(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2014061772
(43)【国際公開日】20140424
【発行日】20160905
(54)【発明の名称】新規NK3受容体アゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/00 20060101AFI20160808BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20160808BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20160808BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160808BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160808BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20160808BHJP
【FI】
   !C07K7/00ZNA
   !C07K7/06
   !C07K7/08
   !A61K37/02
   !A61P43/00 111
   !A61P15/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】41
【出願番号】2014542189
(21)【国際出願番号】JP2013078278
(22)【国際出願日】20131018
(31)【優先権主張番号】2012231920
(32)【優先日】20121019
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、農林水産省、繁殖サイクルの短縮や受胎率向上のための技術開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
【住所又は居所】茨城県つくば市観音台3−1−1
(72)【発明者】
【氏名】藤井 信孝
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1 国立大学法人京都大学内
(72)【発明者】
【氏名】大野 浩章
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1 国立大学法人京都大学内
(72)【発明者】
【氏名】大石 真也
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1 国立大学法人京都大学内
(72)【発明者】
【氏名】野口 太朗
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1 国立大学法人京都大学内
(72)【発明者】
【氏名】三須 良介
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1 国立大学法人京都大学内
(72)【発明者】
【氏名】岡村 裕昭
【住所又は居所】茨城県つくば市観音台2丁目1−2 独立行政法人農業生物資源研究所内
(72)【発明者】
【氏名】山村 崇
【住所又は居所】茨城県つくば市観音台2丁目1−2 独立行政法人農業生物資源研究所内
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA18
4C084CA59
4C084DB03
4C084DB10
4C084NA14
4C084ZA81
4C084ZC04
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
本発明は、優れたニューロキニン3受容体アゴニスト作用を有する新規なペプチドを提供することを課題とする。
式(I)

[式中の各記号は、明細書に記載の通りである。]で示されるペプチド又はその塩。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
A1は、アスパラギン酸残基を表すか、又は欠失しており;
A2は、ピログルタミン酸、リジン若しくはバリン残基を表すか、又は欠失しており;
A3は、プロリン、アラニン若しくはアスパラギン酸残基を表すか、又は欠失しており;
A4は、セリン、リジン、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、スレオニン若しくはメチオニン残基を表すか、又は欠失しており;
A5は、リジン、セリン、プロリン、グリシン若しくはヒスチジン残基を表すか、又は欠失しており;
A6は、アスパラギン若しくはアスパラギン酸残基を表すか、又は欠失しており;
A7は、任意のα−アミノ酸残基を表すか、又は欠失しており;
A8は、イソロイシン、バリン若しくはN−メチルフェニルアラニン残基を表し;
Pheは、フェニルアラニン残基を表し;
Glyは、グリシン残基を表し;
Leuは、ロイシン残基を表し;
Met−NHは、メチオニンアミドを表す)で示されるペプチド又はその塩。
【請求項2】
該ペプチド又はその塩が、以下の配列で示されるいずれか1つのペプチド又はその塩である、請求項1記載のペプチド又はその塩;
pGlu-Pro-Asn-Pro-Asp-Glu-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2 (配列番号2)
pGlu-Pro-Asn-Pro-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号3)
pGlu-Pro-Asp-Pro-Asn-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号4)
pGlu-Pro-Ser-Lys-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号5)
H-Asp-Val-Pro-Lys-Ser-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号6)
H-Lys-Pro-Arg-Pro-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号7)
pGlu-Ala-Asp-Pro-Asn-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号8)
H-Asp-Thr-Gly-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号9)
pGlu-Pro-Ser-Lys-Asp-Ala-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号10)
pGlu-Pro-Ser-Lys-Asp-Asp-Phe-Ile-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号11)
H-Asp-Val-Pro-Lys-Ser-Asp-Gln-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号12)
H-Asp-Val-Pro-Lys-Ser-Asp-Asp-Phe-Val-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号13)
H-Met-His-Asp-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号14)
H-His-Asp-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号15)
H-Asp-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号16)
H-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号17)
H-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号18)
H-Asp-Met-His-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号19)
H-Asp-Met-His-Asp-Ala-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号20)
H-Asp-Met-His-Asp-Glu-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号21)
H-Asp-Met-His-Asp-Gly-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号22)
H-Asp-Met-His-Asp-His-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号23)
H-Asp-Met-His-Asp-Ile-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号24)
H-Asp-Met-His-Asp-Lys-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号25)
H-Asp-Met-His-Asp-Leu-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号26)
H-Asp-Met-His-Asp-Met-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号27)
H-Asp-Met-His-Asp-Asn-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号28)
