(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014051005
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160822
(54)【発明の名称】複合組織鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20160725BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20160725BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20160725BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20160725BHJP
   B21B 3/00 20060101ALI20160725BHJP
【FI】
   !C22C38/00 301W
   !C22C38/58
   !C21D9/46 U
   !C23C2/06
   !B21B3/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】42
【出願番号】2014510328
(21)【国際出願番号】JP2013076149
(22)【国際出願日】20130926
(11)【特許番号】5610103
(45)【特許公報発行日】20141022
(31)【優先権主張番号】2012212783
(32)【優先日】20120926
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目6番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(72)【発明者】
【氏名】横井 龍雄
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目6番1号 新日鐵住金株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】首藤 洋志
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目6番1号 新日鐵住金株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】桜田 栄作
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目6番1号 新日鐵住金株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩幸
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目6番1号 新日鐵住金株式会社内
【テーマコード(参考)】
4K027
4K037
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AA23
4K027AB02
4K027AB28
4K027AB42
4K027AB43
4K027AC73
4K037EA01
4K037EA02
4K037EA05
4K037EA09
4K037EA10
4K037EA11
4K037EA13
4K037EA14
4K037EA15
4K037EA16
4K037EA17
4K037EA18
4K037EA19
4K037EA20
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EA32
4K037EA33
4K037EA34
4K037EA35
4K037EA36
4K037EB06
4K037EB07
4K037EB11
4K037FA02
4K037FA03
4K037FB06
4K037FB07
4K037FC03
4K037FC04
4K037FD02
4K037FD03
4K037FD04
4K037FE01
4K037FE06
4K037FG00
4K037GA05
(57)【要約】
質量%で、C:0.01〜0.1%、Mn:0.2〜3%、Al:0.04〜1.5%、Ti:0.015〜0.2%、P:0.01%以下、S:0.005%以下、N:0.01%以下であり、[Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]≧0%を満たし、Ex.C(%)=[C]−12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N]−48/32×[S]}としたとき、0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01を満たし、残部がFe及び不純物であり、板厚の1/4の厚さの位置において、ミクロ組織の主相がTi炭化物により析出強化されたポリゴナルフェライトからなり、第二相が面積分率(fsd(%))で1〜10%の、複数に分散した低温変態生成物からなる複合組織であり、前記低温変態生成物の平均結晶直径が3〜15μmであり、各低温変態生成物間の最近接距離の平均値が10〜20μmである、複合組織鋼板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C:0.01〜0.1%、
Mn:0.2〜3%、
Al:0.04〜1.5%、
Ti:0.015〜0.2%
Si:0〜0.5%、
Nb:0〜0.06%、
Cu:0〜1.2%、
Ni:0〜〜0.6%、
Mo:0〜〜1%、
V:0〜〜0.2%、
Cr:0〜〜2%、
W:0〜〜0.5%
Mg:0〜0.01%、
Ca:0〜0.01%、
REM:0〜0.1%、
B:0〜0.002%、
P:0.01%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下
であり、
[Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]≧0%を満たし、
Ex.C(%)=[C]−12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N]−48/32×[S]}としたとき、0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01を満たし、
残部がFe及び不純物であり、
板厚の1/4の厚さの位置において、ミクロ組織の主相がTi炭化物により析出強化されたポリゴナルフェライトからなり、第二相が面積分率(fsd(%))で1〜10%の、複数に分散した低温変態生成物からなる複合組織であり、
前記低温変態生成物の平均結晶直径が3〜15μmであり、各低温変態生成物間の最近接距離の平均値が10〜20μmである、複合組織鋼板。
【請求項2】
質量%で、
Si:0.02%〜0.5%
を含有する、請求項1に記載の複合組織鋼板。
【請求項3】
質量%で、
Nb:0.005〜0.06%、
Cu:0.02〜1.2%、
Ni:0.01〜0.6%、
Mo:0.01〜1%、
V:0.01〜0.2%、
Cr:0.01〜2%、
W:0.01〜0.5%
の一種または二種以上を含有する、請求項1または2のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【請求項4】
質量%で、
Mg:0.0005〜0.01%、
Ca:0.0005〜0.01%、
REM:0.0005〜0.1%
の一種または二種以上を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【請求項5】
質量%で、
B:0.0002〜0.002%
を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【請求項6】
表面に亜鉛めっきが施されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【請求項7】
質量%で、
C:0.01〜0.1%、
Mn:0.2〜3%、
Al:0.04〜1.5%、
Ti:0.015〜0.2%以下、
Si:0〜0.5%、
Nb:0〜0.06%、
Cu:0〜1.2%、
Ni:0〜0.6%、
Mo:0〜1%、
V:0〜0.2%、
Cr:0〜2%、
W:0〜0.5%
Mg:0〜0.01%、
Ca:0〜0.01%、
REM:0〜0.1%、
B:0〜0.002%、
P:0.01%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下
であり、
[Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]≧0%を満たし、
Ex.C(%)=[C]−12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N]−48/32×[S]}としたとき、0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01を満たし、
残部がFe及び不純物であるスラブを、下記の式(1)で定義される温度SRTmin(℃)以上に加熱した後、熱間圧延において、1050℃以上1150℃以下の温度域で圧下率20%以上の粗圧延を少なくとも1パス行い、その後150秒以内に1000℃以上1080℃未満の温度域で仕上げ圧延を開始し、Ar3変態点温度+50℃以上、1000℃以下の温度域で複数パスの合計圧下率が75%以上95%以下である仕上げ圧延を終了し、
3秒以内に平均冷却速度15℃/sec以上でAr3変態点温度未満まで冷却し、次に、平均冷却速度10℃/sec以下で1秒以上、100秒未満の時間で600℃超の温度域まで冷却し、次に、15℃/sec以上の冷却速度で350℃以下の温度域まで冷却し、巻き取る、複合組織鋼板の製造方法。
SRTmin=10780/{5.13−log([Ti]×[C])}−273 ・・・ 式(1)
【請求項8】
前記熱間圧延において、1050℃以上1150℃以下の温度域で圧下率20%以上の粗圧延を複数パス行い、粗圧延の合計圧下率が60%以上90%以下である、請求項7に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【請求項9】
100℃以下の温度域まで冷却し、巻き取る、請求項7または8のいずれか1項に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記平均冷却速度10℃/sec以下で1秒以上、100秒未満の時間で600℃超の温度域まで冷却する際に、フェライト中におけるTiの総累積拡散距離Ltotalを、下記の式(2)で表されるTiのフェライト中の拡散距離Lを冷却終了温度から巻き取るまでの微小時間Δt/secで積算して、下記の式(3)で表したとき、0.15≦Ltotal≦0.5である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の複合組織鋼板の製造方法。
L=√D(T+273)t ・・・ 式(2)
Ltotal=Σ√(D(T+273)Δt) ・・・ 式(3)
ここで、D(T+273)はT℃における体拡散係数である。
tは拡散時間である。
D(T)はTiの拡散係数D0、活性化エネルギーQ及び気体定数Rを用いて、下記の式(4)で表される。
D(T)=D0×Exp(−Q/R・(T+273)) ・・・ (4)
【請求項11】
前記平均冷却速度10℃/sec以下で1秒以上、100秒未満の時間で600℃超の温度域まで冷却する際に、鋼板を亜鉛めっき浴中に浸積させて表面を亜鉛めっきする、請求項7〜10のいずれか1項に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【請求項12】
さらに、亜鉛めっきされた複合組織鋼板を450〜600℃の温度範囲で合金化処理する、請求項11に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライトと低温変態生成物からなる複合組織鋼板およびその製造方法に関する。本願は、2012年9月26日に日本に出願された特願2012−212783号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費向上を目的として自動車を構成する各種部品の軽量化が進められている。軽量化手段は部品各々の要求性能により違い、例えば骨格部品では鋼板の高強度化による薄肉化、パネル部品では鋼板のAl合金等の軽金属への置換等が行われている。しかし、鋼と比較した場合、Al合金等の軽金属は高価であるため主に高級車に適用されているのが現状である。
