(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050769
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】防眩膜を備える太陽電池モジュールおよびその製造方法、太陽電池用防眩膜およびその製造方法ならびに防眩膜形成用塗布液
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/054 20140101AFI20160725BHJP
【FI】
   !H01L31/04 620
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
【出願番号】2014538473
(21)【国際出願番号】JP2013075595
(22)【国際出願日】20130920
(31)【優先権主張番号】2012211510
(32)【優先日】20120925
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
【住所又は居所】大阪府大阪市北区中之島二丁目3番18号
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 直人
【住所又は居所】日本国大阪府大阪市北区中之島二丁目3番18号 株式会社カネカ内
(72)【発明者】
【氏名】清水 一弘
【住所又は居所】日本国大阪府大阪市北区中之島二丁目3番18号 株式会社カネカ内
(72)【発明者】
【氏名】高橋 武良
【住所又は居所】日本国大阪府大阪市北区中之島二丁目3番18号 株式会社カネカ内
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA01
5F151JA30
(57)【要約】
本発明の太陽電池モジュールは、透明絶縁基板上に防眩膜を備える。防眩膜は、無機バインダ中に透明な無機微粒子を含有しており、クラックを有していない連続皮膜である。防眩膜は、平均膜厚dが500nm〜2000nm、表面の最大高さRyが1000nm〜10000nmであることが好ましく、無機バインダはSi−H結合およびSi−N結合の加水分解によって得られるSi−O結合を含有するシリコン酸化物を主成分とするものが好ましい。無機微粒子は、表面が粉砕面からなる非球状粒子であり、防眩膜の断面観察から算出される平均一次粒子径が0.1μm〜5.0μmであることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明絶縁基板の第一の主面に少なくとも1つの太陽電池セルを備え、前記透明絶縁基板の第二の主面に防眩膜を備える太陽電池モジュールであって、
前記防眩膜は、無機バインダ中に透明な無機微粒子を含有しており、クラックを有していない連続皮膜であり、
前記防眩膜は、平均膜厚dが500nm〜2000nm、表面の最大高さRyが1000nm〜10000nmであり、
前記無機バインダは、Si−H結合およびSi−N結合の加水分解によって得られる、Si−O結合を含有するシリコン酸化物を主成分とするものであり、
前記無機微粒子は、表面が粉砕面からなる非球状粒子であり、防眩膜の断面観察から算出される平均一次粒子径が0.1μm〜5.0μmである、
太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記防眩膜は、表面の算術平均粗さRaが250nm〜2000nmであり、かつ凹凸周期Smが1μm〜30μmである、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記防眩膜は、膜厚dと最大高さRyとの比Ry/dが1〜20である、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記無機微粒子は、SiOを主成分とするものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記防眩膜の透明絶縁性基板と反対側の面に、さらに第二の無機層を備え、
前記第二の無機層は、平均膜厚dが50nm〜1000nmであり、前記防眩膜よりも小さな屈折率を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記少なくとも1つの太陽電池セルは、前記透明絶縁基板側から第一電極層、光電変換ユニットおよび第二電極層を備え、これらの各層に線状の分離溝が設けられることにより複数のセルに分割されるとともに、複数のセルが電気的に直列または並列に接続されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記少なくとも1つの太陽電池セルは、結晶シリコン基板を備える結晶シリコン系太陽電池セルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記透明絶縁基板の第二の主面上に、前記防眩膜が形成された防眩領域と、防眩膜が形成されていない非防眩領域とを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記防眩膜の膜中に、顔料または染料をさらに含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールを製造する方法であって、
前記透明絶縁基板の第一の主面に太陽電池セルが形成されるセル形成工程後に、前記透明絶縁基板の第二の主面に防眩膜形成用塗布液が塗布されて防眩膜が形成される防眩膜形成工程が実施される、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項11】
請求項6に記載の太陽電池モジュールを製造する方法であって、
前記透明絶縁基板の第一の主面に太陽電池セルが形成されるセル形成工程後に、前記透明絶縁基板の第二の主面に防眩膜形成用塗布液が塗布されて防眩膜が形成される防眩膜形成工程が実施され、
前記セル形成工程において、前記透明絶縁基板の第二の主面側からレーザ光が照射されることにより、前記分離溝が形成される、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項12】
前記防眩膜形成工程において、無機微粒子0.01〜20重量%、ポリシラザン0.1〜20重量%および溶媒を含有する防眩膜形成用塗布液が、透明絶縁基板の第二の主面上に塗布された後、
前記防眩膜形成用塗布液中の溶媒が乾燥されるとともにポリシラザンが硬化される、請求項10または11に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項13】
平均二次粒子径が0.1μm〜10μmの無機微粒子が液中に添加されることにより前記防眩膜形成用塗布液が調製される、請求項12に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項14】
前記セル形成工程が屋内で行われた後、セル形成後の基板が屋外に搬出され、前記防眩膜形成工程が屋外で行われ、前記透明絶縁基板の第二の主面上への前記防眩膜形成用塗布液の塗布がスプレー法により行われる、請求項10〜13のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの製造方法に用いられる防眩膜形成用塗布液であって、無機微粒子0.01〜20重量%、ポリシラザン0.1〜20重量%および溶媒を含有する、防眩膜形成用塗布液。
【請求項16】
透明絶縁基板の一方の主面に、太陽電池モジュール用の防眩膜を形成する方法であって、
無機微粒子0.01〜20重量%、ポリシラザン0.1〜20重量%および溶媒を含有する防眩膜形成用塗布液が、透明絶縁基板の表面に塗布される塗布工程、および
前記防眩膜形成用塗布液の溶媒が乾燥されるとともにポリシラザンが硬化される硬化工程を有し、
