(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014061126
(43)【国際公開日】20140424
【発行日】20160905
(54)【発明の名称】培養槽用の蓋部およびそれを備えた培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20160808BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20160808BHJP
【FI】
   !C12M1/00 D
   !C12M1/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】2014541871
(21)【国際出願番号】JP2012076927
(22)【国際出願日】20121018
(11)【特許番号】5947911
(45)【特許公報発行日】20160706
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】591101490
【氏名又は名称】エイブル株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区東五軒町4番15号
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 正則
【住所又は居所】東京都大田区西六郷2−58−9
(72)【発明者】
【氏名】石川 周太郎
【住所又は居所】東京都新宿区東五軒町4番15号 エイブル株式会社内
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB01
4B029CC01
4B029DB08
4B029DG01
4B029DG06
(57)【要約】
本発明の課題は、培養槽の開口部および蓋部の貫通口と貫通口を貫通する物体との間を隙着脱可能に密閉できる蓋部を提供することである。
本発明によって、複数の板状基材を積層してなる培養槽用の蓋部が提供され、複数の板状基材の間に密閉部材の環状弾性体がはめ込まれ、この環状弾性体によって培養槽と蓋部が密接し、培養槽の開口部を密閉することができ、複数の板状基材は、それぞれ、積層した際に重なり合う位置に開口部を有し、この開口部によって蓋部を貫通する貫通口が形成され、前記貫通口の周囲に沿って、複数の板状基材の間に別の密閉部材の環状弾性体がはめ込まれ、この環状弾性体によって貫通口と貫通口を貫通する物体が密閉される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の樹脂製板状基材を積層してなる培養槽用の蓋部であって、
下部の板状基材とこれに隣接する板状部材との間にその周縁近傍で形成された環状溝に第1の環状弾性体がはめ込まれており、第1の環状弾性体によって培養槽の開口部と蓋部が密閉され、
複数の板状基材は、それぞれ、積層した際に重なり合う位置に開口部を有し、この開口部によって蓋部を貫通する貫通口が形成され、
前記貫通口の内周に沿って、隣接する板状基材の間に形成された環状溝に第2の環状弾性体がはめ込まれ、第2の環状弾性体によって貫通口と貫通口を貫通する物体との間隙が密閉される、上記蓋部。
【請求項2】
前記複数の板状基材が、隣接する一方の板状基材の複数の凸部とこの凸部に対向する他方の板状基材の複数の凹部との圧入嵌合により互いに接合されている、請求項1に記載の蓋部。
【請求項3】
前記凸部及び凹部が前記蓋部の周縁部に離間して配置されている、請求項1または2に記載の蓋部。
【請求項4】
前記樹脂が、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレンまたはポリメチルペンテンである、請求項1〜3のいずれかに記載の蓋部。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の培養槽用の蓋部と培養槽とを備えた培養装置。
【請求項6】
複数枚の樹脂製の板状基材が積層されて構成された撹拌手段であって、これらの板状基材間に磁石が液密に挟持されている磁石内蔵の回転部と、この回転部の上面に固定された撹拌翼と、を具備した撹拌手段を培養槽の内部に備え、この撹拌手段は前記培養槽の外部の駆動磁石回転体によって回転される、請求項5に記載の培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養装置、特に培養槽用の蓋部に関する。本発明の蓋部は樹脂製であり、培養槽の開口部を着脱自在に密閉することができる。また、本発明によれば、蓋部の貫通口を貫通するセンサー等の物体を着脱自在に密閉することが可能である。
【背景技術】
【0002】
生体細胞、生物組織片、微生物などの被培養物は、培養装置を用いて培養される。このような培養装置としては、一般に、筒状の側壁部と底部とを有する培養槽、この培養槽を上方から密閉する蓋部を備えた容器が用いられる。蓋部は、閉蓋状態において、培養槽外部から培養槽内部へ各種汚染原因物質が混入してしまうことを防止する役割などを果たす。
【0003】
従来の培養装置は、外部から培養槽内部の培養状態が観察できるように、透明のガラス製であることが一般的である。例えば、従来から使用されている生化学用器具としてガラス蓋付きのシャーレが知られているが、ガラス製であるため重く、また割れやすい。
【0004】
特許文献1には、培養槽であるシャーレの上部を覆う上部部材として、石英ガラス製の窓部を有する蓋体が記載されている。また、特許文献2には、ウェルを備えた容器の上面を覆う上部部材として、板ガラスとその板ガラス周囲に設けられた枠体からなる蓋体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−061464号公報
【特許文献2】特開2006−191834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ガラス製の培養装置は重く、割れやすいという欠点がある。また、ガラスは、微細な加工がしにくく、また、仮に微細な加工を施した場合に壊れやすく、コストも高くなってしまう。
【0007】
特に、培養条件を厳密に制御して培養する場合、培養槽と蓋部との間を密閉し、培養槽外部から内部への汚染原因物質の混入をコントロールする必要があるが、ガラス製の培養容器は加工が難しいため培養槽と密閉性の高い培養蓋を低コストで製造することは困難であった。
【0008】
一方、近年では、ポリスチレンなどの光透過性樹脂製の培養装置も提案されている。合成樹脂は、ガラスと比較して安価で成形や加工が容易であるため、所望の形状の培養装置が低コストで製造できるというメリットがある。