【0003】
一方、自動車需要は先進国から新興国にシフトしており、今後は軽量化と低価格化の両立が求められることが予想される。部品に関わらず鋼の高強度化と薄肉化による軽量化の達成が必要となる。
【0004】
乗用車用ホイールは、意匠性の観点でアルミ鋳造および鍛造品が有利であった。しかし最近はスチールプレス品でも材料、工法を工夫することによりアルミホイールと同等の意匠性の製品が出現している。
【0005】
特にエンドユーザーの目に触れるホイールディスクにおいてこれまで求められてきた優れた疲労耐久性、耐食性に加え、アルミホイールと同等の意匠性、美麗性を意匠性、美麗性がスチールホイールにも求められている。同様に、ホイールディスク用の鋼板においても、薄肉化を達成する高強度化と、これまでの疲労耐久性、耐食性に加え、部品としての意匠性を向上させるための加工性の向上と美麗性を担保するための表面性状の改善が求められるようになった。
【0006】
これまでホイールディスク用の鋼板に求められる特性としては張り出し加工性、絞り加工性と疲労耐久性が特に重要視されていた。これは、ホイールディスクの成形工程の中でもハット部の加工が厳しく、また、ホイールの部材特性で最も厳しい基準で管理されているのが疲労耐久性であるためである。
【0007】
現在、これらホイールディスク用の高強度熱延鋼板として部材での疲労耐久性を重視して疲労特性に優れる590MPa級のフェライト−マルテンサイトの複合組織鋼板(いわゆるDual Phase鋼)が用いられている。しかし、これらの鋼板に要求される強度レベルは590MPa級から780MPa級へとさらなる高強度化へ向かいつつある。
【0008】
非特許文献1には、鋼板のミクロ組織をフェライトとマルテンサイトから構成されるDual Phase鋼(以下、DP鋼と表記する。)のように複合組織化することで同一強度でも均一伸びを確保する方法が開示されている。
【0009】
一方、DP鋼は曲げ成形、穴拡げ加工やバーリング加工に代表される局部変形能は、低いことが知られている。これはフェライトとマルテンサイトの強度差が大きいために、成形に伴ってマルテンサイト近傍のフェライトに大きな歪、応力集中が発生し、クラックが発生することが理由である。
【0010】
この知見を元に、組織間の強度差を低減することで穴広げ率を高めた高強度鋼板が開発されている。特許文献1ではベイナイトまたはベイニティックフェライトを主相として強度を確保し、穴広げ性を大きく向上させた鋼板が提案されている。単一組織鋼とすることで前述したような歪、応力集中が発生せず、高い穴広げ率が得られるというものである。
【0011】
しかしながら、ベイナイトやベイニティックフェライトの単一組織鋼としたことで大きく伸びが劣化し、伸びと穴広げ性の両立を達成することはできていない。
【0012】
さらに、近年では単一組織鋼の組織として伸びに優れるフェライトを利用し、Ti、Mo等の炭化物を利用して高強度化を図った高強度鋼板が提案されている(例えば、特許文献2〜4)。
【0013】
しかし特許文献2にて提案された鋼板は多量のMoを含有する。特許文献3にて提案された鋼板は多量のVを含有する。さらに特許文献4にて提案された鋼板は、結晶粒を微細化するため、圧延の途中に冷却することが必要である。そのため、合金コストや製造コストが高くなるという問題がある。また、この鋼板においてもフェライト自体を大きく高強度化させたことにより伸びは劣化してしまっている。ベイナイトやベイニティックフェライトの単一組織鋼の伸びは上回るものの、伸びー穴広げ性バランスは必ずしも十分ではなかった。
【0014】
また特許文献5ではDP鋼中のマルテンサイトをベイナイトとし、フェライトとの組織間強度差を小さくすることで穴広げ性を高めた複合組織鋼板が提案されている。
【0015】
しかし、強度を確保するためにベイナイト組織の面積率を高めた結果、伸びが劣化し、伸び−穴広げ性バランスは十分ではなかった。
【0016】
さらに特許文献7〜9にはDP鋼のフェライトを析出強化することで硬質組織との強度差を低減させた鋼板も提案されている。
【0017】
しかし、この技術ではMoが必須元素となっており、製造コストが高くなる問題がある。またフェライトを析出強化しても、硬質組織であるマルテンサイトとの強度差は大きく、高い穴広げ性向上効果は得られていない。
【0018】
一方、これらDP鋼はミクロ組織をフェライトとマルテンサイトの複合組織とするためにフェライト変態を促進する目的でSiが添加されていることが多い。しかし、Siの含有は、赤スケール(Siスケール)と呼ばれるタイガーストライプ状のスケール模様が鋼板の表面に生成するため、美麗性が求められる高意匠ホイールディスクに用いられる各種鋼板への適用は難しい。
【0019】
特許文献10には780MPa以上のグレードの鋼板においてDP鋼のマルテンサイト分率を3〜10%に制御することで伸びと穴広げ性のバランスの優れた鋼板に関する技術が開示されている。しかしながら、Siが0.5%以上添加されており、Siスケール模様の回避が難しいため、美麗性が求められる高意匠ホイールディスクに用いられる各種鋼板への適用は難しい。
【0020】
この課題に対しては、Siの添加量を0.3%以下に抑制することで赤スケールの発生を抑え、さらに、Moを添加し析出物を微細化することで高強度でありながら優れた伸びフランジ性を有する高張力熱延鋼板の技術が開示されている。(例えば、特許文献11、12)
【0021】
しかしながら、上述した特許文献11、12に開示された技術を適用した鋼板は、Si添加量が0.3%以下程度であるものの、赤スケールの発生を十分抑制することは難しく、また、高価な合金元素であるMoを0.07%以上添加することを必須としているため製造コストが高いという問題点がある。
【0022】
また、特許文献13には、Siの含有量の上限を規定し、赤スケールの発生を回避する技術が開示されている。しかしながら、切欠き疲労特性については何ら技術的な開示が無い。
【0023】
さらに、特許文献14には、Alを添加し低サイクル疲労特性を向上させる技術が開示されている。しかしながら、応力集中下における疲労特性である切欠き疲労特性については何ら技術的な開示が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2003−193190号公報
【特許文献2】特開2003−089848号公報
【特許文献3】特開2007−063668号公報
【特許文献4】特開2004−143518号公報
【特許文献5】特開2004−204326号公報
【特許文献6】特開2007−302918号公報
【特許文献7】特開2003−321737号公報
【特許文献8】特開2003−321738号公報
【特許文献9】特開2003−321739号公報
【特許文献10】特開2011−184788号公報
【特許文献11】特開2002−322540号公報
【特許文献12】特開2002−322541号公報
【特許文献13】特願2007−082567号公報
【特許文献14】特開2010−150581号公報
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】O. Matsumura et al、Trans. ISIJ(1987)vol.27,p.570
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、540MPa以上の引張強度を有し、表面性状と切欠き疲労特性に優れた高バーリング加工性高強度複合組織鋼板およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明者らは、Siスケール模様を回避するためにSiを含有しない鋼成分を前提に、高強度でありながら高い延性を有する複合組織鋼の組織構成と均一伸び、バーリング加工性および切欠き疲労特性の関係について鋭意検討を重ねた。その結果、鋼成分、第二相である低温変態生成物の分散状態、形状、サイズ、ナノ硬度を制御することによって均一伸び、バーリング加工性および切欠き疲労特性を高次元でバランスさせる手法を見出した。すなわち、Siの代替としてAlを適正に添加し、Siスケール模様を回避するとともに、ポリゴナルフェライトを主相としと低温変態生成物を第二相とする複合組織化を促進した。さらに伸び、バーリング加工性と切欠き疲労特性が両立可能なる低温変態生成物の分率、サイズ等の最適範囲を知見した。また、鋼成分だけでなく、熱間圧延の方法を工夫することで、これらの最適範囲が再現性よく得られることを明らかにした。本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0028】
[1]
質量%で、
C:0.01〜0.1%、
Mn:0.2〜3%、
Al:0.04〜1.5%、
Ti:0.015〜0.2%
Si:0〜0.5%、
Nb:0〜0.06%、
Cu:0〜1.2%、
Ni:0〜〜0.6%、
Mo:0〜〜1%、
V:0〜〜0.2%、
Cr:0〜〜2%、
W:0〜〜0.5%
Mg:0〜0.01%、
Ca:0〜0.01%、
REM:0〜0.1%、
B:0〜0.002%、
P:0.01%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下
であり、
[Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]≧0%を満たし、
Ex.C(%)=[C]−12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N]−48/32×[S]}としたとき、0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01を満たし、
残部がFe及び不純物であり、
板厚の1/4の厚さの位置において、ミクロ組織の主相がTi炭化物により析出強化されたポリゴナルフェライトからなり、第二相が面積分率(fsd(%))で1〜10%の、複数に分散した低温変態生成物からなる複合組織であり、
前記低温変態生成物の平均結晶直径が3〜15μmであり、各低温変態生成物間の最近接距離の平均値が10〜20μmである、複合組織鋼板。
【0029】
[2]
質量%で、
Si:0.02%〜0.5%
を含有する、請求項[1]に記載の複合組織鋼板。
【0030】
[3]
質量%で、
Nb:0.005〜0.06%、
Cu:0.02〜1.2%、
Ni:0.01〜0.6%、
Mo:0.01〜1%、
V:0.01〜0.2%、
Cr:0.01〜2%、
W:0.01〜0.5%
の一種または二種以上を含有する、[1]または[2]のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【0031】
[4]
質量%で、
Mg:0.0005〜0.01%、
Ca:0.0005〜0.01%、
REM:0.0005〜0.1%
の一種または二種以上を含有する、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【0032】
[5]
質量%で、
B:0.0002〜0.002%
を含有する、請求項[1]〜[4]のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【0033】
[6]
表面に亜鉛めっきが施されている、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【0034】
[7]
質量%で、
C:0.01〜0.1%、
Mn:0.2〜3%、
Al:0.04〜1.5%、
Ti:0.015〜0.2%以下、
Si:0〜0.5%、
Nb:0〜0.06%、
Cu:0〜1.2%、
Ni:0〜0.6%、
Mo:0〜1%、
V:0〜0.2%、
Cr:0〜2%、
W:0〜0.5%
Mg:0〜0.01%、
Ca:0〜0.01%、
REM:0〜0.1%、
B:0〜0.002%、
P:0.01%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下
であり、
[Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]≧0%を満たし、
Ex.C(%)=[C]−12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N]−48/32×[S]}としたとき、0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01を満たし、
