(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014054499
(43)【国際公開日】20140410
【発行日】20160825
(54)【発明の名称】磁性シートおよびそれを用いたディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20160729BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20160729BHJP
【FI】
   !H05K9/00 H
   !H05K9/00 W
   !B32B15/08 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】2014539688
(21)【国際出願番号】JP2013076060
(22)【国際出願日】20130926
(31)【優先権主張番号】2012222237
(32)【優先日】20121004
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号
(71)【出願人】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
【住所又は居所】神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝彦
【住所又は居所】神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 東芝マテリアル株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 忠雄
【住所又は居所】神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 東芝マテリアル株式会社内
【テーマコード(参考)】
4F100
5E321
【Fターム(参考)】
4F100AB15A
4F100AB31A
4F100AB33A
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5E321CC16
5E321GG05
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5E321GH10
(57)【要約】
磁性箔体の両面を、接着層を介して樹脂フィルムで積層した構造を具備する磁性シートにおいて、幅が3〜90mmである磁性箔体を平面方向に2つ以上並べた構造を有し、平面方向に隣り合う磁性箔体同士間の距離の最長距離が0mmを超えて1mm以下であり、最短距離が0mm以上1mm以下であることを特徴とする磁性シートである。また、磁性シートの短辺が100mm以上であることが好ましい。上記構成によれば、低周波ノイズを効率よく抑制するための磁性シートおよびそれを用いたディスプレイが提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性箔体の両面を、接着層を介して樹脂フィルムで積層した構造を具備する磁性シートにおいて、幅が3〜90mmである複数の磁性箔体を平面方向に並べた構造を有し、隣り合う磁性箔体同士間の隙間の最長距離が0mmを超えて1mm以下であり、最短距離が0mm以上1mm以下であることを特徴とする磁性シート。
【請求項2】
前記磁性シートの短辺が100mm以上であることを特徴とする請求項1記載の磁性シート。
【請求項3】
前記隣り合う磁性箔体同士間の隙間には空気層が存在することを特徴とする請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の磁性シート。
【請求項4】
前記磁性箔体を厚さ方向に多層化し、それぞれ平面方向に隣り合う磁性箔体同士間の隙間の最長距離が0mmを超えて1mm以下であり、最短距離が0mm以上1mm以下であること特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の磁性シート。
【請求項5】
前記磁性箔体を厚さ方向に多層化し、平面方向に隣り合う磁性箔体間の隙間の位置を厚さ方向で変位させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の磁性シート。
【請求項6】
前記磁性箔体の熱膨張係数が5〜40ppm/℃であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の磁性シート。
【請求項7】
前記磁性箔体がCo系アモルファス合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の磁性シート。
【請求項8】
前記磁性箔体の表面と接着層との間には空気層が存在しないことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の磁性シート。
【請求項9】
前記磁性シートの表面の平坦度が0.02mm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の磁性シート。
【請求項10】
前記磁性シートが500〜800kHzのノイズ低減用または誤動作防止用であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の磁性シート。
