(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014054080
(43)【国際公開日】20140410
【発行日】20160825
(54)【発明の名称】副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/02 20060101AFI20160729BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20160729BHJP
   F02D 41/02 20060101ALI20160729BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20160729BHJP
   F02D 41/14 20060101ALI20160729BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20160729BHJP
   F02B 19/10 20060101ALI20160729BHJP
【FI】
   !F02D19/02 F
   !F02D19/02 D
   !F02D45/00 364K
   !F02D41/02 301K
   !F02D41/02 301F
   !F02D41/04 330Z
   !F02D41/04 305Z
   !F02D41/14 310M
   !F02M21/02 Q
   !F02M21/02 301Q
   !F02M21/02 311E
   !F02B19/10 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】2014539476
(21)【国際出願番号】JP2012006426
(22)【国際出願日】20121005
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木塚 智昭
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番1号 川崎重工業株式会社 神戸工場内
(72)【発明者】
【氏名】竹内 昭宏
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番1号 川崎重工業株式会社 神戸工場内
(72)【発明者】
【氏名】野中 洋輔
【住所又は居所】兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工業株式会社 明石工場内
(72)【発明者】
【氏名】海野 峻太郎
【住所又は居所】兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工業株式会社 明石工場内
(72)【発明者】
【氏名】中島 洋平
【住所又は居所】兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工業株式会社 明石工場内
【テーマコード(参考)】
3G023
3G092
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G023AA01
3G023AB01
3G023AC02
3G023AC04
3G023AC07
3G023AD21
3G023AF03
3G092AA07
3G092AA09
3G092AA18
3G092AB06
3G092BA01
3G092BA05
3G092BA06
3G092BB01
3G092DB03
3G092EA06
3G092EA07
3G092EC01
3G092FA15
3G092HA01Z
3G092HA15Z
3G092HB01Z
3G092HB05Z
3G301HA05
3G301HA11
3G301HA16
3G301HA22
3G301HA27
3G301JA21
3G301LB01
3G301LC01
3G301MA01
3G301MA11
3G301ND01
3G301PA01Z
3G301PB02Z
3G301PF12Z
3G384AA09
3G384AA14
3G384AA22
3G384BA09
3G384BA13
3G384EA01
3G384EB01
3G384EB02
3G384EB06
3G384EB07
3G384ED07
3G384FA01Z
3G384FA14Z
3G384FA21Z
(57)【要約】
燃焼安定化装置(100)は、主室(33)にガス燃料を供給する主室燃料供給装置(21)と、副室(34)にガス燃料を供給する副室燃料供給装置(22)と、ガス燃料の性状を検出する性状検出器(55)と、検出されたガス燃料の性状に対応する理論空気量を算出する理論空気量算出部(61)と、副室(34)内の空気過剰率の目標値を設定する目標副室空気過剰率設定部(62)と、副室(34)に供給される空気量及びガス燃料量を算出する副室燃料量算出部(65)と、算出された空気量、ガス燃料量及び理論空気量から副室(34)内の空気過剰率を算出する副室空気過剰率測定部(63)と、副室空気過剰率の算出値が目標値となるように副室(34)へのガス燃料の供給量の目標値である目標副室燃料供給量を設定し、該目標副室燃料供給量のガス燃料が供給されるように副室燃料供給装置(22)を制御する副室燃料供給制御部(67)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主室及び該主室と連通する副室を有する燃焼室を備えた副室式ガスエンジンに適用される燃焼安定化装置であって、
前記主室にガス燃料を供給する主室燃料給装置と、
前記副室にガス燃料を供給する副室燃料供給装置と、
ガス燃料の性状を検出する性状検出器と、
検出されたガス燃料の性状に対応する理論空気量を算出する理論空気量算出部と、
前記副室内の空気過剰率の目標値を設定する目標副室空気過剰率設定部と、
前記副室に供給される空気量及びガス燃料量を算出する副室燃料量算出部と、
前記副室燃料量算出部により算出された空気量及びガス燃料量と、前記理論空気量算出部により算出された理論空気量とから前記副室内の空気過剰率を算出する副室空気過剰率算出部と、
空気過剰率の算出値が前記目標値となるように前記副室へのガス燃料の供給量の目標値である目標副室燃料供給量を設定し、該目標副室燃料供給量のガス燃料が供給されるように前記副室燃料供給装置を制御する副室燃料供給制御部と、を備える、副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項2】
前記副室燃料量算出部は、前記副室燃料供給装置から前記副室に供給されるガス燃料量と、前記主室から前記副室に入り込む混合気量とに基づいて、前記副室に供給される空気量及びガス燃料量を算出する、請求項1に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項3】
