(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050802
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】自動変速機及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20160725BHJP
   F16H 59/02 20060101ALI20160725BHJP
   F16H 61/22 20060101ALI20160725BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20160725BHJP
   F16D 25/0638 20060101ALI20160725BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20160725BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20160725BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20160725BHJP
【FI】
   !F16H61/02
   !F16H59/02
   !F16H61/22
   !F16H63/50
   !F16D25/063 K
   !F16D25/14 640F
   !F02D29/02 321A
   !F02D29/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】2014538485
(21)【国際出願番号】JP2013075672
(22)【国際出願日】20130924
(11)【特許番号】5844916
(45)【特許公報発行日】20160120
(31)【優先権主張番号】2012212549
(32)【優先日】20120926
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
【住所又は居所】静岡県富士市今泉700番地の1
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕介
【住所又は居所】静岡県富士市今泉700番地の1 ジヤトコ株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小林 克也
【住所又は居所】静岡県富士市今泉700番地の1 ジヤトコ株式会社内
【テーマコード(参考)】
3G093
3J057
3J552
【Fターム(参考)】
3G093AA05
3G093AA07
3G093AA16
3G093BA21
3G093BA22
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3J552VD11Z
(57)【要約】
走行モードが選択されたら、締結側油室にON圧を供給してロック機構をロック状態にし、その後締結側油室の油圧を下げる締結制御を行い、非走行モードが選択されたら、解放側油室にOFF圧を供給してロック機構をアンロック状態にし、その後解放側油室の油圧を下げる解放制御を行う制御装置は、駆動力源の動作の停止を通知したときに解放側油室にOFF圧を供給し、その後、ロック機構がアンロック状態となったときに、駆動力源の動作の停止を許可する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源の回転を変速して出力する自動変速機であって、
動力伝達経路に配置され、ON圧を締結側油室に供給すると締結状態になると共にロック機構がロック状態になり、前記ロック機構がロック状態になると前記締結側油室の油圧を下げても締結状態を維持し、前記ロック機構がロック状態の時に解放側油室にOFF圧を供給すると解放状態になると共に前記ロック機構がアンロック状態になり、前記ロック機構がアンロック状態になると前記解放側油室の油圧を下げても解放状態を維持する摩擦要素と、
変速機のモードとして走行モード又は非走行モードを選択することのできるセレクトスイッチと、
前記セレクトスイッチによって前記走行モードが選択されたら、前記締結側油室に前記ON圧を供給して前記ロック機構をロック状態にし、その後前記締結側油室の油圧を下げる締結制御を行い、前記セレクトスイッチによって前記非走行モードが選択されたら、前記解放側油室に前記OFF圧を供給して前記ロック機構をアンロック状態にし、その後解放側油室の油圧を下げる解放制御を行う制御装置と、
