(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014054294
(43)【国際公開日】20140410
【発行日】20160825
(54)【発明の名称】イソチアゾール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 275/02 20060101AFI20160729BHJP
【FI】
   !C07D275/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
【出願番号】2014539620
(21)【国際出願番号】JP2013005925
(22)【国際出願日】20131004
(11)【特許番号】5753632
(45)【特許公報発行日】20150722
(31)【優先権主張番号】2012223321
(32)【優先日】20121005
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000102049
【氏名又は名称】イハラケミカル工業株式会社
【住所又は居所】東京都台東区池之端1丁目4番26号
(74)【代理人】
【識別番号】100091247
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 雅人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 尚司
【住所又は居所】静岡県富士市中之郷2256番地 イハラケミカル工業株式会社研究所内
【テーマコード(参考)】
4C033
【Fターム(参考)】
4C033AA06
4C033AA08
4C033AA19
(57)【要約】
【課題】イソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの工業的に好ましい製造方法を提供する。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒と塩素を同時に使用することを避けることにより、より安全な工業的製造方法を提供する。加えて、廃棄物の一部となる可能性が高い非プロトン性極性溶媒を用いないために、経済的に好ましい製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)
(式中、Rはシアノ基等を示す。)
で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱した後、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)
(式中、Xは塩素原子等を示す。)
で表されるハロゲンとの反応を行うことを特徴とする、一般式(3)
(式中、R及びXは前記で定義した通りである。)
で表されるイソチアゾール化合物の製造方法。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中、Rはシアノ基、カルボキシ基又はアルコキシカルボニル基を示す。)
で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱した後、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2):
【化2】

(式中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
で表されるハロゲンとの反応を行うことを特徴とする、一般式(3):
【化3】

(式中、R及びXは前記で定義した通りである。)
で表されるイソチアゾール化合物の製造方法。
【請求項2】
少なくとも一般式(1)で表されるニトリル化合物が溶融するまで、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄が溶融するまで、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を70℃以上に加熱する、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を90℃以上に加熱する、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を70から180℃の範囲の温度に加熱する、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を90から150℃の範囲の温度に加熱する、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、70℃以上で行われる、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、90℃以上で行われる、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、70から180℃の範囲の温度で行われる、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、90から150℃の範囲の温度で行われる、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、15時間以上で行われる、請求項1から11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、20時間以上で行われる、請求項1から11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、15から75時間の範囲の時間で行われる、請求項1から11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、20から50時間の範囲の時間で行われる、請求項1から11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、70から180℃の範囲の温度で、15から75時間の範囲の時間で行われる、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、90から150℃の範囲の温度で、15から75時間の範囲の時間で行われる、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、90から150℃の範囲の温度で、20から50時間の範囲の時間で行われる、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を仕込んだ後、そこへ一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われる、請求項1から18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄へ一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われる、請求項1から19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、溶融状態である一般式(1)で表されるニトリル化合物と、硫黄へ、一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われる、請求項1から19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、溶融状態である一般式(1)で表されるニトリル化合物と、溶融状態である硫黄へ、一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われる、請求項1から19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、70から180℃の範囲の温度で、15から75時間の範囲の時間で、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄へ一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われる、請求項1から19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、90から150℃の範囲の温度で、15から75時間の範囲の時間で、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄へ一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われる、請求項1から19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項25】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、90から150℃の範囲の温度で、20から50時間の範囲の時間で、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄へ一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われる、請求項1から19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項26】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、非プロトン性極性溶媒を用いることなく行われる、請求項1から25のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項27】
一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、無溶媒で行われる、請求項1から25のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項28】
一般式(1)におけるRがシアノ基である、請求項1から27のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項29】
一般式(1)におけるXが塩素原子である、請求項1から27のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項30】
一般式(1)におけるRがシアノ基であり、Xが塩素原子である、請求項1から27のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソチアゾール化合物の製造方法に関する。イソチアゾール化合物は、そのイソチアゾールという構造の故に、例えば、種々の有機化合物(例えば、医薬及び農薬等の生理活性な有機化合物、及び、機能性色素、電子材料等)の合成中間体として有用である。
【背景技術】
【0002】
上記のように、イソチアゾール化合物は、医薬中間体及び農薬中間体、機能性色素、電子材料等の中間体として広く知られている。それ故、非特許文献1及び2に開示されているように、これまでイソチアゾール化合物の製造方法について種々検討がなされてきている。
【0003】
イソチアゾール化合物の中でも、官能基の変換が容易に可能な3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールは、医薬中間体及び農薬中間体として知られている。又、特許文献4及び5に開示されるように、この化合物は実際に農薬の重要中間体として使用されている。
【0004】
しかしながら、非特許文献1及び2に記載の製造方法は、農薬の重要中間体として有用な3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造することが難しかったのである。
【0005】
