(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2017115799
(43)【国際公開日】20170706
【発行日】20181025
(54)【発明の名称】ポリオレフィン微多孔膜とその製造方法、積層ポリオレフィン微多孔膜、ロール及びポリオレフィン微多孔膜の評価方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20180928BHJP
【FI】
   !C08J9/28 101
   !C08J9/28CES
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】2017559208
(21)【国際出願番号】JP2016088906
(22)【国際出願日】20161227
(31)【優先権主張番号】2015256942
(32)【優先日】20151228
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】金田 敏彦
【住所又は居所】栃木県那須塩原市井口1190番13 東レ株式会社 那須工場内
(72)【発明者】
【氏名】又野 孝一
【住所又は居所】栃木県那須塩原市井口1190番13 東レ株式会社 那須工場内
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AA18
4F074AA98
4F074AB01
4F074CB34
4F074CB44
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4F074CC02Z
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4F074DA02
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4F074DA10
4F074DA22
4F074DA23
4F074DA43
4F074DA49
(57)【要約】
巻き取り性及び塗工性に優れたポリオレフィン微多孔膜を提供。
膜表面に平行な面内で製膜時の長さ方向に対して45°の角度をなす45°方向、及び45°方向と同じ向きに135°の角度をなす135°方向について、ラマン分光法による測定値から得られる、45°方向に対応する配向パラメータと135°方向に対応する配向パラメータとの比が0.91超1.10未満であるポリオレフィン微多孔膜などによる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜表面に平行な面内で、製膜時の長さ方向に対して45°の角度をなす45°方向、及び、前記長さ方向に対して前記45°方向と同じ向きに135°の角度をなす135°方向について、ラマン分光法による測定値から得られる、前記45°方向に対応する配向パラメータと前記135°方向に対応する配向パラメータとの比が0.91超1.10未満であるポリオレフィン微多孔膜。
【請求項2】
前記長さ方向に対して、0°、45°、90°及び135°の角度を同じ向きになす、0°方向、45°方向、90°方向、及び、135°方向について、前記0°方向、45°方向、90°方向及び135°方向に対応する配向パラメータのうち、これらの最大値と最小値との比(Rmin/Rmax)が0.9以上1以下である請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項3】
前記長さ方向に対して0°、45°、90°及び135°の角度を同じ向きになす、0°方向、45°方向、90°方向、及び、135°方向について、前記45°方向に対応する配向パラメータ及び前記135°方向に対応する配向パラメータの両方の値が、前記0°方向に対応する配向パラメータ及び前記90°方向に対応する配向パラメータの値うち、いずれか小さい方の値に対して、0.5倍以上0.95倍以下である請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項4】
前記0°方向に対応する配向パラメータが3以上6以下であり、前記90°方向に対応する配向パラメータが2以上5以下である請求項3に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項5】
前記45°方向及び前記135°方向に対応する配向パラメータが2以上3.5以下である請求項3又は4に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項6】
高密度ポリエチレンを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項7】
膜厚が1μm以上20μm以下である請求項1〜6に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に多孔質層を積層した積層ポリオレフィン微多孔膜。
【請求項9】
前記請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜または請求項8に記載の積層ポリオレフィン微多孔膜からなるロール。
【請求項10】
ポリオレフィン微多孔膜を備えるロールであって、前記ポリオレフィン微多孔膜の一方の表面の面内で、巻出し方向に対して反時計回りに45°の角度をなす45°方向、及び、反時計回りに135°の角度をなす135°方向について、ラマン分光法による測定値から得られる、前記45°方向に対応する配向パラメータと前記135°方向に対応する配向パラメータとの比が0.91超1.10未満であるポリオレフィン微多孔膜を備えるロール。
【請求項11】
ポリオレフィン微多孔膜の表面に平行な面内で製膜時の長さ方向に対して45°の角度をなす45°方向、及び、前記長さ方向に対して、前記45°方向と同じ向きに135°の角度をなす135°方向について、ラマン分光法による測定値から得られる、前記45°方向に対応する配向パラメータと前記135°方向に対応する配向パラメータとの比を0.91超1.10未満の範囲に制御することを含む、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項12】
