(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050798
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】電子機器用カバーガラス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/32 20060101AFI20160725BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20160725BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20160725BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20160725BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20160725BHJP
【FI】
   !C03C17/32 Z
   !C03C23/00 D
   !C03C21/00 101
   !C03C15/00
   !C03C19/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
【出願番号】2014538483
(21)【国際出願番号】JP2013075667
(22)【国際出願日】20130924
(11)【特許番号】5913608
(45)【特許公報発行日】20160427
(31)【優先権主張番号】2012218568
(32)【優先日】20120928
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿六丁目10番1号
(71)【出願人】
【識別番号】506051762
【氏名又は名称】ホーヤ ガラスディスク フィリピン インコーポレーテッド
【住所又は居所】フィリピン共和国 ラグーナ4024 ビニャン ラグーナ テクノパーク スペシャル エクスポート プロセッシング ゾーン イースト メイン アベニュー 111
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下川 貢一
【住所又は居所】東京都新宿区中落合2丁目7番5号 HOYA株式会社内
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA06
4G059AC22
4G059FA19
4G059FB03
(57)【要約】
【課題】防汚コート層の滑り性および耐久性の両方の性能を発揮させることができる電子機器用カバーガラス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる電子機器用カバーガラス1の代表的な構成は、ガラス基板10と、ガラス基板の表面に形成された防汚コート層20とを備え、防汚コート層20は、ガラス基板の表面に付着する付着領域22と、付着領域の表面に配置された流動領域24とを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の表面に形成された防汚コート層とを備え、
前記防汚コート層は、前記ガラス基板の表面に付着する付着領域と、該付着領域の表面に配置された流動領域とを有することを特徴とする電子機器用カバーガラス。
【請求項2】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の表面に形成された防汚コート層とを備え、
前記防汚コート層は末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含有し、前記ガラス基板の表面に付着し溶剤に浸漬した際に残存する領域である付着領域と、該付着領域の表面に配置され前記溶剤に浸漬した際に溶解する領域である流動領域とを有することを特徴とする電子機器用カバーガラス。
【請求項3】
前記防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合が20%〜80%であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器用カバーガラス。
【請求項4】
前記防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合が40%〜70%であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラス。
【請求項5】
前記防汚コート層の厚さが3nm〜30nmであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラス。
【請求項6】
前記流動領域の表面の静止摩擦係数が0.2〜0.4であり、動摩擦係数は0.1〜0.3であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラス。
【請求項7】
前記流動領域の表面の水の接触角が100度〜120度であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラス。
【請求項8】
前記防汚コート層は、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に電子機器用カバーガラス。
【請求項9】
ガラス基板の表面に、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含有するコーティング材料を塗布して、
前記ガラス基板の表面に付着する付着領域と、該付着領域の表面に配置された流動領域とを有する防汚コート層を形成したことを特徴とする電子機器用カバーガラス。
【請求項10】
電子機器の外装の一部を覆うように着脱可能な外付けの電子機器用カバーガラスであって、
第1の主表面、前記第1の主表面に対する裏面であり前記電子機器の外装へ向けて配置するための第2の主表面、及び前記第1の主表面と前記第2の主表面とを繋ぐ端面とを有し、
前記第2の主表面の外周の少なくとも一部には、前記端面から前記第2の主表面の面方向内側へ向けて窪んでいる窪み部が設けられていることを特徴とする請求項1−9のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラス。
【請求項11】
電子機器用カバーガラスの製造方法であって、
ガラス基板作成工程と、
ガラス基板に対して防汚性を有するコーティングを施す防汚コート層形成工程とを含み、
前記防汚コート層形成工程においては、
前記ガラス基板の表面に付着する付着領域と、前記付着領域の表面に配置された流動領域とを形成することを特徴とする電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項12】
防汚コート層形成工程の後に、
前記流動領域の厚さを調節することにより、前記防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合を調整する領域厚さ調整工程を更に含むことを特徴とする請求項11に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項13】
前記領域厚さ調整工程により、前記防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合を20%〜80%とすることを特徴とする請求項12に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項14】
前記領域厚さ調整工程により、前記防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合を40%〜70%とすることを特徴とする請求項12に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項15】
前記領域厚さ調整工程は、ベーク処理によって前記流動領域の厚さを調節することを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項16】