前記駆動力源の動作を停止させるアイドルストップ制御部と、
を備え、
前記制御装置は、
前記アイドルストップ制御部が前記駆動力源の動作の停止を通知したときに、前記解放側油室にOFF圧を供給し、
前記ロック機構がアンロック状態となったときに、前記アイドルストップ制御部に前記駆動力源の動作の停止を許可する
自動変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の自動変速機であって、
前記制御装置は、前記解放側油室にOFF圧の供給を開始した後、前記解放側油室の実油圧の変化に基づいて、前記ロック機構がアンロック状態となったことを検出する
自動変速機。
【請求項3】
駆動力源の回転を変速して出力する自動変速機の制御方法であって、
動力伝達経路に配置され、ON圧を締結側油室に供給すると締結状態になると共にロック機構がロック状態になり、前記ロック機構がロック状態になると前記締結側油室の油圧を下げても締結状態を維持し、前記ロック機構がロック状態の時に解放側油室にOFF圧を供給すると解放状態になると共に前記ロック機構がアンロック状態になり、前記ロック機構がアンロック状態になると前記解放側油室の油圧を下げても解放状態を維持する摩擦要素と、
変速機のモードとして走行モード又は非走行モードを選択することのできるセレクトスイッチと、
前記駆動力源の動作を停止させるアイドルストップ制御部と、が備えられ、
前記セレクトスイッチによって前記走行モードが選択されたら、前記締結側油室に前記ON圧を供給して前記ロック機構をロック状態にし、その後前記締結側油室の油圧を下げる締結制御を行い、
前記セレクトスイッチによって前記非走行モードが選択されたら、前記解放側油室に前記OFF圧を供給して前記ロック機構をアンロック状態にし、その後解放側油室の油圧を下げる解放制御を行い、
アイドルストップ制御部が前記駆動力源の動作の停止を通知したときに、前記解放側油室にOFF圧を供給し、
前記ロック機構がアンロック状態となったときに、前記アイドルストップ制御部に前記駆動力源の動作の停止を許可する
自動変速機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック機構付き摩擦要素を備えた自動変速機の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機のクラッチ・ブレーキとして、同軸に配置される2つの部材(クラッチの場合は双方が回転要素、ブレーキの場合は一方が回転要素で他方が非回転要素)を連結するために、油圧によって動作する摩擦要素が用いられている。
【0003】
かかる摩擦要素においては、JP07−12221Aには、複数の摩擦プレートが2つの部材それぞれに軸方向に摺動自在に取り付けられ、かつ、2つの部材の摩擦プレートが交互に配置される。油圧ピストンによって2つの部材の摩擦プレートを互いに押し付けると、2つの部材が摩擦プレートを介して連結される。
【発明の概要】
【0004】
JP07−12221Aに記載の摩擦要素においては、締結状態を維持するには、油圧ピストンに油圧を常時作用させる必要があり、そのためには油圧ポンプを常時動作させる必要があり、自動変速機を搭載した車両の燃費が悪化するという問題がある。
【0005】
そこで、摩擦要素が締結するまでは油圧を供給するが、摩擦要素が締結した後はロック機構によって油圧ピストンの動きを規制し、油圧を下げても摩擦要素が締結状態を維持でき、また、摩擦要素を解放する油圧を供給することでロック機構を解除し、油圧を下げても摩擦要素の解放状態を維持するように構成することが考えられる。当該構成によれば、油圧ピストンに油圧を供給し続ける必要がなくなり、油圧ポンプの負荷を低減させることができる分、車両の燃費を向上させることができる。しかしながらこのような構成の摩擦要素では、停車時にエンジンを停止するアイドルストップ制御を行うと、エンジンの駆動により動作する油圧ポンプから油圧が供給できないため、摩擦要素の締結及び解放制御が難しくなるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ロック機構付き摩擦要素を備えた自動変速機にも支障なくアイドルストップ制御を適用可能とすることを目的とする。
【0007】
