(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014057530
(43)【国際公開日】20140417
【発行日】20160825
(54)【発明の名称】自動車用エンジンの位相可変装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20160729BHJP
【FI】
   !F01L1/356
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
【出願番号】2014540648
(21)【国際出願番号】JP2012076099
(22)【国際出願日】20121009
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000227157
【氏名又は名称】日鍛バルブ株式会社
【住所又は居所】神奈川県秦野市曽屋518番地
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】永洞 真康
【住所又は居所】神奈川県秦野市曽屋518番地 日鍛バルブ株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】渡部 貴史
【住所又は居所】神奈川県秦野市曽屋518番地 日鍛バルブ株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】本間 弘一
【住所又は居所】神奈川県秦野市曽屋518番地 日鍛バルブ株式会社内
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018AB02
3G018AB16
3G018BA09
3G018BA29
3G018BA32
3G018CA09
3G018DA20
3G018DA24
3G018DA70
3G018DA72
3G018EA33
3G018FA01
3G018FA07
3G018GA02
(57)【要約】
駆動回転体に対するカムシャフトの相対位相角の変更動作を阻害しないセルフロック機構を有する自動車用エンジンの位相可変装置を提供する。円筒部を有し、クランクシャフトによって駆動する駆動回転体と、駆動回転体を同軸かつ相対回動可能に支持するカムシャフトと、前記相対位相角の変更機構と、カムシャフトと一体の保持部に保持されたロックプレートを円筒部の内周面に押しつけて、カムトルクによる相対位相角のズレを防ぐセルフロック機構と、を有する自動車用エンジンの位相可変装置において、保持部外周の周方向略等分複数箇所にプレート押圧面と、プレート押圧面に対応する等分複数のロックプレートを設け、各プレート押圧面が、進角及び遅角方向のカムトルクをそれぞれロックプレートに伝達する第1及び第2押圧面によって形成されるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部を有し、クランクシャフトによって駆動する駆動回転体と、
駆動回転体を同軸かつ相対回動可能に支持するカムシャフトと、
駆動回転体に対するカムシャフトの相対位相角を変更することでバルブの開閉タイミングを変更する相対位相角変更機構と、
カムシャフトの外周にフランジ形状に一体形成された保持部と、前記保持部により、カムシャフトに対して相対回動不能に保持されると共に前記円筒部の内周面に内接するロックプレートと、を有し、前記保持部が、進角方向または遅角方向に発生するカムトルクを受けて、ロックプレートを前記円筒部の内周面に押しつけることにより、前記相対位相角のズレを防ぐセルフロック機構と、を有する自動車用エンジンの位相可変装置において、
前記保持部の外周には、ロックプレートを押圧するプレート押圧面が、周方向略等分複数箇所に設けられ、
前記ロックプレートは、前記プレート押圧面と同数、かつ周方向略等分複数箇所に設けられ、かつ前記プレート押圧部に対向する位置に受圧部を有し、
前記複数のプレート押圧面は、それぞれ、前記進角方向に発生するカムトルクを受けてロックプレートを押圧する第1押圧面と、前記遅角方向に発生するカムトルクを受けてロックプレートを押圧する第2押圧面によって形成されることを特徴とする、自動車用エンジンの位相可変装置。
【請求項2】
前記プレート押圧部及び前記ロックプレートが、周方向略等分複数箇所にそれぞれ3以上設けられた事を特徴とする、請求項1に記載の自動車用エンジンの位相可変装置。
【請求項3】
カムシャフト中心軸線を通り、かつ前記プレート押圧面に直交する仮想面によって分断される二つの面として前記第1押圧面及び第2押圧面が、前記プレート押圧面にそれぞれ画成され、
前記受圧部には、前記第1押圧面による押圧力が作用する第1作用部と、前記第2押圧面による押圧力が作用する第2作用部と、が設けられ、
前記仮想面から第1作用部までの第1距離が、前記仮想面から第2作用部までの第2距離と異なるように、前記第1作用部及び第2作用部が前記受圧部に形成されたことを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車用エンジンの位相可変装置。
【請求項4】
前記第2距離が、前記第1距離よりも短くなるように、前記第1作用部及び第2作用部が前記受圧部に形成されたことを特徴とする、請求項3に記載の自動車用エンジンの位相可変装置。
【請求項5】
前記受圧部が、前記ロックプレートから着脱自在に形成されたことを特徴とする、請求項3または4に記載の自動車用エンジンの位相可変装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対位相角を変更してエンジンバルブの開閉タイミングを変更する位相可変機構に、カムシャフトに発生するカムトルクによる前記相対位相角のズレを防止するセルフロック機構を設けた自動車用エンジンの位相可変装置に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフトに対するカムシャフトの相対位相角を変更してエンジンバルブの開閉タイミングを変更する位相可変機構において、エンジンバルブ側からカムシャフトに入力されるカムトルクによる相対位相角のズレを防止するセルフロック機構を設けた自動車用エンジンの位相可変装置には、下記特許文献1に示すものがある。
【0003】
図1に示す特許文献1の自動車用エンジンの位相可変装置においては、クランクシャフトによって駆動する駆動回転体に対し、カムシャフトが、同軸かつ相対回動可能に配置されると共に、クランクシャフトの駆動力を受けて駆動回転体と共に同じ方向に回転する。また、エンジンバルブの開閉タイミングを変更する際において、センターシャフトを介してカムシャフトに同軸かつ相対回動不能に一体化された第1制御回転体が、第1電磁クラッチまたは逆回転機構を介した第2電磁クラッチの作動に伴い、クランクシャフト(図示せず)によって駆動する駆動回転体2に対して進角方向(駆動回転体と同じ回転方向。以下同じ)または遅角方向(進角方向に対する逆回転方向。以下同じ)のいずれかに相対回動する。エンジンバルブの開閉タイミングは、クランクシャフト側の駆動回転体に対し、第1制御回転体に連結されたカムシャフトの相対位相角が上記のようにして変更することによって変更される。
【0004】
一方、カムシャフトは、エンジンバルブの開閉時の衝撃に伴い、進角方向(及び遅角方向に交互に発生するカムトルクをエンジンバルブから受ける。カムトルクは、駆動回転体に対するカムシャフトの相対位相角にズレを生じさせる原因となる。従って、特許文献1のエンジンの位相可変装置には、カムトルクの発生時にカムシャフトを駆動回転体に対して相対回動不能にロックすることにより、前記相対位相角のズレを防止されるセルフロック機構が設けられている。セルフロック機構は、主にセンターシャフトに一体化された偏心円カム、偏心円カムに取付けられたロックプレートブッシュ及びロックプレートブッシュを介して偏心円カムに保持される一対のロックプレートによって構成される。一対のロックプレートは、偏心円カムにより、偏心円カムに対して相対回動不能に保持され、かつ駆動回転体の円筒部の内周面に内接する(特許文献1の図5を参照)。
【0005】
第1制御回転体に連結された一対のロックプレートは、駆動回転体に対するカムシャフトの相対位相角を変更する場合、偏心円カムを一体に形成したセンターシャフト(カムシャフト)と共に、駆動回転体に対して相対回動する。一方、セルフロック機構は、以下のように機能する。カムシャフトに発生するカムトルクは、カムシャフトの回転中心軸線周りの偏心回動トルクを編心円カムに発生させる。進角方向のカムトルクを受けた偏心円カムは、ロックプレートブッシュを介し、一方のロックプレートを駆動回転体の円筒部の内周面に押しつけ、遅角方向のカムトルクを受けた偏心円カムは、もう一方のロックプレートを駆動回転体の円筒部の内周面に押しつける、セルフロック力を生じさせる。