前記領域厚さ調整工程は、紫外線照射処理によって前記流動領域の厚さを調節することを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項17】
前記領域厚さ調整工程は、減圧による真空度調整処理によって前記流動領域の厚さを調節することを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項18】
前記防汚コート層形成工程において、前記防汚コート層の厚さを3nm〜30nmとすることを特徴とする請求項11から17のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項19】
前記防汚コート層形成工程の前に、プラナー方式プラズマ処理及びダウンストリーム方式プラズマ処理の両処理からなるガラス表面改質処理を施すことを特徴とする請求項11−18のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、携帯型ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルスティルカメラ、ビデオカメラ、またはスレートPC(Personal Computer)等の携帯機器の表示画面の保護に用いられる電子機器用カバーガラス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機等の携帯機器の表示画面を保護するために、透明性に優れ且つ軽量なアクリル樹脂板が一般に用いられていた。近年、タッチパネル方式の携帯機器が主流を占めるようになり、このタッチパネル機能対応のため表示画面の強度向上が求められており、従来のアクリル樹脂材料に替わって、薄くても高い強度を有するガラス材料が多く使用されるようになってきている。さらに、ガラス材料は、従来のアクリル樹脂材料と比べると、機械的強度(耐加傷性、耐衝撃性)、表面平滑性、保護性(耐候性、防汚性)、見栄え・高級感など、いずれの点でも優位である。
【0003】
タッチパネル方式の携帯機器においては表示画面に指を直接触れて操作するため、表示画面を保護するカバーガラスに指紋や皮脂等の汚れが付着しやすい。従って、カバーガラスに指紋等の汚れが付着するのを防止ないしは抑制し、あるいは指紋等の汚れが付着しても容易に拭き取れるようにすることが望ましい。そのため、カバーガラスの表面には、通常、防汚コート層が形成される。
【0004】
特許文献1には、防汚コート層としてカバーガラスの表面にフッ素系の表面層を設けることが記載されている。コーティング材料としては、アルコキシシリルパーフルオロポリエーテルが例示されている。特許文献1においてコーティング処理は、浸漬、蒸着重合、噴霧、ローラーを用いて塗布し、硬化させた後に、結合していないコーティングを除去するために溶媒ですすぐと説明されている。特許文献1には、フッ素系の表面層を設けることによって、防汚性(疎水性および疎油性。あわせて両疎媒性と称している)、耐損傷性を備えたカバーガラスにできると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2011−510904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらタッチパネル方式の電子機器用カバーガラスは、操作のために利用者によって指で擦られるため、防汚コート層には、指で触れたときの滑り性が要求される。
【0007】
また、近年普及しているスマートフォン等の携帯機器では、OS等のソフトウェアのアップデート機能により、従来のPDA等のタッチパネル方式の携帯機器よりもソフトウェア面での製品寿命(使用期間)が長くなってきている。これに伴って携帯機器は、ハードウェア面でも長期使用時の耐久性の向上が要求されている。特に、電子機器用カバーガラスは表面が露出した状態で電子機器に組み込まれるため、防汚コート層には、利用者の指の摩擦や、様々な物体との接触に耐え、防汚性および滑り性を長期間発揮するための耐久性が求められる。
【0008】
すなわち電子機器用カバーガラスの防汚コート層には、滑り性及び耐久性の両方の性能が要求される。
【0009】
ここで特許文献1には、防汚コート層の防汚性および耐損傷性について開示されているものの、滑り性については考慮されておらず、また滑り性と耐久性の両方を満たす構成についても開示されていない。したがって、特許文献1に開示された技術だけでは、防汚コート層としての所望の特性を達成することはできなかった。
【0010】
そこで本発明は、防汚コート層の滑り性および耐久性の両方の性能を発揮させることができる電子機器用カバーガラス及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために発明者らが鋭意検討したところ、電子機器用カバーガラスの防汚コート層の内部には、ガラス表面に付着され耐久性に影響を与える付着領域と、滑り性に寄与する流動領域とが存在することに着眼した。そして、これらの領域を適切に形成することによって滑り性および耐久性の両方の性能を発揮させることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち本発明にかかる電子機器用カバーガラスの代表的な構成は、ガラス基板と、ガラス基板の表面に形成された防汚コート層とを備え、防汚コート層は、ガラス基板の表面に付着する付着領域と、付着領域の表面に配置された流動領域とを有することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、滑り性及び耐久性の両立を発揮させることができる。付着領域は溶剤に浸漬(例えばHFEに1分間浸漬)した際に残存する領域であり、流動領域は溶剤に浸漬させた際に溶解する領域である。
【0014】
防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合が20%〜80%、さらには40%〜70%であることが好ましい。付着領域の厚さの割合が20%未満であると、耐久性を発揮できなくなるためである。また付着領域の厚さの割合が80%より多くなると、滑り性を発揮できなくなるためである。
【0015】
防汚コート層の厚さが3nm〜30nmであることが好ましい。防汚コート層の厚さが3nm未満であると、耐久性を発揮できなくなるためである。また防汚コート層の厚さが30nmよりも厚くなると膜厚の均一性が保てなくなったり、透明性が低下したりするので携帯機器の要請に沿わなくなるためである。
【0016】
流動領域の表面の静止摩擦係数が0.2〜0.4であり、動摩擦係数は0.1〜0.3であり、水の接触角が100度〜120度であることが好ましい。上記範囲であれば、快適な滑り性と防汚性を得ることができる。
【0017】
防汚コート層は、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含有することが好ましい。これにより、ガラス基板の表面にある水酸基やカルボキシル基等の官能基と強固に結合し、高い耐久性を発揮することができる。
【0018】
また、本発明にかかる電子機器用カバーガラスの製造方法の代表的な構成は、電子機器用カバーガラスの製造方法であって、ガラス基板作成工程と、ガラス基板に対して防汚性を有するコーティングを施す防汚コート層形成工程とを含み、防汚コート層形成工程においては、ガラス基板の表面に付着する付着領域と、付着領域の表面に配置された流動領域とを形成することを特徴とする。
【0019】
防汚コート層形成工程の後に、流動領域の厚さを調節することにより、防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合を調整する領域厚さ調整工程を更に含むことが好ましい。これにより付着領域の厚さを所望の割合にすることができる。領域厚さ調整工程により、防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合を20%〜80%、さらには40%〜70%とすることが好ましい。
【0020】
領域厚さ調整工程は、ベーク処理、紫外線照射処理、減圧による真空度調整処理によって流動領域の厚さを調節することが好ましい。
【0021】
防汚コート層形成工程において、防汚コート層の厚さを3nm〜30nmとすることが好ましい。
