(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014051143
(43)【国際公開日】20140403
【発行日】20160825
(54)【発明の名称】サーマルヘッドおよびこれを備えるサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20160729BHJP
【FI】
   !B41J2/335 101F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
【出願番号】2014538670
(21)【国際出願番号】JP2013076561
(22)【国際出願日】20130930
(11)【特許番号】5918383
(45)【特許公報発行日】20160518
(31)【優先権主張番号】2012217055
(32)【優先日】20120928
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
【住所又は居所】京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地
(72)【発明者】
【氏名】新谷 重孝
【住所又は居所】京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地 京セラ株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】米田 将史
【住所又は居所】京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地 京セラ株式会社内
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065GB02
2C065JF01
2C065JF05
2C065JF07
2C065JF12
2C065JF14
2C065JF16
2C065JF17
2C065JF21
(57)【要約】
【課題】 発熱部上の熱集中を低減することができるサーマルヘッドおよびこれを備えるサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】 サーマルヘッドX1は、基板7と、基板7上に並べて設けられた複数の発熱部9と、発熱部9に電気的に接続された電極17,19と、発熱部9、および電極17,19の一部を被覆する保護層25とを備え、保護層25は、発熱部9上に設けられた第1保護層2と、第1保護層2上に設けられ、第1保護層2よりも熱伝導率の高い第2保護層4とを有しており、発熱部9の配列方向から見て、第2保護層4の幅Wが、第1保護層2の幅Wよりも大きい。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に並べて設けられた複数の発熱部と、
該発熱部に電気的に接続された電極と、
前記発熱部、および前記電極の一部を被覆する保護層と、を備え、
該保護層は、前記発熱部上に設けられた第1保護層と、
該第1保護層上に設けられ、該第1保護層よりも熱伝導率の高い第2保護層とを有しており、
前記発熱部の配列方向から見て、前記第2保護層の幅が、前記第1保護層の幅よりも大きいことを特徴とするサーマルヘッド。
【請求項2】
前記第2保護層が前記第1保護層の全体を被覆している、請求項1に記載のサーマルヘッド。
【請求項3】
平面視して、前記電極上に位置する前記第2保護層の面積が、前記電極上に位置する前記第1保護層の面積よりも大きい、請求項1または2に記載のサーマルヘッド。
【請求項4】
前記第1保護層の厚みが前記第2保護層の厚みよりも大きい、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項5】
前記基板と前記発熱部との間に、該発熱部の熱を蓄熱する蓄熱層をさらに備え、
該蓄熱層が、前記基板の厚み方向に突出した隆起部を備えており、
前記発熱部が前記隆起部上に設けられており、
前記発熱部の配列方向から見て、前記第2保護層の幅が前記隆起部の幅よりも大きい、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項6】
前記発熱部の配列方向から見て、前記第1保護層の幅が前記隆起部の幅よりも小さい、請求項5に記載のサーマルヘッド。
【請求項7】
前記電極が、複数の前記発熱部に共通して接続された共通電極と、複数の前記発熱部と個別に接続された個別電極とをさらに備え、
前記共通電極は、前記発熱部の配列方向に延びる主配線部と、該主配線部と前記発熱部とを電気的に接続するためのリード部とを備え、
前記発熱部の配列方向から見て、前記第1保護層の縁部は、前記主配線部と前記発熱部との間に配置されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項8】
前記発熱部の配列方向から見て、前記第1保護層の重心は、前記発熱部の中心よりも前記個別電極側に配置されている、請求項7に記載のサーマルヘッド。
【請求項9】
前記発熱部の配列方向から見て、前記第1保護層の重心は、前記発熱部の中心よりも前記共通電極側に配置されている、請求項7に記載のサーマルヘッド。
【請求項10】
前記第2保護層の一部が、前記電極に接している、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項11】
前記第2保護層上に設けられ、該第2保護層よりも熱伝導率の低い第3保護層をさらに備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項12】
前記発熱部の配列方向から見て、前記第3保護層の幅が、前記第1保護層の幅よりも大きい、請求項11に記載のサーマルヘッド。
【請求項13】
前記発熱部の配列方向から見て、前記第3保護層の幅が、前記第2保護層の幅よりも小さい、請求項11または12に記載のサーマルヘッド。
【請求項14】
前記第2保護層および前記第3保護層が酸素原子を含有しており、
前記第2保護層は、前記第3保護層との界面近傍に含まれる酸素原子の量が、前記第2保護層の他の領域に含まれる酸素原子の量に比べて多い、請求項11乃至13のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項15】
前記第1保護層および前記第2保護層が酸素原子を含有しており、
前記第2保護層は、前記第1保護層との界面近傍に含まれる酸素原子の量が、前記第2保護層の他の領域に含まれる酸素原子の量に比べて多い、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のサーマルヘッドと、
前記発熱部上に記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記発熱部上に前記記録媒体を押圧するプラテンローラと、を備えることを特徴とするサーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドおよびこれを備えるサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファクシミリあるいはビデオプリンタ等の印画デバイスとして、種々のサーマルヘッドが提案されている。例えば、基板と、基板上に並べて設けられた複数の発熱部と、発熱部に電気的に接続された電極と、発熱部、および電極の一部を被覆する保護層とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、保護層が、発熱部上に設けられた第1保護層と、第1保護層上に設けられ、第1保護層よりも熱伝導率の低い第2保護層とを有したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−062775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしなら、上記のサーマルヘッドでは、発熱部に生じた熱が、発熱部上に設けられた熱伝導率の高い第1保護層に拡散されることとなり、発熱部上に熱集中が生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドは、基板と、該基板上に並べて設けられた複数の発熱部と、該発熱部に電気的に接続された電極と、前記発熱部および前記電極の一部を被覆する保護層とを備えている。また、保護層は、前記発熱部上に設けられた第1保護層と、該第1保護層上に設けられ、該第1保護層よりも熱伝導率の高い第2保護層とを有している。また、前記発熱部の配列方向に断面視して、前記第2保護層の幅が、前記第1保護層の幅よりも大きい.