【0006】
特許文献1のセルフロック機構は、カムトルクによるセルフロック力が、偏心円カムから一対のロックプレートに交互に伝達され、一対のロックプレートが、駆動回転体の円筒部に交互に押し付けられることにより、カムシャフトが駆動回転体に対して相対回動不能にロックされる、セルフロック機能を発生させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2011/145175
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のセルフロック機構において、カムトルクによるセルフロック力は、カムトルクの方向(進角または遅角方向)に基づいて、一対のロックプレートの一方にしか伝達されないため、ロックプレートは、片方ずつしか駆動回転体の円筒部に押し付けられない。片方のロックプレートのみが駆動回転体の円筒部に押し付けられる場合、押し付けられるロックプレートは、駆動回転体の円筒部の内周面にくさびのように食い込みやすくなる。前記内周面に食い込んだロックプレートは、セルフロック機能の解除を阻害する。また、片方のロックプレートのみにセルフロック機能が発生する場合、センターシャフト(カムシャフト)によって回動可能に支持された駆動回転体は、カムシャフトの回動中心軸線に対して、傾きを生じる。傾いた駆動回転体は、センターシャフトに設けられた駆動回転体の支持部にフリクションを発生させる。
【0009】
セルフロック機能の解除が阻害されることと、駆動回転体とセンターシャフトとの間にフリクションが発生することは、カムシャフトに対する駆動回転体の相対位相角の変更動作を阻害するおそれがある点で問題がある。
【0010】
本願発明は、クランクシャフト側の駆動回転体に対するカムシャフトの相対位相角の変更動作を阻害するおそれのないセルフロック機構を有する自動車用エンジンの位相可変装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の自動車用エンジンの位相可変装置は、円筒部を有し、クランクシャフトによって駆動する駆動回転体と、駆動回転体を同軸かつ相対回動可能に支持するカムシャフトと、駆動回転体に対するカムシャフトの相対位相角を変更することでバルブの開閉タイミングを変更する相対位相角変更機構と、カムシャフトの外周にフランジ形状に一体形成された保持部と、前記保持部により、カムシャフトに対して相対回動不能に保持されると共に前記円筒部の内周面に内接するロックプレートと、を有し、前記保持部が、進角方向または遅角方向に発生するカムトルクを受けて、ロックプレートを前記円筒部の内周面に押しつけることにより、前記相対位相角のズレを防ぐセルフロック機構と、を有する自動車用エンジンの位相可変装置において、前記保持部の外周には、ロックプレートを押圧するプレート押圧面が、周方向略等分複数箇所に設けられ、前記ロックプレートは、前記プレート押圧面と同数、かつ周方向略等分複数箇所に設けられ、かつ前記プレート押圧部に対向する位置に受圧部を有し、前記複数のプレート押圧面は、それぞれ、前記進角方向に発生するカムトルクを受けてロックプレートを押圧する第1押圧面と、前記遅角方向に発生するカムトルクを受けてロックプレートを押圧する第2押圧面によって形成されるようにした。
【0012】
(作用)進角方向(駆動回転体と同じ回転方向)のカムトルクがエンジンバルブからカムシャフトに入力されると、複数のロックプレート全てが、各保持部に形成された第1押圧面からカムシャフトの略半径方向のセルフロック力を受けて駆動回転体の円筒部の内周面に押しつけられる。また、遅角方向(進角方向に対する逆回転方向)のカムトルクがエンジンバルブからカムシャフトに入力された場合であっても、複数のロックプレート全てが、各保持部に形成された第2押圧面から略径方向のセルフロック力を受けて駆動回転体の円筒部の内周面に押しつけられる。
【0013】
つまり、カムトルクが発生すると、カムトルクの方向に関わらず、複数のロックプレート全てが、駆動回転体の円筒部の内周面に押しつけられるため、セルフロック機能が、駆動回転体の円筒部の内周面に均等に作用する。
【0014】
また、請求項2は、請求項1の自動車用エンジンの位相可変装置であって、前記プレート押圧部及び前記ロックプレートが、周方向略等分複数箇所にそれぞれ3以上設けられるようにした。
【0015】
(作用)駆動回転体の円筒部の内周面に対して、3以上のロックプレートを周方向略等分複数箇所に設けたことにより、各ロックプレートが、周方向略等分複数箇所において駆動回転体の半径方向外側に向けて押圧されて、前記内周面の全周に更に均等に押し付けられやすくなる。
【0016】
また、請求項3は、請求項1または2に記載の自動車用エンジンの位相可変装置であって、カムシャフト中心軸線を通り、かつ前記プレート押圧面に直交する仮想面によって分断される二つの面として前記第1押圧面及び第2押圧面が、前記プレート押圧面にそれぞれ画成され、前記受圧部には、前記第1押圧面による押圧力が作用する第1作用部と、前記第2押圧面による押圧力が作用する第2作用部と、が設けられ、前記仮想面から第1作用部までの第1距離が、前記仮想面から第2作用部までの代に距離と異なるように、前記第1作用部及び第2作用部が前記受圧部に形成されるようにした。
【0017】
カムシャフトに進角方向のカムトルクが発生した場合におけるセルフロック力は、カムシャフト側の第1押圧面からロックプレート側の第1作用部を経由して駆動回転体に伝達され、遅角方向のカムトルクが発生した場合におけるセルフロック力は、第2押圧面から第2作用部を経由して駆動回転体に伝達される。
(作用)また、ロックプレートと駆動回転体との間に作用するセルフロック力は、カムシャフト中心軸線を通り、かつ前記プレート押圧面に直交する仮想面から、ロックプレートの作用部までの距離に比例して強く作用する。
【0018】
一般にカムシャフトに発生する遅角方向のカムトルクは、カムが、エンジンバルブを押し下げる際にバルブスプリングから受ける弾性力等によって発生し、進角方向のカムトルクは、バルブスプリングがエンジンバルブを介してカムを押し上げる際に受ける弾性力等によって発生する。また、カムとバルブ間の摺動面には、回転を妨げるフリクション(遅角方向のトルク)が加算されるため、遅角方向のカムトルクは、進角方向のカムトルクよりも大きくなることが多い。その場合、前記仮想面から第2作用部までの第2距離を前記仮想面から第1作用部までの第1距離よりも短くすると、遅角方向に発生したカムトルクに基づくセルフロック力は、進角方向に発生したカムトルクに基づくセルフロック力よりも強くなる。
【0019】
一方、エンジンの種類によっては、進角方向のカムトルクの方が遅角方向のカムトルクよりも大きくなる場合がある。その場合、前記仮想面から第1作用部までの第1距離を前記仮想面から第2作用部までの第2距離よりも短くすると、進角方向に発生したカムトルクに基づくセルフロック力は、遅角方向に発生したカムトルクに基づくセルフロック力よりも強くなる。
【0020】
また、請求項4は、請求項3に記載の自動車用エンジンの位相可変装置であって、前記(カムシャフト中心軸線を通り、かつ前記プレート押圧面に直交する仮想面から第2作用部までの)第2距離が、前記(仮想面から第1作用部までの)第1距離よりも短くなるように、前記第1作用部及び第2作用部が前記受圧部に形成されるようにした。
【0021】
(作用)前記第2距離は、前記第1距離に比べて短いため、第2作用部にセルフロック力が作用する場合には、遅角方向のカムトルクに応じた強いセルフロック力が発生し、第1作用部にセルフロック力が作用する場合には、進角方向のカムトルクに応じたセルフロック力が発生する。言い換えると、カムトルクの大きさに対応して、適切なセルフロック力が、ロックプレートと駆動回転体との間に発生する。
【0022】
また、請求項5は、請求項3または4に記載の自動車用エンジンの位相可変装置であって、前記受圧部が、前記ロックプレートから着脱自在に形成されるようにした。
【0023】
(作用) 前記仮想面から第1作用部までの第1距離と、前記仮想面から第2作用部までの第2距離の組み合わせが異なる受圧部のバリエーションを複数用意し、進角方向と遅角方向に発生するカムトルクの強さに応じて、受圧部を交換することが出来る。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の自動車用エンジンの位相可変装置によれば、セルフロック機能が駆動回転体の円筒部の内周面に均等に作用するため、ロックプレートは、前記円筒部の内周面に食い込まなくなる。また、セルフロック機能の発生時における駆動回転体は、カムシャフトの中心軸線に対して傾かなくなる。その結果、請求項1の自動車用エンジンの位相可変装置によれば、クランクシャフト側の駆動回転体に対するカムシャフトの相対位相角の変更動作が、阻害されない。