前記無機微粒子は、表面が粉砕面からなる非球状粒子であり、防眩膜の断面観察から算出される平均一次粒子径が0.1μm〜5.0μmである、防眩膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩膜を備える太陽電池モジュールおよびその製造方法に関する。また、本発明は太陽電池モジュール用防眩膜およびその製造方法、ならびに防眩膜の形成に用いられる塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンエネルギの利用がますます叫ばれるようになり、それに伴い太陽電池の利用の促進が図られている。太陽電池は、一般に、表面カバーガラスと裏面カバーフィルムとの間に、単結晶シリコンやシリコン系薄膜、化合物半導体等により構成される起電力素子(太陽電池セル)が樹脂で封止された太陽電池モジュールとして実用に供される。また、太陽電池モジュールのコストを低減する構造として、ガラス等の透明絶縁基板に、光入射側から透明電極層、半導体層、第二電極層を、レーザスクライブ法により各層をパターニングしながら順次形成して得られる、基板一体型薄膜系太陽電池モジュールも提案されている。
【0003】
近年では、市街地で住宅の屋根やビルの外壁に太陽電池モジュールを取付けて、その発電エネルギーを、住宅やオフィスで利用することが主流となりつつある。しかしながら、光入射側の表面にガラスを備える太陽電池モジュールを屋根や外壁に設置した場合、太陽光の入射角度等によっては、太陽電池モジュールによる反射光が隣接する家屋の中を照らす等の光公害の問題が生じ得ることが指摘されている。
【0004】
そこで、太陽電池モジュールのガラス基板の光入射面上に凹凸形状を形成し、光を乱反射させることで太陽光が同一方向に反射することを防止し、眩しさを抑制する検討が行われている。しかしながら、ガラス基板自体に凹凸形状を形成するためには、高温での加工やフッ酸等の反応性の高い溶液の使用が必要であるため、太陽電池セルのモジュール化後の凹凸形成は困難である。また、モジュール化前に予めガラス基板自体に加工を施すと、ガラス基板でレーザ光が散乱されるため、レーザスクライブによる電極層や半導体層のパターニングが困難であるとの問題がある。
【0005】
これに対して、太陽電池セルをモジュール化した後に、バインダ中に無機微粒子を含む凹凸形状膜(以下、防眩膜)をガラス表面に形成することが提案されている(例えば特許文献1および特許文献2)。また、バインダ中に粒径50nm〜200nmの球状無機微粒子を含む反射防止層をガラス表面に形成して、太陽電池セルへの光の取り込み量を増大させることも提案されている(例えば特許文献3)。これらの従来技術では、バインダとしてテトラエチルオルトケイ酸(TEOS)等のアルキルシリケ―トの部分加水分解縮合物を用い、微粒子として球状シリカ等を用いることが提案されている。
【0006】
上記の他、ディスプレー表面に、アクリル系やウレタン系等の有機ポリマーマトリクス中に微粒子を含む皮膜を形成して、防眩膜とすることが行われている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−53316号公報
【特許文献2】特開平11−330508号公報
【特許文献3】WO2009/142156号国際公開パンフレット
【特許文献4】特開2004−4176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
太陽電池モジュールは、一般に日射面(北半球であれば南側)の屋根や外壁に設置され、太陽電池モジュールによる反射光は、主にモジュールの設置箇所の上側、すなわち隣接する家屋の屋根よりも上方に反射される。上記のように、ガラス基板表面に防眩膜や反射防止層を設けることが提案されているが、これまで光公害が大きく取り上げられることは少なく、ガラス基板表面に防眩膜や反射防止層が設けられた太陽電池モジュールが実用化されるには至っていなかった。
【0009】
しかし、近年、出力増大等の目的や、屋根瓦一体型の太陽電池モジュールを用いた場合の屋根全体としての統一感を持たせる目的で、日射面以外(例えば北面)にも太陽電池モジュールが設置されることが多くなっている。そのため、太陽電池モジュールに防眩性を付与することが急務となっている。かかる観点から、本発明者らが検討を行ったところ、特許文献3に開示されているような反射防止膜は、主に垂直入射光の反射量を低減させる目的で設計されているため、斜め入射する太陽光の反射量を低減させて光公害を抑制する効果を発揮し得るものではなかった。
【0010】
また、太陽電池モジュールは屋外等に長期間設置され、高温環境や風雨に暴露されるため、防眩膜には、高い物理的耐久性(硬度)に加えて、基板に対する高い密着性が要求される。本発明者らが、上記特許文献1〜4で提案されている防眩膜や反射防止膜を評価したところ、膜強度や、基板との密着性が十分ではないことが判明した。さらに、上記の従来技術では、バインダを硬化して防眩膜を形成する際に、100℃あるいはそれ以上の温度での加熱が必要となり、基板上に設けられた太陽電池セルの熱劣化を生じる場合がある。
【0011】
このような課題に鑑みて、本発明は、基板表面に、密着性および強度に優れ、かつ防眩効果の高い防眩膜が形成された太陽電池モジュールおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、透明絶縁基板の第一の主面に少なくとも1つの太陽電池セルを備え、透明絶縁基板の第二の主面に防眩膜を備える太陽電池モジュールに関する。
【0013】
本発明の太陽電池モジュールにおいて、防眩膜は、無機バインダ中に透明な無機微粒子を含有しており、クラックを有していない連続皮膜である。防眩膜は、平均膜厚dが500nm〜2000nm、表面の最大高さRyが1000nm〜10000nmであることが好ましい。また、防眩膜は、表面の算術平均粗さRaが250nm〜2000nmであり、かつ凹凸周期Smが1μm〜30μmであることが好ましい。防眩膜の膜厚dと最大高さRyとの比Ry/dは、1〜20が好ましい。
【0014】
無機バインダは、Si−H結合およびSi−N結合の加水分解によって得られるSi−O結合を含有するシリコン酸化物を主成分とするものであることが好ましい。無機微粒子は、表面が粉砕面からなる非球状粒子であり、防眩膜の断面観察から算出される平均一次粒子径が0.1μm〜5.0μmであることが好ましい。無機微粒子としては、SiOを主成分とするものが好適に用いられる。
【0015】
本発明の太陽電池モジュールは、防眩膜の透明絶縁性基板と反対側の面に、さらに第二の無機層を備えていてもよい。第二の無機層は、例えば、平均膜厚dが50nm〜1000nmであり、前記防眩膜よりも小さな屈折率を有する。このような構成によれば、第二の無機層が反射防止層として作用し、反射ロスが低減されるため、変換特性(特に短絡電流密度)が向上し得る。
【0016】
本発明の太陽電池モジュールの一実施形態において、太陽電池セルは、透明絶縁基板側から、第一電極層、光電変換ユニットおよび第二電極層を備え、これらの各層に線状の分離溝が設けられることにより複数のセルに分割されるとともに、複数のセルが電気的に直列または並列に接続されている。分離溝は、例えば、透明基板の第二の主面側からレーザ光を照射することによって形成される。
【0017】
本発明の太陽電池モジュールの一実施形態において、太陽電池セルは、結晶シリコン基板を備える結晶シリコン系太陽電池セルであってもよい。
【0018】
本発明の太陽電池モジュールは、防眩膜の膜中に顔料または染料をさらに含有することにより、カラー太陽電池モジュールとすることもできる。また、透明絶縁基板の表面の一部がマスク材で被覆された後に、防眩膜を形成することにより、透明絶縁基板の表面に、防眩膜が形成された防眩領域と、防眩膜が形成されていない非防眩領域とを備える、防眩パターンモジュールとすることもできる。
