(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014057874
(43)【国際公開日】20140417
【発行日】20160905
(54)【発明の名称】フルオランテン誘導体、それを含有する発光素子材料および発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 255/58 20060101AFI20160808BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20160808BHJP
   C07D 213/74 20060101ALI20160808BHJP
   C07D 215/38 20060101ALI20160808BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20160808BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160808BHJP
【FI】
   !C07C255/58CSP
   !C09K11/06 645
   !C07D213/74
   !C07D215/38
   !C07D401/04
   !H05B33/22 B
   !H05B33/22 D
   !H05B33/14 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】89
【出願番号】2013547035
(21)【国際出願番号】JP2013077047
(22)【国際出願日】20131004
(31)【優先権主張番号】2012226612
(32)【優先日】20121012
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号
(72)【発明者】
【氏名】市橋 泰宜
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
(72)【発明者】
【氏名】富永 剛
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
(72)【発明者】
【氏名】田中 大作
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
(72)【発明者】
【氏名】池田 武史
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
(72)【発明者】
【氏名】新井 猛
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
(72)【発明者】
【氏名】池田 篤
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
【テーマコード(参考)】
3K107
4C031
4C055
4C063
4H006
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB03
3K107BB06
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4C031JA01
4C055AA01
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4C055CB04
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4C063AA01
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4C063DD08
4C063EE10
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB92
(57)【要約】
本発明の目的は発光効率、駆動電圧、耐久寿命の全てを改善した有機薄膜発光素子を提供することであり、本発明のフルオランテン誘導体はフルオランテン骨格を含む特定の構造を有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体。
【化1】
(式中、Arはフルオランテン骨格を含む基を表す。LおよびLは単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基である。AおよびAは、それぞれ、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のベンゼン環、炭素数6〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環、炭素数1〜40の置換もしくは無置換の単環芳香族複素環、または炭素数1〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環を表す。但し、AおよびAを構成する少なくとも1つの原子は電子受容性窒素である。また、Lが置換もしくは無置換のアリーレン基で、且つ、Aが炭素数6〜40の置換もしくは無置換のベンゼン環、または炭素数6〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環の場合、LとAで環を形成していてもよい。L、L、A、Aが置換されている場合の置換基は、それぞれ、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基および−P(=O)Rからなる群より選ばれる。RおよびRはアリール基またはヘテロアリール基である。またRおよびRが縮合して環を形成していてもよい。但し、L、Lが共に単結合の場合、AおよびAが共に電子受容性窒素を2つ以上有する基になることはない。また、LもしくはLのどちらか一方が単結合の場合、もう一方のLもしくはLは電子受容性窒素を2つ以上有するヘテロアリーレン基になることはない。nは1もしくは2である。nが2のとき、2つのL−N(A)(A)は同じでも異なっていてもよい。但し、ヘテロアリーレン基としてカルバゾリレン基は含まない。また、nが2で、且つ、Lが単結合の場合、Lが3環以上のアセンになることはない。)
【請求項2】
Arが下記一般式(2)で表される請求項1記載のフルオランテン誘導体。
【化2】
(式中、R〜R14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基およびカルバモイル基からなる群より選ばれる。R〜R14は隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。但し、R〜R14のうちいずれか一つの位置でLと連結する。)
【請求項3】
前記一般式(1)が下記一般式(3)で表される請求項1または2記載のフルオランテン誘導体。
【化3】
(式中、R〜R14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基およびカルバモイル基からなる群より選ばれる。R〜R14は隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。L、L、A、Aおよびnは前記一般式(1)と同様である。)
【請求項4】
Arが下記一般式(4)で表される請求項1に記載のフルオランテン誘導体。
【化4】
(式中、R15〜R24はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基およびカルバモイル基からなる群より選ばれる。R15〜R24は隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。但し、R15〜R24のうちいずれか一つの位置でLと連結する。)
【請求項5】
前記一般式(1)が下記一般式(5)で表される請求項1または4に記載のフルオランテン誘導体。
【化5】
(式中、R16〜R24はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基およびカルバモイル基からなる群より選ばれる。R16〜R24は隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。L、L、A、Aおよびnは前記一般式(1)と同様である。)
【請求項6】
−N(A)(A)が下記一般式(6)〜(9)で表されるいずれかの構造である請求項1〜5のいずれかに記載のフルオランテン誘導体。
【化6】
(式中、Aは炭素数1〜40の置換もしくは無置換の単環芳香族複素環、または炭素数1〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環を表す。但し、Aを構成する少なくとも1つの原子は電子受容性窒素である。R25〜R63はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基およびカルバモイル基からなる群より選ばれる。R25〜R63は隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。但し、R25〜R63のうちいずれか一つの位置でLと連結する。)
【請求項7】
nが1である請求項1〜6のいずれかに記載のフルオランテン誘導体。
【請求項8】
およびR12が置換もしくは無置換のアリール基である請求項2、3、6のいずれかに記載のフルオランテン誘導体。
【請求項9】
およびR12がフェニル基である請求項2、3、6のいずれかに記載のフルオランテン誘導体。
【請求項10】
が下記一般式(10)〜(12)のいずれかで表される構造である請求項1〜9のいずれかに記載のフルオランテン誘導体。
【化7】
(式中、B〜B19はCH、置換された炭素原子、または窒素原子を表す。但し、B〜B19に窒素原子が含まれない場合、Aは、電子受容性窒素を含む置換もしくは無置換の単環芳香族複素環または電子受容性窒素を含む置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環である。また、L−N(A)(A)が前記一般式(6)〜(9)で表されるいずれかの構造の場合、B〜B19のいずれか一つは窒素原子である。B〜B19が置換されている場合の置換基は前記一般式(1)と同様である。)
【請求項11】
が下記一般式(13)〜(15)のいずれかで表される構造である請求項1〜10のいずれかに記載のフルオランテン誘導体。
【化8】
(式中、B20〜B38はCH、置換された炭素原子、または窒素原子を表す。但し、前記B〜B19に窒素原子が含まれない場合、B20〜B38の少なくとも1つは窒素原子である。また、L−N(A)(A)が前記一般式(6)〜(9)で表されるいずれかの構造の場合、B20〜B38には窒素原子は含まれない。B20〜B38が置換されている場合の置換基は前記一般式(1)と同様である。)
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のフルオランテン誘導体を含有する発光素子材料。
【請求項13】
陽極と陰極の間に有機層が存在し、電気エネルギーにより発光する発光素子であって、前記有機層に請求項1〜11のいずれか記載のフルオランテン誘導体を含有することを特徴とする発光素子。
【請求項14】
前記有機層が電子輸送層を有し、請求項1〜11のいずれか記載のフルオランテン誘導体が前記電子輸送層に含有される請求項13記載の発光素子。
【請求項15】
前記有機層が正孔輸送層を有し、前記正孔輸送層がカルバゾール骨格を有する材料を含有する請求項13または14に記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを光に変換できる発光素子およびそれに用いられる材料に関する。本発明は、表示素子、フラットパネルディスプレイ、バックライト、照明、インテリア、標識、看板、電子写真機および光信号発生器などの分野に利用可能である。
【背景技術】
【0002】
陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合する際に発光するという有機薄膜発光素子の研究が、近年活発に行われている。この発光素子は、薄型で、かつ、低駆動電圧下での高輝度発光と、蛍光材料を選ぶことにより多色発光が可能であることが特徴であり、注目を集めている。
【0003】
この研究は、コダック社のC.W.Tangらによって有機薄膜素子が高輝度に発光することが示されて以来、多数の実用化検討がなされており、有機薄膜発光素子は、携帯電話のメインディスプレイなどに採用されるなど着実に実用化が進んでいる。しかし、まだ技術的な課題も多く、中でも素子の高効率化と長寿命化の両立は大きな課題のひとつである。
【0004】
有機薄膜発光素子には、発光効率の向上、駆動電圧の低下、耐久性の向上を満たす必要がある。中でも、発光効率と耐久寿命の両立が大きな課題となっている。例えば、発光効率、並びに耐久寿命を向上させるために、フルオランテン骨格や含窒素複素環を有する材料が開発されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/059713号
【特許文献2】国際公開第2007/100010号
【特許文献3】国際公開第2012/108388号(特に化38)
【特許文献4】特開2009−215559号公報