【請求項11】
前記磁性シートがディスプレイ用であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の磁性シート。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の磁性シートを具備したことを特徴とするディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性シートおよびそれを用いたディスプレイに係り、特に低周波ノイズを効率よく抑制することが可能な磁性シートおよびそれを用いたディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコン、携帯電話、携帯ゲーム機等の各種タブレット型端末が普及している。各種タブレット型端末は、液晶パネルなどのディスプレイを搭載しており、近年のディスプレイは高精細な画像が得られることをセールスポイントにしている。
【0003】
さらに、タブレット型端末は、薄型化および軽量化されていることもセールスポイントの一つにしている。薄型化または軽量化に伴い、タブレット型端末は気密性が増し、余分な部品を排除する方向で技術的な改良が続けられている。
【0004】
このようにディスプレイの高精細化、薄型化、軽量化に伴って、数百kHz近傍の電磁波ノイズがディスプレイの性能を低下させる問題が提起されてきた。具体的には、数百kHz近傍の電磁波ノイズが発生するとディスプレイへノイズが混入し、画面のちらつきなどの問題を引き起こしていた。この問題は、タブレット型端末に限らず、薄型の液晶ディスプレイにも同様に発生している。
【0005】
これまで電磁波ノイズに関しては、数十MHz以上の高周波ノイズがEMC(Electromagnetic Compatibility:電磁適合性)対策部品の対象として国際無線障害特別委員会(CISPR)にて国際規格となっている。従来、数十MHz以上の高周波ノイズ対策部品としては、特開2011−49406号公報(特許文献1)に示されたようなFe−Si−Al合金粉末と樹脂とを混合した磁性シート(電磁干渉抑制体)が提案されていた。
【0006】
上記のFe−Si−Al合金粉末と樹脂とを混合した磁性シートは、高周波ノイズに関しては、ある程度の抑制効果が得られるものの、数百kHz近傍の低周波ノイズに関しては必ずしも満足な抑制効果は得られていなかった。
【0007】
一方、低周波ノイズ抑制用部品として、例えば、特開2006−196520号公報(特許文献2)では、Co基非晶質合金薄帯を使った磁気シールド部品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−49406号公報
【特許文献2】特開2006−196520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載されているようなCo系非晶質合金薄帯を用いることにより、低周波領域のノイズ低減効果は得られる。しかしながら、特許文献2の[0030]段落に記載されているように、この合金薄帯はCo系非晶質合金薄帯を30〜300枚程度積層した構造を有することからも明らかなように、薄型化を考慮したものではなかった。
【0010】
また、近年のディスプレイはタブレット型端末であっても、短辺が100mm以上となるように大型化が進んでいる。ディスプレイにおける数百kHz近傍の低周波ノイズを低減するためには、ディスプレイサイズに応じた大型の磁性シートが必要である。
【0011】
一方、非晶質合金薄帯は、単ロール法に代表されるようにロール急冷法が適用されて製造される。上記ロール急冷法は、金属溶湯を高速回転する冷却ロール上に投入して、金属溶湯を急冷凝固せしめて非晶質の金薄帯を製造する方法である。
【0012】
しかしながら、上記ロール急冷法は、冷却ロール上に金属溶湯を一定量づつ供給し続けて長尺の薄帯を製造する方法であるため、薄帯の幅広化は困難であった。現状では、量産性を考慮して、Co系非晶質合金薄帯は幅50mm以下で製造され、Fe系非晶質合金薄帯は幅100mm以下で製造されている。そのため、ディスプレイサイズに応じた合金薄帯より大きな幅広の磁性シートを実現する技術的要望があった。
【0013】
本発明は、このような問題および要望に対応するためのものであり、低周波ノイズを効率よく抑制することが可能であり、合金薄帯の幅より大きな幅広の磁性シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の磁性シートは、磁性箔体の両面を、接着層を介して樹脂フィルムで積層した構造を具備する磁性シートにおいて、幅が3〜90mmである複数の磁性箔体を平面方向に並べた構造を有し、隣り合う磁性箔体同士間の隙間の最長距離が0mmを超えて1mm以下であり、最短距離が0mm以上1mm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