前記副室燃料量算出部は、前記主室から前記副室に入り込む混合気量を給気圧及び給気温を用いて算出する、請求項2に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項4】
前記副室燃料量算出部は、前記副室燃料供給装置の入口圧及び出口圧の差圧と、前記副室燃料供給装置のガス燃料供給量とを用いて、前記副室燃料供給装置からのガス燃料量を算出し、そのガス燃料量に基づいて前記副室に供給されるガス燃料量を算出する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項5】
前記目標値が、ストイキオメトリ付近の一定の値に設定され、前記主室内の空気過剰率が、リーンに設定される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項6】
前記性状検出器が、ガス燃料の成分を検出するガスクロマトグラフィ、ガス燃料のメタン価を検出するメタン価センサ、ガス燃料の発熱量を検出するカロリーメータ、前記燃焼室からの燃焼排ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサのうち少なくともいずれか1つを含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主室及び該主室と連通する副室を有する燃焼室を備えた副室式ガスエンジンに適用される燃焼安定化装置に関し、特に、ガス燃料の性状に関わらず燃焼状態の安定化を図る燃焼安定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスエンジンは、主たる燃料にガス燃料を用いる内燃機関であり、ディーゼルエンジンと比べて排ガス中の窒素酸化物を低減可能であるしCO2排出量も少なく、地球環境に優しい内燃機関として脚光を浴びており、例えば、ガスエンジンで発電機を駆動する発電システムへの期待が高まってきている。近年、国内外を問わず産業用プラント内の発電システムにガスエンジンを適用しようとする動きや、舶用の推進及び発電システムにガスエンジンを適用しようとする動きも活発化している。
【0003】
従来から、ガスエンジンに対し、種々の燃焼室構造様式、燃焼方式及びこれらの組合せが提案されている。この組合せの主要例として、いわゆる副室式火花点火や、いわゆる副室式パイロット着火が知られている。これら副室式ガスエンジンでは、燃焼室が、主室及び該主室と連通する副室を有し、主室を副室から区画する隔壁に連通穴が設けられている。副室式ガスエンジンでは、まず、副室内の混合気に着火させる。すると、副室内の燃焼ガスが、副室から連通穴を介して主室へと噴出され、噴出されたトーチが火種となり主室内の混合気を着火させる。副室から噴射するトーチの着火力が強いため、主室の空気過剰率を高くしても失火が生じにくくなり、一層の高効率化や低NOX化を図ることができる。
【0004】
このように、ガスエンジンの近年の主流は、リーンバーン式である。リーンバーン式ガスエンジンで高効率を実現するには、燃焼制御が特に肝要である。高効率化の実現には、点火時期を進角し、燃焼状態をノッキングが発生する限界又は限界近傍の状態とすることが有効である。一方、空気過剰率を高くすることで熱効率の向上が可能であるが、空気過剰率が高くなり過ぎれば、失火が生じやすくなる。よって、リーンバーン式ガスエンジンでは、空気過剰率や点火時期を調整し、ノッキング限界と失火限界とで囲まれた狭い範囲内に安定的に収めるように燃焼制御を実行し、それにより燃焼状態の安定化と高効率の実現とを両立することが求められる。
【0005】
前述のとおり、ガスエンジンの適用範囲は、地域的にも分野的にも広がっていく傾向にある。例えば、ガスエンジンを船舶に搭載した場合には、停泊港でガス燃料の補給を受けることが想定される。しかし、ガス燃料の性状は、国ごとに、ガス供給業者ごとに異なる。同じ国で同じガス供給業者から供給されるガス燃料の性状でさえも、時間的に変動する場合がある。
【0006】
ガス燃料の性状は、着火性に影響を及ぼす。すると、想定された或る性状のガス燃料に対して燃焼制御を最適化していても、これとは異なる性状のガス燃料が供給された場合に、必ずしも燃焼状態を安定化することができないし、目標としていた出力及び効率を得られないおそれがある。状況によっては、ノッキングが許容範囲を超えて発生するほどに燃焼状態が不安定になることもあり得る。そこで従来、特許文献1及び2に開示されるように、ガス燃料の性状の変動に対応するための技術が提案されている。
【0007】
特許文献1は、ガスエンジンで用いられる天然ガスを精製するための装置及び方法を開示している。この方法及び装置では、プロパン(C38)、ブタン(C410)及びペンタン(C512)等の比較的重質の炭化水素が、天然ガス混合物から分離される。そして、残存した天然ガス混合物が、ガスエンジンにおいてガス燃料に用いられる。
【0008】
特許文献2は、副室式パイロット着火ガスエンジンのパイロット油の投与時期を調整するための装置及び方法を開示している。この方法及び装置では、主室内の燃焼状態を安定化させる目的で、ガス燃料の組成が測定され、結果得られる不活性ガスの濃度が高ければ高いほど投与時期が進角され、水素ガスの濃度が高ければ高いほど投与時期が遅角される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−167411号公報
【特許文献2】特開2005−315177公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の方法及び装置は、ガス燃料の性状が変動した場合には、ガスエンジンへの供給前にガス燃料の品質を調整すればよいというコンセプトに依拠している。しかし、この方法及び装置をエンジン供給業者及びエンジン使用者が準備すれば、設備全体が大型化し、また、設備全体の導入費及び維持費が高くなる。この方法及び装置をガス供給業者が準備すれば、ガス燃料の価格が高騰し、ガスエンジンの運転費が高くなるおそれがある。
【0011】
しかし、現状、ガス燃料の性状の変動に対応した燃焼制御技術は、必ずしも燃焼状態の安定化を実現するものとなっていない。性状又は品質が安定しているガス燃料が供給されることを前提とすることが許容されていたときには、いかにして主室内の燃焼状態をノッキング限界付近にするかを課題として燃焼制御が設計され、相応の結果が得られていた。特許文献2でも示唆されるとおり、ガス燃料の性状の変動に対応しようとする燃焼制御においても、燃焼状態の安定化の対象として重きをおかれているのは主室である。副室は、主室の混合気を着火させるための火種を形成する箇所であるが、ガス燃料の性状が変動すれば、副室の燃焼状態の安定を従前と同様に担保することができず、火種が従前どおりに形成されないおそれがある。副室内の燃焼状態が異常であれば、主室内の燃焼状態の安定を担保することも非常に困難になる。しかし、ガス燃料の性状の変動に対応して副室内の燃焼状態の安定化を図った燃焼制御技術は未だ確立されていない。
