(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2016181889
(43)【国際公開日】20161117
【発行日】20180222
(54)【発明の名称】研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20180126BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20180126BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20180126BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20180126BHJP
【FI】
   !C09K3/14 550D
   !C09K3/14 550Z
   !C09K3/14 550C
   !C09K3/14 550K
   !B24B37/00 H
   !H01L21/304 622C
   !C09G1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
【出願番号】2017517905
(21)【国際出願番号】JP2016063598
(22)【国際出願日】20160502
(31)【優先権主張番号】2015095660
(32)【優先日】20150508
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
【住所又は居所】愛知県清須市西枇杷島町地領二丁目1番地1
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(72)【発明者】
【氏名】織田 博之
【住所又は居所】愛知県清須市西枇杷島町地領二丁目1番地1 株式会社フジミインコーポレーテッド内
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 修平
【住所又は居所】愛知県清須市西枇杷島町地領二丁目1番地1 株式会社フジミインコーポレーテッド内
(72)【発明者】
【氏名】森 嘉男
【住所又は居所】愛知県清須市西枇杷島町地領二丁目1番地1 株式会社フジミインコーポレーテッド内
(72)【発明者】
【氏名】高見 信一郎
【住所又は居所】愛知県清須市西枇杷島町地領二丁目1番地1 株式会社フジミインコーポレーテッド内
(72)【発明者】
【氏名】田畑 誠
【住所又は居所】愛知県清須市西枇杷島町地領二丁目1番地1 株式会社フジミインコーポレーテッド内
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158CA01
3C158CB08
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3C158EA11
3C158EB01
3C158ED01
5F057AA03
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5F057DA03
5F057EA03
5F057EA21
5F057EA33
5F057EA37
5F057EA40
(57)【要約】
本発明は、主にシリコンウェーハ等の半導体基板その他の研磨対象物の研磨に好ましく用いられる研磨用組成物に関するものであり、良好な平坦度を得る研磨用組成物を提供する。研磨用組成物の、研磨パッドに対するなじみ性をWp、研磨対象物に対するなじみ性をWw、研磨対象物保持具に対するなじみ性をWcとしたとき、Wcの値が最も小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨用組成物の、研磨パッドに対するなじみ性をWp、研磨対象物に対するなじみ性をWw、研磨対象物保持具に対するなじみ性をWcとしたとき、Wcの値が最も大きいことを満たす研磨用組成物。
【請求項2】
研磨用組成物の、研磨パッドに対する後退接触角をCp、研磨対象物に対する後退接触角をCw、研磨対象物保持具に対する後退接触角をCcとしたとき、Ccの値が最も小さいことを満たす、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
研磨用組成物の、研磨パッドに対する動的表面張力をTp、研磨対象物に対する動的表面張力をTw、研磨対象物保持具に対する動的表面張力をTcとしたとき、Tcの値が最も大きいことを満たす、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
水溶性高分子ならびに塩を含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
シリコンウェーハを研磨するために用いられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
シリコンウェーハの両面研磨をするために用いられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨用組成物に関する。詳しくは、主にシリコンウェーハ等の半導体基板その他の研磨対象物の研磨に好ましく用いられる研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属や半金属、非金属、その酸化物等の材料表面に対して研磨液を用いた精密研磨が行われている。例えば、半導体製品の構成要素等として用いられるシリコンウェーハの表面は、一般に、ラッピング工程(粗研磨工程)とポリシング工程(精密研磨工程)とを経て高品位の鏡面に仕上げられる。上記ポリシング工程は、典型的には、予備ポリシング工程(予備研磨工程)とファイナルポリシング工程(最終研磨工程)とを含む。シリコンウェーハ等の半導体基板を研磨する用途で主に使用される研磨用組成物に関する技術文献として、特許文献1〜3が挙げられる。特許文献4は、CMPプロセス用の研磨液に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−268667号公報
【特許文献2】国際公開第2012/63757号
【特許文献3】特開2014−041978号公報
【特許文献4】国際公開第2004/100242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、シリコンウェーハ等の半導体基板その他の基板について、大口径化によって面積が広くなっていることから、基板平坦度の向上が望まれている。このような状況下で、従来の研磨用組成物を用いて研磨をすると所望の平坦度が得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、良好な平坦度を得る研磨用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、研磨用組成物の、研磨パッドに対するなじみ性をWp、研磨対象物に対するなじみ性をWw、研磨対象物保持具に対するなじみ性をWcとしたとき、Wcの値が最も大きいことを満たす研磨用組成物が提供される。
このような研磨用組成物によると、基板の平坦度を向上することができる。
【0007】
一態様においては、研磨用組成物の、研磨パッドに対する後退接触角をCp、研磨対象物に対する後退接触角をCw、研磨対象物保持具に対する後退接触角をCcとしたとき、Ccの値が最も小さいことを満たす研磨用組成物が提供される。
このような研磨用組成物によると、基板の平坦度を向上することができる。
【0008】
一態様においては、研磨用組成物の、研磨パッドに対する動的表面張力をTp、研磨対象物に対する動的表面張力をTw、研磨対象物保持具に対する動的表面張力をTcとしたとき、Tcの値が最も大きいことを満たす研磨用組成物が提供される。
このような研磨用組成物によると、基板の平坦度を向上することができる。
【0009】
一態様に係る研磨用組成物は、水溶性高分子ならびに塩を含有する。このことによって、基板の平坦度を向上する効果がよりよく発揮され得る。