残部がFe及び不純物であるスラブを、下記の式(1)で定義される温度SRTmin(℃)以上に加熱した後、熱間圧延において、1050℃以上1150℃以下の温度域で圧下率20%以上の粗圧延を少なくとも1パス行い、その後150秒以内に1000℃以上1080℃未満の温度域で仕上げ圧延を開始し、Ar3変態点温度+50℃以上、1000℃以下の温度域で複数パスの合計圧下率が75%以上95%以下である仕上げ圧延を終了し、
3秒以内に平均冷却速度15℃/sec以上でAr3変態点温度未満まで冷却し、次に、平均冷却速度10℃/sec以下で1秒以上、100秒未満の時間で600℃超の温度域まで冷却し、次に、15℃/sec以上の冷却速度で350℃以下の温度域まで冷却し、巻き取る、複合組織鋼板の製造方法。
SRTmin=10780/{5.13−log([Ti]×[C])}−273 ・・・ 式(1)
【0035】
[8]
前記熱間圧延において、1050℃以上1150℃以下の温度域で圧下率20%以上の粗圧延を複数パス行い、粗圧延の合計圧下率が60%以上90%以下である、[7]に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【0036】
[9]
100℃以下の温度域まで冷却し、巻き取る、[7]または[8]のいずれか1項に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【0037】
[10]
前記平均冷却速度10℃/sec以下で1秒以上、100秒未満の時間で600℃超の温度域まで冷却する際に、フェライト中におけるTiの総累積拡散距離Ltotalを、下記の式(2)で表されるTiのフェライト中の拡散距離Lを冷却終了温度から巻き取るまでの微小時間Δt/secで積算して、下記の式(3)で表したとき、0.15≦Ltotal≦0.5である、[7]〜[9]のいずれか1項に記載の複合組織鋼板の製造方法。
L=√D(T+273)t ・・・ 式(2)
Ltotal=Σ√(D(T+273)Δt) ・・・ 式(3)
ここで、D(T+273)はT℃における体拡散係数である。
tは拡散時間である。
D(T)はTiの拡散係数D0、活性化エネルギーQ及び気体定数Rを用いて、下記の式(4)で表される。
D(T)=D0×Exp(−Q/R・(T+273)) ・・・ (4)
【0038】
[11]
前記平均冷却速度10℃/sec以下で1秒以上、100秒未満の時間で600℃超の温度域まで冷却する際に、鋼板を亜鉛めっき浴中に浸積させて表面を亜鉛めっきする、[7]〜[10]のいずれか1項に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【0039】
[12]
さらに、亜鉛めっきされた複合組織鋼板を450〜600℃の温度範囲で合金化処理する、[11]に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、540MPa以上の引張強度を有し、同時に均一伸びとバーリング加工性および切欠き疲労特性が共に優れ、さらに表面性状にも優れる高強度複合組織鋼板を得ることができ、産業上の貢献が極めて顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】切欠き疲労試験片を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
複合組織鋼板は、軟質なフェライト中にマルテンサイトに代表される硬質な低温変態生成物を分散させた鋼板であり、高強度でありながら高い均一伸びを実現している。しかしながら、変形時には、フェライトとマルテンサイトの強度差に起因した歪、応力集中が発生し、延性破壊を引き起こすボイドが生成、成長しやすいため、バーリング加工性に関わる局部変形能は非常に低いのが一般的である。
【0043】
一方、応力集中下の疲労特性を評価する切欠き疲労特性は、その破断寿命の大部分が疲労亀裂の伝播に占められていることが知られている。軟質なフェライト中にマルテンサイトに代表される硬質な低温変態生成物を分散させた複合組織鋼においては、疲労亀裂が軟質なフェライトを伝播する際に硬質な低温変態生成物が疲労亀裂伝播の障害になり伝播速度が低下し、切欠き疲労特性が向上すると考えられている。
【0044】
しかしながら、複合組織鋼板の低温変態生成物の分率、サイズ等と延性破壊を引き起こすボイド生成、成長挙動および疲労亀裂の伝播速度に関する詳細な調査は行われていない。複合組織鋼板のバーリング加工性に関わる局所変形能を向上させ、且つ疲労亀裂の伝播速度を低下させることを両立可能な最適ミクロ組織は必ずしも明確ではなかった。
【0045】
さらにアルミホイールと同等の意匠性、美麗性をスチールホイールで実現するために鋼板の表面性状に関わるSiスケール模様の回避、更には塗装後耐食性の担保とバーリング加工性および切欠き疲労特性を何れも満足できる鋼板の成分および製造方法は、必ずしも明確ではなかった。
【0046】
そこで、本発明者らは、Siスケール模様を回避するためにSiを含有しない鋼成分を前提に高強度でありながら高い延性を有する複合組織鋼の組織構成と均一伸び、バーリング加工性および切欠き疲労特性の関係について鋭意検討を重ねた。その結果、鋼成分、第二相である低温変態生成物の分散状態、形状、サイズ、ナノ硬度を制御することによって均一伸び、バーリング加工性および切欠き疲労特性を高次元でバランスさせる手法を見出した。
【0047】
具体的には、Siの含有量を0.5%以下に制御することでSiスケール模様を回避した。また、低温変態生成物の面積分率(fsd(%))、サイズ等を適正範囲に収めるために、0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01(ここで、Ex.C(%)=[C]-12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]-48/14×[N] -48/32×[S]}、である。)を満たす範囲でEx.C量を制御した。さらに、板厚の1/4の厚さの位置において、ミクロ組織の主相がTi炭化物により析出強化されたポリゴナルフェライトからなり、第二相が面積分率(fsd(%))で1〜10%の、複数に分散した低温変態生成物からなる複合組織とした。そして、前記低温変態生成物の平均結晶直径を3〜15μmとし、低温変態生成物間の最近接距離の平均値を10〜20μmとした。その結果、均一伸び、バーリング加工性および切欠き疲労特性を高次元でバランスさせることができることを明らかにした。
【0048】
バーリング加工性の違いが端的に表れる試験方法として穴広げ試験が提案されている。この試験で得られる穴広げ値がバーリング加工性に関わる局部変形能を評価する指標として広く用いられている。穴広げ加工における亀裂の発生および進展はボイドの生成、成長、連結を素過程とする延性破壊によって引き起こされる。複合組織鋼板の様に強度差の大きな組織においては、硬質な低温変態生成物を起因として高い歪、応力の集中が発生するためボイドが発生、成しやすく、穴広げ値が低い。
【0049】
しかしながら、組織とボイド生成、成長挙動の関係およびそれらと穴広げ性の関係を詳細に調査したところ、硬質な第二相である低温変態生成物の分散状態によっては、ボイドの生成、成長、連結が遅延し、優れた穴広げ値が得られる場合があることが明らかになった。
【0050】
具体的には島状に分散した低温変態生成物の面積分率fsdが10%以下、平均結晶直径が15μm以下であり、且つ各低温変態生成物間の最近接距離の平均値が20μm以下であると、ボイドの生成、成長、連結が遅延し、優れた穴広げ値が得られる。
【0051】
これは低温変態生成物が小さくなるとともに、単位体積当たりの個数が少なくなるとボイドの発生サイトである低温変態生成物そのものもしくはフェライトと低温変態生成物の境界近傍が減少するとともに、各低温変態生成物同士の間隔が広がることでボイドの連結がしにくくなり、ボイドの成長が抑制されるためである。また、低温変態生成物の硬度がある範囲に限定されることで、変形の初期の局所的なボイドの発生が回避できるとともに、不均一なボイドの成長が抑制される。
【0052】
一方、切欠き疲労特性は硬質な低温変態生成物を分散させ、疲労亀裂の伝播速度を低下させることで向上できる。複合組織鋼の場合、硬質第二相である低温変態生成物の分散状態によって、疲労亀裂の伝播速度が変化することが知られており、分散状態を最適化することでその効果が発揮される。
【0053】
具体的には島状に分散した低温変態生成物の面積分率fsdが1%以上、平均結晶直径が3μm以上であり、且つその低温変態生成物間の最近接距離の平均値が10μm以上であれば、軟質なフェライトを進展する疲労亀裂が、硬質第二相である低温変態生成物により停留もしくは迂回することで疲労亀裂の伝播速度が低下し、切欠き疲労強度が向上する。
【0054】
また、第二相である低温変態生成物の平均結晶直径が3〜15μmであり、最近接距離の平均値が10〜20μmであり、1〜10%の面積分率で島状に分散した状態であれば、複合組織鋼が持つ優れた均一伸びが得られる。
【0055】
以上、本発明の特徴について原理的に説明したが、次に、本発明を規定する要件や好ましい要件について順次説明する。まず、本発明の成分について詳細に説明する。なお、成分について%は質量%を意味する。
【0056】
C:0.01〜0.1%
Cは本発明において重要な元素の一つである。Cは低温変態生成物を生成させ、組織強化により強度に寄与するだけでなく、Tiと析出物を形成し析出強化により強度に寄与する。ただし、0.01%未満では540MPa以上の強度を確保するためのこれらの効果が得られない。0.1%超含有すると硬質第二相である低温変態生成物の面積率が増加して穴広げ性が低下する。従って、Cの含有量は0.01%〜0.1%とする。
【0057】
また、第二相の面積分率をfsd(%)とすると、
0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01
(Ex.C(%)=[C]−12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N]−48/32×[S]})
であれば、硬質第二相である低温変態生成物の分散状態、硬度等が最適化され、ボイドの生成、成長、連結が遅延し、優れた穴広げ値が得られ、且つ、疲労亀裂の先端が停留もしくは迂回することで疲労亀裂の伝播速度が低下し、優れた切欠き疲労強度が得られる。なお、Ex.C(%)を示す式において、[C]はCの含有量(質量%)、[Ti]はTiの含有量(質量%)、[Nb]はNbの含有量(質量%)、[N]はNの含有量(質量%)、[S]はSの含有量(質量%)である。
【0058】
Mn:0.2〜3%
Mnはフェライトの強化に関わる元素であるだけでなく、その含有量の増加に伴いオーステナイト域温度を低温側に拡大させてフェライトとオーステナイトの二相域温度域を拡大する元素でもある。本発明の複合組織鋼を得るためには仕上げ圧延後の冷却中にフェライトとオーステナイトの二相分離を促進する必要がある。その効果を得るためには0.2%以上含有する必要がある。一方、3%を超えて含有すると鋳造時にスラブ割れが顕著に発生するためその含有量は3%以下とする。
【0059】
また、Mnを2.5%超含有すると焼き入れ性が高くなりすぎて通常の方法では目的とするミクロ組織が得られない。目的のミクロ組織を得るためには仕上げ圧延後の冷却中にフェライトを析出させるために長時間の空冷保持が必要となり生産性が低下するのでその含有量は2.5%以下が望ましい。さらに望ましくは2.2%以下である。さらにSによる熱間割れの発生を抑制するためにMn以外の元素が十分に添加されない場合には、Mn含有量([Mn])とS含有量([S])が質量%で[Mn]/[S]≧20となるMn量を含有することが望ましい。
【0060】
Al:0.04〜1.5%
Alは、脱酸元素であると同時にSiと同様にフェライトの生成に関わり、本発明において重要な元素の一つである。その含有量の増加に伴いフェライト域温度を高温側に拡大させてフェライトとオーステナイトの二相域温度域を拡大する元素でもあるので本発明においてはSiの代替として積極的に含有する。その効果を得るためには0.04%以上の含有が必要であるが、1.5%を超えて含有するとフェライト域温度が高温側に拡大しすぎてオーステナイト域で仕上げ圧延を終了するのが困難となり、製品板に加工フェライトが残留し延性が劣化する。従って、その含有量は0.04%以上1.5%以下とする。また、Alは1%超含有するとアルミナ等の非金属介在物を増大させ局部延性を劣化させる恐れがあるので1%以下が望ましい。
【0061】
Ti:0.015〜0.2%
