(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014051086
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160825
(54)【発明の名称】切削インサートおよび切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/22 20060101AFI20160729BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20160729BHJP
   B23B 27/04 20060101ALI20160729BHJP
【FI】
   !B23B27/22
   !B23B27/14 C
   !B23B27/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】2014538645
(21)【国際出願番号】JP2013076357
(22)【国際出願日】20130927
(11)【特許番号】5869687
(45)【特許公報発行日】20160224
(31)【優先権主張番号】2012214486
(32)【優先日】20120927
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
【住所又は居所】京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地
(72)【発明者】
【氏名】津田 祐一
【住所又は居所】京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地 京セラ株式会社内
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046AA00
3C046CC06
3C046JJ02
(57)【要約】
【課題】良好な切屑処理が可能な切削インサートを提供する。
【解決手段】切削インサート(1)は、角柱状のチップ本体(2)と、チップ本体(2)の長手方向の端部上面に設けられたすくい面(3)と、すくい面(3)とチップ本体(2)の端面との稜線に設けられた正面切刃(4)と、すくい面(3)とチップ本体(2)の側面との稜線に設けられており、正面切刃(4)の両端部につながる横切刃(5)と、すくい面(3)上に設けられたブレーカ凸部(6)と、を備え、ブレーカ凸部(6)が、正面切刃(4)側に向かうにつれて横切刃(5)側に延びる2つのブレーカ島部(10)を有し、ブレーカ島部(10)が、正面切刃(4)側から第1立ち上がり部(13)と、第1立ち上がり部(13)の頂部から漸次低くなる降下部(14)と、降下部(14)から第1立ち上がり部(13)の頂部の高さよりも高い高さまで漸次高くなる第2立ち上がり部(15)とを有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角柱状のチップ本体と、該チップ本体の長手方向の端部上面に設けられたすくい面と、該すくい面と前記チップ本体の端面との稜線に設けられた正面切刃と、前記すくい面と前記チップ本体の側面との稜線に設けられており、前記正面切刃とそれぞれつながる横切刃と、前記すくい面上に設けられたブレーカ凸部と、を備え、
前記ブレーカ凸部は、前記正面切刃側に向かうにつれて前記横切刃側に延びる2つのブレーカ島部を有し、該ブレーカ島部は、前記正面切刃側から第1立ち上がり部と、該第1立ち上がり部の頂部から漸次低くなる降下部と、該降下部から前記第1立ち上がり部の頂部よりも高い高さまで漸次高くなる第2立ち上がり部とを有する切削インサート。
【請求項2】
前記2つのブレーカ島部の間には、前記正面切刃側から、ブレーカ溝部と中央立ち上がり部とが設けられており、前記中央立ち上がり部の両側端が、前記2つのブレーカ島部とそれぞれ連結されている請求項1記載の切削インサート。
【請求項3】
前記2つのブレーカ島部の前記第2立ち上がり面の頂部のほうが、前記中央立ち上がり部の頂部よりも高い請求項2記載の切削インサート。
【請求項4】
側面視で、前記第1立ち上がり部の立ち上がり角が、前記第2立ち上がり部の立ち上がり角よりも大きい請求項1乃至3のいずれか記載の切削インサート。
【請求項5】
前記第1立ち上がり部、前記降下部および前記第2立ち上がり部は、上側に突出した凸曲面である請求項1乃至3のいずれか記載の切削インサート。
【請求項6】