【0019】
さらに、本発明は前記太陽電池モジュールの製造方法、および太陽電池モジュール用の防眩膜の形成方法に関する。本発明の太陽電池モジュールの製造方法の一実施形態では、透明絶縁基板の第一の主面に太陽電池セルが形成されるセル形成工程後に、前記透明絶縁基板の第二の主面に防眩膜が形成される防眩膜形成工程が実施される。
【0020】
一実施形態では、透明絶縁基板の第二の主面上に防眩膜形成用塗布液を塗布後、塗布液中の溶媒が乾燥されるとともにポリシラザンが硬化されることによって防眩膜が形成される。防眩膜形成用塗布液は、無機微粒子0.01〜20重量%、ポリシラザン0.1〜20重量%および溶媒を含有することが好ましい。また、この塗布液は、例えば、平均二次粒子径が0.1μm〜10μmの無機微粒子が液中に添加されることにより調製される。
【0021】
本発明の一実施形態において、セル形成工程は、クリーンルーム等の屋内で行われ、その後、セル形成後の基板が屋外に搬出され、防眩膜形成工程が屋外で行われる。この場合、防眩膜の形成は、上記の塗布液がスプレー法により透明絶縁基板上に塗布されることによって行われることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明は、上記防眩膜の形成に用いられる塗布液に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高い防眩性を有するとともに、物理的耐久性(硬度)および基板に対する高い密着性に優れる防眩膜を備える太陽電池モジュールが得られる。本発明の太陽電池モジュールは、光公害の低減に貢献し得る。また、防眩膜のバインダ材料としてポリシラザンが用いられる場合は、高温の加熱を行うことなく太陽電池の基板表面に防眩膜を形成可能であるため、太陽電池セルの発電特性を維持したまま、防眩膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態の太陽電池モジュールの模式的断面図である。
【図2】一実施形態の太陽電池モジュールの模式的断面図である。
【図3】着色太陽電池モジュールを示す図面代用写真である。
【図4】パターン防眩膜を備える太陽電池モジュールを示す図面代用写真である。
【図5】実施例の防眩膜の平面SEM写真(倍率200倍)である。
【図6】実施例の防眩膜の平面SEM写真(倍率5000倍)である。
【図7】実施例の防眩膜の断面SEM写真(倍率5000倍)である。
【図8】実施例の防眩膜の平面SEM写真(倍率200倍)である。
【図9】実施例の防眩膜の平面SEM写真(倍率5000倍)である。
【図10】実施例の防眩膜の断面SEM写真(倍率5000倍)である。
【図11】実施例の防眩膜の平面SEM写真(倍率200倍)である。
【図12】実施例の防眩膜の平面SEM写真(倍率5000倍)である。
【図13】実施例の防眩膜の断面SEM写真(倍率5000倍)である。
【図14】比較例の防眩膜の平面SEM写真(倍率200倍)である。
【図15】比較例の防眩膜の平面SEM写真(倍率5000倍)である。
【図16】比較例の防眩膜の断面SEM写真(倍率5000倍)である。
【図17】比較例の防眩膜の平面SEM写真(倍率200倍)である。
【図18】比較例の防眩膜の平面SEM写真(倍率5000倍)である。
【図19】比較例の防眩膜の断面SEM写真(倍率5000倍)である。
【図20】比較例の防眩膜の平面SEM写真(倍率200倍)である。
【図21】比較例の防眩膜の平面SEM写真(倍率5000倍)である。
【図22】比較例の防眩膜の断面SEM写真(倍率5000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールについて説明する。なお、本願の図面において、厚さや幅などの寸法関係は、図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。
【0026】
[太陽電池モジュールの構成]
図1は、本発明による一実施形態の太陽電池モジュールの概略構成を示す断面図である。この太陽電池モジュール100は、透明絶縁基板1と、透明絶縁基板1の第一の主面に形成された太陽電池セル5を備え、透光性基板の第二の主面に防眩膜10を備える。
【0027】
図1に示す形態では、太陽電池セル5は、透明絶縁基板1側から、第一電極層2、光電変換ユニット3および第二電極層4を備える。図1において、太陽電池セル5は、複数の領域に分離され、各領域は互いに電気的に直列に接続されている。また、この太陽電池モジュールでは、太陽電池セル5を保護するため、第二電極層4上に、充填樹脂6、および裏面封止板7が設けられている。さらに、このように封止された太陽電池には、透明絶縁基板1、充填樹脂6および裏面封止板7等を保持するとともに、屋根等の架台等に取付けるために用いられるフレーム8が取付けられている。なお、以下では、図1に示す薄膜系の太陽電池モジュールに関する実施形態を中心に説明するが、本発明は、結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン系の太陽電池モジュール等、各種の太陽電池モジュールにも適用可能である。
【0028】
透明絶縁基板1としては、ガラス板や、透明樹脂からなる板状部材またはシート状部材等が用いられる。特に、ガラス板は、高い透過率を有しかつ安価であるので好ましい。透明絶縁基板1の防眩膜10形成面と反対側の主面に形成される太陽電池セル5は特に限定されず、例えば、単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン系の太陽電池、非晶質シリコン薄膜や結晶質シリコン薄膜等を用いたシリコン系薄膜太陽電池や、CIGS、CIS等の化合物太陽電池、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池等が挙げられる。
【0029】
例えば、シリコン系薄膜太陽電池では、透明絶縁基板1上に、第一電極層2、光電変換ユニット3、および第二電極層4が順に形成される。第一電極層2の材料としては、ITO、SnO、ZnO等の透明導電性の金属酸化物が好適に用いられる。
【0030】
光電変換ユニット3としては、非晶質シリコン、非晶質シリコンカーバイド、非晶質シリコンゲルマニウム、結晶質シリコン等のシリコン系半導体薄膜を、pin型、nip型、ni型、pn型等で組み合わせた半導体接合が用いられる。また、光電変換ユニット3は、複数のpn接合やpin接合等を有するタンデム型のものであってもよい。
【0031】
第二電極層4としては、Ag,Al等の反射性の金属層や、金属層と導電性金属酸化物層との複合層等が用いられる。
【0032】
一般に、太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルを備え、各太陽電池セルは、電気的に直列または並列に接続されている。特に薄膜太陽電池では、第一電極層2、光電変換ユニット3および第二電極層4の各層に線状の分離溝が設けられ、各層が複数の領域に分割されることによって複数のセルが形成され、各セルが電気的に接続されることが好ましい。例えば、図1では、3つの光電変換セルが直列に接続された形態が図示されている。
【0033】
このように、各層が分離溝により複数のセルに分割された集積型の太陽電池は、各層の形成と、レーザスクライブ等のパターニング手段による分離溝の形成とを順次繰り返すことによって形成され得る。例えば、図1に示す集積型の太陽電池セル5は、下記の工程により製造される。
【0034】
レーザスクライブにより第一電極層2に分離溝が形成され所定パターンに分割された後、第一電極層2上に光電変換ユニット3が形成される。その後、透明絶縁基板1側からレーザを入射するレーザスクライブにより、光電変換ユニット3に分離溝が形成され所定パターンに分割される。その後、光電変換ユニット3上に第二電極層が形成され、透明絶縁基板1側からレーザを入射するレーザスクライブにより、光電変換ユニット3とともに第二電極層4を吹き飛ばすことにより、分離溝が形成される。