Tiは、本発明において最も重要な元素の一つである。熱間圧延中のオーステナイト域でTiNとして析出した残りのTiは熱間圧延終了後の冷却中にフェライト変態が進行すると同時にTiC等の炭化物として微細析出し、本発明の複合組織鋼のフェライト粒を析出強化することにより強度を向上させる。この効果を得るためには、0.015%以上、かつ、
[Ti] −48/14×[N]−48/32×[S]≧0%
を満たすTiを含有する必要がある。
【0062】
一方、Tiを0.2%超含有してもこれらの効果が飽和する。また、第二相の面積分率をfsd(%)とすると、
0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01
(Ex.C(%)=[C] −12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N] −48/32×[S]})
とすることで、硬質第二相である低温変態生成物の分散状態、硬度等がボイドの生成、成長、連結が遅延し、優れた穴広げ値が得られる。また、疲労亀裂の先端が低温変態生成物で停留、もしくは、低温変態生成物を迂回することで疲労亀裂の伝播速度が低下し、優れた切欠き疲労強度が得られる。さらに、Tiを0.15%超含有すると鋳造時にタンディッシュノズルが詰まりやすくなる恐れがあるため、0.15%以下が望ましい。
【0063】
本発明の鋼板に用いる鋼は、以上の元素を必須成分とするが、さらに必要に応じて、Si、Nb、Cu、Ni、Mo、V、Cr、W、Mg、Ca、REM、Bを含有していてもよい。以下に、これら各元素について述べる。
【0064】
Si:0〜0.5%
本発明において、Siは必須ではない。Siは脱酸元素であると同時にフェライトの生成に関わり、その含有量の増加に伴いフェライト域温度を高温側に拡大させてフェライトとオーステナイトの二相域温度域を拡大する元素である。本発明の複合組織鋼を得るためには本来はSiを含有することが望ましい。しかしながら、Siはタイガーストライプ状のSiスケール模様を鋼板表面に顕著に発生させ、著しく表面性状を劣化させる。また、精整ラインでのスケール除去工程(酸洗等)の生産性を極端に低下させる場合がある。
【0065】
Siを0.07%超含有すると、Siスケール模様が鋼板表面に散見され始める。0.5%超では、著しく表面性状が劣化し、酸洗工程の生産性が極端に悪化する。また、如何なるスケール除去方法を実施しても、化成処理性が劣化し、塗装後耐食性が低下する。従って、Siの含有量は0.5%以下とする。
【0066】
一方、Siはウロコ、紡錘スケールといったスケール系欠陥の発生を抑制する効果がある元素であり、0.02%以上含有した場合にその効果が得られる。しかしながら、0.1%を超えて含有してもその効果が飽和するだけでなく、化成処理性が劣化し、塗装後耐食性が低下する。従って、Siを含有する場合、Siの含有量は0.02%以上、0.5%以下とし、0.1%以下が望ましい。さらにSiスケール模様を皆無とするためには、Siの含有量は0.07%以下が望ましい。但し、ウロコ、紡錘スケールといったスケール系欠陥はニーズによって品位が異なり、Siは0.02%未満でも良い。Siを含有しない鋼成分も本発明の範囲内である。
【0067】
Nb、Cu、Ni、Mo、V、Cr、Wの一種または二種以上
本発明において、Nb、Cu、Ni、Mo、V、Cr、Wは必須ではない。Nb、Cu、Ni、Mo、V、Cr、Wは、析出強化もしくは固溶強化により鋼板の強度を向上させる効果がある元素である。そのため、Nb、Cu、Ni、Mo、V、Cr、Wの一種または二種以上を必要に応じて含有させる。Nb含有量が0.005%未満、Cu含有量が0.02%未満、Ni含有量が0.01%未満、Mo含有量が0.01%未満、V含有量が0.01%未満、Cr含有量が0.01%未満、W含有量が0.01%未満では上記効果を十分に得ることができない。また、Nb含有量を0.06%超、Cu含有量を1.2%超、Ni含有量を0.6%超、Mo含有量を1%超、V含有量を0.2%超、Cr含有量を2%超、W含有量を0.5%超それぞれ添加しても上記効果は飽和して経済性が低下する。
【0068】
従って、これらを必要に応じて含有させる場合、Nb含有量は0.005%以上、0.06%以下、Cu含有量は0.02%以上、1.2%以下、Ni含有量は0.01%以上、0.6%以下、Mo含有量は0.01%以上、1%以下、V含有量は0.01%以上、0.2%以下、Cr含有量は0.01%以上、2%以下、W含有量は0.01%以上、0.5%以下が望ましい。
【0069】
Mg、Ca、REMの一種または二種以上
本発明において、Mg、Ca、REMは必須ではない。Mg、CaおよびREM(希土類元素)は、破壊の起点となり、加工性を劣化させる原因となる非金属介在物の形態を制御し、加工性を向上させる元素である。そのため、Mg、Ca、REMの一種または二種以上を必要に応じて含有させる。Ca、REM及びMgは、0.0005%未満含有しても上記効果を発揮しない。また、Mgの含有量を0.01%超、Caの含有量を0.01%超、REMの含有量を0.1%超としても上記効果が飽和して経済性が低下する。
【0070】
従って、これらを必要に応じて含有させる場合、Mg含有量は0.0005%以上、0.01%以下、Ca含有量は0.0005%以上、0.01%以下、REM含有量は、0.0005以上、0.1%以下が望ましい。なお本発明において、REMとはLa及びランタノイド系列の元素を指すものであり、
ミッシュメタルにて添加されることが多く、LaやCe等の系列の元素を複合で含有する。金属LaやCeを含有してもよい。
【0071】
B:0.0002〜0.002%
本発明において、Bは必須ではない。Bは、焼き入れ性を高め硬質相である低温変態生成相の組織分率を増加させる効果があるので必要に応じて含有する。ただし、0.0002%未満ではその効果が得られず、0.002%を超えて含有してもその効果が飽和する。このため、Bの含有量は、0.0002%以上、0.002%以下が望ましい。一方、Bは、連続鋳造後の冷却工程でスラブ割れが懸念される元素であり、この観点からはその含有量は0.0015%以下が望ましい。すなわち、望ましくは0.001%以上、0.0015%以下である。
【0072】
本発明の熱延鋼板の鋼成分は、上記した元素以外の残部はFeおよび不純物である。不純物としては、鉱石やスクラップ等の原材料に含まれるもの、製造工程において含まれるもの、が例示される。本発明の作用効果を害さない範囲で、各不純物元素を適宜含有することは許容される。
【0073】
P:0.01%以下
Pは、不純物元素であり、0.01%を超えると結晶粒界への偏析が顕著になり、粒界脆化を助長し、局部延性が劣化する。また溶接部の脆化も顕著になるため、上限を0.01%以下とする。Pの下限値は特に定めないが、0.0001%未満とすることは、経済的に不利である。
【0074】
S:0.005%以下
Sは、不純物元素であり、溶接性、鋳造時及び熱延時の製造性に悪影響を及ぼすことから、上限を0.005%以下とする。また、Sを過剰に含有すると、粗大なMnSを形成し、穴広げ性を低下させることから、穴広げ性向上のためには、含有量を低減することが好ましい。Sの下限値は特に定めないが、0.0001%未満とすることは、経済的に不利であることからこの値を下限値とすることが好ましい。
【0075】
N:0.01%以下
Nは、鋼の精錬時に不可避的に混入する不純物元素であり、また、Ti、Nb等と化合して窒化物を形成する元素である。Nの含有量が0.01%超の場合、この窒化物は、比較的高温で析出するため粗大化しやすく、粗大化した結晶粒がバーリング割れの起点となる恐れがある。また、この窒化物は、後述するようにNb、Tiを有効活用するためには少ない方が好ましい。従ってNの含有量は、その上限を0.01%とする。
【0076】
なお、時効劣化が問題となる部材に対して本発明を適用する場合、N含有量が0.006%超であると時効劣化が激しくなるので、0.006%以下が望ましい。さらに、製造後二週間以上室温で放置した後、加工に供することを前提とする部材に対して本発明を適用する場合、N含有量は、時効劣化対策の観点から0.005%以下が望ましい。また、夏季の高温環境下での放置、又は赤道を越えるような地域への船舶等による輸出を伴う環境下における使用を考慮すると、N含有量は、0.004%未満が望ましい。
【0077】
その他の不純物として、Zr、Sn、Co、Znを合計で1%以下含有しても構わない。しかしながらSnは、熱間圧延時に疵が発生する恐れがあるので0.05%以下が望ましい。
【0078】
続いて、本発明の複合組織鋼板のミクロ組織について詳細に説明する。本発明の複合組織鋼板のミクロ組織は以下のように限定される。
【0079】
板厚の1/4の厚さの位置において、ミクロ組織の主相がTi炭化物により析出強化されたポリゴナルフェライトからなり、第二相が面積分率(fsd(%))で1〜10%の、複数に分散した低温変態生成物からなる複合組織である。前記低温変態生成物の平均結晶直径が3〜15μmである。各低温変態生成物間の最近接距離の平均値が10〜20μmである。なお、ミクロ組織は、平均的な性質が現れる板厚の1/4の厚さの位置で特定した。
【0080】
フェライトは均一伸びを確保する上で最も重要な組織である。硬質な第二相である低温変態生成物の面積分率が10%以下であっても540MPaグレード以上の強度を得るためには、フェライト組織が析出強化により強化されている必要がある。また、伸びを確保するためには、ミクロ組織の主相は、転位密度の高いベイニティックフェライトではなく、転位密度が低く延性に富むポリゴナルフェライトであることが重要である。従って、本発明鋼の主相はTi炭化物により析出強化されたポリゴナルフェライトとする。なお、ここでいうTi炭化物は、フェライト組織の析出強化に資するTiとCを主成分とする化合物であり、TiとCの他に例えばN、V、Mo等を含有しても構わない。
【0081】
成分が一定であれば、TiCを含む析出物の平均粒径と密度(個/cm3)はほぼ逆相関の関係がある。析出強化による強度の向上代が、引張強度で100MPa以上となるためには、TiCを含む析出物の平均粒径が3nm以下であり且つその密度が1×1016個/cm3以上であることが必要である。
【0082】
本発明において硬質第二相である低温変態生成物とは、主にマルテンサイトもしくはラス間に粗大な炭化物を含まないベイナイト(αB)である。ただし、面積率の合計で3%未満の残留オーステナイト(γr)及びMartensite−Austenite constituent(MA)を含むことは許容する。また、本発明で言うマルテンサイトとは、炭素の拡散速度が十分に遅い100℃以下の温度域で巻き取った場合はフレッシュマルテンサイト(M)である。巻取り温度が100℃超Ms点(仕上げ圧延後の冷却中にフェライト変態が進行し、その残部のオーステナイトのMs点)以下の場合は、焼戻しマルテンサイト(tM)である。後者の場合の低温変態生成物は焼戻しマルテンサイトとベイナイトの混合した組織である。
【0083】
この混合組織(後者の場合の低温変態生成物)の焼戻しマルテンサイトとベイナイトの比率は、巻き取り温度や巻き取り温度と上記Ms点温度との相対的関係により左右される。なお、Ms点が350℃未満の場合には低温変態生成物の大部分は、Ms点超350℃以下で変態したラス間に粗大な炭化物を含まないベイナイトとである。ただし、ここで言う焼戻しマルテンサイトとベイナ
イトの区別は金属組織学的に難しく、本発明ではこれらを焼戻しマルテンサイト(tM)と総称することとした。
【0084】
低温変態生成物は、フェライト粒のコーナー、エッジおよび粒界面に島状に分散していることが必要である。これは、バーリング加工性に関わると考えられている延性破壊がボイドの発生とそれに続く成長、連結するというメカニズムにおいて、ボイドの発生サイトと考えられている低温変態生成物そのものの形状が島状であることにより応力集中が緩和され、低温変態生成物の破壊に起因するボイドの発生が抑制されるためである。
【0085】
なお、島状とは低温変態生成物が列状に連結的に配列していない状態を示すだけでなく、その個々の形状が応力集中箇所の少ない球に近い形状であることが望ましい。低温変態生成物の平均結晶直径が3〜15μmであり、各低温変態生成物間の最近接距離の平均値が10〜20μmであれば、個々の低温変態生成物が適切な大きさで適切に分散した「島状」となる。
【0086】