また、上記磁性シートにおいて、磁性シートの短辺が100mm以上であることが好ましい。また、隣り合う磁性箔体同士の隙間には空気層が存在することが好ましい。また、磁性箔体の熱膨張係数が5〜40ppm/℃であることが好ましい。また、磁性箔体がCo系アモルファス合金であることが好ましい。また、磁性箔体の表面と接着層との間には空気層が存在しないことが好ましい。また、磁性シートの表面の平坦度が0.02mm以下であることが好ましい。また、上記磁性シートが500〜800kHzのノイズ低減用であることが好ましい。また、上記磁性シートがディスプレイ用であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るディスプレイは、本発明の磁性シートを具備したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る磁性シートは、磁性箔体を2つ以上並べた構造を具備し、その上で隣り合う磁性箔体同士の隙間を制御しているので、幅広の磁性シートを提供することができる。その上で、磁性シートの柔軟性や平坦性を付与することができる。また、ディスプレイの裏面に張り付けが可能であり、数百kHz近傍の低周波ノイズを効果的に低減できる。そのため、本発明の磁性シートを具備したディスプレイは、画面のちらつきが抑制され高精細な画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の磁性シートの一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の磁性シートの他の実施例を示す図であり、図2Aは平面図であり、図2Bは、図2Aに示す2B部の拡大図である。
【図3】本発明の磁性シートのさらに他の実施例を示す断面図である。
【図4】本発明の磁性シートのさらに他の実施例を示す断面図である。
【図5】本発明に係るディスプレイの一実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る磁性シートは、磁性箔体の両面を、接着層を介して樹脂フィルムで積層した構造を具備する磁性シートにおいて、幅が3〜90mmである磁性箔体を2つ以上並べた構造を有し、隣り合う磁性箔体同士間の距離の最長距離が0mmを超えて1mm以下であり、最短距離が0mm以上1mm以下であることを特徴とするものである。
【0020】
図1および図2に本発明の磁性シートの一実施例を示した。図1中、1は磁性シートであり、2は磁性箔体であり、3は接着層であり、4は樹脂フィルムであり、Lは磁性箔体の幅であり、Tは隣り合う磁性箔体同士間の距離であり、Wは磁性シートの幅である。また、図2中、2aは第一の磁性箔体であり、2bは第二の磁性箔体であり、2cは第三の磁性箔体であり、W1は磁性シートの横方向の幅であり、W2は磁性シートの縦方向の幅であり、Tmaxは隣り合う磁性箔体同士間の距離の最長距離であり、Tminは隣り合う磁性箔体同士間の距離の最短距離である。
【0021】
まず、本発明に係る磁性シート1は、磁性箔体2の両面を、接着層3を介して樹脂フィルム4で積層した構造を具備するものである。磁性箔体1としては、非晶質合金、Fe基微細結晶合金、またはパーマロイ合金などの軟磁性合金箔体が挙げられる。また、非晶質合金としては、Co系非晶質合金(Co系アモルファス合金)またはFe系非晶質合金(Fe系アモルファス合金)が挙げられる。また、Fe基微細結晶合金とは100nm以下の微細結晶を面積率で70%以上有する合金である。
【0022】
後述するように数百kHz、特に500〜800kHzの低周波ノイズを抑制するためには、磁性箔体としてCo系アモルファス合金を用いることが好ましい。Co系アモルファス合金は、透磁率(100kHz)を2,000〜50,000程度に制御し易いことから低周波ノイズの低減に効果的である。また、必要以上に磁性箔体を多層化しないで済む利点がある。
【0023】
また、磁性箔体の磁歪はほぼゼロであることが好ましい。磁歪がほぼゼロであると、低周波ノイズを受けた場合に振動が発生し、可聴周波数領域での「うなり」が顕著となり、ディスプレイと磁性シートとの間に隙間がないものはディスプレイ全面で影響を受けやすくなる。磁歪の点を考慮すると磁性箔体はCo系アモルファス合金であることが好ましい。
【0024】
また、磁性箔体は熱膨張係数が40ppm/℃以下、さらには5〜40ppm/℃であることが好ましい。熱膨張係数が40ppm/℃を超えて大きいとディスプレイ裏面に貼り付けて使用した際にディスプレイの発熱により磁性箔体が膨張し、ディスプレイと磁性シートとの密着性が悪化する。
【0025】
また、熱膨張係数が5ppm/℃未満となると、熱膨張係数の安定化が難しい。従って、磁性箔体の熱膨張係数は5〜40ppm/℃、さらには6〜20ppm/℃が好ましい。なお、熱膨張係数の測定方法は、例えばJIS−Z−2285(2003)に示されている押し棒式膨脹計で行う方法とする。
【0026】
また、磁性箔体の幅Lは3〜90mmである。磁性箔体の幅Lとは、磁性箔体の短辺の長さである。磁性箔体の長辺は90mmを超えていても問題はない。本発明の磁性シートは、このような幅Lが3〜90mmの磁性箔体を2つ以上並べた構造を有する。並べる個数は2以上であれば特に限定されるものではなく、使用されるディスプレイのサイズに合わせて並べていけばよい。
【0027】
また、本発明に係る磁性シートは、磁性箔体を、接着層を介して樹脂フィルムで積層した構造を有するものである。図1に示したように、磁性箔体2の両面に接着層3を介して樹脂フィルム4を積層していることから、磁性箔体の錆び等の劣化を防止することができる。また、接着層により磁性箔体を固定しているので、位置ずれが起きないので磁性シートの取扱い性が向上する。
【0028】