即ち、従来、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造する方法として、二硫化炭素(CS)、シアン化ナトリウム(NaCN)及び塩素(Cl)を用いる方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法は、使用する原料に特殊引火物である二硫化炭素を用いるという欠点を有する。しかも、この方法は、毒物であるシアン化ナトリウムを用いるという欠点をも有する。更に、この方法では、加熱しながら、溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を含む反応器へ塩素を導入するのである。しかしながら、N,N−ジメチルホルムアミドと塩素を同時に使用すると、反応の暴走や爆発の可能性あることは当業者にはよく知られている。これらの理由のため、この方法の実施は、安全を保つための細心の注意と十分な対策を必要とすると考えられる。加えて、上記の通り、場合によっては反応の暴走及び爆発が起こる可能性があるため、この方法は生産プラントの安全性を保障できない可能性がある。つまり、安全性の欠如の懸念があるため、N,N−ジメチルホルムアミドと塩素を同時に使用するこの方法は、工業生産に好ましくないのである。
【0006】
3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造する他の方法として、トリクロロアセトニトリルと硫黄を用いる方法が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、この方法は、実施例に記載されているように、200℃から300℃の高温での反応を必要とするという欠点がある。又、この方法には、トリクロロアセトニトリルのような特殊な原料を使用する必要があるという欠点がある。
【0007】
更に、ジクロロフマロニトリルと硫黄を用いる方法が知られている(特許文献3参照)。しかしながら、この方法も実施例において230℃から300℃の高温での反応を必要とするという欠点がある。又、この方法にも、ジクロロフマロニトリルのような特殊な原料を使用する必要があるという欠点がある。
【0008】
更に他の製造方法として、フマロニトリル、マレオニトリル若しくはこれらの塩素置換体、又はこれらの混合物を非プロトン性極性溶媒中で塩化硫黄と反応させることによる方法が知られている(特許文献6参照)。この方法で使用するフマロニトリル、マレオニトリル及びこれらの塩素置換体又はこれらの混合物は、スクシノニトリルから製造できる(特許文献6の実施例7及び8を参照)のである。しかしながら、スクシノニトリルから2工程を要するという点で、特許文献6に記載の製造方法は更に改善されることが望まれる。
【0009】
加えて、フマロニトリル、マレオニトリル若しくはこれらの塩素置換体は、工業的に有意な昇華性を有すると考えられる。昇華性を有する化合物は一般に、その昇華により還流冷却器又はプラントのパイプラインの閉塞を起こす可能性がある。このため、特許文献6に記載の方法は、工業的な実施の操作において、注意と対策を必要とする可能性を有するという難点がある。
【0010】
その上、この方法はN,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒を必須とする。そして水を用いて後処理を行うため、非プロトン性極性溶媒の再利用には困難が伴う。従って、使用された非プロトン性極性溶媒は廃棄物の一部となる可能性が高いという難点がある。加えて、この方法では、N,N−ジメチルホルムアミドと塩素化合物である塩化硫黄を同時に使用する例がある。従って、いかなる状況にも備えるために、この方法は注意と対策を必要とする可能性がある。従って、この方法には、未だ改善の余地がある。
【0011】
一方、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造方法として、スクシノニトリル、硫黄及び塩素を用いる方法が知られている(特許文献7を参照)。しかしながら、この方法も溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを必要としている。つまり、N,N−ジメチルホルムアミドと塩素を同時に使用することになるため、反応の暴走及び爆発の可能性がある。この理由のため、この方法の実施も、安全を保つための細心の注意と十分な対策を必要とすると考えられる。加えて、上記の通り、場合によっては、反応の暴走及び爆発が起こる可能性があるため、この方法は生産プラントの安全性を保障できない可能性がある。つまり、安全性の欠如の懸念があるため、N,N−ジメチルホルムアミドと塩素を同時に使用するこの方法は、工業生産に好ましくないのである。
【0012】
その上、特許文献7に記載の方法では、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒を必須とする。そして水を用いて後処理を行うため、非プロトン性極性溶媒の再利用には困難が伴う。従って、使用された非プロトン性極性溶媒は廃棄物の一部となる可能性が高いという難点がある。つまり、この方法には、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許3341547号明細書
【特許文献2】DE2231097(DT2231097)号公報
【特許文献3】DE2231098(DT2231098)号公報
【特許文献4】特開平5−59024号公報
【特許文献5】特許第4088036号
【特許文献6】国際公開第2010/126170号公報
【特許文献7】特開2010−260805号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Tetrahedron Lett., No.42, 1970, pp.3719−3722
【非特許文献2】Chem.Commun., 2002, pp.1872−1873
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒と塩素を同時に使用することを避けることにより、イソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールのより安全な工業的製造方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、廃棄物の一部となる可能性が高いN,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒を用いないために、経済的に好ましい、イソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明の更に他の目的は、注意と対策を必要とする可能性がある原料及び特殊な原料を実質的に使用しないイソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造方法を提供することにある。注意と対策を必要とする可能性がある原料の例は、青酸ガス及びシアン化物イオンの源である極めて毒性が高い無機シアン化物である。又、注意と対策を必要とする可能性がある原料の他の例は、特殊引火物である。又、注意と対策を必要とする可能性がある原料の更に他の例は、工業的に有意な昇華性を有する有機化合物である。
【0018】
本発明の更に他の目的は、入手が容易で安価な原料を使用してイソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールをできる方法を提供することにある。
【0019】
本発明の更に他の目的は、簡便な操作により工業化に適したイソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造方法を提供することにある。
【0020】
例えば、前記特許文献6に記載の製造方法は、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造するために、スクシノニトリルから2工程を必要とするが、スクシノニトリルから1工程のみで、例えば3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを簡便に製造できる方法を提供することが本発明の目的の一つである。
【0021】
要するに、本発明の目的は、イソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの工業的に好ましい製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記のような状況に鑑み、本発明者は、後記一般式(3)で表されるイソチアゾール化合物を製造する方法について鋭意研究した。その結果、本発明者は、意外にも、後記一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱した後、後記一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と後記一般式(2)で表されるハロゲンとの反応を行うことにより、後記一般式(3)で表されるイソチアゾール化合物を製造できることを見出した。とりわけ、本発明者は、意外にも、後記式(4)で表されるスクシノニトリルと硫黄を加熱した後、後記式(4)で表されるスクシノニトリルと硫黄と式(5)で表される塩素との反応を行うことにより、後記式(6)で表される3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造できることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者は本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
【0023】
〔1〕一般式(1):
【化1】

(式中、Rはシアノ基、カルボキシ基又はアルコキシカルボニル基を示す。)
で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2):
【化2】

(式中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
で表されるハロゲンとの反応を行うことを特徴とする、一般式(3):
【化3】

(式中、R及びXは前記で定義した通りである。)
で表されるイソチアゾール化合物の製造方法。
【0024】
〔2〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱した後、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応を行う、〔1〕に記載の製造方法。
【0025】
〔3〕少なくとも一般式(1)で表されるニトリル化合物が溶融するまで、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱する、〔1〕に記載の製造方法。
【0026】
〔4〕少なくとも一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄の一部が溶融するまで、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱する、〔1〕に記載の製造方法。
【0027】
〔5〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄が溶融するまで、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱する、〔1〕に記載の製造方法。
【0028】
〔6〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を70℃以上に加熱する、〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0029】
〔7〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を90℃以上に加熱する、〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0030】
〔8〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を50から200℃の範囲の温度に加熱する、〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0031】