平面視で、前記第1立ち上がり部の凸曲面の頂部をつないだ線を第1稜線とし、前記第2立ち上がり部の凸曲面の頂部をつないだ線を第2稜線としたとき、前記第1稜線および前記第2稜線は、前記チップ本体の長手方向に対して、いずれも前記端面側に向かうにつれて前記すくい面の側端に近づくように設けられている請求項5記載の切削インサート。
【請求項7】
前記第2稜線の前記チップ本体の長手方向に対するずれ角が、前記第1稜線の前記チップ本体の長手方向に対するずれ角よりも大きい請求項6記載の切削インサート。
【請求項8】
平面視で、前記第1立ち上がり部の最大幅よりも前記第2立ち上がり部の最大幅が大きい請求項1乃至7のいずれか記載の切削インサート。
【請求項9】
前記第1立ち上がり部よりも前記正面切刃側に予備立ち上がり部が設けられ、該予備立ち上がり部の立ち上がり角は前記第1立ち上がり部の立ち上がり角よりも小さい請求項1乃至8のいずれか記載の切削インサート。
【請求項10】
前記2つのブレーカ島部は、前記正面切刃の中央を通る前記チップ本体の長手方向に平行な中央線に対して線対称である請求項1乃至9のいずれか記載の切削インサート。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか記載の切削インサートと、インサート取付空間を有するホルダとを有し、前記切削インサートの前記正面切刃が前記ホルダの外部に位置するように前記切削インサートが前記ホルダのインサート取付空間に装着されている切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被削材を加工するための切刃を備えた切削インサート、およびこれを装着した切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
溝入れ加工や突切り加工を行うための切削工具では、発生する切屑が被削材の加工面に当たって傷つけないことが求められる。そのために、発生する切屑は切削インサートの長手方向に対して左右にずれて流れることなく、切削インサートの長手方向に沿って進んだ後、ぜんまい状にカールされて細かく分断されることが望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、概略角柱状のチップ本体のすくい面に、先端部が正面切刃の両端部に向けて分岐した上面視でY字状のブレーカ部が開示されている。また、特許文献1によれば、この両端部に向けて分岐した先端部では、正面切刃側から背面側に向かって低くなる形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−288613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先端部が正面切刃の両端部に向けて分岐した上面視でY字状の特許文献1のブレーカ形状では、切屑が切削インサートの長手方向に沿って進むものの、切削条件によっては、長手方向に沿って進んだ切屑がカールせずにそのまま延びてしまい、長くなった切屑がからみついて切刃に噛み込んでしまったり、切削インサートの後方で左右にずれていって被削材に衝突したりすることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の切削インサートは、角柱状のチップ本体と、該チップ本体の長手方向の端部上面に設けられたすくい面と、該すくい面と前記チップ本体の端面との稜線に設けられた正面切刃と、前記すくい面と前記チップ本体の側面との稜線に設けられており、前記正面切刃の両端部につながる横切刃と、前記すくい面上に設けられたブレーカ凸部と、を備え、
前記ブレーカ凸部は、前記正面切刃側に向かうにつれて前記横切刃側に延びる2つのブレーカ島部を有し、該ブレーカ島部は、前記正面切刃側から第1立ち上がり部と、該第1立ち上がり部の頂部から漸次低くなる降下部と、該降下部から前記第1立ち上がり部の頂部よりも高い高さまで漸次高くなる第2立ち上がり部とをそれぞれ有している。
【0007】
また、本発明の切削工具は、前記切削インサートと、インサート取付空間を有するホルダとを有し、前記正面切刃が前記ホルダの外部に位置するように前記切削インサートが前記ホルダに装着されたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の切削インサートによれば、ブレーカ凸部の2つのブレーカ島部によって、切屑をチップ本体の長手方向に沿って導くことができる。また、ブレーカ島部の第1立ち上がり部と、降下部と、第2立ち上がり部によって、送りが小さい切削条件では第1立ち上がり部のみで切屑をカールさせることができる。一方、送りが大きい切削条件でも第1立ち上がり部に一旦切屑を当てることができ、カールされずに乗り上げた切屑は第2立ち上がり部に当ててカールさせることができる。その結果、低送りから高送りにわたる広い切削条件において、良好な切屑処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好適な実施態様における切削インサートについての概略斜視図である。