H-Asp-Met-His-Asp-Pro-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号29)
H-Asp-Met-His-Asp-Gln-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号30)
H-Asp-Met-His-Asp-Arg-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号31)
H-Asp-Met-His-Asp-Ser-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号32)
H-Asp-Met-His-Asp-Thr-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号33)
H-Asp-Met-His-Asp-Val-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号34)
H-Asp-Met-His-Asp-Trp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号35)
H-Asp-Met-His-Asp-Tyr-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号36)
【請求項3】
請求項1記載のペプチド又はその塩を含有してなる医薬。
【請求項4】
請求項2記載のペプチド又はその塩を含有してなる医薬。
【請求項5】
ニューロキニン受容体アゴニストである、請求項3記載の医薬。
【請求項6】
ニューロキニン受容体アゴニストである、請求項4記載の医薬。
【請求項7】
ニューロキニン受容体が、NK3受容体である、請求項5記載の医薬。
【請求項8】
ニューロキニン受容体が、NK3受容体である、請求項6記載の医薬。
【請求項9】
タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患の治療薬である、請求項3記載の医薬。
【請求項10】
タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患の治療薬である、請求項4記載の医薬。
【請求項11】
該疾患が、疼痛又は性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害である、請求項9記載の医薬。
【請求項12】
該疾患が、疼痛又は性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害である、請求項10記載の医薬。
【請求項13】
請求項1記載のペプチド又はその塩を含有してなる試薬。
【請求項14】
請求項2記載のペプチド又はその塩を含有してなる試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューロキニン(NK)受容体アゴニスト作用を有するペプチド及びその用途に関する。より詳細には本発明は、NK3受容体への選択的且つ強力な結合親和性及びアゴニスト作用を有するペプチド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
生殖生理に関与するキスペプチンの受容体として報告されたGPCRであるGPR54受容体リガンドが創製されてきた(特許文献1〜3、非特許文献1〜6)。視床下部前方のキスペプチンニューロン集団は、エストロジェンの正のフィードバック作用により性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のサージ状分泌を制御する排卵中枢であり、キスペプチン類は排卵誘発を調節する新しい薬剤として期待されている。
一方、近年、卵胞発育に関与するとされるGnRHのパルス状分泌に関する新たな知見が次々に見出されており、視床下部弓状核のキスペプチンニューロンがこのGnRHのパルス状分泌を促す中枢として機能していること、弓状核キスペプチンニューロンにはニューロキニンとその受容体も同時に発現しており、ニューロキニンの自己分泌的な作用によりGnRHのパルス状分泌が誘起されていることなどが報告されている(非特許文献7)。さらに、このニューロンにおける発火活動が、LHパルスと完全に同期していることが見出されている(非特許文献8および9)。
これらの知見より、ニューロキニンの受容体として知られるNK3受容体リガンド(アゴニスト)が、GnRHパルスおよびLHパルスを調節し、卵胞発育を制御する薬剤になりうることが想定され、種々のNK3受容体選択的アゴニストの創製が試みられている。例えば、NK3受容体選択的アゴニストとして、[MePhe7]-NKBおよびsenktideが知られている(非特許文献10および11)。すでに研究用試薬として市販されているこれらのペプチドは、タキキニン類およびニューロキニン受容体が関連する各種基礎研究等に利用されている。
これらのペプチドはいずれも優れたNK3受容体選択的リガンドであるが、さらに高活性・高選択的かつ生体内で持続的に作用することが期待される新規NK3受容体選択的リガンドが依然として求められているのが現状である。
一部の不妊症患者において、NK3受容体の変異によるGnRHパルスの異常が認められるとの報告から、NK3受容体は卵胞発育不全が関与する不妊症の治療薬の新たな標的となることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2004/060264号公報
【特許文献2】WO2007/125619号公報
【特許文献3】WO2009/139298号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Niida A, Wang Z, Tomita K, Oishi S, Tamamura H, Otaka A, Navenot JM, Broach JR, Peiper SC, Fujii N. Bioorg. Med. Chem. Lett. 16(1) 134-137 (2006)
【非特許文献2】Tomita K, Niida A, Oishi S, Ohno H, Cluzeau J, Navenot JM, Wang Z, Peiper SC, Fujii N. Bioorg. Med. Chem. 14(22) 7595-7603 (2006)
【非特許文献3】Tomita K, Narumi T, Niida A, Oishi S, Ohno H, Fujii N. Biopolymers, 88(2) 272-278 (2007)
【非特許文献4】Tomita K, Oishi S, Cluzeau J, Ohno H, Navenot JM, Wang Z, Peiper SC, Akamatsu M, Fujii N. J. Med. Chem. 50(14) 3222-3228 (2007)
【非特許文献5】Tomita K, Oishi S, Ohno H, Fujii N. Biopolymers, 90(4) 503-511 (2008)
【非特許文献6】Tomita K, Oishi S, Ohno H, Peiper SC, Fujii N. J. Med. Chem. 51(23) 7645-7649 (2008)
【非特許文献7】Maeda K-I, Ohkura S, Uenoyama Y, Wakabayashi Y, Oka Y, Tsukamura H, Okamura H. Brain Res, 1364, 103-115 (2010)
【非特許文献8】Ohkura S, Takase K, Matsuyama S, Mogi K, Ichimaru T, Wakabayashi Y, Uenoyama Y, Mori Y, Steiner RA, Tsukamura H, Maeda KI, Okamura H. J. Neuroendocrinol. 21, 813-821(2009)
【非特許文献9】Wakabayashi Y, Nakada T, Murata K, Ohkura S, Mogi K, Navarro VM, Clifton DK, Mori Y, Tsukamura H, Maeda KI, Steiner RA, Okamura H. J. Neurosci. 30, 3124-3132 (2010)
【非特許文献10】Drapeau G, D'Orleans-Juste P, Dion S, Rhaleb NE, Rouissi NE, Regoli D. Neuropeptides. 10(1) 43-54 (1987)
【非特許文献11】Laufer R, Gilon C, Chorev M, Selinger Z. J Biol Chem. 261:10257-10263 (1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、NK3受容体アゴニスト作用を有する新規ペプチド及びその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
下等生物を含む各種動物種のゲノム情報が明らかになり、動物ごとにペプチド配列が異なる内因性タキキニン類が存在することが明らかになった。しかしながら、これらの多様な配列を有するタキキニン類について、薬剤開発の適用対象となるヒトもしくは哺乳動物の各種ニューロキニン受容体への作用を解析した例はなかった。
本発明者らは、これまでに報告された各種生物のゲノム情報から想定されたタキキニン類のペプチド鎖の配列をもとに、ニューロキニン受容体(NK3受容体)選択的リガンドに求められる性質(構造要求特性、受容体選択性等)を精査した。すなわち、各種動物由来のタキキニン類の配列情報を利用して5〜12残基からなるニューロキニン受容体選択的アゴニスト候補化合物をデザイン・合成し、in vitro評価系により受容体結合活性及びアゴニスト活性を定量的に評価した。
