(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014057910
(43)【国際公開日】20140417
【発行日】20160905
(54)【発明の名称】電動車両のモータ制御装置および電動車両のモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20160808BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20160808BHJP
   G05D 19/02 20060101ALI20160808BHJP
【FI】
   !B60L15/20 J
   !H02P5/00 F
   !H02P5/00 P
   !G05D19/02 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
【出願番号】2014540840
(21)【国際出願番号】JP2013077256
(22)【国際出願日】20131007
(11)【特許番号】5862792
(45)【特許公報発行日】20160216
(31)【優先権主張番号】2012224178
(32)【優先日】20121009
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100148231
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100193116
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】澤田 彰
【住所又は居所】神奈川県厚木市森の里青山1−1 日産自動車株式会社 知的財産部内
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健
【住所又は居所】神奈川県厚木市森の里青山1−1 日産自動車株式会社 知的財産部内
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝
【住所又は居所】神奈川県厚木市森の里青山1−1 日産自動車株式会社 知的財産部内
(72)【発明者】
【氏名】勝又 雄史
【住所又は居所】神奈川県厚木市森の里青山1−1 日産自動車株式会社 知的財産部内
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔
【住所又は居所】神奈川県厚木市森の里青山1−1 日産自動車株式会社 知的財産部内
(72)【発明者】
【氏名】小松 弘征
【住所又は居所】神奈川県厚木市森の里青山1−1 日産自動車株式会社 知的財産部内
【テーマコード(参考)】
5H125
5H501
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA02
5H125BB02
5H125CA01
5H125DD07
5H125EE02
5H125EE07
5H125EE08
5H125EE23
5H125EE42
5H125EE44
5H125EE52
5H125EE62
5H501AA20
5H501BB05
5H501CC04
5H501DD01
5H501GG03
5H501GG05
5H501HB07
5H501HB08
5H501HB16
5H501JJ04
5H501JJ18
5H501LL07
5H501LL22
5H501LL35
(57)【要約】
車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両のモータ制御装置は、車輪を回転ロックしたパークロック状態の解除の有無を判断し、モータトルク指令値に対して、車両振動を抑制するための制振制御を行い、制振制御が行われたモータトルク指令値に従って、モータトルクを制御する。制振制御では、少なくともフィードバック制御を行い、パークロック状態の解除時には、パークロック状態の解除時以外の場合に比べて、フィードバック制御で用いるフィードバックゲインを大きくする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両のモータ制御装置において、
前記モータトルク指令値に対して、車両振動を抑制するための制振制御を行う制振制御手段と、
前記制振制御が行われたモータトルク指令値に従って、モータトルクを制御するモータトルク制御手段と、
車輪を回転ロックしたパークロック状態の解除の有無を判断するパークロック解除判断手段と、
を備え、
前記制振制御手段は、少なくともフィードバック制御を行うことによって前記制振制御を行うものであって、前記パークロック状態の解除時には、前記パークロック状態の解除時以外の場合に比べて、前記フィードバック制御で用いるフィードバックゲインを大きくする、
電動車両のモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記制振制御手段は、前記モータトルク指令値を入力し、車両の駆動力伝達系の振動を抑制するためのフィードフォワード演算を行うことにより第1のトルク目標値を算出する第1のトルク目標値算出手段と、モータ回転数の推定値およびモータ回転数の検出値の偏差に基づいて、車両の駆動力伝達系の振動を抑制するためのフィードバック演算を行うことにより第2のトルク目標値を算出する第2のトルク目標値算出手段と、前記第1のトルク目標値および前記第2のトルク目標値を加算することによって、制振制御後のモータトルク指令値を算出する加算手段とを備える電動車両のモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記制振制御手段は、前記パークロック状態の解除時には、車輪ロック状態における車両モデルより算出したフィードバックゲインとモータ回転数とを用いたフィードバック制御を行う、
電動車両のモータ制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
路面の勾配を検出する勾配検出手段をさらに備え、
前記制振制御手段は、前記パークロック状態の解除時には、路面の勾配に応じて、前記フィードバックゲインを変更する、
電動車両のモータ制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記パークロック解除判断手段は、シフト位置がPレンジからPレンジ以外の他のレンジに移行したことを検出すると、前記パークロック状態が解除されたと判断する、