【図2A】図1の切削インサートの要部についての平面視図である。
【図2B】図1の切削インサートの要部についての側面視図である。
【図2C】図1の切削インサートの要部についての正面視図である。
【図3】図1、2の切削インサートをホルダに装着した切削工具の実施態様についての概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1−3は本発明の好適な実施形態を示すものであり、これらの図に基づいて説明する。本実施形態による切削インサートおよび切削工具は、特に溝入れ加工や突切り加工に適したものである。
【0011】
図1によれば、切削インサート1は、角柱状のチップ本体2と、チップ本体2の長手方向Lの端部上面に設けられたすくい面3と、すくい面3とチップ本体2の正面(端面)との稜線に設けられた正面切刃4と、すくい面3とチップ本体の側面との稜線に設けられており、正面切刃4の両端部につながる一対の横切刃5(5a、5b)と、すくい面3上に設けられた凸状のブレーカ凸部6とを備えている。
【0012】
また、すくい面3が設けられたチップ本体2の端部の正面Xには前逃げ面8が設けられている。さらに、すくい面3から一対の横切刃5(5a、5b)に続いて、チップ本体2の側面に一対の横逃げ面9(図1では9aのみが見えている。)が設けられている。
【0013】
図1の切削インサート1は、チップ本体2の高さ方向の中央軸線Oを基準として点対称な形状となっており、正面切刃4および横切刃5等は、正面(一方の端面)X側と背面(他方の端面)Y側の2か所に存在する。なお、本発明では、上記構成に限定されるものではなく、片方の端部のみに正面切刃4および横切刃5等が設けられたものであってもよい。
【0014】
また、切削インサート1を後述するホルダ32に装着する際の拘束力を高めるために、チップ本体2の上面のすくい面3よりも中央側につなぎ部28が設けられ、つなぎ部28よりも中央側、つまり図1のすくい面3、3およびつなぎ部28、28の間には、正面視でV字状の凹溝25がチップ本体2の長手方向Lに沿って設けられている。
【0015】
さらに、図1によれば、チップ本体2の凹溝25の反対側、つまりチップ本体2の底面にも正面視でV字状の凹溝26がチップ本体2の長手方向Lの全長に亘って設けられている。
【0016】
なお、図1の切削インサート1においては、ブレーカ凸部6等のすくい面3上の形状を省略して記載している。また、図1において、長手方向Lの一方の端部を正面X側、長手方向Lの他方の端部を背面Y側、正面X側の横切刃5a、横逃げ面9aが設けられた側方を側方a側、正面X側の横切刃5bが設けられた側方を側方b側と称す。
【0017】
図2A、図2B、図2Cはインサート1の正面X側を示すもので、図2Aによれば、ブレーカ凸部6は、チップ本体2の中央側である背面Y側から正面切刃4側である正面X側に向かってすくい面3の側端に近づく2つのブレーカ島部10(10a、10b)を有する。つまり、2つのブレーカ島部10(10a、10b)は、正面切刃4側に向かうにつれて横切刃5側に延びるように設けられており、平面視で、正面X側である正面切刃4を下にして日本語のカタカナの「ハ」の字状となっている。換言すると、2つのブレーカ島部10(10a、10b)は、どちらも、正面X側からチップ本体2の中央側(背面Y側)に向かって、すくい面3の側端から遠ざかっており、2つのブレーカ島部10(10a、10b)間の間隔は、正面X側からチップ本体2の中央側(背面Y側)に向かって狭くなっている。
【0018】
また、2つのブレーカ島部10(10a、10b)には、図2Bに示すように、正面X側から第1立ち上がり部13(13a、13b)と、第1立ち上がり部13の頂部の高さhから漸次低くなる降下部14(14a、14b)と、降下部14から第1立ち上がり部13の頂部の高さhよりも高い高さhまで漸次高くなる第2立ち上がり部15(15a、15b)とがそれぞれ設けられている。なお、図2A、図2B、図2Cでは、第2立ち上がり部15の背面Y側には、後述する中央立ち上がり部18に接続するための移行面16(16a、16b)が存在する。移行面16は、第2立ち上がり部15を切屑の衝突に耐えうる強度を維持する役割も持つ。