【0012】
そこで本発明は、副室式ガスエンジンにおいて、ガス燃料の性状の変動に対応して副室内の燃焼状態を安定化することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものである。本発明に係る燃焼安定化装置は、主室及び該主室と連通する副室を有する燃焼室を備えた副室式ガスエンジンに適用される燃焼安定化装置であって、前記主室にガス燃料を供給する主室燃料給装置と、前記副室にガス燃料を供給する副室燃料供給装置と、ガス燃料の性状を検出する性状検出器と、検出されたガス燃料の性状に対応する理論空気量を算出する理論空気量算出部と、前記副室内の空気過剰率の目標値を設定する目標副室空気過剰率設定部と、前記副室に導入される空気量及びガス燃料量を算出する副室燃料量算出部と、前記副室燃料量算出部により算出された空気量及びガス燃料量と、前記理論空気量算出部により算出された理論空気量とから、前記副室内の空気過剰率を算出する副室空気過剰率算出部と、空気過剰率の算出値が前記目標値となるように前記副室へのガス燃料の供給量の目標値である目標副室燃料供給量を設定し、該目標副室燃料供給量のガス燃料が供給されるように前記副室燃料供給装置を制御する副室燃料供給制御部と、を備える。
【0014】
前記構成によれば、副室内の空気過剰率を、ガス燃料の性状に応じて算出された理論空気量から算出し、その算出値が目標値となるように副室へのガス燃料の供給量が設定される。副室内の空気過剰率の目標値を燃焼状態の安定化を担保するための適切な値に設定しておきさえすれば、ガス燃料の性状の変動によって理論空気量が変動しても、副室に導入される燃料供給量を調整することにより、副室内の空気過剰率を燃焼状態の安定化を担保する適切な値となるように制御することができる。これにより、ガス燃料の性状が変動しても、副室内の混合気が正常に着火し、それにより主室内の燃焼状態を安定化させやすくもなる。
【0015】
前記副室燃料量算出部は、前記副室燃料供給装置から前記副室に供給されるガス燃料量と、前記主室から前記副室に入り込む混合気量とに基づいて、前記副室に導入される空気量及びガス燃料量を算出してもよい。
【0016】
前記構成によれば、主室から副室に入り込むガス燃料量を考慮して副室内の空気過剰率を算出することができるので、副室内の空気過剰率の算出精度が向上する。よって、副室内の燃焼状態をより精度よく制御することができる。
【0017】
前記副室燃料量算出部は、主室空気過剰率を給気圧、給気温度及び主室供給ガス量を用いて算出してもよい。
【0018】
前記構成によれば、流量計を用いずに主室空気過剰率を推定することができ、燃焼安定化装置を簡略に構成することができる。もちろん、エアフローセンサ等を用いて直接吸入空気量を計測し、その計測値とガス燃料量を用いて主室空気過剰率を算出することも可能である。
【0019】
前記副室燃料量算出部は、前記副室燃料供給装置の入口圧及び出口圧の差圧と、前記副室燃料供給装置のガス燃料供給量とを用いて、前記副室燃料供給装置からのガス燃料量を算出し、そのガス燃料量に基づいて前記副室に導入されるガス燃料量を算出してもよい。
【0020】
前記構成によれば、副室燃料供給装置から供給されるガス燃料量を、当該ガス燃料量そのものを実際に検出又は測定することなく、算出することができるようになる。
【0021】
前記目標値が、ストイキオメトリ付近の一定の値に設定され、前記主室内の空気過剰率が、リーンに設定されてもよい。
【0022】
前記構成によれば、副室内の燃焼状態をガス燃料の性状が変動しても副室内の燃焼状態を安定させ続けることができると共に、ガスエンジン全体としての効率を高く保ち続けることができる。
【0023】
前記性状検出器が、ガス燃料の成分を検出するガスクロマトグラフィ、ガス燃料のメタン価を検出するメタン価センサ、ガス燃料の発熱量を検出するカロリーメータ、前記燃焼室からの燃焼排ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサのうち少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。
【0024】
前記構成によれば、ガス燃料の組成やメタン価等、理論空気量を算出するうえで有用な性状を取得することができ、副室内の空気過剰率を精度よく算出することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から明らかなように、副室式ガスエンジンにおいて、ガス燃料の性状の変動に対応して副室内の燃焼状態を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る燃焼安定化装置を適用した副室式ガスエンジンの全体構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係る燃焼安定化装置の構成を、図1に示すガスエンジン1の気筒の構成と併せて示す概念図である。
【図3】図2に示す制御器の構成を示すブロック図である。
【図4】ガス燃料の性状と理論空気量との対応関係を定めたマップ、ガス燃料の性状と目標副室空気過剰率との対応関係を定めたマップを直交座標系内で模式的に表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。同一の又は対応する要素には全ての図を通じて同一の符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。
【0028】
(ガスエンジン全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るガスエンジン1の全体構成を示す概念図である。図1に示すガスエンジン1は、ガス燃料を使用する4ストロークレシプロエンジンであり、燃焼室構造様式に「副室式」を採用しており、燃焼方式の一例として「火花点火式」を採用している。ガスエンジン1は、ガス燃料を含む混合気を燃焼し、出力軸2で回転出力を発生する。出力軸2は、図1に示すように、例えば交流発電機3と接続される。このように、ガスエンジン1を交流発電機3の駆動源に適用した発電システムは、産業用プラントに導入されてもよいし、船舶に搭載されてもよい。ガスエンジン1が船舶に搭載される場合、出力軸2を交流発電機3に替えて当該船舶の推進器に接続してもよい。
【0029】
