(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014050926
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】血液凝固反応の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/86 20060101AFI20160725BHJP
【FI】
   !G01N33/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
【出願番号】2014538571
(21)【国際出願番号】JP2013075978
(22)【国際出願日】20130926
(31)【優先権主張番号】2012217925
(32)【優先日】20120928
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
【住所又は居所】東京都北区浮間5丁目5番1号
(71)【出願人】
【識別番号】507126487
【氏名又は名称】公立大学法人奈良県立医科大学
【住所又は居所】奈良県橿原市四条町840
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】添田 哲弘
【住所又は居所】静岡県御殿場市駒門1丁目135番地 中外製薬株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】北澤 剛久
【住所又は居所】静岡県御殿場市駒門1丁目135番地 中外製薬株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】嶋 緑倫
【住所又は居所】奈良県橿原市四条町840 公立大学法人奈良県立医科大学内
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045AA25
2G045DA41
(57)【要約】
様々な止血効果の評価方法と様々な血液凝固開始試薬を対象に、凝固第VIII因子(FVIII)代替活性を有する物質による血液凝固反応の評価方法の構築を試みた。その結果、活性化凝固第XI因子(FXIa)及びリン脂質を含む凝固開始試薬を使用することで、血液試料中のトロンビン生成量を指標に、凝固第VIII因子(FVIII)代替活性を有する物質の血液凝固反応における効果を評価できることを見出した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固第VIII因子代替活性を有する物質による血液凝固反応を評価する方法であって、工程(i)及び(ii)を含む方法。
(i) 凝固第VIII因子代替活性を有する物質を含む、被験者から単離された血液由来サンプルに、活性化凝固第XI因子を含む血液凝固開始試薬を加える工程
(ii)工程(i)で得られた血液由来サンプルのトロンビン生成量を測定する工程
【請求項2】
凝固第VIII因子代替活性を有する物質が、凝固第IX因子又は活性化凝固第IX因子、及び、凝固第X因子に結合する二重特異性抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験者が出血性疾患患者である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
出血性疾患が凝固第VIII因子又は活性化凝固第VIII因子の活性の低下あるいは欠損が原因の疾患である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
出血性疾患が血友病、後天性血友病及び、フォンビルブランド因子(vWF)の機能異常又は欠損に起因するフォンビルブランド病からなる群より選ばれる疾患である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
血液凝固開始試薬が活性化凝固第XI因子及びリン脂質を含む試薬である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
活性化凝固第XI因子を含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法に使用するための血液凝固開始試薬。
【請求項8】
さらにリン脂質を含む、請求項7に記載の血液凝固開始試薬。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の血液凝固開始試薬を含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法に使用するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固第VIII因子(FVIII)機能代替活性を有する物質による血液凝固反応を評価する方法に関する。また本発明は、活性化凝固第XI因子(FXIa)を含む血液凝固反応を評価するための試薬、及び、当該試薬を含む凝固第VIII因子(FVIII)機能代替活性を有する物質による血液凝固反応を評価するためのキット等に関する。
【背景技術】
【0002】
血友病は、凝固第VIII因子(FVIII)または凝固第IX因子(FIX)の先天的欠損又は機能不全に起因する出血性疾患である。前者は血友病A、後者は血友病Bと称される。いずれの遺伝子もX染色体上に存在し、遺伝子異常は伴性劣性遺伝により伝搬されるため、発症患者の99%以上は男性である。有病率はおおよそ出生男子1万人につき1人で、血友病Aと血友病Bの比率は、おおよそ5:1であることが知られる。
血友病患者における主な出血部位としては、関節内、筋肉内、皮下、口腔内、頭蓋内、消化管、鼻腔内などが挙げられる。中でも関節内への繰返し出血は、関節障害、歩行困難を伴う血友病性関節症に進展し、最終的には関節置換術が必要となる場合もある。そのため、血友病患者のQOLを低下させる大きな要因となっている。
【0003】
血友病の重症度は、血液中のFVIII活性あるいはFIX活性とよく相関している。活性1%未満の患者が重症、活性1%以上5%未満の患者が中等症、活性5%以上40%未満の患者が軽症と分類される。血友病患者の約半数を占める重症患者においては、月に数回の出血症状を呈するが、これは中等症患者及び軽症患者に比べ顕著に高頻度である。このことから、重症血友病患者においては、FVIIIあるいはFIXの補充療法により、血液中のFVIII活性あるいはFIX活性を1%以上に維持することが、出血症状の発現阻止に有効と考えられている(非特許文献1)。
【0004】
