(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014057633
(43)【国際公開日】20140417
【発行日】20160825
(54)【発明の名称】接合用組成物
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/02 20060101AFI20160729BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20160729BHJP
   B22F 9/24 20060101ALN20160729BHJP
   H01B 1/22 20060101ALN20160729BHJP
【FI】
   !B22F1/02 B
   !B22F1/00 K
   !B22F9/24 E
   !H01B1/22 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】2014540729
(21)【国際出願番号】JP2013005906
(22)【国際出願日】20131003
(31)【優先権主張番号】2012226774
(32)【優先日】20121012
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区港島南町4丁目6番6号
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 智文
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区港島南町4丁目6番6号バンドー化学株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】下山 賢治
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区港島南町4丁目6番6号バンドー化学株式会社内
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5G301
【Fターム(参考)】
4K017AA02
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5G301DA02
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5G301DA12
5G301DA13
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5G301DD01
(57)【要約】
比較的低温かつ無加圧での接合によって高い接合強度が得られるとともに、使用温度上昇時における樹脂成分の分解、劣化などによる接合強度の低下が生じ難い耐熱性も具備した接合用組成物、特に金属粒子を含む接合用組成物を提供する。無機金属粒子と、不飽和炭化水素及び炭素数が4〜7のアミンを含む有機成分と、を含有する接合用組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機金属粒子と、不飽和炭化水素及び炭素数が4〜7のアミンを含む有機成分と、を含有する接合用組成物。
【請求項2】
前記不飽和炭化水素が水酸基を有することを特徴とする請求項1に記載の接合用組成物。
【請求項3】
前記不飽和炭化水素がリシノール酸であることを特徴とする請求項2に記載の接合用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子と、無機粒子の表面の少なくとも一部に付着している有機成分と、を含む接合用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品と金属部品を機械的及び/又は電気的及び又は熱的に接合するために、従来より、はんだ、導電性接着剤、銀ペースト及び異方導電性フィルム等が用いられている。これら導電性接着剤、銀ペースト及び異方導電性フィルム等は、金属部品だけでなく、セラミック部品や樹脂部品等を接合する場合に用いられることもある。例えば、LED等の発光素子の基板への接合、半導体チップの基板への接合、及びこれらの基板の更に放熱部材への接合等が挙げられる。
【0003】
なかでも、はんだ並びに金属からなる導電フィラーを含む接着剤、ペースト及びフィルムは、電気的な接続を必要とする部分の接合に用いられている。更には、金属は一般的に熱伝導性が高いため、これらはんだ並びに導電フィラーを含む接着剤、ペースト及びフィルムは、放熱性を上げるために使用される場合もある。
【0004】
一方、例えば、LED等の発光素子を用いて高輝度の照明デバイスや発光デバイスを作製する場合、或いは、パワーデバイスと言われる高温で高効率の動作をする半導体素子を用いて半導体デバイスを作製する場合等には、発熱量が上がる傾向にある。デバイスや素子の効率を向上させて発熱を減らす試みも行われているが、現状では十分な成果が出ておらず、デバイスや素子の使用温度が上がっているのが実情である。
【0005】
また、接合時におけるデバイスの損傷を防ぐという観点からは、低い接合温度(例えば300℃以下)で十分な接合強度を確保できる接合材が求められている。したがって、デバイスや素子等を接合するための接合材に対しては、接合温度の低下とともに、接合後におけるデバイスの動作による使用温度の上昇に耐えて十分な接合強度を維持できる耐熱性が求められているが、従来からの接合材では十分な対応ができないことが多い。例えば、はんだは、金属を融点以上に加熱する工程(リフロー工程)を経て部材同士を接合するが、一般的に融点はその組成に固有であるため、耐熱温度を上げようとすると加熱(接合)温度も上がってしまう。
【0006】
更に、はんだを用いて素子や基板を数層重ね合わせて接合する場合、重ね合わせる層の数だけ加熱工程を経る必要であり、既に接合した部分の溶融を防ぐためには、次の接合に用いるはんだの融点(接合温度)を下げる必要があり、また、重ね合わせる層の数だけはんだ組成の種類が必要になり、取扱いが煩雑になる。
【0007】
他方、導電性接着剤、銀ペースト及び異方導電性フィルムでは、含有するエポキシ樹脂等の熱硬化を利用して部材同士を接合するが、得られたデバイスや素子の使用温度が上がると樹脂成分が分解、劣化することがある。例えば、特許文献1(特開2008−63688号公報)においては、接合材の主材として用いて被接合部材同士を接合した時により高い接合強度が得られるようにした微粒子が提案されているが、使用温度上昇時における樹脂成分の分解、劣化の問題は解消されていない。
【0008】
また、高い使用温度において用いられる高温はんだには、従来より、鉛を含むはんだが用いられている。鉛は有毒性があるため、はんだは鉛フリー化への流れが顕著である。高温はんだには他に良い代替材料が存在しないため、依然として鉛はんだが使用されているが、環境問題の観点から、鉛を使用しない接合材が切望されている。
