(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050744
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】滅菌処理方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/24 20060101AFI20160725BHJP
   A61L 2/26 20060101ALI20160725BHJP
【FI】
   !A61L2/24
   !A61L2/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
【出願番号】2014538468
(21)【国際出願番号】JP2013075498
(22)【国際出願日】20130920
(31)【優先権主張番号】2012215307
(32)【優先日】20120927
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000106106
【氏名又は名称】サラヤ株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市東住吉区湯里2丁目2番8号
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】板良敷 朝将
【住所又は居所】大阪府大阪市東住吉区湯里2丁目2番8号 サラヤ株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 典夫
【住所又は居所】大阪府大阪市東住吉区湯里2丁目2番8号 サラヤ株式会社内
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058BB07
4C058CC02
4C058DD01
4C058DD06
(57)【要約】
滅菌処理対象物に残留水がない状態で滅菌剤を容器内に注入することができる。
水が凍結する3重点圧力より高い圧力まで減圧した後、実測減圧時間と標準減圧時間との比較または実測圧力増加率と標準圧力増加率との比較により、滅菌処理対象物における残留水の有無を確認して、残留水がある場合は容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍の圧力に戻し滅菌処理対象物を加熱した後、再度減圧して減圧沸騰により残留水の排出を行い、滅菌処理対象物に残留水がない状態まで前記残留水の排出を繰り返し行った後、滅菌剤を容器内に注入する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理方法において、
<A1>容器内圧力を水の3重点以上の圧力である第1圧力まで減圧する工程と、
<A2>前記第1圧力を維持する工程と、
<A3>容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍の圧力である第2圧力まで戻す工程と、
<A4>前記第1圧力と同等もしくはそれ以下の圧力である第3圧力まで減圧する工程と、
<A5>滅菌剤を容器内に注入する工程と、
を有する、ことを特徴とする滅菌処理方法。
【請求項2】
<A6>前記<A2>の工程後、容器内に水の残存の有無を判断する工程を有し、水が残存すると判断した場合、工程<A3>,<A1>,<A2>,<A6>の順番で処理を行い、水が残存しないと判断した後、工程<A4>,<A5>の順番で処理行うことを特徴とする請求項1記載の滅菌処理方法。
【請求項3】
前記<A6>の工程では、前記<A1>の工程における時間に基づいて判断することを特徴とする請求項2記載の滅菌処理方法。
【請求項4】
前記<A6>工程の判断は、予めメモリ部に記録している標準所要時間と、前記実測所要時間を比較し、実測所要時間が標準所要時間以下である場合、水が残存しないと判断することを特徴とする請求項3記載の滅菌処理方法。
【請求項5】
容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理方法において、
<B1>容器内圧力を水の3重点以上の圧力である第1圧力まで減圧する工程と、
<B2>前記第1圧力まで減圧後一定時間加減圧の操作を停止する工程と、
<B3>容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍の圧力である第2圧力まで戻す工程と、
<B4>前記第1圧力と同等もしくはそれ以下の圧力である第3圧力まで減圧する工程と、
<B5>滅菌剤を容器内に注入する工程と、
<B6>前記<B2>の工程後に、容器内に水の残存の有無を判断する工程と、
を有し、水が残存すると判断した場合には、工程<B3>,<B1>,<B2>,<B6>の順番で処理を行い、水が残存しないと判断した後は、工程<B4>,<B5>の順番で処理を行う、
ことを特徴とする滅菌処理方法。
【請求項6】
前記<B6>の工程では、前記<B2>の工程における単位時間当たりの圧力上昇率に基づいて判断することを特徴とする請求項5記載の滅菌処理方法。
【請求項7】
前記<B6>の工程の判断は、予めメモリ部に記録している標準圧力上昇率と、前記圧力上昇率を比較し、圧力上昇率が標準圧力上昇率以下である場合には、水が残存しないと判断することを特徴とする請求項5記載の滅菌処理方法。
【請求項8】
容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理方法において、容器内圧力を水の3重点以上の圧力である第1圧力まで減圧し、一定時間経過し、次いで水の3重点以下の圧力である第3圧力まで減圧し、滅菌剤を容器内に注入することを特徴とする滅菌処理方法。
【請求項9】
容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理装置において、
<C1>大気圧もしくは大気圧近傍から容器内圧力を所望の圧力まで減圧する減圧機構と前記圧力を維持するための圧力維持機構と容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍に戻す圧力解放機構とを有する圧力コントロール部と、
<C2>滅菌剤を容器内に注入する滅菌剤注入部と、
<C3>前記容器内の圧力を測定する圧力測定部と、
<C4>前記圧力維持機構により前記水の3重点以上の圧力に減圧し維持した後、容器内に水の残存の有無を判断する判断部と、
<C5>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧するのに要する時間をそれぞれ記録するメモリ部と、
<C6>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧するのに要する時間を測定する時間測定部と、
<C7>大気圧と大気圧近傍の圧力の圧力差における減圧の時間差を計算する計算部と、
<C8>前記メモリ部にあらかじめ記憶されている標準所要時間と前記時間測定部で測定した時間と実測所要時間を比較する比較部と、
<C9>前記比較部における比較の結果、容器内の水の残量を判断する判断部と、
を有することを特徴とする滅菌処理装置。
【請求項10】
容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理装置において、
<D1>大気圧もしくは大気圧近傍から容器内圧力を所望の圧力まで減圧する減圧機構と容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍に戻す圧力解放機構とを有する圧力コントロール部と、
<D2>滅菌剤を容器内に注入する滅菌剤注入部と、
<D3>前記容器内の圧力を測定する圧力測定部と、
<D4>前記圧力維持機構により前記水の3重点以上の圧力に減圧し一定時間経過後、容器内に水の残存の有無を判断する判断部と、
<D5>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧後、圧力制御を所定の停止させる際に用いる及び標準圧力増加率をそれぞれ記録するメモリ部と、
<D6>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧後、圧力制御を所定時間の停止させる際の圧力増加率を測定する圧力増加率測定部と、
<D7>所望圧力まで減圧後、圧力制御を所定時間の停止させる際の前記実測圧力増加率を計算する計算部と、
<D8>前記メモリ部にあらかじめ記憶されている標準圧力増加率と前記実測圧力増加率を比較する比較部と、
<D9>前記比較部における比較の結果、容器内の水の残量を判断する判断部と、
を有することを特徴とする滅菌処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する方法、及びかかる方法を用いた滅菌処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば医療分野において所要の医療用具等を滅菌処理する場合など、所要の物品に滅菌処理を施す場合、例えば、高圧水蒸気や乾熱,電磁波,過酸化水素/プラズマガス/EOGガス等を用い、その熱や圧力を利用して滅菌処理する方法が一般によく知られている。
【0003】
しかしながら、熱や圧力の変化により悪影響を受ける処理対象物の場合には、これらの方法を適用することはできない。例えば、高温になる高圧水蒸気や乾熱が使用できないもの、中空の金属及びプラスチック複合製であるために電磁波滅菌が使用できないものなどがある。また、EOGガス滅菌においては、処理対象物の材料に起因する問題は解消できるものの、毒性除去のためのエアレーションに多大の時間を要し、滅菌処理装置としての可動率が低くなるという問題が残る。
【0004】
このような問題を払拭するものとして、プラズマガス滅菌処理が知られている。 このプラズマガス滅菌処理は、例えば、予備洗浄後に完全に乾燥処理された滅菌処理対象物に、過酸化水素などからなる滅菌剤を細部まで浸透させて滅菌作用を行うものである。また、プラズマガス滅菌処理において、滅菌処理対象物を乾燥させるために、容器に滅菌処理対象物を入れて容器内を減圧することで、残留した水を減圧沸騰により蒸発させ、発生した蒸気を排気ポンプにより大気に排気し、滅菌処理対象物及び容器内部を乾燥させることが知られている。
【0005】