関連する出血異常症として、血友病、後天性血友病のほかに、フォンビルブランド因子(vWF)の機能異常または欠損に起因するフォンビルブランド病が知られている。vWFは、血小板が、血管壁の損傷部位の内皮下組織に正常に粘着するのに必要であるだけでなく、FVIIIと複合体を形成し、血液中のFVIIIレベルを正常に保つのにも必要である。フォンビルブランド病患者では、これらの機能が低下し、止血機能異常を来たしている。
【0005】
血友病患者における出血の予防及び/又は治療には、主として、血漿から精製された若しくは遺伝子組換え技術により作製された血液凝固因子が使用される。
【0006】
FVIII等の血液凝固因子の薬効をモニタリングする方法としては、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、APTTをベースにした凝固一段法、トロンビン生成試験(TGA)等が知られている。APTTや凝固一段法は、FVIII製剤の薬効のモニタリング法として古くから汎用されている。APTTは、被検血漿にAPTT試薬を添加後、CaCl2を添加し、フィブリノゲンが不溶性フィブリンに変換される時間、すなわち凝固が開始されるまでの時間を測定する方法である。凝固一段法は、バッファーで一定の割合に希釈した被検血漿をFVIII欠乏血漿に添加し、APTTと同様の手法で凝固時間を測定する方法であり、被検血漿の代わりに段階希釈した正常血漿を用いて得た検量線から、被検血漿のFVIII活性を求める。TGAは、トロンビンに対する蛍光基質を用いて、凝固反応が亢進する中で生成されるトロンビン量を酵素活性として経時的に測定する試験である(非特許文献2)。TGAでは、凝固反応のトロンビン生成開始段階から、凝固反応の増幅時のトロンビン生成までの一連の凝固反応を評価できる。さらに、TGA用の凝固開始試薬について、低濃度のリン脂質溶液(4μM)をベースとして、低濃度の組織因子と組み合せた試薬(非特許文献2)、FIXaと組み合せた試薬(非特許文献3、4)、FXII活性化剤(ellagic acid)と組み合わせた試薬(非特許文献5)、低濃度の組織因子とFXII活性化剤(ellagic acid)の混合溶液と組み合せた試薬(非特許文献5)が報告されている。
【0007】
近年、活性化凝固第IX因子(FIXa)及び第X因子(FX)の双方に結合し、FVIIIの補因子機能、すなわちFIXaによるFX活性化を促進する機能を代替する機能を有する二重特異性抗体が見出された(特許文献1〜3)。しかしこのような二重特異性抗体は、FVIIIの機能を代替するが、その作用発現機序はFVIIIのそれと完全には同一ではない。例えば、FVIIIはFXaやトロンビンにより活性化されて初めて補因子活性を呈するが、上記の二重特異性抗体は、そのような活性化プロセスを要することなく、補因子活性を呈する。そのため、既存のFVIIIの薬効のモニタリング方法を必ずしも適用することができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Astermark J. Haemophilia. 2003 9(Suppl.1) 32
【非特許文献2】Pathophysiol Haemost Thromb. 2003;33(1):4
【非特許文献3】J Thromb Haemost. 2011 Aug;9(8):1549-55.
【非特許文献4】J Thromb Haemost. 2003 May;1(5):1005-11.
【非特許文献5】Int J Hematol. 2009 Dec;90(5):576-82.
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2005/035756
【特許文献2】WO2006/109592
【特許文献3】WO2012/067176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。本発明は、凝固第VIII因子(FVIII)代替活性を有する物質の血液凝固反応における薬効を評価する方法、当該方法に用いるための血液凝固開始試薬、及び当該試薬を含むキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく、様々な止血効果の評価方法と様々な血液凝固開始試薬を対象に、凝固第VIII因子(FVIII)代替活性を有する物質による血液凝固反応の評価方法の構築を試みた。その結果本発明者らは、活性化凝固第XI因子(FXIa)を含む血液凝固開始試薬を使用することで、血液試料中のトロンビン生成量を指標に、凝固第VIII因子(FVIII)代替活性を有する物質の血液凝固反応における効果を、適切な感度で評価できることを見出した。また本発明者らは、活性化凝固第XI因子(FXIa)を含む血液凝固開始試薬を用いるトロンビン生成試験方法を見出すことに成功した。本発明はこのような知見に基づくものであり、以下〔1〕から〔9〕に関する。
【0012】
〔1〕凝固第VIII因子代替活性を有する物質による血液凝固反応を評価する方法であって、工程(i)及び(ii)を含む方法。
(i) 凝固第VIII因子代替活性を有する物質を含む、被験者から単離された血液由来サンプルに、活性化凝固第XI因子を含む血液凝固開始試薬を加える工程
(ii)工程(i)で得られた血液由来サンプルのトロンビン生成量を測定する工程
〔2〕凝固第VIII因子代替活性を有する物質が、凝固第IX因子又は活性化凝固第IX因子、及び、凝固第X因子に結合する二重特異性抗体である、〔1〕に記載の方法。
〔3〕被験者が出血性疾患患者である、〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕出血性疾患が凝固第VIII因子又は活性化凝固第VIII因子の活性の低下あるいは欠損が原因の疾患である、〔3〕に記載の方法。
〔5〕出血性疾患が血友病、後天性血友病及び、フォンビルブランド因子(vWF)の機能異常又は欠損に起因するフォンビルブランド病からなる群より選ばれる疾患である、〔3〕又は〔4〕に記載の方法。
〔6〕血液凝固開始試薬が活性化凝固第XI因子及びリン脂質を含む試薬である、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕活性化凝固第XI因子を含む、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の方法に使用するための血液凝固開始試薬。
〔8〕さらにリン脂質を含む、〔7〕に記載の血液凝固開始試薬。