さらに、硬質第二相である低温変態生成物は均一伸びを確保する上で重要な組織である。島状に分散した低温変態生成物の面積分率(fsd(%))が1%未満になると例えば540MPaグレードで15%以上の均一伸びを確保することが難しくなる。また、疲労き裂の伝播の遅延効果が失われる。一方、10%超になるとボイドの発生サイトと考えられている低温変態生成物同士の間隔が短くなり、ボイドの連結がしやすく延性破壊に至りやすくなりバーリング加工性が劣化する。このためミクロ組織における低温変態生成物の面積分率(fsd(%))は1〜10%と限定する。
【0087】
低温変態生成物の平均結晶粒径は円相当径で3〜15μmと限定される必要がある。これは、低温変態生成物の平均結晶粒径が3μm未満では、疲労き裂の伝播の障害となり伝播速度を遅延させる効果が失われ、15μm超であると必然的に形状が複雑化し応力集中部が発生し、粗大な低温変態生成物の破壊が早期に起こり、ボイドの発生に起因する局所的な延性破壊がバーリング加工性に悪影響を及ぼす。望ましくは12μm以下である。
【0088】
さらに、低温変態生成物間の最近接距離の平均値が10〜20μmと限定される必要がある。低温変態生成物間の最近接距離の平均値が10μm未満であると低温変態生成物同士の間隔が短く、ボイドの連結がしやすく延性破壊に至りやすくなりバーリング加工性が劣化する。一方、低温変態生成物間の最近接距離の平均値が20μm超であると疲労き裂が軟質なポリゴナルフェライトを選択的に伝播するようになり疲労き裂の伝播の遅延効果が失われる。
【0089】
低温変態生成物の平均ナノ硬度は7〜18GPaであることが望ましい。これは、平均ナノ硬度が7GPa未満であると、軟質なフェライト相との高度差が小さくなり、複合組織鋼の特徴である優れた均一伸びが発現しなくなる。一方、18GPa超であると逆に軟質なフェライト相との高度差が大きくなり、変形の初期でのボイドの局所的な発生のため延性破壊が進展しやすくなり、局部変形能が低下してしまう。また、ナノ硬度範囲が標準偏差で1.2GPa以下となることで、変形の初期にボイドが局部的に発生することが抑制される。
【0090】
続いて、本発明の鋼板の製造方法について説明する。
本発明において、熱間圧延工程に先行して行う、上述した成分を有す鋼片(スラブ)の製造方法は特に限定するものではない。すなわち、上述した成分を有する鋼片(スラブ)の製造方法としては、高炉、転炉や電炉等による溶製工程に引き続き、各種の2次精練工程で目的の成分含有量になるように成分調整を行い、次いで通常の連続鋳造、又はインゴット法による鋳造の他、薄スラブ鋳造などの方法で鋳造工程を行うようにしてもよい。なお、原料にはスクラップを使用しても構わない。また、連続鋳造によってスラブを得た場合には、高温鋳片のまま熱間圧延に直送してもよいし、室温まで冷却後に加熱炉にて再加熱した後に熱間圧延してもよい。
【0091】
上述した製造方法により得られたスラブは、熱間圧延前にスラブ加熱工程において、式(1)に基づいて算出される最小スラブ再加熱温度(=SRTmin)以上で加熱炉内にて加熱する。
SRTmin=10780/{5.13−log([Ti]×[C])}−273 ・・・ 式(1)
この温度未満であるとTiの炭窒化物が十分に母材中に溶解しない。この場合は、仕上げ圧延終了後の冷却中もしくは巻取り後にTiが炭化物として微細析出することにより析出強化を利用した強度を向上させる効果が得られない。従って、スラブ加熱工程における加熱温度は式(1)にて算出される最小スラブ再加熱温度(=SRTmin)以上とする。なお、1100℃未満の加熱温度では、スケジュール上操業効率を著しく損なうため、加熱温度は1100℃以上が望ましい。
【0092】
また、スラブ加熱工程における加熱時間については特に定めないが、Tiの炭窒化物の溶解を十分に進行させるためには、上述した加熱温度に達してから30分以上保持することが望ましい。また、スラブの厚み方向に十分に均等に加熱する場合は60分以上保持することが望ましい。一方、スケールオフによる歩留まり低下の観点からは240分以下が望ましい。ただし、鋳造後の鋳片を高温のまま直送して圧延する場合はこの限りではない。
【0093】
スラブ加熱工程の後は、加熱炉より抽出したスラブに対して特に待つことなく熱間圧延の粗圧延工程を開始し粗バーを得る。この粗圧延工程では1050℃以上1150℃以下の温度域で少なくとも圧延率20%以上の粗圧延を少なくとも1パス行うことが必要である。
【0094】
粗圧延終了温度が1050℃未満では、粗圧延での熱間変形抵抗が増して、粗圧延の操業に障害をきたす恐れがある。1150℃超では、粗圧延中に生成する二次スケールが成長しすぎて、後に実施するデスケーリングや仕上げ圧延でスケールを除去することが困難となる恐れがある。
【0095】
また、当該温度域での粗圧延において圧延率が20%以上の圧延を行わないと、オーステナイトの加工、それに続く再結晶を活用した結晶粒の細粒化および凝固組織に起因する異方性の解消が期待で出来なお。それにより、仕上げ圧延後の変態挙動に影響が及び、複合組織鋼板のミクロ組織における第二相である低温変態生成物の形態が島状からフィルム状に変化し、バーリング加工性が劣化する。さらに、鋳造後の鋳片を高温のまま直送して圧延した場合は、鋳造組織が残留し、第二相である低温変態生成物の形態のフィルム状への変化が顕著になる恐れがある。
【0096】
粗圧延での圧延パス数は、2パス以上の複数パスであるのが好ましい。複数パスであるとオーステナイトでの加工と再結晶が繰り返され、仕上げ圧延前の平均オーステナイト粒が100μm以下に細粒化され、その結果として硬質第二相である低温変態生成物の平均粒径が安定的に12μm以下となる。
【0097】
また、粗圧延での合計圧下率は60%以上が好ましい。合計圧下率が60%未満であると上記オーステナイト粒の細粒化効果が十分に得られない。但し、粗圧延での合計圧下率が90%超であってもその効果が飽和するだけなく、パス数が増加し生産性を阻害したり、温度低下を招く恐れがある。また、同様な理由でパス数は11以下が望ましい。
【0098】
粗圧延の終了後に仕上げ圧延が行われる。粗圧延終了後から仕上げ圧延の開始までの時間は150秒以内である。
【0099】
この時間が150秒超であると、粗バーにおいてオーステナイト中のTiが粗大なTiCの炭化物として析出してしまう。その結果、後の冷却中のオーステナイト/フェライト変態時もしくは巻取り後のフェライト変態完了時にフェライト中で微細に析出し、析出強化により強度に寄与するTiCの量が減少し、強度が低下してしまう。そればかりか、オーステナイトの粒成長が進行し、仕上げ圧延前の平均オーステナイト粒が100μm超と粗大化し、硬質第二相である低温変態生成物の平均粒径が15μm超となる場合がある。
【0100】
一方、粗圧延終了後から仕上げ圧延の開始までの時間の下限値は特に限定する必要はない。しかし、30秒未満であると特別な冷却装置を用いない限り仕上げ圧延開始温度が1080℃未満とならず仕上げ圧延前及びパス間で鋼板地鉄の表面スケールの間にウロコ、紡錘スケール欠陥の起点となるブリスターが発生するため、これらスケール欠陥が生成し易くなる恐れがある。従って、30秒以上が望ましい。
【0101】
仕上げ圧延は、その圧延開始温度を1000℃以上1080℃未満とする。
【0102】
この温度が1000℃未満であると、仕上げ圧延中に加工誘起析出によりオーステナイト中でTiが粗大なTiCの炭化物として析出する。その結果、後の冷却中のオーステナイト/フェライト変態時もしくは巻取り後のフェライト変態完了時にフェライト中で微細に析出し、析出強化により強度に寄与するTiCの量が減少し、強度が低下してしまう。
【0103】
一方、1080℃超であると、仕上げ圧延前及びパス間で鋼板地鉄の表面とスケールの間にウロコ、紡錘スケール欠陥の起点となるブリスターが発生するため、これらスケール欠陥が生成し易くなる恐れがある。
【0104】
仕上げ圧延終了温度はAr3変態点温度+50℃以上1000℃以下とする。
【0105】
Ar3変態点温度は、例えば以下の計算式により鋼成分との関係で簡易的に示される。すなわち、下記の式(5)のように記述される。
Ar3=910−310×[C]+25×{[Si]+2×[Al]}−80×[Mneq] ・・・ 式(5)
【0106】
ここで、Bが添加されていない場合、[Mneq]は下記の式(6)によって示される。
[Mneq]=[Mn]+[Cr]+[Cu]+[Mo]+[Ni]/2+10([Nb]−0.02) ・・・ 式(6)
【0107】
また、Bが添加されている場合、[Mneq]は下記の式(7)によって示される。
[Mneq]=[Mn]+[Cr]+[Cu]+[Mo]+[Ni]/2+10([Nb]−0.02)+1 ・・・ 式(7)
【0108】
なお、[C]はCの含有量(質量%)、[Si]はSiの含有量(質量%)、[Al]はAlの含有量(質量%)、[Cr]はCrの含有量(質量%)、[Cu]はCuの含有量(質量%)、[Mo]はMoの含有量(質量%)、[Ni]はNiの含有量(質量%)、[Nb]はNbの含有量(質量%)である。
【0109】
仕上げ圧延終了温度がAr3変態点温度+50℃未満であると、複合組織鋼板のミクロ組織における低温変態生成物が列状に連結的に配列した分散状態となる。そればかりか、各低温変態生成物の間の最近接距離の平均値が10μm未満となり、ボイドの連結がしやすく延性破壊に至りやすくなりバーリング加工性が劣化する。
【0110】
一方、1000℃超であると圧延以降の冷却パターンを如何様に制御してもフェライト変態が不十分となり、製品板のミクロ組織における低温変態生成物の面積分率が10%超となりやはりバーリング加工性が劣化する。
【0111】
また、仕上げ圧延はタンデム圧延機による複数パスの圧延で合計の圧下率は75%以上95%以下である。
【0112】
仕上げ圧延は複数パスの圧延が可能なタンデム圧延機で実施されれば、その圧延において圧下を複数パスで行うことで、圧延による未再結晶と次のパスまでのパス間時間での再結晶を複数回繰り返すこととなる。その結果、オーステナイト粒が細粒化し、複合組織鋼板のミクロ組織における低温変態生成物の平均粒径を15μm以下とすることが出来る。ただし、合計の圧下率が75%未満であると、オーステナイト粒を十分に細粒化できず、複合組織鋼板のミクロ組織における低温変態生成物の平均粒径を15μm以下とすることができない。
【0113】
一方、95%超では、その効果が飽和するだけでなく圧延機の過度な荷重負荷が掛かり、操業上望ましくない。
【0114】
さらに各パスの圧下率は10%以上であることが望ましい。特に仕上げ圧延機後段の3パスでは各パスの圧下率が10%未満で、且つ3パスの平均圧延率が10%未満であると、3パスの間および仕上げ圧延終了後に粒成長が著しく進行し、複合組織鋼板のミクロ組織における低温変態生成物の平均粒径が安定的に12μm以下とすることが出来なくなる恐れがある。
【0115】
なお、本発明において圧延速度については特に限定しない。しかし、仕上げ最終スタンドでの圧延速度が400mpm未満であると各仕上げ圧延パス間の時間が長くなる。その結果、オーステナイト粒が成長粗大化し、製品版のミクロ組織における低温変態生成物の平均粒径が安定的に15μm以下とすることが出来なくなる恐れがある。そのため圧延速度は400mpm以上が望ましい。さらに650mpmであると低温変態生成物の平均粒径を安定的に12μm以下とすることができるので650mpmがさらに望ましい。また、上限については特に限定しなくとも本発明の効果を奏するが、設備制約上1800mpm以下が現実的である。
【0116】
仕上げ圧延終了後は製品のミクロ組織を作り込むためにランナウトテーブルの制御により最適化された冷却を行う。
まず、仕上げ圧延終了後に冷却を開始するまでの時間は3秒以内である。この冷却開始までの時間が3秒超であると変態前のオーステナイトで粗大かつ非整合なTiの炭窒化物の析出が進行し、後の冷却中にフェライトにおいて析出させる微細且つ整合なTiの炭化物の析出量が減少し強度が低下する恐れがある。また、オーステナイト粒が成長粗大化し、製品版のミクロ組織における低温変態生成物の平均粒径を15μm以下とすることが出来なくなる恐れがある。
【0117】
この冷却開始までの時間の下限値については本発明においては特に限定する必要はないが、0.4秒未満であると圧延による層状の加工組織が残留したまま冷却され、製品板にも列状に連結的に配列した低温変態生成物が得られ、バーリング加工性が劣化する恐れがある。
【0118】
圧延終了後に最初に実施する第1段階の冷却工程の速度は、15℃/sec以上の平均冷却速度が必要である。この冷却速度が15℃/sec未満であると冷却中にパーライトが生成し、目的とするミクロ組織が得られない恐れがある。なお、第1段階の冷却工程における冷却速度の上限は、特に限定しなくとも本発明の効果を得ることができる。しかし、150℃/sec超の冷却速度では冷却終了温度を制御することが極めて難しく、ミクロ組織の作り込みが困難となるので150℃/sec以下とすることが望ましい。