また、本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタは、上記に記載のサーマルヘッドと、前記発熱部上に前記記録媒体を搬送する搬送機構と、前記発熱部上に記録媒体を押圧するプラテンローラとを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1保護層の熱を、第1保護層よりも幅の大きい第2保護層により効率よく拡散することができ、発熱部上に熱集中が生じる可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のサーマルヘッドの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示すI−I線断面図である。
【図3】図1に示すII−II線断面図である。
【図4】(a)は図1に示すサーマルヘッドの一部を抜粋して示す拡大平面図、(b)は(a)を発熱部の配列方向から見た断面図である。
【図5】本発明のサーマルプリンタの一実施形態の概略構成図である。
【図6】本発明のサーマルヘッドの他の実施形態を示し、(a)はサーマルヘッドの一部を抜粋して示す拡大平面図、(b)は(a)を発熱部の配列方向から見た断面図である。
【図7】本発明のサーマルヘッドのさらに他の実施形態を示し、(a)はサーマルヘッドの一部を抜粋して示す拡大平面図、(b)は(a)を発熱部の配列方向から見た断面図である。
【図8】サーマルヘッドのさらに他の実施形態を示す発熱部の配列方向から見た断面図である。
【図9】本発明のサーマルヘッドのさらに他の実施形態を示す発熱部の配列方向から見た断面図である。
【図10】本発明のサーマルヘッドのさらに他の実施形態を示し、(a)はサーマルヘッドの一部を抜粋して示す拡大平面図、(b)は(a)のIII−III線断面図である。
【図11】本発明のサーマルヘッドのさらに他の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
以下、サーマルヘッドX1について図1〜4を参照して説明する。サーマルヘッドX1は、放熱体1と、放熱体1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続されたフレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)とを備えている。なお、図1では、FPC5の図示を省略し、FPC5が配置される領域を一点鎖線で示しており、図1〜3においては、保護層25の構成を簡略化して示している。
【0009】
放熱体1は、板状に形成されており、平面視して長方形状をなしている。放熱体1は、板状の台部1aと、台部1aから突出した突起部1bとを有している。放熱体1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3の発熱部9で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有している。また、台部1aの上面には、両面テープあるいは接着剤等(不図示)によってヘッド基体3が接着されている。
【0010】
ヘッド基体3は、平面視して、板状に形成されており、ヘッド基体3の基板7上にサーマルヘッドX1を構成する各部材が設けられている。ヘッド基体3は、外部より供給された電気信号に従い、記録媒体(不図示)に印字を行う機能を有する。
【0011】
FPC5は、ヘッド基体3と電気的に接続されており、絶縁性の樹脂層(不図示)と、樹脂層の内部にパターニングされたプリント配線(不図示)とを備えている。プリント配線は、複数設けられ、一端部が樹脂層から露出しており、他端部がコネクタ31と電気的に接続されている。
【0012】
FPC5のプリント配線は、接合材23を介してヘッド基体3の接続電極21と接続されている。それにより、ヘッド基体3とFPC5とが電気的に接続されている。接合材23は、例えば、半田材料、あるいは電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方性導電フィルム(ACF)があげられる。
【0013】
サーマルヘッドX1は、FPC5と放熱体1との間に、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂またはガラスエポキシ樹脂等の樹脂からなる補強板(不図示)を設けてもよい。また、FPC5の全域にわたり補強板をFPC5に接続してもよい。補強板は、FPC5の下面に両面テープ、あるいは接着剤等によって接着される。
【0014】
なお、配線基板としてFPC5を用いた例を示したが、可撓性のあるFPC5でなく、硬質な配線基板を用いてもよい。硬質な配線基板としては、ガラスエポキシ基板、あるいはポリイミド基板等の樹脂により形成された基板を例示することができる。
【0015】
以下、ヘッド基体3を構成する各部材について説明する。
【0016】
基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料、あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
【0017】
基板7の上面には、蓄熱層13が形成されている。蓄熱層13は、基板7の上面の全域にわたり、例えば、50〜200μmの厚みで略一様に形成されている。蓄熱層13は、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。そのため、蓄熱層13は、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めることができる。
【0018】
蓄熱層13は、例えば、ガラスペーストをスクリーン印刷等によって基板7の上面に塗布し、これを焼成することで形成される。
【0019】
電気抵抗層15は、蓄熱層13の上面に、例えば200〜1000Åの厚みで設けられている。電気抵抗層15上には、共通電極17、個別電極19および接続電極21が設けられている。電気抵抗層15は、共通電極17、個別電極19および接続電極21と同形状にパターニングされており、共通電極17と個別電極19との間に電気抵抗層15が露出した露出領域を有する。図1に示すように、電気抵抗層15の露出領域は列状に配置されており、各露出領域が発熱部9を構成している。複数の発熱部9は、図1で簡略化して記載しているが、例えば、100dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。
【0020】
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗値の高い材料によって形成されている。そのため、発熱部9は、電圧が印加されるとジュール発熱によって発熱する。
【0021】
図1,2に示すように、電気抵抗層15の上面には、共通電極17、複数の個別電極19および複数の接続電極21が設けられている。これらの共通電極17、個別電極19および接続電極21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって、0.3〜1.5μmの厚みで形成されている。