【特許文献5】特開2009−215281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では素子の駆動電圧を十分に下げることは困難であり、また駆動電圧を下げることができたとしても、素子の発光効率、耐久寿命が不十分であった。このように、高い発光効率、低駆動電圧、さらに耐久寿命も両立させる技術は未だ見出されていない。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、発光効率、駆動電圧、耐久寿命の全てを改善した有機薄膜発光素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体である。
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Arはフルオランテン骨格を含む基を表す。LおよびLは単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基である。AおよびAは、それぞれ、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のベンゼン環、炭素数6〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環、炭素数1〜40の置換もしくは無置換の単環芳香族複素環、または炭素数1〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環を表す。但し、AおよびAを構成する少なくとも1つの原子は電子受容性窒素である。また、Lが置換もしくは無置換のアリーレン基で、且つ、Aが炭素数6〜40の置換もしくは無置換のベンゼン環、または炭素数6〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環の場合、LとAで環を形成していてもよい。L、L、A、Aが置換されている場合の置換基は、それぞれ、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基および−P(=O)Rからなる群より選ばれる。RおよびRはアリール基またはヘテロアリール基である。またRおよびRが縮合して環を形成していてもよい。但し、L、Lが共に単結合の場合、AおよびAが共に電子受容性窒素を2つ以上有するヘテロアリール基になることはない。また、LもしくはLのどちらか一方が単結合の場合、もう一方のLもしくはLは電子受容性窒素を2つ以上有するヘテロアリーレン基になることはない。nは1もしくは2である。nが2のとき、2つのL−N(A)(A)は同じでも異なっていてもよい。但し、ヘテロアリーレン基としてカルバゾリレン基は含まない。また、nが2で、且つ、Lが単結合の場合、Lが3環以上のアセンになることはない。)
【発明の効果】
【0011】
本発明により、発光効率、駆動電圧、耐久寿命を両立した有機薄膜発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体について詳細に説明する。
【0013】
【化2】
【0014】
式中、Arはフルオランテン骨格を含む基を表す。LおよびLは単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基である。但し、アリーレン基として、アントラセニレン基は含まない。また、ヘテロアリーレン基としてカルバゾリレン基は含まない。AおよびAは、それぞれ、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のベンゼン環、炭素数6〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環、炭素数1〜40の置換もしくは無置換の単環芳香族複素環、または炭素数1〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環を表す。但し、AおよびAを構成する少なくとも1つの原子は電子受容性窒素である。また、Lが置換もしくは無置換のアリーレン基で、且つ、Aが炭素数6〜40の置換もしくは無置換のベンゼン環、または炭素数6〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環の場合、LとAで環を形成していてもよい。L、L、A、Aが置換されている場合の置換基は、それぞれ、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基および−P(=O)Rからなる群より選ばれる。RおよびRはアリール基またはヘテロアリール基である。またRおよびRが縮合して環を形成していてもよい。但し、L、Lが共に単結合の場合、AおよびAが共に電子受容性窒素を2つ以上有するヘテロアリール基になることはない。また、LもしくはLのどちらか一方が単結合の場合、もう一方のLもしくはLは電子受容性窒素を2つ以上有するヘテロアリーレン基になることはない。nは1もしくは2である。nが2のとき、2つのL−N(A)(A)は同じでも異なっていてもよい。
【0015】
上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。また、例えば炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリーレン基とは、アリーレン基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて6〜40であり、炭素数を規定している他の置換基もこれと同様である。
【0016】
また、「置換もしくは無置換の」という場合における置換基としては、上述のようなアルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとする具体的な置換基が好ましい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0017】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子が置換したことを意味する。
【0018】
以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
【0019】
アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0020】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
【0021】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0022】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0023】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
【0024】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0025】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0026】
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0027】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0028】
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールエーテル基における芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0029】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基、フルオランテニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0030】
ヘテロアリール基とは、フラニル基、チオフェニル基、ピリジル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ナフチリジル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基などの炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2以上30以下の範囲である。
【0031】
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる原子を示す。
【0032】
カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基およびホスフィンオキサイド基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
【0033】
アリーレン基とは、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などの芳香族炭化水素基から導かれる2価もしくは3価の基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。
【0034】
一般式(1)のLおよびLがアリーレン基の場合、核炭素数は6以上12以下の範囲が好ましい。アリーレン基としては、具体的には、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、4,4’−ビフェニリレン基、4,3’−ビフェニリレン基、3,3’−ビフェニリレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基などが挙げられる。より好ましくは1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基である。
【0035】
ヘテロアリーレン基とは、ピリジル基、キノリニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ナフチリジル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基などの炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する芳香族基から導かれる2価もしくは3価の基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリーレン基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、2〜30の範囲である。
【0036】
縮合芳香族炭化水素環とは、例えば、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオランテン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。更に、前記縮合芳香族炭化水素環は置換基を有していてもよい。
【0037】
単環芳香族複素環とは、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環等が挙げられる。更に、前記単環芳香族複素環は置換基を有していてもよい。
【0038】
縮合芳香族複素環とは、例えば、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つが更に窒素原子で置換されている環を示す)等が挙げられる。更に、前記縮合芳香族複素環は置換基を有していてもよい。
【0039】
本発明のフルオランテン誘導体は、L−N(A)(A)で表される基を1個もしくは2個有していることで、結晶性が低下したりガラス転移温度が高くなったりするため膜の安定性が向上する。
【0040】
本発明のフルオランテン誘導体は、フルオランテン骨格を有する。フルオランテン骨格は、5π電子系の5員環構造を有する。5π電子系の5員環構造は、電子が1つ入る(還元される)と、6π電子系となり芳香族安定化が起こる(ヒュッケル則)。このため、5π電子系の5員環構造は高い電子親和性を示し、本発明のフルオランテン骨格も高い電子親和性を備える。一般的に有名な縮環芳香族骨格であるアントラセンやピレンは5π電子系の5員環構造をもたないため、還元による芳香族安定化に起因する電子親和性の増大はなく、これらの現象は5π電子系の5員環構造を有する骨格特有の性質である。
【0041】
このため本発明のフルオランテン誘導体を発光素子に用いた場合に、例えば電子輸送層に用いた場合には、電極からの良好な電子注入性を示し、発光素子の駆動電圧を低くすることができる。この結果、発光素子の発光効率を向上させることができる。また、発光素子の長寿命化にも寄与する。
【0042】
また、フルオランテン骨格は、高い平面性を有し、分子同士がうまく重なるため、高い電荷輸送性を有する。このため本発明のフルオランテン誘導体を発光素子を構成するいずれかの層に用いた場合に、陰極から発生した電子や陽極から発生した正孔を効率よく輸送できるので、素子の駆動電圧を低下させることができる。この結果、発光素子の発光効率を向上させることができる。また、発光素子の長寿命化にも寄与する。
【0043】
また、フルオランテン骨格は電荷に対する安定性が高く、電子による還元や、正孔による酸化をスムーズに繰り返し行うことができる。本発明のフルオランテン誘導体を発光素子に用いた場合に、寿命の向上が可能となる。
【0044】