また、隣り合う磁性箔体同士間の距離の最長距離は0mmを超えて1mm以下、最短距離は0mm以上1mm以下であることを特徴とするものである。隣り合う磁性箔体同士間の距離Tにおいて、隣り合う磁性箔体同士間の距離の最長距離Tmaxが0mmを超えて1mm以下であるということは、図2Bに示したように磁性箔体2aと磁性箔体2bとの隙間において接触していない個所(最長距離Tmaxが0mmを超える箇所)が必ず存在し、一方で最も離れた個所であっても1mm以下であることを示す。
【0029】
また、隣り合う磁性箔体同士間の距離の最短距離Tminが0mm以上1mm以下であるということは、磁性箔体2aと磁性箔体2bとが接触している箇所(最短距離Tminが0mmの箇所)があるか、一番近い箇所が1mm以下であることを示している。また、最短距離Tminが1mmのときは、最長距離Tmaxも1mmとなる。
【0030】
また、最長距離Tmaxが1mmを超えて大きいと、隙間から低周波ノイズが漏れてしまいディスプレイ画面の部分的なちらつきを防止できなくなる。一方、最短距離Tminが0mmより小さいと隣り合う磁性箔体同士が重なる部分ができてしまう。磁性箔体同士の重なる部分ができてしまうと磁性シート自体の平坦性が低下する。磁性シートの平坦性が低下するとディスプレイに貼り付ける際に、隣り合う磁性箔体同士の重なった部分が凸部なるため磁性シートとディスプレイの密着性が低下する。
【0031】
そして、ノイズ抑制と平坦性とを両立させるには、隣り合う磁性箔体同士間の距離である最長距離Tmaxが0mmを超えて0.5mm以下であり、最小距離Tminが0mm以上0.1mm以下であることが好ましい。なお、隣り合う磁性箔体同士間の距離を説明するにあたり、磁性箔体2aと磁性箔体2bとの隙間で説明したが、磁性箔体2bと磁性箔体2cの隙間も最長距離Tmaxおよび最短距離Tminは上記関係を満たすものである。
【0032】
また、磁性箔体の幅Lを3〜90mmに調整する方法としては、ロール急冷法の条件を調製して目的とする幅Lを有する磁性薄帯を得る方法が挙げられる。また、磁性薄帯(長尺)を切断して目的とする幅Lにする方法が挙げられる。磁性箔体の幅Lが3mm未満と細いと隣り合う磁性箔体同士間の距離Tを調整する手間が増え量産性が低下する。また、磁性箔体の幅Lが90mmを超えるとロール急冷法での製造が困難となり、板厚のばらつきが大きくなったり、薄帯にスダレ状の穴が形成されたりする。磁性シートの量産性と磁性薄帯の量産性とを考慮すると、磁性箔体の幅Lは10〜45mmが好ましい。
【0033】
また、上記ロール急冷法を用いることにより、磁性箔体の板厚を15〜30μmにすることができる。このような薄い磁性箔体とすることにより、磁性シート自体の厚さを薄くすることができる。例えば、接着層の厚さを5〜15μmとする一方、樹脂フィルムの厚さを20〜50μmとすると、磁性シートの厚さは65〜160μmと薄くすることができる。なお、磁性箔体を多層化する場合は、磁性箔体の厚さおよび接着層の厚さ分が増加することとなる。
【0034】
また、上記ロール急冷法による磁性箔体の幅Lを調整する方法または磁性薄帯(長尺)を切断加工して磁性箔体の幅Lを調整する方法のいずれの方法の場合も、磁性箔体の端面は図2Bの円内に示したように微小な凹凸が形成され易い。微小な凹凸が形成されないようにレーザ加工により切断する方法もあるが、非晶質合金などの磁性箔体がレーザの熱で変質してしまうおそれがある。また、あまり強い応力で切断加工やプレス打抜き加工を施すと磁性薄帯(長尺)が破壊されてしまうおそれがある。また、エッチング加工では大型化には不適であり、コストアップの要因になる。
【0035】
前述のように、磁性箔体の幅L、隣り合う磁性箔体同士間の距離である最長距離Tmaxおよび最短距離Tminを制御しているので、磁性シートの短辺が100mm以上と大型化した場合にも、低周波ノイズを効率よく抑制することができる。特に磁性箔体の端面に微小な凹凸が存在していたとしても大型化に対応できる。なお、図2において、磁性シート1の横方向の幅をW1とし、磁性シート1の縦方向の幅をW2として示したが、W1とW2とにおいて短い方が磁性シートの短辺となる。また、磁性シート1の長辺の長さは特に限定されるものではない。また、パーマロイの場合は、圧延法で幅や厚さを調整することが好ましい。
【0036】
また、磁性箔体の表面と接着層の間には空気層がないことが好ましい。また、接着層と樹脂フィルムとの間にも空気層がないことが好ましい。磁性箔体の表面と接着層との間には空気層がないことにより、磁性シートの平坦性を向上させることができる。また、空気層がないことにより、ディスプレイに押圧して磁性シートを張り付ける際に樹脂フィルムが破裂して破損する不具合や磁性箔体の位置ずれをなくすことができる。
【0037】
さらに、磁性シートの平坦性を0.02mm以下とすることもできる。磁性シートの平坦性とは、磁性シート表面における凸部と凹部の差である。平坦性の測定は、磁性シートを平坦面に置き、最も高い位置にある磁性箔体の高さと最も低い位置にある磁性箔体の高さとを求め、その差を求めるものとする。磁性シートが平坦であるほど平坦性はゼロに近くなる。
【0038】
磁性シートにおいて最短距離Tminを0〜1mmの範囲に制御していることから、隣り合う磁性箔体同士が重なる部分がないことから平坦性を0.02mm以下と小さくすることができる。また、磁性箔体と接着層との間および接着層と樹脂フィルムとの間に空気層がないことによっても平坦性を0.02mm以下と小さくすることができる。磁性シートの平坦性が高い場合には、ディスプレイの裏面に隙間なく接着し易い。また、タブレット型端末のように薄型化が必要な用途にも好適である。