【0009】
近年、高温はんだの代替材料として、銀、金などの貴金属を中心とする金属ナノ粒子を用いた接合材が開発されている(例えば、特開2012−046779)。しかしながら、金属ナノ粒子を用いた接合を達成するには、300〜350℃の不活性雰囲気下で加圧接合を行う必要があり、接合温度の低下および無加圧化が課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−63688号公報
【特許文献2】特開2012−046779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のような状況に鑑み、本発明の目的は、比較的低温かつ無加圧での接合によって高い接合強度が得られるとともに、使用温度上昇時における樹脂成分の分解、劣化などによる接合強度の低下が生じ難い耐熱性も具備した接合用組成物、特に、金属粒子を含む接合用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成すべく接合用組成物の組成について鋭意研究を重ねた結果、無機金属粒子と、無機金属粒子の表面の少なくとも一部に付着している有機成分と、を含有し、かつ当該有機成分を最適化することが、上記目的を達成する上で極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
即ち、本発明は、無機金属粒子と、不飽和炭化水素及び炭素数が4〜7のアミンを含む有機成分と、を含有する接合用組成物を提供する。
【0014】
本発明の接合用組成物を構成する無機金属粒子の粒径は、融点降下が生じるようなナノメートルサイズ、望ましくは1〜200nmが適切であるが、必要に応じてミクロンメートルサイズの粒子を添加することも可能である。この場合、ナノメートルサイズの粒子がミクロンメートルサイズの粒子の周囲で融点降下することにより、接合が達成される。
【0015】
融点降下能を示すナノメートルサイズの無機金属粒子を安定保管するためには、無機金属粒子の表面にある程度の量の有機成分が必要であり、本発明における有機成分は、不飽和炭化水素及び炭素数が4〜7のアミンを含む。
【0016】
即ち、本発明の接合用組成物においては、炭素数が4〜7のアミンがいわゆる分散剤として用いられている。比較的炭素鎖数の少ない低沸点アミンを用いることで、低温焼成型の無機金属粒子を得ることができる。ただし、本発明の接合用組成物は、炭素数は4〜7のアミン以外の他のアミンを含んでいてもよい。無機金属粒子の合成時の組成モル比としては、金属の塩を1とした場合、炭素数4〜7のアミンを0.001〜30までの範囲で任意に選択できるが、好ましくは0.005〜20であり、更に好ましくは0.01〜10である。
【0017】
有機成分のうちの不飽和炭化水素は、二重結合を有しており、当該立体構造によって、有機溶媒への無機金属粒子の分散性を向上させ、無機金属粒子同士の凝集を抑制する効果がある。また、上記アミンは官能基が無機金属粒子の表面に適度の強さで吸着し、無機金属粒子同士の相互の接触を妨げるため、保管状態での無機金属粒子の安定性に寄与する。また、接合温度においては無機金属粒子の表面から移動及び又は揮発することにより、無機金属粒子同士の融着や無機金属粒子と基材との接合を促進するものと考えられる。
【0018】
前記不飽和炭化水素は水酸基を有することが好ましい。水酸基やカルボキシル基は無機金属粒子の表面に配位しやすく、当該無機金属粒子同士の凝集抑制効果を高めることができる。また、疎水基と親水基が共存することで、接合用組成物と接合基材との濡れ性を飛躍的に高める効果も存在する。なお、官能基は水酸基に限るものではなく、カルボキシル基等でもよい。
【0019】
前記不飽和炭化水素はリシノール酸であることが好ましい。リシノール酸はカルボキシル基とヒドロキシル基とを有し、無機金属粒子の表面に吸着して当該無機金属粒子を均一に分散させる効果及び、無機金属粒子の融着を促進する効果があると考えられる。有機物が揮発するには熱と酸素が必要であり、無機金属粒子の表面における有機物も同様である。リシノール酸の無機金属粒子焼結促進効果は、カルボキシル基及びヒドロキシル基の酸素が無機金属粒子表面に付着する有機物の揮発・分解を促すためであると考えられる。
【0020】
また、リシノール酸は200℃前後で分解し始めるため、リシノール酸を含む有機成分の熱重量減少と粒子の焼結収縮とがタイミングよく進行し、無加圧接合を達成することができる。この結果、残留有機成分の少ない緻密な接合層を得ることができ、200℃の大気中において、無加圧で十分な強度を有する接合部を形成することができる。
【0021】
リシノール酸は、無機金属粒子の合成時において、当該無機金属粒子の表面を被覆するための分散剤として加えてもよいし、また、無機金属粒子の精製後において、添加剤として加えてもよい。無機金属粒子の合成時の組成モル比としては、金属の塩を1とした場合、不飽和炭化水素が0.001〜10までの範囲において任意に選択できるが、好ましくは0.005〜5であり、より好ましくは0.01〜3である。無機金属粒子の精製後において添加する場合の重量比としては、無機金属粒子(表面を被覆する有機物を含む)/不飽和炭化水素=99/1〜50/50まで任意に選択できるが、好ましくは98/2〜70/30であり、より好ましくは97/3〜75/25である。
【0022】
ここで、例えば、本発明の接合用組成物を、例えば金メッキを表面に施したアルミナ性セラミクス基板に塗布し、上から同じ基板を載せて、得られた積層体を300℃で加熱する場合を想定する。加熱により接合用組成物の温度が次第に上がる際、200℃に達するまでに比較的揮発し易い有機成分が揮発する。この段階ではまだ相当量の有機成分が残存しており、無機金属粒子同士はまだ積極的には融着しておらず、塗布された状態の接合用組成物は依然として可撓性を有している。そのため、有機成分が気体になって揮発して当該気体の通ったあとに空洞のような部分(通り道)ができても、周りの接合用組成物が移動して当該部分を埋めてくれる。そして、融着した無機金属粒子の繋がりが一体的となり、十分な接合強度が得られ、よって導電性や熱伝導性も向上する。
【0023】
加えて、本発明の接合用組成物においては、炭素数が4〜7のアミンの一分子内におけるアミノ基が、比較的高い極性を有し、水素結合による相互作用を生じ易いが、これら官能基以外の部分は比較的低い極性を有する。更に、アミノ基は、それぞれアルカリ性的性質を示し易い。したがって、炭素数が4〜7のアミンは、本発明の接合用組成物中で、無機金属粒子の表面の少なくとも一部に局在化(付着)すると(即ち、無機金属粒子の表面の少なくとも一部を被覆すると)、有機成分と無機金属粒子とを十分に親和させることができ、無機金属粒子同士の凝集を防ぐ。
【0024】