【0010】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記研磨用組成物は、シリコンウェーハ(典型的にはシリコン単結晶ウェーハ)を研磨するために用いられる。ここに開示される研磨用組成物は、例えばラッピングを経たシリコンウェーハのポリシングに好ましく用いられる。なかでも、シリコンウェーハの両面研磨に特に好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による片面研磨装置を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態による両面研磨装置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0013】
<研磨用組成物のなじみ性>
研磨用組成物の部材へのなじみ性とは、研磨用組成物が部材に対し弾かずに留まる性質の大きさを示す。なじみ性の評価方法は、研磨用組成物が部材に対して弾かずに留まる性質を定量的に評価できる方法であれば特に限定されないが、例えば、接触角、動的表面張力、真円度、濡れ面積などによって評価することができる。接触角の測定方法は特に限定されないが、地面と水平に設置した部材の表面に液滴を滴下した際に観察される静的接触角、液滴を載せた部材を傾けて液滴を滑らせた際の液滴の進行方向の接触角である前進接触角、および液滴の進行方向とは逆の方向の接触角である後退接触角などが例示される。実際の動的な研磨における部材のなじみをよく表す点で、後退接触角が好ましい。動的表面張力の測定方法は特に限定されないが、Wilhelmy法、リング法、ペンダントドロップ法、最大泡圧法などが例示される。実際の動的な研磨における部材のなじみをよく表す点で、Wilhelmy法が好ましい。
【0014】
Wcの値が最も大きいことを満たす研磨用組成物によって、研磨対象物保持具と研磨対象物の境となる研磨対象物の外周部に研磨用組成物が効率よく留まることが、基板の平坦度が向上する原因と考えられる。
【0015】
後退接触角は、値が大きいほど部材とのなじみが小さく、値が小さいほど部材との馴染みが大きい。すなわち、Ccの値が最も小さいことは、研磨用組成物の研磨対象物保持具へのなじみ性が最も大きいことを示す。したがって、研磨対象物保持具と研磨対象物の境となる研磨対象物の外周部に研磨用組成物が効率よく留まり、平坦度が向上すると考えられる。
【0016】
動的表面張力は、値が大きいほど部材とのなじみが大きく、値が小さいほど部材との馴染みが小さい。すなわち、Tcの値が最も大きいことは、研磨用組成物の研磨対象物保持具へのなじみ性が最も大きいことを示す。したがって、研磨対象物保持具と研磨対象物の境となる研磨対象物の外周部に研磨用組成物が効率よく留まり、平坦度が向上すると考えられる。
【0017】
研磨組成物のなじみ性を表す指標である上記Wp、Wc、Ww、Cc、Cp,Cw、Tp,Tc,Twの値は、それぞれ、研磨組成物の成分、研磨パッドの材質や粗さ、研磨対象物の組成、研磨対象物の保持具の材質や粗さを適当な組み合わせを選択することによってコントロールすることができる。研磨組成物中の成分としては、特に、水溶性高分子などの含有量が影響することが多い。
【0018】
後退接触角については、研磨パッドに対する後退接触角Cpが90°以下であることが好ましく、80°以下であることがより好ましく、70°以下であることがさらに好ましい。また、特に限定するものではないが、Cpは1°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましく、10°以上であることがさらに好ましい。Cpが上記の範囲内にあることで、基板の平坦度がより向上する。研磨パッドに対する後退接触角Cpは、研磨組成物の成分と研磨パッドの材質の組合せを適宜選択することによってコントロールすることができる。
【0019】
研磨対象物に対する後退接触角Cwが90°以下であることが好ましく、80°以下であることがより好ましく、70°以下であることがさらに好ましい。また、特に限定するものではないが、Cwは1°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましく、10°以上であることがさらに好ましい。Cwが上記の範囲内にあることで、基板の平坦度がより向上する。研磨対象物に対する後退接触角Cwは、研磨組成物の成分と研磨パッドの材質の組合せを適宜選択することによってコントロールすることができる。
【0020】
研磨対象物保持具に対する後退接触角Ccが70°以下であることが好ましく、60°以下であることがより好ましく、50°以下であることがさらに好ましい。また、特に限定するものではないが、Ccは1°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましく、10°以上であることがさらに好ましい。Cwが上記の範囲内にあることで、基板の平坦度がより向上する。研磨保持具に対する後退接触角Ccは、研磨組成物の成分と研磨パッドの材質の組合せを適宜選択することによってコントロールすることができる。
【0021】
研磨用組成物の研磨パッドに対する後退接触角Cpは、例えば以下の手順に基づいて測定することができる。
(1P)新品の研磨パッドを協和界面科学株式会社製動的接触角測定装置DM−501上に設置する。
(2P)上記研磨パッドに研磨用組成物30μLを滴下する。
(3P)研磨用組成物を滴下して1°/秒の速度で上記研磨パッドを傾けていき、10秒後の後退接触角を測定する。
【0022】
研磨用組成物の研磨対象物に対する後退接触角Cwは、例えば以下の手順に基づいて測定することができる。
(1W)予め鏡面化ならびに自然酸化膜を除去した研磨対象物を協和界面科学株式会社製動的接触角測定装置DM−501上に設置する。
(2W)上記研磨対象物に研磨用組成物30μLを滴下する。
(3W)研磨用組成物を滴下して1°/秒の速度で上記研磨対象物を傾けていき、10秒後の後退接触角を測定する。
【0023】
研磨用組成物の研磨対象物保持具に対する後退接触角をCcは、例えば以下の手順に基づいて測定することができる。
(1C)新品の研磨対象物保持具を協和界面科学株式会社製動的接触角測定装置DM−501上に設置する。
(2C)上記研磨対象物保持具に研磨用組成物30μLを滴下する。
(3C)研磨用組成物を滴下して1°/秒の速度で上記研磨対象物保持具を傾けていき、10秒後の後退接触角を測定する。
【0024】
研磨パッドに対する動的表面張力Tpが0.1mN以上であることが好ましく、0.5mN以上であることがより好ましく、1.0mN以上であることがさらに好ましい。また、特に限定するものではないが、Tpは10.0mN以下であることが好ましく、5.0mN以下であることがより好ましく、3.0mN以下であることがさらに好ましい。Tpが上記の範囲内にあることで、基板の平坦度がより向上する。研磨パッドに対する動的表面張力Tpは、研磨組成物の組成と研磨パッドの材質の組合せを適宜選択することによってコントロールすることができる。
【0025】
研磨対象物に対する動的表面張力Twが0.5mN以上であることが好ましく、1.0mN以上であることがより好ましく、2.0mN以上であることがさらに好ましい。また、特に限定するものではないが、Twは10.0mN以下であることが好ましく、6.0mN以下であることがより好ましく、4.0mN以下であることがさらに好ましい。Twが上記の範囲内にあることで、基板の平坦度がより向上する。研磨対象物に対する動的表面張力Twは、研磨組成物の組成と研磨パッドの材質の組合せを適宜選択することによってコントロールすることができる。
【0026】
研磨対象保持具に対する動的表面張力Tcが0.5mN以上であることが好ましく、1.0mN以上であることがより好ましく、2.0mN以上であることがさらに好ましい。また、特に限定するものではないが、Tcは10.0mN以下であることが好ましく、7.0mN以下であることがより好ましく、5.0mN以下であることがさらに好ましい。Twが上記の範囲内にあることで、基板の平坦度がより向上する。研磨対象保持具に対する動的表面張力Tcは、研磨組成物の組成と研磨パッドの材質の組合せを適宜選択することによってコントロールすることができる。