【0035】
レーザスクライブにより効率的に分離溝を形成して、太陽電池セル5を集積するためには、レーザ光が透明絶縁基板1側から入射されることが好ましい。ここで、レーザスクライブの際に、透明絶縁基板1表面に防眩膜10が形成されていると、レーザ光の乱反射によって、分離溝形成等に不具合を生じる場合がある。そのため、透明絶縁基板1への防眩膜の形成は、レーザスクライブ後に行われることが好ましい。
【0036】
第二電極層4上には、太陽電池セル5を保護するため、充填樹脂6、および裏面封止板7が設けられることが好ましい。充填樹脂6としては、シリコン、エチレンビニルアセテート、ポリビニルブチラール等が用いられ、また、裏面封止板としては、フッ素系樹脂フィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミニウム等の金属フィルムや、これらの積層体、あるいはこれらのフィルムにSiO等の薄膜をラミネートした多層構造のフィルム等が用いられる。
【0037】
単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン系の太陽電池は、シリコン基板上に、導電型半導体層や電極等が形成され、セルが形成される。透明絶縁基板上に、充填樹脂等の封止剤を介して、複数のセルが配置され、各セルが、TAB等のインターコネクタを介して電気的に接続さることによって、モジュール化が行われる。
【0038】
透明絶縁基板1の光入射面側には、防眩膜10が設けられる。前述の如く、防眩膜の形成は、太陽電池セル5の形成およびレーザスクライブによる集積後に行われることが好ましい。なお、防眩膜の形成は、レーザスクライブ後であればいつでも可能であり、スクライブ直後、充填樹脂6および裏面封止板7による封止後、あるいはモジュールを屋根や壁面等に設置した後でもよい。また、セルの形成および封止までを工場内等の屋内で実施した後、基板表面に防眩膜が形成される前の太陽電池モジュールを、屋外(例えば、モジュールを設置する住宅の敷地内)に移動した後、屋根等に設置する前に防眩膜を形成することもできる。このような方法によれば、例えば日射面と反対側の方位(例えば北半球であれば北側)に設置される太陽電池モジュールのみに選択的に防眩膜を形成して、光公害を防止すること等も可能である。
【0039】
本発明の太陽電池モジュールは、防眩膜10の形成面側が太陽光の入射面であり、防眩膜10は表面凹凸を有している。透明絶縁基板1の光入射面側に表面凹凸を有する防眩膜10を備えることにより、太陽電池モジュール表面で反射される太陽光は、不特定の方向に乱反射される。乱反射された散乱光は平行光線ではなく、太陽電池モジュールによる反射光は全体としてぼやけた状態となるため、光公害が抑制される。
【0040】
[防眩膜]
防眩膜10は、無機バインダ11および無機微粒子12を含有する。
無機微粒子12としては、表面が粉砕面からなる非球状粒子が用いられる。表面が粉砕面からなる非球状微粒子は、粒子の大きさおよび形状が不均一であるため、光を乱反射させやすい。無機バインダ11は、微粒子同士、および微粒子と透明絶縁基板との間の付着強度を向上させる役目を果たす。
【0041】
<防眩膜中の無機微粒子>
無機微粒子12の材料としては、酸化シリコン(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化インジウム錫(ITO)、フッ化マグネシウム(MgF)等が好ましい。中でも、バインダ11と屈折率差の近い材料が好ましく、酸化シリコンを主成分とするものが最も好適に用いられる。粉砕面を有する無機微粒子としては、例えばガラスフリット(粉末ガラス)が好適に用いられる。
【0042】
無機微粒子12は、一次平均粒径が、0.1μm〜5.0μmであることが好ましく、0.5μm〜4.0μmであることがより好ましく、1.0μm〜3.0μmであることがさらに好ましい。表面が粉砕面からなる非球状無機微粒子の粒径が前記範囲であれば、防眩膜10の表面に、可視光の乱反射に適した表面凹凸が形成される。そのため、防眩性を高め、光公害を抑止することができる。微粒子の一次平均粒径は、防眩膜の断面観察像から各粒子の粒径を求め、その平均値により算出される。なお、各粒子の粒径は、粒子の投影面積と等面積の円の直径(投影面積円相当径、Heywood径)により定義される。
【0043】
従来より、アクリルやシリカ等からなる球状微粒子によって曲面状の凹凸表面を有する反射防止膜を基板の光入射面側に形成することが提案されている。このような反射防止膜は、表面が球状の曲面であるため、乱反射による光損失が低減されることに加えて、微粒子が規則的に配列されやすく、反射防止効果が高められる傾向がある。基材表面にこのような反射防止層が設けられる場合、反射光量が低減されるが、不特定の方向に光を乱反射する作用が得られ難いため、光公害を十分に抑制することは困難である。
【0044】
これに対して、本発明では、防眩膜10中に、表面が粉砕面からなる微粒子12を有するため、防眩膜の表面に形成される凹凸の大きさや形状がランダムとなり、光を乱反射させやすい。そのため、太陽電池モジュール表面の防眩膜10による反射光は、全体としてぼやけた状態となり、反射光が特定方向に照射されることが低減され、光公害が抑制される。
【0045】
<防眩膜のバインダ>
本発明において、防眩膜10の無機バインダ11としては、シリコン酸化物が好適に用いられ、中でも、Si−H結合およびSi−N結合の加水分解によって得られるSi−O結合を含有するシリコン酸化物が好適に用いられる。シリコン酸化物が、Si−H結合やSi−N結合の加水分解によるSi−O結合を含有する場合、バインダの透明性が高いことに加えて、ガラス等の透明絶縁基板との密着性や、耐光性、硬度等に優れる。
【0046】
本発明者らが、従来より防眩膜のバインダ材料として提案されていたアルキルシリケ―トの部分加水分解縮合物等のゾル・ゲル材料を用いて防眩膜を形成したところ、得られたシリコン酸化物膜には多数のクラックが生じており、硬度や耐久性に劣るものであった。これは、反応硬化によりシリコン酸化物が形成される際の材料の収縮や、その後の熱や水分の影響等によって、透明絶縁基板(ガラス板)と防眩膜の界面の応力に起因してクラックが発生したものと推定された。
【0047】
また、ガラスフリット等の表面が粉砕面からなる粒子は、球状の粒子に比して、防眩膜中でランダムに配列されやすく、微粒子の一部が膜表面から露出した状態で防眩膜が形成され易い。そのため、防眩膜のバインダ材料としてアルキルシリケ―ト等を用いた場合、防眩膜に摩擦力等の外力が加わると、防眩膜表面から微粒子が剥がれ落ちる等の不具合を生じていた。また、微粒子を防眩膜内に強固に固着させる目的で防眩膜の膜厚を大きくすると、微粒子による表面凹凸が緩和され防眩性が低下するとの問題があった。さらに、微粒子とバインダとの界面の形状が不定形であるために、当該界面を起点としてクラックが発生しやすくなる傾向がみられた。
【0048】
これに対して、Si−H結合やSi−N結合の加水分解により得られSi−O結合を含有するシリコン酸化物は、ガラスフリットのように表面が粉砕面からなる微粒子を、防眩膜10内に強固に固着可能であるため、耐摩擦性に優れ、かつクラックのない防眩膜を形成可能である。
【0049】