【0039】
また、隣り合う磁性箔体同士間の隙間には空気層が存在することが好ましい。図3に隣り合う磁性箔体2,2同士の隙間に空気層5が存在する磁性シート1の一例を示した。図3中、1は磁性シートであり、2は磁性箔体であり、3は接着層であり、4は樹脂フィルムであり、5は空気層である。
【0040】
前述のように本発明に係る磁性シートは、隣り合う磁性箔体同士間の距離の最長距離Tmaxが0mmを超えて1mm以下である。そのため、隣り合う磁性箔体同士の間には隙間が形成されている箇所が存在する。その隙間が形成されている箇所に空気層5を設けることにより、磁性シートの柔軟性を向上させることができる。磁性シートをディスプレイに取り付ける際に押圧力を付与したときに、空気層5が接着層3の変形を吸収できる。また、磁性シートの柔軟性を向上させることにより、取り扱い性が向上する。また、ディスプレイの熱による熱膨張を効果的に吸収する部分としても機能する。
【0041】
また、空気層5は、隣り合う磁性箔体同士間の距離の最長距離Tmaxが0mmを超えて1mm以下である箇所が少なくとも1か所以上に形成されていればよい。また、空気層5は連続的に形成されている必要はなく、複数の空気層が形成されていてもよい。また、好ましくは、最長距離Tmaxが0mmを超えて1mm以下である箇所の合計面積(体積)を100%としたとき、空気層の割合が合計で面積率(体積率)20〜70%である。面積率が20%未満では、空気層を設ける効果が不十分である。また、70%を超えると空気層が多くなり過ぎて隣り合う磁性箔体同士間の隙間の強度が低下する。
【0042】
また、磁性箔体を多層化することも可能である。磁性箔体を多層化することによりノイズ吸収特性をさらに向上させることができる。図4に磁性箔体を多層化した磁性シートを例示する。図4中、1は磁性シートであり、2は磁性箔体であり、3は接着層であり、4は樹脂フィルムである。図4は磁性箔体を厚さ方向に2層に構成した例である。また、T1は下側磁性箔体同士の隙間、T2は上側磁性箔体同士の隙間である。磁性箔体を多層化する場合、それぞれ隣り合う磁性箔体同士の距離の最長距離Tmaxは0mmを超えて1mm以下であり、最短距離Tminは0mm以上1mm以下であることが好ましい。つまり、下側磁性箔体同士の隙間T1の最長距離Tmaxは0mmを超えて1mm以下、最短距離Tminは0mm以上1mm以下であり、上側磁性箔体同士の隙間T2の最長距離Tmaxは0mmを超えて1mm以下、最短距離Tminは0mm以上1mm以下とすることである。多層化する場合も、それぞれ隣り合う磁性箔体同士の隙間であるTmax、Tminを所定の範囲とすることにより、磁性箔体を単層としたときと同様の効果が得られる。また、空気層5についても、前述に示した単層のときと同様の範囲とすることが好ましい。
【0043】
また、磁性箔体を厚さ方向に多層化し、隣り合う磁性箔体の隙間の位置を厚み方向で変えることが好ましい。すなわち、図4に示すように、下側磁性箔体同士の隙間T1と上側磁性箔体同士の隙間T2の位置とを厚さ方向で変えることが好ましい。つまり、隙間T1と隙間T2とを厚み方向で見たときに重ならないようにするものである。すべての隙間T1と隙間T2の位置を重ならないようにすることにより、ノイズ低減効果を強化することができる。
【0044】
なお、磁性シートの全体の厚さを考慮すると、磁性箔体の厚さ方向への積層枚数は2〜3枚が好ましい。また、磁性箔体を多層化する場合、上下する磁性箔体2,2の間に接着層3を設けることが好ましい。上下する磁性箔体2の間に接着層3を設けることにより、磁性箔体2の位置ずれを防止することができる。また、上下する磁性箔体2の間に設ける接着層3の厚さは5〜15μmであることが好ましい。また、樹脂フィルム(厚さ10〜50μm)の両面に接着層を配置した接着シートを配置してもよい。この接着シートを用いる場合、片面に設ける接着層は、厚さが5〜15μmの範囲であることが好ましい。接着シートを用いた方が磁性シート自体の強度は向上する。
【0045】
また、接着層の厚さが5μm未満では接着力が不十分となる恐れがある。また、接着層の厚さが15μmを超えて厚いと、それ以上の効果が得られないおそれがある。
【0046】
以上のような磁性シートであれば、幅広の磁性シートを提供することができる。その上で、磁性シートの柔軟性および平坦性を付与することができる。また、ディスプレイの裏面に張り付けが可能であり、数百kHz近傍の低周波ノイズを効果的に低減できる。そのため、本発明の磁性シートを具備したディスプレイは、画面のちらつきを抑制することができる。
【0047】
図5に本発明に係るディスプレイの一実施例を示す。図5中、1は磁性シートであり、6はディスプレイ本体である。ディスプレイ本体と磁性シートとの取り付けは、接着剤を使った方法、ディスプレイと回路基板(二次電池含む)の間への挟み込み、ディスプレイと筐体の間への挟み込みなどの様々な方法で対応可能である。本発明の磁性シートは、複数の磁性箔体を並べているのでディスプレイの短辺が100mm以上と大型化したとしても、低周波ノイズのよる画面のちらつきを抑えることができる。また、Tminなどを調整することにより平坦性を向上させているので、タブレット型端末のように厚さ方向のスペースの薄い機器分野にも好適に装着できる。また、ディスプレイはLCD(液晶ディスプレイ)など各種ディスプレイに対応できる。また、ディスプレイに関しては、制御回路などから発生する数百kHz、特に500〜800kHzの低周波ノイズを効率的に抑制することができる。