【0027】
ここに開示される研磨用組成物は、TcとTwの比Tc/Twが1.01以上であることが好ましく、1.03以上であることがより好ましく、1.05以上であることがさらに好ましい。また、特に限定するものではないが、Tc/Twが5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがより好ましい。Tc/Twが上記の範囲内にあることで、基板の平坦度がより向上する。
【0028】
上記研磨用組成物の研磨パッドに対する動的表面張力Tpは、例えば以下の手順に基づいて測定することができる。
(1p)新品の研磨パッドを25mm×40mmの大きさに切る。
(2p)上記研磨パッドを取り出し、研磨用組成物に1分間浸漬する。
(3p)上記研磨パッドを取り出し、イオン交換水を入れた容器に1秒間浸漬する。
(4p)上記研磨パッドを取り出し、エアーガンなどで過剰な水を飛ばしきるまで空気を吹き付ける。
(5p)上記研磨パッドを株式会社レスカ製動的濡れ性試験機6200TNに設置する。
(6p)上記研磨パッドを動的濡れ性試験機にあらかじめ設置した研磨用組成物中に0.2mm/秒の速度で10mm浸漬し、2秒間保持する。
(7p)上記研磨パッドを0.2mm/秒の速度で引き上げる。
(8p)上記の試験による前進濡れ応力を測定する。
【0029】
上記研磨用組成物の研磨対象物に対する動的表面張力Twは、例えば以下の手順に基づいて測定することができる。
(1w)新品の研磨対象物を25mm×40mmの大きさに切る。
(2w)上記研磨対象物をアンモニア:過酸化水素:イオン交換水=1:1:30(体積比)の薬液に60秒間浸漬する。
(3w)上記研磨対象物を取り出し、上記研磨対象物を5%フッ化水素酸に60秒間浸漬する。
(4w)上記研磨対象物を取り出し、研磨用組成物に1分間浸漬する。
(5w)上記研磨対象物を取り出し、イオン交換水を入れた容器に1秒間浸漬する。
(6w)上記研磨対象物を取り出し、エアーガンなどで過剰な水を飛ばしきるまで空気を吹き付ける。
(7w)上記研磨対象物を株式会社レスカ製動的濡れ性試験機6200TNに設置する。
(8w)上記研磨対象物を動的濡れ性試験機にあらかじめ設置した研磨用組成物中に0.2mm/秒の速度で10mm浸漬し、2秒間保持する。
(9w)上記研磨対象物を0.2mm/秒の速度で引き上げる。
(10w)上記の試験による前進濡れ応力を測定する。
【0030】
上記研磨用組成物の研磨対象物保持具に対する動的表面張力Tcは、例えば以下の手順に基づいて測定することができる。
(1c)新品の研磨対象物保持具を25mm×40mmの大きさに切る。
(2c)上記研磨対象物保持具をアンモニア:過酸化水素:イオン交換水=1:1:30(体積比)の薬液に60秒間浸漬する。
(3c)上記研磨対象物保持具を取り出し、上記研磨対象物を5%フッ化水素酸に60秒間浸漬する。
(4c)上記研磨対象物保持具を取り出し、研磨用組成物に1分間浸漬する。
(5c)上記研磨対象物保持具を取り出し、イオン交換水を入れた容器に1秒間浸漬する。
(6c)上記研磨対象物保持具を取り出し、エアーガンなどで過剰な水を飛ばしきるまで空気を吹き付ける。
(7c)上記研磨対象物保持具を株式会社レスカ製動的濡れ性試験機6200TNに設置する。
(8c)上記研磨対象物保持具を動的濡れ性試験機にあらかじめ設置した研磨用組成物中に0.2mm/秒の速度で10mm浸漬し、2秒間保持する。
(9c)上記研磨対象物保持具を0.2mm/秒の速度で引き上げる。
(10c)上記の試験による前進濡れ応力を測定する。
【0031】
<砥粒>
ここに開示される研磨用組成物には、砥粒を含有させることができる。砥粒の材質や性状は特に制限されず、使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、酸化物粒子(例えばシリカ粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子)、窒化物粒子(例えば窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子)、炭化物粒子(例えば炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子)、ダイヤモンド粒子、炭酸塩(例えば炭酸カルシウム、炭酸バリウム)等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。このような砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
上記砥粒としては、無機粒子が好ましく、なかでも金属または半金属の酸化物からなる粒子が好ましい。ここに開示される技術において使用し得る砥粒の好適例としてシリカ粒子が挙げられる。例えば、ここに開示される技術をシリコンウェーハの研磨に使用され得る研磨用組成物に適用する場合、砥粒としてシリカ粒子を用いることが特に好ましい。その理由は、研磨対象物がシリコンウェーハである場合、研磨対象物と同じ元素と酸素原子とからなるシリカ粒子を砥粒として使用すれば研磨後にシリコンとは異なる金属または半金属の残留物が発生せず、シリコンウェーハ表面の汚染や研磨対象物の内部にシリコンとは異なる金属または半金属が拡散することによるシリコンウェーハとしての電気特性の劣化などの虞がなくなるからである。さらに、シリコンとシリカの硬度が近いため、シリコンウェーハ表面に過度なダメージを与えることなく研磨加工を行うことができるという利点もある。かかる観点から好ましい研磨用組成物の一形態として、砥粒としてシリカ粒子のみを含有する研磨用組成物が例示される。また、シリカは高純度のものが得られやすいという性質を有する。このことも砥粒としてシリカ粒子が好ましい理由として挙げられる。シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。研磨対象物表面にスクラッチを生じにくく、よりヘイズの低い表面を実現し得るという観点から、好ましいシリカ粒子としてコロイダルシリカおよびフュームドシリカが挙げられる。なかでもコロイダルシリカが好ましい。
【0033】
シリカ粒子を構成するシリカの真比重は、典型的には1.5以上であり、通常は1.6以上が適当であり、1.7以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、1.9以上がさらに好ましく、2.0以上が特に好ましい。シリカの密度の増大によって、研磨対象物(例えばシリコンウェーハ)を研磨する際に、研磨レートが向上し得る。研磨対象物の表面(研磨対象面)に生じるスクラッチを低減する観点からは、上記密度が2.3以下、例えば2.2以下のシリカ粒子が好ましい。砥粒(典型的にはシリカ)の密度としては、置換液としてエタノールを用いた液体置換法による測定値を採用し得る。
【0034】
ここに開示される技術において、研磨用組成物中に含まれる砥粒は、一次粒子の形態であってもよく、複数の一次粒子が凝集した二次粒子の形態であってもよい。また、一次粒子の形態の砥粒と二次粒子の形態の砥粒とが混在していてもよい。好ましい一態様では、少なくとも一部の砥粒が二次粒子の形態で研磨用組成物中に含まれている。
【0035】
砥粒の平均一次粒子径は特に限定されないが、研磨効率等の観点から、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上である。また、より平滑性の高い表面が得られやすいという観点から、砥粒の平均一次粒子径は、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。
【0036】
ここに開示される技術において、砥粒の平均一次粒子径は、例えば、BET法により測定される比表面積S(m/g)から平均一次粒子径(nm)=2727/Sの式により算出することができる。砥粒の比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「FlowSorb II 2300」を用いて行うことができる。
【0037】