電動車両のモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記パークロック解除判断手段は、シフト位置がPレンジであり、かつ、ブレーキがオフからオンに変化したことを検出すると、前記パークロック状態が解除されたと判断する、
電動車両のモータ制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記パークロック解除判断手段は、モータ回転数が所定回転数以下または車速が所定車速以下であって、かつ、ブレーキがオフからオンに変化したことを検出すると、前記パークロック状態が解除されたと判断する、
電動車両のモータ制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記制振制御手段は、前記パークロック状態の解除を検知してから所定時間が経過すると、前記パークロック状態の解除時に用いるフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う、
電動車両のモータ制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記制振制御手段は、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインを用いた制振制御を行っている状態で車速が所定の閾値を超えると、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う、
電動車両のモータ制御装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記制振制御手段は、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインを用いた制振制御を行っている状態でブレーキがオンからオフに変化すると、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う、
電動車両のモータ制御装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記制振制御手段は、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインを用いた制振制御を行っている状態で、前記パークロック状態の解除時に生じる振動を抑制するためのモータトルク指令値が0であって、かつ、モータ回転数が所定回転数以下の状態が所定時間経過すると、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う、
電動車両のモータ制御装置。
【請求項12】
車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両のモータ制御方法において、
車輪を回転ロックしたパークロック状態の解除の有無を判断し、
少なくともフィードバック制御を行うことによって、前記モータトルク指令値に対して、車両振動を抑制するための制振制御を行い、
前記制振制御が行われたモータトルク指令値に従って、モータトルクを制御し、
前記制振制御では、前記パークロック状態の解除時には、前記パークロック状態の解除時以外の場合に比べて、前記フィードバック制御で用いるフィードバックゲインを大きくする、
電動車両のモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両のモータ制御装置および電動車両のモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2003−9566Aに記載の車両の制振制御装置では、以下の方法により、モータを制御する際のトルク目標値を算出している。まず、アクセル開度や車速などから算出される駆動モータの駆動トルク要求値に対して、車両のトルク伝達系の固有振動周波数成分を除去又は低減するフィルタリング処理を行って駆動トルク目標値を算出する。続いて、駆動トルク目標値からモータ特性モデルを考慮してモータ回転速度推定値を算出し、算出したモータ回転速度推定値と実モータ回転速度との偏差を、駆動力伝達系の固有振動周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタとモータ特性モデルの逆系で構成されたフィルタに通すことによって、トルク指令値を算出する。そして、算出したトルク指令値を、駆動トルク目標値に対して加えることによって、最終駆動トルク目標値を算出している。これにより、道路勾配やトルク伝達系の外乱やモータ特性モデル誤差などによる影響を除去し、かつ、車両のトルク伝達系の固有振動周波数成分を除去または低減することにより、制振効果と急峻なトルクの立ち上がりを両立することができる。
【0003】
ここで、登坂路においてパーキングレンジ(Pレンジ)に設定し、フットブレーキまたはパーキングブレーキをかけずに停車した場合を想定する。この場合、Pレンジに設定したことで、車輪を回転ロックするパークロック機構が作動し、ブレーキを離しても停車状態を維持することができる。ただし、この際、車輪は固定されていないため、ドライブシャフトは勾配に応じて所定量ねじれて停車することになる。この様な停車状況から車両を発進しようとする場合、ブレーキを踏んでPレンジを解除する必要がある。この時、Pレンジを解除することによりパークロック機構が解除され、ドライブシャフトに蓄積されていたねじりが開放されることで、ガクガク振動を引き起こすことになり、乗員は不意のショックを感じ、不安や不快感を感じる。以降、この振動・ショックのことを、パークロック解除ショックと表現する。
【0004】
JP2003−9566Aに記載の車両の制振制御装置では、上記特徴の構成により、モータ回転数に対してドライブシャフト等の駆動系の振動成分をフィードバック処理により抑制することができるため、パークロック解除ショックも低減することができる。
【発明の概要】
【0005】
ところで、JP2003−9566Aに記載の制振制御装置では、フィードバックループの中にある制御系の持つ遅れ要素を加味するため、フィードバックループの安定余裕を考慮したフィードバックゲインを用いる必要がある。通常の走行時のフィードバックゲインは、車輪が非ロック状態、すなわち、通常の走行状態の車両モデルより算出するため、パークロック解除時とは安定性が異なる。