【0119】
第1段階の冷却工程の冷却停止温度はAr3変態点温度未満である。冷却停止温度がAr3変態点以上であると、次の第2段階の冷却工程での冷却中においてオーステナイト/フェライト変態時にフェライト中で微細に析出し、強度に寄与するTiCの析出の制御が行えない。一方、第1段階の冷却工程の冷却停止温度の下限は特に限定しない。しかし、フェライトの析出強化を発現させるために行われる次の第2段階の冷却工程の冷却の停止温度は、フェライトの析出強化を発現させるための条件として600℃超である。よって、第1段階の冷却工程の冷却停止温度が600℃以下では析出強化が得られない。また、Ar1点以下となるとフェライトが得られず目的とするミクロ組織が得られない。
【0120】
次に行われる第2段階の冷却工程は、平均冷却速度が10℃/sec以下であり、本発明において空冷(放冷)を念頭に置いている。この温度域での冷却ではオーステナイトからフェライトへの変態を促進するとともに変態と同時にフェライト中に微細なTi炭化物を析出させ目的の鋼板の強度を得る。この冷却速度が10℃/sec超であるとオーステナイトからフェライトへの変態時のこれら二相の界面の移動速度が速くなりすぎて、相間界面におけるTi炭化物の析出が追い付かず十分な析出強化が得られない。
【0121】
また、10℃/sec超であるとオーステナイトからフェライトへの変態が遅延し、目的とするミクロ組織が得られない。一方、本発明において第2段階の冷却工程での冷却速度の下限は特に限定する必要はない。しかし、加熱装置等による外部からの入熱を行わない限り、本発明で想定する上限板厚であるハーフインチ程度の板厚であっても空冷での冷却速度は3℃/sec程度である。
【0122】
また、第2段階の冷却工程の冷却の時間は1秒以上100秒未満である。この工程は、フェライトとオーステナイトの二相分離を促進し目的とする第二相分率を得るためだけでなく、変態が完了したフェライト中でTi微細炭化物により析出強化を促進するために非常に重要な工程である。この時間が1秒未満ではフェライト変態が進行せず目的とするミクロ組織が得られないばかりか、変態後のフェライトでのTi炭化物の析出が進行しないため目的の鋼板の強度やバーリング加工性が得られない。3秒未満ではフェライト変態と炭化物の析出が十分に進行しないため低温変態生成物とフェライトの強度が十分得られなくなる恐れがあるため3秒以上が望ましい。
【0123】
一方、100秒以上であっても上記効果が飽和するばかりでなく、著しく生産性が低下する。15秒以上では、複合組織鋼板の低温変態生成物の平均結晶粒径が粗大化するばかりでなく、ミクロ組織にパーライトが混入する懸念があるため望ましくは15秒未満である。
【0124】
第2段階の冷却工程の冷却停止温度は600℃超である。この温度が600℃以下であると変態後のフェライトでのTi炭化物の析出が進行しないため強度が低下する。
【0125】
一方、第2段階の冷却工程の冷却停止温度の上限は特に定めないが700℃超であるとフェライトとオーステナイトの二相分離が十分ではなく目的とする低温変態生成物の分率が得られないばかりか、フェライトでのTi炭化物の析出が過時効となり強度が低下する。
【0126】
次に行われる第3段階の冷却工程は、15℃/sec以上の冷却速度で冷却する。この冷却速度が15℃/sec未満であるとミクロ組織にパーライトが混入し目的するミクロ組織が得られない恐れがある。なお、第3段階の冷却工程の終了温度は巻き取り温度のことである。第3段階の冷却工程における冷却速度の上限は、特に限定しなくとも本発明の効果を得ることができるが、熱ひずみによる板そりを考慮すると、300℃/sec以下とすることが望ましい。
【0127】
第3段階の冷却工程で350℃以下の温度域まで冷却し、巻き取る。この温度が350℃超であると目的とする低温変態生成物が得られない。具体的には、低温変態生成物を構成するベイナイトのラス間に粗大な炭化物が生成し、バーリング加工時にき裂発生の起点となりバーリング加工性が劣化する。
【0128】
一方、巻取温度の下限値は特に限定する必要はないが、コイルが長時間水濡れの状態にあると錆による外観不良が懸念されるため、50℃以上が望ましい。また、この温度が100℃以下であると低温変態生成物の大部分がフレッシュマルテンサイトとなり、均一伸びが向上し、張り出し成形等のn値が支配的な成形に有利となる。
【0129】
仕上げ圧延後の冷却工程で、さらに効率よくTi炭化物により析出強化を発現させるためには、巻き取りまでの冷却パターンそのものを制御する必要がある。具体的には、下記の式(2)で表されるTiのフェライト中の総累積拡散距離Ltotalを0.15以上0.5以下の範囲で制御する。
【0130】
すなわち、Tiのフェライト中の総累積拡散距離Ltotalを、下記の式(2)で表されるTiのフェライト中の拡散距離Lを、冷却終了温度から巻き取るまでの微小時間Δt/secで積算して、下記の式(3)で表したとき、0.15≦Ltotal≦0.5とする。
L=√D(T+273)t ・・・ 式(2)
Ltotal=Σ√(D(T+273)Δt) ・・・ 式(3)
【0131】
ここで、D(T+273)はT℃における体拡散係数、tは拡散時間であり、D(T)はTiの拡散係数D0、活性化エネルギーQ及び気体定数Rを用いて、下記の式(4)で表される。
D(T)=D0×Exp(−Q/R(T+273)) ・・・ 式(4)
【0132】
このLtotal値が0.15μm未満であると冷却中にTi炭化物の析出が進行せず、亜時効となり効率的に析出強化能を得ることが出来ない。一方、0.5μm超であると冷却中にTi炭化物の析出が進行しすぎて、過時効となりやはり効率的に析出強化能を得ることが出来ない。
【0133】
なお、鋼板形状の矯正や可動転位導入により延性の向上を図ることを目的として、全工程終了後においては、圧下率0.1%以上2%以下のスキンパス圧延を施すことが望ましい。また、全工程終了後は、得られた熱延鋼板の表面に付着しているスケールの除去を目的として、必要に応じて得られた熱延鋼板に対して酸洗してもよい。更に、酸洗した後には、得られた熱延鋼板に対してインライン又はオフラインで圧下率10%以下のスキンパス又は圧下率40%程度までの冷間圧延を施しても構わない。
【0134】
さらに、スキンパス圧延の前もしくは後、前および後に表面のスケールを除去する。スケールを除去する工程は特に定めない。例えば塩酸や硫酸を使用した一般的な酸洗やあるいはサンダー等による表面研削、あるいはプラズマやガスバーナー等を利用した表面溶削などラインに応じた装置でかまわない。
【0135】
更に、本発明を適用した熱延鋼板は、鋳造後、熱間圧延後、冷却後の何れかの場合において、溶融めっきラインにて熱処理を施してもよく、更にこれらの熱延鋼板に対して別途表面処理を施すようにしてもよい。溶融めっきラインにてめっきを施すことにより、熱延鋼板の耐食性が向上する。
【0136】
なお、酸洗後の熱延鋼板に亜鉛めっきを施す場合は、得られた鋼板を亜鉛めっき浴中に浸積し、必要に応じて合金化処理してもよい。合金化処理を施すことにより、熱延鋼板は、耐食性の向上に加えて、スポット溶接等の各種溶接に対する溶接抵抗性が向上する。
【実施例】
【0137】
表1に示す化学成分を有するA〜Z、a〜dの鋼を、転炉精錬、二次精錬工程にて溶製し、連続鋳造して製造した鋳片(スラブ)を再加熱し、粗圧延に続く仕上げ圧延で2.3〜3.4mmの板厚に圧下し、ランナウトテーブルで冷却後に巻き取り、熱延鋼板を作製した。より詳細には、表2、3に示す製造条件に従って、熱延鋼板を作製した。なお、表1中の化学組成は、全て質量%である。
【0138】
表1中のTi*は、[Ti]−48/14[N]−48/32[S]、表1、2中のEx.Cは、[C]−12/48×([Ti]+48/93[Nb]−48/14[N]−48/32[S])、表1中のMn/Sは、[Mn]/[S]を表す。また、表1における成分の残部は、Fe及び不純物であり、表1、2における下線は、本発明の範囲外を示す。鋼K、Rは、Siの意図的な含有はしていない。表1中の「−」は、意図的な含有はしていないことを示す。
【0139】
表2で、「鋼」は、表1に示した各記号に対応した成分を有する鋼を示す。「溶体化温度」は、式(1)にて算出される最低スラブ再加熱温度(=SRTmin)を示す。「Ar3変態点温度」は、式(5)、(6)または(7)にて算出される温度を示す。「Ex.C」は、[C]−12/48×([Ti]+48/93[Nb]−48/14[N]−48/32[S]で算出される値を示す。
【0140】
表2、3の製造条件において、加熱工程の「加熱温度」はスラブ再加熱における最高到達温度、「保持時間」は所定の加熱温度での保持時間を示す。粗圧延で、「総パス数」は粗圧延の圧延パス数の合計値、「合計圧下率」は粗圧延開始から終了までの粗圧延での圧下率、「1050〜1150℃且つ20%以上のパス数」は1050〜1150℃の温度域で20%以上の圧延率の圧延を行ったパス数、「仕上げ圧延開始までの時間」は粗圧延終了から仕上げ圧延開始までの時間、「仕上げ圧延直前の平均オーステナイト粒径」は仕上げ圧延の最初のスタンドに粗バーが噛み込む直前のオーステナイト粒の平均粒径を示す。このオーステナイト粒径を確認するためには、仕上げ圧延に入る前の粗バーをクロップシャー等にて切断し得られるクロップ片を可能な限り急冷して室温程度まで冷却し、その圧延方向と平行な断面をエッチングしてオーステナイト粒界を浮き立たせて光学顕微鏡にて測定することで得られる。この際、板厚1/4位置にて50倍以上の倍率にて20視野以上を、画像解析やポイントカウント法等にて.測定する。
【0141】
仕上げ圧延で、「圧延開始温度」は仕上げ圧延の最初のスタンドに噛み込む直前の温度、「合計圧下率」は仕上げ圧延開始から終了までの仕上げ圧延での圧下率、「後段3パスの平均圧下率」は通常複数パスの連続圧延を行う仕上げ圧延において最終パスを含む最終パスから3番目の各パスまでの圧下率の平均値、「仕上げ圧延出側速度」は仕上げ圧延最終圧下パスを終了後の当該圧延スタンドでの出側通板速度、「終了温度」は仕上げ圧延最終パスの圧延スタンド出側直後の温度を示す。なお、圧下率については、板厚から算出する実績値であっても圧延スタンドのセットアップ値であっても構わない。また温度については放射温度計もしくは接触温度計にて当該工程位置で測定することが望ましいが、温度モデル等による推定値でも構わない。
【0142】
ランナウトテーブルにて実施する冷却工程は、析出制御および組織制御の観点から、第1〜3段階の冷却工程に区分される。まず、「第1段階の冷却工程」において、「冷却開始までの時間」は仕上げ圧延最終パスの圧延スタンドを出てからランナウトテーブルによる冷却が開始されるまでの時間、「冷却速度」とは水冷による平均冷却速度、「冷却停止温度」は第1段階の冷却工程での水冷を停止した温度を示す。「第2段階の冷却工程」において、「冷却速度」は主に水を掛けない空冷による平均冷却速度、「保持時間」は水を掛けない空冷保持の時間、「冷却停止温度」は水を掛けない空冷保持を終了した温度を示す。「第3段階の冷却工程」において、「冷却速度」は空冷保持後に再び水冷を開始し巻き取るまでの平均冷却速度、「巻取り温度」は水冷を停止し巻き取り機により鋼板をコイル状に巻き取る直前の温度を示す。なお「総累積拡散距離」は、Tiのフェライト中の総累積拡散距離Ltotalを示し、式(2)で表されるTiのフェライト中の拡散距離Lを、冷却終了温度から巻き取るまでの微小時間Δt/secで積算して、式(3)で求められる。
【0143】
表2、3に記載の製造方法で得られた鋼板のミクロ組織を表4に示し、機械的性質、表面特性および耐食性を表5に示す。
【0144】
まず得られた鋼板の板幅の1/4W位置もしくは3/4W位置から試料を採取し、光学顕微鏡を用いて板厚1/4厚におけるミクロ組織の観察を行った。試料の調整として、圧延方向の板厚断面を観察面として研磨し、ナイタール試薬、レペラー試薬にてエッチングした。ナイタール試薬およびレペラー試薬にてエッチングした倍率500倍の光学顕微鏡写真から「ミクロ組織」を分類した。
【0145】
またレペラー試薬にてエッチングした倍率500倍の光学顕微鏡写真から画像解析により第二相である低温変態生成物の分布状態である「第二相の特徴」を確認した。ここで低温変態生成物の分散状態は、フェライト粒のコーナー、エッジおよび粒界面に島状に分散しているものを「島状」、島状でも圧延方向に平衡に連なって分布しているものを「列状」、主にフェライト粒の粒界面を囲むように分散しているものを「フィルム状」と分類した。