フルオランテン骨格を含む基とは、フルオランテン骨格を分子構造内に有する基であり、置換基を有していても有していなくてもよい。隣接する置換基で環を形成してもよく、隣接する置換基で形成された環の大きさについては特に限定されないが、分子構造の安定性の観点から5員環もしくは6員環が好ましい。また、形成される環は脂肪族環でも芳香族環でもよい。隣接する置換基で形成された環はさらに置換基を有していてもよく、もしくはさらに縮環されていてもよい。形成される環には炭素以外のヘテロ原子が含まれていてもよい。特に、炭素および水素のみで環が構成されていると電気化学的安定性が増し、素子の耐久性向上に寄与するため好ましい。フルオランテン骨格を含む基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは、16以上40以下の範囲である。具体的には、例えば、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、ベンゾアセアントリレニル基、ベンゾアセフェナントレニル基、インデノフルオランテニル基、アセナフトフルオランテニル基などが挙げられる。
【0045】
本発明のフルオランテン誘導体のL−N(A)(A)において、AおよびAを構成する少なくとも1つの原子は電子受容性窒素である。尚、AおよびAで表される置換基は、電子受容性窒素を含む基がNに直接結合していてもよいし、電子受容性窒素を含む基が連結基を介して置換されていてもよい。具体的には、Aがベンゼン環で、Aがピリジル基で置換されたベンゼン環であってもよい。ここで、電子受容性窒素とは、隣接原子との間に多重結合を形成している窒素原子を表す。窒素原子が高い電気陰性度を有することから、該多重結合は電子受容的な性質を有する。それゆえ、電子受容性窒素を有するL−N(A)(A)は、高い電子親和性をもつ。このため本発明の一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体を発光層や電子輸送層に用いた場合には、電極からの良好な電子注入性を示し、発光素子の駆動電圧を低くすることができる。この結果、発光素子の発光効率を向上させることができる。また、発光素子の長寿命化にも寄与する。
【0046】
また、L−N(A)(A)は、電子供与性窒素を有している。ここで、電子供与性窒素とは、隣接原子との間の結合がすべて単結合である窒素原子を表す。L−N(A)(A)においてはAおよびAが結合している窒素原子がこれに該当する。電子供与性窒素は正孔に対する安定性が高く、正孔による酸化をスムーズに繰り返し行うことができる。本発明の一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体を正孔輸送層に用いた場合に、寿命の向上が可能となる。
【0047】
また、一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体が、L−N(A)(A)の基を有することで電子伝導準位が浅くなる。このため本発明の一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体を電子輸送層に用いた場合には、電子輸送層と発光層のエネルギー障壁が小さくなるため、電子輸送層から発光層への高い電子注入が可能となり、発光素子の駆動電圧を低くすることができる。
【0048】
さらに、一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体が、L−N(A)(A)の基を有することで昇華性、蒸着安定性及び結晶性の低下や高いガラス転移温度による膜の安定性が向上する。これにより、本発明のフルオランテン誘導体を発光素子に用いた場合に、寿命の向上が可能となる。
【0049】
以上より、本発明のフルオランテン誘導体は、分子中にフルオランテン骨格とL−N(A)(A)とを有していることにより、高い電子注入輸送性、電気化学的安定性、良好な昇華性、良好な蒸着安定性、良好な膜質、高いガラス転移温度を併せ持つ。これらによって、本発明のフルオランテン誘導体を発光素子を構成するいずれかの層に用いた場合に、高発光効率、低駆動電圧および耐久寿命を両立した有機薄膜発光素子が可能となる。
【0050】
なお、Lが置換もしくは無置換のアリーレン基で、且つ、Aが炭素数6〜40の置換もしくは無置換のベンゼン環、または炭素数6〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環であって、LとAで環を形成している場合とは、L、Aおよびその間の窒素原子を利用して縮合多環構造が形成されていることを言う。例えば、Lがフェニレン基、Aがフェニル基の場合、当該縮合多環構造はカルバゾール骨格となる。また、Lがナフチレン基、Aがフェニル基の場合、当該縮合多環構造はベンゾカルバゾール骨格となる。
【0051】
また、L、Lが共に単結合の場合、AおよびAが共に電子受容性窒素を2つ以上有するヘテロアリール基になることはない。電子受容性窒素を2つ以上有するヘテロアリール基とは、具体的には、ピラジン、ピリミジン、トリアジンなど基である。L、Lが共に単結合の場合、−N(A)(A)の電子状態がフルオランテン骨格へ直接影響を及ぼす。ここで、AおよびAが共に電子受容性窒素を2つ以上有する置換基であると、電子受容性の効果が大きくなり過ぎるため、材料の電子伝導準位が深くなってしまう。これを例えば電子輸送層に用いた場合には、電子輸送層と発光層のエネルギー障壁が大きくなるため、発光素子の駆動電圧を低くすることができない。
【0052】
よって、L、Lが共に単結合の場合に限らず、AおよびAが共に電子受容性窒素を2つ以上有する置換基でない方が好ましい。
【0053】
また、LもしくはLのどちらか一方が単結合の場合、もう一方のLもしくはLは電子受容性窒素を2つ以上有するヘテロアリーレン基になることはない。電子受容性窒素を2つ以上有するヘテロアリーレン基とは、具体的には、ピラジニレン、ピリミジニレン、トリアジニレンなどの基である。LもしくはLのどちらか一方が単結合の場合、もう一方のLもしくはLの電子状態がフルオランテン骨格へ直接影響を及ぼす。ここで、もう一方のLもしくはLが電子受容性窒素を2つ以上有するヘテロアリーレン基であると、電子受容性の効果が大きくなり過ぎるため、電子伝導準位が深くなってしまう。これを例えば電子輸送層に用いた場合には、電子輸送層と発光層のエネルギー障壁が大きくなるため、発光素子の駆動電圧を低くすることができない。
【0054】
よって、L、Lのどちらか一方が単結合の場合に限らず、LおよびLが電子受容性窒素を2つ以上有する置換基でない方が好ましい。
【0055】
また、ヘテロアリーレン基としてカルバゾリレン基は含まない。ヘテロアリーレン基がカルバゾリレン基であると、分子内に電子供与性窒素を有する二つの基が直接結合することになり、電子伝導準位が相当浅くなってしまう。これを例えば電子輸送層に用いた場合には、電極と電子輸送層のエネルギー障壁が大きくなるため、発光素子の駆動電圧を低くすることができない。但し、nが2となるような場合は、電子供与性窒素を有する2つの基が連結基を介して結合するため、程よい電子伝導準位になり、低電圧化が可能となる。
【0056】
また、nが2で、且つ、Lが単結合の場合、Lが3環以上のアセンになることはない。アセンとは、複数のベンゼン環が直線状に縮合した構造を持つ基であり、3環以上のアセンとは、具体的には、アントラセン、テトラセン、ペンタセンなどの基である。nが2で、且つ、Lが単結合の場合、Lが3環以上のアセンであると、二つのアミン窒素が直接、3環以上のアセンに置換することになる。3環以上のアセンは吸収波長が長く、二つのアミン窒素が直接置換すると吸収波長はさらに長くなり可視光を強く吸収する。これを例えば発光素子に用いた場合、発光層にて発光した光を、化合物自体が強く吸収してしまうため発光効率を向上することができない。よって、nが2で、且つ、Lが単結合の場合に限らず、Lは3環以上のアセンではない方が好ましい。
【0057】
Arの一形態として、下記一般式(2)で表されることが好ましい。Arが一般式(2)で表される場合、適度に共役系が広がる。これにより、化合物が電気化学的に安定になり、さらに電荷輸送性が向上する。
【0058】
【化3】
【0059】
式中、R〜R14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基およびカルバモイル基からなる群より選ばれる。R〜R14は隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。但し、R〜R14のうちいずれか一つの位置でLと連結する。
【0060】
一般式(2)におけるR〜R14は上記の中でも水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびハロゲンからなる群より選ばれることが好ましい。R〜R14が水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲンであることで、ガラス転移温度が高くなり薄膜安定性が向上する。薄膜安定性が向上すると、発光素子において長時間駆動しても膜の変質が抑制されるため、耐久性が向上する。また、高温下でも分解しにくい置換基であるため、耐熱性が向上する。耐熱性が向上すると、素子作製時に材料の分解を抑制できるため、耐久性が向上する。さらに、アリール基やヘテロアリール基であると、共役が広がるため、電気化学的により安定になり、且つ、電荷輸送性が向上する。
【0061】
この形態のとき、一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体は下記一般式(3)で表されることが好ましい。一般式(3)で表されるフルオランテン誘導体は、ベンゾフルオランテン骨格の3位がL−N(A)(A)を含有する置換基で置換されている。ベンゾフルオランテン誘導体において、3位が芳香族性の置換基で置換されるとベンゾフルオランテン骨格の電子状態は大きく変化し、効率的に共役が拡張するため、電荷輸送性が向上する。この結果、発光素子をより低電圧で駆動させることができ、発光効率をより向上させることができる。さらに、共役が広がることで、電荷に対する安定性もより向上する。この結果、本発明の一般式(3)で表されるフルオランテン誘導体を発光素子に用いた場合に、寿命の更なる向上が可能となる。
【0062】
【化4】
【0063】
一般式(3)におけるR〜R14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基およびカルバモイル基からなる群より選ばれる。R〜R14は隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。L、L、A、Aおよびnは前記一般式(1)と同様である。
【0064】
一般式(3)におけるR〜R14は上記の中でも水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびハロゲンからなる群より選ばれることが好ましい。R〜R14が水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲンであることで、ガラス転移温度が高くなり薄膜安定性が向上する。また、高温下でも分解しにくい置換基であるため、耐熱性が向上する。さらに、アリール基やヘテロアリール基であると、共役が広がるため、電気化学的により安定になり、且つ、電荷輸送性が向上する。
【0065】
Arの別の一形態として、下記一般式(4)で表されることが好ましい。Arが一般式(4)で表される場合、適度に共役系が広がる。これにより、化合物が電気化学的に安定になり、さらに電荷輸送性が向上する。
【0066】
【化5】
【0067】
式中、R15〜R24はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基およびカルバモイル基からなる群より選ばれる。R15〜R24は隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。但し、R15〜R24のうちいずれか一つの位置でLと連結する。
【0068】
一般式(4)におけるR15〜R24は上記の中でも水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびハロゲンからなる群より選ばれることが好ましい。R15〜R24が水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲンであることで、ガラス転移温度が高くなり薄膜安定性が向上する。薄膜安定性が向上すると、発光素子において長時間駆動しても膜の変質が抑制されるため、耐久性が向上する。また、高温下でも分解しにくい置換基であるため、耐熱性が向上する。耐熱性が向上すると、素子作製時に材料の分解を抑制できるため、耐久性が向上する。さらに、アリール基やヘテロアリール基であると、共役が広がるため、電気化学的により安定になり、且つ、電荷輸送性が向上する。
【0069】
この形態のとき、一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体は下記一般式(5)で表されることが好ましい。一般式(5)で表されるフルオランテン誘導体は、フルオランテン骨格の3位がL−N(A)(A)を含有する置換基で置換されている。フルオランテン誘導体において、3位が芳香族性の置換基で置換されるとフルオランテン骨格の電子状態は大きく変化し、効率的に共役が拡張するため、電荷輸送性が向上する。この結果、発光素子をより低電圧で駆動させることができ、発光効率をより向上させることができる。さらに、共役が広がることで、電荷に対する安定性もより向上する。この結果、本発明の一般式(5)で表されるフルオランテン誘導体を発光素子に用いた場合に、寿命の更なる向上が可能となる。