前記長さ方向に対して0°、45°、90°及び135°の角度を同じ向きになす、0°方向、45°方向、90°方向、及び、135°方向について、前記0°方向、45°方向、90°方向及び135°方向に対応する配向パラメータのうち、最大値と最小値との比(Rmin/Rmax)を0.9以上1以下の範囲に制御することを含む、請求項11に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項13】
前記長さ方向に対して0°、45°、90°及び135°の角度を同じ向きになす、0°方向、45°方向、90°方向、及び、135°方向について、前記45°方向に対応する配向パラメータ及び前記135°方向に対応する配向パラメータの両方を、前記0°方向に対応する配向パラメータ及び前記90°方向に対応する配向パラメータのうちいずれか小さい値の方の配向パラメータに対して、0.5倍以上0.95倍以下の範囲に制御することを含む、請求項11に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項14】
膜表面に平行な面内で、製膜時の長さ方向に対して45°の角度をなす45°方向、及び、前記長さ方向に対して前記45°方向と同じ向きに135°の角度をなす135°方向について、ラマン分光法により測定される45°方向に対応する配向パラメータと135°方向に対応する配向パラメータとの比を算出するポリオレフィン微多孔膜の評価方法。
【請求項15】
前記45°方向の配向パラメータと135°方向の配向パラメータとの比が0.91超1.10未満であるかどうかを判定する請求項14に記載のポリオレフィン微多孔膜の評価方法。
【請求項16】
前記比を用いて、巻き取り性又は塗工性を評価する請求項14又は15に記載のポリオレフィン微多孔膜の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン微多孔膜とその製造方法、積層ポリオレフィン微多孔膜、ロール及びポリオレフィン微多孔膜の評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン微多孔膜は、ろ過膜、透析膜などのフィルター、電池用セパレータやコンデンサー用のセパレータなどの種々の分野に用いられる。これらの中でも、ポリオレフィン微多孔膜は、耐薬品性、絶縁性、機械的強度などに優れ、シャットダウン特性を有するため、近年、二次電池用セパレータとして広く用いられる。
【0003】
二次電池用セパレータは、二次電池の高エネルギー密度化及び小型化に伴い、薄膜化が要求される。薄膜化したポリオレフィン微多孔膜は、巻き取り装置により巻き取られロールを製造する際に、シワや巻ずれ等の巻き取り性に関する問題が発生しやすい。また、ポリオレフィン微多孔膜は、その表面の少なくとも一方に他の層を積層する場合がある。薄膜化、広幅化したポリオレフィン微多孔膜において、他の層をコーティングする際、膜表面全体において、均一な塗工性が要求される。
【0004】
例えば、特許文献1には、ロールから巻き直した際の巻きずれの少ないポリオレフィン微多孔膜巻回物が記載されている。この微多孔膜巻回物は、裏表の摩擦係数を1.5以下とすることにより、巻き直しの際の巻き取り性が良好となることが開示されている。しかしながら、ポリオレフィン微多孔膜のさらなる薄膜化に伴い、ポリオレフィン微多孔膜を巻き取ったり、二次加工をしたりする際の、巻き取り性及び塗工性のさらなる向上が求められている。
【0005】
一方、ポリエステル系フィルムやポリプロピレン系樹脂フィルムをラマン分光法により算出された配向パラメータで規定することや、評価する方法がこれまでに報告されている(例えば、特許文献2〜5)。しかしながら、特許文献2〜5に記載の配向パラメータは、膜表面の長さ方向(MD方向)、長さ方向に垂直な幅方向(TD方向)又は、膜の厚さ方向の配向パラメータのみが測定されており、これら以外の他の方向については開示されていない。さらに、ポリオレフィン微多孔膜において、特定の方向に対応する配向パラメータと巻き取り性及び塗工性との関係についても一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−099799号公報
【特許文献2】特開2013−155223号公報
【特許文献3】特開2012−036286号公報
【特許文献4】特開2010−060516号公報
【特許文献5】特開2010−058455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、ポリオレフィン微多孔膜の特定の方向における配向パラメータに着目するという新規の着想に基づき、巻き取り性及び塗工性に優れるポリオレフィン微多孔膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様のポリオレフィン微多孔膜は、膜表面に平行な面内で、製膜時の長さ方向に対して45°の角度をなす45°方向、及び、前記長さ方向に対して前記45°方向と同じ向きに135°の角度をなす135°方向について、ラマン分光法による測定値から得られる、前記45°方向に対応する配向パラメータと前記135°方向に対応する配向パラメータとの比が0.91超1.10未満である。
【0009】
また、長さ方向に対して0°、45°、90°及び135°の角度を同じ向きになす0°方向、45°方向、90°方向、及び、135°方向について、0°方向、45°方向、90°方向及び135°方向に対応する配向パラメータのうち、これらの最大値と最小値との比(Rmin/Rmax)が0.9以上1以下であってもよい。また、長さ方向に対して0°、45°、90°及び135°の角度を同じ向きになす0°方向、45°方向、90°方向、及び、135°方向について、45°方向に対応する配向パラメータ及び135°方向に対応する配向パラメータの両方の値が、0°方向に対応する配向パラメータ及び90°方向に対応する配向パラメータの値のうち、いずれか小さい方の値に対して、0.5倍以上0.95倍以下であってもよい。また、0°方向に対応する配向パラメータが3以上6以下であり、90°方向に対応する配向パラメータが2以上5以下であってもよい。また、45°方向及び135°方向に対応する配向パラメータが2以上3.5以下であってもよい。また、ポリオレフィン微多孔膜は、高密度ポリエチレンを含んでもよい。また、ポリオレフィン微多孔膜は、膜厚が1μm以上20μm以下であってもよい。