〔9〕〔7〕又は〔8〕に記載の血液凝固開始試薬を含む、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の方法に使用するためのキット。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、血液由来サンプルのトロンビン生成量を指標として、凝固第VIII因子代替活性を有する物質による血液凝固反応の評価方法が提供された。凝固第VIII因子代替活性を有する物質、特に凝固第IX因子又は活性化凝固第IX因子、及び、凝固第X因子に結合する二重特異性抗体による補因子活性の発現機序は、凝固第VIII因子そのものによるそれとは完全には同一ではない。そのため、二重特異性抗体による血友病等の出血性疾患の治療においては、汎用されている薬効の評価方法を必ずしも適用できず、適切に二重特異性抗体の効果を評価できない可能性があった。本発明により、上述の二重特異性抗体による出血性疾患の治療においても、その効果を精度よく評価することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】活性化凝固第IX因子及び凝固第X因子に結合する二重特異性抗体の一つhBS23のFVIII機能代替活性を示す図である。hBS23は、FIXa/FX/リン脂質存在下にて、FXa産生促進活性を示した。
【図2】FVIII欠乏血漿、又はインヒビター保有FVIII欠乏血漿のトロンビン生成試験パラメータ(Peak height(A)及びETP(B))におけるhBS23及び遺伝子組換えヒト凝固第VIII因子(rhFVIII)の効果を示す図である。各血漿ロットは重症血友病A(Plasma 1, 2, 3)又はインヒビター保有重症血友病A(Plasma with inhibitor 1, 2)と確認された単一ドナーから得られた。インヒビター力価は、Plasma with inhibitor 1, 2それぞれ、292、148 ベセスダユニットであった。hBS23は、FVIII欠乏血漿及びインヒビター保有FVIII欠乏血漿において、FXIa/リン脂質試薬惹起条件下でPeak height及びETPを濃度依存的に上昇させた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、以下の工程(i)及び(ii)を含む、凝固第VIII因子代替活性を有する物質による血液凝固反応を評価する方法に関する。
(i) 凝固第VIII因子代替活性を有する物質を含む、被験者から単離された血液由来サンプルに、活性化凝固第XI因子を含む血液凝固開始試薬を加える工程
(ii)工程(i)で得られた血液由来サンプルのトロンビン生成量を測定する工程
本発明の方法を使用することにより、凝固第VIII因子代替活性を有する物質による補因子活性を適切に評価することができる。特に、従来から血液凝固因子の薬効のモニタリング方法として広く使用されている活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)値による方法や、低濃度の組織因子を含む凝固開始試薬惹起によるトロンビン生成試験と比較して、適切な感度で止血効果をモニタリングすることが可能と考えられる。
【0016】
本発明の「凝固第VIII因子代替活性を有する物質による血液凝固反応を評価する方法」は、「凝固第VIII因子代替活性を有する物質による補因子活性を評価する方法」と言い換えることができる。また「凝固第VIII因子代替活性を有する物質による出血性疾患の治療効果を評価する方法」と言い換えることもできる。あるいは、「凝固第VIII因子代替活性を有する物質による出血性疾患の予防効果を評価する方法」と言い換えることもできる。さらに「評価する方法」は「判定する方法」、「測定する方法」と表現することもできる。
【0017】
凝固第VIII因子は血液凝固に関与する一連の分子の1つであり、トロンビンや活性化凝固第X因子により活性化を受けると補因子活性を呈し、活性化凝固第IX因子による凝固第X因子活性化反応を促進する。本発明の凝固第VIII因子代替活性を有する物質は、活性化凝固第IX因子による凝固第X因子活性化を促進する点で凝固第VIII因子と共通だが、例えばトロンビンや活性化凝固第X因子による活性化を必要としない点において凝固第VIII因子と異なる。
【0018】
本発明の凝固第VIII因子代替活性を有する物質は、凝固第VIII因子様活性を有する物質と言い換えることもできる。本発明において「凝固第VIII因子の機能を代替する」とは、凝固第IX因子(FIX)または凝固第IXa因子(FIXa)、および、凝固第X因子(FX)を認識し、FIXaによるFXの活性化を促進する(FIXaによるFXa産生を促進する)ことを意味する。FXa産生促進活性は、例えば、FIXa、FX、合成基質S-2222(FXaの合成基質)、リン脂質から成る測定系で評価することができる。このような測定系は、血友病A症例における疾患の重症度および臨床症状と相関性を示す(Rosen S, Andersson M, Blomba¨ck M et al. Clinical applications of a chromogenic substrate method for determination of FVIII activity. Thromb Haemost 1985; 54: 811-23)。
本発明に記載の凝固第VIII因子の機能を代替する活性を有する物質の好ましい態様として、凝固第IX因子又は活性化凝固第IX因子、及び、凝固第X因子に結合する二重特異性抗体を例示することができる。このような抗体は、例えばWO2005/035756、WO2006/109592、WO2012/067176などに記載の方法に従って取得することができる。具体的には、凝固第IX因子および/または活性化凝固第IX因子に対する抗体および凝固第X因子に対する抗体の配列を基に、当業者に公知の遺伝子組換え技術を用いて抗体を作製することが可能である。凝固第IX因子および/または活性化凝固第IX因子に対する抗体と凝固第X因子に対する抗体の配列を基に抗体をコードするポリヌクレオチドを構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照)。
本発明の二重特異性抗体は、宿主細胞内または細胞外(培地など)から単離し、実質的に純粋で均一な抗体として精製することができる。抗体の分離、精製は、通常の抗体の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせれば抗体を分離、精製することができる。本発明の二重特異性抗体にはWO2005/035756、WO2006/109592、WO2012/067176などに記載の抗体が含まれる。
【0019】
