(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050900
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】高電子密度の導電性マイエナイト化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/00 20060101AFI20160725BHJP
   C01F 7/16 20060101ALI20160725BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20160725BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20160725BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20160725BHJP
【FI】
   !C04B35/00 J
   !C01F7/16
   !C23C14/34 A
   !H01B13/00 Z
   !H01B1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
【出願番号】2014538537
(21)【国際出願番号】JP2013075929
(22)【国際出願日】20130925
(31)【優先権主張番号】2012217343
(32)【優先日】20120928
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目5番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和弘
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目5番1号 旭硝子株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 暁
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目5番1号 旭硝子株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊成
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目5番1号 旭硝子株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】宮川 直通
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目5番1号 旭硝子株式会社内
【テーマコード(参考)】
4G030
4G076
4K029
5G301
【Fターム(参考)】
4G030AA08
4G030AA36
4G030BA02
4G030GA26
4G030GA27
4G076AA18
4G076AB02
4G076AB09
4G076BA38
4G076BF05
4G076CA11
4G076DA04
4K029DC05
4K029DC07
4K029DC09
5G301CA02
5G301CA12
5G301CA30
5G301CD02
5G301CE02
(57)【要約】
導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(a)被処理体を準備する工程であって、前記被処理体は、マイエナイト化合物またはマイエナイト化合物の前駆体を含む、工程と、
(b)アルミニウム化合物および一酸化炭素(CO)ガスを含む還元性雰囲気下において、1080℃〜1450℃の範囲で、前記被処理体を熱処理する工程であって、前記アルミニウム化合物は、前記被処理体の熱処理中に酸化アルミニウムガスを放出する化合物である、工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(a)被処理体を準備する工程であって、前記被処理体は、マイエナイト化合物またはマイエナイト化合物の前駆体を含む、工程と、
(b)アルミニウム化合物および一酸化炭素(CO)ガスを含む還元性雰囲気下において、1080℃〜1450℃の範囲で、前記被処理体を熱処理する工程であって、前記アルミニウム化合物は、前記被処理体の熱処理中に酸化アルミニウムガスを放出する化合物である、工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記アルミニウム化合物は、炭化アルミニウム(Al)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記被処理体は、
マイエナイト化合物の粉末を含む成形体、
マイエナイト化合物を含む焼結体、および
仮焼粉を含む成形体、
からなる群から選定される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記(b)の工程は、30分〜50時間の範囲で実施される、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項5】
前記(b)の工程は、100Pa以下の真空度の環境で実施される、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項6】
前記(b)の工程は、前記被処理体および前記アルミニウム化合物を、カーボンを含む容器中に入れた状態で行われる、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項7】
前記(b)の工程後に、電子密度が3×1020cm−3以上の導電性マイエナイト化合物が得られる、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項8】
前記被処理体は、フッ素(F)成分を含み、
前記(b)の工程後に、フッ素を含む導電性マイエナイト化合物が得られる、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つに記載の製造方法を用いて、導電性マイエナイト化合物を含む、成膜用のターゲットを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電子密度の導電性マイエナイト化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイエナイト化合物は、12CaO・7Alで表される代表組成を有し、三次元的に連結された直径約0.4nmの空隙(ケージ)を有する特徴的な結晶構造を持つ。このケージを構成する骨格は、正電荷を帯びており、単位格子当たり12個のケージを形成する。このケージの1/6は、結晶の電気的中性条件を満たすため、内部が酸素イオンで占められている。しかしながら、このケージ内の酸素イオンは、骨格を構成する他の酸素イオンとは化学的に異なる特性を有しており、このため、ケージ内の酸素イオンは、特にフリー酸素イオンと呼ばれている。マイエナイト化合物は、[Ca24Al2864]4+・2O2−とも表記される(非特許文献1)。
マイエナイト化合物のケージ中のフリー酸素イオンの一部または全部を電子と置換した場合、マイエナイト化合物に導電性が付与される。これは、マイエナイト化合物のケージ内に包接された電子は、ケージにあまり拘束されず、結晶中を自由に動くことができるためである(特許文献1)。このような導電性を有するマイエナイト化合物は、特に、「導電性マイエナイト化合物」と称される。
【0003】
このような導電性マイエナイト化合物は、例えば、マイエナイト化合物の粉末を蓋付きカーボン容器に入れて、窒素ガス雰囲気下1300℃で熱処理する方法(特許文献2)により製造できる。以下、この方法を従来方法1という。
【0004】
また、導電性マイエナイト化合物は、マイエナイト化合物からなる被処理体を、アルミニウム金属とともに蓋付きアルミナ容器に入れ、真空中で1300℃で熱処理する方法(特許文献2)により製造できる。以下、この方法を従来方法2という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/000741号
【特許文献2】国際公開第2006/129674号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】F.M.Lea,C.H.Desch,The Chemistryof Cement and Concrete,2nd ed.,p.52,Edward Arnold&Co.,London,1956
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の従来方法1では、電子密度が十分に高い導電性マイエナイト化合物を得ることは難しいという問題がある。前述の従来方法1では、得られる導電性マイエナイト化合物の電子密度は、3×1020cm−3未満である。
【0008】
導電性マイエナイト化合物の用途として、例えば気相蒸着法による成膜用のターゲットを想定した場合、ターゲットとなる導電性マイエナイト化合物の電子密度が、成膜される薄膜の電子密度と相関があることを本願発明者らは発見した。薄膜の電子密度を高めるために、ターゲットとなる導電性マイエナイト化合物をよりいっそう高電子密度化することが必要である。
【0009】
一方、前述の従来方法2では、1×1021cm−3超の高い電子密度の導電性マイエナイト化合物を得ることができる。しかし、この方法では、被処理体を金属アルミニウムと接触させて加熱することが必要であり、その場合、以下の問題があることを本願発明者らは発見した。
【0010】
金属アルミニウムの融点は、660℃であるため、被処理体と金属アルミニウムとをそれ以上の温度で加熱した場合、被処理体の表面に、液体のアルミニウムが生成されることになる。この状態で被処理体を室温まで温度を下げると、生成される導電性マイエナイト化合物の表面には、液体が凝固して生じた金属アルミニウム固着物が固着した状態となる。このような固着物は、導電性マイエナイト化合物と強固に密着しており、固着物を剥離したり、除去したりすることは容易ではない。導電性マイエナイト化合物を採取するには、熱処理に用いられる容器等をハンマーで破壊し、さらに導電性マイエナイト化合物の周囲に固着しているアルミニウムを、電動ノコギリ、セラミックス製リューター、および紙やすりを用いて丁寧に除去しなければならない。特に、導電性マイエナイト化合物の用途として、例えば気相蒸着法による成膜用のターゲットのような比較的大きな製品を想定した場合、熱処理に用いられる容器等から導電性マイエナイト化合物を容易に採取することは、極めて非現実的である。従って、このような現象が生じると、導電性マイエナイト化合物を回収する際に追加の処理工程が必要となり、生産性が低下するという問題が生じる。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、高い電子密度を有する導電性マイエナイト化合物を効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(a)被処理体を準備する工程であって、前記被処理体は、マイエナイト化合物またはマイエナイト化合物の前駆体を含む、工程と、
(b)アルミニウム化合物および一酸化炭素(CO)ガスを含む還元性雰囲気下において、1080℃〜1450℃の範囲で、前記被処理体を熱処理する工程であって、前記アルミニウム化合物は、前記被処理体の熱処理中に酸化アルミニウムガスを放出する化合物である、工程と、
を含むことを特徴とする製造方法が提供される。
【0013】
ここで、本発明による製造方法において、前記アルミニウム化合物は、炭化アルミニウム(Al)であっても良い。
【0014】
また、本発明による製造方法において、前記被処理体は、
マイエナイト化合物の粉末を含む成形体、
マイエナイト化合物を含む焼結体、および
仮焼粉を含む成形体、
からなる群から選定されても良い。
【0015】
また、本発明による製造方法において、前記(b)の工程は、30分〜50時間の範囲で実施されても良い。
【0016】
また、本発明による製造方法において、前記(b)の工程は、100Pa以下の真空度の環境で実施されても良い。
【0017】
また、本発明による製造方法において、前記(b)の工程は、前記被処理体および前記アルミニウム化合物を、カーボンを含む容器中に入れた状態で行われても良い。
【0018】
また、本発明による製造方法において、前記(b)の工程後に、電子密度が3×1020cm−3以上の高電子密度の導電性マイエナイト化合物が得られても良い。
【0019】
また、本発明による製造方法において、前記被処理体は、フッ素(F)成分を含み、
前記(b)の工程後に、フッ素を含む導電性マイエナイト化合物が得られても良い。
【0020】
また、本発明では、前述の製造方法を用いて、導電性マイエナイト化合物を含む、成膜用のターゲットを製造する方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を効率良く製造する方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例による導電性マイエナイト化合物の製造方法の一例を模式的に示したフロー図である。
【図2】被処理体を熱処理する際に使用される装置の一構成例を模式的に示した図である。
【図3】実施例1に係る被処理体を熱処理する際に使用した装置の構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(a)被処理体を準備する工程であって、前記被処理体は、マイエナイト化合物またはマイエナイト化合物の前駆体を含む、工程と、
(b)アルミニウム化合物および一酸化炭素(CO)ガスを含む還元性雰囲気下において、1080℃〜1450℃の範囲で、前記被処理体を熱処理する工程であって、前記アルミニウム化合物は、前記被処理体の熱処理中に酸化アルミニウムガスを放出する化合物である、工程と、
を含むことを特徴とする製造方法が提供される。
【0024】
ここで、本願において、「マイエナイト化合物」とは、ケージ(籠)構造を有する12CaO・7Al(以下「C12A7」ともいう)およびC12A7と同等の結晶構造を有する化合物(同型化合物)の総称を意味する。C12A7の同等の同型化合物としては、12SrO・7Alがある。
【0025】
また、本願において、「導電性マイエナイト化合物」とは、ケージ中に含まれる「フリー酸素イオン」の一部もしくは全てが電子で置換された、電子密度が1.0×1018cm−3以上のマイエナイト化合物を意味する。また、電子密度が3.0×1020cm−3以上のマイエナイト化合物を、特に、「高電子密度の導電性マイエナイト化合物」と称する。なお、全てのフリー酸素イオンが電子で置換されたときの電子密度は、約2.3×1021cm−3である。
【0026】
従って、「マイエナイト化合物」には、「導電性マイエナイト化合物」、「高電子密度の導電性マイエナイト化合物」、および「非導電性マイエナイト化合物」が含まれる。
【0027】
本発明では、製造される「導電性マイエナイト化合物」の電子密度は、3.0×1020cm−3以上であり、従来の蓋付きカーボン容器を用いた方法に比べて有意に大きな電子密度を有する「高電子密度の導電性マイエナイト化合物」を得ることができる。本発明において製造される導電性マイエナイト化合物の電子密度は、5.0×1020cm−3以上であることが好ましく、7.0×1020cm−3以上であることがより好ましく、1.0×1021cm−3以上であることがさらに好ましい。
【0028】
なお、一般に、導電性マイエナイト化合物の電子密度は、マイエナイト化合物の電子密度により、2つの方法で測定される。電子密度は、1.0×1018cm−3〜3.0×1020cm−3未満の場合、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルの2.8eV(波長443nm)の吸光度(クベルカムンク変換値)から算出される。この方法は、電子密度とクベルカムンク変換値が比例関係になることを利用している。以下、検量線の作成方法について説明する。
【0029】
電子密度の異なる試料を4点作成しておき、それぞれの試料の電子密度を、電子スピン共鳴(ESR)のシグナル強度から求めておく。ESRで測定できる電子密度は、1.0×1014cm−3〜1.0×1019cm−3程度である。クベルカムンク値とESRで求めた電子密度をそれぞれ対数でプロットすると比例関係となり、これを検量線とした。すなわち、この方法では、電子密度が1.0×1019cm−3〜3.0×1020cm−3では検量線を外挿した値である。
【0030】
電子密度が3.0×1020cm−3〜2.3×1021cm−3の場合、電子密度は、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルのピークの波長(エネルギー)から換算される。関係式は下記の式を用いた:

n=(−(Esp−2.83)/0.199)0.782 (1)式

ここで、nは電子密度(cm−3)、Espはクベルカムンク変換した吸収スペクトルのピークのエネルギー(eV)を示す。
【0031】
本発明において、導電性マイエナイト化合物は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)からなるC12A7結晶構造を有している限り、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)の中から選ばれた少なくとも1種の原子の一部が、他の原子や原子団に置換されていても良い。例えば、カルシウム(Ca)の一部は、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)からなる群から選択される1以上の原子で置換されていても良い。また、アルミニウム(Al)の一部は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ヨーロピウム(Eu)、イットリビウム(Yb)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびテリビウム(Tb)からなる群から選択される1以上の原子で置換されても良い。また、ケージの骨格の酸素は、窒素(N)などで置換されていても良い。
【0032】
本発明において、導電性マイエナイト化合物は、ケージ内のフリー酸素イオンの少なくとも一部がH、H、H2−、O、O、OH、F、Cl、およびS2−などの陰イオンや、窒素(N)の陰イオンによって置換されていても良い。
【0033】
本発明における導電性マイエナイト化合物におけるカルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合は、CaO:Alに換算したモル比で、10:9〜13:6の範囲が好ましく、11:8〜12.5:6.5の範囲がより好ましく、11.5:7.5〜12.3:6.7の範囲がより好ましく、11.8:7.2〜12.2:6.8の範囲がさらに好ましく、約12:7が特に好ましい。カルシウム(Ca)の一部が他の原子に置換されている場合は、カルシウムと他の原子のモル数をカルシウムのモル数とみなす。アルミニウム(Al)の一部が他の原子に置換されている場合は、アルミニウムと他の原子のモル数をアルミニウムのモル数とみなす。
【0034】
ここで、本発明による製造方法を利用した際に、「高電子密度の導電性マイエナイト化合物」が製造される理由として、以下のことが考えられる。
【0035】
まず、本発明による製造方法では、例えば、マイエナイト化合物を含む被処理体が準備される。
【0036】
また、本発明による製造方法では、そのような被処理体は、熱処理の際に酸化アルミニウムガスを放出するアルミニウム化合物、および一酸化炭素(CO)ガスの存在する還元性雰囲気下で、熱処理される。
【0037】
ここで、酸化アルミニウムガスとしては、AlOガスおよび/またはAlOガスが挙げられる。酸化アルミニウムガスは、強い還元性を有する。このため、被処理体が晒される環境は、強い還元性雰囲気となっている。従って、熱処理中に酸化アルミニウムガスが生じると、このガスにより、被処理体であるマイエナイト化合物が還元され、マイエナイト化合物のケージ内の酸素イオンが電子と置換される。
【0038】
例えば、酸化アルミニウムガスを放出するアルミニウム化合物として、炭化アルミニウム(Al)を想定した場合、被処理体の熱処理の際に、炭化アルミニウムは、以下の反応により、環境中に酸化アルミニウムガスを放出する:

Al+2O → 4AlO+3C (2)式

Al+O → 2AlO+3C (3)式


放出された酸化アルミニウムガスの還元作用により、マイエナイト化合物のケージ内の酸素イオンは、以下の反応により電子と置換される:

2AlO+O2− → Al+2e (4)式

AlO+2O2− → Al+4e (5)式

従って、このような反応により、被処理体であるマイエナイト化合物が還元され、高電子密度の導電性マイエナイト化合物が生成されるものと考えられる。
【0039】
さらに一酸化炭素ガス(CO)は、マイエナイト化合物表面に、酸化物が堆積するのを抑制する効果がある。すなわち、一酸化炭素ガスの存在下では、マイエナイト化合物表面には、酸化物だけではなく、炭化物も生成する。この炭化物は、酸化物であるマイエナイト化合物との親和性が悪い上、熱処理温度では焼結もほとんどしない。したがって、酸化アルミニウムガスが、マイエナイト化合物表面に容易に到達できるため、一酸化炭素ガスが存在しない環境下と比較して、(4)式および(5)式の還元作用が進み易くなると考えられる。
【0040】
特に、本発明による製造方法では、製造される導電性マイエナイト化合物の電子密度は、3.0×1020cm−3以上であり、従来方法1のような蓋付きカーボン容器を用いた方法に比べて、有意に大きな電子密度を有する「高電子密度の導電性マイエナイト化合物」を得ることができる。
【0041】
また、本発明の製造方法では、前述の従来方法2とは異なり、金属アルミニウムは、使用されない。
【0042】
前述のように、金属アルミニウムを使用する従来方法2では、マイエナイト化合物の被処理体および金属アルミニウムが加熱されると、被処理体の表面には、液体のアルミニウム金属が形成される。このような状態で被処理体の温度を室温まで降温すると、得られる導電性マイエナイト化合物の表面に、金属アルミニウムの固着物が固着されてしまう。このような固着物は、導電性マイエナイト化合物と強固に密着しており、固着物を剥離したり、除去したりすることは容易ではない。従って、このような現象が生じると、導電性マイエナイト化合物を回収する際に追加の処理工程が必要となり、生産性が低下するという問題が生じる。
【0043】
これに対して、本発明による製造方法では、熱処理の際に、金属アルミニウムは使用されず、酸化アルミニウムガスを放出するアルミニウム化合物が使用される。このアルミニウム化合物は、前述の(2)式および(3)式から明らかなように、熱処理中に固体であるカーボン(C)に変化するものの、反応の過程で液体成分を生成することはない。
【0044】
このため、本発明による製造方法では、生成した高電子密度の導電性マイエナイト化合物の表面に、金属アルミニウムのような固着物が固着することが有意に回避される。従って、本発明の製造方法では、熱処理後に生成した高電子密度の導電性マイエナイト化合物を容易に回収できる。
【0045】
このように、本発明による製造方法では、生産性を低下させることなく、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を製造することが可能となる。
【0046】
(本発明の一実施例による高電子密度の導電性マイエナイト化合物の製造方法)
以下、図面を参照して、本発明の一実施例による製造方法について、詳しく説明する。
【0047】
図1には、本発明の一実施例による高電子密度の導電性マイエナイト化合物の製造方法を示す。
【0048】
図1に示すように、本発明の一実施例による製造方法は、
(a)被処理体を準備する工程であって、前記被処理体は、マイエナイト化合物またはマイエナイト化合物の前駆体を含む、工程(工程S110)と、
(b)アルミニウム化合物および一酸化炭素(CO)ガスを含む還元性雰囲気下において、1080℃〜1450℃の範囲で、前記被処理体を熱処理する工程であって、前記アルミニウム化合物は、前記被処理体の熱処理中に酸化アルミニウムガスを放出する化合物である、工程(工程S120)と、
を有する。
【0049】
以下、各工程について詳しく説明する。
【0050】
(工程S110)
まず、被処理体が準備される。被処理体は、マイエナイト化合物、またはマイエナイト化合物の前駆体を含む。例えば、被処理体は、
(i)マイエナイト化合物の粉末の成形体、
(ii)マイエナイト化合物の焼結体、または
(iii)仮焼粉の成形体
であっても良い。
【0051】
以下、(i)〜(iii)の各形態の被処理体の調製方法について説明する。
【0052】
(i)マイエナイト化合物の粉末の成形体の調製方法
(マイエナイト化合物の粉末の調製)
マイエナイト化合物の粉末の成形体を調製する場合、最初に、原料粉末が調合される。
【0053】
原料粉末は、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合が、CaO:Alに換算したモル比で、10:9〜13:6の範囲となるように調合される。CaO:Al(モル比)は、11:8〜12.5:6.5の範囲が好ましく、11.5:7.5〜12.3:6.7の範囲がより好ましく、11.8:7.2〜12.2:6.8の範囲がさらに好ましく、約12:7が特に好ましい。
【0054】
なお、原料粉末に使用される化合物は、前記割合が維持される限り、特に限られない。
【0055】
原料粉末は、カルシウムアルミネートを含むか、または、カルシウム化合物、アルミニウム化合物、およびカルシウムアルミネートからなる群から選定された少なくとも2つを含むことが好ましい。
【0056】
原料粉末は、例えば、以下の混合粉末であっても良い:カルシウム化合物とアルミニウム化合物とを含む混合粉末、カルシウム化合物とカルシウムアルミネートとを含む混合粉末、アルミニウム化合物とカルシウムアルミネートとを含む混合粉末、カルシウム化合物と、アルミニウム化合物と、カルシウムアルミネートとを含む混合粉末、カルシウムアルミネートのみを含む混合粉末。
【0057】
カルシウム化合物としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、およびハロゲン化カルシウムなどが挙げられる。これらの中では、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、および水酸化カルシウムが好ましい。
【0058】
アルミニウム化合物としては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびハロゲン化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中では、水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウムが好ましい。酸化アルミニウム(アルミナ)は、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナなどあるが、α−酸化アルミニウム(アルミナ)が好ましい。
【0059】
カルシウムアルミネートとしては、CaO・Al、3CaO・Al、5CaO・3Al、CaO・2Al、CaO・6Al等が好ましい。C12A7を、カルシウム化合物またはアルミニウム化合物と混合して用いても良い。
【0060】
原料粉末は、さらにフッ素(F)成分を含んでも良い。フッ素(F)成分としては、例えば、フッ化カルシウム(CaF)等が挙げられる。原料粉末にフッ素(F)成分を添加した場合、最終的に(工程S120の後に)、ケージ内にフッ素イオンが導入された高電子密度の導電性マイエナイト化合物等を製造できる。
【0061】
フッ素(F)成分を含む原料粉末は、これに限られるものではないが、例えば、前述のようなカルシウム化合物とアルミニウム化合物の混合粉末に、フッ化カルシウムを添加して調製しても良い。
【0062】
原料粉末中のフッ素(F)の含有量は、特に限られない。フッ素(F)の含有量は、例えば、最終的に得られる導電性マイエナイト化合物の化学式を