【0022】
共通電極17は、主配線部17aと、2つの副配線部17bと、複数のリード部17cとを備えている。主配線部17aは、複数の発熱部9に共通に接続され、基板7の一方の長辺に沿って延びている。副配線部17bは、基板7の一方および他方の短辺のそれぞれに沿って延びている。リード部17cは、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びている。共通電極17は、一端部が複数の発熱部9と接続され、他端部がFPC5に接続されるように構成されている。それにより、FPC5と各発熱部9との間を電気的に接続している。
【0023】
複数の個別電極19は、一端部が発熱部9に接続され、他端部が駆動IC11に接続されている。そのため、各発熱部9と駆動IC11との間を電気的に接続している。また、個別電極19は、複数の発熱部9を複数の群に分け、各群の発熱部9を、各群に対応して設けられた駆動IC11に電気的に接続している。
【0024】
複数の接続電極21は、一端部が駆動IC11に接続され、他端部がFPC5に接続されることにより、駆動IC11とFPC5との間を電気的に接続している。各駆動IC11に接続された複数の接続電極21は、異なる機能を有する複数の配線で構成されている。
【0025】
駆動IC11は、図1に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されている。また、駆動IC11は、個別電極19と接続電極21とに電気的に接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を個別に制御する機能を有している。駆動IC11としては、内部に複数のスイッチング素子を有する切替部材を用いればよい。
【0026】
上記の電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19および接続電極21は、例えば、各々を構成する材料層を蓄熱層13上に、スパッタリング法によって順次積層した後、積層体をフォトエッチングを用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、共通電極17、個別電極19および接続電極21は、同じ工程によって同時に形成することができる。
【0027】
図1,2に示すように、基板7の上面に形成された蓄熱層13上には、発熱部9、共通電極17の一部および個別電極19の一部を被覆する保護層25が形成されている。なお、図1では、説明の便宜上、保護層25の形成領域を一点鎖線で示し、これらの図示を省略している。
【0028】
保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。
【0029】
また、図1,2に示すように、蓄熱層13上には、電気抵抗層15、共通電極17、個別電極19および接続電極21を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。なお、図1では、説明の便宜上、被覆層27の形成領域を一点鎖線で示している。被覆層27は、共通電極17、個別電極19および接続電極21の被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。
【0030】
なお、被覆層27は、共通電極17および個別電極19の保護をより確実にするため、図2に示すように保護層25の端部に重なるようにして形成されることが好ましい。被覆層27は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料をスクリーン印刷法を用いて形成することができる。
【0031】
被覆層27は、駆動IC11と接続される個別電極19、および接続電極21を露出させるための開口部(不図示)が形成されており、開口部から露出した個別電極19および接続電極21が駆動IC11に電気的に接続されている。また、駆動IC11は、個別電極19および接続電極21に接続された状態で、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって被覆されることにより封止されている。
【0032】
図4を用いて保護層25について詳細に説明する。
【0033】
サーマルヘッドX1を構成する保護層25は、第1保護層2と、第1保護層2上に設けられ、第1保護層2よりも熱伝導率の高い第2保護層4とを有している。そして、第2保護層4の幅Wが、発熱部9の配列方向L1(以下、配列方向L1と称する)から見て、第1保護層2の幅Wよりも大きい。第1保護層2および第2保護層4は、配列方向L1に延びるように設けられている。
【0034】
第1保護層2は、発熱部9、共通電極17、および個別電極19上に設けられており、共通電極17と個別電極19とにより発熱部9の端部に生じる段差を平坦化する機能を有する。第1保護層2は、大部分が発熱部9上に設けられており、一部が共通電極17および個別電極19上に設けられている。すなわち、第1保護層2の一部と、共通電極17および個別電極19とは重畳するように設けられている。また、第1保護層2は、発熱部9を封止する機能を有している。第1保護層2により、発熱部9を封止することで、発熱部9が酸化する可能性を低減することができる。
【0035】
第1保護層2は、例えば、ホウ素系のガラス、ビスマス系のガラス、あるいはホウケイ酸ビスマス系のガラス材料を、スクリーン印刷等の厚膜形成技術により塗布して、これを焼成することにより形成されている。第1保護層2の熱伝導率は、0.8〜2W/m・Kであることが好ましく、第1保護層2の厚みは、2〜10μmであることが好ましい。
【0036】
第1保護層2をスクリーン印刷法等の厚膜形成技術により形成することにより、発熱部9と、共通電極17および個別電極19との段差に起因するステップカバレッジ不良が生じる可能性を低減することができる。そのため、第1保護層2の封止性を向上させることができる。
【0037】
また、第1保護層2を構成するガラス材料は、焼成温度の比較的低い結晶化ガラス材料を用いてもよい。その場合、耐酸化性あるいは封止性を維持しつつ、サーマルヘッドX1の生産性を向上させることができる。
【0038】
第1保護層2の重心Gは、発熱部9上に設けられている。より詳しくは、第1保護層2の重心Gは、発熱部9の副走査方向の中心上に設けられている。それにより、発熱部9のヒートスポットが、発熱部9の副走査方向の中心に設けられることとなる。そのため、サーマルヘッドX1は、副走査方向に均一な印画を行うことができ、精細な印画を行うことができる。特に1インチ/秒以下の低速な印画速度において有用な効果を示す。
【0039】
なお、第1保護層2の重心Gは、例えば、サーマルヘッドX1を破断して、配列方向L1に直交する面の断面写真を撮影する。そして、当該断面写真を画像処理することにより重心Gを求めることができる。
【0040】