このようにして滅菌処理を行う方法として、滅菌処理対象物を容れた容器の内部を、当該容器内にプラズマを発生させるのに最も好ましいとされる約40Paから200Paの間の圧力に減圧し、滅菌処理対象物の残留水を減圧沸騰により蒸発させるようにした方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、滅菌処理対象物に残留した残留水は、蒸発時に気化熱が奪われるために温度が低下するが、約40Paから200Paの間の圧力に減圧された容器内にプラズマを発生させて滅菌処理対象物の加熱が行われ、また、大気圧または準大気圧に圧力を戻す時に流入する外気に加熱された温度の高い容器の熱を滅菌処理対象物に移転することで、滅菌処理対象物及び残留水の温度を上昇させる。そして、容器内を換気した後、好ましくは40Paから133Paの間の圧力に減圧して滅菌処理対象物の残留水を蒸発させる工程が、少なくとも2回繰り返して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4526649号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】吉田理香、小林寛伊日本環境感染学会誌 26(4), 239−242, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、滅菌処理を行う現場おいては、予備洗浄後、実際には十分に乾燥されない状態で滅菌処理対象物がプラズマガス滅菌処理装置に供される場合もあり、このような場合には、細部または細部の入り口に洗浄水が残留することに起因して、細部に滅菌剤が到達せず、細部の滅菌不良になり、また、残留する洗浄水に滅菌剤が溶解して滅菌剤が残留する等の問題が生じる。過酸化水素などの滅菌剤の残留が使用者の健康にとって好ましくないことは知られており(非特許文献1)、滅菌剤の残留を防止することは、装置の実用上の課題の一つであった。
【0009】
一方、プラズマガス滅菌においては、滅菌処理対象物の乾燥に関して、滅菌室内に存在する水が蒸発する時に気化熱が奪われて水の温度が下がるので、継続して減圧沸騰により水を蒸発させて滅菌処理対象物を乾燥させることが困難となるという問題もあった。
【0010】
薬液を用いて行う従来の滅菌処理装置では、残留水が少なく且つ中空部が短い滅菌処理対象物の場合には、前述の乾燥方法でも有効であると考えられるが、残留水が多く且つ長い中空部を有する滅菌処理対象物では、最初の減圧工程で減圧が進むに連れて中空部にある残留水が減圧沸騰をして中空部の出口から出てくるが、この際に、圧力が約670Pa以下、最も好ましくは約40Paから200Paの間の圧力に減圧する過程で、水の3重点圧力である610Paまでに残留水が蒸発しきれず残存した場合、圧力が610Pa以下となると、残留水の温度が0℃以下となり凍結して氷になる。残留水が中空部またはその出口で凍結すると、中空部の内部の残留水は外に排出されなくなり、中空部内に残って残留水となる。
【0011】
上述の滅菌処理は、容器内にプラズマを発生させるのに最も好ましい約40Paから200Paの間の圧力までに、一気に水の3重点圧力を通過して減圧するため、容器の圧力を大気圧または準大気圧に戻して、流入する加熱外気により滅菌処理対象物及び残留水の温度を上昇させるものであるが、滅菌処理対象物の中空部またはその出口で凍結した氷は、加熱外気の中空部内部への流入を阻害して、滅菌処理対象物の外気からの受熱効率が低くなり、結果的に滅菌処理対象物を乾燥させることができない場合もあった。
【0012】
そこで、本発明は、容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理するに際して、滅菌剤の浸透性を向上させ、及び/又は滅菌剤の残留防止を図る、ことを基本的な目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願第1の発明に係る滅菌処理方法は、容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する方法において、
<A1>容器内圧力を水の3重点以上の圧力である第1圧力まで減圧する工程と、
<A2>前記第1圧力を維持する工程と、
<A3>容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍の圧力である第2圧力まで戻す工程と、
<A4>前記第1圧力と同等もしくはそれ以下の圧力である第3圧力まで減圧する工程と、
<A5>滅菌剤を容器内に注入する工程と、
を有することを特徴としたものである。
【0014】
この滅菌処理方法は、
<A6>前記<A2>の工程後に、容器内の水の残存の有無を判断する工程、
を有し、水が残存すると判断した場合には、工程<A3>,<A1>,<A2>,<A6>の順番で処理を行い、水が残存しないと判断した後、工程<A4>,<A5>の順番で処理を行うようにしてもよい。
【0015】
さらに、前記方法において、前記<A6>の工程は、前記<A1>の工程における時間に基づいて判断するようにしてもよい。また、この場合において、前記<A6>工程の判断は、予めメモリ部に記録している標準所要時間と前記実測所要時間とを比較し、実測所要時間が標準所要時間以下である場合には水が残存しないと判断するようにしてもよい。
【0016】
本願第2の発明に係る滅菌処理方法は、容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する方法において、
<B1>容器内圧力を水の3重点以上の圧力である第1圧力まで減圧する工程と、
<B2>前記第1圧力まで減圧後一定時間加減圧の操作を停止する工程と、
<B3>容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍の圧力である第2圧力まで戻す工程と、
<B4>前記第1圧力と同等もしくはそれ以下の圧力である第3圧力まで減圧する工程と、
<B5>滅菌剤を容器内に注入する工程と、
<B6>前記<B2>の工程後、容器内に水の残存の有無を判断する工程と、
を有し、
水が残存すると判断した場合、工程<B3>,<B1>,<B2>,<B6>の順番で処理を行い、水が残存しないと判断した後、工程<B4>,<B5>の順番で処理を行う、
ことを特徴としたものである。
【0017】
この滅菌処理方法では、前記<B6>の工程は、前記<B2>の工程における単位時間当たりの圧力上昇率に基づいて判断するようにしてもよい。
【0018】
また、前記滅菌処理方法では、前記<B6>の工程の判断は、予めメモリ部に記録している標準圧力上昇率と前記圧力上昇率とを比較し、圧力上昇率が標準圧力上昇率以下である場合に、水が残存しないと判断するようにしてもよい。
【0019】
本願第3の発明に係る滅菌処理装置は、容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理装置において、
<C1>大気圧もしくは大気圧近傍から容器内圧力を所望の圧力まで減圧する減圧機構と前記圧力を維持するための圧力維持機構と容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍に戻す圧力解放機構とを有する圧力コントロール部と、
<C2>滅菌剤を容器内に注入する滅菌注入部と、
<C3>前記容器内の圧力を測定する圧力測定部と、
<C4>前記圧力維持機構により前記水の3重点以上の圧力に減圧し維持した後、容器内に水の残存の有無を判断する判断部と、
<C5>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧するのに要する時間をそれぞれ記録するメモリ部と、
<C6>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧するのに要する時間を測定する時間測定部と、
<C7>大気圧と大気圧近傍の圧力の圧力差における減圧の時間差を計算する計算部と、
<C8>前記メモリ部にあらかじめ記憶されている標準所要時間と前記時間測定部で測定した実測所要時間を比較する比較部と、
<C9>前記比較部における比較の結果、容器内の水の残量を判断する判断部と、
を有することを特徴としたものである。
【0020】
本願第4の発明に係る滅菌処理装置は、容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理装置において、
<D1>大気圧もしくは大気圧近傍から容器内圧力を所望の圧力まで減圧する減圧機構と容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍に戻す圧力解放機構とを有する圧力コントロール部と、
<D2>滅菌剤を容器内に注入する滅菌剤注入部と、
<D3>前記容器内の圧力を測定する圧力測定部と、
<D4>前記圧力維持機構により前記水の3重点以上の圧力に減圧し一定時間経過後、容器内に水の残存の有無を判断する判断部と、
<D5>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧後、圧力制御を所定の時間停止させる際に用いる及び標準圧力増加率をそれぞれ記録するメモリ部と、
<D6>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧後、圧力制御を所定時間の停止させる際の圧力増加率を測定する圧力増加率測定部と、
<D7>所望圧力まで減圧後、圧力制御を所定時間の停止させる際の前記実測圧力増加率を計算する計算部と、
<D8>前記メモリ部にあらかじめ記憶されている標準圧力増加率と前記実測圧力増加率を比較する比較部と、
<D9>前記比較部における比較の結果、容器内の水の残量を判断する判断部と、
を有することを特徴としたものである。
【0021】
本願発明に係る滅菌処理方法は、容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する方法において、
容器内の圧力を水の3重点以上の圧力である第1圧力まで減圧し、一定時間経過した後、水の3重点以下の圧力である第3圧力まで減圧し、滅菌剤を容器内に注入する、ことを特徴としたものである。
【0022】
すなわち、本願発明は、予備洗浄で滅菌処理対象物に含浸される残留水を滅菌剤の注入前に滅菌処理対象物から効率的にまた確実に排出するものであり、減圧工程で水の凍結する3重点圧力より高い圧力を一定期間維持して滅菌処理対象物の残留水の凍結を防止しながら残留水の排出を行い、滅菌処理対象物の残留水の有無を確認するものである。残留水がある場合は容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍の圧力に戻して滅菌処理対象物を加熱して残留水の排出を行う。残留水がある場合は、当該操作を繰り返し、滅菌処理対象物に残留水がないことが確認された後、滅菌剤の注入に際し、水の凍結する3重点圧力より低い圧力に減圧後、容器内に滅菌剤を注入して滅菌を行うものである。