【0025】
請求項2の自動車用エンジンの位相可変装置によれば、駆動回転体の円筒部の内周面において、セルフロック機能が更に均等に作用するため、カムトルクの発生時にロックプレートが前記円筒部の内周面に更に食い込みにくくなり、駆動回転体が、カムシャフトの中心軸線に対して更に傾きにくくなる。その結果、クランクシャフト側の駆動回転体に対するカムシャフトの相対位相角の変更動作が、更に阻害されにくくなる。
【0026】
請求項3の自動車用エンジンの位相可変装置によれば、方向によって強さの異なるカムトルクに対応した十分なセルフロック力を得られるため、駆動回転体に対するカムシャフトの相対位相角のズレが確実に防止される。
【0027】
請求項4の自動車用エンジンの位相可変装置によれば、進角方向のカムトルクが遅角方向のカムトルクより強い場合であっても、カムトルクの強弱に対応した十分なセルフロック力を得られるため、駆動回転体に対するカムシャフトの相対位相角のズレが確実に防止される。
【0028】
請求項5の自動車用エンジンの位相可変装置によれば、受圧部をカムトルクの強さに基づいて交換することにより、セルフロック力の強さをカムトルクの強さに対応して調整することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】自動車用エンジンの位相可変装置の第1実施例を装置前方から見た分解斜視図である。
【図2】自動車用エンジンの位相可変装置の第1実施例を装置後方から見た分解斜視図である。
【図3】第1実施例の自動車用エンジンの位相可変装置の正面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】(a)図4のB−B断面図である。(b)図4のC−C断面図である。(c)図4のD−D断面図である。
【図6】(a)図4のE−E断面図である。(b)図4のF−F断面図である。
【図7】(a)は、図6(a)の第1ロックプレート及び保持部の拡大部分断面図である。(b)は、図6(a)の第2ロックプレート及び保持部の拡大部分断面図である。(c)は、図6(a)の第3ロックプレート及び保持部の拡大部分断面図である。
【図8】(a)第1実施例において、進角方向(D1方向)のカムトルクがカムシャフトに発生した際のセルフロック機構の説明図である。(b)遅角方向(D2方向)のカムトルクがカムシャフトに発生した際のセルフロック機構の説明図である。
【図9】自動車用エンジンの位相可変装置の第2実施例を装置前方から見た分解斜視図である。
【図10】第2実施例のロックプレートの形状を示す、自動車用エンジンの位相可変装置を図4のE−E箇所に相当する位置で切断した断面図である。
【図11】(a)は、図10の第1ロックプレート及び保持部の拡大部分断面図である。(b)は、図10の第2ロックプレート及び保持部の拡大部分断面図である。
【図12】(a)第2実施例において、進角方向(D1方向)のカムトルクがカムシャフトに発生した際のセルフロック機構の説明図である。(b)遅角方向(D2方向)のカムトルクがカムシャフトに発生した際のセルフロック機構の説明図である。
【図13】自動車用エンジンの位相可変装置の第3実施例を装置前方から見た分解斜視図である。
【図14】自動車用エンジンの位相可変装置の第3実施例を装置後方から見た分解斜視図である。
【図15】第3実施例のロックプレートの形状を示す、自動車用エンジンの位相可変装置を図4のE−E箇所に相当する位置で切断した断面図である。
【図16】(a)は、図15における第1ロックプレート及び保持部の拡大部分断面図である。(b)は、図15における第2ロックプレート及び保持部の拡大部分断面図である。(c)は、図15における第3ロックプレート及び保持部の拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
各実施例に示す自動車用エンジンの位相可変装置は、エンジンに組付けられ、クランクシャフトの回転に同期して吸排気弁が開閉するようにクランクシャフトの回転をカムシャフトに伝達するとともに、エンジンの負荷や回転数などの運転状態によってエンジンの吸排気弁の開閉タイミングを変更するための装置である。
【0031】
第1実施例の自動車用エンジンの位相可変装置1は、図1から図6に示す通り、クランクシャフトによって駆動回転する駆動回転体2、第1制御回転体3、カムシャフト6、相対位相角変更機構10、セルフロック機構11によって構成される。
【0032】
尚、各図においては、第2電磁クラッチ側を装置前方(符号Fr方向)、駆動回転体側を装置後方(符号Re方向)として説明する。また、(上方:下方:左方:右方=Up、Dw、Le、Ri)として説明する。また、カムシャフトの中心軸線L0周りに回転する駆動回転体2の回転方向については、装置前方から見て時計回りとなる方向を進角方向(符号D1方向)、反時計回りとなる方向を遅角方向(符号D2方向)として説明する。
【0033】
図1,図2に示すとおり、駆動回転体2は、クランクシャフトから駆動力を受けるスプロケット4と駆動円筒5によって構成されている。スプロケット4は、中心の円孔4aと、複数の段差付挿通孔4bを有する。駆動円筒5は、底部5c及び円筒部20からなる有底円筒形状を有する。底部5cには、図1と図6(b)に示すとおり、中心の円孔5a、複数の雌ねじ孔5b、固定孔5d及び有底の円周方向溝5eが設けられる。固定孔5dには、太丸軸32aと細丸軸32bからなる軸状部材32の太丸軸32aが嵌合固定される。スプロケット4と駆動円筒5は、複数のボルト2aを段差付挿通孔4bに挿通し、かつ雌ねじ孔5bにネジ止めすることで、一体化される。
【0034】
図1,図2、図4、図5(c)に示すとおり、第1制御回転体3は、前縁部にフランジ部3aを有する円筒部3bとその後方に連続する底部3cによって形成される。底部3cには、中心の貫通円孔3d、一対の第1ピン孔28,中心軸線L0から所定半径を有する円周上に設けられた円周方向溝30、中心軸線L0からガイド溝への距離が進角側D1方向に向けて減少する曲線状の第1縮径ガイド溝31が設けられる。
【0035】
図1,図2、図4に示すとおり、センターシャフト7は、中心軸線L0に沿って前後に連続する第1円筒部7a、フランジ部7b、第2円筒部7c、及び第3円筒部7dを有する。第3円筒部3dの基端部の周囲には、ロックプレートの保持部12がフランジ状に形成され、センターシャフト7の中央には、円孔7eが形成される。図4に示すとおり、カム6bを有するカムシャフト6は、中央円孔7eとカムシャフト6の前方に開口する雌ねじ孔6aにボルト37を挿入することによって、センターシャフト7の後端側に同軸かつ相対回動不能に一体化されている。
【0036】
保持部12の外周面は、図1,図6(a)に示すように、中心軸線L0を中心とし、断面が正6角形状である6つの面から形成される。保持部12の6つの外周面は、一つおきにプレート押圧面(12a〜12c)として機能し、プレート押圧面(12a〜12c)は、カムシャフトの外周方向において略等分複数箇所に配置される。
【0037】
図1、図2,図4に示すとおり、駆動回転体2は、円孔4aに第1円筒部7aを挿入されたスプロケット4と、円孔5aに第2円筒部7cを挿入された駆動円筒5が、ボルト2aで一体化されることによって形成される。その結果、駆動回転体2は、センターシャフト7に回動可能に支持される。また、第3円筒部7dは、第1制御回転体3の中央円孔3dに挿入される。尚、駆動回転体2,第1制御回転体3,カムシャフト6,センターシャフト7は、中心軸線L0上に同軸に配置される。
【0038】
図1,図2、図4に示す、相対位相角変更機構10は、クランクシャフトの回転に連動する駆動回転体2に対し、カムシャフト6を進角方向D1または遅角方向D2のいずれかに相対回動させる機構である。相対位相角変更機構10は、第1制御回転体3、カムシャフト6に一体化されたセンターシャフト7,セルフロック機構11、及び連結機構16、第1制御回転体3を制動することによって駆動回転体2に対して相対回動させる第1電磁クラッチ21、及び駆動回転体2に対して、第1電磁クラッチ21の作動時と逆向きに第1制御回転体3を相対回動させる逆回転機構22によって構成される。
【0039】
セルフロック機構11は、駆動回転体2とセンターシャフト7との間に介装され、カムシャフト6が図示しないバルブスプリングから受けるカムトルクを原因とした、駆動回転体2に対するカムシャフト6の組付角のズレの発生を防止する機構であり、センターシャフト7の保持部12,ロックプレート14,駆動回転体2の円筒部20によって構成される。
【0040】