砥粒の平均二次粒子径は特に限定されないが、研磨レート等の観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。また、より平滑性の高い表面を得る観点から、砥粒の平均二次粒子径は、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下である。
【0038】
ここに開示される技術において、砥粒の平均二次粒子径は、例えば、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いた動的光散乱法により、体積平均粒子径(体積基準の算術平均径;Mv)として測定することができる。
【0039】
砥粒の平均二次粒子径は、一般に砥粒の平均一次粒子径と同等以上であり、典型的には平均一次粒子径よりも大きい。特に限定するものではないが、研磨効果および研磨後の表面平滑性の観点から、砥粒の平均二次粒子径は、好ましくは平均一時粒子径の1.2倍以上3.0倍以下、より好ましくは1.5倍以上2.5倍以下、さらに好ましくは1.7倍以上2.3倍以下、一層好ましくは1.9倍以上2.2倍以下である。
【0040】
砥粒の形状(外形)は、球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形をなす砥粒の具体例としては、ピーナッツ形状(すなわち、落花生の殻の形状)、繭型形状、突起付き形状、金平糖形状、ラグビーボール形状等が挙げられる。砥粒は、同形状の1種を単独で使用してもよく、形状の異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、多くが金平糖形状をした砥粒を好ましく採用し得る。
【0041】
特に限定するものではないが、砥粒の一次粒子の長径/短径比の平均値(平均アスペクト比)は、好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.1以上である。砥粒の平均アスペクト比の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。また、砥粒の平均アスペクト比は、スクラッチ低減等の観点から、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0042】
上記砥粒の形状(外形)や平均アスペクト比は、例えば、電子顕微鏡観察により把握することができる。平均アスペクト比を把握する具体的な手順としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、独立した粒子の形状を認識できる所定個数(例えば200個)の砥粒粒子について、各々の粒子画像に外接する最小の長方形を描く。そして、各粒子画像に対して描かれた長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を長径/短径比(アスペクト比)として算出する。上記所定個数の粒子のアスペクト比を算術平均することにより、平均アスペクト比を求めることができる。
【0043】
研磨用組成物中に含まれる砥粒の量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上である。砥粒量の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。また、研磨用組成物中に含まれる砥粒の量は、研磨用組成物の分散安定性等の観点から、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、一層好ましくは2重量%以下である。
【0044】
<水溶性高分子>
ここに開示される研磨用組成物には、水溶性高分子を含有させることができる。水溶性高分子は各部材界面に吸着することで接触角を変化させ、基板の平坦性を改善する効果が大きい。
【0045】
水溶性高分子の例としては、セルロース誘導体、デンプン誘導体、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー、ビニルアルコール系ポリマー等が挙げられる。
【0046】
セルロース誘導体の例としては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシエチルセルロースを好ましく採用し得る。
【0047】
デンプン誘導体の例としては、プルラン、ヒドロキシプロピルデンプン等が挙げられる。
【0048】
オキシアルキレン単位を含むポリマーの例としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体やブロック共重合体等が挙げられる。
【0049】
窒素原子を含有するポリマーの例としては、ポリビニルピロリドンなどのピロリドン系ポリマー、ポリアクリロイルモルホリン、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルピロリドンを好ましく採用し得る。
【0050】
ビニルアルコール系ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコールを好ましく採用し得る。
【0051】
その他の水溶性高分子の例としては、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
【0052】
水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、単独重合体を使用してもよく、共重合体を使用してもよい。
【0053】
研磨用組成物中に含まれる水溶性高分子の量は、好ましくは0.000001重量%以上、より好ましくは0.00001重量%以上、さらに好ましくは0.0001重量%以上である。水溶性高分子量の増大によって、より平坦な基板を得ることができる。また、研磨用組成物中に含まれる水溶性高分子の量は、研磨レート向上等の観点から、好ましくは0.01重量%以下、より好ましくは0.001重量%以下、さらに好ましくは0.0005重量%以下である。
【0054】
<塩>
ここに開示される研磨用組成物には、塩を含有させることができる。塩は、有機酸塩、無機酸塩のいずれも用いることができる。塩は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
塩を構成するアニオン成分としては、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ホウ酸イオン、リン酸イオン、フェノールイオン、モノカルボン酸イオン(例えばギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、2−ヒドロキシ酪酸イオン、リンゴ酸イオン)、ジカルボン酸イオン(例えばシュウ酸イオン、マレイン酸イオン、マロン酸イオン、酒石酸イオン、コハク酸イオン)およびトリカルボン酸イオン(例えばクエン酸イオン)、有機スルホン酸イオン、有機ホスホン酸イオン等が挙げられる。また、塩を構成するカチオン成分の例としては、アルカリ金属イオン(例えばカリウムイオン、ナトリウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン)、遷移金属イオン(例えばマンガンイオン、コバルトイオン、亜鉛イオン)、アンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン)、ホスホニウムイオン(例えばテトラアルキルホスホニウムイオン)等が挙げられる。塩の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト等が挙げられる。これらの中でも炭酸カリウムを好ましく採用し得る。
【0056】
研磨用組成物中に含まれる塩の量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、さらに好ましくは0.01重量%以上である。塩の量の増大によって、研磨用組成物を繰り返し使用した際の性能維持性が向上され得る。また、研磨用組成物中に含まれる塩の量は、研磨用組成物の保管安定性向上等の観点から、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。