【0009】
例えば、特表2005−514056号(国際公開WO2003/060055)には、培養槽とその開口部を覆う蓋部とを備えた培養装置が開示されており、この培養装置では、培養槽外面と蓋部内面に設けられたネジ山を螺合させることによって培養槽と蓋部を圧密に接続することができる。しかし、この培養装置ではネジ山を螺合させるため、蓋部だけでなく培養槽にもネジ山を設ける必要があり、特に合成樹脂製のものの場合には、加工や成形が複雑で価格も高くなってしまうばかりでなく、螺合する際の強度が必ずしも十分でない等という問題がある。
【0010】
また、培養槽用の蓋部には、一般にセンサー類や通気・排気用、サンプリング用等のパイプ類等が貫通して取り付けられている。そして、蓋部の貫通口とこれを貫通する物体(以下「蓋部貫通物体」ということもある)との間の密閉性(密封性)を確保するために、蓋部をステンレス鋼等の金属製にし、さらに、例えば、貫通口の内周にメネジを、蓋部貫通物体の外周にオネジを設け、Oリング等を介して螺合する方式等が採られている。
【0011】
しかしながら、このような場合には、蓋部が重くなるばかりでなく、ネジ山形成等も加わってコストも高くなってしまう。
【0012】
このようなことから、蓋部の材料として軽くて安価な合成樹脂が考えられるが、この場合には、小内径の貫通口と蓋部貫通物体との間隙を前記のような螺合方式で密閉することは、厚さが比較的薄い蓋部の貫通口の内周にネジ山を形成するための加工や成形等が、前記の培養槽と蓋部のネジ山形成のときよりもさらに複雑、困難で、コストも高くなるばかりでなく、螺合する際の強度も十分でない等の問題がある。
【0013】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、培養槽の上部の開口部を、着脱可能に、かつ、前記のような螺合方式によることなく密閉できる樹脂製の培養槽用の蓋部を提供することである。また、本発明は、蓋部の貫通口と蓋部貫通物体との間隙を密閉できる培養槽用の蓋部を提供することもその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題について鋭意検討したところ、本発明者らは、培養槽用の蓋部を、複数の樹脂製の板状基材を重ね合わせた積層構造とし、さらに、複数の板状基材の間に密閉部材をはめ込み、この密閉部材によって培養槽の開口部と蓋部とが、および貫通口と蓋部貫通物体との間隙が密閉される構造を採用することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、これに限定されるものではないが、以下の発明を包含する。
(1) 複数の樹脂製板状基材を積層してなる培養槽用の蓋部であって、下部の板状基材とこれに隣接する板状部材との間にその周縁近傍で形成された環状溝に第1の環状弾性体がはめ込まれており、第1の環状弾性体によって培養槽の開口部と蓋部が密閉され、複数の板状基材は、それぞれ、積層した際に重なり合う位置に開口部を有し、この開口部によって蓋部を貫通する貫通口が形成され、前記貫通口の内周に沿って、隣接する板状基材の間に形成された環状溝に第2の環状弾性体がはめ込まれ、第2の環状弾性体によって貫通口と貫通口を貫通する物体との間隙が密閉される、上記蓋部。
(2) 前記複数の板状基材が、隣接する一方の板状基材の複数の凸部とこの凸部に対向する他方の板状基材の複数の凹部との圧入嵌合により互いに接合されている、(1)に記載の蓋部。
(3) 前記凸部及び凹部が前記蓋部の周縁部に離間して配置されている、(1)または(2)に記載の蓋部。
(4) 前記樹脂が、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレンまたはポリメチルペンテンである、(1)〜(3)のいずれかに記載の蓋部。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の培養槽用の蓋部と培養槽とを備えた培養装置。
(6) 複数枚の樹脂製の板状基材が積層されて構成された撹拌手段であって、これらの板状基材間に磁石が液密に挟持されている磁石内蔵の回転部と、この回転部の上面に固定された撹拌翼と、を具備した撹拌手段を培養槽の内部に備え、この撹拌手段は前記培養槽の外部の駆動磁石回転体によって回転される、(5)に記載の培養装置。
【0016】
上述したように、本発明の培養槽用の蓋部は、略円形状のものであって、複数の樹脂製の板状基材を重ね合わせた積層構造を有し、この複数の板状基材の間に環状弾性体の密閉部材がはめ込まれ、この密閉部材によって円筒型の培養槽の開口部と蓋部とが密着するために、および貫通口と蓋部貫通物体との間隙が密閉(密封)されるために密閉状態が実現される。
【0017】
ここで、本発明の培養槽用の蓋部について、その代表的な基本的構造を例示して概略を説明するが、これに限定されるものではない。本発明の蓋部は、複数の板状基材からなり、それらが接合された積層構造を有していて、例えば、その最下層(下部)の第1の板状基材は環状で、その上層の第2の板状基材およびより上層の第3の板状基材は円盤状とすることができる。
【0018】
そして、本発明の培養槽用の蓋は、環状の第1の板状基材の内周上部(板状基材の周縁近傍の一態様)でこれに隣接する第2の板状基材との間に形成された環状溝に、また、蓋の貫通口の内周とこれに隣接する第3の板状基材との間に形成された環状溝に、それぞれ、第1の環状弾性体(密閉部材)、第2の環状弾性体(密閉部材)を装着してなる蓋部であって、第1の環状弾性体によって培養槽の開口部の外周縁と蓋部とが、第2の環状弾性体によって貫通口と蓋部貫通物体との間隙が密閉(密封)される。
【0019】
板状基材
本発明の培養槽用の蓋部では、樹脂製で、1つの板状基材から構成させるのではなく、複数の板状基材を積層した構造を採用することによって、複数の板状基材間にOリングなどの環状弾性体の密閉部材を挟持させ、低コストで本発明の蓋部を製造することができる。また、板状基材が樹脂製であることから、加工が容易なため、密閉部材を収納する環状溝などを形成することが容易となる。
【0020】