【発明の効果】
【0023】
本願第1の発明方法によれば、滅菌処理対象物を収納する容器内を十分に乾燥するために、大気圧もしくは準大気圧から水の3重点以上の圧力まで加減圧を繰り返し、さらに前記容器内の残留水の有無を測定する方法として、大気圧もしくは準大気圧から水の3重点以上の圧力まで減圧するに要した時間から判断し、十分に乾燥ができていると判断した後、水の3重点より低い圧力まで減圧し滅菌剤を投入することにより、滅菌剤の浸透性の向上及び滅菌剤の残留防止を図ることができる。
【0024】
この場合において、減圧時の時間を基準にするため、同一の機器を使用する条件下においては、複雑な測定や計算を行う必要なしに、標準となる減圧と時間の関係から残留水の存在を判断することができる。
【0025】
本願第2の発明方法によれば、滅菌物を収納する容器内を十分に乾燥ため、大気圧しくは準大気圧から水の3重点以上の圧力まで加減圧を繰り返し、さらに前記容器内の残留水の有無を測定する方法として、水の3重点以上の圧力まで減圧した後所定の時間に増加する圧力の圧力増加率が基準となる圧力増加率と比較することで判断し、十分に乾燥ができていると判断した後、水の3重点より低い圧力まで減圧し滅菌剤を投入することにより、滅菌剤の浸透性の向上及び滅菌剤の残留防止を図ることができる。
【0026】
この場合において、水の3重点以上の圧力まで減圧後の圧力と経過時間の関係(圧力上昇率)を基準にするため、同一の機器を使用する条件下においては複雑な測定や計算を行うことなく標準となる圧力増加率から残留水の存在を判断することができる。 さらに、圧力増加率を基準にすることにより、減圧に際して利用されるポンプの状態に左右されずに残留水の存在を確認できる。
【0027】
本願第3の発明によれば、滅菌物を収納する容器内を十分に乾燥ため、大気圧もしくは準大気圧から水の3重点以上の圧力まで加減圧を繰り返し、さらに前記容器内の残留水の有無を測定する装置として、大気圧もしくは準大気圧から水の3重点以上の圧力まで減圧する時間から判断し、十分に乾燥ができていると判断した後、水の3重点より低い圧力まで減圧し滅菌剤を投入することにより、滅菌剤の浸透性の向上及び滅菌剤の残留防止を図ることができる。
【0028】
この場合において、予備洗浄で滅菌処理対象物に含浸される残留水を滅菌剤の注入前に滅菌処理対象物から効率的にまた確実に排出して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱した気体を用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができる。これにより、温度や熱の変化によって悪影響を受ける物品についても、支障なく気体を用いた乾燥処理を行えるようになる。さらに、気体を加温または加熱して温風や熱風として容器内に送給する送給手段は不要で、滅菌処理装置の全体システムが複雑で大掛かりなものとなることを回避できる。
【0029】
本願第4の発明によれば、滅菌物を収納する容器内を十分に乾燥ため、大気圧もしくは準大気圧から水の3重点以上の圧力まで加減圧を繰り返し、さらに前記容器内の残留水の有無を測定する装置として、水の3重点以上の圧力まで減圧した後所定の時間に増加する圧力の圧力増加率が基準となる圧力増加率と比較することで判断し、十分に乾燥ができていると判断した後、水の3重点より低い圧力まで減圧し滅菌剤を投入することにより、滅菌剤の浸透性の向上及び滅菌剤の残留防止を図ることができる。
【0030】
この場合においても、予備洗浄で滅菌処理対象物に含浸される残留水を滅菌剤の注入前に滅菌処理対象物から効率的にまた確実に排出して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱した気体を用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができる。これにより、温度や熱の変化によって悪影響を受ける物品についても、支障なく気体を用いた乾燥処理を行えるようになる。さらに、気体を加温または加熱して温風や熱風として容器内に送給する送給手段は不要で、滅菌処理装置の全体システムが複雑で大掛かりなものとなることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る滅菌処理装置の全体構成を概略的に示すブロック構成図である。
【図2】図1の滅菌処理装置の制御部の詳細構成を示すブロック構成図である。
【図3A】本実施形態の第1実施例に係る滅菌処理装置の制御方法を説明するためのフローチャートの一部である。
【図3B】前記第1実施例に係る滅菌処理装置の制御方法を説明するためのフローチャートの一部である。
【図3C】前記第1実施例に係る滅菌処理装置の制御方法を説明するためのフローチャートの一部である。
【図4A】本実施形態の第2実施例に係る滅菌処理装置の制御方法を説明するためのフローチャートの一部である。
【図4B】前記第2実施例に係る滅菌処理装置の制御方法を説明するためのフローチャートの一部である。
【図4C】前記第2実施例に係る滅菌処理装置の制御方法を説明するためのフローチャートの一部である。
【図5】前記第1実施例の滅菌工程における時間と容器内の圧力の関係を示すグラフである。
【図6】図5のグラフにおいて、残留水「無し」と判断された場合の一例を拡大して示すグラフである。
【図7】図5のグラフにおいて、残留水「有り」と判断された場合の一例を拡大して示すグラフである。
【図8】図7のグラフに示された工程に続く工程として、残留水の有無を判断する場合の一例を示すグラフである。
【図9】ステンレス製トレーを滅菌処理対象物として採用した場合を例にとって、前記第1実施例に係る滅菌処理方法を適用した場合について、減圧時における容器内圧力と時間の関係に関する実験結果を示すグラフである。
【図10】図9に示した実験例における水の3重点圧力付近の減圧時における容器内圧力と時間の関係を拡大して示すグラフである。
【図11】第1実施例に係る滅菌処理方法を適用する場合について、滅菌処理対象物が比較的長尺で中空部を有するチューブにおいて圧力パターンの違いが残留水量に及ぼす影響を検証する実験の結果を示すグラフである。
【図12】第1実施例における繰り返し加熱工程を行わない場合について、滅菌処理対象物が中尺で中空部を有するチューブにおいて圧力パターンの違いが残留水量に及ぼす影響を検証する実験の結果を示すグラフである。
【図13】前記第2実施例の滅菌工程における時間と容器内の圧力の関係を示すグラフである。
【図14】図13のグラフにおいて、残留水「無し」と判断された場合の一例を拡大して示すグラフである。
【図15】図13のグラフにおいて、残留水「有り」と判断された場合の一例を拡大して示すグラフである。
【図16】図15のグラフに示された工程に続く工程として、残留水の有無を判断する場合の一例を示すグラフである。
【図17】前記第2実施例に係る滅菌処理方法に関連して、容器内の残留水量をパラメータとし、容器内を水の3重点圧力以上の圧力に減圧した後における圧力増加率を調べる実験の結果を示すグラフである。
【図18】滅菌処理対象物における残留水及びその凍結の有無と容器内に注入された滅菌剤の滅菌処理対象物における残留量を調べる実験における圧力の変化パターン例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、例えば、ピンセット,剪刀,鉗子,カテーテル等の医療器具を滅菌処理対象物とし、過酸化水素や過酢酸等の過酸を滅菌剤として滅菌処理する場合を例にとって、添付図面を参照しながら説明する。
尚、以下の説明では、特定の方向を意味する用語(例えば、「上」,「下」,「左」,「右」,「前」,「後」、及びそれらを含む他の用語、並びに「時計回り方向」,「反時計回り方向」など)を使用する場合があるが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためである。従って、本発明は、それらの用語の語義によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0033】
図1は、本実施形態に係る滅菌処理装置1の全体構成を概略的に示すブロック構成図である。本実施形態に係る滅菌処理装置1(以下、適宜、単に「装置」と略称する)は、容器11内を十分に減圧した後に、滅菌剤を用いて滅菌処理対象物2を滅菌処理するものである。滅菌処理装置1は、図1に示されるように、滅菌剤を供給する滅菌剤供給系6と、滅菌処理を行う滅菌処理系10と、容器11内の空気の出入りに関係する吸排気配管系15と、装置1全体の制御を掌る制御部23と、を備えている。
【0034】
滅菌剤供給系6は、滅菌剤を蓄えるタンク7と滅菌剤注入部8と滅菌剤注入電磁弁9とを備えている。滅菌剤注入部8は、適量の滅菌剤を容器11に供給するために滅菌剤を計量し、制御部23からの制御信号により滅菌剤注入電磁弁9が開弁されると、滅菌剤を容器11内へ供給するように構成されている。
【0035】
滅菌処理系10は、滅菌処理対象物2を入れるための容器内箱12を内部に収容した前記容器11と、該容器11の外部に配置され容器11内にプラズマを生成可能な高周波発生部13と、容器11内の圧力を測定する圧力測定部14と、を備えている。容器11は、前記滅菌剤供給系6や吸排気配管系15と連通している。
【0036】
容器11及びその内箱12は共に、所定の強度・剛性および耐食性を備えた導電性材料で形成され、両者11,12は電気的に絶縁されている。外箱としての容器11及び内箱12を形成する材料素材としては、例えば鋼板等の金属板を用いることができ、容器(外箱)11は、通常の平板状の金属板を折り曲げ加工して構成され、容器11の内部を外部に対して気密に覆っている。一方、内箱12は、多数の貫通孔を有する多孔金属板を折り曲げ加工して構成されており、その内側と外側との間で、気化した薬剤や空気などの気体やプラズマ、更には液体等の流体が自在に流通できるようになっている。
【0037】
前記容器11の外部に、プラズマ生成手段としての高周波発生部13が備えられている。この高周波発生部13は、例えば、高周波回路と高周波電源とを有して構成され、一端側が容器(外箱)11に対して電気的に接続され、他端側は従来公知の真空スリーブを挿通して容器内箱12に対して電気的に接続されている。そして、高周波発生部13を稼働することにより、容器(外箱)11と容器内箱12との間に形成された空間部にプラズマを発生させることができるように構成されている。
【0038】
