(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014054302
(43)【国際公開日】20140410
【発行日】20160825
(54)【発明の名称】中空ポペットバルブ
(51)【国際特許分類】
   F01L 3/20 20060101AFI20160729BHJP
   F01L 3/14 20060101ALI20160729BHJP
【FI】
   !F01L3/20 B
   !F01L3/20 A
   !F01L3/14 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】22
【出願番号】2014539622
(21)【国際出願番号】JP2013058883
(22)【国際出願日】20130326
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2012/075452
(32)【優先日】20121002
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000227157
【氏名又は名称】日鍛バルブ株式会社
【住所又は居所】神奈川県秦野市曽屋518番地
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】本間 弘一
【住所又は居所】神奈川県秦野市曽屋518番地 日鍛バルブ株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小沼 大樹
【住所又は居所】神奈川県秦野市曽屋518番地 日鍛バルブ株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 仁
【住所又は居所】神奈川県秦野市曽屋518番地 日鍛バルブ株式会社内
(57)【要約】
バルブ傘部内の大径中空部の底面側外周縁部を拡径してバルブフェース部に接近させることで、中空バルブの耐久性を低下させずに熱引き効果を改善する。端部に傘部(14)を一体的に形成したポペットバルブの傘部(14)から軸部(12)にかけて中空部(S)が形成され、中空部(S)に不活性ガスとともに冷却材(19)が装填された中空ポペットバルブ(10)で、傘部(14)内の大径中空部(S1)の底面側外周縁部(S1a)を半径方向外方にフランジ状に拡径した。中空部(S1)内の冷却材(19)の量が増え、さらに冷却材(19)とバルブフェース部間の距離が短縮されて、バルブ傘部(14)の熱引き効果が上がる。中空部(S1)の拡径された底面側外周縁部(S1a)はフランジ状で、バルブ傘部(14)全体が薄肉とならず、バルブ(10)の耐久性に影響しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の一端側に傘部を一体的に形成したポペットバルブの傘部から軸部にかけて中空部が形成され、前記中空部に不活性ガスとともに冷却材が装填された中空ポペットバルブにおいて、
前記バルブ傘部内には、前記バルブ軸部内に設けられた直線状の小径中空部が連通する、略円盤形状の大径中空部が設けられるともに、前記大径中空部の底面側外周縁部が半径方向外方にフランジ状に拡径されたことを特徴とする中空ポペットバルブ。
【請求項2】
前記大径中空部は、前記バルブ傘部の外形に略倣うテーパ形状の外周面を備えた略円錐台形状に形成され、該大径中空部の円形天井面に前記小径中空部が直交するように連通して、バルブが軸方向に往復動作する際、少なくとも該大径中空部内の冷却材に前記バルブの中心軸線周りに縦方向の旋回流が形成されることを特徴とする請求項1に記載の中空ポペットバルブ。
【請求項3】
前記大径中空部の拡径された底面側外周縁部の天井面がテーパ状に形成されて、拡径された該底面側外周縁部にも前記タンブル流の一部が導かれるように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の中空ポペットバルブ。
【請求項4】
前記大径中空部は、その円形の天井面が略円錐台の上面に対し前記バルブの軸部側に所定距離オフセットする段付き略円錐台形状で構成されたことを特徴とする請求項2または3に記載の中空ポペットバルブ。
【請求項5】
前記バルブ軸端部寄りの小径中空部の内径が前記バルブ傘部寄り小径中空部の内径よりも大きく形成されて、前記小径中空部内の軸方向所定位置に円環状の段差部が設けられるとともに、前記段差部を越えた位置まで前記冷却材が装填されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中空ポペットバルブ。
【請求項6】
前記小径中空部内の段差部は、前記バルブをエンジンの燃焼室に開口する排気通路または吸気通路に配設した際に、前記排気通路または吸気通路内とならない所定位置に設けるように構成されたことを特徴とする請求項5に記載の中空ポペットバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポペットバルブの傘部から軸部にかけて形成された中空部に冷却材が装填された中空ポペットバルブに係り、特に、バルブ傘部の大径中空部とバルブ軸部の小径中空部が連通する中空ポペットバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1、2等には、軸端部に傘部を一体的に形成したポペットバルブの傘部から軸部にかけて中空部が形成され、バルブの母材よりも熱伝導率の高い冷却材(例えば、金属ナトリウム、融点約98℃)が不活性ガスとともに中空部に装填された中空ポペットバルブが記載されている。
【0003】
バルブの中空部は、傘部内から軸部内に延びており、それだけ多くの量の冷却材を中空部に装填できるので、バルブの熱伝導性(以下、バルブの熱引き効果という)を高めることができる。
【0004】
即ち、エンジンの駆動によって燃焼室は高温になるが、燃焼室の温度が高すぎると、ノッキングが発生して所定のエンジン出力が得られず、燃費の悪化(エンジンの性能の低下)につながる。そこで、燃焼室の温度を下げるために、燃焼室で発生する熱をバルブを介して積極的に熱伝導させる方法(バルブの熱引き効果を上げる方法)として、冷却材を不活性ガスとともに中空部に装填した種々の中空バルブが提案されている。