その結果、各種動物由来のタキキニン類の多くが3種類のニューロキニン受容体(NK1受容体、NK2受容体、NK3受容体)への非選択的な結合親和性を示すのに対し、ニューロキニンBの5番目のPhe(Phe5)をAsp、Asn、Gln、Gly、Val、Leu、もしくは、Gluに、7番目のVal(Val7)をMePheにそれぞれ変換した誘導体が、NK3受容体のみに選択的かつ低濃度で結合親和性を示すことを見出した。これらの誘導体は、いずれもNK3受容体発現細胞株の細胞内Ca2+濃度の上昇を誘引し、強力なNK3受容体アゴニストであることを確認した。また、C末端側5残基のペプチド鎖においても、アゴニスト活性を示すことを明らかにした。これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1] 式(I)
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、
A1は、アスパラギン酸残基を表すか、又は欠失しており;
A2は、ピログルタミン酸、リジン若しくはバリン残基を表すか、又は欠失しており;
A3は、プロリン、アラニン若しくはアスパラギン酸残基を表すか、又は欠失しており;
A4は、セリン、リジン、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、スレオニン若しくはメチオニン残基を表すか、又は欠失しており;
A5は、リジン、セリン、プロリン、グリシン若しくはヒスチジン残基を表すか、又は欠失しており;
A6は、アスパラギン若しくはアスパラギン酸残基を表すか、又は欠失しており;
A7は、任意のα−アミノ酸残基を表すか、又は欠失しており;
A8は、イソロイシン、バリン若しくはN−メチルフェニルアラニン残基を表し;
Pheは、フェニルアラニン残基を表し;
Glyは、グリシン残基を表し;
Leuは、ロイシン残基を表し;
Met−NHは、メチオニンアミドを表す)で示されるペプチド又はその塩。
[2] 該ペプチド又はその塩が、以下の配列で示されるいずれか1つのペプチド又はその塩である、上記[1]記載のペプチド又はその塩;
pGlu-Pro-Asn-Pro-Asp-Glu-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2 (配列番号2)
pGlu-Pro-Asn-Pro-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号3)
pGlu-Pro-Asp-Pro-Asn-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号4)
pGlu-Pro-Ser-Lys-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号5)
H-Asp-Val-Pro-Lys-Ser-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号6)
H-Lys-Pro-Arg-Pro-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号7)
pGlu-Ala-Asp-Pro-Asn-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号8)
H-Asp-Thr-Gly-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号9)
pGlu-Pro-Ser-Lys-Asp-Ala-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号10)
pGlu-Pro-Ser-Lys-Asp-Asp-Phe-Ile-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号11)
H-Asp-Val-Pro-Lys-Ser-Asp-Gln-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号12)
H-Asp-Val-Pro-Lys-Ser-Asp-Asp-Phe-Val-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号13)
H-Met-His-Asp-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号14)
H-His-Asp-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号15)
H-Asp-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号16)
H-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号17)
H-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号18)
H-Asp-Met-His-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号19)
H-Asp-Met-His-Asp-Ala-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号20)
H-Asp-Met-His-Asp-Glu-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号21)
H-Asp-Met-His-Asp-Gly-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号22)
H-Asp-Met-His-Asp-His-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号23)
H-Asp-Met-His-Asp-Ile-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号24)
H-Asp-Met-His-Asp-Lys-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号25)
H-Asp-Met-His-Asp-Leu-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号26)
H-Asp-Met-His-Asp-Met-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号27)
H-Asp-Met-His-Asp-Asn-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号28)
H-Asp-Met-His-Asp-Pro-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号29)
H-Asp-Met-His-Asp-Gln-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号30)
H-Asp-Met-His-Asp-Arg-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号31)
H-Asp-Met-His-Asp-Ser-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号32)
H-Asp-Met-His-Asp-Thr-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号33)
H-Asp-Met-His-Asp-Val-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号34)
H-Asp-Met-His-Asp-Trp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号35)
H-Asp-Met-His-Asp-Tyr-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号36)
[3] 上記[1]又は[2]記載のペプチド、あるいはそれらの塩を含有してなる医薬。
[4] ニューロキニン受容体アゴニストである、上記[3]記載の医薬。
[5] ニューロキニン受容体が、NK3受容体である、上記[4]記載の医薬。
[6] タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患の治療薬である、上記[3]記載の医薬。
[7] 該疾患が、疼痛又は性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害である、上記[6]記載の医薬。
[8] 上記[1]又は[2]記載のペプチド又はその塩の有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む、タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患を治療する方法。
[9] 該疾患が、疼痛又は性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害である、上記[8]記載の方法。
[10] 上記[1]又は[2]記載のペプチド又はその塩を含有してなる試薬。
[11]タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患の治療用である、上記[1]又は[2]記載のペプチド。