【0022】
また本発明にかかる電子機器用カバーガラスの他の代表的な構成は、ガラス基板の表面に、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含有するコーティング材料を塗布して、ガラス基板の表面に付着する付着領域と、付着領域の表面に配置された流動領域とを有する防汚コート層を形成したことを特徴とする。
【0023】
また、上記の電子機器用カバーガラスが電子機器の外装の一部を覆うように着脱可能な外付けの電子機器用カバーガラスであって、第1の主表面、第1の主表面に対する裏面であり前記電子機器の外装へ向けて配置するための第2の主表面、及び第1の主表面と第2の主表面とを繋ぐ端面とを有し、第2の主表面の外周の少なくとも一部には、端面から第2の主表面の面方向内側へ向けて窪んでいる窪み部が設けられていてもよい。
【0024】
上記構成によれば、電子機器用カバーガラスを電子機器に貼り付けると、電子機器用カバーガラスと電子機器との間に窪み部によって隙間が生じる。ユーザはこの隙間に爪等を引っ掛けて電子機器用カバーガラスを剥離させることができるので、滑り性及び耐久性を発揮させることができると共に、剥離性のよいガラス製の電子機器用カバーガラスを実現することができる。
【0025】
上記第1の主表面、第2の主表面、及び端面を有するガラス基板と、第2の主表面に沿って設けられ、外周端のうちの少なくとも一部が端面よりも第2の主表面の面方向内側に間隔をおいて配置されて窪み部をなし、電子機器の外装にガラス基板を着脱可能とするための貼付部と、を備えるとよい。上記構成によれば、貼付部の外周端のうちの少なくとも一部が端面よりも第2の主表面の面方向内側に間隔をおいて配置されて窪み部が形成される。そのため、簡便に窪み部を形成することができる。
【0026】
上記窪み部の端面からの奥行きが0.1mm〜0.3mmの範囲内であるとよい。上記構成によれば、剥離性と美観の両立を図ることができる。すなわち、端面からの奥行きが0.1mm以上の場合、剥離性をより発揮することができる。端面からの奥行きが0.3mmを超える場合、時間の経過と共に窪み部に埃等が溜まり、美観を損なうおそれがある。
【0027】
上記第1の主表面、第2の主表面、及び端面を有するガラス基板を備え、端面と第2主表面との間には、窪み部の少なくとも一部をなす介在面が形成されているとよい。上記構成によれば、ガラス基板の構成で窪み部の一部を形成することができる。この構成によっても、ユーザがこの隙間に爪等を引っ掛けやすくなるので、電子機器用カバーガラスの剥離性を高めることができる。
【0028】
上記端面は、第2の主表面側から第1の主表面側へ向けて先細となるよう傾斜し、断面視で直線または曲線をなす傾斜面であるとよい。上記構成によれば、ガラス基板の縁においてユーザの指等の引っ掛かりを防止することができる。したがって、タッチパネルディスプレイを有するスマートフォン等の場合には、特に有効である。
【0029】
上記電子機器用カバーガラスは、電子機器の外装の一部をなす外装用カバーガラスの主表面を覆うように着脱可能であるとよい。上記構成によれば、電子機器のカバーガラスに傷や汚れがつくことを防止できる。
【0030】
前記防汚コート層形成工程の前に、プラナー方式プラズマ処理及びダウンストリーム方式プラズマ処理の両処理からなるガラス表面改質処理を施すことが好ましい。これにより防汚コート材のガラス基板に対する付着安定性を改善し、防汚コート面の耐久性を著しく向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明にかかる電子機器用カバーガラス及びその製造方法によれば、防汚コート層の滑り性および耐久性の両方の性能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る電子機器用カバーガラスの一実施の形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る電子機器用カバーガラスの製造方法のフローチャートである。
【図3】カバーガラス用ガラス基板の形状の一例を示す平面図である。
【図4】本発明に係る電子機器用カバーガラスの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図5】第2実施形態にかかる電子機器用カバーガラスを電子機器に貼り付けた状態を示す図である。
【図6】図5の電子機器用カバーガラスを電子機器に貼り付けた後の模式的な横断面図である。
【図7】図6の範囲Xの拡大図である。
【図8】図5の電子機器用カバーガラスの層構成を示す図である。
【図9】図5の電子機器用カバーガラスを形成する手順について示す図である。
【図10】図7の窪み部を形成する範囲についての説明図である。
【図11】第3実施形態にかかる電子機器用カバーガラスの外周部分を示す図である。
【図12】第3実施形態にかかる電子機器用カバーガラスの他の例を示す図である。
【図13】図11、図12のガラス基板の外周部分の加工方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0034】
[第1実施形態]
第1実施形態では、電子機器用カバーガラスとして、電子機器の外装の一部を成すように筐体に組み込まれたカバーガラスを例示して説明する。
【0035】
図1は、本発明に係る電子機器用カバーガラスの一実施の形態を示す概略断面図であって、表面近傍の一部分のみを拡大して示している。本実施形態に係る電子機器用カバーガラス1は、平板状のガラス基板10を備えている。ガラス基板10の主表面12には、防汚コート層20が形成されている。後述するように、防汚コート層20は、ガラス基板10の表面に付着する付着領域22と、付着領域22の表面に配置された流動領域24とを有する。
【0036】
付着領域22は、コーティング材料の分子がガラス基板の表面にある水酸基やカルボキシル基等の官能基と強固に結合した領域である。流動領域24は、コーティング材料同士の分子鎖が絡み合って状態を維持している領域である。付着領域22と流動領域24とは、組成が同じであり、顕微鏡写真などによる外観上は差異がない。ただし流動領域24は溶剤に溶けやすく、付着領域22は溶剤では容易には溶解しない。したがって、付着領域22は溶剤に浸漬(例えばHFEに1分間浸漬)した際に残存する領域であり、流動領域24は溶剤に浸漬させた際に溶解する領域として識別することができる。
【0037】
防汚コート層20の材料について説明する。利用者がタッチパネル操作方式の携帯機器を使用する場合、その表示画面を指で直接触れて操作するため、表示画面に指紋等の汚れが付着しやすい。従って、表示画面に指紋等の汚れが付着するのを防止ないしは抑制し、あるいは指紋等の汚れが付着しても容易に拭き取れるようにすることが望ましい。そのためには、防汚コート層20の材料として、指で直接触れても(押しても)指紋等の汚れが付着するのを防止ないしは抑制し、あるいは指紋等の汚れが付着しても拭き取り易くする防汚性を有する材料を選択することが好適である。また、透明性に優れていることも重要である。本発明においては、良好な防汚性を有し、さらに透明性にも優れている材料として、たとえばフッ素系樹脂材料(例えばパーフルオロポリエーテル化合物など)などの表面エネルギーを低下させる材料が好ましく挙げられる。
【0038】
防汚コート層20の表面(ガラス基板10とは反対側の表面)における水の接触角は100度〜120度であり、油、例えばヘキサデカンの接触角は60度〜70度であることが好ましい。上記接触角は、22±2℃の雰囲気下で測定した値である。
【0039】
水または油に対する接触角が上記の範囲内であることにより、指で直接触れても(押しても)指紋等の汚れが付着するのを防止ないしは抑制し、あるいは指紋等の汚れが付着しても拭き取り易くする良好な防汚性を発揮する。なお、上記の接触角は、防汚コート層形成後の初期接触角であるが、後述の実施例で説明するスチールウールの摺動による耐久性試験を行っても、接触角の低下は少なく、良好な防汚性を維持することができる。
【0040】