ガスエンジン1は、複数の気筒4を有したエンジン本体5を備えている。なお、気筒4の数及び配列は、特に限定されない。ガスエンジン1には、給気を各気筒4に供給する給気ライン6と、排気を各気筒4から排出する排気ライン7と、給気ライン6及び排気ライン7に接続された過給機(ターボチャージャ)8とが設けられている。給気ライン6は、複数の気筒4に対して共通の共通部11と、共通部11を対応する気筒に接続する複数の分岐部12(図2参照)とを含む。排気ライン7も、複数の気筒4に対して共通の共通部13と、対応する気筒4を共通部13に接続する複数の分岐部14とを含む。給気ライン6の分岐部12の下流端部は、エンジン本体5内に形成された給気ポート12aであり、対応する気筒4の燃焼室32(詳しくは主室33)に連通している(図2を参照)。排気ライン7の分岐部14の上流端部は、エンジン本体5内に形成された排気ポート14aであり、対応する気筒4の燃焼室32(詳しくは主室33)に連通している(図2を参照)。過給機8は、排気ライン7の共通部13上のタービン9と、給気ライン6の共通部11上のコンプレッサ10とを有している。過給機8は、排気ライン7を流れる排気により駆動され、給気ライン6を流れるエアを過給する。また、排気ライン7の共通部には、タービン9をバイパスする排気バイパスライン15が接続されており、排気バイパスライン15上には開度可変の排気バイパス弁16が設けられている。排気バイパス弁16の開度を調整することにより、タービン9に供給される排気流量を調整することができ、それにより給気圧を調整可能になっている。
【0030】
ガスエンジン1には、ガス燃料を各気筒4に供給する燃料ライン25が設けられている。燃料ライン25は、燃料供給源(不図示)から延び、複数の気筒4に対して共通の共通部26と、共通部26から分岐し、共通部26から対応する気筒4へとガス燃料を導く複数の分岐部27とを含む。また、各気筒4には、主室燃料供給装置21、副室燃料供給装置22及び点火装置23が設けられている。このように1つの気筒4に2つの燃料供給装置21,22が設けられているので、燃料ライン25の分岐部27には、ガス燃料を共通部26から主室燃料供給装置21に導く主分岐部28と、ガス燃料を共通部26から副室燃料供給装置22に導く副分岐部29とが含まれる。
【0031】
図2は、本発明の実施形態に係る燃焼安定化装置100の構成を、図1に示すガスエンジン1の気筒4の構成と併せて示す概念図である。なお、図2は、1つの気筒4のみの構成を示しているが、他の気筒4も同様の構成を有している。図2に示すように、各気筒4内には、ピストン31が往復動自在に挿入されている。ピストン31は不図示のコネクティングロッドを介して出力軸2に連結されている。
【0032】
また、各気筒4には、混合気を燃焼させる燃焼室32が設けられている。燃焼室32は、ピストン31の上面側に形成される主室33と、主室33と連通した副室34とを有している。副室34は、主室33の上部に設けられた隔壁35を介して主室33と区画され、また、隔壁35に形成された連通穴36を介して主室33と空間的に連通している。副室34の容積は、主室33の容積と比べて小さい。
【0033】
エンジン本体5は、前述した給気ポート12a及び排気ポート14aを有している。給気ポート12aは、給気ライン6の分岐部12を構成し、その下流端部にて主室33に連通している。排気ポート14aは、排気ライン7の分岐部14を構成し、その上流端部にて主室33に連通している。各気筒4には、給気弁37及び排気弁38が設けられている。給気弁37は、給気ポート12aの下流端部を開閉し、排気弁38は、排気ポート14aの上流端部を開閉する。
【0034】
主室燃料供給装置21は、燃料ライン25の主分岐部28上に介在し又は主分岐部28の末端に設けられ、ガス燃料を給気ライン6の分岐部12に供給する。本実施形態に係る主室燃料供給装置21は、エンジン本体5に取り付けられ、給気ポート12aにガス燃料を供給する。副室燃料供給装置22は、燃料ライン25の副分岐部29上に介在し又は副分岐部29の末端に設けられ、ガス燃料を副室34内に供給する。
【0035】
本実施形態では、各気筒4に、前述の隔壁35を有して副室34を形成する副室形成部材39が設けられており、副室形成部材39は、隔壁35が副室形成部材39の下端部をなすようにして、シリンダ軸線に沿って延在している。燃料ライン25の副分岐部29は、副室形成部材39の上部にて副室形成部材39内へと延び、副室34の内上面に開口している。副室燃料供給装置22は、副室形成部材39の外部に配置され、燃料ライン25の副分岐部29上に介在している。なお、副分岐部29上であって副室燃料供給装置22と副室34への開口との間には、逆止弁40が設けられている。これにより、副室34から副室燃料供給装置22に向けてガスが逆流するのを阻止することができる。
【0036】
主室燃料供給装置21及び副室燃料供給装置22は、例えば常閉電磁開閉弁であり、開弁指令が与えられている期間に開弁する。主室燃料供給装置21が開弁している間、ガス燃料が給気ポート12aに供給される。副室燃料供給装置22が開弁している間、ガス燃料が副室34に供給される。点火装置23は、副室形成部材39に取り付けられており、例えば火花を発生する部分が副室34内に配置されている。点火装置23は、例えば、通電時に火花を発生する電極を有した点火プラグである。
【0037】
上記構成のガスエンジン1においては、ピストン31が下動する給気行程では、給気弁37が開き、主室燃料供給装置21がガス燃料を給気ポート12aに供給する。これにより、過給機8からの給気と主室燃料供給装置21からのガス燃料との混合気が、給気ポート12aから主室33へと供給される。ピストン31が上動する圧縮行程では、給気弁37が閉じて混合気が主室33内で圧縮される。このとき、主室33内の圧縮混合気が連通穴36を通って副室34内に供給される。そして副室燃料供給装置22は、給気行程において、副室34内にガス燃料を噴射する。これにより副室34内の混合気の空気過剰率が、主室33内の混合気の空気過剰率と比べて小さくなる。
【0038】
圧縮行程が終了する時期の近傍で点火装置23が動作し、副室34内で火花が発生する。これにより副室34内の混合気が着火し、副室34内で火炎が発生する。副室34内の火炎は連通穴36を介して主室33内へと噴出され、この噴出されたトーチが主室33内の混合気を着火し、主室33内で火炎が伝播していく。このようにして副室34内及び主室33内の混合気が燃焼し、ピストン31が下動する(膨張行程)。この膨張行程後の排気行程では、排気弁38が開き、主室33内及び副室34内のガスが排気ライン7へと排出される。このとき、逆止弁40の作用により、燃焼排ガスが副分岐部29へ逆流するのを阻止することができる。
【0039】
(燃焼安定化装置)
このガスエンジン1には、燃焼安定化装置100が適用される。燃焼安定化装置100は、ガス燃料の性状の変動に対応して副室34内の燃焼状態を安定化させることを目的とした燃焼制御を実行する。燃焼安定化装置100は、前述した主室燃料供給装置21、副室燃料供給装置22及び点火装置23を備えている。更に、燃焼安定化装置100は、給気圧センサ51、給気温センサ52、ガス流量計53、副室入口圧センサ54、性状センサ55、制御器60を備えている。制御器60は、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェイスを備えている。制御器60の入力側が、給気圧センサ51、給気温センサ52、ガス流量計53、副室入口圧センサ54及び性状センサ55と接続されており、制御器60の出力側が主室燃料供給装置21、副室燃料供給装置22及び点火装置23と接続されている。