本発明の一の実施態様によると、駆動力源の回転を変速して出力する自動変速機であって、動力伝達経路に配置され、ON圧を締結側油室に供給すると締結状態になると共にロック機構がロック状態になり、ロック機構がロック状態になると締結側油室の油圧を下げても締結状態を維持し、ロック機構がロック状態の時に解放側油室にOFF圧を供給すると解放状態になると共にロック機構がアンロック状態になり、ロック機構がアンロック状態になると解放側油室の油圧を下げても解放状態を維持する摩擦要素と、変速機のモードとして走行モード又は非走行モードを選択することのできるセレクトスイッチと、セレクトスイッチによって走行モードが選択されたら、締結側油室にON圧を供給してロック機構をロック状態にし、その後締結側油室の油圧を下げる締結制御を行い、セレクトスイッチによって非走行モードが選択されたら、解放側油室にOFF圧を供給してロック機構をアンロック状態にし、その後解放側油室の油圧を下げる解放制御を行う制御装置と、駆動力源の動作を停止させるアイドルストップ制御部と、を備えるものに適用される。この制御装置は、アイドルストップ制御部が駆動力源の動作の停止を通知したときに、解放側油室にOFF圧を供給し、ロック機構がアンロック状態となったときに、アイドルストップ制御部に駆動力源の動作の停止を許可することを特徴とする。
【0008】
本発明の別の実施態様によると、駆動力源の回転を変速して出力する自動変速機の制御方法であって、動力伝達経路に配置され、ON圧を締結側油室に供給すると締結状態になると共にロック機構がロック状態になり、ロック機構がロック状態になると締結側油室の油圧を下げても締結状態を維持し、ロック機構がロック状態の時に解放側油室にOFF圧を供給すると解放状態になると共にロック機構がアンロック状態になり、ロック機構がアンロック状態になると解放側油室の油圧を下げても解放状態を維持する摩擦要素と、変速機のモードとして走行モード又は非走行モードを選択することのできるセレクトスイッチと、駆動力源の動作を停止させるアイドルストップ制御部と、が備えられるものにおいて、セレクトスイッチによって走行モードが選択されたら、締結側油室にON圧を供給してロック機構をロック状態にし、その後締結側油室の油圧を下げる締結制御を行い、セレクトスイッチによって非走行モードが選択されたら、解放側油室にOFF圧を供給してロック機構をアンロック状態にし、その後解放側油室の油圧を下げる解放制御を行い、アイドルストップ制御部が駆動力源の動作の停止を通知したときに、解放側油室にOFF圧を供給し、ロック機構がアンロック状態となったときに、アイドルストップ制御部に駆動力源の動作の停止を許可することを特徴とする。
【0009】
上記実施態様によると、ON圧を供給することにより締結状態でロック機構BLをロック状態としたままON圧を抜くことによってもロック状態を維持し、OFF圧を供給することによりロック機構BLをアンロック状態とすることで、油圧を常時作用させることなく締結状態を維持できる。そして、アイドルストップの実行が通知されたときに解放側油室にOFF圧を供給し、ロック機構がアンロック状態となったときに駆動力源の停止を許可することにより、駆動力源の停止に先立って摩擦要素を解放状態にすることができるので、駆動力源の停止により油圧が供給できず解放状態への制御ができなくなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施形態の自動変速機を備えた車両の概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態のフォワードクラッチ及びこれを動作させるクラッチ動作パックの断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態の変速機コントローラが実行するアイドルストップ制御のフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施形態のアイドルストップ制御のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る自動変速機を備えた車両の概略構成を示す。車両は、エンジン1、トルクコンバータ2、変速機3を備える。エンジン1の出力回転は、トルクコンバータ2、変速機3、図示しないデファレンシャルギヤユニットを介して図示しない駆動輪へと伝達される。
【0013】
変速機3は、有段又は無段の自動変速機である。変速機3は、リバースブレーキ4と、フォワードクラッチ5とを備える。変速機3は、リバースブレーキ4が締結されている状態ではエンジン1の回転を反転して出力し、フォワードクラッチ5が締結されている状態ではエンジン1の回転を回転方向を維持したまま出力する。