【0019】
ここで、高さhおよび高さhを正面切刃4からの高さと定義すると、高さhに対する高さhと高さhとの差△hの比(△h/h)は、0.4〜1.8である。また、漸次高くなるとは、連続的または段階的に高くなることを意味し、高さが変化しない部分が存在する場合も含む。
【0020】
上記構成によれば、正面X側から侵入する切屑は、2つのブレーカ島部10(10a、10b)によって、チップ本体2の長手方向Lと垂直な方向である幅方向が凹曲面状となるように曲げられる。2つのブレーカ島部10(10a、10b)は背面Y側から正面X側に向かってすくい面3の側端に近づくように設けられているので、正面X側から入ってくる切屑は背面Y側に向かって進行すると、2つのブレーカ島部10(10a、10b)間に挟まれた状態となり、切屑は2つのブレーカ島部10(10a、10b)間の外側には飛び出しにくく、すくい面3をチップ本体2の長手方向Lに沿って進む。
【0021】
また、ブレーカ島部10(10a、10b)は、第1立ち上がり部13と、降下部14と、第2立ち上がり部15とを有する。この構成によって、送りが小さい切削条件のときには第1立ち上がり部13のみで切屑をカールさせることができる。一方、送りが大きい切削条件のときでも切屑は第1立ち上がり部13に当たって減速され、その後、減速された切屑が第2立ち上がり部15に当たるので、カールされずに乗り上げた切屑も第2立ち上がり部15に当てて安定してカールさせることができる。その結果、低送りから高送りにわたる広い切削条件において、良好な切屑処理ができる。
【0022】
つまり、第1立ち上がり部13がなくて第2立ち上がり部15のみが存在する場合には、第2立ち上がり部15に当たる切屑の勢いがあり過ぎて、切屑が第2立ち上がり部15を乗り越えてしまう場合があり、切屑処理が不安定となる。また、降下部14がなくて第1立ち上がり部13から第2立ち上がり部15へと漸次高さが高くなる場合には、送りが大きいとき、切屑が第1立ち上がり部13に当たることなく第1立ち上がり部13を飛び越えてしまい、第2立ち上がり部15に直接切屑が当たることになり、切屑の進行速度が速くて第2立ち上がり部15を乗り越えてしまう場合がある。さらに、第2立ち上がり部15の頂部の高さが第1立ち上がり部13の頂部の高さ以下であると、送りが大きいとき、第1立ち上がり部13を乗り越えた切屑が第2立ち上がり部15に当たらずに第2立ち上がり部15を通過してしまう場合がある。
【0023】
ここで、図2A,図2B,図2Cによれば、2つのブレーカ島部10(10a、10b)の間には、正面X側から、ブレーカ溝部17と、中央立ち上がり部18とが設けられており、中央立ち上がり部18の両側端が、2つのブレーカ島部10(10a、10b)とそれぞれ連結されてブレーカ凸部6を構成している。ブレーカ溝部17によって、正面X側から侵入する切屑は、幅方向がより凹曲面状に曲げられる。切屑の中央の底面部分が中央立ち上がり部18に接触し、切屑は湾曲してぜんまい状にカールさせる役割を有する。
【0024】
また、図2Cの正面視によれば、2つのブレーカ島部10(10a、10b)の第2立ち上がり部15(15a、15b)の頂部のほうが、中央立ち上がり部18よりも高い高さで設けられ、中央立ち上がり部18は、第2立ち上がり部15(15a、15b)および移行面16(16a、16b)の端部に位置する連結部20(20a、20b)と連結されている。この構成によって、幅方向が凹曲面状となるように曲げられた切屑がブレーカ凸部6に接触する接触点が増す可能性が高くなり、切屑の進行速度を減速させることができるとともに、切屑を長手方向Lに沿って進行させることができ、切屑をより安定してカールさせることができる。
【0025】
さらに、図2Bの側面視によれば、第1立ち上がり部13の立ち上がり角θ1Lが第2立ち上がり部15の立ち上がり角θ2Lよりも大きい。これによって、送りが大きく切屑の発生量が多い場合でも、第1立ち上がり部13を乗り越えた切屑が第2立ち上がり部15で詰まることなく、切屑を後方に流すことができる。角度θ1Lの望ましい範囲は、10°〜30°であり、より好ましくは、15°〜24°である。角度θ2Lの望ましい範囲は、5°〜25°であり、より好ましくは13°〜18°である。
【0026】