【0040】
給気圧センサ51及び給気温センサ52は、給気ライン6のうち過給機8よりも下流側に設けられている。給気圧センサ51は、過給機8から気筒4へと供給される給気の圧力を検出し、給気温センサ52は、過給機8から気筒4へと供給される給気の温度を検出する。ガス流量計53は、燃料ライン25を流れるガス燃料の流量を検出する。給気圧センサ51及び給気温センサ52は、給気ライン6の共通部11に設けられていてもよく、ガス流量計53は、燃料ライン25の共通部26に設けられていてもよい。副室入口圧センサ54は、気筒毎4に設けられており、燃料ライン25の副分岐部29を流れるガス燃料の圧力を検出する。
【0041】
ガス燃料の性状は、地域的又は時間的に変動する。性状センサ55は、このようにガス燃料の性状が変動しても、変動後のガス燃料の性状を検出することができる。性状センサ55は、ガス燃料の性状として、ガス燃料の組成など、理論空気量の算出に利用可能な指標又は指数を検出する。そこで性状センサ55には、燃料ライン25中のガス燃料の組成を検出するガスクロマトグラフィを適用してもよい。また、ガス燃料の理論空気量を算出するための指数として、メタン価を好適に適用可能である。一般的な傾向として、メタン価が大きいと、軽質の炭化水素の濃度が高いことを示し、メタン価が小さいと、重質の炭化水素の濃度が高いことを示す。このような観点から、性状センサ55には、燃料ライン25中のガス燃料のメタン価を検出するメタン価センサを好適に適用することができる。
【0042】
また、一般的な傾向として、軽質の炭化水素の濃度が高くなると、ガス燃料の単位体積当たりの発熱量が小さくなり、重質の炭化水素の濃度が高くなると、これとは逆になる。同一負荷、同一吸入空気量での運転中にガス燃料の性状が変動し、それにより単位体積当たりの発熱量が変化すると、その変化に応じて燃焼排ガスに含まれる酸素の濃度が変化する。つまり、運転状態が限定された条件で残存酸素濃度を計測することにより、ガス燃料の性状を推定することが可能である。このため、ガス燃料の理論空気量を算出するための指数として、ガス燃料の単位体積当たりの発熱量や残存酸素濃度を好適に適用可能である。
【0043】
このような観点から、性状センサ55には、燃料ライン25中のガス燃料の単位体積あたりの発熱量を検出するカロリーメータを適用してもよいし、排気ライン7中の残存酸素濃度を検出する酸素濃度センサを適用してもよい。なお、メタン価センサ、ガスクロマトグラフィ及びカロリーメータは、燃料ライン25のうち共通部26に設けられていることが好ましく、酸素濃度センサは、排気ライン7のうち共通部13に設けられていることが好ましい。なお、燃焼安定化装置100は、性状センサ55として、上記例示した4種のうち2種以上の検出器を備えていてもよい。
【0044】
本実施形態に係る制御器60は、ガス燃料の性状の変動に対応して、検出されたガス燃料の性状に応じた理論空気量を算出する。そして、算出された理論空気量を用いて副室内の空気過剰率を算出すると共に副室内の空気過剰率の目標値を設定する。そして、算出された副室内の空気過剰率が目標値となるように、副室燃料供給装置22を制御する。
【0045】
特に、本実施形態では、制御器60が、副室34内の空気過剰率の算出値を目標値に近づけるため、1エンジンサイクル内における副室燃料供給装置22の開弁期間(すなわち、1エンジンサイクル内で副室燃料供給装置22から副室34に供給される燃料量)を制御する。「空気過剰率」は、気筒4に供給された実際の燃料と空気の混合比(すなわち、空燃比)と理論空燃比との比率であり、気筒4に供給される混合気の空燃比を理論空燃比で割ったものである。別の言い方をすれば、燃料を過不足なく燃焼させる空気量である理論空気量に対して、実際に供給された空気量の割合である。理論空燃比及び理論空気量は、燃料の性状(特に、組成)に応じて化学量論的に変化する。以降の説明では、簡略化のため「空気過剰率」を「λ」と略称することもある。
【0046】
図3は、図2に示す燃焼安定化装置100の構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御器60は、上記の燃焼制御を実行する機能的ブロックとして、理論空気量算出部61と、目標副室λ設定部62と、副室λ算出部63と、副室燃料量算出部65と、定数記憶部66と、副室燃料供給制御部67とを有する。
【0047】
理論空気量算出部61は、性状センサ55により検出されたガス燃料の性状に対応した理論空気量を算出する。性状センサ55にガスクロマトグラフィを適用した場合には、検出されたガス燃料の詳細な組成から理論空気量を算出することができる。性状センサ55にメタン価センサ、カロリーメータ及び酸素濃度センサを適用した場合、制御器60は、図4に示すように、ガス燃料の性状と理論空気量との対応関係を定めた理論空気量マップ81を参照し、検出されたガス燃料の性状から理論空気量を算出する。例えば、メタン価が高いとき、単位体積当たりガス燃料の発熱量が小さいとき、残存酸素濃度が低いときには、理論空気量マップ81に従って比較的大きい値が理論空気量として算出される。前述したように、メタン価、ガス燃料の発熱量及び残存酸素濃度は、一般的な傾向として、ガス燃料中に含まれる炭化水素の炭素数と相関する。このため、これら指数と理論空気量との対応関係を定めたマップ81を作成し、当該マップ81を用いて当該指数に応じて算出された理論空気量から副室34内の空気過剰率(副室λ)を算出することに有意性がある。メタン価センサ、カロリーメータ及び酸素濃度センサを適用すると、ガスクロマトグラフィを適用した場合と比べて迅速に理論空気量を算出可能になるので、ガス燃料の性状変動に迅速に対処可能になる。
【0048】
目標副室λ設定部62は、副室34内の空気過剰率(副室λ)の目標値を設定する。図4において横軸方向に平行な実線82で示すように、副室λの目標値は、ガス燃料の性状に関わらず一定の値であってもよい。この場合、一定の値として、例えば、空燃比が理論空燃比である場合のλ値である1を適用してもよい。副室λの目標値は、メタン価、ガス燃料の発熱量又は残存酸素濃度等のガス燃料の性状に応じて、可変的に設定されてもよい。
【0049】
副室燃料量算出部65は、副室34に導入される空気量及び燃料量を算出する。副室燃料量算出部65は、副室燃料供給装置22から副室34に供給される燃料量と、主室33から副室34に入り込む混合気量とに基づいて、副室34に導入される空気量及び燃料量を算出する。一例として、副室燃料量算出部65は、次式(1)を用いて副室34に導入される燃料量V1を算出し、次式(2)を用いて副室34に導入される空気量V2を算出する。
【0050】
【数1】
【0051】
【数2】