【0014】
リバースブレーキ4は、締結圧を供給することで締結し、締結状態を維持するには締結圧を供給し続ける必要のある従来の摩擦要素である。リバースブレーキ4を解放するには締結圧の供給を停止すればよい。
【0015】
フォワードクラッチ5は、後述するように、ロック機構BLを備えた摩擦要素である。フォワードクラッチ5にON圧を供給し、ロック機構BLがロック状態になれば、ON圧の供給を停止してもフォワードクラッチ5は締結状態を維持することができる。フォワードクラッチ5を解放するには、フォワードクラッチ5にOFF圧を供給し、ロック機構BLを解除状態にすればよく、一旦ロック機構BLが解除状態になればOFF圧の供給を停止してもフォワードクラッチ5は解放状態を維持することができる。フォワードクラッチ5の構成については後で詳しく説明する。
【0016】
リバースブレーキ4及びフォワードクラッチ5は、両者が同時に締結されると変速機3は出力軸が回転不能な、いわゆるインターロック状態になるので、これらの締結は択一的に行われる。
【0017】
油圧制御回路7は、エンジン1によって駆動される油圧ポンプ8からの油圧をライン圧に調圧するレギュレータバルブと、ライン圧を元圧としてフォワードクラッチ5を含む摩擦要素(変速機3が無段変速機の場合は加えて無段変速機構の構成要素)に供給する油圧を調圧するソレノイドバルブと、油圧ポンプ8、各バルブ及び各摩擦要素の間を接続する油路を備える。
【0018】
油圧制御回路7の各バルブは、変速機コントローラ9からの制御信号に基づき制御される。変速機コントローラ9は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等で構成され、各種センサ及びエンジンコントローラから入力される各種信号に基づき車両の走行状態を判断し、走行状態に適した変速段(変速機3が無段変速機の場合は変速比)が実現されるよう、油圧制御回路7に指令を出力する。油圧制御回路7は、フォワードクラッチ5、リバースブレーキ4それぞれの締結状態を制御するための油圧を供給する。供給される実油圧は実油圧センサ71により検出され目標油圧(例えば後述するON圧及びOFF圧)とでフィードバック制御等により実油圧が目標油圧となるように変速機コントローラ9により制御される。
【0019】
変速機コントローラ9には、エンジン1の回転速度Neを検出する回転速度センサ101、トルクコンバータ2のタービン回転速度Nt(変速機3の入力回転速度)を検出する回転速度センサ102、変速機3の油温TMPを検出する油温センサ103、セレクトレバー11の位置を検出するインヒビタスイッチ104、アクセルペダルの操作量(以下、「アクセル開度APO」という。)を検出するアクセル開度センサ105、ブレーキのON/OFFを検出するブレーキスイッチ106等からの信号等が入力される。
【0020】
セレクトレバー11は、パーキングレンジ(以下、「Pレンジ」という。)、リバースレンジ(以下、「Rレンジ」という。)、ニュートラルレンジ(以下、「Nレンジ」という。)及びドライブレンジ(以下、「Dレンジ」という。)の間を接続するゲートに配置され、各ゲート間を移動可能に構成される。
【0021】
変速機コントローラ9は、セレクトレバー11の位置に応じて、フォワードクラッチ5及びリバースブレーキ4をそれぞれ締結または解放する。具体的には、Dレンジでは、フォワードクラッチ5が締結され、リバースブレーキ4が解放される。Rレンジでは、フォワードクラッチ5が解放され、リバースブレーキ4が締結される。Pレンジ及びNレンジでは、フォワードクラッチ5及びリバースブレーキ4が解放される。
【0022】
エンジン1にはエンジンコントローラ12が接続される。エンジンコントローラ12は、アクセル開度APOを取得して加速要求に基づく目標回転速度tNeを決定し、決定した目標回転速度tNeに実際のエンジン回転速度Neが追従するようにエンジン1の燃料噴射量やバルブタイミングを制御する。また、エンジンコントローラ12は、後述するように停車時にエンジン1の駆動を停止するアイドルストップ制御を実行する。
【0023】
次に、フォワードクラッチ5の詳細な構成について説明する。
【0024】
図2は、本発明の実施形態のフォワードクラッチ5、及び、これを動作させるクラッチ動作パック6の断面を示している。以下、各構成について説明する。
【0025】
