(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014057892
(43)【国際公開日】20140417
【発行日】20160905
(54)【発明の名称】造水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20160808BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20160808BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20160808BHJP
   B01D 61/10 20060101ALI20160808BHJP
   B01D 61/20 20060101ALI20160808BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20160808BHJP
【FI】
   !C02F1/00 A
   !C02F1/44 G
   !B01D65/06
   !B01D61/10
   !B01D61/20
   !B01D61/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】2014502683
(21)【国際出願番号】JP2013077158
(22)【国際出願日】20131004
(31)【優先権主張番号】2012224724
(32)【優先日】20121010
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100129160
【弁理士】
【氏名又は名称】古館 久丹子
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅英
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
(72)【発明者】
【氏名】前田 智宏
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
(72)【発明者】
【氏名】楯岡 大嗣
【住所又は居所】滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株式会社滋賀事業場内
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は自然エネルギーを主動力とした水処理装置の劣化やファウリングを抑制しながら、安定に造水することを目的とする。本発明は工程Aと工程Bを含む水処理プロセスを用いた造水方法であって、前記工程Aは最も電力を消費する処理ユニットで構成され、前記水処理プロセスは自然エネルギー由来の電力を主な動力源にして優先的に前記工程Aを稼働し、前記工程Aの稼働に必要な電力が維持できない期間は前記工程Aの稼働を停止すると共に、少なくとも一部の期間において前記工程Bを稼働する造水方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程Aと工程Bを含む複数の工程から構成される水処理プロセスを用いて生産水を得る造水方法であって、
前記工程Aは、前記複数の工程のうち、最も電力を消費する処理ユニットで構成され、
前記水処理プロセスは自然エネルギー発電ユニットから得られる電力を主な動力源にし、
前記工程Aの稼働に必要な電力が維持できている期間は優先的に前記工程Aを稼働し、それ以外の期間は前記工程Aの稼働を停止すると共に、少なくとも一部の期間において前記工程Bを稼働することを特徴とする造水方法。
【請求項2】
前記工程Aが、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜及び逆浸透膜からなる群より選ばれる少なくとも1の膜を稼働させる工程であることを特徴とする請求項1に記載の造水方法。
【請求項3】
前記工程Bが、前記工程Aを構成する処理ユニットを洗浄する工程、前処理ユニットを稼働する工程、後処理ユニットを稼働する工程並びにユニットおよび配管における滞留汚染防止操作を行う工程からなる群より選ばれる少なくとも1の工程であることを特徴とする請求項1または2に記載の造水方法。
【請求項4】
前記工程Aを構成する処理ユニットを洗浄する工程が、前記工程Aの被処理水側へ通水することにより行われることを特徴とする請求項3に記載の造水方法。
【請求項5】
前記工程Aを構成する処理ユニットを洗浄する工程における少なくとも一部の期間において、殺菌剤、酸又はアルカリを添加することを特徴とする請求項4に記載の造水方法。
【請求項6】
前記自然エネルギー発電ユニットに供給される自然エネルギーが太陽光、風力及び波力からなる群より選ばれる少なくとも1を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の造水方法。
【請求項7】
前記水処理プロセス中にさらに電力貯蔵手段を備え、前記自然エネルギー発電ユニットに供給される自然エネルギーによる発電力の変動を抑えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の造水方法。
【請求項8】
前記電力貯蔵手段が、蓄電池、揚水及び電気分解からなる群より選ばれる少なくとも1の手段からなることを特徴とする請求項7に記載の造水方法。
【請求項9】