【0006】
また、制振制御のフィードバック補償器は、50Hz以上の比較的高周波のゲインが0dB付近またはそれ以上まで高くなるという特性があり、回転角度や速度検出によるノイズにより、高周波のトルク成分が出力されてしまうことがある。ここで、25〜150Hz帯の振動成分は、モータユニットまたはドライブシャフト等からマウント等を介してボディ・シャシーに伝わると、こもり音が発生することがある。このため、フィードバックゲインを上げると、高周波ゲインも高くなり、こもり音が顕著に現れることになる。
【0007】
パークロック解除時に通常の走行時の制振制御で用いるフィードバックゲインと同じフィードバックゲインを用いた場合、トルクのオーバーシュートが発生して収束が遅くなるため、パークロック解除ショックが発生する。この結果、ギアの変動がバックラッシュ区間を跨ぐため、歯当たり音が発生し、ドライバに不安や不快感を与える可能性がある。
【0008】
本発明は、パークロック解除時に発生する振動を抑制することを目的とする。
【0009】
一実施形態における電動車両のモータ制御装置は、モータトルク指令値に対して車両振動を抑制するための制振制御を行う際に、パークロック状態の解除時には、パークロック状態の解除時以外の場合に比べて、制振制御のフィードバック制御で用いるフィードバックゲインを大きくする。
【0010】
本発明の実施形態については、添付された図面とともに以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1の実施形態における電動車両のモータ制御装置を備えた電気自動車の主要構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、電動モータコントローラによって行われるモータ電流制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3は、アクセル開度−トルクテーブルの一例を示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態における制振制御演算処理の制御ブロック図である。
【図5】図5は、車輪ロック状態における車両の駆動力伝達系をモデル化した図である。
【図6】図6は、第1の実施形態における制振制御演算処理のフローチャートである。
【図7】図7は、路面の勾配θkと、パークロック解除時のF/Bゲインとの関係を示すマップの一例である。
【図8】図8は、第2の実施形態におけるパークロック解除時の制振制御演算処理の制御ブロック図である。
【図9】図9は、第2の実施形態における制振制御演算処理のフローチャートである。
【図10】図10は、第1および第2の実施形態における電動車両のモータ制御装置による制御結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
−第1の実施形態−
図1は、第1の実施形態における電動車両のモータ制御装置を備えた電気自動車の主要構成を示すブロック図である。本発明の電動車両のモータ制御装置は、車両の駆動源の一部または全部として電動モータを備え、電動モータの駆動力により走行可能な電動車両に適用可能であり、電気自動車だけでなく、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車に適用可能である。
【0013】
電動モータコントローラ2は、車速V、アクセル開度APO、電動モータ(三相交流モータ)4の回転子位相θre、電動モータ4の電流iu、iv、iw等の車両状態を示す信号をデジタル信号として入力し、入力された信号に基づいて、電動モータ4を制御するためのPWM信号を生成する。また、生成したPWM信号に応じてインバータ3の駆動信号を生成する。
【0014】
インバータ3は、例えば、各相ごとに2個のスイッチング素子(例えば、IGBTやMOS−FET等のパワー半導体素子)を備え、駆動信号に応じてスイッチング素子をオン/オフすることにより、バッテリ1から供給される直流の電流を交流に変換し、電動モータ4に所望の電流を流す。
【0015】
電動モータ4は、インバータ3から供給される交流電流により駆動力を発生し、減速機5およびドライブシャフト8を介して、左右の駆動輪9a、9bに駆動力を伝達する。また、車両の走行時に駆動輪9a、9bに連れ回されて回転するときに、回生駆動力を発生させることで、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。この場合、インバータ3は、電動モータ4の回生運転時に発生する交流電流を直流電流に変換して、バッテリ1に供給する。
【0016】
電流センサ7は、電動モータ4に流れる3相交流電流iu、iv、iwを検出する。ただし、3相交流電流iu、iv、iwの和は0であるため、任意の2相の電流を検出して、残りの1相の電流は演算により求めてもよい。
【0017】
回転センサ6は、例えば、レゾルバやエンコーダであり、電動モータ4の回転子位相θreを検出する。
【0018】
勾配センサ10は、路面の勾配を検出する。
【0019】
図2は、電動モータコントローラ2によって行われるモータ電流制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【0020】
ステップS201では、車両状態を示す信号を入力する。ここでは、車速V(km/h)、アクセル開度APO(%)、電動モータ4の回転子位相θre(rad)、電動モータ4の回転数Nm(rpm)、電動モータ4に流れる三相交流電流iu、iv、iw、バッテリ1とインバータ3間の直流電圧値Vdc(V)、後述するパークロック関連の信号を入力する。
【0021】
電動モータ4の回転子位相θre(rad)は、回転センサ6から取得する。回転子角速度ωre(rad/s)は、回転子位相θreを微分することにより求める。
【0022】
電動モータ4の回転数Nm(rpm)は、回転子角速度ωre(電気角)を電動モータ4の極対数で除算して、電動モータ4の機械的な角速度である回転子機械角速度ωm(rad/s)を求め、求めた回転子機械角速度ωmに60/(2π)を乗算することによって求める。
【0023】
車速V(km/h)は、図示しない車速センサや、図示しないブレーキコントローラ等の他のコントローラより通信にて取得する。または、回転子機械角速度ωmにタイヤ動半径Rを乗算し、ファイナルギアのギア比で除算することにより車速v(m/s)を求め、3600/1000を乗算することにより単位変換して、車速V(km/h)を求める。