〔9〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を70から180℃の範囲の温度に加熱する、〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0032】
〔10〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を90から150℃の範囲の温度に加熱する、〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0033】
〔11〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、70℃以上で行われる、〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0034】
〔12〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、90℃以上で行われる、〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0035】
〔13〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、50から200℃の範囲の温度で行われる、〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0036】
〔14〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、70から180℃の範囲の温度で行われる、〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0037】
〔15〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、90から150℃の範囲の温度で行われる、〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0038】
〔16〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、15時間以上で行われる、〔1〕から〔15〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0039】
〔17〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、20時間以上で行われる、〔1〕から〔15〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0040】
〔18〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、15から75時間の範囲の時間で行われる、〔1〕から〔15〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0041】
〔19〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、20から50時間の範囲の時間で行われる、〔1〕から〔15〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0042】
〔20〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を仕込んだ後、そこへ一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われる、〔1〕から〔19〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0043】
〔21〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄へ一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われる、〔1〕から〔20〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0044】
〔22〕一般式(1)で表されるニトリル化合物が溶融状態である、〔1〕又は〔6〕から〔21〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0045】
〔23〕硫黄が溶融状態である、〔1〕又は〔6〕から〔21〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0046】
〔24〕一般式(1)で表されるニトリル化合物が溶融状態であり、硫黄が溶融状態である、〔1〕又は〔6〕から〔21〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0047】
〔25〕一般式(2)で表されるハロゲンの導入が、70℃以上で行われる、〔20〕から〔24〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0048】
〔26〕一般式(2)で表されるハロゲンの導入が、90℃以上で行われる、〔20〕から〔24〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0049】
〔27〕一般式(2)で表されるハロゲンの導入が、50から200℃の範囲の温度で行われる、〔20〕から〔24〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0050】
〔28〕一般式(2)で表されるハロゲンの導入が、70から180℃の範囲の温度で行われる、〔20〕から〔24〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0051】
〔29〕一般式(2)で表されるハロゲンの導入が、90から150℃の範囲の温度で行われる、〔20〕から〔24〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0052】
〔30〕一般式(2)で表されるハロゲンの導入が、15時間以上で行われる、〔20〕から〔29〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0053】
〔31〕一般式(2)で表されるハロゲンの導入が、20時間以上で行われる、〔20〕から〔29〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0054】
〔32〕一般式(2)で表されるハロゲンの導入が、15から75時間の範囲の時間で行われる、〔20〕から〔29〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0055】
〔33〕一般式(2)で表されるハロゲンの導入が、20から50時間の範囲の時間で行われる、〔20〕から〔29〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0056】
〔34〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、非プロトン性極性溶媒を用いることなく行われる、〔1〕から〔33〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0057】
〔35〕一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、無溶媒で行われる、〔1〕から〔33〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0058】
〔36〕硫黄の使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して硫黄原子として0.5モル以上20モル以下である、〔1〕から〔35〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0059】
〔37〕硫黄の使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して硫黄原子として0.9モル以上12モル以下である、〔1〕から〔35〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0060】
〔38〕硫黄の使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して硫黄原子として0.9モル以上4モル以下である、〔1〕から〔35〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0061】
〔39〕硫黄の使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して硫黄原子として1モル以上20モル以下である、〔1〕から〔35〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0062】
〔40〕硫黄の使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して硫黄原子として1モル以上12モル以下である、〔1〕から〔35〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0063】
〔41〕硫黄の使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して硫黄原子として1モル以上4モル以下である、〔1〕から〔35〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0064】
〔42〕硫黄の使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して硫黄原子として2モル未満である、〔1〕から〔35〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0065】
〔43〕硫黄の使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して硫黄原子として1モル以上2モル未満である、〔1〕から〔35〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0066】
〔44〕硫黄の使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して硫黄原子として2モル以上10モル以下である、〔1〕から〔35〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0067】
〔45〕硫黄の使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して硫黄原子として2モル以上4モル以下である、〔1〕から〔35〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0068】
〔46〕一般式(2)で表されるハロゲンの使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して2モル以上20モル以下である、〔1〕から〔45〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0069】
〔47〕一般式(2)で表されるハロゲンの使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して2モル以上10モル以下である、〔1〕から〔45〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0070】