すなわち、本発明において、防眩膜10は、クラックを有していない連続皮膜であることが好ましい。なお、「クラックを有していない」とは、防眩膜の膜面10cm角の範囲から5点をランダムに抽出し、5000倍のSEM平面観察を行った場合に、いずれの観察箇所においてもクラックが認められないものを指す。Si−O結合がSi−H結合の加水分解により得られることは、バインダ材料の塗布直後に、赤外分光スペクトルのSi−H結合由来の2160cm−1付近のピークが存在すること、および当該ピークが経時的に減少・消失するとともに、Si−O結合由来の1060cm−1付近、800cm−1付近および450cm−1付近のピークが出現、増加することにより確認できる。同様に、Si−O結合がSi−N結合の加水分解により得られることは、バインダ材料の塗布直後に、赤外分光スペクトルのSi−N結合由来の840cm−1付近のピークが存在すること、および当該ピークが経時的に減少・消失するとともに、Si−O結合由来の1060cm−1付近、800cm−1付近および450cm−1付近のピークが出現、増加することにより確認できる。なお、バインダ材料がパーヒドロポリシラザン(−[SiH−NH]−の加水分解硬化物である場合は、上記に加えてN−H結合由来の3370cm−1付近のピークが経時的に減少・消失する。
【0050】
<防眩膜の形状>
防眩膜10の膜厚dは、0.5μm〜2μmが好ましく、0.75μm〜1.75μmがより好ましく、1.0μm〜1.5μmがさらに好ましい。膜厚dが0.5μm以上であれば、一次平均粒径が0.1μmを超える不定形粒子を基板表面に強固に付着することができる。また、膜厚dが2μm以下であれば、防眩膜10の表面に、微粒子の形状に倣った表面凹凸が形成され易いため、防眩性の高い膜とすることができる。防眩膜10が塗布法により形成される場合、膜厚dは、防眩膜形成用塗布液の固形分濃度、塗布量および塗布面積から算出することができる。
【0051】
防眩膜10表面の最大高さRyは、1μm〜10μmが好ましく、3μm〜8μmがより好ましく、5μm〜6μmがさらに好ましい。Ryが前記範囲であれば、広波長領域の可視光(特に長波長側の光)が防眩膜10によって乱反射され、防眩効果が得られ易い。最大高さRyは、レーザ顕微鏡により求められる粗さ曲線を、平均線の方向に基準長(0.8m)だけ抜き取り、この抜取り部分の山頂線と谷底線との間隔で表される値である。
【0052】
特に、長波長領域の光(例えば、波長900nm以上の赤外光)を乱反射させて高い防眩効果を得る観点から、防眩膜10表面の算術平均粗さRaは、250nm〜2000nmが好ましく、300nm〜1500nmがより好ましく、500nm〜1250nmがより好ましく、750nm〜1000nmがさらに好ましい。同様の観点から、防眩膜10表面の凹凸周期Smは、1μm〜30μmが好ましく、5μm〜25μmがより好ましく、10μm〜20μmがさらに好ましい。凹凸周期Smは、レーザ顕微鏡により求められる粗さ曲線が平均線と交差する交点から求められる山−谷周期の間隔の平均値である。なお、最大高さRy,算術平均粗さRa、および凹凸周期Smは、ここに記載した以外の条件は、JIS B0601−1994に準拠して測定される。
【0053】
算術平均粗さRaおよび凹凸周期Smは、例えば、バインダに対する微粒子の含有量や、微粒子の粒子径を変更することによって、調整可能である。微粒子の粒径が大きくなるにつれて、算術平均粗さRaが大きくなる傾向があり、微粒子の含有量が増加するにつれて凹凸周期Smが小さくなる傾向がある。
【0054】
防眩膜10の膜厚dと最大高さRyとの比Ry/dは、1以上が好ましい。Ry/dが1以上であることは、表面凹凸の高低差が、防眩膜の平均膜厚以上であることを表し、防眩膜が膜厚に比して起伏の激しい表面凹凸を有することを意味する。本発明では、防眩膜10が起伏の激しい表面凹凸を有するために、高い乱反射効果が得られる。本発明では、表面が粉砕面からなる非球状粒子微粒子が用いられることで、上記のような表面起伏の大きい防眩膜が得られる。また、Si−H結合およびSi−N結合の加水分解によるSi−O結合を含有するシリコン酸化物を主成分とするバインダ11が用いられることによって、表面起伏が大きいにも関わらず、微粒子12が強固に固着され、かつクラックのない連続皮膜の防眩膜が得られる。なお、Ry/dが過度に大きいと、防眩膜中での微粒子の固着が不十分となり、強度が低下する傾向がある。そのため、Ry/dは、1〜20が好ましく、5〜16がより好ましく、9〜12がさらに好ましい。
【0055】
<防眩膜の形成方法>
透明絶縁基板1上に防眩膜10を形成する方法は特に制限されないが、シリコン酸化物バインダあるいはその前駆体、および微粒子を含有する溶液を、透明絶縁基板1上に塗布する方法が適している。塗布方法としては、ディッピング法、スピンコート法、バーコート法、ダイコート法、ロールコート法(印刷法)、フローコート法、スプレー法等が挙げられる。これらの塗布法のうち、スプレー法は特別な設備を必要とせず、セルの封止後や、モジュールを屋根等に設置した後でも、絶縁基板上に防眩膜を容易に形成できるため好ましい。
【0056】
防眩膜10を形成するための塗布液に含まれるシリコン酸化物前駆体としては、Si−H結合およびSi−N結合を含有するポリマーが好適に用いられる。Si−H結合およびSi−N結合を含有するポリマーとしては、ポリシラザンが好ましい。ポリシラザンはSi−N結合(シラザン結合)を基本ユニットとするポリマーであり、大気中の水分等と反応して、Si−H結合およびSi−N結合が加水分解され、SiOに転化する材料である。ポリシラザンとしては、分子中に有機基を有さず−[SiH−NH]−で表される基本ユニットの繰り返しからなるパーヒドロポリシラザン、およびケイ素および/または窒素に結合した水素に一部がアルキル基等の有機基で置換されたオルガノポリシラザンを挙げることができる。特に、Si−H結合由来のSi−O結合の含有量を高めて、密着性および強度に優れる防眩膜を得る観点から、パーヒドロポリシラザンが好適に用いられる。また、パーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンの混合物等を用いてもよい。
【0057】
防眩膜の形成に用いられる塗布液としては、無機微粒子0.01〜20重量%、ポリシラザン0.1〜20重量%および溶媒を含有するものが好適に用いられる。溶媒としては、ポリシラザンを溶解するとともに、無機微粒子の分散性に優れるものが好適に用いられ、キシレンやジブチルエーテル等が特に好ましく用いられる。
【0058】
防眩膜形成用塗布液中のポリシラザンの濃度は、0.1重量%〜20重量%が好ましく、1重量%〜10重量%がより好ましく、2重量%〜5重量%がさらに好ましい。ポリシラザンの濃度が前記範囲であれば、塗布液がスプレー法等による塗工に適した溶液粘度を有するとともに、0.5μm以上の膜厚を有する防眩膜を安定的に形成することができる。
【0059】
防眩膜形成用塗布液中の無機微粒子の濃度は、0.01重量%〜20重量%が好ましく、0.1重量%〜10重量%がより好ましく、1重量%〜5重量%がさらに好ましい。塗布液中の微粒子濃度が前記範囲であれば、ポリシラザン中に微粒子が適宜に分散され、防眩性に優れる防眩膜が得られ易い。
【0060】
防眩膜中の無機微粒子としては、前述の如く、粉砕面を有する無機微粒子が用いられ、ガラスフリットが好適に用いられる。一般に一次粒子径が1μm程度のガラスフリット等は、空気中および溶液中で凝集して、二次粒子を形成している。塗布溶液に用いられる微粒子は、平均二次粒子径が0.1μm〜10μmであることが好ましく、0.5μm〜7.5μmであることがより好ましく、1μm〜5μmであることがさらに好ましい。微粒子の平均二次粒子径は、動的光散乱法により測定される。
【0061】
なお、ポリシラザンは、微細な隙間への埋設性に優れているため、微粒子に凝集が生じている場合でも、一次粒子間の微細な隙間にも浸透可能である。そのため、本発明によれば、表面が粉砕面からなる不定形の微粒子が用いられているにも関わらず、透明絶縁基板1とバインダ11および無機微粒子12との間の密着性に優れ、かつクラックのない連続皮膜の防眩膜10を形成することができる。
【0062】