フォワードクラッチ5は、クラッチドラム51と、クラッチハブ52と、ドリブンプレート53と、ドライブプレート54と、リテーナプレート55とを備える。
【0026】
クラッチドラム51及びクラッチハブ52は同軸に配置される。クラッチドラム51には、図示しない回転要素(軸、ギヤ等)が連結される。クラッチハブ52には、図示しない別の回転要素(軸、ギヤ等)が連結される。
【0027】
クラッチドラム51には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在にドリブンプレート53が取り付けられる。クラッチハブ52には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在にドライブプレート54が取り付けられる。4枚のドリブンプレート53と4枚のドライブプレート54は、交互に配置され、ドライブプレート54の両側の摩擦面には、クラッチフェーシングが貼り付けられる。
【0028】
クラッチドラム51は、ドリブンプレート53及びドライブプレート54を介して、クラッチドラム51に連結された回転要素から入力される回転をクラッチハブ52に伝達する。
【0029】
リテーナプレート55は、油圧ピストン61とは反対側の端部に配置されたドライブプレート54と、クラッチドラム51内周の溝に固定されたスナップリング64との間に介装される。リテーナプレート55は片面が摩擦面である。また、リテーナプレート55は、軸方向の厚みがドリブンプレート53より厚く、ドリブンプレート53及びドライブプレート54の倒れを防止する。
【0030】
クラッチ動作パック6は、油圧ピストン61と、ON圧ピストン室62と、OFF圧ピストン室63と、スナップリング64と、ダイヤフラムスプリング65と、仕切りプレート66と、ロック機構BLとを備える。
【0031】
油圧ピストン61は、フォワードクラッチ5に対して軸方向に変位可能に配置される。油圧ピストン61の一方の面がON圧受圧面61aであり、他方の面がOFF圧受圧面61bである。
【0032】
ON圧ピストン室62は、油圧ピストン61のON圧受圧面61aにON圧を作用させるために、クラッチドラム51と油圧ピストン61との間に画成される。
【0033】
OFF圧ピストン室63は、油圧ピストン61のOFF圧受圧面61bにOFF圧を作用させるために、クラッチドラム51に固定された仕切りプレート66と、油圧ピストン61との間に画成される。
【0034】
スナップリング64は、フォワードクラッチ5を挟んで油圧ピストン61の反対側の位置に配置され、フォワードクラッチ5を軸方向に支持する。
【0035】
ダイヤフラムスプリング65は、油圧ピストン61のクラッチ側端面61cとフォワードクラッチ5のピストン側端面5aとの間に介装される。ダイヤフラムスプリング65は、軸方向に2枚重ねで配置され、油圧ピストン61をスナップリング64に向かう締結方向に移動させると、フォワードクラッチ5に締結力を作用させる。
【0036】
ロック機構BLは、クラッチドラム51に内蔵されていて、油圧ピストン61と、ボール保持ピストン67と、ボール68とで構成される。
【0037】
油圧ピストン61は、フォワードクラッチ5に対して軸方向に変位可能に配置される。油圧ピストン61には、収納部61dと、テーパー面61eとが設けられる。収納部61dは、油圧ピストン61の解放方向への移動を規制するときにボール68を収納する。テーパー面61eは、収納部61dに連続して形成され、油圧ピストン61が解放方向にストロークすると、ボール68を内側に押し込む。
【0038】
ボール保持ピストン67は、油圧ピストン61を覆うクラッチドラム51の内周円筒部51aと、クラッチドラム51から軸方向に突出する仕切り円筒壁部51bとによって画成される円筒空間に配置される。ボール保持ピストン67は、ON圧またはOFF圧が作用すると軸方向に移動する。ボール保持ピストン67の外周面と仕切り円筒壁部51bとの間はシールリング84によってシールされ、ボール保持ピストン67の内周面と内周円筒部51aとの間はシールリング85によってシールされ、油圧ピストン61の内周面と仕切り円筒壁部51bとの間はシールリング86によってシールされる。これにより、油圧ピストン61の両側にON圧ピストン室62とOFF圧ピストン室63とが画成される。
【0039】