【0070】
【化6】
【0071】
16〜R24はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基およびカルバモイル基からなる群より選ばれる。R16〜R24は隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。L、L、A、Aおよびnは前記一般式(1)と同様である。
【0072】
一般式(5)におけるR16〜R24は上記の中でも水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基およびハロゲンからなる群より選ばれることが好ましい。R16〜R24が水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲンであることで、ガラス転移温度が高くなり薄膜安定性が向上する。また、高温下でも分解しにくい置換基であるため、耐熱性が向上する。さらに、アリール基やヘテロアリール基であると、共役が広がるため、電気化学的により安定になり、且つ、電荷輸送性が向上する。
【0073】
−N(A)(A)が上記のような構造であると、電子供与性窒素の電子供与性が強くなるため、電子伝導準位を浅くすることができる。このため本発明の一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体を電子輸送層に用いた場合には、電子輸送層と発光層のエネルギー障壁が小さくなるため、電子輸送層から発光層への高い電子注入が可能となり、発光素子の駆動電圧をより低くすることができる。
【0074】
一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体のすべての形態に共通して、L−N(A)(A)の別の一形態として、下記一般式(6)〜(9)のいずれかで表される構造であることが好ましい。L−N(A)(A)が下記一般式(6)〜(9)のいずれかで表される構造であると、電子供与性窒素の電子供与性を程よく保ち、電子伝導準位を浅くすることができる。このため本発明の一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体を電子輸送層に用いた場合には、電子輸送層と発光層のエネルギー障壁が小さくなるため、電子輸送層から発光層への高い電子注入が可能となり、発光素子の駆動電圧を低くすることができる。また、L−N(A)(A)が下記一般式(6)〜(9)のいずれかであると、ガラス転移温度が高くなり薄膜安定性がより向上する。薄膜安定性が向上すると、発光素子において長時間駆動しても膜の変質が抑制されるため、耐久性がより向上する。また、高温下でも分解しにくい置換基であるため、耐熱性がより向上する。耐熱性が向上すると、素子作製時に材料の分解を抑制できるため、耐久性がより向上する。
【0075】
【化7】
【0076】
は炭素数1〜40の置換もしくは無置換の単環芳香族複素環、または炭素数1〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環を表す。但し、Aを構成する少なくとも1つの原子は電子受容性窒素である。R25〜R63はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基およびカルバモイル基からなる群より選ばれる。R25〜R63は隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。但し、R25〜R63のうちいずれか一つの位置でLと連結する。より好ましくは、一般式(6)の場合はR25〜R28のうちいずれか一つの位置で、一般式(7)の場合はR33〜R37もしくはR39のうちいずれか一つの位置で、一般式(8)の場合はR44〜R47のうちいずれか一つの位置で、一般式(9)の場合はR54〜R57のうちいずれか一つの位置で、Lと連結する。
【0077】
一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体のすべての形態に共通して、nは1であることが好ましい。nが1であることで、昇華性、蒸着安定性が向上する。
【0078】
一般式(2)および(3)におけるRおよびR12は置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。RおよびR12が置換もしくは無置換のアリール基であることで、分子間におけるπ共役平面の重なりを適度に回避することが可能となる。また、アリール基であることで耐熱性がより向上する。その結果、ベンゾフルオランテン化合物の高い電荷輸送性を損なうことなく、昇華性の向上、蒸着安定性の向上、結晶性の低下及び高いガラス転移温度による薄膜安定性の向上が可能となる。
【0079】
一般式(2)および(3)におけるRおよびR12は置換もしくは無置換のフェニル基であることがより好ましい。RおよびR12が置換もしくは無置換のフェニル基であることで、分子間におけるπ共役平面の重なりを適度に回避することが可能となる。また、適度な分子量になるため、昇華性、蒸着安定性がさらに向上する。
【0080】
一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体のすべての形態に共通して、Aは下記一般式(10)〜(12)のいずれかで表される構造であることが好ましい。Aが下記一般式(10)〜(12)のいずれかで表される構造であると、高い電子移動度および高い電子受容性を発現し、発光素子の駆動電圧をより低くすることができる。この結果、発光素子の発光効率をより向上させることができる。また、発光素子の更なる長寿命化にも寄与する。
【0081】
【化8】
【0082】
〜B19はCH、置換された炭素原子、または窒素原子を表す。但し、B〜B19に窒素原子が含まれない場合、Aは、電子受容性窒素を含む置換もしくは無置換の単環芳香族複素環または電子受容性窒素を含む置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環である。また、L−N(A)(A)が前記一般式(6)〜(9)のいずれかで表される構造の場合、B〜B19のいずれか一つは窒素原子である。B〜B19が置換されている場合の置換基は前記一般式(1)と同様である。
【0083】
一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体のすべての形態に共通して、Aは下記一般式(13)〜(15)のいずれかで表される構造であることが好ましい。環Bが下記一般式(13)〜(15)のいずれかで表される構造であると、高いキャリア移動度および高い電子受容性を発現する。その結果、発光素子の低電圧駆動が可能となり、発光効率を向上させることができる。また、昇華性、蒸着安定性及び結晶性の低下や高いガラス転移温度による膜の安定性が向上する。
【0084】
【化9】
【0085】
20〜B38はCH、置換された炭素原子、または窒素原子を表す。但し、前記B〜B19に窒素原子が含まれない場合、B20〜B38の少なくとも1つは窒素原子である。また、L−N(A)(A)が前記一般式(6)〜(9)のいずれかで表される構造の場合、B20〜B38には窒素原子は含まれない。B20〜B38が置換されている場合の置換基は前記一般式(1)と同様である。
【0086】
一般式(1)において、L、L、A、Aの置換基がアリール基であることが好ましい。L、L、A、Aの置換基がアリール基であると、昇華性の向上、蒸着安定性の向上、結晶性の低下及び高いガラス転移温度による薄膜安定性の向上が可能となる。アリール基としては、特に限定されるものではないが、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基、フルオランテニル基などが挙げられる。
【0087】
一般式(1)において、L、L、A、Aの置換基としてフルオランテン骨格を含む基を有することがさらに好ましい。すなわち、一般式(1)は下記一般式(16)もしくは下記一般式(17)のいずれかの構造であることが好ましい。一般式(1)が下記一般式(16)もしくは下記一般式(17)のいずれかの構造であると、高い電子親和性をもつフルオランテン骨格を二つ有することにより、高いキャリア移動度および高い電子受容性を発現する。その結果、発光素子のさらなる低電圧駆動が可能となり、発光効率を向上させることができる。また、昇華性の向上、蒸着安定性の向上及び結晶性の低下や高いガラス転移温度による膜の安定性が向上する。
【0088】
【化10】
【0089】
式中、Arはフルオランテン骨格を含む基を表す。Ar、L、L、A、Aおよびnは前記一般式(1)と同様である。但し、一般式(16)の場合、Lが単結合になることはない。
【0090】
一般式(16)もしくは一般式(17)におけるArは置換もしくは無置換のフルオランテニル基であることがより好ましい。Arが置換もしくは無置換のフルオランテニル基であることで、高いキャリア移動度および高い電子受容性を発現する。また、適度な分子量になるため、昇華性、蒸着安定性がさらに向上する。
【0091】
一般式(16)もしくは一般式(17)において、n=1であり、Lは単結合であることが更に好ましい。
【0092】
−N(A)(A)で表される基としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0093】
【化11】
【0094】
【化12】
【0095】
【化13】
【0096】
【化14】
【0097】
【化15】
【0098】
一般式(1)で表されるフルオランテン誘導体としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0099】
【化16】
【0100】
【化17】
【0101】
【化18】
【0102】
【化19】
【0103】
【化20】
【0104】
【化21】
【0105】
【化22】
【0106】
【化23】
【0107】
【化24】
【0108】
【化25】
【0109】
【化26】
【0110】
【化27】
【0111】
【化28】
【0112】
【化29】
【0113】
【化30】
【0114】
【化31】
【0115】
【化32】
【0116】
【化33】
【0117】
【化34】
【0118】
【化35】
【0119】
【化36】
【0120】
【化37】
【0121】
【化38】
【0122】
【化39】
【0123】
【化40】
【0124】
【化41】
【0125】
【化42】
【0126】
【化43】
【0127】
【化44】
【0128】
【化45】
【0129】
本発明のフルオランテン誘導体の合成には、公知の方法を使用することができる。フルオランテン骨格へL−N(A)(A)を導入する方法としては、例えば、パラジウム触媒やニッケル触媒下で置換もしくは無置換のハロゲン化フルオランテン誘導体と置換もしくは無置換のL−N(A)(A)のカップリング反応を用いる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、L−N(A)(A)をアリーレン基やヘテロアリーレン基を介してフルオランテン骨格へ導入する場合は、L−N(A)(A)が置換したアリールボロン酸やヘテロアリールボロン酸を用いるか、ハロゲン化アリールが置換したフルオランテン誘導体を用いてもよい。また、上記の各種ボロン酸に代えて、ボロン酸エステルを用いてもよい。
【0130】
本発明のフルオランテン誘導体は、発光素子材料として用いられることが好ましい。ここで発光素子材料とは、発光素子のいずれかの層に使用される材料を表し、後述するように、正孔輸送層、発光層および電子輸送層から選ばれた層に使用される材料であるほか、陰極の保護膜に使用される材料も含む。本発明のフルオランテン誘導体を、発光素子のいずれかの層に使用することにより、高い発光効率が得られ、かつ低駆動電圧および高耐久性の発光素子が得られる。
【0131】
次に、本発明の発光素子の実施の形態について詳細に説明する。本発明の発光素子は、陽極と陰極、およびそれら陽極と陰極との間に介在する有機層を有し、該有機層は少なくとも発光層と電子輸送層を有し、該発光層が電気エネルギーにより発光する。
【0132】
有機層は、発光層/電子輸送層のみからなる構成の他に、1)正孔輸送層/発光層/電子輸送層および2)正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層、3)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層などの積層構成が挙げられる。また、上記各層は、それぞれ単一層、複数層のいずれでもよい。
【0133】
本発明のフルオランテン誘導体は、上記の素子構成において、いずれの層に用いられてもよいが、高い電子注入輸送能、蛍光量子収率および薄膜安定性を有しているため、発光素子の発光層または電子輸送層に用いることが好ましい。特に、優れた電子注入輸送能を有していることから、電子輸送層に用いることが好ましい。
【0134】