ここで、Vpは副室34の容積、Vは副室燃料供給装置22から副室34に供給される燃料量、xはガス燃料に対応した理論空気量、λmは主室33の空気過剰率、εは圧縮比である。副室34の容積Vp及び圧縮比εはガスエンジン1の設計パラメータであって定数であり、定数記憶部66に予め記憶されている。副室燃料量算出部65は、定数記憶部66に記憶された容積Vp及び圧縮比εのデータを参照して、燃料量V1及び空気量V2を算出することができる。
【0052】
なお、上記式(1)及び(2)においては、副室燃料供給装置22が、圧縮行程下死点付近で、副室34へのガス燃料の供給が完了しているものとする。また、点火燃焼後に副室34内には、次サイクルでの燃焼に寄与するガスが残存しないものとしている。
【0053】
副室燃料供給装置22から副室34にガス燃料が供給されると、副室34は、燃料量Vのガス燃料と、副室容積Vpから当該ガス燃料量Vを差し引いた量の燃焼排ガスとで占められる(すなわち、燃焼排ガス量はVp−V)ものとする。
【0054】
副室燃料供給装置22から副室34に供給された燃料量Vは、副室燃料供給装置22の入口圧及び出口圧の差圧と、副室燃料供給装置22の燃料供給期間とを用いて、算出される。副室入口圧は、副室燃料供給装置22の入口部におけるガス燃料の圧力であり、副室入口圧センサ54により検出される。副室出口圧は、副室燃料給装置22の出口側の圧力である。この出口側は、連通穴36及び主室33を介して給気ポート11aに連通しており、給気圧が作用する部分であるので、副室出口圧には、給気圧センサ51の検出値又はその補正値を適用することができる。副室燃料量算出部65は、副室入口圧及び副室出口圧の差圧と、副室燃料供給期間とから、当該副室燃料供給期間で副室燃料供給装置22から副室34へと供給された燃料量を算出する。
【0055】
上記式(1)のガス燃料量V1及び上記式(2)の空気量V2はどちらも、副室34が圧縮比εで圧縮されたときの値を表している。副室燃料供給装置22から供給されたガス燃料はV/εに圧縮され、燃焼排ガスは(Vp−V)/εに圧縮される。これらを加算するとVp/εとなり、当該加算値と、主室33から副室34に入り込んだ混合気量との和が、Vpとなる。すなわち、主室33から副室34に入り込んだ混合気量は、Vp(1−1/ε)である。上記式(1)及び(2)は、因子Vp(1−1/ε)を含んでおり、ガス燃料量V1及び空気量V2を算出するに際して主室33から副室34に入り込んだ混合気量を考慮したものとなっている。
【0056】
上記式(1)及び(2)に示すとおり、主室33の空気過剰率λmと、ガス燃料に対応した理論空気量xとを用いれば、混合気量Vp(1−1/ε)に基づき、主室33から入り込んだ混合気に含まれる燃料量と空気量とをそれぞれ求めることができる。制御器60は、ガス燃料の性状に応じて理論空気量を算出する理論空気量算出部61を有しているので、副室燃料量算出部65は、理論空気量算出部61による算出結果を参照して、主室33から入り込んだ混合気中の燃料量と空気量とをそれぞれ求めることができる。
【0057】
主室33の空気過剰率λmは、主室33に供給される燃料量と、主室33に供給される空気量とを用いて算出することができる。主室33に供給される燃料量は、副室34と同様、主室燃料供給装置21の入口圧及び出口圧の差圧と、主室燃料供給装置21の燃料供給期間とに基づいて求められる。その他、ガス流量計53の検出値から、副室燃料供給装置22から副室34に供給された燃料量を差し引いた値としてもよい。なお、逆に、副室燃料給装置22から副室34に供給された燃料量を、ガス流量計53の検出値から、主室燃料供給装置21からの燃料量を差し引いた値としてもよい。主室33に供給される空気量は、給気ライン6に設けたエアフローセンサ(図示せず)によって直接的に検出してもよい。また、エンジン回転速度及びガス密度に応じてスピードデンシティ法を用いて算出してもよい。
【0058】
なお、空気過剰率は、空気量を燃料量で除算し、当該除算値に理論空気量の逆数を乗算することにより求められるので、空気過剰率に理論空気量を乗算すれば当該除算値になる。このため、式(1)において、1/(λm×x+1)は、混合気中燃料量の混合気量に対する割合に等しい。式(2)において、[1−1/(λm×x+1)]は、混合気中空気量の混合気量に対する割合に等しい。よって、V1及びV2を算出するための式が、必ずしも主室33の空気過剰率λx及び理論空気量xを因子として含んでいなくてもよい。主室33に供給された混合気中に含まれる燃料量と空気量との比がわかるのであれば、この比を用いて、主室33から副室34に入り込んだ混合気中の燃料量及び空気量をそれぞれ算出することができる。
【0059】
副室燃料量算出部65は、このようにして主室33を介して副室34に供給される混合気量に基づいて、副室34に供給される空気量を算出する。また、副室燃料量算出部65は、主室33を介して副室34に供給される燃料量と、副室燃料供給装置22から副室34に直接的に供給される燃料量とに基づいて、副室34に供給される燃料量を算出する。
【0060】
副室λ算出部63は、副室燃料量算出部65により算出された副室34に供給される空気量及び燃料量と、理論空気量算出部61により算出された理論空気量とから、実際の副室λを算出する。副室λは、副室34に供給される空気量を副室34に供給される燃料量で除算し、当該除算値に理論空気量の逆数を乗算することによって求めることができる。なお、上記式(1)及び(2)それぞれを用いて副室34に供給される燃料量及び空気量を算出する場合、副室34の空気過剰率λpは次式(3)より求められる。
【0061】
【数3】

本実施形態に係る制御器60においては、前述した副室燃料量算出部65により算出される空気量及び燃料量からわかるとおり、副室34に供給された空気量が、設計パラメータである副室容積、圧縮比はもちろん、圧縮行程において主室33から副室34へと連通穴36を介して入り込む空気量を考慮に入れて算出される。副室34に供給された燃料量が、副室燃料供給装置22から副室34へと供給されたガス燃料量と、圧縮行程において主室33から副室34へと連通穴36を介して入り込む燃料量とを考慮に入れて算出される。副室λ算出部63は、このようにして算出された副室34に供給される空気量及び燃料量と、理論空気量算出部61により算出された理論空気量とから、副室λを算出する。
【0062】
副室燃料供給制御部67は、比較器68と調整器69とを有し、比較器68は、副室λ算出部63により算出された副室λの算出値と、目標副室λ設定部62により設定された副室λの目標値とを比較し、副室λの制御偏差を算出する。調整器69は、算出された制御偏差に応じてPID調整を行い、副室λの算出値が目標値となるよう副室34へのガス燃料の供給期間の目標値である目標副室燃料供給期間を設定する。そして、副室燃料供給制御部67は、次の給気及び/又は圧縮行程においてガス燃料が目標副室燃料供給期間で供給されるように副室燃料供給装置22を制御する。
【0063】