クラッチドラム51に開口されたON圧ポート51dとON圧ピストン室62とは、ボール保持ピストン67に形成されたON圧連通溝67aと、仕切り円筒壁部51bに開口されたON圧連通穴51eとを介して連通される。クラッチドラム51に開口されたOFF圧ポート51fとOFF圧ピストン室63とは、ボール保持ピストン67に形成されたOFF圧連通溝67bと、仕切り円筒壁部51bの端部と仕切りプレート66との間に確保されたOFF圧連通隙間とを介して連通される。
【0040】
ボール保持ピストン67には、収納部67cと、テーパー面67dと、ロック面67eとが設けられる。収納部67cは、油圧ピストン61の解放方向への移動を許容するときにボール68を収納する。テーパー面67d及びロック面67eは、収納部67cに連続して形成され、ボール保持ピストン67がフォワードクラッチ5に向かう方向にストロークすると、テーパー面67dがボール68を外側に押し出し、ロック面67eが押し出されたボール68をその位置にロックする。
【0041】
ボール68は、仕切り円筒壁部51bに開口したボール穴51cに設けられる。ボール68は、ON圧またはOFF圧の作用による油圧ピストン61及びボール保持ピストン67の軸方向移動に伴ってこれらピストン61、67のテーパー面61e、67dから力を受け、ロック位置とロック解除位置との間を径方向に移動する。
【0042】
以上説明した構成によれば、ON圧ピストン室62にON圧を作用させると、油圧ピストン61がフォワードクラッチ5に近づく締結方向に移動し、フォワードクラッチ5がダイヤフラムスプリング65による締結力により締結状態となる。油圧ピストン61が締結方向に移動すると、回転による遠心力と油圧によってボール68が外径方向に移動し、収納部61dにボール68が収納される。そして、ボール保持ピストン67へのON圧作用に伴ってボール保持ピストン67が軸方向(フォワードクラッチ5に向かう方向)に移動し、収納部67cに保持されるボール68を、ロック面67eにより保持する。
【0043】
これによりロック機構BLがロック状態となって油圧ピストン61の解放方向の移動が規制され、ON圧をドレーンしてもフォワードクラッチ5の締結状態が維持される。ON圧ピストン室62へのON圧の供給は締結動作中のみであり、フォワードクラッチ5の締結状態を維持するためのON圧の供給は不要である。
【0044】
また、OFF圧ピストン室63にOFF圧を作用させると、ボール保持ピストン67がロック面67eによるボール68の保持位置から保持解除位置まで、軸方向(フォワードクラッチ5から離れる方向)に移動する。OFF圧による力とダイヤフラムスプリング65による締結力の反力を合わせた力が油圧ピストン61に作用し、油圧ピストン61がリターン方向にストロークすると共にボール68をロック解除方向に押し返す。ボール68がロック解除位置まで移動すると、ロック機構BLが解除状態となる。
【0045】
フォワードクラッチ5を解放するときON圧はゼロの状態なので、OFF圧をドレーンしてもボール68をボール保持ピストン67の収納部67cに収納した状態が維持される。OFF圧ピストン室63へのOFF圧の供給は解放動作中のみであり、フォワードクラッチ5の解放状態を維持するためのOFF圧の供給は不要である。
【0046】
このように構成された自動変速機を備える車両において、次に、アイドルストップ制御について説明する。
【0047】
走行モード(例えばDレンジ)のまま車両を停車させたとき、変速機3より後段は回転停止状態であるので、エンジン1のアイドル回転はトルクコンバータ2によって遮断される。トルクコンバータ2は作動油が充填されているので、作動油がフリクションとなり回転差が熱として消費される。このときのエネルギ消費を軽減するために、変速機3のフォワードクラッチ5を解放して、エンジン1側と変速機3より後段側とで回転を完全に遮断して、回転によるフリクションを軽減して燃費効率を向上するいわゆる停車時N制御が一般に行われている。
【0048】
また一方で、停車中にエンジン1の駆動を停止するいわゆるアイドルストップ制御が一般に行われている。エンジン1をアイドルストップすることにより燃料の消費量が削減されるので、燃費効率が向上する。
【0049】
エンジンコントローラ12は、車両が所定のアイドルストップ条件を満たした場合に、エンジン1への燃料の供給を停止して、エンジン1を停止させる。所定のアイドルストップ条件とは、例えば、車速が略0km/hであり、ブレーキペダルが踏み込まれた状態であり、アクセル開度APOが0である場合等である。
【0050】