防眩膜形成用塗布液中の無機微粒子の含有量は、バインダ100重量部に対して、10重量部〜200重量部が好ましく、20重量部〜100重量部がより好ましく、40重量部〜80重量部がさらに好ましい。バインダに対する微粒子の相対含有量が大きいほど、塗布後の防眩膜10表面の最大高さRy、および膜厚dと最大高さRyとの比Ry/dが大きくなり、光散乱性が高められる傾向がある。一方、微粒子の相対含有量が過度に大きいと、防眩膜中の硬度が低下したり、防眩膜中での微粒子の固着が不十分となる場合がある。
【0063】
防眩膜の形成に用いられる塗布液は、バインダ、微粒子および溶媒以外の他の成分を含有するものであってもよい。例えば、ポリシラザンを常温で硬化してシリコン酸化物に転化するために、塗布液中に触媒を含有させることもできる。
【0064】
触媒としては、1−メチルピペラジン、1−メチルピペリジン、4,4’−トリメチレンジピペリジン、4,4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)、ジアザビシクロ−[2,2,2]オクタン、シス−2,6−ジメチルピペラジン、4−(4−メチルピペリジン)ピリジン、ピリジン、ジピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン、ルチジン、ピリミジン、ピリダジン、4,4’−トリメチレンジピリジン、2−(メチルアミノ)ピリジン、ピラジン、キノリン、キノクサリン、トリアジン、ピロール、3−ピロリン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、1−メチルピロリジンなどのN−ヘテロ環状化合物;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミンなどのアミン類;更にDBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]5−ノネン)、1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,4,7−トリアザシクロノナン等が挙げられる。また、有機酸、無機酸、金属カルボン酸塩、アセチルアセトナ錯体等も好ましい触媒としてあげられる。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、マレイン酸、ステアリン酸などが、また無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、過酸化水素、塩素酸、次亜塩素酸などが挙げられる。金属カルボン酸塩は、式:(RCOO)nM〔式中、Rは脂肪族基、または脂環族基で、炭素数1〜22のものを表し、MはNi、Ti、Pt、Rh、Co、Fe、Ru、Os、Pd、Ir、Alからなる群より選択された少なくとも1種の金属を表し、nはMの原子価である。〕で表わされる化合物である。金属カルボン酸塩は無水物でも水和物でもよい。アセチルアセトナ錯体は、アセチルアセトン(2,4−ペンタジオン)から酸解離により生じた陰イオンが金属原子に配位した錯体であり、一般的には、式(CHCOCHCOCH)nM〔式中、Mはn価の金属を表す。〕で表される。好適な金属Mとしては、例えば、ニッケル、白金、パラジウム、アルミニウム、ロジウムなどが挙げられる。これら以外にも、過酸化物、メタルクロライド、フェロセン、ジルコノセンなどの有機金属化合物も用いることができる。塗布液中の触媒の含有量は、ポリシラザン100重量部に対して、0.5重量部〜10重量部程度が好ましい。
【0065】
防眩膜形成用塗布液に、顔料や染料を含有させることで、着色防眩膜を形成することもできる。顔料や染料の種類は特に限定されないが、顔料は塗布液の溶媒中に良好に分散し得るものが好ましく、染料は塗布液の溶媒に溶解するものが好ましい。また、発色性を高めるために、顔料の粒径は小さいことが好ましく、50nm〜200nm程度が好ましい。染料や顔料の含有量は、着色すべき色や、染料・顔料の種類等によって異なるが、例えば、防眩膜の固形分100重量部に対して、30重量部〜60重量部程度が好ましい。
【0066】
防眩膜10中に顔料や染料を含有させ、防眩膜を着色することにより、図3に示すようなカラー太陽電池モジュールを作製することができ、モジュールの意匠性を高めたり、デザインのバリエーションを拡げることができる。また、防眩膜10は微粒子を有するため、顔料や染料の発色性が高められる傾向がある。そのため、防眩膜に顔料や染料を含有させて着色層とすることによって、着色性に優れ、発色がクリアな着色防眩膜が得られる。
【0067】
透明絶縁基板1への塗布溶液の塗布方法としては、前述のようにスプレー法等の適宜の方法が採用され得る。なおポリシラザンは、常温常圧下でも硬化が進行し得る。そのため、使用直前まで塗布液を密閉状態で保管可能なスプレー法は、生産性に優れた塗布方法であるといえる。
【0068】
防眩膜10は、透明絶縁基板1の全面に形成されてもよく、一部のみに形成されてもよい。例えば、透明絶縁基板1上に防眩膜が形成された防眩領域と、防眩膜が形成されていない非防眩領域とを形成することもできる。この防眩領域と非防眩領域を所定のパターンとすることで、パターン防眩膜を形成してもよい。例えば、防眩膜の形成前に、透明絶縁基板1の表面の一部に耐水テープ等のマスク材を付設して、基板表面を被覆し、マスクが付設されていない領域に選択的に防眩膜を形成することにより、図4に示すようなパターン防眩膜付き太陽電池モジュールを形成してもよい。図4に示すモジュールの左半分では、文字部分をマスク材で被覆後に防眩膜を形成することにより、文字部分を非防眩領域としている。また、図4に示すモジュールの右半分では、文字以外の部分をマスク材で被覆後に防眩膜を形成することにより、文字部分を防眩領域としている。なお、防眩領域あるいは非防眩領域の形状は特に限定されず、文字以外に、マーク、図柄、模様等であってもよい。
【0069】
透明絶縁基板1へ塗布液の塗布前に、基板表面にアルカリ洗浄やセリコ洗浄等を行うことによって、基板表面の濡れ性を向上させることもできる。なお、前述の如くポリシラザンは、ガラスとの密着性(親和性)に優れるとともに、微細な隙間への埋設性が高いことから、本発明においては、基板表面の濡れ性を高めるための前処理を省略して、生産性を高めることもできる。特に、工場のクリーンルーム内等の屋内でセルの封止までを行った後、基板表面に防眩膜が形成される前の太陽電池モジュールが、モジュール設置場所等の屋外へ移動後に防眩膜が形成される場合、基板の前処理を省略可能であれば、防眩膜の形成が容易となるため、好ましい。
【0070】
透明絶縁基板上に塗布液を塗布後は、塗布液の溶媒が乾燥されるとともに、ポリシラザンが硬化され、防眩膜が形成される。透明絶縁基板1上に太陽電池セル5が形成された後に、防眩膜10が形成される場合、塗布液中の溶媒の乾燥およびポリシラザンの硬化は、いずれも80℃以下で行われることが好ましい。このような低温で乾燥および硬化が行われれば、太陽電池セル中の非晶質シリコン半導体等の熱劣化による発電特性の低下を抑止することができる。特に、本発明においては、乾燥および硬化が、常温・常圧下で行われることが好ましい。特に、モジュール設置場所等の工場外で防眩膜が形成される場合は、防眩膜の形成を容易とする観点から、乾燥および硬化が、常温・常圧下で行われることが好ましい。なお、常温・常圧とは、通常の屋外環境のように、外部からの人工的な加熱や加圧・減圧が行われていない環境を指す。
【0071】
このようにして得られる防眩膜は、透明絶縁基板1との密着性に優れるとともに、クラックが発生し難く、高い防眩性を備えている。なお、防眩膜10の鉛筆硬度試験(JIS K5600)による鉛筆硬度は、3H以上が好ましく、5H以上がより好ましく、6H以上がさらに好ましい。
【0072】
[第二の無機層]
