物性の少なくとも2つ満たす積層体の、電池用包装材料としての使用:
(1)ナノインデンターを用いて、積層体断面から接着層に対して圧子を5μm押し込んだ際の硬度が20〜115MPaである。
(2)接着層に対して1Hzの振動数での動的粘弾性測定を行った時に得られる損失弾性率のピーク温度が10〜60℃である。
(3)赤外吸収スペクトル法により測定される2800〜3000cm-1に存在するピーク面積の積分値をIM、3100〜3500cm-1に存在するピーク面積の積分値をIHとした場合に、IH/IMが0.15〜1.5である。
項10. 少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなり、前記接着層が、下記(1)〜(3)の物性の少なくとも2つ満たす包装材料の、電池の製造のための使用:
(1)ナノインデンターを用いて、積層体断面から接着層に対して圧子を5μm押し込んだ際の硬度が20〜115MPaである。
(2)接着層に対して1Hzの振動数での動的粘弾性測定を行った時に得られる損失弾性率のピーク温度が10〜60℃である。
(3)赤外吸収スペクトル法により測定される2800〜3000cm-1に存在するピーク面積の積分値をIM、3100〜3500cm-1に存在するピーク面積の積分値をIHとした場合に、IH/IMが0.15〜1.5である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体において、当該接着層が、後述する物性1〜3の中で少なくとも2つの物性を一体として充足させることにより、優れた成形性を備えることができ、更には成形時にクラックやピンホール等が生じるのを効果的に抑制でき、生産性を向上させることができる。また、本発明の電池用包装材料では、積層体中の金属層を接着させる接着層の物性値を特定範囲に設定することにより優れた成形性を実現しているため、将来開発される新たな組成の接着剤であっても、所定の物性値を備える限り、本発明の電池用包装材料に適用できるので、汎用性が高く、今後の電池用包装材料の改良技術に大きく貢献し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。
【図2】本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなり、前記接着層が、特定の物性を有することを特徴とする。以下、本発明の電池用包装材料について詳述する。
【0014】
1.電池用包装材料の積層構造
電池用包装材料は、図1及び2に示すように、少なくとも、基材層1、接着層2、金属層3、及びシーラント層4が順次積層された積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、基材層1が最外層になり、シーラント層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層4同士が熱溶着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
【0015】
また、本発明の電池用包装材料には、金属層3とシーラント層4との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層5が設けられていてもよい。
【0016】
2.電池用包装材料を形成する各層の組成
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は最外層を形成する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ナイロンが挙げられる。
【0017】
基材層1は、1層の樹脂層から形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために、2層以上の樹脂層で形成されていてもよい。基材層を2層以上の樹脂層で形成する場合、当該基材層の具体例として、ポリエステルからなる樹脂層とナイロンからなる樹脂層を積層させた多層構造、好ましくは、2軸延伸ポリエステルからなる樹脂層と2軸延伸ナイロンからなる樹脂層を積層させた多層構造が挙げられる。基材層を多層構造にする場合、2以上の樹脂層は、接着剤を介して積層させればよく、使用される接着剤の種類や量等については、後述する接着層5の場合と同様である。図2には、2基材層が2層の樹脂層(基材層1aと1b)で形成されている本発明の電池用包装材料の断面図を示す。
【0018】
基材層1の厚さについては、例えば、10〜50μm、好ましくは15〜30μmが挙げられる。
【0019】
[接着層2]
本発明の電池用包装材料において、接着層2は、基材層1と金属層3との間に、これらの層を接着させるために設けられる層であり、本発明の電池用包装材料は、当該接着層2が下記(1)〜(3)の中の少なくとも2つの物性を充足することによって、優れた成形性を備えることが可能になる。
【0020】
(1)物性1:ナノインデンテーション法による硬度
当該物性1は、ナノインデンターを用いて、積層体断面から接着層に対して圧子を5μm押し込んだ際の硬度が20〜115MPaである物性を指す。当該押し込み深さは、具体的には、ナノインデンターを用いて、先端形状がダイアモンドチップから成る正三角錐(バーコビッチ型)の圧子を、積層体断面部分の接着層に、押し込み深さ5μmまで押し込み、その時の圧子が押し込まれた際の硬度(ナノインデンタハードネス)を測定することにより求められる。
本発明の電池用包装材料に一層優れた成形性を備えさせるという観点から、接着層2が備える物性1として、前記条件での硬度が、好ましくは22〜113MPa、更に好ましくは22〜110MPaが挙げられる。
【0021】
(2)物性2:動的粘弾性測定による損失弾性率のピーク温度
当該物性2は、接着層に対して1Hzの振動数での動的粘弾性測定を行った時に得られる損失弾性率(E'')のピーク温度が10〜60℃である物性を指す。当該ピーク温度は、具体的には、基材上に接着層を積層させた積層体を10mm×5mmにカットしたものをサンプルとして、動的粘弾性測定装置を用いて、振動数1Hzで、−50℃〜200℃まで昇温速度1℃/分で昇温させて、損失弾性率を測定し、損失弾性率がピーク値になった際の温度として求められる。