【0048】
また、ディスプレイがタッチパネル式の場合、タッチパネルの誤動作を防止することもできる。タッチパネルには、感圧式、静電式、デジタイザ式の3種類があり、静電式とデジタイザ式とを組合せた方式もある。感圧式はタッチパネルを指やタッチペンで押圧した圧力を感知する方式である。また、静電式は、パネル表面で電気容量の変化を感知する方式であり、利用者が持っているわずかな電流を感知する方式が一般的である。また、デジタイザ式はデジタイザペンと呼ばれる専用のタッチペンを使用する方式である。また、デジタイザ式は、電磁誘導方式であり、デジタイザペンの座標を複数のアンテナコイルで検出する方式である。デジタイザペンには送信用コイルとコイルから交流磁界を発生させるための発振回路や制御回路などが内蔵されている。また、デジタイザ式では周波数500〜800kHzの信号を感受している。
【0049】
感圧式は、押圧力を感知するため、手袋をした指でも感知できる。その一方で押圧力が必要なためパネル(ディスプレイ)が傷みやすい。また、静電式は、人の指での操作を感知できるが、手袋をすると感知できない。また、デジタイザ式は、専用のタッチペンを必要とするが、人の手が触れても動作しないので間違って操作してしまうことを防ぐことができる。
【0050】
近年の電子機器は操作が複雑になっていることから、間違って操作してしまうことを防止することが重要であり、デジタイザ式が注目されている。デジタイザ式は前述の通り電磁誘導方式であり周波数500〜800kHzの信号を感受している。デジタイザ式を搭載したディスプレイの場合、その周囲に金属部材(例えば、鉄製の机など)があると信号の感受に悪影響を与え、誤動作の原因となるおそれがある。しかし本実施形態の磁性シートを用いることにより、ディスプレイの周囲に金属部材があったとしても信号の感受への悪影響を防ぎ、誤動作を防止することができる。
【0051】
次に製造方法について説明する。本発明に係る磁性シートに関しては、その製造方法は特に限定されるものではないが効率的に製造するための方法として次の方法が挙げられる。
【0052】
まず、磁性箔体の調製を行う。磁性箔体を調製するにあたり、ロール急冷法または圧延法を用いる。Co系アモルファス合金、Fe系アモルファス合金、微細結晶構造を持つFe基合金などのようにアモルファス合金薄帯を用いる場合は、ロール急冷法を用いるものとする。パーマロイの場合は圧延法を用いるものとする。ロール急冷法や圧延法の条件を調整して板厚、薄帯の端面形状、表面凹凸を制御する。また、組成を制御することにより、透磁率や磁歪を制御する。
【0053】
次に得られた磁性薄帯をスリット加工する工程を実施する。スリット歯形状やスリット加工のスピードなどのスリット加工条件を調整することにより、磁性箔体の幅の調整、切断側面に微視的な凹凸の付与を行うものとする。量産性を上げるには、切断加工後の磁性箔体をスプール状に巻き取ることが有効である。
【0054】
次に、歪取り熱処理などの熱処理工程を実施する。この熱処理工程によっても、透磁率などの磁気特性や磁歪の調整を行うものとする。
【0055】
次に、ラミネート加工工程を実施する。まず、接着層が予め一体となった樹脂フィルムを用意することが好ましい。ホットメルト法などにより接着層を樹脂フィルム上に塗布してもよい。接着層上に磁性箔体を配置する工程を行う。磁性箔体は、一方の端面から徐々に接着層上に載せていくことにより、接着層と磁性箔体の間に空気層が形成されないようにしていく。また、複数の磁性箔体を並べる際は隙間を調整しながら配置するものとする。
【0056】
隣り合う磁性箔体の隙間を調整する際は、予めスプールに長尺の磁性箔体を巻き取らせたものを使用することが好ましい。複数のスプールを並べて接着層上に磁性箔体を供給することにより、隣り合う磁性箔体同士の隙間を均一配置し易くなる。また、スプールを使って長尺の磁性箔体を配置する際、接着層上に配置して適切な長さで切断しながら配置することが好ましい。スプールを使用して長尺の磁性箔体を配置する際の速度や圧力制御を行えば、磁性箔体と接着層との間に空気層を無くすことができる。また、磁性箔体を多層化する場合は、それぞれ積層構造を形成してから処理を行うものとする。また、多層化する場合、上下する磁性箔体間に接着層を設けることが好ましい。また、1層目の磁性箔体を配置後、接着層を塗布または両面に接着層を設けた樹脂フィルムを設けるものとする。
【0057】
次に、接着層が一体となった樹脂フィルムを被せて、磁性箔体の両面に接着層を介して樹脂フィルムを設けた構造とすることができる。また、接着層付き樹脂フィルムをスプールに巻き取らせておくことにより、上側の接着層付き樹脂フィルム、磁性箔体、下側の樹脂フィルムを同時に積層させていくことができる。このとき、スプールの円周径を大きくしておけば、磁性箔体や樹脂フィルムに曲がり癖がつかない。曲がり癖がつかなければ、ディスプレイに取り付け安くなる。
【0058】
また、上下の樹脂フィルムを積層後、熱圧着させて樹脂フィルムを封止して磁性シートを形成する。また、必要に応じて、切断、トムソン加工などの後加工を行ってもよい。また、必要な長さに切断したとき、切断面の磁性箔体がむき出しになってもよいし、予め必要な長さに切断した磁性箔体を配置してその隙間を切断して磁性箔体がむき出しにならないようにしてもよい。