【0005】
そして、従来(特許文献1、2)では、傘部内の円盤状大径中空部と軸部内の直線状小径中空部間の連通部が滑らかな曲線領域(内径が徐々に変わる遷移領域)で構成されているが、この連通部が滑らかに連続する形状であることで、バルブの開閉動作(バルブの軸方向への往復動作)の際に冷却材(液体)が封入ガスとともに大径中空部と小径中空部間をスムーズに移動できて、バルブの熱引き効果が上がると考えられている。
【0006】
然るに、大径中空部と小径中空部間の連通部が滑らかに連続する形状であるため、バルブの開閉動作に合わせて大径中空部と小径中空部間で冷却材(液体)がスムーズに移動できるが、中空部内の冷却材(液体)は上層部,中層部,下層部が攪拌されることなく互いに上下関係を保持したままの状態で軸方向に移動している。
【0007】
このため、熱源に近い側の冷却材下層部における熱が冷却材中層部,上層部に積極的に伝達されず、熱引き効果(熱伝導性)が十分に発揮されない、ということが分かった。
【0008】
そこで、特許文献3において、バルブ軸部内の直線状小径中空部をバルブ傘部内の円錐台形状の大径中空部の天井面にほぼ直交するように連通させて、大径中空部から小径中空部への冷却材のスムーズな移動を抑制して、バルブの開閉動作(バルブの軸方向への往復動作)の際に、円錐台形状の大径中空部の外周面から天井面に沿って半径方向内側に向かう冷却材の流れを発生させ、これによって大径中空部内の冷却材にバルブの中心軸線周りに縦方向の旋回流(以下、この縦方向の旋回流をタンブル流という)が形成されて、中空部内の冷却材が積極的に攪拌され、バルブの熱引き効果(熱伝導性)が改善される、という発明が提案(出願)された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2010/041337
【特許文献2】特開2011-179328
【特許文献3】PCT/JP2012/075452(2012年10月2日出願)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3の中空バルブにおいて、熱引き効果をさらに上げるには、中空部の容積を大きく(バルブを薄肉化)して、冷却材の装填量を多くすればよいが、バルブの耐久性が低下するため、薄肉化には限界がある。
【0011】
即ち、バルブ傘部は、燃焼室や排気通路において高温の燃焼ガスにさらされて高温となるが、中空部内の冷却材を介してバルブ全体に熱が伝達され、バルブ軸部が摺接するバルブガイドや、閉弁時にバルブ傘部(のフェース部)が当接するバルブシートを介してシリンダヘッドに放熱される。特に、バルブ傘部の熱の大半がバルブシートを介してシリンダヘッドに放熱されると考えられる。
【0012】
このため、バルブの熱引き効果を高めるには、バルブ傘部の熱をバルブシートに如何に効率よく伝達させるかということが重要で、そのためには、バルブ傘部における大径中空部内の冷却材からバルブフェース部間のバルブ母材における熱伝達経路(距離)を短縮することが望ましい。そのための一つの方策としては、大径中空部全体を大きくすればよいが、高温にさらされて耐熱強度が低下するバルブ傘部全体を薄肉化することになって、バルブの耐久性の低下につながるため到底できるものではない。
【0013】
そこで、発明者は、大径中空部の底面側外周縁部だけを半径方向外方にフランジ状に拡径すれば、大径中空部内の冷却材とバルブフェース部間のバルブ母材における熱伝達経路(距離)が短くなって、熱伝達効率が上がることで、熱引き効果が高められるし、バルブ傘部の耐久性も低下することもない、と考えた。
【0014】
また、「大径中空部の底面側外周縁部を半径方向外方にフランジ状に拡径する」という発明者の知見に係る構造については、前記した特許文献3の図面(例えば図1,3)に図示されている。しかし、この発明者の知見に係る構造の適用範囲は、特許文献3の発明(バルブ軸部内の小径中空部が連通するバルブ傘部内の大径中空部を略円錐台形状に形成して、バルブの開閉動作(バルブの軸方向への往復動作)の際に、大径中空部内の冷却材にタンブル流が形成される、という構造)に限定されるものではなく、先行特許文献1,2等を含む従来公知の中空バルブにも広く適用できるものであることから、この度、先行特許文献3に基づく優先権を主張する特許出願をするに至ったものである。
【0015】
本発明は、前記した従来技術の問題点および発明者の前記した知見に基づいてなされたもので、その目的は、バルブ傘部内の大径中空部の底面側外周縁部を外方に拡径することで、バルブの耐久性に影響を与えることなく、バルブの熱引き効果(熱伝導性)を改善できる中空ポペットバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明(請求項1)に係る中空ポペットバルブにおいては、
軸部の一端側に傘部を一体的に形成したポペットバルブの傘部から軸部にかけて中空部が形成され、前記中空部に不活性ガスとともに冷却材が装填された中空ポペットバルブにおいて、
前記バルブ傘部内に、前記バルブ軸部内に設けられた直線状の小径中空部が連通する、略円盤形状の大径中空部を設けるともに、該大径中空部の底面側外周縁部を半径方向外方にフランジ状に拡径するように構成した。
【0017】
(作用)バルブ傘部の熱の大半は、大径中空部内の冷却材を介してバルブ母材(傘部形成壁)に伝達されて、バルブフェース部からシリンダヘッドに放熱されるが、大径中空部の底面側外周縁部が半径方向外方に拡径されているので、第1には、大径中空部内の冷却材の装填量が増える分、バルブ傘部における熱伝達効率が上がる。
【0018】
第2には、大径中空部(内の冷却材)とバルブフェース部間のバルブ母材(傘部形成壁)における熱伝達経路が大径中空部の底面側外周縁部の拡径幅(拡径長さ)相当だけ短縮されて、それだけバルブ傘部における熱伝達効率が上がる。
【0019】
また、大径中空部の拡径された底面側外周縁部は、フランジ状に形成されて、バルブ傘部形成壁全体が薄肉化されるものではないため、バルブ傘部の剛性強度や曲げ強度が低下するおそれはない。
【0020】
請求項2においては、請求項1に記載の中空ポペットバルブにおいて、