本発明の電池用包装材料に一層優れた成形性を備えさせるという観点から、接着層2が備える物性2として、前記ピーク温度が、好ましくは10〜58℃、更に好ましくは18〜50℃が挙げられる。
【0022】
(3)物性3:赤外吸収スペクトル法による水素結合のピークとメチレンのピークの比率
当該物性3は、赤外吸収スペクトル法により測定される2800〜3000cm-1に存在するピーク面積の積分値をIM、3100〜3500cm-1に存在するピーク面積の積分値をIHとした場合に、IH/IMが0.15〜1.5である物性を指す。当該IH/IMは、具体的には、基材上に接着層を積層させた積層体をサンプルとして、接着層の赤外吸収スペクトルを測定することによりIMとIHを求め、その比(IH/IM)を算出することにより求められる。当該IHは、水素結合のピーク面積の積分値に相当し、IMは、メチレンのピーク面積の積分値に相当している。
本発明の電池用包装材料に一層優れた成形性を備えさせるという観点から、接着層2が備える物性3として、前記IH/IMが、好ましくは0.12〜145、更に好ましくは0.18〜1.00が挙げられる。
【0023】
本発明の電池用包装材料において、接着層2は、前記物性1〜3の内、少なくとも2つを満たすものであればよい。電池用包装材料に一層優れた成形性を備えさせるという観点から、接着層2が備える物性として、好ましくは、少なくとも前記物性1及び3を満たすもの又は前記物性2及び3を満たすものが挙げられ、更に好ましくは前記物性1〜3の全てを満たすものが挙げられる。とりわけ、接着層2は、前記硬度を22〜102MPa、前記損失弾性率のピーク温度を13〜56℃、且つ前記IH/IMを0.16〜1.42を充足する場合には、成形性を格段に向上させることはできる。
【0024】
接着層2の形成に使用される接着剤としては、前記物性を満たすものであることを限度として、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着層2の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
【0025】
接着層2の形成に使用される接着剤としては、前記物性を満たす限り、その種類については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
接着層2に前記物性を備えさせるには、ポリマー鎖を構成するモノマーの構造、隣接するポリマー鎖同士の分子間相互作用、3次元架橋構造等の、使用する接着剤の特性を適宜調節すればよいが、接着層2の形成に使用される接着剤の好適な例について以下説明する。
【0027】
前記物性を満たす接着層2の形成に使用可能な接着剤の好適な例として、ポリオール化合物(主剤)とイソシアネート系化合物(硬化剤)を含むウレタン型接着剤が挙げられる。
【0028】
前記ウレタン型接着剤に使用されるポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物の水酸基当量及び重量平均分子量としては、組み合わされるイソシアネート系化合物との関係で最終的に前記物性を満たす限り特に制限されないが、例えば、水酸基当量(個/mol)として0.5〜2.5、好ましくは0.7〜1.9が挙げられ、重量平均分子量として500〜120000、好ましくは1000〜80000が挙げられる。
【0029】
これらのポリオール化合物の中でも、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールが挙げられる。これらのポリオール化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
また、前記ウレタン型接着剤に使用されるイソシアネート系化合物としては、例えば、ポリイソシアネート、そのアダクト体、そのイソシアヌレート変性体、そのカルボジイミド変性体、そのアロハネート変性体、そのビュレット変性体等が挙げられる。前記ポリイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネート;トラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。前記アダクト体としては、具体的には、前記ポリイソシアネートに、トリメチロールプロパン、グリコール等を付加したものが挙げられる。これらのイソシアネート系化合物の中でも、好ましくはポリイソシアネート及びそのアダクト体;更に好ましくは芳香族ジイソシアネート、そのアダクト体、及びそのイソシアヌレート変性体;より好ましくは、MDI、ポリメリックMDI、TDI、これらのアダクト体、これらのイソシアヌレート変性体;特に好ましくはMDIのアダクト体、TDIのアダクト体、ポリメリックMDI、TDIのイソシアヌレート変性体が挙げられる。これらのイソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
前記物性満たす接着層2の形成に使用される接着剤として、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリエーテルポリウレタンポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種のポリオール化合物と、芳香族ジイソシアネート、そのアダクト体、及びそのイソシアヌレート変性体よりなる群から選択される少なくとも1種のイソシアネート系化合物を含むウレタン型接着剤;更に好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリエーテルポリウレタンポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種のポリオール化合物と、MDI、ポリメリックMDI、TDI、これらのアダクト体、及びこれらのイソシアヌレート変性体よりなる群から選択される少なくとも1種のイソシアネート系化合物を含むウレタン型接着剤が挙げられる。
【0032】
また、ポリオール化合物(主剤)とイソシアネート系化合物(硬化剤)を含む接着剤において、これらの比率については、接着層2に備えさせるべき前記物性に応じて適宜設定されるが、例えば、ポリオール化合物の水酸基1モル当たり、イソシアネート系化合物のイソシアネート基の割合が、1〜30モル、好ましくは3〜20モルが挙げられる。