【0146】
さらに画像解析により第二相である低温変態生成物の面積分率である「第二相分率」と低温変態生成物の平均粒径である「第二相平均粒径」を求めた。「Ex.C(%)/fsd(%)」は表2の「Ex.C(%)」を「第二相分率」で除した値である。なお、低温変態生成物の平均結晶粒径は円相当直径を個数平均したものである。また、任意に複数の低温変態生成物を選択し、それらの最近接の距離をそれぞれ求め、20点の平均値を、「第二相の最近接距離の平均値」とした。
【0147】
ナノ硬度HnはHysitron社製 TriboScope/TriboIndenter を用いて測定した。測定条件は1mNの荷重にて20点以上の低温変態生成物の硬度を測定し、その算術平均と標準偏差を算出した。
【0148】
TiC析出物密度である「フェライトTiC密度」の測定は、三次元アトムプローブ測定法により行った。まず、測定対象の試料から、切断および電解研磨法により、必要に応じて電解研磨法とあわせて集束イオンビーム加工法を活用し、針状の試料を作製する。三次元アトムプローブ測定では、積算されたデータを再構築して実空間での実際の原子の分布像として求めることができる。TiC析出物の立体分布像の体積とTiC析出物の数からTiC析出物の個数密度が求まる。なお、測定はフェライト粒を特定し、各試料につき5個以上のフェライト粒で実施した。また、上記TiC析出物のサイズは、観察されたT
iC析出物の構成原子数とTiCの格子定数から、析出物を球状と仮定し算出した直径をサイズとする。任意に30個以上のTiC析出物の直径を測定した。その平均値は2〜30nm程度であった。
【0149】
機械的性質のうち引張強度特性(YP、TS、El)は、板幅の1/4W位置もしくは3/4W位置から圧延方向に垂直な方向に採取したJIS Z 2201‐1998の5号試験片を用いて、JIS Z 2241‐1998に準拠して評価した。バーリング加工性の指標として穴広げ試験を採用した。穴広げ試験は引張試験片採取位置と同様の位置から試験片を採取し、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の試験方法に準拠して評価した。
【0150】
次に、切り欠き疲労強度を調査するために引張試験片採取位置と同様の位置から圧延方向が長辺になるように図1に示す形状の疲労試験片を採取し疲労試験に供した。ここで図1記載の疲労試験片は切り欠き疲労強度を得るために作製された切り欠き試験片である。この切り欠き試験片の側面コーナー部(図1の点線で過去生まれた部分)は1Rで面取りされ、長手方向に#600で研磨されている。
【0151】
自動車部品の実使用での疲労特性評価に近付けるために切欠きは穴広げ試験片同様に円筒パンチで打抜いたものとした。なお、打抜きクリアランスは12.5%とした。ただし、疲労試験片には最表層より0.05mm程度の深さまで三山仕上の研削を施した。疲労試験はシェンク型疲労試験機を用い、試験方法はJIS Z 2273‐1978およびJIS Z 2275‐1978に準じた。表3中の切欠き疲労特性の定義は「σwk/TS」は、この試験で得られた200万回疲労強度を引張強度で除した値である。
【0152】
表面特性は、酸洗前の「表面欠陥」と「粗度」で評価した。この評点が基準以下であると酸洗後でもスケール欠陥起因の模様や表面の凹凸で、表面品位が劣位と需要家より評価される場合がある。ここで「表面欠陥」はSiスケール、ウロコ、紡錘等のスケール欠陥の有無を目視にて確認した結果を示し、スケール欠陥がある場合を「×」と示し、スケール欠陥が無い場合を「○」と示した。なお、これら欠陥が部分的もしくは基準以下であるものを「軽微」として「△」で示した。「粗度」はRzで評価し、JIS B 0601−2001記載の測定方法により得られた値を示している。なお、Rzが20μm以下ならば、表面品位は問題ないレベルである。
【0153】
耐食性は「化成処理性」と「塗装後耐食性」で評価した。まず、製造した鋼板を酸洗した後に2.5g/m2のリン酸亜鉛皮膜を付着させる化成処理を施した。この段階で「化成処理性」として、スケの有無とP比の測定を実施した。
【0154】
リン酸化成処理はリン酸とZnイオンを主成分とした薬液を使用する処理であり、鋼板から溶出するFeイオンとの間で、フォスフォフィライト:FeZn2(PO4)3・4H2Oと呼ばれる結晶を生成する化学反応である。リン酸化成処理の技術的なポイントは、(1)Feイオンを溶出させて反応を促進することと、(2)フォスフォフィライト結晶を鋼板表面に緻密に形成することにある。特に(1)については、鋼板表面にSiスケールの形成に起因する酸化物が残存していると、Feの溶出が妨げられて、スケと呼ばれる化成皮膜が付着しない部分が現れたり、Feが溶出しないことで、ホパイト:Zn3(
PO4)3・4H2Oとよばれる鉄表面には本来形成しないような異常な化成処理皮膜が形成して、塗装後の性能を劣化させることがある。したがって、リン酸によって鋼板表面のFeが溶出してFeイオンが十分供給されるよう表面を正常にすることが重要になってくる。
【0155】
このスケについては走査型電子顕微鏡による観察にて確認でき、1000倍の倍率で20視野程度観察し、全面均一付着していてスケが確認できない場合をスケ無しとして「○」とした。また、スケが確認できた視野が5%以下ならば軽微として「△」とした。5%超はスケ有りとして「×」と評価した。
【0156】
一方、P比はX線回折装置を用いて測定でき、フォスフォフィライト(100)面のX線回折強度Pと、ホパイト(020)面のX線回折強度Hとの比をとり、P比=P/(P+H)で評価される。すなわち、P比は化成処理を行って得られた皮膜中のホパイトとフォスフォフィライトの比率を表すものでP比が高い程フォスフォフィライトが多く含まれフォスフォフィライト結晶が鋼板表面に緻密に形成されていることを意味している。一般的にはP比≧0.80であることが、耐食性能や塗装性能を満たすために求められており、また、融雪塩散布地域などの厳しい腐食環境下においては、P比≧0.85であること
が求められる。
【0157】
次に耐食性であるが、化成処理後に25μm厚の電着塗装を行い170℃×20分の塗装焼き付け処理を行った後、先端の尖ったナイフで電着塗膜を地鉄に達するまで長さ130mmの切りこみを入れ、JIS Z 2371に示される塩水噴霧条件にて、35℃の温度での5%塩水噴霧を700時間継続実施した後に切り込み部の上に幅24mmのテープ(ニチバン 405A−24 JIS Z 1522)を切り込み部に平行に130mm長さ貼り、これを剥離させた場合の最大塗膜剥離幅を測定した。この最大塗膜剥離幅が4mm超であると耐食性が劣位であるとした。
【0158】
次に結果について説明する。なお、鋼番32、36、46は酸洗処理後に合金化溶融亜鉛めっきラインを通板し、Zn浴温度430〜460℃でめっき浴浸漬を実施し、さらにそのうち鋼32、46は合金化温度500〜600℃で合金化処理を施している。
【0159】
本発明に沿うものは、鋼番1、4、9、10、11、20、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39である。
これらの鋼板は、所定の量の鋼成分を含有し板厚の1/4の厚さ位置において、ミクロ組織の主相がTi炭化物により析出強化されたポリゴナルフェライトで第二相が面積分率(fsd(%))で1〜10%の島状に分散した低温変態生成物からなる複合組織であり、且つ、0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01、(Ex.C(%)=[C]−12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N] −48/32×[S]})を満たし、低温変態生成物の平均結晶直径が3〜15μmであり、低温変態生成物間の最近接距離の平均値が10〜20μmであることを特徴とした540MPa級以上のグレードの鋼板で穴広げ値λ≧70%、切欠き疲労特性σWK/TS≧0.35且つ表面欠陥が軽微以下の高強度鋼板が得られている。
鋼番32、39は、Siの意図的な含有をしていない鋼K、Rであり、これらのSi含有量は、0もしくは不純物レベルである。しかしながら、これら鋼番32、39も、本発明の機械的特性を満足している。
【0160】
上記以外の鋼は、以下の理由によって本発明の範囲外である。
すなわち、鋼番2は、加熱温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、引張強度が低い。
鋼番3は、粗圧延の合計圧下率が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値が低い。
鋼番5は、1050〜1150℃且つ20%以上パス数が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値が低い。
【0161】
鋼番6は、仕上げ圧延開始までの時間が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、引張強度と穴広げ値が低い。
鋼番7は、仕上げ圧延開始温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、引張強度が低い。
鋼番8は、仕上げ圧延の合計圧下率が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値が低い。
鋼番12は、仕上げ圧延終了温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値が低い。
鋼番13は、仕上げ圧延終了温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値が低い。
【0162】
鋼番14は冷却までの時間が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、引張強度と穴広げ値が低い。
鋼番15は冷却(a)の冷却速度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値と切欠き疲労特性が低い。
鋼番16は冷却(a)の冷却停止温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず引張強度と切欠き疲労特性が低い。
鋼番17は冷却(a)の冷却停止温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず引張強度と切欠き疲労特性が低い。
【0163】
鋼番18は冷却(b)の冷却速度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず引張強度と穴広げ値が低い。
鋼番19は冷却(b)の保持時間が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず引張強度と切欠き疲労特性が低い。
鋼番21は冷却(c)の冷却速度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず穴広げ値と切欠き疲労特性が低い。
鋼番22は巻取り温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値が低い。
【0164】
鋼番40は、Cの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値が低い。
鋼番41は、Cの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、引張強度が低い。
鋼番42は、Siの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、表面特性が悪い。
鋼番43は、Mnの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、スラブ割れが発生し圧延が出来なかった。
鋼番44は、Mnの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、引張強度が低い。
【0165】
鋼番45は、Pの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、脆化により、伸びと切欠き疲労特性が低い。
鋼番46は、Sの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、MnSが亀裂の起点となり穴広げ値が低い。