本発明の発光素子において、陽極と陰極は素子の発光のために十分な電流を供給するための役割を有するものであり、光を取り出すために少なくとも一方は透明または半透明であることが好ましい。通常、基板上に形成される陽極を透明電極とする。
【0135】
陽極に用いる材料は、正孔を有機層に効率よく注入できる材料、かつ光を取り出すために透明または半透明であれば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)などの導電性金属酸化物、あるいは、金、銀、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなど特に限定されるものでないが、ITOガラスやネサガラスを用いることが特に好ましい。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。透明電極の抵抗は素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが好ましい。例えば300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、20Ω/□以下の低抵抗の基板を使用することが特に好ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常100〜300nmの間で用いられることが多い。
【0136】
また、発光素子の機械的強度を保つために、発光素子を基板上に形成することが好ましい。基板は、ソーダガラスや無アルカリガラスなどのガラス基板が好適に用いられる。ガラス基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、0.5mm以上あれば十分である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましい。または、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することもできる。さらに、第一電極が安定に機能するのであれば、基板はガラスである必要はなく、例えば、プラスチック基板上に陽極を形成しても良い。ITO膜形成方法は、電子線ビーム法、スパッタリング法および化学反応法など特に制限を受けるものではない。
【0137】
陰極に用いる材料は、電子を効率よく発光層に注入できる物質であれば特に限定されない。一般的には白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、インジウムなどの金属、またはこれらの金属とリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの低仕事関数金属との合金や多層積層などが好ましい。中でも、主成分としてはアルミニウム、銀、マグネシウムが電気抵抗値や製膜しやすさ、膜の安定性、発光効率などの面から好ましい。特にマグネシウムと銀で構成されると、本発明における電子輸送層および電子注入層への電子注入が容易になり、低電圧駆動が可能になるため好ましい。
【0138】
さらに、陰極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、シリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などの有機高分子化合物を、保護膜層として陰極上に積層することが好ましい例として挙げられる。また、本発明のフルオランテン誘導体もこの保護膜層として利用できる。ただし、陰極側から光を取り出す素子構造(トップエミッション構造)の場合は、保護膜層は可視光領域で光透過性のある材料から選択される。これらの電極の作製法は、抵抗加熱、電子線ビーム、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど特に制限されない。
【0139】
正孔輸送層は、正孔輸送材料の一種または二種以上を積層または混合する方法、もしくは、正孔輸送材料と高分子結着剤の混合物を用いる方法により形成される。また、正孔輸送材料は、電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率良く輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率良く輸送することが好ましい。そのためには適切なイオン化ポテンシャルを持ち、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが要求される。このような条件を満たす物質として、特に限定されるものではないが、例えば、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(TPD)、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)、4,4’−ビス(N,N−ビス(4−ビフェニリル)アミノ)ビフェニル(TBDB),ビス(N,N’−ジフェニル−4−アミノフェニル)−N,N−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル(TPD232)といったベンジジン誘導体、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(1−TNATA)などのスターバーストアリールアミンと呼ばれる材料群、カルバゾール骨格を有する材料、中でもカルバゾール多量体、具体的にはビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのカルバゾール2量体の誘導体、カルバゾール3量体の誘導体、カルバゾール4量体の誘導体、トリフェニレン化合物、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、フラーレン誘導体、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましい。さらにp型Si、p型SiC等の無機化合物も使用できる。
【0140】
本発明のフルオランテン誘導体も、正孔移動度が大きく、さらに電気化学的安定性に優れているため、正孔輸送材料として用いることができる。本発明のフルオランテン誘導体は、正孔注入材料として用いてもよいが、高い正孔移動度をもつことから、正孔輸送材料として好適に用いられる。
【0141】
本発明のフルオランテン誘導体は電子注入輸送特性が優れているので、これを電子輸送層に用いた場合、電子が発光層で再結合せず、一部正孔輸送層までもれてしまう懸念がある。そのため正孔輸送層には電子ブロック性の優れた化合物を用いるのが好ましい。中でも、カルバゾール骨格を含有する化合物は電子ブロック性に優れ、発光素子の高効率化に寄与できるので好ましい。さらに上記カルバゾール骨格を含有する化合物が、カルバゾール2量体、カルバゾール3量体、またはカルバゾール4量体骨格を含有することが好ましい。これらは良好な電子ブロック性と、正孔注入輸送特性を併せ持っているためである。さらに、正孔輸送層にカルバゾール骨格を含有する化合物を用いた場合、組み合わせる発光層が後述するリン光発光材料を含んでいることがより好ましい。上記カルバゾール骨格を有する化合物は高い三重項励起子ブロック機能も有しており、リン光発光材料と組み合わせた場合に高発光効率化できるためである。また高い正孔移動度を有する点で優れているトリフェニレン骨格を含有する化合物を正孔輸送層に用いると、キャリアバランスが向上し、発光効率向上、耐久寿命向上といった効果が得られるので好ましい。トリフェニレン骨格を含有する化合物が2つ以上のジアリールアミノ基を有していると、さらに好ましい。上記カルバゾール骨格を含有する化合物、またはトリフェニレン骨格を含有する化合物はそれぞれ単独で正孔輸送層として用いてもよいし、互いに混合して用いてもよい。また本発明の効果を損なわない範囲で他の材料が混合されていてもよい。また正孔輸送層が複数層で構成されている場合は、いずれか1層にカルバゾール骨格を含有する化合物、あるいは、トリフェニレン骨格を含有する化合物が含まれていればよい。
【0142】
陽極と正孔輸送層の間に正孔注入層を設けてもよい。正孔注入層を設けることで発光素子が低駆動電圧化し、耐久寿命も向上する。正孔注入層には通常正孔輸送層に用いる材料よりもイオン化ポテンシャルの小さい材料が好ましく用いられる。具体的には、上記TPD232のようなベンジジン誘導体、スターバーストアリールアミン材料群が挙げられる他、フタロシアニン誘導体等も用いることができる。また正孔注入層がアクセプター性化合物単独で構成されているか、またはアクセプター性化合物が別の正孔輸送材料にドープされて用いられていることも好ましい。アクセプター性化合物の例としては、塩化鉄(III)、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、塩化アンチモンのような金属塩化物、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ルテニウムのような金属酸化物、トリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネート(TBPAH)のような電荷移動錯体が挙げられる。また分子内にニトロ基、シアノ基、ハロゲンまたはトリフルオロメチル基を有する有機化合物や、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなども好適に用いられる。これらの化合物の具体的な例としては、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(HAT−CN6)、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、テトラメチルベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、o−ジシアノベンゼン、p−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、p−シアノニトロベンゼン、m−シアノニトロベンゼン、o−シアノニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1−ニトロナフタレン、2−ニトロナフタレン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9−シアノアントラセン、9−ニトロアントラセン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、C60、およびC70などが挙げられる。
【0143】
これらの中でも、金属酸化物やシアノ基含有化合物が取り扱いやすく、蒸着もしやすいことから、容易に上述した効果が得られるので好ましい。好ましい金属酸化物の例としては酸化モリブデン、酸化バナジウム、または酸化ルテニウムがあげられる。シアノ基含有化合物の中では、(a)分子内に、シアノ基の窒素原子以外に少なくとも1つの電子受容性窒素有する化合物、(b)分子内にハロゲンとシアノ基の両方を有している化合物、(c)分子内にカルボニル基とシアノ基の両方を有している化合物、または(d)分子内にハロゲンとシアノ基の両方を有し、さらにシアノ基の窒素原子以外に少なくとも1つの電子受容性窒素を有する化合物が強い電子アクセプターとなるためより好ましい。このような化合物として具体的には以下のような化合物があげられる。
【0144】
【化46】
【0145】
【化47】
【0146】
正孔注入層がアクセプター性化合物単独で構成される場合、または正孔注入層にアクセプター性化合物がドープされている場合のいずれの場合も、正孔注入層は1層であってもよいし、複数の層が積層されていてもよい。またアクセプター化合物がドープされている場合に組み合わせて用いる正孔注入材料は、正孔輸送層への正孔注入障壁が緩和できるという観点から、正孔輸送層に用いる化合物と同一の化合物であることがより好ましい。
【0147】
発光層は単一層、複数層のどちらでもよく、それぞれ発光材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成され、これはホスト材料とドーパント材料との混合物であっても、ホスト材料単独であっても、いずれでもよい。すなわち、本発明の発光素子では、各発光層において、ホスト材料もしくはドーパント材料のみが発光してもよいし、ホスト材料とドーパント材料がともに発光してもよい。電気エネルギーを効率よく利用し、高色純度の発光を得るという観点からは、発光層はホスト材料とドーパント材料の混合からなることが好ましい。また、ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれでもよい。ドーパント材料は積層されていても、分散されていても、いずれでもよい。ドーパント材料は発光色の制御ができる。ドーパント材料の量は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、ホスト材料に対して20重量%以下で用いることが好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。ドーピング方法は、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。
【0148】