第2保護層4は、第1保護層2上に設けられ、第1保護層2よりも熱伝導率の高い材料で形成されている。第2保護層4は、第1保護層2、共通電極17、および個別電極19上に設けられており、第1保護層2および共通電極17を被覆している。そのため、配列方向L1から見て、第2保護層4の幅Wが第1保護層2の幅Wよりも広くなっている。
【0041】
また、第2保護層4は、個別電極19の発熱部9側の一部を覆っており、個別電極19のその他の領域は被覆層(不図示)により被覆されている。そして、共通電極17および個別電極19上に設けられた第2保護層4は、共通電極17および個別電極19に接した状態で配置されている。なお、個別電極19側の第2保護層4の縁を被覆層27によって被覆することにより、サーマルヘッドX1の個別電極19の形成された領域の封止性を向上させることができる。
【0042】
第2保護層4は、例えば、SiC、SiON、SiN、あるいはSiAlON等の材料を、スパッタリング等の薄膜形成技術を用いて設けられている。第2保護層4の熱伝導率は、8〜40W/m・Kであることが好ましく、第2保護層4の厚みは、2〜10μmであることが好ましい。また、第2保護層4は、保護膜25が形成される領域の全域にわたって形成されていることが好ましい。
【0043】
第2保護層4は、スパッタリング法等の薄膜形成技術を用いて設けられているため、第2保護層4の膜質を均一なものに近づけることができる。そのため、第2保護層4の熱伝導が均一に近づくこととなる。つまり、第2保護層4は、発熱部9の余剰の熱を共通電極17および個別電極19にそれぞれ均一に熱伝導させることができ、サーマルヘッドX1の放熱性を向上させ、ドット再現性の良好な印画を得ることができる。
【0044】
また、第2保護層4は、薄膜形成技術を用いて設けられているため、第2保護層4の縁は、なだらかなテーパ形状を有している。それにより、第2保護層4の縁に生じる残留応力を低減することができ、第2保護層4が剥離する可能性を低減することができる。
【0045】
サーマルヘッドX1は、配列方向L1から見て、第2保護層4の幅Wの幅が第1保護層2の幅Wよりも大きい構成となっている。そのため、発熱部9で発熱され、印画に寄与しない余剰の熱を効率よく放熱することができる。すなわち、第1保護層2よりも熱伝導率が高く幅の大きい第2保護層4は、第1保護層2に熱伝導された熱を効率よく拡散することができ、発熱部9上に生じる熱集中を低減することができる。
【0046】
つまり、発熱部9の上方に設けられた第2保護層4は、第1保護層2に熱伝導された熱を、共通電極17および個別電極19上の第2保護層4に熱伝導させ、この熱を共通電極17および個別電極19上の第2保護層4から共通電極17および個別電極19上に拡散することができる。
【0047】
また、第2保護層4の一部が、共通電極17および個別電極19に接して設けられていることにより、発熱部9で発熱され、印画に寄与しない余剰の熱を、共通電極17および個別電極19に効率よく拡散させることができる。
【0048】
さらにまた、第2保護層4が第1保護層2の表面全体を被覆していることから、第1保護層2の縁部2aを第2保護層4により封止することができ、スティッキングまたは記録媒体のカスを生じにくくすることができる。また、サーマルヘッドX1は、第1保護層2に記録媒体が直接接しない構成となるため、第1保護層2は耐摩耗性を有する必要がなくなる。そのため、第1保護層2は封止性のみを有していれば良く、第1保護層2と第2保護層4との異なる機能により、サーマルヘッドX1の封止性および耐摩耗性を向上させることができる。
【0049】
図4(a)に示すように、サーマルヘッドX1は、平面視して、共通電極17および個別電極19上に位置する第2保護層4の面積S(以下、単に面積Sと称する)が、共通電極17および個別電極19上に位置する第1保護層2の面積S(以下、単に面積Sと称する)よりも大きい。
【0050】
そのため、第2保護層4と共通電極17および個別電極19との接触面積が、第1保護層2と共通電極17および個別電極19との接触面積よりも大きくなる。それにより、サーマルヘッドX1は、第2保護層4に熱伝導した熱を効率よく共通電極17および個別電極19に拡散することができる。
【0051】
また、第1保護層2が厚膜形成技術を用いて形成され、第2保護層4が薄膜形成技術を用いて形成されることにより、第1保護層2の密度よりも第2保護層4の密度を高くすることができる。そのため、第2保護層4の熱伝導率を第1保護層2の熱伝導率よりも容易に高く構成することができるとともに、第2保護層4の厚みを第1保護層2と比較して薄くすることができ、サーマルヘッドX1の印画効率を低下させることなく、発熱部9に生じた余剰の熱の効率的な熱の拡散を行うことができる。
【0052】
また、第1保護層2の厚みが第2保護層4の厚みよりも大きいことから、発熱部9と、共通電極17および個別電極19との段差が、保護層25の表面に生じにくい構成となる。そのため、発熱部9と記録媒体との接触を良好なものにすることができる。それにより、保護層25の耐環境性、耐摩耗性を改善することができるとともに、保護層25の厚みの増加に伴う印字効率の低下を抑制することができる。
【0053】
なお、第2保護層4の形成方法としてスパッタリング法を例示したが、CVD法により第2保護層4を成膜してもよい。
【0054】
さらにまた、スパッタリングターゲットにバイアス電圧を印加しないノンバイアススパッタリング法を用いてもよい。第2保護層4をノンバイアススパッタリング法により成膜することにより、第2保護層4の残留応力を小さくすることができ、第2保護層4が、第1保護層2、共通電極17、および個別電極19から剥離する可能性を低減することができる。特に、第1保護層2を厚膜形成技術を用いて形成し、第2保護層4をノンバイアススパッタリング法により形成することが好ましい。これにより、第1保護層2および第2保護層4の密着性を良好にすることができる。
【0055】
次に、サーマルプリンタZ1について、図5を参照しつつ説明する。
【0056】
図5に示すように、本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70とを備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZ1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、後述する記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
【0057】