本発明の培養槽用の蓋部に係る板状基材に用いられる樹脂は、公知のものが特に制限されずに使用することができるが、培養槽用として使用される以上、オートクレーブ滅菌処理(121℃、15分等)などに耐える耐熱性を有し、ある程度の光透過性を有する樹脂が好ましい。樹脂の具体的な材質は、加工性、軽量性、透明性、耐久性、機械的強度、平滑性などを考慮して適宜選択することができるが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂などを好適な例として、また、中でも、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)などをより好適な例として挙げることができる。本発明に係る板状基材を、樹脂製でなくガラス製にすると、密閉部材を収納するための凹溝を設ける加工が難しくなり、また、仮にそのような溝が設けられたとしても強度が大幅に低下する。また、本発明に係る板状基材を金属製にすると、蓋部が重くなりすぎてしまう。
【0021】
本発明において樹脂製板状基材の成型方法は特に制限されないが、例えば、射出成形などを好適に利用することができる。また、本発明の培養槽用の蓋部には、培養液に接する面に対し、親水性などの各種表面特性を調節したり、生体細胞や組織片などの被培養物との付着性を制御するため、表面処理を施すことができる。
【0022】
本発明の培養槽用の蓋部は、前記のごとく、複数の樹脂製の板状基材を重ね合わせた積層構造を有する。本発明において板状基材の数は、2枚以上であれば特に制限はなく、例えば、2〜6枚(積層数:2〜6)などとすることができる。しかし、蓋部の組立ての作業性や接合性などを考慮すると、板状基材の数は、3〜5枚(積層数:3〜5)とすることが好ましい。
【0023】
通常、板状基材の数を、上記したように3枚とすることにより、培養槽の開口部と蓋部および貫通口と蓋部貫通物体との間隙の密閉(密封)性を十分に確保することができるが、板状基材の数を増やして積層数を大きくするとともに、密閉部材の数を増やすこと(例えば、1段を2段にすることなど)も可能である。
【0024】
また、後記の「密閉部材を収納する溝」の項に記載のごとく、第1の板状基材と第2の板状基材との間に第1の密封部材と第2の密封部材とを装着できる構造とすることで、板状基材の数を2枚とすることもできる。
【0025】
本発明の蓋部は、複数の板状基材が重ね合わされて積層され一体化されている。複数の板状基材を一体化する方法は特に制限されないが、例えば、板状基材同士を表面で接合する方法、圧入嵌合によって板状基材を一体化する方法などを挙げることができる。
【0026】
例えば、複数の板状基材同士を表面で接合する場合、樹脂製の板状基材表面が互いに接着できるような特性を有していれば、板状基材同士をその表面で接合することができる。また、例えば、耐熱性の接着剤などを板状基材表面に塗布してから板状基材同士を貼り合わせたりして積層構造を実現することができる。
【0027】
ここで、好ましい態様例として、複数の板状基材を、圧入嵌合によって一体化することを挙げることができる。圧入嵌合とは、一般に無理嵌め、力嵌めとも呼ばれるものであり、凸部(オス部、嵌合ピン)を凹部(メス部)に圧入し、凸部の外周面と凹部の内周面との間にかかる力によって複数の部材を強固に接合することをいう。本発明においては、隣接する一方のある板状基材上に複数の凸部を設けておき、その板状基材と積層される他方の板状基材の対抗向面に凹部を設けて、この2つの板状基材同士を凸部と凹部が圧入するように嵌合させることによって、複数の板状基材を一体化することができる。
【0028】
圧入嵌合によって複数の板状基材を一体化する場合、板状基材に凸部と凹部を設けることになるが、本発明において板状基材の素材は樹脂製であることから、このような小さな凹部凸部を設けることは、適宜の成形方法(射出成形法など)を採用することにより極めて容易である。
【0029】
圧入嵌合によって複数の板状基材を一体化する場合、設ける凹部凸部の位置や数は、蓋部や貫通口の大きさ(直径)を勘案し、圧入嵌合により板状基材面に対し均一な力で強固に接合できるように適宜選択、決定することができ、特に制限されない。
【0030】
凹部と凸部の位置については、略円形状の蓋部の周縁部近傍やその貫通口の周縁部近傍が圧入嵌合により効果的に強固に接合する観点から好適であるが、特に蓋部の周縁近傍に適宜の間隔で離間して配置するのが好ましい。
【0031】
凹部と凸部の数については、特に制限されず、適宜選択、決定される。例えば、全容量が100mlなどの小内容量の培養槽用の直径55mmの蓋などの場合で、蓋部の周縁近部傍では、適宜の間隔で8〜10個など、また、蓋部の略中央を比較的大きな蓋部貫通物体(pHセンサーなど)が貫通する内径10mmの貫通口の周縁近傍では、適宜の間隔で6〜10個などである。このような小内容量の培養槽用の蓋の場合では、蓋の周縁近傍とその中央部の比較的直径が大の貫通口の周縁部に凹部凸部を設けることで、効果的な圧入嵌合をすることができ、他の小直径(例示:3〜5mm)の貫通口の周縁近傍には凹部凸部を設けるのを省略することができる。
【0032】
さらに、複数の板状基材を均一な力で接合すべく、蓋部およびその貫通口の周縁部近傍以外の位置に凹部凸部を適宜設けることも勿論有効である。
【0033】
また、好ましい態様において凸部の形状を円柱状にすることができ、この円柱状の凸部と、凸部の直径よりも小さな直径の穴を有する凹部との間で圧入嵌合することができる。好ましい態様において、凸部の端面周縁部にガイドテーパーを設けることができ、これによって、凸部を凹部へ圧入することが容易になる。さらに、円柱状などの凸部の嵌合部の長さ(深さ)は、嵌合される板状基材の厚さの約1/2から2/3などとなるようにするのが好ましい。なお、複数の板状基材の圧入嵌合による接合は、手で圧迫することでも行うことができるが、適宜の圧入、接合手段を用いるのが効率的である。
【0034】
また、本発明においては、複数の板状基材の圧入嵌合による一体化(接合)の補助的手段として、例えば、板状基材を接合した蓋部の略中央に設けた貫通口にボルトや外周の一部にネジ山を設けた蓋部貫通物体を挿通し、Oリングなどの環状弾性体の密閉部材を介在させて蓋部の上端においてナットで締め付けるなどの方法を採ることもできる。
【0035】
密閉部材を収納する溝
本発明の培養槽用の蓋部には、前記のごとく、複数の板状基材の間に培養槽と蓋部とを密閉する第1の環状弾性体(密閉部材)を収納するための環状溝が設けられている。ここで、環状溝(凹溝)の態様としては、以下のものを例示することができる。
(1) 蓋部の環状の第1の板状基材(板状基材の下部、すなわち、最下層)の内周上部(板状基材の周縁近傍の一態様)に沿って設けられた溝で、これに隣接する円盤状の第2の板状基材とで形成された環状溝。この蓋部は、培養槽の上部外壁に嵌合する(外嵌型)態様。この態様が好適である。なお、前記環状の第1の板状基材も本発明にいう板状基材に含まれる。