本発明の太陽電池モジュールは、防眩膜10上に、さらに他の層を有していてもよい。図2では、防眩膜10上に第二の無機層20を備える太陽電池モジュールが図示されている。第二の無機層21は、反射防止層や防汚層等として機能し得る。例えば、防眩膜10上に、平均膜厚dが50nm〜1000nmで、防眩膜よりも小さな屈折率を有する第二の無機層21を備えることにより、防眩膜10による防眩性を維持しつつ、界面での入射光の反射を低減して、変換特性を高めることができる。
【0073】
第二の無機層20は、バインダ21を含有する。第二の無機層20を構成するバインダ21は、防眩膜10との密着性に優れる材料が好ましく、無機バインダが好適に用いられる。無機バインダ21は、透明性を有するものであれば、特に限定されないが、シリコン系化合物が好ましく、中でもシリコン酸化物が好ましい。防眩膜のバインダ11と第二の無機層のバインダ21とが同種の材料であれば、界面での密着性に優れ、かつ防眩膜10中の微粒子12の膜表面からの脱離防止に寄与し得る高強度の膜が得られやすい。
【0074】
また、第二の無機層20は、防眩膜10と同様に、低温、より好ましくは常温常圧で硬化可能であることが好ましい。そのため、第二の無機層のバインダ21としては、ポリシラザンを前駆体とするシリコン酸化物(すなわち、Si−H結合やSi−N結合の加水分解により形成されるSi−O結合を含有するシリコン酸化物)が特に好ましく用いられる。
【0075】
第二の無機層20の平均膜厚dは、50nm〜1000nmが好ましく、75nm〜750nmがより好ましく、100nm〜500nmがさらに好ましい。また、防眩膜10の平均膜厚dと第二の無機層20の平均膜厚dとの比率d/dは、0.025〜0.5が好ましく、0.04〜0.4がより好ましく、0.06〜0.3がさらに好ましい。
【0076】
膜厚dが上記範囲内であれば、第二の無機層20の表面、すなわち太陽電池モジュールの受光面側表面は、防眩膜10の凹凸形状パターンを維持できるため、防眩膜の凹凸形状による防眩性を維持できる。同様の観点から、第二の無機層20の膜厚dは、防眩膜10中の微粒子12の平均一次粒径の0.025倍〜0.8倍が好ましく、0.04倍〜0.7倍がより好ましく、0.06倍〜0.6倍がさらに好ましい。第二の無機層20が塗布法により形成される場合、膜厚dは、塗布液の固形分濃度、塗布量および塗布面積から算出できる。
【0077】
第二の無機層20の平均屈折率nは、防眩膜10の平均屈折率nよりも小さいことが好ましい。nとnとの差は、0.03以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.07以上がさらに好ましく、0.10以上が特に好ましい。主に酸化シリコンからなる防眩膜10の平均屈折率nが1.45〜1.55程度であるのに対して、第二の無機層20の平均屈折率nは、1.45以下が好ましく、1.40以下がさらに好ましい。
【0078】
>nであれば、受光面側界面の空気(屈折率=1)から、第二の無機層20、防眩膜10、透明絶縁基板1へと、光入射方向に沿って屈折率が段階的に大きくなる。そのため、界面での反射が低減され、太陽電池モジュールに取り込まれる光量が増大し、太陽電池モジュールの変換特性(特に短絡電流密度)を向上し得る。
【0079】
第二の無機層20の屈折率nを小さくする方法としては、バインダ21として低屈折率材料を用いる方法が挙げられる。一方、前述のように、防眩膜10と第二の無機層20との密着性を高める観点から、両者に含まれるバインダ11,21は同種あるいは類似の成分であることが好ましい。そのため、図2に示すように、第二の無機層20中に、バインダ21よりも低屈折率の無機微粒子22を含有することにより、第二の無機層が低屈折率化されることが好ましい。バインダ21の屈折率と微粒子22の屈折率との差は、0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.13以上がさらに好ましい。
【0080】
第二の無機層20中に無機微粒子22を含有する場合、断面観察から算出される平均一次粒子径は、10nm〜300nmが好ましく、20nm〜150nmがより好ましく、30nm〜100nmがさらに好ましい。また、防眩膜10表面の凹凸形状を緩和する観点から、第二の無機層20中の無機微粒子22の平均一次粒径は、防眩膜10中の無機微粒子12の平均一次粒径よりも小さいことが好ましい。
【0081】
第二の無機層20中の微粒子22の粒径が300nm以下であれば、太陽光の主波長範囲よりも粒径が小さいため、バインダ21と微粒子22との界面における光の屈折・反射・散乱が抑制される。そのため、第二の無機層20が低屈折率化されるとともに、防眩膜50内に入射した光の膜内での反射・散乱によるロスが低減される。また、微粒子22の粒径が10nm以上であれば、膜内で微粒子22を良好に分散させることができる。
【0082】
第二の無機層20中の微粒子22は、バインダ21よりも低屈折率であれば、その材料は特に限定されない。例えば、材料自体が低屈折率であるものとして、フッ化マグネシウム等の金属フッ化物を用いることができる。また、低屈折粒子として、中空粒子を用いることもできる。中空粒子は、その構成材料と空気との中間的な屈折率を有するため、低屈折率化に適している。中空粒子としては、膜中の分散性や強度の観点から、中空シリカ粒子が好ましく、中でも中空コロイダルシリカ粒子が好適に用いられる。
【0083】
第二の無機層20が微粒子22を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、低屈折率化を達成する観点から、バインダ100重量部に対して、10重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましく、40重量部以上がさらに好ましい。微粒子22の含有量の上限は特に限定されないが、微粒子22の相対含有量が過度に大きいと、第二の無機層の硬度が低下したり、微粒子の固着が不十分となる場合がある。そのため、微粒子22の含有量は、バインダ100重量部に対して、300重量部以下が好ましく、200重量部以下がより好ましく、150重量部以下がさらに好ましい。
【0084】
防眩膜10上に第二の無機層20を形成する方法は特に制限されない。例えば、防眩膜10の形成と同様に、バインダおよび必要に応じて微粒子を含有する塗布液を、スプレー法等の塗布法により塗布し、乾燥および硬化することにより、第二の無機層を形成できる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例および比較例により、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明の範囲は、その趣旨を超えない限りにおいて以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例では、防眩膜の特性等の相違をより明確とするために、太陽電池セルが形成されていないガラス板上に防眩膜が形成され、評価が行われたが、ガラス板上に太陽電池セルが形成されている場合でも、同様の結果が得られることは容易に理解される。
【0086】
防眩膜の耐摩耗性は、鉛筆強度試験(JIS K5600)の鉛筆硬度により評価した。また、防眩性は、防眩膜が形成されたガラス基板に照射された白色蛍光灯の反射光を目視観察し、「蛍光灯の像がぼやけてみえるもの」(評価A)から「蛍光灯の像がまっすぐ見えるもの」(評価E:防眩膜が形成されていないガラス基板と同等)までの5段階で評価した。
【0087】
[実施例1]
(塗布液の調製)