〔48〕一般式(2)で表されるハロゲンの使用量が、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して2モル以上5モル以下である、〔1〕から〔45〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0071】
〔49〕一般式(1)におけるRがシアノ基である〔1〕から〔48〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0072】
〔50〕一般式(1)におけるXが塩素原子又は臭素原子である〔1〕から〔49〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【0073】
〔51〕一般式(1)におけるXが塩素原子である〔1〕から〔49〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0074】
本発明により、イソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの新規な工業的製造方法が提供される。
【0075】
本発明によれば、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒と塩素を同時に使用することを避けることにより、イソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールのより安全な製造方法が提供される。即ち、本発明によれば、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒を溶媒として使用しないことにより、安全を保つための特別な注意も特別な対策も必要としない製造方法が提供される。
【0076】
N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒の使用を避けることは、先行技術に比較して、本発明方法の有意に改善された安全性、即ち本発明方法の優位性を意味する。言い換えれば、それらは工業的な生産中の危険な分解などのリスクを本質的に減らす。従って、本発明方法は、パイロットプラント又は工業的な生産のような大きなスケールでの製造に安全に適用することができる。
【0077】
加えて、本発明方法によれば、反応溶媒を用いることなく、目的のイソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造することができる。従って、本発明方法は、先行技術に比較して、経済的に好ましい。特に、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒は、水を用いた後処理により再利用に困難が伴う。従って、非プロトン性極性溶媒は廃棄物の一部となる可能性が高い。しかしながら、本発明方法では、非プロトン性極性溶媒を用いることなく、目的化合物を製造できる。従って、本発明方法は、廃棄物を低減できる。つまり、本発明方法は、環境負荷を低減することができるのである。
【0078】
更に、本発明方法によれば、注意と対策を必要とする可能性がある原料及び特殊な原料を実質的に使用しないで、イソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造できる。注意と対策を必要とする可能性がある原料の例は、青酸ガス及びシアン化物イオンの源である極めて毒性が高い無機シアン化物である。又、注意と対策を必要とする可能性がある原料の他の例は、特殊引火物である。又、注意と対策を必要とする可能性がある原料の更に他の例は、工業的に有意な昇華性を有する有機化合物である。
【0079】
その上、本発明方法によれば、ニトリル化合物、硫黄及びハロゲンを同時に反応させることにより、イソチアゾール化合物を、出発原料のニトリル化合物からわずか1工程だけで、簡便な操作により、目的のイソチアゾール化合物を製造できる。特に、本発明方法によれば、スクシノニトリル、硫黄及び塩素を同時に反応させることにより、出発原料のスクシノニトリルからわずか1工程だけで、簡便な操作により、目的の3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造できる。
【0080】
本発明方法における原料については、ニトリル化合物の中でもスクシノニトリル、硫黄、及びハロゲンの中でも塩素のいずれもが、化学工業において汎用されている原材料であり、入手が容易であるだけでなく、安価である。
【0081】
更に、本発明方法によれば、著しい高温等を必要としない工業化に適した条件で、イソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造できる。具体的に、例えば、本発明方法は200℃以上の高温を必要としない。
【0082】
加えて、後述のように、本発明方法によれば、必要に応じて、廃棄物としての硫黄及び/又はタールを抑制又は減少することが可能な選択肢も提供される。つまり、本発明方法は、環境負荷をより一層低減した条件を選択することもできる。
【0083】
従って、本発明方法は、工業的な実施における様々な好ましい選択肢を提供することも又可能である。更に、本発明方法は、特殊な反応装置を必要とせず、簡便に、工業的規模で実施することができる。
【0084】
従って、本発明方法は高い工業的な利用価値を有する。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0086】
本発明は、具体的には一般式(1):
【化4】

(式中、Rはシアノ基、カルボキシ基又はアルコキシカルボニル基を示す。)
で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱した後、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2):
【化5】

(式中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
で表されるハロゲンとの反応を行うことを特徴とする、一般式(3):
【化6】

(式中、R及びXは前記で定義した通りである。)
で表されるイソチアゾール化合物の製造方法に関する。
【0087】
本発明方法は、とりわけ、式(4):
【化7】

で表されるスクシノニトリルと硫黄を加熱した後、
スクシノニトリルと硫黄と式(5):
【化8】

で表される塩素との反応を行うことを特徴とする、式(6):
【化9】

で表される3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造方法に関する。
【0088】
本明細書において用いられる用語及び記号について以下に説明する。
【0089】
「Ca〜Cb」とは炭素原子数がa〜b個であることを意味する。例えば、「C1〜C4アルキル」とは、アルキルの炭素原子数が1〜4であることを意味する。
【0090】
アルキル基としては、例えば、C1〜C4アルキル基が挙げられる。C1〜C4アルキルとは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味する。C1〜C4アルキルとしては、具体的には例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられる。
【0091】
アルコキシカルボニル基としては、例えば、C1〜C4アルコキシカルボニル基が挙げられる。C1〜C4アルコキシカルボニル基とは、(C1〜C4アルキル)−O−C(=O)−基を意味する(ここで、C1〜C4アルキル基は前述と同じ意味を有する。)。C1〜C4アルコキシカルボニル基としては、具体的には例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、好ましくは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニルが挙げられる。
【0092】
(原料化合物)
本発明方法の原料について説明する。
【0093】
(ニトリル化合物)
本発明方法の原料として、上記一般式(1)で表されるニトリル化合物を用いる。式(1)中、Rはシアノ基、カルボキシ基又はアルコキシカルボニル基を示すから、上記一般式(1)で表されるニトリル化合物としては、スクシノニトリル、3−シアノプロピオン酸、3−シアノプロピオン酸メチル、3−シアノプロピオン酸エチル、3−シアノプロピオン酸プロピル、3−シアノプロピオン酸イソプロピル、3−シアノプロピオン酸ブチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
尚、入手性、価格及び生成物の有用性等の観点から、本発明方法に用いるニトリル化合物としては、上記式(4)で表されるスクシノニトリルが特に好ましい。スクシノニトリルは、現在、工業的に比較的安価に入手可能である。更に、スクシノニトリルは、取り扱い及び毒性の面からも工業的原材料として好ましい。
【0095】
(硫黄)
本発明方法に用いる硫黄について説明する。本発明方法には、単体硫黄を用いる。本発明方法に用いる硫黄の形態は、特に制限されず、反応が進行する限りはいずれの形態でもよい。
【0096】
本発明方法における硫黄の使用量は、反応が進行する限りはいずれの量でもよい。
【0097】
収率及び/又は副生成物の抑制、及び経済効率等の観点から、本発明方法における硫黄の使用量としては、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して、硫黄原子として、0.5モル以上、好ましくは0.9モル以上、より好ましくは1モル以上を例示することができる。
【0098】
加えて、廃棄物としての硫黄及び/又はタールの抑制よりも収率の向上が求められる場合には、本発明方法における硫黄の使用量としては、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して、硫黄原子として、2モル以上を例示することができる。
【0099】
収率及び/又は副生成物の抑制、及び経済効率等の観点から、本発明方法における硫黄の使用量としては、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して、硫黄原子として、20モル以下、好ましくは12モル以下、より好ましくは10モル以下、更に好ましくは4モル以下を例示することができる。
【0100】
特許文献1に記載の方法は、廃棄物が非常に多く副生する欠点も有する。廃棄物としては、例えば、大量の硫黄が挙げられる。更に、特許文献1に記載の方法で製造された3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールは大量のタールを含む。従って、特許文献1に記載の方法は蒸留等の精製工程を必要とする。
【0101】
特許文献6に記載の方法は、特許文献6より以前の先行技術(例えば、特許文献1に記載の方法)に比較して、廃棄物としての硫黄の副生を改善している。しかしながら、特許文献6に記載の方法では、1モルの原料、即ちフマロニトリル、マレオニトリル及びこれらの塩素置換体に対して、1モルの一塩化硫黄(SCl)が使用される(特許文献6、実施例を参照)。従って、必然的に、1モルの原料に対して1モル以上の硫黄が廃棄物として生じる。この観点からも、特許文献6に記載の方法には、改善の余地がある。
【0102】
収率の向上よりも廃棄物としての硫黄及び/又はタールの抑制が求められる場合には、本発明方法における硫黄の使用量としては、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して、硫黄原子として、2モル未満を例示することができる。
【0103】
本発明方法によれば、廃棄物としての硫黄の副生を抑えることが求められる場合には、必要に応じて、硫黄の副生を減少する又は抑えることが可能な条件を選択することができる。(実施例1、2、6及び8参照)。有利な効果であるこの選択肢は、単体硫黄を用いることにより得られるのである。その上、本発明方法では、必要に応じて、タールを含まないイソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造することも可能である。従って、本発明方法によれば、必要に応じて、蒸留等の精製工程を必要としない条件を選択することができる。