また、必要に応じて分散媒が添加された場合においても、有機成分が分散剤の作用をするため、分散媒中における無機金属粒子の分散状態が著しく向上する。即ち、本発明の接合用組成物によれば、特定の組合せの有機物を含んでいるので、無機金属粒子が凝集しにくく、塗膜中でも無機金属粒子の分散性がよく、均一に融着して強い接合強度が得られる。
【0025】
ここで、本発明の接合用組成物は、換言すると、無機金属粒子と有機成分とで構成されるコロイド粒子を主成分とする組成物であるが、更に分散媒とを含むコロイド分散液であってもよい。「分散媒」は上記コロイド粒子を分散液中に分散させるものであるが、上記コロイド粒子の構成成分の一部は「分散媒」に溶解していてもよい。なお、「主成分」とは、構成成分のうちの最も含有量の多い成分のことをいう。
【0026】
また、本発明の接合用組成物においては、前記無機金属粒子が、金、銀、銅、ニッケル、ビスマス、スズ又は白金族元素のうちの少なくとも1種の金属の粒子であること、が好ましい。このような構成による接合用組成物を用いれば、優れた接合強度や耐熱性が得られる。更に、上記本発明の接合用組成物は、金属同士の接合に用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、無機金属粒子と、無機金属粒子の表面の少なくとも一部に付着している有機成分と、を含有し、かつ当該有機成分を最適化することにより、低い接合温度において無加圧でも高い接合強度が得られる接合用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の接合用組成物の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、本発明の一実施形態を示すに過ぎず、これらによって本発明が限定されるものではなく、また、重複する説明は省略することがある。
【0029】
(1)接合用組成物
本実施形態の接合用組成物は、無機金属粒子と、不飽和炭化水素及び炭素数が4〜7のアミンを含む有機成分と、を含有することを特徴とする。以下においてこれら各成分について説明する。
【0030】
(1−1)無機金属粒子について
本実施形態の接合用組成物の無機金属粒子としては、特に限定されるものではないが、本実施形態の接合用組成物を用いて得られる接着層の導電性を良好にすることができるため、亜鉛よりもイオン化傾向が小さい(貴な)金属であるのが好ましい。
【0031】
かかる金属としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、ビスマス、スズ、鉄並びに白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金)のうちの少なくとも1種が挙げられる。上記金属としては、金、銀、銅、ニッケル、ビスマス、スズ又は白金族元素よりなる群から選択される少なくとも1種の金属の粒子であることが好ましく、更には、銅又は銅よりもイオン化傾向が小さい(貴な)金属、即ち、金、白金、銀及び銅のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。これらの金属は単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよく、併用する方法としては、複数の金属を含む合金粒子を用いる場合や、コア−シェル構造や多層構造を有する金属粒子を用いる場合がある。
【0032】
例えば、上記接合用組成物の無機金属粒子として銀粒子を用いる場合、本実施形態の接合用組成物を用いて形成した接着層の導電率は良好となるが、マイグレーションの問題を考慮して、銀及びその他の金属からなる接合用組成物を用いることによって、マイグレーションを起こりにくくすることができる。当該「その他の金属」としては、上述のイオン化列が水素より貴である金属、即ち金、銅、白金、パラジウムが好ましい。
【0033】
本実施形態の接合用組成物における無機金属粒子(乃至は無機金属コロイド粒子)の平均粒径は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されるものではないが、融点降下が生じるような平均粒径を有するのが好ましく、例えば、1〜200nmであればよい。更には、2〜100nmであるのが好ましい。無機金属粒子の平均粒径が1nm以上であれば、良好な接着層を形成可能な接合用組成物が得られ、無機金属粒子製造がコスト高とならず実用的である。また、200nm以下であれば、無機金属粒子の分散性が経時的に変化しにくく、好ましい。
【0034】
また、必要に応じてミクロンメートルサイズの無機金属粒子を併用して添加することも可能である。そのような場合は、ナノメートルサイズの無機金属粒子がミクロンメートルサイズの無機金属粒子の周囲で融点降下することにより、接合できる。
【0035】
なお、本実施形態の接合用組成物における無機金属粒子の粒径は、一定とは限らない。また、接合用組成物が、任意成分として、後述する分散媒、樹脂成分、有機溶剤、増粘剤又は表面張力調整剤等を含む場合、平均粒径が200nm超の無機金属コロイド粒子成分を含む場合があるが、凝集を生じたりせず、本発明の効果を著しく損なわない成分であればかかる200nm超の平均粒径を有する粒子成分を含んでもよい。
【0036】
ここで、本実施形態の接合用組成物(金属コロイド分散液)における無機金属粒子の粒径は、動的光散乱法、小角X線散乱法、広角X線回折法で測定することができる。ナノサイズの金属粒子の融点降下を示すためには、広角X線回折法で求めた結晶子径が適当である。例えば広角X線回折法では、より具体的には、理学電機(株)製のRINT−UltimaIIIを用いて、回折法で2θが30〜80°の範囲で測定することができる。この場合、試料は、中央部に深さ0.1〜1mm程度の窪みのあるガラス板に表面が平坦になるように薄くのばして測定すればよい。また、理学電機(株)製のJADEを用い、得られた回折スペクトルの半値幅を下記のシェラー式に代入することにより算出された結晶子径(D)を粒径とすればよい。
D=Kλ/Bcosθ
ここで、K:シェラー定数(0.9)、λ:X線の波長、B:回折線の半値幅、θ:ブラッグ角である。
【0037】
(1−2)無機金属粒子の表面の少なくとも一部に付着している有機成分
本実施形態の接合用組成物において、無機金属粒子の表面の少なくとも一部に付着している有機成分、即ち、無機金属コロイド粒子中の「有機成分」は、いわゆる分散剤として上記無機金属粒子とともに実質的に無機金属コロイド粒子を構成する。当該有機成分には、金属中に最初から不純物として含まれる微量有機物、後述する製造過程で混入して金属成分に付着した微量有機物、洗浄過程で除去しきれなかった残留還元剤、残留分散剤等のように、無機金属粒子に微量付着した有機物等は含まれない概念である。なお、上記「微量」とは、具体的には、金属コロイド粒子中1質量%未満が意図される。
【0038】