【0033】
接着層2の厚さについては、例えば、1〜10μm、好ましくは3〜8μmが挙げられる。
【0034】
[金属層3]
本発明の電池用包装材料において、金属層3は、包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を形成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属箔が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好適に使用される。包装材料の製造時にしわやピンホールを防止するために、本発明において金属層3として、軟質アルミニウム、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)又は(JIS A8079P−O)等を用いることが好ましい。
【0035】
金属層3の厚さについては、例えば、10〜200μm、好ましくは20〜100μmが挙げられる。
【0036】
また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。
【0037】
【化1】
【0038】
【化2】
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
一般式(1)〜(4)中、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、同一又は異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1、R2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1、R2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。ことができる。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、及び、ドロキシアルキル基のいずれかであることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、約500〜約100万、好ましくは約1000〜約2万が挙げられる。
【0042】
また、金属層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層3の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、前記耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
これらの化成処理は、1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。更に、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。これらの中でも、好ましくはクロム酸クロメート処理、更に好ましくはクロム酸化合物、リン酸化合物、及び前記アミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理が挙げられる。
【0044】
化成処理において金属層3の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えばクロム酸化合物、リン酸化合物、及び前記アミノ化フェノール重合体を組み合わせてクロメート処理を行う場合であれば、金属層の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、及び前記アミノ化フェノール重合体が約1〜約200mg、好ましくは約5.0〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
【0045】
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等によって、金属層の表面に塗布した後に、金属層の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、金属層に化成処理を施す前に、予め金属層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法等による脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属層の表面の化成処理を一層効率的に行うことが可能になる。
【0046】
[接着層5]
本発明の電池用包装材料において、接着層5は、金属層3とシーラント層4を強固に接着させために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
【0047】
接着層5は、金属層3とシーラント層4とを接着可能である接着剤または樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、溶剤可溶型、溶剤分散型、無溶剤型の形態であってもよい。また、接着層5として、酸変性ポリオレフィンからなる樹脂を溶融状態で押出し金属箔3とシーラント層4とを積層してもよい。更に、接着層5の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
【0048】
接着層5の形成に使用できる接着剤成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
接着層5の厚さについては、例えば、1〜40μm、好ましくは2〜30μmが挙げられる。
【0050】
[シーラント層4]
本発明の電池用包装材料において、シーラント層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
【0051】
シーラント層4に使用される樹脂成分については、熱溶着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
【0052】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0053】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0054】
