(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014057657
(43)【国際公開日】20140417
【発行日】20160825
(54)【発明の名称】希土類蓄冷材粒子、希土類蓄冷材粒子群およびそれを用いたコールドヘッド、超電導磁石、検査装置、クライオポンプ
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/08 20060101AFI20160729BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20160729BHJP
   F25B 9/14 20060101ALI20160729BHJP
   H01F 6/04 20060101ALI20160729BHJP
   G01R 33/3815 20060101ALI20160729BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20160729BHJP
   F04B 37/08 20060101ALI20160729BHJP
【FI】
   !C09K5/00 F
   !F25B9/00 D
   !F25B9/00 H
   !F25B9/14 510B
   !H01F6/04
   !G01N24/06 510D
   !A61B5/05 360
   !F04B37/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】2014540740
(21)【国際出願番号】JP2013005987
(22)【国際出願日】20131008
(31)【優先権主張番号】2012224522
(32)【優先日】20121009
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号
(71)【出願人】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
【住所又は居所】神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝彦
【住所又は居所】日本国東京都港区芝浦一丁目1番1号 株式会社 東芝 知的財産部内
(72)【発明者】
【氏名】布施 圭一
【住所又は居所】日本国東京都港区芝浦一丁目1番1号 株式会社 東芝 知的財産部内
【テーマコード(参考)】
3H076
4C096
【Fターム(参考)】
3H076AA25
3H076BB04
3H076BB26
3H076BB45
3H076CC55
4C096AD08
4C096CA54
(57)【要約】
長期信頼性が高い希土類蓄冷材粒子および蓄冷材粒子群、それを用いた超電導磁石、検査装置、クライオポンプなどを提供する。構成成分に希土類元素を含む希土類蓄冷材粒子であって、X線光電子分光分析により、表面領域に炭素成分を示すピークが検出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成成分として希土類元素を含む希土類蓄冷材粒子であって、
X線光電子分光分析により、前記希土類蓄冷材粒子の表面領域に炭素成分を示すピークが検出される、希土類蓄冷材粒子。
【請求項2】
前記炭素成分を含む全体の炭素の含有量が100質量ppm以下である、請求項1に記載の希土類蓄冷材粒子。
【請求項3】
前記炭素成分は、C−C結合、C−H結合、C−O結合、C=O結合、およびO−C=O結合から選ばれる少なくとも1種を有する、請求項1に記載の希土類蓄冷材粒子。
【請求項4】
前記希土類蓄冷材粒子は、
組成式:RMa
(式中、Rは前記希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはCu、Ni、およびCoから選ばれる少なくとも1種の元素、aは0.1≦a≦4.0を満足する数(原子比)である)
で表される金属間化合物を具備する、請求項1に記載の希土類蓄冷材粒子。
【請求項5】
前記X線光電子分光分析により、前記表面領域に、前記希土類元素と酸素との化合物を示すピークおよび前記M元素と酸素との化合物を示すピークが検出される、請求項4に記載の希土類蓄冷材粒子。
【請求項6】
前記M元素と酸素との化合物における前記M元素の原子数Bに対する前記希土類元素と酸素との化合物における前記希土類元素の原子数Aの比(A/B)がaを超える、請求項4に記載の希土類蓄冷材粒子。
【請求項7】
前記金属間化合物が、HoCu、HoCu、ErNi、ErNi、およびErCoから選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の希土類蓄冷材粒子。
【請求項8】
前記金属間化合物が、HoCuであり波長600nmの光の反射率が20%以上である、請求項4に記載の希土類蓄冷材粒子。
【請求項9】
請求項1に記載の希土類蓄冷材粒子を複数具備する、希土類蓄冷材粒子群。
【請求項10】
前記希土類蓄冷材粒子の投影像の周囲長をLとし、前記投影像の実面積をAとしたとき、L/4πAで表される形状因子Rが1.5を超える希土類蓄冷材粒子の比率が5%以下である、請求項9に記載の希土類蓄冷材粒子群。