【0059】
また、上下の樹脂フィルムを押圧して積層する際の押圧力は1MPa以下であることが好ましい。1MPaを超えて大きな圧力を付加すると、隣り合う磁性箔体同士の隙間にある空気が逃げて磁性箔体と接着層の間に入り込んだりしてしまう。また、あまり大きな押圧力をかけると磁性箔体が破壊されてしまうおそれがある。そのため、積層時の押圧力は1MPa以下、さらには0.5MPa以下と小さい方がよい。また、1MPa以下、さらには0.5MPa以下と小さな押圧力で積層することにより、隣り合う磁性箔体同士の隙間に空気層を残存させることができる。
【0060】
例えば、長尺の磁性箔体と樹脂フィルムを一体化した磁性シートであれば、その都度、目的とする長さで切断することができる。また、予め所定の長さで切断した磁性箔体を並べておけば、磁性箔体の端面がむき出しにならないため、錆びなどの劣化を防止することができる。
【0061】
(実施例)
(実施例1)
単ロール法により、幅が33mmであり、平均板厚が20μmであるCo系アモルファス合金薄帯(組成式:Co68Fe4.5Cr2.5Si1510)を製造した。得られたCo系アモルファス合金薄帯の熱膨張係数は12ppm/℃であり、磁歪はゼロであった。
【0062】
次に、このCo系アモルファス合金薄帯を長さ150mmに切断して磁性箔体(幅33mm×長さ150mm)を調製した。また、接着層付き樹脂フィルムとして、接着層付きPETフィルム(PET厚さ35μm、接着層10μm)を調製し、磁性箔体の両面に用意した。
【0063】
PETフィルムの接着層上に磁性箔体3本を最長距離Tmax=0.200mm、最短距離Tmin=0.150mmで配置した。その上から接着層付きPETフィルムの接着層面を磁性箔体に向けて積層した。押圧力(0.1MPa)で挟み込んで熱圧着により一体化して実施例1に係る磁性シート(W1=102mm、W2=150mm)を調製した。
【0064】
(実施例2〜4および比較例1〜2)
実施例1と同じ磁性箔体、接着層付きPETフィルムを用いて表1に示した条件で実施例2〜4および比較例1〜2に係る磁性シートを調製した。なお、比較例2は隣り合う磁性箔体の端部を1.00mm重ねた状態で固定したものである。
【表1】
【0065】
(実施例5)
単ロール法により、幅が50mmであり、平均板厚が25μmであるFe基アモルファス合金薄帯(組成式:Fe90Si)を用意した。得られたFe基アモルファス薄帯は、熱膨張係数が7ppm/℃であり、磁歪が29ppmであった。
【0066】
次に、このFe系アモルファス合金薄帯を長さ150mmに切断して磁性箔体(幅50mm×長さ150mm)を調製した。また、接着層付き樹脂フィルムとして、接着層付きPETフィルム(PET厚さ35μm、接着層10μm)を調製し、磁性箔体の両面に用意した。
【0067】
PETフィルムの接着層上に磁性箔体2本を最長距離Tmax=0.20mm、最短距離Tmin=0.15mmで配置した。その上から接着層付きPETフィルムの接着層面を磁性箔体に向けて積層した。押圧力(0.1MPa)で挟み込んで熱圧着により一体化して実施例5に係る磁性シート(W1=102mm、W2=150mm)を調製した。
【0068】
(実施例6)
単ロール法により、幅が50mmであり、平均板厚が20μmであるFe基微結晶合金薄帯(組成式:Fe74Nb2Cu2Si814)を用意した。得られたFe基微細結晶合金薄帯は、平均粒径が30nmの微細結晶の面積比が95%以上であり、熱膨張係数が7ppm/℃であり、磁歪が2ppmであった。
【0069】
次に、上記Fe基微細結晶合金薄帯を長さ150mmに切断して磁性箔体(幅50mm×長さ150mm)を調製した。また、接着層付き樹脂フィルムとして、接着層付きPETフィルム(PET厚さ35μm、接着層10μm)を調製し、磁性箔体の両面に用意した。
【0070】
PETフィルムの接着層上に磁性箔体2本を最長距離Tmax=0.20mm、最短距離Tmin=0.15mmで配置した。その上から接着層付きPETフィルムの接着層面を磁性箔体に向けて積層した。押圧力(0.1MPa)で挟み込んで熱圧着により一体化して実施例6に係る磁性シート(W1=102mm、W2=154mm)を調製した。
【0071】
上記実施例1〜6および比較例1〜2の磁性シートにおいて、隣り合う磁性箔体同士間の隙間での空気層の割合、平坦性、磁性箔体と接着層との間の空気層の有無を調査した。その結果を下記表2に示す。
【0072】
空気層の割合は、隣り合う磁性箔体同士間の隙間を拡大写真で撮り、空気層の割合Gを全シート面積Sとの面積率(G/S)にて求めた。また、平坦度は、磁性シートを平坦面に置き、最も高い位置にある磁性箔体の高さと最も低い位置にある磁性箔体の高さを求め、その差として求めた。また、磁性箔体と接着層との間の空気層の有無は外観検査により判定した。
【表2】
【0073】
次に、各磁性シートに対し、透磁率、ノイズの吸収性、耐高温性を調査した。透磁率は各磁性薄帯をトロイダル形状にして求めた。また、ノイズの吸収性はタブレット型端末用のLCD(100×150)の裏面に磁性シートを貼り付け、端末を動作させ、700kHzにおける放射ノイズを測定した。この際に実施例1のノイズ吸収性を1としたときの比(相対値)で示した。また、耐高温性は、各磁性シートを100枚用意し、60℃で相対湿度が95%の雰囲気中に96時間放置した後における平坦性・気泡等の外観不良の発生の有無を調査した。その結果を下記表3に示す。