吸排気配管系15は、外気を容器11内に導入するための外気導入配管系16と、容器11内の空気を外部に排出するための排気配管系19と、で構成されている。外気導入配管系16は、外気を容器11内に導入する際に導入外気を清浄化する空気清浄フィルタ17と、外気導入時に開かれる外気導入電磁弁18と、を備えている。また、排気配管系19は、容器11内を排気する排気ポンプ20と、排気時に開かれる排気電磁弁21と、排気ポンプ20の排気を清浄化するための排気フィルタ22と、を備えている。
【0039】
このように、前記制御部23からの制御信号により外気を前記容器11に導入する際には、前記外気導入電磁弁18の上流側に配置された前記空気清浄フィルタ17により、導入される外気が清浄化される。また、前記制御部23からの制御信号により、容器11内の空気を排出する際には、排気ポンプ20の下流側に配置された前記排気フィルタ22により、排出される空気を清浄化することで排気処理がなされる。
【0040】
前記制御部23は、滅菌処理装置1全体の制御を行う制御装置であり、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されている。該制御部23は、例えば滅菌処理装置1の制御盤(不図示)に付設されている。
図1に示されるように、滅菌剤供給系6の滅菌剤注入部8及び滅菌剤注入電磁弁9、滅菌処理系10の高周波発生部13及び圧力測定部14、滅菌処理系10の高周波発生部13及び圧力測定部14、並びに吸排気配管系15の外気導入電磁弁18,排気ポンプ20及び排気電磁弁21は何れも、前記制御部23に対して信号授受可能に接続され、当該制御部23からの制御信号によってその作動が制御されるようになっている。尚、電磁弁9,18及び21は何れも、従来公知のいわゆる電磁制御弁で構成することができる。
【0041】
次に、前記滅菌処理装置1の制御部23の詳細について説明する。図2は、図1の滅菌処理装置1の制御部23の詳細構成を示すブロック構成図である。尚、以下の説明においては、後述する図5〜図8及び図13〜図16中に表示した符号(P101等,T101等)を併記しており、これらの図を参照することで、より容易に理解を深めることができる。
【0042】
図2に示されるように、本実施形態に係る滅菌処理装置1の制御部23は、残存水の有無を判断する判断部25と、所定の第1圧力P101まで減圧する際の所要時間T101を実測する時間測定部26と、前記第1圧力P101まで減圧する際の基準とすべき所要時間としての標準所要時間T101a及び前記第1圧力P101まで減圧するのに実際に要した時間としての実測所要時間T101を記録する時間メモリ部27と、前記第1圧力P101まで減圧する際の実測所要時間T101と時間メモリ部27に保存されている第1圧力P101まで減圧する際の標準所要時間T101aを比較する時間比較部28と、を備えている。以上の構成部分25〜28は何れも、演算部24に対して信号授受可能に接続されている。
【0043】
前記標準所要時間T101aは、後述するように、第1圧力P101まで減圧する際の基準とすべき所要時間であるが、この「標準所要時間」は、滅菌処理対象物2に残留水が「無し」である場合の減圧工程101aにおいて、第1圧力P101への減圧に要する時間に相当している。
【0044】
また、前記制御部23は、第2圧力P102の変化が前記時間メモリ部27に差異を与える時間を計算する時間差計算部29と、第1圧力P101から増加する実測圧力の増加率を測定する圧力増加率測定部30と、標準圧力増加率Rp114aと実測圧力増加率Rp114を記録する増加率メモリ部31と、単位時間当たりの圧力増加を計算する圧力増加率計算部32と、標準圧力増加率Rp114aと実測圧力増加率Rp114とを比較する圧力増加率比較部33と、を備えている。これらの構成部分29〜33も、演算部24に対して信号授受可能に接続されている。
【0045】
前記標準圧力増加率Rp114aは、後述するように、第1圧力P101から圧力が増加する際の基準とすべき増加率であるが、この「標準圧力増加率」は、滅菌処理対象物2に残留水が「無し」である場合の第1圧力P101からの増圧工程における圧力増加率に相当している。
【0046】
以上のような構成を備えた滅菌処理装置1の作動及び制御について説明する。
図3(図3A〜3C)は、本実施形態の第1実施例に係る滅菌処理装置の作動を説明するためのフローチャートである。図3Aに示すように、滅菌処理システムの作動開始に際して、先ず、ステップ#1で、容器11の内箱12内に滅菌処理対象物2を収容し、その後、排気ポンプ20で容器11内を減圧し(ステップ#2)、容器11内の圧力が、水の3重点以上の圧力である第1圧力P101まで減圧されたか否かが継続的に判定される(ステップ#3)。
【0047】
このとき、前記圧力測定部14によって容器11内の圧力が計測され、この計測値が制御部23に送信され、制御部23内の演算部24からの出力信号に基づいて、減圧目標圧力である第1圧力P101にまで減圧されるよう、排気ポンプ20及び排気電磁弁21が制御される。そして、容器11内が第1圧力P101まで減圧されると(ステップ#3:YES)、容器11内の圧力を一定期間にわたって第1圧力P101に維持するように制御される(ステップ#4)。
【0048】
また、このとき、時間測定部26により、減圧開始から第1圧力P101まで減圧するのに実際に要した実測所要時間T101が測定されており、この時間測定部26で測定された実測所要時間T101は時間メモリ部27内に保存され、その後、一旦、排気ポンプ20が停止され、且つ、排気電磁弁21が閉じられる。その後、上述のようにステップ#4で、排気ポンプ20を駆動し排気電磁弁21の開閉を調整することにより、容器11内の圧力を第1圧力P101で所定時間T102にわたって維持する。
【0049】
この所定時間T102が経過するのを待って、ステップ#5で、前記メモリ部27に記録されていた標準所要時間T101aと実測所要時間T101とが比較される。前述のように、標準所要時間T101aとは、容器11内を前記第1圧力P101まで減圧するのに要する基準とすべき時間であって、滅菌処理対象物2に残留水が「無し」である場合の減圧工程101aにおいて第1圧力P101への減圧に要する時間に相当している。また、実測所要時間T101とは、前記第1圧力P101まで減圧するのに実際に要した時間である。
【0050】
時間比較部28で実測所要時間T101と標準所要時間T101aとを比較するため、まず減圧開始時における圧力と大気圧の差から時間差計算部29で、実測所要時間T101と標準所要時間T101aの時間を補正する。その補正値を基に判断部25において、T101≦T101aであるか否かを判断し、これを基に滅菌処理対象物2における残留水の有無を判断する。
【0051】
そして、T101≦T101a、つまり滅菌処理対象物2における残留水が「無し」と判断された場合には(ステップ#5:YES)、ステップ#6にて、排気ポンプ20及び排気電磁弁21が制御され容器11内の圧力が減圧され、そして、容器11内が水の3重点より低い第3圧力P103まで減圧されると(ステップ#7:YES)、容器11内の圧力を一定期間にわたって第3圧力に維持するように制御される(ステップ#8)。この所定時間が経過するのを待って、容器11内に滅菌剤が注入される(ステップ#9)。容器11内をこの状態で一定期間維持した後、容器11内にプラズマが点灯される(ステップ#10)。その後、容器11内の圧力を減圧前の第2圧力P102に戻し(ステップ#11)、容器11内から滅菌処理対象物2を取り出し(ステップ#12)、滅菌処理が終了するようになっている。
【0052】
一方、ステップ#5での判断結果が、T101>T101a、つまり滅菌処理対象物2における残留水が「有り」と判断された場合には(ステップ#5:NO)、ステップ#13にて、容器11内の圧力が減圧前の第2圧力P102に戻され、ステップ#14で、容器11内の圧力が一定期間この第2圧力に維持される。その後、前述のステップ#2〜ステップ#5に相当するステップ#15〜ステップ#19の工程を繰り返す。
【0053】
そして、ステップ#19で、T105≦T101a、つまり滅菌処理対象物2おける残留水が「無し」と判断された場合には、前述の工程(ステップ#15〜ステップ#19)の繰り返し回数が所定の制限回数以下であるか否かが判断され(ステップ#20)、制限回数以下である場合には(ステップ#20:YES)、前述のステップ#6〜ステップ#12の工程を実行して滅菌処理を終了する。一方、ステップ#20にて、繰り返し回数が所定の制限回数を越えていると判断された場合には(ステップ#20:NO)、ステップ#21で、装置1の表示部(不図示)にエラー表示が行われて、システムが終了するようになっている。
【0054】
次に、本実施形態の第2実施例に係る滅菌処理装置の作動及び制御について、図4(図4A〜4C)のフローチャートを参照しながら説明する。
図4Aに示すように、滅菌処理システムの作動開始に際して、先ず、ステップ#31で、容器11の内箱12内に滅菌処理対象物2を収容し、その後、排気ポンプ20で容器11内を減圧し(ステップ#32)、容器11内の圧力が、水の3重点以上の圧力である第1圧力P101まで減圧されたか否かが継続的に判定される(ステップ#33)。
【0055】
このとき、前記圧力測定部14によって容器11内の圧力が計測され、この計測値が制御部23に送信され、制御部23内の演算部24からの出力信号に基づいて、減圧目標圧力である第1圧力P101にまで減圧されるよう、排気ポンプ20及び排気電磁弁21が制御される。そして、容器11内が第1圧力P101まで減圧されると(ステップ#33:YES)、容器11に連なる全ての電磁弁9,18及び21が閉じられる(ステップ#34)。
【0056】
また、このとき、圧力測定部14では引き続き圧力を測定するとともに時間測定部26を起動し、所定時間T102の測定を始める。容器11内の圧力が一定期間T102にわたって第1圧力P101に維持されると(ステップ#35)、第1圧力P101と所定時間T102経過後の圧力より導かれる圧力差を圧力増加率測定部30において測定し、その測定結果と、所定時間T102より実測圧力増加率Rp114を圧力増加率計算部32において算出し、この算出値が増加率メモリ部31に一旦保存される。この増加率メモリ部31には、前述の標準圧力増加率Rp114aが予め保存されている。
【0057】