【請求項11】
請求項9に記載の希土類蓄冷材粒子群を具備する、コールドヘッド。
【請求項12】
蓄冷材を有する第1のステージと、
異なる種類の蓄冷材粒子群がそれぞれ充填された複数の蓄冷材充填層を有する第2のステージと、を具備し、
前記複数の蓄冷材充填層の少なくとも1つは、請求項9に記載の希土類蓄冷材粒子群を備える、コールドヘッド。
【請求項13】
請求項11に記載のコールドヘッドを具備する、超電導磁石。
【請求項14】
請求項11に記載のコールドヘッドを具備する、検査装置。
【請求項15】
請求項11に記載のコールドヘッドを具備する、クライオポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類蓄冷材粒子、希土類蓄冷材粒子群およびそれを用いたコールドヘッド、超電導磁石、検査装置、クライオポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超電導技術の発展は著しく、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置や核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)装置などの様々な検査装置が用いられている。超電導技術を使用するためには、10K以下、さらには4K以下の極低温を実現することが必要である。このような極低温を実現するために、コールドヘッドと呼ばれる冷凍機が用いられている。
【0003】
コールドヘッドとしては、ギフォード・マクマホン方式(GM方式)や、スターリング方式、パルス方式といった様々な方式がある。いずれの方式であったとしても、極低温を得るためには、コールドヘッドのステージと呼ばれる蓄冷容器に蓄冷材を充填して使用する。コールドヘッドの設計によって、蓄冷容器は、1ステージの場合や、2ステージなどの複数のステージに分かれる場合がある。この蓄冷容器に、ヘリウムガスを通して、蓄冷材の体積比熱を利用して極低温を得ている。
【0004】
蓄冷材としては、例えば希土類化合物が用いられている。例えば、ErNiやHoCuなどの希土類化合物の粒径やアスペクト比を調整することにより、強度と充填率を向上させコールドヘッドの性能を向上させている。また、希土類蓄冷材の強度を向上させることにより、7000時間という長期信頼性を得ることも可能である。
【0005】
ところで、MRI装置などの検査装置の一部には、いつでも患者の検査が行えるようにするために連続稼働で管理されているものもある。一般的なコールドヘッドの保証時間は20000時間〜30000時間程度と言われている。これは主に、経時変化による蓄冷材の冷凍能力の低下や、コールドヘッドの連続稼働での蓄冷材の破壊による蓄冷容器の目詰まり等が原因である。
【0006】
コールドヘッドの冷凍能力は、使用する蓄冷材の能力に合わせて設計されている。蓄冷材の冷凍能力に合わせて、蓄冷材の組合せ、蓄冷材の使用量またはヘリウムガスの供給量などを調整している。従来の蓄冷材では、20000時間〜30000時間程度で経時変化や破壊が起こり、それ以上の長期信頼性は得られていなかった。また、コールドヘッドは、気密性を高くしてヘリウムガスが漏れないように設計されているため、蓄冷材の交換のためのメンテナンスには非常に負荷がかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2609747号公報
【特許文献2】特許第3769024号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様では、経時変化による冷凍能力の低下を防ぎ、機械的強度を向上させ、長期信頼性が高い蓄冷材を提供することを課題とする。
【0009】
実施形態の希土類蓄冷材粒子は、構成成分として希土類元素を含む。さらに、実施形態の希土類蓄冷材粒子では、X線光電子分光分析により、表面領域に炭素成分を示すピークが検出される。
【0010】
実施形態の希土類蓄冷材粒子群は、実施形態の希土類蓄冷材粒子を複数具備する。
【0011】
実施形態のコールドヘッドは、実施形態の希土類蓄冷材粒子群を具備する。
【0012】
実施形態の超電導磁石、検査装置、又はクライオポンプは、実施形態のコールドヘッドを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の希土類蓄冷材粒子の一例を示す図。
【図2】実施形態のコールドヘッドの一例を示す図。
【図3】実施形態のコールドヘッドの他の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に実施形態の希土類蓄冷材粒子の一例を示す。
【0015】
希土類蓄冷材粒子1は、構成成分として希土類元素を含む。希土類元素は、例えば金属単体、金属間化合物、金属酸化物、金属酸硫化物として含まれる。例えば、金属間化合物とは、2種以上の金属からなる化合物のことである。
【0016】
希土類元素としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
図1では球体形状の希土類蓄冷材粒子を示しているが、本実施形態の希土類蓄冷材粒子は、球体に限らず、楕円、粉砕粉など様々な形状であってよい。また、希土類蓄冷材粒子の平均粒径は0.1mm以上0.3mm以下であることが好ましい。