(12−x)CaO・7Al・xCaF (6)式

で表した際に、xの範囲が0〜0.60の範囲となるように選定されても良い。
【0063】
次に、前述のように調合された原料粉末が高温に保持され、マイエナイト化合物が合成される。
【0064】
合成は、不活性ガス雰囲気下や真空下で行っても良いが、大気下で行うことが好ましい。合成温度は、特に限られないが、例えば、1150℃〜1460℃の範囲であり、1200℃〜1415℃の範囲が好ましく、1250℃〜1400℃の範囲がより好ましく、1300℃〜1350℃の範囲がさらに好ましい。1150℃〜1460℃の温度範囲で合成した場合、C12A7の結晶構造を多く含むマイエナイト化合物が得られ易くなる。合成温度が低すぎると、C12A7結晶構造が少なくなるおそれがある。一方、合成温度が高すぎると、マイエナイト化合物の融点を超えるため、C12A7の結晶構造が少なくなるおそれがある。
【0065】
合成温度は、フッ素を含有しないマイエナイト化合物では、1230℃〜1415℃がより好ましく、1250℃〜1380℃がさらに好ましく、1280℃〜1350℃が特に好ましい。合成温度は、フッ素を含有するマイエナイト化合物では、1180℃〜1420℃がより好ましく、1200℃〜1400℃がさらに好ましく、1230℃〜1380℃が特に好ましい。フッ素を含有するマイエナイト化合物は、化合物の融点が高くなるため、合成温度範囲が広くなり、製造しやすい。
【0066】
高温の保持時間は、特に限られず、これは、合成量および保持温度等によっても変動する。保持時間は、例えば、1時間〜12時間である。保持時間は、例えば、2時間〜10時間であることが好ましく、4時間〜8時間であることがより好ましい。原料粉末を1時間以上、高温で保持することにより、固相反応が十分に進行し、均質なマイエナイト化合物を得ることができる。
【0067】
合成により得られるマイエナイト化合物は、一部または全てが焼結した塊状である。塊状のマイエナイト化合物は、スタンプミル等で、例えば、5mm程度の大きさまで粉砕処理される。さらに、自動乳鉢や乾式ボールミルで、平均粒径が10μm〜100μm程度まで粉砕処理が行われる。ここで、「平均粒径」は、レーザ回折散乱法で測定して得た値を意味するものとする。以下、粉末の平均粒径は、同様の方法で測定した値を意味するものとする。
【0068】
さらに微細で均一な粉末を得たい場合は、例えば、C2n+1OH(nは3以上の整数)で表されるアルコール(例えば、イソプロピルアルコールを溶媒として用い、湿式ボールミル、または循環式ビーズミルなどを用いることにより、粉末の平均粒径を0.5μm〜50μmまで微細化できる。
【0069】
以上の工程により、マイエナイト化合物の粉末が調製される。
【0070】
なお、粉末として調整されるマイエナイト化合物は、導電性マイエナイト化合物であっても良い。導電性マイエナイト化合物は非導電性の化合物より粉砕性に優れるからである。
【0071】
導電性マイエナイト化合物の合成方法は、特に限定されないが、下記の方法が挙げられる。例えば、マイエナイト化合物を蓋付きカーボン容器中に入れて、1600℃で熱処理して作製する方法(国際公開第2005/000741号)、マイエナイト化合物を蓋付きカーボン容器に入れて、窒素中1300℃で熱処理して作製する方法(国際公開第2006/129674号)、炭酸カルシウム粉末と酸化アルミニウム粉末から作られる、カルシウムアルミネートなどの粉末を蓋付きカーボン坩堝に入れて、窒素中1300℃で熱処理して作製する方法(国際公開第2010/041558号)、炭酸カルシウム粉末と酸化アルミニウム粉末を混合した粉末を、蓋付きカーボン坩堝に入れて、窒素中1300℃で熱処理して作製する方法(特開2010−132467号公報)などがある。
【0072】
導電性マイエナイト化合物の粉砕方法は、上記マイエナイト化合物の粉砕方法と同様である。
【0073】
以上の工程により、導電性マイエナイト化合物の粉末が調整される。なお、非導電性マイエナイト化合物と導電性マイエナイト化合物の混合粉末を用いても良い。
【0074】
(マイエナイト化合物粉末の成形体の調製)
次に、前述の方法で調製したマイエナイト化合物粉末を含む成形体が準備される。成形体は、粉末または粉末を含む混練物からなる成形材料の加圧成形により、調製しても良い。成形材料をプレス成形、シート成形、押出成形、または射出成形することにより、成形体を得ることができる。成形体の形状は、特に限られない。
【0075】
(ii)マイエナイト化合物の焼結体の調製方法
マイエナイト化合物の焼結体を調製する場合も、前述の「(i)マイエナイト化合物の粉末の成形体の調製方法」において説明した方法の一部を利用できる。
【0076】
例えば、前述の(マイエナイト化合物の粉末の調製)の欄に示した方法では、原料粉末が高温に保持され、マイエナイト化合物が合成される。この合成後に得られる塊状のマイエナイト化合物を、そのまま被処理体用の焼結体として使用しても良い。
【0077】
あるいは、「(i)マイエナイト化合物の粉末の成形体の調製方法」の(マイエナイト化合物粉末の成形体の調製)の欄で示した成形体を熱処理することにより得られた焼結体を、被処理体として使用しても良い。
【0078】
後者の場合、熱処理条件は、成形体が焼結される条件であれば特に限られない。熱処理は、例えば、大気中、300℃〜1450℃の温度範囲で実施されても良い。300℃以上であると有機成分が揮発し粉末の接点が増えるため焼結処理が進行しやすく、1450℃以下であると焼結体の形状を保持しやすい。熱処理の最高温度は、おおよそ1000℃〜1420℃の範囲であり、好ましくは1050℃〜1415℃、さらに好ましくは1100℃〜1380℃、特に好ましくは1250℃〜1350℃である。
【0079】
熱処理の最高温度における保持時間は、おおよそ1時間〜50時間の範囲であり、好ましくは、2時間〜40時間、さらに好ましくは3時間〜30時間である。また、保持時間を長くしても、特性上は特に問題はないが、作製コストを考えると、保持時間は、48時間以内が好ましい。アルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素などの不活性ガス、酸素ガス、またはこれらの混在した雰囲気中や、真空中で実施しても良い。
【0080】
この他にも、各種方法で、マイエナイト化合物の焼結体を調製しても良い。
【0081】
なお、焼結体に含まれるマイエナイト化合物は、導電性マイエナイト化合物であっても、非導電性マイエナイト化合物であっても良い。また、焼結体に含まれるマイエナイト化合物は、フッ素を含むマイエナイト化合物であっても良く、フッ素を含まないマイエナイト化合物であっても良い。
【0082】
(iii)仮焼粉の成形体の調製方法
本願において、「仮焼粉」とは、熱処理を経て調製された粉末であって、(i)酸化カルシウム、酸化アルミニウム、およびカルシウムアルミネートからなる選定された少なくとも2つを含む混合粉末、または、(ii)2種類以上のカルシウムアルミネートの混合粉末を意味する。カルシウムアルミネートとしては、CaO・Al、3CaO・Al、5CaO・3Al、CaO・2Al、CaO・6Al、C12A7等が挙げられる。「仮焼粉」における、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合は、CaO:Alに換算したモル比で、9.5:9.5〜13:6である。
【0083】
特に、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合は、CaO:Alに換算したモル比で、10:9〜13:6の範囲となるように調合される。CaO:Al(モル比)は、11:8〜12.5:6.5の範囲が好ましく、11.5:7.5〜12.3:6.7の範囲がより好ましく、11.8:7.2〜12.2:6.8の範囲がさらに好ましく、約12:7が特に好ましい。
【0084】
仮焼粉は、マイエナイト化合物の「前駆体」とも称される。
【0085】
(仮焼粉の調製)
仮焼粉は、以下のようにして調製できる。
【0086】
まず、原料粉末を準備する。原料粉末は、少なくとも、酸化カルシウム源および酸化アルミニウム源となる原料を含む。
【0087】
例えば、原料粉末は、2種類以上のカルシウムアルミネートを含むか、または、カルシウム化合物、アルミニウム化合物、およびカルシウムアルミネートからなる群から選定された少なくとも2つを含むことが好ましい。
【0088】
原料粉末は、例えば、以下の原料粉末であっても良い:カルシウム化合物とアルミニウム化合物とを含む原料粉末、カルシウム化合物とカルシウムアルミネートとを含む原料粉末、アルミニウム化合物とカルシウムアルミネートとを含む原料粉末、カルシウム化合物と、アルミニウム化合物と、カルシウムアルミネートとを含む原料粉末、カルシウムアルミネートのみを含む原料粉末。
【0089】
以下、代表例として、原料粉末が少なくとも、酸化カルシウム源となる原料Aと、酸化アルミニウム源となる原料Bとを含む場合を想定して、仮焼粉の調製方法を説明する。
【0090】
原料Aとしては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、およびハロゲン化カルシウムなどが挙げられる。これらの中では、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、および水酸化カルシウムが好ましい。