前記工程Aによって処理された処理水質が設定値以上に悪化した場合及び前記工程Aを構成する処理ユニットへの被処理水の供給圧力が設定値を下回った場合の少なくともいずれか一方の場合に、前記工程Aの稼働を停止することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の造水方法。
【請求項10】
前記工程Aを構成する処理ユニットが逆浸透膜であり、被処理水の浸透圧が3bar以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の造水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然エネルギーを利用して被処理水中から不純物を除去する水処理プロセスを用いて生産水を得る造水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年深刻化してきている水環境の悪化に伴い、これまで以上に水処理技術が重要になってきており、とくに分離膜利用技術が非常に幅広く適用されてきている。分離膜利用技術は、飲料水、工業用水、農業用水などを得るために河川水、湖沼水などの浄化に主に適用されてきた。
一方、水資源が極端に少なく、かつ、石油による熱資源が非常に豊富である中東地域では、蒸発法を中心に海水淡水化が進められてきた。
【0003】
しかし、中東以外の熱資源が豊富でない地域でも、海水淡水化のニーズが高まり、とくに1990年以降、所要動力が小さい半透膜(とくに逆浸透膜)を用いた淡水化プロセスが採用され、カリブ諸島や地中海エリアなどで多数のプラントが建設され実用運転されている。
【0004】
逆浸透膜設備では、圧力エネルギーを有する濃縮海水が排出されるため、エネルギー回収ユニットによって圧力回収を行うのが一般的であり、これによってさらに、所要動力が低減できる仕組みになっている。最近では、逆浸透法の技術進歩による信頼性の向上やコストダウンに加え、エネルギー回収技術の著しい向上によって中東においても多くの逆浸透法海水淡水化プラントが建設されるに至っている。
【0005】
しかしながら、逆浸透膜による海水淡水化が万能というわけではなく、中東のように高濃度海水の場合や、さらには海水温度が高い場合には、脱塩能力が低下し、処理水(淡水)の塩濃度が大きくなる傾向にある(非特許文献1)。そのため、高品質の処理水を得るために、脱塩水を再度低圧逆浸透膜で処理する、透過水二段法という方法が多く建設・稼働されるにいたっており、逆浸透膜性能の向上、プロセス・システムの改善による更なる所要エネルギー低減が求められている。
【0006】
そのための方法として、逆浸透膜を複数種類組み合わせる方法、逆浸透膜の濃縮水を再度逆浸透膜で処理する方法、ナノろ過膜で前処理して硬度成分を除去し、逆浸透膜の回収率を上げる方法、ナノろ過膜の処理水を再度ナノろ過膜で処理する方法等が提案され、実用化に至っているものも少なくない(特許文献1〜3、非特許文献2)。
【0007】
さらに、エネルギー消費量が低減したといっても、分離膜による水処理には電力が必要とされ、その源は、石油や石炭による火力や原子力といった、必ずしも環境に優しい技術とは言い難いエネルギーである。そのため、太陽エネルギー、風力、波力などの自然エネルギーによって産み出された電力を活用する試みがなされている(非特許文献3、特許文献4)。
【0008】
これら自然エネルギーの大きな課題の一つとして、電力の安定供給が挙げられる。すなわち、太陽エネルギーは夜間にはほとんど得られず、風力は凪には得られない。そのため、非特許文献3にもあるように大きな蓄電池を備え、発電量の変動を吸収する必要がある。しかしながら、高コストな蓄電池が淡水化コストに大きな影響を与え、実用化、普及にとって大きな障害となっている。
【0009】
現在は、水力、火力、原子力といった従来の発電技術による電力と自然エネルギーとを併用する技術が実用化されているが、電力の安定供給のためには発電量を制御しやすい水力や火力を中心とする必要があり、自然エネルギーのように状況によって発電量が変動する発電方法を主体とした技術の実用化・普及には至っていない。
【0010】
とくに逆浸透膜を海水淡水化に適用する場合、浸透圧以上の圧力がかからなければ淡水を得ることができないため、特定期間、すなわち、太陽光であれば、昼間の日射量が大きな時間しか淡水製造ができないでいた。さらに、浸透圧を上回るポンプ圧力が発電だけでは得られないときは、大容量の蓄電池を備えるか、従来の発電技術による電力を併用しなければ、逆浸透膜装置を停止せざるを得ない。しかも、その停機時間の間には、滞留水における微生物繁殖や膜の汚染の危険性がある。また、中東の夏季のように気温が水温を遙かに上回り、分離膜の保管許容温度を上回る場合は、空調により気温を下げるという高コストな方法を採るか、通水を続けて分離膜の温度上昇を抑制しなければ、分離膜が劣化してしまうという別の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】日本国特許第3551127号公報
【特許文献2】日本国特開平8−108048号公報
【特許文献3】日本国特開平8−206460号公報
【特許文献4】日本国特開2000−202441号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】谷口雅英ら、“Behavior of a reverse osmosis plant adopting a brine conversion two−stage process and its computer simulation”,J.Membrane Sci.,183,p249(2001).