【0104】
従って、本発明方法における硫黄の使用量の範囲としては、上記の下限と上限の適宜な且つ任意の組み合わせが例示することができる。一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して、硫黄原子として、0.5モル以上20モル以下、好ましくは0.9モル以上12モル以下、より好ましくは0.9モル以上4モル以下の範囲を例示することができる。しかしながら、本発明方法における硫黄の使用量は、目的と状況に応じて、当業者により適宜調整されることができる。
【0105】
(ハロゲン)
本発明方法に用いるハロゲンについて説明する。本発明方法には、一般式(2):
【化10】

で表されるハロゲンを用いる。
【0106】
本発明方法に用いることができるハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0107】
尚、入手性、取り扱いの簡便さ、価格及び生成物の有用性等の観点から本発明方法に用いるハロゲンとしては、塩素又は臭素が好ましく、式(5):
【化11】

で表される塩素が特に好ましい。
【0108】
本発明方法に用いるハロゲンの形態は、特に制限されず、反応が進行する限りはいずれの形態でもよい。本発明方法に用いるハロゲンの形態は、例えば、ガス、液体、固体などが挙げられる。
【0109】
とりわけ、本発明方法に用いる塩素の形態も、特に制限されず、反応が進行する限りはいずれの形態でもよい。本発明方法に用いる塩素の形態は、例えば、液体、ガス等が挙げられる。本発明方法に用いる塩素の形態の好ましい例としては、ガスが挙げられる。塩素ガスを導入する方法は限定されず、例えば、塩素ガスを導入する方法は、反応系の気相への吹き込み、又は反応系の液相中への吹き込み(例えばバブリング等)のいずれであってもよい。更に、塩素ガスを液相中へ吹き込む場合は、塩素ガスの微細な泡が発生する装置などを使用してもよい。例えば、反応系の液相へ塩素ガスを吹き込む場合、ノズルから吹き込んでもよく;ノズルの先端に備え付けられた多孔状の部材を通して、微細な泡状の塩素ガスを吹き込んでもよく;反応容器内に多数の穴を有するパイプを反応容器内に備え付けて、パイプ上の多数の小さな穴から適度に小さい大きさの泡となって塩素ガスが吹き出るようにしてもよく;その他にも様々な装置的な手段が取り得る。加えて、塩素ガスは、塩素ガス以外の気体により希釈されてもよい。塩素ガスの希釈に用いられる気体としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス等が挙げられるが、これに限定されるものではない。入手性、取り扱いの簡便さ、安全性、又は価格等の観点から、窒素が好ましい。尚、塩素ガスの希釈に用いられる気体は、単独で又は任意の割合の混合物として用いることができる。
【0110】
本発明方法におけるハロゲンの使用量は、反応が進行する限りはいずれの量でもよい。収率及び/又は副生成物の抑制、及び経済効率等の観点から、一般式(1)で表されるニトリル化合物1モルに対して、一般式(2)で表されるハロゲンとりわけ式(5)で表される塩素が、1モル以上60モル以下、好ましくは2モル以上20モル以下、より好ましくは2モル以上10モル以下、更に好ましくは2モル以上7モル以下、特に好ましくは2モル以上5モル以下の範囲を例示することができる。しかしながら、本発明方法におけるハロゲンの使用量は、目的と状況に応じて、当業者により適宜調整されることができる。
【0111】
(操作:ハロゲンの導入)
本発明方法においては、ニトリル化合物、硫黄及びハロゲンを同時に反応させることが好ましい。とりわけ、本発明方法においては、スクシノニトリル、硫黄、塩素を同時に反応させることが好ましい。従って、本発明方法においては、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄へ一般式(2)で表されるハロゲンを導入することが好ましい。具体的には、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を仕込んだ後、そこへ一般式(2)で表されるハロゲンを導入することが好ましい。全量のニトリル化合物と全量の硫黄が仕込まれた後、全量のハロゲンが導入されてもよい。又は、一部のニトリル化合物と一部の硫黄を仕込まれた後、ハロゲンが導入され、その後、残りのニトリル化合物と残りの硫黄を仕込まれた後、残りのハロゲンが導入されてもよい。更には、ニトリル化合物と硫黄を仕込むこと及びハロゲンの導入が繰り返されてもよい。これらの場合では、1回に仕込まれるニトリル化合物及び硫黄のそれぞれの量は、当業者が適宜調整することができる。1回に導入される塩素の量も当業者が適宜調整することができる。反応が進行する限りは、これらの仕込みと導入の方法は、当業者が適宜選択及び調整してよい。
【0112】
(溶融状態)
「溶融」とは、加熱により物質が液体となることである。「溶融状態」とは、物質が溶融した状態である。本発明においては、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱した後、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が行われる。好ましくは、一般式(1)で表されるニトリル化合物又は硫黄の少なくともどちらか一つが溶融するまで、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄が加熱される。より好ましくは、少なくとも一般式(1)で表されるニトリル化合物が溶融するまで、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄が加熱される。更に好ましくは、少なくとも一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄の一部が溶融するまで、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄が加熱される。特に好ましくは、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄が溶融するまで、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄が加熱される。
【0113】
具体的には、好ましくは、一般式(1)で表されるニトリル化合物又は硫黄の少なくともどちらか一つが溶融した系内へ、一般式(2)で表されるハロゲンが導入される。より好ましくは、少なくとも一般式(1)で表されるニトリル化合物が溶融した系内へ、一般式(2)で表されるハロゲンが導入される。即ち、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、溶融状態である一般式(1)で表されるニトリル化合物と、硫黄へ、一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われることがより好ましい。具体的には、更に好ましくは、少なくとも一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄の一部が溶融した系内へ、一般式(2)で表されるハロゲンが導入される。特に好ましくは、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄の両方が溶融した系内へ、一般式(2)で表されるハロゲンが導入される。即ち、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、溶融状態である一般式(1)で表されるニトリル化合物と、溶融状態である硫黄へ、一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われることが特に好ましい。一部のニトリル化合物と一部の硫黄を仕込まれた後、ハロゲンが導入され、その後、残りのニトリル化合物と残りの硫黄を仕込まれた後、残りのハロゲンが導入される場合は、残りのハロゲンが導入される際に、ニトリル化合物と硫黄の状態が上記のいずれかの溶融状態であればよい。
【0114】
上記「溶融状態」は、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を加熱することにより達成、維持されるのであるが、この加熱温度としては、ニトリル化合物の種類にもよるが、一般的には70℃以上、好ましくは90℃以上であり、加熱温度の上限を加味すれば、70から180℃の範囲、好ましくは90から150℃の範囲である。
【0115】
上記反応は、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄の状態が上記のいずれかの溶融状態である系内へ、一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われるから、非プロトン性極性溶媒等の溶媒は必要ではない。即ち、上記反応は無溶媒で行われる。但し、実質的にニトリル化合物と硫黄が溶融状態を維持できる範囲で、適宜の溶媒を添加することを妨げない。本明細書において、「無溶媒」との用語は、反応系に溶媒が添加されないことを意味する。言い換えれば、本明細書において、「無溶媒」との用語は、溶媒の非存在下で反応が行われることを意味する。本明細書において、「溶媒」とは、当業者により「溶媒」と認識される物質である。例えば、本明細書における「溶媒」とは、反応温度において液体であるいずれの物質でもよい。但し、「溶媒」は、基質、反応中間体、反応生成物、及び反応副生成物を含まない。
【0116】
本明細書において、非プロトン性溶媒とは、24.0以下のアクセプター数を有する溶媒とする。本明細書において、極性溶媒とは、5以上の比誘電率を有する溶媒とする。従って、本明細書における非プロトン性極性溶媒とは、24.0以下のアクセプター数と5以上の比誘電率を有する溶媒である。非プロトン性極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
アクセプター数(AN)は、V.グートマン(大瀧仁志及び岡田勲訳)、「ドナーとアクセプター(原題:The Donor-Acceptor Approach to Molecular Interaction)」、株式会社学会出版センター、1983年、又はChristian Reichardt,「Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry」、第2版、VCH(RFA)、1990年、23〜24頁、若しくは第3版、改訂増補版、WILEY−VCH、2003年、26頁などに記載されている。アクセプター数(AN)とは、Mayer−Gutmannが提案したアクセプター性の尺度である。n−ヘキサン中に溶かした(CPOの31P−NMR化学シフト値を0(ゼロ)とし、そして1,2−ジクロロエタン中の(CPO・SbCl錯体の31P−NMR化学シフト値を100としたとき、アクセプター数(AN)は、ある純溶媒中に溶かした(CPOの31P−NMR化学シフト値として定義される。即ち、ある溶媒のアクセプター数(AN)は、次の式で表される;
AN=100δ(ある溶媒中の(CPO)/[δ(1,2−ジクロロエタン中の(CPO・SbCl)−δ(n−ヘキサン中の(CPO)]
【0118】
ここで、比誘電率は、日本化学会編、「化学便覧(基礎編)」、丸善株式会社、改訂5版、2004年、I−770〜777頁に記載の値とする。
【0119】
(温度)