鋼番47は、Nの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、粗大なTiNが亀裂の起点となり穴広げ値が低い。
【0166】
鋼番48は、Tiの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、切欠き疲労特性が低い。
鋼番49は、Tiの含有量の値が本発明鋼の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、引張強度が低い。
鋼番50は、Ti*の値が本発明鋼の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値と切欠き疲労特性が低い。
鋼番51は、Alの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値が低い。
【0167】
【表1】
【0168】
【表2】
【0169】
【表3】
【0170】
【表4】
【0171】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の複合組織鋼板は、高強度でありながら、加工性、穴拡げ性、曲げ性が求められる内板部材、構造部材、足廻り部材等の自動車部材をはじめとして、造船、建築、橋梁、海洋構造物、圧力容器、ラインパイプ、機械部品などあらゆる用途に用いることができる。
【図1】

【手続補正書】
【提出日】20140620
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C:0.01〜0.1%、
Mn:0.2〜3%、
Al:0.04〜1.5%、
Ti:0.015〜0.2%
Si:0〜0.5%、
Nb:0〜0.06%、
Cu:0〜1.2%、
Ni:0〜0.6%、
Mo:0〜1%、
V:0〜0.2%、
Cr:0〜2%、
W:0〜0.5%
Mg:0〜0.01%、
Ca:0〜0.01%、
REM:0〜0.1%、
B:0〜0.002%、
P:0.01%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下
であり、
[Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]≧0%を満たし、
Ex.C(%)=[C]−12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N]−48/32×[S]}としたとき、0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01を満たし、
残部がFe及び不純物であり、
板厚の1/4の厚さの位置において、ミクロ組織の主相がTiCを含む析出物の密度が1×1016個/cm3以上のポリゴナルフェライトからなり、第二相が面積分率(fsd(%))で1〜10%の、複数に分散した低温変態生成物からなる複合組織であり、
前記低温変態生成物の平均結晶直径が3〜15μmであり、各低温変態生成物間の最近接距離の平均値が10〜20μmである、複合組織鋼板。
【請求項2】
質量%で、
Si:0.02%〜0.5%
を含有する、請求項1に記載の複合組織鋼板。
【請求項3】
質量%で、
Nb:0.005〜0.06%、
Cu:0.02〜1.2%、
Ni:0.01〜0.6%、
Mo:0.01〜1%、
V:0.01〜0.2%、
Cr:0.01〜2%、
W:0.01〜0.5%
の一種または二種以上を含有する、請求項1または2のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【請求項4】
質量%で、
Mg:0.0005〜0.01%、
Ca:0.0005〜0.01%、
REM:0.0005〜0.1%
の一種または二種以上を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【請求項5】
質量%で、
B:0.0002〜0.002%
を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【請求項6】
表面に亜鉛めっきが施されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合組織鋼板。
【請求項7】
質量%で、
C:0.01〜0.1%、
Mn:0.2〜3%、
Al:0.04〜1.5%、
Ti:0.015〜0.2%以下、
Si:0〜0.5%、
Nb:0〜0.06%、
Cu:0〜1.2%、
Ni:0〜0.6%、
Mo:0〜1%、
V:0〜0.2%、
Cr:0〜2%、
W:0〜0.5%
Mg:0〜0.01%、
Ca:0〜0.01%、
REM:0〜0.1%、
B:0〜0.002%、
P:0.01%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下
であり、
[Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]≧0%を満たし、
Ex.C(%)=[C]−12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N]−48/32×[S]}としたとき、0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01を満たし、
残部がFe及び不純物であるスラブを、下記の式(1)で定義される温度SRTmin(℃)以上に加熱した後、熱間圧延において、1050℃以上1150℃以下の温度域で圧下率20%以上の粗圧延を少なくとも1パス行い、その後150秒以内に1000℃以上1080℃未満の温度域で仕上げ圧延を開始し、Ar3変態点温度+50℃以上、1000℃以下の温度域で複数パスの合計圧下率が75%以上95%以下である仕上げ圧延を終了し、
3秒以内に平均冷却速度15℃/sec以上でAr3変態点温度未満、600℃超まで冷却し、次に、平均冷却速度10℃/sec以下で1秒以上、100秒未満の時間で700℃以下、600℃超、かつ前記平均冷却速度15℃/sec以上の冷却における冷却停止温度未満の温度域まで冷却し、次に、15℃/sec以上の冷却速度で350℃以下の温度域まで冷却し、巻き取る、板厚の1/4の厚さの位置において、ミクロ組織の主相がTiCを含む析出物の密度が1×1016個/cm3以上のポリゴナルフェライトからなり、第二相が面積分率(fsd(%))で1〜10%の、複数に分散した低温変態生成物からなる複合組織を有する複合組織鋼板の製造方法。
SRTmin=10780/{5.13−log([Ti]×[C])}−273 ・・・ 式(1)
【請求項8】
前記熱間圧延において、1050℃以上1150℃以下の温度域で圧下率20%以上の粗圧延を複数パス行い、粗圧延の合計圧下率が60%以上90%以下である、請求項7に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【請求項9】
100℃以下の温度域まで冷却し、巻き取る、請求項7または8のいずれか1項に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記平均冷却速度10℃/sec以下で1秒以上、100秒未満の時間で600℃超の温度域まで冷却する際に、フェライト中におけるTiの総累積拡散距離Ltotalを、下記の式(2)で表されるTiのフェライト中の拡散距離Lを冷却終了温度から巻き取るまでの微小時間Δt/secで積算して、下記の式(3)で表したとき、0.15≦Ltotal≦0.5である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の複合組織鋼板の製造方法。
L=√D(T+273)t ・・・ 式(2)
Ltotal=Σ√(D(T+273)Δt) ・・・ 式(3)
ここで、D(T+273)はT℃における体拡散係数である。
tは拡散時間である。
D(T)はTiの拡散係数D0、活性化エネルギーQ及び気体定数Rを用いて、下記の式(4)で表される。
D(T)=D0×Exp(−Q/R・(T+273)) ・・・ (4)
【請求項11】
前記複合組織鋼板を亜鉛めっき浴中に浸積させて表面を亜鉛めっきする、請求項7〜10のいずれか1項に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【請求項12】
さらに、亜鉛めっきされた複合組織鋼板を合金化処理する、請求項11に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
[1] 質量%で、C:0.01〜0.1%、Mn:0.2〜3%、Al:0.04〜1.5%、Ti:0.015〜0.2%Si:0〜0.5%、Nb:0〜0.06%、Cu:0〜1.2%、Ni:0〜0.6%、Mo:0〜1%、V:0〜0.2%、Cr:0〜2%、W:0〜0.5%Mg:0〜0.01%、Ca:0〜0.01%、REM:0〜0.1%、B:0〜0.002%、P:0.01%以下、S:0.005%以下、N:0.01%以下 であり、 [Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]≧0%を満たし、 Ex.C(%)=[C]−12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N]−48/32×[S]}としたとき、0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01を満たし、 残部がFe及び不純物であり、 板厚の1/4の厚さの位置において、ミクロ組織の主相がTiCを含む析出物の密度が1×1016個/cm3以上のポリゴナルフェライトからなり、第二相が面積分率(fsd(%))で1〜10%の、複数に分散した低温変態生成物からなる複合組織であり、 前記低温変態生成物の平均結晶直径が3〜15μmであり、各低温変態生成物間の最近接距離の平均値が10〜20μmである、複合組織鋼板。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
[7] 質量%で、C:0.01〜0.1%、Mn:0.2〜3%、Al:0.04〜1.5%、Ti:0.015〜0.2%以下、Si:0〜0.5%、Nb:0〜0.06%、Cu:0〜1.2%、Ni:0〜0.6%、Mo:0〜1%、V:0〜0.2%、Cr:0〜2%、W:0〜0.5%Mg:0〜0.01%、Ca:0〜0.01%、REM:0〜0.1%、B:0〜0.002%、P:0.01%以下、S:0.005%以下、N:0.01%以下であり、[Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]≧0%を満たし、Ex.C(%)=[C]−12/48×{[Ti]+48/93×[Nb]−48/14×[N]−48/32×[S]}としたとき、0.001≦Ex.C(%)/fsd(%)≦0.01を満たし、残部がFe及び不純物であるスラブを、下記の式(1)で定義される温度SRTmin(℃)以上に加熱した後、熱間圧延において、1050℃以上1150℃以下の温度域で圧下率20%以上の粗圧延を少なくとも1パス行い、その後150秒以内に1000℃以上1080℃未満の温度域で仕上げ圧延を開始し、Ar3変態点温度+50℃以上、1000℃以下の温度域で複数パスの合計圧下率が75%以上95%以下である仕上げ圧延を終了し、 3秒以内に平均冷却速度15℃/sec以上でAr3変態点温度未満、600℃超まで冷却し、次に、平均冷却速度10℃/sec以下で1秒以上、100秒未満の時間で700℃以下、600℃超、かつ前記平均冷却速度15℃/sec以上の冷却における冷却停止温度未満の温度域まで冷却し、次に、15℃/sec以上の冷却速度で350℃以下の温度域まで冷却し、巻き取る、板厚の1/4の厚さの位置において、ミクロ組織の主相がTiCを含む析出物の密度が1×1016個/cm3以上のポリゴナルフェライトからなり、第二相が面積分率(fsd(%))で1〜10%の、複数に分散した低温変態生成物からなる複合組織を有する複合組織鋼板の製造方法。 SRTmin=10780/{5.13−log([Ti]×[C])}−273 ・・・ 式(1)
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
[11] 前記複合組織鋼板を亜鉛めっき浴中に浸積させて表面を亜鉛めっきする、[7]〜[10]のいずれか1項に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
[12] さらに、亜鉛めっきされた複合組織鋼板を合金化処理する、[11]に記載の複合組織鋼板の製造方法。
【国際調査報告】