【0018】
希土類蓄冷材粒子1では、X線光電子分光(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)分析により希土類蓄冷材粒子1の表面領域2に炭素成分を示すピークが検出される。XPS分析では、サンプル表面にX線を照射し、生じる光電子のエネルギーを測定することでサンプル表面の構成元素とその電子状態を分析することができる。
【0019】
XPS分析の条件としては、分析機種にQuantera SXM(PHI社製)、X線源に単結晶AlKα、出力25W、分析領域φ100μmが例示される。また、Pass Energyは、Wide Scan−280.0eV(1.0eV/Step)、Narrow Scan−69.0eV(0.125eV/Step)であることが好ましい。また、ジオメトリ(試料表面と検出器の角度)θは45°であることが好ましい。この条件であれば、希土類蓄冷材粒子1の表面から1μmまでしかX線が透過しないので表面領域2の炭素成分の有無を検出できる。
【0020】
XPS分析により表面領域2に検出される炭素成分は、炭素を含むものであれば特に限定されないが、C−C結合、C−H結合、C−O結合、C=O結合、およびO−C=O結合から選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。炭素成分を示すピークは、これら1種でもよいし、2種以上の成分を示すピークが検出されてもよい。C−C結合またはC−H結合を総合してC−C/H結合と称する。また、C−O結合、C=O結合、O−C=O結合を総合してCOx結合と称する。
【0021】
C−C/H結合またはCOx結合を含む炭素成分を示すピークが検出されるということは、炭化水素または二酸化炭素などの炭素を含有する成分が希土類蓄冷材粒子1の表面領域2に吸着された状態であることを意味する。
【0022】
希土類蓄冷材粒子1の炭素含有量は、100質量ppm以下であることが好ましい。この炭素含有量は、表面領域2に吸着した炭素成分を含めた全体の炭素含有量である。つまり、本実施形態の希土類蓄冷材粒子は、表面領域に炭素成分を吸着させているが、全体として希土類蓄冷材粒子1の炭素含有量は低減されている。
【0023】
希土類蓄冷材粒子の炭素含有量が100質量ppmを超えると、希土類蓄冷材粒子自体の強度が低下する。そのため、炭素含有量は100質量ppm以下、さらには50質量ppm以下であることが好ましい。また、炭素含有量の下限値は特に限定されないが、5質量ppm以上であることが好ましい。なお、例えば高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法により、炭素含有量の測定を行うことができる。
【0024】
希土類蓄冷材粒子1を用いた蓄冷では、希土類蓄冷材粒子1の体積比熱を利用する。よって、希土類蓄冷材粒子1の表面領域2にヘリウムガス(作動媒体ガス)を接触させ易くするために、希土類蓄冷材粒子1は、大気成分が吸着しないようにアルゴン雰囲気や真空中で管理されている。特に、希土類蓄冷材粒子1は、酸化され易く、長期間に渡り大気中に放置しておくと表面領域2が酸化され蓄冷材としての機能が低下する。
【0025】
ヘリウムガスとしては、例えば純度99.995%以上の高純度ヘリウムガスが用いられる。上記のとおり、高純度ヘリウムガスは、高純度ガスではあるが、極微量の酸素が含有されている。
【0026】
例えば、コールドヘッドの保証期間が一般的な20000時間〜30000時間程度であれば問題ないが、少しずつコールドヘッドの酸化は進んでいくため、酸化が進んでいくと冷凍能力の低下が現れ、例えば、4K到達時間が長くなるといった問題が生じる。
【0027】
また、蓄冷材をアルゴン雰囲気中または真空中で管理し、表面領域2が酸化されないように管理することはコストアップの要因となる。
【0028】
これに対し、本実施形態の希土類蓄冷材粒子では、XPS分析により炭素成分を示すピークが検出される程度の量の炭素成分を表面領域2に吸着させることにより、ヘリウムガスに含まれる微量酸素による劣化を抑制することができる。そのため、40000時間以上、さらには50000時間以上に渡り、経時変化に強く長期信頼性が高い希土類蓄冷材粒子を提供することができる。
【0029】
さらに、希土類蓄冷材粒子1は、
組成式:RMa
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはCu、Ni、およびCoから選ばれる少なくとも1種の元素、aは0.1≦a≦4.0を満足する数(原子比)である)
で表される金属間化合物を具備することが好ましい。希土類蓄冷材の中で金属間化合物の体積比熱による蓄冷効果は高い。
【0030】
希土類元素Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuから選ばれる少なくとも1種である。また、「0.1≦a≦4.0」は、希土類元素Rの原子量を1としたときのM元素の原子量を原子量比(=M元素の原子量/希土類元素Rの原子量)で示した値である。
【0031】