ここで、図2Cの正面視によれば、第1立ち上がり部13および第2立ち上がり部15は、上側に突出した凸曲面である。また、第1立ち上がり部13の背後に存在する降下部14も、図示されていないが上側に突出した凸曲面である。この形状の第1立ち上がり部13、降下部14および第2立ち上がり部15は、切屑をブレーカ島部10の表面にしっかり接触させた状態で通過させるので、切屑を確実に曲げることができる。
【0027】
また、図2Aの平面視によれば、第1立ち上がり部13の凸曲面の頂部をつないだ線を第1稜線Rとし、第2立ち上がり部15の凸曲面の頂部をつないだ線を第2稜線Rとしたとき、第1稜線Rおよび第2稜線Rは、チップ本体2の長手方向Lに対して、いずれも正面側に向かうにつれてすくい面3の側端に近づくように、つまり一対の横切刃5のうちの近くに存在する横切刃5に近づくように存在している。この構成によって、切屑は幅方向がより凹曲面状となるように曲げられて、切屑がブレーカ凸部6に触れずに上方を通過することを抑制して、切屑がブレーカ凸部6の表面に接触した状態で通過しやすくなる。その結果、切屑の進行速度を減速することができるとともに、切屑を長手方向Lに沿って進行させることができる。その結果、切屑をより安定してカールさせることができる。 さらに、図2Aの平面視によれば、第2稜線Rのチップ本体2の長手方向Lに対するずれ角θ2Sが、第1稜線Rのチップ本体2の長手方向Lに対するずれ角θ1Sよりも大きい。この構成によって、切屑は幅方向がより凹曲面状となるように曲げられて、切屑がブレーカ凸部6の表面に接触した状態で通過しやすい。その結果、切屑の進行速度を減速させつつ長手方向Lに沿って進行させることができ、切屑をより安定してカールさせることができる。角度θ1Sの望ましい範囲は、1°〜12°であり、より好ましくは、4°〜8°である。角度θ2Sの望ましい範囲は、8°〜30°であり、より好ましくは、12°〜25°である。
【0028】
さらに、図2Aの平面視によれば、第1立ち上がり部13の最大幅wよりも第2立ち上がり部15の最大幅wが大きい。この構成によって、第1立ち上がり部13を乗り越えた切屑が多少左右にずれて流れたとしても、第2立ち上がり部15に切屑を当ててカールさせることができる。ここで、ブレーカ島部10は背面Y側から正面X側に向かってすくい面3の側端に近づく配置からなるので、図2Cの正面視に示されるように、第2立ち上がり部15は第1立ち上がり部13よりもブレーカ溝17側にずれた配置となる。また、第1立ち上がり部13はブレーカ溝17側に傾斜しているので、一旦第1立ち上がり部13に当たった切屑は、第1立ち上がり部13でカールされずに後方に流れても、長手方向Lに沿って延びる。そして、この第1立ち上がり部13を乗り越えたブレーカ溝17側を通った切屑は、ブレーカ溝17側にも存在する第2立ち上がり部15に当たって、第2立ち上がり部15でカールされる。
【0029】
さらに、図2A,図2B,図2Cによれば、第1立ち上がり部13と、第1立ち上がり部13よりも正面X側の正面切刃4との間に、予備立ち上がり部22が設けられている。予備立ち上がり部22の立ち上がり角θ0Lは第1立ち上がり部13の立ち上がり角θ1Lよりも小さい。予備立ち上がり部22は切屑を第1立ち上がり部13にスムーズに導く働きをする。角度θ0Lの望ましい範囲は、5°〜15°であり、より好ましくは、7°〜10°である。なお、角度θ0Lは予備立ち上がり部22のうちの第1立ち上がり部13に接する面の角度を指す。予備立ち上がり部22の先端側は、角度θ0Lよりも大きな角度となっていてもよい。また、予備立ち上がり部22は必ずしも必要ではなく、予備立ち上がり部22が存在しない形状であってもよい。
【0030】
また、図2Aの平面視図によれば、2つのブレーカ島部10(10a、10b)は、正面切刃4の中央を通って長手方向Lに平行な直線である中央線Lに対して線対称である。すなわち、背面Y側のブレーカ凸部も正面X側のブレーカ凸部と同様の構成となっている。この構成であれば、インサート1の正面X側および背面Y側のいずれの切削部を用いた場合でも、切屑をより確実にチップ本体2の上面で処理することができる。また、本発明はこの構成に限定されるものではなく、勝手つきの切削インサートの場合には、中央線Oに対して線対称でない構成となる。
【0031】
また、図1、図2A,図2B,図2Cの切削インサート1は、例えば、図3に示すようなホルダ32に装着されて、切削工具30として使用される。図3に示す本実施形態の溝入れ加工用ホルダ(以下、ホルダと略す。)32に切削インサート1を装着したスローアウェイ式切削工具(以下、切削工具と略す。)30は、特に溝入れ加工や突切り加工に適したものである。