また、本発明における電子機器用カバーガラス1においては、ガラス基板の主表面12に形成された防汚コート層20の表面における静止摩擦係数は0.2〜0.4であり、動摩擦係数は0.1〜0.3であることが好ましい。防汚コート層20の表面の静止摩擦係数または動摩擦係数が上記の範囲内であることにより、防汚コート面の滑りが良く、指で触れたときの手触り感が良好であるため、本発明のカバーガラスを備えた携帯機器においては、利用者による例えばタッチパネルの操作性が良好である。
【0041】
ガラス基板10を構成するガラスは、アモルファスのアルミノシリケートガラスとすることが好ましい。このようなアルミノシリケートガラスからなるガラス基板は、化学強化後の強度が高く、電子機器用カバーガラスには好適である。このようなアルミノシリケートガラスとしては、例えば、SiO2が58〜75重量%、Al2O3が4〜20重量%、Li2Oが0〜10重量%、Na2Oが4〜20重量%を主成分として含有するアルミノシリケートガラスを用いることができる。
【0042】
ガラス基板10の厚さは、最近の携帯機器の薄型化・軽量化のマーケットニーズに応える観点から例えば0.3mm〜1.5mm程度の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.5mm〜0.7mm程度の範囲である。
【0043】
次に、以上説明したような本発明に係る電子機器用カバーガラスの製造方法について説明する。図2は本発明に係る電子機器用カバーガラスの製造方法のフローチャート、図3はガラス基板の形状の一例を示す平面図、図4は本発明に係る電子機器用カバーガラスの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0044】
[ガラス基板作成(ステップS100)]
まず、大きなサイズの板ガラスを機械加工等により所定の大きさにカッティング(小片化)し、カバーガラス用のガラス基板10を作成する。
【0045】
例えば、ダウンドロー法やフロート法等で製造された厚さが例えば0.5mm程度の板ガラスを多数枚(例えば数十枚程度)積層(ラミネート)し、ガラス用カッターを用いて所定の大きさの小片に切断する。このように、積層状態のものを一度に切断加工すると、次の形状加工工程においても積層状態の小片を一度に形状加工できるので、生産上有利である。小片の大きさは、製品のカバーガラスの大きさに外形形状加工に必要なマージンを加えた大きさを考慮して決定する。
【0046】
ここで、外形形状加工については、積層状態の切断加工に代えて、シート状ガラス素材を1枚ずつ加工してもよい。また、外形形状加工には、機械加工以外の手段として、エッチング法を適用してもよい。
【0047】
次に、この所定の大きさの小片に加工されたガラス基板10に対して機械加工あるいはエッチング加工により、必要な孔明け加工や外周形状加工などを行う。図3に示す例では、ガラス基板10は、外周端面10a、切り欠き10b、耳孔10c、およびキー操作孔10dが形成されている。このような孔明け加工および外周形状加工をサンドブラスト等で機械加工してもよいし、あるいはエッチング加工により、これら孔明け加工および外周形状加工を一括処理することもできる。特に複雑な形状加工にはエッチング加工が有利である。また、加工形状に応じて機械加工とエッチング加工を併用してもよい。さらに、エッチング加工の際の溶解パターンを適宜設定することにより、シート状ガラス素材を小片化し、この小片化と同工程で、小片を図3に示すガラス基板10の形状となるようにしてもよい。
【0048】
次に、形状加工を終えたガラス基板10に対して化学強化処理を行う。化学強化処理の方法としては、例えば、ガラス転移点の温度を超えない温度領域、例えば摂氏300度〜500度の温度で、イオン交換を行う低温型イオン交換法などが好ましい。化学強化処理とは、溶融させた化学強化塩とガラス基板とを接触させることにより、化学強化塩中の相対的に大きな原子半径のアルカリ金属元素と、ガラス基板中の相対的に小さな原子半径のアルカリ金属元素とをイオン交換し、ガラス基板の表層に該イオン半径の大きなアルカリ金属元素を浸透させ、ガラス基板の表面に圧縮応力を生じさせる処理のことである。化学強化塩としては、硝酸カリウムや硝酸ナトリウムなどのアルカリ金属硝酸を好ましく用いることができる。化学強化処理されたガラス基板は強度が向上し耐衝撃性に優れているので、衝撃、押圧が加わり高い強度が必要な携帯機器に用いられるカバーガラスには好適である。
【0049】
[ガラス基板改質処理(ステップS102)]
次に、上記のようにして作製したガラス基板10に対して、ガラス表面改質処理を行う。通常、ガラス基板10の表面に形成した印刷面側は携帯機器の内側に向けて搭載されるため、この印刷面とは反対側の、つまり携帯機器の外側に向けて露出する主表面12に対してガラス表面改質処理を行う。
【0050】
上記プラナー方式プラズマ処理とは、ある間隔で2枚の放電電極を有し、その間隔内に被処理基板を装着し、プラズマを発生させて処理を行う形態である。この場合、プラズマ発生に使用するガスとしては、例えばHe、Ar又はN2等を用いる。2枚の電極間にプラズマ発生に必要な電圧を印加し、プラズマ空間で電離されたイオンがこの空間内にて加速され、被処理基板表面に衝突する。これにより、ガラス基板表面の輪郭曲線のスキューネス(Rsk:歪度)が0へ近づくようにガラス基板表面が改質され、ガラス基板表面の凹凸の形状の偏りが小さくなる。ここで、Rskは、0±0.3の範囲が好ましく、0±0.15の範囲がより好ましい。
【0051】
また、ダウンストリーム方式プラズマ処理とは、被処理基板へのガスの供給路を挟むように対向配置された2枚の電極間にプラズマ発生に必要な電圧を印加し、プラズマ化したガスを被処理基板に照射供給して処理を行う形態である。励起ガスを被処理基板表面に照射することで、基板表面に例えば水酸基やカルボキシル基等の官能基を形成し、基板表面の改質を行う。また、基板表面の有機汚染物の除去にも使用できる。この場合に使用するガスとしては、例えばN2と、O2又は空気との混合ガス等を用いる。
【0052】
本実施形態においては、ガラス表面改質処理として、上記プラナー方式プラズマ処理及びダウンストリーム方式プラズマ処理の両処理を行うことが重要である。かかるガラス表面改質処理を行うことにより、たとえば従来の特に表面処理等をガラス基板に施さずにディップ法により形成した防汚コート層と比べて、防汚コート材のガラス基板に対する付着安定性が改善され、防汚コート面の耐久性を著しく向上させることができる。ガラス表面に塗布する防汚コート材としてはフッ素系樹脂材料が好ましく用いられる。しかしながら、このフッ素系樹脂材料をディップ法でガラス基板に塗布した場合、ガラス基板に対する付着安定性が特に悪い。このため、このようなフッ素系樹脂材料を防汚コート材として用いてディップ法でガラス基板に塗布する場合にも、ガラス基板に対する付着安定性を改善し、防汚コート面の耐久性を著しく向上させることができる。
【0053】
上記プラナー方式プラズマ処理の場合、使用する反応ガスはHe,Ar又はN2が好ましく、Heがより好ましい。また、使用する反応ガスの種類によっても多少異なるが、使用電力は、200〜500Wの範囲が好ましく、300〜400Wがより好ましい。また、処理時間は、10〜250秒の範囲で処理を行うことが好ましく、30〜90秒がより好ましい。一方、上記ダウンストリーム方式プラズマ処理の場合、使用する反応ガスは、不活性ガスと空気又はO2との混合ガスが好ましく、N2と空気との混合ガスがより好ましい。また、使用する反応ガスの種類によっても多少異なるが、使用電力は、400〜1200Wの範囲が好ましく、600〜1000Wの範囲がより好ましい。また、処理時間としては、5〜60秒の範囲で処理を行うことが好適であり、10〜15秒の範囲で処理を行うことがより好適である。
【0054】
プラナー方式プラズマ処理とダウンストリーム方式プラズマ処理の順序としては、最初に上記プラナー方式プラズマ処理を行い、続いて上記ダウンストリーム方式プラズマ処理を行う。これによって、ガラス表面形状を変化させ、その上で、ガラス表面に官能基が生成されるので好ましい。
【0055】
[防汚コート層形成(ステップS104)]