【表3】
【0074】
上記表1〜3に示す結果から明らかなように、比較例1においては隙間が大きいためノイズ漏れが発生した。それに対し、実施例1〜6に係る磁性シートはノイズ吸収性に優れていた。また、比較例1および比較例2のように、磁性箔体同士の隙間が大き過ぎたり、磁性箔体同士を重ねたりしたものは空気層(気泡)が多く形成されるため耐高温性が低下した。気泡が発生するとディスプレイと磁性シートとの密着性が低下した。
【0075】
このように、同じCo系アモルファス合金薄帯を用いた実施例1〜4および比較例1〜2で明らかなように実施形態の範囲内に構成したものは、ノイズ吸収特性、平坦性および耐高温性に優れていた。なお、実施例5はノイズ吸収性が低い値となっているが、これはCo系アモルファス合金薄帯よりも透磁率の低いFe系アモルファス合金薄帯を用いているためである。そのため、同じFe系アモルファス合金薄帯を用いたとき、実施形態の範囲にしたものと範囲外のものを比較すれば実施形態の範囲内のものが、特性が良くなる。
【0076】
(実施例7〜9)
次に磁性箔体を厚さ方向に多層化した磁性シートについて以下の実施例を参照して説明する。
【0077】
単ロール法により、幅が33mmであり、平均板厚が18μmであるCo系アモルファス合金薄帯(組成式:Co68Fe5Cr2Si1411)を製造した。得られたCo系アモルファス合金薄帯の熱膨張係数は11ppm/℃であり、磁歪はゼロであった。
【0078】
次に、このCo系アモルファス合金薄帯を長さ150mmに切断して磁性箔体(幅33mm×長さ150mm)を調製した。また、接着層付き樹脂フィルムとして、接着層付きPETフィルム(PET厚さ35μm、接着層10μm)を調製し、磁性箔体の両面用に用意した。
【0079】
PETフィルムの接着層上に下側磁性箔体として磁性箔体3本を最長距離Tmax=0.15mm、最短距離Tmin=0.10mmで配置した。その上に上側磁性箔体として磁性箔体3本を最長距離Tmax=0.15mm、最短距離Tmin=0.10mmで配置した。また、一層目の磁性箔体(下側磁性箔体)を覆うように、樹脂フィルム(厚さ30μm)の両面に厚さ10μmの接着層を塗布し接着シートを配置した。さらに、その上から接着層付きPETフィルムの接着層面を磁性箔体に向けて積層し、積層体を得た。この積層体を押圧力(0.3MPa)で挟み込んで熱圧着により一体化して実施例7〜8に係る磁性シート(W1=102mm、W2=150mm)を調製した。
【0080】
なお、実施例7は下側磁性箔体同士間の隙間と上側磁性箔体の隙間を同じ位置にしたものである。また、実施例8は下側磁性箔体同士の隙間と上側磁性箔体の隙間の位置を、図4に示したように、平面方向に変位させたものである。
【0081】
また、実施例9は3層構造の磁性シートとした。下側磁性箔体同士の隙間、中側磁性箔体同士の隙間、上側磁性箔体同士の隙間は、それぞれ最長距離Tmax=0.15mm、最短距離Tmin=0.10mmで配置した。また、それぞれの隙間が厚さ方向で重ならないように変位させて配置した。それ以外の製造条件は実施例8と同じである。
【0082】
実施例7〜9に係る磁性シートに対して、隣接する磁性箔体間の隙間における空気層の割合(面積%)、平坦性(mm)、磁性箔体と接着層との間の空気層の有無を調査して下記表4に示す結果を得た。なお、それぞれの特性の測定方法は実施例1と同様の方法とした。
【表4】
【0083】
次に、上記各実施例に係る磁性シートの透磁率、ノイズ吸収性、耐高温性を測定した。なお、測定条件および方法は実施例1と同様とした。その測定結果を下記表5に示す。
【表5】
【0084】
上記表5に示す結果から明らかな通り、各実施例に係る磁性シートは多層化しても優れた特性を示した。また、多層化によりノイズ吸収特性が向上した。
【0085】
(実施例1A〜9Aおよび比較例3)
実施例1〜9に係る磁性シートをデジタイザ式のタッチパネル本体の裏面に配置して実施例1A〜9Aに係るタッチパネルを製造した。各タッチパネルを鉄製机の上に配置し、デジタイザペン(専用のタッチペン)を使って1000回タッチし、誤動作の有無を確認した。また、比較例3として磁性シートを設けないタッチパネルも用意した。その結果を下記表6に示す。
【表6】
【0086】
上記表6に示す結果から明らかな通り、各実施例に係る磁性シートはデジタイザ式のタッチパネルの誤動作を防止できることが判明した。このため、実施例に係る磁性シートはディスプレイのノイズ低減およびデジタイザ式のタッチパネルの誤動作を防止のどちらにも効果的に使用できることが判明した。
【0087】
以上の通り本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、本発明の技術的範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1…磁性シート
2…磁性箔体
3…接着層
4…樹脂フィルム
2a…第一の磁性箔体
2b…第二の磁性箔体
2c…第三の磁性箔体
5…空気層
6…ディスプレイ本体
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【国際調査報告】