【0032】
切削工具30は、略棒状のシャンク部33と、シャンク部33の一端側に位置してシャンク部33と一体的に形成されたヘッド部34とを備えている。ヘッド部34は、一方の側方a側にインサート取付空間35と、インサート取付空間35を上下から挟む上顎37と下顎38と、インサート取付空間35から後方に連結されたスリット39とを具備する。また、ヘッド部34は、スリット39により分割された上顎連結部41と下顎連結部42とを具備しており、上顎37と上顎連結部41とは連結され、下顎38と下顎連結部42とは連結されている。
【0033】
さらに、上顎連結部41にはねじ43を挿入するための貫通穴45を有しており、下顎連結部42にはねじ43が螺合されるねじ穴(図示せず)を有しており、上顎37の下面には上クランプ面48が、下顎38の上面には下クランプ面49がそれぞれ存在する。そして、ねじ43を上顎連結部41の貫通穴45から差し込んで下顎連結部42のねじ穴に螺合することによって、上顎37の上クランプ面48と下顎38の下クランプ面49とがインサート取付空間35に装着される切削インサート1を締め付ける。なお、切削インサート1はインサート取付空間35の先端側から外側にかけて正面切刃4および横切刃5(5a)が位置するように装着される。
【0034】
なお、図3によれば、上顎37の切削インサート1と当接される上クランプ面48、および下顎38の切削インサート1と当接される下クランプ面49には、先端から後方に向かって平行に凹溝または凸部(図3ではインサート取付空間35側に突出する凸部)を有しており、切削インサート1のこれに当接する位置には凸部または凹溝(図1、3では上クランプ面48および下クランプ面49の凸部に嵌め合わされるV字状の凹溝25および凹溝26)を有している。これによって、切削インサート1の位置ずれを抑制できるとともに切削インサート1の拘束力を高めることができる。また、図3では、被削材と接触することを避ける逃がしをつけるために、下顎38の切削インサート1の側方に位置する領域は切り欠かれて下顎隣接部47とされている。
【0035】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意のものとすることができることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1 切削インサート
2 チップ本体
3 すくい面
4 正面切刃
5(5a、5b) 横切刃
6 ブレーカ凸部
8 前逃げ面
9(9a) 横逃げ面
10(10a、10b) ブレーカ島部
13(13a、13b) 第1立ち上がり部
14(14a、14b) 降下部
15(15a、15b) 第2立ち上がり部
16(16a、16b) 移行面
17 ブレーカ溝部
18 中央立ち上がり部
20(20a、20b) 連結部
22(22a、22b) 予備立ち上がり部
25、26 凹溝
28 つなぎ部
30 切削工具
32 ホルダ
33 シャンク部
34 ヘッド部
35 インサート取付空間
37 上顎
38 下顎
39 スリット
41 上顎連結部
42 下顎連結部
43 ねじ
45 貫通穴
47 下顎隣接部
48 上クランプ面
49 下クランプ面
X 正面
Y 背面
a 一方の側面
b 他方の側面
第1稜線
第2稜線
θ1L 第1立ち上がり部の立ち上がり角
θ2L 第2立ち上がり部の立ち上がり角
θ1S 第1稜線のチップ本体の長手方向に対するずれ角
θ2S 第2稜線のチップ本体の長手方向に対するずれ角
第1立ち上がり部の最大幅
第2立ち上がり部の最大幅
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】

【手続補正書】
【提出日】20151027
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角柱状のチップ本体と、該チップ本体の長手方向の端部上面に設けられたすくい面と、該すくい面と前記チップ本体の端面との稜線に設けられた正面切刃と、前記すくい面と前記チップ本体の側面との稜線に設けられており、前記正面切刃とそれぞれつながる横切刃と、前記すくい面上に設けられたブレーカ凸部と、を備え、
前記ブレーカ凸部は、前記正面切刃側に向かうにつれて前記横切刃側に延びる2つのブレーカ島部を有し、該ブレーカ島部は、前記正面切刃側から第1立ち上がり部と、該第1立ち上がり部の頂部から漸次低くなる降下部と、該降下部から前記第1立ち上がり部の頂部よりも高い高さまで漸次高くなる第2立ち上がり部とを有し、