【0024】
アクセル開度APO(%)は、図示しないアクセル開度センサから取得するか、図示しない車両コントローラ等の他のコントローラから通信にて取得する。
【0025】
電動モータ4に流れる電流iu、iv、iw(A)は、電流センサ7から取得する。
【0026】
直流電圧値Vdc(V)は、バッテリ1とインバータ3間の直流電源ラインに設けられた電圧センサ(不図示)、または、図示しないバッテリコントローラから送信される電源電圧値から求める。
【0027】
ステップS202では、基本目標トルク指令値である駆動トルク目標値Tm*を設定する。具体的には、ステップS201で入力されたアクセル開度APO、車速V、および変速機のシフト位置に基づいて、図3に示すアクセル開度−トルクテーブルを参照することにより、駆動トルク目標値Tm*を設定する。なお、シフト位置がNまたはPの場合、駆動トルク目標値Tm*は0Nmとする。
【0028】
ステップS203では、制振制御演算処理を行う。より具体的には、ステップS202で設定した駆動トルク目標値Tm*、および、モータ回転数ωmに基づいて、駆動軸トルクの応答を犠牲にすることなく、駆動力伝達系の振動(ドライブシャフトのねじり振動等)を抑制する最終トルク目標値Tmfin*を算出する。
【0029】
本実施形態では、パークロック解除時には、車輪ロック状態における車両モデルより算出した制御定数を用いた制振制御を行い、パークロック解除時以外の時には、車輪ロック状態ではない車両モデルより算出した制御定数を用いた制振制御を行う。また、パークロック解除時の制振制御のフィードバックゲイン(F/Bゲイン)は、パークロック解除時以外の時の制振制御のフィードバックゲインよりも大きい値に設定する。ステップS203で行う制振制御演算処理の詳細については後述する。
【0030】
ステップS204では、ステップS203で算出した最終トルク目標値Tmfin*、電動モータ回転数ωmおよび直流電圧値Vdcに基づいて、d軸電流目標値id*、q軸電流目標値iq*を求める。
【0031】
ステップS205では、d軸電流idおよびq軸電流iqをそれぞれ、ステップS204で求めたd軸電流目標値id*およびq軸電流目標値iq*と一致させるための電流制御を行う。このため、まず初めに、ステップS201で入力された三相交流電流値iu、iv、iwと、電動モータ4の回転子位相θreとに基づいて、d軸電流idおよびq軸電流iqを求める。続いて、d軸、q軸電流目標値id*、iq*と、d軸、q軸電流id、iqとの偏差から、d軸、q軸電圧指令値vd、vqを算出する。
【0032】
次に、d軸、q軸電圧指令値vd、vqと、電動モータ回転数ωmから、三相交流電圧指令値vu、vv、vwを求める。そして、求めた三相交流電圧指令値vu、vv、vwと直流電圧値Vdcから、PWM信号tu(%)、tv(%)、tw(%)を求める。このようにして求めたPWM信号tu、tv、twにより、インバータ3のスイッチング素子を開閉することによって、電動モータ4を駆動トルク目標値Tm*で指示された所望のトルクで駆動することができる。
【0033】
図2のステップS203で行う制振制御演算処理の詳細について説明する。上述したように、本実施形態では、パークロック解除時には、車輪ロック状態における車両モデルより算出した制御定数を用いた制振制御を行い、パークロック解除時以外の時には、車輪ロック状態ではない車両モデルより算出した制御定数を用いた制振制御を行う。パークロック解除時以外の通常の走行時における制振制御の方法は、JP2003−9566Aに記載の制振制御方法と同じである。
【0034】
図4は、制振制御演算処理の制御ブロック図である。制振制御演算処理は、F/F補償器41、F/B補償器42、および、加算器43によって行われる。
【0035】
F/F補償器41は、Gm(s)/Gp(s)なる伝達特性を有する制御ブロック401を備える。Gp(s)は、車両へのトルク入力とモータ回転数との間の伝達特性を示す車両モデルであり、Gm(s)は、車両へのトルク入力とモータ回転数の応答目標との間の伝達特性を示す理想モデルである。F/F補償器41は、車両のトルク伝達系の固有振動周波数成分を低減するフィルタであり、駆動トルク目標値Tm*を入力して、第1のトルク目標値Tm1*を出力する。
【0036】
F/B補償器42は、車両モデルGp(s)を表す制御ブロック402と、H(s)/Gp(s)なる伝達特性を有する制御ブロック403と、減算器404とを有する。制御ブロック402は、最終トルク目標値Tmfin*を入力して、モータ回転数推定値を出力する。減算器404は、制御ブロック402で算出されるモータ回転数推定値と、モータ回転数検出値ωmとの偏差を求める。モータ回転数推定値とモータ回転数検出値ωmとの偏差は制御ブロック403に入力され、制御ブロック403の出力に対してF/Bゲインkが乗算されて、第2のトルク目標値Tm2*が算出される。H(s)は、中心周波数が車両の駆動系のねじり共振周波数と一致しているバンドパスフィルタの特性を有する。F/B補償器42は、モータ回転数の推定値とモータ回転数の検出値の偏差に基づいた外乱抑制フィルタとして機能する。
【0037】
加算器43は、F/F補償器41から出力される第1のトルク目標値Tm1*と、F/B補償器42から出力される第2のトルク目標値Tm2*とを加算して、最終トルク目標値Tmfin*を求める。
【0038】
図4に示す制御ブロック図による制振制御演算処理は、パークロック解除時以外の通常の走行時であっても、パークロック解除時であっても共通であり、その詳細は、JP2003−9566号Aに記載されている。本実施形態では、パークロック解除時以外の通常の走行時における制振制御では、車両モデルをGp(s)として算出した制御定数を用い、パークロック解除時の制振制御では、車輪ロック状態における車両モデルGpl(s)として算出した制御定数を用いる。車両モデルGp(s)の算出方法は、JP2003−9566Aに詳しく記載されているため、ここでは詳しい算出方法の説明は省略する。
【0039】
駆動トルク目標値Tm*からモータ回転数ωmまでの伝達特性Gpl(s)について説明する。図5は、車輪ロック状態における車両の駆動力伝達系をモデル化した図であり、車両の運動方程式は、次式(1)〜(3)で表される。
【数1】