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ43,45,47,49とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを図5の矢印D方向に搬送して、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上に搬送するためのものである。駆動部は、搬送ローラ43,45,47,49を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ43,45,47,49は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体43a,45a,47a,49aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材43b,45b,47b,49bにより被覆して構成することができる。なお、図示しないが、記録媒体Pがインクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルムを搬送する。
【0058】
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護層25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、記録媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
【0059】
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
【0060】
サーマルプリンタZ1は、図5に示すように、プラテンローラ50によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、搬送機構40によって記録媒体Pを発熱部9上に搬送しながら、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。なお、記録媒体Pが受像紙等の場合は、記録媒体Pとともに搬送されるインクフィルム(不図示)のインクを記録媒体Pに熱転写することによって、記録媒体Pへの印画を行う。
【0061】
<第2の実施形態>
図6を用いてサーマルヘッドX2について説明する。
【0062】
サーマルヘッドX2は、酸化防止層8と第3保護層6とをさらに備えている。酸化防止層8は、電気抵抗層15、共通電極17、および個別電極19上に設けられている。第3保護層6は、第2保護層4上に設けられ、第2保護層4よりも熱伝導率が低い。第3保護層6は、配列方向L1に延びるように設けられている。その他の構成は、サーマルヘッドX1と同様であり説明を省略する。
【0063】
酸化防止層8は、電気抵抗層15、共通電極17、および個別電極19上に設けられており、第1保護層2および第2保護層4に含まれる酸素原子が、電気抵抗層15に拡散することを抑える機能を有している。
【0064】
酸化防止層8は、例えば、SiC−SiO、SiN、SiCNあるいはSiAlON等の材料をスパッタリング等の薄膜形成技術を用いて設けられている。酸化防止層8の厚みは、0.5〜2μmであることが好ましい。
【0065】
この場合、酸化防止層8、および第2保護層4をノンバイアススパッタリング法により形成し、第1保護層2を厚膜形成技術にて形成することが好ましい。これにより、酸化防止層8、第1保護層2、および第2保護層4の密着性が良好となり、保護層25の長期信頼性を向上させることができる。
【0066】
第3保護層6は、記録媒体(不図示)と接触するため、耐摩耗層として機能する。第3保護層6は、第2保護層4上に設けられており、平面視して、第3保護層6の幅Wが、第2保護層4の幅Wよりも小さい。また、平面視して、第3保護層6の幅Wが、第1保護層2の幅Wよりも大きい。そのため、保護層25を構成する第1保護層2の幅W、第2保護層4の幅W、および第3保護層6の幅Wは、W<W<Wの関係にある。
【0067】
また、第3保護層6は、例えば、ホウ素系のガラス、ビスマス系のガラス、あるいはホウケイ酸ビスマス系のガラス材料を、スクリーン印刷等の厚膜形成技術により塗布して、これを焼成することにより設けられている。第3保護層6の熱伝導率は、0.8〜2W/m・Kであることが好ましく、第3保護層6の厚みは、2〜8μmであることが好ましい。なお、耐摩耗性を向上させるために、フィラーを含有させてもよい。
【0068】
サーマルヘッドX2は、第2保護層4上に設けられ、第2保護層6より熱伝導率の低い第3保護層6を備えている。そのため、第2保護層4よりも熱伝導率の低い第1保護層2および第3保護層6により、第2保護層4を挟持する構成となる。それにより、発熱部9の近傍に生じた余剰の熱が、熱伝導率の高い第2保護層4により、熱伝達されやすくなる。その結果、第2保護層4が、第1保護層2に熱伝導された熱を、共通電極17および個別電極19に放熱しやすくなり、第2保護層4により、効率よく熱を拡散することができる。
【0069】
また、第1保護層2および第3保護層6を厚膜形成技術により成膜することにより、第2保護層4の上下に配置された第1保護層2および第3保護層6の外部応力に対する挙動を近づけることができる。そのため、第2保護層4に加わる応力ひずみを低減することができ、第2保護層4に剥離が生じることを低減することができる。
【0070】
また、発熱部9の配列方向から見て、第3保護層6の幅Wが、第1保護層2の幅Wよりも大きい。それにより、第3保護層6により、第2保護層4を介して第1保護層2の縁部を被覆することができ、第1保護層2の縁部の印画時のプラテン圧による機械的応力を緩和することができ、保護層25全体の封止性を向上させることができる。
【0071】
さらにまた、発熱部9の配列方向から見て、第3保護層6の幅Wが、第2保護層4の幅Wよりも小さい。それにより、第3保護層6は、第2保護層4上にのみ設けられる構成となる。
【0072】
ここで、共通電極17または個別電極19は、パターニングされて基板7または蓄熱層13上に設けられている。共通電極17または個別電極19のパターンは、一定の厚みを有しており、共通電極17または個別電極19のパターンが形成された領域と、共通電極17または個別電極19のパターンが形成されていない領域とにより凹凸が生じている。
【0073】
そのため、第3保護層6を基板7、蓄熱層13、共通電極17、または個別電極19上にまで延在させた場合に、共通電極17または個別電極19のパターンの厚みにより、第3保護層6の縁部を含む表面(記録媒体と接触する面)にまで凹凸が生じる場合がある。それにより、第3保護層6と記録媒体との接触が不均一になる可能性がある。
【0074】
しかしながら、第3保護層6が、表面が平らな第2保護層4上に設けられており、第3保護層6の記録媒体と接触する面に凹凸が生じる可能性を低減することができる。それゆえ、第3保護層6と記録媒体との接触状態を均一なものに近づけることができる。そのため、記録媒体に紙傷が生じたり、記録媒体のカスが付着したり、あるいは記録媒体にしわが生じる可能性を低減することができる。
【0075】
第1保護層2、第2保護層4、および第3保護層6がそれぞれ酸素原子を含有していることが好ましい。そして、第1保護層2および第2保護層4の界面近傍と、第3保護層6および第2保護層4の界面近傍とに含まれる酸素原子の量が、第2保護層4中の他の領域に含まれる酸素原子の量よりも多い構成であることが好ましい。
【0076】