例えば、金属間化合物は、HoCu、HoCu、ErNi、ErNi、およびErCoから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの金属間化合物の比熱ピークは、60K以下、さらには15K以下である。また、HoCuではa=2、HoCuではa=1、ErNiではa=0.3、ErNiではa=1、ErCoはa=0.3となり、いずれも0.1≦a≦4.0を満たしている。上記金属間化合物を具備する希土類蓄冷材粒子1を例えばコールドヘッドに用いることにより、10K以下、さらには5K以下の極低温を得ることができる。
【0032】
さらに、HoCu、ErNi、ErNi、ErCoの比熱ピークは15K以下である。よって、HoCu、ErNi、ErNi、ErCoは、5K以下さらには4K以下の極低温を得るのに有効な蓄冷材である。
【0033】
さらに、HoCuは非磁性である。例えば、超電導磁石に搭載するコールドヘッドの蓄冷材として非磁性蓄冷材を用いることにより、超電導磁石の磁力により蓄冷材が引き付けられてコールドヘッド内で位置ずれが起きにくくなるため、作動媒体ガス(ヘリウムガス)と蓄冷材の接触量を安定化させることができる。また、HoCuの比熱ピークは10K以下である。よって、HoCuは、蓄冷材として好適である。
【0034】
HoCuの比熱ピークは、20K〜60Kであり、HoCuはPb蓄冷材の代替品となる。
【0035】
上記金属間化合物を含む場合、XPS分析により、表面領域2に希土類元素と酸素との化合物(R−O化合物)を示すピークおよびM元素と酸素との化合物(M−O化合物)を示すピークが検出されることが好ましい。
【0036】
前述の炭素成分を示すピークと共に、希土類元素と酸素との化合物を示すピークおよびM元素と酸素との化合物を示すピークが検出されるということは、希土類蓄冷材粒子1の表面領域2に酸素成分(希土類元素と酸素との化合物およびM元素と酸素との化合物)が吸着されて存在することを意味する。これにより、希土類蓄冷材粒子1を、より経時変化に強く長期信頼性が高いものにすることができる。なお、「希土類元素と酸素との化合物を示すピークおよびM元素と酸素との化合物を示すピークが検出される」とは、希土類元素−M元素−酸素の化合物を示すピークが検出される場合も含む。
【0037】
希土類蓄冷材粒子1では、XPS分析により表面領域2で検出されるM元素と酸素との化合物におけるM元素の量(原子数)Bに対する希土類元素と酸素との化合物における希土類元素の量(原子数)Aの比(A/B)がaを超えることが好ましい。
【0038】
(A/B)がaを超えるということは、希土類蓄冷材粒子1の金属間化合物RMaがそのまま酸化しているのではなく、M元素よりも希土類元素Rの方が多く酸化されていることを示している。また、(A/B)が2aを超えることが好ましい。金属間化合物は、もともと酸化され易い化合物である。希土類元素をM元素よりもやや多めに酸化した状態((A/B)がaを超える状態)にすることにより、希土類蓄冷材粒子1の表面領域2において、酸化の進行を抑制することができる。特に、(A/B)が2aを超えることにより、さらに酸化の進行を抑制することができる。
【0039】
なお、前述のAの値、Bの値の測定では、XPS分析による半定量を用いることが好ましい。Aの値とBの値の比を求める上では、半定量分析法であっても問題ない。もちろん、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)等を用いて希土類元素と酸素との化合物、M元素と酸素との化合物の定性分析または定量分析を行って(A/B)を求めてもよい。
【0040】
ここでHoCuを蓄冷材粒子に用いる場合について説明する。
【0041】
HoCuを具備する蓄冷材粒子(HoCu蓄冷材粒子ともいう)では、XPS分析により、蓄冷材粒子1の表面領域2にホルミウム(Ho)と酸素(O)との化合物(Ho−O化合物)を示すピークおよび銅(Cu)と酸素(O)との化合物(Cu−O化合物)を示すピークが検出されることが好ましい。XPS分析の条件は、炭素成分を分析する場合の条件と同じとすることができる。
【0042】
炭素成分を示すピーク以外にも、ホルミウム(Ho)と酸素(O)との化合物を示すピークおよび銅(Cu)と酸素(O)との化合物を示すピークが検出されるということは、表面領域2に酸素が吸着し、それぞれホルミウムまたは銅と酸素とが化合物を形成し、該化合物がそのピークが検出できる程度の量で存在していることを意味する。このような状態とすることにより、蓄冷材粒子を充填したコールドヘッドの使用時の酸化を、より抑制することができ、コールドヘッドを経時変化に強くすることができる。また、ホルミウム(Ho)と酸素(O)との化合物は、Ho−Oの結合があれば、特に限定されるものではない。また、銅(Cu)と酸素(O)との化合物についても、Cu−Oの結合があれば特に限定されるものではない。また、ホルミウム(Ho)と銅(Cu)と酸素(O)との化合物(Ho−Cu−O化合物)がHoCu蓄冷材粒子に含まれていてもよい。
【0043】
銅(Cu)と酸素(O)との化合物における銅(Cu)の量(原子数)Bに対するホルミウム(Ho)と酸素(O)との化合物におけるホルミウム(Ho)の量(原子数)Aの比(A/B)は、0.5を超えることが好ましい。このとき、HoCu蓄冷材粒子には、ピークが検出できる程度の量でホルミウム(Ho)と酸素(O)との化合物および銅(Cu)と酸素(O)との化合物が存在している。