本発明方法における一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応温度は、反応が進行する限りは、特に制限されない。収率及び/又は副生成物の抑制、及び操作性、経済効率等の観点から、本発明方法における反応温度としては、50℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上を例示することができる。本発明方法における反応温度としては、同様の観点から、本発明方法における反応温度としては、200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下を例示することができる。本発明方法における反応温度の範囲としては、上記の下限と上限を任意に組み合わせた範囲を例示することができる。例えば、上記の好ましい下限と好ましい上限を組み合わせた範囲が好ましく、上記のより好ましい下限とより好ましい上限を組み合わせた範囲がより好ましく、上記の更に好ましい下限と更に好ましい上限を組み合わせた範囲が更に好ましい。具体的には、50から200℃、好ましくは70から180℃、より好ましくは80から160℃、更に好ましくは90から150℃の範囲を例示することができるが、これらに限定されるものではない。本発明方法における反応温度は、目的と状況に応じて、当業者により適宜調整されることができる。
【0120】
(時間)
本発明方法におけるハロゲンの導入の時間及び反応時間は、反応が進行する限りは、特に制限されない。収率及び/又は副生成物の抑制、及び経済効率等の観点から、特に収率の向上の観点から、本発明方法における当該温度の下限としては、5時間以上、好ましくは10時間以上、より好ましくは15時間以上、更に好ましくは20時間以上を例示することができる。加えて、本発明方法における当該時間としては、特に制限されないが、目的化合物の分解抑制などの観点及び一般的な経済的観点からも、100時間以下、好ましくは75時間以下、より好ましくは50時間以下、更に好ましくは30時間以下を例示することができる。本発明方法における当該時間の範囲としては、上記の下限と上限の適宜な且つ任意の組み合わせが例示することができる。5から100時間、好ましくは15から100時間、より好ましくは15から75時間、更に好ましくは20から50時間、特に好ましくは20から30時間の範囲を例示することができるが、これらに限定されるものではない。本発明方法における当該時間は、目的と状況に応じて、当業者により適宜調整されることができる。尚、本発明方法におけるハロゲンとりわけ塩素の導入の時間と反応時間は、実質的に同じである可能性が推定された。
【0121】
(イソチアゾール化合物)
本発明方法で得られる一般式(3)で表されるイソチアゾール化合物としては、具体的には例えば、
3,4−ジフルオロ−5−シアノイソチアゾール、
3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾール、
3,4−ジブロモ−5−シアノイソチアゾール、
3,4−ジヨード−5−シアノイソチアゾール、
3,4−ジフルオロ−5−カルボキシイソチアゾール、
3,4−ジクロロ−5−カルボキシイソチアゾール、
3,4−ジブロモ−5−カルボキシイソチアゾール、
3,4−ジヨード−5−カルボキシイソチアゾール、
3,4−ジフルオロ−5−メトキシカルボニルイソチアゾール、
3,4−ジクロロ−5−メトキシカルボニルイソチアゾール、
3,4−ジブロモ−5−メトキシカルボニルイソチアゾール、
3,4−ジヨード−5−メトキシカルボニルイソチアゾール、
3,4−ジクロロ−5−エトキシカルボニルイソチアゾール、
3,4−ジブロモ−5−エトキシカルボニルイソチアゾール、
3,4−ジクロロ−5−プロポキシカルボニルイソチアゾール、
3,4−ジクロロ−5−イソプロポキシカルボニルイソチアゾール、
3,4−ジクロロ−5−ブトキシイソチアゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0122】
化合物の有用性等の観点から、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾール及び3,4−ジブロモ−5−シアノイソチアゾールが好ましく、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールが特に好ましい。
【実施例】
【0123】
次に、実施例を挙げて本発明の製造方法を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0124】
実施例1
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
攪拌器、還流冷却器及び温度計を備えた200mLの四ツ口フラスコに、スクシノニトリル80.1g(1.0mol)及び硫黄32.1g(1.0mol)を仕込んだ。120℃まで攪拌しながら昇温した。スクシノニトリル及び硫黄が融解していることが観察された。塩素212.7g(3.0mol)を120〜125℃で22時間かけて吹き込んだ。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル300mLで希釈した。濾過により不溶物を取り除き、生成物を褐色の酢酸エチル溶液として得た。得られた酢酸エチル溶液をHPLC絶対検量線法により分析した。その結果、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は、使用したスクシノニトリルから計算される理論量の64%であった。
【0125】
国際公開第2010/126170号公報(特許文献6)の方法を行ったとき、フマロニトリル、マレオニトリル及び/又はこれらの塩素置換体と推定される化合物の昇華が観察された。しかしながら、本明細書の実施例1では、化合物の昇華は実質的に観察されなかった。
【0126】
本発明における反応機構等は明らかではないが、上記の観察から、本発明における主な反応機構は、国際公開第2010/126170号公報(特許文献6)の方法における主な反応機構とは、異なると推定された。
【0127】
実施例2
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
実施例1と同様にして反応を行った後、反応混合物を60℃まで冷却し、そこにイソプロパノール(2−プロパノール)(200mL)を滴下した。滴下終了後、混合物を5℃まで冷却した。結晶を濾取し、乾燥して3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを淡褐色結晶として収率54%で得た。得られた3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールは公知化合物であり、当業者に知られた常法により同定できた。又、濾液をHPLC絶対検量線法により分析した。その結果、濾液中の3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は10%であった。結晶として得られた3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールと濾液中の3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを合わせた収率は64%であった。尚、いずれの収率も原料に用いたスクシノニトリルを基準とする。
【0128】
実施例3
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
攪拌器、還流冷却器及び温度計を備えた200mLの四ツ口フラスコに、スクシノニトリル80.1g(1.0mol)及び硫黄64.1g(2.0mol)を仕込んだ。100℃まで攪拌しながら昇温した。スクシノニトリルが融解していることが観察された。ほとんどの硫黄は固体として残存していることが観察された。そこに塩素283.6g(4.0mol)を100〜105℃で21時間かけて吹き込んだ。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル300mLで希釈した。濾過により不溶物を取り除き、生成物を褐色の酢酸エチル溶液として得た。得られた酢酸エチル溶液をHPLC絶対検量線法により分析した。その結果、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は、使用したスクシノニトリルから計算される理論量の71%であった。
【0129】
実施例4
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
攪拌器、還流冷却器及び温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、スクシノニトリル80.1g(1.0mol)及び硫黄96.2g(3.0mol)を仕込んだ。120℃まで攪拌しながら昇温した。スクシノニトリル及び硫黄が融解していることが観察された。そこに塩素283.6g(4.0mol)を120〜125℃で12時間かけて吹き込んだ。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル300mLで希釈した。濾過により不溶物を取り除き、生成物を褐色の酢酸エチル溶液として得た。得られた酢酸エチル溶液をHPLC絶対検量線法により分析した。その結果、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は、使用したスクシノニトリルから計算される理論量の68%であった。
【0130】
実施例5
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
攪拌器、還流冷却器及び温度計を備えた500mlの四ツ口フラスコに、スクシノニトリル80.1g(1.0mol)及び硫黄96.2g(3.0mol)を仕込んだ。120℃まで攪拌しながら昇温した。スクシノニトリル及び硫黄が融解していることが観察された。そこに塩素290.7g(4.1mol)を120〜125℃で22時間かけて吹き込んだ。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル300mLで希釈した。濾過により不溶物を取り除き、生成物を褐色の酢酸エチル溶液として得た。得られた酢酸エチル溶液をHPLC絶対検量線法により分析した。その結果、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は、使用したスクシノニトリルから計算される理論量の76%であった。
【0131】
実施例6
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
攪拌器、還流冷却器及び温度計を備えた200mLの四ツ口フラスコに、スクシノニトリル80.1g(1.0mol)及び硫黄32.1g(1.0mol)を仕込んだ。120℃まで攪拌しながら昇温した。スクシノニトリル及び硫黄が融解していることが観察された。そこに塩素212.7g(3.0mol)を120〜125℃で12時間かけて吹き込んだ。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル300mLで希釈した。濾過により不溶物を取り除き、生成物を褐色の酢酸エチル溶液として得た。得られた酢酸エチル溶液をHPLC絶対検量線法により分析した。その結果、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は、使用したスクシノニトリルから計算される理論量の56%であった。
【0132】
実施例7
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
攪拌器、還流冷却及び温度計を備えた1000mLの四ツ口フラスコに、スクシノニトリル80.1g(1.0mol)及び硫黄320.7g(10.0mol)を仕込んだ。120℃まで攪拌しながら昇温した。スクシノニトリル及び硫黄が融解していることが観察された。そこに塩素581.4g(8.2mol)を120〜125℃で16時間かけて吹き込んだ。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル300mLで希釈した。濾過により不溶物を取り除き、生成物を褐色の酢酸エチル溶液として得た。得られた酢酸エチル溶液をHPLC絶対検量線法により分析した。その結果、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は、使用したスクシノニトリルから計算される理論量の75%であった。