【非特許文献2】S.Adham et al.,“Long Beach’s dual−stage NF beats single−stage SWRO”,D&WR 13(3),p18(2003).
【非特許文献3】A.Kunczynski,“Develeopment and optimization of 1000−5000 GPD solar power SWRO”,Proc.IDA World Congress on D&WR,BAH03−040(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
自然エネルギー主体の電力を逆浸透膜による海水淡水化に適用する場合、電力供給量に応じた逆浸透膜装置の最適運転(最適稼働)が可能なシステム、またその最適運転技術が求められており、種々検討されているものの、改善の余地があった。
【0014】
本発明の課題は、自然エネルギーを主動力とした水処理装置の劣化やファウリングを抑制しながら、安定に造水することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、複数の工程から構成される水処理プロセスを用いて生産水を造水する方法であって、自然エネルギー発電ユニットから得られる電力を主な動力源とし、前記複数の工程のうち稼働させる工程を適宜選択することにより上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明の要旨は以下の(1)〜(10)のとおりである。
(1) 工程Aと工程Bを含む複数の工程から構成される水処理プロセスを用いて生産水を得る造水方法であって、
前記工程Aは、前記複数の工程のうち、最も電力を消費する処理ユニットで構成され、
前記水処理プロセスは自然エネルギー発電ユニットから得られる電力を主な動力源にし、
前記工程Aの稼働に必要な電力が維持できている期間は優先的に前記工程Aを稼働し、それ以外の期間は前記工程Aの稼働を停止すると共に、少なくとも一部の期間において前記工程Bを稼働することを特徴とする造水方法。
(2) 前記工程Aが、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜及び逆浸透膜からなる群より選ばれる少なくとも1の膜を稼働させる工程であることを特徴とする前記(1)に記載の造水方法。
(3) 前記工程Bが、前記工程Aを構成する処理ユニットを洗浄する工程、前処理ユニットを稼働する工程、後処理ユニットを稼働する工程並びにユニットおよび配管における滞留汚染防止操作を行う工程からなる群より選ばれる少なくとも1の工程であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の造水方法。
(4) 前記工程Aを構成する処理ユニットを洗浄する工程が、前記工程Aの被処理水側へ通水することにより行われることを特徴とする前記(3)に記載の造水方法。
(5) 前記工程Aを構成する処理ユニットを洗浄する工程における少なくとも一部の期間において、殺菌剤、酸又はアルカリを添加することを特徴とする前記(4)に記載の造水方法。
(6) 前記自然エネルギー発電ユニットに供給される自然エネルギーが太陽光、風力及び波力からなる群より選ばれる少なくとも1を含むことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1に記載の造水方法。
(7) 前記水処理プロセス中にさらに電力貯蔵手段を備え、前記自然エネルギー発電ユニットに供給される自然エネルギーによる発電力の変動を抑えることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1に記載の造水方法。
(8) 前記電力貯蔵手段が、蓄電池、揚水及び電気分解からなる群より選ばれる少なくとも1の手段からなることを特徴とする前記(7)に記載の造水方法。
(9) 前記工程Aによって処理された処理水質が設定値以上に悪化した場合及び前記工程Aを構成する処理ユニットへの被処理水の供給圧力が設定値を下回った場合の少なくともいずれか一方の場合に、前記工程Aの稼働を停止することを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか1に記載の造水方法。