前記大径中空部を、前記バルブ傘部の外形に略倣うテーパ形状の外周面を備えた略円錐台形状に形成し、該大径中空部の円形天井面に前記小径中空部が直交するように連通して、バルブが軸方向に往復動作する際、少なくとも該大径中空部内の冷却材に前記バルブの中心軸線周りに縦方向の旋回流が形成されるように構成した。
【0021】
(作用)バルブが閉弁状態から開弁状態に移行する際(バルブが下降する際)には、図3(a)に示すように、中空部内の冷却材(液体)には慣性力が上向きに作用する。そして、大径中空部中央部の冷却材に作用する慣性力(上向き)が大径中空部周辺領域の冷却材に作用する慣性力よりも大きいため、大径中空部内の冷却材が連通部を介して小径中空部に移動しようとする。しかし、連通部には庇状の環状段差部が形成されているため、換言すれば、大径中空部の天井面(大径中空部における小径中空部の開口周縁部)がバルブの中心軸線に対し略直交する平面で構成されているため、冷却材は、連通部が滑らかな形状で形成されている従来(先行特許文献1,2)の中空バルブのようにスムーズに小径中空部に移動できない。
【0022】
このため、図4(a)に示すように、連通部Pにおいて小径中空部S2に向かう流れF4,F5が僅かに発生するものの、円環状の段差部(大径中空部の天井面)に沿って半径方向外側に向かう流れF1が発生する。このとき、大径中空部の底面側では、大径中空部中央部の冷却材が上方に移動することで、大径中空部中央部の底面側が負圧になって、半径方向外側から内側に向かう流れF3が発生し、これに伴って、大径中空部の傾斜外周面に沿って下方に向かう流れF2が発生する。
【0023】
このように、大径中空部内の冷却材には、矢印F1→F2→F3→F1に示すように、バルブの中心軸線の周りに縦方向外回りの旋回流(以下、外回りのタンブル流という)が形成され、小径中空部内の冷却材には、F4,F5に示すような乱流が発生する。
【0024】
一方、バルブが開弁状態から閉弁状態に移行する際(バルブが上昇する際)は、図3(b)に示すように、中空部内の冷却材には慣性力が下向きに作用する。そして、大径中空部中央部の冷却材に作用する慣性力(下向き)が大径中空部周辺領域の冷却材に作用する慣性力よりも大きいため、図4(b)に示すように、大径中空部内の冷却材には、大径中空部の中央部から底面に沿って半径方向外方に向かう流れF6が発生し、同時に、小径中空部においても連通部を通って下方に向かう流れ(乱流)F7が発生する。大径中空部の底面に沿った流れF6は、大径中空部の外方からテーパ状外周面に沿って天井面側に回りこみ、大径中空部S1の天井面に沿った流れF8となり、大径中空部の中央部において下方に向かう流れF6,F7に合流する。
【0025】
即ち、大径中空部の冷却材には、矢印F6→F8→F6に示すように、バルブの中心軸線の周りに縦方向内回りの旋回流(以下、内回りのタンブル流という)が形成され、小径中空部内の冷却材には、矢印F7に示すような乱流が発生する。
【0026】
このように、バルブが開閉動作することで、バルブの大径中空部内の冷却材には、図4に示すようなタンブル流や乱流が形成されて、中空部内全体の冷却材の上層部、中層部、下層部が積極的に攪拌されるため、バルブの熱引き効果(熱伝導性)が著しく改善される。
【0027】
請求項3おいては、請求項2記載の中空ポペットバルブにおいて、
前記大径中空部の拡径された底面側外周縁部の天井面をテーパ状に形成して、拡径された該底面側外周縁部にも前記タンブル流の一部が導かれるように構成した。
【0028】
(作用)バルブの開閉動作の際に、大径中空部内の冷却材に形成されるタンブル流の一部が大径中空部の拡径された底面側外周縁部にも導かれて、大径中空部の拡径された底面側外周縁部内の冷却材も攪拌されるため、バルブの熱引き効果(熱伝導性)がいっそう改善される。
【0029】
請求項4おいては、請求項2または3に記載の中空ポペットバルブにおいて、
前記大径中空部を、その円形の天井面が略円錐台の上面に対し前記バルブの軸部側に所定距離オフセットする段付き略円錐台形状に構成した。
【0030】
(作用)請求項2または3では、略円錐台形状の大径中空部の円形天井面が平面で構成されているので、鍛造工程で用いる金型先端部の押圧成形面が平面となり、金型先端部の押圧成形面を所定の曲面やテーパ面に加工する場合に比べて、確かに金型の加工は容易である。
【0031】
しかし、鍛造工程だけで、大径中空部の天井面(略円錐台形状の上面)を高精度の平面に成形することは難しく、鍛造工程で用いる金型先端部の押圧成形面の摩滅も激しい。
【0032】
然るに、請求項4では、大径中空部の円形の天井面を、略円錐台形状の上面に対しバルブの軸部側に所定距離(たとえば、鍛造工程で成形された傘部外殻内側の略円錐台形状凹部の球面状底面を、バルブの中心軸線に対し直交する平面に切削加工するために必要な距離)だけオフセットした位置に設けるように構成した(大径中空部を段付き略円錐台形状に形成した)ので、たとえば、鍛造工程で用いる金型先端部(の押圧成形面)に丸みを付けることで、金型が摩滅しにくいし、鍛造後に大径中空部の円形の天井面を切削加工で成形するため、鍛造工程で用いる金型先端部(の押圧成形面)の加工精度に対する要求も緩和されて、金型の加工がより容易となるし、大径中空部の円形の天井面(平面)の加工精度も上がる。
【0033】
請求項5においては、請求項1〜4のいずれかに記載の中空ポペットバルブにおいて、
前記バルブ軸端部寄りの小径中空部の内径を前記バルブ傘部寄り小径中空部の内径よりも大きく形成して、前記小径中空部内の軸方向所定位置に円環状の段差部を設けるとともに、前記段差部を越えた位置まで前記冷却材を装填するように構成した。
【0034】
(作用)バルブが閉弁状態から開弁状態に移行する際(バルブが下降する際)は、小径中空部内の冷却材(液体)が、内径の小さいバルブ傘部寄りの小径中空部から内径の大きいバルブ軸端部寄りの小径中空部に移動する際に、図4(a)に示すように、段差部の下流側で乱流F9が形成されて、小径中空部内の冷却材が攪拌される。
【0035】
一方、バルブが開弁状態から閉弁状態に移行する際(バルブが上昇する際)は、開弁動作によって小径中空部内を上方にいったん移動した冷却材(液体)が、内径の大きいバルブ軸端部寄りの小径中空部から内径の小さいバルブ傘部寄りの小径中空部に移動する際に、図4(b)に示すように、円環状の段差部の下流側で乱流F10が形成されて、小径中空部内の冷却材が攪拌される。