【0133】
実施例8
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
攪拌器、還流冷却器及び温度計を備えた200mlの四ツ口フラスコに、スクシノニトリル80.1g(1.0mol)及び硫黄32.1g(1.0mol)を仕込んだ。140℃まで攪拌しながら昇温した。スクシノニトリル及び硫黄が融解していることが観察された。そこに塩素198.5g(2.8mol)を同温度で18時間かけて吹き込んだ。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル300mLで希釈した。濾過により不溶物を取り除き、生成物を褐色の酢酸エチル溶液として得た。得られた酢酸エチル溶液をHPLC絶対検量線法により分析した。その結果、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は、使用したスクシノニトリルから計算される理論量の63%であった。
【0134】
比較例1
特開2010−260805(特許文献7)、実施例2に記載の方法
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
攪拌器、還流冷却器、及び温度計を備えた300mLの四口フラスコに、スクシノニトリル5.70g(71.0mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド35.5mL及び硫黄36.5g(1.14mol)を仕込んだ。そこに攪拌しながら25℃以下で塩素40.4g(0.570mol)を吹き込んだ。その後100℃に昇温し、それを6時間攪拌した。反応混合物を25℃まで放冷した後、氷水に注いだ。トルエンにより反応生成物を抽出した。得られたトルエン溶液をHPLC絶対検量線法により分析した。その結果、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は、使用したスクシノニトリルから計算される理論量の64%であった。
【0135】
特開2010−260805(特許文献7)の実施例2に記載の方法である本明細書の比較例1では、塩素とN,N−ジメチルホルムアミドを使用する。従って、上述のように、比較例1の方法は、N,N−ジメチルホルムアミドを使用する必要のない本願発明と異なり、工業的に好ましくない。
【0136】
上記比較例1では、特開2010−260805(特許文献7)の請求項1及び6、並びに段落0029に記載されているように、系内で25℃以下の低温で塩素と硫黄から塩化硫黄を製造し、その後、スクシノニトリルが系内で調整された塩化硫黄と反応していると推定された。
【0137】
他方、すでに述べたように本発明における反応機構等は明らかではない。しかしながら、本発明が完成した後で本発明を考察したときに、本発明における主な反応機構は、上記比較例1における主な反応機構とは異なると推定された。このことは、後述の本明細書の比較例2からも支持される。
【0138】
比較例2
特開2010−260805(特許文献7)、実施例2に記載の方法で、溶媒を用いない方法
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
攪拌器、還流冷却器、及び温度計を備えた100mLのナスフラスコに、スクシノニトリル5.00g(62.4mmol)及び硫黄31.9g(1.0mol)を仕込んだ。スクシノニトリル及び硫黄が融解していないことが観察された。そこに攪拌しながら25℃以下で塩素35.4g(0.500mol)を22時間かけて吹き込んだ。その後100℃に昇温し、それを6時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却し、トルエン50mLで希釈した。濾過により不溶物を取り除き、生成物を褐色のトルエン溶液として得た。得られたトルエン溶液をGC絶対検量線法により分析した。その結果、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は、使用したスクシノニトリルから計算される理論量のわずか10%であった。
【0139】
上記比較例2では、非プロトン性極性溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドを用いないで、言い換えれば、無溶媒で、特開2010−260805(特許文献7)、実施例2に記載の方法が行われた。その結果、収率が大幅に低下した。
【0140】
(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析方法)
上記したHPLC分析方法の詳細に関しては、必要に応じて、以下の文献を参照することができる。
(a):(社)日本化学会編、「新実験化学講座9 分析化学 II」、第86〜112頁(1977年)、発行者 飯泉新吾、丸善株式会社(例えば、カラムに使用可能な充填剤−移動相の組合せに関しては、第93〜96頁を参照することができる。)
(b):(社)日本化学会編、「実験化学講座20−1 分析化学」第5版、第130〜151頁(2007年)、発行者 村田誠四郎、丸善株式会社(例えば、逆相クロマトグラフィー分析の具体的な使用方法・条件に関しては、第135〜137頁を参照することができる。)
【0141】
(ガスクロマトグラフィー(GC)分析方法)
上記したGC分析方法の詳細に関しては、必要に応じて、以下の文献を参照することができる。
(a):(社)日本化学会編「新実験化学講座9 分析化学 II」、第60〜86頁(1977年)、発行者 飯泉新吾、丸善株式会社(例えば、カラムに使用可能な固定相液体に関しては、第66頁を参照できる。)
(b):(社)日本化学会編、「実験化学講座20−1 分析化学」第5版、第121〜129頁(2007年)、発行者 村田誠四郎、丸善株式会社(例えば、中空キャピラリー分離カラムの具体的な使用方法に関しては、第124〜125頁を参照できる。)
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明方法によれば、イソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの新規な工業的製造方法が提供される。本発明方法により製造できるイソチアゾール化合物は、医薬中間体及び農薬中間体、機能性色素、電子材料等の中間体としてとして有用である。特に、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールは、農薬の重要中間体として有用である。
【0143】
本明細書において上述したように、本発明方法は工業的に好ましい。例えば、先行技術に比較して本発明方法は劇的に安全であり、そして本発明方法は効率的である。更に、本発明方法では、必要に応じて、工業的な実施において様々な選択肢を選ぶことも又可能である。言い換えれば、本発明によれば、状況に応じた経済的に好ましい条件が提供される。従って、本発明方法は、工業的規模で簡便に実施可能である。その上、本発明方法によれば、高価な触媒及び遷移金属を用いることなく目的化合物を製造できるため、それらに由来する有害な廃棄物を排出することもない。それ故、本発明方法では、廃棄物処理が容易であり環境にも優しい。
【0144】
従って、本発明方法は工業的製造方法として極めて有用である。

【手続補正書】
【提出日】20150317
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
即ち、従来、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造する方法として、二硫化炭素(CS)、シアン化ナトリウム(NaCN)及び塩素(Cl)を用いる方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法は、使用する原料に特殊引火物である二硫化炭素を用いるという欠点を有する。しかも、この方法は、毒物であるシアン化ナトリウムを用いるという欠点をも有する。更に、この方法では、加熱しながら、溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を含む反応器へ塩素を導入するのである。しかしながら、N,N−ジメチルホルムアミドと塩素を同時に使用すると、反応の暴走や爆発の可能性あることは当業者にはよく知られている。これらの理由のため、この方法の実施は、安全を保つための細心の注意と十分な対策を必要とすると考えられる。加えて、上記の通り、場合によっては反応の暴走及び爆発が起こる可能性があるため、この方法は生産プラントの安全性を保障できない可能性がある。つまり、安全性の欠如の懸念があるため、N,N−ジメチルホルムアミドと塩素を同時に使用するこの方法は、工業生産に好ましくないのである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本発明の更に他の目的は、入手が容易で安価な原料を使用してイソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造できる方法を提供することにある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
〔50〕一般式()におけるXが塩素原子又は臭素原子である〔1〕から〔49〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
〔51〕一般式()におけるXが塩素原子である〔1〕から〔49〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒の使用を避けることは、先行技術に比較して、本発明方法の有意に改善された安全性、即ち本発明方法の優位性を意味する。言い換えれば、それ工業的な生産中の危険な分解などのリスクを本質的に減らす。従って、本発明方法は、パイロットプラント又は工業的な生産のような大きなスケールでの製造に安全に適用することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
その上、本発明方法によれば、ニトリル化合物、硫黄及びハロゲンを同時に反応させることにより出発原料のニトリル化合物からわずか1工程だけで、簡便な操作により、目的のイソチアゾール化合物を製造できる。特に、本発明方法によれば、スクシノニトリル、硫黄及び塩素を同時に反応させることにより、出発原料のスクシノニトリルからわずか1工程だけで、簡便な操作により、目的の3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造できる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
尚、入手性、価格及び生成物の有用性等の観点から、本発明方法に用いるニトリル化合物としては、上記式(4)で表されるスクシノニトリルが特に好ましい。スクシノニトリルは、現在、工業的に比較的安価に入手可能である。更に、スクシノニトリルは、取り扱い及び毒性の面からも工業的原材料として好ましい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0103
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0103】
本発明方法によれば、廃棄物としての硫黄の副生を抑えることが求められる場合には、必要に応じて、硫黄の副生を減少する又は抑えることが可能な条件を選択することができる実施例1、2、6及び8参照)。有利な効果であるこの選択肢は、単体硫黄を用いることにより得られるのである。その上、本発明方法では、必要に応じて、タールを含まないイソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールを製造することも可能である。従って、本発明方法によれば、必要に応じて、蒸留等の精製工程を必要としない条件を選択することができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0109