防眩膜形成用の塗布液として、ポリシラザン含有溶液(ジブチルエーテル中に固形分濃度20重量%のパーヒドロポリシラザンを含有するAZエレクトロマテリアル株式会社製の商品名:「アクアミカ NAX120−20」)12.5重量部に、粉砕ガラス粉末(日本フリット株式会社製、平均二次粒子径:1.0μm)を1.5重量部添加し、さらに溶媒としてジブチルエーテルを86.0重量部添加して、塗布液を調製した。この塗布液は、ポリシラザン100重量部に対して微粒子を60重量部含有し、総固形分濃度は4重量%であった。
【0088】
(防眩膜の形成)
厚み3.2mm、サイズ1400mm×1100mmの太陽電池の透明ガラス基板を水道水により洗浄した後、エアナイフにて水滴を飛ばし、乾燥を行った。乾燥後のガラス基板の一方の面に、上記の塗布液を、乾燥後の膜厚が1.0μmとなるようにスプレー法により塗布し、室温で塗布膜を乾燥した後、室温で24時間放置して、バインダを硬化させ、シリコン酸化物を主成分とする防眩膜とした。顕微赤外分光法により、この24時間放置後の防眩膜のバインダ部分(微粒子以外の部分)の赤外スペクトルを測定したところ、Si−O結合由来の1060cm−1付近、800cm−1付近および450cm−1付近のピークに加えて、2160cm−1付近(Si−H結合)、840cm−1付近(Si−N結合)、および3370cm−1付近(N−H結合)にピークが確認された。
【0089】
この防眩膜が形成されたガラス基板を、屋外環境に2ヶ月放置後、再度赤外スペクトルを測定したところ、2160cm−1付近、840cm−1付近、および3370cm−1付近のピークが消失しており、Si−H結合およびSi−N結合の加水分解によるSi−O結合の生成が確認された。
【0090】
[実施例2]
実施例1と同様の塗布液を調製し、この塗布液中に、ガラス基板を浸漬し、速度500mm/分で引き上げてディッピング法により塗布を行った。その後、実施例1と同様に、室温で塗布膜の乾燥および硬化を行った。
【0091】
[実施例3]
塗布液の調整において、平均二次粒子径が2.9μmの粉砕ガラス粉末が用いられたこと以外は、実施例1と同様にして、塗布液の調整および防眩膜の形成が行われた。
【0092】
[比較例1]
(塗布液の調製)
防眩膜形成用の塗布液として、水40.5g、イソプロピルアルコール281.9g、および1.63%塩酸35.4gの混合液に、バインダとしてテトラエチルオルトケイ酸
(TEOS)のオリゴマー(重合度n:4〜6)33.0g、および微粒子として粉砕ガラス粉末(日本フリット株式会社製、平均二次粒子径:1.0μm)27.0gを順次添加して、室温で4時間攪拌混合した。その後、希釈溶媒として、イソプロパノール482.1gを添加して撹拌し、テトラエトキシシラン100重量部に対して微粒子を82重量部含有し、総固形分濃度が6.7重量%の塗布液を調製した。
【0093】
(防眩膜の形成)
実施例1で用いたのと同様のガラス基板の一方の面に、上記の塗布液を、乾燥後の膜厚が2.5μmとなるようにスプレー法により塗布し、200℃で60分間の焼成処理を行って塗布膜を硬化させ、シリコン酸化物を主成分とする防眩膜とした。顕微赤外分光法により、この防眩膜のバインダ部分(微粒子以外の部分)の赤外スペクトルを測定したところ、2160cm−1付近にピークは確認されなかった。
【0094】
[比較例2]
比較例1と同様の塗布液を調製し、この塗布液中に、ガラス基板を浸漬し、速度500mm/分で引き上げてディッピング法により塗布を行った。その後、比較例1と同様に、加熱による塗布膜の乾燥および硬化を行った。
【0095】
[比較例3]
(塗布液の調製)
防眩膜形成用の塗布液として、アクリル系のUV硬化樹脂(ADEKA社製の商品名:「FX−V5400」)80重量部、ジブチルエーテル15重量部、および粉砕ガラス粉末(日本フリット株式会社製、平均二次粒子径:1.0μm)5重量部を混合、撹拌して、
樹脂100重量部に対する微粒子の含有量が78重量部、総固形分濃度が45.6重量%の塗布液を調製した。
【0096】
(防眩膜の形成)
実施例1で用いたのと同様のガラス基板の一方の面に、上記の塗布液を、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにバーコータ法により塗布し、80℃の熱風乾燥処理を30分間施した後、紫外線(波長365nm):5000mJを照射して塗布膜を硬化させ、防眩膜とした。
【0097】
[比較例4]
無機微粒子として、粉砕ガラス粉末に代えて球形のガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製、平均二次粒子径:5.0μm)が用いられたこと以外は、実施例1と同様にして、塗布液の調整および防眩膜の形成が行われた。
【0098】
[評価]
上記各実施例および比較例で得られた防眩膜の評価結果を、各実施例で用いた塗布液の組成、塗布方法とともに表1に示す。また、実施例1の防眩膜の表面SEM観察像および断面観察像を図5〜図7に、実施例2の防眩膜の表面SEM観察像および断面観察像を図8〜図10に、実施例3の防眩膜の表面SEM観察像および断面観察像を図11〜図13に、比較例1の防眩膜の表面SEM観察像および断面観察像を図14〜図16に、比較例2の防眩膜の表面SEM観察像および断面観察像を図17〜図19に、比較例4の防眩膜の表面SEM観察像および断面観察像を図20〜図22に、それぞれ示す。
【0099】
【表1】
【0100】
バインダとして、ゾル・ゲル材料であるテトラエチルオルトケイ酸を含む塗布液をスプレーにより塗布して防眩膜が形成された比較例1では、微粒子の表面付近を起点としたクラックが生じており、断面観察(図16)から膜剥がれが確認された。一方、ディッピング法により防眩膜が形成された比較例2では、比較例1に比してクラックの発生が抑制されていたものの、倍率5000倍のSEM平面観察(図18)および断面観察(図19)では、微粒子の表面付近を起点としたクラックが確認された。
【0101】
バインダとしてUV硬化樹脂が用いられた比較例3では、比較例1,2のようなクラックは確認されなかったが、鉛筆硬度がHBであり、屋外環境に長時間暴露される太陽電池モジュールの防眩膜としては強度を欠くものであった。
【0102】
比較例4では、バインダとしてポリシラザン材料が用いられ、Si−H結合およびSi−N結合の加水分解によるSi−O結合を有する防眩膜が形成されたことにより、防眩膜にはクラックが発生しておらず、また鉛筆硬度も6H以上と十分な硬度を有していた。しかしながら、比較例4の防眩膜は、防眩性が十分といえるものではなかった。これは、図22の断面SEM写真に示すように、微粒子による凸部が曲面からなるために、光が乱反射され難いためであると考えられる。
【0103】
一方、バインダとしてポリシラザン材料が用いられ、微粒子として粉砕ガラス粉末が用いられた実施例1〜3では、微粒子の平均粒径や、塗布液のガラス基板上への塗布方法が変更されても、高い防眩性と膜強度を同時に備える防眩膜が形成されていることがわかる。
【0104】
実施例1〜3の中でも、特に微粒子の粒径を大きくすることによって防眩膜の算術平均粗さが0.8μmに増大された実施例3が高い防眩性を示した。一方、微粒子としてガラスビーズが用いられた比較例4では、実施例1〜3よりもRaが大きいにも関わらず、防眩性は劣っている。これは、実施例1〜3では、無機微粒子がとして表面が粉砕面からなる非球状粒子が用いられることにより光が乱反射され、球状微粒子が用いられた比較例4に比して高い防眩性を示したためであると考えられる。このように、実施例1〜3では、バインダにより微粒子が強固に固着されるために、膜厚dが小さい場合でも、乱反射に適した表面凹凸形状を有し、かつ強度に優れる防眩膜が形成されることがわかる。
【符号の説明】
【0105】
10 防眩膜
20 無機層
11 バインダ
12 微粒子
1 透明絶縁基板
2,4 電極層
3 光電変換ユニット
5 太陽電池セル
6 充填樹脂
7 裏面封止板
8 フレーム
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【国際調査報告】