(2) 蓋部の円盤状の第1の板状基材の外周上部(板状基材の周縁近傍の一態様)に沿って設けられた溝で、これに隣接し、第1の板状基材よりも直径が大の円盤状の第2の板状基材とで形成された環状溝。この蓋部は、培養槽の上部内壁に嵌合する(内嵌型)態様。この態様では、第1の板状基材の下部が培養槽内に嵌入することになるので、培養槽の内容量が減少する。これを多少とも避けるために、第1の板状基材を環状にすることもできる。なお、上記アの態様において、第2の板状基材の下面に培養槽の上部をさらに嵌入すべく窪み(凹部)を設けることで、培養槽と蓋部との嵌合をより強固することもできる。
【0036】
また、本発明の蓋部には、貫通口と蓋部貫通口物体とを密閉する第2の環状弾性体(密閉部材)を収納する環状溝(凹溝)が設けられているが、その具体的態様として以下を例示することができる。
(a) 蓋部の円盤状の第2の板状基材の貫通口の内周上部に沿って設けられた溝で、これに隣接する第3の板状基材の下面とで形成された環状溝。
(b) 蓋部の円盤状の第3の板状基材の貫通口の内周下部に沿って設けられた溝で、これに隣接する第2の板状基材上面とで形成された環状溝。
(c) 蓋部の円盤状の第2の板状基材の貫通口の内周上部に沿って設けられた溝とこれに隣接する第3の板状基材の貫通口の内周下部に沿って設けられた溝とで形成された環状溝。
【0037】
また、溝の形状については、縦断面において、溝に収納(装着)されている密閉部材が物体と接触して押圧する方向のみが開放で他の方向が閉じられて行き止まりとなっている形状であることが重要であり、例えば、縦断面が略コ字形状、例えば、コ字形状、U字形状、V字形状などにすることができる。すなわち、溝に収納された開放方向の密閉部材は、挿入された物体に接触、押圧されて歪むと、その力は逃げ場が塞がれていてないことから、その物体に強く密着することになり、強い密閉性を確保することができる。溝に物体との接触方向以外に開放部があると、密閉部材の歪による力が逃げてしまい、密閉性が損なわれることになる。
【0038】
本発明においては、樹脂製の板状基材の溝は、旋盤などの形成加工によることなく、射出成形等の簡単な樹脂成形法により得られた、あらかじめ予定された形状の板状基材そのもので形成されることから、隣接する2枚の板状部材で形成されるように構成される。
【0039】
この環状溝の大きさ(幅や深さ)などは、特に制限されず、また、密閉部材を2段で装着すべく、溝を幅広にすることもできる。
【0040】
なお、前記(1)のような培養槽を内嵌型とする態様において、第2の板状基材の貫通口の内周下部の溝の位置を第1の板状基材(周縁近傍)の溝(第1の環状弾性体の溝)の位置からはずすことにより、第2の環状弾性体の溝を第1の板状基材とで形成することができ、この場合の板状基材の数は2枚となる。
【0041】
密閉部材(環状弾性体)
本発明の培養槽用の蓋部は、複数の板状基材を重ね合わせた積層構造を有し、この複数の板状基材の間に密閉部材である環状弾性体がはめ込まれ、この密閉部材によって培養槽と蓋部とが、また、
蓋部貫通口物体と貫通口とが密着することによって密閉状態が実現される。本発明の蓋部は、培養槽の開口部や蓋部貫通物体と貫通口との間隙を密閉(密封)することができるため、培養槽内部が汚染されることを防止することができる。密閉の程度は特に制限されないが、培養槽の開口部等を液密または気密に密封することができ、培養槽内部への異物や雑菌の侵入を抑制できればよい。また例えば、本発明の蓋部によって液密に培養槽の開口部等を密閉することによって、培養装置が横倒しや逆さになった場合に培養液などの液体の漏洩を防止することができる。
【0042】
複数の板状基材の間にはめ込まれる密閉部材としては環状弾性体であればよく、例えば、Oリングなどの環状弾性体の密閉部材を好適に挙げることができる。本発明における蓋部は、培養槽の開口部と蓋部とを密閉する第1の環状弾性体と、貫通口と蓋部貫通物体との間隙を密閉(密封)する第2の環状弾性体を備えている。
【0043】
このように、複数の板状基材の間に弾性を有する密閉部材(環状弾性体)を備えており、これらの密閉部材と培養槽の壁面および蓋部貫通物体の外周面とが押圧によって接合することにより、培養槽の開口部等を密閉することができる。したがって、密閉状態において、密閉部材である環状弾性体は押圧により歪むことになる。
【0044】
なお、第1の環状弾性体および第2の環状弾性体は、複数の板状基材の積層に先立ち、板状基材の間に設けられた溝にはめ込み(装着し)、その後圧入嵌合などにより接合、積層することにより、環状弾性体が、環状溝に確実に収納され、挟持される。
【0045】
一般に、弾性体の密閉部材は、接合部分の隙間を密閉するための部材であり、パッキンなどと称されることもある。本発明の一つの態様において、複数の板状基材の間に設けられた前記の凹溝(縦断面が略コ字形状の溝)に密閉部材である環状弾性体が収納されるが、この際、複数の板状基材間に密閉部材を挟持することによって密閉部材をしっかりと固定し、蓋部に対して培養槽を脱着する際に、あるいは貫通口に対して蓋部貫通物体を挿入や抜去により着脱する際に密閉部材が脱落することを防止することができる。
【0046】
本発明において、密閉部材である第1および第2の環状弾性体の素材は特に制限されず、弾性を有する公知の素材を選択することができる。実際には、撥水性、耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐久性、密閉性などの特性を考慮して、用途に応じて密閉部材の素材を選択する。好ましい態様において密閉部材の素材は、例えば、合成ゴムや天然ゴムなどのゴムであり、フッ素系やシリコン系の合成ゴムなどを好適な例として挙げることができる。フッ素系の合成ゴムとしては、テフロン(商標)として知られるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることができる。
【0047】
密閉部材の形状や寸法は、特に制限されないが、密閉部材を収納するための溝の大きさや、培養槽と蓋部などの隙間の大きさに応じて、その径や太さを適宜調整することができる。すなわち、本発明における好ましい密閉部材は、蓋部に設けられた凹溝に収納され、使用時には、培養槽壁面や蓋部貫通物体の側面に押圧により接合させられる。そのため、凹溝の形状や蓋部と培養槽壁面などとの隙間などの使用条件等によって、Oリングなどの密閉部材の径(内径)や太さが適宜選択、決定されることになる。また、密閉部材の寸法については、各種規格に適応したものを使用することができる。
【0048】