【0036】
このように、バルブの開閉動作(上下方向の往復動作)に伴って、冷却材が小径中空部内を軸方向に移動する際に段差部の近傍に乱流が発生し、これによって小径中空部内の冷却材が攪拌されるので、バルブ軸部における熱引き効果(熱伝導性)がさらに高くなる。
【0037】
請求項6においては、請求項5に記載の中空ポペットバルブにおいて、前記小径中空部内の段差部を、前記バルブをエンジンの燃焼室に開口する排気通路または吸気通路に配設した際に、前記排気通路または吸気通路内とならない所定位置に設けるように構成した。
【0038】
(作用)金属の疲労強度は高温になるほど低下するため、常に排気通路(または吸気通路)内にあって高熱にさらされる部位である、バルブ軸部におけるバルブ傘部寄りの領域は、疲労強度の低下に耐え得る程度の肉厚に形成する必要がある。一方、熱源から離れ、しかも常にバルブガイドに摺接する部位である、バルブ軸部における軸端部寄りの領域は、冷却材を介して燃焼室や排気通路(または吸気通路)の熱が伝達されるものの、伝達された熱はバルブガイドを介して直ちにシリンダヘッドに放熱されるため、バルブ傘部寄りの領域ほどの高温となることがない。したがって、バルブ軸部における軸端部寄り領域は、バルブ傘部寄りの領域よりも疲労強度が低下しないため、薄肉に形成(小径中空部の内径を大きく形成)しても、強度的(疲労により折損する等の耐久性)には問題がない。
【0039】
また、軸端部寄り小径中空部の内径を大きくすれば、小径中空部全体の表面積(冷却材との接触表面積)が増えることで、バルブ軸部における熱伝達効率が上がるし、小径中空部全体の容積が増えることで、バルブの総重量を軽減できる。また、冷却材の装填量を増やすことで、バルブ軸部の熱引き効果(熱伝導性)も上がる。そして、小径中空部内の段差部がバルブ傘部寄りとなるほど、バルブの熱引き効果が高くなる。
【0040】
このため、小径中空部内の段差部は、バルブが開弁しきった状態で、少なくとも排気通路または吸気通路内とならない所定位置(例えば、バルブガイドの排気通路または吸気通路に臨む側の端部に略対応する位置)に設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0041】
本願発明(請求項1)に係る中空ポペットバルブによれば、大径中空部内の冷却材の装填量が増えるとともに、大径中空部(内の冷却材)とバルブフェース部間のバルブ母材(傘部形成壁)における熱伝達経路が短縮されるので、バルブ傘部における熱伝達効率が上がり、バルブの熱引き効果(熱伝導性)が改善されて、エンジンの性能が向上する。
【0042】
また、バルブフェース部近傍の一部が薄肉となるが、バルブ傘部形成壁全体が薄肉化されるものでないため、バルブ傘部の剛性強度や曲げ強度が低下してバルブの耐久性が低下することもない。
【0043】
請求項2に係る中空ポペットバルブによれば、バルブの開閉動作の際に、大径中空部内の冷却材に縦方向の旋回流が形成されて、中空部内全体の冷却材の上層部、中層部、下層部が積極的に攪拌されるので、中空部内全体の冷却材による熱伝達が活発となって、バルブの熱引き効果(熱伝導性)が著しく改善されて、エンジンの性能がいっそう向上する。
【0044】
請求項3に係る中空ポペットバルブによれば、バルブの開閉動作の際に、大径中空部内の冷却材に縦方向の旋回流が形成されて、中空部内全体の冷却材の上層部、中層部、下層部がより積極的に攪拌されるので、中空部内全体の冷却材による熱伝達がいっそう活発となって、バルブの熱引き効果(熱伝導性)がいっそう改善されて、エンジンの性能がよりいっそう向上する。
【0045】
請求項4に係る中空ポペットバルブによれば、大径中空部を加工する際に一定の加工精度が保証されるので、製造される各バルブにおける熱引き効果(熱伝導性)の均一化が可能となる。
【0046】
請求項5に係る中空ポペットバルブによれば、バルブの開閉動作(上下方向の動作)に伴って、小径中空部内の冷却材全体も積極的に撹拌されるので、さらにいっそう熱引き効果(熱伝導性)に優れた中空ポペットバルブが提供される。
【0047】
請求項6に係る中空ポペットバルブによれば、バルブの耐久性に影響を与えない範囲で、バルブ軸部における軸端部寄りの小径中空部の内径を大きくするとともに、小径中空部内の段差部の位置を下方にしたので、バルブ軸部の熱引き効果(熱伝導性)がいっそう改善されるとともに、バルブ総重量が軽減されて、エンジンの性能がいっそう向上する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施例である中空ポペットバルブの縦断面図である。
【図2】同バルブの要部縦断面図である。
【図3】同中空ポペットバルブが軸方向に往復動作する際の中空部内の冷却材に作用する慣性力を示す図で、(a)は開弁動作(下降動作)時の冷却材に作用する慣性力を示す断面図、(b)は閉弁動作(上昇動作)時の冷却材に作用する慣性力を示す断面図である。
【図4】同中空ポペットバルブが開閉動作(軸方向に往復動作)する際の中空部内の冷却材の動きを拡大して示す図で、(a)は閉弁状態から開弁状態に移行する際の冷却材の動きを示す図、(b)は開弁状態から閉弁状態に移行する際の冷却材の動きを示す図である。
【図5】同中空ポペットバルブの製造工程を示す図で、(a)はバルブ中間品であるシェルを鍛造する熱間鍛造工程を示し、(b)はシェルの傘部外殻の凹部の開口側にキャップ係合用の内周面および円環状段差部を形成する切削工程と、傘部外殻の球面状の凹部底面に円形の平面を形成する切削工程を示し、(c)はシェルの傘部外殻の凹部底面に傘部寄り小径中空部に相当する孔を穿設する孔穿設工程を示し、(d)は軸端部寄り小径中空部に相当する孔を穿設する孔穿設工程を示し、(e)は軸端部材を軸接する軸接工程を示し、(f)は小径中空部に冷却材を充填する冷却材装填工程を示し、(g)は傘部外殻の凹部の開口側内周面にキャップを接合する工程(中空部密閉工程)を示す。