【0044】
ホルミウム(Ho)と銅(Cu)との金属間化合物のうち、HoCuは安定化合物である。蓄冷材本体は、原子数比でホルミウム(Ho)が1に対し銅(Cu)が2である。A/Bが0.5を超えるということは、安定化合物であるHoCuがそのまま酸化されているわけではなく、ホルミウムの方がやや優先的に酸素と結合して化合物が形成されていることを意味する。金属ホルミウムや金属銅は、それぞれ酸化され易い金属である。特に、金属銅よりも金属ホルミウムの方が酸化は早い。そのため、ホルミウム(Ho)と酸素(O)との化合物を予め形成しておくことにより、それ以上の酸化を抑制できるため経時変化に強くなる。
【0045】
銅(Cu)と酸素(O)との化合物における銅(Cu)の量(原子数)Bに対するホルミウム(Ho)と酸素(O)との化合物におけるホルミウム(Ho)の量(原子数)Aの比(A/B)は、1.0以上であることが好ましい。予め、ホルミウムの方を銅よりも多く酸化させておくことにより、経時変化に強くなり、希土類蓄冷材粒子をコールドヘッドに充填した後において、ヘリウムガス中に含まれる微量酸素による酸化を防ぐことができる。また、好ましくは(A/B)が1.0以上5.0以下である。(A/B)の値が5.0を超えて大きいと、ホルミウム(Ho)が多く酸化され過ぎて、HoCu蓄冷材粒子本来の蓄冷性能が低下しやすくなる。
【0046】
なお、前述のAの値、Bの値の測定では、XPS分析による半定量を用いることが好ましい。AとBの比を求める上では、半定量分析法であっても問題はない。もちろん、TEM等を用いてHo−O化合物、Cu−O化合物の定性分析および定量分析を行って(A/B)の値を求めてもよい。
【0047】
HoCu蓄冷材粒子において、波長600nmの光の反射率は、20%以上、さらには25%以上であることが好ましく、また、波長800nmの光の反射率は26%以上であることが好ましい。
【0048】
HoCu蓄冷材粒子の波長600nmの光の反射率が20%以上であるということは、HoCu蓄冷材粒子の表面領域が必要以上に酸化されていない微酸化状態であることを意味する。微酸化状態であると、HoCu蓄冷材粒子本来(表面領域が酸化されていないHoCu蓄冷材粒子)の蓄冷効果を維持することができる。その上で、経時変化に強くなるので40000時間以上、さらには50000時間以上の蓄冷機能を維持することができる。
【0049】
波長600nm以上の長波長側の光の反射率は、分厚い酸化膜を設けた場合の反射率と比較して非常に高くなる。従って、波長600nmの光の反射率で測定することが好ましい。また、反射率の上限は特に限定されないが、波長600nmの光では33%以下、波長800nmの光では38%以下が好ましい。
【0050】
なお、反射率の測定では、例えば直径28mm×高さ4mmの測定容器に蓄冷材を充填し、波長600nm以上の光を照射し、その拡散反射率を測定する。
【0051】
以上がHoCu蓄冷材粒子を用いる場合の説明である。
【0052】
さらに、本実施形態の希土類蓄冷材粒子を複数具備する希土類蓄冷材粒子群をコールドヘッドに用いてもよい。図2および図3に、複数の蓄冷材粒子群を具備するコールドヘッドの例を示す。
【0053】
図2に示すコールドヘッドは、第1の蓄冷材粒子群1−1、第2の蓄冷材粒子群1−2、蓄冷容器3、金属メッシュ材4を具備する。また、図3に示すコールドヘッドは、第1の蓄冷材粒子群1−1、第2の蓄冷材粒子群1−2、第3の蓄冷材粒子群1−3、蓄冷容器3、金属メッシュ材4を具備する。
【0054】
コールドヘッドには、ギフォード・マクマホン型(GM型)コールドヘッド、スターリング型コールドヘッド、パルス型コールドヘッドなど様々なタイプがある。いずれの場合も、10K以下、さらには4K以下の極低温を達成することができる。
【0055】
極低温を得るには、第1のステージ、第2のステージと呼ばれる蓄冷容器の中に蓄冷材を充填することが必要である。例えば、特許文献2の図3にはGM型コールドヘッドの一例が示されている。特許文献2の図3では、第1のステージ(第1の蓄冷器)に銅メッシュ材が充填され、第2のステージ(第2の蓄冷器)にHoCu蓄冷材粒子などの希土類蓄冷材粒子が充填されている。
【0056】
コールドヘッドでは、比熱ピーク温度が高い蓄冷材粒子から順次充填することにより極低温を実現している。近年は、図2に示すように、第2のステージ内に金属メッシュ材4を介して複数の蓄冷材充填層を形成し、第1の蓄冷材粒子群1−1が充填された蓄冷材充填層、第2の蓄冷材粒子群1−2が充填された蓄冷材充填層を設ける2層タイプや、図3に示すように、第1の蓄冷材粒子群1−1が充填された蓄冷材充填層、第2の蓄冷材粒子群1−2が充填された蓄冷材充填層、第3の蓄冷材粒子群1−3が充填された蓄冷材充填層を設ける3層タイプが主流である。もちろん、1層タイプや4層以上のタイプなどであってもよい。
【0057】