ロックプレート14は、保持部12のプレート押圧面(12a〜12c)の数と同数設けられる。従って、ロックプレート14は、図1,図2、図6(a)に示すように、中央にほぼ三角形状となる挿通孔14dを設けた円板を、プレート押圧面(12a〜12c)の数に合わせて3等分してなる、第1ロックプレート14a、第2ロックプレート14b、第3ロックプレート14cによって形成される。第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の内側には、プレート押圧面(12a〜12c)と平行な面からなる受圧部(15a〜15c)が、プレート押圧面(12a〜12c)と対応する位置に、それぞれ設けられる。
【0041】
また、図1,図2、図6(a)に示すように、第1ロックプレート14aには、第1制御回転体3の円周方向溝30に対応する位置に、前後に貫通する円周方向溝14hが設けられ、第2及び第3ロックプレート(14b、14c)には、第1制御回転体3の一対のピン孔28に対応する位置に一対のピン孔14iが設けられる。
【0042】
また、図7(a)〜(c)に示すように保持部12のプレート押圧面12aは、第1及び第2押圧面(13a、13b)によって構成され、プレート押圧面12bは、第1及び第2押圧面(13c、13d)によって構成され、プレート押圧面12cは、第1及び第2押圧面(13e、13f)によって構成される。第1及び第2押圧面(13a、13b)、(13c、13d)、(13e、13f)は、それぞれ交線(C1〜C3)において各プレート押圧面(12a〜12c)に直交する仮想面(S1〜S3)を想定した場合において、仮想面(S1〜S3)で分断された、各プレート押圧面(12a〜12c)上の2つの領域に画成される。
【0043】
また、図6(a)と図7(a)〜(c)に示すように受圧部(15a〜15c)には、それぞれ第1及び第2作用部(17a、17b)(17c、17d)(17e、17f)が、微小円弧形状に加工されたそれぞれの端部に設けられる。第1作用部(17a、17c、17e)は、第1押圧面(13a,13b,13e)と対応する位置に設けられ、かつ図8(a)に示すように第1押圧面13aに接触して進角方向(D1方向)のカムトルクによるセルフロック力Fを受ける(図8(a)を参照)。また第2作用部(17b,17d,17f)は、第2押圧面(13b、13d、13f)と対応する位置に設けられ、かつ図8(b)に示すように第2押圧面13bに接触して遅角方向(D2方向)のカムトルクによるセルフロック力Fを受ける。図7(a)〜(c)に示すように、第1及び第2作用部(17a,17b)は、仮想面S1から第2作用部17bまでの第2距離d2が、仮想面S1から第1作用部17aまでの第1距離d1よりも短くなるように、受圧部(12a〜12c)に形成される。
【0044】
ロックプレート(14a〜14c)は、図6(a)に示すとおり、受圧部(15a〜15c)をプレート保持面(12a〜12c)に接触させることによって、保持部12に保持される。また、ロックプレート(14a〜14c)の外周面(14e〜14g)は、駆動円筒5の円筒部20の内周面20aに内接する。
【0045】
図6(a)に示すとおり、第1ロックプレート14aの円周方向溝14hには、駆動円筒5に固定された軸状部材32の太丸軸32aが挿通される。連結機構16は、一対の連結ピン(27,27)と、制御回転体3の底部3bに設けられた一対の第1ピン孔(28、28)と、第2及び第3ロックプレート(14b,14c)にそれぞれ形成された一対の第2ピン孔(14i,14i)によって構成される。一対の連結ピン(27,27)は、後方から第2ピン孔(14i,14i)に挿入されることによって、第2及び第3ロックプレート(14b,14c)に固定される。図6(b)に示されるように、連結ピン27の後端部は、駆動円筒5の円周方向溝5eに挿入される。第1制御回転体3は、第2及び第3ロックプレート(14b,14c)に固定された一対の連結ピン27の前端部を、図5(c)に示す第1ピン孔28に挿入されることにより、第2及び第3ロックプレート(14b,14c)に連結される。
【0046】
また、図6(a)に示すとおり、第1ロックプレート14aと、第2ロックプレート14bとの間には、円柱形状のピン33が配置され、第1ロックプレート14aと、第3ロックプレート14cとの間には、円柱形状のピン34が配置される。また、第2ロックプレート14bと、第3ロックプレート14cとの間には、第2ロックプレート14bを第3ロックプレート14cから引き離す方向に付勢する圧縮コイルばね35が設けられる。第1ロックプレートは、第2及び第3ロックプレート(14b,14c)に接触するピン(33,34)を介して圧縮コイルばね35の付勢力を受ける。その結果、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)は、円筒部20の内周面20aに隙間無く密着する。
【0047】
また、図1,図2、図4に示す通り、第1電磁クラッチ21は、図示しないエンジンの内部に固定されたカバー部材36に固定された状態で、第1制御回転体3の前方に配置される。作動時の第1電磁クラッチ21は、第1制御回転体3のフランジ部3aの前面3eを吸着して摩擦材21aに接触させる。また、逆回転機構22は、第1制御回転体3の第1縮径ガイド溝31、軸状部材32、第2電磁クラッチ38,第2制御回転体39,第2制御回転体39の第2縮径ガイド溝40,クランク部材41、第1及び第2のピン機構(42,43)によって構成される。
【0048】
図1,図2、図5(a)に示すとおり、第2制御回転体39は、円盤形状を有し、かつ中心の貫通円孔39aと第2縮径ガイド溝40を有する。第2制御回転体39は、貫通円孔39aを介し、センターシャフト7の第3円筒部7dによって回動可能に支持される。第2縮径ガイド溝40は、後方に開口する有底溝であり、かつ中心軸L0から第2縮径ガイド溝40への距離が遅角側D2方向に向けて減少する曲線溝で有る。第1及び第2制御回転体(3,39)の前面(3e、39b)は、図4に示すように互いに面一となるように配置され、第1及び第2制御回転体(3、39)はボルト37に取付けられるホルダー44によって前方に抜け止めされる。また、第1電磁クラッチ21の内側において、第2制御回転体39の前方には、第2電磁クラッチ38が配置される。作動時の第2電磁クラッチ38は、第2制御回転体39の前面39bを吸着して摩擦材38aに接触させる。
【0049】
図1,図5(b)に示すように、第1制御回転体3の前方に配置されるクランク部材41は、半径方向に厚肉となるリング部本体45と、リング部本体45から半径方向外側に突出する突出部46と、リング部本体45の外周の一部を切り欠いて薄肉部として形成された切欠部47と、を有する。切欠部47は、突出部46から進角方向(D1方向)の領域にほぼ形成されている。突出部46には、前後に貫通するピン孔48が形成される。リング部本体45には、前後に貫通する第1及び第2のピン孔(49,50)が設けられる。第1及び第2のピン孔(49,50)は、図5(b)において、突出部から遅角方向(D2方向)の領域に形成されている。
【0050】
図1、図5(c)、図6(a)に示すとおり、駆動円筒5の固定孔5dに固定された軸状部材32の細丸軸32bは、第1ロックプレート14aの円周方向溝14h及び第1制御回転体3の円周方向溝30の前方に突出して、クランク部材41のピン孔48に係合する。その結果、クランク部材41は、駆動円筒5に固定された細丸軸32bによって回動可能に支持される。
【0051】
また、図1,図2に示すとおり、第1のピン機構42は、軸状部材42aと、第1中空長円軸42bによって構成される。軸状部材42aは、小径部42cを介してクランク部材41の第1のピン孔49に後方から固定され、第1中空長円軸42bは、クランク部材41の後方で、軸状部材42aによって回動自在に支持される。第2のピン機構43は、軸状部材43aと、第2中空長円軸43bによって構成される。軸状部材43aは、小径部43cを介してクランク部材41の第2のピン孔50に前方から固定され、第2中空長円軸43bは、クランク部材41の前方で、軸状部材43aによって回動自在に支持される。第1中空長円軸42bは、第1縮径ガイド溝31に係合し、かつ第1縮径ガイド溝31に沿って変位可能に保持される。第2中空長円軸43bは、第2縮径ガイド溝40に係合し、かつ第2縮径ガイド溝40に沿って変位可能に保持される。
【0052】
ここで、駆動回転体2に対するセンターシャフト7(カムシャフト6)の相対位相角の変更動作を説明する。第1及び第2電磁クラッチ(21、38)が作動していない場合、第1及び第2制御回転体(3、39)は、クランクシャフト(図示せず)によって駆動する駆動回転体2と共にD1方向に回転する(図1及び図5(a)(c)を参照)。カムシャフト6は、センターシャフト7の保持部12に保持されたロックプレート14を介して第1制御回転体3に連結されている。従って、第1制御回転体3に連結されたカムシャフト6(図4参照)もまた、駆動回転体と共にD1方向に回転する。