このような構成とすることで、異種材料により形成された第1保護層2および第2保護層4の界面の密着性を高めることができる。また、異種材料により形成された第2保護層4および第3保護層6の界面の密着性を高めることができる。言い換えると、第2保護層4の厚み方向L2(以下、厚み方向L2と称する)に見たときに、第2保護層4に含まれる酸素原子の含有量が、徐々に減少したのち、第2保護層の厚み方向L2の中央部にて最も少なくなり、徐々に増加していく構成となっている。
【0077】
上記構成は、例えば以下の方法により作製することができる。第2保護層4をスパッタリング法により形成する場合、試料をスパッタリングする雰囲気を酸素雰囲気とし、第2保護層4の成膜する初期および終期における酸素濃度を高くすればよい。
【0078】
また、第2保護層4の第1保護層2との界面近傍の酸素原子の含有量は、6〜12原子%であることが好ましく、第2保護層4の第3保護層6との界面近傍の酸素原子の含有量は、17〜26原子%であることが好ましく、第2保護層4の厚み方向L2の中央部の酸素原子の含有量は、5原子%以下であることが好ましい。
【0079】
なお、第2保護層4の第1保護層2との界面近傍は、EPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いて、構成元素のマッピングを作製し、EPMAにより作製したマッピングにおいて、構成元素が変わる位置を界面とみなし、界面から第2保護層4側に0.4μmの位置までの領域とみなすことができる。第2保護層4の第3保護層6との界面近傍についても同様である。そして、第2保護層4に含まれる酸素原子の含有量は、XPS(X線光電子分光装置)を用いて測定することができる。
【0080】
また、第1保護層2の硬度D2、第2保護層4の硬度D4、および第3保護層6の硬度D6は、D4>D2>D6の関係であることが好ましい。これにより、サーマルヘッドX2の耐摩耗性、封止性、すべり性を向上させることができる。なお、各保護層25の硬度はビッカーズ硬度である。
【0081】
なお、第1保護層2、第2保護層4、および第3保護層6がそれぞれ酸素原子を含有している例を示したが他の構成であってもよい。例えば、隣接する第1保護層2および第2保護層4が酸素原子を含有しており、第2保護層4の第1保護層2との界面近傍に含まれる酸素原子の量を、第2保護層4の他の領域に含まれる酸素原子の量よりも多くしてもよい。それにより、第1保護層2と第2保護層との密着性を向上させることができる。第2保護層4および第3保護層が、酸素原子を含有する場合についても同様である。
【0082】
<第3の実施形態>
図7を用いて第3の実施形態に係るサーマルヘッドX3について説明する。なお、図7(a)においては、保護層25のうち第1保護層2以外は省略して示している。なお、第1保護層2は、一点鎖線にて示している。サーマルヘッドX3は、共通電極10、個別電極12、蓄熱層13、発熱抵抗体14、および発熱部16の構成が、サーマルヘッドX1と異なっている。
【0083】
蓄熱層13は、下地部13aと隆起部13bとを備えている。下地部13aは、基板7の略全面にわたって形成されており、略同一の厚みを有している。隆起部13bは、発熱部9の下方に配置されており、配列方向L1に延びた帯状であり、断面形状は半円形状をなしている。
【0084】
サーマルヘッドX3は、隆起部13bを設けることにより、発熱部9上に形成された保護層25に記録媒体を良好に押し当てることができる。隆起部13bは、幅が0.6〜1.5mm、高さが50〜100μmであることが好ましい。
【0085】
共通電極10は、主配線部10aと、リード部10bとを有している。主配線部10aは、配列方向L1に延びるように設けられている。リード部10bは、主配線部10aから配列方向L1と略直角に引き出され、発熱抵抗体14に向けて配列方向L1に所定の間隔をあけて櫛歯状に設けられている。そのため、主配線部10aとリード部10bとの接続部には段差18が設けられている。
【0086】
複数の個別電極12は、パッド部12aとリード部12bとを有している。パッド部12aは、駆動IC(不図示)と電気的に接続される部位である。リード部12bは、パッド部12aから配列方向L1と略直角に引き出され、発熱抵抗体14に向けて配列方向L1に所定の間隔をあけて設けられている。
【0087】
そして、個別電極12のリード部12bは、共通電極10のリード部10b同士の間に延びるように配置されている。そのため、平面視して、個別電極12のリード部12bと、共通電極10のリード部10bとが、配列方向L1に交互に配列されることとなる。共通電極10および個別電極12は、例えば、Au、Al、あるいはNi等の材料により形成することができる。
【0088】
そして、個別電極12のリード部12bと、共通電極10のリード部10bとは、隆起部13b上にまでそれぞれ引き出されており、この上に発熱抵抗体14が設けられている。発熱抵抗体14は、配列方向L1に延びるように設けられており、共通電極10のリード部10bと、個別電極12のリード部12とにまたがって形成されている。そのため、発熱抵抗体14は、隆起部13b上に設けられている。
【0089】
そして、隣接する共通電極10のリード部10bと、個別電極12のリード部12とが電気的に接続されており、この隣り合う共通電極10のリード部10bと、個別電極12のリード部12bとの間に配置された発熱抵抗体14が発熱部16として機能する。発熱抵抗体14は、例えば、酸化ルテニウムを用いることができる。
【0090】
サーマルヘッドX3は、発熱部16、共通電極10の一部、および個別電極12の一部に第1保護層2が設けられている。第1保護層2の幅Wは、蓄熱層13の幅W13よりも小さい。また、第1保護層2の共通電極10側の縁部2aは、配列方向L1から見て、共通電極10のリード部10a上に配置されている。そのため、第1保護層2は、段差18よりも発熱抵抗体14側に設けられている。
【0091】
第2保護層4は、第1保護層2、共通電極10の一部、および個別電極12の一部を覆うように設けられている。第2保護層4の幅Wは、第1保護層2の幅Wよりも広く、保護層25の幅と同程度である。
【0092】
第3保護層6は、第2保護層4を覆うように設けられている。第3保護層6の幅Wは、第1保護層2の幅Wよりも広く、第2保護層4の幅Wよりも小さい。
【0093】
また、第1保護層2は、発熱部16の上方に位置する第1保護層2の厚み方向L2の厚みが、第1保護層2のその他の領域の厚み方向L2の厚みよりも厚い構成となっている。そのため、発熱部16と第2保護層4との離間距離を短くすることができ、発熱部16に生じた余剰の熱を第2保護層4により、効率よく拡散することができる。
【0094】
さらにまた、第1保護層2の縁部2aが、共通電極10のリード部10a上に位置しており、第1保護層2が段差18の上方に設けられていない。そのため、保護層25上を通過した記録媒体(不図示)は、保護層25により上方に持ち上げられた状態で搬送され、段差18の上方を、段差18により対応して形成された第2保護層4の段差部に接触することなく搬送されることとなる。そのため、記録媒体により生じた記録媒体のカスが、段差18の上方の保護層25上に蓄積される可能性を低減することができる。