第2のステージが複数の蓄冷材充填層を有する場合、複数の蓄冷材充填層の少なくとも1つは、本実施形態の希土類蓄冷材粒子群を備える。例えば、2層タイプの場合、第1の蓄冷材粒子群に鉛蓄冷材粒子群、第2の蓄冷材粒子群に本実施形態の希土類蓄冷材粒子群といった、異なる種類の蓄冷材粒子群がそれぞれ充填される組み合わせや、第1の蓄冷材粒子群に本実施形態の希土類蓄冷材粒子群、第2の蓄冷材粒子群にガドリニウム酸硫化物蓄冷材粒子群を用いる組合せなどが挙げられる。また、3層タイプの場合、第1の蓄冷材粒子群に鉛蓄冷材粒子群、第2の蓄冷材粒子群に本実施形態の希土類蓄冷材粒子群、第3の蓄冷材粒子群にガドリニウム酸硫化物蓄冷材粒子群を用いる組合せなどが挙げられる。
【0058】
2層タイプの場合、比熱のピーク温度が高い方を第1の蓄冷材粒子群、比熱のピーク温度が低い方を第2の蓄冷材粒子群とし、比熱のピーク温度が順次低くなるように組み合わせるとする。
【0059】
なお、鉛蓄冷材粒子の代わりにHoCu、ErNi、ErNi、ErCoなどの希土類蓄冷材粒子を用いてもよい。
【0060】
金属メッシュ材4で区分けする場合、各蓄冷材充填層に蓄冷材粒子群を充填し、金属メッシュ材4を押圧して、できるだけ金属メッシュ材4と蓄冷材粒子群との隙間が無いように充填することが好ましい。金属メッシュ材4と蓄冷材粒子群との隙間があると、コールドヘッドの稼働時の振動やヘリウムガスの圧力などによって蓄冷材が蓄冷材充填層内で移動し、破壊されてしまうおそれがある。
【0061】
少なくとも1つの蓄冷材充填層に本実施形態の希土類蓄冷材粒子群を用いる場合、充填される希土類蓄冷材粒子の90%以上(個数割合)が本実施形態の希土類蓄冷材粒子であることが好ましい。本実施形態の希土類蓄冷材粒子の割合が充填される希土類蓄冷材粒子の90%未満であるということは、本実施形態の希土類蓄冷材粒子以外の成分が10%よりも多く含まれていることになる。
【0062】
本実施形態以外の希土類蓄冷材粒子は、炭素成分が表面領域に存在しないことから、ヘリウムガス中の微量酸素により希土類蓄冷材粒子が酸化されてしまう。よって、酸化が進行することにより、冷凍能力が低下してしまう。
【0063】
これに対し、本実施形態の希土類蓄冷材粒子は、表面領域に炭素成分を存在させていることから、微量酸素による酸化を抑制できる。よって、長期に渡り初期の冷凍能力を維持できる。微量酸素による酸化を防ぐという観点からみると、希土類蓄冷材粒子群の95%以上、さらには100%が本実施形態の希土類蓄冷材粒子からなることが好ましい。
【0064】
希土類蓄冷材粒子群を構成する希土類蓄冷材粒子の投影像の周囲長をLとし、投影像の実面積をAとしたとき、L/4πAで表される形状因子Rが1.5を超える希土類蓄冷材粒子の比率は、5%以下であることが好ましい。また、形状因子Rが1.5を超える磁性蓄冷材粒子の比率は、5%以下、さらには2%以下、さらには0%であることが好ましい。見掛け上、球体であったとしても表面領域に微小な凹凸が多数存在すると形状因子Rは1.5を超える場合がある。形状因子Rが1.5以下であるということは、表面が滑らかであることを意味している。
【0065】
金属メッシュ材4と希土類蓄冷材粒子群の間に不要な隙間が生じないように希土類蓄冷材粒子を充填するには、蓄冷容器3に小さな振動を与え希土類蓄冷材粒子同士の隙間ができるだけ小さくなるように充填し、その後、応力を付与しながら金属メッシュ材4を押しつけて固定することが好ましい。このように、希土類蓄冷材粒子群を効率的に充填するためには、振動や応力を付与する必要がある。このため、希土類蓄冷材粒子群にも機械的強度が求められる。希土類蓄冷材粒子の機械的強度を向上させる手段の一つとして、形状因子Rを1.5以下にすることが挙げられる。表面の微細な凹凸をなくすことにより、機械的強度を向上させることができる。
【0066】
希土類蓄冷材粒子群のそれぞれの形状因子Rは、1.2以下であることが好ましい。
【0067】
以上のような希土類蓄冷材粒子およびそれを用いた希土類蓄冷材粒子群は、冷凍能力に優れ、その上で40000時間以上の長期間に渡り冷凍能力の低下を抑制できる。そのため、本実施形態の希土類蓄冷材粒子群を具備するコールドヘッドは長期信頼性が高い。
【0068】
本実施形態のコールドヘッドを、超電導磁石、検査装置、クライオポンプなどに用いることにより、長期信頼性を得ることができる。検査装置としては、MRI装置やNMR装置などが挙げられる。例えば、MRI装置は磁気を利用して人体を縦横に撮影できる医療機器である。現在、MRI装置では、X線CT(Computed Tomography:CT)装置と同等以上の鮮明な画像が得られるようになり、血管撮影や脳内の動脈瘤や脳腫瘍の有無などの撮影に用いられている。MRI装置での撮影は、定期健診に限らず、当然ながら緊急の診察もある。そのため、常にMRI装置を稼働させ、いつでも撮影できるようにする必要がある。常にMRI装置を稼働させるには、極低温を得るための超電導磁石、さらにはそれに搭載されたコールドヘッドを稼働状態とすることが必要である。本実施形態のコールドヘッドであれば、希土類蓄冷材粒子群の酸化による劣化が抑制されているので従来の20000時間〜30000時間程度の保証期間ではなく、40000時間以上、さらには50000時間〜60000時間の長期に渡り冷凍能力を維持することができる。よって、40000時間以上の連続稼働を可能にすることができる。
【0069】