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0109】
とりわけ、本発明方法に用いる塩素の形態も、特に制限されず、反応が進行する限りはいずれの形態でもよい。本発明方法に用いる塩素の形態は、例えば、液体、ガス等が挙げられる。本発明方法に用いる塩素の形態の好ましい例としては、ガスが挙げられる。塩素ガスを導入する方法は限定されず、例えば、塩素ガスを導入する方法は、反応系の気相への吹き込み、又は反応系の液相中への吹き込み(例えばバブリング等)のいずれであってもよい。更に、塩素ガスを液相中へ吹き込む場合は、塩素ガスの微細な泡が発生する装置などを使用してもよい。例えば、反応系の液相へ塩素ガスを吹き込む場合、ノズルから吹き込んでもよく;ノズルの先端に備え付けられた多孔状の部材を通して、微細な泡状の塩素ガスを吹き込んでもよく;多数の穴を有するパイプを反応容器内に備え付けて、パイプ上の多数の小さな穴から適度に小さい大きさの泡となって塩素ガスが吹き出るようにしてもよく;その他にも様々な装置的な手段が取り得る。加えて、塩素ガスは、塩素ガス以外の気体により希釈されてもよい。塩素ガスの希釈に用いられる気体としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス等が挙げられるが、これに限定されるものではない。入手性、取り扱いの簡便さ、安全性、又は価格等の観点から、窒素が好ましい。尚、塩素ガスの希釈に用いられる気体は、単独で又は任意の割合の混合物として用いることができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
(操作:ハロゲンの導入)
本発明方法においては、ニトリル化合物、硫黄及びハロゲンを同時に反応させることが好ましい。とりわけ、本発明方法においては、スクシノニトリル、硫黄、塩素を同時に反応させることが好ましい。従って、本発明方法においては、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄へ一般式(2)で表されるハロゲンを導入することが好ましい。具体的には、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄を仕込んだ後、そこへ一般式(2)で表されるハロゲンを導入することが好ましい。全量のニトリル化合物と全量の硫黄が仕込まれた後、全量のハロゲンが導入されてもよい。又は、一部のニトリル化合物と一部の硫黄仕込まれた後、一部のハロゲンが導入され、その後、残りのニトリル化合物と残りの硫黄仕込まれた後、残りのハロゲンが導入されてもよい。更には、ニトリル化合物と硫黄を仕込むこと及びハロゲンの導入が繰り返されてもよい。これらの場合では、1回に仕込まれるニトリル化合物及び硫黄のそれぞれの量は、当業者が適宜調整することができる。1回に導入される塩素の量も当業者が適宜調整することができる。反応が進行する限りは、これらの仕込みと導入の方法は、当業者が適宜選択及び調整してよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
具体的には、好ましくは、一般式(1)で表されるニトリル化合物又は硫黄の少なくともどちらか一つが溶融した系内へ、一般式(2)で表されるハロゲンが導入される。より好ましくは、少なくとも一般式(1)で表されるニトリル化合物が溶融した系内へ、一般式(2)で表されるハロゲンが導入される。即ち、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、溶融状態である一般式(1)で表されるニトリル化合物と、硫黄へ、一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われることがより好ましい。具体的には、更に好ましくは、少なくとも一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄の一部が溶融した系内へ、一般式(2)で表されるハロゲンが導入される。特に好ましくは、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄の両方が溶融した系内へ、一般式(2)で表されるハロゲンが導入される。即ち、一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応が、溶融状態である一般式(1)で表されるニトリル化合物と、溶融状態である硫黄へ、一般式(2)で表されるハロゲンを導入することにより行われることが特に好ましい。一部のニトリル化合物と一部の硫黄仕込まれた後、一部のハロゲンが導入され、その後、残りのニトリル化合物と残りの硫黄仕込まれた後、残りのハロゲンが導入される場合は、残りのハロゲンが導入される際に、ニトリル化合物と硫黄の状態が上記のいずれかの溶融状態であればよい。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0119
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0119】
(温度)
本発明方法における一般式(1)で表されるニトリル化合物と硫黄と一般式(2)で表されるハロゲンとの反応温度は、反応が進行する限りは、特に制限されない。収率及び/又は副生成物の抑制、及び操作性、経済効率等の観点から、本発明方法における反応温度としては、50℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上を例示することができる同様の観点から、本発明方法における反応温度としては、200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下を例示することができる。本発明方法における反応温度の範囲としては、上記の下限と上限を任意に組み合わせた範囲を例示することができる。例えば、上記の好ましい下限と好ましい上限を組み合わせた範囲が好ましく、上記のより好ましい下限とより好ましい上限を組み合わせた範囲がより好ましく、上記の更に好ましい下限と更に好ましい上限を組み合わせた範囲が更に好ましい。具体的には、50から200℃、好ましくは70から180℃、より好ましくは80から160℃、更に好ましくは90から150℃の範囲を例示することができるが、これらに限定されるものではない。本発明方法における反応温度は、目的と状況に応じて、当業者により適宜調整されることができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0120
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0120】
(時間)
本発明方法におけるハロゲンの導入の時間及び反応時間は、反応が進行する限りは、特に制限されない。収率及び/又は副生成物の抑制、及び経済効率等の観点から、特に収率の向上の観点から、本発明方法における当該時間の下限としては、5時間以上、好ましくは10時間以上、より好ましくは15時間以上、更に好ましくは20時間以上を例示することができる。加えて、本発明方法における当該時間としては、特に制限されないが、目的化合物の分解抑制などの観点及び一般的な経済的観点からも、100時間以下、好ましくは75時間以下、より好ましくは50時間以下、更に好ましくは30時間以下を例示することができる。本発明方法における当該時間の範囲としては、上記の下限と上限の適宜な且つ任意の組み合わせが例示することができる。5から100時間、好ましくは15から100時間、より好ましくは15から75時間、更に好ましくは20から50時間、特に好ましくは20から30時間の範囲を例示することができるが、これらに限定されるものではない。本発明方法における当該時間は、目的と状況に応じて、当業者により適宜調整されることができる。尚、本発明方法におけるハロゲンとりわけ塩素の導入の時間と反応時間は、実質的に同じである可能性が推定された。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0132
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0132】
実施例7
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
攪拌器、還流冷却及び温度計を備えた1000mLの四ツ口フラスコに、スクシノニトリル80.1g(1.0mol)及び硫黄320.7g(10.0mol)を仕込んだ。120℃まで攪拌しながら昇温した。スクシノニトリル及び硫黄が融解していることが観察された。そこに塩素581.4g(8.2mol)を120〜125℃で16時間かけて吹き込んだ。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル300mLで希釈した。濾過により不溶物を取り除き、生成物を褐色の酢酸エチル溶液として得た。得られた酢酸エチル溶液をHPLC絶対検量線法により分析した。その結果、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は、使用したスクシノニトリルから計算される理論量の75%であった。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0134
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0134】
比較例1
特開2010−260805(特許文献7)、実施例2に記載の方法
(3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの製造)
攪拌器、還流冷却器、及び温度計を備えた300mLの四口フラスコに、スクシノニトリル5.70g(71.0mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド35.5mL及び硫黄36.5g(1.14mol)を仕込んだ。そこに攪拌しながら25℃以下で塩素40.4g(0.570mol)を吹き込んだ。その後100℃に昇温し、それを6時間攪拌した。反応混合物を25℃まで放冷した後、氷水に注いだ。トルエンにより反応生成物を抽出した。得られたトルエン溶液をHPLC絶対検量線法により分析した。その結果、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの収率は、使用したスクシノニトリルから計算される理論量の64%であった。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0142
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0142】
本発明方法によれば、イソチアゾール化合物、とりわけ3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールの新規な工業的製造方法が提供される。本発明方法により製造できるイソチアゾール化合物は、医薬中間体及び農薬中間体、機能性色素、電子材料等の中間体として有用である。特に、3,4−ジクロロ−5−シアノイソチアゾールは、農薬の重要中間体として有用である。
【手続補正17】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項29
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項29】
一般式()におけるXが塩素原子である、請求項1から27のいずれか1項に記載の製造方法。
【手続補正18】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項30
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項30】
一般式(1)におけるRがシアノ基であり、一般式(2)におけるXが塩素原子である、請求項1から27のいずれか1項に記載の製造方法。
【国際調査報告】