【図6】本発明の第2の実施例である中空ポペットバルブの縦断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例である中空ポペットバルブの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0050】
図1〜図5は、本発明の第1の実施例である内燃機関用の中空ポペットバルブを示す。
【0051】
これらの図において、符号10は、真っ直ぐに延びる軸部12の一端側に、外径が徐々に大きくなるR形状のフィレット部13を介して、傘部14が一体的に形成された耐熱合金製の中空ポペットバルブで、傘部14の外周には、テーパ形状のフェース部16が設けられている。
【0052】
詳しくは、円筒形状の軸部12aの一端側に傘部外殻14aが一体的に形成されたバルブ中間品である軸一体型シェル(以下、単にシェルという)11と、軸部12aに軸接された軸端部材12bと、傘部外殻14aの略円錐台形状の凹部14bにおける開口側内周面14cに接合された円盤形状のキャップ18とによって、傘部14から軸部12にかけて中空部Sが設けられた中空ポペットバルブ10が構成され、中空部Sには、金属ナトリウム等の冷却材19がアルゴンガスなどの不活性ガスとともに装填されている。
【0053】
中空部Sにおける冷却材19の装填量は、多い方が熱引き効果に優れるものの、所定量以上では熱引き効果としての差が僅かとなるため、費用対効果(冷却材19が多ければ、コストもかかること)を考慮して、例えば、中空部Sの容積の約1/2〜約4/5の量が装填されていればよい。
【0054】
なお、図1における符号2はシリンダヘッド、符号6は燃焼室4から延びる排気通路、排気通路6の燃焼室4への開口周縁部には、バルブ10のフェース部16が当接できるテーパ面8aを備えた円環状のバルブシート8が設けられている。符号3は、シリンダヘッド2に設けられたバルブ挿通孔で、バルブ挿通孔3の内周面は、バルブ10の軸部12が摺接するバルブガイド3aで構成されている。符号9は、バルブ10を閉弁方向に付勢するバルブスプリング、符号12cは、バルブ軸端部に設けたコッタ溝である。
【0055】
また、バルブ10内の中空部Sは、バルブ傘部14内に設けられた略円錐台形状の大径中空部S1と、バルブ軸部12内に設けられた直線状(棒状)の小径中空部S2とが直交するように連通する構造で、大径中空部S1の底面側外周縁部S1aは、図2に示すように、バルブ傘表18aに沿って半径方向外方にフランジ状に拡径されている。即ち、傘部外殻14aの略円錐台形状の凹部14bにおける開口側には、キャップ18が係合できる内周面14cと、該内周面14cに対し略直交する円環形状の段差部14b3が設けられ、該内周面14cと段差部14b3とキャップ18の裏面とによって、フランジ状の中空部である、大径中空部S1の拡径された底面側外周縁部S1aが画成されている。換言すれば、大径中空部S1の底面側に、大径中空部S1に連通するフランジ状の中空部S1aが設けられている。
【0056】
このため、第1には、大径中空部S1の容積がフランジ状の中空部S1aの容積相当だけ増え、大径中空部S1における冷却材19の装填量が増えて、バルブ傘部14における熱伝達効率が上がる。
【0057】
第2には、大径中空部S1(内の冷却材19)とバルブフェース部16間のバルブ母材(バルブ傘部14a形成壁)における熱伝達経路がフランジ状の中空部S1aの幅Wだけ短縮されて、それだけバルブ傘部14における熱伝達効率が上がる。
【0058】
また、フランジ状の中空部S1aは扁平で、傘部外殻14a全体が薄肉化されるものではないため、バルブ傘部14の剛性強度や曲げ強度が低下するおそれはない。
【0059】
また、バルブ軸部12内の直線状(棒状)の小径中空部S2が連通する略円錐台形状の大径中空部S1の円形天井面(傘部外殻14aの略円錐台形状の凹部14bの円形底面)14b1は、図2に示すように、バルブ10の中心軸線Lに対し直交する平面で構成されている。
【0060】
詳しくは、大径中空部S1は、縦断面が円弧状に僅かに外側に湾曲するスカート状の傾斜外周面14b2を備え、傾斜外周面14b2の上縁によって特定される天井面14b’1が所定量Hだけ上方にオフセットした位置に大径中空部S1の円形の天井面14b1が形成されている。即ち、大径中空部S1は、天井面14b1が所定量Hだけ上方にオフセットした段付き略円錐台形状に形成されている。なお、大径中空部S1の円形の天井面14b1のオフセット量Hは、例えば、後述するように、シェル11の鍛造工程で成形(図5(a)参照)された傘部外殻14aの球面状凹部(の底面14b’)に、バルブ10の中心軸線Lに対し直交する平面14b1を切削加工するために必要な所定距離である。
【0061】
このように、大径中空部S1における小径中空部S2との連通部Pには、先行文献1,2のような滑らかな形状に代えて、大径中空部S1側から見て庇状の環状段差部15が形成されており、この環状段差部15の大径中空部S1に臨む側(面)14b1がバルブ10の中心軸線Lに対し直交する平面で構成されている。換言すれば、小径中空部S1の開口周縁部(傘部外殻14aの略円錐台形状の凹部14bの円形底面)14b1と、小径中空部S1の内周面によって、庇状の環状段差部15が画成されている。
【0062】
このため、バルブ10が開閉動作する際に、大径中空部S1内の冷却材19には、後で詳しく説明するが、図4(a),(b)の矢印F1→F2→F3;矢印F6→F8に示すように、タンブル流が形成され、同時に、小径中空部S2内の大径中空部S1近傍の冷却材19には、矢印F4,F5,F7に示すように、乱流が発生して、中空部S内の冷却材19の下層部,中層部,上層部が積極的に攪拌されることとなって、バルブ10における熱引き効果(熱伝導性)が大幅に改善されている。
【0063】
特に、本実施例では、大径中空部S1の円形の天井面(凹部14bの円形の底面)14b1とその傾斜外周面14b2が鈍角をなすので、バルブ10が開閉動作する際に、大径中空部S1の半径方向外方から大径中空部S1の傾斜外周面14b2および天井面14b1に沿って連通部Pに向かう冷却材19の流れ(図4(a)のF2および図4(b)のF8)の発生がスムーズとなって、大径中空部S2内の冷却材19に形成されるタンブル流が活発になるので、中空部S内の冷却材19の攪拌がそれだけ促進されて、バルブ10における熱引き効果(熱伝導性)が著しく改善されることになる。