次に、主表面12に対して防汚コート層20を形成する。これにより、図4(a)に示すようにガラス基板10のみの状態から、図4(b)に示すように防汚コート層20が形成された状態となる。コーティング材料は、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(フッ素系樹脂)が好ましい。これにより、ガラス基板の表面にある水酸基やカルボキシル基等の官能基と強固に結合し、高い耐久性を発揮することができる。
【0056】
防汚コート層20は、例えばディップ法によって塗布形成することができる。ディップ法は、適当な溶媒中にコーティング材料を含有する塗布液中にガラス基板10全体を浸漬させ、これを取り出して乾燥することによって行われる。このディップ法によれば、真空成膜装置を用いなくても、ガラス基板10の全面に均一な膜厚の防汚コート層20を形成することができる。なお成膜方法としてはディップ法に限らず、遠心力を用いて成膜するスピンコート法や、スプレイガンをもちいて対象となる物質を噴霧し成膜するスプレイ法や、蒸着法などが存在するが、これらの方法により潤滑層128の成膜を行ってもよい。
【0057】
防汚コート層20の塗布膜厚は、特に制約されないが、例えば3nm〜30nmの範囲であることが好ましい。膜厚が3nm未満であると、耐久性が不足し、長期使用に際して防汚機能が十分に発揮されない恐れがある。一方、膜厚が30nmを超えると、防汚コート層20の厚さの均一性が保てなくなったり、透明性が低下したりするので携帯機器の要請に沿わなくなる。
【0058】
防汚コート層を設けることにより、カバーガラスに対して外力が加わった際に、防汚コート層によってガラス基板表面への衝撃が緩和され、脆性材料であるガラスの強度低下の要因となるクラックがガラス基板に生じにくくなることから、カバーガラスの機械的強度を向上させることができる。つまり、化学強化されたガラス基板に防汚コート層を形成することによって、カバーガラスとしての機械的強度をより一層向上させることができる。
【0059】
[領域厚さ調整工程(ステップS106)]
上記のようにして形成した防汚コート層20は、硬化する(溶媒が蒸発する)に伴い、その内部に付着領域22と流動領域24とが形成される。付着領域22は、主表面12に付着され耐久性に影響を与える領域である。流動領域24は、滑り性に寄与する領域である。そこで本発明では、次に領域厚さ調整工程を行って、防汚コート層20の厚さに対する付着領域22の厚さの割合を調整する。
【0060】
領域厚さ調整工程では、溶媒の蒸発速度を調整し、また分子量の小さい分子を揮発させることによって、図4(c)に示すように流動領域24の厚さを減少させて調節する。すなわち領域厚さ調整工程は、間接的に防汚コート層20に対する付着領域22の厚さの割合を調節する工程である。なお領域厚さ調整工程において、流動領域24と比較して付着領域22には有意な厚さの減少は見られない。これは、付着領域22を構成するコーティング材料の分子がガラス基板の表面にある水酸基やカルボキシル基等の官能基と強固に結合しているためと考えられる。
【0061】
防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合は、20%〜80%、さらには40%〜70%であることが好ましい。付着領域の厚さの割合が20%未満であると、耐久性を発揮できなくなるためである。また付着領域の厚さの割合が80%より多くなると、滑り性を発揮できなくなるためである。さらに40%〜70%であれば、耐久性と滑り性をよりよく発揮することができる。
【0062】
領域厚さ調整工程として具体的には、ベーク処理、紫外線照射処理、減圧による真空度調整処理を行うことができる。
【0063】
ベーク処理においては、恒温炉の中で溶媒の蒸発温度以上の温度で加熱することにより、防汚コート層20を乾燥させることができる。加熱温度は、120℃〜180℃が好ましい。加熱時間は、30分〜1時間が好ましい。ここで加熱温度を高くするほど、また加熱時間を長くするほど、流動領域24の厚さを減少させることができる。これとともに、熱によって、付着領域22を構成するコーティング材料の分子とガラス基板の表面との結合が促進され、付着領域22を拡大させることができる。
【0064】
紫外線照射処理において、紫外線としては、その波長150から400ナノメートルの紫外線が好ましい。また、紫外線の光源としては例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、又は超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また紫外線の光源の照度は、300[cmW/cm2]程度とすることができる。紫外線の照度を高くするほど、また照射時間を長くするほど、流動領域24の厚さを減少させることができる。また、紫外線照射処理において、雰囲気温度を調整し、加熱処理を同時に施しても良い。これにより、付着領域22を拡大させることができる。
【0065】
真空度調整処理において、溶媒の蒸気圧未満の気圧となるように真空度を調整することにより溶媒を蒸発させることができる。真空度を高くする(気圧を低くする)ほど、また処理時間を長くするほど、流動領域24の厚さを減少させることができる。また、真空度調整処理において、雰囲気温度を調整し、加熱処理を同時に施しても良い。これにより、付着領域22の拡大させることができる。
【0066】
その他、必要に応じて印刷を施したり、タッチパネル用の透明電極を形成した後に、カバーガラスが携帯機器に組み込まれる。
【0067】
[実施例]
以下に実施例を挙げて、本発明にかかる電子機器用カバーガラスおよびその製造方法についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(1)ガラス基板作成工程
まず、ダウンドロー法やフロート法で製造されたアルミノシリゲートガラスからなる厚さ0.5mmの板ガラスから所定の大きさに切り出してカバーガラス用のガラス基板を作成した。このアルミノシリケートガラスとしては、SiO2:58〜75重量%、Al2O3:4〜20重量%、Li2O:3〜10重量%、Na2O:4〜13重量%を含有する化学強化用ガラスを使用した。
【0069】
次に、砥石(小開口径加工用)等を用いてガラス基板に孔を空けると共に、例えば前述の図3に示すような外周端面の形状加工を施した。形状加工を終えたガラス基板に化学強化を施し、硫酸、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。こうして、ガラス基板を作成した。
【0070】
(2)防汚コート層形成工程
フッ素系樹脂(信越化学工業社製(商品名)KY100シリーズ)を溶剤で適当な濃度に調整した塗布液(液温25℃)を用いてディップ法により、ガラス基板の全面にフッ素系樹脂からなる防汚コート層を塗布した。防汚コート層の塗布膜厚は10nmとした。
【0071】
(3)領域厚さ調整工程
次に領域厚さ調整工程として、30分間熱風乾燥した。ここで、表1に示すように乾燥温度を異ならせて、複数のサンプルを製作した。そして乾燥後の防汚コート層20の厚さを測定した後に、溶剤としてのHFEに1分間浸漬して流動領域24を除去し、付着領域22の厚さを測定した。表1には、こうして求めた防汚コート層20に対する付着領域22の厚さの割合を示している。膜厚は、FiveLab社製エリプソメータMARY−102による測定値である。
【表1】
【0072】
各サンプルの防汚コート層表面に対して、スチールウール(#0000)を荷重1kgで摺動させ、防汚コート層表面における静止摩擦係数、動摩擦係数、および水に対する接触角の変動を検査した。この測定結果を表2〜表4に示す。静止摩擦係数及び動摩擦係数の初期値は、静止摩擦係数は0.35であり、動摩擦係数は0.21であった。摩擦係数の測定条件は、荷重50gf、摺動速度50mm/秒、摺動距離50mm、先端表面材質がポリエチレンであり先端形状が湾曲状の摺動子を用いた。水の接触角の初期値は115度であった。水の接触角はJIS R3257に従って、協和界面科学社製の接触角計DM−501を使用して測定した。
【0073】
表2において評価は、流動領域の表面の静止摩擦係数が0.2〜0.4であるか否かを基準に判定した。表3において評価は、動摩擦係数が0.1〜0.3であるか否かを基準に判定した。表4において評価は、水の接触角が100度〜120度であるか否かを基準に判定した。