次に、増加率メモリ部31に格納されている前記実測圧力増加率Rp114と、同じくメモリ部31に格納されている標準圧力増加率Rp114aとを圧力増加率比較部33において算出し、その算出値に基づいて判断部25にて、実測圧力増加率Rp114≦標準圧力増加率Rp114aであるか否かが判断される(ステップ#36)。前述のように、標準圧力増加率Rp114aは、滅菌処理対象物2に残留水が「無し」である場合の第1圧力P101からの増圧工程における圧力増加率に相当しているので、実測圧力増加率Rp114をこの標準圧力増加率Rp114aと比較することにより、滅菌処理対象物2における残留水の有無を判断することができる。
【0058】
そして、実測圧力増加率Rp114≦標準圧力増加率Rp114a、つまり滅菌処理対象物2における残留水が「無し」と判断された場合には(ステップ#36:YES)、ステップ#37にて、排気ポンプ20及び排気電磁弁21が制御され容器11内の圧力が減圧され、そして、容器11内が水の3重点より低い第3圧力P103まで減圧されると(ステップ#38:YES)、容器11内の圧力を一定期間にわたって第3圧力に維持するように制御される(ステップ#39)。この所定時間が経過するのを待って、容器11内に滅菌剤が注入される(ステップ#40)。容器11内をこの状態で一定期間維持した後、容器11内にプラズマが点灯される(ステップ#41)。その後、容器11内の圧力を減圧前の第2圧力P102に戻し(ステップ#42)、容器11内から滅菌処理対象物2を取り出し(ステップ#43)、滅菌処理が終了するようになっている。
【0059】
一方、ステップ#36での判断結果が、実測圧力増加率Rp114>準圧力増加率Rp114a、つまり滅菌処理対象物2における残留水が「有り」と判断された場合には(ステップ#36:NO)、ステップ#44にて、容器11内の圧力が減圧前の第2圧力P102に戻され、ステップ#45で、容器11内の圧力が一定期間この第2圧力に維持される。その後、前述のステップ#32〜ステップ#36に相当するステップ#46〜ステップ#50の工程を繰り返す。
【0060】
そして、ステップ#50で、実測圧力増加率Rp114≦標準圧力増加率Rp114a、つまり滅菌処理対象物2における残留水が「無し」と判断された場合には(ステップ#50:YES)、前述の工程(ステップ#46〜ステップ#50)の繰り返し回数が所定の制限回数以下であるか否かが判断され(ステップ#51)、制限回数以下である場合には(ステップ#51:YES)、前述のステップ#37〜ステップ#43の工程を実行して滅菌処理を終了する。一方、ステップ#51にて、繰り返し回数が所定の制限回数を越えていると判断された場合には(ステップ#51:NO)、ステップ#52で、装置1の表示部(不図示)にエラー表示が行われて、システムが終了するようになっている。
【0061】
次に、前述の第1実施例(図3A〜3C参照)に関し、滅菌処理対象物2に残留水があった場合の滅菌工程の時間と容器11内の圧力の関係について、図5のグラフを参照しながら説明する。
減圧沸騰を利用して滅菌処理対象物を乾燥する滅菌処理法では、一般的に、容器11の内側は排気ポンプ20により減圧され、滅菌処理対象物2の中の(若しくは表面等に付着残留した)残留水は減圧沸騰により蒸発して排水される。水の蒸発により(つまり、気化熱を奪われることにより)、残留水は冷却されて温度が低下することになる。以下、この工程を「工程101」と称する。
【0062】
本実施形態では、前記工程101の減圧工程において、水の3重点以上の圧力である第1圧力P101まで減圧される。第1圧力P101は、水の凍結が生じる水の3重点圧力610Pa以上の圧力であり、好ましくは610Paから2000Pa、最も好ましくは670Paから1000Paの圧力である。この第1圧力P101は、前記工程101に続く工程102にて一定期間T102維持される。このとき、滅菌処理対象物2の有する熱量が、温度の低下した残留水に移転することで、残留水は温度が上昇して蒸発を継続することになる。第1圧力P101は、水が凍る3重点圧力610Pa以上であるので、工程102の期間で残留水が凍結することはない。
【0063】
前記工程102においては、前記第1圧力P101は、前記圧力測定部14により測定した圧力に基づき、制御部23からの指示により、前記排気ポンプ20に接続された排気電磁弁21を開閉制御することにより維持される。本実施形態では、前記工程102の一定期間T102の長さは、滅菌処理対象物2が有する熱量の半分が残留水に移転するに必要な時間T102とした。
例えば、滅菌処理対象物2が、外径4mm,内径2mmのPTFE(フッ素性樹脂)チューブの場合、前記一定期間T102は約5秒である。また滅菌処理対象物2が、外径10mm,内径5mmのシリコンチューブの場合には、前記一定期間T102は約25秒である。
【0064】
前記工程102に続く工程103は、外気導入電磁弁18が開放され、空気清浄フィルタ17を介して容器11内に外気が導入される工程である。本実施形態では、この工程103において、前記容器11内の圧力が、大気圧または大気圧近傍の第2圧力P102に戻される。このとき、容器11内よりも高い温度の外気が容器11内に導入され、この外気が滅菌処理対象物2に当たり、滅菌処理対象物2及び残留水の温度を上昇させることになる。
【0065】
前記工程103に続く工程104は、容器11内の圧力が第2圧力P102に維持される期間で、前記工程103で導入された外気の熱量が滅菌処理対象物2及び残留水に移転する期間であり、その長さは必要に応じて決定することができる。滅菌処理対象物2及び残留水は工程103及び工程104の期間で加熱され、工程104に続く工程105の開始時点において、容器11の内部及び滅菌処理対象物2の温度は、工程102の終了時点112よりも高くなっており、減圧沸騰により残留水は蒸発する。
【0066】
前記残留水判断部25により、工程101の終了時点111(工程102の開始時点)において、残留水が「無し」と判断されるまで、前記工程103,工程104,工程105,工程102の順番で乾燥工程が繰り返される。前記残留水判断部25により、時点111において残留水が「無し」と判断されると、工程102の終了点112から工程106へ移行し、更に工程107へ移行する。この工程107では、容器11内は、第1圧力P101と同等もしくはそれ以下の圧力である第3圧力P103に維持される。
【0067】
第3圧力P103は滅菌剤を容器11内に注入するのに適した圧力であり、またプラズマを点灯させるのに適した圧力でもある。前記第3圧力P103は、好ましくは30Paから200Paである。第3圧力P103は、水が凍結する3重点圧力610Paよりも低い圧力ではあるが、前述の乾燥工程により残留水が存在しないため、滅菌処理対象物2が氷結することはない。工程107における容器11(容器外箱),容器内箱12及び滅菌処理対象物2を加熱するために、高周波発生部13から容器11と容器内箱12の間に高周波13が印加されてプラズマが点灯されてもよい。
【0068】
前記工程107の終了時点108において、滅菌剤注入部8で規定量の滅菌剤が蒸気または霧状にされ、滅菌剤注入電磁弁9を通して容器11内に注入される。更に工程109において、容器11内に注入された滅菌剤は、多孔性の容器内箱12の多数の孔部を通過し、滅菌処理対象物2に浸透して滅菌作用を行う。工程109には、滅菌作用の発現に必要とされる時間が割り当てられている。この工程109が終了すると、工程110において、容器11内の圧力は第2圧力P102に戻され、第1の滅菌工程が終了する。より好ましくは、複数回の工程109を繰り返すことにより、滅菌処理をより確実なものとすることができる。
【0069】
前記工程101の減圧(すなわち、水の3重点以上の圧力である第1圧力P101の減圧)に要する時間T101は、滅菌処理システムの作動が開始されてから、圧力測定部14の出力をモニタし、時間測定部26で計測したものである。工程101に要した時間T101は滅菌処理対象物2に存在する残留水の量と相関関係があり、残留水が多いほど工程101に必要な時間T101は長くなる。
【0070】
図6は、図5のグラフで示される一連の工程において、残留水の有無を判断する判断部25により残留水「無し」と判断された場合の一例を拡大して示すグラフである。この図6のグラフにおいて、工程101aは、滅菌処理対象物2の残留水の有無を判断するための基準とされる工程であり、滅菌処理対象物2に残留水が「無し」である場合の工程101aにおいて、第1圧力P101への減圧に必要な時間(標準所要時間)T101aは、時間メモリ部27に記録されている。
【0071】
第1圧力P101への減圧に実際に要した時間(実測所要時間)T101と、前記標準所要時間T101aとを比較して、T101≦T101aであれば滅菌処理対象物2に残留水は「無し」と判断部25において判断し、工程102の終了時点112から工程106及び工程107を経て工程108へと進む。標準所要時間T101aは滅菌処理対象物2の種類、例えば、ピンセット,剪刀,鉗子,内視鏡,カテーテル,トレー,理容器具,包丁,まな板,ワクチン等、によって異なる。従って、これら滅菌処理対象物2の種類ごとに、それぞれ異なった標準所要時間T101aが設定される。
【0072】
図7は、図5のグラフで示される一連の工程において、残留水の有無を判断する判断部25により残留水「有り」と判断された場合の一例を拡大して示すグラフである。この図7のグラフで示される一連の工程において、前記実測所要時間T101と標準所要時間T101aについて、T101>T101aである場合、前記判断部25によって滅菌処理対象物2に残留水が「有り」と判断され、工程102の終了時点112から、工程103及び工程104を経て乾燥工程105に進む。
【0073】
前記工程105に実際に要した実測所要時間T105と、時間メモリ部27に記録されている標準所要時間T101aを比較し、T105>T101aで残留水「有り」と判断された場合には、工程102の終了時点112から、工程103及び工程104を経て、工程105へ順番に移行し、乾燥工程が繰り返される(図7参照)。
逆に、図8に示すように、T105≦T101aで残留水「無し」と判断された場合には、工程102の終了時点112から工程106,工程107,工程108,工程109,工程110の順番で工程が進み、全体の滅菌工程が終了する。
【0074】
工程104の時間が非常に短時間であるか又は0(ゼロ:零)である場合、工程105のスタート時における容器11内の圧力が大気圧と異なる可能性があり、この場合には、工程105に要する実測所要時間T105に差異が生じる。このため、工程105のスタート時に、圧力測定部14で測定される容器11内の圧力と大気圧との差が時間差計算部28で計算され、工程105に実際に要する実測所要時間T105が補正されるようにすることができる(図3Cのステップ#18参照)。