【0064】
また、バルブ軸部12内の小径中空部S2は、バルブ軸端部寄りの、内径d1が比較的大きい小径中空部S21と、バルブ傘部14寄りの、内径d2が比較的小さい小径中空部S22で構成されて、小径中空部S21と小径中空部S22間には、円環状の段差部17が形成されるとともに、段差部17を越えた位置まで冷却材19が装填されている。
【0065】
このため、バルブ10が開閉動作する際に作用する慣性力によって、冷却材19が小径中空部S2を上下に移動する際に、図4(a),(b)の矢印F9,F10に示すように、円環状の段差部17近傍に乱流が形成され、小径中空部S2内の冷却材19の攪拌が促進されて、それだけバルブ10における熱引き効果(熱伝導性)がさらに改善されている。
【0066】
次に、バルブ10が開閉動作する際の冷却材の動きを、図3,4に基づいて詳しく説明する。
【0067】
バルブ10が閉弁状態から開弁状態に移行する際(バルブ10が下降する際)は、図3(a)に示すように、中空部S内の冷却材(液体)19に慣性力が上向きに作用する。そして、大径中空部S1中央部の冷却材19に作用する慣性力(上向き)が大径中空部S1周辺領域の冷却材19に作用する慣性力よりも大きいため、大径中空部S1内の冷却材19が連通部Pを介して小径中空部S2に移動しようとする。しかし、連通部Pには庇状の環状段差部15が形成されているため、連通部が滑らかな形状に形成されている、先行文献に示す従来の中空バルブのようにスムーズに小径中空部S2側に移動できない。
【0068】
このため、図4(a)に示すように、連通部Pにおいて小径中空部S2に向かう流れF4,F5が僅かに発生するものの、円環状の段差部15(大径中空部S1の天井面14b1)に沿って半径方向外側に向かう流れF1が発生する。このとき、大径中空部S1の底面側では、大径中空部S1中央部の冷却材19が上方に移動することで、大径中空部S1中央部の底面側が負圧になって、半径方向外側から内側に向かう流れF3が発生し、これに伴って、大径中空部S1の傾斜外周面14b2に沿って下方に向かう流れF2が発生する。
【0069】
このように、バルブ10が閉弁状態から開弁状態に移行する際(バルブ10が下降する際)は、大径中空部S1内の冷却材19には、矢印F1→F2→F3→F1に示すように、バルブ10の中心軸線Lの周りに外回りのタンブル流が形成され、小径中空部S2内の冷却材19には、F4,F5に示すような乱流が発生する。
【0070】
さらには、バルブ10が閉弁状態から開弁状態に移行する際(バルブ10が下降する際)は、小径中空部S2内の冷却材19は、上向きに作用する慣性力により、小径中空部S2内を上方に移動するが、内径の小さいバルブ傘部14寄りの小径中空部S22から内径の大きいバルブ軸端部寄りの小径中空部S21に移動する際に、図4(a)に示すように、段差部17の下流側(図4(a)の上方)で乱流F9が発生する。
【0071】
一方、バルブ10が開弁状態から閉弁状態に移行する際(バルブ10が上昇する際)は、図3(b)に示すように、中空部S内の冷却材19には慣性力が下向きに作用する。そして、大径中空部S1中央部の冷却材19に作用する慣性力(下向き)が大径中空部S1周辺領域の冷却材19に作用する慣性力よりも大きいため、図4(b)に示すように、大径中空部S1内の冷却材19には、大径中空部S1中央部の底面に沿って半径方向外方に向かう流れF6が発生し、同時に、小径中空部S2においても連通部Pを通って下方に向かう流れ(乱流)F7が発生する。大径中空部S1の底面に沿った流れF6は、大径中空部S1の外方から傾斜外周面14b2に沿って天井面14b1側に回りこみ、大径中空部S1の天井面14b1に沿った流れF8となり、大径中空部S1の中央部(連通部P)において下方に向かう流れF6,F7に合流する。
【0072】
即ち、大径中空部S1内の冷却材19には、矢印F6→F8→F6に示すように、バルブ10の中心軸線Lの周りに内回りのタンブル流が形成され、小径中空部S2内の冷却材19には、矢印F7に示すような乱流が発生する。
【0073】
さらには、バルブ10が開弁状態から閉弁状態に移行する際(バルブ10が上昇する際)は、開弁動作によって小径中空部S2内上方にいったん移動した冷却材(液体)19に慣性力が下向きに作用するため、冷却材19は小径中空部S2内を下方に移動するが、内径の大きいバルブ軸端部寄りの小径中空部S21から内径の小さいバルブ傘部寄りの小径中空部S22に移動する際に、図4(b)に示すように、段差部17の下流側(図4(b)の下方)で乱流F10が発生する。
【0074】
このようにして、バルブ10の開閉動作の際に、中空部S内の冷却材19には、矢印F1→F2→F3;F6→F8で示すタンブル流や、矢印F4,F5,F7,F9,F10で示す乱流が形成されて、中空部S内の冷却材19の下層部,中層部,上層部が積極的に攪拌されることとなって、バルブ10における熱引き効果(熱伝導性)が大幅に改善されている。
【0075】
また、小径中空部S内の段差部17は、図1に示すように、バルブガイド3の排気通路6に臨む側の端部3bに略対応する位置に設けられて、内径の大きい軸端部寄り小径中空部S21を軸方向に長く形成することで、バルブ10の耐久性を低下させることなく、バルブ軸部12の冷却材19との接触面積が増えて、バルブ軸部12の熱伝達効率が上がり、小径中空部S21形成壁が薄肉となって、バルブ10も軽量となる。即ち、小径中空部S内の段差部17は、図1の仮想線に示すように、バルブ10が開弁(下降)しきった状態で、排気通路6内とならない所定位置(バルブ軸部12における薄肉の小径中空部S21形成壁が排気通路6内の熱の影響を受け難い所定位置)に設けられている。図1の符号17Xは、バルブ10が開弁(下降)しきった状態での段差部17の位置を示す。
【0076】
詳しくは、金属の疲労強度は高温になるほど低下するため、常に排気通路6内にあって高熱にさらされる部位である、バルブ軸部12におけるバルブ傘部14寄りの領域は、疲労強度の低下に耐え得る程度の肉厚に形成する必要がある。一方、熱源から離れ、しかも常にバルブガイド3aに摺接する部位である、バルブ軸部12における軸端部寄りの領域は、冷却材19を介して燃焼室4や排気通路6の熱が伝達されるものの、伝達された熱はバルブガイド3aを介して直ちにシリンダヘッド2に放熱されるため、バルブ傘部14寄りの領域ほどの高温となることがない。