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸で変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0055】
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β―不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β―不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
【0056】
これらの樹脂成分の中でも、好ましくは結晶性又は非晶性のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、及びこれらのブレンドポリマー;更に好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとノルボルネンの共重合体、及びこれらの中の2種以上のブレンドポリマーが挙げられる。
【0057】
シーラント層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、シーラント層は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上形成されていてもよい。
【0058】
また、シーラント層4の厚みとしては、適宜選定することができるが、2〜2000μm、好ましくは5〜1000μm、さらに好ましくは10〜500μmが挙げられる。
【0059】
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されないが、例えば、以下の方法が例示される。
【0060】
まず、基材層1、接着層2、金属層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材1上又は必要に応じて表面が化成処理された金属層3に接着層2の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層3又は基材1を積層させて接着層2を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
【0061】
次いで、積層体Aの金属層3上に、シーラント層4を積層させる。金属層3上にシーラント層4を直接積層させる場合には、積層体Aの金属層3上に、シーラント層4を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、金属層3とシーラント層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aの金属層3上に、接着層5及びシーラント層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着層5とシーラント層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aの金属層3上に熱ラミネーション法により積層する方法、(3)積層体Aの金属層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜したシーラント層4をサーマルラミネーション法により積層する方法、(4)積層体Aの金属層3と、予めシート状に製膜したシーラント層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aとシーラント層4を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。
【0062】
上記のようにして、基材層1/接着層2/必要に応じて表面が化成処理された金属層3/必要に応じて設けられる接着層5/シーラント層4からなる積層体が形成されるが、接着層2及び必要に応じて設けられる接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜250℃で1〜10時間が挙げられる。
【0063】
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
【0064】
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
【0065】
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
【0066】
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0068】
[実施例1−32及び比較例1−32]
下記組成の層構造を有する積層体からなる電池用包装材料を製造した。
基材層1:2軸延伸ポリアミド(ナイロン6、厚さ15μm)
接着層2:表1及び2に示すポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物の組み合わせからなる2液型ウレタン接着剤(厚さ4μm)
金属層3:両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚さ35μm)
接着層5:酸変性ポリプロピレン(厚さ20μm)
シーラント層4:未延伸ポリプロピレン(厚さ15μm)
なお、表1及び2に示す2液型ウレタン接着剤に使用したポリオール化合物と芳香族イソシアネートはいずれも市販品であり、ポリオール化合物は東洋紡績株式会社製バイロンシリーズ(UR4410、800等)、三井化学株式会社製タケラックシリーズ(A1151等)、住化バイエルウレタン株式会社製デスモフェン(400等)を使用し、芳香族イソシアネートは三井化学株式会社製タケネートシリーズ(A3等)、日本ポリウレタン株式会社製コロネート(L等)、住化バイエルウレタン株式会社製デスモジュール(44V20等)を使用した。なお、表1及び2に示す各ポリオール化合物は、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、又はポリエーテルポリウレタンポリオールである。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