【0010】
本発明の第2の態様の積層ポリオレフィン微多孔膜は、上記ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に多孔質層を積層してなる。
【0011】
本発明の第3の態様のロールは、上記ポリオレフィン微多孔膜からなる。
【0012】
本発明の第4の態様のロールは、ポリオレフィン微多孔膜を備えるロールであって、ポリオレフィン微多孔膜の一方の表面の面内で、巻出し方向に対して反時計回りに45°の角度をなす45°方向、及び、反時計回りに135°の角度をなす135°方向について、ラマン分光法による測定値から得られる、45°方向に対応する配向パラメータと135°方向に対応する配向パラメータとの比が0.91超1.10未満であるポリオレフィン微多孔膜を備える。
【0013】
本発明の第5の態様のポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、ポリオレフィン微多孔膜の表面に平行な面内で製膜時の長さ方向に対して45°の角度をなす45°方向、及び45°方向と同じ向きに135°の角度をなす135°方向について、ラマン分光法による測定値から得られる、45°方向に対応する配向パラメータと135°方向に対応する配向パラメータとの比を0.9超1.1未満の範囲に制御することを含む。
【0014】
また、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、長さ方向に対して0°、45°、90°及び135°の角度を同じ向きになすそれぞれ方向について、0°方向、45°方向、90°方向及び135°方向に対応する配向パラメータのうち、最大値と最小値との比(Rmin/Rmax)を0.9以上1以下の範囲に制御することを含んでもよい。また、長さ方向に対して0°、45°、90°及び135°の角度を同じ向きになすそれぞれの方向について、45°方向に対応する配向パラメータ及び135°方向に対応する配向パラメータの両方を、0°方向に対応する配向パラメータ及び90°方向に対応する配向パラメータのうちいずれか小さい値の方の配向パラメータに対して、0.5倍以上0.95倍以下の範囲に制御することを含んでもよい。
【0015】
本発明の第6の態様のポリオレフィン微多孔膜の評価方法は、製膜時の長さ方向を0°方向及び長さ方向に直交する方向を90°方向とした場合において、ラマン分光法により測定される45°方向の配向パラメータと135°方向の配向パラメータとの比を算出する。
【0016】
また、ポリオレフィン微多孔膜の評価方法は、45°方向の配向パラメータと135°方向の配向パラメータとの比が0.9超1.1未満であるかどうかを判定してもよい。また、上記比を用いて巻き取り性又は塗工性を評価してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、巻き取り性及び塗工性に優れる。また、その製造方法は、巻き取り性及び塗工性に優れたポリオレフィン微多孔膜を効率よく生産することができる。また、ポリオレフィン微多孔膜の評価方法は、ポリオレフィン微多孔膜の巻き取り性及び塗工性を二次加工前に簡便に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ポリオレフィン微多孔膜の面内方向におけるそれぞれの方向の一例を示す図である。
【図2】図2は、ポリオレフィン微多孔膜の面内方向における配向パラメータの分布パターンの一例を示す図である。
【図3】図3は、ポリオレフィン微多孔膜の評価方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、微多孔膜の表面(面内方向)に平行な面をXY平面とする。また、XY平面に垂直な方向(厚み方向)はZ方向とする。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。また、図面においては、各構成をわかりやすくするために、一部を強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造または形状、縮尺等が異なっている場合がある。
【0020】
図1は、本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜1(以下、「微多孔膜1」ともいう。)を示す図である。微多孔膜1のXY平面(面内方向)における方向は、図1に示すように、製膜時の長さ方向を0°方向(機械方向:MD方向)とする。また、0°方向に対して45°の角度をなす方向を45°方向とし、45°方向と同じ向きに90°の角度をなす方向を90°方向(幅方向:TD方向)とし、135°の角度をなす方向を135°方向とする。なお、図1では、各方向は、0°方向から反時計回りの方向としているが、時計回りの方向としてもよい。
【0021】
微多孔膜1は、45°方向に対応する配向パラメータ(R45°)と135°方向に対応する配向パラメータ(R135°)との比(R135°/R45°)が0.91超1.10未満である。R135°/R45°は、好ましくは0.92以上1.09以下であり、より好ましくは0.94以上1.06以下である。R135°/R45°が上記範囲である場合、微多孔膜1の巻き取り性及び塗工性をより向上できる。なお、配向パラメータは、後述するように、微多孔膜1の組成や製膜時の延伸倍率などを適宜調整することにより、上記範囲とすることができる。なお、R45°及びR135°の値は、特に限定されないが、例えば、1.7超5以下程度である。
【0022】
微多孔膜1において、45°方向に対応する配向パラメータ(R45°)と135°方向に対応する配向パラメータ(R135°)と値の差(|R135°−R45°|)は、特に限定されないが、例えば、0.5未満であり、好ましくは0.3未満であり、より好ましくは0.2未満である。R45°とR135°との値の差が小さい場合、微多孔膜1の巻き取り性及び塗工性がより向上する。
【0023】