上記構成の燃焼安定化装置100によれば、副室λが、ガス燃料の性状に対応する理論空気量を用いて算出され、その算出値が目標値となるように副室34へのガス燃料の供給期間を設定している。副室λの目標値を燃焼状態の安定化を担保するための適切な値に設定しておけば、ガス燃料の性状の変動により理論空気量が変動しても、副室34に供給される燃料量が調整され、それにより副室λを燃焼状態の安定化を担保する当該適切な値となるよう制御することができる。これにより、ガス燃料の性状が変動しても、副室34内の混合気が正常に着火し、ひいては主室33内の燃焼状態を安定化させやすくなる。
【0064】
目標値を1に設定して副室λがストイキオメトリ(理論空燃比)付近となるように制御すると、副室34内の燃焼状態を安定させやすくなるので有益である。本実施形態に係る燃焼安定化装置100は、ガス燃料の性状の変動があっても燃料量を調整することで空気過剰率の変動に対処するものであり、副室34の燃焼状態を効果的に安定させることができる。一方、主室λをリーンに設定しておけば、ガス燃料の性状変動に関わらずガスエンジン全体の効率を高く維持することができる。
【0065】
上記燃焼制御においては、副室λをガス燃料の性状の変動に対処して制御するため、副室λを正確に算出することが肝要である。そこで、本実施形態に係る燃焼安定化装置100においては、副室λ算出部63が、副室に導入される燃料量及び空気量に基づいて副室λを算出する。これにより、副室式ガスエンジン1において、圧縮行程において主室33から副室34に入り込む空気量と燃料量とを考慮に入れて副室λを算出することができる。すなわち、主室33から副室34に入り込む空気量及び燃料量(混合気量)は、給気圧及び給気温に応じて算出される。気筒付近に流量計を設けることなく混合気量を算出可能になるので、燃焼安定化装置を簡略にすることができる。更に、本実施形態に係る燃焼安定化装置100においては、副室λ算出部63が、副室燃料供給装置22から副室34に供給された燃料量を参照して、副室λを算出する。この燃料量は、副室入口圧及び副室出口圧との差圧を考慮して算出されている。このため、副室34に供給された燃料量を正確に算出することができ、この燃料量の算出値を参照して副室λを算出しているので、副室λの算出精度も向上する。このように、副室λの算出精度が向上するので、副室34の燃焼状態を安定化させやすくなり、ひいては主室33の燃焼状態の安定化にも資する。
【0066】
これまで本発明の実施形態について説明したが、上記構成は本発明の範囲内で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、ガス燃料の性状の変動に対応して副室内の燃焼状態を安定化することができるとの顕著な作用効果を奏し、副室にガス燃料を供給する副室燃料供給装置を備えた副室式ガスエンジンに適用すると有益である。
【符号の説明】
【0068】
1 ガスエンジン
4 気筒
6 給気ライン
7 排気ライン
15 燃料ライン
21 主室燃料供給装置
22 副室燃料供給装置
23 点火装置
32 燃焼室
33 主室
34 副室
51 給気圧センサ
52 給気温センサ
53 ガス流量計
54 副室入口圧センサ
55 性状センサ
60 制御器
61 理論空気量算出部
62 目標副室λ設定部(目標副室空気過剰率設定部)
63 副室λ算出部(副室空気過剰率算出部)
65 副室燃料量算出部
66 定数記憶部
67 副室燃料供給制御部
100 燃焼安定化装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】

【手続補正書】
【提出日】20151225
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主室及び該主室と連通する副室を有する燃焼室を備えた副室式ガスエンジンに適用される燃焼安定化装置であって、
前記主室にガス燃料を供給する主室燃料供給装置と、
前記副室にガス燃料を供給する副室燃料供給装置と、
前記副室式ガスエンジンの圧縮比および副室容積を記憶する定数記憶部と、
ガス燃料の性状を検出する性状検出器と、
検出されたガス燃料の性状に対応する理論空気量を算出する理論空気量算出部と、
前記副室内の空気過剰率の目標値を設定する目標副室空気過剰率設定部と、
前記副室燃料供給装置より副室に供給されるガス燃料量、前記定数記憶部に記憶される前記圧縮比および前記副室容積、前記主室内の空気過剰率、前記理論空気量算出部により算出された理論空気量に基づいて、前記主室から前記副室に供給される空気量と、前記副室燃料供給装置及び前記主室から前記副室に供給されるガス燃料量を算出する副室燃料量算出部と、
前記副室燃料量算出部により算出された空気量及びガス燃料量と、前記理論空気量算出部により算出された理論空気量とから前記副室内の空気過剰率を算出する副室空気過剰率算出部と、
前記副室内の空気過剰率の算出値が前記目標値となるように前記副室へのガス燃料の供給量の目標値である目標副室燃料供給量を設定し、該目標副室燃料供給量のガス燃料が供給されるように前記副室燃料供給装置を制御する副室燃料供給制御部と、を備える、副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項2】
前記副室燃料供給装置から前記副室に供給されるガス燃料量をV、前記圧縮比をε、前記副室容積をVp、前記主室内の空気過剰率をλm、前記理論空気量をxとする場合において、前記副室空気過剰率算出部は、前記副室内の空気過剰率λpを、
λp=λm/[(V/Vp){(λm×x+1)/(ε−1)}+1]
から算出する、請求項1に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項3】
前記副室燃料量算出部は、前記主室から前記副室に入り込む混合気量を給気圧及び給気温を用いて算出する、請求項1又は2に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項4】
前記副室燃料量算出部は、前記副室燃料供給装置の入口圧及び出口圧の差圧と、前記副室燃料供給装置のガス燃料供給期間とを用いて、前記副室燃料供給装置からのガス燃料量を算出し、そのガス燃料量に基づいて前記副室に供給されるガス燃料量を算出する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項5】
前記目標値が、ストイキオメトリ付近の一定の値に設定され、前記主室内の空気過剰率が、リーンに設定される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項6】
前記性状検出器が、ガス燃料の成分を検出するガスクロマトグラフィ、ガス燃料のメタン価を検出するメタン価センサ、ガス燃料の発熱量を検出するカロリーメータ、前記燃焼室からの燃焼排ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサのうち少なくともいずれか1つを含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