発光材料は、具体的には、以前から発光体として知られていたアントラセンやピレンなどの縮合環誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを始めとする金属キレート化オキシノイド化合物、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、そして、ポリチオフェン誘導体などが使用できるが特に限定されるものではない。
【0149】
発光材料に含有されるホスト材料は、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどの芳香族アミン誘導体、トリス(8−キノリナート)アルミニウム(III)をはじめとする金属キレート化オキシノイド化合物、ジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体などが使用できるが特に限定されるものではない。またドーパント材料には、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体(例えば2−(ベンゾチアゾール−2−イル)−9,10−ジフェニルアントラセンや5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンなど)、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピリジン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどのヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ボラン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、4,4’−ビス(2−(4−ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(スチルベン−4−イル)−N−フェニルアミノ)スチルベンなどのアミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4−c]ピロール誘導体、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−(2’−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1−gh]クマリンなどのクマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などを用いることができる。
【0150】
また発光層にリン光発光材料が含まれていてもよい。リン光発光材料とは、室温でもリン光発光を示す材料である。ドーパントしてリン光発光材料を用いる場合は基本的に室温でもリン光発光が得られる必要があるが、特に限定されるものではなく、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、及びレニウム(Re)からなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体化合物であることが好ましい。中でも室温でも高いリン光発光収率を有するという観点から、イリジウム、もしくは白金を有する有機金属錯体がより好ましい。リン光発光性のドーパントと組み合わせて用いられるホストとしては、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ピリジン、ピリミジン、トリアジン骨格を有する含窒素芳香族化合物誘導体、ポリアリールベンゼン誘導体、スピロフルオレン誘導体、トルキセン誘導体、トリフェニレン誘導体といった芳香族炭化水素化合物誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体といったカルコゲン元素を含有する化合物、ベリリウムキノリノール錯体といった有機金属錯体などが好適に用いられるが、基本的に用いるドーパントよりも三重項エネルギーが大きく、電子、正孔がそれぞれの輸送層から円滑に注入され、また輸送するものであればこれらに限定されるものではない。また2種以上の三重項発光ドーパントが含有されていてもよいし、2種以上のホスト材料が含有されていてもよい。さらに1種以上の三重項発光ドーパントと1種以上の蛍光発光ドーパントが含有されていてもよい。
【0151】
好ましいリン光発光性ホストまたはドーパントとしては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0152】
【化48】
【0153】
【化49】
【0154】
本発明のフルオランテン誘導体も、高い発光性能を有することから、発光材料として用いることができる。本発明のフルオランテン誘導体は、青色〜緑色領域(400〜600nm領域)に強い発光を示すことから、青色および緑色発光材料として好適に用いることができる。本発明のフルオランテン誘導体は、ホスト材料として用いてもよいが、高い蛍光量子収率をもつことから、ドーパント材料として好適に用いられる。
【0155】
本発明において、電子輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送する層である。電子輸送層には、電子注入効率が高く、注入された電子を効率良く輸送することが望まれる。そのため電子輸送層は、電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質で構成されることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、電子輸送層が陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たすならば、電子輸送能力がそれ程高くない材料で構成されていても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料で構成されている場合と同等となる。したがって、本発明における電子輸送層には、正孔の移動を効率よく阻止できる正孔阻止層も同義のものとして含まれる。
【0156】
電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、ナフタレン、アントラセンなどの縮合多環芳香族誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)などのキノリノール錯体、ベンゾキノリノール錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体などの各種金属錯体が挙げられるが、駆動電圧を低減し、高効率発光が得られることから、炭素、水素、窒素、酸素、ケイ素、リンの中から選ばれる元素で構成され、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造を有する化合物を用いることが好ましい。
【0157】
電子受容性窒素を含む芳香族複素環は、高い電子親和性を有する。電子受容性窒素を有する電子輸送材料は、高い電子親和力を有する陰極からの電子を受け取りやすくし、より低電圧駆動が可能となる。また、発光層への電子の供給が多くなり、再結合確率が高くなるので発光効率が向上する。
【0158】
電子受容性窒素を含むヘテロアリール環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、ピリミドピリミジン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環、フェナンスロイミダゾール環などが挙げられる。
【0159】
これらのヘテロアリール環構造を有する化合物としては、例えば、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジンやターピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、キノキサリン誘導体およびナフチリジン誘導体などが好ましい化合物として挙げられる。中でも、トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼンなどのイミダゾール誘導体、1,3−ビス[(4−tert−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなどのオキサジアゾール誘導体、N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなどのトリアゾール誘導体、バソクプロインや1,3−ビス(1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどのフェナントロリン誘導体、2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなどのベンゾキノリン誘導体、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロールなどのビピリジン誘導体、1,3−ビス(4’−(2,2’:6’2”−ターピリジニル))ベンゼンなどのターピリジン誘導体、ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなどのナフチリジン誘導体が、電子輸送能の観点から好ましく用いられる。また、これらの誘導体が、縮合多環芳香族骨格を有していると、ガラス転移温度が向上すると共に、電子移動度も大きくなり発光素子の低電圧化の効果が大きいのでより好ましい。さらに、素子耐久寿命が向上し、合成のし易さ、原料入手が容易であることを考慮すると、縮合多環芳香族骨格はアントラセン骨格、ピレン骨格またはフェナントロリン骨格であることが特に好ましい。上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料の2種以上を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いても構わない。
【0160】
好ましい電子輸送材料としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0161】
【化50】
【0162】
これら以外にも、国際公開第2004−63159号、国際公開第2003−60956号、Appl. Phys. Lett. 74, 865 (1999)、Org. Electron. 4, 113 (2003)、国際公開第2010−113743号、国際公開第2010−1817号等に開示された電子輸送材料も用いることができる。
【0163】
また、本発明のフルオランテン誘導体も高い電子注入輸送能を有することから電子輸送材料として好適に用いられる。
【0164】
本発明のフルオランテン誘導体が用いられる場合には、その各一種のみに限る必要はなく、本発明の複数のフルオランテン化合物を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種類以上を本発明の効果を損なわない範囲で本発明のフルオランテン化合物と混合して用いてもよい。混合しうる電子輸送材料としては、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、ピレンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、カルバゾール誘導体およびインドール誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)などのキノリノール錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体が挙げられる。
【0165】
上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料の2種以上を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いても構わない。また、ドナー性材料を含有してもよい。ここで、ドナー性材料とは電子注入障壁の改善により、陰極または電子注入層からの電子輸送層への電子注入を容易にし、さらに電子輸送層の電気伝導性を向上させる化合物である。
【0166】
本発明におけるドナー性材料の好ましい例としては、アルカリ金属、アルカリ金属を含有する無機塩、アルカリ金属と有機物との錯体、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属を含有する無機塩またはアルカリ土類金属と有機物との錯体などが挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属の好ましい種類としては、低仕事関数で電子輸送能向上の効果が大きいリチウム、ナトリウム、セシウムといったアルカリ金属や、マグネシウム、カルシウムといったアルカリ土類金属が挙げられる。
【0167】
また、真空中での蒸着が容易で取り扱いに優れることから、金属単体よりも無機塩、あるいは有機物との錯体の状態であることが好ましい。さらに、大気中での取扱を容易にし、添加濃度の制御のし易さの点で、有機物との錯体の状態にあることがより好ましい。無機塩の例としては、LiO、Li2O等の酸化物、窒化物、LiF、NaF、KF等のフッ化物、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Rb2CO3、Cs2CO3等の炭酸塩などが挙げられる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の好ましい例としては、原料が安価で合成が容易な点から、リチウムが挙げられる。また、有機物との錯体における有機物の好ましい例としては、キノリノール、ベンゾキノリノール、フラボノール、ヒドロキシイミダゾピリジン、ヒドロキシベンズアゾール、ヒドロキシトリアゾールなどが挙げられる。中でも、アルカリ金属と有機物との錯体が好ましく、リチウムと有機物との錯体がより好ましく、リチウムキノリノールが特に好ましい。これらのドナー性材料を2種以上混合して用いてもよい。