【0057】
<塩基性組成物>
ここに開示される研磨用組成物には、塩基性化合物を含有させることができる。塩基性組成物は、研磨対象物を化学的に研磨する働きをし、研磨速度の向上に寄与する成分である。また塩基性化合物は、上述の水溶性高分子と同様、各部材界面に吸着することによって接触角を変化させる効果も有する。塩基性化合物は、有機塩基性化合物であってもよく、無機塩基性化合物であってもよい。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
有機塩基性化合物の例としては、テトラアルキルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。上記アンモニウム塩におけるアニオンは、例えば、OH、F、Cl、Br、I、ClO、BH等であり得る。例えば、コリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩を好ましく使用し得る。なかでもテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0059】
有機塩基性化合物の他の例としては、テトラアルキルホスホニウム塩等の第四級ホスホニウム塩が挙げられる。上記ホスホニウム塩におけるアニオンは、例えば、OH、F、Cl、Br、I、ClO、BH等であり得る。例えば、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム等のハロゲン化物、水酸化物を好ましく使用し得る。
【0060】
有機塩基性化合物の他の例としては、アミン類(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)、ピペラジン類(例えばピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン)、アゾール類(例えばイミダゾール、トリアゾール)、ジアザビシクロアルカン類(例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、その他の環状アミン類(例えばピペリジン、アミノピリジン)、グアニジン等が挙げられる。
【0061】
無機塩基性化合物の例としては、アンモニア、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物(例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム)が挙げられる。
【0062】
研磨用組成物中に含まれる塩基性化合物の量は、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.03重量%以上である。塩基性化合物の量の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。また、研磨用組成物中に含まれる塩基性化合物の量は、基板の平坦性向上等の観点から、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以下、一層好ましくは0.15重量%以下である。
【0063】
<水>
ここに開示される研磨用組成物を構成する水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。使用する水は、研磨用組成物に含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、研磨用組成物に含まれる溶媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99〜100体積%)が水であることがより好ましい。
【0064】
<キレート剤>
ここに開示される研磨用組成物には、任意成分として、キレート剤を含有させることができる。キレート剤は、研磨用組成物中に含まれ得る金属不純物と錯イオンを形成してこれを捕捉することにより、金属不純物による研磨対象物の汚染を抑制する働きをする。キレート剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸およびα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてアミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
【0066】
研磨用組成物中に含まれるキレートの量は、好ましくは0.0001重量%以上、より好ましくは0.0005重量%以上、さらに好ましくは0.001重量%以上である。キレート剤の量の増大によって、基板の金属汚染が低減され得る。また、研磨用組成物中に含まれるキレートの量は、研磨用組成物の保管安定性向上等の観点から、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下、さらに好ましくは0.005重量%以下である。
【0067】
<その他の成分>
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、界面活性剤、有機酸、無機酸、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウェーハのポリシング工程に用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0068】
ここに開示される研磨用組成物には、任意成分として、界面活性剤(典型的には、分子量1×10未満の水溶性有機化合物)を含有させることができる。界面活性剤の使用により、研磨用組成物の分散安定性が向上し得る。また界面活性剤は、上述の水溶性高分子や塩基性化合物と同様、各部材界面に吸着することによって接触角を変化させる効果も有する。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性のものを好ましく採用し得る。低起泡性やpH調整の容易性の観点から、ノニオン性の界面活性剤がより好ましい。ノニオン性界面活性剤の例として、オキシアルキレン重合体(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)、ポリオキシアルキレン付加物(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、複数種のオキシアルキレンの共重合体(ジブロック型、トリブロック型、ランダム型、交互型)等が挙げられる。
【0070】
研磨用組成物中に含まれる界面活性剤の量は、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。ここに開示される研磨用組成物は、界面活性剤を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
【0071】
ここに開示される研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含まないことが好ましい。研磨用組成物中に酸化剤が含まれていると、当該組成物が研磨対象物(例えばシリコンウェーハ)に供給されることで該研磨対象物の表面が酸化されて酸化膜が生じ、これにより研磨レートが低下してしまうことがあり得るためである。ここでいう酸化剤の具体例としては、過酸化水素(H)、過マンガン酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等が挙げられる。なお、研磨用組成物が酸化剤を実質的に含まないとは、少なくとも意図的には酸化剤を含有させないことをいう。したがって、原料や製法等に由来して微量(例えば、研磨用組成物中における酸化剤のモル濃度が0.0005モル/L以下、好ましくは0.0001モル/L以下、より好ましくは0.00001モル/L以下、特に好ましくは0.000001モル/L以下)の酸化剤が不可避的に含まれている研磨用組成物は、ここでいう酸化剤を実質的に含有しない研磨用組成物の概念に包含され得る。
【0072】
<研磨液>