前記副室燃料量算出部は、前記副室燃料供給装置の入口圧及び出口圧の差圧と、前記副室燃料供給装置のガス燃料供給期間とを用いて、前記副室燃料供給装置からのガス燃料量を算出し、そのガス燃料量に基づいて前記副室に導入されるガス燃料量を算出してもよい。

【手続補正書】
【提出日】20160527
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主室及び該主室と連通する副室を有する燃焼室を備えた副室式ガスエンジンに適用される燃焼安定化装置であって、
前記主室にガス燃料を供給する主室燃料供給装置と、
前記副室にガス燃料を供給する副室燃料供給装置と、
前記副室式ガスエンジンの圧縮比および副室容積を記憶する定数記憶部と、
ガス燃料の性状を検出する性状検出器と、
検出されたガス燃料の性状に対応する理論空気量を算出する理論空気量算出部と、
前記副室内の空気過剰率の目標値を設定する目標副室空気過剰率設定部と、
前記副室燃料供給装置より副室に供給されるガス燃料量、前記定数記憶部に記憶される前記圧縮比および前記副室容積、前記主室内の空気過剰率、前記理論空気量算出部により算出された理論空気量に基づいて、前記主室から前記副室に供給される空気量と、前記副室燃料供給装置及び前記主室から前記副室に供給されるガス燃料量とを算出する副室燃料量算出部と、
前記副室燃料量算出部により算出された空気量及びガス燃料量と、前記理論空気量算出部により算出された理論空気量とから前記副室内の空気過剰率を算出する副室空気過剰率算出部と、
前記副室内の空気過剰率の算出値が前記目標値となるように前記副室へのガス燃料の供給量の目標値である目標副室燃料供給量を設定し、該目標副室燃料供給量のガス燃料が供給されるように前記副室燃料供給装置を制御する副室燃料供給制御部と、を備える、副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項2】
前記副室燃料供給装置から前記副室に供給されるガス燃料量をV、前記圧縮比をε、前記副室容積をVp、前記主室内の空気過剰率をλm、前記理論空気量をxとする場合において、前記副室空気過剰率算出部は、前記副室内の空気過剰率λpを、
λp=λm/[(V/Vp){(λm×x+1)/(ε−1)}+1]
から算出する、請求項1に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項3】
前記副室燃料量算出部は、前記副室燃料供給装置の入口圧及び出口圧の差圧と、前記副室燃料供給装置のガス燃料供給期間とを用いて、前記副室燃料供給装置からのガス燃料量を算出し、そのガス燃料量に基づいて前記副室に供給されるガス燃料量を算出する、請求項1又は2に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項4】
前記目標値が、ストイキオメトリ付近の一定の値に設定され、前記主室内の空気過剰率が、リーンに設定される、請求項1乃至のいずれか1項に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【請求項5】
前記性状検出器が、ガス燃料の成分を検出するガスクロマトグラフィ、ガス燃料のメタン価を検出するメタン価センサ、ガス燃料の発熱量を検出するカロリーメータ、前記燃焼室からの燃焼排ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサのうち少なくともいずれか1つを含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の副室式ガスエンジン用の燃焼安定化装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものである。本発明に係る燃焼安定化装置は、主室及び該主室と連通する副室を有する燃焼室を備えた副室式ガスエンジンに適用される燃焼安定化装置であって、前記主室にガス燃料を供給する主室燃料給装置と、前記副室にガス燃料を供給する副室燃料供給装置と、前記副室式ガスエンジンの圧縮比および副室容積を記憶する定数記憶部と、ガス燃料の性状を検出する性状検出器と、検出されたガス燃料の性状に対応する理論空気量を算出する理論空気量算出部と、前記副室内の空気過剰率の目標値を設定する目標副室空気過剰率設定部と、前記副室燃料供給装置より副室に供給されるガス燃料量、前記定数記憶部に記憶される前記圧縮比および前記副室容積、前記主室内の空気過剰率、前記理論空気量算出部により算出された理論空気量に基づいて、前記主室から前記副室に供給される空気量と、前記副室燃料供給装置及び前記主室から前記副室に供給されるガス燃料量を算出する副室燃料量算出部と、前記副室燃料量算出部により算出された空気量及びガス燃料量と、前記理論空気量算出部により算出された理論空気量とから、前記副室内の空気過剰率を算出する副室空気過剰率算出部と、前記副室内の空気過剰率の算出値が前記目標値となるように前記副室へのガス燃料の供給量の目標値である目標副室燃料供給量を設定し、該目標副室燃料供給量のガス燃料が供給されるように前記副室燃料供給装置を制御する副室燃料供給制御部と、を備える。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
前記構成によれば、副室内の空気過剰率を、ガス燃料の性状に応じて算出された理論空気量から算出し、その算出値が目標値となるように副室へのガス燃料の供給量が設定される。主室から副室に入り込む空気量及びガス燃料量を考慮して副室内の空気過剰率を算出するので、副室内の空気過剰率の算出精度が向上する。副室内の空気過剰率の目標値を燃焼状態の安定化を担保するための適切な値に設定しておきさえすれば、ガス燃料の性状の変動によって理論空気量が変動しても、副室に導入される燃料供給量を調整することにより、副室内の空気過剰率を燃焼状態の安定化を担保する適切な値となるように制御することができる。これにより、ガス燃料の性状が変動しても、副室内の混合気が正常に着火し、それにより主室内の燃焼状態を安定化させやすくもなる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
前記副室燃料供給装置から前記副室に供給されるガス燃料量をV、前記圧縮比をε、前記副室容積をVp、前記主室内の空気過剰率をλm、前記理論空気量をxとする場合において、前記副室空気過剰率算出部は、前記副室内の空気過剰率λpを、λp=λm/[(V/Vp){(λm×x+1)/(ε−1)}+1]から算出してもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
前記副室燃料量算出部は、前記副室燃料供給装置の入口圧及び出口圧の差圧と、前記副室燃料供給装置のガス燃料供給期間とを用いて、前記副室燃料供給装置からのガス燃料量を算出し、そのガス燃料量に基づいて前記副室に供給されるガス燃料量を算出してもよい。
【国際調査報告】