[12] 該疾患が、疼痛又は性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害である、上記[11]記載のペプチド。
【発明の効果】
【0009】
[MePhe7]-NKBとほぼ同等かより優れたNK3受容体に対する受容体結合活性およびアゴニスト活性を示す複数の誘導体が見出された。動物種をまたがったタキキニン類の生物活性を明らかにするとともに、[MePhe7]-NKB中の生物活性に不可欠であると考えられていたアミノ酸残基を変換した誘導体においても強力な活性が認められ、従来技術の応用では予測しえない新規化合物が得られた。
本発明により得られた高活性・高選択的NK3受容体アゴニストは、タキキニン類の分泌の過剰もしくは欠乏に伴う疾患の治療薬、例えば、疼痛、性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害の改善に向けた薬剤、これらの疾患の治療薬開発に向けた基礎科学実験用試薬等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書で用いられる各記号の定義について詳述する。
本明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、「L-」と示される場合はL体を示し(例えば、「L-Ala」はL体のAla)、「D-」と示される場合はD体を示し(例えば、「D-Ala」はD体のAla)、「DL-」と示される場合はD体及びL体のラセミ体を示すものとする(例えば、「DL-Ala」はD体のAla及びL体のAlaのラセミ体混合物)。本発明においてアミノ酸残基はD体であってもL体であってもよいが、好ましくはL体である。
Gly又はG :グリシン
Ala又はA :アラニン
Val又はV :バリン
Leu又はL :ロイシン
Ile又はI :イソロイシン
Ser又はS :セリン
Thr又はT :スレオニン
Cys又はC :システイン
Met又はM :メチオニン
Glu又はE :グルタミン酸
Asp又はD :アスパラギン酸
Lys又はK :リジン
Arg又はR :アルギニン
His又はH :ヒスチジン
Phe又はF :フェニルアラニン
Tyr又はY :チロシン
Trp又はW :トリプトファン
Pro又はP :プロリン
Asn又はN :アスパラギン
Gln又はQ :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
MePhe :N−メチルフェニルアラニン
【0011】
本発明は、ニューロキニン受容体、具体的にはNK3受容体に特異的なアゴニスト作用を有するペプチドを提供する。具体的には、式(I)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、
A1は、アスパラギン酸残基を表すか、又は欠失しており;
A2は、ピログルタミン酸、リジン若しくはバリン残基を表すか、又は欠失しており;
A3は、プロリン、アラニン若しくはアスパラギン酸残基を表すか、又は欠失しており;
A4は、セリン、リジン、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、スレオニン若しくはメチオニン残基を表すか、又は欠失しており;
A5は、リジン、セリン、プロリン、グリシン若しくはヒスチジン残基を表すか、又は欠失しており;
A6は、アスパラギン若しくはアスパラギン酸残基を表すか、又は欠失しており;
A7は、任意のα−アミノ酸残基を表すか、又は欠失しており;
A8は、イソロイシン、バリン若しくはN−メチルフェニルアラニン残基を表し;
Pheは、フェニルアラニン残基を表し;
Glyは、グリシン残基を表し;
Leuは、ロイシン残基を表し;
Met−NHは、メチオニンアミドを表す)で示されるペプチド(本明細書中、ペプチド(I)とも称する)又はその塩を提供する。
【0014】
上記式(I)中、A1は、アスパラギン酸残基を表すか、又は欠失している。
【0015】
上記式(I)中、A2は、ピログルタミン酸、リジン若しくはバリン残基を表すか、又は欠失している。
【0016】
上記式(I)中、A3は、プロリン、アラニン若しくはアスパラギン酸残基を表すか、又は欠失している。
【0017】
上記式(I)中、A4は、セリン、リジン、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、スレオニン若しくはメチオニン残基を表すか、又は欠失している。
【0018】
上記式(I)中、A5は、リジン、セリン、プロリン、グリシン若しくはヒスチジン残基を表すか、又は欠失している。
【0019】
上記式(I)中、A6は、アスパラギン若しくはアスパラギン酸残基を表すか、又は欠失している。
【0020】
上記式(I)中、A7は、任意のα−アミノ酸残基を表すか、又は欠失している。ここで、任意のα−アミノ酸残基は、通常、20種類のアミノ酸残基、即ちGly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Cys、Met、Glu、Asp、Lys、Arg、His、Phe、Tyr、Trp、Pro、Asn、Glnの残基から選択される。
【0021】
上記式(I)中、A8は、イソロイシン、バリン若しくはN−メチルフェニルアラニン残基を表す。
【0022】
ペプチド(I)として、好ましくは、以下のアミノ酸配列を有するペプチドが例示される。
pGlu-Pro-Asn-Pro-Asp-Glu-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2 (配列番号2;ペプチド45)
pGlu-Pro-Asn-Pro-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号3;ペプチド46)
pGlu-Pro-Asp-Pro-Asn-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号4;ペプチド48)
pGlu-Pro-Ser-Lys-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号5;ペプチド50)
H-Asp-Val-Pro-Lys-Ser-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号6;ペプチド52)
H-Lys-Pro-Arg-Pro-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号7;ペプチド54)
pGlu-Ala-Asp-Pro-Asn-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号8;ペプチド56)
H-Asp-Thr-Gly-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号9;ペプチド58)
pGlu-Pro-Ser-Lys-Asp-Ala-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号10;ペプチド201)
pGlu-Pro-Ser-Lys-Asp-Asp-Phe-Ile-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号11;ペプチド202)
H-Asp-Val-Pro-Lys-Ser-Asp-Gln-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号12;ペプチド203)
H-Asp-Val-Pro-Lys-Ser-Asp-Asp-Phe-Val-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号13;ペプチド204)
H-Met-His-Asp-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号14;ペプチドD55)
H-His-Asp-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号15;ペプチドD56)
H-Asp-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号16;ペプチドD57)
H-Phe-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号17;ペプチドD58)
H-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号18;ペプチドD59)
H-Asp-Met-His-Asp-Asp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号19;ペプチド42)
H-Asp-Met-His-Asp-Ala-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号20;ペプチド301)
H-Asp-Met-His-Asp-Glu-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号21;ペプチド302)
H-Asp-Met-His-Asp-Gly-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号22;ペプチド303)
H-Asp-Met-His-Asp-His-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号23;ペプチド304)
H-Asp-Met-His-Asp-Ile-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号24;ペプチド305)