【0077】
即ち、バルブ軸部12における軸端部寄り領域は、バルブ傘部14寄りの領域よりも疲労強度が低下しないため、薄肉に形成(小径中空部S21の内径を大きく形成)しても、強度的(疲労により折損する等の耐久性)には問題がない。
【0078】
そこで、本実施例では、小径中空部S21の内径を大きく形成して、第1には、小径中空部S2全体の表面積(冷却材19との接触面積)を増やすことで、バルブ軸部12における熱伝達効率が高められている。第2には、小径中空部S2全体の容積を増やすことで、バルブ10の総重量が軽減されている。
【0079】
また、バルブの軸端部材12bは、シェル11ほど耐熱性が要求されないため、シェル11の材料よりも耐熱性の低い廉価材を用いることで、バルブ10を安価に提供できる。
【0080】
次に、中空ポペットバルブ10の製造工程を、図5に基づいて説明する。
【0081】
まず、図5(a)に示すように、熱間鍛造工程により、略円錐台形状の球面状凹部14b’を設けた傘部外殻14aと軸部12aとを一体的に形成したシェル11を成形する。なお、シェル11(傘部外殻14a)を成形する際に、傘部外殻14aにおける凹部14b’が成形される。凹部14b’は、段付き略円錐台形状の凹部14bの原形となる球面状に成形される。
【0082】
熱間鍛造工程としては、金型を順次取り替える押し出し鍛造で、耐熱鋼製ブロックからシェル11を製造する押し出し鍛造、またはアップセッタで耐熱鋼製棒材の端部に球状部を据え込んだ後に、金型を用いてシェル11(の傘部外殻14a)を鍛造する据え込み鍛造のいずれであってもよい。なお、熱間鍛造工程において、シェル11の傘部外殻14aと軸部12aとの間には、R形状フィレット部13が形成され、傘部外殻14aの外周面には、テーパ形状フェース部16が形成される。
【0083】
次に、図5(b)に示すように、傘部外殻14aの凹部14b’の開口側にキャップ係合用の内周面14cを形成して、大径中空部S1のフランジ状中空部S1aの天井面に相当する円環形状の段差部14b3を形成する切削工程と、傘部外殻14aの凹部(の球面状の底面)14b’を所定量Hだけ切削して、バルブ10の中心軸線Lに対し直交する平面(大径中空部S1の円形の天井面)14b1を形成する切削工程と、を行う。
【0084】
次に、図5(c)に示すように、傘部外殻14aの凹部14bが上向きとなるようにシェル11を配置し、傘部外殻14aの凹部14bの底面14b1から軸部12にかけて傘部寄り小径中空部S22に相当する孔14eをドリル加工により穿設する(孔穿設工程)。孔穿設工程により、大径中空部S1を構成する傘部外殻14aの凹部14bと、小径中空部S22に相当する軸部12a側の孔14eが連通することで、凹部14bと孔14eの連通部には、凹部14b側から見て庇状の環状段差部15が形成される。
【0085】
次に、図5(d)に示すように、シェル11の軸端部側から、軸端部寄り小径中空部S21に相当する孔14fをドリル加工により穿設して、小径中空部S2内に段差部17を形成する(孔穿設工程)。
【0086】
次に、図5(e)に示すように、シェル11の軸端部に軸端部材12bを軸接する(軸端部材軸接工程)。
【0087】
次に、図5(f)に示すように、シェル11の傘部外殻14aの凹部14bの孔14eに冷却材(固体)19を所定量充填する(冷却材装填工程)。
【0088】
最後に、図5(g)に示すように、アルゴンガス雰囲気下で、シェル11の傘部外殻14aの凹部14bの開口側内周面14cにキャップ18を接合(例えば、抵抗接合)する(中空部密閉工程)。バルブ10の中空部Sは、キャップ18によって密閉されるとともに、大径中空部S1の底面側にフランジ状中空部S1aが形成される。なお、キャップ18の接合は、抵抗接合に代えて、電子ビーム溶接やレーザー溶接等を採用してもよい。
【0089】
このように、中空ポペットバルブ10では、バルブ10の中心軸線Lに対し直交する平面で構成された、大径中空部S1の円形の天井面14b1(庇状の環状段差部15)を、縦断面が円弧状に僅かに湾曲するスカート状の傾斜外周面14b2の上縁によって特定される天井面14b’1を所定量Hだけ上方にオフセットした位置に設けるように構成したので、以下の効果が奏される。
【0090】
たとえば、図5(a)に示す鍛造工程で用いる金型を、先端が球状に膨出する略円錐台形状に構成することで、金型の押圧成形部が摩滅しにくい。また、鍛造工程後に、大径中空部S1の円形の天井面14b1を切削加工で形成するため、鍛造工程で用いる金型の押圧成形部の加工精度に対する要求も緩和されて、金型の加工がより容易となるとともに、大径中空部S1の円形の天井面14b1の加工精度も上がる。
【0091】
この結果、大径中空部S1を加工する際に一定の加工精度が保証されて、製造する各バルブ10の優れた熱引き効果(熱伝導性)を均一化することができる。
【0092】
図6は、本発明の第2の実施例である中空ポペットバルブの縦断面図である。
【0093】
前記した第1の実施例である中空ポペットバルブ10では、バルブ傘部14内の大径中空部S1が段付き略円錐台形状に形成されているのに対し、この第2の実施例である中空ポペットバルブ10Aでは、傘部14内の大径中空部S’1がテーパ形状外周面14b2を備えた略円錐台形状に形成されている。
【0094】
また、大径中空部S1’底面側のフランジ状中空部S’1aは、第1の実施例のバルブ10におけるフランジ状中空部S1aよりも拡径された構造で、大径中空部S’1(内の冷却材19)とバルブフェース部16間のバルブ母材(傘部形成壁)における熱伝達経路がいっそう短縮されて、第1の実施例のバルブ10よりもバルブ傘部14における熱伝達効率がさらに高められている。
【0095】
また、シェル11’の傘部外殻14a’(の凹部14b’)の開口側内周面14c’は、第1の実施例の傘部外殻14a(の凹部14b)の開口側内周面14cよりも大きく形成されるとともに、フランジ状中空部S’1aの天井面を構成する円環形状の段差部14b’3がテーパ状に形成されて、バルブ10Aの開閉動作の際に、大径中空部S1’内の冷却材19に形成されるタンブル流の一部が、図6矢印に示すように、フランジ状中空部S’1a内にも導かれることで、第1の実施例のバルブ10よりもバルブの熱引き効果(熱伝導性)が高められている。