ここで、セレクトレバー11が走行モード(例えばDレンジ)でフォワードクラッチ5が締結状態のまま車両が停止し、アイドルストップ制御によってエンジン1が停止した場合は、エンジンの停止に伴い油圧ポンプ8が駆動されなくなる。油圧制御回路7に油圧ポンプ8からの油圧が供給されなくなると、変速機3に油圧を供給することができなくなる。
【0051】
特に本実施形態のフォワードクラッチ5、はロック機構BLを有しているため、フォワードクラッチ5がロック状態のままエンジン1の駆動が停止した場合は、ロック機構BLをアンロック状態にするためのOFF圧を供給することができないため停車時N制御が行えない。さらに、フォワードクラッチ5が締結状態でエンジン1を再始動した場合には、フォワードクラッチ5を介してエンジンの駆動力が駆動輪へと伝達され、車両にショックが生じたり、意図せず車両が前進する可能性がある。
【0052】
そこで、本発明の実施形態では、次のように制御することによって、アイドルストップ制御のときにフォワードクラッチ5が締結状態とならないように制御する。
【0053】
図3は、本発明の実施形態の変速機コントローラ9が実行するアイドルストップ制御のフローチャートである。
【0054】
図3に示すフローチャートは、変速機コントローラ9において所定の周期(例えば10ms)で実行される。
【0055】
変速機コントローラ9は、ステップS10において、エンジンコントローラ12からアイドルストップの実行に先立ってこれを通知する信号(アイドルストップ信号)を受信したか否かを判定する。アイドルストップ信号を受信していなければ本フローチャートによる処理を終了して、他の処理に戻る。
【0056】
アイドルストップ信号を受信したと判定した場合は、ステップS20に移行して、変速機コントローラ9は、フォワードクラッチ5のクラッチ動作パック6のOFF圧ピストン室63に、OFF圧の供給を開始する。
【0057】
このとき、エンジンコントローラ12は、アイドルストップ信号を送信してから変速機コントローラ9からアイドルストップの実行を許可する信号を受信するまでは、アイドルストップを実行しない。すなわち、ステップS20の時点ではエンジン1は回転駆動しており、油圧ポンプ8が駆動されて油圧制御回路7に油圧が供給されているので、油圧制御回路7はOFF圧を供給することができる。
【0058】
次に、ステップS30において、変速機コントローラ9は、OFF圧を供給することによってロック機構BLがアンロック状態となったか否かを判定する。ロック機構BLがアンロック状態となったか否かは、図4で後述するように、油圧制御回路7がOFF圧ピストン室63に供給する実油圧の変化により判定する。
【0059】
ロック機構BLが解除状態となっていない場合はステップS30に戻り、処理を繰り返す。
【0060】
ロック機構BLが解除状態となったと判定した場合は、ステップS40に移行し、変速機コントローラ9は、エンジンコントローラ12に、アイドルストップの実行を許可する信号(ACK信号)を送信する。エンジンコントローラ12は、変速機コントローラ9からACK信号を受け取ったことをもって、エンジン1の運転を停止させる。その後、本フローチャートによる処理を終了して、他の処理に戻る。
【0061】
以上のように、図3に示すフローチャートによって、エンジン1のアイドルストップ制御が行われるとき、エンジン1の駆動の停止に先立って、フォワードクラッチ5を確実に解放状態へと制御することができる。
【0062】
図4は、本発明の実施形態のアイドルストップ制御のタイムチャートを示す。
【0063】
図4において、上段から、アイドルストップ信号、アイドルストップ許可信号、エンジン1の回転速度Ne、OFF圧ピストン室63の実油圧、が、それぞれ横軸を時間としたタイムチャートとして示されている。
【0064】
エンジンコントローラ12は、アイドルストップ条件が成立したと判断したとき、アイドルストップ信号を変速機コントローラ9に送信する(タイミングt1)。
【0065】
変速機コントローラ9は、アイドルストップ信号を受信すると、フォワードクラッチ5のOFF圧ピストン室63に、OFF圧の供給を開始する。
【0066】
OFF圧の供給が開始されると、OFF圧ピストン室63の実油圧が徐々に上昇する。OFF圧ピストン室63の油圧がある程度まで上昇すると、ボール保持ピストン67が保持位置から保持解除位置まで、軸方向に移動する。
【0067】
このとき、ボール保持ピストン67の移動によってOFF圧ピストン室63の容積が拡大する。これによりOFF圧ピストン室63の実油圧が一旦低下する。そして、ボール保持ピストン67の移動が停止すると、OFF圧ピストン室63の容積変化が起こらなくなるので、OFF圧ピストン室63の油圧が再び上昇する。