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、該研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液(研磨液の原液)との双方が包含される。ここに開示される研磨用組成物を含む研磨液の他の例として、該組成物のpHを調整してなる研磨液が挙げられる。
【0073】
研磨液のpHは、好ましくは8.0以上、より好ましくは9.0以上、さらに好ましくは9.5以上、一層好ましくは10.0以上である。研磨液のpHが高くなると、研磨レートが向上する傾向にある。またpHは、研磨液中の砥粒の安定性等の観点から、好ましくは12.0以下、より好ましくは11.5以下、さらに好ましくは11.0以下である。上記pHは、シリコンウェーハの研磨に用いられる研磨液に好ましく適用され得る。研磨液のpHは、pHメータ(例えば、堀場製作所製のガラス電極式水素イオン濃度指示計(型番F−23))を使用し、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液 pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液 pH:6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液 pH:10.01(25℃))を用いて3点校正した後で、ガラス電極を研磨液に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定することにより把握することができる。
【0074】
<濃縮液>
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨液の濃縮液の形態)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば、体積換算で2倍〜100倍程度とすることができ、通常は5倍〜50倍程度が適当である。好ましい一態様に係る研磨用組成物の濃縮倍率は10倍〜40倍である。
【0075】
このように濃縮液の形態にある研磨用組成物は、所望のタイミングで希釈して研磨液を調製し、その研磨液を研磨対象物に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、典型的には、上記濃縮液に前述の水系溶媒を加えて混合することにより行うことができる。また、上記水系溶媒が混合溶媒である場合、該水系溶媒の構成成分のうち一部の成分のみを加えて希釈してもよく、それらの構成成分を上記水系溶媒とは異なる量比で含む混合溶媒を加えて希釈してもよい。また、後述するように多剤型の研磨用組成物においては、それらのうち一部の剤を希釈した後に他の剤と混合して研磨液を調製してもよく、複数の剤を混合した後にその混合物を希釈して研磨液を調製してもよい。
【0076】
上記濃縮液における砥粒の含有量は、研磨用組成物の安定性(例えば、砥粒の分散安定性)や濾過性等の観点から、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、砥粒の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、一層好ましくは15重量%以上である。
【0077】
ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分(典型的には、水系溶媒以外の成分)のうち一部の成分を含むA液と、残りの成分を含むB液とが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。
【0078】
<研磨用組成物の調製>
ここに開示される研磨用組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いて、研磨用組成物に含まれる各成分を混合するとよい。これらの成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。
【0079】
<用途>
ここに開示される研磨用組成物は、種々の材質および形状を有する研磨対象物の研磨に適用され得る。研磨対象物の材質は、例えば、金属または半金属、またはこれらの合金(例えばシリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼、ゲルマニウム)、ガラス状物質(例えば石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス状カーボン)、セラミック材料(例えばアルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン)、化合物半導体基板材料(例えば炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等)、樹脂材料(例えばポリイミド樹脂)等であり得る。これらのうち複数の材質により構成された研磨対象物であってもよい。なかでも、シリコンからなる表面を備えた研磨対象物(例えば、シリコン単結晶ウェーハなどのシリコン材料)の研磨に好適である。ここに開示される技術は、典型的には、砥粒としてシリカ粒子のみを含み、かつ研磨対象物がシリコン材料である研磨用組成物に対して特に好ましく適用され得る。
研磨対象物の形状は特に制限されない。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、板状や多面体状等の、平面を有する研磨対象物、または研磨対象物の端部の研磨(例えばウェーハエッジの研磨)に好ましく適用され得る。
【0080】
<研磨装置>
続いて、研磨装置についての説明を行う。図1は、本発明の一実施形態による片面研磨装置を示す斜視図である。図1に示すように、片面研磨装置11は、上面に研磨パッド14が貼り付けられた円板状の回転定盤12を備えている。回転定盤12は、図3の矢印13a方向に回転する第1シャフト13に対して一体回転可能に設けられている。回転定盤12の上方には少なくとも一つの研磨対象物ホルダ15が設けられている。研磨対象物ホルダ15は、図3の矢印16a方向に回転する第2シャフト16に対して一体回転可能に設けられている。研磨対象物ホルダ15の底面には、セラミックプレート17および図示しないウレタンシートを介して、研磨対象物保持孔18を有する研磨対象物保持プレート19が取り外し可能に取り付けられている。片面研磨装置11は、研磨用組成物供給機21および図示しないリンス用組成物供給機をさらに備えていてもよい。研磨用組成物供給機21は、ノズル21aを通じて、研磨液を吐出し、また、図示しないリンス用組成物供給機からは図示しないノズルを通じてリンス用組成物が吐出されてもよい。その場合、研磨用組成物供給機21に代わってリンス用組成物供給機が回転定盤12の上方に配置される。片面研磨装置11の稼働条件を研磨用の設定からリンス用の設定に切り替えた後、リンス用組成物供給機からリンス用組成物が吐出されて研磨パッド14上にリンス用組成物が供給される。これにより、研磨パッド14と接する研磨対象物の面がリンスされる。なおリンス用組成物は、研磨用組成物供給機21のノズル21aを通じて吐出されてもよい。
【0081】
研磨対象物を研磨するときには、図1に示すように研磨用組成物供給機21が、回転定盤12の上方に配置される。研磨対象物は研磨対象物保持孔18内に吸引されて研磨対象物ホルダ15に保持される。まず、研磨対象物ホルダ15および回転定盤12の回転が開始され、研磨用組成物供給機21からは研磨液、あるいは場合によってはリンス用組成物が吐出されて研磨パッド14上に供給される。そして、研磨対象物を研磨パッド14に押し付けるべく、研磨対象物ホルダ15が回転定盤12に向かって移動させられる。これにより、研磨パッド14と接する研磨対象物の片面が研磨され、あるいはリンスされる。研磨パッドは、特に限定されず、ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもの等のいずれを用いてもよい。
【0082】
また、研磨パッドが貼り付けられた円板状の回転定盤をもう一つ備えることで、図1に示す仕上げ研磨装置を、研磨対象物の両面を研磨する予備研磨装置として利用することができる。図2は、本発明の一実施形態による両面研磨装置を示す斜視図である。