【0096】
また、前記した第1の実施例のバルブ10では、バルブ軸部12内の小径中空部S2が、バルブ傘部寄りの内径が小さい小径中空部S21と、バルブ軸端部寄りの内径が大きい小径中空部S21で構成されているが、中空ポペットバルブ10Aでは、バルブ軸部12内の小径中空部S2が軸方向に一定の内径で形成されている。
【0097】
その他は、前記した第1の実施例と同一であるので、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0098】
図7は、本発明の第3の実施例である中空ポペットバルブの縦断面図である。
【0099】
前記した第1,第2の実施例の中空ポペットバルブ10,10Aでは、バルブ傘部14内の大径中空部S1,S’1が段付き略円錐台形状,略円錐台形状にそれぞれ形成されているのに対し、この第3の実施例の中空ポペットバルブ10Bでは、バルブ傘部14内の大径中空部S”1が高さの低い円柱形状(円盤形状)に形成されている。
【0100】
シェル11”の傘部外殻14a”(の円柱形状凹部14b”)の開口側には、キャップ18係合用の内周面14c”および円環形状の段差部14b”3が設けられ、傘部外殻14a”の開口側内周面14c’
にキャップ18が接合されることで、中空部S”が密閉され、中空部S”には、金属ナトリウム等の冷却材19がアルゴンガスなどの不活性ガスとともに装填されている。
【0101】
また、大径中空部S”1の底面側には、図7に示すように、第1の実施例のバルブ10のフランジ状中空部S1aと同じ形状のフランジ状中空部S”1aが形成されている。
【0102】
その他は、前記した第1の実施例の中空ポペットバルブ10と同一であり、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0103】
なお、前記した実施例のバルブ10,10A,10Bでは、中空部内に不活性ガスとともに冷却材19が装填されて、バルブが軸方向に往復動作する際に、少なくとも大径中空部内の冷却材にバルブの中心軸線周りにタンブル流が形成されて、積極的に冷却材が攪拌されるように構成されているが、中空部内における冷却材の装填量が多いために、バルブが軸方向に往復動作する際に、大径中空部内の冷却材にタンブル流がほとんど形成されない構造の中空ポペットバルブにも、本発明を適用できることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0104】
10,10A,10B 中空ポペットバルブ
11,11’,11” 傘部外殻と軸部を一体的に形成したシェル
12 バルブ軸部
12a 軸部
12b 軸端部材
14 バルブ傘部
14a,14a’,14a” 傘部外殻
14b,14b’,14b” 傘部外殻の凹部
14b1,14b’1,14b”1 大径中空部の円形の天井面
14b2,14b2’ 大径中空部の傾斜外周面
14c,14c’,14c” 傘部外殻の凹部の開口側内周面
15 大径中空部の天井面における小径中空部の開口周縁部である庇状の環状段差部
17 小径中空部内の円環状の段差部
18 キャップ
19 冷却材
L,L’,L” バルブの中心軸線
S,S’S” 中空部
S1,S’1,S”1 大径中空部
S2,S’ 2,S”2 小径中空部
P 連通部
S21 軸端部寄り小径中空部
S22 傘部寄り小径中空部
F1→F2→F3;F6→F8タンブル流
F4,F5,F7 乱流
F9,F10 乱流
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】

【手続補正書】
【提出日】20140128
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の一端側に傘部を一体的に形成したポペットバルブの傘部から軸部にかけて中空部が形成され、前記中空部に不活性ガスとともに冷却材が装填された中空ポペットバルブにおいて、
前記バルブ傘部内には、前記バルブ軸部内に設けられた直線状の小径中空部が連通する、略円盤形状の大径中空部が設けられるともに、
前記大径中空部の底面側外周縁部だけが半径方向外方かつ周方向に連続するフランジ状に拡径されたことを特徴とする中空ポペットバルブ。
【請求項2】
前記大径中空部は、円弧状に僅かに外側に湾曲するスカート状の外周面または前記傘部の外形に倣うテーパ形状の外周面を備えた縦断面略円錐台形状に形成されて、前記大径中空部の天井面を形成する、前記小径中空部の前記大径中空部への開口周縁部が、前記バルブの中心軸線に対し直交する平面で構成されるとともに、前記大径中空部から前記小径中空部にかけて冷却材が装填されて、
前記バルブが軸方向に往復動作する際に、前記大径中空部内の冷却材に前記バルブの中心軸線周りに縦方向の旋回流が形成されることを特徴とする請求項1に記載の中空ポペットバルブ。
【請求項3】
前記大径中空部の拡径された底面側外周縁部の天井面がテーパ状に形成されて、拡径された該底面側外周縁部にも前記旋回流の一部が導かれるように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の中空ポペットバルブ。
【請求項4】
前記大径中空部は、前記小径中空部の開口周縁部が該大径中空部の天上面に対し前記バルブの軸部側に所定距離オフセットする段付き形状に構成されたことを特徴とする請求項2または3に記載の中空ポペットバルブ。
【請求項5】
前記バルブ軸端部寄りの小径中空部の内径が前記バルブ傘部寄り小径中空部の内径よりも大きく形成されて、前記小径中空部内の軸方向所定位置に円環状の段差部が設けられるとともに、前記段差部を越えた位置まで前記冷却材が装填されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中空ポペットバルブ。
【請求項6】
前記小径中空部内の段差部は、前記バルブをエンジンの燃焼室に開口する排気通路または吸気通路に配設した際に、前記排気通路または吸気通路内とならない所定位置に設けるように構成されたことを特徴とする請求項5に記載の中空ポペットバルブ。
【国際調査報告】