【0053】
駆動回転体2に対するセンターシャフト7(カムシャフト)の相対位相角を遅角方向であるD2方向に変更する場合には、第1電磁クラッチ21を作動させる。第1電磁クラッチ21によって吸着された第1制御回転体3は、摩擦材21aと接触することによって制動され、センターシャフト7(カムシャフト6)と共に駆動回転体2に対してD2方向に回転遅れを生じる。その結果、駆動回転体2(クランクシャフト)に対するセンターシャフト7(カムシャフト6)の相対位相角が、遅角側D2方向に変更され、図示しないエンジンバルブの開閉タイミングが変更される。
【0054】
その際、図5(b)(c)に示す通り、軸状部材42aに支持された第1中空長円軸42bは、第1縮径ガイド溝31によってガイドされながら、第1縮径ガイド溝14内を略時計回りとなるD3方向に移動する。その際、クランク部材41は、第1のピン孔49に連結された軸状部材42aが第1縮径ガイド溝31に沿って第1制御回転体3の半径方向内側に移動することにより、軸状部材32の周りを反時計回りD2方向に回動する。一方、第2ピン孔50に連結された軸状部材43aがクランク部材41によって移動すると、第2中空長円軸43bは、第2縮径ガイド溝40内を略反時計回りとなるD4方向に移動することにより、第2縮径ガイド溝40の内周面に半径方向内向きの力を付与する。その結果、第2制御回転体39は、センターシャフト7に対して進角方向であるD1方向に相対回動する。
【0055】
一方、駆動回転体2に対するセンターシャフト7(カムシャフト6)の相対位相角を進角方向であるD1方向に変更する場合には、第2電磁クラッチ38を作動させる。第2電磁クラッチ38によって吸着された第2制御回転体39は、摩擦材38aと接触することによって制動される。
【0056】
図5(a)に示す通り、第2電磁クラッチ38によって制動された第2制御回転体39は、センターシャフト7に対して遅角方向であるD2方向に回転遅れを生じる。第2中空長円軸43bは、第2縮径ガイド溝40の内周面から力を受けることにより、第2縮径ガイド溝40内を略時計回りとなるD5方向に移動し、クランク部材41に連結された軸状部材42aは、第1制御回転体3の半径方向外側に移動する。その際、図5(c)に示す第1中空長円軸39は、第1縮径ガイド溝31内を略反時計回りとなるD6方向に移動し、第1縮径ガイド溝31の内周面に半径方向外向きの力を付与する。その結果、第1制御回転体3及びセンターシャフト7は、駆動回転体2に対して進角側D1方向に相対回動する。その結果、駆動回転体2(クランクシャフト)に対するセンターシャフト7(カムシャフト6)の相対位相角は、進角側D1方向に戻されて図示しないバルブの開閉タイミングが再び変更される。
【0057】
尚、第1制御回転体3とセンターシャフト7が駆動回転体2に対して相対回動する際に、軸状部材32は、円周方向溝30内を変位し、連結ピン27は、円周方向溝5e内を変位する。円周方向溝5eの両端(5e1、5e2)は、連結ピン27を当接させることにより、第1制御回転体3とセンターシャフト7が駆動回転体2に対して、それ以上相対回動出来ないようにするストッパーとして機能する。
【0058】
次にセルフロック機構11について説明する。駆動回転体2と共に回転するカムシャフト6には、バルブスプリング(図示せず)によるカムトルクが、進角方向であるD1方向と遅角方向であるD2方向に交互に入力されている。カムトルクは、第1及び第2電磁クラッチ(21,39)の停止時において、駆動回転体2に対するカムシャフト6の相対位相角にズレを生じさせることにより、バルブの開閉タイミングを狂わせるおそれがある。セルフロック機構11は、カムトルクの発生時に第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の外周面(14e〜14g)を駆動円筒5の円筒部20の内周面20aに押し付けて、保持部12を有するセンターシャフト7を駆動回転体2に対して回動不能に保持するセルフロック効果により、前記相対位相角のズレを防止するものである。
【0059】
図8(a)は、カムシャフト6(センターシャフト7)に進角方向であるD1方向にカムトルクが発生した場合におけるセルフロック効果を示すものである。カムシャフトに連結されたセンターシャフト7が、進角方向であるD1方向のカムトルクを受けると、断面正六角形の保持部12は、D1方向に回動しようとする。その際、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の第1作用部(17a,17c,17e)は、プレート押圧面(12a〜1c)の第1押圧面(13a,13c,13e)からカムシャフトの回転中心軸線L0に直交する方向のセルフロック力Fを受ける。
【0060】
図8(a)において、第1作用部(17a,17c,17e)を通り、仮想面(S1〜S3)に平行な仮想面をそれぞれ(S4〜S6)とし、仮想面(S4〜S6)と、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の外周面(14e〜14g)との交線を(P1〜P3)とすると、円筒部20の内周面20aは、交線(P1〜P3)において第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の外周面(14e〜14g)から力Fを受ける。力Fは、円筒部20の内周面20aと、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の外周面(14e〜14g)との間に摩擦力を発生させる。
【0061】
前記摩擦力は、以下のように表される。まず、図8(a)において、交線(P1〜P3)を通り、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の外周面(14e〜14g)の接線方向に延びる直線をそれぞれL1とし、仮想面(S4〜S6)にそれぞれ直交する直線をL2とし、直線L1に直交する直線をL3とし、L3と仮想面(S4〜S6)との傾きをそれぞれθ1(以降は、θ1を摩擦角という)とし、摩擦面の摩擦係数をμとする。カムトルクにより、駆動回転体2に対するセンターシャフト7(カムシャフト6)の相対位相角にズレを発生させる力は、交線(P1〜P3)において、外周面(14e〜14g)の接線方向の力F・sinθ1としてそれぞれ表される。一方、円筒部20の内周面20aと、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の外周面(14e〜14g)との間に発生する摩擦力は、μ・F・cosθ1によってそれぞれ表される。
【0062】
前記摩擦力が相対位相角にズレを発生させる力よりも大きい場合、即ち、F・sinθ1<μ・F・cosθ1の条件を満たす場合、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)は、セルフロック力Fに基づく摩擦力により、円筒部20の内周面20aに対して相対回動出来ない。従って、θ1<tan-1μを満たすように摩擦角θ1を設定した場合、保持部12を介して第1から第3ロックプレート(14a〜14c)を保持するセンターシャフト7(カムシャフト6)は、円筒部20を有する駆動回転体2に対して相対回動出来ないように保持される。
【0063】
一方、図8(b)は、カムシャフト6(センターシャフト7)に遅角方向であるD2方向のカムトルクが発生した場合におけるセルフロック効果を示すものである。センターシャフト7が、D2方向のカムトルクを受けると断面正六角形の保持部12は、D2方向に回動しようとする。その際、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の第2作用部(17b,17d,17f)は、プレート押圧面(12a〜12c)の第2押圧面(13b,13d,13f)からカムシャフトの回転中心軸線L0に直交する方向のセルフロック力Fを受ける。
【0064】
図8(b)に示すように、第2作用部(17b,17d,17f)を通り、仮想面(S1〜S3)に平行な仮想面をそれぞれ(S7〜S9)とし、仮想面(S7〜S9)と、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)との交線を(P4〜P6)とすると、円筒部20の内周面20aは、交線(P4〜P6)において、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の外周面(14e〜14g)から力Fを受ける。力Fは、円筒部20の内周面20aと、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の外周面(14e〜14g)との間に以下に示す摩擦力を発生させる。