【0095】
また、第2保護層4のWが、蓄熱層13の幅W13よりも大きいことから、凸形状の隆起部13bによる記録媒体への熱伝達の効果を低減させることなく、効果的に発熱部9に生じた余剰の熱を拡散させることができ、発熱部9の熱集中を低減することができる。
【0096】
なお、第3保護層6を形成した例を示したが、第3保護層6は必ずしも形成しなくてもよい。
【0097】
<第4の実施形態>
図8を用いて、第4の実施形態に係るサーマルヘッドX4を説明する。サーマルヘッドX4は、第1保護層2の重心Gが、厚み方向L2に沿って発熱部9の中心を通過する仮想線Aから、記録媒体(不図示)の搬送方向L3(以下、搬送方向L3と称する)の上流側にずれて配置される構成である。言い換えると、第1保護層2の重心Gが、発熱部9の中心よりも個別電極19側に配置されている。
【0098】
このため、発熱部9よりも搬送方向L3の上流側に位置する部位の高さが、発熱部9よりも搬送方向L3の下流側に位置する部位の高さよりも高いこととなり、記録媒体との接触圧が大きくなる。これは、2インチ/秒以上の速い印画速度であるほど顕著になる。
【0099】
また、熱伝導率の小さな第1保護層2により、発熱部9よりも搬送方向L3の上流側に位置する部位の温度が、発熱部9よりも搬送方向L3の下流側に位置する部位の温度よりも高いこととなる。それにより、記録媒体を効率よく温めることができ、サーマルヘッドX4の熱効率を向上させることができる。
【0100】
なお、第1保護層2の重心Gは、例えば、サーマルヘッドX4を破断して、配列方向L1に直交する面の断面写真を撮影する。そして、当該断面写真を画像処理することにより重心Gを求めることができる。
【0101】
<第5の実施形態>
図9を用いて第5の実施形態に係るサーマルヘッドX5について説明する。サーマルヘッドX5は、第1保護層2の重心Gが、厚み方向L2に沿って発熱部9の中心を通過する仮想線Aから、記録媒体(不図示)の搬送方向L3の下流側にずれて配置される構成である。言い換えると、第1保護層2の重心Gが、発熱部9の中心よりも共通電極17側に配置されている。
【0102】
ここで、サーマルヘッドX5は、印画する記録媒体によって、記録媒体と保護層25とのすべり性、あるいは記録媒体と保護層25との剥離性が異なる場合がある。そのため、同じサーマルヘッドX5により印画を行った場合において、ある記録媒体においては、良好なすべり性および剥離性を示す。しかしながら、異なる記録媒体においては、搬送方向L3の下流側に記録媒体のカスが付着する不具合が生じる場合がある。記録媒体のカスが付着する原因として、搬送方向L3の下流側に位置する保護層25の温度が低く、搬送方向L3の下流側において、記録媒体と保護層25との摩擦力が増大することが考えられる。
【0103】
これに対して、サーマルヘッドX5は、第1保護層2の重心Gが、厚み方向L2に沿って発熱部9の重心を通過する仮想線Aから、搬送方向L3の下流側にずれて配置されている。言い換えると、第1保護層2の重心Gが、発熱部9の中心よりも共通電極17側に配置されている。そのため、搬送方向L3の下流側に位置する保護層25の温度を上昇させることができる。
【0104】
それにより、記録媒体が急激に冷やされることを低減することができ、搬送方向L3の下流側に記録媒体のカスが付着する可能性、あるいはスティッキングが生じる可能性を低減することができる。
【0105】
特に、熱伝導率の低い第1保護層2の重心Gが、搬送方向L3の下流側にずれて配置されることにより、第1保護層2に蓄積された熱により、保護層25の搬送方向L3の下流側の温度を上昇させることができる。
【0106】
なお、搬送方向L3の上流側の温度を低下させるため、第2保護層4の熱伝導による熱の拡散を低下させる方法を用いてもよい。具体的には、第2保護層4の重心(不図示)を搬送方向L3の上流側に移動すればよい。
【0107】
このような構成とすることで、搬送方向L3の上流側における熱を第2保護層4により、効率よく共通電極17に拡散することができ、搬送方向L3の上流側における熱を低下させることにより、相対的に搬送方向L3の上流側の温度を上昇させることができ、搬送方向L3の上流側に記録媒体のカスが付着する可能性を低減することができる。
【0108】
<第6の実施形態>
図10(a),(b)を用いて第6の実施形態に係るサーマルヘッドX6について説明する。サーマルヘッドX6は、第1保護層2の縁部2aが、配列方向L1から見て、共通電極17の主配線部17aと発熱部9との間に設けられている。また、サーマルヘッドX6は、主配線部17aとリード部17cとの接続部に段差18が設けられた構成である。そのため、第1保護層2は、段差18よりも発熱部9側に設けられている。
【0109】
第1保護層2の縁部2aの近傍では、第1保護層2の基板7からの高さが、縁部2aに向かうにつれて急激に低くなっており、それにより、保護層25の基板7からの高さも低くなっている。また、第1保護層2の縁部2aが、主配線部17aと発熱部9との間に配置されており、主配線部17a上に第1保護層2が形成されていない。
【0110】
そのため、保護層25の表面には、主配線部17a上と、発熱部9上および発熱部9に隣接する領域20上との間に、段差18´が生じることとなる。保護層25の表面に段差18´が生じるので、記録媒体Pと保護層25とが一部離間した状態となる。そのため、サーマルヘッドX6は、保護層25と記録媒体Pとが、接触し続けない構成となり、スティッキングが生じる可能性を低減することができる。
【0111】
<第7の実施形態>
図11を用いて第7の実施形態に係るサーマルヘッドX7について説明する。サーマルヘッドX7は共通電極17および個別電極19の構成がサーマルヘッドX6と異なっており、その他の構成は同一である。
【0112】
複数の発熱部9は、一対の発熱部である第1発熱部9aと第2発熱部9bとを構成している。第1発熱部9aと第2発熱部9bとは共通電極17により電気的に接続されている。第1発熱部9aと駆動IC11とは、個別電極19aにより接続されている。また、第2発熱部9bと駆動IC11とは、個別電極19bにより接続されている。
【0113】
共通電極17は、配列方向L1に複数設けられており、主配線部17aとリード部17cとを有している。主配線部17aは、配列方向L1に長く形成されている。リード部17cは、主配線部17aから発熱部9にそれぞれ延びるように設けられている。主配線部17aとリード部17cとの接続部の近傍には段差18が生じている。
【0114】
個別電極19aは第1発熱部9aと駆動IC11と電気的に接続している。個別電極19bは、隣り合う第1発熱部9bおよび第1発熱部9aを電気的に接続している。
【0115】