二重特異性抗体は、少なくとも2種類の異なる抗原に対して特異的に結合することができる第一の抗原結合部位と第二の抗原結合部位を含む。第一の抗原結合部位と第二の抗原結合部位は、それぞれ、凝固第IX因子および/または活性化凝固第IX因子と凝固第X因子に対して結合活性を有していれば特に限定されないが、例えば、抗体、Scaffold分子(抗体様分子)、ペプチド等の抗原との結合に必要な部位、または当該部位を含む断片をあげることができる。Scaffold分子とは、ターゲット分子に結合することで機能を発揮するような分子である。少なくとも1つの標的抗原に結合することができる立体構造的に安定なポリペプチドであれば、どのようなポリペプチドであっても用いることができる。そのようなポリペプチドの例としては、例えば、抗体可変領域、フィブロネクチン(WO2002/032925)、Protein Aドメイン(WO1995/001937)、LDL受容体Aドメイン(WO2004/044011, WO2005/040229)、アンキリン(WO2002/020565)等のほか、Nygrenら(Current Opinion in Structural Biology, 7:463-469(1997)、Journal of Immunol Methods, 290:3-28(2004))、Binzら(Nature Biotech 23:1257-1266(2005))、Hosseら(Protein Science 15:14-27(2006))に記載の分子を挙げることができる。また、Curr Opin Mol Ther. 2010 Aug;12(4):487-95.やDrugs. 2008;68(7):901-12.に記載されているように標的抗原に結合することができるペプチド分子を用いることもできる。
【0020】
二重特異性抗体は、例えば遺伝子組換え技術を用いて製造することができる(例えば、Borrebaeck CAK and Larrick JW, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。組換え型抗体は、それをコードするDNAをハイブリドーマ、または抗体を産生する感作リンパ球等の抗体産生細胞からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主(宿主細胞)に導入し産生させて得ることができる。
【0021】
二重特異性抗体には、wholeの抗体だけでなく抗体断片や低分子化抗体、並びに抗体修飾物が含まれてよい。
例えば抗体断片や低分子化抗体としては、ダイアボディ(diabody;Db)、線状抗体、一本鎖抗体(以下、scFvとも記載する)分子などが含まれる。ここで、「Fv」断片は最小の抗体断片であり、完全な抗原認識部位と結合部位を含む。
【0022】
二重特異性抗体は、ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体などを含み、その由来は限定されない。またキメラ抗体やヒト化抗体などの遺伝子改変抗体でもよい。
【0023】
ヒト抗体の取得方法は既に知られており、例えば、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を目的の抗原で免疫することで目的のヒト抗体を取得することができる(国際特許出願公開番号WO 93/12227, WO 92/03918,WO 94/02602, WO 94/25585,WO 96/34096, WO 96/33735参照)。
【0024】
遺伝子改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。具体的には、たとえばキメラ抗体は、免疫動物の抗体のH鎖、およびL鎖の可変領域と、ヒト抗体のH鎖およびL鎖の定常領域からなる抗体である。免疫動物由来の抗体の可変領域をコードするDNAを、ヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることによって、キメラ抗体を得ることができる。
【0025】
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称される改変抗体である。ヒト化抗体は、免疫動物由来の抗体のCDRを、ヒト抗体の相補性決定領域へ移植することによって構築される。その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 239400、国際特許出願公開番号WO 96/02576、Sato K et al, Cancer Research 1993, 53: 851-856、国際特許出願公開番号WO 99/51743参照)。
【0026】
本発明においては、被験者から凝固第VIII因子代替活性を有する物質を含む血液由来のサンプルを単離する。このような血液サンプルは、凝固第VIII因子代替活性を有する物質を投与された被験者から取得することができる。被験者としては、体内のいずれかの部位に出血性の症状を伴う患者(出血性疾患患者)が挙げられる。主な出血部位としては、関節内、筋肉内、皮下、口腔内、頭蓋内、消化管、鼻腔内などが挙げられるがこれらに限定されない。出血性疾患患者としては、好ましくは凝固第VIII因子及び/又は活性化凝固第VIII因子の活性の低下あるいは欠損が原因の出血性疾患患者が挙げられる。凝固第VIII因子及び/又は活性化凝固第VIII因子の活性の低下あるいは欠損が原因の出血性疾患患者としては、出血性の症状を有する患者であって、先天的あるいは後天的に、凝固第VIII因子及び活性化凝固第VIII因子のいずれか一方又は両方の活性が低下または欠損した患者を例示することができる。凝固第VIII因子、活性化凝固第VIII因子の活性の低下としては、健常者と比較して、これらの活性が好ましくは40%未満(例えば40%未満、30%未満、20%未満、10%未満)、より好ましくは10%未満(例えば10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満)、さらに好ましくは5%未満(例えば5%未満、4%未満、3%未満、2%未満)、特に好ましくは1%未満の患者が挙げられるがこれらに限定されない。凝固第VIII因子、活性化凝固第VIII因子の活性の測定方法は当業者に周知である(例えば、「みんなに役立つ血友病の基礎と臨床」、白幡聡、医薬ジャーナル社、2009など)。
より具体的には、このような疾患の例として、血友病(血友病A、血友病B)、後天性血友病及び、フォンビルブランド因子(vWF)の機能異常又は欠損に起因するフォンビルブランド病から選ばれる疾患が挙げられるがこれらに限定されない。血液由来サンプルには、血清、血漿、または全血が含まれる。本発明においては、血漿サンプルを使用することが好ましい。被験者からの血液由来サンプルの取得方法は当業者に周知である。
【0027】
本発明においては、上述の被験者から得られる血液由来サンプルに活性化凝固第XI因子、または活性化凝固第XI因子を含む血液凝固開始試薬を加える。