【表2】
【表3】
【表4】
【0074】
表2、3においてサンプル1、2を参照すると、1000回、2000回とスチールウールを摺動させるにつれて、摩擦係数が大幅に増大していることがわかる。また表4においてもサンプル1、2を参照すると、水の接触角が大幅に低下してしまっている。これは、スチールウールの摺動によって流動領域24が容易に除去され、さらに付着領域22が薄いためにこれも除去されて、ガラス基板が露出してしまった結果であると考えられる。このことから、付着領域の厚さの割合が20%未満であると、耐久性を発揮できなくなることがわかる。
【0075】
また表2、3においてサンプル9を参照すると、サンプル1、2ほどではないが、摩擦係数が増大していることがわかる。これは、200℃のベーク処理によってコーティング材料の分子鎖が細分化され、流動層内の分子の流動性がより高まり、流動層自体の耐久性が著しく低下しているものと考えられる。このことから、付着領域の厚さの割合が80%よりも多くなると、耐久試験後に滑り性を発揮できなくなることがわかる。
【0076】
これらのことから、付着領域の厚さの割合が20%〜80%であることが好ましい。またさらに、表2、3においてサンプル4〜7においては、2000回摺動後も摩擦係数がほとんど変化していない。このことから、付着領域の厚さの割合は40%〜70%である場合がさらに好ましいことがわかる。
【0077】
なお表4においてサンプル9を参照すると、水の接触角はほとんど低下していない。これは、2000回摺動後も付着領域22が残留していることから、水の接触角が維持されたものと考えられる。上記の結果をまとめると、仮に付着領域22のみをコーティング層として形成した場合には、防汚性(接触角で評価できる)は耐久性を有するものの、滑り性(摩擦係数で評価できる)については耐久性を有さないことがわかる。そして本発明のように防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合を20%〜80%とすることにより、防汚コート層の滑り性および耐久性の両方の性能を発揮させることができることがわかる。
【0078】
[第2実施形態]
本発明にかかる電子機器用カバーガラスの第2実施形態について説明する。本実施形態では、電子機器用カバーガラスとして、電子機器の外装の一部を覆うように着脱可能に貼り付けられる外付けの保護カバーガラスを例示して説明する。
【0079】
図5は、第2実施形態にかかる電子機器用カバーガラス(以下、保護カバーガラス100とする)を電子機器に貼り付けた状態を示す図である。図5に示すように、保護カバーガラス100は、電子機器の外装の一部を覆うように着脱可能に貼り付けられる外付けの保護カバーガラスである。第2実施形態では、電子機器としてスマートフォン300を例示しているが、電子機器はこれに限らず、他の携帯電話機、携帯型ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルスティルカメラ、ビデオカメラ、またはスレートPC(Personal Computer)等であってもよい。
【0080】
スマートフォン300は、タッチパネルディスプレイ302と、タッチパネルディスプレイ302の表面を覆う外装用カバーガラス(電子機器用カバーガラス)304とを備える。外装用カバーガラス304は、スマートフォン300の外装の一部をなすように筐体306のベゼルの内側に取り付けられている。
【0081】
保護カバーガラス100は、ガラス基板102を含んでいる。保護カバーガラス100は、外装用カバーガラス304を保護するために、外装用カバーガラス304の外側の主表面を覆うように、スマートフォン300のユーザによって貼り付けられる。
【0082】
図6は、図5の保護カバーガラス100を電子機器(スマートフォン300)に貼り付けた後の模式的な横断面図である。図6では、スマートフォン300について、外装用カバーガラス304を図示し、外装用カバーガラス304以外の構成要素についてはスマートフォン本体部300Aとして模式的に図示する。
【0083】
図6に示すように、保護カバーガラス100は、電子機器(例えばスマートフォン300)を保護するためのガラス基板102と、ガラス基板102の裏面側に設けられガラス基板102を電子機器(スマートフォン300)に着脱可能に貼り付けるための貼付部(貼付層)104とを含んでいる。ガラス基板102は、表面102B(第1の主表面)と、電子機器の外装へ向けて配置するための裏面102C(第2の主表面)と、表面102Bと裏面102Cとをつなぐ端面102Aとを有している。また、ガラス基板102の厚さは、0.2〜0.5mmである。さらに、図5に示すように、ガラス基板102には、電子機器のマイク、スピーカ又はボタン等の位置に対応するように、開口が形成されている。貼付部104は、平面視において、ガラス基板102の裏面102Cの開口部分及び外周部分以外の全面に渡って形成されている。
【0084】
図7は、図6の範囲Xの拡大図である。図7に示すように、保護カバーガラス100は、全体構造として、その外周部分の裏面側に、面方向の内側に向かって窪む窪み部106を有している。第2実施形態では、窪み部106は、貼付部104の外周端104Aをガラス基板102の端面102Aよりも、面方向内側(図7の左右方向)へ間隔をおいて配置することによって、裏面102Cの外周部、貼付部の外周端104A、外装用カバーガラス304によって囲まれた空間として形成される。
【0085】
上記のように窪み部106を形成したことにより、保護カバーガラス100をスマートフォン300に貼り付けると、保護カバーガラス100とスマートフォン300との間には窪み部106によって隙間が生じる。そのため、ユーザは、この隙間に爪等を引っ掛けて保護カバーガラス100を剥離させることができる。したがって、剥離性のよいガラス製の保護カバーガラス100を実現することができる。
【0086】
また特に、貼付部104の外周端104Aを端面102Aから間隔をおいて配置して窪み部106を形成することにより、硬度が高いガラスに加工をすることなく、簡便に窪み部106を形成することができる。
【0087】
図8は図5の保護カバーガラス100の層構成を示す図、図9は図5の保護カバーガラス100を形成する手順について示す図である。図9に示すように、保護カバーガラス100は、(1)ガラス基板形成工程S400、(2)化学強化工程S402、(4)ガラス表面改質処理S404、(4)防汚コート層形成工程S406、(5)貼付部形成工程S410を経て製造される。
【0088】
ガラス基板形成工程S400では、機械加工やエッチングにより、所望の形状のガラス基板102を形成する。ガラス基板102には、SiO2:58〜75重量%、Al2O3:4〜20重量%、Li2O:3〜10重量%、Na2O:4〜13重量%を含有するアルミナシリケートガラスを用いるのが好ましいが、これに限らず、ソーダライムガラス等を用いてもよい。
【0089】
化学強化工程S402では、ステップS400で得られたガラス基板102を化学強化処理する。化学強化処理とは、溶融させた化学強化塩にガラス基板102を接触させることにより、化学強化塩中の相対的に大きな原子半径のアルカリ金属イオンと、ガラス基板102中の相対的に小さな原子半径のアルカリ金属イオンとをイオン交換し、ガラス基板102の表層にイオン半径の大きなアルカリ金属イオンを浸透させ、圧縮応力を生じさせる処理のことである。
【0090】
化学強化塩としては、硝酸カリウムや硝酸ナトリウム等のアルカリ金属硝酸塩を用いることが好ましい。また化学強化処理の方法としては、ガラス転移点の温度を超えない温度領域、例えば摂氏300度〜500度の温度で、イオン交換を行う低温型イオン交換法が好ましい。化学強化処理されたガラス基板102は強度が向上し耐衝撃性に優れているので、カバーガラス100用のガラス基板102としては、例えば厚さ0.3mm程度でも充分にカバーガラスとしての効果を発揮できる。
【0091】
ガラス表面改質処理S404では、ガラス基板102の表面にプラナー方式プラズマ処理及びダウンストリーム方式プラズマ処理の両処理からなるガラス表面改質処理を施す。これにより防汚コート層のガラス基板に対する付着安定性を十分に高めて、防汚コート面の耐久性を向上させることができる。ガラス表面改質処理S404の詳細については第1実施形態で示したステップS102と同様である。