上記有機成分は、無機金属粒子を被覆して当該無機金属粒子の凝集を防止するとともに無機金属コロイド粒子を形成することが可能な有機物であり、被覆の形態については特に規定しないが、本実施形態においては、分散性および導電性等の観点から、不飽和炭化水素及び炭素数が4〜7のアミンを含む。なお、これらの有機成分は、無機金属粒子と化学的あるいは物理的に結合している場合、アニオンやカチオンに変化していることも考えられ、本実施形態においては、これらの有機成分に由来するイオンや錯体等も上記有機成分に含まれる。
【0039】
炭素数が4〜7のアミンとしては、炭素数が4〜7であれば直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、側鎖を有していてもよい。例えば、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘキシルアミン等のアルキルアミン(直鎖状アルキルアミン、側鎖を有していてもよい。)、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミン、アニリン等のアリルアミン等の第1級アミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン等の第2級アミン、トリプロピルアミン、ジメチルプロパンジアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ピリジン、キノリン等の第3級アミン等が挙げられる。
【0040】
上記炭素数が4〜7のアミンは、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、カルボニル基、エステル基、メルカプト基等の、アミン以外の官能基を含む化合物であってもよい。この場合、官能基中の炭素数は、「炭素数が4〜7のアミン」の炭素数に含まない。また、アミンに由来する窒素原子の数が、アミン以外の官能基の数以上であるのが好ましい。また、上記アミンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加えて、常温での沸点が300℃以下、更には250℃以下であることが好ましい。
【0041】
本実施形態の接合用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれは、上記の炭素数が4〜7のアミンに加えて、カルボン酸を含んでいてもよい。カルボン酸の一分子内におけるカルボキシル基が、比較的高い極性を有し、水素結合による相互作用を生じ易いが、これら官能基以外の部分は比較的低い極性を有する。更に、カルボキシル基は、酸性的性質を示し易い。また、カルボン酸は、本実施形態の接合用組成物中で、無機金属粒子の表面の少なくとも一部に局在化(付着)すると(即ち、無機金属粒子の表面の少なくとも一部を被覆すると)、有機成分と無機金属粒子とを十分に親和させることができ、無機金属粒子同士の凝集を防ぐ(分散性を向上させる。)。
【0042】
カルボン酸としては、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物を広く用いることができ、例えば、ギ酸、シュウ酸、酢酸、ヘキサン酸、アクリル酸、オクチル酸、オレイン酸等が挙げられる。カルボン酸の一部のカルボキシル基が金属イオンと塩を形成していてもよい。なお、当該金属イオンについては、2種以上の金属イオンが含まれていてもよい。
【0043】
上記カルボン酸は、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボニル基、エステル基、メルカプト基等の、カルボキシル基以外の官能基を含む化合物であってもよい。この場合、カルボキシル基の数が、カルボキシル基以外の官能基の数以上であることが好ましい。また、上記カルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加えて、常温での沸点が300℃以下、更には250℃以下であることが好ましい。また、アミンとカルボン酸はアミドを形成する。当該アミド基も銀粒子表面に適度に吸着するため、有機成分にはアミド基が含まれていてもよい。
【0044】
本実施形態の接合用組成物中における金属コロイド中の有機成分の含有量は、0.5〜50質量%であることが好ましい。有機成分含有量が0.5質量%以上であれば、得られる接合用組成物の貯蔵安定性が良くなる傾向があり、50質量%以下であれば、接合用組成物の導電性が良い傾向がある。有機成分のより好ましい含有量は1〜30質量%であり、更に好ましい含有量は2〜15質量%である。
【0045】
アミンとカルボン酸とを併用する場合の組成比(質量)としては、1/99〜99/1の範囲で任意に選択することができるが、好ましくは20/80〜98/2であり、更に好ましくは30/70〜97/3である。なお、アミン又はカルボン酸は、それぞれ複数種類のアミン又はカルボン酸を用いてもよい。
【0046】
本実施形態の接合用組成物に含まれる不飽和炭化水素としては、例えば、エチレン、アセチレン、ベンゼン、アセトン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−ビニルシクロヘキセン、シクロヘキサノン、テルペン系アルコール、アリルアルコール、オレイルアルコール、2−パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、チアンシ酸、リシノール酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、アラキドン酸、アクリル酸、メタクリル酸、没食子酸及びサリチル酸等が挙げられる。
【0047】
これらのなかでも、水酸基を有する不飽和炭化水素が好ましい。水酸基は無機金属粒子の表面に配位しやすく、当該無機金属粒子の凝集を抑制することができる。水酸基を有する不飽和炭化水素としては、例えば、テルペン系アルコール、アリルアルコール、オレイルアルコール、チアンシ酸、リシノール酸、没食子酸及びサリチル酸等が挙げられる。好ましくは、水酸基を有する不飽和脂肪酸であり、例えば、チアンシ酸、リシノール酸、没食子酸及びサリチル酸等が挙げられる。
【0048】
前記不飽和炭化水素はリシノール酸であることが好ましい。リシノール酸はカルボキシル基とヒドロキシル基とを有し、無機金属粒子の表面に吸着して当該無機金属粒子を均一に分散させると共に、無機金属粒子の融着を促進する。
【0049】
本実施形態の接合用組成物には、上記の成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、使用目的に応じた適度な粘性、密着性、乾燥性又は印刷性等の機能を付与するために、分散媒や、例えばバインダーとしての役割を果たすオリゴマー成分、樹脂成分、有機溶剤(固形分の一部を溶解又は分散していてよい。)、界面活性剤、増粘剤又は表面張力調整剤等の任意成分を添加してもよい。かかる任意成分としては、特に限定されない。