好ましい態様において、Oリングなどの密閉部材の断面形状は円形や楕円形であるが、接合部の対接内面や隙間の大きさなどを考慮して、L形、U形、皿形状等の種々形状としてもよい。またOリングなどの密閉部材の硬度も特に制限されない。
【0049】
また、Oリングなどの密閉部材は繰り返しの使用や長期間にわたる使用によって劣化することがあるため、本発明における密閉部材である環状弾性体は、必要に応じて着脱により適宜交換することができる。
【0050】
貫通口
本発明の培養槽用の蓋部は、前記のごとく、貫通口を有する。この貫通口は、閉蓋状態において蓋部と培養槽が密閉される場合、例えば、培養槽外部から内部への物質供給管、培養槽内部から外部への培養物の抜き出し管、通気管、排気管、サンプリング用管、さらには、培養槽内部の状況を測定するための各種センサー用などとして設けられる。
【0051】
前記貫通口の内周囲に沿って、複数の板状基材の間に密閉部材の第2の環状弾性体がはめ込まれ、この第2の環状弾性体によって貫通口と蓋部貫通物体との間隙が密閉(密封)される。 本発明においては、前記のごとく、蓋部を構成する複数の板状基材について、それらを積層した際に重なり合う位置に開口部を設けることによって、蓋部を貫通する貫通口を形成させることができる。蓋部に設ける貫通口の数、形状などは特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができるが、貫通口の数については、蓋部貫通物体の数と予備の若干数とすることができる。貫通口の形状は特に制限されないが、円状であることが好ましい。
【0052】
本発明においては、前記のごとく、積層構造を有する蓋部に設けられた貫通口の内周囲に沿って、Oリングなどの第2の環状弾性体が設けられるが、上述したように、このことにより、貫通口を通じて、各種センサーパイプなどの管状部材を培養装置の内と外に連結させた際に、培養装置の密閉状態を維持し、培養装置内部に外部から異物が混入しないようにすることができる。
【0053】
そして、本発明の蓋部は、前記のごとく、蓋部の貫通口の内周囲に沿って、複数の板状基材の間に第2の環状弾性体がはめ込まれており、この第2の環状弾性体によって貫通口と蓋部貫通物体との間隙を押圧によって密着、密封させることができる。
【0054】
つまり、前記のごとく、本発明においては複数の板状基材の間に、密閉部材を収納できるように溝(凹溝)を設けておき、この溝に密閉部材をはめ込んで、複数の板状基材間に密閉部材を挟持させることによって密閉部材を複数の板状基材間に固定することができる。
【0055】
貫通口を貫通する各種センサーとしては、例えば、酸素、水素、二酸化炭素、アンモニア、窒素などのガス濃度を測定するセンサー、温度センサー、pHセンサー、溶存酸素濃度センサー、濁度センサーなどを挙げることができる。また、培養槽内を培養に最適な条件に維持するために用いられる撹拌機などを貫通口に通してもよい。
【0056】
1つの態様において、培養槽内部に各種物質を供給するための管を貫通口に連通させてもよく、供給ないし排出を行うために各種ポンプをさらに接続してもよい。本発明の培養槽用の蓋部の貫通口を通して、各種物質や培養液、ガスなどの流通手段を設置することができ、例えば、供給管および/または排出管を培養槽用の蓋部の貫通口を通して設置し、適宜ポンプなどの送液手段を利用することにより、各種物質や培養液、ガスなどを培養槽内部に供給したり、培養槽外部へ排出することが可能である。各種物質の供給や排出を行う手段は、液体や気体などを輸送するための流路を備えていればよく、例えば、パイプやチューブなどの管状部材を好適に例示することができる。
【0057】
また、本発明の蓋部に貫通口を設けて、それを空気の流通口として使用してもよい。この場合、異物や雑菌の混入を防ぐために、蓋の一部を貫通する空気流通口にフィルターなどの部材を設置することもできる。
【0058】
培養装置
1つの態様において本発明は、上記の蓋部と培養槽とを備えた培養装置である。培養槽(培養リアクター)とは、動植物などの生物材料の培養に好適に使用され、増殖培養の他、各種組織の維持培養などにも使用される。
【0059】
培養槽は、通常、底部と筒状の側壁とを備えており、その中に、培養液や被培養物、撹拌装置などの各種装置が収納される。本発明において培養槽の容積、形状、材料などは特に制限されない。培養槽の容積としては、例えば、1〜300ml程度を好適な例として挙げることができ、5〜150ml程度としてもよい。
【0060】
また、培養槽の形状としては、円筒状(円筒型)であると撹拌した際に淀みが生じにくく好ましい。好ましい態様において円筒状の培養槽の直径は、例えば、20〜200mmであり、25〜100mmとしてもよい。培養槽の高さは特に制限されないが、例えば、20〜200mmとすることができ、30〜100mmとしてもよい。
【0061】
培養槽の材料については、ガラス、ステンレスなどの金属、樹脂などであってよく、本発明においては、樹脂製とすることが好ましい。中でも、培養状況の視認性、滅菌のしやすさ、顕微鏡などによる観察のしやすさ、壁面を介した濁度などの測定のしやすさなどを考慮すると、耐熱性と透明性を備えた樹脂やガラスが培養槽の好適な材料として挙げられる。
【0062】
また、本発明の培養槽用の蓋部が樹脂製であることから、培養槽も同様に樹脂製にすることにより、使い捨てにすることもできる。
【0063】
本発明に係る培養装置では、生体細胞、生物組織片、微生物などの被培養物を培養することができる。細胞を培養する場合は、動物細胞でも植物細胞でもよい。動物細胞を用いる場合は、例えば、ほ乳類、鳥類、両生類などの脊椎動物の細胞、昆虫などの無脊椎動物の細胞などを挙げることができる。細胞の種類は、これに限定されるものではないが、例えば、腫瘍細胞、幹細胞、神経細胞、器官細胞、筋肉細胞、皮膚細胞、上皮細胞などが挙げられる。培養の種類や目的も特に制限されず、浮遊培養であっても、担体に細胞を担持させた付着細胞培養であってもよい。
【0064】
撹拌手段
1つの態様において、本発明の培養装置は、培養槽の内側に撹拌手段を備えていてよい。本発明における撹拌手段は特に制限されないが、複数枚の樹脂製の板状基材が積層されて構成され、これらの板状基材間に、例えば、円盤状等の磁石が培養液などに接しないように液密状態で挟持されている磁石内臓の円盤状の回転部と、その上面(上部)に固定された樹脂製の撹拌翼とを備える撹拌手段が好ましく、このような撹拌手段自体が本発明の一つの態様である。
【0065】
なお、回転部の板状基材として使用される樹脂の性質、種類、成型方法、表面処理などについては、撹拌翼も含めて前記の「板状基材」の項に記載したと同様である。