【0091】
原料Bとしては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびハロゲン化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中では、水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウムが好ましい。酸化アルミニウム(アルミナ)は、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナなどがあるが、α−酸化アルミニウム(アルミナ)が好ましい。
【0092】
仮焼粉は、原料Aおよび原料B以外の物質を含んでも良い。仮焼粉は、フッ素成分を含んでいても良く、フッ素成分を含んでいなくても良い。
【0093】
次に、原料Aおよび原料Bを含む原料粉末が熱処理される。これにより、カルシウムとアルミニウムを含む仮焼粉が得られる。前述のように、仮焼粉中のカルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合は、CaO:Alに換算したモル比で、約10:9〜13:6の範囲である。
【0094】
熱処理の最高温度は、おおよそ600℃〜1250℃の範囲であり、好ましくは900℃〜1200℃、より好ましくは1000℃〜1100℃である。熱処理の最高温度における保持時間は、おおよそ1時間〜50時間の範囲であり、好ましくは2時間〜40時間、より好ましくは3時間〜30時間である。また、保持時間を長くしても、特性上は特に問題はないが、作製コストを考えると、保持時間は48時間以内が好ましい。
【0095】
熱処理は、大気中で実施しても良い。熱処理は、アルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素などの不活性ガス、酸素ガス、またはこれらの混在した雰囲気中や、真空中で実施しても良い。
【0096】
熱処理後に得られた仮焼粉は、通常、一部または全てが焼結した塊状である。このため、必要に応じて、前述の(マイエナイト化合物の粉末の調製)の欄に示したような、粉砕処理(粗粉砕および/または微細化)を実施しても良い。
【0097】
以上の工程により、仮焼粉が調製される。
【0098】
(仮焼粉の成形体の調製)
次に、前述のように調製された仮焼粉を用いて、成形体が形成される。
【0099】
成形体の形成方法は、前述の(i)の調製方法に関して(マイエナイト化合物粉末の成形体の調製)において説明した方法と同様の方法が適用できるため、ここではこれ以上説明しない。
【0100】
以上の工程により、仮焼粉の成形体が調製される。
【0101】
なお、前述の(i)〜(iii)の被処理体の調製方法の説明は、単なる一例であって、その他の方法で、被処理体を調製しても良いことは、当業者には明らかであろう。例えば、被処理体は、マイエナイト化合物の粉末と仮焼粉を混合した粉末の成形体であっても良い。
【0102】
(工程S120)
次に、例えば前述の調製方法により調製された(i)〜(iii)の被処理体のような被処理体を用いて、熱処理が実施される。
【0103】
被処理体の熱処理は、一酸化炭素(CO)ガスを含む還元性雰囲気下で実施される。「還元性雰囲気」とは、環境中の酸素分圧が10−3Pa以下の雰囲気の総称を意味し、該環境は、不活性ガス雰囲気、または減圧環境(例えば圧力が100Pa以下の真空環境)であっても良い。酸素分圧は、10−5Pa以下が好ましく、10−10Pa以下がより好ましく、10−15Pa以下がさらに好ましい。
【0104】
一酸化炭素ガスは、被処理体の晒される環境に外部から供給しても良いが、例えばカーボン含有容器を使用して、被処理体をこのカーボン含有容器内に配置しても良い。この場合、被処理体の熱処理の際に、カーボン含有容器から、一酸化炭素ガスが供給される。あるいは、その他のCO源となる部材を使用しても良い。
【0105】
被処理体の熱処理の際に、環境を還元性雰囲気に調整する方法は、特に限られない。
【0106】
例えば、カーボン含有容器を、圧力が100Pa以下の真空雰囲気に配置しても良い。この場合、圧力は、より好ましくは60Pa以下であり、さらに好ましくは40Pa以下であり、特に好ましくは20Pa以下である。
【0107】
あるいは、カーボン含有容器に、酸素分圧が1000Pa以下の不活性ガス雰囲気(ただし窒素ガスを除く)を供給しても良い。この場合、供給する不活性ガス雰囲気の酸素分圧は、好ましくは100Pa以下であり、より好ましくは10Pa以下であり、さらに好ましくは1Pa以下であり、特に好ましくは0.1Pa以下である。
【0108】
不活性ガス雰囲気は、アルゴンガス雰囲気等であっても良い。
【0109】
なお、本発明では、熱処理の際に被処理体が晒される環境中には、アルミニウム化合物が配置されることに留意する必要がある。アルミニウム化合物は、熱処理中に酸化アルミニウムガスを放出するものであれば特に限られない。アルミニウム化合物は、例えば、炭化アルミニウム(Al)等であっても良い。
【0110】
熱処理温度は、1080℃〜1450℃の範囲である。熱処理温度が1080℃よりも低い場合、マイエナイト化合物に十分な導電性を付与することができないおそれがある。また、熱処理温度が1450℃よりも高い場合、マイエナイト化合物の融点を超えるため結晶構造が分解してしまい、電子密度が低くなる。
【0111】
熱処理温度は、フッ素成分を含まない被処理体では、1230℃〜1415℃が好ましく、1250℃〜1380℃がより好ましく、1280℃〜1350℃がさらに好ましい。所望の形状の導電性マイエナイト化合物が得られやすいことから、1380℃以下で熱処理することが好ましく、形状の安定性から、1350℃以下で熱処理することがより好ましい。熱処理温度は、フッ素成分を含む被処理体では、1180℃〜1420℃が好ましく、1200℃〜1400℃がより好ましく、1230℃〜1380℃がさらに好ましい。被処理体がフッ素成分を含むと、熱処理温度が広くなり、製造が制御しやすい。
【0112】
被処理体の高温保持時間は、30分〜50時間の範囲であることが好ましく、1時間〜40時間がより好ましく、3時間〜30時間がさらに好ましく、2時間〜25時間が特に好ましい。被処理体の保持時間が30分未満の場合、十分に高い電子密度を有する導電性マイエナイト化合物を得ることができなくなるおそれがある上、焼結も不十分であり、得られた焼結体が壊れやすくなるおそれがある。また、保持時間を長くしても、特性上は特に問題はないが、マイエナイト化合物の所望の形状が保持しやすいことから、保持時間は50時間以内であることが好ましい。無駄なエネルギーを使用しない観点から、40時間以内であることがより好ましい。
【0113】
以上の工程により、3×1020cm−3以上の導電性マイエナイト化合物が製造される。なお、(工程S110)において、フッ素成分を含む被処理体を使用した場合、フッ素を含む高電子密度の導電性マイエナイト化合物が製造される。この場合、フッ素は、ケージ内に導入されていても良く、ケージの骨格に導入されていても良い。
【0114】
図2には、被処理体を熱処理する際に使用される装置の一構成図を模式的に示す。
【0115】
装置200は、上部が開放されているカーボン容器210と、該カーボン容器210の上部に配置されるカーボン蓋215と、カーボン容器210内に配置されたアルミナ製の蓋235付きのアルミナ容器230と、を有する。
【0116】
アルミナ容器230内には、仕切り板240と、耐熱皿(例えばアルミナ製皿)250とが配置されている。耐熱皿250内には、アルミニウム化合物260が、例えば粉末の形態で設置されている。アルミニウム化合物260は、装置200が高温になった際に、酸化アルミニウムガスを発生する化合物であり、例えば炭化アルミニウム(Al)である。
【0117】
仕切り板240は、上部に被処理体270を配置するために使用される。例えば、仕切り板240は、多数の貫通孔を有するアルミナ板等で構成される。
【0118】
なお、仕切り板240は、必ずしも必要な部材ではなく、省略しても良い。この場合、被処理体270は、アルミニウム化合物260の上に、直接配置される。あるいは、アルミニウム化合物260が粉末形態の場合、被処理体270は、アルミニウム化合物260内に埋設されても良い。
【0119】
カーボン容器210およびカーボン蓋215は、被処理体270の熱処理の際に、一酸化炭素ガスの供給源となる。
【0120】
なお、装置200は、全体が耐熱性密閉容器に収容されており、この耐熱性密閉容器は、排気系と接続されている。このため、耐熱性密閉容器内、さらにはカーボン容器210内は、所望の減圧(真空)環境に制御できる。
【0121】
以下、被処理体270がマイエナイト化合物粉末の成形体で構成される場合を例に、装置200を使用して、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を製造する方法について説明する。
【0122】
まず、装置200全体が、所定の減圧環境に制御される。
【0123】
次に、装置200を使用して、被処理体270が1080℃〜1450℃の温度に保持される。
【0124】
この際に、カーボン容器210およびカーボン蓋215側から一酸化炭素ガスが生じるとともに、(2)式および(3)式のように、アルミニウム化合物260から酸化アルミニウムガスが発生するため、被処理体270は、強い還元性雰囲気に晒される:

Al+2O → 4AlO+3C (2)式

Al+O → 2AlO+3C (3)式

従って、被処理体270に含まれるマイエナイト化合物のケージ中のフリー酸素イオンは、酸化アルミニウムガスにより、(4)式および(5)式に示すような反応で還元される:

2AlO+O2− → Al+2e (4)式

AlO+2O2− → Al+4e (5)式

これにより、熱処理後には、被処理体270から、高電子密度の導電性マイエナイト化合物が生成される。
【0125】
一方、被処理体270が仮焼粉の成形体で構成される場合も、装置200を使用して、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を製造できる。
【0126】
なお、この場合、被処理体270中には、マイエナイト化合物は(ほとんど)含まれていない。しかしながら、被処理体270を1230℃〜1415℃の温度に保持した際に、仮焼粉中の酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カルシウムアルミネートが反応して、非導電性マイエナイト化合物が生成される。
【0127】
被処理体270の高温保持中には、カーボン容器210およびカーボン蓋215側から一酸化炭素ガスが生じるとともに、アルミニウム化合物260から、酸化アルミニウムガスが発生する。従って、生成した非導電性マイエナイト化合物において、ケージ内のフリー酸素イオンは、速やかに電子に置換されると考えられる。これにより、高電子密度の導電性マイエナイト化合物が生成される。その後は、通常のセラミックス粒子の焼結過程と同様の過程により、生成した高電子密度の導電性マイエナイト化合物の粉末同士の焼結が進み、高電子密度の導電性マイエナイト化合物の焼結体が形成される。
【0128】
従って、被処理体270を高温に保持することにより、仮焼粉から直接、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を生成、焼結させることができる。
【0129】
なお、図2の装置構成は、一例であって、この他の装置を使用して、被処理体を熱処理しても良いことは、当業者には明らかであろう。
【0130】
以上のように、本発明の一実施例による製造方法では、熱処理の際に、金属アルミニウムは使用されない。従って、本発明の一実施例による製造方法では、生成した高電子密度の導電性マイエナイト化合物の表面に、金属アルミニウムのような固着物が固着することが有意に回避される。従って、本発明の一実施例による製造方法では、熱処理後に生成した高電子密度の導電性マイエナイト化合物を比較的容易に回収できる。
【0131】
(本発明の一実施例による高電子密度の導電性マイエナイト化合物からなる成膜用ターゲット)
前述のような本発明の一実施例による製造方法を用いた場合、例えば、気相蒸着法で成膜を行う際に用いられるターゲット(例えば、スパッタリングターゲット)を製造できる。このターゲットは、高電子密度の導電性マイエナイト化合物で構成される。
【0132】
前述のように、特許文献2に記載の方法では、熱処理の際に、被処理体は、アルミニウム粒子が溶融して生じたアルミニウム溶融物中に浸漬された状態となる。従って、熱処理後の被処理体の表面には、アルミニウムの固着物が強固に密着するという問題が生じる。
【0133】
また、このような固着物は、熱処理に用いられる容器とも固着しているため、被処理体を破損せずに採取することは困難である。特に、被処理体が大きな寸法を有する場合、被処理体を破損せずに採取することは極めて難しい。
【0134】
このような問題のため、これまで、高電子密度の導電性マイエナイト化合物製の大型製品、例えば最小寸法が5mm以上のターゲットは、製造することは難しかった。
【0135】
しかしながら、本発明の一実施例では、電子密度が3×1020cm−3以上の導電性マイエナイト化合物を含み、最小寸法が5mm以上の成膜用ターゲットを容易に製造できる。円板の平型ターゲットにおいては、直径が、好ましくは50mm以上、より好ましくは75mm以上、さらに好ましくは100mm以上、特に好ましくは200mm以上のものを有するものを製造できる。長方形の平型ターゲットにおいては、長径が、好ましくは50mm以上、より好ましくは75mm以上、さらに好ましくは100mm以上、特に好ましくは200mm以上のものを有するものを製造できる。回転型ターゲットにおいては、円筒の高さが、好ましくは50mm以上、より好ましくは75mm以上、さらに好ましくは100mm以上、特に好ましくは200mm以上のものを製造できる。
【0136】
成膜用ターゲットの電子密度や相対密度は高い方が良く、電子密度は、5.0×1020cm−3以上が好ましく、1.0×1021cm−3以上がより好ましく、1.3×1021cm−3以上がさらに好ましく、1.5×1021cm−3以上が特に好ましい。相対密度は、90%以上が好ましく、93%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0137】
本発明の成膜用ターゲットを用いて、酸素分圧が0.1Pa未満の雰囲気下で、気相蒸着法により、基板上に製膜を行うと、電子を含む非晶質の薄膜を形成することができる。電子密度が2×1018cm−3以上2.3×1021cm−3以下の範囲で電子を含む非晶質の薄膜が得られる。非晶質の薄膜は、カルシウム、アルミニウム、および酸素を含む非晶質固体物質で構成されて良い。すなわち、本発明の成膜用ターゲットを用いて、酸素分圧が0.1Pa未満の雰囲気下で、気相蒸着法により、基板上に製膜を行うと、カルシウムおよびアルミニウムを含む非晶質酸化物のエレクトライドの薄膜を形成できる。
【0138】
得られる非晶質の薄膜は、4.6eVの光子エネルギー位置において光吸収を示す。得られる非晶質の薄膜の電子密度は、1×1019cm−3以上であっても良く、1×1020cm−3以上であっても良い。得られる非晶質の薄膜の仕事関数は、2.8〜3.2eVであって良い。得られる非晶質の薄膜において、4.6eVの光子エネルギー位置における光吸収係数に対する、3.3eVの位置における光吸収係数の比は、0.35以下であって良い。得られる非晶質の薄膜において、Fセンターの濃度は5×1018cm−3未満であって良い。
本発明の成膜用ターゲットを用いて、有機EL素子の電子注入層の薄膜を形成できる。
【実施例】
【0139】
次に、本発明の実施例について説明する。例1〜12、21〜32は実施例であり、例51〜55は比較例である。
【0140】
(例1)
以下の方法で、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0141】
(マイエナイト化合物の合成)
まず、酸化カルシウム(CaO):酸化アルミニウム(Al)のモル比換算で12:7となるように、炭酸カルシウム(CaCO、関東化学社製、特級)粉末313.5gと、酸化アルミニウム(α−Al、関東化学社製、特級)粉末186.5gとを混合した。次に、この混合粉末を、大気中、300℃/時間の昇温速度で1350℃まで加熱し、1350℃に6時間保持した。その後、これを300℃/時間の冷却速度で降温し、約362gの白色塊体を得た。
【0142】
次に、アルミナ製スタンプミルにより、この白色塊体を大きさが約5mmの破片になるよう粉砕した後、さらに、アルミナ製自動乳鉢で粗粉砕し、白色粒子A1を得た。レーザ回折散乱法(SALD−2100、島津製作所社製)により、得られた白色粒子A1の粒度を測定したところ、平均粒径は、20μmであった。
【0143】
次に、白色粒子A1を300gと、直径5mmのジルコニアボール3kgと、粉砕溶媒としての工業用ELグレードのイソプロピルアルコール800mlとを、7リットルのジルコニア製容器に入れ、容器にジルコニア製の蓋を載せてから、回転速度72rpmで、16時間、ボールミル粉砕処理を実施した。
【0144】
処理後、得られたスラリーを用いて吸引ろ過を行い、粉砕溶媒を除去した。残りの物質を80℃のオーブンに入れ、10時間乾燥させた。これにより、白色粉末B1を得た。X線回折分析の結果、得られた白色粉末B1は、C12A7構造であることが確認された。前述のレーザ回折散乱法により得られた白色粉末B1の平均粒径は、1.5μmであることがわかった。
【0145】
(マイエナイト化合物の粉末の成形体の作製)
前述の方法で得られた粉末B1(7g)を、長さ40mm×幅20mm×高さ30mmの金型に敷き詰めた。この金型に対して、10MPaのプレス圧で1分間の一軸プレスを行った。さらに、180MPaの圧力で等方静水圧プレス処理し、縦約40mm×横約20mm×高さ約10mmの寸法の成形体C1を得た。成形体C1は、市販のカッターで、長さ10mm×幅8mm×厚さ6mmの直方体形状に切断し、これを被処理体として使用した。
【0146】
(導電性マイエナイト化合物の製造)
次に、被処理体を高温で熱処理し、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を製造した。
【0147】
被処理体の熱処理には、図3に示した構成の装置300を使用した。図3に示すように、装置300は、カーボン製の蓋335付きの第1のカーボン容器330と、カーボン製の蓋355付きの第2のカーボン容器350とを備える。第1のカーボン容器330は、第2のカーボン容器350内に収容されている。
【0148】
第1のカーボン容器330は、外径60mm×内径50mm×高さ60mmの略円筒状の形状を有し、第2のカーボン容器350は、外径80mm×内径70mm×高さ75mmの略円筒状の形状を有する。
【0149】
装置300は、第1のカーボン容器330内に配置されたアルミナ製容器400を有し、アルミナ製容器400内には、炭化アルミニウム粉末(株式会社ニラコ製)410を3g配置した。炭化アルミニウム粉末410の上部に、直接被処理体を配置した。
【0150】
次に、このように構成された装置300全体を、雰囲気調整可能な電気炉内に設置した。ロータリーポンプとメカニカルブースターポンプを用いて、電気炉内を真空引きした。これにより、電気炉内の圧力は、約20Paまで減圧された。
【0151】
次に、装置300を加熱し、熱処理を実施した。熱処理は、300℃/時間の昇温速度で装置300を1300℃まで加熱し、この温度に6時間保持した後、300℃/時間の降温速度で、装置300を室温まで冷却させることにより実施した。
【0152】
この熱処理後に、表面が黒色の黒色物質D1が得られた。
【0153】
炭化アルミニウム粉末410は、黒色に変色していたものの、焼結してはいなかった。このため、黒色物質D1は、炭化アルミニウム粉末410から容易に分離することができ、回収が容易であった。なお、黒色物質D1の相対密度は、97.8%であった。