本発明の活性化凝固第XI因子は、凝固第XI因子を活性化凝固第XII因子やトロンビン等により活性化し、イオン交換、逆相、ゲル濾過などのクロマトグラフィー、あるいは活性化凝固第XI因子に対する抗体をカラムに固定したアフィニティークロマトグラフィーにかけることにより、または、さらにこれらのカラムを複数組み合わせることにより精製し、調製することができる。
【0028】
ヒト凝固第XI因子のアミノ酸配列およびこれをコードする核酸の塩基配列は、それぞれGenBank: NP_000119(配列番号:2)および NM_000128(配列番号:1)として知られている。但し、ここで言う凝固第XI因子は、ヒト凝固第XI因子に限定されず、他の動物種(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ウサギ、ラット、マウス)の凝固第XI因子でもよい。凝固第XI因子は、天然のタンパク質の他、公知の遺伝子組み換え技術を利用した組換えタンパク質として調製することができる。組換えタンパク質は、当業者に公知の方法により調製することができる。組換えタンパク質は、例えば、凝固第XI因子をコードする核酸を適当な発現ベクターに組み込み、これを適当な宿主細胞に導入して得た形質転換体を回収し、抽出物を得た後、イオン交換、逆相、ゲル濾過などのクロマトグラフィー、あるいは凝固第XI因子に対する抗体をカラムに固定したアフィニティークロマトグラフィーにかけることにより、または、さらにこれらのカラムを複数組み合わせることにより精製し、調製することが可能である。
また凝固第XI因子をグルタチオン S-トランスフェラーゼ蛋白質との融合ポリペプチドとして、あるいはヒスチジンを複数付加させた組み換えポリペプチドとして宿主細胞(例えば、動物細胞や大腸菌など)内で発現させた場合には、発現させた組み換えポリペプチドはグルタチオンカラムあるいはニッケルカラムを用いて精製することができる。
【0029】
上記ベクターとしては、例えば、大腸菌を宿主とする場合には、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、XL1Blue)等で大量に増幅させ大量調製するために、大腸菌で増幅されるための「ori」をもち、さらに形質転換された大腸菌の選抜遺伝子(例えば、なんらかの薬剤(アンピシリンやテトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコール)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すれば特に制限はない。ベクターの例としては、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Script等が挙げられる。また、cDNAのサブクローニング、切り出しを目的とした場合、上記ベクターの他に、例えば、pGEM-T、pDIRECT、pT7等が挙げられる。凝固第XI因子を生産する目的においてベクターを使用する場合には、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば、大腸菌での発現を目的とした場合は、ベクターが大腸菌で増幅されるような上記特徴を持つほかに、宿主をJM109、DH5α、HB101、XL1-Blue等の大腸菌とした場合においては、大腸菌で効率よく発現できるようなプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Wardら, Nature (1989) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)、araBプロモーター(Betterら, Science (1988) 240, 1041-1043 )、またはT7プロモーター等を持っていることが不可欠である。このようなベクターとしては、上記ベクターの他にpGEX-5X-1(ファルマシア社製)、「QIAexpress system」(キアゲン社製)、pEGFP、またはpET等が挙げられる。
また、ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。ポリペプチド分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379)を使用すればよい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いて行うことができる。
【0030】
大腸菌以外にも、例えば哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3 (インビトロゲン社製)や、pEGF-BOS (Nucleic Acids. Res.1990, 18(17),p5322)、pEF 、pCDM8 )、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac-to-BAC baculovairus expression system」(ギブコBRL社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウイルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw )、レトロウイルス由来の発現ベクター(例えば、pZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia Expression Kit」(インビトロゲン社製)、pNV11、SP-Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)等が挙げられる。
【0031】
CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulliganら, Nature (1979) 277, 108)、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら, Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)、CMVプロモーター等を持っていることが不可欠であり、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば、薬剤(ネオマイシン、G418等)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えば、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、pOP13等が挙げられる。