(10) 前記工程Aを構成する処理ユニットが逆浸透膜であり、被処理水の浸透圧が3bar以上であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか1に記載の造水方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、自然エネルギーから得られる電力を動力源としつつ、電力消費が大きい処理ユニットの汚染を防止し、環境負荷を抑えつつ水処理装置により安定に造水する方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の造水方法で使用する水処理装置の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこの図面に示す実施態様に限定されるものではない。
【0020】
本発明の造水方法を適用する水処理プロセスは、少なくとも工程Aと工程Bを含む複数の工程から構成される。工程Aは、複数の工程のうち、最も電力を消費する処理ユニットからなる。すなわち工程Aは、他の1又は2以上の工程Bよりも大きな消費電力を要する。
【0021】
本発明において、工程Aは、その消費電力が全工程の中で最大である処理ユニットから構成され、工程Bは、その消費電力が工程Aの最低所要電力未満である処理ユニットから構成されるものとする。なお工程Bは、工程Aを除く複数の工程から選ばれる1以上の工程であるが、工程Bが複数の工程からなるとき、その消費電力の合計は、工程Aの消費電力を超えないものとする。
【0022】
また、本発明では前記水処理プロセスは自然エネルギー発電ユニットから得られる電力を主な動力源にし、前記工程Aの稼働に必要な電力が維持できている期間は優先的に前記工程Aを稼働し、それ以外の期間は前記工程Aの稼働を停止すると共に、少なくとも一部の期間において前記工程Bを稼働することを特徴とする。
以下、図1を用いて本発明について説明する。また、工程A及び工程Bについての詳細は後述する。
【0023】
図1は、本発明の造水方法に適用可能な水処理装置の一例を示すフロー図である。
図1において、原水1は、原水タンク2に供給され、前処理ポンプ3で前処理ユニット4(工程Bの一例)に供給、処理され、前処理水として前処理水タンク5に貯留される。その後前処理水は、高圧ポンプ6によって昇圧され、逆浸透膜ユニット7(工程Aの一例)で処理され、その処理水(透過水)は透過水タンク8に貯留される。また逆浸透膜ユニット7から排出される濃縮水は、濃縮水バルブ13aから濃縮水ライン12aを通って取出される。
逆浸透膜ユニット7の透過水は、透過水タンク8から昇圧ポンプ9で後処理ユニット10である低圧逆浸透膜ユニット(工程Bの一例)に供給、処理され、その透過水が生産水として生産水タンク11に送られる。また後処理ユニット10である低圧逆浸透膜ユニットから排出された濃縮水は、濃縮水バルブ13bから濃縮水ライン12bを通って取出される。
【0024】
図1のフローにおいて必要な動力は、自然エネルギー発電ユニット15によって得られる電力が供給される。また短時間の電力供給量の変動を吸収するために小型の電力貯蔵ユニット14等の電力貯蔵手段を備えることができる。さらに電力安定供給制御ユニット16によって必要な電力を各ユニット(図1においては、前処理ポンプ3、高圧ポンプ6、昇圧ポンプ9)に選択的に供給するようになっている。
【0025】
本発明の適用に当たり、例えば、図1の水処理装置を稼働するために必要な電力として、前処理ポンプ3を含む前処理ユニット4の消費電力が10kW、高圧ポンプ6を含む逆浸透ユニット7の消費電力が60kW、昇圧ポンプ9を含む後処理ユニット10の消費電力が30kWであったとした場合を例として以下に詳述する。ここで、最も電力を消費する処理ユニットは逆浸透ユニット7であることから、高圧ポンプ6を含む逆浸透ユニット7で構成される水処理プロセスが本発明における工程Aとなる。また前処理ポンプ3を含む前処理ユニット4や昇圧ポンプ9を含む後処理ユニット10で構成される水処理プロセスは、工程Bの一例となる。