次に、希土類蓄冷材粒子の製造方法について説明する。本実施形態の希土類蓄冷材粒子の製造方法としては、特に限定されないが効率よく得るための方法として次の方法が挙げられる。ここでは、希土類蓄冷材粒子の製造方法の一例として、HoCu蓄冷材粒子の製造方法について説明する。
【0070】
まず、所望の組成比を有するHoCu金属溶湯を調製する。このとき、HoCu金属溶湯を5時間以上溶解して不純物ガス成分を除去することが好ましい。
【0071】
次に、回転円板法(Rotary Disc Process:RDP)などの急冷凝固法を用いて、HoCu金属溶湯を粒子化する。粒子化により得られたHoCu蓄冷材粒子を形状分級し、形状因子Rが1.5を超えるものが5%以下になるようにする。
【0072】
次に、炭素成分を吸着させる工程を行う。炭素成分を吸着させる工程では、二酸化炭素または炭化水素成分を含んだ雰囲気にHoCu蓄冷材粒子をさらす。二酸化炭素または炭化水素成分を含む雰囲気としては、大気や、二酸化炭素または炭化水素を含有する不活性雰囲気(アルゴンガスなど)が挙げられる。また、大気は酸素を含んでいるため、炭素成分を吸着させる工程と微酸化させる工程を同時に行うことができる。炭化水素成分としてはメタン、エタンなどが挙げられる。
【0073】
なお、炭素成分を吸着させる工程および微酸化させる工程を短縮するには、110℃以下の加熱を行うことが有効である。加熱時間としては、70℃以上110℃以下であれば2時間以下、30℃以上70℃未満であれば5時間以下、30℃未満であれば10時間以下が目安となる。
【0074】
加熱時間は、雰囲気ガス中に含まれる炭素成分量や一度に処理する蓄冷材粒子量に応じて設定される。また、個々の蓄冷材粒子の炭素吸着状態や微酸化状態を安定化させるために、蓄冷材粒子が置かれる雰囲気ガスを攪拌しながら加熱することが好ましい。
【0075】
以上が希土類蓄冷材粒子の製造方法である。
【0076】
ここでは、HoCuを例に示したが、他の希土類蓄冷材粒子の場合も同様の炭素成分を吸着させる工程および微酸化させる工程等により希土類蓄冷材粒子を製造することができる。
【実施例】
【0077】
(実施例1乃至実施例3、比較例1、参考例1)
平均粒径が約250μmでかつ粒度分布が150μm乃至300μmのHoCu蓄冷材粒子群を用意した。用意したHoCu蓄冷材粒子群において、形状因子Rが1.5を超えるものは0%であり、形状因子Rがすべて1.2以下であった。次に、実施例1乃至実施例3、参考例1について、炭素成分吸着工程として表1に示す工程を行った。炭素成分吸着工程は微酸化工程と同時に行い、雰囲気ガスを攪拌しながら行った。なお、比較例1では、炭素成分吸着工程を行わなかった。
【0078】
【表1】
【0079】
得られたHoCu蓄冷材粒子群に関して、XPS分析を行い、表面領域における炭素成分を示すピークの有無、Ho−O化合物を示すピークの有無、Cu−O化合物を示すピークの有無を調べた。XPS分析では、分析機種をQuantera SXM(PHI社製)とし、X線源を単結晶AlKαとし、出力を25Wとし、分析領域をφ100μmとした。また、Pass EnergyをWide Scan−280.0eV(1.0eV/Step)、Narrow Scan−69.0eV(0.125eV/Step)とし、ジオメトリ(試料表面と検出器の角度)θを45°とした。
【0080】
さらに、XPS分析の半定量分析を用い、Cu−O化合物の銅(Cu)の量(原子数)Bに対するHo−O化合物のホルミウム(Ho)の量(原子数)Aの比(A/B)を求めた。
【0081】
さらに、高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法によりHoCu蓄冷材粒子全体の炭素含有量を求めた。その結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
XPS分析の結果、実施例1乃至実施例3、参考例1のHoCu蓄冷材粒子において炭素成分を示すピークが検出された。検出された炭素成分を示すピークは、C−C結合、C−H結合、C−O結合、C=O結合、およびO−C=O結合のいずれか1種以上を示していた。
【0084】
さらに、HoCu蓄冷材粒子の光の反射率を測定した。ここでは、実施例1乃至実施例3、比較例1、参考例1のそれぞれのHoCu蓄冷材粒子群を用意し、測定用容器(直径28mm×高さ4mm)に充填した。作製した測定用サンプルに波長600nmまたは波長800nmの光を照射し、その拡散反射率を測定した。その結果を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
次に、実施例1乃至実施例3、比較例1、および参考例1のそれぞれのHoCu蓄冷材粒子を用いてコールドヘッドを作製した。コールドヘッドは、第1のステージに銅メッシュ材を充填し、第2のステージの第1の蓄冷材粒子群に鉛蓄冷材粒子群、第2の蓄冷材粒子群に実施例1乃至実施例3、比較例1、参考例1のHoCu蓄冷材粒子群を充填した。また、銅メッシュ材を用いて第2のステージを区分けした。なお、第2のステージにHoCu蓄冷材粒子を充填する際は、振動を加えながら充填し、HoCu蓄冷材粒子同士の隙間が不要に広がらないようにした。また、第2のステージの銅メッシュ材は、応力3MPaで押し込んで固定した。この作業により、コールドヘッドを作製した。このコールドヘッドを40000時間〜60000時間連続稼働させ、冷凍能力の低下の有無を調べた。その結果を表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