また、in vivoでポリペプチドを産生させる系としては、例えば、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。この動物または植物に凝固第XI因子をコードする核酸を導入し、動物または植物の体内で凝固第XI因子を産生させ、回収する。
動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993)。また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。
【0032】
これにより得られた凝固第XI因子は、宿主細胞内または細胞外(培地等)から単離し、実質的に純粋で均一なポリペプチドとして精製することができる。ポリペプチドの分離、精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせればポリペプチドを分離、精製することができる。
なお、凝固第XI因子を精製前又は精製後に適当な蛋白質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり部分的にペプチドを除去することもできる。蛋白質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グルコシダーゼ等が用いられる。
【0033】
また凝固第XI因子には、1もしくは複数のアミノ酸が改変されており、凝固第IX因子を活性化して活性化凝固第IX因子とする機能を潜在的に有するタンパク質も含まれる。また、その限りにおいて、凝固第XI因子の断片も含まれる。
アミノ酸残基を改変する場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、及び、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。これらの各グループ内のアミノ酸の置換を保存的置換と称す。あるアミノ酸配列に対する1又は複数個(例えば2、3、4、5、10、20、30、40、50、又は100個)のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA (1984)81:5662-6; Zoller, M. J. and Smith, M., Nucleic Acids Res.(1982)10:6487-500; Wang, A. et al., Science(1984)224:1431-3; Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA (1982)79:6409-13)。このような変異体は、アミノ酸改変前の凝固第XI因子若しくは凝固第XI因子断片のアミノ酸配列と少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、そして、最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列の同一性を有する。本明細書において配列の同一性は、配列同一性が最大となるように必要に応じ配列を整列化し、適宜ギャップを導入した後、元となった重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列の残基と同一の残基の割合として定義される。
【0034】
アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。
【0035】
アミノ酸配列が改変されたタンパク質をコードするDNAを調製するための方法としては、site-directed mutagenesis法(Kramer, W. and Fritz,H.-J. (1987) Oligonucleotide-directed construction of mutagenesis via gapped duplex DNA.Methods in Enzymology, 154: 350-367)やハイブリダイゼーション技術(Southern, E.M. (1975) Journal of Molecular Biology, 98, 503)、PCR技術(Saiki, R. K. et al. (1985) Science, 230, 1350-1354、Saiki, R. K. et al. (1988) Science, 239, 487-491)などが当業者によく知られている。
【0036】
また本発明においては、活性化凝固第XI因子に、リン脂質を加えることが好ましい。本発明においてリン脂質は特に限定されない。リン脂質としてホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴエミリン及びこれらの2以上の組み合わせを例示することができるがこれらに限定されない。本発明においては、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンの組み合わせが好ましい。
本発明においては、活性化凝固第XI因子を試薬の形態として、被験者から単離された血液由来サンプルに加えることができる。本発明においては、このような試薬を「血液凝固開始試薬」と称する。本発明の「血液凝固開始試薬」は活性化凝固第XI因子に加え、リン脂質、カルシウム、マグネシウムなどの塩を含むことができる。
活性化凝固第XI因子及び/又はリン脂質は、後述するトロンビン生成量の測定に足る量を、血液由来サンプルに加えることができる。活性化凝固第XI因子は、血漿サンプル1mlあたり、例えば0.00001 pmolから1000 nmolの間の量を加えることができるがこれに限定されない。またリン脂質については、血漿サンプル1mlあたり、例えば0.001 nmolから10000 nmolの間の量を加えることができるがこれに限定されない。
【0037】
本発明においては、このような工程を経て得られる血液由来サンプルのトロンビン生成量を測定する。本発明者らは、血液由来サンプルのトロンビン生成量を指標に、凝固第IX因子又は活性化凝固第IX因子、及び、凝固第X因子に結合する二重特異性抗体による補因子活性を評価することが可能なことを明らかにした。すなわち本発明により、血液由来サンプルのトロンビン生成量を指標とする、凝固第VIII因子代替活性を有する物質(好ましくは凝固第IX因子又は活性化凝固第IX因子、及び、凝固第X因子に結合する二重特異性抗体)による血液凝固反応の評価方法が提供された。血液由来サンプルのトロンビン生成量は、当業者に周知の方法によって測定することができる。例えば、試料中のトロンビン量を換算するための試薬を加え、市販の装置により最大トロンビン量(Peak height)及び総トロンビン量(ETP)を算出することによって測定することができるがこれに限定されない。