配向パラメータは、偏光ラマン分光法により測定された1130cm−1と1060cm−1のピーク強度比(I1130/I1060)から算出される。1130cm−1と1060cm−1のピークは、それぞれC−C伸縮バンドの対称振動モードと逆対称振動モードに由来するものであり、これらはいずれも偏光角に対して強い異方性を示す。ピーク強度比(I1130/I1060)は、入射偏光方位における分子鎖配向度に相関するパラメータとなる。なお、配向パラメータは、1.7が無配向であり、1.7を上回る場合は、分子配向が進んでいることを示す。
【0024】
配向パラメータは、例えば、顕微ラマン分光装置を用いて0°方向、45°方向、90°方向及び135°方向に対応する偏光配置におけるラマンスペクトルから、1130cm−1と1060cm−1のピーク強度比(I1130/I1060)を算出して得ることができる。以下に測定条件を示す。
【0025】
(装置)
・測定装置は、顕微ラマン分光システムinVia(Renishaw社製)を用いた。
・180°後方散乱配置
・分光長250mm
・回折格子3000本/mm
・励起波長532nm(半導体レーザー2倍波)
・50倍対物レンズ(N.A.=0.75)
・スポットサイズ(空間分解能)5μm
【0026】
(偏光条件)
レーザーはフィルム面(XY平面)法線方向から垂直入射し、偏光子を用いて偏光とした。入射光と散乱光の偏光子は、平行に配置した。また、入射偏光面で試料を回転し、各方向のラマンスペクトルを得た。
(ピーク強度の算出)
各ピーク強度は、1020cm−1以上1160cm−1以下の領域で直線近似によりベースラインを取得し、ガウス、ローレンツ混合関数近似によるピークフィットを行って算出した。
【0027】
図2は、微多孔膜1の各方向の配向パラメータの分布パターンの一例を示した概念図である。微多孔膜1は、例えば、図2(A)〜(D)に示すような配向パラメータの分布パターンを有する。
【0028】
図2(A)は、各方向の配向パラメータの値が、比較的均一な分布パターン(丸型)を示す例である。この場合、例えば、0°、45°、90°及び135°方向に対応する配向パラメータのうち、これらの最大値と最小値との比(Rmin/Rmax)が0.9以上1以下とすることができる。また、Rmin/Rmaxは、その下限が好ましくは0.92以上であり、より好ましくは0.95以上である。Rmin/Rmaxは、その上限が1.0以下である。Rmin/Rmaxが上記範囲である場合、微多孔膜1は、それぞれの方向における分子配向度の均一性が向上し、巻き取り性及び塗工性が向上する。また、各方向における熱収縮率の均一性が向上する。
【0029】
上記の丸型の分布パターンを有する場合、微多孔膜1は、0°、45°、90°及び135°の各方向に対応する配向パラメータの下限が、例えば2.5以上である。また、各方向に対応する配向パラメータの上限が、例えば、4以下である。配向パラメータが上記範囲であることにより、よりバランスよく機械的強度に優れた微多孔膜1が得られる。
【0030】
図2(B)は、0°方向と90°方向とに対応する配向パラメータの値が、比較的異なり、かつ、45°方向と135°方向とに対応するそれぞれの配向パラメータの値が、0°方向及び90°方向の配向パラメータの値の中間値の近似値(ただし中間値を超えない)である分布パターン(楕円型)を示す例である。この場合、0°方向に対応する配向パラメータと90°方向に対応する配向パラメータとの比は、例えば、0.9未満又は1.1超である。また、例えば、45°方向及び135°方向に対応する配向パラメータが、0°方向及び90°方向に対応する配向パラメータのいずれか小さい方の配向パラメータに対して、0.95倍を超える。
【0031】
図2(C)及び図2(D)は、45°方向及び135°方向に対応する配向パラメータの両方の値が、0°方向及び90°方向に対応する配向パラメータのうちいずれか小さい方の値よりも、小さくなる分布パターン(十字型)を示す例である。この場合、45°方向及び135°方向に対応する配向パラメータの値は、0°方向及び90°方向に対応する配向パラメータのうちいずれか小さい方の値に対して、その上限が、例えば、0.95倍以下であり、好ましくは、0.9倍以下、より好ましくは0.85倍以下、さらに好ましくは0.8倍以下の値である。この場合、45°方向及び135°方向に対応する配向パラメータは、その下限は特に限定されないが、例えば、0°方向及び90°方向に対応する配向パラメータのうちいずれか小さい方の値に対して、0.5倍以上である。
【0032】
なお、図2(C)は、0°方向に対応する配向パラメータ(R0°)と90°方向に対応する配向パラメータ(R90°)との値がほぼ同じである分布パターン(例えば、R90°/R0°が0.8以上1.25以下である)を示す例であり、図2(D)は、0°方向に対応する配向パラメータの値の方が、90°方向に対応する配向パラメータの値よりもある程度大きい分布パターン(例えば、R90°/R0°が0.8未満である)を示す例である。なお、微多孔膜1は、0°方向に対応する配向パラメータの値の方が、90°方向に対応する配向パラメータの値よりもある程度小さい分布パターンを有してもよい(例えば、R90°/R0°が1.25超である)。
【0033】
上記の十字型の分布パターンを有する場合、微多孔膜1は、0°方向に対応する配向パラメータの下限が、例えば3以上であり、好ましくは4以上である。また、0°方向に対応する配向パラメータの上限は、6以下であり、好ましくは5以下である。また、90°方向に対応する配向パラメータの下限は、例えば、2以上であり、好ましくは2.5以上である。また、90°方向の配向パラメータの上限は、例えば5以下であり、好ましくは4以下である。配向パラメータが上記範囲であることにより、よりバランスよく機械的強度に優れた微多孔膜1が得られる。
【0034】
上記の十字型の分布パターンを有する場合、微多孔膜1は、45°方向及び135°方向に対応する配向パラメータの下限が、例えば1.7超であり、好ましくは2.0以上である。微多孔膜1は、45°方向及び135°方向に対応する配向パラメータの上限が、例えば3.5以下であり、好ましくは3.1以下である。配向パラメータが上記範囲であることにより、よりバランスよく機械的強度に優れた微多孔膜1が得られる。
【0035】