H-Asp-Met-His-Asp-Lys-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号25;ペプチド306)
H-Asp-Met-His-Asp-Leu-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号26;ペプチド307)
H-Asp-Met-His-Asp-Met-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号27;ペプチド308)
H-Asp-Met-His-Asp-Asn-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号28;ペプチド309)
H-Asp-Met-His-Asp-Pro-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号29;ペプチド310)
H-Asp-Met-His-Asp-Gln-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号30;ペプチド312)
H-Asp-Met-His-Asp-Arg-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号31;ペプチド313)
H-Asp-Met-His-Asp-Ser-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号32;ペプチド314)
H-Asp-Met-His-Asp-Thr-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号33;ペプチド315)
H-Asp-Met-His-Asp-Val-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号34;ペプチド316)
H-Asp-Met-His-Asp-Trp-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号35;ペプチド317)
H-Asp-Met-His-Asp-Tyr-Phe-MePhe-Gly-Leu-Met-NH2(配列番号36;ペプチド318)
【0023】
ペプチド(I)は塩の形態であってもよい。このような塩としては、例えば金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等が挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合にはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)等の無機塩、アンモニウム塩等が、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸を伴う無機酸との塩、又は酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が好ましい。
【0024】
ペプチド(I)は、自体公知のペプチドの合成法に従って製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、ペプチド(I)を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを所望配列通りに縮合させることを繰り返し、目的のペプチドを製造することができる。所望配列を有する生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離法としてはたとえば、以下の(1)〜(5)に記載された方法が挙げられる。
(1)M. Bodanszky 及び M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis),Interscience Publishers, New York (1966年)
(2)Schroeder及びLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(3)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(4)矢島治明 及び榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
(5)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、たとえば、溶媒抽出・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶等を組み合わせて本発明のペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合は公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
なお、原料化合物は塩であってもよく、このような塩としては、本発明のペプチドの塩として上述したものと同様のものが挙げられる。
【0025】
保護されたアミノ酸又はペプチドの縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、トリスフォスフォニウム塩類、テトラメチルウロニウム塩類、カルボジイミド類等がよい。トリスフォスフォニウム塩類としてはベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyBOP)、ブロモトリス(ピロリジノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyBroP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyAOP)、テトラメチルウロニウム塩類としては2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-ヘキサフルオロフォスフェイト(HBTU)、2-(7-アザベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-ヘキサフルオロフォスフェイト(HATU)、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TBTU)、2-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TNTU)、O-(N-スクシミジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TSTU)、カルボジイミド類としてはDCC、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)等が挙げられる。これらによる縮合にはラセミ化抑制剤(例えば、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(HONB)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)等)の添加が好ましい。縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。たとえば無水又は含水のN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノール、フェノール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ピリジン等の三級アミン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類あるいはこれらの適宜の混合物等が用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5から6倍過剰で用いられる。固相合成の場合にはニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸又はアセチルイミダゾール等を用いて未反応アミノ酸をアシル化して、後の反応に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0026】
原料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル(Z)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、tert-ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、トリチル(Trt)等が挙げられる。
原料アミノ酸のカルボキシル基の保護基としては、例えば、tert-ブチル(But)基、ベンジル(Bzl)基、C1−6アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C7−14アラルキル基の他、アリル、2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシル及びベンジルオキシカルボニルヒドラジド、tert-ブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジド等が挙げられる。