サーマルヘッドX7においても、第1保護層2の縁部2aが、配列方向L1から見て、共通電極17の主配線部17aと発熱部9との間に設けられている。そのため、保護層25の表面には、主配線部17a上と、発熱部9上および発熱部9に隣接する領域20上との間に、段差(不図示)が生じることとなる。保護層25の表面に段差が生じるので、記録媒体Pと保護層25とが一部離間した状態となる。そのため、サーマルヘッドX7は、保護層25と記録媒体Pとが、接触し続けない構成となり、スティッキングが生じる可能性を低減することができる。
【0116】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態であるサーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1を示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2〜X7をサーマルプリンタZ1に用いてもよい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッドX1〜X7を組み合わせてもよい。
【0117】
サーマルヘッドX1〜X7と外部との電気的な接続をFPC5を用いた例を示したがこれに限定されるものではない。例えば、サーマルヘッドX1〜X7にコネクタ31を直付けしたものにおいても、同様の効果を奏することができる。また、発熱部9が基板7の端面に形成された端面ヘッドにおいても、同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0118】
X1〜X7 サーマルヘッド
Z1 サーマルプリンタ
1 放熱体
2 第1保護層
3 ヘッド基体
4 第2保護層
5 フレキシブルプリント配線板
6 第3保護層
7 基板
8 酸化防止層
9 発熱部
10 共通電極
11 駆動IC
12 個別電極
13 蓄熱層
14 発熱抵抗体
15 電気抵抗層
17 共通電極
19 個別電極
21 IC−FPC接続電極
23 接合材
25 保護層
27 被覆層
29 被覆部材
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】

【手続補正書】
【提出日】20151030
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に並べて設けられた複数の発熱部と、
該発熱部に電気的に接続された電極と、
前記発熱部、および前記電極の一部を被覆する保護層と、を備え、
該保護層は、前記発熱部上に設けられた第1保護層と、
一部が該第1保護層上に設けられ、該第1保護層よりも熱伝導率の高い第2保護層とを有しており、
前記第2保護層は、前記第1保護層が設けられていない前記電極上にまで広がって配置されていることを特徴とするサーマルヘッド。
【請求項2】
前記第2保護層が前記第1保護層の全体を被覆している、請求項1に記載のサーマルヘッド。
【請求項3】
平面視して、前記電極上に位置する前記第2保護層の面積が、前記電極上に位置する前記第1保護層の面積よりも大きい、請求項1または2に記載のサーマルヘッド。
【請求項4】
前記第1保護層の厚みが前記第2保護層の厚みよりも大きい、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項5】
前記基板と前記発熱部との間に、該発熱部の熱を蓄熱する蓄熱層をさらに備え、
該蓄熱層が、前記基板の厚み方向に突出した隆起部を備えており、
前記発熱部が前記隆起部上に設けられており、
前記発熱部の配列方向から見て、前記第2保護層の幅が前記隆起部の幅よりも大きい、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項6】
前記発熱部の配列方向から見て、前記第1保護層の幅が前記隆起部の幅よりも小さい、請求項5に記載のサーマルヘッド。
【請求項7】
前記電極が、複数の前記発熱部に共通して接続された共通電極と、複数の前記発熱部と個別に接続された個別電極とをさらに備え、
前記共通電極は、前記発熱部の配列方向に延びる主配線部と、該主配線部と前記発熱部とを電気的に接続するためのリード部とを備え、
前記発熱部の配列方向から見て、前記第1保護層の縁部は、前記主配線部と前記発熱部との間に配置されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項8】
前記発熱部の配列方向から見て、前記第1保護層の重心は、前記発熱部の中心よりも前記個別電極側に配置されている、請求項7に記載のサーマルヘッド。
【請求項9】
前記発熱部の配列方向から見て、前記第1保護層の重心は、前記発熱部の中心よりも前記共通電極側に配置されている、請求項7に記載のサーマルヘッド。
【請求項10】
前記第2保護層の一部が、前記電極に接している、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項11】
前記第2保護層上に設けられ、該第2保護層よりも熱伝導率の低い第3保護層をさらに備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項12】
前記発熱部の配列方向から見て、前記第3保護層の幅が、前記第1保護層の幅よりも大きい、請求項11に記載のサーマルヘッド。
【請求項13】
前記発熱部の配列方向から見て、前記第3保護層の幅が、前記第2保護層の幅よりも小さい、請求項11または12に記載のサーマルヘッド。
【請求項14】
前記第2保護層および前記第3保護層が酸素原子を含有しており、
前記第2保護層は、前記第3保護層との界面近傍に含まれる酸素原子の量が、前記第2保護層の他の領域に含まれる酸素原子の量に比べて多い、請求項11乃至13のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項15】
前記第1保護層および前記第2保護層が酸素原子を含有しており、
前記第2保護層は、前記第1保護層との界面近傍に含まれる酸素原子の量が、前記第2保護層の他の領域に含まれる酸素原子の量に比べて多い、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のサーマルヘッド。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のサーマルヘッドと、
前記発熱部上に記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記発熱部上に前記記録媒体を押圧するプラテンローラと、を備えることを特徴とするサーマルプリンタ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドは、基板と、該基板上に並べて設けられた複数の発熱部と、該発熱部に電気的に接続された電極と、前記発熱部および前記電極の一部を被覆する保護層とを備えている。また、保護層は、前記発熱部上に設けられた第1保護層と、一部が該第1保護層上に設けられ、該第1保護層よりも熱伝導率の高い第2保護層とを有している。また、第2保護層は、第1保護層が設けられていない電極上にまで広がって配置されている。
【国際調査報告】