【0050】
任意成分のうちの分散媒としては、本発明の効果を損なわない範囲で種々のものを使用可能であり、例えば炭化水素及びアルコール等が挙げられる。
【0051】
炭化水素としては、脂肪族炭化水素、環状炭化水素及び脂環式炭化水素等が挙げられ、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
脂肪族炭化水素としては、例えば、テトラデカン、オクタデカン、ヘプタメチルノナン、テトラメチルペンタデカン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トリデカン、メチルペンタン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0053】
環状炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0054】
更に、脂環式炭化水素としては、例えば、リモネン、ジペンテン、テルピネン、ターピネン(テルピネンともいう。)、ネソール、シネン、オレンジフレーバー、テルピノレン、ターピノレン(テルピノレンともいう。)、フェランドレン、メンタジエン、テレベン、ジヒドロサイメン、モスレン、イソテルピネン、イソターピネン(イソテルピネンともいう。)、クリトメン、カウツシン、カジェプテン、オイリメン、ピネン、テレビン、メンタン、ピナン、テルペン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0055】
また、アルコールは、OH基を分子構造中に1つ以上含む化合物であり、脂肪族アルコール、環状アルコール及び脂環式アルコールが挙げられ、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、OH基の一部は、本発明の効果を損なわない範囲でアセトキシ基等に誘導されていてもよい。
【0056】
脂肪族アルコールとしては、例えば、ヘプタノール、オクタノール(1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール等)、デカノール(1−デカノール等)、ラウリルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタデシルアルコール、ヘキサデセノール、オレイルアルコール等の飽和又は不飽和C6-30脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0057】
環状アルコールとしては、例えば、クレゾール、オイゲノール等が挙げられる。
【0058】
更に、脂環式アルコールとしては、例えば、シクロヘキサノール等のシクロアルカノール、テルピネオール(α、β、γ異性体、又はこれらの任意の混合物を含む。)、ジヒドロテルピネオール等のテルペンアルコール(モノテルペンアルコール等)、ジヒドロターピネオール、ミルテノール、ソブレロール、メントール、カルベオール、ペリリルアルコール、ピノカルベオール、ソブレロール、ベルベノール等が挙げられる。
【0059】
本実施形態の接合用組成物中に分散媒を含有させる場合の含有量は、粘度などの所望の特性によって調整すれば良く、接合用組成物中の分散媒の含有量は、1〜30質量%であるのが好ましい。分散媒の含有量が1〜30質量%であれば、接合性組成物として使いやすい範囲で粘度を調整する効果を得ることができる。分散媒のより好ましい含有量は1〜20質量%であり、更に好ましい含有量は1〜15質量%である。
【0060】
樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ブロックドイソシアネート等のポリウレタン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、メラミン系樹脂又はテルペン系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
有機溶剤としては、上記の分散媒として挙げられたものを除き、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、重量平均分子量が200以上1,000以下の範囲内であるポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、重量平均分子量が300以上1,000以下の範囲内であるポリプロピレングリコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、グリセリン又はアセトン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
増粘剤としては、例えば、クレイ、ベントナイト又はヘクトライト等の粘土鉱物、例えば、ポリエステル系エマルジョン樹脂、アクリル系エマルジョン樹脂、ポリウレタン系エマルジョン樹脂又はブロックドイソシアネート等のエマルジョン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、キサンタンガム又はグアーガム等の多糖類等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
上記有機成分とは異なる界面活性剤を添加してもよい。多成分溶媒系の金属コロイド分散液においては、乾燥時の揮発速度の違いによる被膜表面の荒れ及び固形分の偏りが生じ易い。本実施形態の接合用組成物に界面活性剤を添加することによってこれらの不利益を抑制し、均一な導電性被膜を形成することができる接合用組成物が得られる。
【0064】
本実施形態において用いることのできる界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の何れを用いることができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。少量の添加量で効果が得られるので、フッ素系界面活性剤が好ましい。
【0065】
なお、有機成分量を所定の範囲に調整する方法は、後述するが、加熱を行って調整するのが簡便である。また、無機金属粒子を作製する際に添加する有機成分の量を調整することで行ってもよく、無機金属粒子調整後の洗浄条件や回数を変えてもよい。加熱はオーブンやエバポレーターなどで行うことができ、減圧下で行ってもよい。常圧下で行う場合は、大気中でも不活性雰囲気中でも行うことができる。更に、有機成分量の微調整のために、上記アミン(及びカルボン酸)を後で加えることもできる。
【0066】