【0038】
本発明においては、血液由来サンプルのトロンビン生成量を指標に、凝固第IX因子又は活性化凝固第IX因子、及び、凝固第X因子に結合する二重特異性抗体による補因子活性を適切な感度で評価することができる。止血作用に必要な補因子活性は、例えば、凝固第VIII因子代替活性を有する物質の臨床効果と本発明の方法におけるトロンビン生成量の相関から判断する方法や、本発明の方法における第VIII因子代替活性を有する物質を含む血液由来サンプルのトロンビン生成量と、凝固第VIII因子活性を含む血液由来サンプルのトロンビン生成量を比較する方法などが考えられる。例えば、本発明においては、凝固第VIII因子活性(FVIII:C)1%を有する血液由来サンプルあるいはFVIII:C 1%となるよう凝固第VIII因子を加えた血液由来サンプルにて検出感度の下限のトロンビン生成反応が示されるよう、血液凝固開始試薬中の活性化凝固第XI因子やリン脂質濃度を調整すれば、トロンビン生成反応を以て、被験者に投与された凝固第VIII因子代替活性を有する物質は血液凝固反応を引き起こす活性を有する、すなわち止血効果を有すると評価することができる。あるいは、例えば、本発明においては、凝固第VIII因子代替活性を有する物質を投与された被験者(重症血友病A患者)から単離された血液由来サンプルのトロンビン生成量が、凝固第VIII因子代替活性を有する物質が含まれないあるいは同物質の作用が示されない状態の同被験者の血液由来サンプルに凝固第VIII因子を0.01 U/mL添加したサンプル(比較サンプル)のトロンビン生成量と比較し、同程度またはそれ以上の場合、被験者に投与された凝固第VIII因子代替活性を有する物質は血液凝固反応を引き起こす活性を有する、すなわち止血効果を有すると評価することができる。トロンビン生成量が同程度とは、凝固第VIII因子代替活性を有する物質を投与された被験者の血液由来サンプルのトロンビン生成量が、比較サンプルのトロンビン生成量に対し、例えばプラスマイナス100%以内、好ましくは50%以内、特に好ましくは20%以内を例示することができるがこれらに限定されない。トロンビン生産量は、例えば、最大トロンビン量(Peak height)、総トロンビン量(ETP)を指標とすることができる。
【0039】
また本発明は、本発明の血液凝固反応の評価に用いるための血液凝固開始試薬を提供する。本発明の血液凝固開始試薬は、活性化凝固第XI因子を含む。本発明の血液凝固開始試薬はリン脂質をさらに含むことができる。リン脂質の例は上に記載した。本発明の血液凝固開始試薬は、その他にカルシウム、マグネシウムなどの塩を含むこともできる。
【0040】
本発明の血液凝固反応の評価に用いるための血液凝固開始試薬は、「血液凝固反応を評価に用いるための血液凝固開始試薬の製造における活性化凝固第XI因子、又は活性化凝固第XI因子及びリン脂質の使用」と言い換えることができる。また「血液凝固反応を評価するために用いられる活性化凝固第XI因子、又は活性化凝固第XI因子及びリン脂質」と言い換えることもできる。さらに本発明の血液凝固開始試薬は、「活性化凝固第XI因子、又は活性化凝固第XI因子及びリン脂質と、薬学的あるいは生理学的に許容される担体を製剤化する工程を含む、血液凝固反応を評価するための血液凝固開始試薬の製造方法」と表現することもできる。本明細書における活性化凝固第XI因子には、血液由来サンプルに外から添加する限りにおいて凝固第XI因子も含まれる。本発明の活性化凝固第XI因子は、市販のもの、血漿から精製されたもの、あるいは遺伝子組換え技術により作製されたもののいずれであってもよい。これらの取得方法は当業者に周知である。
【0041】
本発明による血液凝固反応の評価方法に必要な血液凝固開始試薬など各種の試薬類は、あらかじめパッケージングしてキットとして供給することができる。本発明のキットには、血液凝固開始試薬のほか、血液中の凝固第VIII因子活性や凝固第IX因子活性が正常なヒトから単離された血漿サンプルの陽性対照、凝固第VIII因子代替活性を有する物質、トロンビン生成アッセイに使用可能なもの(例えばトロンビンに対する蛍光基質、試料中のトロンビン量を換算するための試薬等)を含むことができる。またキットに含まれる各種の試薬は、その使用態様に応じて粉末状あるいは液状とすることができる。またこれらを適当な容器に収納し、適時に使用することができる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。
FVIII機能代替活性を有する抗FIXa/FX二重特異性抗体の調製及びFVIII機能代替活性の測定
FVIII機能代替活性を有する抗FIXa/FX二重特異性抗体は、WO2005/035756、WO2006/109592、WO2012/067176に記載された方法で取得した。WO2005/035756、WO2006/109592、WO2012/067176に記載の抗体遺伝子を、動物細胞発現ベクターに組み込み、それをHEK293細胞へトランスフェクションすることで、二重特異性抗体を一過性に発現した。次いで、細胞の培養上清に含まれる二重特異性抗体を、Protein A及びゲルろ過を用いて精製した。
このように精製された二重特異性抗体のFVIII機能代替活性の測定は、以下に示す酵素アッセイにて行った。室温下、1 nMのhuman FIXa(Enzyme Research Laboratories)、140 nMのhuman FX(Enzyme Research Laboratories)、20 μMのリン脂質(10% phosphatidylserine、60% phosphatidylcholine、30% phosphatidylethanolamine)、及び二重特異性抗体を、5 mM CaCl2と0.1%牛血清アルブミンを含むトリス緩衝生理食塩水溶液で混合後2分間インキュベーションし、FIXaによるFX活性化反応を進めた。本反応は、EDTAの添加により停止させた。次いで、FXa特異的な発色基質溶液S-2222(CHROMOGENIX)を添加し、405 nmの吸光度変化をSpectraMax 340PC384 (Molecular Devices)を用いて測定した。既知濃度のヒトFXa(Enzyme Research Laboratories)による吸光度変化から検量線を作成し、二重特異性抗体によるFXa産生促進活性を評価した。
【0043】
APTT測定