【0154】
(評価)
次に、黒色物質D1から電子密度測定用サンプルを採取した。サンプルは、アルミナ製自動乳鉢を用いて黒色物質D1の粗粉砕を行い、得られた粗粉のうち、黒色物質D1の中央部分に相当する部分から採取した。
【0155】
得られたサンプルは、焦げ茶色を呈していた。X線回折分析の結果、このサンプルは、C12A7構造だけを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルのピーク位置から求められた電子密度は、8.3×1020cm−3であった。
【0156】
このことから、黒色物質D1は、高電子密度の導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0157】
(例2)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、成形体の熱処理温度を1340℃とした。
【0158】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0159】
(例3)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、熱処理温度を1250℃とした。
【0160】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0161】
(例4)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、熱処理時間を24時間とした。
【0162】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0163】
(例5)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、熱処理時間を2時間とした。
【0164】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程後に、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0165】
(例6)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、第1のカーボン容器330の中に、図2に示した仕切り板240のような仕切り板を配置し、炭化アルミニウム粉末と被処理体とが直接接触しない状態で、熱処理を実施した。
【0166】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。黒色物質は、容易に回収することができた。
【0167】
(例7)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、成形体用の粉末として、電子密度が5.0×1019cm−3の導電性マイエナイト化合物の粉末を使用した。
【0168】
この導電性マイエナイト化合物の粉末は、以下のようにして調製した。
【0169】
カーボン製の蓋付容器の中に、例1における成形体C1を設置し、熱処理を実施した。
【0170】
熱処理雰囲気は窒素とした。熱処理は、300℃/時間の昇温速度で、成形体C1を1300℃まで加熱し、1300℃で6時間保持することにより実施した。その後、成形体C1を300℃/時間の冷却速度で降温し、黒色塊体を得た。
【0171】
次に、得られた黒色塊体を粉砕して、平均粒径が1.4μmの粉末を得た。この際には、例1の(マイエナイト化合物の合成)の欄において示した方法と同様の粉砕方法(すなわちアルミナ製スタンプミルによる粗粉砕、およびその後のジルコニアボールを用いたボールミル粉砕処理)を実施した。
【0172】
なお、分析の結果、得られた粉末は、C12A7構造を有し、電子密度は、5.0×1019cm−3であった。
【0173】
この導電性マイエナイト化合物の粉末を使用して成形体を作製した以外は、例1の場合と同様の製造条件で、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0174】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0175】
(例8)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、圧力を50Paとした。
【0176】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0177】
(例9)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0178】
ただし、被処理体として、マイエナイト化合物(非導電性)の焼結体を使用した。また、例1の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、熱処理時間を24時間とした。マイエナイト化合物の焼結体は、以下のようにして作製した。
【0179】
前述の例1の(マイエナイト化合物の成形体の作製)の工程を経て得られた成形体C1をアルミナ板上に配置し、大気下で1100℃まで加熱した。昇温速度は、300℃/時間とした。次に、成形体C1を1100℃で2時間保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却した。
【0180】
これにより、非導電性マイエナイト化合物の焼結体E9が得られた。なお、焼結体E9の開気孔率は、31%であった。得られた焼結体E9は、長さ8mm×幅6mm×厚さ6mmの直方体状に加工し、これを被処理体として使用した。
【0181】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0182】
(例10)
前述の例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0183】
ただし、被処理体として、マイエナイト化合物(非導電性)の焼結体を使用した。また、例1の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、熱処理時間を24時間とした。マイエナイト化合物の焼結体は、以下のようにして作製した。
【0184】
前述の例1の(マイエナイト化合物の成形体の作製)の工程を経て得られた成形体C1をアルミナ板上に配置し、大気下で1300℃まで加熱した。昇温速度は、300℃/時間とした。次に、成形体C1を1300℃で6時間保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却した。
【0185】
これにより、非導電性マイエナイト化合物の焼結体E10が得られた。なお、焼結体E10の開気孔率は、ほぼ0%であった。得られた焼結体E10は、長さ8mm×幅6mm×厚さ6mmの直方体状に加工し、これを被処理体として使用した。
【0186】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0187】
(例11)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、例1で使用した炭化アルミニウム粉末を再度使用した。なお、例1で使用した後の炭化アルミニウム粉末は黒色を呈していた。
【0188】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。この結果から、炭化アルミニウム粉末は、再利用することが可能であることがわかった。
【0189】
(例12)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、被処理体として、長さ55mm×幅55mm×厚さ5mmの板状の成形体を使用した。また、例1の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、使用するカーボン容器、アルミナ製容器のサイズを変更した。この成形体は、以下のようにして作製した。
【0190】
あらかじめマイエナイト化合物の粉末とビヒクルを、重量比で10:1.5の割合で自動乳鉢で混合させた造粒粉を作製した。このときビヒクルとは、ポリビニルブチラール(BM−S、積水化学社製)を有機溶剤に固形分で10重量%溶かした液体である。有機溶剤は、トルエンとイソプロピルアルコールとブタノールを重量比で、6:3:1の割合で混合したものである。ポリビニルブチラールは成形体の保型性を高める、バインダーの役割を果たす。
【0191】
前記造粒粉22gを、長さ60mm×幅60mm×高さ50mmの金型に敷き詰めて、10MPaのプレス圧で1分間の一軸プレスを行った。得られた成形体の溶剤分を揮発させるため、80℃のオーブンで1時間乾燥させた。さらに等方静水圧プレス(CIP)を180MPaのプレス圧で1分間保持して、長さ55mm×幅55mm×厚さ5mmの板状の成形体を得た。これを被処理体として使用した。
【0192】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。黒色物質は、容易に回収することができた。
【0193】
例2〜12において、例1と同様の方法により回収されたサンプルのX線回折の結果、黒色物質は、C12A7構造のみを有することがわかった。例2〜12における黒色物質の相対密度、電子密度を表1に示す。以上のことから、例2〜12における黒色物質は、高電子密度のマイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0194】
(例21)
前述の例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(マイエナイト化合物の粉末の成形体の作製)の工程において、粉末B1の代わりに、フッ素成分を含む混合粉末を使用して成形体を調製し、最終的に、フッ素を含む高電子密度の導電性マイエナイト化合物を製造した。
【0195】
(成形体の調製方法)
まず、例1の(マイエナイト化合物の合成)の欄に記載した方法で得られた粉末B1の38.72gに、フッ化カルシウム(CaF、関東化学社製、特級)粉末0.73gと、酸化アルミニウム(α−Al、関東化学社製、特級)粉末0.55gとを添加し、これらを十分に混合して、混合粉末F21を得た。
【0196】
最終的に製造されるマイエナイト化合物においても、この混合粉末F21のCa/Al/Fの組成比が維持されると仮定した場合、製造されるマイエナイト化合物は、化学式