なお、微多孔膜1は、45°方向及び135°方向に対応する配向パラメータの比(R135°/R45°)が上記した範囲であれば、図2(A)〜(D)に示した以外の分布パターンを有してもよい。微多孔膜1は、例えば、45°方向と135°方向とに対応するそれぞれの配向パラメータの値が、0°方向及び90°方向の配向パラメータの値よりも大きくてもよい。また、図2(B)は、90°方向に対応する配向パラメータの値の方が、0°方向に対応する配向パラメータの値よりも大きい例を示すが、逆に、90°方向に対応する配向パラメータの値の方が、0°方向に対応する配向パラメータの値よりも小さくてもよい。
【0036】
微多孔膜1は、樹脂成分としてポリオレフィン樹脂を用いる。ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを含むことができる。ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が挙げられる。
【0037】
ポリエチレンの種類は、特に限定されず、種々のポリエチレンを用いることができ、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が用いられる。ポリエチレン系樹脂は、例えば、高密度ポリエチレン(密度:0.920g/m以上0.970g/m以下)を含む場合、突刺強度がより向上する。これらのポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、例えば1×10以上1×10未満程度である。
【0038】
例えば、高密度ポリエチレンの含有量は、ポリオレフィン樹脂成分全体100質量%に対して、50質量%以上である。例えば、高密度ポリエチレンを90質量%以上含有する場合、微多孔膜1の配向パラメータを、上記丸型の分布パターンに容易に制御しやすい傾向がある。高密度ポリエチレンの含有量は、その上限が、例えば100質量%以下であり、他の成分を含む場合は、例えば90質量%以下である。ポリオレフィン樹脂は、高密度ポリエチレンを含有した場合、溶融押出特性に優れ、均一な延伸加工特性に優れる。
【0039】
また、ポリエチレンは、超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)を含むことができる。超高分子量ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が1×10以上であり、好ましくは1×10以上8×10以下である。Mwが上記範囲であると、成形性が良好となる。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。超高分子量ポリエチレンは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができ、例えばMwの異なる二種以上の超高分子量ポリエチレン同士を混合して用いてもよい。
【0040】
超高分子量ポリエチレンは、ポリオレフィン樹脂全体100質量%に対して、例えば0質量%超60質量%以下含むことができる。例えば、超高分子量ポリエチレンの含有量が10質量%以上40質量%以下である場合、微多孔膜1の配向パラメータを、上記十字型の分布パターンに容易に制御しやすく、かつ押出し混練性などの生産性に優れる傾向がある。ポリオレフィン樹脂は、超高分子量ポリエチレンを含有した場合、微多孔膜1を薄膜化した際にも高い機械的強度、高い空孔率を得ることができる。
【0041】
ポリプロピレンの種類は、特に限定されず、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィン及び/又はジオレフィンとの共重合体(プロピレン共重合体)、あるいはこれらの混合物のいずれでも良いが、機械的強度及び貫通孔径の微小化等の観点から、プロピレンの単独重合体を用いることが好ましい。ポリオレフィン樹脂成分中のポリプロピレンの含有量は、例えば2.5質量%以上15質量%以下である。ポリプロピレンを上記範囲で含有することにより、耐熱性が向上する。
【0042】
なお、ポリオレフィン樹脂成分は、必要に応じて、ポリエチレン及びポリプロピレン以外のその他の樹脂成分を含むことができる。その他の樹脂成分としては、例えば、耐熱性樹脂等を用いることができる。また、微多孔膜1は、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤や充填剤、結晶造核剤、結晶化遅延剤等の各種添加剤を含有させてもよい。
【0043】
微多孔膜1の膜厚は、特に限定されないが、例えば、30μm以下である。膜厚は、その下限が好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。微多孔膜1の膜厚は、二次電池用セパレータとして用いる場合、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。膜厚が上記範囲であると、微多孔膜1を電池用セパレータとして使用した場合、電池容量が向上する。微多孔膜1は、薄膜化した際でも、良好な巻き取り性及び塗工性を有する。
【0044】
微多孔膜1の空孔率は、特に限定されないが、例えば、10%以上である。微多孔膜1の空孔率は、二次電池用セパレータとして用いる場合、その下限は、好ましくは20%以上であり、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上である。空孔率の下限が上記範囲であることにより、電解液の保持量を高め、高いイオン透過性を確保することができる。空孔率の上限は、特に限定されないが、例えば70%以下程度である。空孔率は、ポリオレフィン樹脂の構成成分の配合および、延伸工程における延伸倍率などを調節することにより、上記範囲とできる。
【0045】
なお、空孔率は、微多孔質膜の重量wとそれと等価な空孔のないポリマーの重量w(幅、長さ、組成の同じポリマー)とを比較した、以下の式(1)によって、測定できる。
空孔率(%)=(w−w)/w×100・・・(1)
【0046】
微多孔膜1のガーレー値は、特に限定されないが、例えば、膜厚20μmで換算したガーレー値(透気抵抗度)の下限が100sec/100cm以上である。微多孔膜1のガーレー値は、二次電池用セパレータとして用いる場合、好ましくは200sec/100cm以上であり、より好ましくは250sec/100cm以上である。また、ガーレーの上限が1000sec/100cm以下である。ガーレーが上記範囲であることにより、電池セパレータとして用いた場合、イオン透過性に優れ、インピーダンスが低下し電池出力が向上する。ガーレー値は、ゲル状シート、乾燥後微多孔膜の延伸条件などを調節することにより、上記範囲とすることができる。