本実施形態の接合用組成物には、主成分として、後述する無機金属粒子がコロイド化した無機金属コロイド粒子が含まれるが、かかる無機金属コロイド粒子の形態に関しては、例えば、無機金属粒子の表面の一部に有機成分が付着して構成されている無機金属コロイド粒子、上記無機金属粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されて構成されている無機金属コロイド粒子、それらが混在して構成されている無機金属コロイド粒子等が挙げられるが、特に限定されない。なかでも、無機金属粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されて構成されている無機金属コロイド粒子が好ましい。当業者は、上述した形態を有する無機金属コロイド粒子を、当該分野における周知技術を用いて適宜調製することができる。
【0067】
本実施形態の接合用組成物は、無機金属粒子と有機成分とで構成されるコロイド粒子を主成分とする流動体であり、無機金属粒子、無機金属コロイド粒子を構成する有機成分のほかに、無機金属コロイド粒子を構成しない有機成分、分散媒または残留還元剤等を含んでいてもよい。
【0068】
本実施形態の接合用組成物の粘度は、固形分の濃度は本発明の効果を損なわない範囲で適宜調整すればよいが、例えば0.01〜5000Pa・Sの粘度範囲であればよく、0.1〜1000Pa・Sの粘度範囲がより好ましく、1〜100Pa・Sの粘度範囲であることが特に好ましい。当該粘度範囲とすることにより、基材上に接合用組成物を塗布する方法として幅広い方法を適用することができる。
【0069】
基材上に接合用組成物を塗布する方法としては、例えば、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー方式、バーコート法、スピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、ピントランスファー法、刷毛による塗布方式、流延法、フレキソ法、グラビア法、オフセット法、転写法、親疎水パターン法、又はシリンジ法等のなかから適宜選択して採用することができるようになる。
【0070】
粘度の調整は、無機金属粒子の粒径の調整、有機物の含有量の調整、分散媒その他の成分の添加量の調整、各成分の配合比の調整、増粘剤の添加等によって行うことができる。接合用組成物の粘度は、例えば、コーンプレート型粘度計(例えばアントンパール社製のレオメーターMCR301)により測定することができる。
【0071】
(2)接合用組成物の製造
次に、本実施形態の無機金属コロイドを含んでなる接合用組成物を製造するためには、主成分としての、有機成分で被覆された無機金属粒子(無機金属コロイド粒子)を調製する。
【0072】
なお、有機成分量及び重量減少率の調整は、特に限定しないが、加熱を行って調整するのが簡便である。また、無機金属粒子を作製する際に添加する有機成分の量を調整することで行ってもよく、無機金属粒子調整後の洗浄条件や回数を変えてもよい。加熱はオーブンやエバポレーター等で行うことができる。加熱温度は50〜300℃程度の範囲であればよく、加熱時間は数分間〜数時間であればよい。加熱は減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱することで、より低い温度で有機物量の調整を行うことができる。常圧下で行う場合は、大気中でも不活性雰囲気中でも行うことができる。更に、有機分量の微調整のためにアミンやカルボン酸を後で加えることもできる。
【0073】
本実施形態の有機成分で被覆された無機金属粒子を調製する方法としては、特に限定されないが、例えば、無機金属粒子を含む分散液を調製し、次いで、その分散液の洗浄を行う方法等が挙げられる。無機金属粒子を含む分散液を調製する工程としては、例えば、下記のように、溶媒中に溶解させた金属塩(又は金属イオン)を還元させればよく、還元手順としては、化学還元法に基づく手順を採用すればよい。
【0074】
即ち、上記のような有機成分で被覆された無機金属粒子は、無機金属粒子を構成する金属の金属塩と、分散剤としての有機物と、溶媒(基本的にトルエン等の有機系であるが、水を含んでいてもよい。)と、を含む原料液(成分の一部が溶解せず分散していてもよい。)を還元することにより調製することができる。
【0075】
この還元によって、分散剤としての有機成分が無機金属粒子の表面の少なくとも一部に付着している無機金属コロイド粒子が得られる。この無機金属コロイド粒子は、それのみで本実施形態の接合用組成物として供することができるが、必要に応じて、これを後述する工程において分散媒に添加することにより、無機金属コロイド分散液からなる接合用組成物として得ることもできる。
【0076】
有機物で被覆された無機金属粒子を得るための出発材料としては、種々の公知の金属塩又はその水和物を用いることができ、例えば、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、酸化銀、酢酸銀、シュウ酸銀、ギ酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀等の銀塩;例えば、塩化金酸、塩化金カリウム、塩化金ナトリウム等の金塩;例えば、塩化白金酸、塩化白金、酸化白金、塩化白金酸カリウム等の白金塩;例えば、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム等のパラジウム塩等が挙げられるが、適当な分散媒中に溶解し得、かつ還元可能なものであれば特に限定されない。また、これらは単独で用いても複数併用してもよい。
【0077】
また、上記原料液においてこれらの金属塩を還元する方法は特に限定されず、例えば、還元剤を用いる方法、紫外線等の光、電子線、超音波又は熱エネルギーを照射する方法等が挙げられる。なかでも、操作の容易の観点から、還元剤を用いる方法が好ましい。
【0078】
上記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、フェニドン、ヒドラジン等のアミン化合物;例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ヨウ素化水素、水素ガス等の水素化合物;例えば、一酸化炭素、亜硫酸等の酸化物;例えば、硫酸第一鉄、酸化鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄、シュウ酸鉄、硫化鉄、酢酸スズ、塩化スズ、二リン酸スズ、シュウ酸スズ、酸化スズ、硫酸スズ等の低原子価金属塩;例えば、エチレングリコール、グリセリン、ホルムアルデヒド、ハイドロキノン、ピロガロール、タンニン、タンニン酸、サリチル酸、D−グルコース等の糖等が挙げられるが、分散媒に溶解し上記金属塩を還元し得るものであれば特に限定されない。上記還元剤を使用する場合は、光及び/又は熱を加えて還元反応を促進させてもよい。
【0079】
上記金属塩、有機成分、溶媒及び還元剤を用いて、有機物で被覆された金属粒子を調製する具体的な方法としては、例えば、上記金属塩を有機溶媒(例えばトルエン等)に溶かして金属塩溶液を調製し、当該金属塩溶液に分散剤としての有機物を添加し、ついで、ここに還元剤が溶解した溶液を徐々に滴下する方法等が挙げられる。