(12−x)CaO・7Al・xCaF (6)式

で表され、特にx=0.32となる。
【0197】
次に、この混合粉末F21の7gを、長さ40mm×幅20mm×高さ30mmの金型に敷き詰めた。金型に対して、10MPaのプレス圧で1分間の一軸プレスを行った。さらに、180MPaの圧力で等方静水圧プレス処理した。これにより、縦約38mm×横約19mm×高さ約6mmの寸法の成形体C21が形成された。
【0198】
次に、成形体C21を市販のカッターで、長さ19mm×幅8mm×厚さ6mmの直方体形状に切断し、これを被処理体として使用した。
【0199】
これにより、表面が黒色の黒色物質D21が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質D21は、容易に回収することができた。黒色物質D21の相対密度は、98.1%であった。
【0200】
例1と同様の方法により回収されたサンプルのX線回折の結果、黒色物質D21は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質D21の電子密度は、1.1×1021cm−3であった。
【0201】
次に、黒色物質D21の格子定数を測定した結果、黒色物質D21の格子定数は、例1における黒色物質の値よりも小さかった。このことから、マイエナイト化合物にフッ素が含有していると考えられる。
【0202】
次に、黒色物質D21を破断し、エネルギー分散型X線分析(EDX)により、破断面の組成分析を行った。分析結果から、検出されたフッ素の割合は、混合粉末F21の混合比に近いことがわかった。
【0203】
このように、黒色物質D21は、フッ素を含む高電子密度の導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0204】
(例22)
前述の例21と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、被処理体の熱処理温度を1100℃とした。
【0205】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0206】
(例23)
前述の例12と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、被処理体の熱処理温度を1380℃とした。
【0207】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0208】
(例24)
前述の例21と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(成形体の調製方法)の工程において、粉末B1の38.11gに、フッ化カルシウム(CaF、関東化学社製、特級)粉末1.07gと、酸化アルミニウム(α−Al、関東化学社製、特級)粉末0.82gとを添加し、これらを十分に混合して、混合粉末F24を得た。
【0209】
最終的に製造されるマイエナイト化合物においても、この混合粉末F24のCa/Al/Fの組成比が維持されると仮定した場合、製造されるマイエナイト化合物は、上述の化学式(6)で表され、特にx=0.48となる。
【0210】
この混合粉末F24を例21における混合粉末F21の代わりに用いた他は例21と同様にして、被処理体を得て使用した。なお、この被処理体の熱処理温度は、1420℃とした。
【0211】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0212】
(例25)
前述の例21と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(成形体の調製方法)の工程において、粉末B1の39.78gに、フッ化カルシウム(CaF、関東化学社製、特級)粉末0.12gと、酸化アルミニウム(α−Al、関東化学社製、特級)粉末0.09gとを添加し、これらを十分に混合して、混合粉末F25を得た。
【0213】
最終的に製造されるマイエナイト化合物においても、この混合粉末F25のCa/Al/Fの組成比が維持されると仮定した場合、製造されるマイエナイト化合物は、上述の化学式(6)で表され、特にx=0.06となる。この混合粉末F25を例21における混合粉末F21の代わりに用いた他は例21と同様にして、被処理体を得て使用した。
【0214】
これにより、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0215】
(例26)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0216】
ただし、被処理体として、フッ素を含むマイエナイト化合物(非導電性)の焼結体を使用した。
【0217】
なお、フッ素を含むマイエナイト化合物の焼結体は、以下のようにして作製した。
【0218】
前述の例21における(成形体の調製方法)の工程を経て得られた成形体C21をアルミナ板上に配置し、大気下で1400℃まで加熱した。昇温速度は、300℃/時間とした。次に、成形体C21を1400℃で6時間保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却した。
【0219】
これにより、焼結体E26が得られた。なお、焼結体E26の開気孔率は、ほぼ0%であった。得られた焼結体E26は、長さ8mm×幅6mm×厚さ6mmの直方体状に加工し、これを被処理体として使用した。
【0220】
これにより、前述の例1の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程後に、表面が黒色の黒色物質が得られた。炭化アルミニウム粉末は、焼結してはいなかった。このため、黒色物質は、容易に回収することができた。
【0221】
例22〜26において、例1と同様の方法により回収されたサンプルのX線回折の結果、黒色物質は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質の格子定数を測定した結果、黒色物質の格子定数は、例1における黒色物質D1の値より小さかった。マイエナイト化合物にフッ素が含有していると考えられる。黒色物質を破断し、破断面の組成分析を行った。分析結果から、検出されたフッ素の割合は、原料として用いた混合粉末の混合比に近いことがわかった。例22〜26における黒色物質の相対密度、電子密度を表2に示す。以上のことから、例22〜26における黒色物質は、高電子密度の導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0222】
(例27)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0223】
ただし、被処理体として、仮焼粉の成形体を使用した。仮焼粉の成形体は、以下のようにして作製した。
【0224】
(仮焼粉の合成)
まず、酸化カルシウム(CaO):酸化アルミニウム(Al)のモル比換算で12:7となるように、炭酸カルシウム(CaCO、関東化学社製、特級)粉末313.5gと、酸化アルミニウム(α−Al、関東化学社製、特級)粉末186.5gとを混合した。次に、この混合粉末を、大気中、300℃/時間の昇温速度で1000℃まで加熱し、1000℃に6時間保持した。その後、これを300℃/時間の冷却速度で降温した。
【0225】
これにより、約362gの白色粉末が得られた。この白色粉末は、自動乳鉢で容易に解砕できた。
【0226】
(仮焼粉の成形体の作製)
白色粉末を7gに、工業用ELグレードのイソプロピルアルコール(IPA)0.7gを添加し、自動乳鉢で混合した。次に、この混合物を、長さ40mm×幅20mm×高さ30mmの金型に敷き詰めた。この金型に対して、10MPaのプレス圧で1分間の一軸プレスを行った。さらに、180MPaの圧力で等方静水圧プレス処理を実施した。
【0227】
これにより、縦約38mm×横約19mm×高さ約6mmの寸法の成形体C27が得られた。なお、IPAは、成形体のバインダーとして機能している。成形体C27は、市販のカッターで、長さ19mm×幅8mm×厚さ6mmの直方体形状に切断して、被処理体として使用した。
【0228】
次に、この仮焼粉の成形体である被処理体を用いて、例1の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程を実施した。ただし、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、熱処理時間を12時間とした。
【0229】
これにより、黒色物質D27が得られた。黒色物質D27は、容易に回収することができた。
【0230】
黒色物質D27の相対密度は、89.5%であった。
【0231】
例1と同様の方法により回収されたサンプルのX線回折の結果、黒色物質D27は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質D27の電子密度は、8.8×1020cm−3であった。
【0232】
このことから、黒色物質D27は、高電子密度の導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0233】
(例28)
前述の例27と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、熱処理温度を1250℃とし、熱処理時間を12時間とした。
【0234】
これにより、黒色物質が得られた。黒色物質は、容易に回収することができた。
【0235】
(例29)
前述の例27と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、熱処理時間を24時間とした。
【0236】
これにより、黒色物質が得られた。黒色物質は、容易に回収することができた。
【0237】
(例30)
前述の例27と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、熱処理時間を2時間とした。
【0238】
これにより、黒色物質が得られた。黒色物質は、容易に回収することができた。
【0239】
(例31)
前述の例27と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0240】
ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、第1のカーボン容器330の中に、図2に示した仕切り板240のような仕切り板を配置し、炭化アルミニウム粉末と成形体C27とが直接接触しない状態で、熱処理を実施した。
【0241】
これにより、黒色の黒色物質が得られた。黒色物質は、容易に回収することができた。
【0242】
(例32)
前述の例27と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、真空度を50Paとした。
【0243】
これにより、黒色物質が得られた。黒色物質は、容易に回収することができた。
【0244】
例28〜32において、例1と同様の方法により回収されたサンプルのX線回折の結果、黒色物質は、C12A7構造のみを有することがわかった。例28〜32における黒色物質の相対密度、電子密度を表2に示す。以上のことから、例28〜32における黒色物質は、高電子密度のマイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0245】
(例51)
前述の例21と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、熱処理温度を1460℃とした。
【0246】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程後に、表面が黒色の黒色物質D51が得られた。黒色物質D51は、著しく変形していた。黒色物質D51は、発泡しており、相対密度を測定することは困難であった。
【0247】
さらに、例1と同様の方法により、この黒色物質D51を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質D51は、C12A7構造のみを有することがわかった。しかしながら、黒色物質D51の電子密度は、5.8×1019cm−3であった。
【0248】
このことから、黒色物質D51は、高電子密度の導電性マイエナイト化合物ではないことが確認された。
【0249】
(例52)
前述の例21と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において、熱処理温度を1050℃とした。
【0250】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程後に、表面が薄黒い黒色物質D52が得られた。
【0251】
さらに、例1と同様の方法により、この黒色物質D52を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、C12A7構造のみを有することがわかった。しかしながら、黒色物質D52の電子密度は、2.5×1019cm−3であった。
【0252】
このことから、黒色物質D52は、高電子密度の導電性マイエナイト化合物ではないことが確認された。
【0253】
(例53)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、被処理体の熱処理は、COガスの存在しない環境下で実施した。
【0254】
より具体的には、例1の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程において使用される装置300において、第1のカーボン容器330、第2のカーボン容器350、およびカーボン製の蓋335、355は、全てアルミナ製のものに交換した。さらに、熱処理時の真空度は、50Paとした。
【0255】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程後に、表面が薄黒い黒色物質D53が得られた。
【0256】
例1と同様の方法により、この黒色物質D53を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質D53は、C12A7の単相構造を有さないことがわかった。
【0257】
このことから、黒色物質D53は、高純度の導電性マイエナイト化合物でないことが確認された。
【0258】
(例54)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、被処理体の熱処理は、酸化アルミニウムガスの存在しない環境下で実施した。
【0259】
より具体的には、例1の(導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、アルミナ製容器400内に、炭化アルミニウム粉末410(株式会社ニラコ製)を配置しなかった。被処理体は、直接アルミナ製容器400内に配置した。
【0260】
熱処理の際には、装置300内を真空引きし、圧力を100Paまで減圧した後、酸素濃度が1体積ppm以下の窒素ガスを、大気圧になるまで装置300内に流入した。従って、熱処理時の圧力は、大気圧である。
【0261】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程後に、表面が薄黒い黒色物質D54が得られた。
【0262】
例1と同様の方法により、この黒色物質D54を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質D54の電子密度は、4.8×1019cm−3であった。
【0263】
このことから、黒色物質D54は、高電子密度の導電性マイエナイト化合物でないことが確認された。
【0264】
(例55)
前述の例1と同様の方法により、高電子密度の導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、(導電性マイエナイト化合物の製造)の工程で使用される装置300において、アルミナ製容器400内には、炭化アルミニウム粉末(株式会社ニラコ製)410のかわりに金属アルミニウムを配置した。
【0265】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物の製造)工程後に、黒色物質D55が得られた。しかしながら、黒色物質D55は、アルミニウム層中に半分沈んでおり、サンプルを回収するのに、多大な労力が必要であった。従って、この方法は、工業的な生産には適さない製造方法であると考えられる。
【0266】
以下の表1および表2には、例1〜例12、21〜32、例51〜例55における被処理体の仕様、熱処理条件、および評価結果等を、まとめて示した。
【0267】
【表1】
【0268】
【表2】
なお、表1および表2において、「被処理体」の欄における(i)、(ii)、および(iii)の記号は、それぞれ、被処理体が、マイエナイト化合物の粉末の成形体、マイエナイト化合物の焼結体、および仮焼粉であることを意味する。
【0269】
また、「F添加量(x値)」の欄における数値は、被処理体に含まれるフッ素(F)量を表す。この値は、被処理体から、最終的に以下の(6)式

(12−x)CaO・7Al・xCaF (6)式

で表されるマイエナイト化合物が製造されたと仮定した場合の、xの値を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0270】
本発明は、蛍光ランプの電極、有機EL素子の電子注入層の薄膜を形成するのに必要な、スパッタリング用ターゲット等に使用され得る、高電子密度の導電性マイエナイト化合物の製造方法に適用できる。
【0271】
本願は、2012年9月28日に出願した日本国特許出願2012−217343号に基づく優先権を主張するものであり、同日本国出願の全内容を本願の参照として援用する。
【符号の説明】
【0272】
200 装置
210 カーボン容器
215 カーボン蓋
230 アルミナ容器
235 アルミナ製の蓋
240 仕切り板
250 耐熱皿
260 アルミニウム化合物
270 被処理体
300 装置
330 第1のカーボン容器
335 カーボン製の蓋
350 第2のカーボン容器
355 カーボン製の蓋
400 アルミナ製容器
410 炭化アルミニウム粉末
C1 成形体。
【図1】
【図2】
【図3】
【国際調査報告】