【0047】
ガーレー値は、膜厚T(μm)の微多孔膜に対して、JIS P−8117に準拠して、透気度計(旭精工株式会社製、EGO−1T)で測定したガーレー値P(sec/100cc)を、式:P=(P×20)/Tにより、膜厚を20μmとしたときのガーレー値Pに換算して得る値(sec/100cc/20μm)である。
【0048】
微多孔膜1の膜厚20μmに換算した突刺強度は、例えば、下限が250gf/20μm以上であり、好ましくは280gf/20μm以上、より好ましくは300gf/20μm以上、さらに好ましくは320gf/20μm以上である。突刺強度の上限は特に限定されないが、1500gf/20μm程度である。突刺強度が上記範囲であることにより、薄膜化した場合においても機械的強度に優れ、電池用セパレータとして用いた場合、衝撃による破膜、短絡が防止され安全性に優れる。突刺強度は、ポリオレフィン樹脂中のポリプロピレン含有量や超高分子量ポリエチレンの含有量、延伸工程における延伸倍率などを調節することにより、上記範囲に制御できる。
【0049】
突刺強度は、最大荷重の測定値L(gf)を、式:L=(L×20)/Tにより、膜厚を20μmとしたときの最大荷重Lに換算した値である。最大荷重の測定値L(gf)は、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、膜厚T(μm)の微多孔質膜を2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重を測定した。
【0050】
微多孔膜1の各方向の105℃熱収縮率は、例えば、0.1%以上10%以下程度である。熱収縮率が上記範囲であることにより、微多孔膜を使用した製品の耐熱性、耐久性が向上し、製品の長寿命化が期待できる。微多孔膜1の105℃熱収縮率は、試験片(微多孔膜1)を105℃の温度にて8時間熱処理し、熱処理前の各方向の試験片の大きさ(L1)と熱処理後の試験片の各方向の大きさ(L2)とを測定し、各方向において、L1を100%としたときの、L2の収縮率を式:[100−(L2/L1)×100](%)により算出した値である。
【0051】
本実施形態の微多孔膜1の製造方法は、微多孔膜の表面に平行な面内で製膜時の長さ方向に対して45°の角度をなす45°方向、及び45°方向と同じ向きに135°の角度をなす135°方向について、ラマン分光法による測定値から得られる、45°方向に対応する配向パラメータと前記135°方向に対応する配向パラメータとの比を0.91超1.10未満の範囲に制御することを含む。配向パラメータは、公知の製膜方法において、ポリオレフィン樹脂の組成及びMD方向及びTD方向の延伸倍率、熱固定時のMD方向およびTD方向の延伸条件(倍率、温度、張力)を適宜調整することにより、上記の範囲とすることができる。
【0052】
微多孔膜1の製造方法は、配向パラメータを上記丸型の分布パターンとする場合、例えば、0°方向、45°方向、90°方向及び135°方向に対応する配向パラメータのうち、これらの最大値と最小値との比(Rmin/Rmax)を0.9以上1以下の範囲に制御することを含む。
【0053】
微多孔膜1の製造方法は、配向パラメータを上記丸型の分布パターンとする場合、例えば、45°方向及び135°方向に対応する配向パラメータの両方を、0°方向及び90°方向に対応する配向パラメータのうちいずれか小さい値の方の配向パラメータに対して、0.5倍以上0.95倍以下の範囲に制御することを含む。
【0054】
微多孔膜1の製造方法は、上記の特性を有する微多孔膜が得られれば、特に限定されず、公知のポリオレフィン微多孔膜の製造方法を用いることができる。微多孔膜1の製造方法としては、例えば、乾式の製膜方法及び湿式の製膜方法が挙げられる。乾式の製膜方法では、例えば、ポリオレフィン樹脂を溶融押出し、シートを形成する、冷却過程で延伸することにより、球晶を起点とする微細孔を形成させて微多孔膜を得る。湿式の成膜方法では、例えば、ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤とを溶融混練したポリオレフィン溶液を溶融押出し、シートを形成した後、冷却過程で高分子ミクロ相分離と成膜用溶剤の抽出とにより微細孔を形成させて微多孔膜を形成する。微多孔膜1の製造方法としては、膜の構造及び物性の制御の容易性の観点から湿式の製膜方法が好ましい。
【0055】
湿式の製膜方法では、例えば、日本国特許第2132327号および日本国特許第3347835号の明細書、国際公開2006/137540号等に記載された方法を用いることができる。湿式の製膜方法は、例えば、下記の工程(1)〜(5)を含むことができ、さらに下記の工程(6)〜(8)を含んでもよい。
(1)ポリオレフィン樹脂と成膜用溶剤とを溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する工程
(2)ポリオレフィン溶液を溶融押出し、シート状に形成した後、冷却しゲル状シートを形成する工程
(3)ゲル状シートを延伸する第1の延伸工程
(4)延伸後のゲル状シートから成膜用溶剤を除去する工程
(5)成膜用溶剤除去後のシートを乾燥する工程
(6)乾燥後のシートを延伸する第2の延伸工程
(7)乾燥後のシートを熱処理する工程
(8)延伸工程後のシートに対して架橋処理及び/又は親水化処理する工程
【0056】
上記延伸工程における、延伸方法は、一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、配向パラメータを上記範囲に、より容易に調整できる。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよい。例えば、同時二軸延伸の場合、微多孔膜1の配向パラメータを、上記丸型の分布パターンに容易に制御しやすい傾向がある。
【0057】