なお、金属層3として使用したアルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。
【0072】
基材層1上に、接着層2と金属層3をドライラミネーション法により積層させた後に、金属層3上にシーラント層5をドライラミネーション法により積層させた。具体的には、基材層1上に、接着層2を塗布して、金属層3と加圧加熱貼合した後、60℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層1/接着層2/金属層3の積層体を調製した。次いで、当該積層体の金属層3側に接着層5を形成する酸変性ポリプロピレンとシーラント層4を形成するポリプロピレンを溶融状態で共押し出しすることにより、基材層1/接着層2/金属層3/接着層5/シーラント層4が順に積層された積層体からなる電池用包装材料を得た。
【0073】
[物性評価]
(1)ナノインデンテーション法による硬度
ナノインデンター(HYSITRON社製 TriboIndenter TI950)を用いて、先端形状がダイアモンドチップから成る正三角錐(バーコビッチ型)の圧子(HYSITRON製 TI-0037 Cube Corner 90° Total included angle、型番:AA11041012)を、上記で得られた各電池用包装材料の接着層2に、押し込み深さ5μmまで押し込み、その時の圧子が押し込まれた際の硬度を測定した。
【0074】
(2)動的粘弾性測定による損失弾性率のピーク温度
各実施例及び比較例で採用した基材層1及び接着層2を用いて、基材層1/接着層2からなる積層体を調製した。具体的には、各実施例及び比較例と同じ基材層1の上に、接着層2を塗布し、その後、60℃で24時間のエージング処理を行うことにより、基材層1/接着層2からなる積層体を得た。得られた積層体は、金属層3、接着層4、及びシーラント層5が積層されていないこと以外は、各実施例及び比較例と同じ構造である。
得られた積層体を10mm×5mmにカットしたものをサンプルとして、動的粘弾性測定装置(レオメトリックシステムアナライザー 型式RSAIII、ティー・エー・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、振動数1Hzで、−50℃〜200℃まで昇温速度1℃/分で昇温させて、損失弾性率(E'')のピーク温度を求めた。
【0075】
(3)赤外吸収スペクトル法による水素結合のピークとメチレンのピークの比率
各実施例及び比較例で採用した基材層1及び接着層2を用いて、基材層1/接着層2からなる積層体を調製した。具体的には、各実施例及び比較例と同じ基材層1の上に、接着層2を塗布し、その後、60℃で24時間のエージング処理を行うことにより、基材層1/接着層2からなる積層体を得た。得られた積層体は、金属層3、接着層4、及びシーラント層5が積層されていないこと以外は、各実施例及び比較例と同じ構造である。
得られた積層体をサンプルとして、赤外吸収スペクトル測定装置(NICOLET 380、サーモ サイエンティフィック社製)を用いて、接着層2の赤外吸収スペクトルを測定することにより、2800〜3000cm-1に存在するピーク面積の積分値をIM、3100〜3500cm-1に存在するピーク面積の積分値をIHとして求め、比(IH/IM)を算出した。
【0076】
[成形性の評価]
上記で得られた各電池用包装材料を裁断して、120×80mmの短冊片を作製し、これを試験サンプルとした。30×50mmの矩形状の雄型とこの雄型とのクリアランスが0.5mmの雌型からなるストレート金型を用い、雄型側に熱接着性樹脂層側が位置するように雌型上に上記試験サンプルを載置し、成形深さ6.5mmとなるように上記試験サンプルを0.1MPaの押え圧(面圧)で押えて、冷間成形(引き込み1段成形)した。成形された各試験サンプルにおける金属層のピンホール及びクラックの発生の有無を確認し、ピンホール及びクラックの発生率(%)を算出した。ピンホール及びクラックの発生率は、上記成形を行った後に1カ所でもピンホール又はクラックが認められるものを成形不良品として判別し、100個の試験サンプルを上記条件で成形した際に発生した成形不良品の割合として求めた。
【0077】
[物性及び成形性の評価結果]
得られた結果を表3及び4に示す。この結果から、(i)ナノインデンテーション法による硬度が20〜115MPaを満たし、且つ損失弾性率のピーク温度が10〜60℃を満たす場合、(ii)ナノインデンテーション法による硬度が20〜115MPaを満たし、且つ比(IH/IM)が0.15〜1.5を満たす場合、及び(iii)損失弾性率のピーク温度が10〜60℃を満たし、且つ比(IH/IM)が0.15〜1.5を満たす場合には、成形時の裂けの発生を大幅に抑制でき、優れた成形性を備え得ることが明らかとなった(実施例1〜32参照)。とりわけ、ナノインデンテーション法による硬度が20〜115MPa、損失弾性率のピーク温度が10〜60℃、且つ比(IH/IM)が0.15〜1.5の全てを満たす場合には、成形性が格段に向上していた(実施例1〜8参照)。
【0078】
一方、ナノインデンテーション法による硬度範囲20〜115MPa、損失弾性率のピーク温度範囲10〜60℃、比(IH/IM)範囲0.15〜1.5の内、1つしか満たさない場合や、1つも満たさない場合には、6.5mm時裂け発生率が高くなっていた(比較例1〜32参照)。
【0079】
限定的な解釈を望むものではないが、以上の試験結果から以下の事項が考えられる。即ち、本発明の電池用包装材料では、接着層5における前記物性1〜3が複合的に寄与することにより、接着剤(ウレアやウレタン等)が、適度に分子間や分子内で凝集力を持つハードセグメントを形成することで室温にて高い弾性率を実現し、且つ架橋点間距離が適度に保たれ柔軟な層を形成することができ、ひいては成形性の向上をもたらしていると考えられる。それ故、前記物性1〜3は、成形性の優劣の指標になる代替物性値になっており、これらの物性を充足する程、成形性が向上すると考えられる。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【符号の説明】
【0082】
1 基材層
1a 基材層
1b 基材層
2 接着層
3 金属層
4 シーラント層
【図1】
【図2】
【国際調査報告】