【0080】
上記のようにして得られた分散剤としての有機成分で被覆された無機金属粒子を含む分散液には、無機金属粒子の他に、金属塩の対イオン、還元剤の残留物や分散剤が存在しており、液全体の電解質濃度が高い傾向にある。このような状態の液は、電導度が高いため、無機金属粒子の凝析が起こり、沈殿し易い。あるいは、沈殿しなくても、金属塩の対イオン、還元剤の残留物、又は分散に必要な量以上の過剰な分散剤が残留していると、導電性を悪化させるおそれがある。そこで、上記無機金属粒子を含む溶液を洗浄して余分な残留物を取り除くことにより、有機物で被覆された無機金属粒子を確実に得ることができる。
【0081】
上記洗浄方法としては、例えば、有機成分で被覆された無機金属粒子を含む分散液を一定時間静置し、生じた上澄み液を取り除いた上で、アルコール(メタノール等)を加えて再度撹枠し、更に一定期間静置して生じた上澄み液を取り除く工程を幾度か繰り返す方法、上記の静置の代わりに遠心分離を行う方法、限外濾過装置やイオン交換装置等により脱塩する方法等が挙げられる。このような洗浄によって有機溶媒を除去することにより、本実施形態の有機成分で被覆された無機金属粒子を得ることができる。
【0082】
本実施形態のうち、無機金属コロイド分散液は、上記において得た有機成分で被覆された無機金属粒子と、上記本実施形態で説明した分散媒と、を混合することにより得られる。 かかる有機成分で被覆された無機金属粒子と分散媒との混合方法は特に限定されるものではなく、攪拌機やスターラー等を用いて従来公知の方法によって行うことができる。スパチュラのようなもので撹拌したりして、適当な出力の超音波ホモジナイザーを当ててもよい。
【0083】
複数の金属を含む無機金属コロイド分散液を得る場合、その製造方法としては特に限定されず、例えば、銀とその他の金属とからなる無機金属コロイド分散液を製造する場合には、上記の有機物で被覆された無機金属粒子の調製において、無機金属粒子を含む分散液と、その他の無機金属粒子を含む分散液とを別々に製造し、その後混合してもよく、銀イオン溶液とその他の金属イオン溶液とを混合し、その後に還元してもよい。
【0084】
(3)接合方法
本実施形態の接合用組成物を用いれば、加熱を伴う部材同士の接合において高い接合強度を得ることができる。即ち、上記接合用組成物を第1の被接合部材と第2の被接合部材との間に塗布する接合用組成物塗布工程と、第1の被接合部材と第2の被接合部材との間に塗布した接合用組成物を、所望の温度(例えば300℃以下、好ましくは150〜200℃)で焼成して接合する接合工程と、により、第1の被接合部材と第2の被接合部材とを接合することができる。この際、加圧することもできるが、特に加圧しなくとも十分な接合強度を得ることができるのも本発明の利点のひとつである。また、焼成を行う際、段階的に温度を上げたり下げたりすることもできる。また、予め被接合部材表面に界面活性剤又は表面活性化剤等を塗布しておくことも可能である。
【0085】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、前記接合用組成物塗布工程での接合用組成物として、上述した本実施形態の接合用組成物を用いれば、第1の被接合部材と第2の被接合部材とを、高い接合強度をもってより確実に接合できる(接合体が得られる)ことを見出した。
【0086】
ここで、本実施形態の接合用組成物の「塗布」とは、接合用組成物を面状に塗布する場合も線状に塗布(描画)する場合も含む概念である。塗布されて、加熱により焼成される前の状態の接合用組成物からなる塗膜の形状は、所望する形状にすることが可能である。したがって、加熱による焼成後の本実施形態の接合体では、接合用組成物は、面状の接合層及び線状の接合層のいずれも含む概念であり、これら面状の接合層及び線状の接合層は、連続していても不連続であってもよく、連続する部分と不連続の部分とを含んでいてもよい。
【0087】
本実施形態において用いることのできる第1の被接合部材及び第2の被接合部材としては、接合用組成物を塗布して加熱により焼成して接合することのできるものであればよく、特に制限はないが、接合時の温度により損傷しない程度の耐熱性を具備した部材であるのが好ましい。
【0088】
このような被接合部材を構成する材料としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ビニル樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、セラミクス、ガラス又は金属等を挙げることができるが、なかでも、金属製の被接合部材が好ましい。金属製の被接合部材が好ましいのは、耐熱性に優れているとともに、無機粒子が金属である本発明の接合用組成物との親和性に優れているからである。
【0089】
また、被接合部材は、例えば板状又はストリップ状等の種々の形状であってよく、リジッドでもフレキシブルでもよい。基材の厚さも適宜選択することができる。接着性若しくは密着性の向上又はその他の目的ために、表面層が形成された部材や親水化処理等の表面処理を施した部材を用いてもよい。
【0090】
接合用組成物を被接合部材に塗布する工程では、種々の方法を用いることが可能であるが、上述のように、例えば、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー式、バーコート式、スピンコート式、インクジェット式、ディスペンサー式、ピントランスファー法、刷毛による塗布方式、流延式、フレキソ式、グラビア式、又はシリンジ式等のなかから適宜選択して用いることができる。
【0091】
上記のように塗布した後の塗膜を、被接合部材を損傷させない範囲で、例えば300℃以下の温度に加熱することにより焼成し、本実施形態の接合体を得ることができる。本実施形態においては、先に述べたように、本実施形態の接合用組成物を用いるため、被接合部材に対して優れた密着性を有する接合層が得られ、強い接合強度がより確実に得られる。
【0092】
本実施形態においては、接合用組成物がバインダー成分を含む場合は、接合層の強度向上及び被接合部材間の接合強度向上等の観点から、バインダー成分も焼結することになるが、場合によっては、各種印刷法へ適用するために接合用組成物の粘度を調整することをバインダー成分の主目的として、焼成条件を制御してバインダー成分を全て除去してもよい。
【0093】
上記焼成を行う方法は特に限定されるものではなく、例えば従来公知のオーブン等を用いて、被接合部材上に塗布または描画した上記接合用組成物の温度が、例えば300℃以下となるように焼成することによって接合することができる。上記焼成の温度の下限は必ずしも限定されず、被接合部材同士を接合できる温度であって、かつ、本発明の効果を損なわない範囲の温度であることが好ましい。ここで、上記焼成後の接合用組成物においては、なるべく高い接合強度を得るという点で、有機物の残存量は少ないほうがよいが、本発明の効果を損なわない範囲で有機物の一部が残存していても構わない。