【0066】
本発明に係る撹拌手段における回転部は、複数の樹脂製板状基材が重ね合わせた積層構造を有する。板状基材の数は、板状基材の間に磁石を挟持することができればよいため、2枚でもよい。
【0067】
回転部は、複数枚の板状基材が重ね合わされて一体化されるが、これらの板状基材を一体化する方法については前記の「板状基材」の項に記載したと同様であり、特に制限されない。
【0068】
回転部は、前記のごとく、それを構成する2枚の樹脂製の板状基材の間に磁石が挟持されるが、回転部の内部に磁石を挟持させることによって、培養槽の外部に設けられた駆動磁石回転体の回転磁力で撹拌手段を動かすことができる。板状基材間に磁石を挟持させるために、板状基材に磁石を収納するための凹部を設け、これらを積層することによって、板状基材間に磁石を収納することができる。
【0069】
上記回転部においては、板状基材間に磁石を挟持させることになるが、板状基材間に培養液などの液体が進入して金属製の磁石まで到達すると、磁石を腐食させ、培養系を汚染するおそれがある。そのため、板状基材間に挟持された磁石まで液体が到達できないように、前記した「密閉部材」の項に記載したようなOリングなどの弾性を有する密閉部材(環状弾性体)を板状部材間に設けることが好ましい。
【0070】
また、回転部の上面には、樹脂製の撹拌翼が圧入嵌合や一体成形などにより固定されている。この撹拌翼の数、大きさ、形状、配置などは適宜でよく、例えば、回転部中央に向けて板状のものを2〜5枚程度垂直に配置するなどが挙げられる。
【0071】
本発明の好ましい態様において、上記撹拌手段は培養槽に固定されていることが好ましい。具体的には、撹拌手段が回転できるように培養槽底部の撹拌軸に回転自在に支承固定されていることが好ましい。撹拌手段を培養槽底部の撹拌軸で支承する場合は、撹拌手段と撹拌軸との間に摩擦に対する耐久性を向上させるために、ワッシャーを挟むのがと好ましい。ワッシャーとしては、樹脂製のワッシャーが好ましく、例えば、ポリアセタール製ワッシャーを好適に使用することができる。
【0072】
さらに、培養槽の内部には、撹拌効率を更に高めるために、内壁近傍に垂直の邪魔板を設けることもできる。
【発明の効果】
【0073】
本発明によれば、培養槽の開口部および貫通口と蓋部貫通物体との間隙を着脱自在に、螺合方式によることなく密閉することが可能な樹脂製の培養槽用の蓋部が提供される。しかも前記の培養槽および蓋部貫通物体と蓋部との着脱も単に挿入、抜去することで可能である。さらに、特に、蓋部として樹脂製の板状基材を使用したことから、従来のガラス製の蓋部などと比較して軽量で、また、加工が容易であり、低コストで製造することが可能である。したがって、培養装置を多数使用して培養する場合などに、本発明を特に好適に使用することができる。
【0074】
また、本発明の培養槽用の蓋部は、培養槽等にネジ山形成等の特段の加工を施す必要がなく、各種培養槽の開口部等を密閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、本発明の培養槽用の蓋部の一態様の一部を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の培養槽用の蓋部の一態様を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の培養槽用の蓋部の一態様を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の培養槽用の蓋部の一態様を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の培養槽用の蓋部の一態様を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の培養槽用の蓋部の一態様を示す概略図である。
【図7】図7は、本発明の培養槽用の蓋部の一態様を示す概略図である。
【図8】図8は、本発明の撹拌手段の一態様を示す概略図である。
【図9】図9は、本発明の撹拌手段を備えた培養槽を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、本発明について態様例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの態様例に限定されるものではない。
【0077】
態様1
図1は、本発明に係る培養槽用の蓋部の1態様の一部を示す概略図であるが、特に培養槽の上端開口部と蓋部との密閉構造のみに着目して説明するための図であって、蓋部の上層、貫通口などの図示が省略されている。
【0078】
図1Aに示すように、この蓋1の態様では、射出成形された隣接する樹脂製(例示:ポリカーボネート)の第1の板状基材2と第2の板状基材3とが、その円柱状の凸部5と相対する凹部6との圧入嵌合で接合、積層されて円形状の蓋部を構成しており、具体的には、円環状の第1の板状基材2と円盤状の第2の板状基材3とが積層されている。さらに、第1の板状基材2の内周上部には、密閉部材の第1の環状弾性体8を収納するための溝7が設けられている。
【0079】
そして、あらかじめ溝7に第1の環状弾性体8が装着された後、第1の板状基材2と第2の板状基材3とが積層されると、第1の環状弾性体8であるOリング(例示:シリコンゴム)が第1の板状基材2とこれに隣接する第2の板状基材3とで形成された環状溝7(凹溝、縦断面がコ字形状)に収納(装着)された状態で、第1の板状基材2と第2の板状基材3との間に挟持される。本態様の蓋部は、培養槽9の上部の嵌合により、このOリングが培養槽9の外周面と押圧により密着することになる。すなわち、本態様の蓋部1は、いわゆる外嵌型であり、蓋部1の内周面が培養槽9の外周面と接触することになる。
【0080】
また、本態様の蓋部1は、円環状の第1の板状基材2が蓋部1の側壁部を、また、第2の板状基材3および不図示の最上層の円盤状の板状基材が蓋の天面部を構成している。
【0081】
図1Bに示すように、この態様では、円筒型培養槽の開口部の上縁部が、円環状の第1の板状基材2の内側に内嵌めされ、第2の板状基材3の下面と接触するまで挿入される。
【0082】
本態様の蓋部1は、複数の樹脂製の板状基材2、3が接合されて一体化されている。図1Cに示す態様では、第1の板状基材2と第2の板状基材3とが圧入嵌合により一体化されており、円柱状の凸部5と、相対する凹部6とが、圧入嵌合によって接合されている。別の態様では、板状基材同士を耐熱性接着剤などで接合して一体化することもできる。
【0083】