セリン及びスレオニンの水酸基は、例えばエステル化又はエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えばアセチル基等の低級(C2−4)アルカノイル基、ベンゾイル基等のアロイル基等、及び有機酸から誘導される基等が挙げられる。また、エーテル化に適する基としては、例えばベンジル、テトラヒドロピラニル、But、Trt等である。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えばBzl、2,6-ジクロルベンジル、2−ニトロベンジル、Br-Z、But等が挙げられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えばp-トルエンスルホニル(Tos)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、2,4-ジニトロフェニル(DNP)、ベンジルオキシメチル(Bom)、tert-ブトキシメチル(Bum)、Boc、Trt、Fmoc等が挙げられる。
アルギニンのグアニジノ基の保護基としては、例えばTos、Z、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルフォニル(Mtr)、p-メトキシベンゼンスルフォニル(MBS)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルフォニル(Pmc)、メシチレン-2-スルフォニル(Mts)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、Boc、Z、NO2等が挙げられる。
リジンの側鎖アミノ基の保護基としては、例えばZ、Cl-Z、トリフルオロアセチル、Boc、Fmoc、Trt、Mtr、4,4-ジメチル-2,6-ジオキソサイクロヘキシリデンエイル(Dde)等が挙げられる。
トリプトファンのインドリル保護基としては、例えばホルミル(For)、Z、Boc、Mts、Mtr等が挙げられる。
アスパラギン、グルタミンの保護基としては、例えばTrt、キサンチル(Xan)、4,4'-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、2,4,6-トリメトキシベンジル(Tmob)等が挙げられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(たとえば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシミド、HOBt、HOAt)とのエステル]等が挙げられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、たとえば対応する亜リン酸アミドが挙げられる。
【0027】
保護基の除去(脱離)方法としては、例えばPd黒あるいはPd炭素等の触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、臭化トリメシルシラン(TMSBr)、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロホウ酸、トリス(トリフルオロ)ホウ素、三臭化ホウ素あるいはこれらの混合液等による酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン等による塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元等も挙げられる。上記酸処理による脱離反応は一般に−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においてはアニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾールのようなカチオン捕捉剤や、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオール等の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオール等の存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニア等によるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護及び保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化等は公知の保護基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。
【0028】
ペプチド(I)は、C末端にメチオニンアミドを有する。ペプチドのアミド体を得る方法としては、アミド体合成用樹脂を用いて固相合成するか又はカルボキシル末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除いたペプチド(又はアミノ酸)とを製造し、この両ペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ポリペプチドを得ることができる。この粗ペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のペプチドのアミド体を得ることができる。
【0029】
ペプチド(I)が、エナンチオマー、ジアステレオマー等のコンフィギュレーショナル アイソマー(配置異性体)、コンフォーマー(配座異性体)等として存在する場合には、これらもペプチド(I)として含有されると共に、所望により、自体公知の手段、前記の分離、精製手段によりそれぞれを単離することができる。また、ペプチド(I)がラセミ体である場合には、通常の光学分割手段によりS体及びR体に分離することができる。
ペプチド(I)に立体異性体が存在する場合には、この異性体が単独の場合及びそれらの混合物の場合もペプチド(I)に含まれる。
また、ペプチド(I)は、溶媒和物(例、水和物)又は無溶媒和物(例、非水和物)であってもよい。
ペプチド(I)は、同位元素(例、H、14C、35S、125I)等で標識されていてもよい。
さらに、ペプチド(I)は、HをH(D)に変換した重水素変換体であってもよい。
【0030】
本明細書におけるペプチドはペプチド表記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。ペプチドのN末端アミノ酸において「H−」と表記された場合は、末端アミノ基が誘導体化されていないことを示す。
【0031】
ペプチド(I)は、結晶であってもよく、該結晶の結晶形は単一であっても複数であってもよい。結晶は、自体公知の結晶化法を用いて製造することができる。
ペプチド(I)は、薬学的に許容され得る共結晶または共結晶塩であってもよい。ここで、共結晶または共結晶塩とは、各々が異なる物理的特性(例えば、構造、融点、融解熱、吸湿性、溶解性および安定性等)を持つ、室温で二種またはそれ以上の独特な固体から構成される結晶性物質を意味する。共結晶または共結晶塩は、自体公知の共結晶化法に従い製造することができる。
ペプチド(I)の結晶は、物理化学的性質(例、融点、溶解度、安定性)及び生物学的性質(例、体内動態(吸収性、分布、代謝、排泄)、薬効発現)に優れ、医薬として極めて有用である。
【0032】
ペプチド(I)は、NK3受容体アゴニスト作用を有する。該作用から、ペプチド(I)は、哺乳動物(例、ヒト、サル、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ウサギ等)に対し、タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患や病態の予防又は治療薬として有用である。
このような疾患、病態としては、例えば、性ホルモン分泌の過剰・過少による性機能不全症・発育不全、良性腫瘍、悪性腫瘍、代謝異常等が挙げられる。
【0033】
ペプチド(I)は、そのままあるいは薬理学的に許容される担体とともに、自体公知の手段、例えば、日本薬局方に記載の方法に従って製剤化することによって、医薬として用いられる。
【0034】
ペプチド(I)を含有してなる医薬は、毒性が低く、医薬製剤の製造法で一般的に用いられている自体公知の手段に従って、ペプチド(I)をそのままあるいは薬理学的に許容される担体と混合して、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠、舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、液剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤等)、外用剤(例、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤)、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点滴剤等の医薬製剤として、経口的又は非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。
また、これらの製剤は、速放性製剤又は徐放性製剤等の放出制御製剤(例、徐放性マイクロカプセル)であってもよい。
なお、医薬製剤中のペプチド(I)の含有量は、製剤全体の約0.01ないし約100重量%である。
ペプチド(I)の投与量は、投与対象、症状、投与方法等により適宜選択される。例えば、ペプチド(I)を経口投与する場合、ヒト(体重60kgとして)に対する投与量は、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。ペプチド(I)を非経口的に投与する場合、ヒト(体重60kgとして)に対する投与量は、一日につき約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.5〜10mgである。この量を1日1〜数回に分けて投与することができる。
【0035】
本発明の医薬の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が挙げられ、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等が挙げられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。