【0065】
まず、図8(b)において、交線(P4〜P6)から外周面(14e〜14g)の接線方向に延びる直線をそれぞれL4とし、仮想面(S7〜S9)にそれぞれ直交する直線をL5とし、直線L4に直交する直線をL6とし、L6と仮想面(S7〜S9)との傾きをそれぞれθ2(以降は、θ2を摩擦角という)とする。カムトルクにより、駆動回転体2に対するセンターシャフト7(カムシャフト6)の相対位相角にズレを発生させる力は、交線(P4〜P6)において、それぞれ外周面(14e〜14g)の接線方向の力F・sinθ2として表される。一方、円筒部20の内周面20aと、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の外周面(14e〜14g)との間に発生する摩擦力は、μ・F・cosθ2によってそれぞれ表される。
【0066】
即ち、F・sinθ2<μ・F・cosθ2の条件を満たす場合、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)は、円筒部20の内周面20aに対して相対回動出来ない。従って、θ2<tan-1μを満たすように摩擦角θ2を設定した場合、センターシャフト7(カムシャフト6)は、駆動回転体2(図示しないクランクシャフト)に対して相対回動出来ないように保持される。
【0067】
図8(a)(b)に示す通り、セルフロック機構11においては、進角方向であるD1方向または遅角方向であるD2方向のいずれのカムトルクがカムシャフト6に発生しても、駆動回転体2(図示しないクランクシャフト)に対するカムシャフト6の相対位相角がズレることなく保持される、セルフロック効果が発生する。
【0068】
図8(a)(b)に示す通り、このセルフロック機構11によれば、D1方向またはD2方向のいずれのカムトルクを受けても、第1から第3ロックプレート(14a〜14c)の全てにセルフロック機能が発生する。第1から第3ロックプレート(14a〜14c)は、円筒部20の内周面20a内の周方向等分複数箇所に配置されている。従って、駆動回転体5の円筒部20の内周面には、均等な力Fにより、全周にわたって均等なセルフロック効果が発生する。全周にわたって均等なセルフロック効果が発生した場合、ロックプレート14は、セルフロック効果の発生時に円筒部20の内周面20aに食い込まなくなり、駆動回転体2は、カムシャフトの中心軸線L0に対して傾かなくなる。従って、駆動回転体2に対するカムシャフト6の相対位相角を変更する際に、ロックプレート14と円筒部20との間には、余分な摩擦力が発生せず、駆動回転体5と駆動回転体5を保持するセンターシャフト7との間にも、余分な摩擦力が発生しない。その結果、第1または第2電磁クラッチ(21,39)の作動時において、駆動回転体2(図示しないクランクシャフト)に対するカムシャフト6の相対位相角は、セルフロック機構11の影響を受けることなくスムーズに変更される。
【0069】
尚、カムシャフト6において、遅角方向であるD2方向に発生するカムトルクは、カムが、エンジンバルブを押し下げる際にバルブスプリングから受ける弾性力等によって発生するため、進角方向であるD1方向に発生するカムトルクよりも大きくなる。従って、駆動回転体2に対するカムシャフト6の相対位相角は、D1方向のカムトルクに比べてD2方向のカムトルクを受けた場合の方がズレやすくなるため、セルフロック機構11においては、D2方向のカムトルクによるセルフロック効果が、D1方向のカムトルクによるセルフロック効果よりも強く発生するようにすることが望ましい。
【0070】
図7(a)〜(c)に示すように、受圧部(15a〜15c)の第2作用部(17b,17d,17f)から仮想面(S1〜S3)までの第2距離d2は、第1作用部(17a,17c,17e)から仮想面(S1〜S3)までの第1距離d1より短い。従って、図8(a)、(b)に示すセルフロック機構11においては、θ1>θ2となる。その場合、遅角方向であるD2方向のカムトルクによる摩擦力(μ・F・cosθ2)は、進角方向であるD1方向のカムトルクによる摩擦力(μ・F・cosθ1)よりも大きくなる。従って、D2方向のカムトルクによるセルフロック効果は、D1方向のカムトルクによるセルフロック効果よりも強くなるため、駆動回転体2に対するカムシャフト6の相対位相角は、カムトルクを受けてもズレること無く保持される。
【0071】
次に、図9〜図12により、自動車用エンジンの位相可変装置の第2実施例を説明する。第2実施例の自動車用エンジンの位相可変装置55は、保持部57及びロックプレート58が第1実施例の保持部12及びロックプレート14と異なることと、ピン(33,34)を設けていないことの他、第1実施例の自動車用エンジンの位相可変装置1と共通の構成を有する。
【0072】
図9に示すセンターシャフト56は、保持部57の形状が異なるほか、第1実施例のセンターシャフト7と共通の形状を有する。センターシャフト56は、第1円筒部56a、フランジ部56b、第2円筒部56c、ロックプレート58の保持部57、及び第3円筒部57dが、中心軸線L0に沿って前後に連続形成されている。保持部57は、第3円筒部57dの基端部の周囲にフランジ状に形成される。
【0073】
保持部57の外周面は、図10に示すように、カムシャフトの中心軸線L0を中心とする円筒の外周2箇所をカムシャフトの中心軸線L0に平行に切り欠いてなる断面形状を有する。保持部57の切欠部分には、中心軸線L0を挟んで対称となる形状を有し、かつ互いに平行な二つのプレート押圧面(57a、57b)が形成される。
【0074】
図9に示すとおり、駆動回転体2は、円孔4aに第1円筒部56aを挿入されたスプロケット4と、円孔5aに第2円筒部56cを挿入された駆動円筒5が、ボルト2aで一体化されることによって形成される。そして、駆動回転体2は、センターシャフト56に回動可能に支持される。
【0075】
図10に示すとおり、ロックプレート58は、保持部57のプレート押圧面(57a,57b)と同数設けられる。ロックプレート58は、中央に直径方向の貫通溝59を設けた円板を2等分してなる、第1ロックプレート58a、第2ロックプレート58bによって形成される。第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の内側には、プレート押圧面(57a,57b)と平行な面からなる受圧部(59a,59b)が、プレート押圧面(57a,57b)と対応する位置に、それぞれ設けられる。
【0076】
図11(a)(b)に示すように保持部57のプレート押圧面57aは、第1及び第2押圧面(60a、60b)によって構成され、プレート押圧面57bは、第1及び第2押圧面(60c、60d)によってそれぞれ構成される。第1及び第2押圧面(60a、60b)と(60c、60d)は、交線(C4,C5)において、プレート押圧面(57a,57b)にそれぞれ直交する仮想面S10を想定した場合において、仮想面S10で分断された、プレート押圧面(57a,57b)上の2つの領域に画成される。
【0077】
また、図11(a)(b)に示すように受圧部59aには、第1及び第2押圧面(60a、60b)に接触する第1及び第2作用部(61a、61b)が、微小円弧形状に加工された端部に設けられ、受圧部59bには、第1及び第2押圧面(60c、60d)に接触する第1及び第2作用部(61c、61d)が、微小円弧形状に加工された端部に設けられる。第1及び及び第2作用部(61a,61b)と(61c、61d)は、仮想面S10から第2作用部(61b、61d)までの第2距離d4が仮想面S10から第1作用部(61a、61c)までの第1距離d3よりも短くなるように、受圧部(59a,59b)にそれぞれ形成される。第1作用部(61a、61c)は、第1押圧面(60a,60c)から進角方向(D1方向)のカムトルクによるセルフロック力F1を受ける(図11(a)を参照)。第2作用部(61b、61d)は、第2押圧面(60b、60d)から遅角方向(D2方向)のカムトルクによるセルフロック力F1を受ける(図11(a)を参照)。また、図9と図10に示すとおり、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)には、図1に示す第1制御回転体3の一対の第1ピン孔28に対応する位置に、一対の第2ピン孔58cが設けられる。
【0078】
図10に示すとおり、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)は、保持部57に保持される。第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の外周面(58d,58e)は、駆動円筒5の円筒部20の内周面20aに内接する。
【0079】