【数2】
【数3】
【0040】
ここで、式(1)〜(3)における各パラメータは、下記の通りである。
Jm:モータイナーシャ
Kd:ドライブシャフトのねじり剛性
N:オーバーオールギヤ比
ωm:モータ角速度
Tm:モータトルク
Td:駆動軸トルク
θ:ドライブシャフトのねじり角
【0041】
式(1)〜(3)をラプラス変換して駆動トルク目標値Tm*からモータ角速度ωmまでの伝達特性を求めると、式(4)、(5)となる。
【数4】
【数5】
【0042】
ただし、式(5)中のωplは、次式(6)で表される。
【数6】
【0043】
図4に示すF/B補償器42のF/Bゲインkは、0〜1の間で設定可能であり、k=1とすることで、F/B補償器42が理想状態(ζ=1)となる。F/Bゲインkは、フィードバックループの中にある制御系の持つ遅れ要素を加味するため、制御演算時間、モータ応答遅れ、センサ信号処理時間の影響を補償することができるように設定する。パークロック解除時には、パークロック解除時の車両モデルGpl(s)にてF/B補償器42の閉ループの安定性を評価し、通常の走行時の制振制御で用いるF/Bゲインよりも大きい値をF/Bゲインkとして設定する。
【0044】
図6は、第1の実施形態における制振制御演算処理のフローチャートである。ステップS701から始まる処理は、電動モータコントローラ2によって行われる。
【0045】
ステップS701では、入力処理として、パークロック解除に関連した信号を入力する。具体的には、シフト位置信号、シフトノブのパークロック解除SW信号、ブレーキSW信号を、ハードウェア信号として検出するか、シフトコントローラ等の他のコントローラより通信にて取得する。また、勾配センサ10により検出された路面の勾配θkも入力する。路面の勾配θkは、登坂路の勾配が正の値として、降坂路の勾配が負の値として検出される。なお、前後Gセンサ(不図示)によって検出される車両の前後加速度と車速とに基づいて、路面の勾配を推定するようにしてもよい。
【0046】
ステップS702では、パークロック解除時の制振制御のF/Bゲインを使うか否かを判断するために、ブレーキSW信号に基づいて、ブレーキがオンであるか否かを判定する。ブレーキがオンであると判定するとステップS703に進み、ブレーキがオンではないと判定すると、通常の制振制御中であると判断してステップS708に進む。
【0047】
ステップS703では、パークロック解除時の制振制御のF/Bゲインを増加するか否かを判断するために、タイマ1が0より大きいか否かを判定する。タイマ1が0より大きいと判定するとステップS704に進み、0であると判定すると、通常の制振制御中であると判断してステップS708に進む。なお、タイマ1の値は、電動モータコントローラ2の電源投入時に0に初期化する。
【0048】
ステップS704では、第2のトルク目標値Tm2*が0であり、かつ、モータ回転数Nmが所定値N0より小さいか否かを判定する。第2のトルク目標値Tm2*が0であり、かつ、モータ回転数Nmが所定値N0より小さければ、パークロック解除時の制振制御中ではあるが、パークロック解除ショックを抑制できている可能性があるため、ステップS705に進む。それ以外の場合には、パークロック解除ショックを抑制中であり、F/Bゲインkの増加を継続して行うためにステップS711に進む。なお、所定値N0は、電動モータ4がほぼ停止できたことを検知できる値として、予め適合した値を用いる。
【0049】
なお、ステップS704の判定において、モータ回転数Nmが所定値N0より小さいか否かを判定する代わりに、車速が所定車速より低いか否かを判定してもよい。
【0050】
ステップS705では、第2のトルク目標値Tm2*が0であり、かつ、モータ回転数Nmが所定値N0より小さい状態を継続している時間を計測するためのタイマ2をカウントアップする。なお、タイマ2の値は、電動モータコントローラ2の電源投入時に0に初期化する。
【0051】
ステップS706では、タイマ2の値が所定値T2より大きいか否かを判定する。タイマ2の値が所定値T2より大きければ、パークロック解除ショックを抑制できたと判断して、ステップS707に進む。一方、タイマ2の値が所定値T2以下であると判定すると、依然としてパークロック解除ショック抑制中として、ステップS712に進む。
【0052】
ステップS707では、タイマ1およびタイマ2を0に初期化する。
【0053】
ステップS708では、パークロック解除ショックを抑制する必要がない状態であるか、または、パークロック解除時の制振制御開始から所定期間T1経過し、パークロック解除ショックを抑制できたとして、パークロック解除時の制振制御中であることを示すタイマ2の値を0に初期化する。
【0054】
ステップS709では、パークロック解除に移行するか否かを判定する。パークロック解除に移行と判定すると、パークロック解除時の制振制御のF/BゲインkをセットするためにステップS710に進み、パークロック解除移行ではないと判定すると、通常走行時の制振制御のF/BゲインkをセットするためにステップS714に進む。
【0055】
ここで、パークロック解除移行判断の方法としては、下記の(M1)〜(M4)の方法がある。
(M1)変速機のシフト位置がPレンジから他のレンジに変化した場合、すなわち、今回のシフト位置がPレンジ以外で、前回のシフト位置がPレンジの場合、パークロック解除の移行ありと判断する。
(M2)シフトノブのパークロック解除SWがONされた場合、パークロック解除の移行ありと判断する。
(M3)シフト位置がPレンジで、ブレーキSW信号がOFF→ON、すなわち、今回のブレーキSW信号がONで、前回値がOFFの場合、パークロック解除の移行ありと判断する。
(M4)モータ回転数Nmが所定回転数以下(または、車速が所定車速以下)、かつ、ブレーキSW信号がOFF→ON、すなわち、今回のブレーキSW信号がONで、前回値がOFFの場合、パークロック解除の移行ありと判断する。
【0056】
ステップS710では、パークロック解除時の制振制御を開始するため、制振制御中の状態および制御開始からの経過時間を表すタイマ1を所定値T1にセットする。これにより、ステップS703の判定でタイマ1が0になるか、または、ステップS704〜S707で判断するショックが抑制されるまで、パークロック解除時の制振制御を行うことができるようになる。
【0057】