【0068】
すなわち、ボール保持ピストン67が保持解除位置まで移動したことを、OFF圧ピストン室63の実油圧の変化によって検出することができる。
【0069】
図4において、タイミングt2で、OFF圧ピストン室63の実油圧が、低下傾向から上昇傾向へと変化している。これは、ボール保持ピストン67が保持解除位置まで移動した後移動が停止したことを示すものであり、ロック機構BLが解除されたことを示す。
【0070】
従って、変速機コントローラ9は、OFF圧ピストン室63の実油圧が低下傾向から上昇傾向へと変化した時をもって、ロック機構BLがアンロック状態となったと判定する。
【0071】
変速機コントローラ9は、ロック機構BLはアンロック状態となったと判定すると、エンジンコントローラ12にアイドルストップの許可信号を送信する。エンジンコントローラ12は、アイドルストップの許可信号を受けて、エンジン1のアイドルストップを実行する(タイミングt3)。
【0072】
エンジン1のアイドルストップが実行された場合、エンジン1の回転速度Neが徐々に低下し、最終的にエンジン1の回転速度Neはゼロとなる(タイミングt4)。このとき、エンジン1により駆動される油圧ポンプ8に基づいて供給されるOFF圧は、残圧により回転速度Neの低下より遅れて徐々に低下する。フォワードクラッチ5のロック機構BLは既にアンロック状態となっているので、OFF圧が低下してもフォワードクラッチ5の解放状態は維持される。この後、エンジン1が再始動した場合にも、フォワードクラッチ5は解放状態であるので、エンジン1の回転を変速機3よりも後段に伝達することがない。従って、車両にショックが生じたり、意図せず車両が前進することを防止できる。
【0073】
以上のように構成した本発明の実施形態では、ON圧を供給することにより締結状態になると共にロック機構BLをロック状態とし、ON圧を抜くことによってもロック状態を維持し、OFF圧を供給することにより解放状態になると共にロック機構BLをアンロック状態とし、OFF圧を抜くことによってもアンロック状態を維持することが可能なフォワードクラッチ5を備える変速機3において、エンジンコントローラ12(アイドルストップ制御部)が、エンジン1の駆動の停止を通知したときに、変速機コントローラ9(制御装置)は、OFF圧ピストン室63にOFF圧の供給を開始し、その後、ロック機構BLがアンロック状態となったときに、エンジンコントローラ12にエンジン1の停止を許可するように構成した。
【0074】
このような構成によって、走行モードでフォワードクラッチ5が締結状態で車両が停車したときにエンジン1のアイドルストップの実行が通知された場合にも、エンジン1の駆動の停止に先立ってフォワードクラッチ5をロック状態からアンロック状態とすることができる。これにより、エンジン1の停止により油圧が供給できずフォワードクラッチ5が解放状態に制御できなくなることを防止できる。従って、エンジン1が再始動した場合にもエンジン1の回転を変速機3よりも後段に伝達することがないので、車両にショックが生じたり、意図せず車両が前進することを防止することができる。
【0075】
また、変速機コントローラ9は、OFF圧ピストン室63の実油圧の変化に基づいて、より詳しくは実油圧が低下傾向から上昇傾向へと変化した時をもって、ロック機構BLがアンロック状態となったことを検出するので、油圧ポンプ8による油圧の供給が停止する前に、確実にフォワードクラッチ5を解放状態とすることができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0077】
本発明の実施形態では、駆動力源として内燃機関としてのエンジン1を備えた例を説明したがこれに限られず、エンジンと電動機とを駆動力源として備えるハイブリッド車両においても同様に適用することができる。
【0078】
また、本発明の実施形態では、エンジン1の制御と変速機3の制御をそれぞれ異なるコントローラ(エンジンコントローラ12、変速機コントローラ9)で行う例を説明したが、これに限られない。エンジン1及び変速機3を統合的に制御する制御装置によって上記の制御を行うように構成してもよい。
【0079】
本願は、2012年9月26日に日本国特許庁に出願された特願2012−212549に基づく優先権を主張する。これらの出願のすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【国際調査報告】