前記2つのブレーカ島部の間には、前記正面切刃側から、ブレーカ溝部と中央立ち上がり部とが設けられており、前記中央立ち上がり部の両側端が、前記2つのブレーカ島部とそれぞれ連結されており、
前記2つのブレーカ島部の前記第2立ち上がり面の頂部のほうが、前記中央立ち上がり部の頂部よりも高い切削インサート。
【請求項2】
角柱状のチップ本体と、該チップ本体の長手方向の端部上面に設けられたすくい面と、該すくい面と前記チップ本体の端面との稜線に設けられた正面切刃と、前記すくい面と前記チップ本体の側面との稜線に設けられており、前記正面切刃とそれぞれつながる横切刃と、前記すくい面上に設けられたブレーカ凸部と、を備え、
前記ブレーカ凸部は、前記正面切刃側に向かうにつれて前記横切刃側に延びる2つのブレーカ島部を有し、該ブレーカ島部は、前記正面切刃側から第1立ち上がり部と、該第1立ち上がり部の頂部から漸次低くなる降下部と、該降下部から前記第1立ち上がり部の頂部よりも高い高さまで漸次高くなる第2立ち上がり部とを有し、
前記第1立ち上がり部よりも前記正面切刃側に予備立ち上がり部が設けられ、該予備立ち上がり部の立ち上がり角は前記第1立ち上がり部の立ち上がり角よりも小さい切削インサート。
【請求項3】
前記2つのブレーカ島部の間には、前記正面切刃側から、ブレーカ溝部と中央立ち上がり部とが設けられており、前記中央立ち上がり部の両側端が、前記2つのブレーカ島部とそれぞれ連結されている請求項記載の切削インサート。
【請求項4】
前記2つのブレーカ島部の前記第2立ち上がり面の頂部のほうが、前記中央立ち上がり部の頂部よりも高い請求項記載の切削インサート。
【請求項5】
側面視で、前記第1立ち上がり部の立ち上がり角が、前記第2立ち上がり部の立ち上がり角よりも大きい請求項1乃至のいずれか記載の切削インサート。
【請求項6】
前記第1立ち上がり部、前記降下部および前記第2立ち上がり部は、上側に突出した凸曲面である請求項1乃至のいずれか記載の切削インサート。
【請求項7】
平面視で、前記第1立ち上がり部の凸曲面の頂部をつないだ線を第1稜線とし、前記第2立ち上がり部の凸曲面の頂部をつないだ線を第2稜線としたとき、前記第1稜線および前記第2稜線は、前記チップ本体の長手方向に対して、いずれも前記端面側に向かうにつれて前記すくい面の側端に近づくように設けられている請求項記載の切削インサート。
【請求項8】
前記第2稜線の前記チップ本体の長手方向に対するずれ角が、前記第1稜線の前記チップ本体の長手方向に対するずれ角よりも大きい請求項記載の切削インサート。
【請求項9】
平面視で、前記第1立ち上がり部の最大幅よりも前記第2立ち上がり部の最大幅が大きい請求項1乃至のいずれか記載の切削インサート。
【請求項10】
前記2つのブレーカ島部は、前記正面切刃の中央を通る前記チップ本体の長手方向に平行な中央線に対して線対称である請求項1乃至9のいずれか記載の切削インサート。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか記載の切削インサートと、インサート取付空間を有するホルダとを有し、前記切削インサートの前記正面切刃が前記ホルダの外部に位置するように前記切削インサートが前記ホルダのインサート取付空間に装着されている切削工具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一態様に基づく切削インサートは、角柱状のチップ本体と、該チップ本体の長手方向の端部上面に設けられたすくい面と、該すくい面と前記チップ本体の端面との稜線に設けられた正面切刃と、前記すくい面と前記チップ本体の側面との稜線に設けられており、前記正面切刃の両端部につながる横切刃と、前記すくい面上に設けられたブレーカ凸部と、を備え、
前記ブレーカ凸部は、前記正面切刃側に向かうにつれて前記横切刃側に延びる2つのブレーカ島部を有し、該ブレーカ島部は、前記正面切刃側から第1立ち上がり部と、該第1立ち上がり部の頂部から漸次低くなる降下部と、該降下部から前記第1立ち上がり部の頂部よりも高い高さまで漸次高くなる第2立ち上がり部とをそれぞれ有し、
前記2つのブレーカ島部の間には、前記正面切刃側から、ブレーカ溝部と中央立ち上がり部とが設けられており、前記中央立ち上がり部の両側端が、前記2つのブレーカ島部とそれぞれ連結されており、
前記2つのブレーカ島部の前記第2立ち上がり面の頂部のほうが、前記中央立ち上がり部の頂部よりも高くなっている。
【国際調査報告】