更に、図10に示すとおり、第1ロックプレート58aと、第2ロックプレート58bとの間の隙間には、圧縮コイルばね62が設けられ、第1ロックプレート58aは、圧縮コイルばね62により、第2ロックプレート58bから引き離される方向に付勢力を受ける。その結果、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)は、円筒部20の内周面20aに隙間無く密着する。
【0080】
一方、図9と図10に示すとおり、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)は、一対の第2ピン孔58cにそれぞれ固定された一対の連結ピン27の前端部を対応する第1ピン孔28に挿入することによって、第1制御回転体3に連結されて、第1制御回転体3と共に回動する。連結ピン27の後端部は、駆動円筒5の円周方向溝5eに挿入される。
【0081】
次に、図11と図12により第2実施例のエンジンの位相可変装置55におけるセルフロック機構65を説明する。セルフロック機構65は、センターシャフト56の保持部57,ロックプレート58,駆動回転体2の駆動円筒5の円筒部20によって構成される。
【0082】
センターシャフト56に同軸に一体化されたカムシャフト(図1のカムシャフト6と同様のもの)が、図12(a)に示すとおり、エンジンバルブから進角方向であるD1方向にカムトルクを受けると、保持部57は、D1方向に回動しようとする。その際、図11(a)(b)に示す第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の第1作用部(61a,61c)は、プレート押圧面(57a,57b)の第1押圧面(60a,60c)からカムシャフトの回転中心軸線L0に直交する方向のセルフロック力F1を受ける。
【0083】
図12(a)において、第1作用部(61a,61c)を通り、仮想面S10に平行な仮想面をそれぞれ(S11,S12)とし、仮想面(S11,S12)と、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の外周面(58d,58e)との交線を(P7,P8)とすると、円筒部20の内周面20aは、交線(P7,P8)において、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の外周面(58d,58e)から力F1を受ける。力F1は、円筒部20の内周面20aと、外周面(58d,58e)との間に摩擦力を発生させる。
【0084】
前記摩擦力は、以下のように表される。まず、図12(a)において、交線(P7,P8)から第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の外周面(58d,58e)の接線方向に延びる直線をそれぞれL7とし、仮想面(S11,S12)に直交する直線をそれぞれL8とし、直線L7に直交する直線をL9とし、L9と仮想面(S11,S12)の傾きをそれぞれθ3(以降は、θ3を摩擦角という)とし、摩擦面の摩擦係数をμとする。カムトルクにより、駆動回転体2に対するセンターシャフト56の相対位相角にズレを発生させる力は、交線(P7,P8)において、外周面(58d,58e)の接線方向の力F1・sinθ3としてそれぞれ表される。一方、円筒部20の内周面20aと、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の外周面(58d,58e)との間に発生する摩擦力は、μ・F1・cosθ3によってそれぞれ表される。
【0085】
F1・sinθ3<μ・F1・cosθ3の条件を満たす場合、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)は、前記摩擦力に基づくセルフロック効果により、円筒部20の内周面20aに対して相対回動出来ない。従って、θ3<tan-1μを満たすように摩擦角θ3を設定した場合、保持部57を介して第1及び第2ロックプレート(58a,58b)を保持するセンターシャフト56(図示しないカムシャフト)は、円筒部20を有する駆動回転体2に対して相対回動出来ないように保持され、駆動回転体2(図示しないクランクシャフト)に対するセンターシャフト(図示しないカムシャフト)の相対位相角は、カムトルクによってズレることなく保持される。
【0086】
一方、図12(b)に示すとおり、図示しないカムシャフトが、エンジンバルブから遅角方向であるD2方向にカムトルクを受けると、保持部57は、D2方向に回動しようとする。その際、図11(a)(b)に示す第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の第2作用部(61b,61d)は、プレート押圧面(57a,57b)の第2押圧面(60b,60d)からカムシャフトの回転中心軸線L0に直交する方向のセルフロック力F1を受ける。
【0087】
図12(b)において、第2作用部(61b,61d)を通り、仮想面S10に平行な仮想面をそれぞれ(S13,S14)とし、仮想面(S13,S14)と、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の外周面(58d,58e)との交線をそれぞれ(P9,P10)とすると、円筒部20の内周面20aは、交線(P9,P10)において、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の外周面(58d,58e)から力F1を受ける。力F1は、円筒部20の内周面20aと、外周面(58d,58e)との間に摩擦力を発生させる。
【0088】
前記摩擦力は、以下のように表される。まず、図12(b)において、交線(P9,P10)(P7,P8)から第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の外周面(58d,58e)の接線方向に延びる直線をそれぞれL10とし、仮想面S10に直交する直線をそれぞれL11とし、直線L10に直交する直線をL12とし、L12と仮想面S10との傾きをそれぞれθ4(以降は、θ4を摩擦角という)とする。カムトルクにより、駆動回転体2に対するセンターシャフト56の相対位相角にズレを発生させる力は、交線(P9,P10)において、外周面(58d,58e)の接線方向の力F1・sinθ4としてそれぞれ表される。一方、円筒部20の内周面20aと、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の外周面(58d,58e)との間に発生する摩擦力は、μ・F1・cosθ4によってそれぞれ表される。
【0089】
F1・sinθ4<μ・F1・cosθ4の条件を満たす場合、第1及び第2ロックプレート(58a,58b)は、前記摩擦力に基づくセルフロック効果により、円筒部20の内周面20aに対して相対回動出来ない。従って、θ4<tan-1μを満たすように摩擦角θ4を設定した場合、駆動回転体2(図示しないクランクシャフト)に対するセンターシャフト(図示しないカムシャフト)の相対位相角は、カムトルクによってズレることなく保持される。
【0090】
セルフロック機構65によれば、進角方向であるD1方向または遅角方向であるD2方向のいずれのカムトルクを受けても、円筒部20の内周面20a内の周方向等分複数箇所に配置された第1及び第2ロックプレート(58a,58b)の双方にセルフロック機能が発生する。従って、駆動回転体5の円筒部20の内周面には、力F1による均等なセルフロック効果が発生する。従って、ロックプレート58は、セルフロック効果の発生時に円筒部20の内周面20aに食い込まなくなり、駆動回転体2は、カムシャフトの中心軸線L0に対して傾かなくなる。従って、駆動回転体2に対するカムシャフト6の相対位相角を変更する際に、ロックプレート58と円筒部20との間には、余分な摩擦力が発生せず、駆動回転体5と駆動回転体5を保持するセンターシャフト56との間にも、余分な摩擦力が発生しない。その結果、第1または第2電磁クラッチ(21,38)の作動時において、駆動回転体2(図示しないクランクシャフト)に対するセンターシャフト56(図示しないカムシャフト)相対位相角は、セルフロック機構65の影響を受けることなくスムーズに変更される。
【0091】
尚、図11(a)(b)に示すように、受圧部(59a,59b)の第2作用部(61b,61d)から仮想面S10までの第2距離d4は、第1作用部(61a,61c)から仮想面S10までの第1距離d3より短いため、図11(a)(b)においては、θ3>θ4となる。その場合、遅角方向であるD2方向のカムトルクによる摩擦力(μ・F1・cosθ4)は、進角方向であるD1方向のカムトルクによる摩擦力(μ・F1・cosθ3)よりも大きくなる。従って、D2方向のカムトルクによるセルフロック効果は、D1方向のカムトルクによるセルフロック効果よりも強くなる。その結果、D2方向のカムトルクがD1方向のカムトルクよりも大きくても、駆動回転体2に対するカムシャフトの相対位相角は、ズレること無く保持される。