【0168】
好適なドーピング濃度は材料やドーピング領域の膜厚によっても異なるが、例えばドナー性材料がアルカリ金属、アルカリ土類金属といった無機材料の場合は、電子輸送材料とドナー性材料の蒸着速度比が10000:1〜2:1の範囲となるようにして共蒸着して電子輸送層としたものが好ましい。蒸着速度比は100:1〜5:1がより好ましく、100:1〜10:1がさらに好ましい。またドナー性材料が金属と有機物との錯体である場合は、電子輸送材料とドナー性材料の蒸着速度比が100:1〜1:100の範囲となるようにして共蒸着して電子輸送層としたものが好ましい。蒸着速度比は10:1〜1:10がより好ましく、7:3〜3:7がより好ましい。
【0169】
また、上記のような本発明のフルオランテン誘導体にドナー性材料がドープされた電子輸送層は、複数の発光素子を連結するタンデム構造型素子における電荷発生層として用いられていてもよい。
【0170】
電子輸送層にドナー性材料をドーピングして電子輸送能を向上させる方法は、薄膜層の膜厚が厚い場合に特に効果を発揮するものである。電子輸送層および発光層の合計膜厚が50nm以上の場合に特に好ましく用いられる。例えば、発光効率を向上させるために干渉効果を利用する方法があるが、これは発光層から直接放射される光と、陰極で反射された光の位相を整合させて光の取り出し効率を向上させるものである。この最適条件は光の発光波長に応じて変化するが、電子輸送層および発光層の合計膜厚が50nm以上となり、赤色などの長波長発光の場合には100nm近くの厚膜になる場合がある。
【0171】
ドーピングする電子輸送層の膜厚は、電子輸送層の一部分または全部のどちらでも構わない。一部分にドーピングする場合、少なくとも電子輸送層/陰極界面にはドーピング領域を設けることが望ましく、陰極界面付近にドーピングするだけでも低電圧化の効果は得られる。一方、ドナー性材料が発光層に直接接していると発光効率を低下させる悪影響を及ぼす場合があり、その場合には発光層/電子輸送層界面にノンドープ領域を設けることが好ましい。
【0172】
本発明において、陰極と電子輸送層の間に電子注入層を設けてもよい。一般的に電子注入層は陰極から電子輸送層への電子の注入を助ける目的で挿入されるが、挿入する場合は、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造を有する化合物を用いてもよいし、上記のドナー性材料を含有する層を用いてもよい。本発明のフルオランテン誘導体が電子注入層に含まれていてもよい。また電子注入層に絶縁体や半導体の無機物を用いることもできる。これらの材料を用いることで発光素子の短絡を有効に防止して、かつ電子注入性を向上させることができるので好ましい。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点でより好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、NaS及びNaSeが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF及びBeF等のフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。さらに有機物と金属の錯体も好適に用いられる。電子注入層に有機物と金属の錯体を用いる場合は膜厚調整が容易であるのでより好ましい。このような有機金属錯体の例としては有機物との錯体における有機物の好ましい例としては、キノリノール、ベンゾキノリノール、ピリジルフェノール、フラボノール、ヒドロキシイミダゾピリジン、ヒドロキシベンズアゾール、ヒドロキシトリアゾールなどが挙げられる。中でも、アルカリ金属と有機物との錯体が好ましく、リチウムと有機物との錯体がより好ましく、リチウムキノリノールが特に好ましい。
【0173】
発光素子を構成する上記各層の形成方法は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティング法など特に限定されないが、通常は、素子特性の点から抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着が好ましい。
【0174】
有機層の厚みは、発光物質の抵抗値にもよるので限定することはできないが、1〜1000nmであることが好ましい。発光層、電子輸送層、正孔輸送層の膜厚はそれぞれ、好ましくは1nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上100nm以下である。
【0175】
本発明の発光素子は、電気エネルギーを光に変換できる機能を有する。ここで電気エネルギーとしては主に直流電流が使用されるが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値および電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、できるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるよう選ばれるべきである。
【0176】
本発明の発光素子は、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式で表示するディスプレイとして好適に用いられる。
【0177】
マトリクス方式とは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置され、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法は、線順次駆動方法やアクティブマトリクスのどちらでもよい。線順次駆動はその構造が簡単であるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリクスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0178】
本発明におけるセグメント方式とは、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、このパターンの配置によって決められた領域を発光させる方式である。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。そして、前記マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0179】
本発明の発光素子は、各種機器等のバックライトとしても好ましく用いられる。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が検討されているパソコン用途のバックライトに本発明の発光素子は好ましく用いられ、従来のものより薄型で軽量なバックライトを提供できる。
【実施例】
【0180】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0181】
合成例1
化合物[1]の合成
ブロモフルオランテン26.0g、ビス(ピナコラート)ジボロン35.2g、酢酸カリウム27.2g、ジメチルホルムアミド462mLを混合し、窒素置換した。この混合溶液に[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド・ジクロロメタン錯体0.75gを加え、100℃に加熱した。1時間後、室温に冷却した後、酢酸エチル250mL、トルエン250mL、水250mLを加え分液した。水層を酢酸エチル200mL、トルエン200mLで抽出した後、先の有機層と合わせ、水500mLで3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出液をエバポレートし、真空乾燥することにより、中間体Aを16.4g得た。
【0182】
次に、中間体A16.4g、クロロヨードベンゼン11.9g、ジメトキシエタン251mL、1.5M炭酸ナトリウム水溶液67mlを混合し、窒素置換した。この混合溶液にビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド352mgを加え、加熱還流した。3時間後、室温に冷却した後、水250mlを加え、析出物をろ過し、真空乾燥機で乾燥した。ろ過物をトルエンに溶解した後、活性炭とQuadraSil(登録商標)を加え、シリカパッドでろ過した。ろ液の溶媒を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ過し、乾燥した。得られた固体を、酢酸ブチル100mLで再結晶し、ろ過した後、真空乾燥することにより、中間体Bの黄緑色固体を8.4g得た。
【0183】
次に、3−アミノピリジン15.0g、ヨードベンゼン35.8g、ナトリウム−t−ブトキシド21.5g、トルエン400mLを混合し、窒素置換した。この混合溶液にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)1.83g、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン1.77gを加え、加熱還流した。4時間後、室温に冷却した後、セライトろ過し、水250mLを加え、有機層を洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、活性炭を加えた後、セライトろ過し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出液をエバポレートし、ヘプタンを加えろ過した。得られた固体を真空乾燥することにより、中間体Cを4.85g得た。
【0184】
次に、中間体B3.0g、中間体C1.8g、ナトリウム−t−ブトキシド1.3g、o−キシレン49mLを混合し、窒素置換した。この混合溶液にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)56mg、XPhos68mgを加え、加熱還流した。40分後、室温に冷却した後、セライトろ過し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出液をエバポレートした。酢酸ブチルで再結晶した後、ろ過し、真空乾燥することにより、化合物[1]の黄緑色固体を3.6g(収率83%)得た。
【0185】
得られた黄色固体のH−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた黄緑色固体が化合物[1]であることが確認された。
化合物[1]: H−NMR (CDCl(d=ppm)) δ 7.10−7.25(m,6H),7.32−7.43(m,4H),7.47−7.55(m,3H),7.61−7.67(m,2H),7.90−8.01(m,5H),8.27(d,1H),8.49(d,1H)。
【0186】
なお、化合物[1]は、油拡散ポンプを用いて1×10−3Paの圧力下、約230℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.9%、昇華精製後が99.9%であった。
【0187】
【化51】
【0188】
合成例2
化合物[2]の合成
アセナフチレン14.0g、ジフェニルイソベンゾフラン25.0gおよびo−キシレン200mlを混合し、窒素気流下で加熱還流した。2時間後、室温に冷ました後、溶媒を留去し、エーテル300mLを加えた。得られた析出物をろ過し、真空乾燥することにより、中間体D27.7g(収率71%)を得た。
【0189】
次に、中間体D27.7g、酢酸200mLの混合し、48%臭化水素水20mLを加え、加熱還流した。3時間後、反応混合物を室温に冷却した後、ろ過し、水とメタノールで洗浄した。得られた固体を真空乾燥することにより、中間体E25.8g(収率96%)を得た。
【0190】
次に、中間体E25.8g、N−ブロモスクシイミド11.3g、クロロホルム318mLを混合し、加熱還流した。1時間後、N−ブロモスクシイミド3.4gを追加し、さらに加熱還流した。2時間後、室温に冷却した後、クロロホルム溶液を水とチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、活性炭3gを加えた後、ろ過し、溶媒を留去した。得られた固体を、酢酸ブチル800mLで再結晶し、ろ過した後、真空乾燥することにより、中間体F26.9g(収率87%)を得た。
【0191】
次に、中間体F9.0g、p−クロロフェニルボロン酸3.2g、ジメトキシエタン93mL、1.5M炭酸ナトリウム水溶液27mlを混合し、窒素置換した。この混合溶液にビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド130mgを加え、加熱還流した。3時間後、室温に冷却した後、水93mlを加え、析出物をろ過し、真空乾燥機で乾燥した。ろ過物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出液をエバポレートした。得られた固体に、メタノールを加え、析出物をろ過した後、真空乾燥することにより、中間体G8.4g(収率87%)を得た。