【0092】
防汚コート層形成工程S406では、ステップS402で化学強化されたガラス基板102に防汚コート層110を形成する。防汚コート層110は、例えば、スプレイ法、ディップ法、蒸着法又は刷け塗り法等によって、ガラス基板102の表面に塗布形成される。コーティング材料は、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(フッ素系樹脂)が好ましい。これにより、ガラス基板102の表面にある水酸基やカルボキシル基等の官能基と強固に結合し、高い滑り性と耐久性を発揮することができる。また、防汚コート層110を形成することで、指紋等の汚れが付着するのを抑制し、指紋等の汚れが付着しても容易に拭き取りやすくすることができる。
【0093】
防汚コート層110は、硬化する(溶媒が蒸発する)に伴い、その内部に付着領域110aと流動領域110bとが形成される。領域厚さ調整工程S408では、溶媒の蒸発速度を調整し、また分子量の小さい分子を揮発させることによって、流動領域110bの厚さを減少させて調節する。防汚コート層110の厚さに対する付着領域110aの厚さの割合は、20%〜80%、さらには40%〜70%とする。領域厚さ調整工程として具体的には、ベーク処理、紫外線照射処理、減圧による真空度調整処理を行う。
【0094】
貼付部形成工程S410では、ガラス基板102に貼付部104を形成する。貼付部104は、シリコン系接着剤により形成される。ここで、貼付部104は、ガラス基板102を補強するための補強フィルムと、裏面102Cと補強フィルムとを接着するための第1の接着層と、補強フィルムを外装用カバーガラス304に貼り付けるためのシリコン系接着剤からなる第2の接着層を有する構成であってもよい(各層のいずれも図示せず)。このような補強フィルムを設けることで、ガラス基板102を裏面側から補強することができる。また、貼付部104の厚さは、剥離性の発揮と保護カバーガラス100の薄板化とを両立させる観点で、0.02〜0.2mmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.1mmの範囲内である。
【0095】
再び図7を参照する。図7に示すように、窪み部106の内側に向かって窪んでいる長さ(窪み部106の端面102Aからの奥行き寸法)L1は、ガラス基板102の端面102Aよりも0.1mm〜0.3mmの範囲であるとよい。これにより、剥離性と美観の両立を図ることができる。すなわち、長さL1が0.1mm以上の場合には、剥離性をより発揮することができる。長さL1が0.3mmを超える場合、時間の経過と共に窪み部106に埃や皮脂等が溜まり、スマートフォン300の美観を損なうおそれがある。特に、スマートフォン300を含む携帯電話などの携帯型電子機器では、利用者の衣服のポケットに入れられることが多いため、衣服の繊維などが埃として窪み部106に溜まりやすい傾向がある。
【0096】
図10は、図7の窪み部106を形成する範囲についての説明図である。図10(a)が第1の例を示す図であり図10(b)が第2の例を示す図である。図10(a)(b)では、窪み部106の範囲を点線で示している。
【0097】
図10(a)に示すように、保護カバーガラス100の外周部分の裏面側の全周に窪み部106を設けてもよい。また図10(b)に示すように、保護カバーガラス100の外周部分の裏面側の一部の辺だけに窪み部106を設けてもよい。なお図10(b)では、スマートフォン300の一対の短辺の一方の辺(図10(b)の上辺)に窪み部106を設けているが、窪み部106はこれに限らず、辺の一部に平面視円弧状に窪み部を設けたり、保護カバーガラス100の平面視の角部分に設けたりするなど、保護カバーガラス100の外周部分の少なくとも一部に窪み部106を設けていればよい。
【0098】
[第3実施形態]
上記第2実施形態においては貼付部104の外周端104Aの位置によって窪み部106を形成するよう説明したが、第3実施形態にかかる保護カバーガラス200は、ガラス基板202の外周部分の裏面側が内側に向かって窪んでいて、窪み部106の一部を形成している点で、第2実施形態にかかる保護カバーガラス100と異なる。
【0099】
図11は第3実施形態にかかる保護カバーガラス200の外周部分を示す図、図12は第3実施形態の他の例を示す図である。図11および図12は、第2実施形態の図7に対応する図である。
【0100】
図11に示す保護カバーガラス200においては、ガラス基板202の端面202Aと裏面202Cとの間に、端面202Aよりも内側(裏面202Cの面方向内側)に向かって傾斜する介在面202Dが形成されている。介在面202Dは、ガラス基板202の外周の全周に形成されていてもよいし、外周の一部の辺、さらに外周の辺の一部、もしくはガラス基板202の平面視の角部分のみに形成されていてもよい。この介在面202Dは、窪み部106の輪郭の一部を構成している。
【0101】
このような構成により、保護カバーガラス200とスマートフォン300との間に生じる隙間を貼付部104の厚みよりも大きくすることができる。そのため、ユーザが、窪み部106の隙間に爪等をより引っ掛けやすくなる。したがって、保護カバーガラス200の剥離性を第2実施形態よりも高めることができる。
【0102】
図12に示す保護カバーガラス210においては、ガラス基板212は、表面(第1の主表面)212B、裏面(第2の主表面)212C、断面視で曲線をなす傾斜面である端面212E、裏面212Cと端面212Eとの間に介在する介在面212Dを有している。端面212Eは、裏面212C側から表面212B側へ向けて先細となるよう傾斜している。また、ガラス基板212の表面212Bと端面212Eとの間の境界部分212Fは、丸みを帯びた形状となっている。さらに、端面212Eと介在面212Dとの境界部分212Aも(端面212Eの最外周部分)も丸みを帯びた形状となっている。
【0103】
なお、ガラス基板212の厚み方向の高さにおいて、端面212Eの高さは、介在面212Dの高さよりも高いことが好ましい。通常使用時(貼り付け作業完了後)は引っ掛けやすさよりも触ったときの滑らかさの方が重要だからである。
【0104】
上記のように、端面212Eが裏面212C側から表面212B側へ向けて先細となるよう傾斜しているので、ユーザの電子機器の操作の際に、ユーザの指等の引っ掛かりを防止することができる。また、ガラス基板212の表面212Bと端面212Eとの境界部分212Aを丸めることで、ユーザがこの境界部分を指で触れたときの触感を、より滑らかにすることができる。したがって、タッチパネルディスプレイ302を有するスマートフォン300の場合には、特に有効である。
【0105】
図13は、図11、図12のガラス基板202、212の外周部分の加工方法を例示する図である。
【0106】
図13(a)は機械加工によりガラス基板202を加工する図である。図11のガラス基板202のように断面形状が直線となる介在面202Dを形成する場合には、図13(a)に例示する機械加工(例えば、回転砥石308を用いた加工)が有効である。
【0107】
図13(b)はエッチングによりガラス基板212を加工する図である。図12のガラス基板212のように断面形状が曲線となる介在面212Dを形成する場合には、図13(b)に例示するエッチングによる加工が有効である。また、介在面212Dに加えて端面212Eを形成し、境界部分212Fを丸める場合にも、エッチングであれば一度に形成することができるため有利である。具体的には、ガラス基板212の被エッチング領域以外の領域をレジスト材料310でマスクし、表面側を裏面側よりも多く食刻するようにすることで、図12の介在面212D、端面212E、および境界部分212A、212Fの形状を好適に作ることができる。
【0108】
なお、上記各実施形態においては、保護カバーガラス100、200、210をスマートフォン300の外装用カバーガラス304に貼り付ける構成について説明した。しかし本発明はこれに限定するものではなく、例えば、スマートフォン300の筐体306の背面側に貼り付ける構成であってもよい。
【0109】