【0092】
次に、図13〜図16により、自動車用エンジンの位相可変装置の第3実施例を説明する。第3実施例の自動車用エンジンの位相可変装置70においては、第1制御回転体71、駆動円筒72及びロックプレート73の形状が第1実施例の第1制御回転体3,駆動円筒5及びロックプレート14と異なる。また、自動車用エンジンの位相可変装置70においては、第1実施例の連結ピン27と、ピン(33,34)の代わりに連結ピン(74〜76)が設けられる。また、上記以外の第3実施例の構成は、第1実施例の自動車用エンジンの位相可変装置1と共通する。
【0093】
図13、14に示す第1制御回転体71は、前縁部にフランジ部71aを有する円筒部71bとその後方に連続する底部71cによって形成される。第1制御回転体71は、底部71cの形状が図1及び図5(c)に示される底部3cと異なる他、第1実施例の第1制御回転体3と共通の構成を有する。即ち、底部71aには、中心の貫通円孔71d、円周方向溝77及び第1縮径ガイド溝78が設けられているが、これらは、図5(c)に示す、中心の貫通円孔3d、円周方向溝30及び第1縮径ガイド溝31と形状が同一である。一方、底部71aには、底部3cに設けられた一対のピン孔27の代わりに、3つのピン固定孔79が設けられている。3つのピン固定孔79には、連結ピン(74〜76)の細丸軸(74b〜76b)が取付けられる。連結ピン(74〜76)は、後端側の太丸軸(74a〜76a)と前端側の細丸軸(74b〜76b)によって形成される。
【0094】
また、図13、14に示す駆動円筒72は、図6(b)に示される底部5cに設けられた有底の円周方向溝5dを底部72cに有さない点を除き、第1実施例の駆動円筒5と共通の構成を有する。駆動円筒72は、底部72c及び円筒部80からなる有底円筒形状を有し、底部72cには、センターシャフト7の第2円筒部7cに保持させる中心の円孔72a、複数の雌ねじ孔72b、固定孔72dが設けられる。固定孔72dには、第1実施例と同様に、図1及び図6(b)に示す、軸状部材32の太丸軸32aが嵌合固定される。スプロケット4と駆動円筒72は、複数のボルト2aを段差付挿通孔4bに挿通し、かつ雌ねじ孔72bにネジ止めすることで一体化され、駆動回転体2’を形成する。
【0095】
図15に示すように、ロックプレート73は、中央にほぼ三角形状となる挿通孔73dを設けた円板を3等分した、第1ロックプレート73a、第2ロックプレート73b、第3ロックプレート73cによって形成される。図16(a)〜(c)に示すように第1から第3ロックプレート(73a〜73c)の内側には、形状の等しい3つの受圧プレート(81a〜81c)を着脱自在に取り付ける取付部(73e〜73g)が設けられる。受圧プレート(81a〜81c)は、取付部(73e〜73g)に係合した状態で、プレート押圧面(12a〜12c)によって取付部(73e〜73g)に押圧されることにより、取付部(73e〜73g)に固定される。また、図15に示すように、第1ロックプレート73aには、第1制御回転体71の円周方向溝77に対応する位置に、前後に貫通する円周方向溝73hが設けられる。
【0096】
また、図15に示すように保持部12のプレート押圧面(12a〜12c)は、第1及び第2押圧面(13a、13b)、(13c、13d)、(13e、13f)によって、それぞれ形成される。第1及び第2押圧面(13a、13b)、(13c、13d)、(13e、13f)は、それぞれ交線(C1〜C3)において各プレート押圧面(12a〜12c)に直交する仮想面(S1〜S3)で分断された、各プレート押圧面(12a〜12c)の2つの領域として画成される。
【0097】
また、図16(a)(b)に示すように受圧プレート81aには、第1及び第2押圧面(13a、13b)にそれぞれ接触する第1及び第2作用部(82a、82b)が、微小円弧形状に加工された端部に設けられ、受圧プレート81bには、第1及び第2押圧面(13c、13d)にそれぞれ接触する第1及び第2作用部(82c、82d)が、微小円弧形状に加工された端部に設けられ、受圧プレート81cには、第1及び第2押圧面(13e、13f)にそれぞれ接触する第1及び第2作用部(82e、82f)が、微小円弧形状に加工された端部に設けられる。
【0098】
第1及び及び第2作用部(82a、82b)と(82c、82d)と(82e、82f)は、仮想面(S1〜S3)から第2作用部(82b、82d、82f)までのそれぞれの第2距離d2が、仮想面(S1〜S3)から第1作用部(82a、82c、82e)までの第1距離d1よりも短くなるように、受圧部(81a〜81c)にそれぞれ形成される。
【0099】
また、図15に示すとおり、第1から第3ロックプレート(73a〜73c)の隣接する隙間(73i〜73k)には、連結ピン(74〜76)の太丸軸(74a〜76a)が配置される。また、第2ロックプレート73bと第3ロックプレート73cの隙間73jには、圧縮コイルばね83が設けられる。第2ロックプレート73bは、圧縮コイルばね83により、第3ロックプレート73cから引き離される方向に付勢力を受け、連結ピン(74〜76)の太丸軸(74a〜76a)は、圧縮コイルばね83の付勢力を受けることにより、第1から第3ロックプレート(73a〜73c)にそれぞれ挟持される。
【0100】
ロックプレート(73a〜73c)は、図15に示すとおり、受圧プレート(81a〜81c)をプレート保持面(12a〜12c)に接触させることによって、保持部12に保持され、ロックプレート(73a〜73c)の外周面(14i〜14k)は、駆動円筒72の円筒部80の内周面80aに内接する。また、ロックプレート(73a〜73c)は、第1制御回転体71に連結されて、第1制御回転体71と一体になって回動する。
【0101】
尚、図16(a)〜(c)に示す第1作用部(82a,82c,82e)は、第1押圧面(13a,13c,13e)から、センターシャフト7に進角方向(D1方向)のカムトルクが発生することにより、第1押圧面(13a,13c,13e)から、中心軸線L0の延びる方向に直交する力Fを受け、第2作用部(82b,82d,82f)は、第2押圧面(13b,13d,13f)から、センターシャフト7に遅角方向(D2方向)のカムトルクが発生することにより、第2押圧面(13b,13d,13f)から、中心軸線L0の延びる方向に直交する力Fを受ける。
【0102】
第3実施例の自動車用エンジンの位相可変装置70においては、第1実施例のセルフロック機構11と同様に摩擦角(θ1,θ2)をθ1<tan-1μ、θ2<tan-1μ、とすることにより、力Fに基づくセルフロック効果が発生する。また、図16(a)〜(c)に示すとおり、第3実施例の受圧プレート(81a〜81c)における第2距離d2は、第1実施例と同様に、第1距離d1より短いため、進角方向(D1方向)のカムトルクによるセルフロック効果は、遅角方向(D2方向)のカムトルクによるセルフロック力よりも大きくなる。
【0103】
尚、センターシャフトに一体形成される保持部の形状については、第1実施例や第3実施例の保持部12のように正6角形断面を有する形状に限られず、正多角形断面を有するフランジ部として形成されていればよい。
【符号の説明】
【0104】
1 自動車用エンジンの位相可変装置
2、2’ 駆動回転体
6 カムシャフト
10 相対位相角変更機構
11 セルフロック機構
12 保持部
13a,13c,13e 第1押圧面
13b,13d,13f 第2押圧面
14 ロックプレート
14a〜14c 第1から第3ロックプレート
15a〜15c 受圧部
17a,17c,17e 第1作用部
17b,17d,17f 第2作用部
20 円筒部
20a 円筒部の内周面
55 エンジンの位相可変装置
57 保持部
58 ロックプレート
58a、58b 第1及び第2ロックプレート
59a、59b 受圧部
60a,60c 第1押圧面
60b,60d 第2押圧面
61a,61c 第1作用部
61b,61d 第2作用部
65 セルフロック機構
70 自動車用エンジンの位相可変装置
73 ロックプレート
73a〜73c 第1から第3ロックプレート
80 円筒部
80a 円筒部の内周面
81a〜81c 受圧プレート(請求項5の着脱自在な受圧部)
82a,82c,82e 第1作用部
82b,82d,82f 第2作用部
d1 第1距離
d2 第2距離
L0 カムシャフトの回動中心軸線
D1 進角方向
D2 遅角方向
S1〜S3 仮想面
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【国際調査報告】