【0192】
次に、中間体G3.0g、中間体C1.2g、ナトリウム−t−ブトキシド0.8g、o−キシレン29mLを混合し、窒素置換した。この混合溶液にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)33mg、XPhos40mgを加え、加熱還流した。2時間後、室温に冷却した後、セライトろ過し、ろ液の溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出液をエバポレートした。得られた固体を、酢酸ブチル45mLとo−キシレン40mLの混合溶媒で再結晶し、ろ過した後、真空乾燥することにより、化合物[2]の黄色固体を2.49g(収率67%)得た。
【0193】
得られた黄色固体のH−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた黄色固体が化合物[2]であることが確認された。
化合物[2]: H−NMR (CDCl(d=ppm)) δ 6.63−6.67(m,2H),7.08−7.21(m,6H),7.29−7.48(m,9H),7.56−7.71(m,12H),7.86(d,1H),8.24(dd,1H),8.45(d,1H)。
【0194】
なお、化合物[2]は、油拡散ポンプを用いて1×10−3Paの圧力下、約320℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.9%、昇華精製後が99.9%であった。
【0195】
【化52】
【0196】
合成例3
化合物[3]の合成
中間体F10.0g、ビス(ピナコラート)ジボロン7.9g、酢酸カリウム6.1g、ジメチルホルムアミド52mLを混合し、窒素置換した。この混合溶液に[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド・ジクロロメタン錯体0.51gを加え、100℃に加熱した。1時間後、室温に冷却した後、水200mLを加え、析出した固体をろ過した。得られた固体をトルエンに溶解し、活性炭とQuadraSil(登録商標)を加え、シリカパッドでろ過した。ろ液の溶媒を留去した後、メタノールを加え、析出した固体をろ過し、真空乾燥することにより、中間体Hを10.8g得た。
【0197】
次に、中間体H10.8g、ブロモカルバゾール5.0g、ジメトキシエタン101mL、2.0M炭酸カリウム水溶液22mlを混合し、窒素置換した。この混合溶液にビス酢酸パラジウム91mg、トリ(オルトトリル)ホスフィン308mgを加え、加熱還流した。1.5時間後、室温に冷却した後、トルエン500mL、水250mlを加え、分液した。有機層を水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、活性炭を加えた後、セライトろ過し、溶媒を留去した。得られた固体を、o−キシレン150mLで再結晶し、ろ過した後、真空乾燥することにより、中間体Iの黄緑色固体を7.1g得た。
【0198】
次に、中間体I3.0g、3−ブロモピリジン0.92g、ナトリウム−t−ブトキシド0.71g、o−キシレン27mLを混合し、窒素置換した。この混合溶液にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)61mg、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン83mgを加え、加熱還流した。2時間後、室温に冷却した後、セライトろ過し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶出液をエバポレートし、メタノールを加え、加熱還流した。3時間後、室温に冷却した後、ろ過した。得られた固体を真空乾燥することにより、化合物[3]を3.31g(収率97%)得た。
【0199】
得られた黄色固体のH−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた黄緑色固体が化合物[3]であることが確認された。
化合物[3]: H−NMR (DMSO−d6(d=ppm)) δ 6.57−6.66(m,2H),7.33(t,1H),7.40−7.63(m,14H),7.69−7.80(m,7H),7.88(d,1H),8.19(dt,1H),8.32(d,1H),8.43(s,1H),8.77(dd,1H),8.94(d,1H)。
【0200】
なお、化合物[3]は、油拡散ポンプを用いて1×10−3Paの圧力下、約320℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.9%、昇華精製後が99.9%であった。
【0201】
【化53】
【0202】
実施例1
ITO透明導電膜を165nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を“セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として、HAT−CN6を5nm、正孔輸送層として、HT−1を50nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料H−1、ドーパント材料D−1をドープ濃度が5重量%になるようにして20nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送層として化合物[1]を30nmの厚さに蒸着して積層した。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子の1000cd/m時の特性は、駆動電圧3.7V、外部量子効率4.5%であった。また初期輝度を1000cd/mに設定し、定電流駆動させたところ輝度50%低下する輝度半減時間は1600時間であった。なおHAT−CN6、HT−1、H−1、D−1は以下に示す化合物である。
【0203】
【化54】
【0204】
実施例2〜30
電子輸送層に表1に記載した化合物を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作成し、評価した。結果を表1に示す。なお、化合物[4]〜[30]は下記に示す化合物である。
【0205】
【化55】
【0206】
【化56】
【0207】
【化57】
【0208】
比較例1〜5
電子輸送層に表1に記載した化合物を用いた以外は実施例1と同様にして発光素子を作成し、評価した。結果を表1に示す。なお、E−1〜E−5は以下に示す化合物である。
【0209】
【化58】
【0210】
実施例31
ITO透明導電膜を165nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を“セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として、HAT−CN6を5nm、正孔輸送層として、HT−1を50nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料H−1、ドーパント材料D−1をドープ濃度が5重量%になるようにして20nmの厚さに蒸着した。次に、第1電子輸送層として化合物[1]を20nmの厚さに蒸着して積層した。さらに第2電子輸送層として電子輸送材料に化合物[1]を、ドナー性材料としてリチウムを用い、化合物[1]とリチウムの蒸着速度比が20:1になるようにして10nmの厚さに積層した。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。この発光素子の1000cd/m時の特性は、駆動電圧3.5V、外部量子効率5.1%であった。また初期輝度を1000cd/mに設定し、定電流駆動させたところ輝度50%低下する輝度半減時間は2200時間であった。
【0211】
実施例32〜60
電子輸送層に表2に記載した化合物を用いた以外は実施例31と同様にして発光素子を作成し、評価した。結果を表2に示す。
【0212】
比較例6〜10
電子輸送層に表2に記載した化合物を用いた以外は実施例31と同様にして発光素子を作成し、評価した。結果を表2に示す。
【0213】
実施例61
ITO透明導電膜を165nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を“セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として、HAT−CN6を5nm、正孔輸送層として、HT−1を50nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料H−1、ドーパント材料D−1をドープ濃度が5重量%になるようにして20nmの厚さに蒸着した。さらに電子輸送層として電子輸送材料に化合物[1]を、ドナー性材料として2E−1を用い、化合物[1]と2E−1の蒸着速度比が1:1になるようにして30nmの厚さに積層した。この電子輸送層は表2では第2電子輸送層として示す。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。この発光素子の1000cd/m時の特性は、駆動電圧3.3V、外部量子効率5.8%であった。また初期輝度を1000cd/mに設定し、定電流駆動させたところ輝度50%低下する輝度半減時間は2800時間であった。
【0214】
実施例62〜90
電子輸送層、ドナー性材料として表3に記載した化合物を用いた以外は実施例61と同様にして発光素子を作成し、評価した。結果を表3に示す。2E−1は下記に示す化合物である。
【0215】
【化59】
【0216】
比較例11〜15
電子輸送層、ドナー性材料として表3に記載した化合物を用いた以外は実施例61と同様にして発光素子を作成し、評価した。結果を表3に示す。
【0217】
実施例91
ITO透明導電膜を165nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を“セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として、HAT−CN6を5nm、正孔輸送層として、HT−1を50nm蒸着した。この正孔輸送層は表3では第1正孔輸送層として示す。次に、発光層として、ホスト材料H−2、ドーパント材料D−2をドープ濃度が10重量%になるようにして20nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送層として化合物[1]を30nmの厚さに蒸着して積層した。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子の4000cd/m時の特性は、駆動電圧4.0V、外部量子効率10.8%であった。また初期輝度を4000cd/mに設定し、定電流駆動させたところ輝度半減時間は1200時間であった。なおH−2、D−2は以下に示す化合物である。
【0218】
【化60】
【0219】
実施例92
ITO透明導電膜を165nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を“セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入層として、HAT−CN6を5nm、第1正孔輸送層として、HT−1を40nm蒸着した。さらに第2正孔輸送層としてHT−2を10nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料H−2、ドーパント材料D−2をドープ濃度が10重量%になるようにして20nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送層として化合物[4]を30nmの厚さに蒸着して積層した。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子の4000cd/m時の特性は、駆動電圧3.9V、外部量子効率13.8%であった。また初期輝度を4000cd/mに設定し、定電流駆動させたところ輝度半減時間は1900時間であった。なお、HT−2は以下に示す化合物である。
【0220】
【化61】
【0221】
実施例95、99、103
電子輸送層として表4記載の化合物を用いた以外は、実施例91と同様にして素子を作成し、評価した。結果を表4に示す。
【0222】
比較例16、20
電子輸送層として表4記載の化合物を用いた以外は実施例91と同様に発光素子を作成し、評価した。結果を表4に示す。
【0223】
実施例93〜94、96〜98、100〜102、104〜106
第2正孔輸送層および電子輸送層として表4記載の化合物を用いた以外は、実施例92と同様にして素子を作成し、評価した。結果を表4に示す。なおHT−3、HT−4は以下に示す化合物である。
【0224】
【化62】
【0225】
比較例17〜19、21〜23
第2正孔輸送層および電子輸送層として表4記載の化合物を用いた以外は、実施例32と同様にして素子を作成し、評価した。結果を表4に示す。
【0226】
【表1】
【0227】
【表2】
【0228】
【表3】
【0229】
【表4】
【国際調査報告】