[実施例]
実施例として第2実施形態の図7に示したように貼付部104の外周端104Aのみを端面102Aから間隔をおいて配置して窪み部106を形成し、窪み部106の長さL1を変更して、試験・評価を行った。ガラス基板102の厚みは0.3mmとし、窪み部106の高さは0.1mmとした。
【0110】
表5に記載するサンプル101から110の窪み部106の長さL1を有する保護カバーガラス100をそれぞれ作成して、次の試験を行った。すなわち、サンプル101から110のそれぞれの保護カバーガラスを実際にスマートフォン300に貼り付け、被験者が指で保護カバーガラスを何回目で剥離できるか試験した。評価の基準は次の通りである。
◎…1回で成功、○…2回〜3回で成功、△…4〜5回で成功、×…6回以上で成功
【0111】
さらに、サンプル101から110のそれぞれの保護カバーガラスの製品性を調べるために、それぞれの保護カバーガラスをスマートフォン300に貼り付けた後、30日使用後の状態を調べた。なお、本実施例では、スマートフォン300として、外装用カバーガラス304の外周に黒色の塗装が施されているものを使用した。
【表5】
【0112】
[結果]
上記表5より、窪み部106の長さ(窪み部106の端面102Aからの奥行き寸法)L1は0.1mm〜0.3mmの範囲にするとよいことが分かった。
【0113】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0114】
特に、上記の第2及び第3実施形態では、貼付部の外周端をガラス基板の端面よりも、ガラス基板の裏面の面方向内側に間隔をおいて配置した構成を中心に説明した。しかしながら、ガラス基板の第2の主表面と端面との間に切欠き状の構造を設けて、この切欠き構造のみを窪みとして用いても良い。例えば、この場合、断面視において、貼付部の外周端の位置とガラス基板の端面の位置とを一致させ、貼付部の外周部分がガラス基板の切欠き構造の内面に倣うように構成してもよい。これにより、貼付部の外周部分と電子機器の外装との間に隙間が形成され、この隙間を窪みとすることができる。このような構成において、貼付部の外周部分の接着性を低下させる処理を予め施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、携帯電話機、携帯型ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルスティルカメラ、ビデオカメラ、またはスレートPC(Personal Computer)等の携帯機器の表示画面の保護に用いられる電子機器用カバーガラス及びその製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1…電子機器用カバーガラス、10…ガラス基板、10a…外周端面、10b…切り欠き、10c…耳孔、10d…キー操作孔、12…主表面、20…防汚コート層、22…付着領域、24…流動領域、100、200、210…保護カバーガラス、102、202、212…ガラス基板、102A、202A…端面、102B、202B、212B…表面(第1の主表面)、102C、202C、212C…裏面(第2の主表面)、202D、212D…介在面、212E…端面、212A、212F…境界部分、104…貼付部、104A…外周端、106…窪み部、110…防汚コート層、300…スマートフォン、300A…スマートフォン本体部、302…タッチパネルディスプレイ、304…外装用カバーガラス、306…筐体、308…回転砥石、310…レジスト材料
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】

【手続補正書】
【提出日】20160208
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の表面に形成された防汚コート層とを備え、
前記防汚コート層は、末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含有し、前記ガラス基板の表面に付着しHFEからなる溶剤に1分間浸漬した際に残存する領域である付着領域と、該付着領域の表面に配置され前記溶剤に1分間浸漬した際に溶解する領域である流動領域とを有し、前記防汚コート層の厚さが3nm以上30nm以下で、かつ前記防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合が20%〜80%の範囲内とすることを特徴とする電子機器用カバーガラス。
【請求項2】
前記防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合が40%〜70%であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用カバーガラス。
【請求項3】
前記流動領域の表面の静止摩擦係数が0.2〜0.4であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器用カバーガラス。
【請求項4】
前記流動領域の表面の動摩擦係数0.1〜0.3であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラス。
【請求項5】
前記流動領域の表面の水の接触角が100度〜120度であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラス。
【請求項6】
電子機器の外装の一部を覆うように着脱可能な外付けの電子機器用カバーガラスであって、
第1の主表面、前記第1の主表面に対する裏面であり前記電子機器の外装へ向けて配置するための第2の主表面、及び前記第1の主表面と前記第2の主表面とを繋ぐ端面とを有し、
前記第2の主表面の外周の少なくとも一部には、前記端面から前記第2の主表面の面方向内側へ向けて窪んでいる窪み部が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラス。
【請求項7】
電子機器用カバーガラスの製造方法であって、
ガラス基板作成工程と、
ガラス基板に対して防汚性を有するコーティングを施す防汚コート層形成工程とを含み、
前記防汚コート層形成工程においては、
末端基に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含有するコーティング材料を用いて、前記ガラス基板の表面に付着しHFEからなる溶剤に1分間浸漬した際に残存する領域である付着領域と、該付着領域の表面に配置され前記溶剤に1分間浸漬した際に溶解する領域である流動領域とを形成し、
防汚コート層形成工程の後に、ベーク処理、紫外線照射処理、減圧による真空度調整処理のいずれかによって前記流動領域の厚さを調節することにより、前記防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合を調整する領域厚さ調整工程を更に含むことを特徴とする電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項8】
前記領域厚さ調整工程により、前記防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合を20%〜80%とすることを特徴とする請求項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項9】
前記領域厚さ調整工程により、前記防汚コート層の厚さに対する付着領域の厚さの割合を40%〜70%とすることを特徴とする請求項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項10】
前記防汚コート層形成工程において、前記防汚コート層の厚さを3nm〜30nmとすることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項11】
前記防汚コート層形成工程の前に、プラナー方式プラズマ処理及びダウンストリーム方式プラズマ処理の両処理からなるガラス表面改質処理を施すことを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【国際調査報告】