結合剤としては、例えば結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L−ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
溶剤としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
懸濁化剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
等張化剤としては、例えばブドウ糖、D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられる。
緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。
無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。
防腐剤としては、例えばパラヒドロキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロール等が挙げられる。
着色剤としては、例えば水溶性食用タール色素(例、食用赤色2号及び3号、食用黄色4号及び5号、食用青色1号及び2号等の食用色素)、水不溶性レーキ色素(例、前記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩)、天然色素(例、β−カロチン、クロロフィル、ベンガラ)等が挙げられる。
甘味剤としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア等が挙げられる。
吸着剤としては、例えば有孔デンプン、ケイ酸カルシウム(商品名:フローライトRE)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(商品名:ノイシリン)、軽質無水ケイ酸(商品名:サイリシア)が挙げられる。
湿潤剤としては、例えばプロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。
【0036】
経口剤を製造する際には、必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性を目的として、コーティングを行ってもよい。
【0037】
コーティングに用いられるコーティング基剤としては、例えば、糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤、腸溶性フィルムコーティング基剤、徐放性フィルムコーティング基剤が挙げられる。
【0038】
糖衣基剤としては、白糖が用いられ、さらに、タルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カルナバロウ等から選ばれる1種又は2種以上を併用してもよい。
【0039】
水溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE〔オイドラギットE(商品名)〕、ポリビニルピロリドン等の合成高分子;プルラン等の多糖類が挙げられる。
【0040】
腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース アセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等のセルロース系高分子;メタアクリル酸コポリマーL〔オイドラギットL(商品名)〕、メタアクリル酸コポリマーLD〔オイドラギットL−30D55(商品名)〕、メタアクリル酸コポリマーS〔オイドラギットS(商品名)〕等のアクリル酸系高分子;セラック等の天然物が挙げられる。
【0041】
徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えば、エチルセルロース等のセルロース系高分子;アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS〔オイドラギットRS(商品名)〕、アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル共重合体懸濁液〔オイドラギットNE(商品名)〕等のアクリル酸系高分子が挙げられる。
【0042】
上記したコーティング基剤は、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、コーティングの際に、例えば、酸化チタン、三二酸化鉄等のような遮光剤を用いてもよい。
【0043】
NK3受容体は、種々の生体内現象に関与していることが知られている。従ってNK3受容体アゴニスト作用を有するペプチド(I)は、NK3受容体が関与する種々の生体内現象を解明するのに役立つツールとなり得る。従って本発明化合物は、研究用試薬としても有用である。
【0044】
本発明は、更に以下の実施例および試験例によって詳しく説明されるが、これらの例は単なる実施であって、本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【実施例】
【0045】
実施例1 各ペプチドの合成
Rink Amide樹脂(45.5 mg, 0.025 mmol)上、HOBt・H2O(11.5 mg, 0.075 mmol)及びN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(11.6 μL, 0.075 mmol)を用いたFmoc固相合成法により保護ペプチド樹脂を構築した。N−メチルアミノ酸の縮合には、HATU(27.6 mg, 0.073 mmol)/N,N−ジイソプロピルエチルアミン(13 μL, 0.075 mmol)を用いて縮合を行った。得られた樹脂をTFA/m−クレゾール/チオアニソール/1,2−エタンジチオール/HO(80:5:5:5:5)の反応溶液中、室温で2時間処理し、側鎖保護基の除去を伴う樹脂からの切り出しを行った。樹脂を濾去し、濾液に冷ジエチルエーテルを加えることでペプチドを析出させた。得られた粗ペプチドの洗浄操作を3回行った後、HPLCにより精製し、目的のペプチドを得た。得られたペプチドの配列と物性データを下記表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
PG-KII(配列番号38)、PG-SP1(配列番号39)、Uperolein(配列番号40)、Eledoisin(配列番号41)、Kassinin(配列番号42)、Bufokinin(配列番号43)、Physalaemin(配列番号44)、及びSialokinin II(配列番号45)は公知のタキキニン類である。
【0048】
試験例1 放射活性NKBのNK3受容体結合阻害活性評価
NK3受容体を強制発現したFlp-In CHO細胞(インビトロジェン社のFlp-In CHO細胞にNK3受容体を安定発現するように遺伝子導入して作製したもの)より調製した受容体膜画分を用い、各種ペプチドの([125I]His3, MePhe7)−NKBの受容体結合阻害活性を評価した。
まず、緩衝液(50 mM HEPES, pH 7.4, 5 mM MgCl2, 1 mM CaCl2, 0.1% BSA)を用いて調製した化合物(ペプチド)溶液50 μLを各ウェルに添加した。細胞膜画分が4 μL/ウェルとなるように調製した溶液25 μLを加えた後に、0.4 nMの([125I]His3, MePhe7)−NKB溶液25 μLを加えて混合した。室温で1時間インキュベーション後、0.3%ポリエチレンイミン(PEI)で前処理し、PEI洗浄バッファー(50 mM HEPES, pH 7.4, 0.5% BSA)で洗浄したGF/Bフィルターを用いて吸引濾過した。続いて洗浄バッファー(50 mM HEPES (pH 7.4), 500 mM NaCl, 0.1% BSA)で洗浄した後、フィルターを十分に乾燥させた。その後、MicroScint-O 25 μLを加え、TopCount NXTを用いて1 min/ウェルでフィルター上の放射能を測定した。
【0049】
試験例2 NK3受容体アゴニスト活性の評価
NK3受容体を強制発現したFlp-In CHO細胞を各種ペプチドで刺激した時における細胞内カルシウム濃度の変化を定量した。
まず、NK3受容体発現CHO細胞を、トリプシンを用いて回収し、4×104 cells/ウェルとなるように96穴プレートに播種した。37℃で一晩培養後、カルシウム指示薬50 μLを添加し、さらに1時間培養した。続いて、5倍濃縮で調製したペプチド溶液25 μLを用いて滴下し、FlexStationにより細胞内カルシウム濃度の経時的変化を60秒間観察した。
【0050】
試験例3 放射活性サブスタンスP(SP)のNK1受容体結合阻害活性評価
NK1受容体を強制発現したFlp-In CHO細胞(インビトロジェン社のFlp-In CHO細胞にNK1受容体を安定発現するように遺伝子導入して作製したもの)より調製した受容体膜画分を用い、各種ペプチドの[125I]-BH-SPの受容体結合阻害活性を評価した。
まず、緩衝液(50 mM HEPES ,pH 7.4, 5 mM MgCl2, 1 mM CaCl2, 0.1% BSA)を用いて調製した化合物50 μLを各ウェルに添加した。細胞膜画分が4 μL/ウェルとなるように調製した溶液25 μLを加えた後に、0.4 nMの[125I]-BH-SP溶液25 μLを加えて混合した。室温で1時間インキュベーション後、0.3%ポリエチレンイミン(PEI)で前処理し、PEI洗浄バッファー(50 mM HEPES, pH 7.4, 0.5% BSA)で洗浄したGF/Bフィルターを用いて吸引濾過した。続いて洗浄バッファー(50 mM HEPES (pH 7.4), 500 mM NaCl, 0.1% BSA)で洗浄した後、フィルターを十分に乾燥させた。その後、MicroScint-O 25 μLを加え、TopCount NXTを用いて1 min/ウェルでフィルター上の放射能を測定した。