【0026】
自然エネルギー発電ユニット15から供給される電力を電力貯蔵ユニット14で平準化した平均供給電力が60kW以上である期間は、工程Aの稼働に必要な電力が維持できている期間であり、当該期間は優先的に高圧ポンプ6に電力を供給し、逆浸透膜ユニット7によって透過水を得る(工程A)。
また、平均供給電力が40kW以上60kW未満の場合は、工程Aの稼働を停止し、前処理ポンプ3と昇圧ポンプ9に電力を供給して、前処理ユニット4と後処理ユニット10を稼働する。平均供給電力が30kW以上40kW未満の場合は、昇圧ポンプ9に電力を供給して後処理ユニット10を稼働する。平均供給電力が10kW以上30kW未満の場合は、前処理ポンプ3に電力を供給して前処理ユニットを稼働する。
なお、平均供給電力が100kW以上である期間は、全てのポンプに電力を供給して、全ユニットを稼働させる。
【0027】
以上は、本発明を分かりやすく説明するための稼働方法の一例であるが、他に、上述した各ユニットの稼働には十分ではないが、余剰な電力がある場合には、工程Bの一例としてそれぞれのユニットを通水洗浄することも可能である。
またそれぞれのユニットの出力を落として、消費電力を抑えることも可能である。消費電力を抑えることにより、例えば、60kW未満の発電力であっても逆浸透膜ユニット7を稼働することが可能である。ただし、消費電力を抑えて水処理ユニットを稼働させた場合は透過水を得る速度が低下し、さらに工程を構成する水処理方法によっては、水量が出てこない(すなわち、最低所要電力がある)場合や、水質悪化を招く場合がある。
【0028】
例えば、被処理水のTDS(全溶解性固形分)が10000mg/l程度あると、その浸透圧が3bar程度になるが、逆浸透膜を用いて水処理を行う場合には浸透圧に対抗する圧力が必要なため、自然エネルギーによる発電量が小さく、ポンプによる加圧が浸透圧以下しか得られない場合には、逆浸透膜は稼働できない。これに対し、一般的な精密ろ過膜や限外ろ過膜の場合、その浸透圧以下の圧力でも稼働可能であり、工程Aを構成する処理ユニットに対して最低所要電力を設定することができる。すなわち、本発明の適用に当たって、このように最低所要電力があるプロセスを工程Aとして本発明を適用すると非常に効率的である。例えば工程Aを構成する処理ユニットを逆浸透膜プロセスにし、被処理水の浸透圧が3bar以上である被処理水を処理することができる電力量を閾値とすることが好ましい。
【0029】
海水を被処理水とした淡水化逆浸透膜を用いた水処理を行う場合、海水の浸透圧が25bar程度であるため、25barよりも大きな圧力をかけなければ、逆浸透膜を稼働することが出来ない。また、逆浸透膜を稼働できる場合でも、その稼働圧が十分高くない場合には、透過水の塩濃度が上昇するために処理後の水質が満足できない場合もあり、このような場合は、その工程の稼働を停止することが好ましい。
【0030】
したがって、工程Aによって処理された処理水質が設定値以上に悪化した場合及び工程Aを構成する処理ユニットへの被処理水の供給圧力が設定値を下回った場合の少なくともいずれか一方の場合には、工程Aの稼働を停止することが好ましい。
【0031】
上記のとおり、工程Aの処理水質の設定値は、目的とする生産水の水質にあわせて適宜決めることができる。また工程Aの処理ユニットへの被処理水の供給圧力の設定値は、被処理水の浸透圧および生産効率(透過流束、回収率等)に基づき、適宜設定することができる。
【0032】
さらに、上記の水処理方法の例の場合、前処理ユニット4の稼働に関しては、もっとも消費電力が少ないので、稼働率を最も大きくすることが出来るが、工程Aに供する前処理水タンク5の水位が十分に得られているときは、前処理ユニット4を稼働停止することも好ましい実施態様である。
【0033】
本発明の造水方法に適用可能な自然エネルギー発電ユニットに供給される自然エネルギー源としては、とくに制約はなく、太陽光、波力、風力などが挙げられるが、これらのうち少なくとも1種の自然エネルギーを含むことが好ましく、これらを組み合わせて適用してもよい。この中でも、時間によって発電力が周期的に変動する太陽光発電が本発明により適している。