ステップS711では、ステップS704の判定を否定して、パークロック解除時の制振制御を継続する必要があると判断されたため、トルク条件によるタイマ処理(ステップS704〜S707)で使用するタイマ2を0とする。
【0058】
ステップS712では、後述するステップS715の制振制御処理で必要となる、パークロック解除時の制振制御のF/Bゲインkをセットする。パークロック解除時の制振制御のF/Bゲインkは、パークロック解除時の車両モデルGpl(s)を用いて算出した値を用いる。通常走行時のF/Bゲインkは、車輪を考慮した車両モデルGp(s)を用いて算出しているが、通常走行時は、車輪特性が最悪条件にて安定性を設定する必要があり、安定余裕が大きいフィードバックゲインを設定する必要がある。しかし、パークロック解除時は、車輪が常に停止状態のため、特性が変化しやすい車輪を考慮する必要がなく、通常走行時よりも大きいフィードバックゲインを設定することができる。
【0059】
具体的には、図7に示すように、路面の勾配θkに応じて予め実験等により最適なF/Bゲインを設定したマップを用意しておき、ステップS701で入力した路面勾配θkに基づいて、図7に示すマップを参照することにより、F/Bゲインkをセットする。図7に示すマップでは、路面勾配θkがθk1<θk<θk2(θk1<0、θk2>0)の範囲内にある場合には、通常走行時の制振制御のF/Bゲインよりも大きいF/Bゲインk1とする。また、路面勾配θkがθk2以上の範囲では、F/Bゲインkをk1以上の値とし、路面勾配θkが大きくなるほど(登坂度合いが大きくなるほど)、F/Bゲインkが大きくなるようにしている。また、路面勾配θkがθk1以下の範囲では、F/Bゲインkをk1以上の値とし、路面勾配θkが小さくなるほど(降坂度合いが大きくなるほど)、F/Bゲインkが大きくなるようにしている。これにより、急勾配(登坂、降坂)の路面では、パークロック解除時の制振制御のF/Bゲインkを勾配に応じて増加させることができるので、パークロック解除ショックを効果的に抑制することができる。
【0060】
ステップS713では、パークロック解除時の制振制御のF/Bゲインkから通常の走行時の制振制御のF/Bゲインkに戻す時間を調整するために、タイマ1をカウントダウンする。
【0061】
ステップS714では、通常の走行時の制振制御のF/Bゲインkをセットする。
【0062】
ステップS715では、ステップS712またはステップS714でセットされたF/Bゲインkを用いて、図4の制御ブロック図で示す制振制御を行うことにより、最終トルク目標値Tmfin*を算出する。より具体的には、パークロック解除時以外の通常の走行時における制振制御では、車両モデルをGp(s)とし、通常の走行時のF/Bゲインkを用いた制振制御を行い、パークロック解除時の制振制御では、車輪ロック状態における車両モデルGpl(s)と、通常の走行時のF/Bゲインkよりも大きいF/Bゲインkを用いた制振制御を行う。
【0063】
以上、第1の実施形態における電動車両のモータ制御装置は、車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する制御装置であって、モータトルク指令値に対して、車両振動を抑制するための制振制御を行い、制振制御が行われたモータトルク指令値に従って、モータトルクを制御する。このモータ制御装置において、少なくともフィードバック制御を行うことによって制振制御を行い、パークロック状態の解除時には、パークロック状態の解除時以外の場合に比べて、フィードバック制御で用いるフィードバックゲインkを大きくする。パークロック解除時は、モータの変動はごくわずかのため、こもり音を考慮する必要はない。従って、通常の走行時の制振制御で用いるフィードバックゲインよりも大きいフィードバックゲインを用いることができる。これにより、ドライブシャフトトルクのオーバーシュートを抑制することができ、パークロック解除ショックを抑制することができる。また、ギアの変動がバックラッシュ区間を跨がないので、ギアのバックラッシュによる歯当たり音も抑制できる。
【0064】
また、制振制御を行う処理手段は、モータトルク指令値を入力し、車両の駆動力伝達系の振動を抑制するためのフィードフォワード演算を行うことにより第1のトルク目標値を算出する第1のトルク目標値算出手段(F/F補償器41)と、モータ回転数の推定値およびモータ回転数の検出値の偏差に基づいて、車両の駆動力伝達系の振動を抑制するためのフィードバック演算を行うことにより第2のトルク目標値を算出する第2のトルク目標値算出手段(F/B補償器42)と、第1のトルク目標値および第2のトルク目標値を加算することによって、制振制御後のモータトルク指令値を算出する加算手段(加算器43)とを備える。この構成は、パークロック状態の解除時と、通常の走行時とで共通であるため、パークロック解除時に限定した制御系を別途用意する必要がなく、パークロック解除時に限定した制御系を別途用意する場合に比べて、演算量を抑制することができる。
【0065】
また、パークロック状態の解除時には、路面の勾配に応じて、フィードバックゲインkを変更する。路面の勾配が大きい場合に、路面の勾配が小さい場合と同じフィードバックゲインkを用いた制振制御を行うと、ドライブシャフトトルクのオーバーシュートが増加し、バックラッシュによる歯当たり音も大きくなる傾向がある。従って、路面の勾配が大きくなるほどフィードバックゲインを大きくすることで、ドライブシャフトトルクのオーバーシュートを抑制し、パークロック解除ショックとギアの歯当たり音を抑制することができる。
【0066】
また、シフト位置がPレンジからPレンジ以外の他のレンジに移行したことを検出すると、パークロック状態が解除されたと判断するので、パークロック解除タイミングを確実に検出することができる。さらに、シフト位置がPレンジであり、かつ、ブレーキがオフからオンに変化したことを検出すると、パークロック状態が解除されたと判断するので、パークロック解除タイミングを確実に検出することができる。また、モータ回転数が所定回転数以下または車速が所定車速以下であって、かつ、ブレーキがオフからオンに変化したことを検出すると、パークロック状態が解除されたと判断するので、パークロック解除タイミングを確実に検出することができる。
【0067】