このようにして、培養槽9の上部を蓋部1に嵌入することによって、第1の環状弾性体8が押圧されて歪み、培養槽9の開口部は蓋部1で着脱自在に密閉される。
【0084】
態様2
図2は、本発明に係る培養槽用の蓋部の1態様の一部を示す概略図であるが、特に培養槽の上端開口部と蓋部との密閉構造のみに着目して説明するための図であって、蓋部の貫通口などの図示が省略されている。
【0085】
図2Aに示すように、この態様では、射出成形された隣接する透明樹脂製(例示:ポリカーボネート)の第1の板状基材12、第2の板状基材13がその円柱状の凸部15と相対する凹部16との圧入嵌合で接合、積層されて円形状の蓋部11を構成しており、具体的には、円盤状の第1の板状基材12とそれより径の大きい円盤状の第2の板状基材13とが積層されている。さらに、第1の板状基材12の外周上部には、密閉部材の第1の環状弾性体18を収納するための溝17が設けられている。
【0086】
そして、あらかじめ溝17に第1の環状弾性体18を装着した後、第1の板状基材12と第2の板状基材13とをその中心を重ねるようにして積層することによって、の第1の環状弾性体18であるOリング(例示:シリコンゴム)が、第1の板状基材12とこれに隣接する第2の板状基材13とで形成された環状溝17(凹溝、縦断面がコ字形状)に収納(装着)された状態で、第1の板状基材12と第2の板状基材13との間に挟持される。本態様の蓋部11は、培養槽19の上部の嵌合により、このOリングが培養槽19の内周面と押圧により密着することになる。すなわち、本態様の蓋部11は、いわゆる内嵌型であり、蓋部11の外周面が培養槽19の内周面と接触することになる。また、本態様の蓋部11は、小さい円盤状の板状基材12が蓋部11の側壁部を構成している。
【0087】
図2Bに示すように、この態様では、円筒型培養槽19の開口部の上縁部が、第2の板状基材13の下面と接触するまで挿入することができる。
【0088】
本態様の蓋部11は、2つの樹脂製の板状基材12、13が接合されて一体化されている。図2Cには、第1の板状基材12と第2の板状基材13とが、円柱状の凸部15と相対する凹部16との圧入嵌合による接合の状態が示されている。なお、本態様の第1の板状基材は、円環状にすることも可能である。
【0089】
このようにして、培養槽19の上部を蓋部11に嵌入することによって、第1の環状弾性体18が押圧されて歪み、培養槽19の開口部は蓋部11で着脱自在に密閉される。
【0090】
態様3
図3は、本発明に係る培養槽用の蓋部の1態様を示す概略図である。この態様では、3枚の透明樹脂製(例示:ポリカーボネート)の射出成形された板状基材(第1〜3の板状基材22、23、24)が態様1に記載したと同様にして圧入嵌合により接合、積層されて円形状の蓋部21を構成しており、具体的には、円環状の第1の板状基材22と円盤状の第2のおよび第3の板状基材23、24とが積層されている。さらに、第1の板状基材22の内周上部には、密閉部材の第1の環状弾性体28を収納するための溝27が設けられている。
【0091】
また、本態様の蓋部21には、第2および第3の板状基材23,24に開口部が設けられており、これら3枚の板状基材を積層すると、円環状の第1の板状基材22の開口部と円盤状の第2および第3の板状基材23、24の開口部によって1または2以上の貫通口30が形成される。
【0092】
この貫通口30は、各種センサーや管状部材などの蓋部貫通物体31を挿入するためのものであって、貫通口30と蓋部貫通物体31との間隙が密閉部材の第2の環状弾性体33で密閉(密封)される。
【0093】
この態様では、貫通口30における第3の板状基材24の内周下部に密閉部材の第2の環状弾性体33を収納するための溝32が設けられている。あらかじめ溝27、32に、それぞれ、第1の環状弾性体密閉部材28、第2の環状弾性体33が装着された後に、第1〜3の板状基材22、23、24が態様1に記載したと同様にして圧入嵌合されて接合、積層される。
【0094】
これら3枚の板状基材が積層されると、第1の環状弾性体28であるOリング(例示:シリコンゴム)が第1の板状基材22の内周上部に設けられた溝と第2の板状基材23の下面とで形成された環状溝27(凹溝、縦断面がコ字形状)に、また、密閉部材の第2の環状弾性体33であるOリング(例示:シリコンゴム)が貫通口30の第3の板状基材24の内周下面に設けられた溝とそれに隣接する第2の板状部材23の上面とで形成された環状溝32(凹状、縦断面がコ字形状)に収納された状態で、挟持される。本態様の蓋部21は、このOリングが円筒型培養槽29の外周面と押圧により密着することになる。すなわち、本態様の蓋部21は、いわゆる外嵌型であり、蓋部21の内周面が培養槽29の外周面と接触することになる。
【0095】
このようにして、培養槽29の上部を蓋部21に嵌入することによって、また、貫通口30に蓋部貫通物体31を挿入することによって、第1の環状弾性体28、第2の環状弾性体33がそれぞれ押圧されて歪み、培養槽29の開口部と蓋部21および貫通口30と蓋部貫通物体31の間隙が着脱自在に密閉される。
【0096】
態様4
図4は、本発明に係る培養槽用の蓋部の1態様を示す概略図である。また、図5は、本態様の蓋部における積層構造を示す概略図である。態様3と同様に、この態様に係る円形状の蓋部41は外嵌型であり、3枚の透明樹脂製(例示:ポリカーボネート)の射出成型された板状基材が積層されており、具体的には、円環状の第1の板状基材42並びに円盤状の第2および第3の板状基材43、44、とが積層されている。さらに、第1の板状部材42の内周上部および態様3に記載したと同様の貫通口50における第3の板状基材44の内周下部には、それぞれ、第1の環状弾性体48、第2の環状弾性体53を収納するための溝47、52が設けられている。なお、この溝52は、貫通口50における第2の板状基材の内周上部に設けることもできる。
【0097】
本態様の蓋部41は、培養槽の外側壁面に密着する外嵌型であり、蓋部41に貫通口50が9つ設けられている。具体的には、蓋部41の中央に1つの大きな貫通口50、さらに大きな貫通口50の周囲に小さな貫通口50を8つ配置している。
【0098】
また、図6および図7に本態様の蓋部の分解図を示す。図6Aが、板状基材を上方から見た分解図であり、図6Bは、板状基材を下方から見た分解図である。また、図7Aは第3の板状基材44、図7Bは第2の板状基材、図7Cは第3の板状基材を示す。図に示すように、3枚の板状基材の圧入嵌合のための円柱状の凸部が第1および第2の板状基材42、43の上面の周縁近傍に、中央の貫通口50の第2の板状基材43の上面の周縁近傍設けられ、凹部が隣接する、相対する位置に設けられている。