【0094】
なお、本発明の接合用組成物には、有機物が含まれているが、従来の例えばエポキシ樹脂等の熱硬化を利用したものと異なり、有機物の作用によって焼成後の接合強度を得るものではなく、前述したように融着した無機金属粒子の融着によって十分な接合強度が得られるものである。このため、接合後において、接合温度よりも高温の使用環境に置かれて残存した有機物が劣化ないし分解・消失した場合であっても、接合強度の低下するおそれはなく、したがって耐熱性に優れている。
【0095】
本実施形態の接合用組成物によれば、例えば150〜200℃程度の低温加熱による焼成でも高い導電性を発現する接合層を有する接合を実現することができるため、比較的熱に弱い被接合部材同士を接合することができる。また、焼成時間は特に限定されるものではなく、焼成温度に応じて、接合できる焼成時間であればよい。
【0096】
本実施形態においては、上記被接合部材と接合層との密着性を更に高めるため、上記被接合部材の表面処理を行ってもよい。上記表面処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、電子線処理等のドライ処理を行う方法、基材上にあらかじめプライマー層や導電性ペースト受容層を設ける方法等が挙げられる。
【0097】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、無機粒子として金属粒子を採用した無機金属コロイド分散液について説明したが、例えば、導電性、熱伝導性、誘電性、イオン伝導性等に優れたスズドープ酸化インジウム、アルミナ、チタン酸バリウム、鉄リン酸リチウム等の無機粒子を用いることもできる。
【0098】
以下、実施例において本発明の接合用組成物について更に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0099】
≪実施例1≫
トルエン(和光純薬工業(株)製特級)300mLにヘキシルアミン(東京化成工業(株)製EPグレード)50gを加え、マグネティックスターラーにてよく攪拌した。攪拌を行いながら、硝酸銀(和光純薬工業(株)製特級)10gを加え、硝酸銀が溶解したところでオレイン酸(和光純薬工業(株)製一級)10g及びヘキサン酸(和光純薬工業(株)製特級)5gを順次添加し、硝酸銀のトルエン溶液を調製した。
【0100】
十分に撹拌し熱を取った後、この硝酸銀のトルエン溶液に、イオン交換水100mLに水素化ほう素ナトリウム(和光純薬工業(株)製化学用)2gを添加して調製した0.02g/mLの水素化ほう素ナトリウム水溶液を滴下し、撹拌を一時間続けて銀粒子を生成させた。その後、メタノール(和光純薬工業(株)製特級)を500mL加えて銀粒子を沈降させた。更に、遠心分離にて銀粒子を完全に沈降させた後、上澄みに含まれる反応残渣や溶媒等の除去を行った。
【0101】
上澄みを除去した後に残った銀粒子を含む沈降物(未処理銀粒子組成物)を、ダイヤフラムポンプを用いて数分間減圧し、少量残存していたメタノールをよく蒸発させた後、大気雰囲気下200℃のオーブンに20分間入れることで加熱処理し、ヘキシルアミン、オレイン酸及びヘキサン酸を含む有機物の量を適量に減らした銀粒子組成物1を得た。
【0102】
[接合強度測定]
5gの上記銀粒子組成物1にリシノール酸(和光純薬工業(株)製化学用)を1g添加し、よく撹拌混合することで接合用組成物1を得た。当該接合用組成物をダイボンダー(ハイソル社製)を用いて、表面に金メッキを施したアルミナ板(50mm角)に少量載せ、その上に、市販の青色LEDチップ(ジェネライツ社製、底面積600ミクロン×600ミクロン)を積層した。その際、外力を加えて加圧することはしなかった。
【0103】
そして、得られた積層体を、200℃に調整した熱風循環式オーブンに入れ、大気雰囲気下で、120分間の加熱による焼成処理を行った。積層体を取り出して冷却した後、常温にてボンドテスター(レスカ社製PTR−1101)を用いて接合強度試験(シェア高さ:基板より10ミクロン、シェアツール速度:0.01mm/sec)を行った。剥離時の接合強度をチップの底面積で換算した。評価結果中の数値はMPa表記である。
【0104】
≪実施例2≫
リシノール酸を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして接合用組成物2を調製し、接合強度測定を行った。結果を表1に示した。
【0105】
≪実施例3≫
オレイン酸の代わりにリシノール酸を用いたこと以外は、実施例1と同様にして接合用組成物3を調製し、接合強度測定を行った。結果を表1に示した。
【0106】
≪実施例4≫
オレイン酸の代わりにリシノール酸を用いて得た銀粒子組成物にさらにリシノール酸を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして接合用組成物4を調製し、接合強度測定を行った。結果を表1に示した。
【0107】
≪比較例1≫
オレイン酸とリシノール酸を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較接合用組成物1を調製し、接合強度測定を行った。結果を表1に示した。
【0108】
≪比較例2≫
ヘキシルアミンの代わりにドデシルアミンを用いたことと、その後リシノール酸を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較接合用組成物2を調製し、接合強度測定を行った。結果を表1に示した。
【0109】
≪比較例3≫
ヘキシルアミンの代わりにオレイルアミンを用いたことと、その後リシノール酸を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較接合用組成物3を調製し、接合強度測定を行った。結果を表1に示した。
【0110】
【表1】
【0111】
表1に示す結果から、本発明の実施例においては接合温度が200℃と低温で、無加圧による接合であるにもかかわらず、20MPa前後の高い接合強度を示している。一方で、本発明の構成を具備しない接合用組成物を用いた場合、同様の接合条件において、極めて低い接合強度となっている。

【手続補正書】
【提出日】20140109
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機金属粒子と、不飽和カルボン酸及び炭素数が4〜7のアミンを含む有機成分と、を含有する接合用組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記不飽和カルボン酸がリシノール酸であることを特徴とする請求項1に記載の接合用組成物。
【国際調査報告】