図2に示されるように、両面研磨装置の一実施形態としては、研磨パッドが貼り付けられた円板状の回転定盤をさらに上部に設けて、研磨パッド14が貼り付けられた上部回転定盤(上定盤24)とし、下定盤23に貼り付けられた研磨パッド14と、上定盤24に貼り付けられた研磨パッド14とで、研磨対象物保持孔18に保持された研磨対象物を挟持する。上部回転定盤は、研磨用組成物供給機21から吐出された予備研磨用組成物や、仕上げ研磨用組成物(好ましくは予備研磨用組成物)(あるいは場合によってリンス用組成物)が下部に流れ出るようにする通流孔(研磨用組成物供給樋26)を有している。
上部回転定盤(上定盤24)と、下部回転定盤(下定盤23)とは、矢印13a、矢印16aで示されるように、互いに逆方向に回転し、研磨用組成物供給機21からは、予備研磨用組成物、仕上げ研磨用組成物、あるいは場合によってはリンス用組成物が吐出されて、両方の研磨パッド14が研磨対象物の両面を押し付けながら回転することで、研磨対象物の両面が研磨され、あるいはリンスされる。
【0083】
図2に示されるように、両面研磨装置22では、図1に図示された研磨対象物ホルダ15は不要であるが、代わりに一つの研磨対象物保持孔18を有する研磨対象物保持プレート19が必要になり、それら全体を研磨対象物ホルダあるいは加工キャリア25と呼ぶ。図2で示される形態によれば、1つの保持プレートあたり1枚の研磨対象物が入っており、それを3つ備えているが、別の形態によれば、1枚の研磨対象物が入る保持プレートを5つ備える場合や1つの保持プレートに研磨対象物が3枚入る場合もある。本発明では、いかような装置を用いることも可能であり、保持プレートの数にも、一つの保持プレートが保持する研磨対象物の数にも特に制限されず、従来公知の装置を、そのまま、あるいは適宜改良して使用することができる。
【0084】
なお本発明において、研磨対象物保持具とは、片面研磨装置においては研磨対象物保持プレート19を、両面研磨装置においては加工キャリア25を指す。
【0085】
<研磨>
ここに開示される研磨用組成物は、シリコン基板等のシリコン材料(例えば、単結晶または多結晶のシリコンウェーハ、特にシリコン単結晶ウェーハ)を研磨するための研磨用組成物として好ましく使用され得る。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に、濃度調整(例えば希釈)、pH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、上記研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。また、多剤型の研磨用組成物の場合、上記研磨液を用意することには、それらの剤を混合すること、該混合の前に1または複数の剤を希釈すること、該混合の後にその混合物を希釈すること、等が含まれ得る。
【0086】
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、シリコン基板の1次研磨工程(典型的には両面研磨工程)を行う場合には、ラッピング工程を経たシリコン基板を一般的な研磨装置にセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記シリコン基板の研磨対象面に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、シリコン基板の研磨対象面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。その後、必要に応じてさらなる2次研磨工程(典型的には片面研磨工程)を経て、最終的にファイナルポリシングを行って研磨対象物の研磨が完了する。
【0087】
ここに開示される研磨用組成物は、いったん研磨に使用したら使い捨てにする態様(いわゆる「かけ流し」)で使用されてもよいし、循環して繰り返し使用されてもよい。研磨用組成物を循環使用する方法の一例として、研磨装置から排出される使用済みの研磨用組成物をタンク内に回収し、回収した研磨用組成物を再度研磨装置に供給する方法が挙げられる。研磨用組成物を循環使用する場合には、かけ流しで使用する場合に比べて、廃液として処理される使用済みの研磨用組成物の量が減ることにより環境負荷を低減できる。また、研磨用組成物の使用量が減ることによりコストを抑えることができる。
なお、ここに開示される研磨用組成物を循環使用する場合、その使用中の研磨用組成物に、任意のタイミングで、新たな成分、使用により減少した成分または増加させることが望ましい成分を添加してもよい。
【0088】
好ましい一態様において、上記研磨用組成物を用いる基板研磨工程は、ファイナルポリシングよりも上流のポリシング工程である。なかでも、ラッピング工程を終えた基板の予備ポリシングに好ましく適用することができる。例えば、ラッピング工程を経た基板に対して行われる両面研磨工程(典型的には、両面研磨装置を用いて行われる1次研磨工程)や、該両面研磨工程を経た基板に対して行われる最初の片面研磨工程(典型的には最初の2次研磨工程)において、ここに開示される研磨用組成物が好ましく使用され得る。さらには、両面研磨装置を用いて行われる1次研磨工程において、ここに開示される研磨用組成物がより好ましく使用され得る。
【0089】
<実施例>
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0090】
<研磨用組成物の調製>
下記の研磨用組成物A〜Eを調整し、実施例1では、研磨用組成物Aを、実施例2では、研磨用組成物Bを、実施例3および比較例1、3、4では研磨用組成物Cを、比較例2では研磨用組成物Dを、比較例5では研磨用組成物Eを使用した。
(研磨用組成物A)
砥粒としてのコロイダルシリカ(平均一次粒子径が35nm、平均二次粒子径が68nm)を0.29重量%と、塩基性化合物としての水酸化テトラメチルアンモニウムを0.063重量%と、残部の純水とを混合して、実施例2の研磨用組成物を調製した。研磨用組成物のpHは10.8であった。
【0091】
(研磨用組成物B)
砥粒としてのコロイダルシリカ(平均一次粒子径が35nm、平均二次粒子径が68nm)を0.29重量%と、塩としての炭酸カリウムを0.095重量%と、塩基性化合物としての水酸化テトラメチルアンモニウムを0.14重量%と、残部の純水とを混合して、実施例2の研磨用組成物を調製した。研磨用組成物のpHは10.7であった。
【0092】
(研磨用組成物C)
砥粒としてのコロイダルシリカ(平均一次粒子径が51nm、平均二次粒子径が101nm)を1.17重量%と、水溶性高分子としてのポリビニルピロリドン(重量平均分子量45,000)を0.00024重量%と、塩としての炭酸カリウムを0.037重量%と、塩基性化合物としての水酸化テトラメチルアンモニウムを0.057重量%ならびに水酸化カリウム0.0043重量%と、残部の純水とを混合して、実施例1の研磨用組成物を調製した。研磨用組成物のpHは10.5であった。
【0093】
(研磨用組成物D)
砥粒としてのコロイダルシリカ(平均一次粒子径が35nm、平均二次粒子径が68nm)を0.29重量%と、水溶性高分子としてのポリビニルピロリドン(重量平均分子量45,000)を0.0014重量%と、塩としての炭酸カリウムを0.15重量%と、塩基性化合物としての水酸化テトラメチルアンモニウムを0.14重量%と、残部の純水とを混合して、実施例2の研磨用組成物を調製した。研磨用組成物のpHは10.7であった。
【0094】
(研磨用組成物E)
砥粒としてのコロイダルシリカ(平均一次粒子径が51nm、平均二次粒子径が101nm)を1.08重量%と、水溶性高分子としてのポリビニルピロリドン(重量平均分子量45,000)を0.00022重量%と、塩としての炭酸カリウムを0.033重量%と、塩基性化合物としての水酸化テトラメチルアンモニウムを0.051重量%と、水酸化カリウム0.0039重量%ならびにヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量1200000)を0.01重量%と、残部の純水とを混合して、実施例5の研磨用組成物を調製した。研磨用組成物のpHは10.5であった。