【0034】
太陽光を利用する場合、太陽高度の高い時間帯、すなわち、正午を中心とした時間帯は、優先的に工程Aを稼働させることが出来、それ以外の時間帯、すなわち、朝夕には、工程Bとして、前処理ユニットや後処理ユニットを稼働させ、さらに日の出日の入り前後には、膜の洗浄を実施し、そして、夜間は、稼働を完全に停止するか小型の蓄電ユニット(電力貯蔵ユニット)の容量で可能な範囲で、各工程に被処理水、透過水、生産水などを流し、各ユニットや配管の滞留汚染を防止することが出来る。
【0035】
すなわち、工程Aの稼働に必要な電力が維持できない期間は工程Aの稼働を停止し、当該期間内の少なくとも一部の期間は工程Bを稼働する。そして、当該工程Bは、工程Aを構成する処理ユニットを洗浄する工程、前処理ユニットを稼働する工程、後処理ユニットを稼働する工程並びにユニットおよび配管における滞留汚染防止操作を行う工程からなる群より選ばれる少なくとも1の工程であることが好ましい。
【0036】
工程Aを構成する処理ユニットを洗浄する工程においては、ユニットの汚れ程度に応じて、殺菌剤、酸又はアルカリを添加適用すると、より効果的である。
【0037】
本発明における電力貯蔵ユニットとして適用可能な電力貯蔵手段に特に制約はなく、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウム電池などの蓄電池;キャパシタ;水を高いところに送水貯留する揚水;水素を製造する電気分解などを適用することが可能である。中でも、蓄電池、揚水及び電気分解からなる群より選ばれる少なくとも1の手段により電力を貯蔵することが好ましい。
【0038】
水処理プロセス中に上記のような電力貯蔵手段を備えると、太陽の動きで発電力が周期的に変動するような太陽光などの自然エネルギーをエネルギー源とする場合に、発電力の変動を抑えることができることから好ましい。
より具体的には、日毎にそれぞれの工程を適切に稼働するためのプログラムを効率的に作ることができるため好ましい。
なお、このプログラミングに関しては、特許文献4に例示されるように、気象情報を取り込んで、発電量を予測すれば、さらに精度の高い稼働管理をすることが可能となる。
【0039】
次に、各工程について説明する。
本発明の造水方法では、工程Aを構成する処理ユニットとしては、最も電力を消費すると共に水処理装置の中心になるプロセスユニットであれば、特に制約はなく、電気透析、蒸発法、分離膜などを挙げることが出来る。中でも、省エネルギーに優れ、フレキシブルな稼働が可能であることから、分離膜ユニットの適用が好ましい。
【0040】
分離膜ユニットとしても、特に制限はなく、様々な分離ユニットを用いることが出来る。中でも、マイクロメートル以下の高精度の固液分離が可能な糸巻きフィルター、不織布フィルター、精密ろ過膜、限外ろ過膜や溶解物質の分離が可能なナノろ過膜、逆浸透膜が好ましく、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜及び逆浸透膜からなる群より選ばれる少なくとも1の膜を稼働させることがより好ましい。
【0041】
これら分離膜ユニットの最低所要電力は、その中心となる分離膜、高圧ポンプ、付随するバルブおよび計測器等の分離膜ユニットを稼働させるために必要な電力の合計とする。
【0042】
またこれらの分離膜は、被処理水によっては汚染が進行して膜の性能低下を引き起こすことがあるため、適宜被処理水に対して前処理を実施することで、供給に適した水質にする。
【0043】
前処理ユニットとしては、工程Aに悪影響を及ぼす物質を除去したり、工程Aの除去性能を補助するための分離精度の低い処理を行うプロセスが挙げられる。
工程Aに悪影響を及ぼす物質の除去としては、吸着、凝集沈殿、加圧浮上などの物理化学的な処理や好気性や嫌気性の生物処理が代表的な例として挙げられる。