【0099】
さらに、第2の板状部材43の下面には、窪み(凹部)設けられていて、円筒型培養槽49の上端部がより深く嵌合されることから、培養槽49と蓋部41との嵌合性を一層高めることができる。
【0100】
そして、あらかじめ溝47、52に、それぞれ、第1の環状弾性体48、第2の環状弾性体53が装着された後に、第1〜3の板状基材42、43、44が態様1に記載したと同様にして圧入嵌合されて接合、積層される。
【0101】
本態様では、これらの貫通口50すべてについて、貫通口50の内周に形成された環状溝に密閉部材の第2の環状弾性体が装着されており、貫通口50と蓋部貫通物体との間隙を密閉状態に維持できるようにされている。
【0102】
本態様においては、3枚の板状基材が圧入嵌合によって一体化されている。すなわち、図示したように、板状基材上に設けられた円柱状の凸部(オス部、嵌合ピン)(凸部の嵌合部の長さ(深さ)の例示:嵌合される板状基材の厚さの約1/2〜2/3)を、接合相手の板状基材に設けた凹部(メス部)に圧入嵌合し、板状基材同士を一体化している。図示した態様では、最下層の円環状の第1の板状基材42と中間層の円盤状の第2の板状基材43とは、10対の凹部凸部を圧入嵌合させることによって一体化されている。また、中間層の円盤状の第2の板状基材43と最上層の円盤状の第3の板状基材44とは、14対の凹部凸部を圧入嵌合させることによって一体化されている。14対の凹部凸部は、円盤状の板状基材の外周に沿って8つ設けられており、円盤状の板状基材の中央に設けられた貫通口50の周囲に沿って6つ設けられている。このようにすることによって、3枚の板状基材を強固に接合して一体化するとともに、板状基材の間に第1および第2の環状弾性体を挟持させて固定することができる。
【0103】
このようにして3枚の板状基材が積層された本発明の蓋部41は、態様3に記載したと同様にして、培養槽49の開口部と蓋部41および貫通口50と蓋部貫通物体との間隙を着脱自在に密閉することができる。また、本態様においては、第2の板状部材43の下面に窪み(凹部)が設けられていて、培養槽の上端部をより深く嵌合することができる。
【0104】
態様5
図8は、本発明に係る撹拌手段の1態様を示す概略図であり、図9は、本発明の撹拌手段を備えた培養槽を示す概略図である。
【0105】
両図において、この態様では、回転手段は磁石を内蔵する回転部100と回転部100の上面に固定された撹拌翼104とを備えている。すなわち、回転部100は、透明樹脂製(例示:ポリカーボネート)の射出成形された2枚の板状基材101、102が積層されており、その間に、円盤状の磁石103が挟持されている。2枚の板状基材はいずれも円盤状である。そして、上層となる板状基材101の上面には同樹脂製の撹拌翼104が4つ設けられている。
【0106】
本態様においては、2枚の板状基材101、102が、圧入ピン107による圧入嵌合によって一体化されており、2枚の板状基材101,102の間に4つの磁石103が挟持される。磁石103を収納するための空間を確保するため、この態様では、上層となる板状基材101の下面に凹部105が4つ設けられており、さらに、下層となる板状基材102の上面に凸部106が4つ設けられ、2枚の円盤状の板状基材101,102を積層すると、凹部105と凸部106が重なり合うが、凹部105の深さが凸部106の高さよりも大きいため、磁石103を収納する空間が確保される。上述したように、この態様では、2枚の板状基材101、102が円柱状の圧入ピン(凸部、嵌合ピン)107による圧入嵌合によって一体化されているが、磁石103の収納部105の1つあたり4つの圧入ピン107が設けられており、そのうち4つは後記する円盤状の板状基材の中央の貫通口108の円周に沿う4つの圧入ピン107を兼ね、さらに別の4つは板状基材101、102の周縁近傍の8つの圧入ピン107のうちの4つを兼ねている。すなわち、この態様では合計20の圧入ピン107を利用した圧入嵌合によって、2枚の板状基材101、102が強固に固定されるとともに、その間に磁石103が収納される。
【0107】
この態様では、撹拌手段の磁石収納部105に、密閉性を高めるために弾性を有する環状弾性体(密閉部材)109としてOリング(例示:シリコンゴム)が収納される。これによって、培養液などの液体が板状基材101、102の間を進入してきた際も、液体と磁石103との接触を防いで、培養液の汚染、磁石103の腐食などを防止することができる。
【0108】
また、図示したように、この態様では、撹拌手段の中央に貫通口108を設けており、この貫通口108を利用して、撹拌手段を円筒型培養槽の底部に立設した撹拌軸(不図示)に、回転自在の状態で固定することができる。
【0109】
この態様では、上層となる板状基材101の上面には撹拌翼104が4つ設けられているが、これは通常の樹脂成形によって形成させることができる。回転手段は、培養槽110の外部の図示しない駆動回転磁石体によって回転され、培養液などの液体が効率よく撹拌される。また、培養槽110の内部には、撹拌効率をさらに高めるために、内壁近傍に邪魔板(バッフル板)111を備えることもできる。
【符号の説明】
【0110】
(図1) 1:蓋部、2:第1の板状基材、3:第2の板状基材、5:凸部、6:凹部、7:第1の環状弾性体を収納する溝、8:第1の環状弾性体、9:培養槽;
(図2) 11:蓋部、12:第1の板状基材、13:第2の板状基材、15:凸部、16:凹部、17:第1の環状弾性体を収納する溝、18:第1の環状弾性体、19:培養槽;
(図3) 21:蓋部、22:第1の板状基材、23:第2の板状基材、24:第3の板状基材、27:第1の環状弾性体を収納する溝、28:第1の環状弾性体、29:培養槽、30:貫通口、31:蓋部貫通物体、32:第2の環状弾性体を収納する溝、33:第2の環状弾性体;
(図4〜図7) 41:蓋部、42:第1の板状基材、43:第2の板状基材、44:第3の板状基材、47:第1の環状弾性体を収納する溝、48:第1の環状弾性体、49:培養槽、50:貫通口、52:第2の環状弾性体を収納する溝、53:第2の環状弾性体;
(図8〜図9)100:回転部、101:上層の板状基材、102:下層の板状基材、103:円盤状磁石、104:撹拌翼、105:凹部、106:凸部、107:圧入ピン、108:中央の貫通口、109:環状弾性体(密閉部材)、110:培養槽、111:邪魔板(バッフル板)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【国際調査報告】