【0051】
試験例4 放射活性NKAのNK2受容体結合阻害活性評価
NK2受容体を強制発現したFlp-In CHO細胞(インビトロジェン社のFlp-In CHO細胞にNK2受容体を安定発現するように遺伝子導入して作製したもの)より調製した受容体膜画分を用い、各種ペプチドの[125I]-NKAの受容体結合阻害活性を評価した。
まず、緩衝液(50 mM HEPES, pH 7.4, 5 mM MgCl2, 1 mM CaCl2, 0.1% BSA)を用いて調製した化合物50 μLを各ウェルに添加した。細胞膜画分が4 μL/ウェルとなるように調製した溶液25 μLを加えた後に、0.4 nMの[125I]-NKA溶液 25 μLを加えて混合した。室温で1時間インキュベーション後、0.3%ポリエチレンイミン(PEI)で前処理し、PEI洗浄バッファー(50 mM HEPES, pH 7.4, 0.5% BSA)で洗浄したGF/Bフィルターを用いて吸引濾過した。続いて洗浄バッファー(50 mM HEPES (pH 7.4), 500 mM NaCl, 0.1% BSA)で洗浄した後、フィルターを十分に乾燥させた。その後、MicroScint-O 25μLを加え、TopCount NXTを用いて1 min/ウェルでフィルター上の放射能を測定した。
【0052】
試験例5 in vivoにおける活性評価
卵巣摘出ヤギ5頭を供試し、外科的に記録電極を視床下部弓状核のキスペプチンニューロン近傍に留置した。約1ヶ月の回復期をおき、覚醒したヤギにおいて神経活動を多ニューロン発火活動(MUA)としてリアルタイムに計測し、約2分程度続く一過性の神経活動の上昇(MUAボレー)が規則正しい周期で起きていることを確認した。MUAボレーは、GnRHをパルス状に分泌させるキスペプチンニューロンの神経活動を反映している。卵巣摘出ヤギでは、内因性のMUAボレーの周期の長さは約25分(±5分程度)であり、個体により多少異なるが、同一個体内では周期の長さはほぼ一定(±2分以内)である。
試験当日、MUA計測機器をセットし、終日MUAを連続的に記録した。また、試料投与用の頚静脈カテーテルを留置した。まず、それぞれの個体で約2時間のコントロール時間中に起きた内因性MUAボレーを数本確認し、そのボレー間隔(分)の平均値(T)を計算した。次に、任意のMUAボレー発現後、1/2T分のタイミングで被検試料溶液を頚静脈内に一気に投与した。投与後、MUAボレーが4分以内に発現した場合をNK3受容体アゴニスト活性陽性(○)、4〜8分の間で発現した場合を擬陽性(△)、それ以上の間隔で起きた場合を陰性(×)と評価した。陰性試料で確認されたMUAボレーは、内因性のものである。
被検試料溶液は以下のように調製した。試験当日、DMSO中に10 mMの濃度で調製された被検試料7.5 μLを滅菌蒸留水4.5 mLに溶解した。析出せず、完全に溶解したことを確認後、0.5 mLの滅菌9% NaClを加え、溶液の最終濃度を被検試料:75 nmol/5 mL, NaCl:0.9%, DMSO:0.15%とした。ここから2 mL (30 nmol)を注射筒にとり、活性評価に供した。また、原則として、1被検試料について5頭中任意の2頭を用いて活性評価を行った。
【0053】
試験例1〜5に基づいて、各種動物由来のタキキニン類又はその誘導体と本発明のペプチド(I)との生物活性を比較した結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
試験例1〜4に基づいて、Eledoisin及びKassininと本発明のペプチド(I)との生物活性を比較した結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
試験例1〜4に基づいて、[MePhe7]-NKBのN末端側を欠失させた各ペプチドの生物活性を調べた結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
また、ペプチドD55、D56、D57、D58及びD59について、ラット血清内での安定性を評価した。安定性の評価は、ラット血清存在下、固相合成により得られた各ペプチドを37℃でインキュベートし、経時変化をHPLCとESI−MSにより解析することで行った。対照には、[MePhe7]-NKBを用いた。[MePhe7]-NKBはおよそ6時間以内で消失することが確認されたが、本発明のペプチドはより遅い分解速度を示した。
【0060】
試験例1〜4に基づいて、[MePhe7]-NKBの5番目のアミノ酸(本願発明のペプチド(I)ではA7に相当)を種々に変更させた各ペプチドの生物活性を調べた結果を表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
[配列表フリーテキスト]
配列番号1;ペプチド(I)
配列番号2;ペプチド45
配列番号3;ペプチド46
配列番号4;ペプチド48
配列番号5;ペプチド50
配列番号6;ペプチド52
配列番号7;ペプチド54
配列番号8;ペプチド56
配列番号9;ペプチド58
配列番号10;ペプチド201
配列番号11;ペプチド202
配列番号12;ペプチド203
配列番号13;ペプチド204
配列番号14;ペプチドD55
配列番号15;ペプチドD56
配列番号16;ペプチドD57
配列番号17;ペプチドD58
配列番号18;ペプチドD59
配列番号19;ペプチド42
配列番号20;ペプチド301
配列番号21;ペプチド302
配列番号22;ペプチド303
配列番号23;ペプチド304
配列番号24;ペプチド305
配列番号25;ペプチド306
配列番号26;ペプチド307
配列番号27;ペプチド308
配列番号28;ペプチド309
配列番号29;ペプチド310
配列番号30;ペプチド312
配列番号31;ペプチド313
配列番号32;ペプチド314
配列番号33;ペプチド315
配列番号34;ペプチド316
配列番号35;ペプチド317
配列番号36;ペプチド318
配列番号37;[MePhe7]-NKB
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により得られた高活性・高選択的NK3受容体アゴニストは、タキキニン類の分泌の過剰もしくは欠乏に伴う疾患の治療薬、例えば、疼痛、性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害の改善に向けた薬剤、これらの疾患の治療薬開発に向けた基礎科学実験用試薬等として有用である。
【0064】
本出願は、日本で出願された特願2012−231920(出願日2012年10月19日)を基礎としておりその内容は本明細書に全て包含されるものである。
【配列表】
2014061772000001.app

【手続補正書】
【提出日】20140609
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
A1は、アスパラギン酸残基を表すか、又は欠失しており;
A2は、ピログルタミン酸、リジン若しくはバリン残基を表すか、又は欠失しており;
A3は、プロリン、アラニン若しくはアスパラギン酸残基を表すか、又は欠失しており;
A4は、セリン、リジン、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、スレオニン若しくはメチオニン残基を表すか、又は欠失しており;
A5は、リジン、セリン、プロリン、グリシン若しくはヒスチジン残基を表すか、又は欠失しており;
A6は、アスパラギン若しくはアスパラギン酸残基を表し;
A7は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン、プロリン、アスパラギン、グルタミンの残基から選択される任意のα−アミノ酸残基を表し;
A8は、N−メチルフェニルアラニン残基を表し;
Pheは、フェニルアラニン残基を表し;
Glyは、グリシン残基を表し;
Leuは、ロイシン残基を表し;
Met−NHは、メチオニンアミドを表す)で示されるペプチド又はその塩。
【請求項2】
該ペプチド又はその塩が、以下の配列で示されるいずれか1つのペプチド又はその塩である、請求項1記載のペプチド又はその塩;
【請求項3】
請求項1記載のペプチド又はその塩を含有してなる医薬。
【請求項4】
請求項2記載のペプチド又はその塩を含有してなる医薬。
【請求項5】
ニューロキニン受容体アゴニストである、請求項3記載の医薬。
【請求項6】
ニューロキニン受容体アゴニストである、請求項4記載の医薬。
【請求項7】
ニューロキニン受容体が、NK3受容体である、請求項5記載の医薬。
【請求項8】
ニューロキニン受容体が、NK3受容体である、請求項6記載の医薬。
【請求項9】
タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患の治療薬である、請求項3記載の医薬。
【請求項10】
タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患の治療薬である、請求項4記載の医薬。
【請求項11】
該疾患が、疼痛又は性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害である、請求項9記載の医薬。
【請求項12】
該疾患が、疼痛又は性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害である、請求項10記載の医薬。
【請求項13】
請求項1記載のペプチド又はその塩を含有してなる試薬。
【請求項14】
請求項2記載のペプチド又はその塩を含有してなる試薬。
【国際調査報告】