APTT試薬としてThrombocheck APTT-SLA(Sysmex)を用い、標準的なAPTT測定プロトコールに従い測定した。二重特異性抗体又はリコンビナントヒトFVIII(rhFVIII、バイエル株式会社)を含んだ第VIII因子(FVIII)欠乏ヒト血漿(市販品、George King Bio-Medical)又はインヒビター保有FVIII欠乏血漿(市販品、George King Bio-Medical)50μLに、APTT試薬50 μLを添加した。3分間インキュベーション後、0.02 mol/L塩化カルシウム溶液50 μLを添加して凝固反応を開始し、血液凝固自動測定装置(KC4デルタ、Trinity Biotech)でAPTTを測定した。
【0044】
トロンビン生成アッセイ
励起波長390 nm/蛍光波長460 nmフィルターセット、ディスペンザー、解析ソフトウェア(Thrombinoscope software version 3.0.0.29、 Thrombinoscope BV)を備えた96ウェル蛍光プレート蛍光光度計(Thermo Fisher Scientific Instruments)を用いて、calibrated automated thrombographyによるトロンボグラムを得た。二重特異性抗体又はリコンビナントヒトFVIII(rhFVIII、バイエル)を含んだ第VIII因子(FVIII)欠乏ヒト血漿又はインヒビター保有FVIII欠乏血漿(George King Bio-Medical)80 μLを各ウェルに添加した。次に、0.47 nM human factor XIa (Enzyme Research Laboratories)と20 μM phospholipidを含む凝固開始試薬(FXIa/リン脂質試薬)又はPPP-Reagent LOW(Thrombinoscope BV)20 μLを添加した。トロンビン量に換算するために、凝固開始試薬の代わりにThrombin Calibrator(Thrombinoscope BV)20 μLを添加した。反応を開始させるため、FluCa kit (Thrombinoscope BV)から調製したFluCa reagent 20 μLを、プログラムされた装置により自動分注した。装置のソフトウェアにより、トロンボグラム、peak height(最大トロンビン量)、及びETP(総トロンビン量)を算出した。
【0045】
血友病Aモデル
まず、ヒトFVIIIを免疫したマウスからハイブリドーマを作成し、カニクイザルに交叉し且つブタに交叉しない抗FVIII中和抗体を同定した。カニクイザル及びブタへの交叉性は、それぞれのクエン酸血漿に該当抗体を添加し、APTTあるいはトロンビン生成試験で、凝固が阻害されるか測定することによって確認した。この抗FVIII抗体を、APTTを2倍延長させられる用量、カニクイザルに投与し、後天性血友病A状態とした。次いで、被検薬として、二重特異性抗体の一つhBS23 0.3 mg/kg(n=3)あるいはブタFVIII 1 U/kg(n=3)を、動物の静脈内に投与した。ブタFVIIIは常法を用い、遺伝子組換え手法で調製・精製した。コントロールとして、薬剤を投与しない群(n=6)も設定した。麻酔下で動物に人工的に出血を惹起し(前腕、上腕及び大腿の筋肉に18G針を穿刺)、その後、3日後まで動物を観察した。ブタFVIII 1 U/kgを投与した群では、1日2回(計6回;観察最終日の投与はなし)、動物の静脈内にブタFVIII 1 U/kgを追加投与した。これは、血漿中FVIII活性を0.01 U/mLあるいはそれ以上に維持するようデザインされたレジメである。出血の指標としては、ヘモグロビン値(失血による貧血を反映)及び皮膚の紫変部(出血痕)面積を採用した。
【0046】
結果
<二重特異性抗体のFVIII機能代替活性>
二重特異性抗体の一つであるhBS23は、FIXa/FX/リン脂質存在下にて、FXa産生促進活性を示し、FVIII機能代替活性を有することが示された(図1)。
【0047】
<二重特異性抗体のin vivo止血活性>
コントロールの動物では、3日後まで、ヘモグロビン値の進行性の低下及び皮膚の紫変部の拡大が見られた。それらは、hBS23の単回静脈内投与あるいはブタFVIII 1 U/kgの反復静脈内投与(1日2回)により抑制された。その程度は、両者でほぼ同等であった。
実験期間中のhBS23の血漿中濃度は30 nM前後(群の平均として40 - 18 nM)であり、該濃度付近において、概ね、血漿中FVIII活性として0.01 U/mL (FVIII活性 1%)またはそれ以上を維持するレジメ(ブタFVIII 1 U/kgの反復静脈内投与(1日2回))と同等の止血活性があると考えられた。
【0048】
<血漿アッセイにおける二重特異性抗体の活性>
二重特異性抗体の一つであるhBS23は、FVIII欠乏血漿において、FXIa/リン脂質試薬惹起条件下で、トロンビン生成パラメータであるPeak height(最大トロンビン量)及びETP(総トロンビン量)を濃度依存的に上昇させた(図2)。Peak heightの解析では、hBS23は30 nMにおいて0.01 U/mLのrhFVIII (FVIII活性 1%)に相当する活性を、300 nMにおいて0.1 U/mLのrhFVIII (FVIII活性10%)に近い活性を有していた。前述の通り、in vivo試験においては、血漿中hBS23濃度を30 nM前後に保つことで、血漿中FVIII活性として0.01 U/mL (FVIII活性 1%)またはそれ以上を維持するレジメと同等の止血活性を得た。従って、トロンビン生成試験は、hBS23の止血作用を適切な感度で反映するモニタリング法であることが示唆された。
一方、PPP-Reagent LOW(低濃度の組織因子を含む凝固開始試薬)惹起条件下でトロンビン生成試験を行ったところ、FXIa/リン脂質試薬惹起条件下と比較して、hBS23活性やhFVIIIの測定感度が低く、in vivo止血作用を適切に反映させることが困難であると判断された。また、APTT値を用い、hBS23のFVIII比活性を評価したところ、hBS23は、30 nM以上においてFVIII 1 U/mL (FVIII活性 100%)以上の比活性を有すると計算された。この結果から、APTT値により計算されるhBS23のFVIII活性は、in vivo試験の止血作用よりも大きく表される可能性が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により、血液凝固反応におけるFVIII機能代替活性を有する二重特異性抗体の効果の評価方法が提供された。本発明の方法を使用することにより、当該二重特異性抗体による血友病等の出血性疾患の治療において、その効果を適切な感度で判定することができる。
【図1】
【図2】
【配列表】
2014050926000001.app
【国際調査報告】