【0075】
更に、乾燥工程が繰り返される回数に制限を設けておき、制限回数を越えると装置1の表示部(不図示)にエラーを表示し、滅菌処理装置1の作動を停止させるようにすることもできる(前述の図3Cのステップ#20及びステップ#21参照)。
かかる構成によれば、滅菌処理対象物2に残留水が「有り」の場合、乾燥工程が繰り返されるが、容器11内の圧力が水の3重点圧力より小さくなることはないため、滅菌処理対象物2において、水が凍結することはなく、滅菌処理対象物2から残留水が無くなってから滅菌剤が注入される工程に進むので、残留水の凍結に起因する問題を払拭することができる。
【0076】
図9は、例えば、ステンレス製トレーを滅菌処理対象物として採用した場合を例にとって、第1実施例に係る滅菌処理方法を適用した場合について、減圧時における容器内圧力と時間の関係に関する実験結果を示すグラフである。
この図に示されるように、トレー上に残留水が存在する場合、減圧開始から水の3重点圧力610Paに達するのに要する時間T101は、トレー上の残留水が多いほど長いことが分かる。
【0077】
また、図10は、図9に示した実験例における水の3重点圧力610Pa付近の減圧時における容器内圧力と時間の関係を拡大して示すグラフである。この図に示されるように、残留水が0mLの場合と1mL以上ある場合とでは、減圧開始から容器11内の圧力が610Paに到達するのに要する時間T101に明確な差がある。従って、残留水が0mLの場合と1mLの場合の間で適宜決定した残留水量を残留水「無し」の上限として、標準所要時間T101aを決めることにより、残留水の有無を判別することが可能である。
【0078】
次に、第1実施例に係る滅菌処理方法を適用する場合について、滅菌処理対象物2が比較的長尺で中空部を有するチューブにおいて圧力パターンの違いが残留水量及ぼす影響を検証する実験を行った。この実験の結果を図11に示す。
検証は1回の加熱工程を有する2種類の圧力パターンによるもので、滅菌処理対象物2として、外径が2.0mm,内径が1.0mm,長さが3700mmのPTFE(フッ素樹脂)製チューブを用い、該チューブの一方を封止し水を満水(水量約2.9mL)として容器11の中に置き、容器11の窓をから残留水の状態を観察した。
【0079】
図11において、第1の圧力パターンは、先行技術特許文献1に記載の方法と同様の方法によるものであり、最初の減圧工程で水の3重点圧力である610Paより低い50Paまで一気に容器11内を減圧し、3分間にわたって50Paを維持した後、乾燥工程として大気圧まで戻した直後に、再び50Paまで減圧したものである。そして、この再度50Paに減圧した直後に大気圧に戻し、残留水量を測定した。
【0080】
前記第1の圧力パターンでは、大気圧から減圧を開始すると減圧沸騰によりチューブ内の水が排水されるが、水の3重点圧力の610Paを超えて約300〜200Paの圧力に達すると、水が凍結してチューブ出口に氷が発生し、チューブから水が排水されなくなる。更に、圧力50Paで3分間維持される間、凍結した氷を解凍するために、プラズマが点灯されてプラズマエネルギーが供されるが、凍結の状態は変化せずチューブ内には水が残留していた。
【0081】
凍結状態が解消されなかったのは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、プラズマは容器(外箱)11と容器内箱12の間に発生し、この空間部分には発生したプラズマが大量に存在するが、滅菌処理対象物2のある容器内箱12の中には、容器11と容器内箱12の間に発生するプラズマの一部が多孔性の容器内箱12を通り拡散して存在するだけである。従って、滅菌処理対象物2まで到達するプラズマは少量であり、凍結した氷の解凍までは至らないことが考えられる。
【0082】
容器11内の圧力は、50Paの圧力で3分間維持された後、大気圧に戻されると、チューブ出口の氷は解凍されて水となった。これは、容器内に流入する外気を介して、加熱された容器11の熱がチューブ及び残留水に移転されて氷が解凍されたことによる。再度50Paに減圧される過程で、チューブ内にある残留水の一部は減圧沸騰でチューブから排出されるが、50Paに達した時点ではチューブ内に残留水が見られた。50Paに達した直後、大気圧に戻してチューブを容器11の外に出して残留水を測定した結果、0.6mLの水が測定された。
【0083】
一方、第2圧力パターンは、本発明の第1実施例に係る方法と同様であり、最初の減圧工程で、容器11内の圧力を水の3重点圧力である610Pa以上の1100Paまで減圧し、3分間1100Paを維持した後、乾燥工程として大気圧に戻し、その後、再び50Paまで減圧した直後に、大気圧に戻して残留水量を測定したものである。
【0084】
大気圧から減圧を開始すると減圧沸騰によりチューブ内の水が排水される。水の3重点圧力である610Paより高い圧力1100Paで維持される間にも、減圧沸騰により排水が継続されている。これは減圧沸騰で気化熱を奪われ低温化した水に、チューブが有する熱量が3分間の間に移転し、水の温度が上昇して沸騰が継続したためである。なお、1100Paで3分間維持された後もチューブ内には残留水が見られたが、水の3重点圧力である610Paより圧力が高いため、水は凍結することはなかった。
【0085】
更に、圧力1100Paで3分間維持した後、圧力は大気圧に戻され、容器11に流入する外気を介して加熱された容器11の熱が、チューブ及び残留水に移転されて、チューブ及び残留水の温度が上昇する。次に、容器11内が50Paに向けて減圧される過程で、チューブ内の残留水の一部は減圧沸騰でチューブから排出されるが、50Paに達した時点ではチューブ内にわずかに残留水が見られた。50Paに達した直後、大気圧に戻してチューブを容器の外に出して残留水を測定した結果、0.2mLの水が測定された。
【0086】
以上より、本発明の第1実施例と同様の第2の方法(第2の圧力パターン)が、先行技術特許文献1に記載の方法と同様の第1の方法(第1の圧力パターン)に比べて残留水が少なくなったのは、以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、前記第1の方法では、チューブの出口部で水の凍結が発生し、チューブ出口部が氷で塞がり、チューブ内の排水が効果的に行われなかったために残留水が多くなるが、第2の方法では、かかる水の凍結発生が効果的に防止されるので、残留水量を低減できたものと考えられる。
【0087】
よって、チューブ内の残留水の排水および乾燥性能については、全工程で水の凍結発生を防止できる第2の方法が、第1の方法よりも優れていると言える。また、第1の方法の場合には、全工程に要する時間が15分50秒であり、第2の方法の場合(同:10分30秒)に比べて長くなっており、第2の方法の方が、省時間・省エネルギーの点でも優れていると言える。
【0088】
更に、第1実施例における繰り返し加熱工程を行わない場合について、滅菌処理対象物2が中尺で中空部を有するチューブにおいて圧力パターンの違いが残留水量に及ぼす影響を検証する実験を行った。この実験の結果を図12に示す。
この実験は、1回のみの加熱工程を有する2種類の圧力パターンを用いたもので、
で、滅菌処理対象物2としては、外径が2.0mm,内径が1.0mm,長さが2000mmのPTFE(フッ素樹脂)製チューブとし、前記チューブの一方を封止して水を満水(水量約1.6mL)とし、容器11の中に置いて容器11の窓を通して状態を観察した。
【0089】
第1の圧力パターンは、先行技術文献1に記載の方法と同様に、最初の減圧工程で、容器11内を水の3重点圧力である610Paより低い50Paまで減圧し、3分間50Paの圧力に維持した後、大気圧に戻したものである。この場合、大気圧から減圧を開始すると減圧沸騰によりチューブ内の水が排水されるが、水の3重点圧力である610Paを下回って約300〜200Paの圧力に達すると、水が凍結して、チューブ出口に氷が発生してチューブから水が排水されなくなる。また、減圧後、圧力50Paで3分間維持される間、凍結した氷の解凍のために、プラズマを点灯してプラズマエネルギーを供給したが、凍結の状態は変化せずチューブ出口に氷が付着してチューブ内には水が残留したままであった。なお、残水量測定のため、大気圧に戻す過程で氷は解けた。チューブを容器11の外部に出して残留水を測定した。その結果、0.4mLの残留水が測定された。
【0090】
第2の圧力パターンは本発明の第1実施例に係る方法で、最初の減圧工程で、容器11内を水の3重点圧力である圧力610Paより高い圧力1100Paまで減圧し、3分間1100Paの圧力に維持した後、再び50Paまで減圧した後、大気圧に戻したものである。大気圧から減圧を開始すると、減圧沸騰によりチューブ内の水が排水される。水の3重点圧力である610Paより高い圧力1100Paで維持される間にも排水が継続された。これは、減圧沸騰の気化熱を奪われ、低温化した水にチューブ有する熱量が3分間の間に移転して、水の温度が上昇して沸騰が継続したためである。なお、1100Paで3分間維持し、その後、50Paまで減圧した直後に、大気圧に戻してチューブを容器11の外部に出して残留水を測定した。その結果、残留水は測定されなかった(残留水0.0mL)。
【0091】
先行技術特許文献1に記載の方法と同様の第1の方法が、第2の本発明の方法に比べて残留水が多い理由は、第1の方法では、チューブの出口部で水の凍結が発生して、チューブ出口部が氷で塞がり、チューブ内の排水が効果的に行われなかったためである。したがって、チューブ内残留水の排水・乾燥性能については、全工程で水の凍結発生を防止した第2の方法が優れていると言える。ちなみに、全工程に要する時間は、第1及び第2の方法とも、同じ8分50秒であり、両者に優劣の差はなかった。
【0092】
次に、滅菌処理対象物2に残留水があった場合における、本発明の第2実施例に関ついて、図13のグラフを参照しながら説明する。図13は、前記第2実施例の滅菌工程における時間と容器内の圧力の関係を示すグラフである。
減圧沸騰を利用して滅菌処理対象物を乾燥する滅菌処理法では、一般的に、容器11の内側は排気ポンプ20により減圧され、滅菌処理対象物2の中の(若しくは表面等に付着残留した)残留水は減圧沸騰により蒸発して排水される。水の蒸発により(つまり、気化熱を奪われることにより)、残留水は冷却されて温度が低下することになる。以下、この工程を「工程113」と称する。
【0093】