最終的な延伸倍率(面積延伸倍率)は、例えば、一軸延伸の場合、2倍以上が好ましく、3〜30倍がより好ましい。二軸延伸の場合、16倍以上が好ましく、49倍以上がより好ましい。また、長さ及び幅方向(MD及びTD方向)のいずれでも少なくとも3倍の延伸を行うことが好ましい。なお、MD方向とTD方向での延伸倍率は、互いに同じでも異なってもよい。第1工程及び/又は第2工程の延伸倍率は、樹脂材料の組成に応じて、各方法の配向パラメータが上記範囲となるように適宜、調整できる。
【0058】
なお、微多孔膜1は、単層であってもよいが、少なくとも二層のポリオレフィン微多孔膜からなる層を積層した多層ポリオレフィン微多孔膜としてもよい。多層ポリオレフィン微多孔膜は、二層以上の層とすることができる。多層ポリオレフィン微多孔膜の場合、各層を構成するポリオレフィン樹脂の組成は、同一組成でもよく、異なる組成でもよい。なお、微多孔膜1がポリオレフィン樹脂を樹脂成分とする二層以上の多層ポリオレフィン微多孔膜である場合でも、単層の場合と同様に、配向パラメータを上記した特定の範囲とすることにより、巻き取り性及び塗工性に優れた微多孔膜を得ることができる。
【0059】
本実施形態のロールは、例えば、延伸後の微多孔膜1を芯材の周囲に巻き取り形成される。ロールは、例えば、二次加工前の原反ロールでもよく、所定の幅にスリットされたロール(「リール」あるいは「スリットリール」ともいう。)であってもよい。微多孔膜1は、巻き取り性に優れるため比較的面積が大きい膜例えば、長さ1000mm、幅500mm程度、であっても、水平方向の蛇行や、上下の振動などが観察されず、ロールを形成することができる。ロールに巻き取り後の微多孔膜1は、ロールから再び巻出して、スリットしたり、表面塗工をしたり等の加工を行うことができる。微多孔膜1は、巻き取り性及び塗工性に優れるため、加工の際の生産性に非常に優れる。
【0060】
ロールは、例えば、微多孔膜1を備えるロールである。ロールを構成する微多孔膜1は、どちらか一方の表面の面内で、巻出し方向に対して反時計回りに45°の角度をなす45°方向、及び、反時計回りに135°の角度をなす135°方向について、ラマン分光法による測定値から得られる、45°方向に対応する配向パラメータ(R45°)と135°方向に対応する配向パラメータ(R135°)との比(R135°/R45°)が0.91超1.10未満であり、好ましくは0.92以上1.09以下であり、より好ましくは0.94以上1.06以下である。なお、微多孔膜1を備えるロールとは、例えば、芯材と、微多孔膜1とを備え、微多孔膜1が芯材の周囲に巻き取り形成されたロールであってもよく、後述するように、芯材と、微多孔膜1の少なくともいずれか一方の表面に微多孔膜1以外の多孔質層とを積層した積層ポリオレフィン微多孔膜と、を備え、積層ポリオレフィン微多孔膜が芯材の周囲に巻き取り形成されたロールであってもよい。
【0061】
なお、微多孔膜1は、ポリオレフィン樹脂以外の他の多孔質層を積層して積層ポリオレフィン多孔質膜としてもよい。積層ポリオレフィン多孔質膜は、微多孔膜1の少なくとも一方の表面に、微多孔膜1以外の他の多孔質層を積層して形成される。他の多孔質層としては、特に限定されないが、例えば、バインダーと無機粒子とを含む無機粒子層を積層してもよい。無機粒子層を構成するバインダー成分としては、特に限定されず、公知の成分を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。無機粒子層を構成する無機粒子としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、アルミナ、ベーマイト、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ素などを用いることができる。また、積層ポリオレフィン多孔質膜としては、多孔質化した前記バインダー樹脂がポリオレフィン多孔質膜の少なくとも一方の表面に積層されたものであってもよい。
【0062】
図3は、本実施形態のポリオレフィン微多孔膜の評価方法の一例を示すフローチャートである。この評価方法は、まず、膜表面に平行な面内で製膜時の長さ方向(MD方向)に対して45°の角度をなす45°方向、及び45°方向と同じ向きに135°の角度をなす135°方向について、ラマン分光法により測定される45°方向に対応する配向パラメータ(R45°)と135°方向に対応する配向パラメータ(R135°)との比(R135°/R45°)を算出する(ステップS1)。配向パラメータの測定方法及び測定条件は、上述のとおりである。次いで、この配向パラメータの比(R135°/R45°)が0.91超1.10未満であるかどうかを判定する(ステップS2)。この比(R135°/R45°)は、好ましくは0.92以上1.09以下であり、より好ましくは0.94以上1.06以下である。
【0063】
配向パラメータの比(R135°/R45°)が、上記範囲である場合、例えば、巻き取り性が良好であると判定できる。一方、配向パラメータとの比(R135°/R45°)が、上記範囲を外れる場合、例えば、巻き取り性が不良であると判定できる。
【0064】
配向パラメータの比(R135°/R45°)が、上記範囲である場合、例えば、塗工性が良好であると判定できる。一方、配向パラメータとの比(R135°/R45°)が、上記範囲を外れる場合、例えば、塗工性が不良であると判定できる。
【0065】
この評価方法は、面内の45°方向及び135°各方向の配向パラメータを算出し、判定することにより、例えば、実際に巻き取りや塗布を行うことなく、ポリオレフィン微多孔膜の巻き取り性及び/又は塗工性を評価することができる。また、この評価の際に、45°方向及び135°方向に対応する配向パラメータと、0°方向(MD方向)及び90°方向(TD方向)に対応する配向パラメータとを算出し、配向パラメータの分布パターンが上記の丸型、楕円型、十字型の分布パターンのいずれであるかを判定することにより、ポリオレフィン微多孔膜を評価することができる。
【0066】
なお、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法の他の実施形態では、製膜後に得られたポリオレフィン微多孔膜を、上記のポリオレフィン微多孔膜の評価方法を用いて、評価結果が良好と判定された微多孔膜を選択すること、を含んでもよい。ポリオレフィン微多孔膜の製造方法において、上記の評価方法を用いることにより、芯材への巻き取りや二次加工の前に、巻き取り性及び塗工性が良好な微多孔膜を選択することができる。