また、パークロック状態の解除を検知してから所定時間が経過すると、パークロック状態の解除時に用いるフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う。これにより、パークロック信号が無い車両においても、パークロック状態の解除時のフィードバックゲインから、通常の走行時のフィードバックゲインへと変更することができる。
【0068】
また、パークロック状態の解除時のフィードバックゲインを用いた制振制御を行っている状態で車速が所定の閾値を超えると、パークロック状態の解除時のフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う。これにより、パークロック信号が無い車両においても、パークロック状態の解除時のフィードバックゲインから、通常の走行時のフィードバックゲインへと変更することができる。
【0069】
さらに、パークロック状態の解除時のフィードバックゲインを用いた制振制御を行っている状態でブレーキがオンからオフに変化すると、パークロック状態の解除時のフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う。これにより、パークロック信号が無い車両においても、パークロック状態の解除時のフィードバックゲインから、通常の走行時のフィードバックゲインへと変更することができる。
【0070】
また、パークロック状態の解除時のフィードバックゲインを用いた制振制御を行っている状態で、パークロック状態の解除時に生じる振動を抑制するためのモータトルク指令値が0であって、かつ、モータ回転数が所定回転数以下の状態が所定時間経過すると、パークロック状態の解除時のフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う。これにより、パークロック解除時ショックを確実に抑制した後に、通常の走行時の制振制御のフィードバックゲインに変更することができる。
【0071】
−第2の実施形態−
第2の実施形態における電動車両のモータ制御装置が第1の実施形態における電動車両のモータ制御装置と異なるのは、図2のフローチャートのステップS203で行う制振制御演算処理であり、特に、パークロック解除時の制振制御演算処理である。
【0072】
図8は、第2の実施形態におけるパークロック解除時の制振制御演算処理の制御ブロック図である。図8に示す制御ブロック図の制御は、モータ角速度フィードバック制御であり、モータ回転数ωmにフィードバックゲインKωを乗算し、さらにフィードバックゲインkを乗算することによって、第2のトルク目標値Tm2*を算出する。フィードバックゲインKωの算出方法を以下で説明する。
【0073】
外乱dからモータ回転数ωmまでの伝達関数は、次式(7)で表される。
【数7】
【0074】
式(5)、式(7)をまとめると、次式(8)となる。
【数8】
【0075】
外乱応答に対する規範応答(ζ=1)を次式(9)で表す。ただし、式(9)中のGm(s)は次式(10)で表される。
【数9】
【数10】
【0076】
よって、モータ角速度フィードバック制御の伝達特性式(8)と、外乱応答に対する規範応答の式(9)より、フィードバックゲインKωは、次式(11)で表される。
【数11】
【0077】
ただし、式(11)中のωplは、次式(12)で表される。
【数12】
【0078】
図8に示すF/Bゲインkは、フィードバックループの中にある制御系の持つ遅れ要素を加味するため、制御演算時間、モータ応答遅れ、センサ信号処理時間の影響を補償することができるように設定する。第1の実施形態と同様に、パークロック解除時には、パークロック解除時の車両モデルGpl(s)にてF/B補償器の閉ループの安定性を評価し、通常の走行時の制振制御のF/Bゲインよりも大きい値を設定する。F/Bゲインkの設定方法は、第1の実施形態と同じである。
【0079】
図9は、第2の実施形態における制振制御演算処理のフローチャートである。図6に示すフローチャートの処理と同一の処理を行うステップについては、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。図6に示すフローチャートと同様に、ステップS701から始まる処理は、電動モータコントローラ2によって行われる。
【0080】
ステップS713に続くステップS910では、ステップS712でセットされたF/Bゲインkを用いて、パークロック解除時の制振制御、すなわち、図8の制御ブロック図で示す制振制御を行う。
【0081】
一方、ステップS709の判定を否定した後に進むステップS902では、通常の走行時の制振制御、すなわち、図4の制御ブロック図で示す制振制御を行う。
【0082】
以上、第2の実施形態における電動車両のモータ制御装置によれば、パークロック状態の解除時には、車輪ロック状態における車両モデルGpl(s)より算出したフィードバックゲインkとモータ回転数とを用いたフィードバック制御を行うので、簡素な制御系で、パークロック解除ショックを抑制することができる。
【0083】
第1および第2の実施形態における電動車両のモータ制御装置によって行われる制振制御の効果について説明する。
【0084】
登坂路で駐車した後、シフト位置をPレンジにしてパークロックをかけ、ブレーキを離してドライブシャフトがねじれた状態で停車しているものとする。この後、再度発進するために、ブレーキを踏みながらパークロックを解除する場合の現象について、図10を用いて説明する。
【0085】
図10は、第1および第2の実施形態における電動車両のモータ制御装置による制御結果の一例を示す図である。図10では上から順に、トルク指令値(第2のトルク目標値Tm2*)の時間変化、モータ回転数Nmの時間変化、ドライブシャフト捻れ角の時間変化、ドライブシャフトトルクの時間変化を示している。図10において、実線は第1、第2の実施形態における電動車両のモータ制御装置の制御結果を、点線は従来例である特開2003−9566号公報に記載の制振制御装置の制御結果を示す。
【0086】
時刻t0においてPレンジからNレンジに移行してパークロックが解除され、ドライブシャフトに蓄積されていたねじりが開放される。この時、ドライブシャフトトルクが0Nmへと減少するのに対応してモータ回転数が減少し、この変化を抑制しようと制振制御が働き、トルク指令値を変化させる。
【0087】
従来例の制振制御装置では、パークロック解除時であっても、通常の走行時と同じF/Bゲインを用いた制振制御を行うため、時刻t2を過ぎると、ドライブシャフトトルクとドライブシャフトの捻れ角にオーバーシュートが発生している。そのため、ドライブシャフトの捻れ角は、バックラッシュ区間を跨ぎ(ドライブシャフトトルク≦0Nm)、ギアのバックラッシュによる歯当たり音が発生する。