分離精度の低い処理としては、砂ろ過、糸巻フィルター、ろ布、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、工程Aよりも除去性能が低い逆浸透膜などが挙げられる。ここで、前処理工程に適用される精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜および逆浸透膜は、上述のとおり、その消費電力が、工程Aを構成する処理ユニットの最低所要電力より小さいものとする。
【0044】
一方、後処理として、前処理や工程Aで十分に除去できなかった水質を除去するために、再度、工程Aと同様の処理を行ったり、吸着剤、UV殺菌などの処理を行うことが出来る。ただし、後処理工程に適用される処理ユニットは、前処理工程と同様に、その消費電力が、工程Aを構成する処理ユニットの最低所要電力より小さいものとする。
【0045】
これらの処理ユニットは、工程Aを構成する処理ユニットを含めて、被処理水によって汚染されていくので、性能を回復させるために適宜、オンラインもしくはオフラインで洗浄を行うのが一般的である。
【0046】
オンラインの場合は、洗浄薬品を被処理水側に注入する。例としては、先述したように、ユニットの汚れの程度に応じて、殺菌剤、酸又はアルカリを添加適用する。より具体的には、次亜塩素酸、クロラミン、二酸化塩素、過マンガン酸カリウム、次亜硫酸ナトリウム、2,2−ジブロモ―3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)などの殺菌剤や硫酸、塩酸、クエン酸などの一般的な酸や、水酸化ナトリウムなどのアルカリが挙げられる。これらを取水やユニットへの供給水などに連続又は間欠注入することが出来る。
【0047】
オフラインの場合は、被処理水や処理水などをそのままの状態、もしくは、加温したり上述の洗浄薬品を添加して洗浄効果を上げた状態で汚染部分に供給し、フラッシングや浸漬をすることが一般的である。ここでいう汚染部分とは、被処理水側、処理水側のいずれでも構わないが、汚染しやすい被処理水側に適用することが好ましい。
【0048】
以上詳述したように、本発明において、水処理工程を工程Aとし、前処理工程、後処理工程、工程Aを構成する処理ユニットを洗浄処理する工程並びにユニットおよび配管における滞留汚染防止操作を行う工程からなる群より選ばれる少なくとも1の工程を、本発明における工程Bとすることが好ましい。また、工程Aを構成する処理ユニットを洗浄処理する工程では、工程Aの被処理水側へ通水することにより洗浄処理をすることがより好ましい。
本発明は、これら工程A及び工程Bを実施するにあたり、自然エネルギー発電ユニットから得られる電力が十分にあるときは工程Aを稼働し、電力が工程Aを稼働するのに不十分な状況においては工程Bを稼働させることができ、本発明の目的である安定に造水することが出来るようになる。
【0049】
また、本発明を適用可能な被処理水(原水)は特に制限されるものではなく、河川水、海水、下水処理水、雨水、工業用水、工業廃水など、様々な被処理水を用いることができるが、特に、浸透圧を有する海水やかん水に対しての適用が好適である。
【0050】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2012年10月10日出願の日本特許出願(特願2012−224724)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、発電量が不安定な自然エネルギーから得られた電力を動力源としつつ、効率的に各部ユニットを稼働することによって、分離膜ユニットの汚染を防止し、環境負荷を抑えつつ水処理装置を安定に稼働する造水方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1:原水
2:原水タンク
3:前処理ポンプ
4:前処理ユニット
5:前処理水タンク
6:高圧ポンプ
7:逆浸透膜ユニット
8:透過水タンク
9:昇圧ポンプ
10:後処理ユニット
11:生産水タンク
12a:濃縮水ライン
12b:濃縮水ライン
13a:濃縮水バルブ
13b:濃縮水バルブ
14:電力貯蔵ユニット
15:自然エネルギー発電ユニット
16:電力安定供給制御ユニット
【図1】
【国際調査報告】