【0095】
<研磨パッド>
研磨パッドとして、実施例1、2、3、比較例2においてはニッタ・ハース株式会社製 MH−S15Aを用い、比較例1、3、4、5においてはニッタ・ハース株式会社製 SUBA800を用いた。
【0096】
<研磨対象物保持具>
研磨対象物保持具として、実施例1、2、3、比較例2においてはSUS304製加工キャリアを用い、比較例1、3、5においてはガラスエポキシ製加工キャリアを用い、比較例4においてはスピードファム製 DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングキャリアを用いた。
【0097】
<研磨用組成物の研磨パッドに対する後退接触角の測定>
各例に係る研磨用組成物の研磨パッドに対する後退接触角Cpを、以下の手順に基づいて測定した。
(1P)新品の研磨パッドを協和界面科学株式会社製動的接触角測定装置DM−501上に設置する。
(2P)上記研磨パッドに研磨用組成物30μLを滴下する。
(3P)研磨用組成物を滴下して1°/秒の速度で上記研磨パッドを傾けていき、10秒後の後退接触角を測定する。
得られた結果を表1に示す。
【0098】
<研磨用組成物の研磨対象物に対する後退接触角の測定>
各例に係る研磨用組成物の研磨対象物に対する後退接触角Cwを、以下の手順に基づいて測定した。
(1W)予め鏡面化ならびに自然酸化膜を除去した研磨対象物(300mmシリコンウェーハ、伝導型P型、結晶方位<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満)を協和界面科学株式会社製動的接触角測定装置DM−501上に設置する。
(2W)上記研磨対象物に研磨用組成物30μLを滴下する。
(3W)研磨用組成物を滴下して1°/秒の速度で上記研磨対象物を傾けていき、10秒後の後退接触角を測定する。
得られた結果を表1に示す。
【0099】
<研磨用組成物の研磨対象物保持具に対する後退接触角の測定>
各例に係る研磨用組成物の研磨対象物保持具に対する後退接触角をCcは、以下の手順に基づいて測定した。
(1C)新品の研磨対象物保持具を協和界面科学株式会社製動的接触角測定装置DM−501上に設置する。
(2C)上記研磨対象物保持具に研磨用組成物30μLを滴下する。
(3C)研磨用組成物を滴下して1°/秒の速度で上記研磨対象物保持具を傾けていき、10秒後の後退接触角を測定する。
得られた結果を表1に示す。
【0100】
<研磨用組成物の研磨パッドに対する動的表面張力の測定>
各例に係る研磨用組成物の研磨パッドに対する動的表面張力Tpを、以下の手順に基づいて測定した。
(1p)新品の研磨パッドを25mm×40mmの大きさに切る。
(2p)上記研磨パッドを取り出し、研磨用組成物に1分間浸漬する。
(3p)上記研磨パッドを取り出し、イオン交換水を入れた容器に1秒間浸漬する。
(4p)上記研磨パッドを取り出し、エアーガンなどで過剰な水を飛ばしきるまで空気を吹き付ける。
(5p)上記研磨パッドを株式会社レスカ製動的濡れ性試験機6200TNに設置する。
(6p)上記研磨パッドを動的濡れ性試験機にあらかじめ設置した研磨用組成物中に0.2mm/秒の速度で10mm浸漬し、2秒間保持する。
(7p)上記研磨パッドを0.2mm/秒の速度で引き上げる。
(8p)上記の試験による前進濡れ応力を測定する。
得られた結果を表2に示す。
【0101】
<研磨用組成物の研磨対象物に対する動的表面張力の測定>
各例に係る研磨用組成物の研磨対象物に対する動的表面張力Twを、以下の手順に基づいて測定した。
(1w)新品の研磨対象物を25mm×40mmの大きさに切る。
(2w)上記研磨対象物をアンモニア:過酸化水素:イオン交換水=1:1:30(体積比)の薬液に60秒間浸漬する。
(3w)上記研磨対象物を取り出し、上記研磨対象物を5%フッ化水素酸に60秒間浸漬する。
(4w)上記研磨対象物を取り出し、研磨用組成物に1分間浸漬する。
(5w)上記研磨対象物を取り出し、イオン交換水を入れた容器に1秒間浸漬する。
(6w)上記研磨対象物を取り出し、エアーガンなどで過剰な水を飛ばしきるまで空気を吹き付ける。
(7w)上記研磨対象物を株式会社レスカ製動的濡れ性試験機6200TNに設置する。
(8w)上記研磨対象物を動的濡れ性試験機にあらかじめ設置した研磨用組成物中に0.2mm/秒の速度で10mm浸漬し、2秒間保持する。
(9w)上記研磨対象物を0.2mm/秒の速度で引き上げる。
(10w)上記の試験による前進濡れ応力を測定する。
得られた結果を表2に示す。
【0102】
<研磨用組成物の研磨対象物保持具に対する動的表面張力の測定>
各例に係る研磨用組成物の研磨対象物保持具に対する動的表面張力Tcは、以下の手順に基づいて測定した。
(1c)新品の研磨対象物保持具を25mm×40mmの大きさに切る。
(2c)上記研磨対象物保持具をアンモニア:過酸化水素:イオン交換水=1:1:30(体積比)の薬液に60秒間浸漬する。
(3c)上記研磨対象物保持具を取り出し、上記研磨対象物を5%フッ化水素酸に60秒間浸漬する。
(4c)上記研磨対象物保持具を取り出し、研磨用組成物に1分間浸漬する。
(5c)上記研磨対象物保持具を取り出し、イオン交換水を入れた容器に1秒間浸漬する。
(6c)上記研磨対象物保持具を取り出し、エアーガンなどで過剰な水を飛ばしきるまで空気を吹き付ける。
(7c)上記研磨対象物保持具を株式会社レスカ製動的濡れ性試験機6200TNに設置する。
(8c)上記研磨対象物保持具を動的濡れ性試験機にあらかじめ設置した研磨用組成物中に0.2mm/秒の速度で10mm浸漬し、2秒間保持する。
(9c)上記研磨対象物保持具を0.2mm/秒の速度で引き上げる。
(10c)上記の試験による前進濡れ応力を測定する。
得られた結果を表2に示す。
【0103】
<平坦度の評価>
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、シリコンウェーハに対して研磨試験を行い、以下の条件で研磨し、平坦度をSFQRの値で評価した。SFQRはシリコンウェーハ上の指定されたサイズ内の表面基準厚さ偏差を示し、数値が小さいほど平坦度が良好であることを示す指標である。研磨対象物は上述と同じもの(厚さは785μm)を用いた。結果を表1、表2に示す。
[研磨条件]
研磨装置:スピードファム株式会社製両面研磨機、型式「DSM20B−5P−4D」
研磨圧力:17.5kPa
上定盤回転数:20回転/分(反時計回り)
下定盤回転数:20回転/分(時計回り)
研磨液の供給レート:4.5L/分(100Lの研磨液を循環使用)
研磨液の温度:25℃
研磨取り代:10μm
[評価条件]
評価装置:黒田精工株式会社製基板平坦度測定装置、型式「ナノメトロ300TT」
評価項目:サイトサイズ25mm×25mm(エッジ除外領域2mm)のSFQRのうち、ウェーハ外周部の32箇所のSFQRの平均値(以下、「SFQR」)
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
表1に示されるように、Ccが最も小さい研磨液を使用した実施例1および2は、Cc以外が最も小さい比較例1および2に比べて、基板の平坦度を示すSFQRの値が明らかに良好であった。
【0107】
また表2に示されるように、Tcが最も大きい研磨液を使用した実施例3は、Tc以外が最も大きい比較例3、4、5に比べて、基板の平坦度を示すSFQRの値が明らかに良好であった。
【0108】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0109】
11 片面研磨装置、
14 研磨パッド、
12 回転定盤、
13a 矢印、
13 第1シャフト、
15 研磨対象物ホルダ、
16a 矢印、
16 第2シャフト、
17 セラミックプレート、
18 研磨対象物保持孔、
19 研磨対象物保持プレート、
21 研磨用組成物供給機、
21a ノズル、
22 両面研磨装置
23 下定盤、
24 上定盤、
25 加工キャリア、
26 研磨用組成物供給樋。
【図1】
【図2】
【国際調査報告】