【0088】
これに対し、第1および第2の実施形態における電動車両のモータ制御装置による制御結果では、パークロック解除時には、通常の走行時のF/Bゲインよりも大きいF/Bゲインを用いた制振制御を行うため、ドライブシャフトトルクとドライブシャフトの捻れ角のオーバーシュートが抑制されている。これにより、ドライブシャフトの捻れ角はバックラッシュ区間を跨がない(ドライブシャフトトルク>0Nm)ので、ギアのバックラッシュによる歯当たり音が抑制できる。
【0089】
本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0090】
本願は、2012年10月9日に日本国特許庁に出願された特願2012−224178に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】

【手続補正書】
【提出日】20151008
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両のモータ制御装置において、
前記モータトルク指令値に対して、車両振動を抑制するための制振制御を行う制振制御手段と、
前記制振制御が行われたモータトルク指令値に従って、モータトルクを制御するモータトルク制御手段と、
車輪を回転ロックしたパークロック状態の解除の有無を判断するパークロック解除判断手段と、
を備え、
前記制振制御手段は、少なくともフィードバック制御を行うことによって前記制振制御を行うものであって、前記パークロック状態の解除時には、前記パークロック状態の解除時以外の場合に比べて、前記フィードバック制御で用いるフィードバックゲインを大きくするとともに、車輪ロック状態における車両モデルより算出したフィードバックゲインとモータ回転数とを用いたフィードバック制御を行う、
ことを特徴とする電動車両のモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両のモータ制御装置において、
路面の勾配を検出する勾配検出手段をさらに備え、
前記制振制御手段は、前記パークロック状態の解除時には、路面の勾配に応じて、前記フィードバックゲインを変更する、
ことを特徴とする電動車両のモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記パークロック解除判断手段は、シフト位置がPレンジからPレンジ以外の他のレンジに移行したことを検出すると、前記パークロック状態が解除されたと判断する、
ことを特徴とする電動車両のモータ制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記パークロック解除判断手段は、シフト位置がPレンジであり、かつ、ブレーキがオフからオンに変化したことを検出すると、前記パークロック状態が解除されたと判断する、
ことを特徴とする電動車両のモータ制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記パークロック解除判断手段は、モータ回転数が所定回転数以下または車速が所定車速以下であって、かつ、ブレーキがオフからオンに変化したことを検出すると、前記パークロック状態が解除されたと判断する、
ことを特徴とする電動車両のモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記制振制御手段は、前記パークロック状態の解除を検知してから所定時間が経過すると、前記パークロック状態の解除時に用いるフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う、
ことを特徴とする電動車両のモータ制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記制振制御手段は、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインを用いた制振制御を行っている状態で車速が所定の閾値を超えると、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う、
ことを特徴とする電動車両のモータ制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記制振制御手段は、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインを用いた制振制御を行っている状態でブレーキがオンからオフに変化すると、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う、
ことを特徴とする電動車両のモータ制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電動車両のモータ制御装置において、
前記制振制御手段は、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインを用いた制振制御を行っている状態で、前記パークロック状態の解除時に生じる振動を抑制するためのモータトルク指令値が0であって、かつ、モータ回転数が所定回転数以下の状態が所定時間経過すると、前記パークロック状態の解除時のフィードバックゲインより小さいフィードバックゲインを用いた制振制御を行う、
ことを特徴とする電動車両のモータ制御装置。
【請求項10】
車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両のモータ制御方法において、
車輪を回転ロックしたパークロック状態の解除の有無を判断し、
少なくともフィードバック制御を行うことによって、前記モータトルク指令値に対して、車両振動を抑制するための制振制御を行い、
前記制振制御が行われたモータトルク指令値に従って、モータトルクを制御し、
前記制振制御では、前記パークロック状態の解除時には、前記パークロック状態の解除時以外の場合に比べて、前記フィードバック制御で用いるフィードバックゲインを大きくするとともに、車輪ロック状態における車両モデルより算出したフィードバックゲインとモータ回転数とを用いたフィードバック制御を行う、
ことを特徴とする電動車両のモータ制御方法。
【国際調査報告】