【実施例】
【0067】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定され
るものではない。
【0068】
1.測定方法と評価方法
(1)膜厚(μm)
微多孔膜の95mm×95mmの範囲内における5点の膜厚を接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック)により測定し、平均値を求めた。
(2)空孔率(%)
微多孔膜の重量wとそれと等価な空孔のないポリマーの重量w(幅、長さ、組成の同じポリマー)とを比較した、以下の式によって、測定した。
空孔率(%)=(w−w)/w×100
(3)ガーレー値(透気抵抗度)(sec/100cm/20μm)
膜厚T(μm)の微多孔膜に対して、JIS P−8117に準拠して、透気度計(旭精工株式会社製、EGO−1T)で測定したガーレー値P(sec/100cm)を、式:P=(P×20)/Tにより、膜厚を20μmとしたときのガーレー値Pに換算した。
(4)突刺強度
先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、膜厚T(μm)の微多孔質膜を2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重を測定した。最大荷重の測定値L(gf)を、式:L=(L×20)/Tにより、膜厚を20μmとしたときの最大荷重Lに換算し、突刺強度とした。
(5)105℃熱収縮率
試験片を105℃の温度にて8時間熱処理し、熱処理前の各方向の試験片の大きさ(L1)と熱処理後の試験片の各方向の大きさ(L2)とを測定し、各方向において、L1を100%としたときの、L2の収縮率を式:[100−(L2/L1)×100](%)により算出した。
【0069】
(6)巻き取り性の評価
幅500mmのフィルム(微多孔膜)を巻き取った二次加工前の原反ロールを、張力30Nで巻出し、再び、巻取りを行った際、搬送ロール状の水平走行区間(搬送方向における長さ:1m)のフィルムの走行状態を目視にて以下の基準で評価した。
良好:水平走行区間のフィルム走行時に水平方向の蛇行及び上下方向の振動の両方が認められなかった。
不良:水平走行区間のフィルム走行時に水平方向の蛇行及び上下方向の振動のうち少なくとも一方が観察された。
【0070】
(7)塗工性の評価
巻き取り張力30Nで、幅500mmの微多孔膜の一方の表面にセラミック粉末スラリーをグラビアコーターで塗布、乾燥し、塗工膜厚3μm(基準値)のセラミック層を積層した微多孔膜を得た。得られた積層微多孔膜の塗工層を含む全膜厚(塗工層+原反厚み)をTD方向に50mm置きに測定し、原反厚みを差し引くことで各測定地点での塗工厚みを算出した。膜厚3μmを100%とした場合の各測定地点における膜厚L3の変動幅(100×L3(μm)/3(μm))(%)を算出し、以下の基準で塗工性を評価した。
良好:膜厚変動幅が、基準値に対して、−3%以上+3%以下であり、塗工膜厚が均一である。
不良:膜厚変動幅が基準値に対して、−3%未満+3%超であり、塗工膜厚が変動する。
【0071】
(塗布液の調製)
CMC(カルボキシメチルセルロース:ダイセルファインケム株式会社製、品番2200)0.8質量部に溶媒60.8質量部を加え、2時間攪拌した。続いて平均粒径0.5μmの球形状のアルミナ微粒子を38.4質量部加え、2時間攪拌してアルミナ微粒子を十分分散させた後、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液とした。この時、樹脂成分と微粒子の体積比は5:95であった。(CMCの比重1.6g/cm、アルミナの比重4.0g/cmとして計算した。)
【0072】
(実施例1〜4)
表1に示す組成でポリオレフィン樹脂と流動パラフィンとを二軸押出機にて、溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製した。ポリオレフィン溶液を、二軸押出機からTダイに供給し、押し出した。押出し成形体を、冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。ゲル状シートを、テンター延伸機により110〜125℃でMD方向及びTD方向ともに5倍以上9倍以下で同時二軸延伸又は逐次二軸延伸(第1の延伸)した。延伸ゲル状シートを20cm×20cmのアルミニウム枠板に固定し、25℃に温調した塩化メチレン浴中に浸漬し、100rpmで3分間揺動しながら流動パラフィンを除去し、室温で風乾し、乾燥膜を得た。乾燥膜を、バッチ式延伸機を用いて、126℃でTD方向に1.0倍以上1.8倍以下で延伸(第2の延伸)した。次に、この膜をテンター法により、126℃で熱固定処理を行った。作製したポリオレフィン微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。なお、表1中、HDPEは、高密度ポリエチレンを示し、UHMwPEは、超高分子量ポリエチレンを示す。
【0073】
(比較例1及び比較例2)
比較例としてポリエチレン系樹脂を用いた微多孔膜からなる2種類の市販品(比較例1及び比較例2)の製造条件、評価結果等を表1に記載した。
【0074】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、巻き取り性及び塗工性に優れるため、二次加工の際の歩留まりが改善され、生産性に優れる。よって、製膜後に二次加工が必要な種々の分野に用いられるポリオレフィン微多孔膜、例えば、ろ過膜、透析膜などのフィルター、電池用セパレータや電解コンデンサー用のセパレータなどに有用である。中でも薄膜化が要求される二次電池用セパレータに好適に用いることができる。また、本発明のポリオレフィン微多孔膜の評価方法は、巻き取り性や塗工性を二次加工前に評価することができる。
【0076】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。また、法令で許容される限りにおいて、日本国特許出願である特願2015−256942の内容を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0077】
1……ポリオレフィン微多孔膜
【図1】
【図2】
【図3】
【国際調査報告】