本実施形態では、前記工程113の減圧工程において、水の3重点以上の圧力である第1圧力P101bまで減圧される。第1圧力P101bは、水の凍結が生じる水の3重点圧力610Pa以上の圧力であり、好ましくは610Paから2000Pa、最も好ましくは670Paから1000Paの圧力である。
第1圧力P101bまで減圧後、排気電磁弁21が閉じられ、容器11内の圧力は、残留水の蒸発により第1圧力P101bより上昇する工程114とへ移行する。後述するように、工程114の終了点124において、第1圧力P101bからの圧力増加率Rp114が標準圧力増加率Rp114aより大きい場合、工程115へ移行する。工程114の時間T114は圧力増加率Rp114を導き出すために必要な時間である。
【0094】
工程115は、外気導入電磁弁18が解放され、容器11内は、大気圧または大気圧近傍の第2圧力P102bに戻されて、温度を高めた外気が滅菌処理対象物2に当たり滅菌処理対象物2及び残留水の温度を上げていくものである。更に、工程116は、第2圧力P102bを維持する工程である。工程116の時間は、外気の熱量の滅菌処理対象物2及び残留水に移転するのに要する時間であり、滅菌処理対象物2の種類等によって任意に決定することができる。
【0095】
滅菌処理対象物2及び残留水は、工程115及び工程116の期間に加熱されて、工程117の開始時点では工程114の終了時点124より温度が高いため、減圧沸騰により残留水は蒸発する。更に上記のような乾燥工程は、工程115,工程116,工程117,工程114の順番で繰り返されて、残留水の乾燥が促進される。工程114の終了時点124で残留水が「無し」と判断された場合には、工程118を経て工程119に移行する。工程119では、容器11内は、第1圧力P101bと同等もしくはそれ以下の圧力である第3圧力P103bにまで減圧される。
【0096】
前記第3圧力P103bは、滅菌剤を容器31内に注入するのに適した圧力であり、またプラズマを点灯させるのに適した圧力でもあり、好ましくは30Paから200Paの圧力である。第3圧力P103bは、水の凍る3重点圧力610Paよりも低い圧力ではあるが、前記乾燥工程により、残留水が存在しないため、滅菌処理対象物2に氷が発生することはない。
【0097】
更に、容器11内を第3圧力P103bまで減圧した後、容器(外箱)11,容器内箱12及び滅菌処理対象物2の加熱のために、高周波発生部13から容器外箱11と容器内箱12との間に高周波が印加されて、プラズマが点灯されてもよい。工程119の終了時点120において、滅菌剤注入部8により、規定量の滅菌剤が蒸気または霧状の形で滅菌剤注入電磁弁9を通して容器11内に注入される。工程121おいて、容器11内に注入された滅菌剤が、多孔性の容器内箱12の多数の孔部を通過し、滅菌処理対象物2に浸透して滅菌作用を行う。工程121には、滅菌作用の発現に必要とされる期間が割り当てられている。工程121の後、容器11内の圧力は、工程122を経て第2圧力P102bに戻されて、第1の滅菌工程が終了する。更に好ましくは、複数回の工程119を繰り返すことにより、滅菌作用をより確実なものにすることができる。
【0098】
図14は、前記図13のグラフにおいて、残留水「無し」と判断された場合の一例を拡大して示すグラフである。この図に示すように、工程114の終了時点124において、前記判断部25が、滅菌処理対象物2に残留水が「無し」と判断した場合には、圧力測定部14で測定される工程114の開始時点123の圧力P123と終了時点124の圧力P124とに基づく圧力差と、工程114に要する時間T114から、圧力増加率測定部30において、圧力増加率Rp114が算出される。
【0099】
前記増加率メモリ部31には、残留水が「無し」である場合の標準圧力増加率Rp114aが記録されている。容器11内の圧力増加率と滅菌処理対象物2にある残留水の量との間には相関関係があり、残留水が多いほど発生する蒸気による蒸気圧が大きくなり、圧力増加率も大きくなる。測定された圧力増加率Rp114と標準圧力増加率Rp114aとが、圧力増加比較部33で比較され、実測圧力増加率Rp114≦標準圧力増加率Rp114aである場合には、滅菌処理対象物2には残留水は「無し」と判断部25で判断される。
そして、工程114の終了時点124から、工程118,工程119,工程121及び工程122の順番で移行する。標準圧力増加率Rp114aは、滅菌処理対象物2の種類、例えば、ピンセット,剪刀,鉗子,内視鏡,カテーテル,トレー,理容器具,包丁,まな板,ワクチン等の種類が異なる場合には、それぞれの標準圧力増加率が設定される。
【0100】
図15は、前記図13のグラフにおいて、残留水「有り」と判断された場合の一例を拡大して示すグラフである。また、図16は、図15のグラフに示された工程に続く工程として、残留水の有無を判断する場合の一例を示すグラフである。
前記圧力増加率比較部33において、実測圧力増加率Rp114>標準圧力増加率Rp114aとなり、この結果をもって、前記判断部25が滅菌処理対象物2に残留水が「有り」と判断した場合には、図15に示すように、工程114の終了時点124から、工程115,工程116,工程117,工程114の順番で行う乾燥工程に進むことになる。
【0101】
逆に、圧力増加率比較部33において、実測圧力増加率Rp114≦標準圧力増加率Rp114aとなり、この結果をもって、判断部25が、滅菌処理対象物2に残留水が「無し」と判断した場合には、工程114の終了時点124から、工程118,工程119,工程121,工程122の順番で滅菌工程が終了する。
【0102】
乾燥工程が繰り返される回数に制限を設けておき、制限回数を越えると装置1の表示部(不図示)にエラーを表示し、滅菌処理装置1の作動を停止させるようにすることもできる(前述の図4Cのステップ#51及びステップ#52参照)。
かかる構成によれば、滅菌処理対象物2に残留水が「有り」の場合、乾燥工程が繰り返されるが、容器11内の圧力が水の3重点圧力より小さくなることはないため、滅菌処理対象物2において、水が凍結することはなく、滅菌処理対象物2から残留水が無くなってから滅菌剤が注入される工程に進むので、残留水の凍結に起因する問題を払拭することができる。
【0103】
次に、前記第2実施例に係る滅菌処理方法に関連して、容器11内の残留水量をパラメータとし、容器11内を水の3重点圧力以上の圧力に減圧した後における圧力増加率を調べる実験を行った。図17は、この実験結果を示すグラフであり、容器11内に残留水が存在し、容器11内の圧力が1000Paまで減圧された時点で排気ポンプ20に連なる排気電磁弁21を閉弁した場合における、経過時間と容器内圧力の関係を示している。
【0104】
具体的には、容器11内にプラスチック製のトレー又はボウルを配置し、その中に残留水を容れた状態で容器11内を減圧し、水の3重点圧力610Paより高い例えば1000Paの圧力に達した時点で排気電磁弁21を閉じる。そして、容器11内の圧力が1000Paに到達してからの経過時間と容器11内の圧力との関係を調べた。この実験を、残留水量が0mL〜50mLの間で異なる5つの場合について行った。
【0105】
図17のグラフから分かるように、残留水量が0mLの場合と、残留水量が1mL以上である場合とで、圧力の増加率が明確に異なっている。従って、残留水量が0mLと1mLの間の適宜決定した残留水量を、残留水が「無し」の上限として、標準圧力増加率を決めることにより、残留水の有無を判別することができる。
【0106】
また、滅菌処理対象物2における残留水及びその凍結の有無と、容器11内に注入された滅菌剤の滅菌処理対象物2における残留量を調べる実験を行った。図18は、この実験における圧力の変化パターン例を示すグラフであり、残留水の凍結ポイント及び過酸化水素残留濃度の測定ポイントが併せて示されている。
この実験では、滅菌処理対象物2に残留水があり、それが凍結した状態で滅菌剤が容器11内に注入された場合(第1のパターン)と、滅菌処理対象物2に残留水が無く従って凍結もない状態で滅菌剤が注入された場合(第2のパターン)の2種類のパターンについて、滅菌処理対象物2に残留する滅菌剤の残留量をそれぞれ測定し比較した。
【0107】
第1のパターンは、残留水が凍結した状態で滅菌剤を注入した場合についてのものである。具体的には、水50gをのせたステンレス製のトレーを容器11に入れて容器11内を減圧し、水の3重点圧力の610Paを過ぎて250Paの圧力になった時点において、減圧により気化熱が奪われた水が凍結して氷となった。更に減圧を続け、減圧開始して25分後、容器11内の圧力が110Paになった時点で、過酸化水素60%の滅菌剤2.2mLを注入した。過酸化水素の蒸気圧により8分後に容器11内の圧力は590Paになり、その後、容器11内の圧力を大気圧に戻した。
【0108】
トレーを容器11から取り出し、トレーに載っている氷が解けて過酸化水素の溶液になってから、該溶液でトレー表面全体を洗い、該溶液の過酸化水素濃度及び重量を測定することで、トレー及び氷に残留した過酸化水素量を求めた。その結果、該過酸化水素量をトレーの面積で除して得られた単位面積当たりの残留過酸化水素量は1.2mg/平方センチメートルであった。
【0109】
第2のパターンは、本発明に係る滅菌処理方法として、残留水が無く従って凍結もない状態で滅菌剤が注入された場合についてのものである。具体的には、乾燥したステンレス製のトレーを容器11に入れて容器11内を減圧し、110〜120Paの圧力に維持した後、減圧開始して12分後に、過酸化水素60%の滅菌剤2.2mLを注入した。過酸化水素の蒸気圧により8分後に容器11内の圧力は1250Paになり、この時点で容器11内の圧力を大気圧に戻した。
【0110】
更に、トレーを容器11から取り出して該トレーに適量の水を載せ、この水でトレー表面全体を洗って過酸化水素の溶液を作り、この溶液の重量及び過酸化水素濃度からトレーに残留した過酸化水素量を求めた。この過酸化水素量をトレーの面積で除して得られた単位面積当たりの残留過酸化水素量は、0.0053mg/平方センチメートルであった。
【0111】
以上の第1及び第2のパターンに加えて、第3のパターンでの実験も行った。この第3のパターンは、具体的には図示しなかったが、前記第2のパターンと同じく、本発明に係る滅菌処理方法として、残留水が無く従って凍結もない状態で滅菌剤が注入された場合についてのものである。
【0112】