実施例1乃至実施例3、参考例1に係るコールドヘッドでは、冷凍能力の低下が抑制されていた。また、60000時間後のコールドヘッドから、それぞれHoCu蓄冷材粒子群を取り出し、表面の色を確認したところ、比較例1及び参考例1では茶褐色に変色していた。これに対し、実施例1乃至実施例3では、やや濃いうぐいす色であり大きな変色は確認されなかった。
【0089】
実施例1乃至実施例3では、60000時間後であっても粉砕されたHoCu蓄冷材粒子の割合は0.5質量%以下であり、強度も十分維持されていた。また、参考例1では、冷凍能力の低下は見られないものの初期値が低かった。
【0090】
このように、実施例1乃至実施例3に係るコールドヘッドでは、長期信頼性が大幅に向上していることが分かった。このため、それを搭載した超電導磁石、検査装置、クライオポンプなどの各種装置の長期信頼性を大幅に向上させることができることがわかる。
【0091】
(実施例4乃至実施例7)
平均粒径が約250μmでかつ粒度分布が150μm乃至300μmの希土類蓄冷材粒子群を用意した。用意した希土類蓄冷材粒子群において、形状因子Rが1.5を超えるものは0%であり、形状因子Rがすべて1.2以下であった。次に、炭素成分吸着工程として表5に示す工程を行った。なお、炭素成分吸着工程は微酸化工程を含むものとし、雰囲気ガスを攪拌しながら行った。また、各実施例における希土類蓄冷材粒子の材料についても表5に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
得られた希土類蓄冷材粒子群に関して、XPS分析を行い、表面領域における炭素成分を示すピークの有無、R−O化合物を示すピークの有無、M−O化合物を示すピークの有無を調べた。XPS分析では、分析機種をQuantera SXM(PHI社製)とし、X線源を単結晶AlKαとし、出力を25Wとし、分析領域をφ100μmとした。また、XPS分析では、Pass Energyを、Wide Scan−280.0eV(1.0eV/Step)、Narrow Scan−69.0eV(0.125eV/Step)とし、ジオメトリ(試料表面と検出器の角度)θを45°とした。
【0094】
さらに、XPS分析の半定量分析を用い、M−O化合物におけるM元素の量(原子数)Bに対するR−O化合物における希土類元素の量(原子数)Aの比(A/B)を求めた。
【0095】
さらに、高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法により炭素含有量を求めた。その結果を表6に示す。
【0096】
【表6】
【0097】
XPS分析の結果、実施例4乃至実施例7において炭素成分を示すピークが検出された。炭素成分を示すピークは、C−C結合、C−H結合、C−O結合、C=O結合、およびO−C=O結合のいずれか1種以上を示していた。
【0098】
次に、実施例4乃至実施例7に係る希土類蓄冷材粒子群を用いてコールドヘッドを作製した。
【0099】
実施例4乃至実施例6に係るコールドヘッドは、第1のステージに銅メッシュ材を充填し、第2のステージの第1の蓄冷材粒子群に鉛蓄冷材粒子群、第2の蓄冷材粒子群に実施例4乃至実施例6に係る希土類蓄冷材粒子群を充填した。
【0100】
実施例7に係るコールドヘッドは、第1のステージに銅メッシュ材を充填し、第2のステージの第1の蓄冷材粒子群に実施例7に係る希土類蓄冷材粒子群、第2の蓄冷材粒子群に実施例1に係る希土類蓄冷材粒子群を充填した。
【0101】
なお、銅メッシュ材を用いて第2のステージを区分けした。また、第2のステージに蓄冷材粒子群を充填する際には、振動を加えながら充填し、希土類蓄冷材粒子同士の隙間が不要に広がらないようにした。また、第2のステージの銅メッシュ材は、応力3MPaで押し込んで固定した。この作業により、コールドヘッドを作製した。このコールドヘッドを40000時間〜60000時間連続稼働させ、冷凍能力の低下の有無を調べた。その結果を表7に示す。
【0102】
【表7】
【0103】
実施例4乃至実施例7に係るコールドヘッドでは、冷凍能力の低下が抑制されていた。また、実施例4乃至実施例7に係るコールドヘッドでは、60000時間後であっても粉砕された希土類蓄冷材粒子の割合は0.8質量%以下であったため強度も十分維持されていた。
【0104】
このように、実施例4乃至実施例7に係るコールドヘッドでは、長期信頼性が大幅に向上されていることが分かった。このことから、実施例4乃至実施例7に係るコールドヘッドを具備する超電導磁石、検査装置、クライオポンプなどの各種装置の長期信頼性を大幅に向上させることができることがわかる。
【符号の説明】
【0105】
1…希土類蓄冷材粒子、2…表面領域、1−1…第1の蓄冷材粒子群、1−2…第2の蓄冷材粒子群、1−3…第3の蓄冷材粒子群、3…蓄冷容器、4…金属メッシュ材。
【図1】
【図2】
【図3】
【国際調査報告】