具体的には、ステンレス製のトレーに水10gを載せ、容器11に入れて容器11内を減圧し、(a)水の3重点圧力の610Paより高い700〜800Paの圧力で1分間維持し、その後、(b)大気圧に戻して大気圧を5分間維持し、その後、(c)容器11内を再び減圧する、一連の工程(a)〜(c)を8回繰り返し、前記トレー上に水が無いこと確認した後、60Paまで減圧し、当該圧力を12分間保持し、その後、過酸化水素60%の滅菌剤2.4mLを注入した。過酸化水素の蒸気圧により、8分後には容器11内の圧力が2300Paになり、この時点で容器11内の圧力を大気圧に戻した。
【0113】
トレーを容器から取り出して該トレーに適量の水を載せ、この水でトレー表面全体を洗って過酸化水素の溶液を作り、この溶液の重量及び過酸化水素濃度からトレーに残留した過酸化水素量を求めた。この過酸化水素量をトレーの面積で除して得られた単位面積当たりの残留過酸化水素量は0.0019mg/平方センチメートルであった。
【0114】
下記表1は、以上の第1,第2及び第3のパターンでの実験結果を取り纏めて示すものである。
【表1】
【0115】
以上の実験結果より、トレーに氷が発生し氷がある状態で滅菌剤を注入した場合には、トレーに氷が発生していない場合に比べて、次のような問題点を有することが分かった。
(1)トレーに残留する滅菌剤の量は240倍以上である。これは、滅菌剤の蒸気が低温のトレー及び氷に次々に結露したために低温化していないトレーに比べて残留量が大きくなったと考えられる。
(2)滅菌剤の付着が、低温のトレー及び氷に集中するために、滅菌剤の付着量にバラツキが発生し、付着量の多い所では滅菌剤の残留が問題となり、かつ付着量の少ない所では滅菌不良が生じる。
(3)氷が付着した部分の滅菌処理対象物2の表面においては、滅菌剤が付着できず、滅菌不良が生じる。
すなわち、滅菌処理対象物2に残留水があり、減圧により氷が発生した場合には、滅菌剤の残留及び滅菌不良の原因となり得る。
【0116】
本発明に係る滅菌処理方法では、滅菌処理対象物2を氷結させることなく、かつ乾燥が十分に行うまで水の3重点より低い圧力まで減圧しないため、当該問題を根本的に回避することができる。
【0117】
以上のように、本発明によれば、滅菌処理対象物2を収納する容器11内を減圧した状態で滅菌処理する際に、前記容器11内の滅菌処理対象物2及びその近傍で残留水の凍結を発生させないことで、凍結による滅菌剤の凝集や細部へ滅菌剤が届かなく現象をなくするという目的を、水の3重点以上の圧力下で乾燥を行い、且つ、容器11内が十分に乾燥していることが確認できてから滅菌処理を行うことで達成できた。
【0118】
なお、本発明の滅菌処理方法及びその装置は、滅菌処理対象物2を水の3重点圧力より低い圧力に減圧する工程を有する各種滅菌処理装置(プラズマガス滅菌器、過酸化水素ガス滅菌器、過酢酸蒸気滅菌器等)に適用可能なものである。また、滅菌処理対象物2として、カット野菜,薬草,タバコの葉,植物の種子,卵,米,茶,きのこなどがあり、食品の鮮度保持,風味変質防止,乾燥などにも適用可能なものである。更に、靴の臭気除去や土壌の消毒などにも適用可能であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する方法、及びかかる方法を用いた滅菌処理装置として、有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 滅菌処理装置
2 滅菌処理対象物
6 滅菌剤供給系
7 滅菌剤を蓄えるタンク
8 滅菌剤注入部
9 滅菌剤注入電磁弁
10 滅菌処理系
11 容器
12 容器内箱
13 高周波発生部
14 圧力測定部
15 吸排気配管系
16 外気導入配管系
17 空気清浄フィルタ
18 外気導入電磁弁
19 排気配管系
20 排気ポンプ
21 排気電磁弁
22 排気フィルタ
23 制御部
24 演算部
25 判断部
26 時間測定部
27 実測所要時間を記録するメモリ部
28 時間比較部
29 時間差計算部
30 圧力増加率測定部
31 圧力増加率に関係するメモリ部
32 圧力増加率計算部
33 圧力増加率比較部
P101 水の3重点以上の圧力
P103 水の3重点より低い圧力
T101 第1圧力P101まで減圧するのに要する時間
T101a 第1圧力P101まで減圧するのに要する標準所要時間
Rp114 実測圧力増加率(%)
Rp114a 標準圧力増加率(%)
T102 一定期間
T105 工程105に要した時間
T106 第2圧力P102bを維持する時間
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】

【手続補正書】
【提出日】20160419
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理方法において、
<A1>容器内圧力を水の3重点以上の圧力である第1圧力まで減圧する工程と、
<A2>前記第1圧力を維持する工程と、
<A3>容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍の圧力である第2圧力まで戻す工程と、
<A4>前記第1圧力と同等もしくはそれ以下の圧力である第3圧力まで減圧する工程と、
<A5>滅菌剤を容器内に注入する工程と、
を有する、ことを特徴とする滅菌処理方法。
【請求項2】
<A6>前記<A2>の工程後、容器内に水の残存の有無を判断する工程を有し、水が残存すると判断した場合、工程<A3>,<A1>,<A2>,<A6>の順番で処理を行い、水が残存しないと判断した後、工程<A4>,<A5>の順番で処理行うことを特徴とする請求項1記載の滅菌処理方法。
【請求項3】
前記<A6>の工程では、前記<A1>の工程における実測所要時間に基づいて判断することを特徴とする請求項2記載の滅菌処理方法。
【請求項4】
前記<A6>工程の判断は、予めメモリ部に記録している標準所要時間と、前記実測所要時間を比較し、実測所要時間が標準所要時間以下である場合、水が残存しないと判断することを特徴とする請求項3記載の滅菌処理方法。
【請求項5】
容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理方法において、
<B1>容器内圧力を水の3重点以上の圧力である第1圧力まで減圧する工程と、
<B2>前記第1圧力まで減圧後一定時間加減圧の操作を停止する工程と、
<B3>容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍の圧力である第2圧力まで戻す工程と、
<B4>前記第1圧力と同等もしくはそれ以下の圧力である第3圧力まで減圧する工程と、
<B5>滅菌剤を容器内に注入する工程と、
<B6>前記<B2>の工程後に、容器内に水の残存の有無を判断する工程と、
を有し、水が残存すると判断した場合には、工程<B3>,<B1>,<B2>,<B6>の順番で処理を行い、水が残存しないと判断した後は、工程<B4>,<B5>の順番で処理を行う、
ことを特徴とする滅菌処理方法。
【請求項6】
前記<B6>の工程では、前記<B2>の工程における単位時間当たりの実測圧力上昇率に基づいて判断することを特徴とする請求項5記載の滅菌処理方法。
【請求項7】
前記<B6>の工程の判断は、予めメモリ部に記録している標準圧力上昇率と、前記実測圧力上昇率を比較し、該実測圧力上昇率が標準圧力上昇率以下である場合には、水が残存しないと判断することを特徴とする請求項5記載の滅菌処理方法。
【請求項8】
容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理方法において、容器内圧力を水の3重点以上の圧力である第1圧力まで減圧し、一定時間経過し、次いで水の3重点以下の圧力である第3圧力まで減圧し、滅菌剤を容器内に注入することを特徴とする滅菌処理方法。
【請求項9】
容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理装置において、
<C1>大気圧もしくは大気圧近傍から容器内圧力を所望の圧力まで減圧する減圧機構と前記圧力を維持するための圧力維持機構と容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍に戻す圧力解放機構とを有する圧力コントロール部と、
<C2>滅菌剤を容器内に注入する滅菌剤注入部と、
<C3>前記容器内の圧力を測定する圧力測定部と、
<C4>前記圧力維持機構により前記水の3重点以上の圧力に減圧し維持した後、容器内に水の残存の有無を判断する判断部と、
<C5>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧するのに要する標準所要時間を記録するメモリ部と、
<C6>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧するのに要する実測所要時間を測定する時間測定部と、
<C8>前記メモリ部にあらかじめ記憶されている標準所要時間と前記時間測定部で測定した実測所要時間とを比較する比較部と、
<C9>前記比較部における比較の結果、容器内の水の残量を判断する判断部と、
を有することを特徴とする滅菌処理装置。
【請求項10】
大気圧から所望圧力まで減圧するのに要する時間と、大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧するのに要する時間との差を計算する計算部と、
<C8>における標準所要時間と実測所要時間を補正する補正部と、をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の滅菌処理装置。
【請求項11】
容器内を減圧し当該容器内の滅菌処理対象物を滅菌剤により滅菌処理する滅菌処理装置において、
<D1>大気圧もしくは大気圧近傍から容器内圧力を所望の圧力まで減圧する減圧機構と容器内圧力を大気圧もしくは大気圧近傍に戻す圧力解放機構とを有する圧力コントロール部と、
<D2>滅菌剤を容器内に注入する滅菌剤注入部と、
<D3>前記容器内の圧力を測定する圧力測定部と、
<D4>前記圧力維持機構により前記水の3重点以上の圧力に減圧し一定時間経過後、容器内に水の残存の有無を判断する判断部と、
<D5>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧後、圧力制御を所定の時間停止させる際に用いる標準圧力増加率を記録するメモリ部と、
<D6>大気圧または大気圧近傍の圧力から所望圧力まで減圧後、圧力制御を所定の時間停止させる際の実測圧力増加率を測定する圧力増加率測定部と、
<D8>前記メモリ部にあらかじめ記憶されている標準圧力増加率と前記実測圧力増加率を比較する比較部と、
<D9>前記比較部における比較の結果、容器内の水の残量を判断する判断部と、
を有することを特徴とする滅菌処理装置。
【国際調査報告】